JP6418924B2 - 塗膜および塗膜形成剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂という)とポリシリケートの塗膜の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、ボイル後でもガスバリア性に優れる塗膜の製造方法に関するものである。
PVA系樹脂は、乾燥状態ではガスバリア性が高く、バリア材として用いられているが、湿分や水分の存在下では急激にバリア性が低下するという欠点があった。
このため、PVA系樹脂を湿分や水分の存在下でバリア材として使用する場合には、耐湿性、耐水性を付与するために架橋剤によって架橋したり、架橋高分子と相互貫通網目構造を形成させて用いられてきた。
例えば、PVA系樹脂とシラン化合物を用いたゾルーゲル法によって、相互貫通網目構造が形成されたバリア性の塗膜および積層体が提案されている(例えば、特許文献1)。
なお、ゾル−ゲル法ではシラン化合物として、一般的にシランアルコキシドが使用され、その溶媒としては有機溶剤(例えばアルコール類)が使用されるが、一般的にPVA系樹脂はアルコール類には溶けにくいという問題がある。そこで、シランアルコキシドとともにアルコールに対する溶解性の高い、特定の構造を有するPVA系樹脂を用いた塗膜形成剤が開示されている(例えば、特許文献2)。
特開平04−345841号公報 特開2009−221372号公報
特許文献2の塗膜形成剤から得られた塗膜は、耐湿、耐水性に優れたものであるが、さらに過酷な条件であるボイル処理を行った場合には、ガスバリア性が低下するという問題があった。
本発明は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、ポリシリケートとPVAを含有する塗膜形成剤から得られる塗膜の製造方法であって、下記の(I)〜(III)の工程を有することを特徴とする塗膜の製造方法から得られる塗膜により、本発明の課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
(I)シランアルコキシドを硝酸及び水の存在下で加水分解してポリシリケートを得る工程
(II)前記ポリシリケート(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を混合し、塗膜形成剤を得る工程
(III)前記塗膜形成剤を基材に塗布し、乾燥して、ポリシリケート構造中において下記式(1)で表される構造単位を40モル%以上含有する塗膜を得る工程
本発明の製造方法により得られた塗膜は、ボイル処理後でも優れたガスバリア性を有するため、食品包装用途などに好適に用いることができる。
本発明の製造方法により得られた塗膜は、ポリシリケート構造中に一般式(1)で表される構造が多いため、ポリシリケートの分子構造が緻密な網目状となり、酸素分子の透過を防御していると推測される。
Figure 0006418924
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
本発明は、ポリシリケート(A)とPVA系樹脂(B)を含有する塗膜形成剤から得られた塗膜の製造方法であって、下記の(I)〜(III)の工程を有することを特徴とする塗膜の製造方法である。
(I)シランアルコキシドを硝酸及び水の存在下で加水分解してポリシリケートを得る工程
(II)前記ポリシリケート(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を混合し、塗膜形成剤を得る工程
(III)前記塗膜形成剤を基材に塗布し、乾燥して、ポリシリケート構造中において下記式(1)で表される構造単位を40モル%以上含有する塗膜を得る工程
以下、塗膜の製造方法に関して、塗膜、ポリシリケート、PVA系樹脂、塗膜形成剤について順に説明していく。
<塗膜>
本発明の塗膜は、下記式(1)で表される構造単位を40モル%以上含有するものである。かかる構造単位の含有量は、好ましくは50モル%以上である。上限値としては100モル%が最も好ましいが、実際には80モル%程度である。かかる含有量が少なすぎると、本発明の効果が得られにくくなる。
Figure 0006418924
(式中の*はC又はSiを示す)
下記一般式(1)以外の構造単位としては、下記一般式(2)および(3)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006418924
(式中の*はC又はSiを示す)
Figure 0006418924
(式中の*はC又はSiを示す)
一般式(2)の含有量は、通常20〜70モル%、好ましくは20〜60モル%、特に好ましくは30〜50モル%である。かかる量が多すぎると酸素バリア性能が低くなる傾向があり、少なすぎると柔軟性が低下する傾向がある。
一般式(3)の含有量は、通常0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%、特に好ましくは0〜20モル%である。かかる量が多すぎると酸素バリア性能が低くなる傾向がある。
かかる構造単位の含有量は固体NMR測定(Dipolar Decoupling法)で求めることができる。
一般式(1)の構造単位のSiは−115ppmに検出される。また一般式(2)のSiは−100ppm、一般式(3)のSiは−90ppmに検出される。
これらのピークの面積比により、各構造単位の含有量を算出することができる。
次は、ポリシリケート(A)について説明する。
<ポリシリケート(A)>
本発明で用いるポリシリケート(A)は、シランアルコキシドを加水分解し、生成した加水分解物が重縮合反応をすることにより、得られるものである。シランアルコキシドを加水分解すると、アルコキシ基が水酸基に置換され、かかる水酸基同士が反応することによりポリシリケートが生成する。
本発明のポリシリケート(A)のケイ素原子は下記一般式(4)で表されるような様々な置換基を有するものが混在していると推測される。
Figure 0006418924
本発明のポリシリケート(A)は、シランアルコキシドを加水分解及び重縮合し得られるものであるが、加水分解及び重縮合の方法については公知の方法が用いられる。一般的にはシランアルコキシドを溶媒に溶解し、触媒および水を用いて、攪拌しながら行う。用いられるシランアルコキシドのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基等が挙げられ、好ましくは、エトキシ基である。
本発明で用いられるシランアルコキシドは、アルコキシ基が4個結合したもので、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。中でも反応性の制御が比較的容易である点から、テトラメトキシシランが最も好ましい。
尚、本発明のシランアルコキシドは単独で用いることも可能であるが、その他のシランアルコキシドを2種以上組み合わせて用いてもよい。
その他のシランアルコキシドとしては、ビニルジメチルエトキシシランなどのアルコキシ基が1個結合したアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシ基が2個結合したアルコキシシラン;トリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのアルコキシ基が3個結合したアルコキシシランが挙げられる。
溶媒としては、通常メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜4の脂肪族低級アルコール類が用いられ、好ましくは、メタノール、エタノールである。
シランアルコキシドの濃度は、溶媒100重量部に対して通常30〜1500重量部であり、好ましくは50〜1000重量部である。かかる量が少なすぎた場合は加水分解反応及び重縮合が進行し難くなる傾向があり、多すぎた場合は加水分解及び重縮合反応速度が大きくなり、得られる塗膜の分子構造が3次元化し、低密度となる傾向がある。
触媒としては、酸触媒、塩基触媒が挙げられ、酸触媒としては、有機酸触媒と無機酸触媒、塩基触媒としては、アミン触媒のような有機塩基触媒と無機塩基触媒が挙げられる。通常、無機酸触媒としては、塩酸、フッ酸等、硫酸、硝酸等が挙げられ、有機酸触媒としては、酢酸、蟻酸、クエン酸、シュウ酸等が挙げられる。また、アミン触媒としてはN,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等が挙げられ、無機塩基触媒としては、水酸化ナトリウム等が挙げられる。緻密な構造が得られる点から好ましくは無機酸触媒であり、より好ましくは硝酸、塩酸である。
かかる触媒の量は、全シランアルコキシドのアルコキシ基の総モル量に対して通常0.001〜0.3モル%、好ましくは0.002〜0.2モル%、特に好ましくは0.003〜0.1モル%であるである。かかる量が少なすぎた場合、加水分解及び重縮合反応が進行しにくくなる傾向があり、多すぎた場合、加水分解及び重縮合反応速度が大きくなり得られる塗膜においてポーラスな構造(3次元ネットワーク化して密度の低い構造)が形成されやすく、塗膜のガスバリア性が低下する傾向がある。
また、水の量は金属アルコキシドに対して通常0.8〜2モル%、好ましくは1〜1.5モル%である。かかる量が少なすぎた場合、加水分解及び重縮合反応が進行しにくくなり、多すぎた場合、加水分解及び重縮合反応速度が大きくなり得られる塗膜においてポーラスな構造が形成されやすく、塗膜のガスバリア性に劣る傾向がある。
触媒と水をシランアルコキシドの溶液に配合する方法は特に限定されないが、触媒と水を混合した混合物を一括して配合する方法、水を配合した後に触媒を配合する方法、触媒を配合した後に水を配合する方法が挙げられる。中でも、触媒と水を混同した混合物を一括して配合する方法が好ましい。
シランアルコキシドの加水分解反応及び重縮合を行う際の温度は通常10〜40℃で、より好ましくは10〜30℃で、更に好ましくは10〜20℃ある。かかる温度が高すぎた場合、加水分解及び重縮合反応が活発に起こりすぎて、同時に生成する金属アルコキシドの加水分解物の縮合物の構造が環状や分岐状になり、分子構造が複雑になる傾向がある。そのため、塗膜にした際に、分子間に隙間が生じやすくなり、結果として塗膜のガスバリア性が低下する傾向がある。また、かかる温度が低すぎた場合は、反応が進行しにくくなるという傾向がある。
また、反応時間はスケールにより異なるが、通常0.01〜50時間、好ましくは0.1〜10時間、特に好ましくは、0.5〜2時間である。かかる時間が長すぎた場合、高粘度化あるいはゲル化し塗工液の塗工性が低下する傾向があり、短すぎた場合、反応が不十分となり塗膜のガスバリア性が低下する傾向がある。
このようにしてポリシリケート(A)の溶液が得られる。本発明においてはかかる溶液をそのまま用いることが好ましいが、場合によっては脱液し、得られたポリシリケート(A)を後述するPVA系樹脂(B)溶液に配合したり、脱液したものを再度溶媒に溶解して用いてもよい。
次は、PVA系樹脂(B)について説明する。
<PVA系樹脂(B)>
本発明のPVA系樹脂(B)は、ビニルエステル系単量体をケン化して得られるものであり、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位を有するものである。
本発明で用いられるPVA系樹脂(B)のケン化度は、通常、80〜100モル%、好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎると塗膜のバリア性が低下する傾向がある。
また、かかるPVA系樹脂(B)の4重量%水溶液の粘度としては2.5〜100mPa・s(20℃)が好ましく、更には3〜70mPa・s(20℃)、特には5〜60mPa・s(20℃)が好ましい。平均重合度は通常、200〜3000、好ましくは400〜1000、特に好ましくは600〜900である。該粘度及び重合度が低すぎると塗膜にクラックが生じやすくなる傾向があり、高すぎると塗工時の作業性が低下する、またポリシリケート(A)とPVA系樹脂(B)を混合した際に析出する傾向がある。
尚、上記ケン化度、粘度及び平均重合度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
PVA系樹脂(B)はビニルエステル系単量体を重合し、更にそれをケン化して製造される。ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、好ましくは脂肪族ビニルエステルである。また、ビニルエステル系単量体の炭素数は通常、3〜20、好ましくは4〜10、特に好ましくは4〜7である。入手が容易である点から、特に好ましくは酢酸ビニルが用いられる。これらは単独で用いても、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
PVA系樹脂(B)としては、変性されたPVAを用いることもでき、例えば、アセトアセチル化PVA、オキシアルキレン基含有PVA、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVA、カルボン酸変性PVA等が挙げられる。中でもアルコール溶解性の点から、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVAが特に好ましい。
また、変性ポリビニルアルコールは、ビニルエステル系モノマーと他の不飽和単量体との重合体をケン化して製造されたり、ポリビニルアルコールを後変性したりして製造される。
上記で他の不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
また、後変性の方法としては、PVAをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
また、中でもPVA系樹脂(B)として、側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂を用いることが好ましく、かかる側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂は、例えば、(ア)ビニルエステル系モノマーと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)ビニルエステル系モノマーとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)ビニルエステル系モノマーと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)ビニルエステル系モノマーとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
本発明では、上記の側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂が好ましく用いられる。かかるPVA系樹脂(B)は、水とアルコールの混合溶媒であっても、溶解するため好ましい。
また、本発明で使用されるポリビニルアルコール系樹脂は、2種以上のPVA系樹脂のブレンド物であってもよく2種以上のPVA系樹脂としては、構造単位が異なるもの、ケン化度が異なるもの、分子量が異なるものなどを挙げることができる。
<塗膜形成剤>
本発明の塗膜形成剤は、通常、あらかじめ調整した上記のポリシリケートの溶液と、PVA系樹脂溶液を混合することにより得られる。
PVA系樹脂溶液の溶媒は通常水であるが、本願発明の効果を損なわない範囲(例えば25重量%以下)にてメタノール、エタノール等炭素数1〜4の低級アルコールや、アセトン等の有機溶媒を含有していてもよい。
本発明の塗膜形成剤の総量に対する、ポリシリケート(A)およびPVA系樹脂(B)の量((A)+(B)の量)は、仕込み量に換算して通常1〜40重量%、好ましくは5〜40重量%である。かかる値が大きすぎた場合、粘度が高すぎて塗工時の厚み制御性が低下する傾向があり、小さすぎた場合、溶媒が多量となり乾燥に時間がかかる傾向がある。
また、ポリシリケート(A)とPVA系樹脂(B)の配合比は、通常(A)/(B)が9/1〜1/9、好ましくは8/2〜3/7、特に好ましくは7/3〜5/5ある。(A)の配合比が多すぎると柔軟性が低下する傾向があり、少なすぎるとボイル処理後のガスバリア性が低下する傾向がある。
本発明の塗膜形成剤において、(A)成分と(B)成分を混合した後の攪拌時間は、スケールにより異なるが通常0.5時間〜3時間、好ましくは1時間〜2時間である。かかる時間が短すぎた場合は塗膜形成剤の均一性が低下する傾向があり、長すぎた場合は生産効率が低下する傾向がある。
本発明の塗膜形成剤には、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、着色剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤、滑剤(例えば、シリカ系微粉末、アルミナ系微粉末などの無機滑剤、ポリエチレン系微粉末、アクリル系微粉末などの有機滑剤など)、炭化水素系重合体(スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、クマロンインデン樹脂などのクマロン樹脂、フェノール樹脂、ロジン又はその誘導体やそれらの水添樹脂など)、ワックス類(高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸又はその塩、高級脂肪酸エステル、鉱物系、植物系などの天然ワックス、ポリエチレンなどの合成ワックスなど)などを添加してもよい。これらの添加剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
<塗膜の形成方法>
本発明の塗膜は、塗膜形成剤を基材上に塗布した後、溶媒を除去することにより得られる。
また、上記の一般式(1)の構造単位を40モル%以上にする方法としては、以下のものが挙げられる。
(i)塗膜形成剤を塗工し、熱風や熱ロールをあてて熱処理を行う方法
(ii)塗膜形成剤を塗工し、マイクロ波照射を行う方法
などが挙げられるが、一般式(1)の構造単位が生成しやすいという点で、(i)の方法が好ましい。
以下に(i)塗膜形成剤を塗工し、溶媒を除去した後に熱風や熱ロールをあてて熱処理を行う方法について詳述するが、本発明の塗膜はこの方法に限定されるものではない。
(i)の方法において、塗膜形成剤を塗工する基材としては、通常、熱可塑性樹脂で構成されたフィルムであり、好ましくはポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびナイロン系樹脂であり、特に好ましくはポリエステル系樹脂である。
これらの樹脂は、単独又は二種以上組み合わせてもよい。また、基材は単層であってもよく、複数の層で構成された積層フィルムおよびそれらの延伸フィルムであってもよい。
なお、基材の表面には、コロナ放電やグロー放電の放電処理、クロム酸処理などの酸処理、焔処理などの表面処理を施してもよい。
基材の厚みは、包装適性、機械的強度、可撓性などを考慮して適宜選択でき、通常0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μmである。
また、塗膜形成剤の塗工方法としては、通常、公知の方法、例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ノズルコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、カーテンコーティング法、フローコーティング法、スクリーン印刷、グラビア印刷、曲面印刷などの各種印刷法、これらを組み合わせた方法などが採用できる。
塗工後の塗膜の厚みは、通常0.05〜20μm、好ましくは0.1〜15μmである。かかる厚みが高すぎた場合、塗膜のクラックが発生し易くなる。
(i)の方法の場合の熱処理の温度は、通常160〜230℃、好ましくは170〜220℃、特に好ましくは、175〜210℃である。高すぎるとフィルムが着色する傾向があり、低すぎると酸素バリア性能が低下する、また耐ボイル性が発現しない傾向がある。
また、熱処理の時間は、通常0.5〜60分、好ましくは1〜40分、特に好ましくは3〜20分である。かかる時間が長すぎるとフィルムが着色する傾向があり、短すぎると酸素バリア性能が低下する、また耐ボイル性が発現しない傾向にある。
また、塗膜形成剤を塗工した後に乾燥工程を入れてもよく、乾燥方法としては、常温自然乾燥や加熱乾燥など公知の方法を用いればよい。公知文献には、150℃で乾燥しているものであるが、乾燥工程は溶媒を除去することを目的としているものであり、溶媒が蒸発する温度以上であればよく、通常は150℃以下で行われているものである。乾燥時間は通常0.5秒〜20時間、好ましくは1分〜15時間である。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
<ポリシリケート(A)>
テトラエトキシシラン(信越化学社製『KBE−04』)12部、エタノール12部、2Nの硝酸0.8部、水0.8部を配合し、20℃で1時間撹拌し、ポリシリケート(A)の47%溶液を得た。
<PVA系樹脂(B1)の作製>
まず、酢酸ビニル1400部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン224部(8モル%対仕込み酢酸ビニル)、メタノール210部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15モル%(対仕込み酢酸ビニル)を準備した。
次いで、還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応缶に、メタノールとAIBNの全量、および酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの50%を投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの残部(50%)を7時間かけて滴下し、酢酸ビニルの重合率が90%となった時点でm−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、上記メタノール溶液を濃度50%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して4ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。粘度上昇を確認後に水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加し、濾別、メタノールで充分洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂(B1)を得た。
得られたPVA系樹脂(B1)のケン化度は、残存酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ99.2モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ600であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ8モル%であった。
<PVA系樹脂(B2)の作製>
まず、酢酸ビニル1400部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン165部(8モル%対仕込み酢酸ビニル)、メタノール168部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05モル%(対仕込み酢酸ビニル)を準備した。
次いで、還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応缶に、メタノールとAIBNの全量、および酢酸ビニル全量と3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの80%を投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの残部(20%)を7時間かけて滴下し、酢酸ビニルの重合率が73%となった時点でm−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、上記メタノール溶液を濃度42%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して1.5ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。粘度上昇を確認後に水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して11ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加し、濾別、メタノールで充分洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂(B2)を得た。
得られたPVA系樹脂(B2)のケン化度は、残存酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ99.5モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ1200であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ6モル%であった。
上記で得られたPVA系樹脂(B1)と(B2)を重量比1:1で混合し、水に溶解して15重量%濃度のPVA系樹脂水溶液(B12液)を得た。
<塗膜の作製>
上記のポリシリケート溶液(A液)180部を30分かけて、上記1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂の水溶液(B12液)300部に滴下して混合し、塗膜形成剤を得た。ついでコロナ処理されたPET(38μm)上にバーコーターを用いて該溶液をコートし、80℃で5分間乾燥し、180℃で10分間熱処理を行った。塗膜の厚みが1μmの透明な積層体が得られた。
<NMR測定>
上記で得られた塗膜をBruker社製「AVANCEIII 400WB」で、下記の条件で固体NMR測定を行った。
・方式:Dipolar Decoupling法
・プローブ4mm固体CP/MAS
・温度:23℃
29Si90°パルス幅:4.2μm×1.0dB
・試料管回転数:5000Hz
・FID信号取込時間:21msec
1Hデカップリングパワー:2.4dB
・待ち時間;230sec
・積算回数:1024回
[ガスバリア性評価]
得られた積層体に対して、酸素透過度測定装置(OX−TRAN2/20、米国のMOCON社製)により、23℃及び80%RHの条件で酸素透過度を測定した。
かかる積層体の酸素透過度の測定値から、本発明の塗膜のみの酸素透過度を算出した。尚、PET(38μm)の酸素透過度の値は、31cc/m2・day・atmを用いた。
実施例2
実施例1において、熱処理温度を160℃10分にした以外は同様にして積層体を得て、実施例1と同様に評した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、熱処理温度を140℃10分にした以外は同様にして積層体を得て、実施例1と同様に評した。結果を表1に示す。
Figure 0006418924
一般式(1)で表される構造を40モル%以上有する実施例は、ボイル後でも酸素透過度が小さい塗膜が得られた。一方、一般式(1)で表される構造が40モル%未満であった比較例は、ボイル後には酸素透過度が大きく低下する塗膜であった。
本発明の塗膜はガスバリア性に優れるため、該塗膜を有する積層フィルムは食品包装用フィルムや液晶表示素子の基盤などの電子部材関連材料として有用である。

Claims (3)

  1. ポリシリケート(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含有する塗膜形成剤から塗を得る塗膜の製造方法であって、下記の(I)〜(III)の工程を有することを特徴とする塗膜の製造方法
    (I)シランアルコキシドを硝酸及び水の存在下で加水分解してポリシリケートを得る工程
    (II)前記ポリシリケート(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を混合し、塗膜形成剤を得る工程
    (III)前記塗膜形成剤を基材に塗布し、乾燥して、ポリシリケート構造中において下記式(1)で表される構造単位を40モル%以上含有する塗膜を得る工程
    Figure 0006418924
  2. 前記塗膜形成剤中のポリビニルアルコール系樹脂(B)が、下記の一般式(5)で表される1,2−ジオール構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂(B)である請求項1記載の塗膜の製造方法
    Figure 0006418924
    [一般式(5)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
  3. ポリシリケート(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含有する塗膜形成剤を基材に塗布し、塗膜を形成した後、160〜220℃で熱処理をすることを特徴とする請求項1又は2記載の塗膜の製造方法
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