JP5089106B2 - ガラス積層体 - Google Patents
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Description
ガラス材料も例外ではなく、廃車から取り外されたガラス窓は、粉砕、融解等の工程を経てガラス原料へとリサイクルされるルートが確立されている。しかしながら、合わせガラス等のガラス積層体の場合、事前にガラス以外の素材を除去する必要があり、リサイクルの阻害要因となっている。
特に、現行の中間膜に用いられている熱可塑性樹脂フィルムを除去するには、有機溶剤による加熱溶解が必要であり、作業環境面においても解決すべき問題点は多い。なお、特許文献1および特許文献2に記載のガラス用接着剤の場合も有機溶剤あるいは強酸・強アルカリ条件が必要となるため、上述の課題を解決するものではなかった。
かかる課題の解決が期待できる方法として、安価で安全な水による除去が検討されており、そのような処理が可能な素材として水溶性樹脂が注目されている。中でも、水溶性に優れ、かつ幅広い素材に対して接着剤として使用されているポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)系樹脂は、かかる用途に対して望ましい材料であるが、従来公知のPVA系樹脂はガラスに対しては十分な接着性がなく、かかる用途に適用できるものではなかった。
なお、ガラスに対する良好な接着性を有する変性PVAとして、シラノール基を側鎖に有するPVA系樹脂が知られているが、接着性があまりにも良すぎるため、ガラス表面の接着剤を水、温水あるいは熱水で洗い流そうとしても困難であり、本用途の要求を満たすものではなかった。
すなわち、ガラス表面に対して優れた接着性を有し、さらに廃棄時あるいは再利用時に水洗等によって容易に溶解除去できるガラス用接着剤が望まれていた。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下、かかる(i)の方法について説明する。
(i)の方法は、ビニルエステル系モノマーと上記一般式(2)で示される化合物とを共重合したのちケン化して、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂を製造する方法である。
かかる上記一般式(2)で示される化合物において、R1〜R3、R4〜R6及びXは上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子またはR9−CO−(式中、R9は、アルキル基、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、かかるアルキル基は共重合反応性やそれに続く工程において悪影響を及ぼさない範囲で、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい)である。
また、特開平10−212264等に記載の1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを3,4−ジアセトキシ−1−ブテンに変換する方法や、WO00/24702に記載の1,3−ブタジエンからモノエポキシドを経て3,4−ジアセトキシブテンを得る方法等、公知の技術を利用して得ることも出来る。
共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用されるが、一般式(2)で示される化合物に由来する1,2−ジオール構造単位がポリビニルエステル系ポリマーの分子鎖中に均一に分布させられる点から滴下重合が好ましく、特には前述の酢酸ビニルとの反応性比を用いたHANNA法に基づく重合方法が好ましい。
なお、滴下重合とは、共重合の際に反応系内のモノマー比率を一定範囲に保つために、いずれか一方あるいは両方のモノマーを連続的あるいは非連続的に滴下しながら重合させるものであり、特に、両モノマーの反応性比に基づいて計算されたモノマー消費速度に見合う速度でモノマー滴下を行い、系内のモノマー比率をほぼ一定に保つようにしたのがHANNA法による滴下重合である。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により30℃〜沸点程度で行われ、より具体的には、35〜150℃、好ましくは40〜75℃の範囲で行われる。
また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
かかる不飽和モノマーとしては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、アセトアセチル基含有モノマー等が挙げられる。
又、重合温度を100℃以上にすることにより、PVA主鎖中に1,2−ジオール結合を1.6〜3.5モル%程度導入したものを使用することが可能である。
また、同様に各種添加剤を配合することも可能であり、かかる添加剤としては、例えば、反応性希釈剤、離型剤、帯電防止剤、充填剤、繊維状補強材、シランカップリング剤、染料、顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等の公知の添加剤を挙げることができる。
なお、接着層の強度、剛度を向上させるためには充填剤の配合が効果的であり、かかる充填剤としてはカオリンなどのクレー類、非晶質シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカなどのシリカ類、タルク、炭酸カルシウムなどの無機系充填剤、プラスチックピグメントなどの有機系充填剤などを挙げることができる。また、かかる充填剤の配合量はPVA系樹脂100重量部に対して0.5〜50重量部の範囲から選択される。
本発明のガラス用接着剤に用いられるPVA系樹脂は水溶性に優れるため、これを水溶液とした水性の液状接着剤として使用することが可能である。なお、かかる水性液状接着剤は、作業時の安全性、取扱い性に優れ、さらに本発明で用いられるPVA系樹脂は側鎖の1,2−ジオール基の存在によって、結晶性が低いため、これを含有する水性液状接着剤は経時の粘度安定性に優れるという特徴をもつものである。
また、その他の添加剤として、水性液として貯蔵する場合の安定性、および使用する場合の作業性等の向上を目的として、消泡剤、防錆剤、防黴剤、防腐剤、レベリング剤等を配合してもよい。
かかる塗工量としては、通常は乾燥重量で20〜2500g/m2であり、さらには30〜2300g/m2、特には50〜2000g/m2であることが好ましく、かかる塗工量が少なすぎると充分な接着強度が得られず、逆に多すぎると接着剤としての役割を終えた後の洗浄による除去が困難となる場合があるため好ましくない。
溶液流延製膜法とは、本発明で用いるPVA系樹脂を含有する水溶液を金属ロール等の支持体上に流延し、加熱乾燥することで膜状に成形する方法であり、その際の水溶液の濃度、流延量は所望するフィルム状接着剤の膜厚に応じて選定すればよい。
また、製膜性を向上させる目的で、上述の水性液状接着剤の添加剤として例示した各種有機溶剤や添加剤を配合することができる。また、得られたフィルムを巻取る際のブロッキング防止の為に、公知のブロッキング防止剤を添加することもできる。
また、フィルム状接着剤の表面状態は保存時等のフィルム同士の密着を防止したり、被着面と重ね合わせた後の貼りなおしを容易にするため、凹凸のあるマット処理あるいはエンボス処理が施されたものも好ましい。
かかる真空加圧加熱ラミネーターとは、例えば特許3043725号に記載された装置であり、基材を平箱に入れて急速に真空引きすると同時に加熱加圧し、30秒〜120秒程度で急速に貼合接着、多層化できる装置である。かかる装置は現在パソコンのCPU(MPU)などのビルドアップ基板製造に使用されており、比較的小型で小回りが効く装置であるため、例えば街のガラス屋さんやガラス問屋において、予め切り出した色々な寸法のガラスの接着貼合わせをするのにとても有効である。
かかる加熱加圧による接着時の条件は特に限定されないが、通常は60〜180℃の温度範囲、2hPa以下の真空度で実施される。
なお、かかる接着方法を用いる場合の接着剤中の含水率は、真空ポンプ側の負荷の点からより少ないほうが好ましいが、通常5%以内であれば特に問題なく接着させることができる。
工業的には、ガラス表面とフィルム状接着剤表面のいずれかを水で濡らして接着するのが好ましく、例えば、ガラス基材とフィルム状接着剤の間に水を満たした後に、プレスや加圧ローラーなどの加圧により水を搾り出す、いわゆるウエット&スクイーズラミネートなどの方法を用いることができる。なお、かかる方法における接着貼り合わせは常温でも可能であるが、工程短縮などのため、適宜加熱して急速に乾燥させてもよい。
かかる接着剤の水洗除去は、通常は10℃以上の水、望ましくは40℃以上の温水、80℃以上の熱水で行うことが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、蒸気によって接着層を膨潤させたのち、これを洗浄除去する方法や、水、温水、あるいは熱水中にガラス積層体を浸漬し、さらに超音波振動を加える方法などを採用することも可能である。
なお、例中「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
(1)PVA系樹脂の作製
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000g、メタノールg、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン60g(3モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.0036モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、重合開始3時間後にアゾビスイソブチロニトリルを0.002モル%追加し、酢酸ビニルの重合率が40%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液を濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して5ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加し、濾別、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.0モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準して分析を行ったところ、2400であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ3モル%であった。なお、NMR測定には日本ブルカー社製「AVANCE DPX400」を用いた。
(1)で得られたPVA系樹脂の10%水溶液をPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させ、膜厚110μmのフィルム状接着剤を得た。
フィルム状接着剤を5cm×5cmに裁断し、その片面を水で濡らし、湿潤面をガラス板に密着させ、ヒートシーラーにて95℃、2kg/cm2、3秒間の条件で圧着し、さらに95℃の調整した熱風乾燥機中で、1時間乾燥させ、ガラス表面に接着剤層を形成した。
<接着性評価>
接着剤層とガラス層の界面にカッターナイフを入れ、その接着状況を以下の通り評価した。
○・・・層間にカッターナイフが入らない
×・・・層間にカッターナイフが容易に入り、剥離できる
<耐光性評価>
23℃、50%RHの雰囲気下、30cmの距離から100Wの白熱電球と30Wの蛍光灯を試験片の接着剤層側から6ヶ月照射し、そのYI値を色差計(日本分光社製「SZ−Σ90」)にて測定した。
<温水除去性評価>
試験片を55℃の温水中に1時間浸漬し、接着剤層を指でこすり、以下の通り評価した。
○・・・除去可能
×・・・除去不可能
(1)PVA系樹脂の作製
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000g、メタノールg、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン120g(6モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.003モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が72%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液を濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して7ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加し、濾別、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.4モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準して分析を行ったところ、1450であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ5.9モル%であった。
得られたPVA系樹脂を用い、実施例1と同様に試験片を作製、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1においてPVA系樹脂として、重合度2400、ケン化度99.1モル%の未変性PVAを用いた以外は実施例1と同様に試験片を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1においてPVA系樹脂として、重合度1400、ケン化度87.5モル%の未変性PVAを用いた以外は実施例1と同様に試験片を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1で得られたフィルム状接着剤を5cm×5cmに裁断し、その片面を水で濡らし、湿潤面をPETフィルムに密着させ、ヒートシーラーにて95℃、2kg/cm2、3秒間の条件で圧着し、さらに95℃の調整した熱風乾燥機中で、1時間乾燥させ、PETフィルム表面に接着剤層を形成し、試験片として実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
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