JP4167088B2 - 二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム - Google Patents
二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、屈折率の低い層と屈折率の高い層とを交互に規則的に配置させた、層間の屈折率差および各層の厚みによって任意の波長帯の光を選択的に反射する多層積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
多層積層フィルムは、屈折率の低い層と高い層とを交互に多数積層したものであり、層間の構造的な光干渉によって、特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとすることができる。このような多層積層フィルムは、選択的に反射または透過する光の波長を可視光領域とすれば、構造的な発色により意匠性に優れた、例えば、玉虫色に見える真珠光沢フィルムができる。
【0003】
しかも、ここで得られる意匠性は、多層積層フィルムの構造的な発色によることから、染料などによる発色と異なり退色の問題もない。また、このような多層積層フィルムは、膜厚を徐々に変化させたり、異なる反射ピークを有するフィルムを貼り合せたりすることで金属を使用したフィルムと同等の高い反射率を得ることができ、金属光沢フィルムや反射ミラーとして使用することもできる。
【0004】
これらの多層積層フィルムは、特開昭56−99307号公報などでポリエチレンテレフタレートとポリメチルメタクリレートなどの異なる素材の熱可塑性樹脂を用いた多層積層フィルムが提案されている。また、特表平9−506837号公報やWO01/47711号公報などで、例えば屈折率の高い層として、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる層を用い二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムも提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭56−99307号公報
【特許文献2】
特表平9−506837号公報
【特許文献3】
WO01/47711号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような多層積層フィルムは、層間の屈折率差を大きくするために、組成の異なる樹脂を組み合わせるため、各層間の密着が弱く層間剥離現象が発生しがちであった。また、組成の異なる樹脂を組み合わせるため、どうしても延伸を均一に行うのが難しいため、厚み斑の悪いフィルムしか得られず結果として、色相に斑のあるフィルムしか得られなかった。
【0007】
すなわち、従来の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの各層の屈折率差は、各層を構成する樹脂の有する屈折率差に由来していた。例えば、特開昭56−99307号公報に記載されているように、屈折率の高い層には、ポリエチレンテレフタレートを使用し、屈折率の低い層には、ポリメタクリレートのような屈折率の低い樹脂を用いてきていた。しかし、樹脂の有する屈折率に頼って層間の屈折率差を設ける従来の考え方では、各層を構成する樹脂は、どうしても組成の大きく異なる樹脂を選択する必要があり、層間の密着性の劣るものしか得られなかった。例えば、特表平9−506837号公報やWO01/47711号公報では、屈折率の高い層に屈折率の高いポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下、PENと称することがある。)を使用し、屈折率の低い層に熱可塑性エラストマーを使用した2軸延伸フィルムや屈折率の高い層に屈折率の高いPENを使用し、屈折率の低い層にイソフタル酸を30mol%共重合したPENを使用した1軸延伸二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムが例示されている。
【0008】
これらの多層積層フィルムは屈折率の低い層を実質的に非晶質にしており、このような多層積層フィルムに延伸処理を施しても、層間密着性が十分に得られなかったり、2軸延伸処理が面方向に均一に行えず、膜質が不均一化したりして、実用上の課題が潜在していた。本発明は、従来の多層積層フィルムが有する上述の課題を解消し、色相の斑が小さく、層間の密着性が高く、しかも裂けにくい多層積層フィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、第1の層と第2の層とを総層数で11層以上になるよう交互に積層し、なおかつ二軸延伸を施した多層積層フィルムであって、いずれの層も厚みが0.05〜0.5μmであり、第1の層はポリエステル組成物から構成され、第2の層は第1の層を構成するものとは組成を異にするポリエステル組成物から構成され、波長350〜2000nmの範囲での光の最大反射率は、波長350〜2000nmの範囲での光反射率曲線から得られる反射率のベースラインよりも20%以上高く、フィルムの厚み形状については、厚みの最大値と最小値の差が、連続製膜方向では長さ5mごとの範囲内および幅方向では全幅範囲内において、いずれも3μm以下、隣接する厚みの山と谷との厚み差は、連続製膜方向と幅方向のいずれにおいても1μm以下、隣接する厚みの山と谷とのフィルム面内における間隔は、連続製膜方向と幅方向のいずれにおいても10mm以上であり、多層積層フィルムを構成するポリエステルにおけるエチレンテレフタレート成分の割合が、ポリエステルの全繰返し単位を基準として、80モル%以上であり、多層積層フィルムは、示差走査熱量測定法によって示される融点が2つ以上存在し、その融点差が5℃以上異なり、示差走査熱量測定法によって示される結晶化ピークが100〜190℃の範囲にあり、多層積層フィルムの第1の層を構成するポリエステルが、結晶性ポリエステルであり、全繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート成分であり、第2の層を構成するポリエステルが、結晶性ポリエステルであり、全繰返し単位の75〜97モル%がエチレンテレフタレート成分であることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、層間密着性を保ちつつ、2軸延伸加工においても膜質の均質性を保ちながら、二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの各層の屈折率差をつけることができる。その結果、屈折率の高い層と屈折率の低い層を構成する樹脂組成を極限まで近くしても、屈折率の低い層を構成する樹脂の融点を屈折率の高い層を構成する樹脂より低くして、かつ2軸延伸処理後に該融点の低い樹脂からなる層の分子配向を緩和させることにより、層間の屈折率差を発現させつつ、2軸延伸加工性もすぐれ、層間密着性も優れた二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムが得られる。すなわち本発明は、各層を構成する樹脂の組合せとして、従来から層間の屈折率差を発現させ難いとされていた極めて組成の近い樹脂の組合せを採用して、多層積層フィルムに十分な強度と層間の密着性を具備させながら、驚くべきことに層間の屈折率差も十分に具備させたものである。
【0011】
本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル組成物からなる厚みが0.05〜0.5μmの第1の層と、同じくポリエステル組成物からなる厚みが0.05〜0.5μmの第2の層とを交互に少なくとも11層積層されたものである。なお、第1の層と第2の層とを構成するポリエステル組成物は、組成は非常に近いものであるが組成を異にすることが必要である。積層数が11層未満だと、多重干渉による選択反射が小さく、十分な反射率が得られない。積層数の上限は、生産性などの観点から高々501層であることが好ましい。また、第1の層および第2の層は、層間の光干渉によって選択的に光を反射するために、それぞれ1層の厚みが0.05〜0.5μmである。本発明の多層積層フィルムが示す選択反射は、紫外光、可視光、近赤外光の範囲において、適宜、その層厚を調整することで実現できる。それぞれの1層厚みが0.05μm未満であると、その反射光はポリエステル組成分の吸収によって反射性能が得られなくなる。一方、0.5μmを超えると、層間の光干渉によって選択的に反射する光が赤外光の領域に達し、光学的特性としての有用性がえられなくなる。なお、説明の便宜上、屈折率の高い層を第1の層、屈折率の低い層を第2の層と、以下、称する。
【0012】
また、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、波長350〜2000nmの光に対する反射率曲線に、最大反射率が反射率のベースラインよりも20%以上高い、好ましくは30%以上高い、さらに好ましくは50%以上高い反射ピークを有する。図1は、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの反射率曲線の一例を示す。図1中の、1は最大反射率と反射率のベースラインの差、2は反射率のベースラインを示す。二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに、最大反射率が反射率のベースラインよりも20%以上高い反射ピークが存在しないと、特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとしては使用できず、装飾用途などへの使用ができない。
【0013】
また本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、フィルムの厚み形状(厚みパターン)については、厚みの最大値と最小値の差が、連続製膜方向では長さ5mごとの範囲内および幅方向では全幅範囲内において、いずれも3μm以下、隣接する厚みの山と谷との厚み差(変動幅)は、連続製膜方向と幅方向のいずれにおいても1μm以下、隣接する厚みの山と谷とのフィルム面内における間隔は、連続製膜方向と幅方向のいずれにおいても10mm以上である。
【0014】
ここで、厚みの最大値と最小値の差が3μmを越えると、視認される色相に変化がみられ、均一な色相のフィルムが得られない。また、隣接する山と谷の厚み差は、より色相変化を際立たせるため、1μm以下であることが必要である。これが1μmを越えると、筋状または紋状の色相が見られてしまい均一な色相のフィルムが得られない。さらには、隣接する山と谷の間隔が極端に小さくても、筋状の色相斑になってしまうことから、隣接する山と谷の間隔は、10mm以上であることが必要である。
【0015】
本発明のフィルムは、第1の層用ポリエステルと該第1の層用ポリエステルよりも融点が15℃以上低い第2の層用ポリエステルとを11層以上交互に積層したシート状物とする工程、得られたシート状物を第一の層および第二の層のガラス転移温度よりも20℃以上高い温度で製膜方向および幅方向にそれぞれ2〜50倍延伸する工程、および第2の層用ポリエステルの融点よりも10℃低い温度から第1の層用ポリエステルの融点よりも15℃低い温度で熱固定する工程から得ることができる。
【0016】
特に、第一の層と第二の層を構成する樹脂を極限まで近い組成とし、かつその樹脂間の融点差を利用して、各層間の屈折率差を発現させることで、きわめて密着性の優れた二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム製造することができる。さらに、上記の樹脂組成において、その延伸温度を第一の層および第二の層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも20℃以上高い温度で延伸することにより、延伸時の延伸斑の非常に小さい二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムを製造することができる。特に、製造方法についての後述の記載にあるように、材料と延伸条件を適宜選択することで、上述の厚みパターンを達成することができる。
【0017】
本発明では、上述の厚み構成で、二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムを構成する第1の層と第2の層に、従来の樹脂の屈折率差に頼らず、十分な屈折率差を付与できる。樹脂の屈折率差に頼らずに二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムを構成する第1の層と第2の層に十分な屈折率差を付与するには、例えば延伸後の熱処理によって屈折率差を付与する方法が挙げられる。そして、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、極めて組成の類似した樹脂を第1の層および第2の層を構成する樹脂として選択でき、そのような組成の類似した樹脂の選択によって層間の密着性が飛躍的に向上されたものである。
【0018】
本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、上述の第1の層および第2の層を、交互に少なくとも11層積層したものである。なお、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、前述のとおり、十分な機械的強度を具備する観点から、2軸方向に延伸されていることが必要である。
【0019】
特に、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、層間の密着性及び2軸延伸加工の製膜性を確保する観点から、第1の層、第2の層ともに、結晶性を示し、かつ第2の層の樹脂は、延伸後には、少なくとも部分的に溶融されていることが好ましい。このようにして得られた二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、DSC(示差走査熱量計)で測定される融点が2つ以上存在し、かつそれらの融点か5℃以上異なることが好ましい。ここで、測定される融点は、高融点側が高屈折率を示す第1の層であり、低融点側は、低屈折率を示す第2の層である。また、さらに好ましくは、延伸後に第2の層は少なくとも部分的に溶融されているために、DSCで測定される結晶化ピークが100℃〜190℃の範囲に存在することが好ましい。結晶化ピークが100℃以下であると、フィルムの延伸時に一方の層が急激に結晶化し、製膜時の製膜性が低下しやすく、かつ、膜質の均質性が低下しやすく、結果として、色相の斑などが発生することがある。一方で結晶化ピークが190℃以上であると、熱固定処理で第二の層を融解するときに、結晶化が同時に起こり、十分な屈折率差を発現させ難くなる。
【0020】
このように、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、ともに結晶性を示す第一の層の樹脂と第二の層の樹脂を延伸することによって、均質な膜質のフィルムが得られ、かつ延伸工程の後に第二の層を融解することで、層間密着性を向上させることと同時に反射性能を向上させることができる。従って、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムでは、DSCによる結晶ピークが100℃〜190℃に存在し、融点差が5℃以上異なる2つ以上の融解ピークが観測される二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムが好ましい。
【0021】
また、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、第1の層および第2の層を構成する樹脂が、ともに結晶性樹脂であることが好ましい。第1の層および第2の層を構成する樹脂がともに結晶性樹脂であると、延伸などの処理が不均一になりがたく、結果としてフィルムの厚み斑を小さくすることができる。このとき、延伸温度は、第一の層および第二の層を構成する樹脂のガラス転移温度より20℃以上高い温度で延伸することが好ましい。これより低い温度で延伸を行うと、延伸時にフィルムが均一に延伸されがたく、製膜方向または、幅方向に延伸斑が生じ、結果として厚み斑が悪いフィルムしか得られない。
【0022】
本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、フィルムの巻取り性を向上させるため、第1の層または第2の層の少なくとも1方に、不活性粒子を含有することが好ましい。二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに含有させる不活性粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子を挙げることができる。
【0023】
本発明の特徴は、非常に樹脂組成の近い樹脂同士を用いることであるが、以下に特に好ましい樹脂組成の組み合わせについて説明する。すなわち、フィルムはポリエステルの全繰返し単位を基準として80モル%以上が、エチレンテレフタレート成分または2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分である場合について。
【0024】
1)エチレンテレフタレート成分の割合が、ポリエステルの全繰返し単位を基準として80モル%以上の場合
一つの態様として、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、全繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート成分のポリエステルからなることが好ましい。エチレンテレフタレート成分が全繰返し単位の80モル%未満だと、層間の密着性が低下する。なお、エチレンテレフタレート成分以外の共重合成分としては、融点を低下させやすいことから、2,6―ナフタレンジカルボン酸またはイソフタル酸成分が好ましい。2,6―ナフタレンジカルボン酸またはイソフタル酸成分の共重合割合は、繰返し単位を基準として、1.5〜20モル%の範囲である。2,6―ナフタレンジカルボン酸またはイソフタル酸成分のモル数が、下限よりも少ないと、第1の層と第2の層に十分な屈折率差を付与しがたく、他方、2,6―ナフタレンジカルボン酸またはイソフタル酸成分のモル数が上限よりも多いと、第1の層と第2の層を構成するポリエステルの組成が大きく異なり、層間の密着性が低下しやすい。
【0025】
[PET系の第1の層]
本発明の上記の態様として、特に第1の層を構成する樹脂は、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレート成分からなるポリエステルであることが好ましい。さらには、後述の第2の層を構成するポリエステルよりも融点を高度に維持できることから、ホモポリエチレンテレフタレートまたは繰返し単位の95モル%以上がエチレンテレフタレート成分からなる共重合ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。エチレンテレフタレート成分のモル数が繰返し単位の95モル%未満だと、融点が低下し、後述の第2の層を構成するポリエステルとの融点差が得られがたく、結果として、二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに十分な屈折率差を付与しがたい。これらの中でも、融点を高度に維持できることから、ホモポリエチレンテレフタレートが好ましい。エチレンテレフタレート成分以外の共重合成分としては、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等の酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等、グリコール成分を好ましく挙げることができる。
【0026】
ところで、第1の層を構成する樹脂の融点は、250〜260℃の範囲であることが、後述の第2の層を構成する樹脂との融点差を比較的大きくできることから好ましい。第1の層を構成する樹脂の融点が下限よりも低いと、第2の層を構成する樹脂との融点差が小さくなり、結果として、得られる二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに十分な屈折率差を付与することが困難になる。なお、共重合していないポリエチレンテレフタレートの融点は、通常256℃近傍である。
【0027】
[PET系の第2の層]
本発明の上記の態様として、特に第2の層を構成する樹脂は、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレート成分からなるポリエステルであることが好ましい。特に2軸延伸における製膜性の観点から、結晶性ポリエステルであることが好ましい。また、前述の第1の層を構成するポリエステルよりも融点を低くできることから、繰返し単位の75〜97モル%がエチレンテレフタレート成分からなり、3〜25モル%がそれ以外の共重合成分からなる共重合ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。エチレンテレフタレート成分のモル数が繰返し単位の75モル%未満であるか共重合成分のモル数が25モル%を超えると、実質的にポリマーが非晶性を示し、2軸延伸での製膜性が低下し、かつ前述の第1の層を構成するポリエステルとの組成が大きく異なり、層間の密着性が低下しやすい。他方、エチレンテレフタレート成分のモル数が繰返し単位の97モル%を超えるか共重合成分のモル数が3モル%未満だと、前述の第1の層を構成するポリエステルとの融点差が小さくなり、結果として、二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに十分な反射率を付与することが困難となる。エチレンテレフタレート成分以外の共重合成分としては、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等の酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等、グリコール成分を好ましく挙げることができる。これらの中でも、比較的、延伸性を維持しながら融点を低下させやすいことから2,6―ナフタレンジカルボン酸またはイソフタル酸が好ましい。
【0028】
ところで、第2の層を構成する樹脂の融点は、200〜245℃の範囲であることが、前述の第1の層を構成する樹脂との融点差を比較的大きくできることから好ましい。第2の層を構成する樹脂の融点が上限よりも高いと、第1の層を構成する樹脂との融点差が小さくなり、結果として、得られる二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに十分な屈折率差を付与することが困難になる。一方、第2の層を構成する樹脂の融点が下限よりも低くするには、第1の層を構成する樹脂との組成が大きく変更することになり、得られる二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに十分な層間の密着性を付与することが困難になる。なお、第2の層を構成する樹脂の融点は、フィルムにする前の段階から低い必要はなく、延伸処理後に低くなっていれば良い。例えば、ホモポリエチレンテレフタレートとそれ以外の他のポリエステルとを用意し、これらを溶融混練時にエステル交換させたものであっても良い。
【0029】
2)2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分の割合が、ポリエステルの全繰返し単位を基準として80モル%以上の場合
他の態様として、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、全繰返し単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分のポリエステルからなることが好ましい。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分が全繰返し単位の80モル%未満だと、層間の密着性が低下しやすくなる。なお、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分以外の共重合成分としては、融点を低下させやすいことから、テレフタル酸またはイソフタル酸成分が好ましい。テレフタル酸またはイソフタル酸成分の共重合割合は、繰返し単位を基準として、1.5〜20モル%の範囲である。テレフタル酸またはイソフタル酸成分のモル数が、下限よりも少ないと、第1の層と第2の層に十分な屈折率差を付与しがたく、他方、テレフタル酸またはイソフタル酸成分のモル数が上限よりも多いと、第1の層と第2の層を構成するポリエステルの組成が大きく異なり、層間の密着性が低下しやすい。
【0030】
[PEN系の第1の層]
本発明の上記の態様として、特に、第1の層を構成する樹脂は、主たる繰返し単位がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分からなるポリエステルであることが好ましい。好ましくは、後述の第2の層を構成するポリエステルよりも融点を高度に維持できることから、ホモポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートまたは繰返し単位の95モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分からなる共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分のモル数が繰返し単位の95モル%未満だと、融点が低下し、後述の第2の層を構成するポリエステルとの融点差が得られがたく、結果として、多層延伸フィルムに十分な屈折率差を付与しがたい。これらの中でも、融点を高度に維持できることから、ホモポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分以外の共重合成分としては、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等の酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等、グリコール成分を好ましく挙げることができる。
【0031】
ところで、第1の層を構成する樹脂の融点は、260〜270℃の範囲であることが、後述の第2の層を構成する樹脂との融点差を比較的大きくできることから好ましい。第1の層を構成する樹脂の融点が下限よりも低いと、第2の層を構成する樹脂との融点差が小さくなり、結果として、得られる多層延伸フィルムに十分な屈折率差を付与することが困難になる。なお、共重合していないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの融点は、通常267℃近傍である。
【0032】
[PEN系の第2の層]
本発明の上記の態様として、特に、第2の層を構成する樹脂は、主たる繰返し単位がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分からなるポリエステルであることが好ましい。特に2軸延伸における製膜性の観点から、結晶性ポリエステルであることが好ましい。また、前述の第1の層を構成するポリエステルよりも融点を低くできることから、繰返し単位の75〜97モル%がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分からなり、3〜25モル%がそれ以外の共重合成分からなる共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分のモル数が繰返し単位の75モル%未満であるか共重合成分のモル数が25モル%を超えると、実質的にポリマーが非晶性を示し、2軸延伸での製膜性が低下し、かつ前述の第1の層を構成するポリエステルとの組成が大きく異なり、層間の密着性が低下しやすい。他方、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分のモル数が繰返し単位の97モル%を超えるか共重合成分のモル数が3モル%未満だと、前述の第1の層を構成するポリエステルとの融点差が小さくなり、結果として、多層延伸フィルムに十分な反射率を付与することが困難となる。エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート成分以外の共重合成分としては、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等の酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等、グリコール成分を好ましく挙げることができる。これらの中でも、比較的、延伸性を維持しながら融点を低下させやすいことからテレフタル酸またはイソフタル酸が好ましい。
【0033】
ところで、第2の層を構成する樹脂の融点は、215〜255℃の範囲であることが、前述の第1の層を構成する樹脂との融点差を比較的大きくできることから好ましい。第2の層を構成する樹脂の融点が上限よりも高いと、第1の層を構成する樹脂との融点差が小さくなり、結果として、得られる多層延伸フィルムに十分な屈折率差を付与することが困難になる。一方、第2の層を構成する樹脂の融点が下限よりも低くするには、第1の層を構成する樹脂との組成が大きく変更することになり、得られる二軸延伸多層積層フィルムに十分な層間の密着性を付与することが困難になる。なお、第2の層を構成する樹脂の融点は、フィルムにする前の段階から低い必要はなく、延伸処理後に低くなっていれば良い。例えば、ホモポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートとそれ以外の他のポリエステルとを用意し、これらを溶融混練時にエステル交換させたものであっても良い。
【0034】
[二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの諸物性]
また、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、延伸処理された方向の破断強度は、それぞれ50MPa以上であることが好ましい。破断強度が50MPa未満だと、二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの加工時における取り扱い性が低下したり、製品にしたときの耐久性が低下したりする。また、破断強度が50MPa以上であると、フィルムの腰が強くなり、巻取り性が向上するという利点もある。好ましい破断強度は、縦方向が80MPa以上、特に100MPa以上で、横方向が80MPa以上、特に100MPa以上である。また、縦方向と横方向の強度比は、3以下であることが耐引裂き性を十分に具備できることから好ましい。特に縦方向と横方向の強度比が2以下であると、さらに耐引裂き性を向上できることから好ましい。破断強度の上限は、特に限定はされないが、延伸工程の安定性を維持する観点から、高々500MPaであることが好ましい。
【0035】
また、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、熱寸法安定性が高いことが特徴であり、延伸処理された方向(製膜方向および幅方向)の150℃で30分間処理したときの熱収縮率が、それぞれ3.0%以下が好ましい。より好ましくは、2.5%以下、更に好ましくは、2.0%以下である。また、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの200℃で10分間処理したときの製膜方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ5.0%以下が好ましい。より好ましい熱収縮率はそれぞれ4.0%以下、更に好ましい熱収縮率はそれぞれ3.0%以下である。熱寸法安定性が高いことから、本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、PVCシートとの貼り合せや、エンボス加工などの工程適性に優れているといえる。
【0036】
本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、幅方向のみでなく、厚み方向においても、その多層構造を構成する各層の厚み分布が均一であることが好ましい。多層構造を構成する各層の厚み分布が均一であるほど、特定の波長帯の光を選択的に反射できる。ただし、層を構成する大部分が均一であることが重要であるため、極少数の層が変化しても大きな問題とはならない。なお、第1の層と第2の層のそれぞれについて、各層の厚み分布の変動率が均一であればよい。ただし、第1の層と第2の層の厚みは、異なっていても良いが、第1の層と第2の層の厚み比の下限は0.3であり、上限は3.0であることが好ましい。特に好ましくは下限が0.5、上限が2.0である。
【0037】
下記式に示す各層の厚み分布の変動率K(%)は、第一の層もしくは、第二の層のそれぞれについて、80%以下が好ましい。さらに好ましくは、50%以下、特に好ましくは30%以下である。
K=(dmax−dmin)/dave×100
ここで、dmaxは、各層の層厚みのうち上限から10%を除いた中での最大値、dminは、各層の層厚みのうち下限から10%を除いた中での最小値、daveは、各層の層厚みのうち上限から10%と下限から10%を除いた中での平均値である。
【0038】
[二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの製造方法]
本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル(第1の層用)と、該第1の層を構成するポリエステルよりも、延伸処理後の融点が少なくとも10℃以上低いポリエステル(第2の層用)とを、溶融状態で交互に少なくとも11層以上重ね合わせた状態で、押出し、多層未延伸フィルム(シート状物とする工程)とする。なお、第1の層および第2の層を構成するポリエステルは、前述の第1の層および第2の層で説明したのと、同様である。第1の層用ポリエステルと第2の層用ポリエステルの融点差が10℃未満だと、得られる二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの層間に十分な屈折率差が付与できない。第1の層用ポリエステルの融点と第2の層用ポリエステルの融点差の上限は、両者の密着性を維持する観点から、高々50℃であることが好ましい。
【0039】
このようにして得られた多層未延伸フィルムは、製膜方向とそれに直交する幅方向の2軸方向(フィルム面に沿った方向)に延伸される。延伸温度は、第1の層用および第2の層用ポリエステルのガラス転移点の温度より20℃以上高い温度で延伸することが好ましい。延伸温度の上限は、第一の層もしくは50℃が好ましい。延伸温度が50℃以上であると樹脂の流動が大きくなり均一な延伸を行うことができない。また、このときの面積倍率は5〜50倍であることが好ましい。特に好ましい面積倍率の下限は、16倍以上、さらに好ましくは、20倍以上である。面積倍率の上限は高々50倍である。延伸倍率が大きい程、第1の層および第2の層の個々の層における面方向のバラツキが、延伸による薄層化により小さくなる、すなわち、二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの光干渉が面方向に均一になるので好ましい。2方向に延伸する際の延伸方法は、逐次2軸延伸でも同時2軸延伸であってもよい。
【0040】
本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、フィルムの厚み形状については、厚みの最大値と最小値の差が、連続製膜方向では長さ5mごとの範囲内および幅方向では全幅範囲内において、いずれも3μm以下、隣接する厚みの山と谷との厚み差は、連続製膜方向と幅方向のいずれにおいても1μm以下、隣接する厚みの山と谷とのフィルム面内における間隔は、連続製膜方向と幅方向のいずれにおいても10mm以上であることが必要である。上記のような厚み形状を達成するには、材料と延伸条件との組み合わせを適宜選択することで達成できる。より詳しくは、選択される樹脂の溶融特性が、0.1〜10(1/秒)のせん断速度範囲でNewton流体に近い溶融特性をもつ樹脂が好ましく、その溶融粘度が500〜3000(Pa・秒)であることが好ましい。さらには、選択された樹脂同士の粘度差特性が上記せん断速度範囲において、1000(Pa・秒)以内であることが好ましい。延伸時においては、積層された複数の樹脂のガラス転移温度が近いものが好ましく、具体的には、高々30℃以内であることが好ましい。延伸温度および条件においては、前述のとおりである。
【0041】
本発明では、このようにして延伸された多層フィルムを、第2の層用ポリエステルの融点よりも10℃低い温度から、第1の層用ポリエステルの融点よりも15℃低い温度の範囲で熱処理して、第2の層内の分子鎖の配向を緩和させ、第2の層の屈折率を低下させることにある。熱処理の温度が、第2の層用ポリエステルの融点よりも10℃を超えて低いと、第2の層内の分子鎖の配向を緩和させて屈折率を低下させる効果が不十分となり、得られる二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに十分な屈折率差を付与できない。一方、熱処理の温度が、第1の層用ポリエステルの融点よりも10℃以上低い温度でないと、第1の層内の分子鎖の配向も緩和されて屈折率が低下し、得られる二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムに十分な屈折率差を付与できない。好ましい熱処理の温度は、第2の層用ポリエステルの融点よりも6℃低い温度から、第1の層用ポリエステルの融点よりも16℃低い温度、さらには第2の層用ポリエステルの融点よりも2℃低い温度から、第1の層用ポリエステルの融点よりも18℃低い温度である。なお、熱処理の時間は、1〜60秒が好ましい。
【0042】
また、この熱処理の温度や時間を変化させることにより、樹脂の組成を変化させることなく、第2の層の屈折率を調整することができる、すなわち樹脂の組成を変化させることなく、二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの反射特性を変化させることができる。
【0043】
【実施例】
実施例をもって、本発明をさらに説明する。なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
【0044】
(1)ポリエステル樹脂の融点およびガラス転移点(Tg)
ポリエステル樹脂試料を10mgサンプリングし、示差走査熱量測定装置DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/分の昇温速度で、融点を測定する。
【0045】
(2)各層の厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋する。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(製造元:ライヘルト社、ULTRACUT−S)で製膜方向と厚み方向に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察・撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
【0046】
(3)フィルムのDSCによる融点、結晶化ピークの測定
サンプルフィルムを10mgサンプリングし、TAインスツルメンツ製DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)にて、20℃/分の昇温速度で、結晶化温度および融点を測定する。
【0047】
(4)反射率、反射波長
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長350nmから2000nmの範囲で測定する。その測定された反射率の中で最大のものを、最大反射率としその波長を反射波長とする。
【0048】
(5)厚み変動
バルクロールより製膜方向(5m)および幅方向(全幅)にそれぞれ切り出したフィルムサンプルを、縦方向及び幅方向に沿ってそれぞれ2cm幅で25本に切り出し、各サンプルの厚みを電子マイクロメータ及びレコーダー(K−312A,K310B、安立電気(株)製)を使用して連続的に測定する。各々のサンプルの全測定値から、厚みの最大値と最小値の差、隣接する厚みの山と谷との厚み差(変動幅)の最大値、そして隣接する厚みの山と谷とのフィルム面内における間隔の最小値を求める。図2には、フィルム厚みの測定結果の一例を示す。
下記の値を算出して評価する。
【0049】
(6)層間の密着性
サンプルフィルム(10mm×50mm)の両面に24mm幅の粘着テープ(ニチバン社製、商品名:セロテープ)を100mm貼り付け、180度の剥離角度で剥がした後、剥離面を観察する。これを各10サンプルについて行い、層間剥離の生じた回数を算出した。
【0050】
(7)色の斑
A4サイズのサンプルフィルムを10枚用意し、それぞれのサンプルフィルムを白色の普通紙に重ね、30ルクスの照明の下、目視にてサンプルフィルム内の透過色の色の斑を評価した。また、A4サイズのサンプルフィルムを10枚用意し、それぞれのサンプルフィルムの裏面を黒色のスプレーにて着色した後、30ルクスの照明の下、目視にてサンプルフィルム内の反射色の色の斑を評価した。そして、透過色および反射色の色相の斑を総合して、以下の評価基準で判断した。
○:サンプル内に視認できる色相の斑がない。
△:サンプル内に一部、色相の異なる部分が見られる。
×:明らかに斑や筋となって見える色相斑が確認できる。
【0051】
[実施例1〜12、比較例1〜14]
実施例1では、まず固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)を第1の層用ポリエステルとし、第2の層用ポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65の共重合ポリエチレンテレフタレートに真球状シリカ粒子(平均粒径:1.5μm、長径と短径の比:1.02、粒径の平均偏差:0.1)を0.10重量%添加したものを準備した。そして、第1の層用ポリエステルおよび第2の層用ポリエステルを、それぞれ170℃で3時間乾燥後、押出し機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とし、第1の層用ポリエステルを101層、第2の層用ポリエステルを100層に分岐させた後、第1の層と第2の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして各層の厚みが等しくなるように第1の層と第2の層が交互に積層された総数201層の未延伸多層積層フィルムを作成した。このとき第1の層と第2の層の押出し量が1:1になるように調整し、かつ、両端層が第1の層になるように積層した。この多層未延伸フィルムを90℃の温度で製膜方向に3.6倍延伸し、更に95℃の温度で幅方向に3.9倍に延伸し、230℃で3秒間熱固定処理を行った。得られた二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0052】
実施例2〜12では、第2の層用ポリエステルおよび製造条件を表1と2に示すように変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムの物性を表3に示す。比較例1〜14では、製造条件を表1と2に示すように変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
【0053】
なお、表1に示す不活性粒子は以下のとおりである。
不活性粒子ア:真球状シリカ粒子(平均粒径:1.5μm、長径と短径の比:1.02、粒径の平均偏差:0.1)。
不活性粒子イ:真球状シリカ粒子(平均粒径:0.2μm、長径と短径の比:1.02、粒径の平均偏差:0.1)。
不活性粒子ウ:真球状シリコーン粒子(平均粒径:0.5μm、長径と短径の比:1.10、粒径の平均偏差:0.2)。
【0054】
また、表1に示す樹脂は以下のとおりである。
PET:固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.63のポリエチレンテレフタレート。
IA12PET:イソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.61のポリエチレンテレフタレート。
NDC10PET:2,6−ナフタレンジカルボン酸を10mol%共重合した固有粘度0.70(オルトクロロフェノール、35℃)のポリエチレンテレフタレート。
NDC12PET:2,6−ナフタレンジカルボン酸を12mol%共重合した固有粘度0.70(オルトクロロフェノール、35℃)のポリエチレンテレフタレート。
IA8PET:イソフタル酸を8mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のポリエチレンテレフタレート。
IA45PET:イソフタル酸を45mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.58のポリエチレンテレフタレート。
IA3PET:イソフタル酸を3mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のポリエチレンテレフタレート。
PEN:固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート。
TA10PEN:テレフタル酸を10mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート。
Brend−1:固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.63のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)と固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.63のポリエチレンテレフタレート(PET)を重量比8:2でブレンドした樹脂。本ブレンド樹脂は、溶融時に混練されてエステル交換され、共重合樹脂と同様の融点低下がみられる。本ブレンド樹脂の融点は、実施例の条件にて押し出した樹脂を採取し融点を測定したところ、235℃。
IA12PEN:イソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.61のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート。
IA2PEN:イソフタル酸を2mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.68のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート。
IA40PEN:イソフタル酸を40mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.58のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート。
【0055】
実施例1〜6で示すフィルム中のエチレンテレフタレート成分の割合が80%以上である本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、特定波長の反射率の高く、フィルム厚み斑が少なく、かつ色相の斑の少なくものであった。実施例7〜12で示すフィルム中のエチレン2、6−カルボキシレート成分の割合が80%以上である本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、実施例1〜6よりもさらに反射率が高く、フィルム厚み斑が少なく、かつ色相の斑の少なくものであった。
【0056】
比較例1と7に示す二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、反射ピークをもたないフィルムであった。比較例2〜4、8〜10で示す二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、製膜方向(縦方向・MD)または幅方向(横方向・TD)において厚みの斑が大きく、色相の斑の目立つものであった。比較例5と11で示す二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、色相の斑は小さいものの反射率が低く、発色の乏しいフィルムであった。比較例6、12〜14で示す二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、縦方向(MD)または横方向(TD)において厚みの斑が大きく、色相の斑の目立つものであり、かつ層間の剥離のしやすいフィルムであった。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【発明の効果】
本発明の2軸延伸多層積層フィルムは、構造的な発色により玉虫色に見えるなど優れた意匠性を有するだけでなく、優れた層間の密着性および高度の破断強度を有することから、その工業的価値は高い。特に本発明の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルムは、色相の斑が少ないため、装飾性だけでなく、均一な色相の求められる包装材料をはじめ、極狭幅にスリットされた装飾性繊維やホログラムシールの代替用偽造防止フィルム、ひいては、ディスプレイのカラーフィルタなどに極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルムの光反射率特性例。
【図2】フィルム厚み斑の分布例。
【符号の説明】
1 最大反射率と反射率のベースラインの差
2 反射率のベースライン
Claims (6)
- 第1の層と第2の層とを総層数で11層以上になるよう交互に積層し、なおかつ二軸延伸を施した多層積層フィルムであって、いずれの層も厚みが0.05〜0.5μmであり、第1の層はポリエステル組成物から構成され、第2の層は第1の層を構成するものとは組成を異にするポリエステル組成物から構成され、波長350〜2000nmの範囲での光の最大反射率は、波長350〜2000nmの範囲での光反射率曲線から得られる反射率のベースラインよりも20%以上高く、フィルムの厚み形状については、厚みの最大値と最小値の差が、連続製膜方向では長さ5mごとの範囲内および幅方向では全幅範囲内において、いずれも3μm以下、隣接する厚みの山と谷との厚み差は、連続製膜方向と幅方向のいずれにおいても1μm以下、隣接する厚みの山と谷とのフィルム面内における間隔は、連続製膜方向と幅方向のいずれにおいても10mm以上であり、多層積層フィルムを構成するポリエステルにおけるエチレンテレフタレート成分の割合が、ポリエステルの全繰返し単位を基準として、80モル%以上であり、多層積層フィルムは、示差走査熱量測定法によって示される融点が2つ以上存在し、その融点差が5℃以上異なり、示差走査熱量測定法によって示される結晶化ピークが100〜190℃の範囲にあり、多層積層フィルムの第1の層を構成するポリエステルが、結晶性ポリエステルであり、全繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート成分であり、第2の層を構成するポリエステルが、結晶性ポリエステルであり、全繰返し単位の75〜97モル%がエチレンテレフタレート成分であることを特徴とする二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム。
- 全繰返し単位の1.5〜20モル%がイソフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分であることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム。
- 光の反射率のピークが波長380〜780nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム。
- リボンや包装用の装飾フィルムとして用いられることを特徴とする請求項1記載の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム。
- 偽造防止用シールのホログラム代替用基材フィルムとして用いられることを特徴とする請求項1記載の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム。
- 1mm幅以下にマイクロスリットされて、装飾用金銀糸として用いられることを特徴とする請求項1記載の二軸延伸多層積層ポリエステルフィルム。
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