JP6361400B2 - 二軸延伸ポリエステルフィルム、それを用いた偏光板、液晶ディスプレイ - Google Patents
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Description
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、フラットパネルディスプレイやタッチパネル分野において、偏光子保護フィルムや透明導電フィルムなど、各種光学用フィルムの需要が高まっており、その中でも、偏光板保護フィルム用途では、低コスト化やディスプレイの薄型化・小型化を目的として、従来のTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから二軸延伸ポリエステルフィルムへの置換が盛んに検討されている。
また、二軸延伸ポリエステルフィルムは、延伸に伴ってフィルム面に沿って生じる面内屈折率と、フィルム面に垂直な、いわゆる厚さ方向に生じる屈折率とが、ある直線に従ったトレード・オフ関係を持つことが知られている(例えば、特許文献1、2)。収縮率や破断強度といったフィルムの機械的性質を向上するために面内の屈折率を高めると、反動として厚さ方向の屈折率が低減してリタデーションが大きくなり、3波長蛍光灯でフィルムを評価した際に、フィルム表面に虹ムラが発生し、透明性に乏しくなる問題があった。
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、二軸延伸ポリエステルフィルムでありながら大画面の液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際にクロスニコル状態で干渉色を呈することなく、また、斜方から見て虹むらを抑えたフィルムを提供することを目的とする。
熱可塑性(結晶性)ポリエステルAからなるA層とA層とは異なるポリエステルBからなるB層が交互に3層以上積層されてなる二軸延伸ポリエステルフィルムであって、フィルム面に対して入射角度0°におけるリタデーションRe(0°)が400nm以下、入射角度50°におけるリタデーションRe(50°)が1200nm以下であり、示差走査熱量計で示される融解エンタルピーΔHmが10〜35 J/g、結晶化エンタルピーΔHccが10 J/g以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、熱可塑性(結晶性)ポリエステルAからなるA層とA層とは異なるポリエステルBからなるB層を交互に3層以上積層した構造を含んでなる二軸延伸ポリエステルフィルムであって、フィルム面に対する入射角度0°におけるリタデーションRe(0°)が400nm以下、入射角度(50°)におけるリタデーションRe(50°)が1200nm以下、示査走査熱量計で示されるΔHmが10〜35J/g、ΔHccが10J/g以下であることが必要である。
本発明でいうところのポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られる縮重合体のことである。ポリエステルの工業的製造方法としては、公知の如く、エステル交換反応(エステル交換法)や直接エステル化反応(直接重合法)が用いられる。
ここで、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4‘−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い屈折率を発現するテレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく用いられる。ジカルボン酸成分はこれらのうち1種類を用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明に用いるポリエステルAおよびポリエステルBは、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。また、共重合成分としては、前記のジカルボン酸成分およびジオール成分が、それぞれ1種以上、共重合されていることが好ましい。
交互に3層以上積層した構造を含んでなるとは、ポリエステルAとポリエステルBとが厚さ方向に規則的な配列で積層されていることをいい、たとえばA(BA)n(nは自然数)の規則的な配列で積層されたものである。ポリエステルBは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)においてポリエステルAとは異なる融点やガラス転移点温度を示すものを指す。このように熱特性の異なるポリエステルが交互に積層されることにより、二軸延伸フィルムを製造する際に各々の層の配向状態を高度に制御する事が可能となる。また、層数が増加するに従い、各々の層での配向の成長を抑制できる傾向がみられ、交互に多くの層を積層することでフィルムのリタデーションを制御しやすくなる。層数は、好ましくは5層以上600層以下であり、より好ましくは51層以上600層以下であり、さらに好ましくは200層以上500層以下である。層数が高い方が好ましいのは、フィルム層間での光線干渉反射により、入射光線を反射させる効果をフィルムに付与するためである。また、層数が増えるに従い、製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることによるハンドリング性の悪化を招く。特に、フィルム厚みが厚くなることは合わせガラス化の工程での工程不良の原因ともなりうるために、現実的には600層以下が適している。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいては、フィルム面に対する入射角度が0°におけるリタデーションRe(0°)の値が400nm以下であることが必要である。一般的に、リタデーションとは、フィルムの面内における直交する2方向の屈折率差の最大値とフィルム厚みの積から算出されるものであるが、本発明のような積層されたフィルムにおいては容易にフィルムとしての屈折率を測定できないため、間接的な手法で算出されたリタデーションの値をもってリタデーションとする。具体的には、王子計測機器株式会社から販売されている光学的な手法をもってリタデーションを測定する位相差測定装置KOBRAシリーズにて計測された値を用いるものとする。偏光子と貼りあわせて用いる偏光子保護フィルムでは、リタデーションの値が高くなると液晶ディスプレイに実装した際に干渉色や虹むらを生じるようになり、品位が低下するため問題となる。本発明で求められるRe(0°)は400nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下である。リタデーションの値が小さくなるに従い、偏光子保護フィルムとして液晶ディスプレイに実装した際の干渉色が生じにくくなり、好ましいものとなる。
さらに、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいては、フィルム面に対する入射角度が50°におけるリタデーションRe(50°)の値が1200nm以下であることが必要である。斜め方向(角度θ)から入射した場合のリタデーションRe(θ)は、面内の屈折率差だけでなく、フィルム厚さ方向に生じる屈折率を加味して算出される厚さ方向リタデーションRthの影響を受け、Re(0°)とRthを基に入射角θに応じたベクトルとして表される。一般に、結晶性高分子を面内で配向させる場合、面内の配向の強さに応じて面直方向の配向が小さくなる、いわゆるトレード・オフの関係を示す。すると、面内の屈折率と厚さ方向の屈折率の差が大きくなり、これが厚さ方向リタデーションRthの増加という形で現れ、ひいては斜め方向リタデーションが増加することになる。斜め方向のリタデーションが大きくなると、偏光子保護フィルムとして液晶ディスプレイに実装した際に、斜め方向から見て虹ムラが生じ、視認性が低下するため問題となる。本発明で求められるRe(50°)は先に述べたとおり1200nm以下であり、好ましくは500nmであり、さらに好ましくは250nm以下である。Re(50°)を低下させるための手段としては、フィルムの製膜工程において樹脂を無配向化して屈折率の異方性をゼロにする方法や、屈曲性の高分子を共重合成分として含有させることで結晶をランダムな方向に配向させて厚さ方向にも屈折率を持たせる方法が挙げられる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルム厚みが5〜40μmであることが好ましい。より好ましくは5〜20μmである。フィルム厚みが5μmより薄いとフィルムにこしが出ず製膜・フィルムの巻き取りなどが困難となるほか、ガラスへの張り合わせなどの取り扱いも難しくなることがある。40μmより厚い場合は、偏光板自体の厚みが増えるため、実用面で問題が生じることがある。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、示差走査熱量測定において融解エンタルピーΔHmが10〜35J/g、結晶化エンタルピーが10J/g以下を示すことが必要である。融解エンタルピーは、樹脂の結晶性が高いほど値が大きくなるが、結晶性高分子のみで構成されるフィルムでは35J/gを優に超過する。また、結晶化エンタルピーの値は、結晶化速度に依存して決定され、結晶性が高いほどエンタルピーの値が大きくなる。総じて、目標とする値を満足するためには、結晶性の樹脂に共重合成分を加えて配向結晶化を抑制して非晶性を増加させることが必要であることにより達成することができるものである。
先に記述したとおり、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムにおいては面内の配向を保ちつつ、厚さ方向に屈折率を持たせることが求められる。このような二軸延伸したフィルムの配向状態を示すパラメーターとして面配向係数fnが用いられる。本発明では、数1および数2で表される面配向係数fnが0.12以下、面配向係数fnと面内平均屈折率Nxyが数3を満足することが最も好ましい。ここでいうNxはフィルム面内における遅相軸方向の屈折率、Nyはフィルム面内における遅相軸に垂直な方向の屈折率、Nzはフィルムの厚さ方向の屈折率を示す。
数1 fn = Nxy ―Nz・・・式(1)
数2 Nxy = (Nx+Ny)/2・・・式(2)
数3 fn<1.566×Nxy−2.439、かつNxy≧1.60・・・式(3)
面内平均屈折率Nxyを1.60以上にすることは、フィルムを構成する樹脂の組成、面方向の延伸条件や熱処理条件の組合せにより達成することが可能である。一方で、フィルム面内の配向が強く起こると、厚さ方向は低減してトレード・オフ関係を示すことは先に述べたとおりである。特に、一般的なポリエステル樹脂を用いた例では、面内平均屈折率Nxyと面配向係数fnが、1.566の傾きをもつ数3の前式の不等号を等号にした線形関係に沿った相関を示す。つまり、フィルム面内の屈折率が高いことはフィルムの面方向の熱収縮率や破断強度などの機械的特性が優れることを意味する一方で、その反動として厚さ方向の屈折率が低くなるため、厚さ方向リタデーションRthが大きくなることを意味している。そのため、偏光板としてクロスニコル条件下に配置した際に、斜め方向入射光線がフィルム表面と空気層や、異なる屈折率を有するフィルム層界面で光線多重反射することに伴う色づき(以下、虹むらと称する)が観測され、実装した際に視認性が低下する可能性が高い。そこで本発明では、トレード・オフの線形関係よりも面配向係数を低くして虹ムラを抑制し、かつフィルムの物性を維持するように面内平均屈折率を1.60以上に保つことが好ましい。
これらの問題点を解決する方法として最も好ましくは、使用するポリエステルに共重合成分を含有する手法である。その際、ポリエステルフィルム本来の機械的特性を失わないために、二軸延伸後のフィルムの面内平均屈折率を1.60以上にする組合せが好ましい。共重合成分は、ポリエステルA、ポリエステルB、およびその両方に添加してもよい。かかる共重合成分を導入する方法としては、フィルムを製造する原料として所定量の共重合成分を含む共重合ポリエステルを利用しても良く、所定量より多い共重合成分を含有する共重合ポリエステルと、共重合成分の少ない共重合ポリエステルもしくはホモポリエステルとをアロイして得られる原料を用いても良い。具体的に、イソフタル酸(IPA)を10mol%添加したポリエチレンテレフタレートを原料として利用する場合には、ポリエチレンテレフタレートに10mol%のIPAを予め重合処理した共重合ポリエステルチップを用いてもよく、ポリエチレンテレフタレート原料チップとポリエチレンテレフタレートに20mol%のIPAを重合処理した共重合ポリエステルチップとを50:50の重量比率で混合したものを原料として用いてもよい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムに用いるポリエステルは、高精度で積層構造が実現しやすい観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートと同一の基本骨格を含む共重合体を用いることが好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことを示しており、ポリエチレンテレフタレートの場合はエチレンテレフタレートが、ポリエチレンナフタレートの場合はエチレンナフタレートが基本骨格となる。ポリエステルAとポリエステルBが同一の基本骨格を含む樹脂であると、積層精度が高く、積層界面での層間剥離(デラミネーション)が生じにくくなるものである。ポリエチレンテレフタレートに対して、ポリエチレンナフタレートは面方向にポリマーが配向しやすい反面、層間剥離をより起こしやすいことから、積層したフィルムという観点ではポリエチレンテレフタレートを基本骨格とすることがより好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムでは、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド、スピログリコール、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸から少なくとも1つ以上選ばれた共重合成分を含むことが好ましい。また、2種類以上の共重合成分を選択する際には、前記以外の共重合成分として、ポリエチレングリコール2000、m−ポリエチレングリコール1000、m−ポリエチレングリコール2000、m−ポリエチレングリコール4000、m−ポリプロピレングリコール2000、ビスフェニルエチレングリコールフルオレン(BPEF)、フマル酸、アセトキシ安息香酸、などを含有しても良い。中でも、A層、B層いずれか、またはその両層が、スピログリコールやイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合したポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂であることが最も好ましい。スピログリコールを共重合したポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離も起こりにくい。さらに、イソフタル酸はベンゼン環内の官能基の位置が直線的でないため結晶性を大きく低下させることができる一方で、平面性が高いため全体的に高い屈折率を示す。かかる共重合成分を最外層に位置するポリエステルA層に用いる場合には、製膜性を低下させないためにも少量添加にすることが好ましく、内層であるポリエステルB層に添加する場合には、共重合成分が主たる構成成分にならない程度に要求特性を満足できる量を添加して差し支えないものである。
本発明に用いる共重合ポリエステルとして、積層されたフィルムの最外層に位置するポリエステルAは、完全な結晶性もしくは多少なりとも配向結晶化可能な樹脂であることが望ましく、共重合成分を2mol%以上20mol%以下含んでなるポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートを用いることが好ましい。より好ましくは5mol%以上20mol%以下である。さらに好ましくは、5mol%以上10mol%以下である。基本骨格となるポリエステルとの共延伸性、さらに共重合ポリエステルの存在により面内の配向を抑制してフィルム厚さ方向の屈折率を向上させるためにも、共重合成分の含有量は、2mol%以上が好ましい。一方で、過度に共重合量を増やすと、樹脂間の相溶性が悪くなるために高精度での積層構造が実現し難くなり、かつ層間の剥離が起こりやすくなるほか、フィルムにした際に結晶性が保持できずフィルムのロールへの粘着など製膜し難くなる観点から、その共重合量は20mol%以下であることが好ましい。
また、内層を構成するポリエステルBは、多少でも配向結晶化する成分もしくは完全非晶の成分であることが望ましく、共重合成分を15mol%以上50mol%以下含有することが好ましく、より好ましくは15mol%以上30mol%以下である。なお、内層とは最外層以外のいずれか一層のことを意味する。15mol%より少ない場合は、A層の共重合成分の含有量が少ないことから、総じて共重合成分の寄与を十分に受けることが出来ず、フィルム厚さ方向への屈折率の効果が期待できない可能性が高い。共重合成分を15mol%より多くすることで、ポリエステルBは非晶性を示しやすくなるが、非晶性樹脂は二軸延伸フィルムを製造する際に配向が生じにくいため、熱可塑性樹脂BからなるB層のリタデーションの増加を抑制でき、ひいては積層フィルムのリタデーションの不均一を抑制する事が容易となるものである。特に、二軸延伸フィルムを製造する際に熱処理工程を設けた場合にこの効果は顕著となり、フィルム長手方向及び幅方向への延伸工程で非晶性樹脂からなる層に生じた配向を熱処理工程で完全に緩和させることができ、実質的にポリエステルA層に起因するリタデーションのみが積層二軸延伸ポリエステルフィルムとしてのリタデーションに影響を与えるようになるため好ましい。非晶の存在は、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの示差走査熱量測定において、融解ピークを1つしか示さないことで確認する事ができる。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、全光線透過率が90%以上であり、かつ、ヘイズ値も2%以下を示すことが好ましく、より好ましくはヘイズ値1%以下である。ヘイズ値が高く光線が透過されない場合、偏光板としてフィルムを貼りあわせた際に光線が十分に透過されず、液晶ディスプレイに実装した際に視認性を低下させる恐れがある。
製膜性を損なうことなくフィルム厚さ方向の屈折率を低下させないために、共重合成分を含んだ状態で、A層の層厚みの総和/B層の層厚みの総和が1.0以上を示すことが好ましい。ここでいう層厚みの総和とは、積層フィルムの幅方向の中央において切り出した断面において、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて積層状態の観察を実施し、同一の樹脂からなる層について得られた層厚みをすべて足し合わせた総和である。A層の層厚みの総和/B層の層厚みの総和が1.0より小さくなると、共重合量の多いB層の寄与が大きくなり、フィルム製膜時の破断が生じやすくなる問題がある。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、波長300〜380nmの範囲における反射率を15%以上にすることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。積層した二軸延伸ポリエステルフィルムでは、フィルムの厚さ、層間距離ならびに層数を特定の設計にすることにより、空気とフィルムの界面ならびにフィルムの層間の界面での多重反射の効果により、特定の波長範囲の光線を反射させることが可能である。この効果を利用して、紫外線範囲の300〜380nmの光線のみを特異的に反射させることが可能となる。具体的には、各層の平均の層厚みを45〜65nmに設定することで達成可能となる。
紫外光の反射が求められる理由としては、偏光板内の偏光子の劣化を抑制するためである。偏光子とは、特定の振動方向のみを有する光を透過させる機能を有するものであり、ヨウ素や二色性染料などで染色したポリビニルアルコール(PVA)系フィルムが最も多く使用されている。この偏光子は、有機材料により構成されているため、紫外線によって劣化されやすいという問題がある。特に、280〜380nmの波長の紫外線を照射することで劣化が起こるため、この領域における紫外線光を偏光子に届く手前で遮蔽することにより、偏光子の劣化、あるいは液晶の劣化を防止することが可能となる。また、画像表示装置のバックライトとして蛍光管を用いている場合、偏光板にバックライトの蛍光管から直接光が照射されるため、偏光子の保護膜に紫外線遮蔽性能を付与することが好ましい。
光線を遮蔽する機構として、反射以外に吸収を併用してもよい。光線吸収を利用する場合、積層した二軸延伸フィルムの最外層を含むポリエステルA層もしくは内層であるポリエステルB層あるいはその両方に添加してもよい。中でも、積層した二軸延伸ポリエステルフィルムのB層にのみ紫外線吸収剤を含有することが最も好ましい。最外層に紫外線吸収剤を添加すると、添加した紫外線吸収剤がフィルム表面に析出する現象、およびそれが揮散する現象が発生しやすくなり、これによってフィルム製膜機が汚染され、析出物が加工工程において悪影響を及ぼすため好ましくないものである。内層にのみ添加することで、最外層が紫外線吸収剤の揮散を防ぐフタとしての役割を果たすため、析出現象が起こりにくくなり好ましいものである。
ポリエステルフィルム中に含有される紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤が好ましい。無機系の紫外線吸収剤はベースとなる樹脂と相溶せずヘイズの上昇につながり、液晶表示した際の視認性を低減させることに繋がるため、好ましくない。
添加する有機系紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、たとえば、フェニルサリチレート、t−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等、ベンゾフェノン系、例えば、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−オクトキベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−ドデシロキシベンゾフェノン、2−2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン等、ベンゾトリアゾール系、たとえば、2−(2´−ヒドロキシ−5´−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−t―メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´、5´−ジ―t―ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´―t―ブチル―5´―メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´、5´−ジ―t―ブチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール等、天然物系(たとえば、オリザノール、シアバター、バイカリン等)、生体系(たとえば、角質細胞、メラニン、ウロカニン等)が挙げられる。これら有機系紫外線吸収剤は、1種類、または2種類以上併用して用いることが出来る。これらの有機系紫外線吸収剤には紫外線安定剤として、ヒンダードアミン系化合物を併用することが出来る。
紫外線吸収剤の含有量は、ポリエステルA層とポリエステルB層の両層に添加する場合でも、その添加量の総和が2.00wt%以下であることが好ましく、より好ましくは1.00wt%以下であり、さらに好ましくは0.60wt%以下である。
また、熱可塑性樹脂中には、紫外線吸収剤以外のその他各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などが本来満たすべきフィルム特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを示差走査熱量計で測定した際に、結晶部分融解温度Tmetaが190℃以下を示すことが好ましい。Tmetaはフィルムの熱固定温度に由来するものであり、190℃より高い温度で熱処理を行うと配向結晶化が進行し、屈曲性の高分子が伸びきってしまい、位相差低減効果を損なう可能性がある。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるものではない。
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などが取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させたりする方法も好ましい。
また、ポリエステルAとポリエステルBの複数の樹脂を2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出し、多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。
このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、上述の通りキャスティングフィルムが得られる。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、つづいて長手方向および幅方向に二軸延伸されることが好ましい。延伸は、逐次に二軸延伸しても良いし、同時に二軸延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
つづいて幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、低配向角およびフィルムの熱寸法安定性を付与するために熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理などを併用してもよい。
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
以上のようにして得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、市販のPVA中にヨウ素を含有させて配向させて作成されたPVAシートと貼り合わされて偏光板として用いられることが、該フィルムの反射と吸収の効果で紫外線からPVA液晶を保護し、さらに、屈折率の異方性を抑制することで液晶ディスプレイなどの表示装置に実装した際に光干渉や虹ムラなどを抑えることが出来る観点から好ましい。
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、RuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。また、1枚の画像に取り込められるすべての層の中で最も厚みの薄い層(薄膜層)の厚みにあわせて、薄膜層厚みが50nm未満の場合は10万倍、薄膜層厚みが50nm以上500nm未満である場合は4万倍、500nm以上である場合は1万倍の拡大倍率にて観察を実施した。
(1)項で得られたTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をビットマップファイル(BMP)もしくは、圧縮画像ファイル(JPEG)でパーソナルコンピューターに保存し、次に、画像処理ソフト Image−Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ1でデータ採用した後に、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(Visual Basic for Applications)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から幅方向5.0cm×長手方向4.0cmで切り出し、フィルム幅方向が本測定装置にて定義されている角度0°となるように装置に設置し、入射角0°における波長590nmのリタデーションを測定した。入射角度50°におけるリタデーションRe(50°)は、同測定装置の入射角依存性測定により測定した。
セイコー電子工業(株)製 EXSTAR DSC6220を用いた。ポリエステルフィルム試料5mgをアルミニウム製受皿上、25℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温させた際の結晶化ピーク、融解ピークとベースラインとの積分値をそれぞれΔHcc、ΔHmとした。
セイコー電子工業(株)製 EXSTAR DSC6220を用いた。ポリエステルフィルム試料5mgをアルミニウム製受皿上、25℃から300℃まで、昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき観測される融点より低温側で融点近傍にある(結晶化温度以上融点以下)微小吸熱ピークを結晶部分融解温度Tmetaとした。
アタゴ社製アッベ式屈折計を使用した。ジヨードメタンをマウントして、試料フィルムを測定面が下になるようにプリズムに密着させ、単色光ナトリウムD線(589nm)を光源としてNx,Ny,Nzを測定した。得られた値から、数1に従い、面配向係数fnを求めた。なお、測定試料は幅方向センター位置より採取した。
数1 fn = Nxy ― Nz・・・式(1)
(7)平均反射率
日立製の分光光度計U−4100を使用した。積分球を取り付け、酸化アルミニウム標準白色板(本体付属)の反射を100%としたときの、300〜380nm領域での相対反射率を測定し、該範囲での平均反射率を求めた。条件として、スキャン速度を600nm/min,サンプリングピッチを1nmに設定し、連続的に測定した。
スガ試験機(株)製 ヘイズメーター(HGM−2DP)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から10cm×10cmで切り出し、旧JIS−K−7105に準じて測定を行うことで全光線透過率ならびにヘイズ値を測定した。
PVA中にヨウ素を吸着・配向させて作成した偏光度99.9%の偏光板の一方の面にフィルムの幅方向中央部分から幅方向に420mm、長手方向に310mmのサイズで切り出したサンプルに貼り合わせてテストピースとした。作成したテストピースとフィルムを貼り付けていない偏光板とをクロスニコルの配置にて重ね合わせLED光源(トライテック製A3−101)上においた場合の視認性を確認した。
23℃の暗室にて、LED光源の液晶表示装置に白色画像を表示させ、画像表示装置上に幅方向に420mm、長手方向に310mmのサイズで切り出したフィルムを載せた。フィルムの面直方向を基準として仰角を40°〜80°で変化させながら目視することで、虹状の着色の有無を確認した。
◎:角度の変化に対して、色相変化はほとんど観られない。
○:色相が変化する範囲が、仰角40°〜50°の狭い範囲であり、実用上問題ない
△:色相の変化する範囲が、仰角40°〜60°の範囲であり、使用は出来る限り避けたい
×:角度変化に対して色相が顕著に変化し、実用面で全く適さない
ポリエステルAとして、融点が258℃のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。またポリエステルBとして融点を持たない非晶性樹脂であるシクロヘキサンジメタノール30mol%共重合したエチレンテレフタレート(PE/CHDM30T)を用いた。準備したポリエステルAとポリエステルBをそれぞれ、2台の単軸押出機に投入し、前者は280℃、後者は230℃で溶融させて、混練した。次いで、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて計量しながら、スリット数247個のフィードブロックにて合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に247層積層された積層体とした。ここでは、スリット長さ、間隔は全て一定とした。得られた積層体は、ポリエステルAが124層、ポリエステルBが123層であり、厚さ方向に交互に積層されていた。該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸のキャストフィルムを得た。
得られたキャストフィルムを、100℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、フィルム長手方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、そのフィルム両面の処理面に(#6のメタバーで易滑層となる粒径100nmのコロイダルシリカを3wt%含有した酢酸ビニル・アクリル系樹脂を含有した水系塗剤をコーティングし(以後、コーティングを行うとは、前記内容を意味する。)、透明・易滑・易接着層を形成した。
実施例1において、ポリエステルAとしてイソフタル酸を10mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PET/I10)を用いた以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたフィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と比較して面配向係数fnが低減してRe(50°)が低減した。光線透過率が実施例1と比べて向上した結果、偏光板として実装した際の視認性は向上し、虹ムラも低減したディスプレイ部材として十分に使用に適したフィルムとなった。
実施例2において、ポリエステルA層とポリエステルB層の積層比を1.3とした以外は実施例2と同様にしてフィルムを得た。積層比を増やしたことで、偏光板として実装した際に虹ムラはやや確認されるものの、ディスプレイ部材として十分に使用に適したフィルムであった。
実施例3において、用いる積層装置をスリット数が491個である装置を用いた以外には、実施例3と同様にフィルムを得た。実装した際に虹ムラが実施例3と同程度であり、ディスプレイ部材として利用できるものであった。
実施例4において、厚みを30μmに増大させる以外は、実施例4と同様にフィルムを得た。厚みを上げたことで紫外光反射の効果を強く得ることが出来たが、実装した際の見栄えはやや悪化した。厚みが大きくなることでリタデーションの値も大きくなったが、それに伴う干渉ムラは強く見られず、実施例4と同等のポリエステルフィルムを得た。
実施例3において、用いる積層装置をスリット数が599個である装置を用い、厚みを38μmとした以外には、実施例2と同様にフィルムを得た。厚みはさらに大きくなったものの、実施例5と同等のポリエステルフィルムを得た。
実施例2において、ポリエステルBとしてシクロヘキサンジメタノールを25mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM25T)を用いる以外は、実施例2と同様にフィルムを得た。斜め方向から観たときの虹ムラを抑えることは出来た。一方で、やや平均反射率が低下することになったものの、実施例1〜6対比でディスプレイ部材として十分に使用に適したフィルムであった。
実施例2において、ポリエステルBとしてスピログリコールを20mol%とシクロヘキサンジカルボン酸30%を共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/SPG20T/CHDC30)を用いる以外は、実施例2と同様にフィルムを得た。光線透過率が向上して視認性は高まり、虹ムラは観測されなかった。紫外光の透過抑制も偏光板にして問題となることはなく、ディスプレイ部材として十分使用に適したフィルムであった。
実施例2において、ポリエステルBとしてイソフタル酸を25mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PET/I25)を用い、フィルム長手方向に延伸する際の温度を90℃に、幅方向に延伸する際の温度を160℃に変更する以外は、実施例2と同様にフィルムを得た。面内の配向をある程度持たせた状態で、斜め方向のリタデーションを抑えることが出来るポリエステルフィルムを得ることが出来、偏光板として実装した際にも虹ムラなく視認性に優れた画像を表示することが出来た。
実施例9において、ポリエステルAとして実施例1で用いたものと同じポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、同様にしてフィルムを得た。実装した際に問題となる程度ではないものの干渉ムラや虹ムラが若干観察される結果となった。
実施例9において、ポリエステルAとして、実施例1で用いたポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸25%共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/I25)を80:20の比率でアロイしたポリエステルを用いた以外は、実施例9と同様にフィルムを得た。イソフタル酸成分が実質5mol%の添加であり、実施例9対比で斜め方向リタデーションの低減は劣るものがあったが、偏光板として実装した際に虹ムラや干渉色は観察されず、視認性の高い画像表示が得られた。
実施例11において、ポリエステルA層とポリエステルB層の積層比を1.0にした以外は、実施例11と同様にフィルムを得た。積層比を下げたことで、非晶性ポリエステルBの寄与を大きく得ることが出来、より面配向係数を低下させることが出来、斜め方向リタデーションを大きく下げることが出来た。実施例9と同様に、偏光板として実装した際に虹ムラや干渉色は観察されず、視認性に優れた画像表示が得られた。
実施例12において、ポリエステルAとして、実施例1で用いたポリエチレンテレフタレートと、シクロヘキサンジメタノール25%共重合ポリエチレンテレフタレート(PE/CHDM25T)とを60:40の比率でアロイしたポリエチレンテレフタレート原料を用いた以外は、実施例12と同様にフィルムを得た。実施例9と同様に、偏光板として実装した際に虹ムラや干渉色は観察されず、視認性に優れた画像表示が得られた。
実施例12において、ポリエステルAとして、実施例1で用いたポリエチレンテレフタレートと、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート30%共重合ポリエチレンテレフタレート(PE/BPA−EO30T)とを80:20の比率でアロイしたポリエチレンテレフタレート原料を用いた以外は、実施例12と同様にフィルムを得た。実施例9と同様に、偏光板として実装した際に虹ムラや干渉色は観察されず、視認性にも優れた画像表示が得られた。
実施例9において、ポリエステルAとしてナフタレンジカルボン酸12mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/N12)を用い、フィルム長手方向に延伸する際の温度を100℃に、幅方向に延伸する際の温度を180℃に変更する以外は、実施例9と同様にフィルムを得た。また、実施例9と同様に、偏光板として実装した際に虹ムラや干渉色は観察されず、透明性の高い画像表示が得られた。
実施例1において、ポリエステルBとしてポリエステルAと同じポリエチレンテレフタレートを用い、280℃で混錬した以外は、同様の手法でフィルムを得た。偏光板として画像表示装置に実装しても、干渉色や虹ムラが強く観察され、全く実用できるものではなかった。
実施例6において、ポリエステルA層とポリエステルB層の積層比を1.0とした以外は実施例6と同様にしてフィルムを得た。フィルムの厚さが厚いことで、Re(0°)が高い値を示した。画像表示装置に実装しても、干渉ムラや虹ムラが観察され、実用できるものではなかった。
実施例11において、ポリエステルA層とポリエステルB層の積層比を0.3にした以外は、実施例11と同様にフィルムを得た。積層比を下げたことで、非晶性ポリエステルBの寄与が強くなり、結晶成分が損なわれたために製膜に困難を要した。偏光板に実装を試みたが、PVAとの相性も悪く偏光板の作成には至らず、実用に適した性能のフィルムではなかった。
Claims (9)
- 熱可塑性(結晶性)ポリエステルAからなるA層と、ポリエステルAとは異なるポリエステルBからなるB層を少なくとも交互に3層以上積層した二軸延伸ポリエステルフィルムであって、フィルム面に対する入射角度0°におけるレタデーションRe(0°)が400nm以下、入射角度50°におけるレタデーションRe(50°)が1200nm以下、フィルム厚みが5〜40μmであり、示差走査熱量計で示されるΔHmが10〜35J/g、ΔHccが10J/g以下であることを特徴とする二軸延伸ポステルフィルム。
- 式(1)及び式(2)で表される面配向係数fnが0.12以下であり、面配向係数fnと面内平均屈折率Nxyが式(3)の関係を満たす、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
fn=Nxy−Nz ・・・式(1)
Nxy=(Nx+Ny)/2 ・・・式(2)
fn<1.566Nxy−2.439、かつNxy≧1.60・・・式(3)
(ここで、Nxはフィルム面内における遅相軸方向の屈折率、Nyはフィルム面内における遅相軸方向に対して垂直方向の屈折率、Nzはフィルム厚み方向の屈折率である。) - ポリエステルAは、共重合成分が2mol%以上20mol%以下のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート共重合体であり、ポリエステルBは、共重合成分が15mol%以上50mol%以下のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート共重合体である請求項1または2のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 全光線透過率90%以上であり、ヘイズ2%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
- A層とB層が交互に5層以上600層以下積層され、A層の層厚みの総和/B層の層厚みの総和が1.0以上であり、波長300nm〜380nm範囲における平均反射率が15%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
- ポリエステルAまたはポリエステルBに、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド、スピログリコール、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸から少なくとも1つ以上選ばれた共重合成分を含む請求項3に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 結晶部分融解温度Tmetaが190℃以下である請求項1〜6のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板。
- 請求項8に記載の偏光板を用いた液晶ディスプレイ。
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