JP5170992B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

Description

本発明はアイアン型のゴルフクラブヘッドに係り、特にフェース面にミーリング加工によって切削痕を形成したゴルフクラブヘッドに関する。

フェース面にミーリング加工（ｍｉｌｌｉｎｇ。フライス盤による切削加工）を施すことにより切削痕を形成したゴルフクラブヘッドが米国特許５４３７０８８に記載されている。同特許では、フェース面にコルゲーション（スコアライン）を形成した後、ミーリング加工を施し、これにより、コルゲーションの角縁をシャープなものとし、このシャープな角縁とミーリング加工切削痕とによって打球のスピンが多くなると記載されている。同特許のＦｉｇ．１ａにはコルゲーションのピッチと切削痕のピッチとが略同等であることが示されている。また、切削痕として、下方に向って凸の円弧状切削痕と上方に向って凸の円弧状切削痕との双方が設けられている。この方法で加工すると、溝の深さや幅が、フェース面の傾きにより一様でなくなるおそれがある。
米国特許５４３７０８８

上記米国特許５４３７０８８のようにコルゲーションのピッチ（通常は２．８〜３．６ｍｍ）と同ピッチにて切削痕とを設けると、スピン量の増大はそれ程多くない。

本発明は、打球のバックスピン量を十分に多くすることができるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。

本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、平面状のフェース面を有し、該フェース面には、トウ・ヒール方向に延在した複数条のコルゲーションが設けられており、該コルゲーション同士の間隔が２．８〜３．６ｍｍであり、該コルゲーションの深さ方向の断面形状がＵ字形、半円形、Ｖ字形、方形、又は多角形である金属製のアイアン型ゴルフクラブヘッドであって、該フェース面に、ミーリング加工によって複数条の切削痕を形成したアイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、各切削痕は互いに交わることなく略平行に延在しており、該切削痕は頂陵状の凸条として延在しており、該凸条同士の間は凹に湾曲した凹条として延在しており、該凸条の頂点と凹条の最深部との高低差は１５〜３０μｍであり、該凸条のピッチが０．１〜１ｍｍであり、該凸条は、フェース面のトウ側では上又は下向きの円弧状であり、フェース面のヒール側ではそれと逆向きの円弧状であり、該トウ側の凸条とヒール側の凸条とが連続することによりＳ字状の凸条となっていることを特徴とするものである。

請求項２のゴルフクラブヘッドは、請求項１において、少なくともフェース面に酸化処理を施したことを特徴とするものである。

請求項３のゴルフクラブヘッドは、請求項１又は２において、少なくともフェース面に浸炭処理、窒化処理、タフトライド処理を施したことを特徴とするものである。

本発明のゴルフクラブヘッドでは、切削痕を小ピッチにて多数設けているので、切削痕自体がフェース面とボールとの摩擦を高める作用が強化され、ボールのバックスピン量（以下、単にスピン量という。）が多くなる。

本発明では、この切削痕が互いに交わることなく平行に延在しているため、フェース面全体におけるボールとフェース面との摩擦特性が均一になる。

本発明では、Ｓ字状の切削痕を設けており、フェース面の中央付近で切削痕が斜め方向に延在しているので、ごく微かなドロー系又はフェード系のスピンを与えることができる。

請求項２によれば、ゴルフクラブヘッドの錆止めを図ることができる。

請求項３によれば、フェース面の硬度を高くし、フェース面の摩滅を防ぐことができる。

以下、図面を参照して実施の形態について説明する。

第１図は実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッド１の正面図、第２図は第１図のゴルフクラブヘッド１のフェース面の一部の拡大図である。なお、第１図はフェース面に正対した状態を示しており、ゴルフクラブヘッドをソールした状態で前方かつ斜め上方から見た正面図である。

ゴルフクラブヘッド１はヒール側にホゼル部２を備え、このホゼル部２にシャフトが挿入され、接着剤で固定されることによりゴルフクラブが構成される。

ゴルフクラブヘッドのフェース面３には、複数条のコルゲーション４と、ミーリング加工による複数条の切削痕５とが構成されている。コルゲーション４はトウ・ヒール方向に延在し、互いに平行である。コルゲーション４同士の間隔（ピッチ）ａは２．８〜３．６ｍｍである。コルゲーション４の深さ方向の断面形状はＵ字形、半円形、Ｖ字形、方形、多角形等のいずれもよい。

切削痕５はＳ字状である。

第１図及び第２図のゴルフクラブヘッド１にあっては、切削痕５は、フェース面３のセンターよりもトウ側では上に向って凸の曲率半径４０〜８０ｍｍ程度の円弧状であり、ヒール側では下に向って凸の曲率半径４０〜８０ｍｍ程度の円弧状であるＳ字状となっている。切削痕５は図示の通り、トウ側からヒール側にかけて連続している。この凸の最上位部及び凹の最下位部は、いずれもセンターから２０〜３０ｍｍの範囲に位置することが好ましい。第１，２図においても、隣接する切削痕５，５間の距離は切削痕５の長手方向において略同一である。

なお、第１図では切削痕５はトウ側において上方に凸となり、ヒール側において下方に凸となっているが、逆にトウ側で下方に凸になり、ヒール側で上方に凸となってもよい。

本発明では、隣接する切削痕５同士の距離（ピッチ）ｂは０．１〜１ｍｍ特に０．１〜０．５ｍｍであることが好ましい。

なお、ミーリング加工した表面にあっては、切削痕は尖った頂陵状の凸条として延在しており、切削痕同士の間は凹に湾曲した凹条として延在している。この凹条の深さ（凸条の頂点と凹条の最深部との高低差）は１５〜３０μｍ程度が好適である。

このように構成されたゴルフクラブヘッド１においては、切削痕を密に設けているので、スピン量が多くなる。

特に、第１，２図のゴルフクラブヘッド１にあっては、円弧状がＳ字状となっているので、フェース面の中央付近において、切削痕５が斜めに延在している。このため、フェース面の中央付近でヒットされたボールのスピンに対しては、この切削痕５と直交方向成分を有した摩擦力が若干付与される。従って、第１，２図ではごく微かなドロー系のスピンが付与される。

第１図とは逆に、トウ側で下向きの凸となりヒール側で上向きの凸となるＳ字形切削痕を設ける場合には、ごく微かなフェード系のスピンが付与される。

このゴルフクラブヘッド１は、フェース面３にコルゲーション４を設けてからミーリング加工して円弧状切削痕５を形成してもよいが、フェース面３をまずミーリング加工して円弧状切削痕５を形成し、それからコルゲーション４を切削加工により形成することが好ましい。

このように、ゴルフクラブヘッドを製造するに際しミーリング加工後にコルゲーション４を形成する場合には、後述の通り、コルゲーションの角をシャープとし、スピン量を多くすることができる。

本発明では、フェース面にメッキ層を設けずに、酸化被膜を形成するのが好ましく、また表面硬度を３００Ｈｖ特に２５０〜１８０Ｈｖとするのが好ましい。これは、メッキ層を設けることにより、コルゲーションの角が丸くなり、また、切削痕の凹凸が少なくなるためである。表面処理により、表面が硬くなり、摩滅を防ぐことができる。

このフェース面の母材を炭素含有量０．１〜０．５重量％の炭素鋼とし、酸化被膜をＦｅ_３Ｏ_４被膜とし、その厚さを１〜５μｍ程度とすることが好ましい。

かかる被膜を設けることにより光の反射を防止し、眩しさを防止することができる。また、表面硬度を上記のように低くすることにより、ソフトな打感を得ることができ、特にアプローチショットのときの打感を良好なものとすることができる。

このＦｅ_３Ｏ_４被膜を形成する方法としては、苛性ソーダ、硝酸ソーダ、亜硝酸ソーダなどを溶かした１１０〜１５０℃、好ましくは１２０〜１４０℃の溶液にヘッド本体を漬け込み、変色の度合いを見ながら適宜時間経過後に引き上げる黒染め処理と呼ばれる方法が好ましい。この浸漬時間は、溶液濃度にもよるが、約５〜３０分で良く、極めて容易に酸化被膜を形成できる。

なお、酸化被膜を形成した後は、防錆油を塗布して発錆を防止するのが好ましく、特に防錆油の入った鍋等の容器に酸化処理したヘッドを入れて煮込むと防錆効果を高めることができる。

本発明では、ゴルフクラブヘッド全体を同一の素材で一体に鍛造又は鋳造等により形成してもよく、フェース面をフェースプレートにて構成し、フェースプレート以外のヘッド本体部分をフェースプレートとは別素材で構成し、このヘッド本体にフェースプレートをカシメ、ビス留め、焼き嵌め、冷し嵌め、溶接（例えばレーザー溶接や電子ビーム溶接）などにより固着させてもよい。

ヘッド本体は鋼特にステンレス鋼よりなることが好ましく、フェース面は軟鉄（炭素鋼Ｓ１５Ｃ〜Ｓ３５Ｃ）やステンレス鋼、純チタン、チタン合金、ベリリウムカッパ等の銅合金などが好ましい。

本発明の効果を充分に持続するため、または、腐食防止のため、以下の処理を施すと良い。たとえば、前記のように鉄の表面に酸化被膜を作る。

フェース面がチタンやステンレス鋼などの場合でも、酸化被膜処理を積極的に行ってもよい。例えば、チタンの場合、大気中で、約６００℃前後の熱処理により、ＴｉＯ_２被膜を形成することが出来る。ステンレスなどでは、硝酸系の酸化剤中で浸漬処理する方法等が採用できる。なお、高温の熱を掛けて処理すると、プレートに変形が生じるため、酸化処理の液に浸ける酸化処理の方が好ましい。

本発明では、フェース面の表面を硬化させ、フェース面の摩滅を防ぎ、上記の効果を持続させるようにしてもよい。この硬化処理方法としては、浸炭処理、窒化処理、タフトライド処理などが好ましい。いずれの処理も、前記酸化処理同様に、表面自体を硬化させるので、メッキの様に別の層が載らない。このため切削痕や溝とフェース面との角が鋭く、バックスピン効果が著しくなる。一般に浸炭処理は、８００℃〜１０００℃で行うため、５００℃前後の熱で処理を行う窒化処理の方が好ましい。また、タフトライド（塩浴軟窒化）処理も６００℃前後の熱で処理を行うので好ましい。窒化処理としてのイオン窒化処理や軟窒化処理は、時間がガス窒化処理に比べ短時間で済むので、好ましい。特にイオン窒化処理は、５００℃以下でも可能であるので、更に好ましい。

実施例１
Ｓ２０Ｃの軟鉄素材を鍛造し、ロフト５８°のゴルフクラブヘッドの素体を製造し、これをミーリング加工してピッチ０．２ｍｍのＳ字状切削痕を形成した。この後、コルゲーションを彫刻機により設けた。溝幅は、０．８５ｍｍ、深さは０．４５ｍｍ、ピッチは３．６ｍｍとした。次いで、黒染め処理を施し、硬さ１７８ＨｖのＦｅ_３Ｏ_４被膜を形成した。その後、防錆油を塗布した。フェース面上に歪みはなく、また、ミーリング痕も第１図の通りしっかり残っていた。

このゴルフクラブヘッドにシャフトを取り付けてゴルフクラブ（クラブ長さ３５インチ）とした。このゴルフクラブについて、約４０ヤード先のピンを狙う事を想定して実打評価を行った。その結果を以下に示す。評価は、１０打ずつ打って、バックスピン量を測って評価を行った。

比較例１として、Ｓ２０Ｃを鍛造した後、ベルトサンダーで磨いて、コルゲーションをロールプレスで刻印し、ニッケルメッキ及びクロムメッキを施し、サンドブラストしてゴルフクラブヘッドを製作し、同様の評価を行った。

比較例２として、この比較例１のヘッドを基にコルゲーションを再度、彫刻機で彫り直したゴルフクラブヘッドを製作し、同様の評価を行った。結果を表１に示す。

表１の通り、比較例１は、バックスピンが少なく、バックスピン量のバラツキが多かった。また、比較例２は、バックスピンが少なかったが、バックスピン量が安定しており、バラツキが少なかった。これに対し、実施例１は、バックスピン量が増加し、バックスピン量のバラツキも少なく安定していた。

実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図である。 図１の一部の拡大図である。

１ ゴルフクラブヘッド
２ ホゼル部
３ フェース面
４ コルゲーション
５ 切削痕

Claims (3)

1. 平面状のフェース面を有し、該フェース面には、トウ・ヒール方向に延在した複数条のコルゲーションが設けられており、該コルゲーション同士の間隔が２．８〜３．６ｍｍであり、
   該コルゲーションの深さ方向の断面形状がＵ字形、半円形、Ｖ字形、方形、又は多角形である金属製のアイアン型ゴルフクラブヘッドであって、
   該フェース面に、ミーリング加工によって複数条の切削痕を形成したアイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、
   各切削痕は互いに交わることなく略平行に延在しており、
   該切削痕は頂陵状の凸条として延在しており、該凸条同士の間は凹に湾曲した凹条として延在しており、
   該凸条の頂点と凹条の最深部との高低差は１５〜３０μｍであり、
   該凸条のピッチが０．１〜１ｍｍであり、
   該凸条は、フェース面のトウ側では上又は下向きの円弧状であり、フェース面のヒール側ではそれと逆向きの円弧状であり、
   該トウ側の凸条とヒール側の凸条とが連続することによりＳ字状の凸条となっていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
2. 請求項１において、少なくともフェース面に酸化処理を施したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
3. 請求項１又は２において、少なくともフェース面に浸炭処理、窒化処理、又はタフトライド処理を施したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。

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