JP5807466B2 - 積層フィルムおよびそれを用いた自動車用窓ガラス - Google Patents

積層フィルムおよびそれを用いた自動車用窓ガラス Download PDF

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Description

本発明は、積層フィルムに関し、自動車や電車、建物の窓ガラスに用いた場合、太陽光による内部温度の上昇を抑制できる積層フィルムに関するものであり、詳しくは、ガラス、中間膜、積層フィルムを合わせガラス化した時にしわや剥離の生じない積層フィルムに関するものである。
近年、環境保護による二酸化炭素排出規制を受けて、夏場の外部、特に太陽光による熱の流入を抑制できる熱線カットガラスが自動車や電車などの乗り物、建物の窓ガラスとして注目されている。
このような熱線カットガラスの一例として、ガラス中や合わせガラスに用いられる中間膜中に熱線吸収材を含有させ、熱線を熱線吸収材にて遮断するもの(たとえば、特許文献1)、金属膜をガラス表面上にスパッタなどにより形成し熱線を反射させて遮断するもの、(たとえば特許文献2)屈折率の異なるポリマーが交互に積層されたポリマー多層積層フィルムをガラス及び中間膜の間に挿入して熱線を反射させて遮断するもの(たとえば特許文献3)などがある。この中で、熱線吸収材を用いる方法では、外部から入射される太陽光を熱エネルギーに変換するためその熱が室内へと放射されて熱線カット効率が低下する問題がある。加えて、熱線を吸収することで部分的にガラス温度が上昇し、外気温との差によりガラス本体が破損する場合もある。また、金属膜をガラス表面上にスパッタなどにより形成する方法では、熱線のみではなく可視光も反射するために着色しやすく、かつ電磁波も遮蔽するために内部で通信機器などが使用できない場合もある。
一方、ポリマー多層積層フィルムは、その層厚みを制御して、反射する波長を選択的に選択できるため、近赤外領域の光を選択的に反射することができ、可視光線透過率を維持しつつ熱線カット性能を向上させることができる。また、金属など電波を遮断するものを含まないために、優れた電波透過性を保持したものとなる。
一方、ポリマー多層積層フィルムを合わせガラスする場合、オートクレーブを用いて高温高圧処理を行い、ガラスとフィルムをポリビニルブチラール(PVB)に代表される中間膜を介して密着させる方法が用いられている。このとき、用いるポリマー多層積層フィルムによっては高温高圧処理中にしわや剥離が生じて外観が損なわれることがある。この原因として、加工条件における中間膜とポリマー多層積層フィルムの熱収縮率の差に由来し、その熱収縮率を制御することが提案されているが(たとえば、特許文献4)、ガラス形状やポリマー多層積層フィルムの種類によっては完全に抑制できているわけではない。
特開2010−17854号公報 特許第3901911号公報 特許第4310312号公報 特開2010−180089号公報
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、合わせガラス化工程においてもしわや剥離がなく外観が良好であり、かつ優れた熱線カット性能を備えた積層フィルムを提供することを課題とする。
係る課題を解決するため、本発明は、異なる光学的性質を有する2種以上の熱可塑性樹脂が交互にそれぞれ50層以上積層された積層フィルムであって、かつ前記積層フィルムの波長400〜700nmでの平均反射率が15%以下であって、かつ波長900〜1200nmでの平均反射率が70%以上であって、フィルム面に平行な任意の一方向において100℃から150℃の範囲での熱機械分析にて計測される熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上であることを特徴とする積層フィルム、であることを本旨とする。
本発明によって、合わせガラス化工程において、中間膜との間の熱収縮挙動の差異を抑制できることでしわや剥離がなく外観が良好であり、かつ優れた熱線カット性能を備えた合わせガラスとなる積層フィルムを得ることができるようになる。
実施例1の積層フィルムの熱機械分析による温度−熱収縮率の関係を表す図である。
以下に本発明の実施の形態について述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる必要がある。熱可塑性樹脂は一般的に熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂と比べて安価であり、かつ公知の溶融押出により簡便かつ連続的にシート化することができることから、低コストで積層フィルムを得ることが可能となる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、少なくとも2つ以上の異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂が交互にそれぞれ50層以上積層されてなる必要がある。ここでいう異なる光学的性質とは、積層フィルムの面内で任意に選択される直交する2方向および該面に垂直な方向のいずれかにおいて、屈折率が0.01以上異なることをいう。また、ここでいう交互に積層されてなるとは、異なる樹脂からなる層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいい、たとえば異なる光学的性質を有する2つの熱可塑性樹脂A、Bからなる場合、各々の層をA層,B層と表現すれば、A(BA)n(nは自然数)の規則的な配列で積層されたものである。このように光学的性質の異なる樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係より設計した波長の光を反射させることが出来る干渉反射を発現させることが可能となる。また、積層する層数が50層未満の場合には、赤外領域において十分な帯域に渡り高い反射率を得られず充分な熱線カット性能が得ることができない。好ましくは、400層以上であり、より好ましくは、800層以上である。前述の干渉反射は、層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになり、高い熱線カット性能を備えた積層フィルムが得られるようになる。また、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化が生じ、特にフィルム厚みが厚くなることでは合わせガラス化の工程での工程不良の原因ともなりうるために、現実的には10000層程度が実用範囲となる。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリアセタールなどの鎖状ポリオレフィン、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボーネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。この中で、強度・耐熱性・透明性および汎用性の観点から、特にポリエステルを用いることがより好ましい。これらは、共重合体であっても、混合物であってもよい。
このポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い屈折率を発現するテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂が、例えば、上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂のうち、少なくとも2つの熱可塑性樹脂からなる各層の面内平均屈折率の差が0.03以上であることが好ましい。より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上0.15以下である。面内平均屈折率の差が0.03より小さい場合には、十分な反射率が得られないために熱線カット性能が不足する場合がある。この達成方法としては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂が結晶性であり、かつ少なくとも一つの熱可塑性樹脂が非晶性もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂の混合物であることである。この場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において容易に屈折率差を設けることが可能となる。
本発明の積層フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のSP値(溶解性パラメータともいう)の差の絶対値が、1.0以下であることが第一に好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなる。より好ましくは、異なる光学的性質を有するポリマーは同一の基本骨格を供えた組み合わせからなることが好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、たとえば、一方の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、高精度な積層構造が実現しやすい観点から、ポリエチレンテレフタレートと同一の基本骨格であるエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂が同一の基本骨格を含む樹脂であると、積層精度が高く、さらに積層界面での層間剥離が生じにくくなるものである。
また、本発明の積層フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のガラス転移温度差が20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度の差が20℃より大きい場合には積層フィルムを製膜する際の厚み均一性が不良となり、熱線カット性能にばらつきが生じる原因となる。また、積層フィルムを成形する際にも、過延伸が発生するなどの問題が生じやすいためである。
上記の条件を満たすための樹脂の組合せの一例として、本発明の積層フィルムでは、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がスピログリコールを含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールを含んでなるポリエステルとは、スピログリコールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。スピログリコールを含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さく、接着性にも優れるため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
また、本発明の積層フィルムにおいては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり単一の組成であっても少量の他の繰り返し単位が共重合され、あるいは、少量の他のポリエステル樹脂がブレンドされたものであって良く、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルであることが好ましい。シクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルとは、シクロヘキサンジメタノールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。シクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になることがなりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体である。このようにすることにより、高い反射性能を有しながら、特に加熱や経時による光学的特性の変化が小さく、層間での剥離も生じにくくなる。シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体は、ポリエチレンテレフタレートと非常に強く接着する。また、そのシクロヘキサンジメタノール基は幾何異性体としてシス体あるいはトランス体があり、また配座異性体としてイス型あるいはボート型もあるので、ポリエチレンテレフタレートと共延伸しても配向結晶化しにくく、高反射率で、熱履歴による光学特性の変化もさらに少なく、製膜時のやぶれも生じにくいものである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂の少なくとも1種の熱可塑性樹脂は結晶性ポリエステル(以下結晶性ポリエステルAと記載する)であり、少なくとも1種の熱可塑性樹脂は非晶性ポリエステル(以下非晶性ポリエステルBと記載する)と結晶性ポリエステル(以下結晶性ポリエステルBと記載する)からなるポリエステル樹脂であることも好ましい。ここでいう結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)において、融解熱量が20J/g以上であることをいう。一方、非晶性とは、同様に融解熱量が5J/g以下であることをいう。このような樹脂の組み合わせの場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において容易に屈折率差を設けることが容易になることに加えて、非晶性ポリエステルBに含まれる結晶性ポリエステルBの融点以下の熱処理温度にて熱処理を施すことにより、非晶性ポリエステルB中の結晶性ポリエステルBの配向状態を制御し、熱収縮の大きさを高めることが可能となる。同様の方法として結晶性ポリエステルよりも融点の低い結晶性または半結晶性ポリエステル(誘拐熱量が5J/gより大きく、20J/gより小さいポリエステルをいう)を用いることも可能であるが、熱処理温度による樹脂の融解の程度を制御することが難しい。たとえば、熱処理温度がわずかに低い場合には樹脂の融解が十分でないために熱収縮の大きさを高めることはできるものの、屈折率を十分に低下させることができず、結晶精ポリエステルAとの屈折率差を十分に付与できない場合がある。一方で、熱処理温度がわずかに高い場合には、樹脂の融解は十分に生じるために十分な結晶性ポリエステルAとの屈折率差を付与できるものの、樹脂の配向の緩和に伴い、熱収縮の大きさを高めることが難しい場合がある。また、結晶性ポリエステルAからなる層についても、熱処理温度により熱収縮の大きさの程度が異なるものであるが、上記のとおり結晶性ポリエステルまたは半結晶性ポリエステルからなる樹脂を用いた場合には、十分な反射性能を付与するためにも結晶性または半結晶性ポリエステルの融解挙動に適した熱処理温度を選択せざる得ず、結晶性ポリエステルAに由来する熱収縮の大きさも十分に高めることができない場合がある。このように、本発明の積層フィルムのように積層された2種の樹脂の屈折率差により反射を誘起する場合、十分な屈折率差を付与しつつ熱収縮の大きさを高めることは難しい場合が多い。
一方、非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBを混合して用いる場合には、非晶性ポリエステルB中に結晶性ポリエステルBが微分散したアロイ状態を形成する。ここでいうアロイ状態とは、混合した非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBとが完全に相溶していない状態をさし、例えば、フィルムの断面観察において、10nm以上の非晶性もしくは結晶性ポリエステルのドメインを確認できたり、DSC測定において、非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBに由来するガラス転移や結晶化・融解ピークを観測できるような状態を指す。このようにアロイ状態を形成することで、延伸工程で配向が生じにくくガラス転移温度以上で配向が緩和する非晶性ポリエステルBは、熱処理温度によらず非晶性の状態を保持するため結晶性ポリエステルAとの十分な屈折率差を付与できる。また、アロイ状態を形成する結晶性ポリエステルBは延伸工程で設けられた配向が融点近傍まで保持され、この配向状態の制御により熱収縮を大きくすることができるようになる。このように非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBがアロイ状態を形成している場合、結晶性ポリエステルBの配向状態を制御するのに適した熱処理温度を選択することで、結晶性ポリエステルAとの十分な屈折率差を維持しつつ、熱収縮の大きさを制御することが可能となる。結晶性ポリエステルAの熱収縮の大きさを制御できることも同様である。好ましくは、非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBにおいて、非晶性ポリエステルBの割合が60%以上90%以下であることが好ましい。非晶性ポリエステルBの割合が結晶性ポリエステルBの割合より多くなることで、屈折率差や熱収縮挙動の制御が容易になる一方で、非晶性ポリエステルBの割合が90%以下、すなわち結晶性ポリエステルBの割合が10%以上であることにより、結晶性ポリエステルBによる配向の制御も容易となる。また、非晶性ポリエステルB中の結晶性ポリエステルBのアロイ状態のドメインの大きさは100nm以下であることが好ましい。非晶状態のポリエステルと結晶状態のポリエステルとは屈折率が異なるため、ドメインの大きさが100nmよりも大きくなるにしたがい、ドメイン界面での光の散乱が生じ、ヘイズが上昇する可能性がある。非晶性ポリエステルB中の結晶性ポリエステルBのアロイ状態のドメインの大きさは100nm以下であるには、ヘイズを上昇させることなく、ポリエステルAとの屈折率差や熱収縮の大きさのみを制御できるものである。
本発明の積層フィルムにおいては、波長400〜700nmでの平均反射率が15%以以下である必要がある。波長400〜700nmの帯域での反射がある場合、反射光または透過光が着色するために、特に自動車のように高い透明性が求められる用途においては適応できなくなるものである。そこで、波長400〜700nmでの平均反射率が15%以下であることにより、可視光の反射に伴う反射光および透過光の着色を抑制でき、高い透明性が求められる用途に好適なフィルムとなるものである。好ましくは波長400〜700nmでの平均反射率が10%以下で、より好ましくは8%以下である。波長400〜700nmでの平均反射率が低下するほど、透明性の高いフィルムが得られるようになる。このようなフィルムは、すべての隣接する2種の熱可塑性樹脂からなる層の光学厚み(層厚み×屈折率)の比を1に高精度に制御したりや、表面にAR(反射防止)処理を施すことで得ることができる。
本発明の積層フィルムにおいては、波長900〜1200nmでの平均反射率が70%以上であることが必要である。太陽光は可視光領域に主に強度分布を備えており、波長が大きくなるにつれてその強度分布は小さくなる傾向にある。しかし、本発明の積層フィルムでは、高い透明性が求められる用途で使用するためには、可視光領域の太陽光を遮蔽することがほとんどできない。そこで、可視光領域よりもやや大きな波長900〜1200nm(全太陽光の強度の約18%)の光を効率的に反射することにより、高い熱線カット性能を付与することができるようにする必要がある。一方、波長900〜1200nmでの平均反射率が70%未満の場合、その熱線カット性能が十分でなくなるため好ましくない。好ましくは、波長900〜1200nmでの平均反射率が80%以上であり、より好ましくは波長900〜1200nmでの平均反射率が90%以上である。波長900〜1200nmでの平均反射率が大きくなるに従い、高い熱線カット性能を付与することが可能となる。このようなフィルムは、光学特性の異なる2種以上の樹脂の面内屈折率の差を大きくすることが求められ、そのため、結晶性である熱可塑性樹脂からなる樹脂からなる層と、延伸時に非晶性を保持もしくは熱処理工程で融解される熱可塑性樹脂からなる層が交互に積層された積層フィルムとすればよい。
本発明の積層フィルムの層厚みは、特に熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)と熱可塑性樹脂Aとは異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)が交互に積層されてなる場合には、下記式1に従い反射率が決定される。通常、本目的で使用される積層フィルムにおいては、下記式2にて規定される光学厚みの比kが1となるように設計することにより、波長900〜1200nmの光を反射するように設計された積層フィルムからの2次の反射を抑制している。好ましくは、光学厚みが大きい層が非晶性の熱可塑性樹脂からなることである。この場合、高い熱線カット性能を付与しつつも、合わせガラス工程で窓ガラスの曲面部で生じる延伸時の応力を抑制することができ、合わせガラス工程での成型不良を抑制することが可能となる。
2×(na・da+nb・db)=λ 式1
|(na・da)/(nb・db)|=k 式2
na:A層の面内平均屈折率
nb:B層の面内平均屈折率
da:A層の層厚み(nm)
db:B層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
k:光学厚みの比
本発明の積層フィルムにおいては、フィルム面に平行な任意の一方向において100℃から150℃の範囲での熱機械分析にて計測される熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上であるが必要である。望ましくは、長手方向およびそれに直交する方向の何れかにおける100℃から150℃の範囲での熱機械分析にて計測される熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上である。ここでいう熱機械分析とは、物質の温度を調節されたプログラムに従って変化させながら、非振動的な荷重を加えてその物質の変形を温度の関数として測定する方法をさし、市販の熱機械分析装置にて計測されるものである。また、熱収縮率とは、下記式3にて定義されるものである。一般的に測定される熱収縮率とは、サンプル長を室温近傍で計測するため、実際には昇温過程のみでなく降温過程での寸法変化も反映しており、実際の合わせガラス化工程を厳密に反映できていない。しかし、熱機械分析では、実際の合わせガラス化工程を再現できるようになるため、より的確に合わせガラス化に適したフィルムを得られるものである。また、ここでいう熱収縮率の平均変化率とは、100℃と150℃の熱収縮率の差を温度差で除したものである。本発明者らは、中間膜の熱収縮が最も生じるのは、合わせガラス化工程が行われる100〜150℃の範囲であり、特に、中間膜の収縮挙動に合わせて温度変化に対する熱収縮率の変化の程度が大きくなるに従いしわや剥離を抑制し、外観の良好な合わせガラスを得ることに重要であることを見出したものである。ここで、熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃未満である場合には、熱収縮率の温度による変化が小さいために、温度上昇時の中間膜の熱収縮率の変化に追従することができず、しわが生じる原因となる。一方、熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上であれば、温度上昇時の中間膜の熱収縮率の変化に十分追従でき、しわのない外観の良好なフィルムを得ることができるようになる。好ましくは、熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上0.10%/℃未満であり、より好ましくは、0.01%以上0.05%未満である。この場合、積層フィルムの熱収縮の挙動がある程度で抑えられるために、中間膜との熱収縮挙動の差異が小さくなり、しわに加えて剥離も抑制できるようになるものである。また、長手方向およびそれに直交する方向のいずれにおいても100℃から150℃の範囲での熱機械分析にて計測される熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上であることも好ましい。この場合、等方的に熱収縮率に変化を生じるため、中間膜の熱収縮率の変化により適当に追従できるようになり、しわや剥離の発生もほぼ抑制できるようになる。このような積層フィルムを得るためには、後述する製膜条件の調整の調整により達成することができるものである。また、樹脂としても、用いる熱可塑性樹脂の少なくとも一つは結晶性の熱可塑性樹脂であるととともに、少なくとも一つは非晶性の熱可塑性樹脂もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂からなることにより、熱収縮を容易に誘起させることが可能となる。
熱収縮率(T℃)=(L(25℃)−L(T℃))/L(25℃)×100 式3
L(T℃):T℃におけるサンプル長
本発明の積層フィルムにおいては、長手方向およびそれに直交する方向のいずれかにおいて、積層フィルムの150℃での熱機械分析にて計測される熱収縮率が0.3%以上3%以下であることが好ましい。合わせガラス化工程は100〜150℃の範囲において行われるが、その際、中間膜と積層フィルムとの熱収縮率の差によりしわや剥離が生じ、外観が損なわれる。特に、中間膜は熱収縮性が大きく、積層フィルムの150℃における熱収縮率が0.3%未満である場合、中間膜の熱収縮に積層フィルムが追従できないため、合わせガラス化工程において熱収縮率の差により積層フィルムがたわみ、しわが生じる原因となる場合がある。一方、積層フィルムの150℃における熱収縮率が3%よりも大きい場合、中間膜の熱収縮よりも大きな熱収縮が生じるために、積層フィルムと中間膜との間で大きな張力が働くこととなり、積層フィルムが破断したり一部の層が剥離したりすることがある。積層フィルムの熱収縮率が0.3%以上3%以下の場合には、中間膜と同様な熱収縮挙動を示すようになるため、しわや剥離が生じることなく外観の良好な合わせガラスを得ることが可能となる。好ましくは、長手方向およびそれに直交する方向のいずれにおいても、積層フィルムの150℃での熱機械分析にて計測される熱収縮率が0.3%以上3%以下である。長手方向およびそれに直交する方向で同様の挙動をとることにより、特に曲面状の合わせガラスにおいても、しわや剥離がなく外観の良好な合わせガラスを得やすくなる。このような積層フィルムを得るためには、後述する製膜条件の調整の調整により達成することができるものである。また、樹脂としても、用いる熱可塑性樹脂の少なくとも一つは結晶性の熱可塑性樹脂であるととともに、少なくとも一つは非晶性の熱可塑性樹脂もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂からなることにより、熱収縮を容易に誘起させることが可能となる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、長手方向およびそれに直交する方向のいずれかにおいて、積層フィルムの25℃から100℃における熱機械分析にて計測される熱収縮率が−0.5%以上0.5%以下であることが好ましい。合わせガラス化工程は100〜150℃の範囲で行われるが、100℃以下の温度領域では、中間膜の熱収縮挙動も小さいものである。そのため、積層フィルムの25℃から100℃の範囲での熱収縮率が−0.5%よりも小さい場合や0.5%よりも大きい場合には、合わせガラス化前の昇温過程において、中間膜との熱収縮性(膨張性)の違いのために積層フィルムにしわやズレが生じて外観が損なわれる場合がある。積層フィルムの25℃から100℃における熱機械分析にて計測される熱収縮率が−0.5%以上0.5%以下である場合には、中間膜との熱収縮性(膨張性)の違いが小さく、しわやフィルムのズレのない外観の良好な合わせガラスを得ることが可能となる。より好ましくは、長手方向およびそれに直交する方向のいずれにおいても、積層フィルムの25℃から100℃における熱機械分析にて計測される熱収縮率が−0.5%以上0.5%以下であるである。この場合は昇温過程初期に生じる熱収縮性(膨張性)の違いに伴う積層フィルムのしわやズレをほぼ抑制することが可能となる。このような積層フィルムを得るためには、後述する製膜条件の調整により達成することができるものである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの長手方向およびそれに直交する方向の150℃での熱機械分析にて計測される熱収縮率の差が0.5%以下であることが好ましい。この場合、熱収縮が等方的に生じるため、同様に等方的な熱収縮挙動を示す中間膜との熱収縮の差を抑制できるとともに、異方的な熱収縮に伴うズレやしわ、剥離を抑制する効果が顕著となる。
本発明の積層フィルムにおいては、長手方向およびそれに直交する方向において、積層フィルムの100℃から150℃の範囲での貯蔵弾性率が200MPa以上であることが好ましい。本発明者らは、しわや剥離が生じる原因の一つとして、フィルムの剛性の大きさが重要であることを見出したものである。特に、本発明の多層積層フィルムにおいては、積層された層毎でも剛性が異なり、そのためしわに加えて積層フィルムの厚みや積層構造の局所的な乱れをも誘起してしまう場合がある。本発明者は、100℃から150℃の範囲での貯蔵弾性率が200MPa以上であれば、中間膜の熱収縮力に伴う積層フィルムの変形、しわやフィルム厚み、積層構造の局所的な乱れが生じることを抑制できることを見出したものであり、これは、中間膜との熱収縮力に対する変形性に加えて、中間膜の熱収縮の若干のムラに対する。好ましくは、長手方向およびそれに直交する方向において、積層フィルムの100℃から150℃の範囲での貯蔵弾性率が200MPa以上1GPa以下であり、この場合、曲面状のガラス面に対して容易に追従して変形させることが可能となる。このような積層フィルムを得るためには、用いる熱可塑性樹脂の選択に加えて、結晶性樹脂からなる層の比率を高めることや、用いる熱可塑性樹脂の少なくとも一つは結晶性の熱可塑性樹脂であるととともに、少なくとも一つは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂からなるによっても達成することが可能となる。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を熱可塑性樹脂A,Bからなる積層フィルムを例にとり以下に説明する。もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるわけではない。また、積層フィルムの積層構造の形成自体は、特開2007−307893号公報の〔0053〕〜〔0063〕段に記載を参考とすれば実現できるものである。
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ここで、非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルとをアロイ状とするためには、事前に2軸押出機などで混練したペレットを準備することが好ましい。ここで、結晶性ポリエステルBの分散状態を制御は、2軸押出機のスクリューの選択、吐出量とスクリューの回転数、混練温度などを制御することで可能であり、さらには、ポリエステルエラストマーのような相溶化剤などを添加することによっても分散状態を制御できる。このように事前に2軸押出機などで混練したペレットを準備することにより、非晶性ポリエステル中の結晶性ポリエステルBの分散状態やドメインサイズを制御できるようになる。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
また、複数の熱可塑性樹脂からなる多層積層フィルムを作製する場合には、複数の樹脂を2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出し、多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となったものである。
このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、上述と同様にキャスティングフィルムが得られる。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、必要に応じて二軸延伸することが好ましい。ここで、二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。特に本発明では、面内の配向差を抑制できる点や、表面傷を抑制する点、熱収縮挙動や貯蔵弾性率などの機械特性を等方化する観点から、同時二軸延伸を用いることが好ましい。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。熱処理を行うことにより、成形用フィルムの寸法安定性が向上する。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
ここで、本発明の積層フィルムの製造においては、長手方向およびそれに直交する方向のいずれかにおける100℃から150℃の範囲での熱機械分析にて計測される熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上とするためには、縦延伸倍率と縦延伸温度によって長手方向の配向を強めることが好ましい。たとえば、熱可塑性樹脂の一つとしてPETフィルムを用いた場合には、縦延伸温度は90℃以下もしくは縦延伸倍率を3.5倍以上とすることにより、所望する積層フィルムが得られやすくなる。同様に、横延伸温度と横延伸倍率によって長手方向に直交する方向の配向を強めることも好ましい。たとえば、熱可塑性樹脂の一つとしてPETフィルムを用いた場合には、横延伸温度を110℃以下もしくは横延伸倍率を3.8倍以上とすることにより、所望する積層フィルムが得られやすくなる。また、積層フィルムの熱収縮挙動の長手方向およびそれに直交する方向での差を抑制するために、縦延伸条件と横延伸条件を調整することが望ましい。具体的には、縦延伸倍率と横延伸倍率の差を0.3倍以下とすることや、縦延伸温度と横延伸温度の温度差を20℃以上設けることによって熱収縮挙動を等方化しやすくなるものである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、延伸後の熱処理温度を少なくとも一つの熱可塑性樹脂の融点以下であり、かつ残る熱可塑性樹脂の少なくとも一つの融点以上とすることが好ましい。この場合、一方の熱可塑性樹脂は高い配向状態を保持する一方、他方の熱可塑性樹脂の配向は緩和されるために、容易にこれらの樹脂の屈折率差を設けることができることに加えて、かつ配向を保持した熱可塑性樹脂により高い熱収縮挙動を付与することが可能となる。また、少なくとも1種の熱可塑性樹脂は結晶性ポリエステルAであり、少なくとも1種の熱可塑性樹脂は非晶性ポリエステルBと結晶性ポリエステルBからなるポリエステル樹脂である場合、熱処理温度としては、結晶性ポリエステルAおよび結晶性ポリエステルB以下であることがこのましい。この場合、結晶性ポリエステルAの配向に加えて結晶性ポリエステルBの配向も保持されるため、より高い熱収縮挙動を付与できるようになる。
また、上記の弛緩処理は熱収縮挙動を抑制するために実施されるものであるため、本発明の積層フィルムにおいては、弛緩処理を施さないこともまた好ましく、好ましい弛緩処理の程度は、弛緩処理前のフィルム幅に対する弛緩処理の割合が0%以上5%以下である。積層される熱可塑性樹脂の種類にもよるが、たとえばポリエチレンテレフタレートと熱処理工程において完全に融解される非晶性ポリエステルであれば、弛緩処理前のフィルム幅に対する弛緩処理の割合は0%から1%程度の範囲で最も熱収縮挙動が良好な積層フィルムを得ることが可能となる。
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
ここで、本発明の積層フィルムの製造においては、長手方向およびそれに直交する方向のいずれかにおける100℃から150℃の範囲での熱機械分析にて計測される熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上とするためには、縦延伸倍率と縦延伸温度によって長手方向の配向を強めることが好ましい。たとえば、熱可塑性樹脂の一つとしてPETフィルムを用いた場合には、延伸温度は90℃以下もしくは縦延伸倍率または横延伸倍率を3.5倍以上とすることにより、所望する積層フィルムが得られやすくなる。また、積層フィルムの熱収縮挙動の長手方向およびそれに直交する方向での差を抑制するために、縦延伸倍率と横延伸倍率の差を0.3倍以下とすることによって熱収縮挙動を等方化しやすくなるものである。好ましい熱処理・弛緩処理の条件については、上述の逐次2軸延伸の場合と同様である。
次に、得られた積層フィルムの合わせガラス化工程の一例を以下に説明する。ガラスに適したサイズにカット合わせガラスとし、一方のガラス上に、中間膜として用いる樹脂フィルム、カットした積層フィルム、樹脂フィルム、他方のガラスを配置したのり、120℃雰囲気下で1時間程度加熱して仮圧着する。続いて、140℃、1.5MPaまで加圧、加熱した状態で30分保持することに本接着し、合わせガラスを得るものである。ここで用いられる中間膜として、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルブリラールなどが主として用いられるが、特に限定されるものではない。加えて、本発明の積層フィルムを用いることにより、様々な熱収縮挙動の中間膜においても、しわや剥離のない外観の良好な合わせガラスを得ることが可能となる。また、ガラスは平面ガラスであって曲面ガラスであってもよいが、本発明の積層フィルムを用いることにより、特にRの大きい曲面ガラスにおいてもしわや剥離のない外観の良好な合わせガラスを得ることが可能となる。
このようにして得られた合わせガラスは、透明度が高く、熱線カット性に優れ、さらにしわや剥離のない外観の良好なものであるために、特に自動車や電車、建物などに用いる熱線カットガラスに好適なものである。
また、本発明の積層フィルムの熱線カット性能を向上させるために、積層フィルム上に熱線吸収層または反射層を設けることも好ましい。熱線吸収層を設ける場合には、易接着層やその他の樹脂に熱線吸収材を添加して上述のとおりインラインコーティングやオフラインでのコーティングを行う方法や、その他の熱線吸収性のフィルムとラミネートする方法などがある。熱線反射フィルムを設ける場合には、得られた積層フィルム上に金属層をスパッタなどにより設ける方法がある。これらの熱線吸収または反射層を設ける場合に、可視光の透過率が下がりすぎない厚みや濃度で設ける必要があるが、これらの層を設けることにより、より高い熱線カット性能を積層フィルムに付与することができる。
以下、本発明の積層フィルムの実施例を用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuOやOsOなどを使用した染色技術を用いた。
(2)反射率測定
サンプルをフィルム長手方向に直交する方向の中央部から5cm×5cmで切り出した。日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で反射率測定を行った。反射率測定では、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した。反射率測定では、サンプルの長手方向を垂直方向にして、積分球の後ろに設置した。測定条件:スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/min.で測定し、方位角0度における反射率Rを得た。
(3)熱可塑性樹脂A,Bの屈折率
JIS K7142(1996)A法に従って測定した。
(4)熱収縮率
セイコーインスツルメンツ社製の熱・応用・歪み測定装置(TMA/SS6000)を用いて以下の条件で測定した。各データは、少なくとも1℃につき1つ以上のデータが得られるようにして、各温度における熱収縮率を前記の式3を用いて算出した。得られた熱収縮率から熱収縮率の平均変化率も合わせて算出した。
試料サイズ:幅4mm、長さ15mm
昇温範囲:25〜200℃
昇温速度:10℃/分
測定荷重:19.8N
温度23℃、相対湿度65%、大気中
(5)貯蔵弾性率
貯蔵弾性率は、JIS−K7244(1999)に従って、セイコーインスツルメンツ社製の動的粘弾性測定装置(DMS6100)を用いて求めた。引張モード、駆動周波数は1Hz、チャック間距離は15mm、昇温速度は2℃/minの測定条件にて、各シートの粘弾性特性の温度依存性を測定した。
(6)熱可塑性樹脂A,Bの融解熱量
熱可塑性樹脂A、Bからサンプル質量5gを採取し、示差走査熱量分析計(DSC) セイコー電子工業(株)製ロボットDSC−RDC220を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って測定、算出した。測定は25℃から290℃まで5℃/minで昇温しこのときの融点±20℃の範囲におけるベースラインからの積分値を融解熱量とした。また、ここでの融点とは、DSCのベースラインからの差異が最大となる点とした。ここで、融解熱量が20J/g以上の樹脂を結晶性樹脂、5J/g以下である樹脂を非晶性樹脂とした。
(実施例1)
光学特性の異なる2種類の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂Aは固有粘度0.65、融点255℃のポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも表す、延伸・熱処理後のフィルムでの屈折率は約1.66)[東レ製F20S]を用い、非晶性の熱可塑性樹脂BはGN001(以下、CHDM共重合PET、屈折率1.575)[イーストマンケミカル製]を用いた。
このようにして準備した熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bは、それぞれ、ベント付き二軸押出機にて280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプおよびフィルターを介して、401層のフィードブロックにて合流させた。なお、両表層部分は熱可塑性樹脂Aとなるようにし、かつ隣接する熱可塑性樹脂Aからなる層Aと熱可塑性樹脂Bからなる層Bの層厚みは、ほぼ同じになるようにした。つづいて401層フィードブロックにて合流させ、T−ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。なお、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの重量比が約1になるように吐出量を調整し、隣接する層の厚み比が約1となるにようにした。
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.8倍延伸し、その後一旦冷却した。延伸時のフィルム温度は90℃であった。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.8倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に1%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、78μmであった。
得られたフィルムは900〜1200nmの光を反射しつつも高い透明性を保持しており、可視光領域の波長400〜700nmにおいてほぼ平坦な反射率分布を備えたものであった。
続いて、得られた積層フィルムをPVBフィルム(厚み0.4mm)の間に挿入し、300mm×300mm×2mmの透明板ガラスで挟み込んだ。このとき、ガラスから出ている余分な部分の積層フィルム、PVBフィルムを取り除いた。準備したフィルムーガラス積層体を120℃に加熱して1時間仮圧着した後に、140℃、1.5MPaの条件で30分間保持して本圧着し合わせガラスを得た。
得られた合わせガラスは、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。また、該積層フィルムの熱機械分析による温度−熱収縮率の関係を図1に示す。
参考例2)
延伸時のフィルム温度を95℃となるようにした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、実施例1とほぼ同様の熱線カット性能、透明性を備えたフィルムであったが、延伸時のフィルム温度の上昇にともない熱可塑性樹脂A(PET)の配向がやや弱くなっており、それを反映して100℃から150℃における熱収縮率の平均変化率が低下しているものであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
参考例3)
延伸時の縦延伸倍率を3.3倍とし、フィルム厚みを78μmとなるように製膜条件を調整した以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、縦延伸倍率が小さくなることにより熱可塑性樹脂A(PET)の配向ならびに屈折率の低下を反映して実施例1より若干熱線カット性能は低いものの、透明性を備えたフィルムであった。また縦延伸倍率が小さくなることにともない熱可塑性樹脂A(PET)の配向がやや弱くなっており、それを反映して100℃から150℃における熱収縮率の平均変化率が低下しているものであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
(実施例4)
フィルムの弛緩処理をせずに積層フィルムを採取した以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み77μmであり、実施例1とほぼ同様の熱線カット性能、透明性を備えたフィルムであり、フィルムの弛緩処理をしないことで熱可塑性樹脂A(PET)の特に長手方向に直交する方向での配向が強い状態で保持されるため、それを反映して100℃から150℃における熱収縮率の平均変化率が若干増加しているものであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
(実施例5)
フィルムの弛緩処理を3%とした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み79μmであり、実施例1とほぼ同様の熱線カット性能、透明性を備えたフィルムであったが、フィルムの弛緩処理を3%とすることで熱可塑性樹脂A(PET)の特に長手方向に直交する方向での配向が緩和されるため、それを反映して100℃から150℃における熱収縮率の平均変化率が低下しているものであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
参考例6)
延伸時の縦延伸倍率を3.3倍と、横延伸倍率を4.3倍とし、フィルム厚みを78μmとなるように製膜条件を調整した以外は、実施例4と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、実施例1とより高い熱線カット性能、透明性を備えたフィルムであったが、縦延伸倍率を小さく、横延伸倍率を大きくすることにで熱可塑性樹脂A(PET)の長手方法と配向が弱められ、長手方向に直交する方向た強められるため、長手方向とそれに直交する方向との配向状態に差異が生じ、それを反映して熱収縮挙動の長手方向およびそれに直交する方向の差が顕著なものであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわはないものの、末端の一部で剥離が生じていた。結果は表1に示す。
(実施例7)
熱可塑性樹脂Bとして固有粘度0.72で非晶性であるポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分20mol%、ブチレングリコール成分5mol%共重合したPETであり、以下SPG共重合PET1とも表す(屈折率1.549))を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、熱可塑性樹脂Bの屈折率の低下により熱可塑性樹脂Aとの屈折率差が大きくなることを反映して、実施例1よりも高い熱線カット性能、透明性を備えたフィルムであったが、貯蔵弾性率がやや低いものであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
(実施例8)
熱可塑性樹脂Bとして固有粘度0.72で非晶性であるポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分20mol%共重合したPETであり、以下SPG共重合PET2とも表す・屈折率1.550)を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、熱可塑性樹脂Bの屈折率の低下により熱可塑性樹脂Aとの屈折率差が大きくなることを反映して、実施例1よりも高い熱線カット性能、透明性を備えたフィルムであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
(実施例9)
熱可塑性樹脂Bとして、固有粘度0.72で非晶性であるポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分29mol%共重合したPETであり、以下SPG共重合PET3とも表す)と固有粘度0.65、PET樹脂と70:30の割合でブレンドして用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。ここで用いたブレンド体において観測される融点は、245℃であり、屈折率は1.550であった。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、熱可塑性樹脂Bの屈折率の低下により熱可塑性樹脂Aとの屈折率差が大きくなることを反映して、実施例1よりも高い熱線カット性能、透明性を備えたフィルムであった。また、実施例7の熱可塑性樹脂Bと同等の屈折率(1.550)を示すSPG共重合PET1を用いた実施例8と比較した場合、ほぼ同等の熱線カット性能を保持しつつ、熱可塑性樹脂BのSPG共重合PET3中にブレンドしたPET樹脂の配向により大きな熱収縮率の変化率を示すものであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
参考例10)
熱可塑性樹脂Bとして、固有粘度0.80で融点が210℃であるポリエチレンテレフタレートの共重合体(アジピン酸成分20mol%共重合したPETであり、以下PET/Aとも表す)を用いた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、熱可塑性樹脂Bとして用いたPET/Aの融点以上の温度で熱処理しているため熱可塑性樹脂Bはほぼ緩和しており、同等の屈折率(1.568)である非晶性樹脂を用いた実施例1と同様の熱線カット性能、熱収縮率となっていた。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
(実施例11)
熱処理温度を200℃とした以外は、実施例7と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、熱可塑性樹脂Bが非晶性ポリエステルからのみなる樹脂であるため、熱処理温度200℃と低下させた場合においても屈折率は240℃で熱処理した場合と変化せず、実施例7と同等の熱線カット性能、透明性を備えていた。一方熱処理温度を240℃から200℃と低下させたことにより、熱可塑性樹脂A(PET)の配向が強い状態で保持され、実施例7より高い熱収縮挙動を示すフィルムであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
参考例12)
熱処理温度を200℃とした以外は、実施例9と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、熱可塑性樹脂Bが非晶性ポリエステルからのみなる樹脂であるため、熱処理温度200℃と低下させた場合においても屈折率は240℃で熱処理した場合と変化せず、実施例9と同等の熱線カット性能、透明性を備えていた。一方熱処理温度を240℃から200℃と低下させたことにより、熱可塑性樹脂A(PET)の配向が強い状態で保持され、かつ熱可塑性樹脂B中に分散されたPET樹脂の配向が強められることにより、同等の条件にて製膜した実施例11よりもさらに高い熱収縮挙動を示すフィルムであった。また、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
(比較例1)
熱可塑性樹脂として、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート[東レ製F20S]を用いた。
このようにして準備した熱可塑性樹脂は、ベント付き二軸押出機にて280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプおよびフィルターを介して、T−ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。延伸時のフィルム温度は95℃であった。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.8倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に5%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、78μmであった。
続いて、得られた積層フィルムをPVBフィルム(厚み0.4mm)の間に挿入し、300mm×300mm×2mmの透明板ガラスで挟み込んだ。このとき、ガラスから出ている余分な部分の積層フィルム、PVBフィルムを取り除いた。準備したフィルムーガラス積層体を120℃に加熱して1時間仮圧着した後に、140℃、1.5MPaの条件で30分間保持して本圧着し合わせガラスを得た。
得られたフィルムは透明性は高いものの、熱線カット性能はほとんど示さないものであった。また、得られた合わせガラスは、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
(比較例2)
延伸時の縦延伸倍率を3.3倍、縦延伸時のフィルム温度を95℃、弛緩処理を5%とし、フィルム厚みを78μmとなるように製膜条件を調整した以外は、実施例7と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、実施例7とほぼ同様の熱線カット性能、透明性を備えたフィルムであった。しかし、得られた合わせガラスにおいては、しわが顕著であり、自動車などの透明度の求められる用途に用いるには不適当なフィルムであった。結果は表1に示す。
(比較例3)
熱処理温度を200℃とした以外は、実施例10と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであったが、熱可塑性樹脂Bの融点以下で熱処理を施したことにより熱可塑性樹脂Bの配向が緩和しておらず屈折率も高い状態でとなっており、実施例10とより大きな熱線カット性能の低下がみられることから熱線カットフィルムとしては不適当なものであった。一方で、高い熱収縮挙動を示すフィルムであり、得られた合わせガラスにおいては、しわや剥離などがなく、外観の良好なものであった。結果は表1に示す。
(比較例4)
熱処理温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは厚み78μmであり、透明性を備えたフィルムであった。しかし、熱処理温度が低いために熱可塑性樹脂Bの結晶化が十分に生じないことで熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの屈折率差が十分でなく、実施例1と比較すると熱線カット性能は低下していた。また、熱可塑性樹脂Aの結晶化が十分でないために熱収縮も非常に大きくなり、得られた合わせガラスにおいてはしわが顕著であり、自動車などの透明度の求められる用途に用いるには不適当なフィルムであった。結果は表1に示す。
Figure 0005807466
本発明は、太陽光などからもたらされる熱線をカットできる熱線カットフィルムに関するものである。さらに詳しくは、透過光の透明性を保持しつつ高い効率で熱線をカットできる熱線カットフィルムに関するものであり、自動車、電車、建物などの窓ガラス用途として好適なものである。

Claims (8)

  1. 異なる光学的性質を有する2種以上の熱可塑性樹脂が交互にそれぞれ50層以上積層された積層フィルムであって、前記異なる光学的性質を有する2種以上の熱可塑性樹脂のうち少なくとも一つの熱可塑性樹脂が結晶性ポリエステルであり、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がスピログリコールまたはシクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルであり、かつ前記積層フィルムの波長400〜700nmでの平均反射率が15%以下であって、かつ波長900〜1200nmでの平均反射率が80%以上であって、フィルム面に平行な任意の一方向において100℃から150℃の範囲での熱機械分析にて計測される熱収縮率の平均変化率が0.01%/℃以上0.05%/℃未満であることを特徴とする合わせガラス用途に用いられる積層フィルム。
  2. 長手方向およびそれに直交する方向のいずれかにおいて、前記積層フィルムの150℃での熱機械分析にて計測される熱収縮率が0.3%以上3%以下であることを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス用途に用いられる積層フィルム。
  3. 前記積層フィルムの長手方向およびそれに直交する方向の150℃での熱機械分析にて計測される熱収縮率の差が0.5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の合わせガラス用途に用いられる積層フィルム。
  4. 長手方向およびそれに直交する方向において、前記積層フィルムの100℃から150℃の範囲での貯蔵弾性率が200MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の合わせガラス用途に用いられる積層フィルム。
  5. 長手方向およびそれに直交する方向のいずれかにおいて、前記積層フィルムの25℃から100℃における熱機械分析にて計測される熱収縮率が−0.5%以上0.5%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の合わせガラス用途に用いられる積層フィルム。
  6. 前記異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂の各熱可塑性樹脂のガラス転移温度差が20℃以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の合わせガラス用途に用いられる積層フィルム。
  7. 前記スピログリコールまたはシクロヘキサンジメタノールを含んでなるポリエステルが、シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下のエチレンテレフタレート重縮合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の合わせガラス用途に用いられる積層フィルム。
  8. ガラスとフィルムの間に中間膜を設けてなる合わせガラスであって、前記フィルムが請求項1〜のいずれかに記載の積層フィルムであることを特徴とする合わせガラス。
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