JP5130272B2 - 学習効果予測方法及び学習効果予測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、学習効果予測方法及び学習効果予測装置に関する。
一般のアンケートのように個人の反応を集計し、全体的な傾向をつかむことは多変量解析(多種多様な特性をもつ多量のデータから、その相互関連を分析して特徴を要約したり、事象の背後にある要因を探り出したりして予測や分類を行う解析方法)を用いて広く行われている。
例えば、アンケートを用いた商品のイメージ調査などによって、その商品がどのような属性を持った人に好まれるのかを推定することや、大学入試のための模擬試験なども、ある時点におけるその個人の成績を集団の中における個人の相対的な位置で推定する事などに用いられている。
しかしながら、このように従来行われてきた多変量解析を用いる調査方法にはひとつの限界があった。
それは、利用可能な情報が、ある時点における個人の状態に関するデータに限られている点である。
本来、個人の様々な反応は、経験により大きく変化するものである。例えば、アンケートの直前にある商品の評判を聞いていたり、その商品を見ていれば、そのイメージは大きく変わるはずである。
また、模擬試験の成績にしても、ある時点でC判定の子供でも、その前の模擬試験でE判定であった子供と、A判定であった子どもでは、その成績の予測は変わってきて当然である。
つまり、現在の多変量解析によるデータ分析は、ある時点における状態を示すデータを中心的に用いており、時系列的な変化が十分考慮されているとはいえないので、正確な分析結果を得ることができない。
また、人間の反応の理解や予測には、その個人の過去から未来における“変化”という情報が大きな意味を持つ。どのような内容にどのような時間的なペースで遭遇したり、反応したのかということは、すなわち個人の経験の違いになる。
また、現在広く見られる反応データの分析は、ある時期の個人の属性やコンテンツの質などが切り口にされているが、その時系列的な遭遇ペースや変化を考慮しているものが少ない。
一方、調査研究には縦断的研究というものがある。それは、一定期間、継続して特定の調査を繰り返し、特定の個人の反応の変化をみようというものである。
しかし、そこで行われている調査は、1ヶ月に1度、1年に1度のペースというような大まかなスケジュールを立て行われるものであり、日々頻繁に私たちが遭遇するような膨大な情報に対する反応の変化は分析対象にされていない。
その理由の一つは、1ヵ月に一度というように決まったペースで評定する場合、膨大な内容に対して一定のペースで同様の条件下で判断を下すことが難しくなるためである。
例えば、1000語の英単語を1ヵ月に1度のペースで学習する場合を考えてみる。従来のように、1ヵ月に1度のペースで学習していくとすれば、ある1日に1000語全てを学習して1ヵ月後にまた学習をすることになる。
一方長い期間継続して繰り返し学習することが必要な英単語の学習等では、このように繰り返し学習を行っても、「何度やっても覚えられない」、「本当に覚えられるだろうか」という感覚が強まり、結局は学習をやめてしまう。
つまり、学習の効果、成果が実感できなければ、学習への動機づけは確実に低下するという課題があった。
本発明は上述した課題を解決するために創案されたものであり、一定のスケジュールに従って個人の反応を収集し、個人の属性やコンテンツの質などを考慮した分析および予測が可能になる、スケジュールの作成方法を得る。そして、このスケジュールを用いて学習効果予測方法を得ることを目的とする。
本発明の学習効果予測方法は、学習用のコンテンツを学習者に呈示するタイミング条件と呈示条件との組み合わせにより得られるスケジュール条件の学習スケジュールを用いた学習の効果を予測する方法であって、前記コンテンツを記憶手段に記憶する記憶工程と、前記記憶工程において記憶されたコンテンツを所定期間よりも短いインターバルで呈示する第1のインターバル条件を定めた学習スケジュールと、前記記憶工程において記憶されたコンテンツを前記所定期間よりも長いインターバルで呈示する第2のインターバル条件を定めた学習スケジュールとを生成する生成工程と、前記生成工程において生成された学習スケジュールに基づいて前記第1のインターバル条件及び前記第2のインターバル条件で複数の学習者に対して前記コンテンツを呈示するとともに、前記生成工程において生成された学習スケジュールに基づいて前記第1のインターバル条件で予測対象学習者に対して前記コンテンツを呈示する呈示工程と、前記呈示工程において呈示されたコンテンツによる学習を前記第1のインターバル条件及び前記第2のインターバル条件で続けたときの前記複数の学習者の成績データを収集するとともに、前記呈示工程において呈示されたコンテンツによる学習を前記第1のインターバル条件で続けたときの前記予測対象学習者の成績データを収集する収集工程と、前記収集工程において収集された成績データに基づいて、前記呈示工程において呈示されたコンテンツによる学習を前記第2のインターバル条件で続けたときの前記予測対象学習者の成績データを予測する予測工程とをコンピュータが行うことを要旨とする。
また、本発明の学習効果予測装置は、学習用のコンテンツを学習者に呈示するタイミング条件と呈示条件との組み合わせにより得られるスケジュール条件の学習スケジュールを用いた学習の効果を予測する装置であって、前記コンテンツを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたコンテンツを所定期間よりも短いインターバルで呈示する第1のインターバル条件を定めた学習スケジュールと、前記記憶手段に記憶されたコンテンツを前記所定期間よりも長いインターバルで呈示する第2のインターバル条件を定めた学習スケジュールとを生成する生成手段と、前記生成手段により生成された学習スケジュールに基づいて前記第1のインターバル条件及び前記第2のインターバル条件で複数の学習者に対して前記コンテンツを呈示するとともに、前記生成手段により生成された学習スケジュールに基づいて前記第1のインターバル条件で予測対象学習者に対して前記コンテンツを呈示する呈示手段と、前記呈示手段により呈示されたコンテンツによる学習を前記第1のインターバル条件及び前記第2のインターバル条件で続けたときの前記複数の学習者の成績データを収集するとともに、前記呈示手段により呈示されたコンテンツによる学習を前記第1のインターバル条件で続けたときの前記予測対象学習者の成績データを収集する収集手段と、前記収集手段により収集された成績データに基づいて、前記呈示手段により呈示されたコンテンツによる学習を前記第2のインターバル条件で続けたときの前記予測対象学習者の成績データを予測する予測手段とを備えたことを要旨とする。
本発明によれば、例えば、学習者のインターバル1ヵ月での学習成績(到達度)の上昇率を推定することができるとともに、インターバル1ヵ月の初期段階の学習成績結果(例えば、収集されている1ヵ月分のデータ)から、数ヶ月後の学習成績の変化をその段階(1ヵ月学習を行った時点)で推定することができる。
本発明におけるスケジュールの定義を示す図である。 本発明におけるスケジュールの定義を示す図である。 本発明におけるスケジュールの定義を示す図である。 呈示条件の均質配置と条件ユニット及び呈示ユニットの均質化を示す図である。 基本ユニットと副次ユニットで表現されたスケジュールを含むスケジュール条件の一例を示す図である。 スケジュール学習を行う場合の基本的なデータ生成を示すフローチャート図である。 スケジュールテーブルの一例を示す図である。 タイミング条件とコンテンツ項目割り当てを示す図である。 タイミング条件とコンテンツ項目割り当てを示す図である。 タイミング条件とコンテンツ項目割り当てを示す図である。 全条件を総合した項目の概要と予想される学習時間とを示す図である。 コンテンツデータベース内のコンテンツリスト例を示す図である。 コンテンツデータベース内のコンテンツリスト例を示す図である。 コンテンツ識別条件コードが入力されたコンテンツリストの例を示す図である。 コンテンツ識別条件コードが入力されたコンテンツリストの例を示す図である。 呈示リストの一例を示す図である。 呈示リストの一例を示す図である。 テスト記録の一例を示す図である。 テスト記録の一例を示す図である。 反応が記憶された反応データベースの一例を示す図である。 自己評定値の変化(全体平均)を示す図である。 3名の学習者の自己評定値の予測関数を示す図である。 3名の学習者の自己評定値の予測関数を示す図である。 3名の学習者の自己評定値の予測関数を示す図である。 学習レベルの自己評定を行う場合の画面例を示す図である。 学習レベルの自己評定を行う場合の画面例を示す図である。 異なるインターバル条件での学習到達度を示す図である。 成績予測を行う場合の動作を示すフローチャート図である。 複雑なスケジュールの記述例の説明図である。 最適イベントスケジュールを特定する方法の説明図である。 イベントスケジュール推定法の説明図である。 学習スケジュール評価表示システムの概略構成図である。 学習スケジュール評価表示システムを示すシーケンス図である。 学習スケジュール評価表示システムを示すシーケンス図である。 学習者評価と関連のあるサイトをリンク表示した一例を示す図である。 学習者評価と関連のあるサイトをリンク表示した一例を示す図である。 検索ワード等が記憶されたデータベースを示す図である。 訪問サイトを訪問回数の多い順に表示する動作を示すフローチャート図である。
本実施の形態は、
1.あるコンテンツに関するイベントが生起するスケジュール条件を、コンテンツに関するイベントが生起する最小期間である呈示ユニットと、イベント生起の呈示ユニット以上に長く、かつ、同一のコンテンツについてイベントの開始から次のイベントが起きる前までの間のインターバルと、前記インターバル以下の短い一定の期間であってイベントの生起を分散させるためのイベントサイクルユニットと、前記呈示ユニット以上に長く、かつ前記イベントサイクルユニット以下の長さの期間であってコンテンツの呈示条件を均質配置させるための条件ユニットと、複数のスケジュールが開始される場合にその開始時点の違いを表す遅延期間とからなるタイミング条件で構成するスケジュール作成方法。
2.あるスケジュール内におけるイベントの生起が、一定のインターバルで生起していない場合に、基本となるインターバル、イベントサイクルユニット、条件ユニット、遅延期間で構成される基本ユニットと、前記基本となるインターバルをコンテンツに関するイベントが生起する最小期間であるとみなしたときのインターバル、イベントサイクルユニット、条件ユニット、遅延期間で構成される副次ユニットとでスケジュールを構成するスケジュール作成方法。
3.前記スケジュールは、同一対象のイベントの時間的な生起タイミングに関するものであって、タイミング条件が異なる複数のスケジュールの組み合わせにより構成されるスケジュール作成方法。
4.前記複数のスケジュールには、同一又は異なる呈示条件の組み合わせ、またはそれらと属性条件の組み合わせが含まれているスケジュール作成方法。
5.あるコンテンツに関するイベントが生起するスケジュール条件を、コンテンツに関するイベントが生起する最小期間である呈示ユニットと、イベント生起の呈示ユニット以上に長く、かつ、同一のコンテンツについてイベントの開始から次のイベントが起きる前までの間のインターバルと、前記インターバル以下の短い一定の期間であってイベントの生起を分散させるためのイベントサイクルユニットと、前記呈示ユニット以上に長く、かつ前記イベントサイクルユニット以下の長さの期間であってコンテンツの呈示条件を均質配置させるための条件ユニットと、複数のスケジュールが開始される場合にその開始時点の違いを表す遅延期間とからなるタイミング条件で構成するために、所定の情報を入力する入力手段を有し、前記入力手段に入力された情報に基づいてイベントサイクルユニット内に想定できるの条件ユニットの最大数、スケジュール期間の全てを含むイベントサイクルユニットの最大数を生成するスケジュール生成システム。
6.あるスケジュール内におけるイベントの生起が、一定のインターバルで生起していない場合に、基本となるインターバル、イベントサイクルユニット、条件ユニット、遅延期間で構成される基本ユニットと、前記基本となるインターバルをコンテンツに関するイベントが生起する最小期間であるとみなしたときのインターバル、イベントサイクルユニット、条件ユニット、遅延期間で構成される副次ユニットとでスケジュールを構成するスケジュール生成システム。
7.一つもしくは複数のコンテンツからなるセットについて、全てのコンテンツに関するイベントが一定のタイミングで繰り返し生起するスケジュールを生成するために、イベント生起の最小期間である呈示ユニット以上に長く、かつ、あるイベントの開始から次のイベントが起きる前までの間のインターバル以下の短い一定の期間を、イベントサイクルユニットとして設け、各コンテンツに関する特定のイベントがそのイベントサイクルユニット内で一度生起するようコンテンツを配置するようにしたスケジュールを用い、前記コンテンツに対する経験の反応を時系列に収集し、過去に収集した反応パターンから今後の反応パターンを予測する未経験スケジュール予測方法。
8.前記過去に収集した反応パターンから今後の反応パターンを予測する方法は、特定の学習スケジュールに基づいて行っている学習の学習者自身の過去の学習到達度データの到達度上昇率から今後の学習到達度変化を予測する未経験スケジュール予測方法。
9.前記過去に収集した反応パターンから今後の反応パターンを予測する方法は、第1のインターバル条件の学習スケジュールと第2のインターバル条件の学習スケジュールとを混在させたスケジュールで生起するイベントに対する学習到達度データを、複数の学習者から収集する段階と、第1のインターバル条件における学習到達度の変化と第2のインターバル条件における学習到達度の変化の関数関係を特定する段階と、学習到達度予測の対象となる学習者に、第1のインターバル条件で生起するイベントに対する学習到達度データを収集する段階と、その収集データと前記特定されている関数関係から、第2のインターバル条件下の学習到達度の変化パターンを予測する段階とからなる未経験スケジュール予測方法。
10.前記第1のインターバル条件と第2のインターバル条件とを比較した場合、第1のインターバルは、第2のインターバルよりも短い期間である未経験スケジュール予測方法。
11.関連する複数のイベントの種類について、特定のイベントに関してはイベントが一定のタイミングで繰り返し生起するスケジュールを用いるため、イベント生起の最小期間である呈示ユニット以上に長く、かつ、あるイベントの開始から次のイベントが起きる前までの間のインターバル以下の短い一定の期間を、イベントサイクルユニットとして設け、イベントがそのイベントサイクルユニット内で一度生起するようにしたスケジュールを生成し、関連する複数のイベントの種類ごとにイベントの生起とそれに対応する個人の反応をコード化して時系列に収集し、最終の反応結果に基づいて抽出された他人の反応経過パターンと個人の反応経過パターンを比較して、類似する反応経過パターンを有する前記他人のスケジュールを前記個人の今後のスケジュールとする未経験スケジュール予測方法。
12.前記類似の度合いは、前記抽出された他人の反応パターン経過と前記個人の反応経過パターンとの内積の値により決定される未経験スケジュール予測方法。
13.学習者端末と学習到達度をWeb表示させるサーバとがネットワークにより接続された学習者評価表示システムであって、一つもしくは複数のコンテンツからなるセットについて、全てのコンテンツに関するイベントが一定のタイミングで繰り返し生起するスケジュールを生成するために、イベント生起の呈示ユニット以上に長く、かつ、あるイベントの開始から次のイベントが起きる前までの間のインターバル以下の短い一定の期間を、イベントサイクルユニットとして設け、各コンテンツに関する特定のイベントがそのイベントサイクルユニット内で一度生起するようコンテンツを配置するようにした学習スケジュールを用い、前記コンテンツに関する学習到達度を時系列に評価し、学習到達度の評価が一定レベルに到達した場合に前記学習者端末に対して学習到達度に関するデータと、学習到達度に応じて学習内容と関連するサイトへのリンク表示とを行う学習スケジュール評価表示方法。
14.学習者端末と学習到達度をWeb表示させるサーバとがネットワークにより接続された学習者評価表示システムであって、学習者が使用する検索ワードを学習者の学力段階別に登録する手段と、前記登録された検索ワードに対応して学習者が訪問したサイトを登録する手段と、前記登録された検索ワードと同じワードを用いて検索し、かつ、前記登録されたサイトと同じサイトを訪問した場合には、そのサイトの訪問回数をカウントアップする手段とを備え、学習者端末には、訪問回数の多いサイト順に検索結果を表示する学習スケジュール評価表示方法。
を記載する。
まず、スケジュール作成に必要な構成について、スケジュール固定法から説明する。
(スケジュール固定法)
スケジュール固定法は、タイミングを統制した上でデータを収集させ、タイミングの要因の影響を小さくすることにより、予測力を高める方法である。
タイミングを統制するということは簡単にできると考えやすいが、実際にタイミングのバリエーションを固定し反応データを収集する場合、非常に難しい問題がある。例えば、1000個のコンテンツに対して、1個あたり5秒程度かかる反応を1ヵ月に1回のペースで要求する場合を考えてみる。単純に考えると、ある日に1000個のコンテンツに対して反応を行い、1ヵ月後にまた1000個に対して反応する場合である。その場合、反応する日は、休みもいれずに連続して1時間半反応しつづける必要がある。最初の部分の反応と最後の部分の反応では、その意味合いも異なってくる。さらに、1000個のコンテンツを1日にそれぞれ5回評定しなければならないような条件なら、個人は7時間連続して評定しなければならない。これは無理な話である。
本発明は、上の例でいえば、コンテンツが1、000個であっても、2、000個であっても、繰り返しの数が5回でも、10回であっても、あるコンテンツに関するイベントが、全て一定のインターバルで生起するように、かつ、1日あたりの反応は数分程度で完了できるスケジュール構成法である。
この問題を解決するための方策は、イベントサイクルユニットを設定したスケジュールとすることである。スケジュールの方法を説明する前に、本発明におけるスケジュールの意味を明確にしておく。
本実施の形態のスケジュールは、スケジュール条件を用いる。このスケジュール条件は、いつどのようなタイミングで、どのような属性の内容を、どのように呈示するかを示す条件であり、タイミング条件、属性条件、呈示条件の3つから構成されている。
タイミング条件は、1ヵ月に1度、2週間に1度というようなイベントが生起するタイミングを意味している。厳密な定義については後述する。
イベントサイクルユニットの期間というのは、コンテンツや各種の条件をばらまく期間で、必ずしもインターバルの期間と一致するわけでないが、イベントサイクルユニットはインターバルの期間以下の短い期間になる。
本実施の形態では、学習の調査研究にスケジュールの要因を組み込むことを提案し、さらにそのための方法とそのデータの利用方法をいくつか提案する。漠然とデータを集めていては、ありきたりの情報しか得られない。そこで、時間的な変化を考慮してデータを分析するための枠組みが必要になる。
(スケジュールの要因を分析に組み込むための方策)
スケジュールパターンを分析に取り込むために、従来の調査方法に実験計画的な考え方を導入することをまず提案する。
スケジュールの要因を考慮するために、無限に想定できるスケジュールを最初から分析対象にすることは合理的ではない。結局のところコンテンツなどの呈示スケジュールに制限を加え、それに対応させてデータを収集し、分析する必要がある。つまり、スケジュールパターンを分析に組み込むには、呈示するスケジュールに制限を加えることが必要であり、そのための具体的な制限の手法が重要な意味を持ってくる。
スケジュールを設定するだけで問題は解決されない。特に、膨大なコンテンツに関するイベントに対する反応を一定のスケジュールに従って収集する場合、スケジュールを統制することが非常に難しいことが大きな問題として出てくる。膨大なコンテンツに対する反応を個人に要求する場合、その一つひとつの反応を特定のスケジュールに従って収集するためには、その個人は日々の生活においてかなり統制されたスケジュールに従って反応を行う必要がある。しかし、それを一般の個人に依頼することは不可能である。調査を受ける個人が、一律一定のスケジュールで反応を行うことは非常に難しいのである。
従って、たとえ自由度の大きな個人の生活リズムの中で反応を収集した場合であっても、収集された反応を一定のスケジュールに対応付けて分析できる枠組みが必要になってくる。個人がコンテンツに対して反応するタイミングの自由度は高くとも、一定のスケジュールに対応させてデータを集計、分析できるスケジューリングの方法が必要になってくる。
以下の方法によれば、反応データの分析にスケジュールの要因を組み込み、精度の高い分析と予測が可能になる。
それにより、従来考慮されてきた性別や地域、パーソナリティーなど様々な個人やコンテンツの属性の組み合わせに、さらにスケジュールの要因を考慮した分析が可能になる。
スケジュールの要因を如何にして分析に組み込めるようにしてデータを収集するのか、その具体的な方策を以下に説明する。なお、以下に列挙する方法は、個々の方法や組み合わせを採用するほどスケジュール要因を考慮した分析の精度が上がるもので、採用しなければ精度が低下することを意味する。
(1)スケジュールの定義
まずは、一般的なスケジュールの意味を厳密にとらえる必要がある。そのために、一般にいわれている、あるイベントが生起するスケジュールを、イベントが起きる最小の期間である呈示ユニットと、あるイベントの開始から次のイベントが起きる前までの期間とするインターバルとで構成されるタイミング条件Aiと、イベントの質を表す呈示条件Bi、および必要に応じてコンテンツの属性(難易度など)条件の3つに分けて考える。例えば、一般に一日やったら4日休むというスケジュールの場合、1日を最小単位(呈示ユニット)として想定し、5日をインターバルと想定したスケジュールといえる。
なお、イベントが起きる最小の期間(呈示ユニット)を定義することがまず必要である。英単語の学習であるなら、何日もかけて習得することが一般的で、1日に何百回も同じ単語を学習することはあまり想定できない。従って、1日を呈示ユニットにすることが一般的であろう。しかし、シューティングゲームのように、引き金を引くか引かないかというようなイベントに直前の数秒前のイベントが影響するようなコンテンツの場合には、1秒をイベントの呈示ユニットに想定してそのタイミングの影響を分析することも考えられる。
英単語の学習を例にとると、一日に一種類の英単語を1回ずつ学習してそれを10日間続けるスケジュール(ここでは、スケジュールAと呼ぶ)と、初日と6日目に5回ずつ一種類の英単語を学習するスケジュール(同様にスケジュールBと呼ぶ)と、初日と6日目に1回ずつ一種類の英単語を学習スケジュール(同様にスケジュールCと呼ぶ)を想定する。
図1に示すように、スケジュールAのように一日1回ずつ学習をしてそれを10日間続ける場合と、スケジュールBのように初日と6日目に5回ずつ学習する場合は、どちらも合計10回の学習を意味するが、それぞれのスケジュールの学習の質は明らかに違う。
これらのスケジュールを、以下のように、タイミング条件(スケジュールBでは1つのイベントが起きたらその時点から次のイベントが生起する前まで5日間のインターバルを取るタイミング)と、呈示条件(この例では、学習回数(学習の強さ)を表す次元)の2つに分けて考える。
すなわち、一種類の英単語に関するイベントが生起する最小期間(呈示ユニット)を1日とした場合、10日間に含まれるその最小期間におけるイベントの生起の有−無を、その繰り返し回数や各種条件の種類に関わりなく1−0に対応させることにより、その期間の特定のイベント生起のタイミングの条件を表現(コード化)する。具体的には図2に示したように、スケジュールAは、(1、1、1、1、1、1、1、1、1、1)、スケジュールBおよびCは(1、0、0、0、0、1、0、0、0、0)のように表現される。これによるとスケジュールBとCはタイミング条件に関しては同じであるが、繰り返し回数という呈示条件の次元に違いがあるという捉え方になる。呈示条件の種類には、繰り返し回数の他、呈示される時間(例えば、3秒間呈示)、呈示される時点で要求される処理(英単語の熟知度評定、学習の到達度の自己評定など)、呈示ユニット内でのコンテンツの呈示順序の特徴等々様々なものが考えられ、それらの表現方法は様々考えられるが、それらの呈示条件の表記方法とタイミングの条件の表記を組み合わせることにより、不特定のタイミングで生起するイベント(つまりその個人の経験の内容)を全て表現することもできると考えている。
以上まとめると、本実施例では、まず、イベントが生起する最小期間を呈示ユニットとして規定し、その上で、従来スケジュールといわれてきた条件を、タイミング条件と呈示条件の2つの次元に分け独立させてその影響を検討することを提案する。なお、必要に応じて、コンテンツの属性(難易度)条件などをもう一つの次元として考慮することも可能である。
(イベントサイクルユニットの設定)
膨大なコンテンツに関するイベントが生起するタイミングを統制するための枠組みとして、イベントサイクルユニットを想定することを提案する。膨大なコンテンツをまとめて呈示することが難しいとすれば、コンテンツをある期間にばら撒く必要が当然出てくる。その期間をイベントサイクルユニットとする。一つのポイントは、その期間の設定に制約がある点である。
すなわち、全てのコンテンツに関するイベントが一定のタイミングで繰り返し生起するようなスケジュールを生成するためには、前述した呈示ユニット以上に長く、かつ、想定する期間の中で設定されるインターバルの中で最も短いインターバルの期間以下に短い一定の期間をイベントサイクルユニットとして設け、各コンテンツに関する特定のイベントがそのイベントサイクルユニット内で一度生起するようコンテンツを配置する必要がある。
したがって、この場合には、タイミング条件は、呈示ユニット、イベントサイクルユニット、インターバルの各要素で構成されることになる。
例えば、英単語の学習を1年間行い、最初の半年は2ヵ月に1度のタイミングで学習を行い、残りの半年は1ヵ月に1度のタイミングで学習を行う場合を例として考えてみる。この場合、最小のインターバルは1ヶ月であるゆえ、タイミング条件を統制するためには、コンテンツをばら撒く(配置する)期間は、最長で1ヵ月にしなければならない。1ヵ月を超えるイベントサイクルユニットを設定した場合、コンテンツに関するイベントの生起のタイミングを厳密には統制できなくなる。
なお、イベントサイクルユニットは考慮するイベントが最初に生起した時点を起点として全て固定され、イベントサイクルユニットはどれも同じ長さの期間であるのが一般的であろう。
図3には、図2のスケジュールBに対応して設定できるイベントサイクルユニットの例を2つ示した。このそれぞれのユニットに、各コンテンツが1回呈示されるように配置する方法が本実施形態になる。
また、図3に示すように、あるコンテンツ(英単語)が呈示(学習またはイベント)されてから再び呈示される前までの間隔をインターバルと呼び、呈示ユニット以上に長く、最短のインターバル以下の期間をイベントサイクルユニットmiとして固定し、その開始時点をイベント生起のタイミングの開始時点に一致させる(必ずしも一致させなくてもいいが、一つ目のイベントサイクルユニット後のイベントサイクルユニットの開始は、最初のイベントサイクルユニットの開始時点からインターバル後に規定される)。また、ある1つのコンテンツの呈示は1つのイベントサイクルユニットmi内で1回であるとする。
考え方によっては、スケジュールBの1日目に行われる5回の学習にイベントサイクルユニットmiを想定することもできるが、その場合は、1回目と2回目の学習の間隔(分や秒など)を1イベントサイクルユニットmiの最少単位=呈示ユニット(bi)として定義されることになる(つまりイベントサイクルユニットの最小単位=呈示ユニットを何にするのかも明確にしておく必要がある)。ただ、一般的な学習イベントとその効果を検討する場合には、図1のように、イベントサイクルユニットmiの最小単位=呈示ユニット(bi)は1日程度を想定すればよい。
ここで、図1に戻り再度説明を加える。
図1のスケジュールBとCは1日を、イベントサイクルユニットmiの最少単位(呈示ユニット)biとした場合であり、タイミング条件Aiは同じで呈示条件Biが異なることを表現している。
なお、呈示条件Biは単なる回数だけではなく、呈示時間や反応の方法など様々なバリエーションが考えられる。
つまり、スケジュールは何日間隔のイベント、インターバルかを示すことのみを考え、イベントを1、0で表現すると、スケジュールBの「5」は単に「1」と示すことでよい。1つのコンテンツの呈示は1イベントサイクルユニット内で1回であるから、図3に示すように、1日目と6日目に「1」が設定される。
従って、図1のABCのスケジュールのタイミング条件Aiと、イベントの呈示条件は、図2に示すようにコード化できる。
このようにして、ABCのスケジュールのタイミング条件、呈示条件をコード化しておく。
すなわち、スケジュール(学習標準スケジュール)は、1日を呈示ユニットとした場合、日にち(時間)に対するタイミング条件Aiとイベント(コンテンツ)の呈示条件Biとを1−0で対応づけた行列として表現される。
(2)コンテンツのグルーピング
個人の特徴や一般的な傾向を明らかにしたり、的確な予測を行うためには、評定など反応を要求するコンテンツの質を明確にしておく必要がある。個々の商品や英単語に対する反応の変化が関心事であれば、グルーピングを行う必要ないが、その個人の反応傾向を見るためには、その個人に対して送信した複数のコンテンツの反応の代表値を採ることが望ましい。
そのようなときには、各タイミング条件Ai(学習の休み間隔のパターン等)と呈示条件Bi(学習の回数、学習の強さ)の組み合わせごとに、複数の類似したコンテンツを用意する。これが、コンテンツのグルーピングである。例えば、英単語なら難易度などが同レベルの単語、学年ごとに必要な単語というような一定の属性でコンテンツ項目をまとめる(属性情報を付加する)ことである。なお、ここでいう難易度というのは、一般的な難易度だけではなく、その個人の各コンテンツに対する成績の良し悪しを難易度に対応付けたものや各コンテンツに対するその個人の反応と、エキスパートの反応のズレを対応させたものでもよい。
ただし、三角形の面積を計算する問題であれば、面積=底辺×高さ/2という公式を問う問題と、かけ算とわり算の計算問題をひとつにまとめることも考えられるが、できる限りコンテンツの内容は細かくし、それぞれとスケジュールの各呈示条件、タイミング条件とを対応させてデータを取れるようにすることが望ましい。なぜなら、掛け算と割り算ができる能力がどの程度にならないと三角形の面積を出せるようにはならないといった、問題間の階層関係も検討できるからである。
以下、用語を明確にするため、コンテンツ項目とコンテンツグループについて説明を補充する。
・コンテンツ項目:反応が期待される(見られるだけでもよいが)1まとまりの呈示内容である。英単語なら1つの英単語と日本語訳の対であったり、1桁の足し算なら、1+2=?のようなものを考えても良い。また、数学の文章題なら途中の計算過程をコンテンツとして分けることも可能である。もちろん音声データやビデオ等で呈示可能な内容は全て含まれる。コンテンツ項目の最小単位は内容をどうとらえるかによって異なってくる。
コンテンツグループ:類似したコンテンツ項目の集合。英単語なら難易度などが同レベルの単語、学年ごとに必要な単語、ある単元の学習に必要な単語などというような、一定の属性でまとめられるコンテンツ項目の集合である。
なお、前述したが、コンテンツ項目はタイミング条件の1イベントサイクルユニットで1回だけ生起(呈示)される(1回というのは呈示条件ではないので注意)。
(コンテンツをグルーピングする理由)
コンテンツをグルーピングする理由は、特定のスケジュールの効果はコンテンツによって異なってくると考えられるためである。複数の属性を持つコンテンツの集合に対するスケジュールの効果は、コンテンツの集合が変われば違うものになる可能性が高い。つまり、コンテンツの要因とスケジュールの要因をできる限り分離することにより分析の精度を上げることを意図する。
なお、コンテンツを等質にし、できるだけ細かくグルーピングすることにより、得られたデータを用いて、逆に質の異なるコンテンツグループ間の関係を、スケジュールとそれぞれのコンテンツグループに対する反応とから推定することが可能になる。
前述の三角形の面積の問題を例にすれば、三角形の面積の計算問題と、底辺×高さ/2という公式を問う問題、かけ算とわり算の計算問題と3つのコンテンツグループに分け、それぞれの成績を様々なスケジュールで収集すれば、三角形の面積の計算問題を子どもに呈示するために最適なスケジュールを、公式とかけ算・わり算の学習スケジュールに対応づけて推定することが可能になるはずである。
例えば、「公式の理解がどの程度のレベルまで到達していなければ、三角形の面積の問題を学習してもその効果はそれほど期待できない。そのために、公式の学習が1週間に1回のペースで行われていった場合には、三角形の面積の問題は、5週間までは呈示せず、その後3日に1回のペースで呈示することが効果的である」というような予測も可能になる。すなわち、公式の暗記学習を促す問題のコンテンツグループを、最初の5週間までは3日に1回のペースで呈示し、その後1週間に1度のペースで呈示するスケジュールと、三角形の面積を問う問題のコンテンツグループを、最初の5週間は一度も提示せず、その後3日に1回のペースで呈示するスケジュールの2つのスケジュール条件の組み合わせとして分離し、両スケジュールの影響を検討することが可能になる。
(3)タイミング条件の決定方法
タイミング条件の種類は無限に想定されるが、イベントの周期の影響を視覚的に分かりやすくするためには、10日に1回、1ヵ月に1回というような等間隔のインターバル、呈示条件を設定することが当初は有効である。
スケジュールに対応したデータの収集と分析は、最終的には無作為なスケジュールに対して予測力を持つことを目指すが(本実施形態2の目的)、そのためには最初から無作為なスケジュールを設定してデータを収集していくことは得策ではない(もちろん、既に一定のタイミング条件に該当する反応データが利用可能な状況にあるならば問題ない)。
なぜなら、スケジュールの要因を考慮して分析を行い、特に予測を引き出すためには、ある程度利用可能なデータの蓄積が必要となる。そのためには、最初から複雑で細かなタイミング条件を設定していては、その評定者本人に有益な予測を提供することは難しく、データの蓄積を行えなくなる。
初期の評定者にも分かりやすいデータを提供するためにも、まずは前記のような比較的単純なタイミング条件を設定してデータを収集することから始めることが望ましい。いずれにせよ、イベントサイクルユニットを決定するタイミング条件、呈示条件の設定は計画的に行うことが望ましい。
タイミング条件におけるインターバルの影響を視覚的に分かりやすくするためには、10日に1回、1ヵ月に1回というような等間隔のインターバルを設定することが当初は有効である。
(4)各イベントサイクルユニット内での呈示条件の均質配置
特定のイベントサイクルユニットにおいて、そこで考慮する呈示条件が、1つのイベントサイクルユニットの中にできる限り均質になるように配置した後、そこへコンテンツ項目を割り振る。
呈示条件(例えば、学習回数)を均質に配置する理由は、イベントサイクルユニット内におけるイベントが一定のペースで生起しない可能性があり、その場合、後述する評価イベント(テスト)においてそれ以前のイベントの効果を推定する際に、誤差が大きくなることによる。これについては、さらに詳細な説明を評価イベントの設定方法のところで行う。
英単語学習を例にとれば、あるイベントサイクルユニットの最初と最後に特定の呈示条件の項目が偏って配置されていた場合、イベントサイクルユニットの中間で病気などのために学習ができなくなる状況ができた時には、条件によってタイミング条件が若干異なる事態になる。また、後述するように評価イベントをイベントサイクルユニットよりも短期間に設定し、呈示条件ごとにコンテンツをまとめてイベントの効果を推定する際には、効果を検討するイベントと評価イベントまでの期間を厳密に統制することが難しくなるためである。
それを防ぐため、各イベントサイクルユニット内で呈示条件ができる限り均質になるようにする。より具体的には、以下に述べる条件ユニットを設けることが有効である。
(5)呈示条件の均質配置の方法
均質配置にはランダムに呈示条件を配置する他に次の方法がある。すなわち、イベントサイクルユニットを更に一定期間(条件ユニットと呼ぶ)に分け、その条件ユニット内で全ての呈示条件(コンテンツ項目ではない)、もしくは、一定のタイミング条件で生起するイベントの効果を比較検討したい呈示条件や属性条件があればその条件がそれぞれ1回出現するようにする(図4参照)。
この場合、タイミング条件は、呈示ユニット、条件ユニット、インターバル、イベントサイクルユニットの各要素で構成されることになる。
図4は約2ヵ月(48日間)のイベントサイクルユニットが繰り返される条件で、呈示条件Biとして呈示回数(学習回数)が1〜16回の16条件が設定されている。この例では、第1イベントサイクルユニットmip(48日間)を4日ごとに区切り、全部で12個の条件ユニットfiに分けられている。
例えば、1日目には、学習回数が1、8、9、16回条件が割り振られ、2日目は2、7、10、15回の学習回数が出現するようになっており、一つの条件ユニット(4日間)で16条件全てが1回ずつ出現するようになっている。
同様に、5日目から8日目の2つ目の条件ユニットfiでも16条件全てが1回ずつ出現する。以下同様に、1つのサイクル(48日間)で12個の条件ユニットfiが繰り返される。
なお、各条件ユニットfiの1つの呈示条件Biに割り振られるコンテンツ項目の数は等しくなくても良い。また図4では、1〜4日と5〜8日の間の条件の組み合わせの順番が異なっているが、それは、呈示条件Biが現れる順序の影響を少なくするためである。なお、4日間で条件が現れる順序は、ランダムでも良いしその他より厳密なカウンターバランス法を用いてもよい。
(6)コンテンツ項目の呈示順序の固定
各イベントサイクルユニットの中で、コンテンツ項目が呈示される順序を固定し、どのイベントサイクルユニットをとってもほぼ同じ順序でコンテンツ項目が呈示されるように配置する。
各イベントサイクルユニット内で、特定のコンテンツ項目が呈示される時期が異なれば、スケジュール条件(スケジュール条件は呈示条件、タイミング条件の総称)に誤差が出てくる。
例えば、1ヵ月のインターバルでイベントが反復されるタイミング条件でデータが収集されたとしても、第1イベントサイクルユニットの最終日に呈示されたコンテンツ項目が、第2イベントサイクルユニットmiqの初日に呈示されるようでは、それは1ヵ月のイベントサイクルユニットの反復というタイミング条件に、そのコンテンツ項目の反応を分類しにくくなる。
コンテンツ項目のイベントサイクルユニット内での呈示順序を固定することにより、各ユニット内での呈示にばらつきがあったとしてもその影響を比較的小さく抑えられる。
(7)各呈示ユニットの均質化
ここでは、イベントサイクルユニットの最少単位内で呈示されるコンテンツ項目のまとまりを呈示ユニットPiと呼ぶ。英単語学習なら、ある日に呈示される英単語のまとまりのようなものである。
各呈示ユニットPiで要求されるイベントの質(呈示回数の合計や合計所要時間)ができる限り等しくなるように、呈示条件Piの組み合わせや、コンテンツ項目の数、もしくはスケジュール条件の組み合わせを調整する。
もちろん、呈示ユニット内の呈示順序をランダムにしたり、同一コンテンツができる限り時間的に離れて呈示されるようにするなど、様々に調整する工夫も有効である。
この操作は、この呈示ユニットPiの中で生起するイベントが、呈示ユニットPiごとに大きく変わらないようにすることを意味する。例えば、図4のように毎日1呈示ユニットPiの学習が要求される場合、ある日は学習回数条件が16回の英単語ばかり10個出てきて、ある日は1回のものばかり10個出てくるようでは、各コンテンツ項目の学習条件は等しいとは言えない(当然学習にかかる時間は違う)。その場合、各イベントの効果を推定するような場合には、単純にタイミング条件と呈示条件、属性情報のみで区分して効果を推定することは望ましくない。それを防ぐため、図4では一つの例として、呈示ユニット内の学習回数(呈示条件)の合計がほぼ等しくなるように割り振っている。なお、学習回数などの割り振りの具体的な方法は、後述する(具体的な手順の(手順2)スケジュールテーブルの生成参照)。
もちろんこの調節は呈示条件だけでなく、各呈示条件に割り振るコンテンツ項目の数や、異なるスケジュール条件の組み合わせで調節する事も可能である。
たとえスケジュール条件と呈示条件が同じであっても、ある呈示ユニットPiと別の呈示ユニットで要求される反応の負担が異なっていては、呈示ユニット内での反応の意味が異なってきてしまうため、その可能性をできる限り排除する必要があり、そのための方策である。
(8)呈示ユニットの小型化
スケジュール条件、呈示条件Bi、コンテンツグループの属性などの様々な組み合わせに対して反応データを収集するためには、1つの呈示ユニットに反応する時間はできる限り短くすることが望ましい(あまり長い時間がかかってしまっては一定の呈示条件を保証できず、また反応する人の負担も大きくなる)。
そのため、イベントサイクルユニットを長くしたり、(5)によって呈示ユニットPiあたりの呈示条件Biを少なくしたり、呈示条件Biに割り振るコンテンツ項目の数を少なくする方法が有効である。
図4の1日目の呈示ユニットPiの1、8、9、16回という呈示条件Biに、それぞれ1個のコンテンツ項目を割り振れば、1日当たりの、のべ学習回数はそれほど多くならない。もちろん、一般に、イベントサイクルユニットmi(mip、miq)や条件ユニットfiをもっと長くしても良い。
尚、個人の評定の基準は日々変化する。この変動を分析で考慮し、排除するためには同一呈示ユニット内に複数の呈示条件のコンテンツを用意し、そのコンテンツに対する反応の差を厳密な条件差として指標とする方法である。
(9)日常的な遭遇経験の影響を排除して一般的な傾向を明らかにする方法
(4)で配置された呈示条件へのコンテンツ項目の配分方法としては、評定者ごとにランダムに割り振る他、従来の実験研究で用いられているような、カウンターバランス法を用いても良い。
計画的に呈示されるコンテンツ項目の中には、普段の生活の中で偶然遭遇するものも多い。そこまでを統制することは難しいが、一般的な傾向をとらえるためには、特定のコンテンツ項目が普段の生活の中で偶然遭遇する可能性を等質化するかランダム化し、分析の際に複数人のデータの代表値をとることが有効である。
例えば、英単語を例にとると、特定の英単語は学校や塾の授業で学習を受ける場合もある。その場合、一定のスケジュールで評定を行う評定者全員に一律同一の英単語が割り振られていた場合、その高校や塾の生徒のその英単語の成績だけ上昇する可能性があり、それはすなわちその条件の一般的傾向として現れてくる。それではそのデータを一般的な予測には使えない。予測力を高めるためにはこれらの方法を組み込むことが有効である。
(10)呈示の効果の測定方法およびデータの集計方法1(落ち穂拾い法)
以上、イベントのスケジュール条件の様々な設定方法を述べたが、これらは全て、データの集計方法に対応させて考えられるものである。つまり、上記の方法を用い、以下に説明するような方法でデータを集計すれば、タイミング条件、呈示条件、コンテンツの属性などが統制された反応をデータとして収集することができる。
上記のスケジュールの立て方は、簡単に言ってしまえば、1回に呈示するコンテンツが多いと反応しきれないため、それを少なくするためコンテンツ項目をインターバルユニット内に散らすことを意味している。無作為に散らしてしまうとタイミングや呈示条件、一つのイベントの影響力の統制が非常に難しくなるため、それを統制するための道筋である。
データの集計は、逆に散りばめられたコンテンツに対する反応を少しずつ拾い集め最終的にまとまったところで代表値をとるというものである。
具体的なデータの収集方法の一つは、「落ち穂拾い」のような方法である。わかりやすい例は、Aiというタイミング条件で生起したイベントを経験した効果を測定する際に、その最後のイベントサイクルユニットで呈示されるコンテンツ項目に対して、評価を要求するスケジュールを想定すればよい(もちろん別途、その効果を測定したい一定のスケジュールに従ったイベントの延長として、評価のためのイベントを設定しても同じことになる)。図4のスケジュールを例にすれば、第2イベントサイクルユニットの3ヵ月目の1日目に呈示される1回学習条件の単語に対して、その学習の到達度を自己評定してもらうと、その反応には、2ヵ月前に1回学習した学習イベントの影響が現れている。同様に、16回の学習条件の単語に対して自己評定の反応を要求すれば、2ヵ月前の16回の学習イベントの影響が現れていることになる。各学習回数に割り当てられたコンテンツ項目の数が1個であった場合、同様の評定イベントを4日間(1条件ユニット)継続すると、1回〜16回の呈示条件にそれぞれ1個のコンテンツ項目の反応データが集まることになる。さらにそれを2ヵ月継続すると、第2イベントサイクルユニットが終了する時点(4ヵ月目が終わる時点)で、1回〜16回の条件それぞれに、12個ずつ同じスケジュール条件をとったコンテンツ項目に対する反応が集まることになる。その反応をまとめることで同じスケジュール条件のコンテンツ項目に対する反応の代表値を得ることが可能になるわけである。
ここで条件ユニットを設けることの別の意義も出てくる。すなわち、図4の例で、条件ユニットを設けず3ヵ月〜4ヵ月に各学習回数条件をばらばらに設定した場合、ある繰り返し条件が4ヵ月目の最後のあたりに集中して呈示されることもありうる。その場合、その学習回数の条件に対する学習者の反応は、4ヵ月目が完了するまで収集できないことになる。学習者が3ヵ月目で学習をやめてしまった場合は、学習回数条件ごとに1、2ヵ月の学習イベントの影響を比較することはできない。それに対して、条件ユニットを設定すれば、3ヵ月目の4日目が終了した時点で各学習回数条件ごとに少なくとも1つのデータは得られることになる。それによれば、学習者が3ヵ月目の4日目が終了した時点で自分の学習の効果を再確認することもでき、それをフィードバックすることで学習者の関心をつなぎとめることも容易になる。
さらにまた、評価のイベントサイクルユニットを検討するスケジュール条件の前にも設け、最初と最後の評価イベントに対する反応を比較することでその間の一定のスケジュール条件に沿ったイベントの経験の影響をより厳密に表すことができる。特に、コンテンツに関する経験に大きな個人差が推定されるような場合は、この方法により個人差を排除して検討することができる。
落ち穂拾い法は、これまで説明してきたスケジュール構成法のうち、イベントサイクルユニットを設定したスケジュールを採用し、そのイベントサイクルユニットに評価イベントを想定した方法である。
(11)呈示の効果の測定方法およびデータの集計方法2(タイミング相殺法)
前記データ収集方法1は、一定のイベントサイクルユニット(少なくとも条件ユニット)のような期間を設けなければ、一定のタイミング条件に則った正確なデータの収集ができない点で難点がある。一般にテストは短期間になされるものである。その場合、イベントサイクルユニットを設定する方法では、学習イベントとテストのような評価イベント(以後、テストと呼ぶこともある)の間の時間間隔の違いに対処する必要が出てくる。例えば、図3で1、2ヵ月目に学習を実施し、その効果を3ヵ月目以降のある日に測定する場合、1、2ヵ月の間に使われたコンテンツを全て利用してテストすることは時間的に難しく、いくつかのコンテンツを抽出してテスト項目を構成する必要がある。その場合、例えば3ヵ月目の初日にテストを実施するならば、学習からテストまでのインターバルは1〜24日のばらつきが生じる。その状況で1ヵ月目の前半に学習したコンテンツと、2ヵ月目の最後に学習したコンテンツからテストを構成し成績を同等に比較しては、学習とテストの間のインターバルの違いの影響が成績に混入し、厳密な比較は難しい。学習とテストのインターバルの違いの影響を考慮して、正確な比較を行うための方法としては2つがあげられる。
一つは、図3のような学習スケジュールを6ヵ月目まで延長して、3ヵ月目、5ヵ月目、7ヵ月目にテストを実施して学習の繰り返しに対する成績を比較していこうという場合は、テストを実施する日をどの月も同じ日とし、イベントサイクルユニット内の同じ時期のコンテンツ項目から同数ずつコンテンツを選びテスト項目を構成する方法である。例えば、3ヵ月目と5ヵ月目の初日にテストを実施する場合、1ヵ月目の6日目、12日目、18日目、24日目の呈示ユニットのコンテンツ項目からそれぞれ1個ずつコンテンツを選びテスト項目を構成する。その場合、3ヵ月目と5ヵ月目のテスト項目を同様にして抽出し、テストを実施し、全てをまとめて代表値を取れば、3ヵ月目と5ヵ月目のテストの成績には、学習からテストまでの期間の違いが同程度影響した結果が表れてくることになる。これは、従来実験心理学の領域で用いられているカウンターバランス法をタイミング条件に応用した類の方法である。
この方法は月ごとに学習の効果を見るためには有効であるが、呈示条件の影響を比較することは難しい。例えば、3ヵ月目の初日にテストを実施する際に、1ヵ月目の最初に10回学習条件の単語が数多く配置され、2ヵ月目の最後のあたりに1回条件の単語が数多く配置されているスケジュールの場合、3ヵ月目の初日に10回学習条件の単語と1回学習条件の単語をテストし、その成績を比較しても、両条件の影響を同等に評価することはできない。このような問題を解決するための方法は、スケジュール方法として条件ユニットの設定を前提とし、さらにテストを構成する際に、比較検討する条件の項目を同じ条件ユニットから同数抽出し、テストを構成し、反応をまとめて比較する方法である。それによれば、どの呈示条件も学習とテストのインターバルは同等とみなせる。
同じ条件ユニットからテスト項目を同数抽出するということは、学習からテストまでのインターバルの違いを同等にすることを意味する点で、先の方法(カウンターバランス法をタイミング条件に適用したもの)と同等の効果をもつ。さらに重要な点は、必ず全ての呈示条件が一つは含まれるという条件ユニットの特徴を利用すれば、複数の呈示条件の学習の影響を学習とテストのインターバルの要因を相殺させて比較することが可能になる。つまり、これも条件ユニットが設定されていて初めて容易に分析が可能になる評価方法である。
(12)異なるスケジュール条件のすり合わせ
例えば、(11)のテストの構成例のように、3、5、7ヵ月目にテストを実施し、あるスケジュール化されたイベントの影響を継続して測定するような場合、テストで利用された項目は、テストを受けた時点でそのイベントの影響を受ける。従って、月を追うごとに学習の成績がどう変化するのかを見るような場合は、純粋に学習を行った効果のみを検出することが難しくなる。このような場合は、図4で示したスケジュール(2ヵ月に1日学習する条件)で学習イベントを行うコンテンツの他に、同じスケジュール(もちろん異なるスケジュールでもよい)でテストイベントを行うコンテンツを別途用意し、その両者を並立させてイベントを経験させ、別々に集計を行えば問題はない。
このように、個人が経験するスケジュールとコンテンツを、複数用意し、それらを同じ期間に並立させて実行することも十分可能である。特に、同種類のコンテンツを使って同様のイベントを経験させる場合は、反応を行う個人は異なるスケジュールで反応を要求されているという意識がなくとも、複数のスケジュールに対する反応データを個別に収集し分析することもできる。なおその場合は、コンテンツ項目は異なるものを用い、呈示ユニット(図4の場合は1日間)内での個人の負担などは、できる限りどの呈示ユニットも等しくすることが望ましい。
特にこの方法は、複数のスケジュール条件で起きるイベントに対する反応の関係を特定し、一つのスケジュール条件に対する反応の変化パターンから、別のスケジュール条件に対する反応の変化パターンを推測する際に有効になる。
(13)異なるスケジュールをすり合わせるためのタイミング条件の構成方法
上記の予測を行うに際しては、あらかじめ、できる限り多くのスケジュール条件を作成して、イベントに対する反応のデータを蓄積していくことが望ましい。この場合に、タイミング条件は無数に考えられ、一つ一つに対応してタイミング条件を記述しなければならない。例えば、「1週間に1回のタイミング」、「1ヶ月に1回のタイミング」などと表現していては、多数のタイミングを効率的に表現できない。また、呈示ユニットの最小期間を決め、そこでイベントが起きるか否かでタイミングを表現する方法(0、1のパターンで表現する方法)も、全期間が長くなるほど表現しにくくなる。
さらに、複数のスケジュール条件を同一の学習者へ同時に適用する場合、日々行われる学習条件の内容が表されたスケジュールテーブルを個別に毎回作成していくことは効率的でない。特に、同一のタイミング条件が繰返し生起するようなスケジュール条件のテーブルを自動生成するために以下のような手法を用いる。
呈示ユニットを最小単位とし、イベントサイクルユニットの長さ(E)、インターバルの長さ(I)、条件ユニットの長さ(J)、遅延の長さ(D)でタイミング条件を表現する。
図5に示すように、例えば、1週間を6日とし、1ヶ月を4週間、すなわち24日で構成するようにしている。この月と日に各種スケジュールを合わせる。A1のスケジュールは、「E024 I024 J002 D000」と表現されているが、これは、基本単位となる呈示ユニットを1日とした場合、イベントサイクルユニットが1ヶ月、インターバルが1ヶ月、条件ユニットの長さは2日、学習開始日(この場合、1ヶ月目の第1日目)から最初のA1条件が始まるまでの遅延期間の長さは0日(遅延がない)という意味を示す。
図のグラフ表示の横棒で表された部分は、インターバルユニット内に撒き散らされたコンテンツが呈示される(イベントの生起)予定になっていることを表している。
同様に、B1のスケジュールは、イベントサイクルユニットが2ヶ月、インターバルが2ヶ月、条件ユニットの長さは4日、学習開始日から最初のB1条件が始まるまでの遅延期間の長さは0日であることを示す。
ところで、遅延期間がある例として、C2のスケジュールが、「E006 I006 J001 D006」と表現されている。このスケジュールは、イベントサイクルユニットが6日、インターバルが6日、条件ユニットの長さは1日、学習開始日から最初のC2条件が始まるまでの遅延期間の長さは6日であることを示す。
上記の例は、イベントの生起が毎日行われる予定のスケジュールを示しているが、必要に応じて、1回目の学習を終えた後、すぐに2回目の学習にとりかからないで少し期間を空けてから学習を行う場合もあり得る。このようなスケジュール例を示すのが、D1、D2、E1、E2、E3である。
例えばD1のスケジュールは、「E006 I006 J001 D000-E004 I008 J000 D000」と表現されている。この表記の前半部分、すなわち「E006 I006 J001 D000」を基本ユニットと呼ぶようにする。この基本ユニットについては、前述した表現方法と同様に解釈すれば良く、イベントサイクルユニット(基本イベントサイクルユニット)が6日、インターバル(基本インターバル)が6日、条件ユニット(基本条件ユニット)の長さは1日、学習開始日から最初のD1条件が始まるまでの遅延期間(基本遅延期間)の長さは0日であることを示す。
一方後半部分、すなわち「E004 I008 J000 D000」を副次ユニットと呼ぶようにする。副次ユニットの内容の意味は、基本ユニットにおける基本インターバル期間6日をスケジュールを記述する場合の基本単位である呈示ユニットとみなし、その6日の呈示ユニットを用いてスケジュールを表現し直せばどのようになるかを表している。基本インターバルを呈示ユニットとみなした場合の副次ユニットにおけるインターバル、イベントサイクルユニット、条件ユニット、遅延期間を各々、副次インターバル、副次イベントサイクルユニット、副次条件ユニット、副次遅延期間と呼ぶようにする。
例えば、6日の呈示ユニットを1単位という呼び方にすれば、副次イベントサイクルユニットが4単位、副次インターバルが4単位、副次条件ユニットの長さは0単位、学習開始日から最初のD1条件が始まるまでの副次遅延期間の長さは0単位となる。
次に、D2のようなスケジュールの場合は、最初に学習開始日から1ヶ月の遅延期間があり、2ヶ月目からは1ヶ月間イベントの生起があって、次の1ヶ月休むというサイクルが、繰り返されていると考えれば、基本インターバル6日を1呈示ユニットとした場合、副次イベントサイクルユニットが4単位、副次インターバルが8単位、副次条件ユニットの長さは0単位、副次遅延期間の長さは4単位となる。このように、遅延期間の長さは、副次ユニットで表現することとし、基本ユニットでは表現せずに0としておく。
したがって、「E006 I006 J001 D000-E004 I008 J000 D004」という表記となる。
D2は、基本イベントサイクルユニットが6日、基本インターバルが6日、基本条件ユニットの長さは1日、学習開始日から最初のD1条件が始まるまでの基本遅延期間の長さは0日であって、基本インターバル6日を1呈示ユニットとした場合、副次イベントサイクルユニットが6単位、副次インターバルが6単位、副次条件ユニットの長さは0単位、副次遅延期間の長さは0単位となる。
E3のスケジュールでは、基本イベントサイクルユニットが6日、基本インターバルが6日、基本条件ユニットの長さは1日、学習開始日から最初のE3条件が始まるまでの基本遅延期間の長さは0日であって、基本インターバル6日を1呈示ユニットとした場合、副次イベントサイクルユニットが6単位、副次インターバルが6単位、副次条件ユニットの長さは0単位、学習開始日から最初のD2条件が始まるまでの副次遅延期間の長さは8単位となる。
E1、E2、E3のスケジュール条件の解釈の方法も、上記と同様である。
以上のように、スケジュール条件を基本ユニットと副次ユニットとで構成することで、様々な条件のスケジュール条件を効率良く表現することができる。これを進めて、例えば、副次ユニットを第1副次ユニット、第2副次ユニット、・・・とさらに拡張して構成すれば、スケジュール条件を基本ユニットと第1副次ユニット、第2副次ユニット、・・・と多次元で表現することも可能である。
(14)呈示スケジュールを考慮した多変量解析
タイミング条件を1つの軸として、それ以外に強さ(学習ユニットでの呈示回数)、コンテンツグループの組み合わせの次元を加えたものとしてスケジュールを表現する。すなわち、これまで上で説明した方法により得られたデータを用いれば、従来統制の難しかったタイミングの要因を重回帰分析における説明変数などとして分析の要因として取り込むことが可能になる。
ある属性を持つコンテンツ項目が、ある呈示条件で、ある一定のタイミングに則り呈示された場合の遭遇条件はタイミング条件の軸とその呈示条件、およびコンテンツ属性の軸の組み合わせとして代表することができる。
それに対する反応の変化をタイミング条件と呈示条件およびコンテンツ属性の組み合わせに対して描きだすことが可能になる。
以下、上記のスケジュール構成法などに基づき実際に呈示ユニットに割り当てられるコンテンツを、一定の順序で並び替えたひとまとまりの呈示リストを生成して呈示した後、個人の反応データを取得して、各種の分析に提供されるまでの流れを図6を参照しながら説明する。また、図6における処理は、コンピュータシステムによって行われる。なお、わかりやすくするため、英単語学習を例にとって説明する。
(手順1)コンテンツデータベースの用意
コンテンツデータベース(コンテンツファイルとも呼ぶ)1は、スケジュールテーブルを生成する際、およびスケジュールテーブルに則って呈示リストを生成する際に用いられる。コンテンツファイルは、企業のメーカのサーバなどからインターネットもしくは記憶媒体を経由して受け取ったコンテンツCiを記憶している(必ずしもコンテンツそのものでなくてもよい。英単語+日本語に番号を付してあるコンテンツならばその番号でもよい)。
このコンテンツCiは、英単語で言えば、英語と日本語の対ひとまとまりの(1)内容(問題と答えという対になっている必要はなく、ひとまとまりの文章や絵や動画でもよい)と、(2)その内容のまとまりを区別する識別番号(高校1年用、大学生用など)、また利用できる情報として利用可能であるならば、(3)各内容の熟知度や難易度、重要度、関連情報、階層性(Aという教育内容を学習する前にBという教育内容をどの程度学習しておく必要があるといった関係)などの属性データが付加され、コンテンツ番号(内容の識別番号ともいう)にリンク付けされて記憶される。
なお、コンテンツの属性情報としては、そのコンテンツを提供する企業などがあらかじめ指定した情報以外の情報も考慮すべきである。すなわち、各コンテンツに対して学習者個人が感じている重要度や、それ以前になされている学習の成果である、そのコンテンツに対する実際の成績も属性情報として考慮する。例えば、用意されたコンテンツに対して一定のスケジュールに従って学習を進め、一定の学習段階に到達した時点で、その学習者の各コンテンツに対する成績を難易度情報の形で各コンテンツに付加させ、その情報を使い、再度新たなスケジュールに従って学習を行う流れが想定される。
コンテンツデータベース1内に格納されているコンテンツリストの例を図12A、Bに示す。通し番号(SERIAL)に対応して、英語と日本語の対ひとまとまりの内容(QとA)が記憶され、コンテンツの属性情報(タイプ:TYPE)、熟知度評定値(F00)、対象となる学習グループの熟知度評定標準値(F NORM)等が記憶されている。
(手順2)スケジュールテーブルの生成
上記このコンテンツリストのコンテンツを学習させるためのスケジュールテーブルを、これまで述べてきたスケジュール構成法などに基づき生成する(K2)。
または、すでに作成されたスケジュールテーブルが登録されたスケジュールデータベース2から必要なスケジュールテーブルを抽出する(K2)。
具体的には、スケジュールテーブルは、例えば、図7に示すように、スケジュールタイプ(SCHE TYPE)、通し番号(NO)と、月・日(MONTH・DAY)と、属性情報(難易度、重要度等)の条件コードであるタイプ(TYPE)、コンテンツの数を示す条件コード(N)、学習法の種類を示す条件コード(EXP)、スケジュール条件の次元(MAX DIM)、コンテンツ識別条件コード(EXP COND)と、イベントサイクルユニットの単位を示す条件コード(SC COND)と、繰り返し回数を示す条件コードであるリピート(REPEAT)と、基礎的スケジュール条件コード(BASIC COND)(図14、15で表示)などを対応させたテーブルになっている。
なお、このスケジュールテーブルの例は、図5及び図8〜図10に示したタイミング条件A1、B1、C1、D1、E1等のスケジュールを含んだテーブルの一部を例示したものになっている。なお、A1は1ヵ月に1日のペースで、B1は2ヵ月に1日のペースで、C1は1週間に1日のペースで学習をする条件となっており、D1は1週間に1日のペースで1ヶ月間学習した後、1ヵ月学習を中断して、その後再び1週間に1日のペースで1ヵ月学習することを繰り返す条件、E1は、1週間に1日のペースで1ヶ月間学習した後、2ヵ月学習を中断して、その後再び1週間に1日のペースで1ヵ月学習することを繰り返す条件を示している。図8〜図10において、(注1)の内容は、呈示条件がD条件となっているのは、再認テストとドリル学習が要求される学習法であることを意味し、(注2)の内容は、右端の計は、呈示ユニット内のコンテンツ項目の延べ呈示回数が等しくなるように(学習とテスト条件ができる限り等しくなるように)条件の配置を工夫することを意味する。
図8〜図10のイベントサイクルユニットの最小単位(呈示ユニット)は一日を想定している。これらの表の見方は同じであるので、例えば、図8について説明する。
属性条件LB1の英単語について、呈示条件の内、T条件においては、ドリル学習回数条件が1回〜8回までを各々行うこと想定し、各ドリル学習回数で呈示されるコンテンツ(英単語)は5個を想定している。
また、D条件では、ドリル学習回数条件が1回〜8回までを各々行うこと想定し、各ドリル学習回数で呈示されるコンテンツ(英単語)は3個を想定している。
そこで、T条件では、呈示するのに必要なコンテンツ数は5個なので、ドリル学習回数が1回のとき、延べドリル項目数は1×5=5回 となり、ドリル学習回数が2回のとき、延べドリル項目数は2×5=10回となる。また、D条件では、呈示するのに必要なコンテンツ数は3個なので、ドリル学習回数が8回のとき、延べドリル項目数は3×8=24回ということになる。
このようにして、計算を行った結果を示すのが延べドリル項目数という欄であり、これらを合計したものが右端に示されるようになっている。1条件ユニット(2日)で必要なコンテンツ項目数は、図から64種とわかるので、1イベントサイクルユニット(24日)で必要な項目数は、64×12=768項目となる。
また、呈示ユニット内のコンテンツ項目の延べ呈示回数が等しくなるように(学習とテスト条件ができる限り等しくなるように)条件の配置を工夫するために、1日目の学習回数の合計と2日目の学習回数の合計がいずれも18回となるように学習回数条件が割り振られている。
スケジュールテーブルには、イベントサイクルユニットの期間が、1ヵ月、2ヵ月、1週間というように混在しているので、SC CONDというフィールドを設けて、そのスケジュール条件におけるイベントの生起が、何番目のイベントサイクルユニットの何日目にあたるのかを示す。例えば、C1の「SC COND」が「0203」と表されていれば、第2番目のイベントサイクルユニットの3日目、すなわち学習開始日から数えて9日目ということになる。
前述の学習法の種類(EXP)は、呈示条件の1つの例であり、例えば4種類存在(TDBF)する。1種類(T)は例えば英語の日本語訳の対連合学習をする際に、英単語をその学習の前に見せてその熟知度を評定させる(再認テスト)学習法、2種類目(D)は再認テストとドリル学習が要求される学習法、3種類目(B)は再認テストも何もしないでドリル学習を行う学習法、4種類目(F)は、例えば各月の最後に熟知度評定を行ったコンテンツの中から所定のコンテンツを選んでテストを行う学習法であり、提示の方法もTDBとは異なる学習法である。
また、繰り返し回数(REPEAT)も呈示条件の一つの例であり、1呈示ユニット内で繰り返し呈示される回数を示している。その他の呈示条件としては、呈示する時間、学習項目の強調の仕方、また呈示リスト内で同じコンテンツができる限り時間的に離れて呈示されるように順序を決める等の呈示順序も条件にはいる。これら学習法、繰り返し回数等は呈示条件に相当する。つまり、様々な呈示条件をコード化しておけば、その条件毎の詳細な予測が可能となる。
属性情報の条件コード(TYPE)には、W1、S1等の記号が表されているが、日本語訳の学習であれば、先頭の文字Wは、英単語を呈示してその日本語訳を学習する方法を示し、Sは文章を呈示してその日本語訳を学習する方法を示し、2番目に記述されている数字は、その日本語訳の種類の数を示す。例えば、W3と記載されていれば、当該英単語の日本語訳が3種類あることを意味している。
図6のスケジュールテーブルのコンテンツ識別条件コード(EXP COND)は、通し番号に対応させた各種条件のコードを纏めたものである。例えば、通し番号「1」の「0101 A=W1 T=D R=1 ST=AD SC=0101 J=01」は、1ヵ月目の1日目に行われるイベントであって、W1というタイプの属性の単語で、Dの学習法(呈示条件1ともいう)、1回の繰り返し回数(R=1;呈示条件2ともいう)、第1回目のイベントサイクルユニットでの1日目(SC=0101)に該当し、第1回目の条件ユニットに該当する条件のコンテンツを1個提供するスケジュールデータとなっていることを示す。
このようなスケジュールテーブルは、これまで説明してきた方法を用いて設計したスケジュール条件をテーブルにしたものであり、その基本設計は前述したスケジューリングの方法の枠組みを基に考えるわけである。なお、各スケジュール条件の各条件の組み合わせに何個ずつコンテンツを割り当てるかに関しては、図8〜図10に示したような、コンテンツ項目数割り当て表をタイミング条件ごともしくはスケジュール条件ごとに作り、利用可能なコンテンツの数と必要な時間を考慮し各条件に割り振る単語の数を調整し、決定しておくと、利用可能なコンテンツ数や、予想される学習時間などを参照しながら条件へのコンテンツ項目や条件の割り当てがやりやすい。もちろん、各呈示ユニットにおける学習条件を等しくしたり、学習時間を無視したりすれば、図8〜図10のような表を作らなくてもよい。ただし、成績の推定精度は低くなると同時に、さまざまな解析を行えなくなる。
図8〜図10のドリル学習回数条件や条件ユニット内での呈示回数条件の割り振り等を入力すると、図11の「利用項目数の概要」や「ドリル学習時間の予想」等の欄に学習時間などの情報が出力されるようにあらかじめ計算式を記入したエクセルのファイルになっている。
上述したように、複数のスケジュール条件を混在させた形で学習内容を提示していくことが可能であり、この例でも複数のスケジュール条件を同一学習者に提供しその上でさまざまな解析ができるようになっている。この表のスケジュールではスケジュール条件が5つ、コンテンツの属性条件にはLB1、XX、L1などといった条件があり、呈示条件は学習の方法としてT、D、Bなどの条件が、さらにドリル学習で要求される学習回数の条件がある。これらの組み合わせごとに、学習の進み方を示し、それらの関係を検討することもできるようになっている。
次に、スケジュールテーブルの作成の概要を、図5の副次ユニットが想定されないタイミング条件の場合(A1)と、想定される場合(D1)を例にとって説明する。
<副次ユニットが想定されていない場合>
図7のスケジュールテーブル例で、表示されているATというスケジュールは、図5のA1のタイミング条件に各種呈示条件を組み合わせたスケジュール条件となっている。
(1)まず、ディスプレイ入力や定義ファイルの形式等で、次の情報のうち必要な情報(スケジュール情報)を入力しておく。
・スケジュール簡易名称:SC_TYPE="AT"
ATは、A1のタイミング条件のスケジュール条件のうちのひとつである。
・呈示ユニットをわかりやすい期間単位で換算する場合の数(DAY_IN_UNIT:わかりやすい期間単位として日を使えば、呈示ユニットは1日を想定しているからDAY_IN_UNIT=1):1
1日を呈示ユニットとして、生成するスケジュールを最終的に1日単位であらわす場合や、1営業月を呈示ユニットとして、スケジュールを最終的に1営業月で表す場合は、常に1を想定すればよいから、ほとんどの場合はDAY_IN_UNITは1でよい。
・スケジュールタイミングコード:SCID="_E024_I024_J002_D000"
・イベントサイクルユニットを構成する呈示ユニットの数(EVENT_UNIT_01=24)
・インターバルを構成する呈示ユニットの数(INT_UNIT_01=24)
・条件ユニットを構成する呈示ユニットの数(JOKEN_UNIT_01=2)
・遅延期間を構成する呈示ユニットの数(DELAY_UNIT_01=0)
・当該スケジュール条件に割り当てるコンテンツの数(単語数):
WORD_NO_IN_JOKEN_UNIT=1
・割り当てるコンテンツ属性:WORDTYPE="W1"
W1は英単語と日本語が単語の形で表示されるコンテンツ(W)のうち、日本語訳の数が1個である英単語と日本語の対を意味する。図8でいえば属性条件のLB1(W1は、LB1(B社の単語データベースで難易度レベルが1の略)の属性に含まれる)に該当する。この条件のコンテンツの数が図8では5個ずつになっているのは、図8で検討するスケジュール(A1)が、ここで説明するスケジュール条件(AT)以外に複数含まれているからである。
・呈示ユニット内での呈示条件:EXP_TYPE="T"
Tは、熟知度評定と再認テストで問題部(英単語)が呈示され、ドリル学習をREPEATで指定された回数行う条件を意味している。また、図7のEXPに用いられるその他の記号は、Dは再認テストで呈示され、T同様ドリル学習を受ける問題、Bは、ドリル学習のみ行われる問題、Fは熟知度評定で呈示され、挿入課題でドリル学習が求められ、月1回の客観テストでも用いられる問題、Xは月1回の客観テストでのみ用いられる問題を意味している(スケジュールテーブル例を示す図で7は一部のみ示されている))。
・繰り返し条件の呈示条件の条件名とその表示桁数
ALL_COND_DIM01=" 1 2 3 4 5 6 7 8"
COND_MAX_KETA01=2
この条件では、1〜8条件の繰り返し条件を想定している。一つ一つ条件名を指定してもよいし、上のように、条件名をCOND_MAX_KETA01で指定した半角文字であらわすと決めておけば、ALL_COND_DIM01に一続きの条件として書き込んでおいてもよい。なお、この条件は繰り返し条件のみを想定しているわけでなく、英語単語の呈示時間が1秒、2秒、3秒と違う条件や、その他様々な条件で、その効果を比較したりその条件の効果を描き出したい条件を表す記号を入力しておく( a b c d eのような条件でもよい)。分析をこの記号をキーにしてできるようにしてあればよい。
・条件ユニットのグルーピング情報
vCOND_DIM01_SET01=" 1 3 6 8"
vCOND_DIM01_SET02=" 2 4 5 7"
ATスケジュールでは、条件ユニットが2呈示ユニットで構成されるため、2つに全ての条件をグルーピングしておく必要がある。どの条件がどの条件ユニットに含まれるかを示しておく。入力方法は不特定。このグルーピングは、図8の条件ユニット内でどのように呈示回数条件を割り振ったらいいか考えるための表のグルーピングを参考にして記載する。
・スケジュール期間
MAX_DAY=144日(144日*DAY_IN_UNIT)
最長何ヶ月ぐらいまでのスケジュールテーブルを作成するかを設定する。144日は、土日を除いて1ヶ月を24日として、6ヶ月分のスケジュールを作ることになる。
(2)最小の条件ユニット(REPEAT)の各条件ごとに、スケジュール情報を必要に応じて記載したレコードを作成する。図7(ATとD1のスケジュールが混合したスケジュールテーブル)を参照しつつ説明する。スケジュールテーブルの例でのフィールドとスケジュール情報の対応は以下のとおりである。その際、条件ユニットのグルーピング情報(vCOND_DIM01_SET01, vCOND_DIM01_SET02)に対応するセット番号を、各条件のレコードのセットフィールド(SET_DIM01)に記入する。
NO:通し番号、MONTH:月(本実施例では、24日を1ヶ月として換算している)、DAY:日、TYPE:コンテンツの属性情報、N:対応する条件に含める問題数(スケジュール情報のWORD_NO_IN_JOKEN_UNITに対応)、EXP:呈示条件(=EXP_TYPE)、MAX_DIM:基本ユニットを何次元(何層)想定しているか(ATのように副次ユニットを想定していない場合は1)
(3)条件ユニットの数に応じて、呈示する順番のリストを例えば実験計画法の循環法を用いたり、ランダムに並べたりして、下記例のように別途作成しておき、その順番に基づき、セットフィールドの番号に該当するレコードを抽出し、呈示ユニットの通し番号(スケジュールテーブルのTU_DIM01)を記入しそのレコードを最大の条件ユニット数(イベントサイクルユニット内に想定できる条件ユニットの最大数)になるまで追加していく。
条件ユニットが2つの場合の順番のリストの例:1,2,2,1,1,2,2,1...
(4)スケジュールテーブルのEU_DIM01に、イベントサイクルユニットの番号(この時点では最小であるため1)を入力。
(5)これでイベントサイクルユニットに対応するリストができる。
(6)(5)で作られたイベントサイクルユニットのリストを、イベントサイクルユニットの通し番号を増やしつつ、スケジュール期間の全てを含むことができるイベントサイクルユニットの最大数まで繰り返し追加していく。
(7)基本的な時間軸(DAY)の書き込み
各レコードごとに、DAYというフィールドに、次の式の内容を書き込む。
TU_DIM01+INT_UNIT_01×(EU_DIM01-1)
(8)最後に全てのDAYにDELAY_UNIT_01(ATスケジュールの場合は0)を加えればATスケジュールのスケジュールテーブルが出来上がる。
(9)必要に応じて、入力されたDAYを、月(MONTH)と日で書き換える。
(10)条件の記入
スケジュールテーブルの図の5つ目のレコードのを例にとると、フィールドのEXP_CONDに、月日(一番左から4桁で表示:0101)、項目の属性(_A=W1)、呈示条件(_T=D)、繰り返し条件(_R= 1)、スケジュール名称(_ST=D1)、タイミング条件の番号(_SC=010101:右から基本ユニットにおける呈示ユニットの番号、イベントサイクルユニットの番号、副次イベントサイクルユニットの番号を2桁で記載した:分析が容易になるように書き込んである)、条件ユニットの番号(_J=01)を書き入れる。SC_CONDにも同様、タイミング条件の番号を書き入れる(これは分析時に容易になるよう用いることがある)。
(11)ATスケジュールの他に並置する複数のスケジュールがあれば、それらについて作成されたスケジュールテーブルを全てまとめてDAYとMONTHを基準にソートすると全スケジュール条件が含まれたスケジュールテーブルが作成できる。
<副次ユニットが想定されている例>
D1というスケジュールを例に説明する。これは、図5のD1のタイミング条件に各種呈示条件を組み合わせたスケジュール条件となっている。
(1)AT同様にD1のスケジュール情報を定義する。
・SC_TYPE="D1"
・DAY_IN_UNIT=1
・スケジュールタイミングコード:
SCID="_E006_I006_J001_D000-_E004_I008_J000_D000"
・基本ユニットについて
EVENT_UNIT_01=6, INT_UNIT_01=6, JOKEN_UNIT_01=1, DELAY_UNIT_01=0
・第1副次ユニットについて
EVENT_UNIT_02=4, INT_UNIT_02=8, JOKEN_UNIT_02=0, DELAY_UNIT_02=0
なお、第1副次ユニットについて条件ユニットを想定する必要は必ずしもないので、常にJOKEN_UNIT_02=0となってもよい。副次ユニットに条件ユニットを想定すると、非常に複雑な条件の組み合わせが作り出せる。
・WORD_NO_IN_JOKEN_UNIT=1
・WORDTYPE="W1"
・EXP_TYPE="D"
・繰り返し条件の呈示条件の条件名とその表示桁数
ALL_COND_DIM01=" 1 2 3 4"
COND_MAX_KETA01=2
・条件ユニットのグルーピング情報
vCOND_DIM01_SET01=" 1 2 3 4"
・MAX_DAY=144日
(2)上記ATスケジュールの作成法の説明の(6)までは同様に処理し、イベントサイクルユニットのリストを作成。D1はさらに副次ユニットを想定しているので、以下の処理が追加される。
(3)副次ユニットの通し番号を記入する副次イベントサイクルユニットのフィールド(EU_DIM02)(2次のイベントサイクルユニットの意味)を設け、そこに副次イベントサイクルユニットの通し番号を入れ(この時点では最小であるため1)、さらに、スケジュール期間の全てを含むことができる副次イベントサイクルユニットの最大数まで繰り返しリストを追加していく。追加するごとに通し番号を増やしてEU_DIM02へ書き込んでいく。
(4)ここでさらに高次の副次ユニットが想定されている場合は、副次イベントサイクルユニットに対応する番号(EU_DIM02、EU_DIM03、EU_DIM04...)を加算しながら繰り返し追加していく。それにより、対応するスケジュールのリストができる。
(5)基本的な時間軸(DAY)の書き込み
各レコードごとに、DAYというフィールドに、次の式の内容を書き込む。
TU_DIM01+INT_UNIT_01 × (EU_DIM01−1)+DELAY_UNIT_01
+INT_UNIT_02 × INT_UNIT_01×(EU_DIM02−1)+DELAY_UNIT_02 × INT_UNIT_01
また、第 i 副次ユニットが想定されている場合は、基本ユニットに関する値
TU_DIM01+INT_UNIT_01 × (EU_DIM01−1)+DELAY_UNIT_01に、次に示す全ての副次ユニット関する値を加えていくことになる。
+INT_UNIT_x(i+1) × INT_UNIT_x(i) × INT_UNIT_x(i-1) ・・・ × INT_UNIT_02 × INT_UNIT_01×( EU_DIMx(i+1)−1 )
+DELAY_UNIT_x(i+1)× DELAY_UNIT_x(i)× DELAY_UNIT_x(i-1) ・・・ × DELAY_UNIT_02 × DELAY_UNIT_01
なお、上記の式のように遅延期間(DELAY_UNIT_x(i))を各ユニットごとに定義しておき加えていってもよいが、各ユニットの遅延期間(DELAY_UNIT_x(i))を全て0にしておき、最後に最初の基点となる日に全体で遅延する期間を加えるようにしても良い。
(6)必要に応じて、入力されたDAYを、月(MONTH)と日で書き換える。
(7)条件の記入
スケジュールテーブルの図7の5つ目のレコードのを例にとると、フィールドのEXP_CONDに、月日(一番左から4桁で表示:0101)、項目の属性(_A=W1)、呈示条件(_T=D)、繰り返し条件(_R= 1)、スケジュール名称(_ST=D1)、タイミング条件の番号(_SC=010101:右から基本ユニットにおける呈示ユニットの番号、イベントサイクルユニットの番号、副次イベントサイクルユニットの番号を2桁で記載した:分析が容易になるように書き込んである)、条件ユニットの番号(_J=01)を書き入れる。SC_CONDにも同様、タイミング条件の番号を書き入れる(これは分析時に容易になるよう用いることがある)。
(8)D1スケジュールの他に並置する複数のスケジュールがあれば、それらについて作成されたスケジュールテーブルを全てまとめてDAYとMONTHを基準にソートすると全スケジュール条件が含まれたスケジュールテーブルが作成できる。
(手順3)スケジュールテーブルとコンテンツデータベースに基づく、各コンテンツへのコンテンツ識別条件コードの書き込み
スケジュールテーブルが作成されるか、または必要なスケジュールテーブルをスケジュールデータベース2から抽出すると、各識別条件コードに必要なコンテンツの種類とその数が特定される。コンテンツをどの識別条件に割り振るかについては、各コンテンツの属性情報と識別条件コードの属性情報を対応させて割り振るほか、できる限りランダムに割り振ることが望ましい。
具体的には、以下のように行う。
(1)各スケジュール条件ごとに、スケジュールテーブルのうち一番小さな基本ユニットのイベントサイクルユニットに対応する条件レコードのみを抽出する(基本条件レコードと呼ぶ)。具体的なスケジュールテーブルの例では、基本ユニットのみのスケジュール(ATスケジュールなど)はEU_DIM01=1のレコードのみ、副次ユニットがある場合(D1スケジュールなど)は、EU_DIM01=1でなおかつEU_DIM02=1のレコードのみに限定して抽出する(2次、3次、4次も同様)。
(2)抽出した最小の基本ユニットを基にして、スケジュール名(SCHE_TYPE)と属性(TYPE)でそれぞれ項目の数(N)を合計して、各スケジュールで各属性の項目(さらにそれぞれの呈示条件の項目)が何個必要であるのか等を特定し、スケジュール情報テーブルにしておけば、分析等、様々なところで有効活用できる。
(3)各スケジュールの基本条件レコードについて、そこで指定されている属性と等しい属性を持つ(個人の反応を属性にしていれば、一定の範囲の属性条件の)項目を、コンテンツリストの中から抽出し、それをランダムな順序にした上で、一つ一つのコンテンツ項目の識別条件コードフィールド(EXP_COND)に、当該基本条件レコードの識別条件のフィールド(EXP_COND)を一つ一つ書き写していく(Nが2以上場合は同じ基本条件レコードの識別条件が、N個のコンテンツの項目の識別条件のフィールドに書き込まれるように)。特定の属性条件に該当するコンテンツ項目が、基本条件レコードで必要とされるNの合計よりも多い場合は、残った項目を異なるコンテンツリストとして保存しておく(スケジュールを再構築する場合などに用いることになる)。なお、コンテンツリストへ識別条件を記載する場合は、条件ユニット内の呈示条件の間では可能な限り類似した属性(難易度や成績の値)が割り振られるように工夫することも精度を上げる上では重要である
なお、(9)で述べているように、カウンターバランス法をとり、複数の個人のデータをまとめて一般傾向を捉える場合には、カウンターバランス法に基づきコンテンツに識別条件を割り振る。このカウンターバランス法に基づいてコンテンツに識別条件を割り振る方法を簡単に説明する。まず、比較検討したい条件(例えば、繰り返し条件1,2,3回)に割り振るコンテンツ項目として、対象者全員に同じ項目グループを割り振るようにあらかじめ必要なコンテンツ項目を決めておく(特殊な属性条件を書き入れておけばよい)。その項目グループに対しては、個別に次の処理を施し、最終的にコンテンツデータベースに加えておけばよい。すなわち、その項目グループのコンテンツデータベースにSET、CONDの2つフィールドを設け、比較検討したい条件数のセットにそのグループをランダムに分け、分けられたセットごとにSETフィールドに記号(3条件ならA,B,C等)を書き入れる(条件セットと呼ぶ)。比較検討したい条件と割り当てる条件セットの対応を次のように別途作成(繰り返し条件が、1,2,3回の場合、セット条件がA,B,Cの場合)する。条件とセットの対応にカウンターバランス条件(CB条件)の番号を割り振る。
CB条件(1)(1回−A、2回−B、3回−C)
CB条件(2)(2回−A、3回−B、1回−C)
CB条件(3)(3回−A、1回−B、2回−C)
また、学習者をランダムにCB条件に割り振り、割り振られたCB条件の条件とセットの対応にあわせて、CONDフィールドにSETフィールドの記号に対応する条件の記号(1,2,3など)を記入する。識別条件を割り振る際に、繰り返し条件(REPEATフィールド)がCONDフィールドの条件に対応するように、コンテンツ項目を識別条件を書き入れていく。この操作を該当する学習者全員について実行し、分析の時点で分析対象とする学習者のCB条件の総人数を(ランダムに抽出するなどして)等しくした上で、検討する繰り返し条件ごとに平均値などをとって比較すれば、コンテンツ項目の材料の効果が相殺された形でデータを得ることができ精度を上げることができる。
以上のようにして割り振られたスケジュールテーブルのコンテンツ識別条件コード(EXP COND)がコンテンツリストの各コンテンツに対応させて書き込まれる(K3)ともに、コンテンツ識別条件が書き込まれたコンテンツリストの内容を反応データベース3に登録する。
コンテンツにコンテンツ識別条件が書き込まれたコンテンツリストの一例を図13A、図13Bに示す。図13Aは、コンテンツ識別条件が書き込まれたATのスケジュールに該当するコンテンツの項目の一部を示しており、図13Bは、コンテンツ識別条件が書き込まれたD1のスケジュールに該当するコンテンツの項目の一部を示す。
なお、コンテンツの内容もコンテンツリストに記録しておく必要はなく、コンテンツの内容の代わりに通し番号のみを記録し、必要に応じてコンテンツデータベース内に記録されたコンテンツデータと照合して、コンテンツの内容を特定できるようにしてもよい。
以上、一定のスケジュール条件を規定したスケジュールテーブルとそれに対応する識別条件コードが付記されたコンテンツリストが各一つ以上用意された状態であることを前提として、以下の手順で、呈示ユニットに対応する呈示リストを作成する。
(手順4)呈示リストの抽出範囲の指定
呈示ユニットに対応する呈示リストを抽出する場合、必要に応じて、何番目の呈示ユニットに対応する呈示リストを生成するか指定する。一般的には、呈示ユニットの順番で一つひとつ呈示リストを抽出するが、複数の呈示ユニットを指定して、その分の呈示リストを全て抽出しておくことも可能である(特にリストをネットワークを通じてダウンロードするような場合は、まとめてダウンロードすることが考えられる)。異なる端末で同じスケジュールテーブルに従って呈示リストを生成する場合は、どの呈示ユニットが既に生成されているかなどをスケジュールテーブルを基にして把握することで、学習の履歴の同期(シンクロナイズ)も可能である。つまり、どの呈示ユニットまでが呈示リストになっているか(学習できる状況にあるか)を、スケジュールテーブル、もしくは別のファイルとして記録し、それを利用して呈示リスト生成履歴を把握し、学習がなされていない呈示リストを適宜生成し、提供することが可能である。
(手順5)呈示ユニットに対応する呈示リストの生成
例として、図7のスケジュールテーブルに基づいて、1ヵ月目の1日目の呈示ユニットに対応する呈示リストの抽出方法を説明する。まず、生成する範囲が1ヵ月目の1日目の分といった形で指定されたとすると、図7のMONTHとDAYに対応するスケジュールテーブルの範囲が限定される(図7の、MONTH=1、DAY=1の部分)。続いて、その範囲の識別条件コード(EXP COND)の情報の全てもしくは一部の情報が書き込まれているコンテンツを、コンテンツリストから抽出し、呈示条件に従って呈示リストを構成していく。例えば、図7の1ヶ月目の1日目の最初のスケジュール条件(AT条件)の識別条件(EXP_COND)は次の4種類である。
1)0101_A=W1 _T=T_R= 1_ST=AT_SC=0101_J=01
2)0101_A=W1 _T=T_R= 3_ST=AT_SC=0101_J=01
3)0101_A=W1 _T=T_R= 6_ST=AT_SC=0101_J=01
4)0101_A=W1 _T=T_R= 8_ST=AT_SC=0101_J=01
それぞれの識別条件のうち、「_A=」から始まり「_SC」の前までの文字列を取り出すとそれぞれ次のようになる(W1の次の空白は、属性情報の文字幅が最大に固定されているため)。
1’)W1 _T=T_R= 1_ST=AT
2’)W1 _T=T_R= 3_ST=AT
3’)W1 _T=T_R= 6_ST=AT
4’)W1 _T=T_R= 8_ST=AT
コンテンツデータベースのうち、これらの条件が識別条件としてEXP_CONDフィールドに書き込まれており、さらに、「_SC=」と「_J=」ではさまれているタイミング条件の通し番号のうち、呈示ユニットの通し番号を意味する文字(呈示ユニットの通し番号が2桁で表されているこの例では、_J=の直前の2桁の01)の両者をEXP_CONDに含んでいる項目はコンテンツデータベースには1項目しかないはずである(なぜならATスケジュール条件のスケジュール情報では、各条件に対応する項目数は1つと定義されているから)。何番目のイベントサイクルユニットであっても、属性条件と呈示条件と呈示ユニットの通し番号が一致している項目は、コンテンツリストにはNで示された数(ATの場合は1)しかない。その項目をまず抽出する。同様に、その日のスケジュール条件の全てについて、対応するコンテンツ項目を抽出する。
続いて、全ての抽出された項目について、識別条件に示されている呈示条件(_T=で示されている<T>)と、繰り返し条件(_R=で示されている< 1>など)の条件に従って、呈示ユニットに対応する図14A、Bのよう呈示リストを生成する。具体的には、呈示条件がTの項目は、まず熟知度評定を問題(英単語)についてのみ行うため、その問題を全て呈示リストにランダムに加え、そのリストの課題フィールドであるタスク1(TASK1)に、熟知度評定を表す課題記号(F)を書き加える。続いて、熟知度評定を行った英単語と、評定されないが再認テストに出てくる単語(呈示条件がD)を再認テストとしてランダムな順序にして加え、その課題フィールドに再認テストを表す課題記号(R)を書き加える。さらに、ドリル学習で繰り返し条件の数だけ呈示される項目を、それぞれ繰り返し条件の数だけランダムな順序にして加える。そしてその課題フィールドにドリル課題を現す記号(D)を書き入れる。課題のまとまりや、学習を途中でやめてもよい区切れを作るために、フェーズ(PHASE)フィールドにまとまりをあらわす通し番号を入れ、呈示プログラム内で区切れとして用いる。最後に、学習時に学習を終了したかどうかをチェックするチェック(CHECK)フィールドに全て1をいれる。学習時には、それぞれの呈示リストの上から順に、課題記号に対応する課題の呈示方法で問題を出し、それに対して反応が得られたら、レスポンス1(RESPONSE1)とタイム1(TIME1)などに反応を記入し、最後にCHECKフィールドを0にし、学習の経過把握できるようにする。
このように図7のスケジュールテーブルに従い、特定の呈示ユニットの識別条件が特定されると、その情報が書き込まれているコンテンツリストから必要なコンテンツが抽出されると同時に、呈示条件などの操作に従ってコンテンツが順番に並べられ、1呈示ユニット分の呈示リストを作成するリストが生成される(K4)。
なお、1呈示ユニット分の呈示リストの作成は、呈示条件や課題の内容などに全て依存し、その種類は膨大なので呈示リストの例は他にも様々考えられる。
図14A、Bの左端のフィールドから再度説明すると、CHECKフィールドはどのフィールドまで学習が終了しているのかを示すもので、呈示リストの途中で学習が中断している場合にこの情報を使って学習を継続するためのフィールドである。PHASEフィールドは、学習やその他の課題(熟知度評定や記憶テスト、挿入ドリルなど)のまとまりを意味している。TRUE DAYは学習を実施した期日を入力するフィールドであり、TIME1は熟知度評定等における評定までの時間を示す。SERIALは、コンテンツの通し番号であり、例えば、図14のリストの1番目の例では、SERIAL=1359(英単語はinisiative)となっているが、これは図12のコンテンツリストのSERIAL=1359(図示せず)に該当する。例では1つのコンテンツに対して1つの反応を学習者に要求する学習法であるため、図15の反応履歴が書き込まれた反応データベースのように各コンテンツには1つの反応フィールドと反応時間を記録するフィールドが最低限設けられていればよい。1つのコンテンツに複数の反応を要求する呈示条件では、反応フィールドは複数必要となる。
(手順6)呈示条件に従って順次コンテンツを呈示(K5)
この手順は、コンテンツの呈示条件や学習の仕方などに依存する。ここで一つの呈示方法を紹介する。最も利用しやすく、かつ様々なコンテンツに対して適用可能な学習とテストを兼ね備えたデータの収集方法である。
まず、図19Aに示すように英単語のみが表示され、学習者がどれかキーを押すと日本語訳が図19Bのように表示される。ここまでが、コンテンツの表示である。この表示が完了した時点で、学習者がコンテンツの内容の習得レベルを自己評定する方法である。図19Bは、4段階(A:良い、B:もう少し、C:だめ、D:全くだめ)で自己評定してもらう例である。
この方法はコンテンツを呈示するのみで、解答を要求しなくても学習が成り立ち、様々なコンテンツに対して応用可能であり、かつその評定結果を数値変換(図19において例えばA=3、B=2、C=1、D=0のように)することにより成績として扱うことも可能であるため、特に、イベントサイクルユニットを設定して、一定のタイミングで学習を反復するスケジュールの場合は、学習回数とその成績の関係を直接検討することができるため有効である(通常、学習とは別のテストを行うと、そのテストイベントの影響がその後の成績に影響を与えるため、純粋に成績と学習の関係を検討することが難しい)。
一方、解答を要求するテストを行った場合のテスト記録の例を図15A、Bに示す。F1やX1、X2、X3というスケジュール条件でテストを行い、第1回目のテストで学習者から提示された解答が正しかった場合に、PM01に○が、不正解の場合には×が記録される。PM02、PM03は第2回目、第3回目のテストについての正解・不正解の記録部分である。TIMEFUN01は第1回目のテストの解答を出すまでの制限時間を示す。TIMEFUN02、TIMEFUN03は各々第2回目、第3回目のテストに対応している。
(手順7)反応データおよび学習履歴データの書き込み
各呈示条件に従ってコンテンツが呈示された時点で、そのイベントに対してなされた反応を、図16のような反応データベース3に書き込む(K6)。図16では、F00フィールドには熟知度評定の値を、F NORMには、英語の熟知度評定の標準値(基準値)、ANSは記憶テストの反応、(J01、J02、・・・)のフィールドは図19の自己評定の反応を得点化して表している(A:良い、B:もう少し、C:だめ、D:全くだめ)という評定を(A=3、B=2、C=1、D=0)と点数化している。(JT01、JT02・・・)のフィールドはそれぞれの反応に要した時間が記録される(この時間を解析すれば、各学習者がどのくらい学習に時間を費やしているのかを容易に把握しフィードバックすることが可能である。)。
図16にあるF、ANS、Jといったフィールドは、分ける必要は必ずしもなく、ひとつの反応フィールドとして反応を記録してもよい。
(手順8)反応履歴リスト、個人データファイルの返信
全ての呈示リストに関するイベントが終了したところで、コンテンツ番号と反応等が書き込まれている反応履歴リストを、必要に応じてネットワークを通じてデータ分析のサーバなどへ返信する。なお、個人履歴データファイルには、その呈示ユニットの通し番号や学習し始めた時刻、終了した時刻、期日、呈示ユニット内に設けられたフェイズの開始/終了時刻などが書き込まれている。これらのデータを基に学習のデータを解析すれば、朝学習したほうが成績がよいとか、何時ごろ学習をする人の成績がよいなどといった予測やパーソナリティーや学習スタイル等の推定など原理的には可能になる。
コンテンツリストには各コンテンツの識別条件などが一定のスケジュールテーブルに従って書き込まれており、かつ、呈示リストも一定のスケジュールテーブルに従って作成されているため、これらを反応データベースに書き写すと図16のように各条件に対応してデータが記録されることになる。
なお、個人履歴データファイルは、1呈示リストごとに作成し(1レコードだけ)、サーバ側で個人の全履歴ファイルを保存しても良い。個人履歴データファイルを用いると、学習者がどの呈示ユニットの学習を完了し、どれを完了していないのかを把握し、必要に応じて学習をうながす指示を出すことも可能になる。これは、通信エラーなどで学習データが消えてしまった場合に、その部分のデータを端末側で保存しておけば、後から足りない部分のデータを明確にし、それを再度送信するよう促すことも可能である。
(手順9)個人反応データベースを用いたデータ分析
個人反応データベースの、識別条件コードには、スケジュール条件のほか、呈示条件、属性情報も含まれている。従って、このコードに含まれている情報を使えば(もちろん呈示条件のフィールドや属性情報のフィールドをそのまま使っても良い)、一定のスケジュールに対する学習成績などの反応をまとめて代表値を、各イベントサイクルユニットごとに得ることが可能になる。そしてこれらのデータを利用すれば、後述するような各種の分析が行える(K7)。
<スケジューリング方法を援用して実施した実験の結果>
(スケジュール条件の説明)
以下では、本スケジュール構成法と分析方法を採用して、既に実施済みの実験結果を紹介する。図17は、高校生に英単語の学習を一定のスケジュールに従って継続してもらった長期学習実験における、自己評定値に見られる学習の積み重ねの平均的な様子である。横軸はインターバルユニット(24日:約1ヶ月)の順番(このスケジュールでは月に対応)、その中にある各棒グラフは提示条件(1〜8回の学習条件)、縦軸はそれぞれに対応する自己評定値(成績)を意味する。
なお、実際のところこの実験は複数のインターバル条件を考慮しているが、ここでは1つの条件についてのみ説明する。この実験のスケジュール条件を上記の言葉で表せば以下のようにまとめられる。
・タイミング条件:インターバルが1ヵ月=1ヵ月(24日とする)に1日のペースで学習する条件 1日を最小のイベント期間とすれば、次のようにコード化される。
1日 2日 3日 4日…24日 25日 26日… 48日 49日…
1 0 0 0 … 0 1 0 …… 0 1 …
ちなみに、1ヵ月(24日とする)を最小のイベント期間とすれば、次のようにコード化される。
1ヵ月 2ヵ月 3ヵ月 4ヵ月 5ヵ月 6ヵ月目
1 1 1 1 1 1

・呈示条件1(繰り返し回数):反復回数で1〜8回の8条件
・呈示条件2(学習方法):D(英単語の熟知度評定を行わずドリル学習を行う条件)
・イベントサイクルユニット:24日(=1ヵ月と呼ぶ)
・この条件ではインターバルとイベントサイクルユニットがともに1ヵ月であり、一致している。
・呈示ユニット:1日
・条件ユニット:2日
・呈示ユニット内での、繰り返し回数条件の割り振り方:奇数日は1、3、6、8回条件、偶数日は2、4、5、7回条件が割り振られた。
・呈示ユニット内の各繰り返し回数条件へ割り振られた単語の数:4個。
・呈示ユニット内での繰り返し回数条件ののべ数は、奇数日は1+3+6+8=18、偶数日は2+4+5+7=18で同数。その条件にそれぞれ4個ずつ単語を割り振ったため、1日(呈示ユニット)での単語ののべ学習単語数は、18x4=72個で、毎日このスケジュール条件についてはほぼ同じ程度の負担が期待される(実際は他のスケジュール条件も並立させたので、負担は72個分よりも多い)。
・コンテンツグループ:1種類:この実験では難易度が等しい単語を用いている。
(得られたデータ)
図17の1ヵ月に1回のペースで学習する条件の単語の成績を月ごとにみると、きちんと上昇している様子がわかる。各月の中の棒グラフは繰り返し回数の条件に対応しており、各月の最初にその単語に対してなされた自己評定の反応を得点化して表している(A:良い、B:もう少し、C:だめ、D:全くだめ)の評定を(A=3、B=2、C=1、D=0)と点数化している。この評定値は、呈示される英単語の意味を自分がどの程度のレベルまで学習しているのかという自己評定である(学習の到達度を推定するためには非常に有効な指標になることがこの結果からもわかる)。
ある単語についてその評定が1回〜8回要求され、その後1ヶ月はその単語は呈示されずに、1カ月(24日)あけて再度呈示される条件である。この実験でこのスケジュール条件に該当する単語に限定すると、各学習回数条件に割り振られた単語の数(種類)は48個(4個×24日÷2)であり(のべ384語)、その48個の単語が各条件に対応する回数繰り返し提示され、それぞれ最初の自己評定値が平均された値が図17の各月の1本の棒グラフに対応している。もし、従来の方法で図17のデータを作るとすれば、ある特定の日にのべ48個×36=1728回単語学習を行い、その後1ヶ月のインターバルをあけて同様の評定を行ってもらう方法である(36は、1〜8回の繰り返し条件ののべ数=1+2+3+4+5+6+7+8)。1つの単語の学習に5秒要すとすれば、1728個×5秒=144分学習を行ってもらう必要がある。
たった1回〜8回の学習条件で実質384語の単語の学習だけであっても、続けて2時間も学習をしてもらう必要がある。これではとても学習の均質性は保証できず、また、膨大な学習内容を一気に学習者に呈示することも不可能である。つまり1日あたりの学習ののべ数を減らさなければならないわけである。ところが、1日の学習を何日かにわければ今度はその学習とテストの間のインターバルや学習条件の統制が難しくなる。
本発明は、インターバル条件を統制しつつ、1日あたりの学習ののべ数を減らし、一度に配信するコンテンツ量を減らし、かつ1日の学習条件(学習の質)を等質にして、その効果を厳密に測定する方法を提供する。
また、呈示ユニットの作成法の部分で少し説明したが、自己評定などの評定者の反応の基準は日々変動するが、この変動や個人差を排除して、厳密に呈示条件の効果等を推定する方法として、同一呈示ユニット内に比較検討したい呈示条件を配置し、その条件に割り振られたコンテンツに対する反応の差をとる方法がある。
例えば、図17において、1カ月目の各学習回数条件の単語の最初の評定値をベースラインとして、2ヶ月目以降の評定値から引けば個人差を排除することができる。さらに、個人差を排除した得点について、各月の、8回学習条件と1回学習条件に対する得点の差をとれば、判定基準の日内変動の影響を排除した、非常に厳密な学習の効果を推定することができる。ただし、判断基準の変動を厳密に排除できるのは、8回条件と1回条件が、同じ呈示ユニット内に配置されていた場合である。従って、このような変動を排除するためには、(条件ユニット内に限らず)同一呈示ユニット内に比較検討が可能な呈示条件を配置しておく必要がある。
これまで膨大な学習コンテンツを一定のスケジュールで学習した場合の学習の進み方を客観的に測定できなかった理由は、本発明のような方策が考えられなかったからである。本発明によれば、非常に膨大なコンテンツ(対象)を一定のインターバル条件で学習(判断や評定)していった場合の反応の変化を厳密に捉えることが可能になる。
上記図17は、23人の学習者の平均データであるが、これを個人ごとに描き出すことも可能であり、本発明で提案する学習段階の到達度の自己評定を成績に換算する方法によると、個人のデータをもとに一人一人の到達度の予測も可能なほどの予測力が得られることも明らかになっている。
図18A、B、Cに、実際に実施した結果得られた3名の学習者の個人データとその予測関数(単純な回帰直線を引いたもの)を示した(図17の学習スケジュールとは異なる実験のデータ)。予測方法は、様々な関数が考えられるが、本発明を利用すれば予測のための正確で客観的なデータを収集することが可能であることがわかる。ちなみに図18A、B、Cのように学習効果の変化を詳細にまた個人ごとに描き出しているデータは現在世界のどこにも存在しない。また、単語の1回の学習に要する時間を別の反応指標として記録することも可能であり、その分析結果からも興味深い事実が明らかになっているが、詳細は省く。図17や図18A、B、Cは、到達度の自己評定を到達度を把握する一つの指標とすることの有効性を示しているが、このスケジューリング法に基づきデータを収集することにより、それ以外の指標にも非常に詳細な学習の効果が描き出されている。
特に、この実験例のように、1ヵ月に1回というタイミング条件を採用し、そのタイミングに合わせて反応データを表示すると、学習をある期間継続した時点で、その後の学習の進み方の予測も可能になる。この実験では1〜3、4ヵ月目までの反応データを図18A、B、Cのように整理すれば、個人ごとに1ヵ月に1回のイベントの効果は異なっても、その個人の学習到達度が一定のレベルになるのに何ヵ月必要かという予測が可能になる。
さらに、多人数が同じスケジュール条件で学習を継続し、そのデータを収集・蓄積すれ、それをデータベースとして、ある個人がそのスケジュール条件で学習を行った場合の、学習の進み方を予測パターンとして返すことも実際に可能である。特に、予測したい個人の個人属性(性別、やる気の程度、学習スタイルなど)がわかれば、データベースとして既にある同じ属性を持つ学習者の集団を特定し、その反応データを正確な予測パターンとして返すことが可能である。スケジュールを統制して反応データを収集する、スケジュール固定法の予測方法になる。
(15)長いインターバルをおいて生起するイベントの効果を短期間で予測する方法
英単語の実験結果を例にすると、図18A、B、Cは、1ヵ月に1回のペースで学習(イベント)を継続していった場合に学習の効果がどのように表れるのか、また、同じスケジュールで学習を続けていった場合に、学習が完了するのにどのくらいの期間が必要であるのかを予測することも可能であることがわかる。しかし、その予測は図18A、B、Cのように、3、4ヵ月程度学習を継続しないと導き出すことは難しい。見通しがなく、3ヵ月程度の学習を継続する場合、案外やる気が続かないものである。つまり、もっと短期間で学習などのイベントの効果の表れ方の見通しを得たい場合がある。そのような予測を可能にする方法を説明する。
わかりやすくするため、ここでは1ヵ月を24日、1週間を6日として説明を行う。
(a)1ヵ月に1回のペースでイベントが生起する長いインターバルのスケジュール条件と、1週間に1回のペースでイベントが生起する短いインターバルのスケジュール条件を、「(12)異なるスケジュール条件のすり合わせ」で説明したようにすり合わせ、同じ学習者に2種類のスケジュール条件を刷り合わせた状態で学習を継続してもらい、その反応を分析すると、各スケジュール条件ごとに図18A、B、Cのようなデータを得ることができる。
(b)この操作を多人数に対して行うと、平均的な傾向を示す図18A、B、Cのような図が2つ得られる。これを示したのが図20である。この図に示すように短いインターバル条件の成績(例えば到達度の自己評定値)の上昇の程度は、長いインターバル条件のそれよりも大きいことが予想される。そこで、その傾きの比を特定すれば、短いインターバル条件の成績の上昇の傾きから、長いインターバル条件の成績の傾きを表現することが可能になる。
図20の(A)は、学習者Xが、インターバルを1週間(6日)としたスケジュール条件で学習を6週間続けた場合の成績の変化と、学習者X以外の多くの学習者がインターバル1週間で学習を6週間続けた場合の成績の変化の平均値を示している。インターバルの要因による影響を考えるために、上記2つのスケジュール条件については、インターバル条件以外の条件、学習内容の難易度等を示す属性条件やイベントの質を示す呈示条件等は、同じものとする。
一方、図20の(B)は、学習者X以外の多くの学習者がインターバル1ヵ月(24日)で学習を6ヵ月続けた場合の成績の変化の平均値が示されており、学習者Xについては、これからインターバル1ヵ月で学習を6ヵ月行う予定であるため、成績の変化データは存在せず、示されていない。
そこで、インターバルを1週間としたスケジュール条件で学習を6週間(1ヵ月半)続けた学習者Xが、(A)の表やグラフに示されるような成績の上昇を示した場合、その学習者Xが、インターバルを1ヵ月としたスケジュール条件で学習を続けると、成績はどのようになっていくのかを予測する。
同一の学習者に対してインターバル1週間で学習を6週間続けたときの成績データと、インターバル1ヵ月で学習を6ヵ月続けたときの成績データが、あらかじめ、複数(多人数)の学習者について収集され、蓄積されていることが必要である。
これらのデータと、予測を導くためのモデル(関数)をあらかじめ検討し、特定しておけば、インターバルを1ヵ月としたスケジュール条件で学習を行った場合の学習者Xの成績の予測値を提示することができる。
一例として、インターバル1ヵ月で学習を行った場合の成績(到達度)の上昇率Yが、インターバル1週間で学習を行った場合の上昇率Xと一定の比例関係(比例係数a)にあるような次のモデルを仮定する。
Y=a×X
すると、a=Y/X となる。
Yは、学習到達度の変化が、個人の能力及び学習方法の特徴の因子(個人因子:各学習者ごとに本来異なる成績の上昇率)とインターバルの長さに対応して上昇率が低下していくという因子(インターバル因子:インターバルの長さに対応して上昇率が低下していく程度)との積によって表現されると考えると、個人の能力及び学習方法の特徴の要因をPとし、インターバル1週間による学習到達度の変化の因子をLW、インターバル1ヵ月による学習到達度の変化の因子をLMとすれば、
Y=P×LM となる。
一方、X=P×LWとなる。
したがって、a=Y/X=P×LM/P×LW=LM/LW となる。
この結果からわかるように、比例係数aには、個人の能力及び学習方法の特徴の因子が含まれずに、インターバル因子のみの比で表されることになる。
そこで、同一の学習者に、あらかじめインターバル1週間とインターバル1ヵ月で学習を行ってもらい、そのときの学習成績データを取得蓄積し、多人数の学習者に対してこの操作を繰り返す。蓄積されたデータより、インターバル1週間で学習を行った場合の成績の上昇率の平均値とインターバル1ヵ月で学習を行った場合の成績の上昇率の平均値との比を算出する。この2つの上昇率の比がaの値となる。また、このような方法の他に、Y=a×X を単回帰モデルと考え、予測値と実測値の差の2乗の和が最小になるようにする最小2乗推定法により係数aを決定することもできる。
例えば、他の学習者のインターバル1週間での成績上昇率をXi、インターバル1ヵ月での成績上昇率をYiとし、N人の学習者のデータが蓄積されているとする。
次に、上述したように Y=a×X という予測モデルを設定すれば、この予測値Yと実測値Yiとの誤差の二乗の和 Σ(Yi−Y)2 が最小になるように係数aを求めるという良く知られた方法となる。
すなわち、Σ(Yi−Y)2=Σ(Yi−aXi)2 であり、この式を係数aで偏微分して0とおくと、aが求められる。
最終的に、a=E(Y)/E(X) となる。(E(Y)、E(X)は各々、Yi、Xiの平均値を表す)
結果的には、前述した上昇率の平均値を取ってその各上昇率の比を計算する方法と同様の結果となる。
このようにして、比例係数aを決定すれば、学習者Xがインターバル1ヵ月で学習を行う場合の成績の上昇率Yは、インターバル1週間で学習を行った場合の上昇率Xより上述した式により予測することができる。
図20によると、他の学習者のインターバル1週間での学習成績上昇率平均値が0.2、インターバル1ヵ月での学習成績上昇率平均値が0.1であるから、
係数a=0.1/0.2=0.5となる。
一方、学習者Xのインターバル1週間で学習を行った場合の上昇率Xは図20より0.5となっているので、Y=a×Xの関係より、
Y=0.5×0.5=0.25
となり、(B)のグラフの斜線部のように成績の上昇の程度が予測できる。
次に、到達度データ以外に、例えば、パーソナリティ因子Zなどを同時に考慮し、次式のようなモデルを設定して、予測することも可能である。
Y=a×X+b×Z
ここで、パーソナリティー因子Zとは、各個人の慎重度等を所定の指標により得点化したもの等が考えられる。例えば、客観テストの成績の上昇率と自己評定の成績の上昇率とのギャップの大きさ等を得点としても良い。慎重な学習者は、自己評定の到達度実際の学力よりも低く見積もる可能性が高いので、通常、上昇率Yの値は低くなり、この因子を考慮する意味がある。
a、bの係数は、既に学習が行われた複数の学習者のインターバル1週間の成績データとインターバル1ヵ月の成績データとを用いて重回帰分析を行い、よく知られた最小2乗推定法により求められる。
以上のような方法により、学習者Xのインターバル1ヵ月での学習成績(到達度)の上昇率を推定することができるとともに、インターバル1ヵ月の初期段階の学習成績結果(例えば、収集されている1ヵ月分のデータ)から、数ヶ月後の学習成績の変化をその段階(1ヵ月学習を行った時点)で推定することができる。
上記では、一例として、インターバル1週間の学習到達度データから、インターバル1ヵ月の学習到達度を予測できることを説明したが、あらかじめ、色々なタイミング条件での学習到達度データを蓄積しておけば、例えばインターバル2週間の学習到達度データからインターバル2ヵ月の学習到達度を予測したり、様々な短いインターバル条件の学習到達度データから長いインターバル条件の学習到達度を予測することができる。
もちろん、逆に長いインターバル条件から、短いインターバル条件の成績の変化を予測することもできる。
一般的に、上記の動作をフローチャートで示したのが、図21である。
まず、様々なスケジュール条件で、多くの学習者の成績を収集し、データベースに蓄積する(S1)。成績予測対象者の第1のインターバル条件での学習成績を取得し(S2)、成績予測対象者が予測を希望する第2のインターバル条件を決定する(S3)。
第1のインターバル条件、属性条件、呈示条件が同一の成績データと、第2のインターバル条件、属性条件、呈示条件が同一の成績データとをデータベースより各々抽出する(S4)。
前述したような回帰モデルを設定し(S5)、S4でデータベースより抽出されたデータを用いて回帰分析を行い、回帰モデルの係数を決定する(S6)。
S6で決定された係数と、S2で取得した成績予測対象者の第1のインターバル条件での学習成績データから第2のインターバル条件での成績変化を予測する(S7)。
(複雑なタイミング条件及びスケジュールの生成方法)
図22の各スケジュールA1、A2、x、y、zに対応するセル内の1、2の数字は、1という呈示条件か、2という呈示条件で、ある特定のコンテンツ(対象)に関するイベントが生起したことを表し、0はそのイベントが生起しなかったことを意味している。呈示ユニットは、イベントが生起する最小の期間であり、例えば、この期間を1日とすると、呈示ユニットの数字は第何日目になるのかを表している。
図22の複雑なスケジュールの記述例で、スケジュール条件A1、A2のような複雑なスケジュールを言葉で表現することは、簡単ではなく、また、自動的にそのスケジュール条件をスケジュールテーブルの形で生成する場合、例えば、1000呈示ユニット分のスケジュールテーブルを作成するとしたら、とても表現しきれない。
表現できたとしても、そのタイミング条件と呈示条件に従ってイベントの生起を制御することは難しい。それに対して呈示ユニットを基本単位として、イベントサイクルユニットの長さ、インターバルの長さ、および必要に応じて条件ユニットの長さと遅延の長さでタイミング条件を記述する方法を利用すれば、A1、A2のようなスケジュールを表現し、さらにそれに従ってイベントの生起を統制することが可能である。
例えば、図のスケジュールxとスケジュールyのように、1という呈示条件でイベントが生起するようなものを考えると、スケジュールA1のイベントが生起するタイミングは、スケジュールxとスケジュールyとを重ね合わせた状態でのイベントが生起するタイミングと一致する。スケジュールxとスケジュールyのタイミング条件はそれぞれ、「E003_I006_J001_D000」、「E001_I006_J001_D004」と表現できるので、同じコンテンツ(対象)に関するイベントが、呈示条件が1の条件で両タイミング条件で生起するようなスケジュールテーブルをそれぞれ既述の方法で作成し、一つのスケジュールテーブルにまとめれば、スケジュールA1のようなスケジュール条件を生成することができる。同様に、スケジュールxとzを組み合わせれば、スケジュールA2のようなスケジュール条件を生成することができる。つまり、スケジュールA1はスケジュールxとyのタイミング条件と呈示条件1で、スケジュールA2はスケジュールxとzのタイミング条件と呈示条件2の組み合わせで表すことができる。さらにスケジュールx、yのタイミング条件を入れ子にした複雑なタイミング条件を前述の方法で記述し、スケジュールテーブルを作成すれば、さらに複雑なスケジュールテーブルが作成できる。
もちろん、タイミング条件の表記法は、その他にもあるが、この表記法を使うことで、スケジュール条件A1とA2のスケジュールの違いの効果を明確に比較することなどが可能になる。例えば、ある商品の広告イベントとして、ダイレクトメールによる広告を呈示条件1とし、直接電話での購入勧誘による広告を呈示条件2として、スケジュールA1とA2の広告スケジュールを採用し、その商品の販売実績を効果として測定すれば、呈示ユニット5と11(スケジュールy、z)において生じる、電話とダイレクトメールによる広告の効果の違いを比較検討することが可能になる。
(最適イベントスケジュール特定法)
様々なイベントを、イベントの種類とタイミング条件で表現し、データを収集(もしくは既有のデータを利用)し類似度を利用することで、特定の目的を達成するため、どのようなイベントをどのようなタイミングで行う(対処する)と効率的であるのか等を推定することが有効である。例えば、Sという会社からTという人へダイレクトメールを送るというイベントを例にとると、ある個人が、ある対象(商品やサービスや契約など)の購入申し込みというイベントを生起させるためには、会社が個人へダイレクトメールを送ったり電話勧誘を行う場合、どのようなスケジュールで対処することが有効なのかがあらかじめ分かっていることは有効である。
しかし、現在、例えば、会社などが行う、ダイレクトメールや勧誘などは、不特定のタイミングで行われることが多く、どのようなスケジュールでイベントを生起させると効率的であるのかについては、明確な方法は示されていない。
その理由は、様々なイベントの生起スケジュールは無数想定でき、それを人間が処理することが難しいためである。無数のスケジュールの中からどのスケジュールが効率的であるのかを見出すためには、そもそもスケジュールのコード化が必要であり、さらにそれをもとにした分析をするためには、コンピュータ等を利用する必要がある。しかし、現在、無数で多様なスケジュールをコード化し、表現し、さらに生成、それに対応したデータを蓄積し分析に用いる方法は明確になっていない。
そこで、呈示ユニットを決定し、前述したスケジューリング法で、イベントの生起 を記述、制御し、スケジュールごとに効果を測定し、その効果を比較することで、ど のスケジュールが最適であるのかを特定することが有効である。
具体的には、前述したスケジューリング法により、図23のイベント1〜6のような複数のスケジュール条件を設け、それぞれのスケジュールに基づきイベントを実行し、その効果を測定、比較することで、特定の目的の達成に最適なイベントのスケジュール条件を特定する方法。例えば、会社が商品の購入を促がす目的で、ダイレクトメールをどのようなタイミングで個人に送付すればよいのかを把握したい場合、四半期を呈示ユニットとして、前述したスケジューリング法によりイベント1〜4に対応するような複数のスケジュールテーブルを作成し、それにしたがって異なる客へダイレクトメールを送る。それぞれのイベントを経験する客が、その商品を購入するというイベントを引き起こす数を、スケジュールごとに集計し、最も数の多いスケジュールや類似した複数のスケジュールから最適なスケジュールを推定・生成すればよい。
なお、特定の対象に関するイベントで、複数の呈示条件(例えば、対応したオペレーターが男性か女性か)が想定できる場合は、上述した図23のイベント3、4のような複数のスケジュールテーブルを生成し、それに従って対象となる客のデータを収集すれば、異なる呈示条件の効果も測定できる。例えば、ある商品の購入を促がす目的で、その商品についてダイレクトメールで勧誘する場合、呈示条件と懸賞をつけたダイレクトメールを出す呈示条件を想定すれば、イベント1〜4にその2つの呈示条件を組み合わせたり、イベント5、6のようなスケジュールを設定して、その効果を比較することが可能になる。
単にタイミング条件を表現できたとしても、そこにおけるイベントの呈示(生起)条件が異なれば、スケジュール条件は異なることになる。スケジュールの表記は様々な利用法があるが、単にタイミング条件を表現するにとどまらず、特定のコンテンツの生起イベントを制御したり、その効果を測定したり、生起(呈示)条件の影響を比較したりする方法論に結びついた点が本タイミング表記法およびスケジュール表記法の特徴である。
なお、図23の例は、既述の図5における、E1とX2の類のタイミング条件の組み合わせで、複雑なスケジュールが表現できることを説明するためのものである。
(イベントスケジュール推定法)
図24により、イベントスケジュール推定法を説明する。特定の商品の購入申し込みを期待する企業が、顧客Xへダイレクトメールを使った勧誘を行う場合、呈示ユニット3で、企業からダイレクトメールが届くというイベントが生起し、それと同じ呈示ユニットでXさんから質問のイベントが生起したとする。以下同様に、図のXさんのイベントの太枠で囲まれているマトリックス(スケジュールマトリックスと呼ぶ)が記録されたとする。この状態で、呈示ユニット9の時期に申し込みイベントを期待したいとき、どのようなイベントのパターンが生起するようにすると効率的であるのかを、既に蓄えられているA、B、C、さん(もしくはXさんの過去の)のスケジュールマトリックスを使って推定する作業を行うことが可能である。
すなわち、申し込みイベントがいずれかの呈示ユニットで起きた顧客データのみを取り出す。その各顧客のマトリックスの中で、申し込みイベントが生起した呈示ユニット(最終点)を各顧客間で一致させる。その状態で、顧客Xの既に収集されているスケジュールマトリックス(太枠)と相対的に同じ呈示ユニットの位置にある各顧客のマトリックス(それぞれの顧客の太枠の部分)に限定し、両者の類似度(例えば、内積)を計算する。
もし、全イベントの開始時点が明確な場合(顧客から問い合わせが初めてきたときや、初めて電話勧誘をした時など)は、その開始点を起点としてスケジュールマトリックスを、他の顧客のデータに想定(限定)し類似度を計算する。また、期待するイベントが個人内に何度も想定できる場合は、(開始点から始めて想定できる全てのスケジュールマトリックスで類似度を計算して)顧客Xのスケジュールマトリックスと類似度の高いスケジュールマトリックスを顧客X本人や他の顧客の全てのスケジュールマトリックスから見つけ出し、最も類似度の高いスケジュールマトリックスを特定したり、新たに推定・生成する。
内積による計算結果は、各マトリックスの同じセル位置に書き込まれている数字を掛け合わせて答えを出し、各セル毎に計算されたこれらの結果を合計した数値となる。
図は、最終点を基準にスケジュールマトリックスを想定した例で、Aさんとの類似度は2.0、Bさんとは3.0、Cさんとは5.0である。この中で、例えば、一番類似度が高いCさんの、計算対象になっているマトリックス以降のイベントを同様のタイミングで生起させる方法が、申し込みイベントを期待できるイベントのパターンであると推定することができる。
なお、反応の予測は、一般の教育場面における人間の学習やマーケッティング(購買行動、契約行動等)の予測に限らず、過去の学習の効果を蓄えその学習(経験)に基づき行動を行う主体(人間、動物、コンピュータなど)によって規定される様々な対象の行動や動作を予測したり、生成する場合に適用できる。例えば、自動車が特定の状況でどのような反応を起こすのかを予測する際に、特定の状況に遭遇するイベントの生起や特定の方向に進むイベント等をマトリックスに含め、そのマトリックスと、現在の自動車のイベントパターンを利用して、その後のイベントを予測することができる。人間の行動、動きをはじめ、ロボットなどの運動や反応の予測(および生成)に適用できる。
<学習者評価表示システム>
学習者の成績の把握や評価を行い、学習到達度の予測とその表示に重点をおいた学習者評価システムについて説明する。
図25には学習者評価表示システムの概略構成図を示す。図25に示すように、パソコン51、携帯電話52、モバイルパソコン53等の学習者端末54と、通信網55(携帯電話網、一般回線、インターネットを含む)と、学習スケジュールサービスサイト57と、企業・大学のサーバ58等からなるシステムである。
前述の学習スケジュールサービスサイト57は、少なくともスケジュールテーブル59と、コンテンツファイル60と、個人履歴ファイル61、送信リストファイル62等を備え、企業・大学のサーバ58から提供される属性情報が付加されたコンテンツCiをコンテンツデータファイル60に保存する。その後、スケジュールテーブルに基づく送信リスト(呈示リスト)の学習コンテンツもしくは呈示順序情報を通信網55および必要に応じて企業サーバ68を介して学習者端末54に配信し、学習者はその学習コンテンツに対する反応を学習者端末54を操作して入力して、通信網55を介してサイト57に返信する。
学習スケジュールサービスサイト57は、返信された反応データとスケジュールテーブルを対応付け、特定のスケジュールにおける学習者の反応履歴データを記録し、この履歴データに基づいた分析パターンを生成して、この分析パターンの変化およびそれに対する適切な助言などを学習者や教師等にフィードバックする。
すなわち、学習者端末54と様々な通信ネットワーク(インフラ)を利用し、サービス主体(サイト)が様々なコンテンツ(評定する内容のカテゴリー)に含まれるひとつひとつの項目を、1回もしくは複数回、特定のスケジュールで配信し、その内容に対して、学習者の反応を収集する。
また、学習スケジュールサービスサイト57は、複数の学習者の評定値や日時等のデータを収集し、履歴データとして蓄積し、そのデータを特定のスケジュールなどに関連付け分析し、それぞれの内容に対する個人の評定時点の状態やそれまでの状態の変化、その後の変化の予測、他の利用者との比較などをフィードバックする他、蓄積されるデータを分析することにより、学習者が利用可能な評定スケジュールや助言などを提供する。
また、本サイトのサービスを利用する上で、学習者の性別や生年月日や地域や学年や希望する進路、職業等々の個人情報を登録させ、その個人情報と個人の履歴データの他、複数の評定者の履歴データをもとに、評定項目に対する個人の判断状況や、全体的な傾向を明らかにし、学習者又は第3者等に情報提供している。
なお、学習スケジュールサービスサイト57、企業・大学のサーバ58は、情報をハイパーテキスト形式で表した分散データベースシステム機能を備え、インターネット上の情報を統一的に得ることを可能としており、ハイパーテキストはテキスト中にポインタが埋め込まれ、そこから関連情報にジャンプできる構造を持ち、情報はHTMLで記述し、ポインタやリンクが指定されることによって次々と新しいテキストファイルにジャンプして必要な情報を得る。
つまり、指定されたホームページのHTMLソースコードをクライアント(学習者端末54)のブラウザへ転送し、クライアントからの要求に応じた画像等の情報ファイルを送信する。
また、パソコン51、携帯電話52、モバイルパソコン53等の学習者端末54は、ブラウザ機能を備え、学習者の指定するホームページのURLコードに従って、このURLを持つサイトに対してHTMLなどの情報の転送要求をする。
そして、届いたHTMLを解析し、表示部分を画面に表示すると共に、このHTMLに画像などのリンク情報が存在していた場合は、この画像の転送要求を行う。
つまり、入力(指定)されたURLを元にアクセスを行い、その先頭ページ(ホームページ)の転送要求を送信し、送られてきたHTMLソースを解析すると共に、画面に表示し、さらにはHTMLに含まれるCGIスプリクトなどの転送要求を行う。
次にこのシステムの動作をシーケンス図で示したのが図26である。
まず、学習スケジュールサービスサイトもしくはコンテンツ提供企業・大学(これらをセンターと呼ぶ)が、コンテンツにスケジュール等各種条件が記載されたファイル、およびそのコンテンツに対応するスケジュールテーブルや学習呈示プログラム、データ送信プログラムを、ホームページにアップロードしておく。また、各種コンテンツについて、各種スケジュール条件に従って学習を行った場合の一般的な成績の変化なども例として参照できるようにしておく。
(d40)以下のサービスを希望する学習者が、必要に応じて個人情報(住所や、メールアドレス等)を登録しておく。なお、この時点で必ずしも個人情報は登録しなくても良く、(d42)で登録しても良い。
(d41)センターのホームページを学習者は参照して、興味を持ったり、利用したいと思った場合は、そのコンテンツとそれに対応するスケジュールテーブルや呈示プログラムなどのセットをダウンロードし、自分の学習端末にインストールする。
(d42)インストールの後、当該コンテンツのスケジュールに基づく学習(以下、スケジュールド・ラーニング(SL)と呼ぶ)を開始したいという請求をセンターに返す。また、必要に応じてここで個人情報を登録しても良い。
(d43)センターでは、個人情報が登録されているかどうか利用者を確認し、確認したところで、そのSLサービスを利用するための認証情報を生成・記録した上で、
(d44)それをあらかじめ登録されている学習者へ送信する。
(d45)学習者はその認証情報を利用して、端末側でサービスをインストールし仮登録を行い、(d46)その仮登録情報(インストールディレクトリなどの学習環境情報、認証情報)をセンターへ送信する。
(d47)センターでは、仮登録情報が届き、認証が確認されたところで、該当するコンテンツデータベースに対する反応などを記録する領域を確保し(コンテンツ自体は必ず必要となるものではなく、コンテンツ番号などがあれば最低限良い)、そこに利用者の端末環境や、インストール状況を記録し、個人が利用する端末IDを割り振り、(d48)そのIDなどの情報を、本登録ファイルとして学習者に送信する(センター側で本登録完了)。
(d49)学習者は、送られてきた本登録ファイルを使って、端末側での本登録を完了し、
(d50)必要に応じて、最終的に登録が完了した状態など(インストール先や送信メールアドレスなど)の情報とあわせて、登録完了の情報をセンターに送信する。
以上が、SLサービスの登録の概要である。なお、SLサービスはあくまでスケジュールとコンテンツの組み合わせごとになされる。また、スケジュールや送信メールアドレスの変更などの各種変更は、(d50)の情報をセンターに送信することで対処する。
また、個人情報などをあらかじめ別途センターへ登録しておき、d44もしくはd48から登録作業を進めても良い。
次に図27は、SLサービスの登録が終わってからの情報のやり取りを示す。
(d51)学習者は、一定のスケジュールで学習を進め、その学習の結果の反応が、端末側で記録される。学習を進める過程で、学習者が希望したところで、分析結果を参照したくなったら、学習反応データをセンターへ送信する。そのデータには、コンテンツの番号、スケジュールの番号、スケジュール内の呈示ユニットの番号、各コンテンツに対する反応や反応時間、コンテンツの番号、学習日時、学習開始時刻と終了時刻、呈示ユニットの番号、端末ID等が必要に応じて含まれる。
(d52)センターは、受け取った学習反応データを個人ごとに保存し、そのデータと、必要に応じて他の学習者のデータを利用し、学習の進み方を解析し、(d53)その結果をホームページに掲載し、(d54)それと一緒に、そのホームページのURLおよび、必要に応じてパスワードなどをその学習者、および必要に応じて他の第3者へ送信する、もちろん、この際に、ホームページに掲載した分析結果を、直接ファイルとして学習者や第3者などへ送信しても良い。
(d55)学習者や第3者は、その学習者の学習の経過や予測などの分析データをいつでも参照できる。
(d58)学習のスケジュールによっては、個人の成績を基にしてスケジュール条件を再構築することもある。その場合は、再構築をしたという情報を端末側からセンターへ送信し、(d59)センターは、その再構築の情報に基づき、反応データを記録するデータベースを確保したり、構造に変更を加えて、学習者の端末の状態を再現できるようにする。
なお、(d52)で保存された反応データを、そのまま、もしくは分析した結果を、個人が特定できない形、もしくは個人が特定できる形で、研究者など第三者へ送ることも可能である。
上記のシステムにおいて、特定の学習者が、自己の学習経過途中における成績や、学習が完了した時点での成績、特定のスケジュール条件で学習を行う場合の到達度の予測結果を知りたい場合には、センターからその内容を見ることができるURLをEメール等で通知されるので(d57)、そのときに同時に配信されるパスワード等を用いてこのURLにアクセスすることになる。
その場合に、例えば、図28のように、学習の成績として自己評定値(学習到達度)の経過を示すグラフと、今後成績がどのように変化していくのかを予測するために、推定された回帰関数を合わせて表示することができる。
図のグラフによると、イベントサイクルユニット1ヵ月の条件で6ヵ月の学習期間を終えた時点では、ほぼ2.5の評定値が付けられている。例えば、この2.5以上の評定値の場合には、この学習に関連する資格を取得する条件を満たすものとして、図のように、関連資格の名称と、その資格審査を行う団体名称を表示してリンクするようにしておく。例えば、×××資格 (AAA財団法人) http//www.aaa.or.jp の部分をクリック等すれば、そのホームページへ移動することができる。
資格取得と、学習が一体になったサービスを提供するために、図で示されているような AAA財団法人、BBB協会、CCC学会、といった資格審査団体と学習サービススケジュールサイトは提携し、これらの団体が保有する学習コンテンツを用いて、学習者に学習スケジュール配信を行い、一定のレベルに達した場合に、資格取得のための試験の全部又は一部を免除するようにしても良い。
また、他の例として、図29が示されている。インターバル1週間で学習を行った場合の学習到達度を現時点までの経過を示すデータと、これからインターバル1ヵ月で学習を行う場合の学習到達度の予測結果を示すデータが表示されている。
さらに、図のように、学力の到達度が3以上になった場合には、この学習分野については、一定の知識レベルに達したものとみなし、一定の知識レベル以上の人材を求めている企業や大学からの要請に応じて、企業や大学名とホームページアドレスをリンク表示する。
例えば、インターバル1週間条件で行った学習の内容が英語のヒヤリングやライティングの能力の到達度を評価するものであれば、上記リンク表示する人材募集サイトには、翻訳のアルバイトやボランティアの募集等も表示される。
また、すでに図29で示されたような資格サイトにおける資格を保有しているならば、その保有資格を募集条件としているような企業・大学からの採用募集サイトへのリンクを表示するようにしても良い。
次に、学習しているコンテンツの内容と、個人の属性に基づいて情報検索の領域を限定し、質の高い検索結果を返せるようにするために、以下のように構成する。
学習者の成績等を表示する上記のようなWeb表示に、検索リンクを設ける。この検索リンクは、一般のポータルサイトで行われているような検索ワードが入力できる検索ウィンドウを設けたもので、学習者が検索を行いたいときに、適切な検索ワードを入力するものである。
このようにして、個々の学習者が入力した検索ワードを学習スケジュールサービスサイトはデータベース65に蓄積する。そして、検索ワードを記憶させる場合には、当該検索を行った学習者個人の学力段階と関連付けて行う。学力段階とは、学習の到達度から算出できる知識レベルとその学習者の過去の学歴等から認定したものである。
例えば、この学力段階をA、B、C、D、Eの5段階に分けた場合、データベース65は、図30のようなファイル構成となる。各段階毎に記憶領域が確保され、各段階の記憶領域には、各々使用された検索ワード、訪問ランク1から訪問ランクNまでの記憶領域が設けられている。使用されたワードの領域には、学習者が使用した新規の検索ワードが登録されるようになっており、各訪問ランク領域には、対応する検索ワードが使用された後、実際に学習者が訪問した新規のサイトが登録されるようになっている。
一方、既にデータベース65に登録されている検索ワードを使用して、登録されている同じサイトを訪問した場合には、その訪問サイトの訪問回数をカウントアップするとともに、訪問回数の多い順番にサイトの並べ替えを行うようになっている。
図30の学力段階Aに関連付けられた領域で説明すれば、すでに使用された検索ワードは、検索ワードa1、 検索ワードa2、 検索ワードa3とあり、それに対応して訪問回数の多い順に訪問サイトが並べられている。
検索ワードa1の場合では、サイトa11が最も訪問回数が多く、次いで多い訪問サイトがサイトa12であることを示す。他のBからEの学力段階についても構成は同じである。
そして、訪問サイトのランキング(訪問ランク1〜N)は、学習者がサイトを訪問する度に、カウントアップし、訪問回数の多い順に並び替えが行われ、データベースに登録されている検索ワードと同じワードが検索に用いられた場合に、Webページには、その検索ワードに対する最新の訪問サイトランクの順番にしたがって、サイトの表示が行われる。
図31は上記動作のフローを示す。
まず、学習者の学力段階を取得する(T1)。次に、学習者が使用した検索ワードを取得し(T2)、データベース65において当該学習者と同じ学力段階の領域に、取得した検索ワードが登録(格納)されているか否かをチェックする(T3)。データベース65に登録されていない場合には、データベース65にその使用された検索ワードを登録し(T4)、通常表示される検索結果通りに表示する(T5)。
一方、データベース65内に同じ検索ワードが既に登録されている場合には、その検索ワードに対応した訪問ランキングのデータと検索結果データとを比較して、一致するサイトはそのランキング順に表示し、一致しないサイトは検索結果の順番通りに表示する(T6)。
当該学習者が、実際に訪問したサイトを取得し(T7)、データベース65において、当該学習者の学力段階と同じ領域で、かつ、使用した検索ワードと同じワードの領域内に、訪問したサイトと同一のサイトが登録されているか否かをチェックする(T8)。訪問サイトが登録されていない場合には、その訪問サイトを新規に登録する(T9)。
一方、訪問サイトが登録されている場合には、そのサイトの訪問回数をカウントアップし(T10)、訪問サイトランクの並べ替えを行いデータベースを更新する(T11)。
1 コンテンツデータベース
2 スケジュールデータベース
51 パソコン
52 携帯電話
53 モバイルパソコン
54 学習者端末
55 通信網
57 学習スケジュールサービスサイト
58 サーバ5

Claims (4)

  1. 学習用のコンテンツを学習者に呈示するタイミング条件と呈示条件との組み合わせにより得られるスケジュール条件の学習スケジュールを用いた学習の効果を予測する方法であって、
    前記コンテンツを記憶手段に記憶する記憶工程と、
    前記記憶工程において記憶されたコンテンツを所定期間よりも短いインターバルで呈示する第1のインターバル条件を定めた学習スケジュールと、前記記憶工程において記憶されたコンテンツを前記所定期間よりも長いインターバルで呈示する第2のインターバル条件を定めた学習スケジュールとを生成する生成工程と、
    前記生成工程において生成された学習スケジュールに基づいて前記第1のインターバル条件及び前記第2のインターバル条件で複数の学習者に対して前記コンテンツを呈示するとともに、前記生成工程において生成された学習スケジュールに基づいて前記第1のインターバル条件で予測対象学習者に対して前記コンテンツを呈示する呈示工程と、
    前記呈示工程において呈示されたコンテンツによる学習を前記第1のインターバル条件及び前記第2のインターバル条件で続けたときの前記複数の学習者の成績データを収集するとともに、前記呈示工程において呈示されたコンテンツによる学習を前記第1のインターバル条件で続けたときの前記予測対象学習者の成績データを収集する収集工程と、
    前記収集工程において収集された成績データに基づいて、前記呈示工程において呈示されたコンテンツによる学習を前記第2のインターバル条件で続けたときの前記予測対象学習者の成績データを予測する予測工程と、
    をコンピュータが行うことを特徴とする学習効果予測方法。
  2. 前記生成工程では、全てのコンテンツに関するイベントが一定のタイミングで繰り返し生起するように、イベント生起の最小期間である呈示ユニット以上に長く、かつ、あるイベントの開始から次のイベントが起きる前までの間のインターバル以下の短い一定の期間をイベントサイクルユニットとして設け、各コンテンツに関する特定のイベントがそのイベントサイクルユニット内で一度生起するよう、前記記憶手段に記憶されたコンテンツを配置するようにした学習スケジュールを生成することを特徴とする請求項1記載の学習効果予測方法。
  3. 前記コンピュータは、
    前記呈示ユニット、前記イベントサイクルユニットが記憶され、前記呈示条件が前記呈示ユニットに割り付けられて記憶される第1の記憶手段と、
    前記コンテンツが記憶され、前記呈示ユニットと前記呈示条件との組みが前記コンテンツに割り付けられて記憶される第2の記憶手段と、
    を前記記憶手段として備え、
    前記タイミング条件を、
    入力された、前記コンテンツを呈示するイベントが生起する最小期間と、前記最小期間以上に長い第1の一定期間と、を読み込む工程と、
    前記第1の一定期間に想定する前記イベントサイクルユニットを、前記最小期間を単位として生成して、前記第1の記憶手段に記憶する工程と、
    前記最小期間に想定する前記呈示ユニットを、前記イベントサイクルユニットに前記最小期間の単位で各々一つ割り付けて生成し、前記第1の記憶手段に記憶する工程と、
    前記呈示条件を、この生成された呈示ユニットに割り付けて、前記第1の記憶手段に記憶する工程と、
    前記イベントサイクルユニット内で、
    各コンテンツに関する前記イベントを前記呈示条件で1度、生起させるため、
    前記コンテンツに対し、
    前記割り付けられた、前記イベントサイクルユニットに前記最小期間の単位で各々一つ割り付けて生成された前記呈示ユニットと前記呈示条件との組みを、
    一つ割り付けて、
    前記第2の記憶手段に記憶する工程と、
    によって生成し、
    前記呈示条件を、
    一つの呈示ユニット内でコンテンツを繰り返し生起させるイベントの反復回数を決定し、これを前記生成された呈示ユニットに割り付けるための前記呈示条件として前記第1の記憶手段に記憶する工程、
    によって生成し、
    前記第1の記憶手段の前記呈示ユニット、前記イベントサイクルユニット、前記呈示条件と、前記第2の記憶手段の前記コンテンツに割り付けられた前記呈示ユニットと前記呈示条件との組みとに基づいて、前記スケジュール条件を得る
    ことを特徴とする請求項2記載の学習効果予測方法。
  4. 学習用のコンテンツを学習者に呈示するタイミング条件と呈示条件との組み合わせにより得られるスケジュール条件の学習スケジュールを用いた学習の効果を予測する装置であって、
    前記コンテンツを記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段に記憶されたコンテンツを所定期間よりも短いインターバルで呈示する第1のインターバル条件を定めた学習スケジュールと、前記記憶手段に記憶されたコンテンツを前記所定期間よりも長いインターバルで呈示する第2のインターバル条件を定めた学習スケジュールとを生成する生成手段と、
    前記生成手段により生成された学習スケジュールに基づいて前記第1のインターバル条件及び前記第2のインターバル条件で複数の学習者に対して前記コンテンツを呈示するとともに、前記生成手段により生成された学習スケジュールに基づいて前記第1のインターバル条件で予測対象学習者に対して前記コンテンツを呈示する呈示手段と、
    前記呈示手段により呈示されたコンテンツによる学習を前記第1のインターバル条件及び前記第2のインターバル条件で続けたときの前記複数の学習者の成績データを収集するとともに、前記呈示手段により呈示されたコンテンツによる学習を前記第1のインターバル条件で続けたときの前記予測対象学習者の成績データを収集する収集手段と、
    前記収集手段により収集された成績データに基づいて、前記呈示手段により呈示されたコンテンツによる学習を前記第2のインターバル条件で続けたときの前記予測対象学習者の成績データを予測する予測手段と、
    を備えたことを特徴とする学習効果予測装置。
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