JP5004573B2 - 半導体製造装置用耐食性部材およびその製造方法 - Google Patents

半導体製造装置用耐食性部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体製造装置に用いる耐食性部材に関し、特にハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに曝される部位に用いられる耐食性部材に関する。
従来から、プラズマCVD装置等の半導体製造装置内でハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに曝される部位に高い耐食性を有する部材としてセラミックスが用いられている。
そして、この耐食性を有する部材として用いられるセラミックスには、例えばアルミナ,イットリウム・アルミニウム・ガーネット,イットリア等の酸化物セラミック焼結体が挙げられる。このような酸化物セラミック焼結体はいずれもハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマとの反応で生成するハロゲン化物の融点や沸点が高く、腐食の進行を遅らせることができるので耐食性に優れている。
しかしながら、プラズマCVD装置等に用いられるプラズマは活性であるため、耐食性に優れる酸化物セラミック焼結体であっても腐食が進行すると、ハロゲン化物の生成に伴うパーティクルが発生する。なお、パーティクルは、ハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに曝されることによって反応して生成するハロゲン化物が蒸発と固化を繰り返して堆積したものが剥離して発生する場合と、電場によって加速されたイオンがハロゲン化物に入射するイオン衝撃によって発生する場合とが考えられる。半導体の製造においてはこれらのパーティクルが不良の原因となるため、パーティクルが発生しにくい耐食性部材が求められている。
この要求に対し、例えば、特許文献1には、腐食性ガスを用いて処理を行なう半導体製造装置に使用される半導体製造装置用部材であって、気孔率が10%以下で、かつ表面粗さRaが1μmより大きいセラミックス焼結体からなる半導体製造装置用部材が提案されている。このような半導体製造装置用部材であれば、部材表面の凹凸が表面に生成するハロゲン化膜や析出物に対するアンカー効果をもたらすため、ハロゲン系腐食性ガスやそのプラズマに対して十分な耐食性を維持しつつ、ハロゲン化膜や析出物が剥離し難くなり、パーティクルの発生が低減できるというものである。
また、特許文献2では、純度95%以上の緻密質セラミックスからなる基材の表面が、表面粗さRaが3〜40μmの丸みを帯びた第1の凹凸に形成され、かつ、この第1の凹凸の表面が表面粗さRaが0.1〜2.9μmの丸みを帯びた第2の凹凸に形成されている粗表面を有するセラミックス部材が提案されている。この粗表面を有するセラミックス部材によれば、全表面積が第1の凹凸の表面積と第2の凹凸の表面積とを加えたものとなると共に、第2の凹凸の中にその指向方向が基材の元の表面を指向しないものが存在し、かつ、表面の全てが丸みを帯びたものとなるので、極めて優れたアンカー効果を発揮し、従来よりもパーティクルを低減できるというものである。
特開2000−247726号公報 特開2003−171190号公報
しかしながら、特許文献1または2に開示されている半導体製造装置用部材は、パーティクルとなるハロゲン化膜や析出物の落下を防止するために、部材表面に無数の凹凸部が存在し、または形成されており、この凹凸部によって形成される突起(エッジ)が半導体製造用装置内で発生させるプラズマの安定性に影響を及ぼすことが明らかとなっている。特に近年では、半導体技術の進歩に伴って半導体ウエハも8インチから12インチへ大径化され、より安定なプラズマを生成して精度のよいエッチングを短時間で行なう必要がある。
したがって、特許文献1,2に記載の従来の半導体製造装置用部材をプラズマCVD等の半導体製造装置に用いると、装置内で生成させるプラズマが安定せず、長時間の慣らし運転を必要とし、成膜工程の遅れや高精度なエッチングを短時間で安定させて実施することができないおそれがあった。特に、高周波を印加してプラズマ生成する初期段階に耐食性部材の表面の粗さ曲線に見られる非常に尖った山や深い谷がある場合には、プラズマが安定せず、エッチングレートに大きなバラツキが生じるため、耐食性部材の表面の粗さ曲線に見られる非常に尖った山や深い谷が腐食されるまで、もしくはハロゲン化膜や析出物の付着により滑らかになるまで長時間の慣らし運転を実施しなければならないという問題があり、このように長時間の慣らし運転を必要とすると、エッチング工程以降の成膜工程の実施が遅れ、半導体製造工程における生産効率が著しく低下するという問題があった。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、長時間の慣らし運転を行なう必要なく短時間で安定したエッチングレートを確保することが可能な耐食性部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の半導体製造装置用耐食性部材は、アルミナ、イットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとの複合材料のいずれか
酸化物セラミック焼結体からなり、ハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに曝される表面の算術平均高さ(Ra)が3μm以下の耐食性部材であって、前記酸化物セラミック焼結体の平均結晶粒径が1〜50μmであり、かつ前記表面の粗さ曲線から求められるスキューネス(Rsk)が−1.0〜+0.5でり、クルトシス(Rku)が3.0〜4.5であることを特徴とするものである。
また、本発明の半導体製造装置用耐食性部材の製造方法は、上記構の耐食性部材の製造方法であって、アルミナ、イットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとの複合材料のいずれかのセラミック材料である1次原料にバインダと溶媒とを混合し2次原料を得る工程と、表面状態を加工した成形型に前記2次原料を充填して成形し、前記成形型の表面状態を転写した成形体を得る工程と、大気または酸化性雰囲気にて1550〜1700℃の最高温度を2時間以上保持した後、最高温度から1000℃までを5〜20℃/時間、1000℃から500℃までを20〜50℃/時間、500℃から常温までを50〜100℃/時間の速度で降温する工程とからなることを特徴とするものであ
る。
本発明の半導体製造装置用耐食性部材によれば、アルミナ、イットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとの複合材料のいずれかの酸化物セラミック焼結体からなり、ハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに曝される表面の算術平均高さ(Ra)が3μm以下の耐食性部材であって、前記酸化物セラミック焼結体の平均結晶粒径が1〜50μmであり、かつ前記表面の粗さ曲線から求められるスキューネス(Rsk)が−1.0〜+0. 5でり、クルトシス(Rku)が3.0〜4.5
であることにより、耐食性部材表面に無数の凹凸部(エッジ)が存在し、または形成されており、半導体製造装置内で発生させるプラズマがこの凹凸部によって分散されて安定性に影響するエッジ効果を低減できるので、このような耐食性部材をプラズマCVD装置用の耐食性部材として用いた場合に、エッチングレートを短時間で安定させることが可能なため、高周波を印加してプラズマを生成する初期段階から安定したエッチングを実施でき、その後の成膜を実施できるため、半導体製造工程における生産効率を向上させることが可
能となる。
また、本発明の半導体製造装置用耐食性部材によれば、セラミック焼結体の表面の粗さ曲線から求められるクルトシス(Rku)が3.0〜4.5であることにより、耐食性部材の表面を従来よりも滑らかな表面とすることができるので、プラズマの安定性に影響するエッジ効果を低減できるため、半導体ウエハ表面のエッチングレートをより短時間で安定させることができ、半導体製造工程における生産効率を向上させることが可能となる。
さらに、本発明の半導体製造装置用耐食性部材によれば、アルミナイットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとの複合材料のいずれかの酸化物セラミック焼結体からなることにより、プラズマとの反応で生成するハロゲン化物の融点や沸点が高く、腐食の進行を遅らせることができるので、充分な耐食性を兼ね備えた耐食性部材とすることが可能となる。
また、本発明の半導体製造装置用耐食性部材の製造方法によれば、本発明の半導体製造装置用耐食性部材を、アルミナ、イットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとの複合材料のいずれかのセラミック材料である1次原料にバインダと溶媒とを混合し2次原料を得る工程と、表面状態を加工した成形型に前記2次原料を充填して成形し、前記成形型の表面状態を転写した成形体を得る工程と、大気または酸化性雰囲気にて1550〜1700℃の最高温度を2時間以上保持した後、最高温度から1000℃までを5〜20℃/時間、1000℃から500℃までを20〜50℃/時間、500℃から常温までを50〜100℃/時間の速度で降温する工程とからなる方法で製造することに
より、塑性変形可能な金属製成形型のより滑らかな表面をセラミック成形体の表面に転写し、かつその表面を保つためにより均質なセラミック粒子の粒成長を促す焼成パターンとしているために、従来はブラストや各種研削,研磨加工等の焼成後の加工により所定の面粗さを得ていた製法は元より、成形体に加工を施して焼成した製法による表面と比較して、より滑らかでエッジの少ない表面状態を有する上記各構成の本発明の半導体製造装置用耐食性部材を得ることが可能となる。さらには、最高焼成温度からの降温時間を従来よりも長くしたことにより、特に耐食性部材の表面近傍のセラミック粒子の粒成長を促進させることが可能なため、より凹凸部の少ない滑らかな表面状態とした本発明の半導体製造装置用耐食性部材を製造可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の半導体製造装置用耐食性部材は、アルミナ、イットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとの複合材料のいずれかの酸化物セラミック焼結体からなり、ハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに曝される表面の算術平均高さ(Ra)が3μm以下の耐食性部材であって、酸化物セラミック焼結体の平均結晶粒径が1〜50μmであり、かつ表面の粗さ曲線から求められるスキューネス(Rsk)が−1.0〜+0. 5でり、クルトシス(Rku)が3.0〜4.5であることを特
徴としている。なお、以下の記載において、半導体製造装置用耐食性部材を、単に耐食性部材ともいう。
ここで、ハロゲン系腐食性ガスとしては、プラズマCVD装置等の半導体製造装置内で用いられるもので、SF,CF,CHF,ClF,HF等のフッ素系ガス、Cl,HCl,BCl等の塩素系ガス、Br,HBr,BBr等の臭素系ガスおよびヨウ素系ガス等が挙げられる。これらのガスが導入された雰囲気にマイクロ波や高周波を誘導し、あるいはガスの解離電圧以上の電位差を加えることにより、これらのガスがプラズマ化され、例えば近年のプラズマCVD装置では、このプラズマにより半導体ウエハの表面をエッチングまたはクリーニングした後、半導体ウエハ上に窒化膜や酸化膜等の保護膜を形成する。本発明の耐食性部材は、その表面がこれらのハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに曝されても優れた耐食性を有するものである。
また、本発明の耐食性部材は、優れた耐食性を有するとともに、その表面状態が半導体製造装置内で生成されるプラズマの安定性に影響を与えないものとなっている。従来の耐食性部材は、半導体製造装置内で、耐食性部材の表面上に堆積する堆積物に対して表面をアンカー効果を有するものとして堆積物の落下によるパーティクル発生を防止するため、その表面状態は多数の凹凸部を有したものとされていたが、このような表面状態を有する耐食性部材では、半導体製造装置内で発生するプラズマが安定せず、半導体ウエハの表面をエッチングする際のエッチングレートが安定しにくいものとなっていた。この原因としては、耐食性部材の表面の粗さ曲線に見られる非常に尖った山や深い谷等のエッジによってプラズマが分散するエッジ効果が影響しているものと考えられるが、真の原因は明らかになっていない。本発明の耐食性部材は、原因は明確ではないものの、このようなプラズマの不安定性を解消できる表面状態を有するものである。
より具体的には、その表面の算術平均高さ(Ra)を3μm以下としたものであって、平均結晶粒径が1〜50μmであり、かつその表面の粗さ曲線から求められるスキューネス(Rsk)が−1.0〜+0.5であり、クルトシス(Rku)が3.0〜4.5である耐食性部材とする。
ここで、本発明の耐食性部材の表面の算術平均高さ(Ra)を3μm以下とするのは、プラズマの安定性に影響を与えると考えられる耐食性部材の表面のエッジとなりうる凹凸部を従来と比較して平均的に低減することが可能となり、高周波を印加して初期段階から安定したプラズマを発生させ、エッチングレートの安定性を確保できるとともに、耐食性部材の表面と半導体製造装置内のハロゲン系腐食性ガスとの接触面積を低減でき耐食性部材の耐食性をも向上させることが可能となるからである。表面の算術平均高さ(Ra)が3μmより大きい場合には、必然的に耐食性部材の表面の凹凸部の高さが全体的に高くなり、プラズマに影響を与えると考えられるエッジ部が形成され易くなり好ましくない。半導体ウエハから製造されるICチップに回路パターンを焼き付けるための半導体ウエハの表面に形成された溝の底部までを安定してエッチングすることが可能なエッチングレートを得ようとすると、耐食性部材の表面の算術平均高さ(Ra)を1μm以下とするのがより好ましい。なお、表面の算術平均高さ(Ra)は、市販の接触式または非接触式の表面粗さ計を用い、JIS規格(JIS B 0601−2001,JIS B 0633−2001,JIS B 0031−2003 付属書G,F)に準拠して、例えば、算術平均高さRaが0.1μmより大きく2μm以下と推定されるときは、評価長さが4mm,カットオフ値(基準長さ)が0.8mmの設定条件で測定することができる。
また、本発明の耐食性部材の平均結晶粒径を1〜50μmの範囲内としたのは、従来と同等以上の耐食性や機械的特性を維持しつつ、高周波を印加して初期段階から安定したプラズマを発生させ、エッチングレートを安定させることのできる耐食性部材を得るためである。平均結晶粒径が1μm未満であると、耐食性部材の表面が腐食される場合にはまず結晶粒界から腐食を受け易いので、平均結晶粒径が小さくなると結晶同士を結合している結晶粒界がより減少するので、腐食によって容易に結晶粒子が脱粒し易くなり、パーティクルが生じ易くなるために好ましくなく、また50μmより大きな平均結晶粒径とすると、耐食性部材自体の強度が著しく低下するために好ましくない。
なお、平均結晶粒径の測定方法は、耐食性部材から切り出した試験片を用意し、さらに観察面を化学的または熱処理してエッチング処理を行なってアルミナ結晶の粒界組成を除去した後、1000倍の倍率にて走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮影し、その写真像から任意に10個の結晶粒を選択し、各々の結晶粒の最大長を結晶粒径として10個の結晶粒の測定値の平均を平均結晶粒径としている。
さらに、本発明の耐食性部材のスキューネス(Rsk)を−1.0〜+0.5の範囲内としたのは、耐食性部材の表面に存在する凹凸部の高さを全体的に低くするためである。スキューネスは、耐食性部材の表面の凹凸部が山と谷のどちらに偏っているかその度合いを示すものであり、山と谷のどちらかに偏りが大きければ、その部分が半導体製造装置内で発生させるプラズマの安定性に影響を与え、エッチングレートの安定性に影響すると考えられる。スキューネス(Rsk)の詳細な説明を以下に示す。なお、スキューネス(Rsk)に関しては、JIS B 0601−2001に基づいて詳細を説明する。
図1は、スキューネス(Rsk)の性質の解説図であり、(a)はスキューネス(Rsk)が正の値をとる場合の粗さ曲線と確率密度関数、(b)はスキューネス(Rsk)が負の値をとる場合の粗さ曲線と確率密度関数、(c)はスキューネス(Rsk)の値が0に近づいた場合の粗さ曲線と確率密度関数である。
図1(a)に示すように、山に対して谷の部分が広い粗さ曲線の場合は、確率密度関数は谷の方へ偏った分布形となり、スキューネス(Rsk)の値は0より大きくなり正の値を示す。一方、図1(b)に示すように山頂部分が比較的平らな粗さ曲線の場合には、確率密度関数は山側に偏って、スキューネス(Rsk)の値は0より小さくなり負の値を示す。これら図1(a),(b)に示すような粗さ曲線が得られる表面を持つ耐食性部材は、その表面の凹凸部のエッジ効果により、プラズマに影響を及ぼし、エッチングレートが安定しにくくなるものと考えられる。
したがって、本発明の耐食性部材表面は、粗さ曲線のスキューネス(Rsk)の値を−1.0〜+0.5の範囲とするのがよい。スキューネス(Rsk)の値が−1.0より小さい値となると、図1(b)に示すように、山頂部分が比較的平らな粗さ曲線となり、また、+0.5より大きい値では、図1(a)に示すように、山に対して谷の部分が広い粗さ曲線となる。このような粗さ曲線では、高さや深さの異なる山や谷がエッジとなり、このエッジ効果により半導体製造装置内で発生させるプラズマを不安定化させる要因になると考えられるため好ましくない。これに対し、本発明の耐食性部材のようにスキューネス(Rsk)の値が−1.0〜+0.5のときは、図1(c)に示すような粗さ曲線となり、確率密度関数はほぼ正規分布に近づいたものとなる。このような粗さ曲線が得られる耐食性部材の表面状態とすれば、半導体製造装置内で生成されるプラズマに対してエッジ効果による影響を与えにくく、安定したエッチングレートを得られるようになる。より好ましくは−0.5〜+0.5の範囲内とするのがよく、そうすれば、粗さ曲線の確率密度関数はより正規分布に近いものとなり、山側および谷側のいずれにも偏りがなくなるため、プラズマに与える影響もより少なくなるものと考えられる。粗さ曲線の確率密度関数において山側または谷側のいずれかに偏りが生じるということは、プラズマの安定性に影響を与えると考えられる鋭いエッジを有しているということであり、これを防止するには偏りのない正規分布の状態に近づけることが好ましい。
なお、スキューネス(Rsk)は、市販の接触式または非接触式の表面粗さ計を用い、JIS規格(JIS B 0601−2001,JIS B 0633−2001,JIS B 0031−2003 付属書G,F)に準拠して、例えば、算術平均高さRaが0.1μmより大きく2μm以下と推定されるときは、評価長さが4mm,カットオフ値(基準長さ)が0.8mmの設定条件で測定することができる。
次に、クルトシス(Rku)に関してJIS B 0601−2001に基づき詳細を説明する。
図2は、クルトシス(Rku)の性質の解説図であり、(a)はクルトシス(Rku)が3より大きくなる場合の粗さ曲線と確率密度関数、(b)はクルトシス(Rku)が3より小さくなる場合の粗さ曲線と確率密度関数である。
図2(a)に示すように、非常に尖った山および深い谷が所々にある粗さ曲線では、確率密度関数の分布形は鋭くとがり、この場合のクルトシス(Rku)の値は3より大きくなる。これに対し、図2(b)のように、なだらかな山および谷からなる粗さ曲線では、確率密度関数の分布形はなだらかになり、クルトシス(Rku)の値は3より小さくなる。
本発明の耐食性部材は、その表面の粗さ曲線から求められるクルトシス(Rku)の値を3.0〜4.5の範囲内としたことによって、エッジ効果によるプラズマへの影響をより低減させた耐食性部材とでき、安定したエッチングレートを得ることができる。このクルトシス(Rku)の値が3.0より小さいと、耐食性部材の表面に非常にとがった山や深い谷がなく、プラズマの安定化のためにはより良好な表面状態となるものの、極めて平滑な表面となり耐食性部材の表面へ付着した堆積物が極めて落下し易くなるので、パーティクルが極端に増加してしまうために好ましくない。また、クルトシス(Rku)の値が4.5より大きくなると、耐食性部材の表面に非常にとがった山や深い谷がより多く形成されるため、このような表面を有する耐食性部材をプラズマCVD装置等の装置内でプラズマを生成させる半導体製造装置用部材として用いると、非常に尖った山や深い谷のエッジ効果により生成させたプラズマが安定しにくくなり、半導体ウエハの表面のエッチングレートが安定しなくなるために好ましくない。
なお、確率密度関数が正規分布に従うときは、クルトシス(Rku)は3である。本発明の耐食性部材は、その表面のクルトシス(Rku)が3.0〜4.5の範囲内であることにより、その確率密度関数の分布形は正規分布に近づき、部材の表面にはプラズマの安定性に影響を与えるような非常にとがった山や深い谷の存在が極めて少ない状態となっている。
このクルトシス(Rku)は、市販の接触式または非接触式の表面粗さ計を用い、JIS規格(JIS B 0601−2001,JIS B 0633−2001,JIS B 0031−2003 付属書G,F)に準拠して、例えば、算術平均高さRaが0.1μmより大きく2μm以下と推定されるときは、評価長さが4mm,カットオフ値(基準長さ)が0.8mmの設定条件で測定することができる。
また、本発明の耐食性部材は特に酸化物セラミックスの中でもハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに対する耐食性に優れるアルミナイットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(以下、YAGと称す。)との複合材料のいずれかから構成されている。これらの材料と、ハロゲン系腐食性ガ
スまたはそのプラズマとが接触した場合は、AlFやYF等のフッ化物等、接触ガスとの反応生成物が表面に生成されるが、その融点,沸点は他の材料との反応生成物よりも高い。従って、プラズマの熱によっても耐食性部材の表面からこの反応生成物は溶融,昇華しにくく、このため優れた耐食性を有することになる。また、本発明に用いられる酸化物セラミックスは、純度99%以上、相対密度90%以上の特性を有するものを用いることが、耐食性をより高める点において好ましい。さらに、アルミナとYAGとの複合材料については、YAGの割合が10質量%未満では耐食性が低下し、30質量%を超えると、強度低下が著しくなる。
次に、本発明の耐食性部材の製造方法について以下に詳細を説明する。
本発明の耐食性部材に用いる酸化物セラミック焼結体の製造方法としては、1次原料であるセラミック材料として例えば平均粒径が0.5〜10μm,純度が96%以上の市販のアル
ミナを用いる。
そして、このセラミック材料を造粒またはスラリー化して2次原料とする。造粒する場合には、このセラミック材料をPVA(ポリビニールアルコール),PEG(ポリエチレングリコール)等の一般的な市販の各種バインダおよび溶媒である水とともに混合撹拌機にて混合し、ボールミルや振動ミル等の混合ミルにてさらに混合し撹拌して、バインダの分散性を高めたスラリーとする。そして、このスラリーをスプレードライヤーで造粒して2次原料とする。また、スラリー化する場合には、このセラミック材料をアクリル樹脂系バインダ,溶媒として水,硬化剤,分散剤とともに混合撹拌機にて混合し、脱鉄機による脱鉄、真空脱泡機による脱泡を実施して、スラリー化した2次原料とする。
しかる後、造粒した2次原料は金型プレス成形法や静水圧プレス成形法(ラバープレス)等の成形法を用いて成形し、スラリー化した2次原料は鋳込み成形法や射出成形法を用いて成形する。
ここで、本発明の耐食性部材の製造方法では、成形時に加工された表面状態を有する成形型を用いることにより、この表面状態を成形体の表面に転写する。成形型の表面状態を成形体の表面へ転写するには、まず成形型の表面を成形体において得たい表面状態に加工しなければならない。成形型の加工は、まず型の原型となる金属のインゴットを準備し、研削盤やフライス盤等の金属加工装置を用いて所定形状に加工する。しかる後、2次原料と接する表面に硬質のメッキ加工を施し、さらにメッキ加工が施された表面にブラスト加工や研磨加工を施して、必要とする算術平均高さ(Ra),スキューネス(Rsk),クルトシス(Rku)を有する表面に仕上げる。成形型の表面を種々の状態の表面に加工するためには、硬質のメッキ加工を施す際のメッキの厚みと研磨加工やブラスト加工に用いる砥粒粒径,粒度を種々に調整することが重要となる。
本発明の耐食性部材である酸化物セラミック焼結体の表面の算術平均高さ(Ra)の値を大きくしたい場合には、メッキ厚みを厚くして、研磨加工やブラスト加工に用いる砥粒の粒径を粗くすればよい。本発明の耐食性部材における上限である3μmの算術平均高さ(Ra)を得るには、少なくともメッキ厚みを5μmとし、研磨加工やブラスト加工で用いる砥粒についても5μm以下の粒径のものを用いるとよい。また、焼結体の表面の算術平均高さ(Ra)の値を小さくしたい場合には、メッキ厚みを薄くして研磨加工やブラスト加工に用いる砥粒の粒径を小さくすればよい。1μm以下の算術平均高さ(Ra)を得ようとすれば、少なくともメッキ厚みを2μm以下とし、砥粒粒径を2μm以下とするとよい。
さらに、焼結体の表面のスキューネス(Rsk)を本発明の範囲内とするには、研磨加工やブラスト加工に用いる砥粒の粒度をなるべく揃える必要がある。砥粒の粒径バラツキが大きい場合には、本発明のようにスキューネス(Rsk)の確率密度関数が正規分布となるような表面状態となりにくい。例えば、算術平均高さ(Ra)として3μmを得るために5μm以下の粒径の砥粒を用いる場合には、振動ふるい機等を用いてその80%以上が1〜5μmの範囲内となるように粒度を調整するとよい。
また、焼結体の表面のクルトシス(Rku)については、研磨加工やブラスト加工に用いる砥粒の粒子形状が影響する。本発明の好適範囲内とするには、粒径が2〜100μmの市販のアルミナ(WA)やSiC,ダイヤモンド(GC)製の砥粒をボールミルや振動ミルを用いて数時間再粉砕し、砥粒の鋭角部をなるべくなだらかな形状とするとよい。再粉砕するのは、市販の砥粒ではその粒度が得られる最短時間で粉砕されており、粒子形状までは揃えられていないからである。このように鋭角部を取り除いた砥粒の粒子表面であれば、金型のメッキ表面に砥粒が接触した際に、メッキ表面に高い凸部や深い凹部が形成されにくく、このメッキ表面を転写した本発明の耐食性部材の表面にも高い凸部や深い凹部が存在しにくくなる。クルトシス(Rku)が3.0〜4.5の表面状態を得ようとすれば、粒径が2〜100μmで1〜10時間の再粉砕を実施した砥粒を研磨加工やブラスト加工に用いればよい。
また、成形体の表面に転写させる成形型の表面の面粗さは、成形体がその後の焼成工程で収縮すること、あるいは成形する圧力を考慮して決定しなければならないが、これまでの検討の結果、成形圧力による影響は少なく、焼成工程での収縮のみ考慮すればよいことが判明している。よって、本発明の表面状態を有する耐食性部材を得ようとすれば、焼成時の収縮率を考慮して、成形型を算術平均高さ(Ra)が4μm以下,スキューネス(Rsk)が−1.0〜+0.5、クルトシス(Rku)が3.0〜4.5の範囲の表面状態に研磨加工するとよい。なお、表面状態の加工においては、加工と表面状態の測定とを繰り返しながら、得たい表面状態となるように再度研磨やブラスト加工を施す。そして、この成形型を用いて成形体を作製し、これを焼成すれば、表面の算術平均高さ(Ra)が3μm以下,スキューネス(Rsk)が−1.0〜+0.5、クルトシス(Rku)が3.0〜4.5の酸化物セラミック焼結体からなる耐食性部材を得ることができる。
ここでは、金属製の成形型を用いたプレス成形法を一例として説明したが、成形体との接触面が金属以外である場合には本発明の製造方法を実施するのは困難である。よって、静水圧プレス成形法では、一般的にゴム製と金属製との成形型により成形を実施するが、成形体の表面状態を効率よく本発明の範囲内とできるのは、成形体の表面が金属製の成形型の表面に接する部分のみとなる。また、鋳込み成形法においては、吸水性の石膏型や非吸水性の金属製成形型を用いるが、成形体の表面状態を効率よく本発明の範囲内とできるのは、非吸水性の成形型を用いるゲルキャスティング法のみとなる。このように、製品形状やどの部位に本発明における表面状態が必要かによって、成形方法を考慮しなければならない。
次に、得られた成形体を焼成する。用いる焼成炉としては市販のものを用いればよく、焼成雰囲気としては、大気雰囲気または酸化性雰囲気とすればよい。焼成温度については、耐食性部材として用いた酸化物セラミック焼結体が充分に緻密化する最高温度で焼成すればよい。本発明の製造方法では、最高温度に保持した後の降温側の温度パターンを、最高温度から1000℃までを5〜20℃/時間,1000℃から500℃までを20〜50℃/時間,500℃から常温までを50〜100℃/時間とした温度パターンにて降温する。
ここで、本発明の耐食性部材の焼成方法において、降温側の焼成の温度パターンをコントロールするのは、耐食性部材の表面またはその近傍の酸化物セラミックス粒子の粒成長をコントロールし、表面状態を良好な状態に保持するためである。耐食性部材の表面またはその近傍の粒子は、焼成の昇温過程で粒成長して焼成収縮が生じるが、多少の温度差で粒成長の度合いにバラツキを生じ、このため焼成収縮にもバラツキを生じる。このバラツキを降温側の温度パターンを調整し、特に最高温度から1000℃までの降温速度を遅くする温度パターンとすることで、小さい結晶粒子に熱エネルギーを付与し、粒成長を促すことによって平均化させ、成形型の表面粗さを転写した表面全体が本発明の範囲内の表面状態となるようにする。
より具体的には、最高温度から1000℃までを5〜20℃/時間とする。5℃/時間未満とした場合には、降温速度が遅すぎるため、耐食性部材の表面またはその近傍の粒子が最高焼成温度時の粒成長バラツキを持ったままさらに粒成長するため、耐食性部材の表面の粒子結晶の大きさが平均化せず、成形型の転写面全体を本発明の範囲内の表面状態とすることができなくなる。さらに、粒成長しすぎて酸化物セラミック焼結体の強度が著しく低下することとなるため好ましくない。また、20℃/時間を超える降温速度とすると、降温速度が速すぎ、遅い場合と同様に、粒成長にバラツキを生じたままとなるため好ましくない。
また、1000℃〜500℃までの降温速度を20〜50℃/時間とする。この温度域をコントロールしなければならないのは、粒成長よりもむしろ耐食性部材の表面に生じる温度差を少なくし、ヒートショック等による熱ストレスの影響を緩和して、本発明の耐食性部材における表面状態を維持するためである。20℃/時間未満の降温速度であると、降温が遅すぎるため焼成に長時間を要し、耐食性部材の生産効率が低下して製造コストが著しく上昇するために好ましくない。他方、50℃/時間を超える降温速度とすると、耐食性部材の表面に温度差が生じ易く、温度差で生じる熱応力により表面に微細な亀裂が生じ、本発明の範囲内の表面状態が得られないおそれがあるために好ましくない。
また、500℃から常温(室温)までの降温速度を50〜100℃/時間とする。50℃/時間未満の降温速度であると、降温が遅すぎるため焼成に長時間を要し、耐食性部材の生産効率が低下して製造コストが著しく上昇するために好ましくなく、100℃/時間を超える降温速度であると、表面に発生する熱応力の影響により、微細な亀裂が生じ、本発明の範囲内の表面状態を維持できなくなるために好ましくない。
そして、焼成終了後、焼成炉より焼結体を取り出し、表面を軽く洗浄することにより、本発明の酸化物セラミック焼結体からなる耐食性部材が得られる。得られた耐食性部材は、特に研削加工を施す必要はないが、焼成により多少の変形を生じた場合には、半導体製造装置へ取り付けた場合に腐食性ガスへ接触する表面以外の面に研削加工を施したり、変形部位に荷重をかけながら1000℃以下の温度で変形を修正したりすることも可能である。
このようにして製造された本発明の耐食性部材は、半導体製造装置用部材として、特にプラズマCVDによるエッチング加工を実施しながら半導体ウエハ上に窒化膜や酸化膜等のCVD膜を成膜する装置において、ハロゲン系腐食性ガスまたはそれらのプラズマに接する部位に用いることが可能である。
以上、本発明の実施の形態の例について説明したが、本発明の耐食性部材は、上述の内容に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲内であれば種々変更をしてもよいことは言うまでもない。
以下、本発明の実施例について詳細を説明する。
(実施例1)
従来の耐食性部材と、本発明の耐食性部材をRIE(リアクティブ・イオン・エッチング)装置のチャンバー外壁部に設置し、CF,CHF,Arの混合ガス雰囲気中にて装置電極に高周波出力140Wを印加してプラズマを発生させ、シリコンウエハ表面をエッチングする試験を実施した。
まず、市販のアルミナ1次原料(純度99.5%,平均粒径1μm)100kgと、バインダとして市販のPVA(ポリビニールアルコール)をこのアルミナ原料100質量部に対して2質量部の2kgと、水をアルミナ1次原料100質量部に対して100質量部の100kgとを秤量し、それらを混合攪拌機に投入して数時間混合した後、さらにボールミルにて数時間混合し、造粒用スラリーを得た。その後、このスラリーをスプレードライヤー装置に投入して造粒し、2次原料であるアルミナ造粒粉体を得た。そして、2次原料を充填する内面を算術平均高さ(Ra)が1μm,スキューネス(Rsk)が−0.05に機械加工した金型に2次原料を充填した後、金型プレス成形機にて単位面積当たりにかかる圧力が100MPaとなる成形圧力にて成形し、成形体を得た。しかる後、この成形体を1600℃の最高温度で2時間保持し、1600℃〜1000℃までを10℃/時間、1000℃〜500℃までを30℃/時間、500℃〜常温(室温)までを80℃/時間の速度で降温し、本発明の酸化物セラミック焼結体からなる耐食性部材を得た。
一方、従来の耐食性部材については、2次原料を算術平均高さ(Ra)が1μm未満の金型に充填し、単位面積当たりにかかる圧力が100MPaとなる成形圧力で成形した後、1600℃の最高温度で焼成して、平均50℃/時間の速度で常温まで降温してアルミナ焼結体を得た後、この表面をブラスト装置にて算術平均高さ(Ra)が10μmとなるように加工して、従来の耐食性部材を得た。
次に、これら本発明の耐食性部材と従来の耐食性部材とを純水中で1時間超音波洗浄した後、市販の非接触式の表面粗さ計を用いてその算術平均高さ(Ra),スキューネス(Rsk),クルトシス(Rku)をそれぞれ測定した。なお、測定条件は、JIS規格(JIS B 0601−2001,JIS B 0633−2001,JIS B 0031−2003 付属書G,F)に準拠して、推定される算術平均高さ(Ra)が0.1μmより大きく2μm以下のときは、評価長さが4mm,カットオフ値(基準長さ)が0.8mm、推定される算術平均高さ(Ra)が2μmより大きく10μm以下のときは、評価長さが12.5mm,カットオフ値(基準長さ)が2.5mmに設定した。
また、それぞれの耐食性部材の表面または表面から100μmまでの深さの平均結晶粒径を1000倍のSEM写真から算出した。
なお、平均結晶粒径の測定方法は、耐食性部材から切り出した試験片を用意し、さらに観察面を化学的または熱処理してエッチング処理を行なってアルミナ結晶の粒界組成を除去した後、1000倍の倍率にて走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮影し、その写真像から任意に10個の結晶粒を選択し、各々の結晶粒の最大長を結晶粒径として10個の結晶粒の測定値の平均を平均結晶粒径として算出した。
さらに、それぞれの耐食性部材を用いたときのエッチングレートの変化率を確認する試験を行なった。具体的には、RIE装置のチャンバー壁面に隙間なく本発明または従来の耐食性部材を設置し、同一条件でのシリコンウエハのエッチングを1時間,9時間,10時間実施した。そして、エッチング開始前,エッチング1時間実施後,9時間実施後,10時間実施後の耐食性部材の重量を電子天秤にて測定し、エッチング開始から1時間実施後までのエッチングレートと、9時間実施後〜10時間実施後までのエッチングレートとを算出した。そして、エッチングレートの変化率を、エッチング開始から1時間実施後までのエッチングレートをE1、9時間実施後から10時間実施後までのエッチングレートをE2としたとき、(E1−E2)/E1×100(%)の計算式により算出した。以上の測定結果をまとめて表1に示す。
Figure 0005004573
この結果、従来の耐食性部材の算術平均高さ(Ra)が5.5μm,スキューネス(Rsk)が−2.5,クルトシス(Rku)が6.5であったのに対し、本発明の耐食性部材は、算術平均高さ(Ra)が0.7μm,スキューネス(Rsk)が−0.1,クルトシス(Rku)が3.8であった。なお、平均結晶粒径については、本発明の耐食性部材が25μm、従来の耐食性部材が23μmと値に大きな差は見られなかったが、従来の耐食性部材は値のバラツキが大きかった。
そして、従来の耐食性部材のエッチングレートの変化率は、算術平均高さ(Ra),スキューネス(Rsk),クルトシス(Rku)の値が大きいために80%となり、エッチングレートが安定しなかった。このように、スキューネス(Rsk)やクルトシス(Rku)の値の大きな表面の凹凸部を有する従来の耐食性部材では、装置内で生成させるプラズマが安定せず、エッチングレートも安定させることが困難であることが確認される結果となった。
これに対し、本発明の耐食性部材によるエッチングレートの変化率は10%であり、高周波を印加してプラズマ生成する初期段階からほとんどエッチングレートは変化せず、本発明の耐食性部材を用いることによって、装置内のプラズマを安定させ、初期段階からエッチングレートを安定させることができることが確認された。
(実施例2)
次に、本発明の耐食性部材を、実施例1と同様のアルミナ2次原料を用いて、内面の算術平均高さ(Ra)を種々変更した成形型により成形し、この成形体を焼成時の最高温度から1000℃までの降温速度を種々変更して焼成し製造した。そして、JIS B 0601−2001に準拠して、実施例1と同じ条件で市販の非接触式の表面粗さ計により耐食性部材の表面の算術平均高さ(Ra),スキューネス(Rsk),クルトシス(Rku)を測定した後、実施例1と同様のRIE装置のチャンバー内壁に設置し、同条件にてエッチングレートの変化率を測定する試験を実施した。
また、焼成後の各焼結体からは、予めJIS R 1601−1995に準拠して、焼結体を加工し、算術平均高さ(Ra)が0.2μm以下、長さが36mm,幅が4mm,厚さが3mmで、0.2mmのC面を付けた試験片を作製し、荷重試験機を用いてこの試験片に荷重を印加し、破壊するまでの最大荷重を測定し、次式により3点曲げ強度を算出した。
3点曲げ強度σ(N/mm)=3PL/2wt
ここで、Pは試験片が破壊したときの最大荷重(N)、Lは下部支点間距離(mm)、wは試験片の幅(mm)、tは試験片の厚さ(mm)である。
以上の試験結果をまとめて表2に示す。
Figure 0005004573
表2に示す結果から、本発明の範囲外の試料No.1〜3については、成形型の表面の算術平均高さ(Ra)が4μmより大きく、焼成後の耐食性部材の表面の算術平均高さ(Ra)が3μmを超えていたため、RIE装置内で生成させたプラズマが不安定で、エッチングレートの1時間後と10時間後の変化率が30%以上と大きく、エッチングレートが安定しないことが確認された。
また、特に試料No.1については、スキューネス(Rsk),クルトシス(Rku)の値もそれぞれ+0.8,5.6と大きくなり、エッチングレートの変化率が大きく安定しないことが分かった。
また、本発明の範囲外の試料No.4,8,11,14については、焼成時の最高温度1600℃から1000℃までの降温速度が遅すぎ、焼結体の表面または表面近傍の結晶粒子径が50μmより大きくなりすぎたために、耐食性部材の強度が300MPa未満と低いものとなった。また、スキューネス(Rsk),クルトシス(Rku)の値が大きく、エッチングレートの変化率が30%以上と高くなった。
さらに、本発明の範囲外の試料No.7については、焼成時の最高温度1600℃から1000℃までの降温速度が速すぎたために、焼結体の表面に微細な亀裂が発生し、耐食性部材の強度が300MPa未満と低くなった。
これらの試料と比較して本発明の範囲内の試料No.5,6,9,10,12,13,15,16については、エッチングレートの変化率が小さく、耐食性部材の3点曲げ強度も300MPa以上で、プラズマCVD装置等の半導体製造装置用部材として好適に用いることができることが確認された。
スキューネス(Rsk)の性質の解説図であり、(a)はスキューネス(Rsk)が正の値をとる場合の粗さ曲線と確率密度関数、(b)はスキューネス(Rsk)が負の値をとる場合の粗さ曲線と確率密度関数、(c)はスキューネス(Rsk)の値が0に近づいた場合の粗さ曲線と確率密度関数である。 クルトシス(Rku)の性質の解説図であり、(a)はクルトシス(Rku)が3より大きくなる場合の粗さ曲線と確率密度関数、(b)はクルトシス(Rku)が3より小さくなる場合の粗さ曲線と確率密度関数である。

Claims (2)

  1. アルミナ、イットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとの複合材料のいずれかの酸化物セラミック焼結体からなり、ハロゲン系腐食性ガスまたはそのプラズマに曝される表面の算術平均高さ(Ra)が3μm以下の耐食性部材であって、前記酸化物セラミック焼結体の平均結晶粒径が1〜50μmであり、かつ前記表面の粗さ曲線から求められるスキューネス(Rsk)が−1.0〜+0.5でり、クルトシス(Rku)が3.0〜4.5であることを特徴とする半導体製造装置用耐食性部材。
  2. 請求項1に記載の半導体製造装置用耐食性部材の製造方法であって、アルミナ、イットリア、70〜90質量%のアルミナと10〜30質量%のイットリウム・アルミニウム・ガーネットとの複合材料のいずれかのセラミック材料である1次原料にバインダと溶媒とを混合し2次原料を得る工程と、表面状態を加工した成形型に前記2次原料を充填して成形し、前記成形型の表面状態を転写した成形体を得る工程と、大気または酸化性雰囲気にて1550〜1700℃の最高温度を2時間以上保持した後、最高温度から1000℃までを5〜20℃/時間、1000℃から500℃までを20〜50℃/時間、500℃から常温までを50〜100℃/時間の速度で降温する工程とからなることを特徴とする半導体製造装置用耐食性部材の製造方法。
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