JP5031138B2 - 昇降路の出入りにおける安全性確保の方法及びエレベータ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人が、かごに出入りするとき以外にエレベータ昇降路を出入りしたことを認識し、安全を確保するためにエレベータの運転を制御することに関する。
【0002】
【従来の技術】
エレベータ作業者、ビル管理人、破壊行動をとる不法侵入者などといった昇降路に入る人は、エレベータが通常の速度で不意に動いたときに重大で致命的な事故に巻き込まれるおそれがある。このような事故は、オーバヘッドまたはピットにおいて最もよく起こり、エレベータの急な動きによって人が押しつぶされる。巻上機または制御装置がピットに位置する装置では、この問題がより大きくなる。設計者は、絶えずオーバヘッドの寸法とピットの深さを減少させようとしているので、事態は更に悪い。
【0003】
これまで、エレベータ装置は、作業者が通常運転モード位置から点検運転モード位置へと点検スイッチを切り換えることに依存し、人が昇降路に入ったことを認識する設備を備えていなかった。スイッチの切換は、通常、エレベータが1つの階に停車しているときに行われ、作業者は、次の上階において昇降路ドアをこじ開けて、かご室の屋根上へと昇降路に入る。次に、点検スイッチを通常運転モードから点検運転モードへと切り換え、続いて、点検ボックスのスイッチによってかご室の動きを制御する。作業者が点検スイッチを通常運転モードに戻すと、昇降路ドアスイッチがショートするかまたは非作動状態となり、一見安全回路が働いているかのように思われる。また、作業者が点検スイッチを点検モードに入れそこなった場合には、エレベータがなんらかの理由で上昇し始めて、作業者がかごの頂部と昇降路ドアの敷居の間で押しつぶされるおそれがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この問題を部分的に解決する従来技術で周知の方法は、昇降路ドアが開かれ、次に停止スイッチが停止位置とされ、続いて点検スイッチが通常位置へと切り換えられ、最後に昇降路ドアが完全に閉じられる、ことを含むシーケンスを要求する。しかし、この方法でも、第一に、人が昇降路に入ったことを装置に知らせることがなく、点検スイッチが点検モードに切り換えられたときに始めて人が昇降路に入ったことが認識されるので、昇降路内の作業者は押しつぶされるリスクを有している。更に、このような装置は、いずれも作業者が(点検スイッチを起動することができない)ピットに入ったことを検出することができない。
【0005】
本発明の目的には、ピットであるかオーバヘッドであるかにかかわらず、エレベータ昇降路内に人が入ったことを検出し、点検速度もしくは通常速度で運行しているエレベータの不意の動きによって人が押しつぶされるおそれを実質的になくすとともに、オーバヘッドまたはピットの寸法が減少した従来及び機械室を省略したエレベータにおいて安全性を提供し、かつ法的な認可が得られるように充分に安全性の高い昇降路の出入り制御を提供することを含む。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、昇降路ドアの状態とエレベータドアの状態が連続的に監視され、昇降路ドアがかごのドアとともに開かない場合には、昇降路への出入りがあったと見なして、昇降路の頂部の制御装置を使用して、かごを点検(遅い)速度のみで運転可能とする。通常運転への復旧は、昇降路ドアが開いた状態でかごの頂部の点検スイッチを通常運転へと戻してから、昇降路ドアを閉じるか、または、乗場ドアが全て閉じた状態で(昇降路の外部の)外部リセットを接続させるか、これらの組み合わせによって行われる。更に、本発明によると、エレベータが点検速度で移動中に操作された場合、かごが人が存在できる充分な空間(6フィート以上)を残して停車するように、点検速度リミットスイッチが昇降路の頂部及び底部に近接して設置されている。
【0007】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の実施の形態及び添付図面によってより明らかとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1を参照すると、エレベータシャフトのアウトライン6は、側壁7、オーバヘッド8、及びピット9の床部11を含む。点検スイッチ10が、エレベータかご11の頂部に配置されている。昇降路は、上部終端乗場リミットスイッチ12、下部終端乗場リミットスイッチ13、及び本発明に係る上部点検速度リミットスイッチ16、下部点検速度リミットスイッチ17を備える。エレベータは、更に、昇降路内の人が操作不能である制御装置18と外部スイッチ19とを備える。
【0009】
図2を参照すると、開始点20から周期的に昇降路の出入りルーチンが始まり、始めの2つの判断ステップ22,23は、いずれも以下に説明する特定のローカルロジックフラグに対応する。昇降路に出入りするものがなく、エレベータが通常通り運行している場合には、判断ステップ22,23は、通常NOとなるので、判断ステップ26に進み、昇降路ドアが完全に閉じているか否かを判定する。昇降路ドアが完全に閉じていれば、出入りがないので、判定がYESとなり、戻り点27から他のプログラムに戻る。しかし、昇降路ドアが完全に閉じていない場合には、判断ステップ29でかごのドアが完全に閉じているか否かを判定する。閉じていなければ、通常通りかごのドアによって昇降路ドアが開かれているということなので、通常で安全な状態であり、判断ステップ29がNOとなり、戻り点27から他のプログラムに戻る。しかし、昇降路ドアが完全に閉じておらず、かつかごのドアが完全に閉じている場合には、昇降路への出入りがあることを示し、判断ステップ29がYESとなって、ステップ31,32,33に進み、ステップ31で、緊急停車をセットし(もちろん、エレベータが動いているときのみ緊急停車をセットするように限定することもできる)、ステップ32で、通常運転をリセットして、エレベータが以下に説明する方法以外によって通常の運転を再開することができないようにし、ステップ33で、昇降路占有フラグをセットして、通常運転を再開する前に点検制御装置もしくは外部スイッチを使用することが必要となるようにする。次に、戻り点27から他のプログラムに戻る。この状態では、エレベータは、(通常運転でない)運転停止状態となっていることが想定され、この状態に達すると、ブレーキが完全に掛かる。
【0010】
続く図2のルーチンにおいて、判断ステップ22は、引き続きNOであるが、ステップ33で昇降路占有フラグがセットされたので、判断ステップ23は、YESとなる。従って、判断ステップ36で、昇降路ドアが閉じているか否かが判定される。昇降路ドアが閉じていなければ、戻り点27から他のプログラムに戻り、かごは、緊急停車状態のままとなる。通常、作業者がエレベータのオーバヘッドに入って点検制御装置を作動させる場合には、通常運転/点検運転スイッチを点検にセットするとともに、運転停止スイッチを停止にセットし、続いて、安全回路によって昇降路ドアが閉じていると認識されるように、昇降路ドアをショートさせて、実際には、昇降路ドアが開いた状態でかごを移動可能とする。一旦この状態となると、続く図2のルーチンにおいて、判断ステップ36がYESとなり、判断ステップ37に進み、点検スイッチが通常運転から点検運転へ切り換えられたか否かが判定される。切り換えられていれば、判断ステップ37がYESとなり、一連のステップ39〜41に進み、緊急停車をリセットし、点検速度運転を許可し、エレベータが上限または下限に達した場合に、従来のようにリミットスイッチによってエレベータが停車するように、点検速度リミットスイッチを起動する。次に、戻り点27から他のプログラムに戻る。この時点では、作業者は、エレベータを上下に移動させて他の作業を行う。時間が経過すると、作業者は、作業を終了し、昇降路ドアスイッチの分流器を取り外す。
【0011】
続く図2のルーチンにおいて、判断ステップ22がYESとなり、テスト44に進んで、昇降路ドアが開いているか否かを判定する。これは、システムが、続いてドアが閉じているという指示を信じるように設置されたドアスイッチ分流器を、作業者が取り外す作業を確認するためのステップである。開いているドアがなければ、戻り点27から他のプログラムに戻るが、昇降路ドアが1つでも開いていれば、判定ステップ45で、点検スイッチが通常運転にセットされているか否かが判定される。この手順では、通常運転に戻るためには、昇降路ドアが開いており、昇降路ドアが開いたままの状態で点検スイッチを通常運転に戻す必要がある。点検スイッチが通常運転に切り換えられていなければ、判定ステップ45がNOとなり、戻り点27から他のプログラムに戻る。昇降路ドアが開いた状態で、かつ点検スイッチが通常運転に切り換えられていれば、ステップ46で点検速度運転許可がリセットされ、他のプログラムに戻る。
【0012】
続くルーチンにおいて、判断ステップ22は、NOとなるが、判定ステップ23は、YESのままであるので、判定ステップ36に進み、昇降路ドアが全て完全に閉じているか否かが判定される。全て完全に閉じていなければ、他のプログラムに戻る。作業者は、スイッチを通常運転に戻すとともに昇降路ドアを通ってエレベータから降りると、昇降路ドアを閉じると想定される。全ての昇降路ドアが閉じられると、判断ステップ36がNOとなり、判断ステップ37に進む。点検スイッチは、もはや点検運転にセットされていないと想定されるので、判定ステップ37は、NOとなり、判断ステップ47に進んで、システム全体のリセットが行われたかどうかを判定する。通常は、リセットが行われていないので、判断ステップ47がNOとなり、判断ステップ50に進み、昇降路の外部に設置されたリセットスイッチが操作されたか否かを判定する。リセットスイッチが操作されていなければ、システムは、“昇降路占有”モードのままとなる。ドアが閉じられるとともに、外部スイッチが操作されると、一連のステップ53〜56が点検フラグをリセットし、点検速度運転許可をリセットし、点検速度リミットスイッチを(作動したか否かにかかわらず)停止し、通常運転状態をセットする。これで、エレベータが復旧し、通常通り運転可能となる。
【0013】
作業者がピットに入ると、通常、昇降路ドアを開くとともに開いた状態のままとするので、安全装置によってエレベータの運転が防止される。これにより、判断ステップ26がNOとなるとともに、判断ステップ29がYESとなり、ステップ31〜33に進んで、システムが“昇降路占有”モードとなる。しかし、続くルーチンで判断ステップ23がYESとなり、判断ステップ36がNOとなる。作業者がピットを出て昇降路ドアを閉じるまで、この状態が続く。作業者がピットから出てドアを閉じると、判断ステップ36がYESとなり、判断ステップ37がNOとなり、判断ステップ47がNOとなり、判断ステップ50がYESとなることで、通常運転に復旧する。所望であれば、作業者がオーバヘッドにいて点検スイッチを使用している場合には、外部リセットスイッチ及び判断ステップ50を省略することができる。しかし、好適な実施例では、外部スイッチは、作業者がオーバヘッドに入る場合及びピットに入る場合の両方で使用される。
【0014】
破壊行動をとる人が昇降路に侵入して、判断ステップ36,37のシーケンスに従わない場合には、点検スイッチが切り換えられたか否かにかかわらず、一旦昇降路ドアが完全に閉じた後に、管理者がシステム全体をリセットする必要があり得る。この状態は、判断ステップ47がYESとなって、ステップ58で緊急停車をリセットし、続くルーチンがステップ53〜56に進み、上述したように通常運転状態に復旧するときに生じる。
【0015】
図2に基づいて説明した実施例は、昇降路ドアが開いた状態(判断ステップ44)で点検スイッチを通常運転に切り換え(判断ステップ45)、続いて、昇降路ドアを完全に閉じる(判断ステップ49)ことを含むシーケンスと、外部リセットスイッチを必要とするシーケンスと、の両方を含む。所望であれば、本発明は、単に、判断ステップ45,45及び49のみを使用し、判断ステップ50を省略して実施することができる。
【0016】
従って、本発明をその例示的な実施例に基づいて開示及び説明したが、当業者であれば理解されるように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、上記及び他の種々の変更、省略、及び追加が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常及び点検速度リミットスイッチの位置を示したエレベータ昇降路の概略図である。
【図2】本発明の実施において実行され得る機能のフローチャートである。
【符号の説明】
10…点検スイッチ
11…エレベータかご
16,17…点検速度リミットスイッチ
18…制御装置
19…外部スイッチ

Claims (5)

  1. ドアつきのかごと複数の昇降路ドアを備える昇降路とを有するエレベータ装置において、
    前記全ての昇降路ドア及びかごのドアの開閉状態を連続的に監視し、
    前記昇降路ドアの1つが完全に閉じておらず、同時に前記かごのドアが完全に閉じている場合に、必要に応じて前記かごを緊急停車させて、エレベータの通常運転を中止し、
    ドア分流器の設置により前記昇降路ドアが完全に閉じていると認識され、かつ前記かごの点検スイッチが点検運転モード位置に設定されている場合に、前記緊急停車を解除して、点検運転モードでの運転を可能とし、
    点検運転モードでの運転が可能となっている場合において、ドア分流器を取り外すことにより少なくとも1つの前記昇降路ドアが開いている状態が認識されるとともに、前記点検スイッチが通常運転モード位置に切り換えられ、続いて全ての昇降路ドアが閉じられることに応答して、前記エレベータが通常運転を再開することを含むことを特徴とする昇降路の出入りにおける安全性確保の方法。
  2. 前記昇降路ドアが全て閉じているとともに、前記点検スイッチが通常運転モード位置にあり、かつ前記昇降路の外部にあるスイッチが作動されることに応答して、前記エレベータが通常運転を再開することを含むことを特徴とする請求項1記載の昇降路の出入りにおける安全性確保の方法。
  3. ビル内のエレベータ装置であって、
    複数の昇降路ドアを有する昇降路と、
    前記昇降路内で移動可能となっているとともに、前記昇降路ドアのいずれを通しても出入りを可能とするドアを備えるかごと、
    前記かごに設けられるとともに、該かごを通常運転モードと点検運転モードとの間で切り換えるように操作可能な点検スイッチと、
    前記全てのドアの開閉状態を監視する信号処理手段と、を含み、
    前記信号処理手段は、前記昇降路ドアの1つが完全に閉じておらず、かつ前記かごのドアが完全に閉じている状態に応答して、前記かごを緊急停車させるとともに該かごの通常運転を中止し、ドア分流器の設置により前記昇降路ドアが完全に閉じていると認識され、かつ前記かごの点検スイッチが点検運転モード位置に設定されていることに応答して、前記緊急停車を解除して、前記かごを点検運転モードとし、前記点検スイッチが通常運転モード位置に設定されていると同時にドア分流器を取り外すことにより少なくとも1つの前記昇降路ドアが開いている状態が認識され、これに続いて前記昇降路ドアの全てが閉じられることに応答して、前記かごを通常運転モードとすることを特徴とするエレベータ装置。
  4. 前記ビル内で、前記昇降路内の人によって操作不能な位置に設けられた外部スイッチを更に含み、
    前記信号処理手段が、前記外部スイッチの操作と同時に昇降路ドアが全て閉じている状態に応答して、前記かごを通常運転モードとすることを特徴とする請求項記載のエレベータ装置。
  5. 前記昇降路内に配置された複数の点検速度リミットスイッチを更に含み、前記エレベータが前記点検運転モードで運転しているときに該エレベータによって該スイッチが起動されると、前記エレベータが前記昇降路のいずれの終端からもある距離で停車し、この距離は、該エレベータと該終端との間に存在し得る人にとって安全な距離であることを特徴とする請求項記載のエレベータ装置。
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