JP2017061145A - 積層フィルム、フィルムロール及びその製造方法 - Google Patents

積層フィルム、フィルムロール及びその製造方法 Download PDF

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孝行 宇都
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Reiko Oyama
玲子 大山
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Wataru Goda
亘 合田
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Abstract

【課題】
積層フィルムとして様々な機能を備えつつも、高い偏光特性を有し、かつ高い機械強度を備え、各種加工工程において高収率・高精度で加工することが可能な積層フィルムを提供する。
【解決手段】
ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層が交互に合計11層以上積層されてなる積層フィルムであって、ビーム径1μm、波長1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度 I max とそれに直交する方向のピーク強度 I min との比 I max/I min が5以上であることを特徴とする、積層フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層フィルムとその製造方法に関する。

熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。
一方、ポリエステルフィルムの中には、異なる樹脂が交互に積層された積層フィルムが用いられている。このような積層フィルムでは、単層のフィルムでは得られない特異な機能を備えたフィルムとすることが可能となり、たとえば、引裂強度を高めた耐引裂性フィルム(特許文献1)、赤外線を反射する赤外線反射フィルム(特許文献2)、偏光反射特性を備えた偏光反射フィルム(特許文献3)などが挙げられる。
特許第3960194号公報 特許第4310312号公報 特開2014−124845号公報
しかしながら、このような積層フィルムにおいては、異なる樹脂が交互に積層された構造をとるため、単層のフィルムと比較してその積層厚みの影響で機械強度が低下するという傾向がある。積層フィルムの機械強度が低下すると、たとえば他の各種フィルム・部材と組みあわせて機能性フィルムへと加工する際にフィルムにかかる力によって変形や破断などが生じ、加工時の加工精度、収率の低下や得られたフィルムの光学特性や、品質低下などが生じるといった問題がある。積層フィルムの機械強度が低下すると、たとえば他の各種フィルム・部材と組みあわせて機能性フィルムへと打ち抜き・断裁・コーティング・ラミネートなどの加工を行う際にフィルムにかかる力によって変形や破断などが生じ、加工時の加工精度、収率の低下や得られたフィルムの光学特性や、品質低下などが生じるといった問題がある。
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、積層フィルムとして様々な機能を備えつつも、高い偏光特性を備え、かつ、各種加工工程において高収率・高精度で加工することが可能な高い機械強度を備える積層フィルムを提供することを目的とする。
本発明は次の構成からなる。すなわち、
ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層が交互に合計11層以上積層されてなる積層フィルムであって、ビーム径1μm、波長1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度 I max とそれに直交する方向のピーク強度 I min との比 I max/I min が5以上であることを特徴とする、積層フィルムである。
本発明の積層フィルムは、高い偏光特性を備え、かつ、高い機械強度を備えていることから、各種機能性フィルムとして打ち抜き・断裁・コーティング・ラミネートなどの加工・使用する際にも、好適に使用できる効果を奏する。
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルからなる層(A層)と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)が交互に、合計11層以上積層されてなる積層フィルムである。ここで、熱可塑性樹脂Bは、A層に用いられるナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステル(以下、結晶性ポリエステルAと呼ぶ場合がある)とは異なる光学特性または熱特性を示すものである。本発明において、結晶性ポリエステルAと異なる光学特性を示すとは、フィルムの面内で任意に選択される直交する2方向および該面に垂直な方向のいずれかにおいて、結晶性ポリエステルAと屈折率が0.01以上異なることをあらわす。また、結晶性ポリエステルAと異なる熱特性を示すとは、示差走査熱量測定(DSC)において、結晶性ポリエステルAと、融点またはガラス転移点温度が異なることを示す。また、ここでいう交互に積層されてなるとは、A層とB層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいう。たとえばA(BA)n(nは自然数)で表される規則的な配列で積層されたものである。このように光学的性質の異なる樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係より設計した波長の光を反射させることが出来る干渉反射を発現させることが可能となる。また、熱特性の異なる樹脂が交互に積層されることにより、二軸延伸フィルムを製造する際に各々の層の配向状態を高度に制御することが可能となり、光学特性や機械特性・熱収縮特性を制御することが可能となる。積層フィルムの好ましい積層の形態として、ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルからなるA層、結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層、およびナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルならびに熱可塑性樹脂Bとは異なる熱可塑性樹脂CからなるC層を有する場合も挙げられ、この場合には、CA(BA)n、CA(BA)nC、A(BA)nCA(BA)mなど、層Cを最外層もしくは中間層に積層した構成とすることができる。
また、積層する層数が11層未満の場合には、異なる熱可塑性樹脂が積層されていることの製膜性や機械物性などの諸物性への影響によって、たとえば、二軸延伸フィルムの製造が困難になる場合があるほか、他の構成要素と組み合わせて製品とする際に不具合が生じる可能性がある。一方、本発明の積層フィルムのように合計11層以上の層が交互に積層されたフィルムの場合、層数が11層未満の積層フィルムと対比して、均質に各々の熱可塑性樹脂が配されるため、製膜性や機械物性を安定化させることが可能である。また、層数が増加するに従い、各々の層での配向の成長を抑制できる傾向がみられ、たとえば界面張力による耐引裂強度向上というように機械特性・熱収縮特性を制御しやすくなることに加えて、干渉反射機能を発現させるといった特異な光学特性の付与が可能となる。積層する層数は、好ましくは101層以上であり、さらに好ましくは201層以上である。101層以上積層した場合には、幅広い帯域の光を高反射率で反射することも可能となり、さらに201層以上積層した場合には、たとえば波長400〜700nmの可視光全体の光をほぼ反射できるようになる。また、積層する層数に上限はないものの、層数が増えるに従い、製造装置の大型化および複雑化に伴う製造コストの増加の原因ともなりうるために、現実的には10001層以内が実用範囲となる。
本発明の積層フィルムにおいては、ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルからなるA層が両表面の最外層であることが好ましい。ここでいうナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルとは、結晶性ポリエステルがナフタレンジカルボン酸を含む1種類以上のジカルボン酸と1種以上のジオールを重合させて得られることを示す。この場合、結晶性ポリエステルが最外層となるため、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムのような結晶性ポリエステルフィルムと同様にして二軸延伸フィルムを製造することが可能となる。結晶性ポリエステルではなく、たとえば非結晶性の樹脂からなる熱可塑性樹脂Bが最外層となる場合、結晶性ポリエステルフィルムと同様にして二軸延伸フィルムを得る場合、ロールやクリップなどの製造設備への粘着による製膜不良や、表面性の悪化などの問題が生じる場合がある。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルAは、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体であって結晶性を示すものであり、屈折率を発現して偏光度を高める観点から、ジカルボン酸としてナフタレンジカルボン酸を含むことが必要である。ナフタレンジカルボン酸としては、例えば、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらのナフタレンジカルボン酸の中でも、2,6−ナフタレンジカルボン酸は高い対称性を備えた芳香族環を含むことから芳香族環の体積比率が増え、配向・結晶化させることにより高い偏光度と高ヤング率を両立することが容易となるため、特に好ましい。また、ジカルボン酸としては、ナフタレンジカルボン酸を含むものであれば、他の成分として芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの他のジカルボン酸を1種または2種以上含んでいてもよい。ここで、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。ジカルボン酸中のナフタレンジカルボン酸の比率は特に限定されないが、配向・結晶化を容易とする観点からはジカルボン酸成分のうちナフタレンジカルボン酸を70mol%以上含むことが好ましく、80mol%以上含むことがより好ましく、90mol%以上含むことが特に好ましい。ナフタレンジカルボン酸の比率が高いことにより、フィルムの製造時に延伸・熱処理を行うことで容易に配向結晶化させることが可能となり、高偏光度化させることが容易となる。また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、本発明の結晶性ポリエステルが、2種類以上のジカルボン酸と2種類以上のジオールを含むことも好ましい。ここで、結晶性ポリエステルが2種類以上のジカルボン酸と2種類以上のジオールを含むとは、結晶性ポリエステルが2種類以上のジカルボン酸と2種以上のジオールを重合させて得られることを示す。従来、2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを重合して得られる2,6−ポリエチレンナフタレートに対して、その他のジカルボン酸モノマーやジオールモノマーを加えて重合することで、その特性を調整できることは既に知られていた。しかし、本発明者らは、本願の課題とする積層フィルムとしての様々な機能を備えつつ、高い偏光度を備え、かつ高い機械強度を備えるという点において、積層フィルム中のナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルを面状ではなく線状に配向させることが重要であることを見出し、そして、2種類以上のジカルボン酸と2種以上のジオールを含む結晶性ポリエステルとすることで、結晶性ポリエステルを線上に配向させることが可能になることを見出した。すなわち、2種類以上のジカルボン酸と1種類のジオールを含む結晶性ポリエステルや1種類のジカルボン酸と2種類以上のジオールを含む結晶性ポリエステルと比較して、2種類以上のジカルボン酸と2種類以上のジオールを含む結晶性ポリエステルとすることで、結晶性ポリエステルを線状に配向させる効果が大きく、高い偏光度と機械強度を両立できるということを見出したものである。これは、ジカルボン酸またはジオールのいずれかが1種類の場合は、この1種類しか含まれない成分が秩序正しく配列していくことを促進するためフィルム状に成型する際に面状に配向していくのに対して、2種類以上のジカルボン酸と2種類以上のジオールを含むことで各モノマー成分が秩序正しく配列することを抑制でき、フィルム状に成型する際にも面状ではなく線状に配列するためである。
上述の樹脂の配向を制御するという観点では、結晶性ポリエステルが、最も共重合比率の高いジカルボン酸以外のジカルボン酸の全ジカルボン酸モノマー成分中の割合をXa(mol%)、最も共重合比率の高いジオール以外のジオールの全ジオールモノマー成分中の割合をXb(mol%)とした場合、Xa+Xbが10mol%以上30mol%以下であることが好ましい。Xa+Xbが10mol%未満の場合、各モノマー成分が秩序正しく配列することを抑制する効果が十分ではなく、結果としてフィルム状に成型した際に面状に配向しやすくなる傾向がある。一方、Xa+Xbが30mol%より大きい場合、各モノマー成分が秩序正しく配列することを抑制する効果は得られるものの、一方でフィルム状に成型した際に線状にも配向せずに無配向な状態となり、結果として目的の効果のひとつである高い偏光特性を満足できなくなる。Xa+Xbが10mol%以上30mol%以下とすることで、フィルム状に成型した際に高度にかつ線状に配向を制御できるため、様々な機能を備えつつ、高い偏光度を備え、かつ高い機械強度を備えるという本願の目的の達成が容易となる。より好ましくはXa/Xbが0.5以上2以下である。ジカルボン酸成分に追加されたモノマーの割合とジオール成分のモノマーの割合が近しいほど、ジカルボン酸成分、ジオール成分のモノマー各々が秩序正しく配列することを抑制でき、目的とする効果を得やすくなる。
さらに、上記の効果を最大限得るためには、前記結晶性ポリエステルが、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸およびシクロヘキサンジカルボン酸から選ばれる2種類以上のジカルボン酸を含むことが好ましい。2,6−ナフタレンジカルボン酸はその高い配向結晶性のために高偏光度化に優位である点は上段で記載のとおりであるが、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸はモノマーの分子構造上の対称性が低かったりバルキーであったりすることからモノマーが秩序正しく配列することを抑制する効果が得やすくなる。
同様に、前記結晶性ポリエステルが、エチレングリコール、スピログリコール、パラキシレングリコールおよび側鎖を2つ以上有するアルキルジオールから選ばれる2種類以上のジオールを含むことも好ましい。エチレングリコールは、そのモノマー長や対称性の観点からフィルム状に成型した際に配向を促進し高い偏光度化を達成する上で優位であるが、スピログリコール、パラキシレングリコールおよび側鎖を2つ以上有するアルキルジオールは、モノマーの分子構造上の対称性が低かったりバルキーであったりすることからモノマーが秩序正しく配列することを抑制する効果が得やすくなる。ここでいう側鎖を2つ以上有するアルキルジオールとは、2つの水酸基の間に3級炭素を2つ以上または4級炭素を1つ含む構造をもつアルキルジオールであり、ネオペンチルグリコールなどが例示される。
熱可塑性樹脂Bとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)などの鎖状ポリオレフィン;ノルボルネン類の開環メタセシス重合、付加重合、他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボーネート;ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどのポリエステル;ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。この中で、強度、耐熱性、透明性および汎用性の観点に加え、A層に用いるナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルとの密着性および積層性という観点からポリエステルが好ましい。これらは、共重合体であっても、混合物であってもよい。
干渉反射機能を備えた積層フィルムを得るためには、熱可塑性樹脂Bとしては、低結晶性樹脂または非晶性樹脂であることが好ましい。結晶性樹脂と比較して低結晶性樹脂または非晶性樹脂は二軸延伸フィルムを製造する際に配向が生じにくいため、熱可塑性樹脂BからなるB層の配向結晶化に伴う屈折率の増加を抑制でき、ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルAからなるA層との屈折率差を容易に発生させることが可能となる。特に、延伸フィルムを製造する際に熱処理工程を設けた場合にこの効果は顕著となる。低結晶性樹脂または非晶性樹脂を用いた場合、延伸工程で生じた配向のうち、B層に生じた配向は、熱処理工程で大幅に又は完全に緩和させることができ、結晶性ポリエステルからなるA層との屈折率差を最大化できる。熱可塑性樹脂Bを低結晶性樹脂または非晶性樹脂とする場合、結晶性の指標として、示差走査熱量測定における熱可塑性樹脂B由来の融解エンタルピーが5J/g以下であることが好ましく、3J/g以下であることがより好ましく、明確な融解ピークを有さないものであることが特に好ましい。熱可塑性樹脂B由来の融解エンタルピーは樹脂の結晶性と相関し、結晶性を低下させることにより融解エンタルピーを5J/g以下とすることができる。低結晶性または非晶性の樹脂としては、共重合により結晶性を低下させた共重合ポリエステルが、積層体の延伸性やA層とB層の層間密着性の観点から好ましい。また、樹脂の結晶性は共重合成分の選択や共重合比率によって制御することができ、共重合ポリエステルの主成分および共重合成分は、前記ジカルボン酸およびジオールから1種または2種以上の成分を選択すればよい。
また、干渉反射機能を備えた積層フィルムを得るためには、熱可塑性樹脂Bとしては、結晶性ポリエステルAの融点より20℃以上低い融点をもつ結晶性樹脂も好ましい。この場合、熱処理工程において、熱可塑性樹脂Bの融点と結晶性ポリエステルAの融点との間の温度で熱処理を実施することにより、熱処理工程で完全に緩和させることができ、結晶性ポリエステルからなるA層との屈折率差を最大化できる。好ましくは、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの融点の差が40℃以上である。この場合、熱処理工程での温度の選択幅が広くなるために熱可塑性樹脂Bの配向緩和の促進や結晶性ポリエステルの配向の制御がさらに容易にできるようになる。
ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの好ましい組み合わせとしては、両者のSP値(溶解パラメーター:Solubility Parameter)の差の絶対値が、1.0以下であることが好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であるとA層とB層の層間剥離が生じにくくなる。結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂BのSP値の差の絶対値を小さくするには、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bを、同一の基本骨格を供えた組み合わせからなるようにすることが好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことである。たとえば、結晶性ポリエステルAとしてカルボン酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸のみからなるポリエチレンナフタレートまたは2,6−ナフタレンジカルボン酸をカルボン酸成分の90%以上含む主成分とするポリエチレンナフタレート共重合体を用いる場合は、熱可塑性樹脂Bとして非晶性のポリエチレンナフタレート共重合体または結晶性ポリエステルAより融点の低い結晶性ポリエチレンナフタレート共重合体を用いることが好ましい。
また、前記A層を構成する結晶性ポリエステルとB層を構成する熱可塑性樹脂Bが、ともに2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸、および/または、エチレングリコール以外のジオールを含み、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸の全ジカルボン酸モノマー成分中の割合(mol%)と、エチレングリコール以外のジオールの全ジオールモノマー成分中の割合(mol%)の和が、を5mol%以上であることが好ましい。A層を構成する結晶性ポリエステルとB層を構成する熱可塑性樹脂Bを構成するモノマーについて、基本骨格である2.6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、エチレングリコールにさらに加えるモノマー成分の種類が多くなるに従い、A層とB層の層間剥離が生じやすくなる場合があるが、A層とB層を構成する樹脂が2.6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、エチレングリコール以外のジカルボン酸またはジオールを5mol%以上含んでなることにより、両者の樹脂に含まれるジカルボン酸またはジオールの効果でA層とB層の密着性が向上し、層間剥離を抑制する効果が得られるものである。より好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸の全ジカルボン酸モノマー成分中の割合(mol%)と、エチレングリコール以外のジオールの全ジオールモノマー成分中の割合(mol%)の和が10mol%以上である。共通するジカルボン酸またはジオールが多くなるに従い密着性は向上する傾向にある。ただし、上述のとおり、フィルム状に成型した際に配向を促進し高偏光度なフィルムを得るという観点では、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸の全ジカルボン酸モノマー成分中の割合(mol%)と、エチレングリコール以外のジオールの全ジオールモノマー成分中の割合(mol%)の和が15mol%以下であることもまた好ましいものである。
また、干渉反射機能を備えた積層フィルムを得るためには、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度がナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルAのガラス転移温度より10℃以上低いことが好ましい。この場合、延伸工程においても結晶性ポリエステルを延伸するために最適な延伸温度をとった場合に、熱可塑性樹脂Bでの配向が進まないため、結晶性ポリエステルからなるA層との屈折率差を大きくとることができる。より好ましくは熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度が結晶性ポリエステルAのガラス転移温度より20℃以上低いことである。後述する本発明の積層フィルムを得るために好適な製造方法においては熱可塑性樹脂Bの配向結晶化が進みやすく所望の干渉反射機能が得られない場合もあるが、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度が結晶性ポリエステルAのガラス転移温度より20℃以上低くすることにより配向結晶化を抑制できるものである。
また、熱可塑性樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線遮蔽剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率が6GPa以上であること好ましい。本発明における積層フィルムの配向軸方向とは、フィルムのヤング率をフィルム面内に10°毎に方向を変えて測定し、そのヤング率が最大になる方向のことである。単層や数層程度の層数の場合、積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率が6GPa以上であると、その樹脂の配向の強さゆえにフィルムが脆くなる傾向があり、ハンドリング性が低下する場合もあった。一方、本発明のとおり、結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層が交互に合計11層以上積層されてなる積層フィルムの場合、ヤング率が6GPa以上であってもその積層界面での界面張力や熱可塑性樹脂BからなるB層の緩衝効果によって、ハンドリング性を損なわずにヤング率を高めることができる。積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率は8GPa以上であることが好ましく、より好ましくは10GPa以上である。ヤング率はフィルムの初期変形時に必要な力を示す指標であり、ヤング率を6GPa以上とすることにより、積層フィルムの耐変形性が向上し、コーティングやラミネートなどの後加工を行う場合の張力による変形を抑制できるほか、打ち抜きや断裁などの製品化加工時の切断性や切断端面の変形を抑制でき、加工条件の制御範囲を広げることができる。配向軸方向におけるヤング率の上限は特に限定されないが、積層フィルムの生産性の観点から、30GPa以下であることが好ましく、20GPa以下であることがより好ましい。ヤング率を高めるためには、A層にナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルを用いて配向性、結晶性を高めることのほか、B層の樹脂の選択、製膜条件の制御により達成することができる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向と、それと同一の面内で直交する方向のヤング率の比が2以上であることも好ましい。単純に樹脂の選択やフィルムの製造方法によって高めようとした場合にも、フィルムの面内方向に均等なヤング率を備えたフィルムでは、ヤング率に限界がある。これは、ヤング率はフィルムを構成する樹脂の配向の強さに依存するためで、ヤング率を高めたい方向にいかに強く配向しているかがヤング率の大きさに影響する。したがって、積層フィルムの配向軸方向とそれと同一の面内で直交する方向のヤング率の比を2以上とすることによって、配向軸側のヤング率をさらに高めることができ、ヤング率が最大となる方向(積層フィルムの配向軸方向)におけるヤング率が6GPa以上とすることが容易になる。積層フィルムの配向軸方向とそれと同一の面内で直交する方向のヤング率の比の上限は特に限定されないが、高配向化による耐引裂き性の悪化による後加工時のハンドリング性の低下を抑制する点や、A層とB層の配向状態の差が大きくなることによる層間密着性の低下を抑制する点からは、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。ヤング率の比を高めるためには、A層にナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルを用いて配向性、結晶性を高めることのほか、B層の樹脂の選択、製膜条件の制御により達成することができる。
本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角度10°での反射率をR1、積層フィルムの配向軸方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について入射角度10°での反射率をR2とした場合、波長550nmにおける反射率が下記式(1)および式(2)を満足することが好ましい。
R2(550)≦40% ・・・式(1)
R1(550)≧70% ・・・式(2)
偏光反射特性を高める観点からは、下記式(1)’および式(2)’を満足することが好ましく、下記式(1)’’および式(2)’’を満足することがより好ましい。
R2(550)≦30% ・・・式(1)’
R1(550)≧80% ・・・式(2)’
R2(550)≦20% ・・・式(1)’’
R1(550)≧90% ・・・式(2)’’
式(1)および式(2)を満足することで、いずれかの偏光を反射し、他方の偏光を透過するという偏光反射特性を付与することが可能となる。式(1)を満足するフィルムを得るためには、積層フィルムの配向軸方向におけるA層とB層の屈折率差を0.02以下、より好ましくは、0.01以下、さらに好ましくは、0.005以下となる樹脂の組合せで調整できる。また、下記式(2)を満足するフィルムを得るためには、積層フィルムの配向軸方向と直交する方向におけるA層とB層の屈折率差を0.08以上、より好ましくは、0.1以上、さらに好ましくは、0.15以上となる樹脂の組合せの選択および製膜条件で調整できる。その最適な組み合わせの例は前述の通りである。
本発明の積層フィルムにおいては、ビーム径1μm、波長1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minが5以上であることが必要である。ここで、反射率が最大になる方向とは、積層フィルムの入射面に対して偏光成分を0°、入射角度を0°とし、フィルム面内に10°毎に方向を変えて反射率を測定した場合に、反射率が最大値を示す方向である。また、偏光ラマンスペクトルで観測される波長1390cm−1のピークはナフタレン環のCNC伸縮バンドに帰属し、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minにより、ナフタレン環の配向状態を測定することができる。波長1390cm−1でのI max/I minは好ましくは5.5以上であり、6以上であるとより好ましい。波長1390cm−1でのI max/I minが5以上であることはナフタレン環が均一に配向していることを示し、その結果として偏光度を高くすることができるほか、高配向化によりヤング率を向上させることができる。波長1390cm−1でのI max/I minの上限は特に限定されないが、ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層との配向状態や結晶性の差が大きくなることによる層間密着性の悪化を防ぐ点からは、上限は20以下であり、10以下であることがより好ましく、7以下であることが特に好ましい。波長1390cm−1でのI max/I minは、A層とB層の樹脂の組合せの選択および製膜条件で調整できる。その最適な組み合わせの例は前述の通りである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、ビーム径1μm、波長1615cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minが4以上であることが好ましい。偏光ラマンスペクトルで観測される波長1615cm−1のピークはベンゼン環のC=C伸縮バンドに帰属し、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minにより、ベンゼン環の配向状態を測定することができる。波長1615cm−1でのI max/I minは好ましくは4.5以上であり、5以上であるとより好ましい。波長1615cm−1でのI max/I minが4以上であることはベンゼン環が均一に配向していることを示し、その結果として偏光度を高くすることができるほか、高配向化によりヤング率を向上させることができる。波長1615cm−1でのI max/I minの上限は特に限定されないが、ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層との配向状態や結晶性の差が大きくなることによる層間密着性の悪化を防ぐ点からは、上限は20以下であり、10以下であるとより好ましく、6以下であることが特に好ましい。波長1615cm−1でのI max/I minは、A層とB層の樹脂の組合せの選択および製膜条件で調整できる。その最適な組み合わせの例は前述の通りである。
本発明においては、積層フィルムの配向軸に沿って巻かれたフィルムロールとすることも好ましい。上述の通り、打ち抜き・断裁・コーティング・ラミネートなどの加工工程、特にロール状のフィルムを用いて連続的に加工する工程においては、フィルム長手方向におけるヤング率を高めることが加工工程の安定化に有効であり、積層フィルムの配向軸に沿って巻かれたフィルムロールを得ることで、本発明の積層フィルムを用いて製品を得る際にも容易に高品位な製品を得られるようになる。
このようなフィルムロールを得るために、積層フィルムの配向軸方向とフィルムの製造工程における流れ方向とのなす角が10°以下であることが好ましい。積層フィルムの配向軸方向とフィルムの製造工程における流れ方向とのなす角が10°以下であれば、得られた積層フィルムを連続してロール状に巻き取ることにより、打ち抜き・断裁・コーティング・ラミネートなどの加工工程、特にロール状のフィルムを用いて連続的に加工する工程において、配向軸方向と加工工程の流れ方向が同一となるため、加工工程の安定化が容易となる。
また、フィルムロールにおけるフィルム幅は、1000mm以上であることが、後加工における加工性および最終製品の大型化への対応の観点から好ましい。フィルム幅を1000mm以上とする方法としては、キャスト工程において広幅の口金を使用する方法、延伸工程においてフィルム幅方向への延伸を行う方法があるが、広幅の口金を用いる場合には、延伸過程でのネックインによる幅の減少や巻取り時の幅方向端部のスリットを考慮し、口金幅を製品幅よりも十分に大きくする必要があり、装置の大型化も必要となることから、幅方向への延伸によりフィルム幅を拡幅する工程を含む製造方法により製膜し、両端をスリットして巻き取ったフィルムロールの幅を1000mm以上とすることが好ましい。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明するが、本発明は係る例に限定して解釈されるものではない。また、本発明に用いる積層フィルムの積層構造は、特開2007−307893号公報の〔0053〕〜〔0063〕段に記載の内容と同様の方法により簡便に実現できる。
結晶性ポリエステルAおよび熱可塑性樹脂Bをペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、加熱溶融された樹脂は、ギアポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂は多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、本発明の構成を効率よく得るためには、11個以上の微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となる。
そして、ダイから吐出された積層シートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化されることにより、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力により、吐出されたシートを冷却体に密着させ、急冷固化させることが好ましい。また、吐出されたシートを冷却体に密着させる方法としては、スリット状、スポット状、面状のエアナイフを用いる方法、ニップロールを用いる方法も好ましい。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、二軸延伸することが好ましい。ここで、二軸延伸とは、フィルムを長手方向および幅方向の二軸方向に延伸することをいい、長手方向−幅方向、幅方向−長手方向に順次延伸する逐次二軸延伸法、長手方向と幅方向とに同時に延伸する同時二軸延伸法のいずれの方法を用いても良いが、積層フィルムの配向性を高め、高い偏光度やヤング率を付与するためには、逐次二軸延伸法を選択することが好ましい。また、逐次二軸延伸法あるいは同時二軸延伸法により二軸に延伸したフィルムを、更に長手方向および/または幅方向に延伸する、再延伸を行うことも、偏光度やヤング率の向上の点から好ましい。本発明の積層フィルムを得るために好適な二軸延伸の方法としては、フィルム長手方向に倍率2〜4倍で延伸したのち、フィルム幅方向に2〜4倍で延伸し、さらに再度フィルム長手方向に1.3〜4倍で延伸することが特に好ましい。その詳細を以下に記す。
得られたキャストフィルムを、まず長手方向に延伸する。長手方向への延伸は、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、2〜4倍であることが好ましい。この1回目の長手方向への延伸の目的は、次に続くフィルム幅方向への延伸時の均一延伸性を向上させるのに必要最低限の配向を設けることにある。そのため、延伸倍率を4倍より大きい倍率とする場合、後述のフィルム幅方向延伸および、その工程後に実施される長手方向への再延伸時に十分な延伸倍率のフィルムが得られなくなる場合がある。また、延伸倍率が2倍未満である場合には、延伸時に必要最低限の配向も付与できず、かつフィルム長手方向に厚みムラが生じ品位が低下する場合もある。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する結晶性ポリエステルAのガラス転移温度〜ガラス転移温度+30℃が好ましい。
このようにして得られた一軸延伸フィルムには、インラインコーティングにより、易滑性、易接着性、帯電防止性、耐候(光)性などの機能性を有する層を設けることも、積層フィルムの特性向上のためには好ましい。また、一軸延伸フィルムの機能性を有する層との密着性を向上させるため、一軸延伸後、インラインコーティング前の段階においてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施すことも好ましい。
つづいて一軸延伸フィルムを幅方向に延伸する。幅方向の延伸は、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップやピンなどの把持具で把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては、樹脂の種類により異なるが、通常、2〜4倍であることが好ましい。この幅方向への延伸の目的は、次に続くフィルム長手方向への延伸時の高い延伸性を付与するために必要最低限の配向を設けることにある。そのため、延伸倍率を4倍より大きい倍率とする場合、この工程に続いて実施されるフィルム長手方向への再延伸時に十分な延伸倍率のフィルムが得られなくなる場合がある。また、延伸倍率が2倍未満である場合には、延伸時にフィルム幅方向に厚みムラが生じ品位が低下する場合もある。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する結晶性ポリエステルAのガラス転移温度〜ガラス転移温度+30℃もしくはガラス転移温度〜結晶性ポリエステルの結晶化温度の間であることが好ましい。
続いて、得られた2軸延伸フィルムを再度長手方向に延伸する。この長手方向への延伸は、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、1.3〜4倍であることが好ましい。この2回目の長手方向への延伸の目的は、フィルム長手方向へ可能な限り強く配向させることにあり、このように再度長手方向へ延伸することにより樹脂が強く配向され、結果として積層フィルムの反射偏光特性を高めることができるほか、配向軸方向におけるヤング率を高めることが可能となる。特に、再度の長手方向への延伸倍率が高いほど、配向性を高めることができ、波長1390cm−1における偏光ラマンスペクトルにおけるl max/l minやヤング率を本願の範囲に調整することが容易となる。再度の長手方向の延伸倍率が1.3未満である場合には、配向性やヤング率を十分に高くすることができない場合がある。また、4倍より大きい倍率とする場合には、フィルムの破断が頻発して生産性に劣る場合があるほか、A層とB層の結晶性や配向性の差が大きくなりすぎることによる層間密着性の低下の原因となる場合がある。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する結晶性ポリエステルAのガラス転移温度〜ガラス転移温度+80℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性および寸法安定性を付与するために、延伸温度以上融点以下の温度で熱処理を行うことが好ましい。熱処理を行う方法としては、再度の長手方向への延伸において、延伸後のロール構成中に熱処理ロールを設ける方法、延伸後のフィルムをオーブンなどの熱処理装置に導入して熱処理を行う方法などがあるが、均一な熱処理が可能である点から、オーブンなどの熱処理装置を用いることが好ましい。熱処理を行うことにより、フィルムの寸法安定性が向上するとともに、さらに配向結晶化が促進されてヤング率が増大する効果が得られる。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理後、徐冷する際に弛緩処理などを行ってもよい。
上述の通りの製造方法にて得られる積層フィルムは、配向性が高く、波長1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおけるlmaxとlminの比が本願請求項記載の範囲となるほか、高いヤング率を有するものである。これは、2回目のフィルム長手方向の延伸の際に、結晶性ポリエステルからなるA層の配向をフィルム長手方向により強くすることができるためであり、結果として、フィルム長手方向の屈折率とフィルム長手方向に直交するフィルム幅方向の屈折率に差が生じるためである。さらには、熱可塑性樹脂Bとして非晶性樹脂や延伸・熱処理工程にて配向を緩和できるガラス転移温度・融点の差のある結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの組み合わせを選択することで、熱可塑性樹脂Bの配向を抑制でき、偏光反射特性が付与されるものである。そのため、本発明の積層フィルムを輝度向上フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ場合には、光利用効率が向上し、従来の液晶表示装置と比べて、高輝度の液晶表示装置とすることが可能となる。その他、本機能が求められる各種用途に使用することができる。
また、本発明の積層フィルムを用いた液晶表示装置は、携帯電話、電子手帳、電子書籍端末、タブレット、ノートPC、モニタ、TV、各種表示媒体などに好適に用いることができる。
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)積層数
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面写真を撮影し、層構成および各層厚みを測定した。
(2)ヤング率
積層フィルムを長さ150mm×幅10mmの短冊形に切り出し、サンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分として引張試験を行った。測定は室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて実施し、得られた荷重−歪曲線からヤング率を求めた。サンプルの測定方向は、積層フィルムの面内に10°ごとに方向を変えてヤング率を測定した場合に、ヤング率が最大となる方向を配向軸とし、該配向軸とした方向のヤング率を配向軸方向のヤング率、配向軸とした方向に対して直行する方向のヤング率を配向軸の直行方向のヤング率とした。なお、測定は各サンプルについて5回ずつ行い、それらの平均値で評価を行った。
(3)偏光成分をもつ入射光に対する反射率測定
積層フィルムを5cm×5cmで切り出し、サンプルとした。日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した。サンプルは、積層フィルムの配向軸方向を垂直方向にして積分球の後ろに設置した。また、付属のグランテーラ社製偏光子を設置して偏光させた直線偏光を入射して、波長250〜1500nmの反射率を測定した。なお、サンプルの反射測定時は、裏面からの反射による干渉をなくすために、マジックインキ(登録商標)で黒塗りした。詳細な測定条件は以下の通り。
スリット:2nm(可視)/自動制御(赤外)
ゲイン:2
走査速度:600nm/min.
偏光光の入射角度:10°
反射率測定の方位角:0〜180度
反射率の測定においては、積層フィルムの配向軸方向に対して平行な偏光成分に対する反射率をR1、積層フィルムの配向軸方向に対して垂直な偏光成分についての反射率をR2とした。
(4)偏光ラマンスペクトルのピーク強度比I max/I min
偏光ラマンスペクトルは、レーザーラマン分光装置Jovin Yvon社製T−64000を使用して測定した。積層フィルムは、(4)項で決定した反射率が最大となる方向をI max、それと直交する方向をI minとし、それぞれの方向の切断面が測定面となるように、ミクロトームにより断面を切り出した。偏光ラマンスペクトルは、試料断面からレーザーの偏光軸がフィルムの透過軸と一致する場合を平行条件、フィルムの厚み方向と一致する場合を垂直条件として測定した。測定は各層の中央部について、場所を変えて3点の測定を行い、平均値を測定値とした。詳細な測定条件は下記の通り。
測定モード:顕微ラマン
対物レンズ:×100
ビーム径:1μm
クロススリット:100μm
光源:Ar+レーザー/514.5nm
レーザーパワー:15mW
回折格子:Spectrograph 600gr/mm
分散:Single 21オングストローム/mm
スリット:100μm
検出器:CCD/Jobin Yvon 1024×256
波長1390cm−1および波長1615cm−1における偏光ラマンスペクトルのピーク強度比I max/I minは、偏光ラマンスペクトルの測定で得られた、ナフタレン環のCNC伸縮バンドに由来する1390cm−1のピーク強度、および、ベンゼン環のC=C伸縮バンドに由来する1615cm−1のピーク強度について、測定面をI max方向の断面としたサンプルと測定面をI min方向の断面としたサンプルとのピーク強度から比率を算出した。
(5)融解エンタルピーおよびガラス転移温度
原料チップもしくは積層フィルムからサンプリングを行い、示差熱量分析(DSC)を用いてJIS−K−7122(1987年)に従って、測定サンプルのDSC曲線を測定した。試験は、25℃から290℃まで20℃/min.で昇温し、その際の融解エンタルピーならびにガラス転移温度を計測した。融解ピークが複数出現する場合、最初の融解ピークの開始点と最後の融解ピークの終了点を結んだベースラインを設定し、各ピークが独立ピークである場合には各融解ピークのエンタルピーを計測した。また、ピーク間の変曲点がベースライン位置まで到達しない連続ピークの場合には変曲点とベースラインの間に垂線を引いてピークを分割し、面積計算により各ピークのエンタルピーを算出した。各ピークのエンタルピーより、最もエンタルピーの大きいピークを結晶性ポリエステルのピークとし、その他のピークを熱可塑性樹脂Bのピークとした。
装置:セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”
データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg。
(6)層間密着性
積層フィルムの面に碁盤目のクロスカット(1mm2のマス目を100個)を施し、ニチバン(株)製“セロハンテープ”(登録商標)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、セロハンテープに移行した個数により評価した。評価は3回実施し、3回の測定の平均値について下記基準で層間密着性を判定した。
○:0〜5個移行
△:6〜50個移行
×:51個以上移行
(7)加工性
ロール状のフィルムを打ち抜き機に導入し、長さ500mm、フィルム幅に対して95%の幅長さの矩形状の金型を用いて打ち抜きを実施した。なお、長手方向の打ち抜き間隔は40mmとした。
A:フィルムが破断なく連続的に搬送、加工できた。
B:フィルムが部分的な破断は起こったものの、長手方向の連続搬送は可能であり、連続的に加工できた。
C:フィルムが完全に破断し、長手方向の連続加工連続加工ができなくなった。
(実施例1)
結晶性ポリエステルAとして、融点が266℃、ガラス転移温度が122℃の2,6−ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いた。また熱可塑性樹脂Bとして融点を持たない非晶性樹脂でありガラス転移温度103℃の2,6−ナフタレンジカルボン酸25mol%、テレフタル酸25mol%、エチレングリコール50mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN1)を用いた。準備した結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bを、2台の単軸押出機にそれぞれ投入し、290℃で溶融させて、混練した。次いで、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bを、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて計量しながら、スリット数11個の積層装置にて合流させて、厚み方向に交互に11層積層された積層体を得た。積層体とする方法は、特開2007−307893号公報〔0053〕〜〔0056〕段の記載に従って行った。ここでは、スリットの長さおよび間隔は全て一定とした。得られた積層体は、結晶性ポリエステルAが6層、熱可塑性樹脂Bが5層であり、厚み方向に交互に積層された積層構造を有していた。また、口金内部での拡幅比である口金リップのフィルム幅方向長さを口金の流入口部でのフィルム幅方向の長さで割った値が2.5となるようにした。得られたキャストフィルムの幅は600mmであった。
得られたキャストフィルムを、120℃に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に132℃に設定されたロールで2.9倍に延伸し、その後一旦冷却した。
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、115℃の熱風で予熱後、132℃の温度でフィルム幅方向に2.9倍延伸し、二軸延伸フィルムをフィルムロールとして得た。ここで得られた二軸延伸フィルムの幅は1500mmであった。
さらに、二軸延伸フィルムを120℃に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に162℃に設定されたロールで3.0倍に延伸し、フィルムの両端をトリミングすることで目的とする積層フィルムをフィルム幅1000mmのロール状にて200m得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、MD方向に高いヤング率を示すものであった。また、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの屈折率の違いに由来する干渉反射特性を示すものであった。本フィルムは製品への加工時や実使用時においても、良好に使用できるものであった。
(実施例2)
用いる積層装置をスリット数が201個である装置を用いた以外には、実施例1と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と同様にI max/I minが高く、また、MD方向に高いヤング率を示すものであった。また、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの屈折率の違いに由来する干渉反射特性を示すものであり、実施例1と比較しても高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として用いることが可能なレベルのものであった。本フィルムは製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例3)
用いる積層装置をスリット数が801個である装置を用いた以外には、実施例1と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と同様にI max/I minが高く、また、MD方向に高いヤング率を示すものであった。また、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの屈折率の違いに由来する干渉反射特性を示すものであり、実施例2と比較しても高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として非常に高い性能であった。本フィルムは製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例4)
二軸延伸フィルムを再びフィルム長手方向に延伸する際の倍率を2.8倍とした以外には、実施例3と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と同様にI max/I minが高く、また、MD方向に高いヤング率を示すものであった。また、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの屈折率の違いに由来する干渉反射特性を示すものであり、実施例3と同様に高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として非常に高い性能であった。本フィルムは製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例5)
二軸延伸フィルムを再びフィルム長手方向に延伸する際の倍率を2.5倍とした以外には、実施例3と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、MD方向に高いヤング率を示すものであった。また、実施例3と同様に高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として非常に高い性能であった。本フィルムは製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例6)
二軸延伸フィルムを再びフィルム長手方向に延伸する際の倍率を2.2倍とした以外には、実施例3と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例7)
二軸延伸フィルムを再びフィルム長手方向に延伸する際の倍率を2.0倍とした以外には、実施例3と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例8)
結晶性ポリエステルとして、2,6ナフタレンジカルボン酸50mol%、エチレングリコール45mol%、ネオペンチルグリコール5mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN2)を用い、1回目のフィルム長手方法の延伸倍率を3.6倍、2回目のフィルム長手方向への延伸倍率を2.0倍とした以外は、実施例7と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例9)
結晶性ポリエステルとして、2,6ナフタレンジカルボン酸47.5mol%、イソフタル酸2.5mol%、エチレングリコール45mol%、ネオペンチルグリコール5mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN3)を用いた以外は、実施例8と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例10)
結晶性ポリエステルとして、2,6ナフタレンジカルボン酸45mol%、イソフタル酸5mol%、エチレングリコール45mol%、ネオペンチルグリコール5mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN4)を用いた以外は、実施例8と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表1に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例11)
結晶性ポリエステルとして、2,6ナフタレンジカルボン酸45mol%、イソフタル酸5mol%、エチレングリコール45mol%、ネオペンチルグリコール10mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN5)を用いた以外は、実施例8と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例12)
結晶性ポリエステルとして、2,6ナフタレンジカルボン酸45mol%、シクロヘキサンジカルボン酸5mol%、エチレングリコール45mol%、ネオペンチルグリコール5mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN6)を用いた以外は、実施例8と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例13)
結晶性ポリエステルとして、2,6ナフタレンジカルボン酸45mol%、イソフタル酸5mol%、エチレングリコール45mol%、スピログリコール5mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN7)を用いた以外は、実施例8と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例14)
結晶性ポリエステルとして、2,6ナフタレンジカルボン酸45mol%、イソフタル酸5mol%、エチレングリコール45mol%、パラキシレングリコール5mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN8)を用いた以外は、実施例8と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例15)
熱可塑性樹脂Bとして、2,6−ナフタレンジカルボン酸25mol%、テレフタル酸25mol%、エチレングリコール45mol%、ネオペンチルグリコール5mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN9)を用いた以外は、実施例10と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、I max/I minが高く、また、高いヤング率を示すものであった。本フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(比較例1)
キャストフィルムとしてPENの単層のフィルムを用いた以外には、実施例4と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と同様にI max/I minが高く、また、MD方向に高いヤング率を示すものであった。一方、積層構造を有さないため、特異な反射性能は示さず、さらに実施例1のフィルムと比較するとフィルムが脆くなっているためハンドリング性が低下していた。本フィルムは製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
(比較例2)
用いる積層装置をスリット数が3個である装置を用いた以外には、実施例1と同様にフィルムを得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と同様にI max/I minが高く、また、MD方向に高いヤング率を示すものであった。一方、層数が3層と少ないことを反映して、積層構造特有の反射性能は示さず、さらに実施例1のフィルムと比較するとフィルムが脆くなっているためハンドリング性がやや低下していた。本フィルムは製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
(比較例3)
実施例4と同様に得られたキャストフィルムを、120℃に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に135℃に設定されたロールで4.5倍に延伸し、その後一旦冷却した。
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、135℃の熱風で予熱後、150℃の温度でフィルム幅方向に4.5倍延伸し、さらに連続して220℃に加熱されたオーブン内を搬送することによって熱処理を実施した。得られた二軸延伸フィルムの両端をトリミングすることで目的とする積層フィルムをフィルム幅1500mmのロール状にて200m得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と比較してI max/I minおよびヤング率は低下していた。本フィルムは製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
(比較例4)
実施例4と同様に得られたキャストフィルムを、テンターに導き、135℃の熱風で予熱後、150℃の温度でフィルム幅方向に5.0倍延伸し、フィルムの両端をトリミングすることで目的とする積層フィルムをフィルム幅2000mmのロール状にて200m得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と比較してI max/I minおよびヤング率は低下しており、また、そのフィルムロールの幅方向に配向軸を備えたフィルムであったため、フィルムロールの巻取軸方向の強度は極めて弱いものであった。本フィルムは製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
(比較例5)
実施例4と同様に得られたキャストフィルムを、120℃に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に135℃に設定されたロールで4.0倍に延伸し、トリミングすることで目的とする積層フィルムをフィルム幅500mmのロール状にて200m得た。
得られたフィルムは、示差熱量分析において熱可塑性樹脂Bの融解ピークは検出されず、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と比較してI max/I minおよびヤング率は低下していた。さらに、延伸時に生じる熱可塑性樹脂Bの配向に伴い、反射性能も実施例対比で大幅に低下しているものであった。本フィルムは製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
Figure 2017061145
Figure 2017061145
本発明は、高い偏光特性を備え、かつ、高い機械強度を備えていることから、各種光学フィルム、工程フィルム、磁気記録材料などに適当なフィルムとなる。特に、光学特性と機械特性に優れ、偏光反射フィルムとして優れた特性を示すことから、液晶ディスプレイ用の輝度向上フィルムとして好適に用いることができる。

Claims (15)

  1. ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層が交互に合計11層以上積層されてなる積層フィルムであって、
    ビーム径1μm、波長1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度 I max とそれに直交する方向のピーク強度 I min との比 I max/I min が5以上であることを特徴とする、積層フィルム。
  2. 前記積層フィルムにおいて、ビーム径1μm、波長1615cm−1での偏光ラマンスペクトルにおける、反射率が最大となる方向のピーク強度 I max とそれに直交する方向のピーク強度 I min との比 I max/I min が4以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記積層フィルムにおいて、ビーム径1μm、波長1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおける、反射率が最大となる方向のピーク強度 I max とそれに直交する方向のピーク強度 I min との比 I max/I min が7以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記積層フィルムにおいて、積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率が6GPa以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記積層フィルムの配向軸方向に対して平行な偏光成分について、入射角度10°での反射率をR1、それと積層フィルムの配向軸方向に対して垂直な偏光成分について入射角度10°での反射率をR2とした場合、波長550nmにおける反射率が下記式(1)および式(2)を満足する、請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
    R2(550)≦40% ・・・式(1)
    R1(550)≧70% ・・・式(2)
  6. 前記積層フィルムにおいて、配向軸方向と、それと同一の面内で直交する方向のヤング率の比が2以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. 前記結晶性ポリエステルが、2種類以上のジカルボン酸と2種類以上のジオールを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
  8. 前記結晶性ポリエステルが、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸およびシクロヘキサンジカルボン酸から選ばれる2種類以上のジカルボン酸を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の積層フィルム。
  9. 前記結晶性ポリエステルがエチレングリコール、スピログリコール、パラキシレングリコールおよび側鎖を2つ以上有するアルキルジオールから選ばれる2種類以上のジオールを含むことを特徴とする請求項7または8に記載の積層フィルム。
  10. 前記結晶性ポリエステルの、最も共重合比率の高いジカルボン酸以外のジカルボン酸の全ジカルボン酸モノマー成分中の割合をXa(mol%)、最も共重合比率の高いジオール以外のジオールの全ジオールモノマー成分中の割合をXb(mol%)とした場合、Xa+Xbが10mol%以上30mol%以下であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の積層フィルム。
  11. 前記結晶性ポリエステルと前記熱可塑性樹脂Bが、ともに2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸、および/または、エチレングリコール以外のジオールを含み、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸の全ジカルボン酸モノマー成分中の割合(mol%)と、エチレングリコール以外のジオールの全ジオールモノマー成分中の割合(mol%)の和が、5mol%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
  12. 前記積層フィルムにおいて、示差走査熱量測定(DSC)による前記熱可塑性樹脂B由来の融解エンタルピーが5J/g以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の積層フィルム。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の積層フィルムが、積層フィルムの配向軸に沿って巻きとられてなる、フィルムロール。
  14. フィルムの幅が1000mm以上である、請求項13に記載のフィルムロール。
  15. 結晶性ポリエステルAからなるA層と前記結晶性ポリエステルAとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層が交互に合計11層以上積層した未延伸フィルムを、フィルム長手方向に倍率2〜4倍で延伸したのち、フィルム幅方向に2〜4倍で延伸し、さらに再度フィルム長手方向に1.3〜4倍で延伸する、積層フィルムの製造方法。
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