JP4386975B2 - コンピュータ反復学習方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータを用いて学習をサポートする教育方法に関する。さらに詳細には、反復して課題に関する設問を選択出題して解答を求める反復学習方法およびそれらの方法を記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
学習には大きく見て二つの側面がある。一つは記憶、もう一つは理解である。前者は一般に丸暗記などの暗記的記憶であり、後者は論理的な道筋の記憶である。前者はわりあい短時間に多数の内容を詰め込むことができるが、時間とともに劣化(忘却)しやすい。一方、後者は一つの課題(または分野)に対して学習時間が長くなる傾向にあるが、いったん理解をすれば、その記憶内容(正確には理解度)は劣化しにくいという特徴をもっている。
【0003】
学習の基本は繰り返すことである。古くから行われている方法としては、プログラミングインストラクション(PI:Programing Instruction)がある。たとえば図1に示すように、学習と質問(図では“問題”と表記)を繰り返しながら、正解をすると次の学習ステップまたは類型学習をジャンプして新しい学習ステップへ移り、不正解のときは前のステップに戻りながら、学習効果を上げていく仕組みになっている。この学習法は、一つ一つを単に暗記するのでなく、理解しながら学習していくの適した方法である。
【0004】
記憶と忘却を扱ったものとして、エビングハウス忘却曲線がある。図2は忘却曲線を表したものであるが、グラフからもわかるように、記憶は時間の指数関数的に減少する。この忘却曲線は個人差もあり、また学習する対象によっても異なる。この忘却曲線の特徴を利用して記憶劣化を補いつつ、学習効果を上げる方法を提唱しているのが、特開平8-278745の「教育装置及び教育方法」である。この方法によると、ある課題に対して複数の問題(たとえば10問出題)を出し、全問正解するまで一定期間おいての再出題を繰り返し、全問正解したところで、忘却曲線を設定する。この忘却曲線にそって記憶劣化を補うための復習期間・復習テスト期間を自動設定する。この方法によって、学習効果と記憶定着効果を最大限に上げようとするものである。
【0005】
一方、英単語の記憶学習用としては、特開平8-179683の「英単語学習記憶装置」がある。この装置で採られている方法は、単語ごとに不正解、一度正解、連続正解の3段階に基づいて、単語の記憶度を管理していくものである。不正解、一度正解の単語に対しては、ランダムに取り出し、再記憶(テスト)させる方法を採り、最終的に連続正解するまで学習させる。この方法により、単語(例文や発音なども含む)の記憶定着を確保することができるという仕組みになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
学校教育の問題点は、生徒個人個人の学習レベルに合わせた教育がなされていないことである。その点、従来技術でみてきた、特開平8-179683の「単語学習記憶装置」および特開平8-278745の「教育装置及び教育方法」とも、個人のレベルに合わせた学習管理が行われることが特徴となっている。
【0007】
特開平8-179683の学習法は、一つ一つの単語(発音や例文なども含む)を完璧に学習する手法であるが、学習(テスト)の間隔はランダムに決定するものであり、計画的な学習を意図したものではない。一方、特開平8-278745は、学習期間と復習期間を分け、学習期間の学習方法は一定間隔の反復学習によって完璧に課題を憶えさせ、その学習期間に得た結果によって忘却曲線を算出し、復習期間での学習スケジュールを自動設定して記憶を定着させるというものである。しかし、学習期間における学習間隔は単に一定間隔としている点、学習の単位はグループ単位である点、また忘却曲線を求める処理が必ずしも論理的に示されていない点に問題がある。本発明が解決しようとする課題は、一つの課題(分野)に対して記憶(論理的な理解も含む)と記憶の定着を可能にする学習方法を提唱することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に記載された発明は、コンピュータが、学習者固有の情報として設定される、課題に対する次の学習までの時間間隔である反復学習間隔時間を記憶し、該課題に関する1以上の設問を選択出題して解答を求め、該設問に対する解答を正答と判断すると、前記反復学習間隔時間を長くなるように変更して記憶し、正答でないと判断すると、前記反復学習間隔時間を短くなるように変更して記憶することにより、次の学習までの時間間隔を管理する手順を備えたコンピュータを用いるコンピュータ反復学習方法において、
該コンピュータが、
(1)実際の学習に際して、前記反復学習間隔時間よりも長い時間間隔で再学習が行われた場合にその解答を正答と判断すると、該長い時間間隔を基準にしてより長くなるように、前記反復学習間隔時間を変更して記憶する手順、及び
(2)実際の学習に際して、前記反復学習間隔時間よりも短い時間間隔で再学習が行われた場合にその解答が正答でないと判断すると、該短い時間間隔を基準にしてより短くなるように、前記反復学習間隔時間を変更して記憶する手順、及び
(3)学習期間中に正答でないと判断した設問があらかじめ設定されている5〜9の個数集積したことを認識すると、正答でないと判断した設問の課題に対する反復学習間隔時間を調整することなく、一時的な繰り返し学習で短期記憶を完成させるために該5〜9個の設問をまとめて繰り返し出題する手順
を備えることを特徴とするコンピュータ反復学習方法である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、コンピュータが、学習者固有の情報として設定される、課題に対する次の学習までの時間間隔である反復学習間隔時間を記憶し、該課題に関する1以上の設問を選択出題して解答を求め、該設問に対する解答を正答と判断すると、前記反復学習間隔時間を長くなるように変更して記憶し、正答でないと判断すると、前記反復学習間隔時間を短くなるように変更して記憶することにより、次の学習までの時間間隔を管理する手順を備えたコンピュータを用いるコンピュータ反復学習方法において、
該コンピュータに、
(1)実際の学習に際して、前記反復学習間隔時間よりも長い時間間隔で再学習が行われた場合にその解答を正答と判断すると、該長い時間間隔を基準にしてより長くなるように、前記反復学習間隔時間を変更して記憶する手順、及び
(2)実際の学習に際して、前記反復学習間隔時間よりも短い時間間隔で再学習が行われた場合にその解答が正答でないと判断すると、該短い時間間隔を基準にしてより短くなるように、前記反復学習間隔時間を変更して記憶する手順、及び
(3)学習期間中に正答でないと判断した設問があらかじめ設定されている5〜9の個数集積したことを認識すると正答でないと判断した設問の課題に対する反復学習間隔時間を調整することなく、一時的な繰り返し学習で短期記憶を完成させるために該5〜9個の設問をまとめて繰り返し出題する手順
を備えた反復学習間隔時間を管理する手順を実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータを用いるコンピュータ反復学習用記録媒体である
【0012】
本発明は上記の課題を解決するために、コンピュータを用い、反復して課題に関する1以上の設問を選択出題して解答を求める反復学習において、前記設問に対する回答の評価に応じて該課題に対する次の学習までの間隔である反復学習間隔時間を増加、維持あるいは減少させるように変更して、反復学習間隔時間を管理するコンピュータを用いた反復学習方法である。
【0013】
ある課題に関する設問に対して正答と判断なされると、その課題に対する次の学習までの間隔である反復学習間隔時間を長くなるように変更し、正答でないと判断されるとその課題に対する反復学習間隔時間を短くなるように変更して、次の学習までの時間間隔を管理する。この場合、1回の正答か否か毎に反復学習時間を増減させるのではなく、複数回正答、あるいは複数回不正答のときレベルを移動させるように設定しても良い。そして最終的には、何回かの正答の結果、次の学習までの時間間隔が一定時間以上(あるいは一定のレベル以上)になればその課題に対しては学習完了とする。
【0014】
正答か否かの判断は、設問に対して要した時間、設問に対する回答内容等を考慮して判断基準を定める。例えば、一つの設問が10の小設問で構成されているような場合、8以上の小設問に対して正しい解答をすれば、設問に対して正答がなされたと判断したり、規定時間をオーバーすれば正答でないと判断するようなことである。
【0015】
学習完了の条件としてはこの他に様々なパターンが用いられる。連続3回正解すれば完了、第1回で正答すれば完了などが考えられ、このような各種完了条件を組み合わせることでさらにきめ細かい学習上の配慮が可能である。なお、複数の設問を一つの課題に対応させて、処理することもできる。また、設問は文字で書かれたもの以外に、発音された聞き取りテストのように音声で与えられるものでも良い。
【0016】
反復学習間隔時間の変更は、予め定めたレベルに対応する時間の表に基づいて変更する。課題毎に学習度のレベルを設定して、このレベルに対応して反復学習間隔時間を決めておき、正答か否かでレベルを上げる、あるいは下げるなどの操作を行うことで反復学習間隔時間を変更する。この場合、1回の正解、不正解毎にレベルを動かすのではなく、複数回正解、あるいは複数回不正解のときレベルを移動させるように設定しても良い。
【0017】
実際の学習では、前回の反復学習間隔時間とは異なる時間に再学習が行われる場合がある。設定された反復学習間隔時間よりも長い時間間隔で再学習が行われ、それが正答であれば、前回の学習からの実際の経過時間を基準にして、新しい反復学習間隔時間を定める。
【0018】
逆に、設定時間間隔よりも早く再度の学習が行われ、それが不正解の場合は前回の学習からの実際の経過時間を基準にして新しい反復学習間隔時間を定める。そして、これ以外の場合は、基本的には前回の設定時間を基準にして、反復学習間隔時間を変更する。また、正当か否かの判断については、多段階評価を行って、各評価レベルに応じて反復学習時間の増減等を設定することもできる。
【0019】
学習中の課題毎の反復学習間隔時間(あるいは学習度のレベル)は、学習者固有の情報として管理され、各課題の反復学習間隔時間に沿って、問題が選択されて出題される。この際に、出題可能数が過多になったり、過少になることがあるが、過多な場合は適宜選択し、過少な場合は比較的出題時期が近い出題を選択するなどして調整する。課題毎の反復学習間隔時間の初期値あるいはレベル間の時間差などは、忘却曲線、難易度などを考慮して、予め設定しておく。
【0020】
また、表を用いずに時間計算により変化させることもできる。例えば、正答であれば反復学習間隔時間を一定比率で増加させ、誤答であれば一定比率で反復学習間隔時間を減少させるような連続的時間変更を行うこともできる。
【0021】
上記の本発明の方法は長期の記憶を完成させるための方法であるが、さらに短期記憶のメカニズムを利用した方法を付け加えることができる。そこで、不正解であった設問を適当個数まとめて、一時に繰り返し学習させることで短期記憶を完成させる。しかし、これは、あくまでも短期記憶なので、上記の本発明の目的とする長期記憶に関してはまだ記憶されていないものとして扱う。このような、短期記憶を利用したシステムを、本発明の長期記憶を完成させるシステムに組み込むことでさらに学習効果を上げることができる。なお、まとめる個数としては、一時に覚えられる個数であることが望ましい。とくに、短期記憶においては、人が同時に記憶できる要素は5〜9(7±2)と言われており、この数を記憶のマジカルナンバーと呼んでいる。上記のまとめる個数の上限として、このマジカルナンバーを用いることは有効である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する。課題毎の反復学習間隔時間の初期値あるいはレベル間の時間差など記録したデータを収納した学習間隔時間管理テーブルを設定する。学習者個人については、学習者ごとに課題ごとの進捗状態(レベル)あるいは反復学習間隔時間のデータを収納した個人情報テーブルを設定する。
【0023】
なお、上記の学習間隔時間管理テーブルはデータベース化しておき、実行ごとに読み出して使用する。また学習間隔時間管理テーブルの学習間隔は、将来的により効果的な学習間隔を設定できるように、課題ごとに課題完了までの過程をログファイルに保存しておく。本発明は、ペーパーテストによる学習、LANによる学習、パソコン通信やインターネットなどによる学習に対しても、対応できる。
【0024】
図3は個人情報テーブル、図4は学習間隔時間管理テーブルの例を示す。個人情報テーブルは、個人情報に関する固定長の部分と課題ごとの情報を含む可変長の部分からなっている。固定長の部分には、個人識別子(ID)、氏名、住所、電話番号、年齢等の個人情報が入っている。可変長の部分には、課題ごとにテスト回数、正解数、学習間隔時間管理テーブルの識別子(どのテーブルを利用するかの識別子)、最新テスト日時、最新記憶度(理解度)が入っている。
【0025】
最新記憶度は、学習間隔時間管理テーブルの学習間隔をポインタ(添字)で表す。すなわち、この値が大きいほど、記憶度は低いことになる。次回のテスト日時Tは、最新テスト日時t、最新記憶度としたとき、
T=t+t
で求める。
【0026】
なお、個人情報テーブルの可変長部分は分離して別テーブルにすることもできる。また、記憶度は最新のもの一つしか明記していないが、過去の履歴として複数もてば、より細かい分析も行える。このほか、最高達成理解度などもテーブルにもっていると、記憶したものがどのくらい劣化したかなどの細かい判断ができ、便利な使い方も可能となる。
【0027】
図4の学習間隔時間管理テーブルは、課題の難易度別、あるいは課題(分野)別に作成される、次期テストまでの時間間隔が登録されている。時間間隔が添字が大きくなるほど狭く(短く)、小さくなるほど広く(長く)なっている。すなわち、テーブルへの添字は記憶度を表すとともに、次回の学習(テスト)までの時間間隔を同時に引き出せるようになっている。ヘッダー部はテーブルを識別する情報が入っている部分であり、メモリ上にテーブルを展開するときにはなくても差し支えない。
【0028】
学習間隔時間管理テーブルは、課題の難易度や分野ごとに異なるほかに、学習方法または学習の状況によって異なる。以下、学習間隔の例である。
……
== == == == == == ……
学習塾用 半年 1月 2週 7日 3日 2回/日 ……
集中学習 半年 1月 1日 1h 30m 20m ……
理解分野 1年 半年 1月 10日 5日 1日 ……
ここで、hは時間、mは分を表す。
【0029】
学習塾などのように学習者が通ってくる場合には、どうしても通ってくる日に合わせなければならないので、間隔は日単位と長くなる。ただし、上記の例のように、1日に2回とか3回という学習のさせ方もできる。それに対して、自宅で学習者が学習するような集中学習では、分あるいは時間単位の短い間隔の反復学習方法が可能となる。たとえば、英単語の暗記や歴史年表の暗記等の暗記を必要とする分野では、この学習間隔時間管理テーブルが役立つ。一方、理解力をつけさせる分野では、ある程度長い期間、いくつかの類題を解く力をつけていかなければならないので、短間隔から長間隔までのきめ細かいテーブルが必要となる。
【0030】
上記の例では“t=1日”までしか記述していないが、集中学習と同じように短間隔では、時間や分単位までカバーする必要がある。なお、1月、半年、1年とロングスパンの間隔を設定してあるのは、記憶が劣化していないかを判断するものであり、このロングスパン後に再テストした結果が不正解の場合には、最低1日単位の間隔に逆戻りして、記憶の定着を図る。具体的には、以下のように学習間隔時間管理テーブルを使用する。
【0031】
図5は学習間隔時間管理テーブルの学習間隔の変化を表したものである。初期状態における個人情報テーブルの最新記憶度には、もっとも短い間隔の記憶度(学習間隔時間管理テーブルへの添字)が設定される。図5の例では、k=である。テストを行った結果、正解すると理解度は一つ上げ、不正解すると理解度レベルを一つ下げる。プログラム的には、個人情報テーブルの最新記憶度kを
正解時 → k=k
不正解時 → k=k
と書き換える。なお、初期状態をk=3のような中間のレベルにすることもできる。この場合は、最初に不正解だと、より短い時間間隔で学習することになる。
【0032】
正解が続けば学習間隔は長くなり、記憶が定着しているかの判定になる。この例では最終的には、k=(最高記憶度)で正解すると、その課題に対しては学習完了となる(記憶が定着したと判定)。このとき、個人情報テーブルからその課題に関する情報を削除する。なお、同時に削除する内容をログファイルに書き出しておけば、その個人が何を学習してきたかが履歴として記録できる。さらに、この情報を分析することによって、学習間隔時間管理テーブルの学習間隔の最適化を再検討する材料となる。
【0033】
図6は、上記の処理をフローチャートにまとめたものである。なおフローチャート中、sは定着期間と学習期間の分かれ目(境目)となる記憶度(学習間隔時間管理テーブルへの添字)である。k=1のときに行われたテストで正解すれば、この課題に対しては記憶定着と判断して、個人情報テーブルからこの課題に関しては削除される。ループのサイクル(学習から次の学習期間)は、記憶度kがポイントする学習間隔時間管理テーブルのtによって決まる。
【0034】
【実施例】
本発明の実施例をいくつかの観点からみていく。本発明は暗記学習でも、また理解力をつける学習に対しても応用できる。暗記学習の場合には、同じ問題を繰り返し出題することになる。たとえば、「writeの意味および過去形、過去分詞形を答えよ」という問題では、「意味は“書く”、“著述する”、“手紙を書く”のいずれか、過去形はwrote、過去分詞形はwritten」と答えれば正解。このような暗記学習は通常難易度としてはやさしい部類にはいる。図2の忘却曲線で示したように(A)の領域はすぐに忘れてしまうため、この期間で繰り返し学習が必要となる。
【0035】
一方、(B)の領域まで憶えている内容については、それ以降も忘れにくいという特徴をもっている。すなわち本発明の学習法における、学習期間と定着期間の分岐点は(A)と(B)の境目ということになる。暗記ものは憶えやすく忘れやすいという特徴をもっているから、
t=半年、1カ月、10日、1日、5時間、1時間、30分、10分
といったスパンでの学習間隔が考えられる。このとき、境目(図6のs)は1日が妥当である。
【0036】
同じ暗記でも、例文となると事情が異なる。たとえば、「息子は冬休みには帰省しないと手紙に書いてきた」の問に対して、“My son has written to me to say that he will not be home for the winter holidays.”と答えれば正解。もちろん、これ以外の答えも可能である。いずれにしろ、この解を丸暗記する場合には、単語の暗記に比べてやや難しい。しかも、定着するまでの期間も長くなる。そこで、このような課題に対しては、
t=半年、3カ月、1カ月、10日、1日、5時間、1時間、30分、
20分、10分、5分
と、きめ細かな設定が有効になる。この場合の境目sも1日が妥当であろう。
【0037】
一方、理解をして記憶したものに対しては、理解するまでは時間が掛かるが、いったん理解してしまえば、忘れにくいという特徴がある。このような分野に関しは、類型の問題を複数用意し、さまざまな角度からの問題に対して答できるかを試みる必要がある。たとえば、ピタゴラスの定理を理解し、なおかつ応用できるかという課題に対しては、以下のような複数の問題を用意しておく。
【0038】
(1)ピタゴラスの定理を証明せよ。
(2)三角形ABCにおいて∠BAC=90゜、AB=3、AC=4のとき、辺BCの長さを求めよ。
(3)三角形ABCにおいて∠BAC=90゜、AB=3、BC=5のとき、辺ACの長さを求めよ。
(4)AB=ACの二等辺三角形ABCにおいて、頂点Aから辺BCへの垂線AHとしたとき、線分AHの長さを求めよ。ただし、点Hは辺BC上、またAB=5、BC=8とする。
(5))三角形ABCにおいて∠BAC=90゜、AB=a、AC=b、BC=c4としたとき、a、b、cの関係を求めよ。
【0039】
テストでは、上記のどの問題を出すかはランダムであるが、いずれの問題もピタゴラスの定理を使用または理解していれば解ける。ピタゴラスの定理そのものを知っていても、それを応用できない場合には、定理そのものの理解度は低いものと判断することになる。このような場合、
t=1年、半年、1カ月、10日、5日、2日、1日、5時間、1時間
とし、境目sを5日におく。上記の問題は割合やさしいが、一般に応用問題は難しく、また解くのに時間が掛かるために、学習者の疲労度なども考慮すると、間隔を短くし過ぎても、効果は薄い。しかもいったん理解していれば、理解を伴った記憶は忘れにくいという特性から、定着期間のテストは間隔を長くしたほうが効果的な判断が下せる。
【0040】
以上は、本発明を具体的に応用する場合の例であるが、上記の学習間隔はかなずしも固定する必要はなく、実施結果得られたログファイルを分析することによって、再設定することも可能である。
【0041】
上記の例でみてきたように、一つの課題に対し複数の問題をもつことがある。学習塾などで講師がペーパーテストをし、その結果を手入力する場合には、そのつど講師が課題と問題を自分の裁量で管理することができる。しかし、LANやパソコン通信、あるいはインターネットを使った場合には、パソコン(広くはコンピュータ)で問題を管理し、なおかつ課題と関連づけておかなければならない。以下、この点に関して簡単に触れておく。
【0042】
図7にパソコンを使った場合の出題と答の手順をテーブルを中心にみたところである。なお図では、新たに問題を保存してあるファイル・課題管理データベース(DB)を導入している。
【0043】
まず、個人情報テーブルの中から学習時間に達している課題を見つけ、それに対応する問題を課題管理DBから見つけ出し、学習者の端末へ送る。学習者は画面に問題を表示して問題を解き、答案内容をサーバー側に送る。サーバー側では自動的にまたは講師によって採点をつけ、その結果を個人情報テーブルにフィードバックさせる。すなわちこの結果、個人情報テーブルの最新テスト日時と最新記憶度が書き換えられる。この最新テスト日時と最新記憶度によって、次回の学習(テスト)日時が自動的に決まる。
【0044】
図7では、サーバー側と学習者側という表現にしてあるが、LANの場合にはサーバーとクライアントであり、1台のパソコン(学習者が所有)の場合にはサーバー側はプログラムによる処理、学習側はキーボードあるいはマウスの操作になる。自動採点の場合は、○×式、穴埋め式、番号選択などの答が曖昧にならない問題形式が必要となる。また先生あるいは講師が採点する場合には、採点結果は手入力となる。この場合には、英語のヒアリングやリーディングなどの発音に関する学習(テスト)も簡単に行える。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、学習間隔時間を記憶度に応じて自動管理できることである。しかも、学習間隔時間を管理することにより課題一つ一つに対して管理するために、確実に個々の課題が記憶していける。とくに学習効率という点においては優れている。なぜなら、単に憶えるまでだらだらと何度も繰り返しテストする従来的の方法と異なり、テスト結果をフィードバックすることによって、憶えの悪いものは学習間隔が短く、憶えの良いものは学習間隔が長くなるように自動設定されるため、効率よくまた無理のない学習が可能となっているからである。
【0046】
学習間隔時間の管理は学習する難易度や課題や分野ごとに設定ができるために、従来の忘却曲線を活用する場合のようなワンパターンの変化のみを利用することはない。またこの柔軟性によって、暗記学習、応用力学習、理解度学習などの異なる学習にも対応できる。さらに、個人情報テーブルによって個人個人の学習進捗が管理されているから、学習者一人一人の学習度合いに応じて無理のない学習が可能となる。
【0047】
また、本発明の方法では、学習間隔時間の管理は絶対的時間であるために、学習者がどれだけの間、記憶を保持していかがテスト結果からわかり、個人の学習特性を絶対時間で判断することができる。また、学習期間と定着期間をあえて分けて忘却曲線を設定するという面倒な処理をしなくても、結果のフィードバックだけで学習期間の学習間隔と定着期間の学習間隔が、教える側、教わる側がともに意識せずに、設定・管理される。したがって本発明は、記憶の強化が自然と身につく学習方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来技術におけるプログラミングインストラクション(PI)の学習内容を示した説明図である。
【図2】 従来技術における忘却曲線の説明図である。
【図3】 本発明の実施の形態における本発明の個人情報テーブルの構成図である。
【図4】 本発明の実施の形態における本発明の学習間隔時間管理テーブルの構成図である。
【図5】 本発明の実施の形態における、学習(テスト)結果と学習間隔時間の設定の説明図である。
【図6】 本発明の実施の形態における、学習方法の処理のフローチャートである。
【図7】 本発明の実施例における、課題管理データベースも含めてコンピュータ上で処理するときの説明図である。

Claims (2)

  1. コンピュータが、
    学習者固有の情報として設定される、課題に対する次の学習までの時間間隔である反復学習間隔時間を記憶し、
    該課題に関する1以上の設問を選択出題して解答を求め、
    該設問に対する解答を正答と判断すると、前記反復学習間隔時間を長くなるように変更して記憶し、
    正答でないと判断すると、前記反復学習間隔時間を短くなるように変更して記憶することにより、
    次の学習までの時間間隔を管理する手順を備えたコンピュータを用いるコンピュータ反復学習方法において、
    該コンピュータが、
    (1)実際の学習に際して、前記反復学習間隔時間よりも長い時間間隔で再学習が行われた場合にその解答を正答と判断すると、該長い時間間隔を基準にしてより長くなるように、前記反復学習間隔時間を変更して記憶する手順、及び
    (2)実際の学習に際して、前記反復学習間隔時間よりも短い時間間隔で再学習が行われた場合にその解答が正答でないと判断すると、該短い時間間隔を基準にしてより短くなるように、前記反復学習間隔時間を変更して記憶する手順、及び
    (3)学習期間中に正答でないと判断した設問があらかじめ設定されている5〜9の個数集積したことを認識すると正答でないと判断した設問の課題に対する反復学習間隔時間を調整することなく、一時的な繰り返し学習で短期記憶を完成させるために該5〜9個の設問をまとめて繰り返し出題する手順
    を備えることを特徴とするコンピュータ反復学習方法。
  2. コンピュータが、
    学習者固有の情報として設定される、課題に対する次の学習までの時間間隔である反復学習間隔時間を記憶し、
    該課題に関する1以上の設問を選択出題して解答を求め、
    該設問に対する解答を正答と判断すると、前記反復学習間隔時間を長くなるように変更して記憶し、
    正答でないと判断すると、前記反復学習間隔時間を短くなるように変更して記憶することにより、
    次の学習までの時間間隔を管理する手順を備えたコンピュータを用いるコンピュータ反復学習方法において、
    該コンピュータに、
    (1)実際の学習に際して、前記反復学習間隔時間よりも長い時間間隔で再学習が行われた場合にその解答を正答と判断すると、該長い時間間隔を基準にしてより長くなるように、前記反復学習間隔時間を変更して記憶する手順、及び
    (2)実際の学習に際して、前記反復学習間隔時間よりも短い時間間隔で再学習が行われた場合にその解答が正答でないと判断すると、該短い時間間隔を基準にしてより短くなるように、前記反復学習間隔時間を変更して記憶する手順、及び
    (3)学習期間中に正答でないと判断した設問があらかじめ設定されている5〜9の個数集積したことを認識すると正答でないと判断した設問の課題に対する反復学習間隔時間を調整することなく、一時的な繰り返し学習で短期記憶を完成させるために該5〜9個の設問をまとめて繰り返し出題する手順
    を備えた反復学習間隔時間を管理する手順を実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータを用いるコンピュータ反復学習用記録媒体。
JP12109498A 1997-04-30 1998-04-30 コンピュータ反復学習方法 Expired - Lifetime JP4386975B2 (ja)

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