JP5722711B2 - 二軸延伸多層積層フィルム - Google Patents
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Description
a) 少なくとも1方向の100℃におけるフィルム破断応力が70MPa以下であること。
b) 波長350〜1000nmにおいて少なくとも100nmの波長帯の平均反射率が50%以上であること。
さらに、上記のいずれかのに記載の二軸延伸多層積層フィルムを成形加工してなる成形体も提供される。
[積層構造]
本発明の二軸延伸多層積層フィルムに含まれる積層構造は、2軸配向性(面配向性)の第1の層と、無配向性の第2の層とが、交互に合計51層以上積層された構造である必要があり、かくすることにより、光学干渉による構造的な発色・反射特性が優れたものになり、優れた意匠性を呈する各種成形加工体を提供することができる。第1の層が無配向性もしくは1軸配向性、または第2の層が配向性であると、第1の層に後述するポリエステルを用いても両層の屈折率差を十分なものとすることが難しくなり、光学干渉特性が低下するだけでなく、成形加工性が低下する場合もある。
積層構造部分の第1の層の厚みと第2の層の厚みは、それぞれの層の厚みがいずれも0.05〜0.3μmであることが好ましい。各層の厚みが下限に満たないかまたは上限を超えると、光学干渉による構造的な発色や反射特性が十分でないことがある。各層の厚みがこの範囲内であれば、厚みが一定でも、厚みが徐々に変化するものであってもよい。厚みが一定であれば特定波長の反射率を高くすることができ、一方厚みを徐々に変化するものであれば反射波長帯域を広げることができる。
本発明の二軸延伸多層積層フィルムを構成する第1の層は、ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%以下の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および50モル%以上95モル%以下の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分からなり、ジオール成分がエチレングリコールからなる共重合ポリエステルからなる。
また、ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合が下限未満であると十分な屈折率が得られず、優れた反射特性が得られない。
本発明における第2の層は、無配向性で共重合量が5〜30モル%の共重合ポリエチレンテレフタレートからなる。好ましく用いられる共重合成分としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸といった脂環族ジカルボン酸等の酸成分、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールといった脂環族ジオール等のグリコール成分を好ましく挙げることができる。なかでも、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特にイソフタル酸が好ましい。共重合量の下限は好ましくは7モル%以上、より好ましくは10モル%以上である。
第2層を構成する共重合ポリエチレンテレフタレートも、第1層を構成するポリエステルと同じく、例えばフィルムにする段階で2種以上のポリエステルを溶融混練してエステル交換させたものであってもよい。
上記の第1の層および第2の層に用いられるポリエステルの固有粘度は、少なくとも0.40dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.50dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が高いほど得られる多層積層フィルムの機械的特性が高まり、最終的に得られる成形加工体の機械的特性が良好なものとなる。一方、ポリエステルの固有粘度の上限は製造可能な範囲であれば特に制限されないが、一般的には高々1.0dl/gである。固有粘度が高すぎると、溶融押出が困難で、生産性が悪くなることがある。一方固有粘度が低すぎると、製膜性が悪くなり、所望の反射特性が得られるほどの屈折率差をだすことが難しくなる。なお、固有粘度は、o−クロロフェノールを溶媒として用い、35℃で測定した値である。
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、巻取り性を向上させるため不活性微粒子(滑剤)を含有させることが好ましい。この場合、表層に保護層を設ける場合には保護層中に含有させることが好ましく、一方保護層を設けない場合には第1の層、第2の層のいずれに含有させてもよく、また両方に含有させてもよい。不活性微粒子は、例えば平均粒径0.01μm〜2μm、さらには0.05〜1μm、特に0.1〜0.3μmのものを用いるとよい。含有量は、含有させる層の重量を基準として、例えば0.001〜0.01重量%配合すればよい。不活性粒子の平均粒径が下限よりも小さいか、含有量が下限よりも少ない場合には、多層積層フィルムの巻取り性を向上させる効果が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の含有量が上限を超えるか、平均粒径が上限を超えると、粒子による多層積層フィルムの光学特性が悪くなる場合がある。
好ましく用いられる不活性粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子を挙げることができる。
平均粒径=測定粒子の面積円相当径の総和/測定粒子数
粒径比=粒子の平均長径/該粒子の平均短径
本発明の二軸延伸多層積層フィルムには、本発明の目的を損なわない範囲内で、その他の添加剤として、着色剤、色調調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をごく少量添加してもよい。
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、高い成形加工性を得る観点から、少なくとも1方向において100℃における破断強度が70MPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは60MPa以下、特に好ましくは50MPa以下である。100℃における破断強度が70MPaを超える場合には、得られる成形加工体表面にひび、割れなどが生じやすくなる。
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、波長350〜1200nmにおいて少なくとも100nmの波長帯域内での平均反射率が50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは80%以上である。平均反射率が50%未満であると多層積層フィルムの構造的な反射性能を十分に発揮できない場合がある。
反射帯域は用途によって異なる。例えば、加飾用途の場合には可視光領域(380〜750nm)の光を反射させることが好ましいので、少なくとも380〜750nmの波長帯域内での反射率が50%以上であることが好ましい。さらには、反射率が50%以上の波長範囲を350〜1000nmとすることにより、成形後のフィルム厚みの増加または減少による反射波長の高波長側シフトまたは低波長側シフトが起きても、可視光領域を反射させることができるので特に好ましい。
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、DSC(示差走査熱量計、昇温速度20℃/min)では第1層に対応する融点のみが存在することがより好ましい。すなわち、第1の層は延伸および熱処理によって十分結晶化し、第2の層はDSCの測定に結晶化ピークと融点ピークが存在しない非晶性であることがより好ましい。結晶化ピークが存在する場合には、第1の層の結晶化が不十分、または、多層積層フィルムの成形加工時に第2の層が結晶化しやすくなることになり、層間の屈折率差が小さくなるため反射特性が低下する場合がある。
第2の層のポリマーが結晶性である場合には、DSCでは第1層および第2層に対応する融点が存在し、その融点差が5℃以上あることが好ましい。また、第2層は少なくとも部分的に溶融されていることから第2層に対応する結晶化ピークが存在することが好ましい。
本発明の二軸延伸多層積層フィルムは、第1の押出し機より供給された第1の層用の樹脂と、第2の押出し機より供給された第2の層用の樹脂とを、溶融状態で交互に少なくとも51層以上重ね合わせ、必要に応じて保護層を表層に設けて多層積層未延伸シートとする。これを回転するドラム上にキャストすることにより、未延伸多層積層フィルムとする。このようにして得られた未延伸多層積層フィルムを、製膜方向とそれに直交する幅方向の二軸方向(フィルム面に沿った方向)に、それぞれの方向に少なくとも2倍に延伸する。延伸温度は、第1の層に使用するポリエステルのガラス転移点の温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲とする。延伸の面積倍率は5〜50倍とすることが好ましい。延伸倍率が大きい程、第1の層および第2の層の個々の層における方向のバラツキが延伸による薄層化により小さくなり、光学干渉が面方向に均一になるので、延伸倍率はこの範囲で大きいことが好ましい。延伸方法は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれであってもよい。
なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製、DDV−01FP)を用い、測定温度範囲を30〜180℃、昇温速度を2℃/min、1Hzの条件で、得られた二軸延伸多層積層フィルムの内部損失tanδを測定した。tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
得られたフィルムサンプルを10mgずつサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/minの昇温速度で融点を測定した。
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUTS、製造元:ライヘルト社)で製膜方向と厚み方向に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察・撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、波長350nmから2000nmの範囲にわたり、アルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を測定した。得られたスペクトルのなかで最も反射率が高い波長範囲を100nm選択し、その範囲における反射率を平均して平均反射率とした。
製膜方向の破断強度は、サンプルフィルムを試料幅(フィルム幅方向,MD方向)10mm、長さ(フィルム製膜方向,TD方向)150mmに切り出し、チャック間100mm、引張速度100mm/min、チャート速度500m/minの条件で外部環境を100℃に保持した状態で、インストロンタイプの万能引張試験装置にてサンプルを引張り、得られた荷重−伸び曲線から破断強度を測定した。また、幅方向の破断強度も、製膜方向の破断強度の測定と同様に行った。
加熱プラグを有したPTP(Push Through Package)成形機にて、フィルムを80℃にてプレス成形して、長さ20mm、幅10mm、深さ10mmのポケットを10mm間隔で付与したパック用フィルムを作成した。下記の基準で評価した。
○:ポケットの形状は金型通りであり、ポケット間のフィルムにしわの発生もない
△:ポケットの形状は金型通りであるが、ポケット間のフィルムに若干のしわの発生がある。
×:ポケットのしわがあり、また形状も金型通りでないものがある。さらにポケット間のフィルムにしわの発生が多い。
第1層のポリエステルとして固有粘度0.62dl/gで、酸成分の30モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の70モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル(以下「ENA70PEN」という)と固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下「PEN」という)を重量比で1:9でブレンドしたもの(以下「ENA5PEN」という)を、第2層のポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA12PET」という)をそれぞれ準備した。
そして、第1の層のポリエステルを170℃で5時間、第2層のポリエステルを160℃で3時間乾燥後、押出機に供給し、ENA5PENは300℃、IA12PETは280℃まで加熱して溶融状態とし、第1の層のポリエステルを71層、第2の層のポリエステルを70層に分岐させた後、第1の層と第2の層とを交互に積層する多層フィードブロック装置を使用して積層し、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして、未延伸多層積層フィルムを作成した。この際、厚み方向に各層の厚みが次第に厚くなるように第1の層と第2の層とを交互に積層した。このとき第1の層のポリエステルと第2の層のポリエステルの押出し量が60:40になるように調整し、かつ交互積層体の両面に両方の層の合計の割合がフィルム全厚みの20%となるように第1層のポリエステルからなる保護層を積層した。
この未延伸多層積層フィルムを150℃の温度で製膜方向に3.0倍延伸し、さらに155℃の温度で幅方向に3.0倍に延伸し、240℃で3秒間熱固定処理を行った。得られた二軸延伸多層積層フィルムの物性を表3に示す。
第1層のポリエステルとしてENA70PENとPENを重量比4:6でブレンド(以下「ENA21PEN」という)した以外は実施例1と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
第1層のポリエステルとしてENA70PENとPENを重量比7:3でブレンド(以下「ENA43PEN」という)した以外は実施例1と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
第1の層のポリエステルを416層、第2の層のポリエステルを415層に積層させた以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
第1の層のポリエステルを27層、第2の層のポリエステルを26層に積層させた以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
第2層のポリエステルとしてイソフタル酸を30mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA30PET」という)を使用した以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
第2層のポリエステルとしてイソフタル酸を6mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA6PET」という)を使用し、熱固定温度を245℃とした以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
第1層のポリエステルとしてPENを使用した以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
第1層のポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.64のポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)を使用し、熱固定温度を230℃とした以外は実施例2と同様にして多層積層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表3に示す。
第1層のポリエステルとしてENA70PENを使用した。実施例1と同様の製造条件で延伸を行ったところ延伸できなかった。
Claims (4)
- 第1の層と第2の層とが交互に合計51層以上積層された構造を含む二軸延伸多層積層フィルムであって、該第1の層は、ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%以下の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および50モル%以上95モル%以下の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分からなり、ジオール成分がエチレングリコールからなるポリエステルからなり、該第2の層は無配向性で共重合量が7〜30モル%の共重合ポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする二軸延伸多層積層フィルム。
- 少なくとも1方向の100℃におけるフィルム破断応力が70MPa以下である請求項1に記載の多層積層フィルム。
- 波長350〜1000nmにおいて少なくとも100nmの波長帯の平均反射率が50%以上である請求項1〜2のいずれかに記載の多層積層フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の多層積層フィルムを成形加工してなる成形体。
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