JP5443215B2 - 水性防曇コート剤及び防曇性の改良された材料 - Google Patents

水性防曇コート剤及び防曇性の改良された材料 Download PDF

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Description

本発明は、水性防曇コート剤、及びそれを塗布して得られる防曇性の改良された材料に関する。
一般に、フィルムなどのプラスチック、ガラス、金属などの材料は、表面が露点以下になると空気中の水が凝縮し微細な水滴が材料表面に付着する。用いる材料が透明な場合には、曇りが生じ透明性が失われる。例えば、鏡の曇り、窓ガラスの曇り、農業用フィルムの曇りなどが挙げられる。
ハウス栽培などに用いられる農業用フィルムに曇りが生じた場合、太陽光の透過が妨げられ、農作物の育成に必要な有効光線が不足したり、ハウス内の温度が上昇しなかったりするなどの問題を生じる。また、水滴が直接、農作物に落下した場合、交配を妨げたり、病気を発生させる原因になるなど、農作物の育成を阻害してしまう。
フィルムの防曇性を改良する方法としては、ソルビタン、グリセリン等の脂肪酸エステルを代表例とする界面活性剤を添加する方法が知られている(例えば、特許文献1〜5)が、この方法では、時間の経過とともに界面活性剤が表面にブリードアウトして防曇性が低下し、長期間にわたる使用ができないという問題がある。
一方、シリカゾル、アルミナゾルなどの無機コロイドを用いることで長期防曇性が改良されることは知られている(例えば、特許文献4〜8参照)
一方、ガラスや金属の表面の曇りを防止する場合には、こうした材料表面に防曇性のコート剤を塗布することが行われている。この際に、コート剤として最小限必要な造膜性、材料との密着性、耐水性などの物性は、コート剤に用いるバインダー樹脂の特性に依存する。防曇用コート剤として従来用いられているバインダー樹脂は、分子内に多量の水酸基やカルボキシル基を含有しているため、塗膜の耐水性、耐アルカリ性が悪かったり、基材との密着性が不十分であるなどの問題があった。
さらに、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善を考慮した場合、コート剤の分散媒は水系のものが好ましい。
特公昭49−32668号公報 特公昭50−11348号公報 特公昭53−37075号公報 特開昭57−119974号公報 特開昭59−15473号公報 特開昭55−99987号公報 特開昭64−246984号公報 特開平8−188682号公報
本発明者らは、上記のような問題に対して、長期間にわたる防曇性を有し、同時に耐水性、耐アルカリ性にも優れた塗膜を低温で形成できる水性防曇コート剤を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、数平均粒子径が小さく塩基性化合物で中和された特定組成のポリオレフィン樹脂と水溶性高分子とを特定の割合で含有させることで、上記の課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、
第一に、下記ポリオレフィン樹脂(A)と、水性高分子(B)と、塩基性化合物とを含有し、ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が0.2μm以下であることを特徴とする水性防曇コート剤であり、
ポリオレフィン樹脂(A):
(A1)不飽和カルボン酸またはその無水物、
(A2)エチレン系炭化水素、
(A3)下記式(I)〜(IV)のいずれかで示される少なくとも1種の化合物
とから構成される共重合体であって、各構成成分(A1)〜(A3)の質量比が下記式(1)、(2)をみたすポリオレフィン樹脂。
0.01≦(A1)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100<5 (1)
(A2)/(A3)=55/45〜99/1 (2)
第二に、前記コート剤から得られる塗膜を熱可塑性樹脂成形体、金属又はガラスの表面に形成させた防曇性材料である。
数平均粒子径が0.2μm以下でありかつ塩基性化合物で中和した特定組成のポリオレフィン樹脂と、水溶性高分子とを特定量、含有させることで様々な基材に対して良好な密着性を有するコート剤が得られ、得られる塗膜は、優れた耐水性、耐アルカリ性、及び長期に長期間にわたる防曇性を発現する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の防曇コート剤は、以下に示す特定組成のポリオレフィン樹脂と水溶性高分子と塩基性化合物とが、水性媒体に分散したものである。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)成分をこの樹脂全体〔(A1)+(A2)+(A3)〕に対して0.01質量%以上、5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上、5質量%未満含有している必要があり、1質量%以上、4質量%以下が最も好ましい。(A1)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、樹脂を水性化(液状化)することが困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しい。一方、不飽和カルボン酸またはその無水物の含有量が5質量%以上の場合は、水性化はし易くなるが、塗膜の耐水性、耐アルカリ性等の物性や極性の低いフィルムとの密着性が低下する恐れがある。
ポリオレフィン樹脂の(A1)成分として用いることのできる不飽和カルボン酸またはその無水物は、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていれば良く、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂は、下記式(I)〜(IV)のいずれかで示される(A3)成分が構成成分として必要であり、この成分によって、ポリオレフィン樹脂に親水性が付与されるため、(A1)成分が5質量%未満であっても、不揮発性水性化助剤の添加なしに水性化することができる。エチレン系炭化水素(A2)成分と(A3)成分との質量比(A2)/(A3)は、55/45〜99/1の範囲であることが必要であり、60/40〜98/2であることが好ましく、65/35〜97/3であることがより好ましく、70/30〜97/3であることがさらに好ましく、75/25〜97/3であることが特に好ましい。〔(A2)+(A3)〕に対する(A3)成分の比率が1質量%未満では、ポリオレフィン樹脂の水性化は困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しい。一方、化合物(A3)の含有比率が45質量%を超えると、(A2)成分によるポリオレフィン樹脂としての性質が失われ、耐水性等の性能が低下する。
本発明において、ポリオレフィン樹脂を構成するエチレン系炭化水素(A2)成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
本発明において、ポリオレフィン樹脂を構成する上記式(I)〜(IV)のいずれかで示される(A3)成分としては、例えば、式(I)で代表される(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、式(II)で代表されるマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、式(III)で代表される(メタ)アクリル酸アミド類、式(IV)で代表されるメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。この中で、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、あるいは(メタ)アクリル酸エチルが特に好ましい。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂としては、エチレン、アクリル酸メチルあるいはアクリル酸エチル、無水マレイン酸からなる三元共重合体が最も好ましい。ここで、アクリル酸エステル単位は、後述する樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、そのような場合には、それらの変化を加味した各構成成分の比率が規定の範囲にあればよい。
なお、本発明におけるポリオレフィン樹脂を構成する無水マレイン酸単位等の不飽和カルボン酸無水物単位は、樹脂の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、特に塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造を取りやすくなる。
また、本発明において、樹脂のカルボキシル基量を基準として量を規定する場合には、樹脂中の酸無水物基はすべて開環してカルボキシル基をなしていると仮定して算出する。
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂には、その他のモノマーが、少量、共重合されていても良い。例えば、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂の分子量は特に限定されないが、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートとしては、0.1〜500g/10分が好ましく、より好ましくは0.5〜400g/10分、さらに好ましくは1〜300g/10分、最も好ましくは1〜250g/10分のものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが0.1g/10分未満では、樹脂の水性化は困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しい。一方、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが500g/10分を超えると、その水性分散体から得られる塗膜は、硬くてもろくなり、機械的強度や基材との密着性が低下する。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂の合成法は特に限定されない。一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、不飽和カルボン酸、あるいはその無水物はグラフト共重合(グラフト変性)されていても良い。
また、本発明の水性分散体中に分散しているポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径(以下、mn)は、水性分散体の保存安定性、及び低温での造膜性の点から、0.2μm以下である必要があり、0.1μm以下がより好ましい。さらに、重量平均粒子径(以下、mw)に関しても、0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。粒子の分散度(mw/mn)は、水性分散体の保存安定性、及び低温造膜性の点から、1〜3が好ましく、1〜2.5がより好ましく、1〜2が特に好ましい。上記の粒子径範囲は、ポリオレフィン樹脂を水性媒体に分散させるに当たって塩基性化合物を用いることにより達成することができる。このとき、乳化剤や保護コロイド作用を有する化合物等の不揮発性の水性化助剤は特に用いる必要がない。
水溶性高分子(B)としては、例えばポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系化合物、デンプン、変性デンプン、グアガムやカラギーナンなどの多糖類、アルギン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン、ポリビニルメチルエーテル、ポリオキサゾリン、ポリ(メタ)アクリル酸およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびその塩、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびその塩、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体およびその塩、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体およびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、ポリマレイン酸およびその塩、ポリアクリルアミド等のアミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、デキストリン、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、コラーゲン等を挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用しても良い。中でも、ポリオレフィン樹脂水性分散体との混合安定性の点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンが好ましく、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は、80〜100%のものが好ましく、重合度は200〜2000のものが水溶液として取り扱い易く好ましい。さらにポリビアルコールを所定量添加することで塗膜の耐溶剤性が著しく向上する。
水溶性高分子(B)の添加量は、ポリオレフィン樹脂(A)と(B)との固形分質量比(A)/(B)が95/5〜20/80である必要があり、耐水性、耐アルカリ性、防曇性、基材との密着性の点から、95/5〜30/70が好ましく、90/10〜40/60がより好ましく、90/10〜50/50が特に好ましい。水溶性高分子の添加量が、5質量%未満では防曇性の効果が小さく、80質量%を超えると耐水性、耐アルカリ性、基材との密着性が低下する。さらに、水溶性高分子(B)としてポリビニルアルコールを用いた場合、塗膜の耐用剤性の点から、添加量は90/10〜20/80が好ましく、85/15〜30/70がより好ましく、基材との密着性を考慮すると85/15〜50/50が特に好ましい。
さらに、本発明の防曇コート剤は、無機コロイド(C)を含んでいてもよい。無機コロイド(C)としては、例えばシリカ、アルミナ、サポナイトやヘクトライト等のスメクタイト、水不溶性リチウムシリケートやケイ酸アルカリ金属塩、酸化すず、酸化チタンなどの無機水性コロイド粒子を水または水性媒体中に分散させた水性ゾルが挙げられる。中でも、ポリオレフィン樹脂水性分散体との混合安定性や防曇性の点から、コロイド状シリカが好ましい。数平均粒子径としては、0.001〜10μmが好ましく、透明性を考慮した場合は、0.005〜1μmがより好ましく、0.01〜0.5μmが特に好ましい。なお、無機コロイド(C)は、2種以上を混合して使用しても良い。
ポリオレフィン樹脂(A)と無機コロイド(C)との固形分質量比(A)/(C)としては、80/20〜20/80であることが好ましく、防曇性や基材との密着性の点から、75/25〜30/70がより好ましく、70/30〜40/60が特に好ましい。無機コロイドの添加量が、20質量%未満では防曇性の効果が小さく、80質量%を超えると基材との密着性が低下する。
無機コロイド(C)を添加する場合には、必要に応じてさらにジェット粉砕処理を行うことが塗膜の透明性を向上させる点から好ましい。ここでいうジェット粉砕処理とは、流体を高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、無機粒子同士や無機粒子と衝突板等とを衝突させて、機械的なエネルギーによって無機粒子をさらに細粒化することであり、そのための装置の具体例としては、A.P.V.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM−110E/H等が挙げられる。
さらに、水溶性高分子(B)と無機コロイド(C)とは混合して使用してもよく、その場合、ポリオレフィン樹脂に対する(B)、(C)の添加量は、それぞれが、既述したポリオレフィン樹脂(A)との関係をみたす範囲にあればよい。
本発明の水性防曇コート剤には、種々の添加剤を添加することができる。かかる添加剤としては、界面活性型の防曇剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、紫外線吸収剤、着色剤あるいは染料、架橋剤、ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂水性分散体などを挙げることができる。また、上記した添加剤は2種類以上、組み合わせて用いてもよい。
架橋剤としては、例えば、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属や金属錯体等を用いることができ、このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等を挙げることができる。架橋剤を添加することで、耐水性などの各種の塗膜性能をさらに向上させることができる。架橋剤の添加量は、水性防曇コート剤中のポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して0.01〜100質量部、好ましくは0.1〜60質量部添加することができる。架橋剤の添加量が0.01質量部未満の場合は、耐水性などの塗膜性能向上の程度が小さく、100質量部を超える場合は、塗膜の架橋密度が高くなり、防曇性や加工性等の性能が低下してしまう。
初期防曇性を付与するために、界面活性剤を添加することもでき、有効な手段である。例えば、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン等の多価アルコールの脂肪酸エステルを、ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部、添加することがよい。
本発明の水性防曇コート剤には、ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂水性分散体を添加してもよく、その種類は特に限定されない。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散体を挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の水性防曇コート剤における、固形分含有率は、成膜条件、目的とする樹脂塗膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、コート剤の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましく、10〜45質量%が特に好ましい。
本発明の水性防曇コート剤は、塩基性化合物を含有している必要がある。これは、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基の一部を中和し、中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、ポリオレフィン樹脂微粒子間の凝集を防止するためである。
添加される塩基性化合物としては、カルボキシル基を中和できるものであればよく、ポリオレフィン樹脂の水性化のしやすさの点から、アンモニアまたは有機アミン化合物が好ましい。塩基性化合物の含有量は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基のモル数に対し0.5〜3.0倍当量モルが好ましく、0.5〜2.0倍当量モルがより好ましい。塩基性化合物の添加量が0.5倍当量モル未満の場合は、樹脂の水性化が困難になったり、ポリオレフィン樹脂微粒子の安定性が悪化する。塩基性化合物の添加量が3.0倍当量モル未満の場合は、乾燥時間が長くなったり、ポリオレフィン樹脂微粒子の安定性が悪化する恐れがある。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、オクチルアミンなどの長鎖アルキルアミン類等を挙げることができる。
また、本発明の水性防曇コート剤は、有機溶剤を含有していてもよい。この場合、有機溶剤としては、20℃における水に対する溶解性が5g/L以上、好ましくは10g/L以上のものを使用することが好ましく、量としては、水性媒体中の40質量%以下が好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、2〜35質量%がさらに好ましく、3〜30質量%が特に好ましい。有機溶剤量が40質量%を超える場合には、実質的に水性媒体とはみなせなくなり、本発明の目的のひとつ(環境保護)を逸脱するだけでなく、使用する有機溶剤によっては防曇コート剤の安定性が低下してしまう場合がある。
なお、ポリオレフィン樹脂の粒径を本発明の0.2μm以下とするためには、この樹脂を水性化する際に、有機溶剤を用いることが好ましい。この場合、水性化に使用した有機溶剤は、「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤工程により減量することができ、任意の最終濃度に調整することができる。
本発明において使用される有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からイソプロパノールが特に好ましい。
本発明の防曇コート剤の調製方法としては、まず、ポリオレフィン樹脂の水性分散体を調製し、これに無機コロイドや水溶性高分子の水溶液を攪拌下で混合する方法が好ましい。
本発明の防曇コート剤は、優れた防曇性を有するだけでなく、室温で透明性の高い塗膜を形成することができ、後述の方法で測定したコートフィルムのヘーズ10.0(%)以下となる。
本発明の防曇コート剤は、様々な基材に密着して、基材表面に防曇塗膜を形成させることができる。基材に適した材質としては、樹脂、ガラス、金属などが挙げられる。これらは特に形状は限定されないが、樹脂としては、各種成形品、繊維、フィルムなどが挙げられ、フィルムの具体的な用途としては農業用フィルムや食品包装用フィルムが挙げられる。農業用フィルムとしては、下記の基材の中でポリオレフィン樹脂フィルムが好ましい。また、ガラス材料としては窓ガラスや鏡など、金属材料としては、各種メッキ鋼板などに用いることができる。
基材に用いる樹脂としては熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を問わず、例えば、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂が挙げられる。これらは混合して用いてもよい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体、酢酸ビニル含有量が例えば20質量%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル含有量が例えば20質量%以下であるエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、不飽和カルボン酸含有量例えば20質量%以下であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、アイオノマー樹脂、あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(δ−バレロラクトン)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)等が挙げられ、これらの共重合体であってもよい。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6I等が挙げられ、これらの混合ポリアミドや共重合体でもよい。
基材は、上記樹脂の積層体(特に、フィルムにおいては積層フィルム)であってもよい。基材表面は、コロナ処理やオゾン処理を施したものであってもよく、アンカーコート剤がコートされたものでもよい。これらの表面処理はフィルムを基材として用いる際に特に有効である。また、フィルムとする場合には、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、製法は特に限定されない。厚さも特に限定されないが、通常は1〜500μmであればよい。
本発明の水性防曇コート剤は、塗膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥又は乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂塗膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また加熱温度や加熱時間は特に制限されない。
また、本発明の防曇コート剤を用いて形成される塗膜厚さとしては、その用途によって適宜選択されるものであるが、0.05〜30μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましく、0.2〜15μmがさらに好ましく、0.3〜10μmが特に好ましい。塗膜厚さが上記範囲となるように成膜すれば、均一性に優れた樹脂塗膜が得られる。
なお、塗膜厚さを調節するためには、コーティングに用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする樹脂塗膜の厚さに適した濃度の防曇コート剤を使用することが好ましい。このときの濃度は、調製時の仕込み組成により調節することができる。また、一旦調製した防曇コート剤を適宜希釈、あるいは濃縮して調節してもよい。
本発明のコート剤を塗布した防曇材は、湿気の多い場所や結露し易い場所で使用することで塗膜表面の結露を低減し、防曇性が向上する。例えば、水周りの鏡や窓ガラス、浴室の鏡やガラス、外気に接する窓ガラス、自動車の窓ガラス、建材、農業用フィルムなどへの使用が好適である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定又は評価した。
(1)ポリオレフィン樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d)中、120℃にてH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
(2)水性化後のエステル基の残存量
水性化後のポリオレフィン水性分散体を150℃で乾燥させた後、オルトジクロロベンゼン(d)中、120℃にてH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、水性化前のアクリル酸エステルのエステル基量を100としてエステル基の残存率(%)を求めた。
(3)ポリオレフィン樹脂水性分散体の固形分濃度
ポリオレフィン分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、ポリオレフィン樹脂固形分濃度を求めた。
(4)ポリオレフィン樹脂水性分散体の粘度
トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、温度20℃における水性分散体の回転粘度を測定した。
(5)ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径(mn)、重量平均粒子径(mw)を求めた。
(6)ポリオレフィン樹脂水性分散体中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−8A〔FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n−ブタノール〕を用い、水性分散体または水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(7)塗膜の耐水性
防曇コート剤を40μm厚みのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム上に乾燥後の塗膜厚みが1μmになるようにメイヤーバーでコートし、70℃で1分間乾燥した。このようにして作製したコートフィルムを40℃の温水に3分間、浸漬した後、コート層の溶解、あるいは剥離の有無を目視で評価した。
○:外観に変化なし。
×:塗膜が溶解、あるいは剥離する。
(8)塗膜の耐アルカリ性
防曇コート剤を40μm厚みのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム上に乾燥後の塗膜厚みが1μmになるようにメイヤーバーでコートし、70℃で1分間乾燥した。20℃においてpH12.0に調整したNaOH水溶液を45℃に加温して攪拌しておき、この液にコートフィルムを3分間浸漬した。その後、水洗いし、塗膜の状態を目視で評価した。
○:外観に変化なし。
×:塗膜が溶解、あるいは剥離する。
(9)塗膜の耐溶剤性
防曇コート剤を40μm厚みのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム上に乾燥後の塗膜厚みが1μmになるようにメイヤーバーでコートし、70℃で1分間乾燥した。塗膜表面を各種有機溶剤を含ませた布で数回擦り塗膜表面の状態を目視で評価した。有機溶剤は、イソプロパノール(試薬特級)、トルエン(試薬特級)、塩化メチレン(試薬特級)を用いた。
○:外観に変化なし。
△:塗膜が曇る。
×:塗膜が溶解、あるいは剥離する。
(10)ヘーズ(曇価)
JIS K7105に準じて、日本電色工業社製のNDH2000「濁度、曇り度計」を用いて「ヘーズ(%)」を測定した。ヘーズが2.8%のPETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)を基材として、これに25℃にてコート剤を乾燥後のコート膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、25℃の雰囲気中で3日放置して乾燥させてコートフィルムを作製した。このようにして作製したコートフィルム全体のヘーズを測定した。
(11)塗膜の密着性
40μm厚みのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、5mm厚みのガラス板、0.8mm厚みの溶融亜鉛めっき鋼板(日本テストパネル大阪社製)に防曇コート剤を乾燥後のコート厚みが2μmになるようにメイヤーバーでコートし、基材がフィルムの場合は70℃で1分間、その他の基材の場合は120℃で1分間、乾燥した。24時間、室温で放置後、JIS K5400 8.5.2の方法で密着性試験を行った。コート層をカットして1mm×1mm×100個の碁盤目部分を作成し、これを粘着テープにより引き剥がし、100個の碁盤目中で剥離せず残っている個数により評価した。「n/100」は、100個の碁盤目中のn個が剥離せず残っていることを示し、「100/100」は全く剥離していない、最も密着性の良いことを示す。
(12)塗膜の防曇性
防曇コート剤を40μm厚みのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム上に乾燥後の塗膜厚みが2μmになるようにメイヤーバーでコートし、70℃で1分間乾燥した。40℃の温水100mlを入れた200mlビーカーの口をコートフィルムで覆い、40℃雰囲気中、24時間放置した後、コート表面の水滴の付着具合を目視で観察した。
○:水がコート面表面に一様に付着し、曇りは認められない。
△:部分的、あるいは若干の曇りが認められた。
×:水滴が付着しており、著しい曇りが認められた。
(13)塗膜の長期防曇性
防曇コート剤を40μm厚みのエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム上に乾燥後の塗膜厚みが2μmになるようにメイヤーバーでコートし、70℃で1分間乾燥した。このコートフィルムを20℃の水に1週間、浸せきした後、再び、70℃で1分間乾燥した。40℃の温水100mlを入れた200mlビーカーの口を上記処理を行ったコートフィルムで覆い、40℃雰囲気中、24時間放置した後、コート表面の水滴の付着具合を目視で観察した。
○:水がコート面表面に一様に付着し、曇りは認められない。
△:部分的、あるいは若干の曇りが認められた。
×:水滴が付着しており、著しい曇りが認められた。
使用した樹脂の組成を表1に示す。なお、表1に記載されている樹脂の融点はDSCで測定した値であり(測定装置:パーキン・エルマー社製DSC−7)、メルトフローレートはJIS 6730記載の方法(190℃、2160g荷重)で測定した値である。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX−8290(ア),住友化学工業社製〕、60.0gのイソプロパノール(以下、IPA)、4.5g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.8倍当量)のトリエチルアミン(以下、TEA)および175.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
水性分散体の各種特性を表2に示した。数平均粒子径は0.072μmであり、その分布も1山であり、ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に良好な状態で分散していた。さらに、この水性分散体のポットライフは90日以上であった。なお、水性化後の樹脂組成を分析したところ、アクリル酸エチルの残存率は100%であり、エステルは加水分解されていなかった。
このエステル基残存率は室温で90日、放置後でも変化せず100%であった。この水性分散体を前記した方法でコートしたコートフィルムのヘーズは2.8%であり、透明性は良好であった。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)
E−1 250g、蒸留水40gを0.5リットルの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約95gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、濾液の固形分濃度を測定したところ、25.8質量%であった。この濾液を攪拌しながら蒸留水を添加し、固形分濃度が25.0質量%になるように調整した。
水性分散体の各種特性を表2に示した。なお、この水性分散体中の水溶性有機溶剤の含有率は0.5質量%であった。
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)
ポリオレフィン樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体樹脂〔プリマコール5980I(イ)、アクリル酸20質量%共重合体、ダウケミカル製〕を用いた。ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのエチレン−アクリル酸共重合体樹脂〔プリマコール5980I(イ)、ダウケミカル社製〕、16.8g(樹脂中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1.0倍当量)のTEA、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を100℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−5を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。水性分散体の各種特性を表2に示した。
実施例1
ポリオレフィン水性分散体E−2とポリビニルアルコール(UF040G、ケン化度98.4%、重合度約400、ユニチカケミカル製、以下「PVA」と略す。)の10%水溶液とを固形分質量比が80/20になるように混合、攪拌して防曇コート剤M−1を調製した。
実施例2〜5
ポリオレフィン水性分散体E−1を用いPVAの添加量を表3に示すように変えた以外は実施例1と同様の操作を行い防曇コート剤M−2〜M−5を調製した。
実施例6
ポリオレフィン水性分散体E−2、コロイダルシリカS−O、PVAの10%水溶液とを固形分質量比が表3になるように混合、攪拌して防曇コート剤M−6を調製した。
実施例1〜6のコート剤から得られる塗膜の性能評価結果をまとめて表3に示す。
比較例1、2
ポリオレフィン樹脂とPVAとの割合を表4のように変えた以外は実施例1と同様の操作を行い防曇コート剤H−1、H−2を調製した。
比較例3
不飽和カルボン酸量の多いポリオレフィン水性分散体E−3を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、防曇コート剤H−3を調製した。
比較例1〜3のコート剤から得られる塗膜の性能評価結果をまとめて表4に示す。
実施例1〜6では、耐水性、耐アルカリ性、耐溶剤性、密着性、透明性、防曇性を併せ持つ優れた塗膜が得られた。このうち、実施例5では耐水性と耐アルカリ性に劣っていたが、用途を選べば実用上問題ない水準にあった。また、実施例6のように無機コロイドと水溶性高分子をともに含む場合には、耐溶剤性の改良効果が著しかった。
これに対し、比較例では次のような問題があった。すなわち、比較例1は水溶性高分子の量が本発明の範囲を下方に外れたため、防曇効果が不十分であった。比較例2は、水溶性高分子の量が本発明の範囲を上方に外れたため、耐水性、耐アルカリ性、密着性が不足しており、また長期防曇性が不十分であった。比較例3は、ポリオレフィン樹脂の構成が本発明の範囲を外れ、不飽和カルボン酸の共重合量が高かった例であるが、比較例3のように水溶性高分子と組み合わせても防曇性が不十分であった。

Claims (11)

  1. 下記ポリオレフィン樹脂(A)、水性高分子(B)および塩基性化合物を水性媒体中に含有し、(A)と(B)との固形分質量比(A)/(B)が95/5〜20/80であり、ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が0.2μm以下であることを特徴とする水性防曇コート剤。
    ポリオレフィン樹脂(A):
    (A1)不飽和カルボン酸またはその無水物、
    (A2)エチレン系炭化水素、
    (A3)下記式(I)〜(IV)のいずれかで示される少なくとも1種の化合物
    とから構成される共重合体であって、各構成成分(A1)〜(A3)の質量比が下記式(1)、(2)をみたすポリオレフィン樹脂。
    0.01≦(A1)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100<5 (1)
    (A2)/(A3)=55/45〜99/1 (2)
  2. 水性防曇コート剤が、この水性防曇コート剤を25℃においてヘーズ(曇価)2.0〜5.0(%)のフィルムに膜厚2μm(乾燥後)でコートした後、25℃で乾燥して得たコートフィルム全体のヘーズが10.0(%)以下であることを特徴とする請求項1に記載の水性防曇コート剤。
  3. ポリオレフィン樹脂(A)の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜500g/10分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性防曇コート剤。
  4. ポリオレフィン樹脂(A)がエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性防曇コート剤。
  5. 塩基性化合物が有機アミン化合物であり、有機アミン化合物の含有量がポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基のモル数に対し0.5〜3.0倍当量モルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水性防曇コート剤。
  6. 熱可塑性樹脂成形体の表面に請求項1〜5のいずれかに記載の水性防曇コート剤からなる塗膜を形成させた防曇性熱可塑性樹脂成形体。
  7. 金属材料の表面に請求項1〜5のいずれかに記載の水性防曇コート剤からなる塗膜を形成させた防曇性金属材料。
  8. ガラスの表面に請求項1〜5のいずれかに記載の水性防曇コート剤からなる塗膜を形成させた防曇性ガラス。
  9. 塗膜の厚みが0.05〜30μmである請求項6に記載の防曇性熱可塑性樹脂成形体。
  10. 塗膜の厚みが0.05〜30μmである請求項7に記載の防曇性金属材料。
  11. 塗膜の厚みが0.05〜30μmである請求項8に記載の防曇性ガラス。
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