以下に本発明の実施の形態について述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。また、説明を簡略化する目的で一部の説明は光学的性質の異なる2種の熱可塑性樹脂が交互に積層された基材フィルムを例にとり説明するが、3種以上の熱可塑性樹脂を用いた場合においても、同様に理解されるべきものである。
本発明の積層フィルムの基材フィルムは、熱可塑性樹脂を用いてなる必要がある。熱可塑性樹脂は一般的に熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂と比べて安価であり、かつ公知の溶融押出により簡便かつ連続的にシート化することができることから、低コストで基材フィルムを得ることが可能となる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、異なる光学的性質を有する2種以上の熱可塑性樹脂が交互にそれぞれ50層以上積層された多層構造を有する基材フィルムを備えてなる必要がある。ここでいう異なる光学的性質とは、面内平均屈折率が0.01以上異なることをいう。また、ここでいう交互に積層されてなるとは、異なる樹脂からなる層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいい、たとえば異なる光学的性質を有する2つの熱可塑性樹脂A、Bからなる場合、各々の層をA層,B層と表現すれば、A(BA)n(nは自然数)といったように規則的な配列で積層されたものである。このように光学的性質の異なる樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係によって特定の波長の光を反射させることが可能となる。また、積層する層数が50層未満の場合には、赤外領域において十分な帯域に渡り高い反射率を得られず充分な遮熱性能を得ることができない。好ましくは、それぞれ200層以上であり、より好ましくは、それぞれ300層以上である。前述の干渉反射は、層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになり、高い遮熱性能を備えた積層フィルムが得られるようになる。また、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化が生じるために、現実的には1000層程度が実用範囲となる。
本発明の基材フィルムに用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリアセタールなどの鎖状ポリオレフィン、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボーネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。この中で、強度・耐熱性・透明性および汎用性の観点から、特にポリエステルを用いることがより好ましい。これらは、共重合体であっても、混合物であってもよい。
このポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールあるいはそれらのエステル形成性誘導体を主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い面内平均屈折率を発現するテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、例えば、上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。
本発明の積層フィルムの基材フィルムにおいては、隣接する異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂によって構成される層の面内平均屈折率の差が0.05以上であることが好ましい。より好ましくは0.10以上であり、さらに好ましくは0.15以上0.25以下である。面内平均屈折率の差が0.05以上とすることにより、十分な反射率が得られ、十分な遮熱性能を得ることが可能である。この達成方法としては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂が結晶性であり、かつ少なくとも一つの熱可塑性樹脂が非晶性もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂の混合物を用いることである。この場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において容易に屈折率差を設けることが可能となる。
本発明の積層フィルムの基材フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のSP値(溶解性パラメータともいう)の差の絶対値が、1.0以下であることが好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなり、また積層精度を高める上で有利である。より好ましくは、異なる光学的性質を有するポリマーは同一の繰り返し単位を含むことが好ましい。たとえば、一方の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、高精度な積層構造が実現しやすい観点から、エチレンテレフタレート単位を含むことが好ましい。
また、本発明の積層フィルムの基材フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のガラス転移温度差が20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度の差が20℃より大きい場合には積層フィルムを製膜する際の厚み均一性が不良となり、遮熱性能にばらつきが生じる原因となる。また、積層フィルムを成形する際にも、過延伸が発生するなどの問題が生じやすいためである。
上記の条件を満たすための樹脂の組合せの一例として、本発明の積層フィルムの基材フィルムでは、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、他の少なくとも一つの熱可塑性樹脂がスピログリコールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルとは、スピログリコールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。スピログリコールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、他の少なくともひとつの熱可塑性樹脂がスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を用いて得られるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を用いて得られるポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さく、接着性にも優れるため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
また、本発明の積層フィルムの基材フィルムにおいては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、単一の組成であっても少量の他の繰り返し単位が共重合され、あるいは、少量の他のポリエステル樹脂がブレンドされたものであって良い。また、他の少なくとも一つの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルであることが好ましい。シクロヘキサンジメタノールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルとは、シクロヘキサンジメタノールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。シクロヘキサンジメタノールカルボキシレート単位を含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールの共重合量がグリコール成分に対して15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体である。このようにすることにより、高い反射性能を有しながら、特に加熱や経時による光学的特性の変化が小さく、層間での剥離も生じにくくなる。シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体は、ポリエチレンテレフタレートと非常に強く接着する。また、そのシクロヘキサンジメタノール基は幾何異性体としてシス体あるいはトランス体があり、また配座異性体としてイス型あるいはボート型もあるので、ポリエチレンテレフタレートと共延伸しても配向結晶化しにくく、高反射率で、熱履歴による光学特性の変化もさらに少なく、製膜時のやぶれも生じにくいものである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち、少なくとも1種の樹脂が結晶性ポリエステル樹脂であり、かつ残る熱可塑性樹脂の少なくとも1種が非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ここでいう結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)において、融解熱量が5J/g以上であることをいう。一方、非晶性とは、同様に融解熱量が5J/g未満であることをいう。結晶性ポリエステル樹脂は、延伸・熱処理工程において配向結晶化させることにより、延伸前の非晶状態のときよりも高い面内屈折率とすることができる。一方、非晶性ポリエステル樹脂の場合においては、熱処理工程においてガラス転移点温度をはるかに超える温度で熱処理を行うことにより、延伸工程で生じる若干の配向も完全に緩和でき、非晶状態の低い面内平均屈折率を維持できるものである。このように、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との間に容易に屈折率差を設けることができるため、後述のとおり赤外線領域での反射率を高めることが容易となる。また、より好ましくは、結晶性ポリエステルの示差走査熱量測定(DSC)における融解熱量が20J/g以上であることが好ましい。この場合、延伸・熱処理工程においてより強く配向結晶化させることができるため、容易に非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との屈折率差を設けることができるものである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち、少なくとも1種の樹脂が結晶性ポリエステル樹脂であり、かつ残る熱可塑性樹脂の少なくとも1種が前記結晶性のポリエステル樹脂の融点より30℃以上低い融点を備えた他のポリエステル樹脂であることもまた好ましい。2種類の結晶性ポリエステル樹脂の融点の差が30℃以上ある場合、2種の結晶性ポリエステル樹脂の融点の間の温度にて熱処理を行うことにより、低融点のポリエステル樹脂を融解・非晶化させる配向を緩和することができ、結果として2種のポリエステル樹脂間の屈折率差を設けることが可能となる。
本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムの片面、または両面に熱線吸収粒子を含む熱線吸収層が設けられている必要がある。ここでいう熱線吸収粒子は、主に波長700nm以上の近赤外〜遠赤外領域にかけて光線吸収性能を有する粒子のことを指し、その一例として、ランタン系粒子、アンチモン系粒子、インジウム系粒子、スズ系粒子などが挙げられる。特に本発明の積層フィルムにおいては、酸化タングステンを熱線吸収粒子として用いる。ランタン系粒子、アンチモン系粒子、インジウム系粒子、スズ系粒子などにおいては、波長1500nm以降の波長帯域においては高い吸収性能を備えるものの、一方で波長700〜1500nmの範囲においては、その吸収性能は十分なものではなかった。特に、本発明の基材フィルムのようなポリマー多層積層フィルムと併用する場合においては、上述のとおり、n次の反射や入射角度にともなう反射帯域の低波長シフトによっても高透明で無彩色とするために、基材フィルムの反射帯域や一般的に850〜1200nmに制約されるものであるが、このようなフィルムとランタン系粒子やアンチモン系粒子、インジウム系粒子と組み合わせた場合、700〜850nmならびに1200〜1500nmの波長帯域の光を十分にカットできないために、遮熱性能の限界があった。一方、酸化タングステンは、ランタン系粒子やアンチモン系粒子、インジウム系粒子、スズ系粒子と比較して700〜1500nmにおいても高い遮熱性能を示すために、特に本発明の基材フィルムのようなポリマー多層積層フィルムと組み合わせた場合に波長700nm以上の波長帯域の光をほぼカットでき、高い遮熱性能を達成できるものである。ここでいう酸化タングステンとは、単純なタングステン酸化物に加えて、タングステン以外の金属を含有する酸化タングステンも含まれたものでもよい。ここでいうタングステン以外の金属としては特に限定されるものではなく、例えば、カリウム酸化タングステン、ルビジウム酸化タングステン、セシウム酸化タングステン、タリウム酸化タングステンのいずれか1種以上から選ばれるものであることが好適に用いられるものである。特に本発明においては、赤外線のカット率が高く可視光線の吸収が少ないことやその光学特性の安定性という観点からセシウム酸化タングステンであることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムの一方の面にのみ熱線吸収層を設けてなることが好ましい。本発明の積層フィルムに用いられる酸化タングステンのように、850〜1200nmの波長帯域においても高い吸収性能を示す一方で、熱線吸収層を通って基材フィルムに入射した光は、熱線吸収層でほぼカットされているため反射による遮熱効果が期待されない。ここで、反射によりカットされた光は遮熱部材の入射面の反対側に流入することがないのに対して、吸収によりカットされた光は熱となり一部流入することで、反射と比較して遮熱部材としての性能が低下してしまう。そのため、遮熱部材として用いる際には、光が入射する面に基材フィルムを設けることで反射に伴う遮熱効率を高め、一方で光が出射する面に熱線吸収層を設けることで基材フィルムではカットできなかった光をカットする構成とする。このような構成であれば、より効率的に光・熱の流入を抑制することができ、高い遮熱性能を備えた遮熱部材とすることができる。
本発明の積層フィルムに用いられる熱線吸収層においては、エポキシ基を含有した樹脂が含まれることが好ましい。その種類は特に限定されるものではなく、分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、その種類は限定されるものではないが、エポキシ基を含有したアクリル樹脂であると、エポキシ基を開環させる熱を与えることなく紫外線によって塗膜が硬化出来るためより好ましい。例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルメタアクリレートグリシジルエーテル、フェニルグリシジルアクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、膜の安定性の観点からグリシジルアクリレートを用いることが好ましい。また、エポキシ基を含有したアクリル樹脂の他に、エポキシ基を含有しないアクリル樹脂が同時に含まれていてもよく、塗膜の硬化を進行させる上で好ましい。
また、エポキシ基を含有したアクリル樹脂が硬化した状態で熱線吸収層に含まれることが好ましく、開始剤や硬化剤や触媒を含むと硬化がより促進されるため好ましい。開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよいが、中でも光重合開始剤が好ましい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
本発明の熱線吸収層の厚みは特に制約されるものではないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。熱線吸収層の厚みが0.1μm未満である場合、高精度に熱線吸収層の厚みを制御することが難しくなる傾向にあり、遮熱性能にばらつきが生じる場合もある。一方、熱線吸収層の厚みが10μmよりも大きい場合には、基材フィルムに対する熱線吸収層の厚みが大きくなるために、積層フィルムの機械物性に対して熱線吸収層の影響が生じるようになるために、好ましくない場合がある。より好ましくは、熱線吸収層の厚みが、1μm以上5μm以下である。熱線吸収層の厚みがこの範囲においては、熱線吸収層を設ける際にも層厚みを高度に制御しやすくなるために遮熱性能のばらつきを抑制できるようになり、また、基材フィルムの厚みに対して十分に熱線吸収層の厚みが薄いために、積層フィルムの物性に変化などが生じることを抑制することもできるようになる。
本発明の積層フィルムにおいては、波長400nm〜800nmでの平均反射率が15%以下であることが好ましい。より好ましくは波長400nm〜800nmでの平均反射率が10%以下である。本発明でいう反射率とは、熱線吸収層を片面のみに設けている場合には基材フィルムの熱線吸収層を設けていない面から光を入射したときの反射率のことを、熱線吸収層を両面に設けている場合には基材フィルムの各々の面から光を入射したときの反射率のうち、波長900〜1200nmでの平均反射率がより高くなる面から光を入射したときの反射率を指す。このような積層フィルムであれば高い透明性を求められる用途においても問題なく使用できるものである。同様に、本発明の基材フィルムにおいても、波長400nm〜800nmでの平均反射率が15%以下であることが好ましい。このような基材フィルムを用いた場合、波長400〜800nmにおいて高い透過率を示すために、高い透明性が求められる用途においても、熱線吸収層に含有させる熱線吸収粒子の量を容易に調整することが可能となり、高透明でありながら高い遮熱性能を示す積層フィルムを得ることが容易となる。このような積層フィルムを得るためには、基材フィルムに用いられる隣接する2層の光学厚み(熱可塑性樹脂の屈折率×層厚み)が等しくなるように、高度に層厚みを制御することが好ましい。
また、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの波長900〜1200nmでの平均反射率が70%以上であることが好ましい。太陽光は可視光領域に主に強度分布を備えており、波長が大きくなるにつれてその強度分布は小さくなる傾向にある。しかし、高い透明性が求められる用途で使用するために、可視光領域よりもやや大きな波長900〜1200nm(全太陽光の強度の約18%)の光を効率的に反射することにより、高い遮熱性能を付与することができる。好ましくは、波長900〜1200nmでの平均反射率が80%以上であり、より好ましくは波長900〜1200nmでの平均反射率が90%以上である。波長900〜1200nmでの平均反射率が大きくなるに従い、透明性を損なうことなく高い遮熱性能を付与することが可能となる。このような積層フィルムを得るためには、基材フィルムにおいても波長900〜1200nmでの平均反射率が70%以上であることが好ましく、基材フィルムの光学特性の異なる2種以上の樹脂の面内屈折率の差を大きくすることにより実現できるので、二軸延伸フィルムとする場合は結晶性である熱可塑性樹脂からなる樹脂からなる層と、延伸時に非晶性を保持もしくは熱処理工程で融解される熱可塑性樹脂からなる層が交互に積層された基材フィルムとすることが好ましい。
また、上記と同様の理由から、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの波長400〜800nmでの平均透過率が60%以上であることが好ましい。より好ましくは波長400〜800nmでの平均透過率が70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。このような積層フィルムであれば高い透明性を求められる用途においても問題なく使用できるものである。このような積層フィルムを得るためには、基材フィルムに用いられる隣接する2層の光学厚み(熱可塑性樹脂の屈折率×層厚み)が等しくなるように、高度に層厚みを制御することによって達成できる。
また、上記と同様の理由から、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの波長900〜1200nmでの平均透過率が10%以下であることが好ましい。より好ましくは波長900〜1200nmでの平均透過率が5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。波長900〜1200nmでの平均透過率が小さくなるに従い、透明性を損なうことなく高い遮熱性能を付与することが可能となる。このような積層フィルムを得るためには、基材フィルムの波長900〜1200nmでの平均反射率を80%以上とすることが好ましく、更に、基材フィルムの片面、または両面に熱線吸収粒子を含む熱線吸収層を設けることで達成できる。
本発明の積層フィルムにおいては、ヘイズが3%以下であることが好ましい。この場合、特に透明性の求められる自動車や建物の窓ガラスなどにも好適に用いられるものである。ヘイズの要因としては、ポリマー多層積層フィルムを用いる基材フィルムや熱線吸収層に由来することが考えられるが、熱線吸収層でのヘイズは熱線吸収粒子の粒径や凝集に由来するため、用いる熱線吸収粒子の数平均粒子径を5nm以上100nm以下とすることによって達成できる。また、熱線吸収粒子の熱線吸収層における粒子濃度によっても凝集しやすさが変化するため、必要な熱線吸収粒子量にあわせて熱線吸収層の厚みを制御することでも達成できる。好ましくはヘイズが1.5%以下である。
本発明の積層フィルムにおいては、耐光性試験後の波長400〜800nmでの透過率変化が1.5%以下であることが必要である。より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.5%以下である。このようにすることで、耐光性の求められる自動車や建物の窓ガラスなどに好適に用いられるものである。特に自動車用途においては、フロントガラスに積層フィルムを用いる場合に可視光線透過率に制約があるため透過率が変化することは好ましくない。透過率の変化は、熱線吸収層に含まれる熱線吸収粒子が紫外線や熱によって変性することが主な原因であり、自動車や建物の窓ガラスに用いる場合においては、透明性が損なわれるため安全性や外観の観点から好ましくない。本発明で用いる酸化タングステンからなる熱線吸収粒子においては、紫外線によってタングステンが還元されることで透過率が変化することがわかっており、タングステンを還元させている電子をエポキシ基によって開環トラップすることで透過率変化を1.5%以下とすることを達成できる。
また、上記と同様の理由から、本発明の積層フィルムにおいては、耐湿性試験後の波長400〜800nmでの透過率変化が4.0%以下であることが好ましい。熱線吸収粒子の変性は水の存在によっても発生し、耐湿性試験によって透過率が変化することがある。公知の方法では耐光性を金属化合物や酸化剤で改良しているケースが見られるが、これらによると湿度の高い環境下でタングステンの酸化が進み透過率変化が大きくなるため好ましくない。エポキシ基はタングステンの酸化を促進させないため、耐湿性試験後の波長400〜800nmでの透過率変化が4.0%以下とすることが出来るため好ましい。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明するが、もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるわけではない。また、本発明の積層フィルムでは基材フィルムとして用いるポリマー多層積層フィルムの積層構造の形成自体は、特開2007−307893号公報の〔0053〕〜〔0063〕段に記載に基づいて製造することができる。
以下に基材フィルムの製造方法を例示する。
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
また、複数の熱可塑性樹脂からなる多層積層フィルムを作製する場合には、複数の樹脂を2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出し、多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となった。
このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、上述と同様にキャスティングフィルムが得られる。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、二軸延伸されることが好ましい。ここで、二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。熱処理を行うことにより、積層フィルムの寸法安定性が向上する。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
また、本発明の積層フィルムにおいては、延伸後の熱処理温度を少なくとも一つの熱可塑性樹脂の融点以下、かつ残る熱可塑性樹脂の少なくとも一つの融点以上とすることが好ましい。この場合、一方の熱可塑性樹脂は高い配向状態を保持する一方、他方の熱可塑性樹脂の配向は緩和されるために、容易にこれらの樹脂の屈折率差を設けることができる。
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、多層積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては多層積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
次に、熱線吸収層の形成方法を次に示す。
基材フィルムの片面、または両面に熱線吸収層を形成するには、例えば、熱線吸収層を形成するために用いる組成物と、必要に応じて溶媒を含む塗液を基材フィルムの片面、または両面に塗布する手法を挙げることができる。また、塗布方法としては、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法、リバースコート法、ナイフコート法、バーコート法など公知の塗布方法を適用することができる。
基材フィルムへ熱線吸収層を形成するために用いる組成物が塗布された後、加熱によって溶媒を揮発させる。加熱方法は、加熱効率の点から熱風で行うのが好ましく、公知の熱風乾燥機、または、ロール搬送やフローティングなどの連続搬送が可能な熱風炉などを適用できる。ここでの乾燥温度は、120℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
また、場合によっては、加熱後に光硬化・電子硬化させることも可能である。光硬化性樹脂または電子硬化性樹脂を併用することで、より短時間で熱線吸収層を固定することが可能となるため、生産性や膜の安定性などの性能が向上する。光硬化・電子硬化させる場合は、汎用性の点から電子線(EB線)または紫外線(UV線)が好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。中でも放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させることが好ましい。
また、本発明においては基材フィルムと熱線吸収層との間に接着性を向上させるために他の層を設けることも好ましい。例えば、透明・易滑・易接着層などを設けることが好ましい。
このようにして得られた積層フィルムは、透明度が高く、遮熱性に優れ、高い耐光性を有するため、特に自動車や電車、建物などに用いる窓ガラスなどに好適なものである。
以下、本発明の積層フィルムの実施例を用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。
(2)反射率・透過率
5cm×5cmで切り出したサンプルを日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で測定を行った。装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した。サンプルの長手方向を上下方向にして設置した。測定条件:スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分で測定し、方位角0度における測定結果を得た。また、熱線吸収層を片面のみに設けている場合には基材フィルムの熱線吸収層を設けていない面から光を入射させて測定した。両面に設けている場合には基材フィルムの各々の面から光を入射したときの反射率のうち、波長900〜1200nmでの平均反射率がより高くなる面から光を入射させて、反射率・透過率を測定した。
(3)熱可塑性樹脂A,Bの面内平均屈折率
各熱可塑性樹脂のみからなるフィルムまたはシートを用いて、JIS K7142(1996)A法に従って測定した。得られた屈折率のうち、フィルム面上の直交する2方向の平均屈折率をもって、本発明でいう面内平均屈折率とした。
(4)熱可塑性樹脂のガラス転移点、融点
積層フィルムの一部からサンプリングを行い、示差熱量分析(DSC)を用いてJIS−K−7122(1987年)に従って測定・算出した。なお、まず、はじめに1st Runで、25℃から290℃まで20℃/min.で昇温した後、290℃で5分間ホールドした後、25℃まで急冷した。またつづく2nd Runでは、25℃から290℃まで20℃/min.で昇温した。樹脂のガラス転移温度・融点は2nd Runにおける値を用いた。
装置:セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”
データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg
(5)熱線吸収層の構造確認
基材フィルムや熱線吸収層の構造確認方法は、特定の手法に限定されないが、以下のような方法が例示できる。フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)にて、エポキシ基とアクリル樹脂の構造が有する各原子間の結合に由来するピークの有無を確認する。さらに、プロトン核磁気共鳴分光(1H−NMR)にて、エポキシ基とアクリル樹脂の構造が有する水素原子の位置に由来する化学シフトの位置と水素原子の個数に由来するプロトン吸収線面積を確認する。これらの結果を合わせて総合的に確認する手法が好ましい。また、必要に応じてガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)により重量ピークを確認してもよい。なお上記の分析は刃ナイフで削りだしたサンプルについて行う。
(6)耐光性試験
岩崎電気株式会社製「アイスーパーUVテスター:SUV−W151」を用いて試験を行った。温度50℃、湿度60%RH、照度100mW/cm2に設定し、熱線吸収層を上面に設置して1時間照射を行った。試験終了後、5分後に反射率・透過率の測定を行った。
(7)耐湿性試験
エスペック株式会社製「ライトスペック恒温(恒湿)器:LHU−114」を用いて試験を行った。温度85℃、湿度95%RHに設定し、積層フィルムをクリップで器内にぶら下げて250時間処理を行った。試験終了後、5分後に反射率・透過率の測定を行った。
(8)遮熱性評価
パナソニック製の「RF100V200W−W/D」レフ電球のガラス球の先から10cmの位置に、照射方向と垂直に積層フィルムを設置し、温度25℃・湿度60%RH・無風下にて電球の光を照射した。積層フィルムの裏側5cmの位置に2分間手をかざし、下記の基準に則り判定を行った。(○)を良好な結果とした。
○:ほとんど熱を感じない。
△:やや熱を感じる。
×:明確に熱を感じる。
(実施例1)
まず、基材フィルムを以下のとおり作製した。
光学特性の異なる2種類の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを準備した。熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度が0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。この熱可塑性樹脂Aは結晶性樹脂であり、フィルム化した後の面内平均屈折率は1.66、融点256℃であった。また熱可塑性樹脂Bとして全グリコール成分に対してスピログリコール25mol%、シクロヘキサンジカルボン酸30mol%共重合したエチレンテレフタレート(PE/SPG・T/CHDC)を用いた。なお、この熱可塑性樹脂Bの固有粘度は0.72の非晶性樹脂で、フィルム化した後の面内平均屈折率は1.55であった。準備した熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bをそれぞれ、
ベント付き二軸押出機にて280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプおよびフィルターを介して、601層のフィードブロックにて合流させた。その後、T−ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。なお、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの重量比が約1:1になるように吐出量を調整し、隣接する層の厚み比が約1となるにようにした。
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/数平均粒子径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に2%の弛緩処理を、さらに100℃まで急冷した後に幅方向に5%の弛緩処理を施し、その後、巻き取った。得られた基材フィルムは、900〜1200nmに主となる反射帯域を備えていた。
続いて、熱線吸収層を形成するための塗材として、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)とグリシジルメタアクリレートと光開始剤(BASFジャパン製 IRGACURE184)を重量比8:2:0.1で混合させたものをMEK(メチルエチルケトン)で固形部濃度40%に調整した塗剤Aを得る。この塗剤Aと、セシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形分濃度18.5%のスラリーを重量比2:7の割合で混合して熱線吸収層形成用の塗剤とした。この塗剤をワイヤーバーコーターにて基材フィルムの片面にコーティングしたのち、熱風オーブンにて80℃で2分間乾燥させ、UV照射装置にて紫外線を300mJ/cm2照射して塗膜を硬化させて熱線吸収層を形成し、積層フィルムを得た。得られた熱線吸収層の厚みは3.3μmであった。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
塗剤Aの比率を変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
塗剤Aの比率を変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
塗剤Aの比率を変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
塗剤Aのグリシジルメタアクリレートを4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルに変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例6)
塗剤Aの比率を変更した以外は、実施例5と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例7)
塗剤Aの比率を変更した以外は、実施例5と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例8)
塗剤Aの比率を変更した以外は、実施例5と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(実施例9)
塗剤Aの比率を変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであった。評価結果を表1に示す。
(参考例10)
グリシジルメタアクリレートを用いず、セシウム酸化タングステン粒子の固形分量に対して10wt%の酢酸マンガンを添加した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すとともに優れた耐光性を備えたものであったが、耐湿性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
グリシジルアクリレートを用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すものの、耐光性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
DPHAの代わりにポリウレタン(三洋化成工業株式会社製:C−810)を用い、乾燥温度を110℃に変更した以外は、比較例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すものの、耐光性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
DPHAの代わりにポリエステル(高松油脂株式会社製:S−140)を用い、乾燥温度を110℃に変更した以外は、比較例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すものの、耐光性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例4)
DPHAの代わりにシラノール(信越化学工業株式会社製:KBE−04(硬化触媒DX9740を10wt%添加))を用い、乾燥温度を110℃に変更した以外は、比較例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すものの、耐光性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例5)
グリシジルメタアクリレートの代わりにポリウレタン(三洋化成工業株式会社製:C−810)を用い、乾燥温度を110℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すものの、耐光性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例6)
グリシジルメタアクリレートの代わりにポリエステル(高松油脂株式会社製:S−140)を用い、乾燥温度を110℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すものの、耐光性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例7)
グリシジルメタアクリレートの代わりにシラノール(信越化学工業株式会社製:KBE−04(硬化触媒DX9740を10wt%添加))を用い、乾燥温度を110℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは高い遮熱性能を示すものの、耐光性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
(比較例8)
積層フィルムの変わりにPETフィルム(東レ株式会社製:ルミラー100U46)を用い、遮熱性評価を行った。遮熱性能は示さなかった。評価結果を表1に示す。