JP6015382B2 - 積層フィルムならびに遮熱部材 - Google Patents

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Description

本発明は、積層フィルムおよびこれを用いた遮熱部材に関する。
近年、環境保護による二酸化炭素排出規制を受けて、夏場の外部、特に太陽光による熱の流入を抑制できる遮熱ガラスが自動車や電車などの乗り物、建物の窓ガラスとして注目されている。
このような遮熱ガラスの一例として、ガラス中や合わせガラスに用いられる中間膜中に熱線吸収材を含有させ、熱線を熱線吸収材にて遮断するもの(たとえば、特許文献1)、金属膜をガラス表面上にスパッタなどにより形成し熱線を反射させて遮断するもの、(たとえば特許文献2)屈折率の異なるポリマーが交互に積層されたポリマー多層積層フィルムをガラス及び中間膜の間に挿入して熱線を反射させて遮断するもの(たとえば特許文献3)などがある。この中で、熱線吸収材を用いる方法では、外部から入射される太陽光を熱エネルギーに変換するためその熱が室内へと放射されて遮熱効率が低下する問題がある。加えて、熱線を吸収することでガラス温度が上昇し、外気温との差によりガラス本体が破損する場合もある。また、金属膜をガラス表面上にスパッタなどにより形成する方法では、熱線のみではなく可視光も反射するために着色しやすく、かつ電磁波も遮蔽するために内部で通信機器などが使用できない場合もある。
一方、ポリマー多層積層フィルムは、その層厚みを制御して、反射する波長を選択できるため、近赤外領域の光を選択的に反射することができ、可視光線透過率を維持しつつ遮熱性能を向上させることができる。また、金属など電波を遮断するものを含まないために、優れた電波透過性を保持したものとなる。
しかし、ポリマー多層積層フィルムにおいては、主に目的とする反射波長(主反射波長λ)以外にも、λ/n(nは整数)の波長においてもn次の干渉反射が生じる。このため、たとえば、1200nm以上の波長帯域に主反射波長が存在するように層厚みを制御した場合、3次の干渉反射が400nm以上の可視光領域にも生じることとなる。また、ポリマー多層積層フィルムにおいては、光の入射角度が大きくなるに従い、干渉反射の生じる波長が低波長シフトするという特徴があり、斜めからみたときの赤みの反射を抑制するためには、主反射波長以外を850nm以上とする必要がある。このように、高透明・無彩色が求められるような用途においては、赤外線領域の反射波長の帯域が制約され、遮熱性能に限界があった。
上記の課題に対して、ポリマー多層積層フィルムによる干渉反射に加えて、熱線吸収材を併用することにより遮熱性能を高めることが提案されている(たとえば、特許文献4)。熱線吸収材料を併用することにより、ポリマー多層積層フィルムではカットできていない波長の光もカットできるようになるものである。しかし、熱線吸収材料は、コーティング膜としてポリマー多層積層フィルムの面上に形成される場合が多いが、このようなフィルムにおいては、特に合わせガラスを形成した際に隣接する中間膜との密着性が十分でなく、作製された合わせガラスが安全基準を満たさない場合があるという課題もあった。
特開2010−17854号公報 特許第3901911号公報 特許第4310312号公報 特表2010−501458号公報
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、高い遮熱性能を示しつつも、合わせガラスを作製した際に問題のない密着性を示す積層フィルムならびに遮熱部材を提供することを目的とする。
係る課題を解決するため、本発明は、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体のいずれかからなる中間膜と組み合わせて用いられる合わせガラス用の積層フィルムであって、前記積層フィルムが、異なる光学的性質を有する2種以上の熱可塑性樹脂が交互にそれぞれ50層以上積層された多層構造を有する基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくともいずれかの面に積層された酸化タングステンを含む熱線吸収層とを含んでなり、前記熱線吸収層の表面自由エネルギーが35mN/m以上55mN/m以下であることを特徴とする積層フィルム、である。
本発明によって、高い遮熱性能を示しつつも、合わせガラスを作製した際に問題のない密着性を示すようになり、本積層フィルムを用いて作製された合わせガラスも、安全基準を十分に満たすものとなる。
本発明の積層フィルムの層厚みの分布の一例を示す説明図である。
以下に本発明の実施の形態について述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。また、説明を簡略化する目的で一部の説明は異なる光学的性質の異なる2種の熱可塑性樹脂が交互に積層された積層フィルムを例にとり説明するが、3種以上の熱可塑性樹脂を用いた場合においても、同様に理解されるべきものである。
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂を用いてなる必要がある。熱可塑性樹脂は一般的に熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂と比べて安価であり、かつ公知の溶融押出により簡便かつ連続的にシート化することができることから、低コストで積層フィルムを得ることが可能となる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、異なる光学的性質を有する2種以上の熱可塑性樹脂が交互にそれぞれ50層以上積層された多層構造を有する基材フィルムを備えてなる必要がある。ここでいう異なる光学的性質とは、面内平均屈折率が0.01以上異なることをいう。また、ここでいう交互に積層されてなるとは、異なる樹脂からなる層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいい、たとえば異なる光学的性質を有する2つの熱可塑性樹脂A、Bからなる場合、各々の層をA層,B層と表現すれば、A(BA)n(nは自然数)といったように規則的な配列で積層されたものである。このように光学的性質の異なる樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係よって特定の波長の光を反射させることが可能となる。また、積層する層数が50層未満の場合には、赤外領域において十分な帯域に渡り高い反射率を得られず充分な遮熱性能を得ることができない。好ましくは、それぞれ200層以上であり、より好ましくは、それぞれ300層以上である。前述の干渉反射は、層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになり、高い遮熱性能を備えた積層フィルムが得られるようになる。また、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化が生じ、特にフィルム厚みが厚くなることで合わせガラス化の工程での工程不良の原因ともなるために、現実的にはそれぞれ1000層程度が実用範囲となる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリアセタールなどの鎖状ポリオレフィン、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボーネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。この中で、強度・耐熱性・透明性および汎用性の観点から、特にポリエステルを用いることがより好ましい。これらは、共重合体であっても、混合物であってもよい。
このポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールあるいはそれらのエステル形成性誘導体を主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い面内平均屈折率を発現するテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、例えば、上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。
本発明の積層フィルムの基材フィルムにおいては、隣接する異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂によって構成される層の面内平均屈折率の差が0.03以上であることが好ましい。より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上0.15以下である。面内平均屈折率の差が0.03以上とすることにより、十分な反射率が得られ、十分な遮熱性能を得ることが可能である。この達成方法としては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂が結晶性であり、かつ少なくとも一つの熱可塑性樹脂が非晶性もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂の混合物を用いることである。この場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において容易に屈折率差を設けることが可能となる。
本発明の積層フィルムの基材フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のSP値(溶解性パラメータともいう)の差の絶対値が、1.0以下であることが第一に好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなり、また積層精度を高める上で有利である。より好ましくは、異なる光学的性質を有するポリマーは同一の繰り返し単位を含むことが好ましい。たとえば、一方の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、高精度な積層構造が実現しやすい観点から、エチレンテレフタレート単位を含むことが好ましい。
また、本発明の積層フィルムの基材フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のガラス転移温度差が20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度の差が20℃より大きい場合には積層フィルムを製膜する際の厚み均一性が不良となり、遮熱性能にばらつきが生じる原因となる。また、積層フィルムを成形する際にも、過延伸が発生するなどの問題が生じやすいためである。
上記の条件を満たすための樹脂の組合せの一例として、本発明の積層フィルムの基材フィルムでは、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、他の少なくとも一つの熱可塑性樹脂がスピログリコールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルとは、スピログリコールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。スピログリコールカルボキシレート単位含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、他の少なくともひとつの熱可塑性樹脂がスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を用いて得られるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を用いて得られるポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さく、接着性にも優れるため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
また、本発明の積層フィルムの基材フィルムにおいては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり単一の組成であっても少量の他の繰り返し単位が共重合され、あるいは、少量の他のポリエステル樹脂がブレンドされたものであって良く、他の少なくとも一つの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルであることが好ましい。シクロヘキサンジメタノールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルとは、シクロヘキサンジメタノールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。シクロヘキサンジメタノールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールの共重合量がグリコール成分に対して15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体である。このようにすることにより、高い反射性能を有しながら、特に加熱や経時による光学的特性の変化が小さく、層間での剥離も生じにくくなる。シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体は、ポリエチレンテレフタレートと非常に強く接着する。また、そのシクロヘキサンジメタノール基は幾何異性体としてシス体あるいはトランス体があり、また配座異性体としてイス型あるいはボート型もあるので、ポリエチレンテレフタレートと共延伸しても配向結晶化しにくく、高反射率で、熱履歴による光学特性の変化もさらに少なく、製膜時のやぶれも生じにくいものである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち、少なくとも1種の樹脂が結晶性ポリエステル樹脂であり、かつ残る熱可塑性樹脂の少なくとも1種が非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ここでいう結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)において、融解熱量が5J/g以上であることをいう。一方、非晶性とは、同様に融解熱量が5J/g未満であることをいう。結晶性ポリエステル樹脂は、延伸・熱処理工程において配向結晶化させることにより、延伸前の非晶状態のときよりも高い面内屈折率とすることができる。一方、非晶性ポリエステル樹脂の場合においては、熱処理工程においてガラス転移点温度をはるかに超える温度で熱処理を行うことにより、延伸工程で生じる若干の配向も完全に緩和でき、非晶状態の低い面内平均屈折率を維持できるものである。このように、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との間に容易に屈折率差を設けることができるため、後述のとおり赤外線領域での反射率を高めることが容易となる。また、より好ましくは、結晶性ポリエステルの示差走査熱量測定(DSC)における融解熱量が20J/g以上であることが好ましい。この場合、延伸・熱処理工程においてより強く配向結晶化させることができるため、容易に非晶性樹脂ポリエステル樹脂との屈折率差を設けることができるものである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち、少なくとも1種の樹脂が結晶性ポリエステル樹脂であり、かつ残る熱可塑性樹脂の少なくとも1種が前記結晶性のポリエステル樹脂の融点より30℃以上低い融点を備えた他のポリエステル樹脂であることもまた好ましい。2種類の結晶性ポリエステル樹脂の融点の差が30℃以上ある場合、2種の結晶性ポリエステル樹脂の融点の間の温度にて熱処理を行うことにより、低融点のポリエステル樹脂を融解・非晶化させる配向を緩和することでき、結果として2種のポリエステル樹脂間の屈折率差を設けることが可能となる。
本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムの少なくともいずれかの表面に熱線吸収粒子を含む熱線吸収層が設けられている必要がある。ここでいう熱線吸収粒子は、主に波長700nm以上の近赤外〜遠赤外領域にかけて光線吸収性能を有する粒子のことを指し、その一例として、ランタン系粒子、アンチモン系粒子、インジウム系粒子、スズ系粒子などが挙げられる。特に本発明の積層フィルムにおいては、酸化タングステンを熱線吸収粒子として用いる。ランタン系粒子、アンチモン系粒子、インジウム系粒子、スズ系粒子などにおいては、波長1500nm以降の波長帯域においては高い吸収性能を備えるものの、一方で波長700〜1500nmの範囲においては、その吸収性能は十分なものではなかった。特に、本発明の基材フィルムのようなポリマー多層積層フィルムと併用する場合においては、上述のとおり、n次の反射や入射角度にともなう反射帯域の低波長シフトによっても高透明で無彩色とするために、基材フィルムの反射帯域や一般的に850〜1200nmに制約されるものであるが、このようなフィルムとランタン系粒子やアンチモン系粒子、インジウム系粒子と組み合わせた場合、700〜850nmならびに1200〜1500nmの波長帯域の光を十分にカットできないために、遮熱性能の限界があった。一方、酸化タングステンは、ランタン系粒子やアンチモン系粒子、インジウム系粒子、スズ系粒子と比較して700〜1500nmにおいても高い遮熱性能を示すために、特に本発明の基材フィルムのようなポリマー多層積層フィルムと組み合わせた場合に波長700nm以上の波長帯域の光をほぼカットでき、高い遮熱性能を達成できるものである。ここでいう酸化タングステンとは、単純なタングステン酸化物に加えて、タングステン以外の金属の含有する酸化タングステンも含まれたものでもよい。ここでいうタングステン以外の金属としては特に限定されるものではなく、例えば、カリウム酸化タングステン、ルビジウム酸化タングステン、セシウム酸化タングステン、タリウム酸化タングステンのいずれか1種以上から選ばれるものであることが好適に用いられるものである。特に本発明においては、赤外線のカット率が高く可視光線の吸収が少ないことやその光学特性の安定性という観点からセシウム酸化タングステンであることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムの一方の面にのみ熱線吸収層を設けてなることが好ましい。本発明の積層フィルムに用いられる酸化タングステンのように、850〜1200nmの波長帯域においても高い吸収性能を示す一方で、熱線吸収層を通って基材フィルムに入射した光は、熱線吸収層でほぼカットされているため反射による遮熱効果が期待されない。ここで、反射によりカットされた光は全く流入することがないのに対して、吸収によりカットされた光は熱となり一部流入することで、反射と比較して遮熱部材として性能が低下してしまう。そのため、遮熱部材として用いる際には、光が入射する面には基材フィルムを設けることで反射に伴う遮熱効率を高め、一方で光が出射する面に熱線吸収層を設けることで基材フィルムでカットできなかった光をカットする構成とする。このような構成であれば、より効率的に光・熱の流入を抑制することができ、高い遮熱性能を備えた遮熱部材とすることができる。
本発明の熱線吸収層においては、表面自由エネルギーが35mN/m以上55mN/m以下であることが必要である。ここでいう表面自由エネルギーとは、畑らによって提案された「固体の表面自由エネルギー(γ)を分散力成分(γSd)、極性力成分(γSp)、および水素結合力成分(γSh)の3成分に分離し、Fowkes式を拡張した式(拡張Fowkes式)」に基づく幾何平均法により得られる表面自由エネルギーである。表面自由エネルギーが35mN/m以上55mN/m以下であると、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜との表面自由エネルギーの差が小さくなり、良好な密着性を付与できるようになる。好ましくは、表面自由エネルギーが40mN/m以上45mN/m以下である。この場合、中間膜中に含まれる水酸基やエステル結合のカルボニル基ともオレフィン鎖とのいずれともバランスよく相互作用を高めることができ、高い密着性の遮熱部材を得ることが可能となる。
本発明の積層フィルムの熱線吸収層においては、熱線吸収層がイソシアネート基および/またはウレタン結合を含む樹脂からなることが好ましい。イソシアネート基および/またはウレタン結合を含む樹脂からなることにより、上述の表面自由エネルギーを35mN/m以上55mN/m以下とすることが容易となる。また、上記の表面自由エネルギーが同程度の場合においても、イソシアネート基および/またはウレタン結合を含む樹脂からなる熱線吸収層では、イソシアネート基および/またはウレタン結合を含まない樹脂からなる熱線吸収層と比べて高い密着性を示すことを見出した。これは、イソシアネート基が熱線吸収層中の水酸基または水と反応して形成するウレタン結合またはウレア結合と中間膜中の水酸基との間での強い分子間相互作用が働いているものと推測される。このように、熱線吸収層がイソシアネート基および/またはウレタン結合を含む樹脂からなることにより、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜との密着性をさらに高めることが可能であり、高い安全性の求められる合わせガラスにおいても問題なく使用できるようになる。
本発明の積層フィルムに用いられる熱線吸収層においては、イソシアネート基および/またはイソシアネート基とポリオールが反応して形成するウレタン結合を備えてなること好ましいが、その種類は特に限定されるものではなく、一般的なイソシアネート基含有化合物やポリオールを用いることができる。イソシアネート基含有化合物は、分子中に少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物であれば、その種類は限定されるものではないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、これらの三量体、これらのイソシアヌレート体又はビウレット体、これらの重合体で2個以上のイソシアネート基を有するもの、更にブロック化されたイソシアネート類等があげられる。
これらの中でも、イソシアネート基含有化合物が脂肪族のイソシアネート含有化合物であることが好ましく、さらには、脂環式の脂肪族イソシアネート含有化合物であることが好ましい。脂肪族のイソシアネート化合物を用いることにより、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの疎水性の箇所との相互作用を高めることができ、より密着性を向上させることが可能となる。また、脂環式の脂肪族イソシアネート含有化合物の場合には、直鎖状の脂肪族イソシアネートの場合と比較して、高いガラス転移温度を示すようになるため、特に本発明の積層フィルムの主要な用途である合わせガラスを作製する際の高温高湿条件においても安定した性能を示すようになる。
また、これらの中でも、イソシアネート基含有化合物としては、イソシアヌレート体又はビウレット体が好ましい。特に好ましいイソシアネート基含有化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体であり、この場合には、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜と高い密着性を示すようになる。
また、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオールが使用できる。例えば、ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレン−プロピレン共重合ポリオール、ポリテトラメチレンポリオールなどの単独あるいはそれらの混合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸(アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸など)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコールなど)とを重縮合させ得られたポリオール、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリエチレン−プロピレンアジペート等のポリオールがあり、また、ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンポリオールの単独あるいはそれらの混合物、ビスフェノールAやポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
本発明の熱線吸収層においては、ポリオール成分として脂肪族ポリオールを用いることが好ましい。この場合、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの疎水性の箇所との相互作用を高めることができ、より密着性を向上させることが可能となる。また、より好ましくは脂環式の脂肪族ポリオールであり、直鎖状の脂肪族ポリオールの場合と比較して、高いガラス転移温度を示すようになるため、特に本発明の積層フィルムの主要な用途である合わせガラスを作製する際の高温高湿条件においても安定した性能を示すようになる。
イソシアネート基含有化合物の添加量は特に限定されるものではないが、ポリオール成分とイソシアネート基含有化合物を用いてなる熱線吸収層の場合、ポリオール成分100重量部に対しイソシアネート基含有化合物が50重量部以上200重量部以下、好ましくは100重量部以上150重量部以下とすることができる。ポリオール成分が100重量部に対してイソシアネート基含有化合物が50重量部未満である場合、イソシアネート基や形成されるウレタン結合の量が十分でなく、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜との密着性が十分に得られない可能性がある。一方、ポリオール成分100重量部に対してイソシアネート基含有化合物が200重量部より大きくなると、熱線吸収層中のイソシアネート基が過剰状態となり、未反応の過剰なイソシアネートが十分に固化せずに熱線吸収層の物性を安定しにくくなる可能性もある。
また、熱線吸収層にポリエステルとイソシアネート基含有化合物を併用して用いる場合には、ポリエステル成分100重量部に対してイソシアネート基含有化合物1重量部以上100重量部以下であることが好ましい。より好ましくは、30重量部以上60重量部以下である。ポリオール成分と併用する場合と異なり、ポリエステルとイソシアネート基含有化合物を併用する場合にはポリエステル中の水酸基とイソシアネート基との反応によるわずかなウレタン結合の形成またはわずかな未反応イソシアネート基の存在によりポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜との密着性を向上させることが容易となる。一方で、イソシアネート基含有化合物量がポリエステル成分100重量部に対して100重量部より大きくなると、過剰の未反応イソシアネート基の存在により、熱線吸収層の物性を安定しにくくなる可能性もある。
また、本発明の積層フィルムに用いられる熱線吸収層においては、上記のイソシアネート基含有化合物やポリオール、ポリエステルを含有(併用)することが好ましい。ポリエステルを含むことにより、イソシアネートやポリオールの特性を活かしつつ、表面自由エネルギーを調整することが容易となる。また、ポリエステル中に含有する水酸基とイソシアネート基が架橋反応しウレタン結合を形成することで、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜との分子間相互作用により密着性をさらに向上させることができる。ポリエステルについては特に限定されるものではなく、上述に例示したポリエステルにおいて、重合度などを調整して用いられるものである。また、基材フィルムとの密着性も向上することに加えて、ポリエステルは耐久性の観点から優れるため、長期にわたる使用時にも剥離や安全性の低下などの問題を生じることなく使用できるものである。
本発明の積層フィルムにおいては、熱線吸収層の表面において測定される赤外線反射率について、波長2270cm−1での反射率R2270と波長2970cm−1での反射率R2970の比 R2270/R2970 が0.5以上6以下であるが好ましい。なお、ここでの波長2270cm−1の反射とはイソシアネート基に由来するピークであり、波長2970cm−1の反射とは熱線吸収層に含まれるC−H結合に由来するピークであることから、R2270/R2970 とは熱線吸収層に残存するイソシアネート基の量を表す指標としてのものである。R2270/R2970 が0.5以上6以下である場合、イソシアネート基の残存量が十分であるため、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜との分子間相互作用が十分、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜との密着性を十分に確保できる。一方、より好ましくは、波長2270cm−1での反射率R2270と波長2970cm−1での反射率R2970の比 R2270/R2970 が0.5以上2以下である。この場合、熱線吸収層が水や熱、光などによっても安定した物性を示し、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの中間膜との密着性を保持させることが容易となる。
本発明の熱線吸収層の厚みは特に制約されるものではないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。熱線吸収層の厚みが0.1μm未満である場合、高精度に熱線吸収層の厚みを制御することが難しくなる傾向にあり、遮熱性能にばらつきが生じる場合もある。一方、熱線吸収層の厚みが10μmよりも大きい場合には、基材フィルムに対する熱線吸収層の厚みが大きくなるために、積層フィルムの機械物性に対して熱線吸収層の影響が生じるようになるために、好ましくない場合がある。より好ましくは、熱線吸収層の厚みが、1μm以上5μm以下である。熱線吸収層の厚みがこの範囲においては、熱線吸収層を設ける際にも層厚みを高度に制御しやすくなるために遮熱性能のばらつきを抑制できるようになり、また、基材フィルムの厚みに対して十分に熱線吸収層の厚みが薄いために、積層フィルムの物性に変化などが生じることを抑制することもできるようになる。
本発明の積層フィルムを用いた遮熱部材として、積層フィルムの両面に、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体のいずれかからなる中間膜とが重ねられ、さらにその両表面にガラスが設けられた合わせガラスが一態様として挙げられる。このような合わせガラスにおいては、積層フィルムにおいて高い遮熱性能を示しつつも、積層フィルム及び熱線吸収層と中間膜、中間膜とガラスとの間で高い密着性を示すために、特に自動車などの高い遮熱性能に加えて安全性の求められる用途に好適なものである。また、熱線吸収層の設けられていない既存の合わせガラスと比較して基材フィルムの熱線反射性能や熱線吸収層の熱線吸収性能の寄与により高い遮熱性能を示すようになる。一方、「ガラス−熱線吸収材料を含む中間膜−ガラス」または「ガラス−熱線吸収材料を含む中間膜−熱線吸収性能を含むガラス」からなる熱線吸収型合わせガラスと比較すると、基材フィルムの熱線反射性能のために、同一の可視光線透過率であればより高い遮熱性能を示すものである。また、「ガラス−中間膜−ポリマー多層積層フィルム−中間膜−ガラス」からなる熱線反射型合わせガラスと比較すると、熱線吸収層によってポリマー多層積層フィルムではカットできない波長帯域の熱線を吸収によりカットできるため、高い遮熱性能を示すようになる。また、「ガラス−中間膜−ポリマー多層積層フィルム−熱線吸収材料を含む中間膜−熱線吸収材料を含むガラス」、「ガラス−中間膜−ポリマー多層積層フィルム−中間膜−熱線吸収材料を含むガラス」、「ガラス−中間膜−ポリマー多層積層フィルム−熱線吸収材料を含む中間膜―ガラス」のように、中間膜やガラスに吸収材料を含有させた場合と比較すると、中間膜やガラスに熱線吸収材料を含有させることにより機械物性などが変化し、表裏での物性差が生じて安全性が低下する懸念があるのに対して、本願のようにポリマー多層積層フィルムからなる基材フィルムの表面に相対的に最も薄膜となる熱線吸収層を設けた積層フィルムを用いた場合には、ガラスや中間膜の厚みに対して熱線吸収層の厚みが非常に薄いために合わせガラスとしたときの機械特性にもほとんど影響を与えることなく、安全性を維持することが容易となる。
本発明の遮熱部材においては、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体のいずれかからなる中間膜と熱線吸収層の剥離強度が0.1N/mm以上であることが好ましい。ここでいう剥離強度とは、中間膜と熱線吸収層の界面で強制的に剥離を発生させ、その後、引張試験で剥離時にかかる荷重を測定した際の剥離強度値のことを指す。具体的には、合わせガラス作製後、熱線吸収層を設けていない側のガラスを200mm×50mmのサイズで取り除く。その後、取り除いた箇所を150mm×25mmにてガラス以外をカットした後に、カットした端部から熱線吸収層側の中間膜と熱線吸収層との界面を強制剥離する。剥離強度が0.1N/mm以上であれば、遮熱部材を形成した際にも中間膜と熱線吸収層と間での剥離などがないものが得られるようになる。より好ましくは、1N/mm以上であり、この場合には、特に高い密着性が求められる合わせガラスのような用途においても、安全上の問題などなく好適に用いられる遮熱部材とすることが容易となる。このようなフィルムを得るためには、熱線吸収層の表面自由エネルギーを上述のとおり制御することにより達成できるものである。
本発明は、酸化タングステンを含む熱線吸収層と基材フィルムによって効率的に熱線を遮断でき、熱線吸収層の表面自由エネルキ゛ーが特定の範囲にあり、好ましくは、イソシアネート基及び/又はウレタン結合を含むために優れた剥離強度を有する。これらの組み合わせによって高い安全性と、高い遮熱性能とを両立させることができるものである。
本発明の積層フィルムにおいては、波長400nm〜700nmでの平均反射率が15%以下であることが好ましい。本願でいう反射率とは、熱線吸収層を片面のみに設けている場合には基材フィルムの熱線吸収層を設けていない面から光を入射したときの反射率のことを、両面に設けている場合には基材フィルムの各々の面から光を入射したときの反射率のうち、波長900〜1200nmでの平均反射率がより高くなる面から光を入射したときの反射率を指す。このような積層フィルムにおいては高い透明性を求められる用途においても問題なく使用できるものである。同様に、本発明の基材フィルムにおいても、波長400nm〜700nmでの平均反射率が15%以下であることが好ましい。このような基材フィルムを用いた場合、波長400〜700nmにおいて高い透過率を示すために、高い透明性が求められる用途においても、熱線吸収層に含有させる熱線吸収粒子の量を容易に調整することが可能となり、高透明でありながら高い遮熱性能を示す積層フィルムを得ることが容易となる。このような積層フィルムを得るためには、基材フィルムに用いられる隣接する2層の光学厚み(熱可塑性樹脂の屈折率×層厚み)が等しくなるように、高度に層厚みを制御することによって達成できる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの波長900〜1200nmでの平均反射率が70%以上であることが好ましい。太陽光は可視光領域に主に強度分布を備えており、波長が大きくなるにつれてその強度分布は小さくなる傾向にある。しかし、高い透明性が求められる用途で使用するために、可視光領域よりもやや大きな波長900〜1200nm(全太陽光の強度の約18%)の光を効率的に反射することにより、高い遮熱性能を付与することができる。好ましくは、波長900〜1200nmでの平均反射率が80%以上であり、より好ましくは波長900〜1200nmでの平均反射率が90%以上である。波長900〜1200nmでの平均反射率が大きくなるに従い、高い遮熱性能を付与することが可能となる。このような積層フィルムを得るためには、基材フィルムにおいても、同様には、波長900〜1200nmでの平均反射率が70%以上であることが好ましく、基材フィルムの光学特性の異なる2種以上の樹脂の面内屈折率の差を大きくすることにより実現できるので、二軸延伸フィルムとする場合は結晶性である熱可塑性樹脂からなる樹脂からなる層と、延伸時に非晶性を保持もしくは熱処理工程で融解される熱可塑性樹脂からなる層が交互に積層された基材フィルムとすればよい。
本発明の積層フィルムにおいては、ヘイズが3%以下であることが好ましい。この場合、特に透明性の求められる自動車や建物の窓ガラスなどにも好適に用いられるものである。ヘイズの要因としては、ポリマー多層積層フィルムを用いる基材フィルムや熱線吸収層に由来することが考えられるが、熱線吸収層でのヘイズは熱線吸収粒子の粒径や凝集に由来するため、用いる熱線吸収粒子の数平均粒子径を5nm以上100nm以下とすることによって達成できる。また、熱線吸収粒子の熱線吸収層における粒子濃度によっても凝集しやすさが変化するため、必要な熱線吸収粒子量にあわせて熱線吸収層の厚みを制御することでも達成できる。好ましくはヘイズが1.5%以下である。ヘイズが1.5%以下であれば、自動車のフロントガラスにも適用できるようになる。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明するが、もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるわけではない。また、本発明の積層フィルムでは基材フィルムとして用いるポリマー多層積層フィルムの積層構造の形成自体は、特開2007−307893号公報の〔0053〕〜〔0063〕段に記載に基づいて製造することができる。
以下に基材フィルムの製造方法を例示する。
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
また、複数の熱可塑性樹脂からなる多層積層フィルムを作製する場合には、複数の樹脂を2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出し、多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となったものである。
このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、上述と同様にキャスティングフィルムが得られる。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、二軸延伸することが好ましい。ここで、二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。熱処理を行うことにより、成形用フィルムの寸法安定性が向上する。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
また、本発明の積層フィルムにおいては、延伸後の熱処理温度を少なくとも一つの熱可塑性樹脂の融点以下、かつ残る熱可塑性樹脂の少なくとも一つの融点以上とすることが好ましい。この場合、一方の熱可塑性樹脂は高い配向状態を保持する一方、他方の熱可塑性樹脂の配向は緩和されるために、容易にこれらの樹脂の屈折率差を設けることができる。
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
次に、熱線吸収層の形成方法を次に示す。
まず、イソシアネート基含有化合物、ポリオールやその他のポリエステル、熱線吸収粒子、添加剤などを準備し、溶媒にて溶解させて塗布液とする。なお、イソシアネート化合物やポリオール、ポリエステルなどはあらかじめ溶液として準備されているものを用いてもよく、特に熱線吸収粒子については、あらかじめスラリーとして完全に粒子が微分散したものを用いることが好ましい。また、ここで用いる溶媒種は特に限定されず、溶媒の例を挙げれば、炭化水素系溶剤としては、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン等を挙げることができ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等を挙げることができ、エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等を挙げることができ、エーテル系溶剤としては、1,4−ジオキサン等を挙げることができる。ただし、熱線吸収粒子が凝集しない溶媒、濃度を選択する必要がある。より好ましくは、溶媒の沸点が120℃以下である。高沸点溶媒を用いた場合には、高温で乾燥させる必要が生じるが、乾燥工程において、基材フィルムの光学・機械物性が変化し、遮熱部材に用いる際に不具合が生じる可能性がある。ここで、溶媒の沸点が120℃以下であれば、乾燥工程においても基材フイルムの光学・機械物性の変化を抑制できるようになる。より好ましくは、沸点が100℃以下である。100℃以下であれば、基材フィルムのガラス転移温度に近い温度となり、光学・機械物性の変化はほぼ抑制され、遮熱部材として用いるのに適当なものとなる。
続いて、基材フィルム上に上記で調整した塗布液をコーティングする。ここでは、コーティングの方法は特に限定されるものではないが、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、調整した塗布液をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
このようにして塗布液がコーティングされた基材フィルムを、オーブンなどを用いて乾燥する。ここでの乾燥温度は、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。上述のとおり、乾燥温度が高くなるに従い、基材フィルムの光学・機械物性が変化し、遮熱部材に用いる際に不具合が生じる可能性があるが、乾燥温度を低温化することで、基材フィルムの光学・機械特性の変化を抑制することが容易となる。また、乾燥時に少なくとも一方向に張力がかかった状態で乾燥することが好ましい。このように基材フィルムに張力のかかった状態で乾燥することにより、乾燥時の基材フィルムの光学・機械特性の変化の抑制が容易になる。
また、場合によっては、乾燥後に光硬化・電子硬化させることも可能である。光硬化性または電子硬化性樹脂を併用することで、より短時間で熱線吸収層を固定することが可能となるため、生産性向上や密着性などの性能が安定化する。
また、本発明においては基材フィルムと熱線吸収層との間に接着性を向上させるために他の層を設けることも好ましい。例えば、透明・易滑・易接着層などを設けることが好ましい。
次に、本発明の積層フィルムを用いて合わせガラスを作製する際の一例を以下に示す。
用いるガラスについては、特に制限されるものではなく、透明ガラスや強化ガラス、熱線吸収ガラスなどから自由に選択できる。また、形状も平面であっても曲面であってもよい。特に、本発明の積層フィルムと組合わせる場合においては、クリアガラスを用いることにより、コストや性能安定性などの観点から好ましい。
また、用いる中間膜においては、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体のいずれかから選択される。これらの中間膜においては、ガラスとの適当な密着性を備えていることから、合わせガラスを作製するために適当である。中間膜の物性は、組成や添加剤などで自由に選択できるものであり、一般的な合わせガラスに用いられるものであれば利用可能である。また、中間膜は透明であっても熱線吸収粒子を含んでもよいが、特に本発明の積層フィルムと組み合わせる場合においては、透明な中間膜であることがコストや性能安定性などの観点から好ましい。
まず、2枚のガラスを適したサイズにカットし、一方のガラス上に、中間膜、カットした積層フィルム、中間膜、他方のガラスを配置したのち、120℃真空下で1時間程度加熱して仮圧着する。続いて、140℃、1.5MPaまで加圧、加熱した状態で30分保持することに本接着し、遮熱部材を得るものである。
このようにして得られた遮熱部材は、透明度が高く、遮熱性に優れるために、特に自動車や電車、建物などに用いる窓ガラスなどに好適なものである。
以下、本発明の積層フィルムの実施例を用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuOやOsOなどを使用した染色技術を用いた。
(2)反射率・透過率
5cm×5cmで切り出したサンプルを日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で反射率測定を行った。反射率測定では、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した。反射率測定では、サンプルの長手方向を上下方向にして、積分球の後ろに設置した。測定条件:スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分で測定し、方位角0度における反射率を得た。また、熱線吸収粒子を含有させたバインダー層を設けた場合には、光の入射面が熱線吸収粒子を含有したバインダー層とは反対面から入射して、反射率・透過率を測定する。また、日射反射率、日射透過率は、JIS A5759(2008)に従い算出した。
(3)熱可塑性樹脂A,Bの面内平均屈折率
各熱可塑性樹脂のみからなるフィルムまたはシートを用いて、JIS K7142(1996)A法に従って測定した。得られた屈折率のうち、フィルム面上の直交する2方向の平均屈折率をもって、本願でいう面内平均屈折率とした。
(4)表面自由エネルギー
測定液として、水、エチレングリコ−ル、ホルムアミド、及びヨウ化メチレンの4種類の液体を用い、協和界面化学(株)製接触角計CA−D型を用いて、各液体のフィルム表面に対する静的接触角を求めた。各々の液体について得られた接触角(θ)と測定液の表面張力の各成分を下式にそれぞれ代入し4つの式からなる連立方程式をγSd ,γSp,γShについて解いた。
(γSdγLd )1/2 + (γSp γLp)1/2 +(γSh γLh )1/2 =γL(1+COSθ)/2
但し、γS =γSd +γSp +γSh
γL =γLd +γLp +γLh
γS 、γSd 、γSp 、γSh はそれぞれフィルム表面の表面自由エネルギー、分散力成分、極性力成分、水素結合成分を、またγL 、γLd 、γLp、γLhは用いた測定液のそれぞれ表面自由エネルギー、分散力成分、極性力成分、水素結合成分を表わすものとる。ここで、用いた各液体の表面張力は、Panzer(J.Panzer,J.Colloid Interface Sci.,44,142(1973)によって提案された値を用いた。
(5)剥離強度
合わせガラスを作製後、合わせガラスから200mm×50mmのサイズにカットしてサンプルとした。続いて、サンプルから熱線吸収層を設けていない側のガラスを取り除き、残されたサンプルの積層フィルム〜中間膜を150mm×25mmでカットし、カットした積層フィルム〜中間膜の端部より熱線吸収層側の中間膜と熱線吸収層との界面を剥離するように熱線吸収層を含む積層フィルムを20mm強制剥離した。その後、測定装置として、(株)東洋ボールドウィン製の万能型引張試験機UTM-4100を用いて、ガラスをベースに固定した上でチャックに強制剥離した積層フィルムの端部をつかみ、引っ張り速度100mm/分、90°剥離試験にて剥離強度を計測した(測定長130mm)。得られた剥離強度の引き剥がし荷重を測定した。
(6)ヘイズ
積層フィルムを5cm×5cmの寸法に切り出したものをサンプルとした。装置はヘイズメータ(スガ試験機製HGM−2DP(C光用))を用いて測定した。この場合のキャリブレーションは、サンプルを入れないブランク状態で実施した。
(7)赤外線反射率
積層フィルムを5cm×5cmの寸法に切り出したものをサンプルとした。装置はThermo Fisher Scientific (株)製 AVATAR 360 FT−IRを用い、装置内を窒素パージして測定した。得られた測定結果について、波長2270cm−1と波長2970cm−1での強度の比較を実施した。
(8)熱可塑性樹脂のガラス転移点、融点
成形用フィルムの一部からサンプリングを行い、示差熱量分析(DSC)を用いてJIS−K−7122(1987年)に従って測定・算出した。なお、まず、はじめに1st Runで、25℃から290℃まで20℃/min.で昇温した後、290℃で5分間ホールドした後、25℃まで急冷した。またつづく2nd Runでは、25℃から290℃まで20℃/min.で昇温した。樹脂のガラス転移温度・融点は2nd Runにおける値を用いた。
装置:セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”
データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg。
(実施例1)
まず、基材フィルムを以下のとおり作製した。
光学特性の異なる2種類の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを準備した。熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度が0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。この熱可塑性樹脂Aは結晶性樹脂であり、フィルム化した後の面内平均屈折率は1.66、融点256℃であった。また熱可塑性樹脂Bとして全グリコール成分に対してスピログリコール25mol%、シクロヘキサンジカルボン酸30mol%共重合したエチレンテレフタレート(PE/SPG・T/CHDC)を用いた。なお、この熱可塑性樹脂Bの固有粘度は0.72の非晶性樹脂で、フィルム化した後の面内平均屈折率は1.55であった。準備した熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bをそれぞれ、2台の単軸押出機に投入し、280℃で溶融させて、混練した。次いで、それぞれ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて、フィルムの厚膜層を除いた光学厚みの比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1になるように計量しながら、スリット数301個のスリットプレートを2枚用いた構成である601層積層装置にて合流させて、厚み方向に交互に601層積層された積層体とした。積層体とする方法は、特開2007−307893号公報〔0053〕〜〔0056〕段の記載に従って行った。なお、A層同士を重ね合わせて形成する層があるため、スリットプレート内の間隙数は、602個となる。また、波長1200nm以下の反射帯域をポリマー多層積層とし、かつ波長900nm1200nm以下の平均反射率が70%以上とするために、以下の工程を経て得られた積層フィルムの層厚み分布が図1のごときになるように設計されたスリット設計されたものである。
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/数平均粒子径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に2%の弛緩処理を、さらに100℃まで急冷した後に幅方向に5%の弛緩処理を施し、その後、巻き取った。得られたフィルムは、800〜1100nmに主となる反射帯域を備えていた。
続いて、熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなるイソシアネート化合物を60重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにて片面にコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムを用い、100mm×100mm×2mmの板ガラス2枚、厚み100mm×100mm×0.78mmのポリビニルブチラール2枚との間に積層フィルムを挟んだ上で、100℃真空条件下で20分間加熱圧着し、合わせガラスを作成した。
得られた合わせガラスは高い遮熱性能(日射反射率が高く、日射透過率が低い)を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
積層装置として、スリット数201個のスリットプレートを2枚用いた構成である401層積層装置を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは実施例1と同様の中間膜との密着性を備えているものの、遮熱性能は実施例1よりも若干劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してキシレンジイソシアネートのアダクト体からなるイソシアネート化合物を30重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してトリリンジイソシアネートのアダクト体からなるイソシアネート化合物を30重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してキシレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなるイソシアネート化合物を30重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例6)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ビスフェノールA100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアネート化合物を150重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例7)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなるイソシアネート化合物を5重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例8)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物を固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例9)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなるイソシアネート化合物を100重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例10)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ビスフェノールA100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアネート化合物を100重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例11)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ビスフェノールA100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアネート化合物を50重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例12)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ビスフェノールA100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアネート化合物を200重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、中間膜との密着性について実施例1よりは劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例13)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなるイソシアネート化合物を60重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比1:4の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであったが、ヘイズが高いために厳しい透明性の求められる用途への適応は難しいものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例14)
熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度が0.60のポリエチレンナフタレート(PEN)を用い、積層装置として、スリット数151個のスリットプレートを1枚用いた構成である151層積層装置を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは実施例1同様に高い遮熱性能を示すとともに優れた中間膜との密着性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
基材フィルムとして、熱可塑性樹脂Bとして熱可塑性樹脂と同一のPET樹脂を用いて、PET単層のフィルムを用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは実施例1と同様の中間膜との密着性を備えているものの、遮熱性能は実施例1よりも大幅に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなるイソシアネート化合物を60重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整した。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは実施例1と同様の中間膜との密着性を備えているものの、遮熱性能は実施例よりも大幅に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなるイソシアネート化合物を60重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにアンチモンドープ酸化錫の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、23℃65Rh%の雰囲気下で1週間エージングして熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは実施例1と同様の中間膜との密着性を備えているものの、遮熱性能は実施例1よりも劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例4)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、紫外線硬化型アクリル化合物(固形部濃度40%)と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。これらの塗材をワイヤーバーコーターにてコーティングしたのち、120℃2分間乾燥させ、UV処理して熱線吸収層とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは実施例1と同様の遮熱性能を示すものの、中間膜との密着性は著しく低いものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例5)
熱線吸収層を以下に示す方法で設けた以外は、実施例1と同様に積層フィルムならびに合わせガラスを得た。
熱線吸収層を形成するための塗材として、ポリエステル化合物100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなるイソシアネート化合物を150重量部含んでおり、かつ固形部濃度を40%と調整した塗材を調整し、その塗材にさらにセシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形部濃度18.5%のスラリーを重量比3:5の割合で添加して熱線吸収層形成用の塗材とした。得られた熱線吸収層の厚みは2.3μmであった。
得られた積層フィルムならびに合わせガラスは実施例1と同様の遮熱性能を示すものの、中間膜との密着性は著しく低いものであった。評価結果を表1に示す。
Figure 0006015382
本発明は、太陽光などからもたらされる熱線をカットできる遮熱フィルムに関するものである。さらに詳しくは、高い遮熱性能を示しつつも、合わせガラスを作製した際に問題のない密着性を示し高い安全性を示す遮熱フィルムに関するものであり、自動車、電車、建物などの窓ガラス用途として好適なものである。

Claims (7)

  1. 合わせガラス用の積層フィルムであって、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体のいずれかからなる中間膜と積層されて用いられ、前記積層フィルムが、異なる光学的性質を有する2種以上の熱可塑性樹脂が交互にそれぞれ50層以上積層された多層構造を有する基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくともいずれかの面に積層された酸化タングステンを含む熱線吸収層とを含んでなり、前記熱線吸収層の表面自由エネルギーが35mN/m以上55mN/m以下であることを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記熱線吸収層がイソシアネート基および/またはウレタン結合を含む樹脂を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記熱線吸収層が、さらにポリエステルを含有する樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記熱線吸収層の表面において測定される赤外線反射率について、波長2270cm−1での反射率R2270と波長2970cm−1での反射率R2970の比 R2270/R2970 が0.5以上6以下であることを特徴とする請求項2に記載の積層フィルム。
  5. 前記積層フィルムの波長400〜700nmでの平均反射率が15%以下であって、かつ波長900〜1200nmでの平均反射率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. ヘイズが3%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルムの両面に、ポリビニルアルコール、ポリブチルビニラール、エチレン−ビニルアルコール共重合体のいずれかからなる中間膜と、ガラスとが組み合わされてなる遮熱部材。
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