JP4022107B2 - 樹脂水性分散体、防錆用コート剤および積層金属材料 - Google Patents

樹脂水性分散体、防錆用コート剤および積層金属材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防錆用コート剤として優れた性能を有する樹脂水性分散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気亜鉛めっき鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板などの金属めっき鋼板は自動車、家電、構造物などに広く用いられており、近年、こうした鋼板表面の防錆性に対する要求が高まっている。このような状況下において、例えば、亜鉛めっき鋼板の防錆性を一層高めるために、6価クロムを用いたクロメート処理が採用されてきている。このクロメート処理により亜鉛メッキ材料の防錆性は向上するが、有害な6価クロムによる作業環境や設置場所のクロム汚染の問題が指摘されており、クロムを使用しない、いわゆるノンクロメート防錆処理剤の開発が急務となっている。
【0003】
新たなノンクロメート防錆処理剤の1つとして、様々な高分子化合物をベースとした処理剤が検討されている。例えば、オレフィン系の粉体樹脂を鋼板の表面に塗装する試みが特開昭60−143952号公報および特開平7−207215号公報に開示され、また、特開平11−131259号公報には、エチレン−不飽和カルボン酸との共重合体樹脂粉末を粉体塗装することが開示されている。
【0004】
しかしながら、このような粉体樹脂を用いて塗装する場合には、20μm以下の厚さに塗装するのは非常に困難であり、薄塗りの用途に使用することはできない。しかも、平滑性や均一性の優れた塗膜を得るのは困難であり,塗膜の平滑性や均一性を改善するためには粉体樹脂の流動性や平均粒子径に制限を受ける場合も多い。
【0005】
塗装を薄くかつ均一にするために、樹脂を有機溶剤あるいは水性媒体に溶解または分散させることによりコート剤を作製し、これを鋼板などに塗布する方法が用いられている。この場合、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場からは、有機溶剤を使用するよりも、水性媒体を使用する方が好ましい。
【0006】
このような背景から、不飽和カルボン酸含有量の高いエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を用いて、樹脂中のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することで水性媒体中に分散した水性防錆用コート剤が使用されている。例えば、特公平5−54823号公報、特開平6−246229号公報、特開2000−198949号公報等には、不飽和カルボン酸含有量が20質量%程度のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を主成分とした水性の防錆用コート剤が例示されている。しかしながら、不飽和カルボン酸含有量の高い樹脂を塗装した場合、被膜の耐アルカリ性は著しく低下してしまい耐アルカリ性を必要とする用途には使用できない。
【0007】
一方、特開昭62−252478号公報、特開平7−82423号公報、特開平9−296081号公報等には、不飽和カルボン酸含有量の少ないエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合樹脂などの水性分散体をラミネート用接着剤等の用途に使用することが開示されているが、これらは、様々な乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物のような不揮発性水性化助剤を含有しているため、耐水性に劣っており、金属表面の防錆用としては不適当であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記のような課題に対して、低温で容易に造膜でき、薄塗りが可能で、得られた被膜は優れた防錆性、耐アルカリ性、耐水性、耐溶剤性、加工性、透明性および金属材料への密着性を有する樹脂水性分散体を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、異なる2種のポリオレフィン樹脂を含有する樹脂水性分散体を金属材料の表面に塗布し、該樹脂組成物からなる層を形成させることにより、それぞれ単独の樹脂を用いた場合より防錆効果が著しく向上することを見出し、さらに耐アルカリ性を含む上記の優れた性能をも発現することを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記ポリオレフィン樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)を(A)/(B)=98/2〜55 45(質量比)の割合で含有する水性分散体であって、前記ポリオレフィン樹脂全体の数平均粒子径が1μm以下である樹脂水性分散体である。
ポリオレフィン樹脂(A):
(A1)不飽和カルボン酸またはその無水物、
(A2)エチレン系炭化水素、
(A3)下記式(I)〜(IV)のいずれかで示される少なくとも1種の化合物
とから構成される共重合体であって、各構成成分(A1)〜(A3)の質量比が下記式(1)、(2)をみたすポリオレフィン樹脂。
0.01≦(A1)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100<5 (1)
(A2)/(A3)=55/45〜99/1 (2)
【0010】
【化2】
【0011】
ポリオレフィン樹脂(B):
不飽和カルボン酸またはその無水物(B1)とエチレン系炭化水素(B2)とから構成される共重合体であって、(B1)と(B2)の質量比が(B1)/(B2)=12/88〜30/70をみたすポリオレフィン樹脂。
また、さらには、上記樹脂水性分散体を含有する防錆用コート剤、並びにこのコート剤を金属材料に塗布、乾燥して得られる積層金属材料である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂水性分散体は、被膜の防錆性、耐アルカリ性、加工性などの点から、特定組成のポリオレフィン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを特定の割合で含有している必要がある。
【0013】
[ポリオレフィン樹脂(A)]
本発明で用いるポリオレフィン樹脂(A)は、(A1)不飽和カルボン酸またはその無水物、(A2)エチレン系炭化水素、および(A3)下記式(I)〜(IV)のいずれかで示される少なくとも1種の化合物、の3種類の成分から構成され、これらの成分が特定の範囲内にあるものである。
【0014】
【化3】
【0015】
不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)成分は、この樹脂全体〔(A1)+(A2)+(A3)〕に対して0.01質量%以上、5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上、5質量%未満含有している必要があり、1〜4質量%が最も好ましい。(A1)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、樹脂を水性化(液状化)することが困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しい。一方、(A1)成分の含有量が5質量%以上場合には、水性化は容易になるが、カルボキシル基量が増すために、これがアルカリ化合物と反応して塗膜の耐アルカリ性が著しく低下してしまう。また、他の添加剤との混合安定性が低下してしまう恐れがある。
【0016】
ポリオレフィン樹脂(A)の(A1)成分として用いることのできる不飽和カルボン酸またはその無水物は、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていれば良く、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0017】
また、(A3)成分として上記式(I)〜(IV)のいずれかで示される成分が必要である。この成分によって、ポリオレフィン樹脂(A)に親水性が付与されるため、(A1)成分が5質量%未満であっても、乳化剤や保護コロイドなどの不揮発性水性化助剤の添加なしに水性化することができる。エチレン系炭化水素(A2)成分と(A3)成分との質量比(A2)/(A3)は、55/45〜99/1であることが必要であり、60/40〜98/2であることが好ましく、65/35〜97/3であることがより好ましく、70/30〜97/3であることがさらに好ましく、80/20〜97/3であることが特に好ましい。〔(A2)+(A3)〕に対する(A3)成分の比率が1質量%未満では、ポリオレフィン樹脂の水性化は困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しい。一方、化合物(A3)の含有量が45質量%を超えると(A2)成分によるポリオレフィン樹脂としての性質が失われ、耐水性等の性能が低下する。
【0018】
上記の(A2)成分は、エチレン系炭化水素成分であり、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0019】
また、(A3)成分としては、上記式(I)〜(IV)のいずれかで示される成分が用いられる。例えば、式(I)で代表される(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、式(II)で代表されるマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、式(III)で代表される(メタ)アクリル酸アミド類、式(IV)で代表されるメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。この中で、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、あるいは(メタ)アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸又はメタクリル酸」を示す。
【0020】
ポリオレフィン樹脂(A)の具体例としては、エチレン、アクリル酸メチルあるいはアクリル酸エチル、無水マレイン酸からなる三元共重合体が最も好ましい。ここで、アクリル酸エステル単位は、後述する樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、その様な場合には、それらの変化を加味した各構成成分の比率が規定の範囲にあればよい。
【0021】
また、ポリオレフィン樹脂(A)には、その他のモノマーが、この樹脂全体の20質量%以下で共重合されていてもよい。例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3〜30のアルキルビニルエーテル類、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄等が挙げられる。
【0022】
ポリオレフィン樹脂(A)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜500g/10分、好ましくは0.1〜400g/10分、より好ましくは1〜300g/10分のものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化は困難になり、良好な樹脂水性分散体を得ることが難しい。一方、ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートが500g/10分を超えると、ポリオレフィン樹脂(B)と合わせて樹脂水性分散体としたとき、得られる被膜は硬くてもろくなる傾向にあり、機械的強度や加工性が低下しやすい。
【0023】
[ポリオレフィン樹脂(B)]
ポリオレフィン樹脂(B)は、不飽和カルボン酸またはその無水物(B1)とエチレン系炭化水素(B2)成分とからなり、(B1)/(B2)の質量比は、12/88〜30/70、好ましくは15/85〜25/75、さらに好ましくは18/82〜23/77とする必要がある。(B1)成分が12質量%未満の場合には、水性化が困難になる傾向がある。一方、(B1)成分が30質量%を超える場合には、得られる塗膜の耐水性が著しく低下し、十分な防錆性が得られなくなる。
【0024】
ポリオレフィン樹脂(B)の不飽和カルボン酸またはその無水物(B1)成分は、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましく、特に(メタ)アクリル酸が好ましい。また不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていれば良く、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0025】
上記の(B2)成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0026】
ポリオレフィン樹脂(B)の具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体またはエチレン−メタクリル酸共重合体が最も好ましい。なお、本発明で用いるアクリル酸またはメタクリル酸単位中のカルボキシル基は、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中では、塩の構造を取りやすくなる。
【0027】
また、ポリオレフィン樹脂(B)には、その他のモノマーが、この樹脂全体の20質量%以下で共重合されていても良い。例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3〜30のアルキルビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸のエステル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄等が挙げられる。
【0028】
なお、本発明におけるポリオレフィン樹脂(A)及び(B)を構成する無水マレイン酸単位等の不飽和カルボン酸無水物単位は、樹脂の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、特に塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造を取りやすくなる。
また、本発明において、樹脂のカルボキシル基量を基準として量を規定する場合には、樹脂中の酸無水物基はすべて開環して2個のカルボキシル基をなしていると仮定して算出する。
【0029】
[樹脂の含有比率]
本発明の樹脂水性分散体は、ポリオレフィン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とが、質量比98/2〜10/90で含有されていることが必要であり、ポリオレフィン樹脂(A)またはポリオレフィン樹脂(B)を単独で用いるより防錆性が著しく向上する。ポリオレフィン樹脂(A)が10質量%未満では、防錆性、耐アルカリ性が不十分となる。また、ポリオレフィン樹脂(B)が2質量%未満では、防錆性が不十分となる。
特に、耐アルカリ性の十分に高い被膜を形成させるためには、ポリオレフィン樹脂(A)の比率をポリオレフィン樹脂(B)より相対的に高くすると良く、ポリオレフィン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との好ましい質量比の範囲は、98/2〜55/45、より好ましくは95/5〜55/45、特に好ましくは95/5〜60/40である。
【0030】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(B)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、20〜5000g/10分、より好ましくは30〜1000g/10分、さらに好ましくは30〜500g/10分のものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂(B)のメルトフローレートが20g/10分未満では、樹脂の水性化は困難になり、良好な樹脂水性分散体を得ることが難しい。一方、ポリオレフィン樹脂(B)のメルトフローレートが5000g/10分を超えると、ポリオレフィン樹脂(A)と合わせて樹脂水性分散体としたとき、得られる被膜は、硬くてもろくなる傾向にあり、機械的強度や加工性が低下しやすい。
【0031】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(A)および(B)の合成法は特に限定されないが、一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、不飽和カルボン酸、あるいはその無水物はグラフト共重合(グラフト変性)されていても良い。被膜としての特性を向上させるためには、合成時に乳化剤や保護コロイド作用を有する化合物を用いないことが好ましい。
【0032】
本発明の樹脂水性分散体は、上記のポリオレフィン樹脂(A)および(B)が水性媒体に分散もしくは溶解されている。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体からなる媒体であり、水溶性の有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよい。
【0033】
本発明の樹脂水性分散体中において、ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径は、1μm以下である必要があり、0.50μm以下が好ましく、0.20μm以下がより好ましく、0.15μm以下がさらに好ましく、0.10μm未満が特に好ましい。数平均粒子径が1μmを超えると、樹脂水性分散体の安定性や塗布した際の表面平滑性が悪化する。ここでのポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径とはポリオレフィン樹脂(A)および(B)を合わせた樹脂全体の平均粒子径を指す。なお、粒度分布については、特に限定されない。
【0034】
樹脂水性分散体における樹脂含有率は、成膜条件、目的とする樹脂被膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されないが、粘性を適度に保ち、かつ良好な被膜形成能を発現させる上で、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましく、10〜45質量%が特に好ましい。
【0035】
本発明に用いる樹脂水性分散体は、防錆性、耐アルカリ性、耐水性の点から乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物などの不揮発性水性化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。
ここで、「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、不揮発性水性化助剤を積極的には系に添加しないことにより、結果的にこれらを含有しないことを意味する。こうした不揮発性水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリオレフィン樹脂成分に対して0.1質量%未満程度含まれていても差し支えない。
【0036】
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0037】
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が30質量%を超えるカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0038】
本発明の水性分散体において、ポリオレフィン樹脂(A)及び(B)のカルボキシル基は、塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。水性化の際に用いる塩基性化合物はカルボキシル基を中和できるものであれば良い。このような塩基性化合物として、被膜形成時に揮発するアンモニア又は有機アミン化合物が被膜の耐水性、防錆性、耐アルカリ性の面から好ましく、中でも沸点が30〜250℃、さらには50〜200℃の有機アミン化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると樹脂被膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、被膜の耐水性が悪化する場合がある。なお、このような目的で添加される塩基性化合物は、一種の水性化助剤といえるが、本発明の効果を損なわないためには上記のように沸点が250℃以下のもの(すなわち、揮発性である)が用いられる。
【0039】
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。塩基性化合物の添加量はポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.0〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると被膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水分散液が着色する場合がある。
【0040】
本発明においては、ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に有機溶剤を添加することが好ましい。使用する有機溶剤量は、樹脂水性分散体の40質量%以下が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、2〜30質量%がさらに好ましく、3〜30質量%が特に好ましい。有機溶剤量が40質量%を超える場合には、実質的に水性媒体とはみなせなくなり、本発明の目的のひとつ(環境保護)を逸脱するだけでなく、使用する有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。
【0041】
一般に、水性分散体に含有される有機溶剤は、その一部をストリッピングと呼ばれる操作で系外へ留去させることができるが、本発明の樹脂水性分散体においても、この操作によって、水性分散体中の有機溶剤量を適度に減量してもよく、10質量%以下とすることができ、3質量%以下であれば、環境上好ましい。ストリッピングによって有機溶剤を留去するには、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くするなどの生産プロセスにおける処置が必要となるため、こうした生産性を考慮した有機溶剤量の下限は0.01質量%程度(本発明の測定に使用した分析機器の検出限界)である。しかし、0.01質量%未満であっても樹脂水性分散体としての性能には特に問題は生じず、各種用途に良好に使用することができる。
【0042】
有機溶剤の除去方法としては、常圧または減圧下で樹脂水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法を挙げることができる。有機溶剤の含有率はガスクロマトグラフィーで定量することができる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるために、例えば、粘度が上昇し作業性が悪くなるような場合には、予め樹脂水性分散体に水を添加しておくこともできる。
【0043】
有機溶剤としては、ポーリング(Pauling)の電気陰性度が3.0以上の原子(具体的には酸素、窒素、フッ素、塩素)を分子内に1個以上有しているものを用いることが良好な樹脂水性分散体を得るという点から好ましい。さらにその中でも、20℃における水に対する溶解性が5g/L以上のものが好ましく用いられ、さらに好ましくは10g/L以上である。
【0044】
本発明において使用される有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられ、中でも沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものが特に好ましい。これらの有機溶剤は2種以上を混合して使用しても良い。なお、有機溶剤の沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化の効率が十分に高まらない場合がある。沸点が250℃を超える有機溶剤は樹脂被膜から乾燥によって飛散することが困難であり、被膜の耐水性が悪化する場合がある。
【0045】
上記の有機溶剤の中でも、樹脂の水性化がし易く、しかも水性媒体中から有機溶剤を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からイソプロパノールが特に好ましい。
【0046】
次に、本発明の樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
本発明の樹脂水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂(A)と(B)をそれぞれ水性化して2種の水性分散体を調製しておき、次いでこれらの水性分散体を所定の割合で混合する方法(1)、あるいは、ポリオレフィン樹脂(A)と(B)とをドライブレンドや溶融混練等の手法で予め所定の割合で混合しておき、次いでこの樹脂混合物を水性化して樹脂水性分散体を得る方法(2)が挙げられる。詳細な理由は不明であるが、(2)の方法で調整した樹脂水性分散体は、固形分濃度を高くすると、保存安定性が低下して固化しやすくなる傾向があるため、(1)の方法を用いることが好ましい。
【0047】
ポリオレフィン樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、または(A)、(B)2種の樹脂混合物を水性化する方法は、たとえば、既述の各成分、すなわち、上記ポリオレフィン樹脂、塩基性化合物、有機溶剤、および水を、好ましくは密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができ、この方法が最も好ましい。この方法によれば、乳化剤成分や保護コロイド作用を有する化合物を実質的に添加しなくとも良好に樹脂水性分散体を得ることができる。なお、ポリオレフィン樹脂(B)のみを水性化する場合は、有機溶剤なしで水性化が可能であるため、特にこれを用いる必要はない。
【0048】
容器としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体と樹脂粉末ないしは粒状物との混合物を適度に撹拌できるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。
【0049】
ポリオレフィン樹脂(A)および(B)の原料としての形状は特に限定されないが、水性化速度を速めるという点から、粒子径1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状のものを用いることができる。
【0050】
前述の装置の槽内に原料を投入した後、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を60〜200℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは90〜200℃の温度に保ちつつ、好ましくは5〜120分間攪拌を続けることによりポリオレフィン樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、樹脂水性分散体を得ることができる。槽内の温度が60℃未満の場合は、ポリオレフィン樹脂の水性化が困難になる。槽内の温度が200℃を超える場合は、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下する恐れがある。
【0051】
槽内の加熱方法としては槽外部からの加熱が好ましく、例えば、オイルや水を用いて槽を加熱する、あるいはヒーターを槽に取り付けて加熱を行うことができる。槽内の冷却方法としては、例えば、室温で自然放冷する方法や0〜40℃のオイルまたは水を使用して冷却する方法を挙げることができる。
【0052】
なお、この後、必要に応じてさらにジェット粉砕処理を行ってもよい。ここでいうジェット粉砕処理とは、樹脂水性分散体を、高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士や樹脂粒子と衝突板等とを衝突させて、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化することであり、そのための装置の具体例としては、A.P.V.A.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM-110E/H等が挙げられる。
【0053】
このようにして得られた樹脂水性分散体の固形分濃度の調整方法としては、例えば、所望の固形分濃度以上となるように水性媒体を留去した後で、水により希釈する方法が挙げられる。
【0054】
上記のようにして、本発明の樹脂水性分散体は、ポリオレフィン樹脂(A)および(B)が水性媒体中に分散または溶解され、外観上、樹脂水性分散体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない均一な状態で得られる。
【0055】
また、樹脂水性分散体の製造における水性化収率は、得られた樹脂水性分散体中に残存する粗大粒子の量によって知ることができる。具体的には、水性分散体を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、フィルター上に残存する樹脂量を測定する。本発明における水性化収率は、きわめて良好であり、粗大粒子はほとんど残存することなく水性化が達成される。
【0056】
前記の製造方法(1)を用いた場合、ポリオレフィン樹脂(A)および(B)についてそれぞれ製造した2種の樹脂水性分散体を、所定の割合で混合することで本発明の樹脂水性分散体を得ることができる。この際、粒子の凝集を防ぐために攪拌下で混合した方がよい。(2)の製造方法を用いた場合、2種のポリオレフィン樹脂の樹脂混合物を水性化して得られた樹脂水性分散体を、本発明の樹脂水性分散体として用いることができる。
【0057】
このようにして製造した本発明の樹脂水性分散体は、非常に低温造膜性に優れており、驚くべきことに樹脂の融点以下の乾燥条件においても透明な被膜を形成することができる。造膜性や透明性の目安として、室温で樹脂水性分散体をコートしたコートフィルムの「ヘーズ(曇価)」を用いる。基材としてヘーズ2.0〜5.0(%)のPETフィルムを用い、これにポリオレフィン樹脂水性分散体を乾燥後コート膜厚2μmでコートし、25℃で乾燥する。本発明の樹脂水性分散体を用いると、コートフィルム全体のヘーズは10.0(%)以下となり、高い透明性が達成される。
【0058】
本発明において、防錆性を一層向上させるために、樹脂水性分散体中に多価金属イオン、無機粒子、架橋剤成分、金属塩化合物を含有させることができる。
【0059】
多価金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属や亜鉛、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム等のイオンが挙げられる。なお、これらは2種以上を混合して使用しても良い。多価金属イオンの添加量は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基量に対して10〜90モル%が好ましく、20〜80モル%がより好ましい。多価金属イオンの添加量が10モル%未満の場合は、防錆性の向上効果の程度が小さく、添加量が90モル%を超えると樹脂水性分散体の安定性が悪化する場合がある。
【0060】
また、無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず、酸化チタン等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカなどの無機粒子やバーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト等の水膨潤性の層状無機化合物を添加することができる。この中で、シリカ、および水膨潤性の層状無機化合物が防錆性の点から好ましく、混合安定性の点からシリカがさらに好ましく、中でもコロイダルシリカが最も好ましい。これらの無機粒子の平均粒子径は、樹脂水性分散体の安定性の面から0.005〜10μm、より好ましくは0.005〜5μmである。なお、これらは、2種以上を混合して使用しても良い。無機粒子の添加量は、2種のポリオレフィン樹脂合計量100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、2〜100質量部がより好ましく、3〜50質量部がさらに好ましく、5〜30質量部が特に好ましい。無機粒子の添加量が1質量部未満の場合は、防錆性の向上効果の程度が小さく、添加量が1000質量部を超えると金属への密着性が低下したり、均一な被膜が得られない場合がある。
【0061】
無機粒子の分散性を向上させるために、無機粒子を添加した樹脂水性分散体をホモジナイザー処理、ボールミル処理、ペイントシェーカー処理、あるいは前述したジェット粉砕処理等の分散処理を行うことが好ましい。中でも、ジェット粉砕処理等の高圧分散処理を行うことが、分散性、被膜の透明性向上の点から好ましい。
【0062】
架橋剤成分の含有量は、樹脂水性分散体中の樹脂100質量部に対して0.1〜100質量部とすることが好ましく、0.5〜50質量部がより好ましく、0.5〜30質量部が特に好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量部未満の場合には、防錆性向上の程度が小さく、100質量部を超える場合には、防錆性以外の物性、特に加工性が低下するだけでなく、ポリオレフィン樹脂の特性が失われてしまう。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤や、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、カルボキシル基またはカルボキシレートアニオンが複数配位して錯体を形成し得る金属等を用いることができ、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。中でもメラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤が、塗装金属材料の防錆性を高める上で特に好ましい。これらの架橋剤は併用することもできる。
【0063】
金属塩化合物としては、金属のリン酸塩、硫酸塩等が挙げられ、また、多価金属塩が好ましい。中でも、防錆性の面から、多価金属のリン酸塩が好ましく、リン酸亜鉛あるいはリン酸アルミニウムが特に好ましい。なお、ここでいうリン酸塩とは、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩等を含んだ広義のリン酸塩を意味し、これらのいずれのリン酸塩構造をとっていてもよい。金属塩化合物の添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、1〜80質量部が好ましく、3〜80質量部がより好ましく、5〜70質量部がさらに好ましく、10〜70質量部が特に好ましい。金属塩化合物の添加量が1質量部未満の場合には、防錆性向上効果の程度が小さく、添加量が80質量部を超えると金属への密着性や加工性が低下しやすい。
【0064】
金属塩化合物の水性媒体への溶解性が低い場合には、金属塩化合物の分散性を向上させるために、金属塩化合物を添加した樹脂水性分散体をホモジナイザー処理、ボールミル処理、ペイントシェイカー処理、あるいは前記したジェット粉砕処理等の分散処理を行うことが好ましい。中でも、ジェット粉砕処理等の高圧分散処理を行うことが、分散性、被膜の透明性向上の点から好ましい。
【0065】
さらに、本発明の樹脂水性分散体に必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加してもよい。また、樹脂水性分散体の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を樹脂水性分散体に添加することもできる。
【0066】
上記した、多価金属イオン、無機粒子、金属塩化合物、架橋剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、顔料あるいは染料などの添加剤は2種類以上、組み合わせて用いてもよい。例えば、架橋剤と無機粒子や金属塩化合物とを組み合わせることによって、防錆性および耐溶剤性の性能を向上させることができる。
【0067】
本発明において、樹脂水性分散体を塗装する金属材料は、特に限定されないが、中でも亜鉛めっき鋼、銅材料、アルミニウム材料等に用いると、防錆効果が高く、好ましい。なお、亜鉛めっき鋼のめっき方法は特に限定されず、電気めっき法や溶融めっき法など、いずれの方法でめっき処理されたものを用いてもよい。亜鉛めっき鋼は、板状で使用される形態が代表的であり、銅材料の形態は、銅板や銅線などが挙げられ、またアルミニウム材料の形態、アルミニウム箔、アルミニウムシート、アルミニウム板などが挙げられる。
なお、亜鉛めっき鋼の表面は化成処理されていてもよい。化成処理方法としては、環境を配慮するとクロムを含まない化成液で処理されたものが好ましいが、本発明の樹脂水性分散体を用いたコート剤は、クロメート処理を施した亜鉛めっき鋼に使用しても防錆性を発揮することができる。
【0068】
本発明の樹脂水性分散体は、被膜形成能に優れており、公知の方法により容易に製膜することができる。例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材の特性や後述する硬化剤の種類、配合量等により適宜選択されるものであるが、性能面や経済性を考慮した場合、加熱温度としては、30〜250℃が好ましく、60〜230℃がより好ましく、80〜210℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜20分が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。なお、架橋剤を添加した場合は、ポリオレフィン中のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度および時間は架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
【0069】
また、本発明の樹脂水性分散体は、樹脂粒子の数平均粒子径が小さく、また液状であるため、基材表面に薄く塗ることが可能であり、例えば樹脂被膜として0.1〜10μmとすることができる。防錆性、透明性、加工性等を考慮すると、0.2〜8μmが好ましく、0.2〜5μmが特に好ましい。樹脂被膜の厚さが0.1μm未満では防錆性の効果が小さくなる。
なお、樹脂被膜の厚さを調節するためには、コーティングに用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする樹脂被膜の厚さに適した濃度の樹脂水性分散体を使用することが好ましい。このときの濃度は、調製時の仕込み組成により調節することができる。また、一旦調製した樹脂水性分散体を適宜希釈、あるいは濃縮して調節してもよい。
【0070】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
(1)ポリオレフィン樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
(2)ポリオレフィン樹脂(A)の水性化後のエステル基残存率
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を150℃で乾燥させた後、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、水性化前の(メタ)アクリル酸エステルのエステル基量を100%としてエステル基の残存率(%)を求めた。
(3)樹脂水性分散体の固形分濃度
樹脂水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(4)樹脂水性分散体の粘度
トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、温度20℃における水性分散体の回転粘度を測定した。
(5)ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径を求めた。なお、屈折率は1.50とした。
(6)水性化収率
水性化後の樹脂水性分散体を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)した際に、フィルター上に残存する樹脂質量を測定し、仕込み樹脂質量より収率を算出した。
(7)水性分散体の外観
樹脂水性分散体の色調を目視観察により評価した。
(8)ポットライフ
樹脂水性分散体を室温で90日放置した場合の外観を、次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
【0071】
なお、以下の(9)〜(15)の評価は、塗装した金属板を室温で1日放置した後、各種評価試験に供した。
(9)耐水性評価
塗膜を水で濡らした布で数回擦り、塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:塗膜がくもる、×:塗膜が完全に溶解
(10)耐アルカリ性評価方法
20℃においてpH12.0に調整したNaOH水溶液を加温して攪拌しておき、この水溶液に塗装した金属板を3分間浸漬した。その後、水洗いし、塗膜の状態を目視で評価した。
NaOH水溶液の温度として45℃、60℃の2条件で評価した。
○:変化なし、△:塗膜がくもる、×:塗膜が溶解、または剥離
(11)耐溶剤性評価
塗膜をエタノールで濡らした布で数回擦り、塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし、△:塗膜がくもる、×:塗膜が完全に溶解
(12)防錆性評価
JIS Z-2371規格の塩水噴霧試験機を用いて、35℃で5質量%NaCl水溶液の噴霧を行い、100時間後の発錆面積率(%)で塗膜状態を評価した。
(13)加工性評価
塗装されていない面が接するように金属板を折り曲げ、折り曲げ部分のクラックの有無を調べた。
○:クラックなし、×:クラックあり
(14)密着性評価(I):クロスカット・テープ剥離
JIS K5400 8.5.2に準じて評価した。粘着テープにより1mm×1mm×100個の碁盤目部分をひき剥がし、剥離せずに残っている数で評価した。「n/100」は、試験後に100個の碁盤目中のn個が剥離せず残っていることを示す。
(15)密着性評価(II):エリクセン加工
8mmのエリクセン加工を施し、加工部に粘着テープを接着後、勢いよくテープを剥離し、塗膜の状態を目視で評価した。
○:剥がれなし、×:剥がれあり
(16)樹脂水性分散体中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC-8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG-HT(5%)-Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用い、樹脂水性分散体またはこれを水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(17)ヘーズ(曇価)
JIS K7105に準じて、日本電色工業株式会社製のNDH2000「濁度、曇り度計」を用いて「ヘーズ(%)」を測定した。ヘーズが2.8%のPETフィルム(厚さ12μm)にポリオレフィン樹脂水性分散体を乾燥後のコート膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、25℃の雰囲気中で3日放置して乾燥させてコートフィルムを作製した。このようにして作製したコートフィルム全体のヘーズを測定した。
【0072】
使用したポリオレフィン樹脂(A)および(B)の組成を表1に示す。なお、表1に記載されている樹脂の融点はDSCで測定した値であり(測定装置:パーキンエルマー社製DSC−7)、メルトフローレートはJIS 6730記載の方法(190℃、2160g荷重)で測定した値である。
【0073】
【表1】
【0074】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(A)〔ボンダインHX-8210(ア),住友化学工業社製〕、60.0gのイソプロパノール(以下、IPA)、4.5g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.2倍当量)のトリエチルアミン(以下、TEA)および175.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
この樹脂水性分散体の各種特性を表2に示した。数平均粒子径は0.055μmであり、その分布は1山であり、ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に良好な状態で分散していた。さらに、この樹脂水性分散体は90日放置後も外観に変化が見られなかった。なお、水性化後の樹脂組成を分析したところ、アクリル酸エチル単位の1%が加水分解されてアクリル酸に変化していた。すなわちエステル基残存率は99%であった。
このエステル基残存率は室温で90日、放置後でも変化せず99%であった。この水性分散体を前記した方法でコートしたコートフィルムのヘーズは2.8%であり、透明性は良好であった。
【0075】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)
ポリオレフィン樹脂(A)としてボンダインHX-8290(イ)(住友化学工業社製)を用い、樹脂中のカルボキシル基に対するアミンの量を表2のように変更した以外はポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造と同様の操作でポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
【0076】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)
E−1 250g、蒸留水85gを0.5Lの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約90gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、濾液の固形分濃度を測定したところ、20.5質量%であった。この濾液を攪拌しながら蒸留水を添加し、固形分濃度が20.0質量%になるように調整した。
この水性分散体の各種特性を表2に示した。なお、この水性分散体中の水溶性有機溶剤の含有率は0.3質量%であった。
【0077】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4の製造)
ポリオレフィン樹脂(B)としてエチレン−アクリル酸共重合体樹脂〔プリマコール5980I(ウ)、アクリル酸20質量%共重合体、ダウ・ケミカル社製〕を用いた。ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのプリマコール5980I、16.8g(樹脂中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1.0倍当量)のTEA、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白色の水性分散体E−4を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。水性分散体の各種特性を表2に示した。
【0078】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−5の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、25.2gのポリオレフィン樹脂(A)〔ボンダインHX-8210(ア)、住友化学工業社製〕と10.8gのポリオレフィン樹脂(B)〔プリマコール5980I(ウ)、ダウ・ケミカル社製〕、60.0gのIPA、5.5gのTEAおよび198.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−5を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
【0079】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−6の製造)
ポリオレフィン樹脂水性分散体E−5の製造において、ポリオレフィン樹脂(A)を18.0g、ポリオレフィン樹脂(B)を18.0g、60.0gのIPA、7.4gのTEAおよび196.6gの蒸留水を用いた以外は同様の操作を行って、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−6を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例1
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体であるE−1とポリオレフィン樹脂(B)の水性分散体であるE−4とを樹脂の質量比が70/30になるように混合して、樹脂水性分散体を得た。得られた樹脂水性分散体を脱脂した溶融亜鉛めっき鋼板(日本テストパネル大阪社製、サイズ70mm×150mm×厚み0.8mm)上にメイヤーバーで塗装し、100℃で2分間乾燥熱処理し、塗装鋼板を得た。乾燥後の塗膜厚みは2μmであった。得られた塗膜の性能評価結果を表3に示す。防錆性、耐アルカリ性は共に良好であった。
【0082】
実施例2〜3、参考例4〜6
E−1とE−4との混合比を表3に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作で樹脂水性分散体を得た。これらの樹脂水性分散体を用いて実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表3に示す。ポリオレフィン樹脂(B)の水性分散体であるE−4の割合が多くなるに従って耐アルカリ性が低下する傾向にあった。特に、60℃における耐アルカリ性は、ポリオレフィン樹脂(A)の成分比が高い場合に良好であった。
【0083】
比較例1
樹脂水性分散体としてE−1のみを用いて、実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表3に示す。ポリオレフィン樹脂(A)のみを含む水性分散体では、防錆性が劣っていた。
【0084】
比較例2
樹脂水性分散体としてE−4のみを用いて、実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表3に示す。ポリオレフィン樹脂(B)のみを含む水性分散体では、防錆性は劣っており、耐アルカリ性は著しく悪かった。
【0085】
【表3】
【0086】
実施例7〜8、参考例9
E−1に代えてE−2を用い、E−2とE−4との混合比を表4に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作で樹脂水性分散体を得た。この樹脂水性分散体を用いて実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例10、参考例11
E−1に代えてE−3を用い、E−3とE−4との混合比を表4に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作で樹脂水性分散体を得た。この樹脂水性分散体を用いて実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表4に示す。
【0089】
実施例12、参考例13
E−5、E−6をそれぞれ単独で用い、実施例1同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表4に示す。
【0090】
実施例14、参考例15
実施例1、参考例4で得られた樹脂水性分散体のそれぞれに、樹脂100質量部に対してシリカ(アエロジル380、日本アエロジル社製)20質量部を添加、攪拌して樹脂水性分散体を調製した。この樹脂水性分散体を用いて実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表5に示す。シリカを添加すると防錆性は向上した。
【0091】
実施例16、17
実施例1で得られた樹脂水性分散体中の樹脂100質量部に対してコロイダルシリカ(スノーテックスO、粒子径0.01〜0.02μm、日産化学社製)20質量部を添加、攪拌して樹脂水性分散体を調製した。この樹脂水性分散体を用いて実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。なお、実施例17では、膜厚を1μmとした。得られた塗膜の性能評価結果を表4に示す。コロイダルシリカを添加すると防錆性は向上し、安定性も問題なかった。また、膜厚を2μmから1μmへ変更した場合、防錆性はやや低下したが、実用上は特に問題とはならないレベルであった。
【0092】
実施例18、参考例19
実施例1、参考例4で得られた樹脂水性分散体のそれぞれに、樹脂中のカルボキシル基に対して30モル%の水酸化カルシウム(和光純薬社製)を添加、攪拌して樹脂水性分散体を調製した。この樹脂水性分散体を用いて、実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表5に示す。水酸化カルシウムを添加すると防錆性は向上した。
【0093】
実施例20、22、24、参考例21、23、25
実施例1、参考例4で得られた樹脂水性分散体のそれぞれに、分散体中の樹脂100質量部に対して、架橋剤としてメラミン化合物(サイメル327、三井サイテック社製)を10質量部(実施例20、参考例21)、オキサゾリン基含有化合物(エポクロスWS-700、日本触媒社製)を10質量部(実施例22、参考例23)、エポキシ化合物(デナコールEX-313、ナガセ化成工業社製)を5質量部(実施例24、参考例25)、添加、攪拌して、樹脂水性分散体を調製した。この樹脂水性分散体を脱脂した溶融亜鉛めっき鋼板上にメイヤーバーで塗装し、200℃で2分間乾燥熱処理し、塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表5に示す。架橋剤を添加すると防錆性、耐溶剤性は向上した。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例26
実施例1で得られた樹脂水性分散体中の樹脂100質量部に対して、リン酸亜鉛(ナカライ社製)を20質量部添加、攪拌し、樹脂水性分散体を調製した。この樹脂水性分散体を用いて、実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表6に示す。リン酸亜鉛を添加すると防錆性は顕著に向上した。
【0096】
実施例27、28
実施例1で得られた樹脂水性分散体中の樹脂100質量部に対して、リン酸アルミニウム(石津製薬社製)を表4に示す量だけ添加、攪拌し、樹脂水性分散体を調製した。この樹脂水性分散体を用いて、実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表6に示す。リン酸アルミニウムを添加すると防錆性は顕著に向上した。
【0097】
参考例29、30
参考例4で得られた樹脂水性分散体中の樹脂100質量部に対して、リン酸亜鉛(ナカライ社製)を20質量部(参考例29)または40質量部(参考例30)添加、攪拌し、樹脂水性分散体を調製した。この樹脂水性分散体を用いて、実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表6に示す。リン酸亜鉛を添加すると防錆性は顕著に向上した。
【0098】
参考例31、32
参考例4で得られた樹脂水性分散体中の樹脂100質量部に対して、リン酸アルミニウム(石津製薬社製)を20質量部(参考例31)または60質量部(参考例32)添加、攪拌し、樹脂水性分散体を調製した。この樹脂水性分散体を用いて、実施例1と同様の操作で塗装鋼板を得た。得られた塗膜の性能評価結果を表6に示す。リン酸アルミニウムを添加すると防錆性は顕著に向上した。
【0099】
【表6】
【0100】
実施例33、35、参考例34、36
実施例1、参考例4で得られた樹脂水性分散体を、それぞれ、脱脂した0.8mm厚の銅板(実施例33、参考例34)および、アルミ板(実施例35、参考例36)上にそれぞれメイヤーバーで塗装し、100℃で2分間乾燥熱処理し、塗装金属板を得た。乾燥後の塗膜厚みは2μmであった。得られた塗膜の性能評価結果を表7に示す。銅、アルミニウムに塗装した場合でも、防錆性、耐アルカリ性は良好であった。
【0101】
【表7】
【0102】
【発明の効果】
本発明によると、保存安定性に優れた樹脂水性分散体が収率よく得られ、これを各種金属に塗布することにより、高い防錆性と同時に、耐アルカリ性、耐溶剤性、加工性、透明性および金属への良好な密着性を有する樹脂被膜が得られる。

Claims (17)

  1. 下記ポリオレフィン樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)を(A)/(B)=98/2〜55 45(質量比)の割合で含有する水性分散体であって、前記ポリオレフィン樹脂全体の数平均粒子径が1μm以下である樹脂水性分散体。
    ポリオレフィン樹脂(A):
    (A1)不飽和カルボン酸またはその無水物、
    (A2)エチレン系炭化水素、
    (A3)下記式(I)〜(IV)のいずれかで示される少なくとも1種の化合物
    とから構成される共重合体であって、各構成成分(A1)〜(A3)の質量比が下記式(1)、(2)をみたすポリオレフィン樹脂。
    0.01≦(A1)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100<5 (1)
    (A2)/(A3)=55/45〜99/1 (2)
    ポリオレフィン樹脂(B):
    不飽和カルボン酸またはその無水物(B1)とエチレン系炭化水素(B2)とから構成される共重合体であって、(B1)と(B2)の質量比が(B1)/(B2)=12/88〜30/70をみたすポリオレフィン樹脂。
  2. ポリオレフィン樹脂(A)の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜500g/10分であることを特徴とする請求項1記載の樹脂水性分散体。
  3. 不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)成分が無水マレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂水性分散体。
  4. ポリオレフィン樹脂(A)がエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の樹脂水性分散体。
  5. ポリオレフィン樹脂(B)がエチレン−アクリル酸共重合体またはエチレン−メタクリル酸共重合体であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の樹脂水性分散体。
  6. 不揮発性水性化助剤を実質的に含まないことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の樹脂水性分散体。
  7. 請求項1〜6いずれかに記載の樹脂水性分散体に、さらに多価金属イオンを含有させてなる樹脂水性分散体。
  8. 請求項1〜6いずれかに記載の樹脂水性分散体に、さらに平均粒子径が0.005〜10μmの無機粒子を含有させてなる樹脂水性分散体。
  9. 請求項1〜6いずれかに記載の樹脂水性分散体に、さらに架橋剤をポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01〜100質量部含有させてなる樹脂水性分散体。
  10. 請求項1〜6いずれかに記載の樹脂水性分散体に、さらに金属塩化合物をポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜80質量部含有させてなる樹脂水性分散体。
  11. 金属塩化合物がリン酸塩化合物である請求項10記載の樹脂水性分散体。
  12. 請求項1〜11いずれかに記載の樹脂水性分散体を含有する防錆用コート剤。
  13. 金属材料に請求項12に記載の防錆用コート剤を塗布し、乾燥して得られる樹脂被膜を設けてなる積層金属材料。
  14. 金属材料が亜鉛めっき鋼、銅材料またはアルミニウム材料のいずれかである請求項13記載の積層金属材料。
  15. 樹脂被膜の膜厚が0.1〜10μmである請求項13または14に記載の積層金属材料。
  16. ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体とポリオレフィン樹脂(B)の水性分散体とを混合することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の樹脂水性分散体の製造方法。
  17. ポリオレフィン樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との樹脂混合物を水性化することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の樹脂水性分散体の製造方法。
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