JP2018012743A - ポリビニルアセタール樹脂水性分散体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】保存安定性に優れ、しかも他の重合体の水性分散体、金属イオン、無機粒子、あるいは架橋剤等の添加剤との混合安定性に優れるポリビニルアセタール樹脂の水性分散体を、不揮発性水性化助剤を実質的に含有させずに提供する。【解決手段】イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)と、塩基性化合物(B)とを含有する水性分散体であって、塩基性化合物(B)が、アンモニアまたは沸点が250℃以下の有機アミン化合物であることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂水性分散体。【選択図】なし

Description

本発明は、各種のコーティング剤、プライマー、バインダー、インキ、ワニス、塗料、接着剤などの用途に好適なポリビニルアセタール樹脂水性分散体に関する。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール(以後「PVA」と略記することがある)を、アルデヒド化合物を用いて、酸性条件下、水中でアセタール化反応することにより得られる樹脂である。PVAとホルムアルデヒドから得られるポリビニルホルマール樹脂や、PVAとブチルアルデヒドから得られるポリビニルブチラール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂は、優れた物性を有することから、各種バインダー、塗料、電線ワニス、接着剤、ガラス繊維収束材等として広く用いられており、工業的に重要な位置を占めている。これらの用途に対して、ポリビニルアセタール樹脂は、主に有機溶剤溶液として使用されている。
一方、近年では、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場から、有機溶剤の使用が制限される傾向にあり、その結果、ポリビニルアセタール樹脂を水性分散体として使用することがますます重要となっている。
特許文献1および2には、分散剤を含有する、ポリビニルアセタール樹脂の水性分散体が開示されている。しかしながら、これらの分散剤は、不揮発性の水性化助剤であって、乾燥後も樹脂中に残存するために、ポリビニルアセタール樹脂が有する本来の特性を低下させるおそれがあり、特に、塗膜の耐水性が著しく低下する問題がある。さらに、分散剤を含む塗膜は、それらがブリードアウトするために、物性が経時的に低下するばかりでなく、環境的、衛生的にも好ましくないものであった。
これに対して、特許文献3には、不揮発性水性化助剤などの分散剤を用いることなく、ポリビニルアセタール樹脂の水性分散体を製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献3のポリビニルアセタール樹脂水性分散体は、保存安定性は十分でなく、常温下で長期保存すると、ポリビニルアセタール樹脂が凝集することがわかった。さらに、前記特許文献3に記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体に、他の重合体の水性分散体、金属イオン、無機粒子、あるいは架橋剤等の添加剤を混合すると、混合液が増粘したり、凝集や沈殿物が発生し、混合安定性が不十分な場合があった。
特開2006−104268号公報 特公昭58−026374号公報 特開2015−83707号公報
本発明は、これらの問題点に鑑み、保存安定性に優れ、しかも他の重合体の水性分散体、金属イオン、無機粒子、あるいは架橋剤等の添加剤との混合安定性に優れるポリビニルアセタール樹脂の水性分散体を、不揮発性水性化助剤を実質的に含有させずに提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を特定の方法で分散して得られる水性分散体が、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)と、塩基性化合物(B)とを含有する水性分散体であって、塩基性化合物(B)が、アンモニアまたは沸点が250℃以下の有機アミン化合物であることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂水性分散体。
(2)ポリビニルアセタール樹脂(A)が有するイオン性官能基が、カルボキシル基であることを特徴とする(1)記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体。
(3)ポリビニルアセタール樹脂(A)におけるイオン性官能基の含有量が0.01〜1mmol/gであることを特徴とする(1)または(2)記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体から得られる塗膜。
(5)上記(1)記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体を製造するため方法であって、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)、塩基性化合物(B)、および水性媒体を、加熱し、攪拌することを特徴とするポリビニルアセタール樹脂水性分散体の製造方法。
本発明によれば、保存安定性および各種添加剤を添加した場合の混合安定性に優れたポリビニルアセタール樹脂水性分散体、およびその製造方法を提供することができる。本発明のポリビニルアセタール樹脂水性分散体を各種基材へ塗布して形成される塗膜は、密着性、耐水性、耐溶剤性および耐熱性(耐熱保持力)等の性能に優れている。本発明のポリビニルアセタール樹脂水性分散体は、ポリビニルアセタール樹脂を水性媒体に分散するため、有機溶剤の使用を抑制することができ、総じて環境保護、職場環境の改善、操業性の改善の立場からも優れた素材であり、産業上の利用価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリビニルアセタール樹脂水性分散体は、特定のポリビニルアセタール樹脂(A)と、塩基性化合物、水とを含む水性分散体である。
本発明で用いるポリビニルアセタール樹脂(A)は、イオン性官能基を含有することが必要であり、イオン性官能基以外に、通常、下記構成単位A、BおよびCを含有する。
Figure 2018012743
上記構成単位Aは、アセタール部位を有する構成単位であって、Rは、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアリール基であり、置換基を有してもよい。
ポリビニルアセタール樹脂(A)中の構成単位Aの含有量は、50〜90mol%であること好ましく、65〜80mol%であることがより好ましい。構成単位Aの含有量が50mol%未満では、得られるポリビニルアセタール樹脂水性分散体の塗膜は、耐水性や耐熱保持力が低下する恐れがある。構成単位Aの含有量が90mol%を超えると、疎水性が大きくなりすぎて、安定した水性分散体を得ることが困難となることがある。
ポリビニルアセタール樹脂(A)中の構成単位Bの含有量は、0.1〜25mol%であることが好ましく、1〜15mol%であることがより好ましい。構成単位Bの含有量が0.1mol%未満では、得られる塗膜は、密着性が低下する傾向にある。構成単位Bの含有量が25mol%を超えると、得られる塗膜は、耐溶剤性が低下する恐れがある。
ポリビニルアセタール樹脂(A)中の構成単位Cの含有量は、0.1〜45mol%であることが好ましく、1〜35mol%であることがより好ましい。構成単位Cの含有量が0.1mol%未満では、ポリビニルアセタール樹脂を水性媒体に分散させることが困難となることがある。構成単位Cの含有量が45mol%を超えると、得られる塗膜は、耐水性が低下する恐れがある。
ポリビニルアセタール樹脂(A)中のイオン性官能基は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましく、なかでも、カルボキシル基、スルホン酸基、それらの塩であることがより好ましく、カルボキシル基であることがさらに好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂(A)におけるイオン性官能基の含有量は0.01〜1mmol/gであることが好ましく、0.1〜0.7mmol/gであることがより好ましく、0.2〜0.5mmol/gであることがさらに好ましい。イオン性官能基の含有量が0.01mmol/g未満であると、ポリビニルアセタール樹脂(A)は、水性化が困難になり、分散性が良好な水性分散体を得ることが難しいことがある。一方、イオン性官能基の含有量が1mmol/gを超えると、ポリビニルアセタール樹脂(A)は、水性化し易くなるが、得られる塗膜は、機械的性質が低下することがある。
ポリビニルアセタール樹脂(A)の全構成単位における、構成単位A、B、Cおよびイオン性官能基の合計含有率は、80〜100mol%であることが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂(A)において、イオン性官能基、構成単位A、BおよびCは、規則性をもって配列(ブロック共重合体、交互共重合体など)しても、ランダムに配列(ランダム共重合体)してもよい。
ポリビニルアセタール樹脂(A)は、イオン性官能基が、ポリマーの主鎖を構成する炭素に結合した鎖状分子構造であることが好ましい。この鎖状分子構造では、ポリマーの主鎖を構成する炭素とイオン性官能基とが直接結合してもよいし、ポリマーの主鎖を構成する炭素とイオン性官能基とが特定の構造を介して結合してもよい。上記特定の構造としては、炭化水素基からなる構造が好ましく、炭化水素基は、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数5以上の環状アルキレン基、炭素数6以上のアリール基等が好ましい。上記炭素数の上限値は特に限定されないが、200以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
また、イオン性官能基は、グラフト鎖を含むポリビニルアセタール樹脂(以下、単にグラフト共重合体ともいう)のグラフト鎖を構成する炭素に、直接または上記特定の構造を介して結合していてもよい。
ポリビニルアセタール樹脂(A)の重量平均分子量は、5,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜200,000であることがより好ましい。ポリビニルアセタール樹脂(A)の重量平均分子量が5,000未満では、得られる塗膜は、硬くてもろくなり、機械的強度が低下する。ポリビニルアセタール樹脂(A)の重量平均分子量が500,000を超えると、ポリビニルアセタール樹脂(A)の水性化は困難になり、分散性が良好な水性分散体を得ることが難しい。
ポリビニルアセタール樹脂(A)は単独で用いてもよく、構成単位の結合の順序や結合の数等が異なる樹脂を2種以上併用してもよい。
また、ポリビニルアセタール樹脂(A)は、合成品を使用しても、市販品を使用してもよい。
イオン性官能基を含有するポリビニルアセタール樹脂(A)を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、イオン性官能基を有するポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化する方法や、ポリビニルアセタール樹脂の官能基に対して反応性を有する官能基とイオン性官能基とを併せ持つ化合物を、ポリビニルアセタール樹脂に反応させる方法等が挙げられる。
上記イオン性官能基を有するポリビニルアルコールを合成する方法としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステルモノマーと、下記一般式(1)または(2)に示す構造を有するモノマーとを共重合化させた後、得られた共重合樹脂のエステル部位をアルカリまたは酸によりケン化する方法が挙げられる。
Figure 2018012743
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
式(1)に示す構造を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、2−プロペン酸、2−メチル−2−プロペン酸等のカルボキシル基と重合性官能基を有するもの、1−エテンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸等のスルホン酸基と重合性官能基を有するもの、およびこれらの塩等が挙げられる。
式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはイオン性官能基を表す。Rは炭素数1以上のアルキレン基または置換基を有するアルキレン基を表し、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられ、なかでも、Rはメチレン基であることが好ましい。また、Rにおける置換基は、ヘテロ原子を有する置換基でもよく、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
式(2)に示す構造を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、9−デセン酸等のカルボキシル基と重合性官能基を有するもの、アリルスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸等のスルホン酸基と重合性官能基を有するもの、およびこれらの塩等が挙げられる。
これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下、上記イオン性官能基を有するポリビニルアルコールの水溶液に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、ホルムアルデヒドまたはブチルアルデヒドが、生産性と特性バランス等の点で好適である。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記グラフト共重合体を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記イオン性官能基を含む重合性単量体を、ポリビニルアセタールが存在する環境下において、水素引き抜き性重合開始剤の存在下にて、ラジカル重合させる方法等が挙げられる。上記重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の重合方法が挙げられる。
上記水素引き抜き性重合開始剤としては特に限定されないが、t−ブチルパーオキシ系の過酸化物が好ましく、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーヘキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシネオペンタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート等を用いることができる。
上記グラフト共重合体のグラフト鎖は、(メタ)アクリル系モノマーの重合体からなることが好ましい。これにより、上記イオン性官能基を効率よくポリビニルアセタール樹脂に導入することができる。
上記イオン性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。また、上記イオン性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーに加えて、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フェニル(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、2−ソジウムスルホエチル(メタ)アクリレート、2−ポタシウムスルホエチル(メタ)アクリレート、3−ソジウムスルホプロピル(メタ)アクリレート、3−ポタシウムスルホプロピル(メタ)アクリレート等を併用してもよい。
本発明の水性分散体は、上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)と塩基性化合物(B)とを含有するものである。水性分散体を構成する水性媒体は、水を主成分とし、塩基性化合物(B)を含有する液体からなる媒体であり、後述する水溶性の有機溶剤を含有してもよい。イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)の一部は、水性媒体に溶解してもよい。
本発明の水性分散体中に分散しているポリビニルアセタール樹脂(A)の粒子の数平均粒子径(mn)は、水性分散体の保存安定性が向上するという観点から、1μm以下であることが好ましく、低温造膜性の観点から、0.5μm以下であることがより好ましく、基材への密着性の観点から、0.3μm以下であることがさらに好ましく、0.2μm以下であることが特に好ましい。またポリビニルアセタール樹脂(A)の粒子の体積平均粒子径(mv)も、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることがさらに好ましく、0.2μm以下であることが特に好ましい。
本発明の水性分散体におけるポリビニルアセタール樹脂(A)の含有率は、1〜60質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。ポリビニルアセタール樹脂(A)の含有率が60質量%を超えると、分散しているポリビニルアセタール樹脂(A)が凝集しやすくなり、水性分散体の保存安定性が乏しくなる傾向にある。ポリビニルアセタール樹脂の含有率が1質量%未満では、塗膜の膜厚を十分に得るために、ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の塗布量を増やす必要があり、均一な塗布が難しくなることがある。
本発明の水性分散体は、不揮発性水性化助剤を実質的に含有しないものであり、これを含有せずとも、ポリビニルアセタール樹脂(A)の粒子を水性媒体中に安定に維持することができる。水性分散体に含有する不揮発性水性化助剤は、塗膜形成後にもポリビニルアセタール樹脂(A)中に残存し、塗膜を可塑化することにより、ポリビニルアセタール樹脂(A)の特性、例えば耐水性等を低下させる。本発明の水性分散体は、不揮発性水性化助剤を実質的に含有しないため、塗膜特性、特に耐水性が優れている。
ここで、「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、不揮発性水性化助剤を積極的には系に添加しないことにより、結果的にこれらを含有しないことを意味する。こうした不揮発性水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリビニルアセタール樹脂(A)成分に対して0.1質量%未満程度含まれていても差し支えない。
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
本発明の水性分散体において、ポリビニルアセタール樹脂(A)が有するイオン性官能基は、塩基性化合物(B)によって中和されていることが好ましい。中和によって生成したアニオン間の電気反発力によって粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に保存安定性が付与される。塩基性化合物(B)は、イオン性官能基を中和することができ、また、得られる塗膜の耐水性の面から、塗膜形成時に揮発することができる、アンモニアまたは沸点が250℃以下の有機アミン化合物であることが必要であり、中でも沸点が250℃以下、さらには200℃以下の有機アミン化合物であることが好ましい。沸点が250℃を超える有機アミン化合物は、塗膜から乾燥によって飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N ,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。水性分散体における塩基性化合物(B)の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂(A)が有するイオン性官能基に対して、0.5〜20倍当量であることが好ましく、1〜18倍当量であることがより好ましく、2〜15倍当量であることがさらに好ましい。塩基性化合物(B)の含有量が0.5倍当量未満では、塩基性化合物(B)の添加効果が認められず、20倍当量を超えると、塗膜の乾燥に長時間を要する場合や、水性分散体が着色する場合がある。
本発明においては、ポリビニルアセタール樹脂(A)の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に有機溶剤を添加することが好ましい。有機溶剤の使用量は、水性媒体の50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。水性媒体は、有機溶剤の含有量が50質量%を超えると、実質的に水性とはみなせなくなり、本発明の目的のひとつ(環境保護)を逸脱するだけでなく、使用する有機溶剤によっては、ポリビニルアセタール樹脂(A)が溶解し、水性分散体の安定性が低下することがある。
水性化の際に水性媒体に添加された有機溶剤は、その一部または全部をストリッピングと呼ばれる脱溶剤操作で系外へ留去させることが好ましい。ストリッピングによって有機溶剤を留去するには、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くするなどの生産プロセスにおける処置が必要となるため、こうした生産性を考慮した有機溶剤量の下限は0.01質量%程度(本発明の測定に使用した分析機器の検出限界)である。しかし、0.01質量%未満であっても水性分散体としての性能は特に問題とはならない。本発明の水性分散体は、脱溶剤操作で有機溶剤を留去させなくても、特に性能面での影響はなく、各種用途に良好に使用することができる。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法を挙げることができる。有機溶剤の含有率はガスクロマトグラフィーで定量することができる。また、有機溶剤が留去されることにより、固形分濃度が高くなるために、例えば、粘度が上昇し作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておくこともできる。
有機溶剤としては、良好な水性分散体を得るという点から、ポーリングの電気陰性度が3.0以上の原子(具体的には酸素、窒素、フッ素、塩素)を分子内に1個以上有しているものを用いることが好ましい。さらにその中でも、20℃における水に対する溶解性が5g/L以上のものが好ましく用いられ、さらに好ましくは10g/L以上である。
本発明において使用される有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられ、中でも沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものが特に好ましい。これらの有機溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。なお、有機溶剤の沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化の効率が十分に高まらない場合がある。沸点が250℃を超える有機溶剤は塗膜から乾燥によって飛散させることが困難であり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
上記の有機溶剤の中でも、樹脂の水性化促進に効果が高く、しかも水性媒体中から有機溶剤を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。
次に、本発明のポリビニルアセタール樹脂水性分散体の製造方法について説明する。本発明のポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、たとえば、既述の各成分、すなわち、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)、塩基性化合物(B)、水性媒体、さらに必要に応じて有機溶剤を、好ましくは密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができ、この方法が最も好ましい。この方法によれば、乳化剤成分や保護コロイド作用を有する化合物等の不揮発性水性化助剤を実質的に添加しなくともポリビニルアセタール樹脂(A)を良好に水性分散体とすることができる。
容器としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体とポリビニルアセタール樹脂(A)の粉末ないしは粒状物との混合物を適度に撹拌できるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。本発明においては、撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でも十分水性化が達成され、高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではない。このため、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。
水性化に用いられるポリビニルアセタール樹脂(A)の形状は特に限定されないが、水性化速度を速めるという点から、粒子径1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状のものを用いることが好ましい。
この装置の槽内に塩基性化合物(B)、および水性媒体、ならびに粒状または粉末状のポリビニルアセタール樹脂(A)を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を80〜210℃、好ましくは90〜200℃ 、さらに好ましくは100〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは5〜120分間攪拌を続けることにより、ポリビニルアセタール樹脂(A)を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。槽内の温度が80℃未満の場合は、ポリビニルアセタール樹脂(A)の水性化が困難になる。槽内の温度が210℃を超える場合は、ポリビニルアセタール樹脂(A)の分子量が低下する恐れがある。槽内の加熱方法としては槽外部からの加熱が好ましく、例えば、オイルや水を用いた加熱や、あるいはヒーターを槽に取り付けて加熱を行うことができる。槽内の冷却方法としては、例えば、室温で自然放冷する方法や0〜40℃のオイルまたは水を使用して冷却する方法を挙げることができる。
得られた水性分散体は、例えば、水性媒体の留去や、水による希釈により、所望の固形分濃度に調整される。
上記の方法により、本発明の水性分散体は、ポリビニルアセタール樹脂(A)が水性媒体中に分散または一部溶解され、均一な液状に調製されて得られる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、水性分散体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
水性分散体製造におけるポリビニルアセタール樹脂(A)の水性化収率は、得られた水性分散体中に残存する粗大粒子の量を測定することによって算出することができる。具体的には、水性分散体を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、フィルター上に残存する樹脂の測定量と、水性化に使用したポリビニルアセタール樹脂(A)量とから、水性化された量と水性化収率を算出する。なお、残存樹脂量が多く水性化収率が低い場合でも、製造工程中で上記の濾過を行って粗大粒子を除去すれば、水性分散体として使用することが可能である。本発明においては、水性化収率は、条件によってやや低下する場合もあるが、概ねきわめて良好であり、粗大粒子がほとんど残存することなく水性化が達成される。
本発明のポリビニルアセタール樹脂水性分散体は、様々な添加剤との混合安定性に優れ、例えば、他の重合体の水性分散体、無機粒子、あるいは架橋剤等を添加して機能性を付与することができる。
他の重合体の水性分散体としては、特に限定されない。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ) アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散体を挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカなどの無機化合物や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、合成雲母等の水膨潤性の層状無機化合物を挙げることができる。これらの無機粒子の平均粒子径は、水性分散体の安定性の面から0.005〜10μmであることが好ましく、0.005〜5μmであることがより好ましい。無機粒子は、2種以上を混合して使用してもよい。
得られる塗膜において、耐熱保持力や耐水性などの各種の塗膜性能をさらに向上させるために、水性分散体は架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤の含有量は、水性分散体中の樹脂100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましく、0.1〜60質量部であることがより好ましい。架橋剤の含有量が0.01質量部未満であると、塗膜性能向上の程度が小さく、100質量部を超えると、加工性等の性能が低下することがある。
架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、イオン性官能基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属錯体等が挙げられる。具体的には、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明のポリビニルアセタール樹脂水性分散体は、必要に応じて、さらに金属イオン、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加して、使用することができる。また、水性分散体の安定性を損なわない範囲で、上記以外の有機もしくは無機の化合物を水性分散体に添加することも可能である。
上記他の重合体の水性分散体、金属イオン、無機粒子、架橋剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、顔料あるいは染料などの添加剤は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、本発明の水性分散体の使用方法について説明する。
本発明の水性分散体は、塗膜形成能に優れているので、公知の製膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な塗膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。
加熱装置として、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用することができる。また、加熱温度や加熱時間は、基材の特性等により適宜選択されるが、経済性を考慮した場合、加熱温度は、30〜250℃であることが好ましく、60〜230℃であることがより好ましく、80〜210℃であることがさらに好ましい。加熱時間は、1秒〜20分であることが好ましく、5秒〜15分であることがより好ましく、5秒〜10分であることがさらに好ましい。なお、水性分散体に架橋剤を添加した場合は、ポリビニルアセタール樹脂(A)が含有するイオン性官能基と架橋剤との反応を十分進行させるために、架橋剤の種類に応じて、加熱温度および時間を適宜選定することが望ましい。
本発明の水性分散体を用いて形成される塗膜の厚さは、その用途によって適宜選択されるが、0.01〜100μmであることが好ましく、0.1〜50μmであることがより好ましく、0.2〜30μmであることがさらに好ましい。塗膜の厚さが上記範囲となるように製膜すれば、均一性に優れた塗膜が得られる。なお、塗膜の厚さを調節するためには、コーティングに用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、水性分散体の濃度を適宜選択することが好ましい。水性分散体の濃度は、調製時の仕込み組成により調節することができ、また、一旦調製した水性分散体を適宜希釈あるいは濃縮して、調節してもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各種の特性は以下の方法により測定または評価した。
(1)イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)の構成
オルトジクロロベンゼン(d)中、120℃にてH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
(2)ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の固形分濃度
ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を適量秤量し、150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、ポリビニルアセタール樹脂固形分濃度を求めた。
(3)ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の粘度
トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、温度20℃における水性分散体の回転粘度を測定した。
(4)ポリビニルアセタール樹脂粒子の平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径(mn)、および重量平均粒子径(mv)を求めた。
(5)ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の外観
水性分散体の色調を目視観察により評価した。
(6)ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の保存安定性
ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を室温で90日放置したときの外観を、次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
(7)ポリビニルアセタール樹脂水性分散体と添加剤との混合安定性
ポリビニルアセタール樹脂水性分散体と添加剤とを混合した後、室温で最長20日間放置し、混合液の外観(増粘、固化、凝集や沈殿物の発生)を評価した。混合液の外観が変化した場合は変化するまでの日数を示した。
(8)塗膜の密着性
ポリビニルアセタール樹脂水性分散体、添加剤混合ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を、二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製、厚さ38μm)のコロナ処理面に、卓上型コーティング装置(安田精機社製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、150℃に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥させることにより膜厚が1μmの塗膜を形成した。
得られたPETフィルム上の塗膜について、JIS K5400記載のクロスカット法によるテープ剥離(碁盤目試験)をおこなった。すなわち、クロスカットにより、塗膜を100区間にカットし、テープ剥離後、残留した塗膜の区間数で、以下の基準により密着性を碁盤目試験により評価した。碁盤目試験は評価が○または△であることが好ましい。
○:100区間残留。
△:90〜99区間残留。
×:残留区間数が89区間以下。
(9)塗膜の耐水性
前記(8)と同様にして、二軸延伸PETフィルム上に膜厚が1μmの塗膜を形成した後、50mm×50mmの試験片に切り出し、90℃の熱水に全体を浸漬させた状態で、5分間または10分間熱水処理をおこなった。熱水処理後、試験片を取り出し、冷水に浸漬させて1分間冷却した後、水滴を拭き取り、塗膜の外観を目視にて観察し、白化しているか否かにより以下のように分類し、耐水性を評価した。○または△の評価は、実用的に問題のない範囲である。
○:10分間の熱水処理では外観変化が全く認められない。
△:5分間の熱水処理では白化が認められないが、10分間の熱水処理では白化が認められる。
×:5分間の熱水処理でも白化が認められる。
(10)塗膜の耐溶剤性
前記(8)と同様に塗膜を形成した。次いで、この塗膜を、有機溶剤を含浸させた綿棒で擦り、1往復を1回として塗膜が溶解し、基材面が露出するまでの回数を調べた。なお、有機溶剤としては、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)を使用した。なお、50回擦っても基材面が露出しない時は、「>50」と記載した。耐溶剤性は、上記回数が10回以上であれば実用上問題ない。
(11)塗膜の耐熱保持力I
ポリビニルアセタール樹脂水性分散体、添加剤混合ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を、SUS304(0.5mm厚)表面に、前記卓上型コーティング装置を用いてコーティングした後、150℃に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥させることにより、膜厚が3μmの塗膜を形成した。塗膜が形成されたSUS304を、幅30mm、長さ100mmの大きさに切り出して試験板Aを作製した。
2枚の試験板Aのそれぞれの塗膜面どうしを、接着面積が30mm×30mmになるように重ねて、250℃で20秒間、2kg/cmでプレスすることにより、幅30mm、長さ170mmの大きさの試験板Bを作製した。
試験板Bを、JIS Z1541の6.3.3に準拠し、温度25℃、相対湿度50%、気圧101kPaの条件下、72時間放置した後、80℃の熱風循環式恒温装置内に10分間放置した。同温中で試験板Bの短辺を固定して試験板Bをつるし、反対側の短辺に1kgのおもりを取付け、1日経過後と7日経過後に、おもりを取付けた試験板Aが、固定した試験板Aから落下するかしないかを観察し、耐熱保持力Iを評価した。○または△の評価は、実用的に問題のない範囲である。
○:おもりを取付けた試験板Aは、7日間、固定した試験板Aから落下しない。
△:おもりを取付けた試験板Aは、1日経過するまでに、固定した試験板Aから落下しないが、7日経過するまでに落下する。
×:おもりを取付けた試験板Aは、1日経過するまでに、固定した試験板Aから落下する。
(12)塗膜の耐熱保持力II
熱風循環式恒温装置内の温度を120℃に変更した以外は、上記(11)の耐熱保持力Iに記載と同様の操作を行い、1日経過後と3日経過後に、おもりを取付けた試験板Aが、固定した試験板Aから落下するかしないかを観察し、耐熱保持力IIを評価した。
○:おもりを取付けた試験板Aは、3日間、固定した試験板Aから落下しない。
△:おもりを取付けた試験板Aは、1日経過するまでに、固定した試験板Aから落下しないが、3日経過するまでに落下する。
×:おもりを取付けた試験板Aは、1日経過するまでに、固定した試験板Aから落下する。
実施例および比較例で用いたポリビニルアセタール樹脂は、以下のようにして調製した。
[ポリビニルアセタール樹脂A−1]
ケン化度が95.5mol%であり、2−プロペン酸(アクリル酸)を3.0mol%共重合したポリビニルアルコール100質量部を、水1000質量部に加え、90℃で1時間撹拌し溶解した。続いて、得られた溶液に、パラホルムアルデヒド40質量部を加え、90℃で1時間撹拌して溶解した後、濃度96質量%の濃硫酸10質量部を滴下した。濃硫酸の滴下後、液温を80℃に下げて20時間撹拌し、アセタール化反応を行った。その後、液温を25℃に下げ、反応液を水に滴下することで、反応生成物を析出させ、ろ過し、水洗・乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂A−1の白色粉末を得た。
[ポリビニルアセタール樹脂A−2]
ケン化度が93.7mol%であり、2−プロペン酸(アクリル酸)を0.7mol%共重合したポリビニルアルコール100質量部を、水1000質量部に加え、90℃で1時間撹拌し溶解した。続いて、得られた溶液に、パラホルムアルデヒド70質量部を加え、90℃で1時間撹拌して溶解した後、濃度96質量%の濃硫酸10質量部を滴下した。濃硫酸の滴下後、液温を80℃に下げて20時間撹拌し、アセタール化反応を行った。その後、液温を25℃に下げ、反応液を水に滴下することで、反応生成物を析出させ、ろ過し、水洗・乾燥を経てポリビニルアセタール樹脂A−2の白色粉末を得た。
[ポリビニルアセタール樹脂A−3]
ポリビニルアルコールを、ケン化度が96.1mol%であり、2−プロペン酸(アクリル酸)を7.2mol%共重合したポリビニルアルコールに変更した以外は、ポリビニルアセタール樹脂A−2と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂A−3の白色粉末を得た。
[ポリビニルアセタール樹脂A−4]
ポリビニルアルコールを、ケン化度が99.5mol%であり、2−プロペン酸(アクリル酸)を4.8mol%共重合したポリビニルアルコールに変更した以外は、ポリビニルアセタール樹脂A−1と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂A−4の白色粉末を得た。
[ポリビニルアセタール樹脂A−5]
ポリビニルアルコールを、ケン化度が93.8mol%であり、アリルスルホン酸ナトリウムを4.1mol%共重合したポリビニルアルコールに変更した以外は、ポリビニルアセタール樹脂A−1と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂A−5の白色粉末を得た。
[ポリビニルアセタール樹脂A−6]
ポリビニルアルコールを、ケン化度が94.3mol%であり、アリルスルホン酸ナトリウムを0.3mol%共重合したポリビニルアルコールに変更した以外は、ポリビニルアセタール樹脂A−1と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂A−6の白色粉末を得た。
[ポリビニルアセタール樹脂A−7]
ケン化度が94.9mol%であり、2−プロペン酸(アクリル酸)を6.5mol%共重合したポリビニルアルコール100質量部を、水1000質量部に加え、90℃で1時間撹拌し溶解した。得られた溶液を65℃に冷却し、これにn−ブチルアルデヒド100質量部を加えた後、濃度96質量%の濃硫酸10質量部を滴下した。濃硫酸の滴下後、液温を65℃に保持して20時間撹拌し、アセタール化反応を行った。その後、液温を25℃に下げ、反応液を水に滴下することで、反応生成物を析出させ、ろ過し、水洗・乾燥を経てポリビニルアセタール樹脂A−7の白色粉末を得た。
[ポリビニルアセタール樹脂A−8]
ポリビニルアセタール樹脂(ブチラール基量65.0mol%、アセチル基量1.2mol%、水酸基量33.8mol%)100質量部と、2−ソジウムスルホエチルメタクリレート4質量部とを、ジメチルスルホキシド400質量部に加え、25℃で撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂および2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを溶解した。得られた溶液に、窒素ガスを30分間吹き込んで窒素置換した後、撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部をジメチルスルホキシド20質量部に溶解した重合開始剤溶液を、上記窒素置換した溶液に、3時間かけて滴下添加した。その後、液温を85℃に保持して3時間撹拌し、グラフト化反応を行った。その後、液温を25℃に下げ、反応液を純水に滴下することで、反応生成物を析出させ、ろ過し、水洗・乾燥を経てポリビニルアセタール樹脂A−8の白色粉末を得た。
[ポリビニルアセタール樹脂A−9]
ポリビニルアルコールを、ケン化度が93.3mol%であるポリビニルアルコールに変更した以外は、ポリビニルアセタール樹脂A−2と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂A−9の白色粉末を得た。
調製したポリビニルアセタール樹脂(A)の組成を表1に示す。
Figure 2018012743
添加剤(C)として、下記のものを使用した。
C−1:ポリエーテル型ポリウレタン樹脂水性分散体(楠本化成社製、NeoRez R−600)
C−2:エポキシ化合物(ナガセ化成工業社製、デナコールEX−313)
C−3:オキサゾリン基含有化合物(日本触媒社製、エポクロスWS−700)
C−4:カルボジイミド化合物(日清紡社製、カルボジライトE−02)
C−5:層状無機化合物(クニミネ工業社製、クニピアF)
C−6:酸化マグネシウム(和光純薬工業社製、粒子径0.01μm)
実施例1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、45gのポリビニルアセタール樹脂A−1、90gのテトラヒドロフラン(THF)、15gのトリエチルアミン(TEA、樹脂中のイオン性官能基に対して10倍当量)および150gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃ に保ってさらに30分間撹拌した。その後、水浴につけて撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却し、50gの蒸留水を追加した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、60℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、125gの水性媒体を留去した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
実施例1A
実施例1で得られたポリビニルアセタール樹脂水性分散体を攪拌し、ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の固形分100質量部に対して、添加剤C−1を固形分換算で50質量部添加し、室温で30分間、撹拌して、添加剤混合ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
実施例1B〜1F
実施例1Aと同様に、添加剤C−2〜C−6を固形分換算で表2に示す量を添加し、添加剤混合ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
なお、実施例1Eにおいては、添加剤C−5の層状無機化合物10質量部と、ガラスビーズ250質量部とをポリビニルアセタール樹脂水性分散体と混合し、ペイントシェーカーで1時間振とう分散した後、ガラスビーズを取り除いて、添加剤混合ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。また、実施例1Fにおいては、添加剤C−5に代えて添加剤C−6の酸化マグネシウムを使用した以外は、実施例1Eと同様にして添加剤混合ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
実施例2
添加する塩基性化合物(B)の種類をアンモニア(NH、25%NH水を用いた)とした以外は実施例1と同様の方法で乳白色の均一なポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
実施例3〜9
イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)の種類、および塩基性化合物(B)の含有量を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法で乳白色の均一なポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
比較例1
イオン性官能基を有しないポリビニルアセタール樹脂A−9を用いた以外は実施例1と同様の方法で検討を行ったが、多量の樹脂の存在が目視で観察され、実質的に樹脂の水性分散体は得られなかった。
比較例2
3L容ポリエチレン製容器に、ポリビニルアセタール樹脂A−1を50gとメタノールを750g投入し、約50℃の温水で容器を加熱しながら撹拌することにより、完全にポリビニルアセタール樹脂をメタノールに溶解させ、固形分濃度6.25質量%のポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。次いで、ジャケット付き3L容ガラス容器に1500gの蒸留水を仕込み、室温(約25℃)下で撹拌しながら、上記ポリビニルアセタール樹脂溶液を40g/minの速度で滴下添加した。ポリビニルアセタール樹脂溶液を全量添加する間、系内温度は常に室温(約25℃)であった。ポリビニルアセタール樹脂溶液の添加終了後、ジャケットに温水を通して系内温度を30℃に保ち、減圧しながら撹拌することで2050gの水性媒体を留去した。冷却後、ガラス容器内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
比較例2A〜2C
比較例2で得られたポリビニルアセタール樹脂水性分散体を撹拌し、ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の固形分100質量部に対して、添加剤C−1、C−2、C−4を固形分換算で表2に示す量を添加し、室温で30分間、撹拌して、添加剤混合ポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
比較例3、4
ポリビニルアセタール樹脂の種類を変更した以外は比較例2と同様の方法で乳白色の均一なポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
比較例5
原料の仕込み工程において、不揮発性の水性化助剤であるノイゲンTDS−80(第一工業製薬社製、ポリオキシエチレントリデシルエーテル)を固形分全質量に対して3質量%となるように添加した以外は実施例1と同様の方法でポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得た。
ポリビニルアセタール樹脂水性分散体および添加剤混合ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の構成、特性、ならびにこれから得られる塗膜の特性を表2に示した。
Figure 2018012743
実施例1〜9では、不揮発性水性化助剤を用いなくても、保存安定性や様々な添加剤との混合安定性に優れたポリビニルアセタール樹脂水性分散体を得ることができた。また、得られる塗膜は、密着性、耐水性、耐溶剤性および耐熱保持力に優れていた。
一方、各比較例では以下のような問題があった。
比較例1では、ポリビニルアセタール樹脂がイオン性官能基を含有していないため、水性分散体は得られなかった。
比較例2〜4では、ポリビニルアセタール樹脂のメタノール溶液を、水に徐々に投入して転相乳化を行うことで水性分散体は得られた。しかしながら、得られた水性分散体は、微細化された分散状態を保つことが困難であり、保存安定性に劣るものであった。また、この水性分散体は、他の重合体の水性分散体や、架橋剤との混合安定性に劣るものであった。
比較例5では、ポリビニルアセタール樹脂水性分散体の製造に不揮発性水性化助剤を使用したため、得られた塗膜は、密着性および耐水性に劣るものであった。

Claims (5)

  1. イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)と、塩基性化合物(B)とを含有する水性分散体であって、塩基性化合物(B)が、アンモニアまたは沸点が250℃以下の有機アミン化合物であることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂水性分散体。
  2. ポリビニルアセタール樹脂(A)が有するイオン性官能基が、カルボキシル基であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体。
  3. ポリビニルアセタール樹脂(A)におけるイオン性官能基の含有量が0.01〜1mmol/gであることを特徴とする請求項1または2記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体から得られる塗膜。
  5. 請求項1記載のポリビニルアセタール樹脂水性分散体を製造するため方法であって、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂(A)、塩基性化合物(B)、および水性媒体を、加熱し、攪拌することを特徴とするポリビニルアセタール樹脂水性分散体の製造方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112708003A (zh) * 2019-10-24 2021-04-27 中国石油化工股份有限公司 改性聚乙烯醇
CN116574345A (zh) * 2023-05-24 2023-08-11 江西省宏丰塑胶有限公司 一种耐黄变聚乙烯醇缩丁醛及其制备方法

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