上述の従来例においては以下のような課題がある。第1の従来例においてはパルス光源を用いて繰り返し測定するために、測定に長い時間を必要とする課題がある。
人間や動物の体の約2/3は水であり、さらに血液の成分の8割近くを水が占め、水分子は波長1μm以長の光の波長帯において、顕著な吸収特性を示す。一方、グルコース分子は1.6μm近傍および2.1μm近傍の光の波長帯において吸収特性を示すが、健常者の血糖値50〜100mg/dl(2.8〜5.6mM)の濃度においては、水はグルコースに比べて1000倍以上大きな吸収を有する。従って、血糖値を測定するには0.1%より高い精度の測定が必要となる。通常、血糖値測定に要求される精度は5mg/dl(0.28mM)であり、この測定のためには、0.003%程度の精度が必要となる。以上のように血液成分濃度の測定、特に血糖値、すなわちグルコース量の測定には、極めて高い測定精度が必要である。
上記従来例では、特定の血液成分が吸収を呈する波長が血液中の他の血液成分や非血液組織中の成分の両者で吸収を呈する場合には、発生した光音響信号にはそれらが合算されて測定される。非血液組織中において発生しうる光音響信号の誤差も同様に加算されるため、外乱の影響を受けやすい。従って、血液成分をより精度良く測定するためには、血液中において発生した光音響信号をその他の光音響信号と分離することが課題となる。
また、パルス光源の信号を繰り返し測定して平均することにより、上記の高い精度を達成しようとすると、必要な測定回数が多くなり、測定時間が長くなる。例えば、パルス光源を用いて、一パルス当り1%の精度で信号が得られたとしても、平均により0.003%に迄精度を改善するためには、110,000パルスの測定を要する。パルス光源の繰り返し周期が1kHzの場合、この測定には110秒を必要とする。
さらに、上記の血糖値の測定中には被験者は静止している必要があり、被験者に著しい苦痛を強いることになる。また、被検体が動物の場合、長時間にわたって静止させることは極めて困難である。光音響法の測定においては、生体被検部610に光を照射し、音波を発生させ、生体内を伝搬した音波を生体被検部610に接触した図49に示す超音波検出器613または図50に示す音響センサ619によって検出するが、音波の測定効率の向上のために生体被検部610の皮膚と超音波検出器613または音響センサ619との接触面に水分を多く含むジェルを塗布して、音響的に良好な結合を実現する必要がある。この場合、ジェルの中には生体被検部610から発散される水蒸気による気泡状の空気が混入し誤差の原因となる。
また、超音波検出器613または音響センサ619などの検出器と生体被検部610の間に相対位置の変化が生じると、音響的な結合状態が変化するので被験者は測定中静止していることが必要となる。
さらに、超音波検出器613または音響センサ619により測定される音圧は、生体被検部610において超音波検出器613または音響センサ619が接する検出部と、光が照射される照射部との間の距離に反比例する。しかし、前記検出部と前記照射部の距離は、生体被検部610の超音波検出器613または音響センサ619への押し付け方により容易に変化する。従って、前記検出部と前記照射部の間の距離を一定に保つために、生体被検部610は一定圧で超音波検出器613または音響センサ619と接触し、かつ静止していなければならない。
また、後述するように、生体被検部610の光音響信号は、比熱、熱膨張係数、音速などに依存して変化する。これらは明らかに温度(体温)によって変化する量であり(特に熱膨張係数の変化は大きく、約3%/℃にも及ぶ)、また、音速は音波の周波数によっても変化し、さらには、これら全てが、血糖値自体に依存して変化するという報告すらある。
従って、第1の従来例においては、少なくとも体温を測定し、光音響信号の測定値に補正を施す必要がある。この補正のための高精度の基礎データの収集は容易ではないが、たとえ、補正データの収集に成功したとしても、煩雑な補正の結果得られる血糖値の信頼性の保証には長期の検証を要する。
一方、第2の従来例は、複数の異なる波長に対する光音響信号を同時に測定するので音響の結合条件、前記照射部から前記検出部の距離、比熱、熱膨張係数、および音速などの変化し得る係数を、一括して未知乗数として消去し得る可能性を持っていることが、次のように説明できる。
すなわち、波長λ
1および波長λ
2の各々の光に対する背景(水)の吸収係数α
1 (b)、α
2 (b)及び測定対象とする血液成分(グルコース)のモル吸収係数α
1 (0)、α
2 (0)が既知の場合、各波長における光音響信号の測定値s
1およびs
2を含む連立方程式は次のように表される。
数式(1)を解いて未知の血液成分濃度(血糖値)Mを計算する。ここで、Cは前述の変化し得る係数を含む未知乗数である。
数式(1)から、Cが未知の状態で、Mを計算することができる。ここで更に第3、第4の波長による測定が加わった場合、未知数の数に比べて方程式の数が過多となるが、この場合でも、最小自乗法的意味での解としてMが得られることが知られている。
しかし、光音響信号は吸収係数に関して厳密に線形ではない。その結果、水の吸収係数が異なる波長λ1および波長λ2の各々についてなされた複数の測定の間で、未知乗数Cは等しくはない。
さらに、この第2の従来例においては、光音響信号は変調周波数fにも依存する。従って、異なる変調周波数で発生した光音響信号において、未知乗数Cは等しくない。
以上のように、数式(1)において1行目と2行目のCが等しくないので、数式(1)を解いてMを求めることは、一般には不可能である。未知乗数Cの吸収係数α、および変調周波数fに対する関数形が完全に分かっていれば、数式(1)が解ける可能性は残されるが、後述するように散乱の多寡によって、この関数形自体が変わり得ることが分かる。
このように、光音響信号は吸収係数に関して厳密に線形ではない結果、第2の従来例において、水の吸収係数が異なる波長λ1および波長λ2の各々についてなされた複数の測定には複雑な補正を必要とする。
さらに、第2の従来例においては、光音響信号は変調周波数fにも依存し、従って、異なる変調周波数で発生した光音響信号の測定値には一層複雑な補正が必要とされる。
また、第2の従来例には、音響センサ619の周波数特性の周波数f1およびf2における不均一性という課題もある。
また、周波数特性の不均一は、以下のような現象によっても発現する。生体の被検部と周辺物質(この場合は空気)との音響インピーダンスの不整合により、音波の境界反射の発生は不可避である。この結果、検出する光音響信号は生体被検部の形状に応じた境界反射の影響を受け、光音響信号の定在波の周波数が変動するので、検出した光音響信号追うからの成分濃度算出を固体間で均一的に行うことが困難であった。
光音響法で、吸収係数αについての情報を得るためには、音波の波長は吸収長α−1×2π程度より短いことが必要である。光の波長1.6μm近傍の、グルコース分子の吸収帯において、水の吸収係数は、概略α=0.6mm−1であり、従って音波の波長は10mm以下が望ましい。ここで、水中の音速cは、概ね1.5km/sであるので、少なくとも、150kHz以上の変調周波数を用いるのが良い。光の波長2.1μm近傍のグルコース吸収帯においては、水の吸収係数がグルコースに比べて約4倍となるので、望ましい音波の波長は2.5mm以下、変調周波数は0.6MHz以上となる。
第2の従来例に述べられているモータによって回転するチョッパ板617によるこのような高い周波数の強度変調の実用性も検討課題となるが、さらに波長10mmあるいは2.5mm以下の超音波に対しては、その波長が通常用いられる超音波検出器の素子寸法に近いために、定在波が立ち易く、平坦な周波数特性の検出器の実現が非常に困難である。ダンパー材により共鳴現象を抑圧した検出器が市販されているが、この場合でも±2dB程度の感度の不均一が残っている。
上記の検出器の感度の周波数依存性が、常に一定不変であれば、第2の従来例において、異なる変調周波数間の感度差を補正することもできるが、感度の周波数依存性は、温度によって変化し、更に検出器と生体の接触状態によっても変化する。前者はヤング率などの機械的定数の変化と熱膨張による寸法変化に起因し、また後者は弾性エネルギーの散逸の程度が接触により変化することによる共鳴のQ値(Quality Factor)の変動が原因である。従って、異なる変調周波数における検出器の感度差の厳密な補正は、温度計に加えて、音響的な結合状態を一定とする手段あるいは治具を必要とし、非常に困難である。
ここで、光音響信号検出器の共振特性のQ値の変化の例を図53に示す。図53において、実線で示す光音響信号の検出感度特性が、生体披検部と光音響信号検出器の間の押圧力の変化により、破線で示す検出感度特性に変化することを示している。図3に示す例においては、実線で示す光音響信号の検出感度特性のピークの値は、破線で示す光音響信号の検出感度特性において約1/2に減少している。
また、次に光音響信号検出器の感度の周波数特性の変化の例を図54に示す。図54において、実線で示す検出器の感度の周波数特性は光音響信号検出器に生体披検部を接触させた直後の状態、すなわち光音響信号検出器は外気温、例えば20°C程度であり、生体は体温、例えば36°C程度であり、光音響信号検出器と生体披検部の間に16°C程度の温度差がある状態である。
次に、図54に破線で示す光音響信号検出器の感度の周波数特性は約10分経過後の状態である。図54に実線と破線で示す光音響信号検出器の感度の周波数特性のピーク値の周波数は約10kHz変化している。
また、検出器の共振特性を利用して、検出感度の向上を図る手法はよく知られている(例えば、沢田嗣朗編、「光音響分光法とその応用−PAS」学会出版センター、1982年、参照。)が、第2の従来例においては、複数の変調周波数で測定するために共振特性を利用した感度向上が不可能である。
以上述べたように、第1又は第2に示す従来の非侵襲な血液成分濃度の測定方法には、(1)一定に保ち難い多数のパラメータが測定に介在するため、光音響信号を十分な確度で血液成分濃度に換算できない、(2)複数の波長の光に対する光音響信号の測定によっても、光音響信号に存在する吸収係数に関わる非線形性や変調周波数依存性のために、それらの光音響信号値を連立して血液成分の濃度に換算できない、(3)検出器周波数特性の補正の困難性のために、共鳴型の検出器による光音響信号検出の高感度化が困難である、(4)被検体とその周囲との境界反射、超音波検出部に掛かる圧力及び振動、超音波検出部での集音状態及び温度変化により、検出される光音響信号の精度が低下する、という解決すべき課題があった。
一方、第3の従来例において、図51に示すように光源500および音波検出器541を器体540が生体499に接する面に設置されているが、このような実装においては次のような解決すべき問題点がある。
すなわち、後述するように、本発明の装着型の成分濃度測定装置においては生体に照射する光としては1μmより波長の長い光が適しているが、このような波長の光に対して、生体の大部分を占める水分は強い吸収を示すので、図51の生体499に光源500により光を照射した場合、グルコース分子が吸収して発生する超音波は光源500の直下の光照射部分の表面に局在し、超音波は球面波と見なせる状態となり、図51に示すように光源500と並んで同一面上に設置された音波検出器541によっては検出困難である。
また、図52に示す第4の従来例においては、次のような解決すべき問題がある。すなわち、図52に示す構成において、光源500と超音波検出器541の間隔をr、グルコース水溶液の光吸収係数をα、発生する超音波の波長をλとした場合、グルコース濃度を測定するためには、下記の数式(2)が成り立つことが必要である。
ここで例として、生体499へ照射する光の波長を1.6μm前後のグルコースの吸収帯に設定した場合、水の吸収係数は概略α=0.6mm−1であり、rは2mmに比べて十分大きな例えば10mm以上とし、また超音波の波長λとしては10mm以下が望ましい。
また、生体499へ照射する光の波長を2.1μm前後のグルコースの吸収帯に設置した場合、水の吸収係数は前記の場合の約4倍であり、rは例えば2.5mm以上とし、また超音波の波長λとしては2.5mm以下が望ましい。
上記のように発生する超音波の波長λは光源500と超音波検出器541の間隔、すなわち光源500と超音波検出器541の間の測定対象とする生体499の厚さに比べて短く設定する必要がある。
ここで、図52において、生体499は柔軟であるために光源500および超音波検出器541を生体499へ押し付ける力の如何により、光源500と超音波検出器541の間隔は変化する。また、光源500の直下で発生する超音波の球面波は直接的に超音波検出器541へ到達する部分と生体499と空気の境界面で反射を繰り返して超音波検出器541へ到達する部分の合計となる。
超音波の波長λが生体499の寸法に比べて小さいため、たとえ光源500と超音波検出器541との間隔を固定したとしても、生体と空気との境界面の形状の変化によって、超音波検出器541に達する直接波と複数の間接波との干渉条件が変化し、超音波検出器541により検出される超音波の量が変化する。
このように、第4の従来例においては、測定中に生体499の形状が微妙に変化しても超音波検出器541が検出する超音波の測定値に誤差を生じるという課題があった。
他方で、光音響法では、以下に説明する課題も存在する。光音響法は、検出する音波の周波数は測定対象に依存するが、生体内の血液を測定対象にすると検出する音波の周波数は数100kHz付近の超音波であることが望ましい。しかし、超音波はある媒質1からある媒質2との境界面に差し掛かったとき、2つの現象が生じる。1つは、境界面の透過である。もう1つは境界面での反射である。それぞれの媒質の音響インピーダンスが大きく異なると境界面で大部分が反射してしまい、透過はほとんど起こらない。このときの反射率Rは、媒質1の音響インピーダンスをZ
1、媒質2の音響インピーダンスをZ
2とすると、数式(3)のように表せる。
この反射率を、人体の指を被検体とした場合について考える。図55は、指の構成例を示す断面図である。図55に示すように、人体の指は、骨213の中心に筋肉214があり、骨213の周囲を脂肪215が取り囲み、脂肪215の周囲を表皮216が覆っている。それぞれの音響インピーダンスを表1に示す。
音響インピーダンスにより骨213と脂肪215との境界面での反射率を数式(3)により計算すると65%となる。このため骨213に当たった音波は大部分が反射し、散乱されてしまう。
光音響信号が骨で反射/散乱される例を図56に示す。図56は人体の指の断面図であり、(a)は光音響信号が骨で散乱する様子、(b)は光音響信号が骨で減衰する様子を示す。(a)に示すように、指に入射された励起光219の光路の延長線が完全に骨213で遮断されているときは、光音響信号は散乱されて検出器220ではほとんど検出できない。(b)に示すように、指に入射された励起光219の光路のの延長線付近に骨213が存在するときは、光音響信号の一部は散乱されるので、検出器220で検出される強度は減少する。このような反射/散乱の影響により、従来の光音響法では光音響信号の強度が測定の度に変化するという問題があった。
さらに、光音響法では、被検体を伝搬する音波を検出するので、被検体と検出器220とを密に接触する必要がある。接触する圧力によって被検体と検出器220との境界面での音波の損失は変化する。このような押圧する圧力の変化によっても、光音響信号の強度が測定の度に変化するという問題があった。
そこで、本発明は、従来技術における上記の課題を解決し、血液成分濃度を正確に測定でき、かつ共鳴型の検出器による高感度の測定も可能で、被験者に負担とならない短時間の測定が可能で、さらに、小型で生体の被検部に装着することも可能な非侵襲の成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法を提供することを目的とする。
併せて、非侵襲な成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法を提供することを目的とする。
本発明に係る成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、前記光発生手段が発生する光を変調する変調周波数を掃引する周波数掃引手段と、前記周波数掃引手段からの信号により前記光発生手段で発生した光を電気的に強度変調する光変調手段と、前記強度変調された光を被測定物に向けて出射する光出射手段と、前記照射された光により被測定物内に発生する音波を検出する音波検出手段と、前記音波検出手段が検出した音波を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手段と、を備えることを特徴とする。
本発明では、周波数が所定の範囲で掃引する変調信号により光を電気的に強度変調し、強度変調された光を被測定物に照射し、照射された光により被測定物内に発生する音波である光音響信号を検出し、検出された光音響信号を積算してから被測定物内の測定対象とする成分濃度を算出する。これにより、音波検出手段の感度特性の変化を追尾して、常に感度の高い周波数で測定対象とする成分濃度を測定できる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、該光発生手段の発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手段と、該光変調手段の強度変調した強度変調光を被測定物に向けて出射する光出射手段と、前記強度変調光を出射された被測定物から放射される音波を検出する音波検出手段と、を備えた成分濃度測定装置であって、前記光出射手段と前記音波検出手段との間に前記被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質及び前記被測定物が配置可能であることを特徴とする。
本発明は、被測定物の音響インピーダンスと略等しい音響インピーダンスの環境下で光音響信号を検出することを特徴とする。一定周波数で強度変調された強度変調光を被測定物に照射し、被測定物から発生した音波である光音響信号を、前記音響整合物質を介して音波検出手段で検出して、液体に含まれる特定成分の濃度を測定する。音波検出手段は、前記音響整合物質を介して光音響信号を検出することで、被測定物とその周囲との境界反射及び被測定物と音波検出手段との接触により生じる、音波である光音響信号の反射による信号損失を低減することができる。つまり、光出射手段と音波検出手段との間に被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質及び被測定物が配置可能であることで、被測定物と音波検出手段の間に音響整合物質を配置して、被測定物とその周囲との境界における境界反射を低減することができる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、該光発生手段の発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手段と、該光変調手段の強度変調した強度変調光を被測定物に向けて出射する光出射手段と、前記強度変調光を出射された被測定物から放射される音波を検出する音波検出手段と、前記光出射手段と前記音波検出手段との間を前記被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填する容器と、備えることを特徴とする。
被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填する容器を備えることで、被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填した容器内に被測定物を配置して、被測定物の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で被測定物からの音波である光音響信号を検出することができる。被測定物の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で光音響信号を検出することで、被測定物とその周囲との境界反射及び被測定物と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の反射による減衰を低減することができる。
上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、異なる波長の2波の光を発生し、前記光変調手段は、同一周波数かつ互いに逆位相となる強度変調光に前記光の各々を強度変調することが望ましい。
強度変調光に、同一周波数かつ互いに逆位相となる異なる波長の2波の強度変調光を用いることにより、光音響信号の受ける水からの影響を除去することができる。
本発明に係る成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、該光発生手段の発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手段と、該光変調手段の強度変調した強度変調光を被測定物に向けて出射する光出射手段と、音響波を出力する音響波発生器と、前記強度変調光を照射された被測定物から放射される音波及び前記音響波発生器から被測定物を透過する前記音響波を検出する音波検出手段と、を備えることを特徴とする。
本発明は、光音響法を用いて被測定物の測定対象とする成分濃度を測定する際に、励起光の照射位置の近傍すなわち光音響信号の発生源近傍に置かれた音響波発生器から発生させた超音波(ここでは音響波と呼ぶ。)を参照信号として検出して、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係が最適となる配置を検出することを特徴とする。検出された最適な配置で光音響信号を検出することで、被測定物内に存在するの散乱体の影響の少ない伝搬経路で成分濃度を測定することができる。
さらに、音響波の減衰量が一定となるような、検出される音響波の信号強度が予め定められた値となる配置で光音響信号を検出すれば、その検出された配置で光音響信号を検出することで、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係の変化による散乱体が光音響信号に与える影響の変化及び音波検出手段の被測定物との接触を含む不確定な要素の影響を排除した光音響信号を検出することができる。これにより、成分濃度測定装置の配置の変化に伴う多数のパラメータの影響を排除した成分濃度を測定することができる。
本発明により、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を、音響波を用いて検出することができる。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
さらに、光音響法の測定系における被測定物と、各素子の最適な配置を行なうにあたり、それぞれの配置を調節する手段を機械化し、音波検出手段と連動させることにより、最適な配置での成分濃度測定を自動化することもできる。なお、本発明では、前述の励起光として一定周波数で変調した強度変調光を用いている。
本発明により、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を、音響波を用いて検出することができる。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
本発明に係る成分濃度測定装置は、異なる波長の2波の光を発生する光発生手段と、該異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調する光変調手段と、強度変調された該異なる波長の2波の光を被測定物に向けて出射する光出射手段と、出射された光により被測定物内に発生する音波を検出する音波検出手段と、前記音波検出手段からの音波の振幅を検出する検波増幅手段と、を備え、前記光発生手段は、前記2波の光のうち一方の光の波長を測定対象とする液体成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を溶媒が前記一方の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することを特徴とする。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調するので、異なる波長の2波の光の各々に対応する音波を、音波検出手段の周波数依存性の影響を受けることなく検出できる。
さらに、前記1波の光は被測定物内の測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する圧力の音波を発生し、一方、前記他の1波の光は被測定物の大部分を占める水のみが前記1波の光により発生する音波と同じ圧力の音波を発生するので、両者の差により、測定対象の成分のみにより発生する音波の圧力を検出する。その結果、測定対象の成分の量を測定することが可能となる。
さらに、前記1波の光が被測定物内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被測定物内の大部分を占める水のみの吸収に対応する音波の圧力は、周波数が等しくかつ逆位相であり、被測定物内で音波の段階で相互に重畳し、音波の圧力の差が検出される。従って、音波の圧力の差は前記1波の光が被測定物内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被測定物内の大部分を占める水のみの吸収に対応する音波の圧力を個別に測定して、差を演算するよりも、より高精度に測定できる。上記の点が、従来技術にない全く新しい利点である。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を電気的に強度変調する変調周波数を、被測定物内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、光音響信号の測定値における吸収係数に関わる非線形性に配慮して選択された異なる波長の2波の光に対する光音響信号を測定し、これらの測定値から、一定に保ち難い多数のパラメータの影響を排除して、高精度に被測定物内に発生する音波を検出することができる。
上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段が発生する光を変調する変調周波数を掃引する周波数掃引手段と、前記音波検出手段が検出した音波を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手段と、をさらに備え、前記光変調手段は、前記周波数掃引手段からの信号により前記異なる波長の2波の光を各々逆位相で電気的に強度変調することが望ましい。
本発明においては、前記被測定物内で発生した前記光音響信号を、掃引する変調信号範囲で積算することにより、前記音波検出手段の共振周波数が変化する場合においても、前記音波検出手段の共振周波数に一致する周波数における高い感度で検出した光音響信号の値を積算するため、感度の高い共振周波数で測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段は、前記周波数掃引手段が掃引する変調周波数に追尾して、出射された光により前記被測定物内に発生する音波を検出し、前記積算手段は、前記音波検出手段が高い検出感度を有する変調周波数範囲で、前記音波検出手段が検出した音波を積算することが望ましい。
本発明においては、被測定物内に発生する音波検出手段の共振周波数が変化し、光音響信号を検出する変調周波数が変化する場合、周波数掃引された変調周波数で変調し照射された光により被測定物内に発生する光音響信号を検出した結果から、検出感度が最大になる音波検出手段の共振周波数の変化を判断し、共振周波数の変化を追尾して、共振周波数の近傍で光音響信号の検出値を積算する。
また、上記成分濃度測定装置において、前記積算手段により積算された音波から前記被測定物内の測定対象とする液体成分の成分濃度を算定する液体成分濃度算定手段をさらに備えることが望ましい。
本発明では、予め用意した被測定物内に発生する光音響信号と測定対象とする成分濃度との関係を示す理論値、あるいは実験値を記憶し、被測定物内に発生した光音響信号を検出した値から測定対象の成分濃度を算定する。
また、上記成分濃度測定装置において、音響波を出力する音響波発生器をさらに備え、前記音波検出手段は、前記被測定物からの音波と共に、前記音響波発生器から前記被測定物を透過する前記音響波を検出することが望ましい。
本発明により、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を、音響波を用いて検出することができる。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音響波発生器又は前記音波検出手段の少なくともいずれかの位置を可変する駆動手段をさらに備えることが望ましい。
本発明により、音響波の伝搬経路を変化させて、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を伝搬経路ごとに検出し、検出された最適な配置で光音響信号を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段で検出された音響波の強度が特定の値になるように前記駆動手段を制御する制御手段をさらに備えることが望ましい。
本発明により、検出された最適な配置での光音響信号の検出が自動化できる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、前記2波の光の波長を、測定対象とする液体成分の呈する吸収の差が溶媒の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定することが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、前記2波の光のうち一方の光の波長を測定対象とする液体成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を溶媒が前記一方の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することが望ましい。
本発明は、上記の前記光発生手段は、前記2波の光の波長を、測定対象とする液体成分の呈する吸収の差が溶媒の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する成分濃度測定装置制御方法において、溶媒の呈する吸収の差を0とした場合である。これにより、溶媒の吸収による影響を除去することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記2波の光の波長を、測定対象とする液体成分の呈する吸収の差がそれ以外の液体成分の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定することが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光出射手段と前記被測定物との間に、出射する光のビームを合成する合成器を、さらに備えることが望ましい。
測定部位に光を集中させることができるため、効率的に光音響信号を発生させることができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段からの音波の振幅を検出する検波増幅手段を、さらに備えることが望ましい。
検出した光音響信号から音波の振幅を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、検出された音波の圧力から前記被測定物内の測定対象とする液体成分の成分濃度を算定する液体成分濃度算定手段をさらに備えることが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段が検出した音波を変調周波数に対応して記録する記録手段をさらに備えることが望ましい。
音波検出手段が検出した光音響信号の値を、掃引された変調周波数ごとに記録する手段を備えることにより、被測定物内に発生する音波検出手段の共振周波数が変化する場合、被測定物に照射する光の変調周波数の掃引範囲が前記共振周波数の変化する範囲を含んでおり、検出した光音響信号の中から高精度に測定した値を選定して積算し平均して、正確に成分濃度を測定していることを確認することができる。
本発明に係る成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、前記光発生手段が発生する光を変調する変調周波数を掃引する周波数掃引手段と、前記周波数掃引手段からの信号により前記光発生手段で発生した光を電気的に強度変調する光変調手段と、前記強度変調された光を被検体に向けて出射する光出射手段と、前記出射された光により前記被検体内に発生する音波を検出する音波検出手段と、前記音波検出手段が検出した音波を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明では、周波数が所定の範囲で掃引する変調信号により光を電気的に強度変調し、強度変調された光を被検体に照射し、照射された光により被検体内に発生する光音響信号を検出し、検出された光音響信号を積算してから被検体内の成分濃度を算出する。ここで、被検体に照射する光の波長は測定対象とする成分が吸収を呈する波長に設定する。音波検出手段の感度特性の変化を追尾して、常に感度の高い周波数で測定対象とする成分濃度を測定できる。
本発明に係る成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、該光発生手段の発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手段と、該光変調手段の強度変調した強度変調光を被検体に向けて出射する光出射手段と、前記強度変調光を照射された前記被検体から放射される音波を検出する音波検出手段と、を備えた成分濃度測定装置であって、前記光出射手段と前記音波検出手段との間に前記被検体と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質及び前記被検体が配置可能であることを特徴とする。
本発明は、被検体の音響インピーダンスと略等しい音響インピーダンスの環境下で光音響信号を検出することを特徴とする。一定周波数で強度変調された強度変調光を被検体に照射し、被検体から発生した音波である光音響信号を、前記音響整合物質を介して音波検出手段で検出して、液体に含まれる特定成分の濃度を測定する。音波検出手段は、前記音響整合物質を介して光音響信号を検出することで、被検体とその周囲との境界反射及び被検体と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の反射による減衰による信号損失を低減することができる。つまり、光出射手段と音波検出手段との間に被検体と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質及び被検体が配置可能であることで、被検体と音波検出手段の間に音響整合物質を配置して、被検体とその周囲との境界における境界反射を低減することができる。
本発明に係る成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、該光発生手段の発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手段と、該光変調手段の強度変調した強度変調光を被検体に向けて出射する光出射手段と、前記強度変調光を照射された前記被検体から放射される音波を検出する音波検出手段と、前記光出射手段と前記音波検出手段との間を前記被検体と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填する容器と、備えることを特徴とする。
被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填する容器を備えることで、被検体と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填した容器内に被検体を配置して、被検体の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で被検体からの光音響信号を検出することができる。被検体の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で光音響信号を検出することで、被検体とその周囲との境界反射及び被検体と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の反射による減衰を低減することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記容器は、前記音響整合物質としての水で充填されることが望ましい。
被検体の音響インピーダンスは水に非常に近いので、被検体の周囲を水で取り囲んだ環境下で光音響信号を検出することで、被検体とその周囲との境界反射及び被検体と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の反射による減衰を低減することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、異なる波長の2波の光を発生し、前記光変調手段は、同一周波数かつ互いに逆位相となる強度変調光に前記光の各々を強度変調することが望ましい。
強度変調光に、同一周波数かつ互いに逆位相となる異なる波長の2波の強度変調光を用いることにより、光音響信号の受ける水からの影響を除去することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記容器は、横断面の形状が半円形であり、前記半円形の円の略中心点の位置に前記光出射手段が配置されていることが望ましい。
容器の内壁面の横断面の形状を半円とし、円の中心点に光出射手段を配置することで、前記半円の円弧の部分に相当する容器の側面と光出射手段との距離を均一にすることができる。これにより、半円の円弧の部分に相当する容器の側面と光出射手段との距離を、光音響信号を平面波と仮定できる程度の距離にし、前記側面に音波検出手段を配置すれば、放射状に広がった光音響信号を効率よく検出することができる。このように、音波検出手段での集音状態を改善することにより、さらに光音響信号の精度を向上することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段が前記容器の前記半円形の円弧の部分に2個以上配置されていることが望ましい。
半円の円弧の部分に相当する容器の側面に2個以上の音波検出手段を配置することにより、音波検出手段は放射状に広がった光音響信号をさらに効率よく検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記容器は、横断面の形状が楕円形であり、前記光出射手段及び前記音波検出手段が前記楕円形の略焦点の位置のそれぞれに配置されていることが望ましい。
横断面の内壁面の形状を楕円形とし、光出射手段及び音波検出手段を前記楕円形の略焦点の位置のそれぞれに配置することで、光音響信号を容器の側面で散乱させて音波検出手段に効率よく集めることができる。このように、音波検出手段での集音状態を改善することにより、さらに光音響信号の精度を向上することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記容器は、底部が2つの焦点を断面に含む半楕円球であり、前記光出射手段及び前記音波検出手段がそれぞれ略前記2つの焦点に配置されていることが望ましい。
容器の内壁面の底部を2つの焦点を断面に含む半楕円球として、光出射手段及び音波検出手段をそれぞれ2つの焦点に配置することで、光音響信号を容器の底部で散乱させて音波検出手段に効率よく集めることができる。このように、音波検出手段での集音状態を改善することにより、さらに光音響信号の精度を向上することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記容器の内壁面の少なくとも一部に反射材を含むことが望ましい。
容器の内壁面の少なくとも一部に反射材を含むことによって、光音響信号を音波検出手段に集める効率を向上することができる。これにより、音波検出手段が検出する光音響信号の精度をさらに向上することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記容器の内壁面の少なくとも一部に吸音材を含むことが望ましい。
容器の内壁面の少なくとも一部に吸音材を含むことにより、被検体の内部構造の不均一性から生じる多重反射した音波を吸収し、除去するので、被検体から放射された光音響信号を効率よく検出することができる。これにより、音波検出手段が検出する光音響信号の精度をさらに向上することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記容器の内壁面に、前記強度変調光に対して透明な出射窓をさらに有することが望ましい。
容器が強度変調光に対して透明な出射窓を備えることにより、光出射手段を容器外に配置することができるので、光出射手段の配置が容易になる。また、容器の内壁面から強度変調光を出射することができるので、容器の内壁面の凹凸がなくなり、光音響信号の反射を低減することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光出射手段は、前記容器に強度変調光を導く光ファイバを含むことが望ましい。
光出射手段が光ファイバを含むことにより、光出射手段から離れた場所に光発生手段及び光変調手段を配置し、強度変調光を被検体に照射できる位置まで導くことができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音響整合物質の温度を測定する温度計測手段と、該温度計測手段の測定した温度に応じて前記音響整合物質の温度を調節する温度調節手段と、をさらに備えることが望ましい。
温度計測手段の測定した温度に応じて音響整合物質の温度を調節する温度調節手段を備えることにより、音響整合物質及び被検体表面の温度を安定化することができる。これにより、温度変化による光音響信号の強度の擾乱を低減することができるので、光音響信号のS/N比を向上することができる。
本発明に係る成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、該光発生手段の発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手段と、該光変調手段の強度変調した強度変調光を被検体に向けて出射する光出射手段と、音響波を出力する音響波発生器と、前記強度変調光を照射された前記被検体から放射される音波及び前記音響波発生器から被検体を透過する前記音響波を検出する音波検出手段と、を備えることを特徴とする。
本発明は、光音響法を用いて測定対象とする成分濃度を測定する際に、励起光の照射位置の近傍すなわち光音響信号の発生源近傍に置かれた音響波発生器から発生させた超音波(ここでは音響波と呼ぶ。)を参照信号として検出して、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係が最適となる配置を検出することを特徴とする。検出された最適な配置で光音響信号を検出することで、被検体内に存在する散乱体の影響の少ない伝搬経路で成分濃度を測定することができる。
さらに、音響波の減衰量が一定となるような、検出される音響波の信号強度が予め定められた値となる配置で光音響信号を検出すれば、その検出された配置で光音響信号を検出することで、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係の変化による散乱体が光音響信号に与える影響の変化及び音波検出手段の被検体との接触を含む不確定な要素の影響を排除した光音響信号を検出することができる。これにより、成分濃度測定装置の配置の変化に伴う多数のパラメータの影響を排除した成分濃度を測定することができる。
さらに、光音響法の測定系における被検体、特に生体と、各素子の最適な配置を行なうにあたり、それぞれの配置を調節する手段を機械化し、音波検出手段と連動させることにより、最適な配置での成分濃度測定を自動化することもできる。なお、本発明では、前述の励起光として一定周波数で変調した強度変調光を用いている。
本発明により、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を、音響波を用いて検出することができる。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
本発明に係る成分濃度測定装置は、異なる波長の2波の光を発生する光発生手段と、該異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調する光変調手段と、強度変調された該異なる波長の2波の光を被検体に向けて出射する光出射手段と、出射された光により前記被検体内に発生する音波を検出する音波検出手段と、前記音波検出手段からの音波の振幅を検出する検波増幅手段と、を備え、前記光発生手段は、前記2波の光のうち一方の光の波長を測定対象とする成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を溶媒が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することを特徴とする。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調するので、異なる波長の2波の光の各々に対応する音波を、音波検出手段の周波数依存性の影響を受けることなく検出できる。
さらに、前記1波の光は被検体内の測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する圧力の音波を発生し、一方、前記他の1波の光は被検体の大部分を占める水のみが前記1波の光により発生する音波と同じ圧力の音波を発生するので、両者の差により、測定対象の成分のみにより発生する音波の圧力を検出する。その結果、測定対象の成分の量を測定することが可能となる。
さらに、前記1波の光が被検体内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被検体内の大部分を占める水のみの吸収に対応する音波の圧力は、周波数が等しくかつ逆位相であり、被検体内で音波の段階で相互に重畳し、音波の圧力の差が検出される。従って、音波の圧力の差は前記1波の光が被検体内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被検体内の大部分を占める水のみの吸収に対応する音波の圧力を個別に測定して、差を演算するよりも、より高精度に測定できる。上記の点が、従来技術にない全く新しい利点である。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を電気的に強度変調する変調周波数を、被検体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、光音響信号の測定値における吸収係数に関わる非線形性に配慮して選択された異なる波長の2波の光に対する光音響信号を測定し、これらの測定値から、一定に保ち難い多数のパラメータの影響を排除して、高精度に被検体内に発生する音波を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記同一周波数の繰り返し間隔よりも長い間隔で断続的に発生させた光を前記被検体に向けて出射する第2の光出射手段をさらに備えることが望ましい。
本発明により、被検体、特に生体の組織内における測定対象とする成分での吸収による光音響信号の発生量を増加させて非侵襲にかつ正確に成分濃度を測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記第2の光出射手段の光の波長が測定対象とする成分と異なる成分の特徴的な吸収を呈する波長であることが望ましい。
非血液組織に比して血液組織の温度を上昇させ、血液成分の光音響信号のみを増大させることができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記第2の光出射手段の光の波長が血液中のヘモグロビンの特徴的な吸収を呈する波長であることが望ましい。
ヘモグロビンの温度を上昇させ、ヘモグロビンを含む血液からの光音響信号のみを増大させることができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記第2の光出射手段の光を発生させる間隔が、前記被検体に2℃以下の温度上昇を生じさせる間隔であることが望ましい。
被検体への影響を最小限度に抑えることができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記第2の光出射手段の光の強度が、前記被検体に2℃以下の温度上昇を生じさせる強度であることが望ましい。
被検体への影響を最小限度に抑えることができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段が発生する光を変調する変調周波数を掃引する周波数掃引手段と、前記音波検出手段が検出した音波を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手段と、をさらに備え、前記光変調手段は、前記周波数掃引手段からの信号により前記異なる波長の2波の光を各々逆位相で電気的に強度変調することが望ましい。
本発明においては、前記被検体内で発生した前記光音響信号を、掃引する変調信号範囲で積算することにより、前記音波検出手段の共振周波数が変化する場合においても、前記音波検出手段の共振周波数に一致する周波数における高い感度で検出した光音響信号の値を積算するため、感度の高い共振周波数で測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段は、前記周波数掃引手段が掃引する変調周波数に追尾して、出射された光により前記被検体内に発生する音波を検出し、前記積算手段は、前記音波検出手段が高い検出感度を有する変調周波数範囲で、前記音波検出手段が検出した音波を積算することが望ましい。
本発明においては、被検体内に発生する音波検出手段の共振周波数が変化し、光音響信号を検出する変調周波数が変化する場合、周波数掃引された変調周波数で変調し照射された光により被検体内に発生する光音響信号を検出した結果から、検出感度が最大になる音波検出手段の共振周波数の変化を判断し、共振周波数の変化を追尾して、共振周波数の近傍で光音響信号の検出値を積算する。
また、上記成分濃度測定装置において、前記積算手段により積算された音波から前記被検体内の測定対象とする成分の成分濃度を算定する成分濃度算定手段をさらに備えることが望ましい。
本発明では、予め用意した被検体内に発生する光音響信号と測定対象とする成分濃度との関係を示す理論値、あるいは実験値を記憶し、被検体内に発生した光音響信号を検出した値から測定対象の成分濃度を算定する。
また、上記成分濃度測定装置において、音響波を出力する音響波発生器をさらに備え、前記音波検出手段は、前記被検体からの音波と共に、前記音響波発生器から前記被検体を透過する前記音響波を検出することが望ましい。
本発明により、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を、音響波を用いて検出することができる。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音響波発生器又は前記音波検出手段の少なくともいずれかの位置を可変する駆動手段をさらに備えることが望ましい。
本発明により、音響波の伝搬経路を変化させて、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を伝搬経路ごとに検出し、検出された最適な配置で光音響信号を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段で検出された音響波の強度が特定の値になるように前記駆動手段を制御する制御手段をさらに備えることが望ましい。
本発明により、検出された最適な配置での光音響信号の検出が自動化できる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光出射手段は、前記音響波発生器と連動するよう前記音響波発生器に固定されていることが望ましい。
本発明により、光出射手段が音響波発生器と連動するので、最適な音響波発生器の位置から自動的に励起用光源を移動することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、圧力が制御可能な押圧力で前記音響波発生器及び前記音波検出手段を前記被検体に押圧する押し付け手段をさらに備えることが望ましい。
本発明により、音響波発生器及び音波検出手段が被検体を押圧する圧力が可変なので、音響波発生器及び音波検出手段が被検体と接触する圧力を所定の圧力に保つことができる。これにより、被検体を押圧する圧力の影響を軽減することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音響波発生器は、前記光出射手段からの強度変調光のビームに近接して配置されていることが望ましい。
本発明により、強度変調光のビームの経路に近接する位置に音響波を出力するので、光音響信号の伝搬経路での反射/散乱をより正確に検査することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音響波発生器の一部に、前記強度変調光のビームを透過する透過窓をさらに備えることが望ましい。
本発明により、音響波発生器の上から強度変調光を被検体に照射することができる。これにより、最適な音響波発生器の位置から強度変調光を被検体に照射することができる
また、上記成分濃度測定装置において、前記音響波発生器は、出力する前記音響波の周波数及び/又は強度が可変であることが望ましい。
本発明により、音波検出手段で検出する光音響信号と周波数の等しい音響波で散乱体を検出できるので、散乱体が光音響信号に与える影響をより正確に検査することができる。また、前記音波検出手段で検出された音響波の強度に応じて音響波発生器から出力する音響波の強度を大小させることができるので、音波検出手段で検出された強度が小さい場合でも検出された強度を比較することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音響波発生器及び/又は前記光出射手段の前記被検体の接する面に、前記被検体と音響インピーダンスの略等しい音響結合部材をさらに備えることが望ましい。
本発明により、音響波発生器又は音波検出手段の少なくともいずれかが被検体と接触する面での反射/散乱を軽減することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、前記2波の光の波長を、測定対象とする成分の呈する吸収の差が溶媒の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定することが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、前記2波の光のうち一方の光の波長を測定対象とする成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を溶媒が前記一方の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することが望ましい。
本発明は、上記の前記光発生手段は、前記2波の光の波長を、測定対象とする成分の呈する吸収の差が溶媒の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する成分濃度測定装置制御方法において、溶媒の呈する吸収の差を0とした場合である。これにより、溶媒の吸収による影響を除去することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、前記2波の光の波長の両方の波長を、測定対象とする成分の呈する吸収の差がそれ以外の成分の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定することが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、前記2波の光の波長を、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差が水の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定することが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、前記2波の光のうち一方の光の波長を測定対象とする血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することが望ましい。
本発明は、上記の前記光発生手段は、前記2波の光の波長を、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差が水の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する成分濃度測定装置制御方法において、水の呈する吸収の差を0とした場合である。これにより、水の吸収による影響を除去することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、前記2波の光の波長の両方の波長を、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差がそれ以外の血液成分の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定することが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光出射手段と前記被検体との間に、出射する光のビームを合成する合成器を、さらに備えることが望ましい。
測定部位に光を集中させることができるため、効率的に光音響信号を発生させることができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段からの音波の振幅を検出する検波増幅手段を、さらに備えることが望ましい。
検出した光音響信号から音響波の振幅を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記検波増幅手段は、同期検波増幅器であることが望ましい。
光音響信号から高感度に音響波の振幅を検出することができる。
前記光出射手段の出射する2つの光のビーム径が略等しいことが望ましい。
測定部位を一致させて、測定精度を高めることができる。
また、上記成分濃度測定装置において、検出された音波の圧力から前記被検体内の測定対象とする成分の成分濃度を算定する成分濃度算定手段をさらに備えることが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置において、前記成分濃度算定手段は、前記異なる波長の2波の光を前記被検体に出射して発生する音波の圧力を、記2波の光のうち1波の光を零としたときに発生する音波の圧力で除算することが望ましい。
前記異なる波長の2波の光を被検体に照射して発生する音波の圧力は、前述のように前記1波の光が被検体内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被検体内の大部分を占める水のみが発生する音波の圧力の差となって検出されるので、この差の値を、前記2波の光のうち1波の光を零としたときに発生する音波の圧力、すなわち、前記他の1波の光が被検体内の大部分を占める水のみが発生する音波の圧力により、後述する数式(5)に従って、除算することにより、成分濃度を測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光変調手段は、前記被検体内に発生する音波検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することが望ましい。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を電気的に強度変調する変調周波数を、被検体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、高精度に被検体内に発生する音波を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、強度変調された前記異なる波長の2波の光を1の光束に合波し水に照射して発生する音波の圧力が零になるように前記異なる波長の2波の光の各々の相対的な強度を調整することが望ましい。
上記の校正により、波長の異なる2波の光の相対的な強度を、各々の波長の光が被検体内の大部分を占める水の中に発生する光音響信号の強度が等しくなるように校正できるので、光音響信号の測定系全体を含む状態で、波長の異なる2波の光の相対的な強度を校正して測定精度を向上させることができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段は、前記変調周波数に同期して同期検波により音波を検出することが望ましい。
前記光音響信号を前記変調周波数に同期した同期検波により検出することにより、高精度に検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段及び前記光変調手段は、2の半導体レーザ光源の各々を同一周波数で互いに逆位相の矩形波信号により直接変調することが望ましい。
本発明においては、2の半導体レーザ光源の各々を同一周波数で互いに逆位相の矩形波信号により直接変調することにより、前記異なる波長の2波の光を発生し同時に変調することが可能であり、装置構成を簡略化できる。
また、上記成分濃度測定装置において、測定対象とする血液成分がグルコース又はコレステロールであることが望ましい。
グルコース又はコレステロールの濃度を測定する場合には、特徴的な吸収を示す波長を照射することによって、精度よく測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段が検出した音波を変調周波数に対応して記録する記録手段をさらに備えることが望ましい。
音波検出手段が検出した光音響信号の値を、掃引された変調周波数ごとに記録する手段を備えることにより、被検体内に発生する音波検出手段の共振周波数が変化する場合、被検体に照射する光の変調周波数の掃引範囲が前記共振周波数の変化する範囲を含んでおり、検出した光音響信号の中から高精度に測定した値を選定して積算し平均して、正確に成分濃度を測定していることを確認することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光出射手段と前記音波検出手段とは、略対向する位置に配置されていることが望ましい。
被検体から放射される光音響信号は、光出射手段が強度変調光を出射する方向で最も大きな信号強度で検出される。光出射手段と前記音波検出手段とが略対向する位置に配置されていることによって、音波検出手段が検出する光音響信号の精度をさらに向上することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記強度変調光の光路の少なくとも一部の周囲に、前記強度変調光が前記成分濃度測定装置の外部へ漏洩することを防ぐ遮光フードをさらに備えることが望ましい。
本発明により、検査する部分以外の被検体の部分等の成分濃度測定装置の外部へ強度変調光が漏洩するのを防ぐことができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記被検体の一部を囲んで装着される環状部分の内側の前記被検体に接する部分に、少なくとも前記光出射手段及び前記音波検出手段が配置された装身手段をさらに備えることが望ましい。
上記のように、前記被検体の一部を囲んで装着される環状部分を有する前記装身部の内側に、少なくとも前記光照射部及び前記音波検出手段を配置することにより、測定中における前記被検体の動きによる前記光出射手段と前記音波検出手段との間の距離、すなわち前記光出射手段と前記音波検出手段との間の測定対象の前記被検体の一部の厚みの変化を抑制し、前記被検体内に発生する音響波の測定値を安定化し、さらに前記被検体の測定部分の周辺部分の変形を防止することにより、前記被検体の測定部分の周辺部分からの多重反射を安定化することにより、測定対象とする成分濃度を正確に測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光出射手段と前記音波検出手段とは、互いに前記装身手段の環状部分の略対向する位置に配置されていることが望ましい。
上記のように、前記光出射手段と前記音波検出手段とを互いに前記装身手段の環状部分の略対向する位置に配置することにより、前記光出射手段が光を照射して前記被検体内に発生する音響波を効率よく前記音波検出手段により検出し、正確に前記被検体の測定対象とする成分濃度を測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記音波検出手段の配置箇所を含んで、前記装身手段の環状部分の内側の被検体に接する部分の少なくとも半周にわたる部分に、前記被検体に近似する音響インピーダンスを有する緩衝材の層が配置されていることが望ましい。
上記のように、前記音波検出手段の配置箇所を含んで、前記装身手段の環状部分の内側の前記被検体に接する部分の少なくとも半周にわたる部分に前記被検体に近似する音響インピーダンスを有する緩衝材の層を配置することにより、前記被検体内に発生した音響波で前記音波検出手段に直接到達する部分は効率よく検出し、かつ前記被検体内で発生した音響波で前記被検体と前記装身手段の環状部分の内側の界面で多重反射した後に前記音波検出手段に受信され雑音となる音響波の量を減少させることにより、より正確に成分濃度を測定できる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記緩衝材の層と前記装身手段の環状部分の内側の面との間に吸音材が充填されていることが望ましい。
上記のように、前記緩衝材の層と前記装身手段の環状部分の内側の面の間に前記吸音材を充填することにより、前記被検体内に発生した音響波が前記緩衝材と前記装身手段の環状部分の内側の面の界面により反射した後に前記音波検出手段に検出され雑音となる音響波の量を減少させることにより、より正確に成分濃度を測定できる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、複数の半導体レーザ素子によって異なる波長の2波の光を発生することが望ましい。
上記のように、前記光発生手段は、複数の半導体レーザ素子によって異なる波長の2波の光を発生することにより、本発明の成分濃度測定装置は装置の大幅な小型、軽量化が可能となる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記光出射手段は、前記光発生手段の発生した光のビーム径を拡大するビーム径拡大器を備えることが望ましい。
上記のように、前記光出射手段は前記光発生手段の発生した光のビーム径を拡大するビーム径拡大器を備えることにより、前記被検体に照射する光ビームを拡大し、前記被検体に悪影響を与えることなく、比較的に強い光を照射することが可能となり、さらに正確に前記被検体の測定対象とする成分濃度を測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記装身手段が人体の手指に装着される指輪であり、かつ、前記光出射手段が前記手指の手背側に配置され、前記音波検出手段が前記手指の手掌側に配置されていることが望ましい。
上記のように、前記装身手段が人体の前記手指に装着される前記指輪であり、かつ、前記光出射手段を前記手指の手背側に配置し、前記音波検出手段を前記手指の手掌側に配置することにより、前記音波検出手段は前記手指の比較的柔らかい皮膚と容易に接触し、前記音波検出手段は前記手指内に発生する音響波を効率よく測定できるので、一層正確に、成分濃度を測定できる。さらに前記光出射手段と前記音波検出手段を指輪の内面に実装することにより、日常生活に支障なく、簡易に連続的に該人体の成分濃度を測定できる。
また、上記成分濃度測定装置において、前記装身手段が人体の腕に装着される腕輪であり、かつ、前記光出射手段が手掌側に配置され、前記音波検出手段が手背側に配置されていることが望ましい。
上記のように、前記装身手段が人体の前記腕に装着される前記腕輪であり、かつ前記光出射手段を手掌側に配置し、前記音波検出手段を手背側に配置することにより、前記音波検出手段は前記腕の比較的柔らかい皮膚と容易に接触し、前記音波検出手段は前記腕内に発生する音響波を効率よく測定できるので、一層正確に、成分濃度を測定できる。さらに前記光出射手段と前記音波検出手段を前記腕輪の内面に実装することにより、日常生活に支障なく、簡易に連続的に該人体の成分濃度を測定できる。
本発明に係る成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、光を発生する光発生手順と、周波数掃引手段が、前記光発生手順で発生した光を変調する周波数を掃引する周波数掃引手順と、光変調手段が、前記周波数掃引手順で掃引した信号により前記光発生手順で発生した光を電気的に強度変調する光変調手順と、光出射手段が、前記光変調手順において強度変調された光を被測定物に出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において照射された光により前記被測定物内に発生する音波を検出する音波検出手順と、積算手段が、前記音波検出手順で検出した音波を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手順と、を順に含むことを特徴とする。
本発明では、周波数が所定の範囲で掃引する変調信号により光を電気的に強度変調し、強度変調された光を出射し、出射された光により発生する光音響信号を検出し、検出された光音響信号を積算してから被測定物内の測定対象とする成分濃度を算出する。ここで、出射する光の波長は測定対象とする成分が吸収を呈する波長に設定する。音波検出手段の感度特性の変化を追尾して、常に感度の高い周波数で測定対象とする成分濃度を測定できる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、光を発生する光発生手順と、光変調手段が、前記光発生手順で発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手順と、光出射手段が、前記光変調手順で強度変調した強度変調光を被測定物に出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において強度変調光により前記被測定物内に発生する音波を検出する音波検出手順と、を含む成分濃度測定装置制御方法であって、前記光出射手順及び前記音波検出手順を、被測定物と音響インピーダンスの略等しい音響整合物質の充填された容器内で行うことを特徴とする。
本発明は、被測定物の音響インピーダンスと略等しい音響インピーダンスの環境下で光音響信号を検出することを特徴とする。一定周波数で強度変調された強度変調光を出射し、出射した光により発生した音波である光音響信号を、前記音響整合物質を介して音波検出手段で検出して、被測定物に含まれる特定成分の濃度を測定する。被測定物と音響インピーダンスの略等しい音響整合物質の充填された容器内で前記光出射過程及び前記音波検出過程を行うことにより、被測定物の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で光音響信号を検出することができる。これにより、被測定物とその周囲との境界反射及び被測定物と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の反射による減衰を低減することができる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置制御方法は、音響波発生器が、音響波を2箇所以上の異なる位置から前記被測定物に出力し、音波検出手段が、前記音響波の強度が特定の値になる位置を検出する最適位置検出手順と、光出射手段が、前記被測定物を透過した前記音響波の強度が特定の値となった位置から一定周波数で強度変調された強度変調光を前記被測定物に出射し、前記音波検出手段が、前記被測定物から放射される音波を検出する音波検出手順と、を順に含むことを特徴とする。
本発明は、光音響法を用いて測定対象とする成分濃度を測定する際に、励起光の照射位置の近傍すなわち光音響信号の発生源近傍に置かれた音響波発生器から発生させた超音波(ここでは音響波と呼ぶ。)を参照信号として検出して、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係が最適となる配置を検出することを特徴とする。検出された最適な配置で光音響信号を検出することで、励起光を散乱する散乱体の影響の少ない伝搬経路で成分濃度を測定することができる。
さらに、音響波の減衰量が一定となるような、検出される音響波の信号強度が予め定められた値となる配置で光音響信号を検出すれば、その検出された配置で光音響信号を検出することで、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係の変化による散乱体が光音響信号に与える影響の変化及び音波検出手段の被測定物との接触を含む不確定な要素の影響を排除した光音響信号を検出することができる。これにより、成分濃度測定装置の配置の変化に伴う多数のパラメータの影響を排除した成分濃度を測定することができる。
さらに、光音響法の測定系における被測定物と、各素子の最適な配置を行なうにあたり、それぞれの配置を調節する手段を機械化し、音波検出手段と連動させることにより、最適な配置での成分濃度測定を自動化する。なお、本発明では、前述の励起光として一定周波数で変調した強度変調光を用いている。
本発明により、音響波の伝搬経路を変化させて、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を伝搬経路ごとに検出した後に、音波検出手段で検出された音響波の強度が特定の値になる伝搬経路を光音響信号が伝搬するように強度変調光を出射して光音響信号を検出する。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、異なる波長の2波の光を発生する光発生手順と、光変調手段が、前記光発生手順において発生させた異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調する光変調手順と、光出射手段が、前記光変調手順において強度変調された異なる波長の2波の光を被測定物に出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において照射された光により前記被測定物内に発生する音波を検出する音波検出手順と、検波増幅手段が、前記検出した音波を、さらに検波増幅して音波の振幅を検出する検波増幅手順と、を順に含み、前記光発生手順は、前記2波のうち一方の光の波長を測定対象とする液体成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を溶媒が前記一方の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定する手順であることを特徴とする。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調するので、異なる波長の2波の光の各々に対応する音波を、音波検出手段の周波数依存性の影響を受けることなく検出できる。
さらに、前記1波の光は被測定物内の測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する圧力の音波を発生し、一方、前記他の1波の光は被測定物の大部分を占める水のみが前記1波の光により発生する音波と同じ圧力の音波を発生するので、両者の差により、測定対象の成分のみにより発生する音波の圧力を検出する。その結果、測定対象の成分の量を測定することが可能となる。
さらに、前記1波の光が被測定物内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被測定物内の大部分を占める水のみの吸収に対応する音波の圧力は、周波数が等しくかつ逆位相であり、被測定物内で音波の段階で相互に重畳し、音波の圧力の差が検出される。従って、音波の圧力の差は前記1波の光が被測定物内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被測定物内の大部分を占める水のみの吸収に対応する音波の圧力を個別に測定して、差を演算するよりも、より高精度に測定できる。上記の点が、従来技術にない全く新しい利点である。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を電気的に強度変調する変調周波数を、被測定物内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、光音響信号の測定値における吸収係数に関わる非線形性に配慮して選択された異なる波長の2波の光に対する光音響信号を測定し、これらの測定値から、一定に保ち難い多数のパラメータの影響を排除して、高精度に被測定物内に発生する音波を検出することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、周波数掃引手段が、前記光発生手順で発生した光を変調する周波数を掃引する周波数掃引手順と、積算手段が、前記音波検出手順で検出した音波を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手順と、をさらに含むことが望ましい。
本発明においては、前記被測定物内で発生した前記光音響信号を、掃引する変調信号範囲で積算することにより、前記音波検出手段の共振周波数が変化する場合においても、前記音波検出手段の共振周波数に一致する周波数における高い感度で検出した光音響信号の値を積算するため、感度の高い共振周波数で測定することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順は、前記周波数掃引手順において掃引する変調周波数に追尾して、照射された光により前記被測定物内に発生する音波を検出し、前記積算手順は、前記音波検出手順において音波の検出感度が高い変調周波数範囲で、前記音波検出手順で検出した音波を積算する手順であることが望ましい。
本発明においては、被測定物内に発生する音波検出手段の共振周波数が変化し、光音響信号を検出する変調周波数が変化する場合、周波数掃引された変調周波数で変調し出射された光により発生する光音響信号を検出した結果から、検出感度が最大になる音波検出手段の共振周波数の変化を判断し、共振周波数の変化を追尾して、共振周波数の近傍で光音響信号の検出値を積算する。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記積算手順で積算された音波から測定対象とする液体成分の成分濃度を算定する液体成分濃度算定手順をさらに含むことが望ましい。
本発明では、予め用意した被測定物内に発生する光音響信号と測定対象とする成分濃度との関係を示す理論値、あるいは実験値を記憶し、被測定物内に発生した光音響信号を検出した値から測定対象の成分濃度を算定する。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手順及び前記音波検出手順を、前記被測定物と音響インピーダンスの略等しい音響整合物質の充填された容器内で行うことが望ましい。
被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填する容器を備えることで、被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填した容器内に被測定物を配置して、被測定物の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で被測定物からの光音響信号を検出することができる。被測定物の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で光音響信号を検出することで、被測定物とその周囲との境界反射及び被測定物と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の反射による減衰を低減することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順において、前記音波は、前記被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質を介して検出されることが望ましい。
被測定物と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質を介して光音響信号を検出することで、被測定物とその周囲との境界反射並びに音波検出手段に掛かる圧力及び振動を防ぐことができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手順において、前記強度変調光は、前記容器の内壁面に配置され、前記強度変調光に対して透明な出射窓を介して前記被測定物に出射されることが望ましい。
容器が強度変調光に対して透明な出射窓を備えることにより、光出射手段を容器外に配置することができるので、光出射手段の配置が容易になる。また、容器の内壁面から強度変調光を出射することができるので、容器の内壁面の凹凸がなくなり、光音響信号の反射を低減することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記被測定物は、前記強度変調光を照射される部分が、液状、ゾル状又はゲル状の音響整合物質で覆われていることが望ましい。
被測定物の強度変調光を照射される部分が、液状、ゾル状又はゲル状の前記音響整合物質で覆われていることによって、被測定物の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で被測定物からの光音響信号を検出することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、音響波発生器が、音響波を2箇所以上の異なる位置から前記被測定物に出力し、音波検出手段が、前記被測定物を透過した前記音響波の強度が特定の値になる位置を検出する最適位置検出手順をさらに含み、前記光出射手順において、前記光出射手段が、前記音響波の強度が特定の値となった位置から光を前記被測定物に出射することが望ましい。
本発明により、音響波の伝搬経路を変化させて、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を伝搬経路ごとに検出した後に、音波検出手段で検出された音響波の強度が特定の値になる伝搬経路を光音響信号が伝搬するように強度変調光を出射して光音響信号を検出する。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波の光の波長を、測定対象とする液体成分の呈する吸収の差が溶媒の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順であることが望ましい。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波のうち一方の光の波長を測定対象とする液体成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を溶媒が前記一方の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定する手順であることが望ましい。
本発明は、上記の前記光発生手順は、前記2波の光の波長を、測定対象とする液体成分の呈する吸収の差が溶媒の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順を有する成分濃度測定装置制御方法において、溶媒の呈する吸収の差を0とした場合である。これにより、溶媒の吸収による影響を除去することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波の光の波長の両方の波長を、測定対象とする液体成分の呈する吸収の差がそれ以外の液体成分の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順であることが望ましい。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手段からの2つの光のビームを合成して前記被測定物に出射することが望ましい。
測定部位に光を集中させることができるため、効率的に光音響信号を発生させることができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記検出した音波を、さらに検波増幅して音波の振幅を検出することが望ましい。
検出した光音響信号から超音波の振幅を検出することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順で検出された音波の圧力から測定対象とする液体成分の成分濃度を算定する液体成分濃度算定手順をさらに含むことが望ましい。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順のあとに、前記音波検出手順で検出した音波を変調周波数に対応して記録する記録手順をさらに含むことが望ましい。
音波検出手段が検出した光音響信号の値を、掃引された変調周波数ごとに記録する手段を備えることにより、発生する音波検出手段の共振周波数が変化する場合、出射する光の変調周波数の掃引範囲が前記共振周波数の変化する範囲を含んでおり、検出した光音響信号の中から高精度に測定した値を選定して積算し平均して、正確に測定対象とする成分濃度を測定していることを確認することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手順において、被測定物は前記強度変調光の出射面と接して配置され、前記強度変調光は前記被測定物に直接照射されることが望ましい。
被測定物を強度変調光の出射面と接するように配置し、被測定物に強度変調光を直接照射することによって、音響整合物質等での吸収による強度変調光の減衰を防ぐことができる。これにより、強度変調光を被測定物に効率よく照射することができるので、被測定物から放射される光音響信号が増加し、音波検出手段が検出する光音響信号の精度をさらに向上することができる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、光を発生する光発生手順と、周波数掃引手段が、前記光発生手順で発生した光を変調する周波数を掃引する周波数掃引手順と、光変調手段が、前記周波数掃引手順で掃引した信号により前記光発生手順で発生した光を電気的に強度変調する光変調手順と、光出射手段が、前記光変調手順において強度変調された光を出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において出射された光により発生する音波を検出する音波検出手順と、積算手段が、前記音波検出手順で検出した音波を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手順と、を順に含むことを特徴とする。
本発明では、周波数が所定の範囲で掃引する変調信号により光を電気的に強度変調し、強度変調された光を出射し、出射された光により発生する光音響信号を検出し、検出された光音響信号を積算してから被検体内の測定対象とする成分濃度を算出する。ここで、出射する光の波長は測定対象とする成分が吸収を呈する波長に設定する。音波検出手段の感度特性の変化を追尾して、常に感度の高い周波数で測定対象とする成分濃度を測定できる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、光を発生する光発生手順と、光変調手段が、前記光発生手順で発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手順と、光出射手段が、前記光変調手順で強度変調した強度変調光を出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において強度変調光により発生する音波を検出する音波検出手順と、を含む成分濃度測定装置制御方法であって、前記光出射手順及び前記音波検出手順を、被検体と音響インピーダンスの略等しい音響整合物質の充填された容器内で行うことを特徴とする。
本発明は、被検体の音響インピーダンスと略等しい音響インピーダンスの環境下で光音響信号を検出することを特徴とする。一定周波数で強度変調された強度変調光を出射し、出射した光により発生した音波である光音響信号を、前記音響整合物質を介して音波検出手段で検出して、液体に含まれる特定成分の濃度を測定する。被検体と音響インピーダンスの略等しい音響整合物質の充填された容器内で前記光出射過程及び前記音波検出過程を行うことにより、被検体の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で光音響信号を検出することができる。これにより、被検体とその周囲との境界反射及び被検体と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の反射による減衰を低減することができる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置制御方法は、音響波発生器が、音響波を2箇所以上の異なる位置から出力し、音波検出手段が、被検体を透過した前記音響波の強度が特定の値になる位置を検出する最適位置検出手順と、光出射手段が、前記音響波の強度が特定の値となった位置から一定周波数で強度変調された強度変調光を出射し、前記音波検出手段が、前記強度変調光により発生する音波を検出する音波検出手順と、を順に含むことを特徴とする。
本発明は、光音響法を用いて測定対象とする成分濃度を測定する際に、励起光の照射位置の近傍すなわち光音響信号の発生源近傍に置かれた音響波発生器から発生させた超音波(ここでは音響波と呼ぶ。)を参照信号として検出して、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係が最適となる配置を検出することを特徴とする。検出された最適な配置で光音響信号を検出することで、骨などの散乱体の影響の少ない伝搬経路で成分濃度を測定することができる。
さらに、音響波の減衰量が一定となるような、検出される音響波の信号強度が予め定められた値となる配置で光音響信号を検出すれば、その検出された配置で光音響信号を検出することで、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係の変化による散乱体が光音響信号に与える影響の変化及び音波検出手段の被検体との接触を含む不確定な要素の影響を排除した光音響信号を検出することができる。これにより、成分濃度測定装置の配置の変化に伴う多数のパラメータの影響を排除した成分濃度を測定することができる。
さらに、光音響法の測定系における被検体、特に生体と、各素子の最適な配置を行なうにあたり、それぞれの配置を調節する手段を機械化し、音波検出手段と連動させることにより、最適な配置での成分濃度測定を自動化する。なお、本発明では、前述の励起光として一定周波数で変調した強度変調光を用いている。
本発明により、音響波の伝搬経路を変化させて、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を伝搬経路ごとに検出した後に、音波検出手段で検出された音響波の強度が特定の値になる経路を光音響信号が伝搬するように強度変調光を出射して光音響信号を検出する。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
また、本発明に係る成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、異なる波長の2波の光を発生する光発生手順と、光変調手段が、前記光発生手順において発生させた異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調する光変調手順と、光出射手段が、前記光変調手順において強度変調された異なる波長の2波の光を被検体に出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において出射された光により前記被検体内に発生する音波を検出する音波検出手順と、検波増幅手段が、前記検出した音波を、さらに検波増幅して音波の振幅を検出する検波増幅手順と、を順に含み、前記光発生手順は、前記2波のうち一方の光の波長を測定対象とする成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を溶媒が前記一方の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定する手順であることを特徴とする。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調するので、異なる波長の2波の光の各々に対応する音波を、音波検出手段の周波数依存性の影響を受けることなく検出できる。
さらに、前記1波の光は被検体内の測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する圧力の音波を発生し、一方、前記他の1波の光は被検体の大部分を占める水のみが前記1波の光により発生する音波と同じ圧力の音波を発生するので、両者の差により、測定対象の成分のみにより発生する音波の圧力を検出する。その結果、測定対象の成分の量を測定することが可能となる。
さらに、前記1波の光が被検体内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被検体内の大部分を占める水のみの吸収に対応する音波の圧力は、周波数が等しくかつ逆位相であり、被検体内で音波の段階で相互に重畳し、音波の圧力の差が検出される。従って、音波の圧力の差は前記1波の光が被検体内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被検体内の大部分を占める水のみの吸収に対応する音波の圧力を個別に測定して、差を演算するよりも、より高精度に測定できる。上記の点が、従来技術にない全く新しい利点である。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を電気的に強度変調する変調周波数を、被検体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、光音響信号の測定値における吸収係数に関わる非線形性に配慮して選択された異なる波長の2波の光に対する光音響信号を測定し、これらの測定値から、一定に保ち難い多数のパラメータの影響を排除して、高精度に被検体内に発生する音波を検出することができる。
上記成分濃度測定装置制御方法において、第2の光出射手段が、前記同一周波数の繰り返し間隔よりも長い間隔で断続的に光を前記出射する第2光出射手順をさらに含み、前記音波検出手順において、前記音波検出手段が、前記光出射手順及び前記第2光出射手順において出射された光により生じる音波を検出することが望ましい。
本発明により、被検体、特に生体組織内における成分での吸収による光音響信号の発生量を増加させて非侵襲にかつ正確に成分濃度を測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記第2の光出射手段が測定対象とする成分と異なる成分の特徴的な吸収を呈する波長の光を出射することが望ましい。
非血液組織に比して血液組織の温度を上昇させ、血液成分の光音響信号のみを増大させることができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記第2の光出射手段が、血液中のヘモグロビンが特徴的な吸収を呈する波長の光を出射することが望ましい。
ヘモグロビンの温度を上昇させ、ヘモグロビンを含む血液からの光音響信号のみを増大させることができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記第2の光出射手段が被検体に2℃以下の温度上昇を生じさせる間隔で光を出射することが望ましい。
被検体への影響を最小限度に抑えることができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記第2の光出射手段が被検体に2℃以下の温度上昇を生じさせる強度で光を出射することが望ましい。
被検体への影響を最小限度に抑えることができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、周波数掃引手段が、前記光発生手順で発生した光を変調する周波数を掃引する周波数掃引手順と、積算手段が、前記音波検出手順で検出した音波を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手順と、をさらに含むことが望ましい。
本発明においては、前記被検体内で発生した前記光音響信号を、掃引する変調信号範囲で積算することにより、前記音波検出手段の共振周波数が変化する場合においても、前記音波検出手段の共振周波数に一致する周波数における高い感度で検出した光音響信号の値を積算するため、感度の高い共振周波数で測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順は、前記周波数掃引手順において掃引する変調周波数に追尾して、出射された光により発生する音波を検出し、前記積算手順は、前記音波検出手順において音波の検出感度が高い変調周波数範囲で、前記音波検出手順で検出した音波を積算することが望ましい。
本発明においては、被検体内に発生する音波検出手段の共振周波数が変化し、光音響信号を検出する変調周波数が変化する場合、周波数掃引された変調周波数で変調し照射された光に発生する光音響信号を検出した結果から、検出感度が最大になる音波検出手段の共振周波数の変化を判断し、共振周波数の変化を追尾して、共振周波数の近傍で光音響信号の検出値を積算する。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記積算手順で積算された音波から測定対象とする成分の成分濃度を算定する成分濃度算定手順をさらに含むことが望ましい。
本発明では、予め用意した被検体内に発生する光音響信号と測定対象とする成分濃度との関係を示す理論値、あるいは実験値を記憶し、被検体内に発生した光音響信号を検出した値から測定対象の成分濃度を算定する。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手順及び前記音波検出手順を、被検体と音響インピーダンスの略等しい音響整合物質の充填された容器内で行うことが望ましい。
被検体と音響インピーダンスの略等しい音響整合物質の充填された容器内で前記光出射過程及び前記音波検出過程を行うことにより、被検体の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で光音響信号を検出することができる。これにより、被検体とその周囲との境界反射及び被検体と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の劣化を低減することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順において、前記音波は、前記被検体と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質を介して検出されることが望ましい。
被検体と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質を介して光音響信号を検出することで、被検体とその周囲との境界反射並びに音波検出手段に掛かる圧力及び振動を防ぐことができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手順において、前記強度変調光は、前記容器の内壁面に配置され、前記強度変調光に対して透明な出射窓を介して出射されることが望ましい。
容器が強度変調光に対して透明な出射窓を備えることにより、光出射手段を容器外に配置することができるので、光出射手段の配置が容易になる。また、容器の内壁面から強度変調光を出射することができるので、容器の内壁面の凹凸がなくなり、光音響信号の反射を低減することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記被検体は、前記強度変調光を照射される部分が、液状、ゾル状又はゲル状の前記音響整合物質で覆われていることが望ましい。
被検体の強度変調光を照射される部分が、液状、ゾル状又はゲル状の前記音響整合物質で覆われていることによって、被検体の周囲を音響整合物質で取り囲んだ環境下で被検体からの光音響信号を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記容器は、前記音響整合物質としての水で充填されることが望ましい。
被検体の音響インピーダンスは水に非常に近いので、被検体の周囲を水で取り囲んだ環境下で光音響信号を検出することで、被検体とその周囲との境界反射及び被検体と音波検出手段との接触により生じる光音響信号の劣化を低減することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、光出射手段が、音響波を2箇所以上の異なる位置から出力し、音波検出手段が、前記被検体を透過した前記音響波の強度が特定の値になる位置を検出する最適位置検出手順をさらに含むことが望ましい。
本発明により、音響波の伝搬経路を変化させて、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を伝搬経路ごとに検出することが可能となる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手順において、前記光出射手段が、前記音響波の強度が特定の値となった位置から光を出射することが望ましい。
音波検出手段で検出された音響波の強度が特定の値になる経路を光音響信号が伝搬するように強度変調光を出射して光音響信号を検出することにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。また、最適位置検出手段と光出射手段とを連動させて常に最適な配置で光音響信号を検出することもできる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順において、前記光出射手段は、前記音響波発生器の一部に設けられた前記強度変調光に対して透明な透過窓を介して出射することが望ましい。
本発明により、音響波発生器の上から強度変調光を被検体に照射することができる。これにより、最適な音響波発生器の位置と略同じ位置から強度変調光を被検体に照射することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記最適位置検出手順において、前記音響波発生器は、前記強度変調光と周波数の略等しい周波数の前記音響波を出力するか、或いは、前記音波検出手段で検出される音響波の強度に応じて出力する前記音響波の強度を大小させることが望ましい。
本発明により、音波検出手段で検出する光音響信号と周波数の等しい音響波で散乱体が光音響信号に与える影響を検査することができる。また、前記音波検出手段で検出された音響波の強度に応じて音響波発生器から出力する音響波の強度を大小させることができるので、音波検出手段で検出された強度が小さい場合でも検出された強度を比較することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記最適位置検出手順において、前記音響波発生器及び前記音波検出手段は、圧力が制御可能な押圧力で前記音響波発生器及び前記音波検出手段を前記被検体に押圧して前記音響波を検出することが望ましい。
本発明により、音響波発生器及び音波検出手段が被検体を押圧する圧力が可変なので、音響波発生器及び音波検出手段が被検体と接触する圧力を所定の圧力に保つことができる。これにより、被検体を押圧する圧力の影響を軽減することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波の光の波長を、測定対象とする成分の呈する吸収の差が溶媒の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順であることが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波のうち一方の光の波長を測定対象とする成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を溶媒が前記一方の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定する手順であることが望ましい。
本発明は、上記の測定対象とする成分の呈する吸収の差が溶媒の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順を有する成分濃度測定装置制御方法において、溶媒の呈する吸収の差を0とした場合である。これにより、溶媒の吸収による影響を除去することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波の光の波長を、測定対象とする成分の呈する吸収の差がそれ以外の成分の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順であることが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波の光の波長を、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差が水の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順であることが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波のうち一方の光の波長を測定対象とする血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他方の光の波長を水が前記一方の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定する手順であることが望ましい。
本発明は、上記の前記光発生手順は、前記2波の光の波長を、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差が水の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順を有する成分濃度測定装置制御方法において、水の呈する吸収の差を0とした場合である。これにより、水の吸収による影響を除去することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順は、前記2波の光の波長を、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差がそれ以外の血液成分の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する手順であることが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手段からの2つの光のビームを合成して出射することが望ましい。
測定部位に光を集中させることができるため、効率的に光音響信号を発生させることができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記検出した音波を、さらに検波増幅して音波の振幅を検出することが望ましい。
検出した光音響信号から超音波の振幅を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記検波増幅が同期検波増幅であることが望ましい。
光音響信号から高感度に超音波の振幅を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手段からの2つの光のビーム径を略等しくすることが望ましい。
測定部位を一致させて、測定精度を高めることができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順で検出された音波の圧力から測定対象とする成分の成分濃度を算定する成分濃度算定手順をさらに含むことが望ましい。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記成分濃度算定手順は、前記異なる波長の2波の光により発生する音波の圧力を測定し、前記2波の光のうち1波の光を零としたときに発生する音波の圧力を測定し、前記2波の光により発生する音波の圧力を前記2波の光のうち1波の光を零としたときに発生する音波の圧力により除算する手順であることが望ましい。
前記異なる波長の2波の光を出射して発生する音波の圧力は、前述のように前記1波の光が被検体内に発生する測定対象の成分と水の混在した状態の全吸収に対応する音波の圧力と、前記他の1波の光が被検体内の大部分を占める水のみが発生する音波の圧力の差となって検出されるので、この差の値を、前記2波の光のうち1波の光を零としたときに発生する音波の圧力、すなわち、前記他の1波の光が被検体内の大部分を占める水のみが発生する音波の圧力により、後述する数式(5)に従って、除算することにより、成分濃度を測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光変調手順は、発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調する手順であることが望ましい。
本発明においては、異なる波長の2波の光の各々を電気的に強度変調する変調周波数を、被検体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、高精度に被検体内に発生する音波を検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光変調手順と前記光出射手順との間に、前記強度変調された異なる波長の2波の光を1の光束に合波し水に照射して発生する音波の圧力が零になるように前記2波の光の各々の相対的な強度を調整する強度調整手順を、さらに含むことが望ましい。
上記の校正により、波長の異なる2波の光の相対的な強度を、各々の波長の光が被検体内の大部分を占める水の中に発生する光音響信号の強度が等しくなるように校正できるので、光音響信号の測定系全体を含む状態で、波長の異なる2波の光の相対的な強度を校正して測定精度を向上させることができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順は、前記変調周波数に同期して、同期検波により音波を検出する手順であることが望ましい。
前記光音響信号を前記変調周波数に同期した同期検波により検出することにより、高精度に検出することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順及び前記光変調手順は、2の半導体レーザ光源の各々を同一周波数で互いに逆位相の矩形波信号により直接変調する手順であることが望ましい。
本発明においては、2の半導体レーザ光源の各々を同一周波数で互いに逆位相の矩形波信号により直接変調することにより、前記異なる波長の2波の光を発生し同時に変調することが可能であり、装置構成を簡略化できる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、測定対象とする血液成分がグルコース又はコレステロールであることが望ましい。
グルコース又はコレステロールの濃度を測定する場合には、特徴的な吸収を示す波長を照射することによって、精度よく測定することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順のあとに、前記音波検出手順で検出した音波を変調周波数に対応して記録する記録手順をさらに含むことが望ましい。
音波検出手段が検出した光音響信号の値を、掃引された変調周波数ごとに記録する手段を備えることにより、被検体内に発生する音波検出手段の共振周波数が変化する場合、被検体に照射する光の変調周波数の掃引範囲が前記共振周波数の変化する範囲を含んでおり、検出した光音響信号の中から高精度に測定した値を選定して積算し平均して、正確に成分濃度を測定していることを確認することができる。
また、上記成分濃度測定装置制御方法において、前記光出射手順において、被検体は前記強度変調光の出射面と接して配置されることが望ましい。
被検体を強度変調光の出射面と接するように配置し、被検体に強度変調光を直接照射することによって、音響整合物質等での吸収による強度変調光の減衰を防ぐことができる。これにより、強度変調光を被検体に効率よく照射することができるので、被検体から放射される光音響信号が増加し、音波検出手段が検出する光音響信号の精度をさらに向上することができる。
本発明の非侵襲な成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法は、強度変調された光を液体あるいは被検体に照射して発生する光音響信号を測定して、成分濃度を測定する際に、前記音波検出手段の感度が高い共振周波数が変化する周波数範囲で、前記光を強度変調する変調数周波数を掃引し、前記変調周波数が前記音波検出手段の共振周波数に合った周波数で、光音響信号を測定することにより、測定対象とする成分濃度を正確に測定することができる。
本発明の非侵襲の成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法は、同一の周波数の信号により異なる波長の2波の光を強度変調して液体あるいは被検体へ照射し、液体内あるいは被検体内に発生する光音響信号を測定するので、音波検出手段の周波数特性の不均一性の影響を受けない。さらに、変化する可能性のある前記音波検出手段の共振周波数を含む範囲で、前記光を強度変調する変調数周波数を掃引し、前記音波検出手段の共振周波数に合った周波数により光音響信号を測定するので、検出器が外的な影響を受け難く、正確な測定が可能である。
また、本発明の成分濃度測定装置及び成分濃度測定装置制御方法は、被測定物又は被検体の音響インピーダンスと略等しい音響インピーダンスの環境下で光音響信号を検出するので、被検体とその周囲との境界反射及び被検体と音波検出手段との接触による光音響信号の反射による減衰を防ぐことができる。さらに、音波検出手段での集音状態及び温度変化による光音響信号の精度の低下を防ぐことができる。
本発明によれば、光音響信号の発生源と音波検出手段の位置関係が最適となる配置を検出することにより、骨などの散乱体が影響の少ない最適な配置で光音響信号を検出し、成分濃度を測定することができる。
さらに、検出される音響波の信号強度が予め定められた値となる配置で光音響信号を検出することにより、成分濃度測定装置の配置の変化に伴う多数のパラメータの影響を排除した成分濃度を測定することができる。
さらに、音波検出手段を一定の圧力で被検体に押圧することで、被検体を押圧する圧力の影響を軽減する。
したがって、光音響法において、反射/散乱の影響又は被検体を押圧する圧力の影響を軽減し、光音響信号の測定精度を向上することができる。
本発明の非侵襲な成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法は、光音響信号における吸収係数に関わる非線形性に配慮して異なる波長の2波の光の波長を選択し、それらの光に対する光音響信号を測定し、一定に保ち難い多数のパラメータの影響を排除して、測定対象とする成分濃度を正確に算定できる。
本発明の成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法は、光音響信号における吸収係数に関わる非線形性に配慮して異なる波長の2波の光の波長を選択し、それらの光に対する光音響信号を測定し、一定に保ち難い多数のパラメータの影響を排除して、成分濃度を正確に算定できる。本発明の非侵襲の成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法は、同一の周波数の信号により異なる波長の2波の光を強度変調して被検体へ照射し、被検体内に発生する光音響信号を測定するので、音波検出手段の周波数特性の不均一性の影響を受けず、さらに音波検出感度の向上に有効な共鳴型の検出器を適用でき、病弱な人間や動き回る動物に対しても短時間の測定が可能である。さらに、本発明の成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法は、照射光方向に伝搬した音波を検出する前方伝搬型、あるいは照射光に向かって逆行する方向に伝搬する音波を検出する後方伝搬型のいずれの構成も可能であり、特に後者は小型化することができる。
また、本願発明の成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法は、液体に含まれる成分を非侵襲にかつ正確に測定することができる。
本願発明の成分濃度測定装置および成分濃度測定装置制御方法は、被検体に3種の光を照射し、被検体からの光音響信号を測定することによって、被検体に含まれる成分濃度を非侵襲にかつ正確に測定することができる。特に第3の光の波長を血液のみが吸収を呈する波長に設定すれば、非血液組織からの背景信号の除去が可能である。
さらに、本発明の成分濃度測定装置は、非侵襲で、被検体の成分の濃度を測定することができる。また、被検体の寸法が側面部を含めて一定に保たれ、さらに、被検体側面からの反射波が抑制されるので、成分の濃度の安定かつ正確な測定を行うことができる。
さらに、本発明の成分濃度測定装置は、指輪型や腕輪型にすることにより、小型で密着性のある装置とすることができ、携帯しながら装着することができる。
本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、以下の実施の形態では、成分濃度測定装置及び成分濃度測定装置制御方法を血液成分濃度測定装置又は血液成分濃度測定装置制御方法として説明するが、被検体としての生体を被測定物としての液体に、被検体としての血液を被測定物としての液体に、水を液体の溶媒にそれぞれ置き換えれば、液体成分濃度測定装置又は液体成分濃度測定装置制御方法として実施することができる。また、被検体は、生体や血液に限らず、例えば「リンパ液」や「涙」等のものも含まれる。また、被検体として生体を適用した場合には、測定対象とする成分は、血液成分に限らず、例えば「リンパ液成分」や「涙成分」等の成分も含まれる。このように測定対象に応じて種々の成分を測定できる。
(第1実施形態)
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置は、異なる波長の2波の光を発生する光発生手段と、該異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調する光変調手段と、強度変調された該異なる波長の2波の光を1の光束に合波し生体に向けて出射する光出射手段と、出射された光により生体内に発生する音波を検出する音波検出手段と、検出された音波の圧力から生体内の血液成分濃度を算定する血液成分濃度算定手段と、を備えた血液成分濃度測定装置である。なお、本実施形態に係る血液成分濃度算定手段は、本実施形態において適用する他、後に説明する第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても適用することができる。
さらに、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置においては、前記光発生手段は、1波の光の波長を血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することもできる。
図1を参照して、本実施形態に係る構成について説明する。図1は、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置の基本構成を示している。図1において、光発生手段の一部としての第1の光源101は、光変調手段の一部としての駆動回路104により、光変調手段の一部としての発振器103に同期して強度変調されている。
一方、光発生手段の一部としての第2の光源105は、光変調手段の一部としての駆動回路108により、同じく上記発振器103に同期して強度変調されている。但し、駆動回路108には、発振器103の出力が、光変調手段の一部としての180°移相回路107を経て給電され、その結果、第2の光源105は、上記第1の光源101に対して、180°位相が変化した信号により強度変調されるように構成されている。
ここで、図1に示す第1の光源101および第2の光源105の各々の波長は、1波の光の波長を血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定する。
第1の光源101および第2の光源105は各々異なる波長の光を出力し、各々の出力する光は、光出射手段としての合波器109により合波され、1本の光束として、被検体としての生体被検部110に照射される。照射された第1の光源101および第2の光源105の各々が出力する光により生体被検部110内に発生される音波、すなわち光音響信号は、音波検出手段の一部としての超音波検出器113により検出され、光音響信号の音圧に比例した電気信号に変換される。前記電気信号は、上記発振器103に同期した音波検出手段の一部としての位相検波増幅器114により同期検波され、音圧に比例する電気信号が出力端子115に出力される。
ここで、出力端子115に出力される信号の強度は第1の光源101および第2の光源105の各々が出力する光が生体被検部110内の成分により吸収された量に比例するので、前記信号の強度は生体被検部110内の成分の量に比例する。従って、出力端子115に出力される前記信号の強度の測定値から、血液成分濃度算定手段(図示せず)が生体被検部110内の血液中の測定対象の成分の量を算定する。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置は第1の光源101および第2の光源105の出力する異なる波長の2波の光を同一周期、すなわち同一周波数の信号で強度変調しているので、超音波検出器113の周波数特性の不均一の影響を受けない特徴があり、この点が既存技術より優れている点である。
以上説明したように本実施形態に係る血液成分濃度測定装置は高精度に血液成分を測定することができる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、異なる波長の2波の光を発生する光発生手順と、光変調手段が、前記光発生手順において発生させた異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調する光変調手順と、光出射手段が、前記光変調手順において強度変調された異なる波長の2波の光を1の光束に合波し生体に向けて出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において照射された光により生体内に発生する音波を検出する音波検出手順と、検出された音波の圧力から生体内の血液成分濃度を算定する血液成分濃度算定手順と、を順に含む血液成分濃度測定装置制御方法である。なお、本実施形態に係る血液成分濃度算定手順は、本実施形態において適用する他、後に説明する第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても適用することができる。
さらに、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法においては、前記光発生手順は、1波の光の波長を血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定して異なる波長の2波の光を発生する血液成分濃度測定装置制御方法とすることもできる。
ここで、異なる波長の2波の光の各々を電気的に強度変調する方法としては、異なる波長の2波の光を発生し、その後に異なる波長の2波の光のそれぞれを同一周波数で位相が180°異なる信号により変調器を用いて電気的に強度変調する方法でもよく、図1に示す例の場合のように駆動回路104および駆動回路108がそれぞれ第1の光源101および第2の光源105を発光させると同時に強度変調する直接変調法でもよい。
次に、上記の手順により強度変調された前記波長の異なる波長の2波の光の各々を、例えば図1に示す合波器109により1の光束に合波し生体に照射し、照射された前記波長の異なる波長の2波の光の各々により生体内に発生する音波、すなわち光音響信号を例えば図1に示す超音波検出器113により検出し電気信号に変換し、前記電気信号をさらに例えば図1に示す位相検波増幅器114により同期検波し、光音響信号に比例する電気信号を出力端子115に出力する。次に、血液成分濃度算定手順において、音波検出手順で検出された音波の圧力から生体内の血液成分濃度を算定する。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法は、第1の光源101および第2の光源105の出力する異なる波長の2波の光を同一周期、すなわち同一周波数の信号で強度変調しているので、音波を検出する測定系の周波数特性の不均一の影響を受けない特徴があり、この点が既存技術より優れている点である。
以上説明したように本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法は高精度に血液成分を測定することができる。
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置において、前記光変調手段は生体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調する手段とすることもできる。なお、なお、本実施形態において説明する光変調手段は、後に説明する第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても同様である。
異なる波長の2波の光の各々を生体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、生体内に発生する音波を高感度に検出できる。
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置制御方法において、前記光変調手順は生体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調する手順とすることもできる。
異なる波長の2波の光の各々を生体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、生体内に発生する音波を高感度に検出できる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置において、前記血液成分濃度算定手段は、前記異なる波長の2波の光を生体に照射して発生する音波の圧力を、前記2波の光のうち1波の光を零としたときに発生する音波の圧力で除算する手段とすることもできる。
このような除算により、高精度に血液成分濃度を測定することができる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法において、前記検血液成分濃度算定手順は、前記2波の光を生体に照射して発生する音波の圧力を、前記2波の光のうち1波の光を零としたときに発生する音波の圧力により除算する手順とすることもできる。
このような除算により、高精度に血液成分濃度を測定することができる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、強度変調された前記異なる波長の2波の光を1の光束に合波し水に照射して発生する音波の圧力が零になるように前記異なる波長の2波の光の各々の相対的な強度を調整する手段とすることもできる。なお、本実施形態において説明する光発生手段は、後に説明する第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても同様である。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置において、例えば、図1において、生体被検部110に代えて校正用の水に、前述の血液成分濃度の測定と同様に、第1の光源101および第2の光源105の出力する光を1の光束に合波した光を照射し、超音波検出器113が検出する光音響信号が零になるように、第1の光源101および第2の光源105の出力する光の相対的な強度を調節する場合である。
上記のように第1の光源101および第2の光源105の光の強度を調節する場合、第1の光源101および第2の光源105の光の相対的な強度を容易に等しく調整することができるので、容易に、高精度に血液成分濃度を測定することができる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法において、前記光変調手順と前記光出射手順との間に、前記強度変調された異なる波長の2波の光を1の光束に合波し水に向けて出射して発生する音波の圧力が零になるように前記2波の光の各々の相対的な強度を調整する強度調整手順を、さらに含む血液成分濃度測定装置制御方法とすることもできる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法は、例えば、強度変調された異なる波長の2波の光を1の光束に合波する手順の後に、前記異なる波長の2波の光を1の光束に合波し水に向けて出射して発生する音波の圧力が零になるように前記2波の光の相対的な強度を調整することにより、前述の第1の光源101および第2の光源105の出力する光の相対的な強度を容易に等しく調整することができるので、容易に、高精度に血液成分を測定できる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置において、前記音波検出手段は、前記変調周波数に同期して同期検波により検出する手段とすることもできる。なお、本実施形態において説明する音波検出手段は、後に説明する第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても同様である。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置は、例えば、第1の光源101および第2の光源105の出力する光の各々に対応する光音響信号が超音波検出器113により検出され電気信号に変換された信号を、位相検波増幅器114において第1の光源101および第2の光源105の出力する光の各々を強度変調する信号に同期して、同期検波により検出する場合である。
位相検波増幅器114において第1の光源101および第2の光源105の出力する光の各々に対応する光音響信号の検出精度が向上し、一層高精度に光音響信号を測定することができる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法において、前記音波検出手順は、前記変調周波数に同期して、同期検波により検出する手順とすることもできる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法において、例えば、前記異なる波長の2波の光の各々に対応する光音響信号を、前記異なる波長の2波の光の各々を強度変調する信号に同期して、同期検波により検出する場合である。
第1の光源101および第2の光源105の出力する光の各々に対応する光音響信号の検出精度が向上し、一層高精度に光音響信号を測定することができる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置において、前記光発生手段及び前記光変調手段は、2の半導体レーザ光源の各々を同一周波数で互いに逆位相の矩形波信号により直接変調する手段とすることができる。なお、本実施形態において説明する光発生手段は、後に説明する第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても同様である。
2の半導体レーザ光源の各々を同一周波数で互いに逆位相の矩形波信号により直接変調する装置構成とすることにより、装置構成が簡略化できる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法において、前記光発生手順及び前記光変調手順は、2の半導体レーザ光源の各々を同一周波数で互いに逆位相の矩形波信号により直接変調する手順とすることができる。
2の半導体レーザ光源の各々を同一周波数で互いに逆位相の矩形波信号により直接変調する手順とすることにより、手順が簡略化できる。
次に本実施形態に係る血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定装置制御方法の基本となる技術の詳細を説明する。
図1を参照して本実施形態に係る血液成分濃度測定装置構成を説明する。図1に示す本実施形態に係る血液成分濃度測定装置は、第1の光源101、第2の光源105、駆動回路104、駆動回路108、180°移相回路107、合波器109、超音波検出器113、位相検波増幅器114、出力端子115、発振器103により構成される。
発振器103は、信号線により駆動回路104、180°移相回路107、位相検波増幅器114とそれぞれ接続され、駆動回路104、180°移相回路107、位相検波増幅器114のそれぞれに信号を送信する。
駆動回路104は、発振器103から送信された信号を受信し、信号線により接続されている第1の光源101へ駆動電力を供給し、第1の光源101を発光させる。
180°移相回路107は、発振器103から送信された信号を受信して、前記受信した信号に180°の位相変化を与えた信号を、信号線により接続されている駆動回路108へ送信する。
駆動回路108は、180°移相回路107から送信された信号を受信し、信号線により接続されている第2の光源105へ駆動電力を供給し、第2の光源105を発光させる。
第1の光源101および第2の光源105の各々は、互いに異なる波長の光を出力し、各々が出力した光を光波伝送手段により合波器109へ導く。
第1の光源101の出力した光と第2の光源105の出力した光は、合波器109に入力され、合波されて、1の光束として生体被検部110の所定の位置へ照射され、生体被検部110内に音波、すなわち光音響信号を発生させる。
超音波検出器113は、生体被検部110の光音響信号を検出し、電気信号に変換して、信号線により接続されている位相検波増幅器114へ送信する。
位相検波増幅器114は、発振器103から送信される同期検波に必要な同期信号を受信するとともに、超音波検出器113から送信されてくる光音響信号に比例する電気信号を受信し、同期検波ならびに増幅、濾波を行なって、出力端子115へ光音響信号に比例する電気信号を出力する。
第1の光源101は、発振器103の発振周波数に同期して強度変調された光を出力する。一方、第2の光源105は、発振器103の発振周波数で、かつ180°移相回路107により180°の位相変化を受けた信号に同期して強度変調された光を出力する。
上記のように、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置においては第1の光源101の出力した光と第2の光源105の出力した光は、同一の周波数の信号により強度変調されているので、従来技術において、複数の周波数の信号により強度変調している場合に問題となる測定系の周波数特性の不均一性の影響は存在しない。
一方、従来技術において問題となる光音響信号の測定値に存在する非線形的な吸収係数依存性は、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置においては等しい吸収係数を与える複数の波長の光を用いて測定することにより解決できることを、以下に説明する。
波長λ1および波長λ2の各々光に対して、背景の吸収係数α1 (b)、α2 (b)及び測定対象とする血液成分のモル吸収α1 (0)、α2 (0)が既知の場合、各波長における光音響信号の測定値s1およびs2を含む連立方程式は上記数式(1)のように表される。
数式(1)を解いて未知の血液成分濃度Mを求める。ここで、Cは、変化し制御或は予想困難な係数、即ち、音響的な結合状態、超音波検出器の感度、前記照射部と前記検出部の間の距離(以下rと定義する)、比熱、熱膨張係数、音速、変調周波数、更に、吸収係数にも依存する未知乗数である。
数式(1)の1行目と2行目のCに差異が生ずるならば、それは、照射光に関係する量、即ち、吸収係数による差異以外にはあり得ない。ここで、数式(1)の各行の括弧の中、即ち吸収係数が互いに等しくなるように、波長λ1および波長λ2の組合せを選べば、吸収係数が等しくなり、1行目と2行目のCは等しい。しかしこれを厳密に行なうと、波長λ1および波長λ2の組合せが、未知の血液成分濃度Mに依存することになるため、不便である。
ここで、数式(1)の吸収係数(各行括弧中)に占める比率は、背景(α
i (b)、i=1、2)の方が、血液成分濃度Mを含む項(Mα
i (0))よりも著しく大きい。そこで、各行の吸収係数を正確に等しくする代わりに、背景、α
i (b)の吸収係数を等しくすれば十分である。即ち、異なる波長λ
1および波長λ
2の2波の光は、各々における背景の吸収係数、α
1 (b)、α
2 (b)が互いに等しくなるように選べば良い。このように1行目と2行目のCを等値できれば、それを未知定数として消去し、測定対象の血液成分濃度Mは数式(4)で表される。
数式(4)の後段の変形にはs
1≒s
2という性質を用いている。
ここで、数式(4)を見ると、分母に波長λ1および波長λ2における測定対象の血液成分の吸収係数の差が現れている。この差が大きい方が、光音響信号の差信号s1−s2が大きく、その測定が容易となる。この差を最大とするには、測定対象の成分の吸収係数α1 (0)が極大となる波長を波長λ1に選び、かつ、α2 (0)=0、即ち、測定対象の成分が吸収特性を示さない波長に波長λ2を選ぶのが良い。ここで、前の条件から、この第2の波長λ2は、α2 (b)=α1 (b)、即ち、背景の吸収係数が第1の波長λ1の吸収係数に等しくなければならない。
さらに、数式(4)において、光音響信号s1は、光音響信号s2との差s1−s2の形でのみ登場している。今、測定対象の成分としてグルコースを例にとると、上述したように、2つの光音響信号s1および光音響信号s2の強度には、0.1%以下の差異しかない。
しかし、数式(4)の分母の光音響信号s2には5%程度の精度があれば十分である。従って、2つの光音響信号s1および光音響信号s2を逐次個別に測定するよりも、それらの差s1−s2を測定しこの測定値を、個別に測定した光音響信号s2で除する方が、格段に容易に精度が保てる。従って、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置においては、2つの波長λ1および波長λ2の光を、互いに逆相に強度変調して照射することにより、生体内で光音響信号s1および光音響信号s2が相互に重畳されて生じる光音響信号の差信号s1−s2を測定する。
以上説明したように、血液成分濃度を測定する場合、異なる特定の波長の2波の光を用いて、前記異なる特定の波長の2波の光が生体内に発生する光音響信号を各々個別に測定するよりも、前記光音響信号の差信号を測定し、さらに、所定の一方の光音響信号を零として、他方の光音響信号を測定して、これらを数式(4)により演算して、容易に血液成分濃度を測定できることが分かる。
次に、光照射によって発生する音圧について、図2を参照して説明する。図2は本実施形態に係る基礎となる直接光音響法の説明図であり、図2には直接光音響法における観測点の配置が、音源分布のモデルと伴に、示されている。図2において照射光201は、生体に垂直に入射し、その結果、上述したように、光が照射される部分の表面近傍に音源202が生成される。
音源202から出て生体内(簡単のために音波について一様とする)を伝搬する音波について、照射光の延長線上にあり、音源から距離rだけ離れた観測点203で、その音圧p(r)を観測する。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置において使用する波長1μm以長の光に対しては、生体は、背景(水)による強い吸収を受けるために、音源202は光の照射される部分の表面に局在し、その結果、発生する音波は球面波と見なせる。
図2に示す音波伝搬を記述する波動方程式は、流体力学の方程式から求められる。即ち、連続の式とNavier Stokes方程式を、密度変化、圧力変化、及び流速変化が微小な場合として、各々を線形とし、これらと流体(水)における圧力と密度の関係を記述する状態方程式を連立して解くことにより求められる。ここで、前記状態方程式は、温度をパラメータとして含み、熱源Qが存在する時の温度変化は、前記状態方程式を介して取り込まれる。
熱伝導を無視する時、微小な圧力変化pは、次の非斉次のHelmholtz方程式により記述される。
ここで、cは音速、βは熱膨張係数、C
pは定圧比熱である。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置の場合、一定周期Tで強度変調された光を照射し、該一定周期Tに同期した音圧変化を検出するので、変調周波数をf=1/T、また変調角周波数をω=2πfとおく時、全ての量について、時間依存性exp(−iωt)を持つ量のみに注目すればよい。その結果、時間微分は−iωとの積になる。
また熱源Qは、照射光吸収に続く非発光緩和に起因するため、吸収係数αに比例し、またその分布は、媒質中での照射光(散乱光が生ずればそれも含めた)の空間分布に等しくなる。即ち、各点での光強度をIと書くと、Q=αIである。以上により、定常的な直接光音響法に関わる基本方程式は次の数式(6)のように表される。
ここで、音波の波数k=ω/c=2πλ(λは音波の波長)を導入した。
数式(6)のp(r→∞)→0の境界条件の下での解は、十分遠方(r)α
−1)において、次の数式(7)のように表される。
今、若干の光分布について数式(7)により、観測される音圧を計算する。先ず、光分布のモデルA204としては、強度が動径r’に対して、e−αr’で減衰する半球状の分布を考える。これは、著しく散乱が大きく、照射光が入射するや否や、全方位に散乱される場合に対応する。
これに対して、散乱が零である場合が、図2におけるモデルB205、およびモデルC206であり、各々半径w0のガウス型のビームと一様円形ビームを入射した場合に相当している。これら各モデルの光強度分布は、図2中に示されている。
今、既に用いた条件r≫α
−1に加えて、r≫w
0、および、N≡w
0 2/(rλ)≪1(モデルAについてのNは、w
0に代えてα
−1を用いて定義する)が成り立つ時、数式(7)による計算結果は、以下のようにまとめられる。
ここで、P
0は照射光の全パワーであり、またF(ξ)は、
と計算される。音源の分布の情報は、この形状関数F(kα
―1)に集約される。前記形状関数のグラフを、図3に示した。
以上の結果によると、ξ=kα―1が小さい時、即ち、音波の波長が吸収長に比べて非常に長い場合(λ)α−1)には、光音響信号は、吸収係数の情報を何ら含まない。その理由は、ξ≪1で、F(ξ)≒ξであって、αF(ξ)≒kに帰してしまうからである。従って、音波の波長が吸収長に比べて非常に長い場合、すなわち変調周波数が低すぎる場合は光音響法によって血液成分濃度の測定はできないことが分かる。
従って、生体に対して行なう直接光音響法においては、ξ≒1、すなわちf≒αc/(2π)以上に変調周波数を設定すべきであり、照射光の波長が1.6μm近傍の場合は変調周波数fを150kHz以上、あるいは照射光の波長が2.1μm近傍の場合は変調周波数fを0.6MHz以上とする必要がある。
次に、モデルB205、およびモデルC206の結果に差異がないことから、光軸に垂直方向の光強度分布が、信号に影響しないことが分かる。但し、この簡単化が許されるのは、上記N=w0 2/(rλ)≪1が成り立つ場合に限られる。このNはフレネル数と呼ばれる量であり、観測点から音源を見込む際、視線に垂直方向の音源の拡がりに因って、音源の各点からの音波の寄与に生じる位相の変化幅を表している。フレネル数Nが、1に比べて十分小さければ、視線に垂直方向に音源が拡がりを持たないのと等価となる。
その結果、照射光のビーム径w0が、光音響信号に影響を与えないという、極めて都合の良い性質が生ずるのである。その理由は以下の2つである。
その1は、生体における散乱の影響の抑制である。上記モデルA204は、散乱が大きい極限の場合を想定しているが、生体における散乱は実際、これ程は甚だしくはない。一般に散乱現象は散乱係数μsと異方性gによって特徴付けられる。ここで、後者は、散乱角θの余弦の平均値<cosθ>であり、生体、特に皮膚における値として、概略0.9が報告されている(例えば、Applied Optics誌、32巻、1993年、435−447頁、参照)。即ち、実際の生体における散乱は、小角散乱<θ>≒26°が主である。
今、単位長さの伝搬中に入射光束から散乱によって光が減少してゆく割合は、還元散乱係数μ´s=μs(1−g)で与えられ、この値は光の波長1μm以長に対して、概略1mm−1と実測されている。(非特許文献3参照)。この値は、単位長さの伝搬中に、入射光束から吸収によって光が減少してゆく割合である吸収係数αの値(光の波長1.6μm前後で0.6mm−1、2.1μm前後で2.4mm−1)と同程度の大きさである。
即ち、今、生体において照射光は、吸収長α―1の間に高々2回の散乱を受けるのみであり、しかも散乱角は小さい。この結果、生体内部の光分布(入射光束と散乱光の和)は、深さとともに序々にビーム径が拡って行き、あたかもピンの頭のような形となる。このような光分布の実測例も報告されている(Applied Optics誌、40巻、2001年、5770−5777頁、参照)。この時、深さzの面内における光分布の総量は、依然、exp(−αz)に従って減衰することが期待される。これは、少回の散乱が、小散乱角で起こる故である。
従って、光音響信号が照射光のビーム径に全然依らない場合、各深さでの光分布のビーム径自体は問題にならず、各深さ面内でのその総量のみが形状関数F(ξ)に影響し得る。これが、exp(−αz)であれば、結果的に、散乱のないモデルB205、およびモデルC206の場合に異ならず、よって形状関数への散乱の影響が無いことが予想されるのである。
2つの波長λ1、および波長λ2の光照射において、該形状関数を等値することは、本実施形態における方法の骨子である。従って、該2つの波長λ1、および波長λ2における散乱に相違があるのは、非常に望ましくない。現実には、光の波長1.3μm以長に対して、皮膚における散乱の波長依存性の実測報告は未だ無いが、血液については、一定の還元散乱係数μ´sが報告されている(Journal of Biomedical Optics誌、4巻、1999年、36−46頁、参照)。
従って、例えば、形状関数への若干の散乱の影響があったとしても、その波長依存性は小さく、実害に及ばない可能性はある。さらに、ここで示したように、フレネル数を小さく設定すれば、形状関数への散乱の影響自体を抑止できる。それ故、散乱の波長依存性如何に関わらず、形状関数の等値は正当化され、本実施形態における方法が高い信頼性を持つことが分かる。
その2は、変調周波数の最適化が可能になる事である。人体に対する光の照射には、照射部位と波長、照射時間などに依存する光強度の許容限度がある。フレネル数Nが小さい範囲で、ビーム径w0を拡大すれば、光強度の限度を越えずに、照射光の全パワーP0を高め、光音響信号を増大できる。
ここで、照射強度の限度をImaxと書くと、P0=πw0 2Imaxであり、フレネル数Nは、全パワーP0によって、N=f/(πcr)(P0/Imax)と表される。距離rは、生体被検部110の厚みによって決まる量(例えば、指頭では10mm、手首では40mm程度)であることを考慮すると、Nを一定に留めて、k、即ち、変調周波数f(∝k)を高める場合、全パワーP0を減らさざるを得ない。ところが、形状関数の大きさ|F(kα−1)|は、kに比例して増えないので、検出される音波は減少する。従って、高過ぎる変調周波数も、また望ましくないことが分かる。
数式(8)の与える音圧振幅p
aを、NとI
maxを用いて、書き直すと次のようになる。
ここで、音圧上界p
supは以下の数式(11)となる。
数式(10)で、|F(ξ)|/ξは、ξについて単調に減少する関数であり、信号振幅のみの観点では、低い変調周波数が有利となる。
今の場合、数式(10)のαに関わる変化率、∂pa/∂α=−(psupN/α)ξd(|F(ξ)|/ξ)/dξを最大とするξ=kα―1が、最適の変調周波数を与える。このようなξは、モデルA204で2.49、モデルB205、およびモデルC206では21/2であり、その様なξにおける|F(ξ)|/ξの値は、各々、0.620、1/31/2と算出される。即ち、信号の強度と吸収係数αへの感度の相反する要求の妥協点として、最適の変調周波数が存する。
上述したように、現実の生体における光分布はモデルB205、およびモデルC206に近いと考えられるので、最適な変調周波数は、2πf=1.41cαであり、その時、f→0における最大値psupNに対し、57.7%の信号振幅が期待される。
次に、図3を参照して、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置の原理を説明する。図1に示す第1の光源101は発振器103に同期して強度変調され、第1の光源101の出力する光は図4の上段に、第1の光源(λ1)の光211として示す波形となる。
一方、図1に示す第2の光源105は、同じく発振器103に同期して強度変調される。ここで、発振器103の送信する信号は180°移相回路107により180°の位相推移を与えられるので、第2の光源105の出力する光は第1の光源101の出力する光に対して逆位相な信号により強度変調され、図5の下段に、第2の光源(λ2)の光212として示す波形となる。
ここで図3においては、第1の光源101および第2の光源105を強度変調する信号は周期が1μ秒、即ち、変調周波数fが1MHzであり、かつ、占有率50%の信号の場合について示している。
ここで、数式(6)では、照射光に正弦波的変化を仮定し、図3においては、矩形波の光を照射する場合を示しているが、このことは次の理由により矛盾しない。
すなわち、数式(5)は線形であり、異なる周波数の成分は互いに独立のものとして扱える。また音波の振幅が大きくなると、Navier Stokes方程式自体の持つ非線形性の影響を受けるが、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置における光音響信号の場合は、発生する音波は微弱であり線形の数式(5)が適用できる。また、矩形波は奇数次の高調波成分を含むが、そのうちの基本周期の正弦波成分の振幅を、数式(6)のIに読みかえれば良い。光源は、正弦波形状よりも矩形波形状に強度変調する方が容易であり、かつ、矩形波は同振幅の正弦波に比べて、4/π=1.27倍の基本周期正弦波成分を含み、効率は若干良い。
第1の光源101および第2の光源105の各々が出力する異なる波長の2波の光は、合波器109により合波され、生体被検部110に照射される。ここで、前記異なる波長の2波の光の各々は、独立に数式(8)で表される音圧を発生するものと考えることができる。
ここで、音波が線形に重畳されることは、数式(5)の線形性より既に明らかである。さらに、前記異なる波長の2波の光の各々は吸収が飽和する程には強くないので、前記異なる波長の2波の光の各々による発熱Qも線形に重畳される。ここで、吸収が飽和した場合であっても、吸収が不均一な拡がりを持ち、前記異なる波長の2波の光の波長の間隔が均一幅よりも広ければ、依然、発熱の線形な重畳は成立する。ここで、前記異なる波長の2波の光に対して共通に吸収が生じる水に対して、こうした条件もよく満されている。
以上のように、前記異なる波長の2波の光により、各々互いに独立に数式(8)で表される音圧の光音響信号が発生され、これらを重畳した音圧が、超音波検出器113により検出される。従って、上記のように重畳された音圧は次の数式により表される。
ここで、α
iF(kα
i ―1)(i=1、2)が差の形で重畳されているのは、前記異なる波長の2波の光の各々の入射光が互いに逆相で強度変調された結果である。これを、超音波検出器113により検出し変換して得られる電気信号の中の基本周期の正弦波成分の波形を図6に実線で示す。図6に実線で示す信号の振幅(rms値)が、発振器103に同期した位相検波増幅器114によって測定され、図6にV
dとして示す信号として、出力端子115に出力される。
数式(12)と数式(1)により、上記未知定数Cは次の数式により表される。
次に、数式(4)により、測定対象とする血液成分濃度の算出の原理を説明する。既に、第1の光源101および第2の光源105の各々が出力する光に対応する光音響信号の差信号s
1−s
2が得られているので、次に光音響信号s
2を測定すれば、数式(4)から、測定対象の血液成分濃度Mを算出できる。
そこで、図5に示す第2の光源(λ2)の光212のみを照射した状態で、光音響信号を測定する。即ち、図5に示すように、第2の光源105の出力する光の波形を保ったまま、第1の光源101の出力を零とする。これは、図1に示す第1の光源101の出力する光を、機械的なシャッターで遮る、または駆動回路104の出力を第1の光源101の発振閾値以下に下げる等の手段により実現できる。
上記の状態で測定される光音響信号の値を、超音波検出器113により検出し、電気信号に変換すると、基本周期正弦波成分として図6に破線により示す波形が得られる。また、図6に破線により示す波形のrms振幅値は、前述の方法と同様に位相検波増幅器114によって測定され、図6にVrとして示す信号として、出力端子115に出力される。
ここで光音響信号s2は、光音響信号の差信号s1−s2に対して、逆相となる。また、光音響信号s2は、前記光音響信号の差信号s1−s2に比べて、桁違いに大きい。例えば、健常者の血糖値測定の場合、1000倍以上である。従って、光音響信号s2と光音響信号の差信号s1−s2の2つの測定の間に、位相検波増幅器114の感度及び時定数の切替えを行なう。
上記の測定により、2つの測定値Vd、Vrを得れば、それらの各々を、数式(4)中のs1−s2、s2のそれぞれに代入して、測定対象とする血液成分濃度Mを算出する。
ここで、測定値の比Vd/Vrから、血液成分濃度Mへの変換には、比吸光度α1 (0)/α1 (b)(α2 (0)が非零の場合、更にα2 (0)/α1 (b))を必要とする。
図4に、上記の比吸光度の値および、前述のように背景の吸収係数を等しくする2つの測定する波長λ1および波長λ2の選定方法を示す。
図4は、血糖値の測定の場合について、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置における第1の光源101と第2の光源105のそれぞれの波長の選択法を示す図である。
図7は、光波長1.2μmから2.5μmにわたって、水及びグルコース水溶液(濃度1.0M)の吸光度(OD)を示している。吸光度ODは吸収係数αとの間に、α=ODln10の関係がある。図7の右側の縦軸に吸収係数αの目盛を示す。
図7において、グルコース分子による吸収は、僅かに1.6μm近傍と2.1μm近傍に認められるが、グルコース分子による吸収は水に比べて、非常に小さい。
水とグルコースの吸光度の差を図8の上側に示し、これを更に、水の吸光度で除した比吸光度を図8の下側に示す。
図8に示す比吸光度によると、グルコース分子による吸収の明瞭な極大は、1608nmと2126nmに認められる。ここで、一例として、グルコース分子による吸収波長として、第1の光源101の波長λ1を1608nm(比吸光度は、0.114M−1)に設定する。これを、図8中に〇付きの縦実線で示した。
ここで、波長1608nmにおける背景(水)の吸収係数α1 (b)は、図7から、0.608mm−1と読み取れる。そこで、α2 (b)=α1 (b)となる波長λ2は、同じく図7の水の吸収スペクトルから波長1381nm、あるいは波長1743nmである。これらの第2の光源105の波長λ2の候補の各々について、図8の比吸光度のスペクトルによって、α2 (0)の値を点検する。その結果、波長1381nmにおいては比吸光度が零であるが、一方、波長1743nmはグルコース分子の吸収帯にあり、比吸光度が0.0601M−1である。吸光度差α1 (0)−α2 (0)は、出来るだけ大きい方が測定が容易であるので、上記の場合、第2の光源105の波長λ2として、1381nmを選定する。
長波長側の吸収帯において、2126nmを第1の光源101の波長λ1(比吸光度は0.0890M−1)に設定する場合、前述と同様の方法により、水分子が波長2126nmにおける吸収係数α1 (b)=2.361mm−1と等しい吸収係数を示す波長として、1837nm、あるいは2294nmがあり、これらの何れもがグルコースの吸収を外れている(図8中に縦点線で示した)ので、第2の光源105の波長λ2としては1837nm、あるいは2294nmのいずれを選定しても良い。
(実施例)
ここで、第1実施形態における具体的な実施例について説明する。
(第1実施例(その1))
図1に示す実施形態に係る血液成分濃度測定装置において、第1の光源101および第2の光源105として、レーザ光源を用いることも有効である。レーザ光源の選定に当たっては、先ず必要な出力パワーレベルの見積りが必要である。
人体に対する光の照射には、光強度の許容限度があり、一般に、50%の個体に障害が発生する強度の1/10が、最大許容量としてJIS C6802に制定されており、JIS C6802によると、皮膚に対する非可視赤外光(波長0.8μm以上)の連続照射においては、1mm2当り1mWが最大許容量である。
第1実施例においては、測定対象の血液成分を血糖とし、照射する光の波長を1.6μm帯として、前述した原理により変調周波数fを150kHz以上とする。ここで、生体被検部110内に発生する光音響信号の波長λ=c/fは10mm以下となる。生体被検部110を指頭とすれば、光が照射される照射部と、超音波検出器113が生体被検部110に接触する検出部までの距離rは10mmとなり、フレネル数N=w0 2/(rλ)を0.1とするビーム径w0は、w0 2≦10mm2と計算される。これに、πを乗じて照射する光のビーム面積を計算し、さらに上記最大許容量を積算して、照射できる最大の光パワーを計算すると、31mWとなる。
ここで、照射する光を2.1μm帯とする場合は、同様に計算して最大パワーは8mWとなり、この光出力は半導体レーザによって十分供給可能である。
半導体レーザは小型で長寿命であり、また注入電流を変調することにより、強度変調が容易に行なえるという利点も有するので、本実施例において、第1の光源101および第2の光源105としては、半導体レーザを用いる。
図9に第1実施例に係る血液成分濃度測定装置の構成例を示す。図9に示す本実施例に係る血液成分濃度測定装置の第1実施例の構成は、照射光方向に伝搬した音波を検出する前方伝搬型であり、図1に示す血液成分濃度測定装置の基本構成と類似の構成であり、図1に示す第1の光源101、第2の光源105、駆動回路104、駆動回路108、180°移相回路107、合波器109、超音波検出器113、位相検波増幅器114、出力端子115、発振器103のそれぞれは、図9に示す第1の半導体レーザ光源501およびレンズ502、第2の半導体レーザ光源505およびレンズ506、駆動電流源504、駆動電流源508、180°移相回路507、合波器509、超音波検出器513および音響結合器512、位相検波増幅器514、出力端子515、発振器503のそれぞれに対応し、それぞれ同様の機能を有している。
ただし、図9に示す第1の半導体レーザ光源501および第2の半導体レーザ光源505の出力する光は各々、レンズ502およびレンズ506により、並行光束に収束され、各々の平行光束は合波器509により合波されて、1本の光束として生体被検部510に照射される。また、図9に示す音響結合器512は超音波検出器513と生体被検部510との間に備えられ、超音波検出器513と生体被検部510との間の光音響信号の伝達効率を高める機能を有している。
また、図9には校正用検体511も示されているが、校正用検体511の機能は後述する。
第1の半導体レーザ光源501は駆動電流源504により発振器503に同期して強度変調され、その出力光はレンズ502により平行光束に集光され、合波器509へ入力され、また第2の半導体レーザ光源505は駆動電流源508により発振器503に同期して強度変調され、その出力光はレンズ506により平行光束に集光され、合波器509へ入力される。ここで、駆動電流源508には、発振器503の出力が180°移相回路507を経由して送信されるので第2の半導体レーザ光源505の出力する光は、第1の半導体レーザ光源501の出力する光に対して、逆位相の信号により強度変調されている。
合波器509に入力される第1の半導体レーザ光源501および第2の半導体レーザ光源505の各々が出力する光は合波され、1の光束として生体被検部510に照射される。
生体被検部510に照射された光は生体被検部510内に光音響信号を発生し、発生した光音響信号は音響結合器512を経て、超音波検出器513により検出され、光音響信号の音圧に比例した電気信号に変換される。
超音波検出器513により検出され、光音響信号の音圧に比例した電気信号に変換された信号は、発振器503に同期した位相検波増幅器514によって、同期検波ならびに増幅、濾波され、出力端子515に出力される。
ここで、前述のように、第1の半導体レーザ光源501の波長は1608nmに設定し、第2の半導体レーザ光源505の波長は1381nmに設定されている。また、発振器503の発振周波数、即ち、変調周波数fは、ξ=kα1 (b)=21/2となるように、207kHzに設定されている。
また、第1の半導体レーザ光源501の光出力は5.0mWであり、第2の半導体レーザ光源505の出力光も5.0mWである。
生体被検部510に照射される光のビーム径は、前記照射部から前記検出部までの距離rを10mmとして、フレネル数Nが0.1となるようにw0=2.7mmと設定されている。
上記の状態において、第1の半導体レーザ光源501と第2の半導体レーザ光源505の出力が合波された光の生体被検部510の皮膚への照射強度は0.44mW/mm2であり、最大許容値を2倍以上下回る安全なレベルである。しかし、これは目に対しては危険なレベルであるので、測定中、または生体被検部510が置かれていない際に音響結合器512から反射または散乱した光が、直接目に入らないように、合波器509および生体被検部510に遮光フード(図9には示していない)を設置することが不可欠である。
超音波検出器513はFET(電界効果トランジスタ)増幅器を内蔵する周波数平坦型電歪素子(PZT)であり、また、音響結合器512は音響整合用ジェルである。
上記の構成において、先ず、第1の半導体レーザ光源501の光出力を零として、図9に示すように第2の半導体レーザ光源505の出力する光のみを照射した場合、時定数を0.1秒に設定した位相検波増幅器514の出力端子515には、光音響信号s2に対応する電気信号として、Vr=20μVの電圧が得られた。
ここで、位相検波増幅器514における発振器503から送信される同期信号と、光音響信号が超音波検出器513により検出され電気信号に変換された信号との位相差θは、生体被検部510の光が照射される前記照射部と音響結合器512と接触する前記接触部の間の距離rと、変調周波数fによって変化するため、測定の度に最適の位相差の探索が必要であるが、位相差の探索は信号振幅が大きい光音響信号s2の測定により実施するのが有効である。
ここで、2位相型の位相検波増幅器の場合は、常に自動的に位相差θを求める能力があり、手動で位相差の探索を行なう必要はない。すなわち、未知の位相と振幅を測定できるR−θモードにより光音響信号s2を測定し位相と振幅を求め、この位相の測定値を用いて、位相が既知の場合にノイズ抑圧比が3dB改善した状態で振幅を測定できるX測定モードにより、前述の光音響信号の差信号s1−s2の測定を行なう。
次に、第1の半導体レーザ光源501を発光させると出力端子515に光音響信号の差信号s1−s2に対応する電気信号として、Vd=7.7nV(位相が反転するので、直接の測定値は−7.7nVとなる)を得た。続いて、再度、第1の半導体レーザ光源501の光出力を零として、位相検波増幅器514の感度と時定数を元に戻して、光音響信号s2の測定を行い、Vr=22μVが得られた。これら前後2回のVrの平均により、Vrの値は21μVとなった。
上記のように、光音響信号の差信号s1−s2の測定の前後に、光音響信号s2に対応する信号すなわちVrの測定を2回行なうのが望ましい。
上記の手順によって、差信号s1−s2の測定中に、被験者の指先の押圧力の変化による前記距離rの変化、および、光照射による局所的な温度変化等に由来する前記未知乗数Cのドリフトを補正することができる。
上記の測定値と、波長1608nmにおける比吸光度値0.114M−1と数式(4)により、グルコース濃度Mは3.2mM(58mg/dl)と求まった。
水についての値、Cp=1(cal/g・deg)=4.18×103(J/kg・K)、β=300ppm/deg、c=1.51×103(m/s)を用いると、Imax=1mW/mm2に対して、音圧上界psupとして0.17Paが得られる。これに、フレネル数N=0.1と、ξ=21/2に伴う減衰1/31/2、および、実照射パワー比0.22を乗じ、予想される音圧振幅は、2.1mPaである。
これに対し、超音波検出器513の公称感度は、66mV/Paであって、出力端子515の出力電圧は140μVとなることが予測されたが、実測した光音響信号s2の値がその1/7に留まったと理由は、音響結合器512の不完全性と考えられる。
(第1実施例(その2))
本実施例においては、音響的な結合状態の改良を目的として、音響結合器512を共鳴型とするために厚さ6.6mmのアクリル板を、超音波検出器513と同じ径10mmφに成形した。音響結合器512の一方の面は真空グリースを介して超音波検出器513に装着し、他の面は音響整合用ジェルを介して生体被検部510と接触している。
上記の構成により前述と同様の手順で2回測定した結果、光音響信号s2信号の測定値は150μV、及び153μVであり、また、光音響信号の差信号s1−s2の測定値は59nVであった。上記の測定で位相検波増幅器514の時定数は3秒である。これらの測定値から、グルコース濃度Mが3.4mM(61mg/dl)と求まった。
(第1実施例(その3))
上記の第1実施例(その2)においては、音響結合器512の共鳴周波数と変調周波数fが完全には一致していない。そこで本実施例においては、前段の光音響信号s2の測定時に、先ず、発振器503の周波数を、数%の範囲で掃引し、2位相型の位相検波増幅器514を、前記R−θモードで動作させ、信号出力端子515の出力が最大となる様に、変調周波数fを設定することにより、音響結合器512の共鳴周波数と変調周波数fを完全に一致させる。
上記以外は前記の実施例と同様の手順により、2回の測定による光音響信号s2として、600μV及び、604μVを得た。また光音響信号の差信号s1−s2の測定値は、0.25μVであった。この場合、位相検波増幅器514の時定数は1秒である。
以上の測定値から、グルコース濃度Mが3.6mM(65mg/dl)と求まった。
上記の、第1実施例(その1)、第1実施例(その2)、第1実施例(その3)においては超音波検出器513として周波数平坦型の電歪素子(PZT)を使用しているが、通常型の電歪素子(PZT)の場合でも、出力端子515に得られる信号の振幅が最大となる変調周波数fを探索することにより、共鳴特性を利用した増感測定を実施可能であり、小型化、低価格化に有効である。
(第1実施例(その4))
本実施例は、第1の半導体レーザ光源501と第2の半導体レーザ光源505の出力する光のパワーを等しく調整する手段として、校正用検体511を導入する場合である。
校正用検体511の構成としては、水を封入したガラス容器あるいは生体内における散乱を模擬する例えば、ラテックス粒子などの散乱体を分散させた水を封入する。
ここで、校正用検体511の光を照射する面(図9中上面)のガラスの波長λ1および波長λ2に対する透過率の均等性を確保するためには、校正用検体511上面に、照射ビームが通る径のパイプ状の縁を設け、面に直接触れるのを防止するか、又は校正用検体511の使用の前に、所定の用品および手順によるクリーニングを行なうことが有効である。
上記のような校正用検体511を、生体被検部510の代わりに装着して行なう校正手順は、以下の通りである。
先ず、第1の半導体レーザ光源501の光出力を零にして、図9に示すように、第2の半導体レーザ光源505の出力する光のみを照射する。ここで、2位相型の位相検波増幅器514を、前記R−θモードにて動作させ、この時の位相θを求めて固定する。共鳴型の超音波検出による場合は、この段階で前述と同様に音響結合器512の共鳴周波数と変調周波数fを一致させるために最適な変調周波数fの探索を行なう。
さらに、第1の半導体レーザ光源501の出力する光を増加させつつ、位相検波増幅器514の出力端子515に出力される信号が減少するのを観察し、出力端子515に出力される信号が減少するのにあわせて、位相検波増幅器514の感度と時定数を切替え、出力端子515に得られる出力が零になった時点で、第1の半導体レーザ光源501の光出力を固定する。
上記の手順により校正用検体511を使用して、第1の半導体レーザ光源501の出力する光と第2の半導体レーザ光源505の出力する光の相対的な強度が互いに等しく、かつ逆位相の信号により強度変調されている状態に校正することができる。
校正用検体511を、生体被検部510の代わりに装着した状態で、本実施例に係る血液成分測定器の電源を入れる使用法を制定し、以上のシーケンスを、電源投入時のPOST(Power On Self Test)として実行することもできる。
(第2実施例(その1))
第2実施例は照射光に向かって逆行する方向に伝搬する音波を検出する後方伝搬型である。第2実施例の構成は図10に示すように、図9に示す血液成分濃度測定装置の第1実施例の構成において、音響結合器512が合波器509と生体被検部510の間に設置され、音響結合器512の一方の面は生体被検部510に接し、音響結合器512の他方の面から合波器509により合波された光が入射され、この入射光は音響結合器512を通過して、生体被検部510に照射されるように変更したものである。ここで、超音波検出器513は、音響結合器512へ前記合波光が入射される側に設置される。
また、第2実施例に係る血液成分濃度測定装置の動作が前記第1の実施例と異なるのは、図10に示すように、合波器509から出力される光が音響結合器512を通過して、生体被検部510に照射され、生体被検部510内で発生した光音響信号は、再び音響結合器512を伝搬し、超音波検出器513により検出される点である。
上記の構成において、音響結合器512は、照射光が通過するので、光吸収が小さく、かつ、音響インピーダンスは、生体(水)に近いことが望ましい。
本実施例においては光吸収の少ない石英ガラスにより音響結合器512が形成されている。石英ガラスの音響インピーダンスは、水の8倍であり、発生した音圧の約1/5のみが、石英ガラス中の伝搬波となり、超音波検出器513により観測される。従って、感度の点で不利となるので、音響結合器512自体に共鳴特性を持たせて、増感を図ることが必須である。即ち、石英ガラスの厚さ(図でガラス中の光束の伝搬長に当たる)は200kHzの変調周波数fに対する音波の波長λ=27.85mmの概略半波長の値となる14mmに設定されている。
石英ガラス中の音波は、生体被検部510から遠方では球面波と見なせるので、ここでは、超音波検出器513は入射光束と、150°の角をなす方角に設置されている。(入射光束の通過する穴のある超音波検出器を用いれば、完全に後方の180°方向に置くことも可能である。)
本実施例の構成においては、生体被検部510において光が照射される照射部と、音響結合器512において光音響信号が超音波検出器513により検出される検出部の間の距離rは、音響結合器512の大きさで決定される一定値(今の場合r=14mm)に固定される。
ここで、第1の半導体レーザ光源501、第2の半導体レーザ光源505、及び超音波検出器513は、上記第1実施例と同様である。さらに、安全対策のために、音響結合器512上に何も載っていない時には、光の照射が行われないように、検体感知スイッチ(図10では省略)を配備する。
上記第1実施例と同様に、前段の光音響信号s2の測定時に発振器503の周波数を掃引し、音響結合器512の共鳴周波数に一致する変調周波数fを探索する。さらに、上記第1実施例と同様の手順により、2回の測定により光音響信号s2として、200μV及び、206μVを得た。また、光音響信号の差信号s1−s2としては、位相検波増幅器514の時定数を1秒として、79nVが測定された。これらの測定値から、グルコース濃度Mが3.4mM(61mg/dl)と求まった。
(第2実施例(その2))
本実施例においては、音響結合器512が低密度ポリエチレンにより形成されている。低密度ポリエチレンは、音響インピーダンスが、水に対して18%しか異ならず、音波の結合には非常に優れる(圧力損失9%未満)。しかしながら、若干の光の吸収が存在し、また、軟らか過ぎるのも難点である。但し、柔軟性により生体との密着が良く、音響整合用ジェル等の補填剤を要さない点では、優れている。ここでより剛性に富む高密度ポリエチレンは、光を透過しないため適当でない。
本実施例においては、音響結合器512の厚さは200kHzの変調周波数fに対する音波の波長に概略等しい10mmであり、前記照射部と前記検出部の距離rも10mmの固定値となる。
第2実施例(その1)と同様に2回の測定により光音響信号s2として、300μV及び、289μVを得た。また光音響信号の差信号s1−s2としては、位相検波増幅器514の時定数を1秒として、117nVが測定され、これらの測定値から、グルコース濃度Mが3.5mM(63mg/dl)と求まった。
ここで、低密度ポリエチレンの圧力損失が低いにもかかわらず、測定信号が増大しないのは生体被検部510の押圧により音響結合器512が変形し、寸法が不安定となり共鳴による感度向上が不十分なためである。
(第2実施例(その3))
本実施例は、第2実施例(その2)において、前述の校正用検体511による校正手段を導入した場合である。この場合、校正用検体511において、水または、散乱体を含む水を封入する容器の材料は、音響結合器512の材料と同一である。
ここで光が照射される面は、校正用検体511の図10に示す音響結合器512に接する面であり、長期にわたる清澄性を確保するために、校正用検体511の使用前に、所定の用品と手順によるクリーニングを実施する。
上記の校正用検体511を、生体被検部510の代わりに装着して行なう校正手順等は、上記、第1実施例(その4)と同様である。
(第3実施例)
第1実施例、第2実施例においては、血中グルコース濃度、即ち、血糖値についての例を示した。しかしながら、血液を構成する成分としては、グルコースのほかにコレステロールを始めとする脂質、蛋白質、無機成分など多くの成分が含まれている。第3実施例では、第1実施形態に係る血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定装置制御方法をコレステロールに対して適用した例について示す。なお、本実施例における血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定装置制御方法は、後に説明する第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態における実施例においても同様に適用することができる。
図11に波長1200nmから2500nmにわたって、水の吸光度を示す。図12には1600nmから2600nmにわたるコレステロールの吸光度を示す。図12に示すスペクトルによると、コレステロール分子による吸収の明瞭な極大は、2310nmに認められる。
ここで、波長2310nmにおける背景(水)の吸収係数α1 (b)は、図11から1.19mm−1と読み取れる。そこで、α2 (b)=α1 (b)となる波長λ2は、図11の水の吸収スペクトルから波長2120nm又は波長1880nmである。これらの第2の光源105の波長λ2の候補の各々について、図12の吸収スペクトルによって、α2 (b)の値を確認する。その結果、コレステロール分子は、波長2120nmでの吸収に比較して、波長1880nmでの吸収が大きいことが分かる。吸光度差α1 (0)−α2 (0)は、出来るだけ大きい方が測定容易であるので、上記の場合、第2の光源の波長として2120nmを選定する。以上の結果、第1の光源の波長を2310nmとし、第2の光源の波長を2120nmとして測定を行った。
図13に第3実施例に係る血液成分濃度測定装置の構成を示す。図13に示す血液成分濃度測定装置の第3実施例の構成は、照射光の方向に伝搬した光音響信号を検出する前方伝搬型であり、図1に示す血液成分濃度測定装置の基本構成と類似の構成である。
即ち、図13に示す第1の半導体レーザ光源801及びレンズ802、第2の半導体レーザ光源805及びレンズ806、駆動電流源804、駆動電流源808、180°移相回路807、合波器809、超音波検出器813及び音響結合器812、位相検波増幅器814、出力端子815並びに発振器803は、図1に示す第1の光源101、第2の光源105、駆動回路104、駆動回路108、180°移相回路107、合波器109、超音波検出器113、位相検波増幅器114、出力端子115及び発振器103とそれぞれ同様の機能を有している。
第1の半導体レーザ光源801は、駆動電流源804により発振器803に同期して強度変調され、その出力光はレンズ802により平行光束に集光され、合波器809に入力される。第2の半導体レーザ光源805も、駆動電流源808により発振器803に同期して強度変調され、その出力光はレンズ806により平行光束に集光され、合波器809に入力される。
ここで、駆動電流源808には、発振器803の出力が180°移相回路807を経由して送信されるので、第2の半導体レーザ光源805の出力する光は、第1の半導体レーザ光源801の出力する光に対して、逆位相の信号で強度変調されることになる。
合波器809に入力される第1の半導体レーザ光源801及び第2の半導体レーザ光源805の各々が出力する光が合波され、1つの光束として被検体としての生体被検部810に照射される。
生体被検部810に照射された光は生体被検部810内に光音響信号を発生させる。発生した光音響信号は、音響結合器812を経て超音波検出器813により検出される。超音波検出器813では、光音響信号の音圧に比例した電気信号に変換される。
電気信号に変換された信号は、発振器803に同期した位相検波増幅器814によって、同期検波増幅され、濾波された後に、出力端子815に出力される。
第1の半導体レーザ光源801の波長は2310nmに設定され、第2の半導体レーザ光源805の波長は2120nmに設定されている。また、発振器803の発振周波数、即ち、変調周波数fは、ξ=kα1 (b)=21/2となるように、207kHzに設定されている。
第1の半導体レーザ光源801の光出力は5mW、第2の半導体レーザ光源805の光出力も5mWである。
生体被検部810に照射される光のビーム径は、生体被検部810の照射部から検出部までの距離rを10mmとして、フレネル数Nが0.1となるようにw0=2.7mmと設定されている。
上記の状態において、第1の半導体レーザ光源801と第2の半導体レーザ光源805の出力が合波された光の生体被検部810の皮膚への照射強度は、0.44mW/mm2であり、最大許容値の2分の1以下の安全なレベルである。しかし、外部への漏洩を考慮して合波器809及び生体被検部810を覆う遮光フード(不図示)を設置することが好ましい。
超音波検出器813は、電界効果トランジスタ(FET)増幅器を内蔵する周波数平坦型電歪素子(PZT)である。音響結合器812として音響整合用ジェルを用いた。
上記の構成の図13において、まず、第1の半導体レーザ光源801の光出力を零として第2の半導体レーザ光源805の出力光のみを照射した場合、時定数を0.1秒に設定した位相検波増幅器814の出力端子815には、光音響信号s2に対応する電気信号として、Vr=40μVの電圧が得られた。
位相検波増幅器814に入力される発振器803からの同期信号と、超音波検出器813により検出され電気信号に変換された信号との位相差θは、光が照射される生体被検部810の照射部と音響結合器812と接触する生体被検部810の接触部との間の距離r、及び変調周波数fによって変化するため、測定の度に最適な位相調整が必要である。このような位相調整には、信号振幅の大きい光音響信号s2を位相基準として測定することによって実施するのが有効である。
2位相型の位相検波増幅器の場合は、常に自動的に位相差θを追尾する機能を持たせることができ、この機能を利用すると位相差を自動調整することができる。つまり、未知の位相と振幅を測定するR−θモードにすると、光音響信号s2の位相と振幅を測定し、この位相を用いて、位相が既知の場合にノイズ抑圧比が3dB改善した状態で振幅を測定できるX測定モードにより、前述の光音響信号の差信号s1−s2の測定を行なう。
次に、第1の半導体レーザ光源801を発光させると、出力端子815には、光音響信号の差信号s1−s2に対応する電気信号Vdとして約10nVの出力を得た。続いて、再度、第1の半導体レーザ光源801の光出力を零として、位相検波増幅器814の感度と時定数を元に戻して、光音響信号s2の測定を行ったところ、Vr=42μVの出力が得られた。これら前後2回のVrの平均により、Vr=41μVとなった。
上記のように、光音響信号の差信号s1−s2の測定の前後に、光音響信号s2に対応する信号であるVrの測定を2回行なうのが望ましい。上記の手順によって、差信号s1−s2の測定中に、被験者の指先の押圧力の変化による距離rの変動、及び光照射による局所的な温度変化等に由来する未知乗数Cのドリフトを補正することができた。
上記の測定系を用い、生体被検部におけるコレステロール由来の光音響信号を超音波検出器により測定したところ、光音響信号の差信号s1−s2として数百nVの出力値を得ることができた。
ここでは、生体の血液成分濃度測定装置及び生体の血液成分濃度測定装置制御方法について説明したが、生体に代えて液体を対象とした場合も同様である。即ち、本実施例に係る液体成分濃度測定装置および液体成分濃度測定装置制御方法は、上記本実施形態の基礎となる直接光音響法の説明と、数式(4)に示した成分濃度算出方法から容易に知られる通り、生体以外の測定対象に対しても実施できる。この場合、一般に液体に対しては等しい吸収係数を有し、対象物質に対し吸収係数が異なる2つの波長を用いれば、液体の吸収に掩蔽されることなく、液体中の成分の検出が行なえる。さらに、前述の実施形態や実施例の構成において、生体被検部に代えて果物をおけば、果実糖度計として機能する。これは、果実の甘さ成分である蔗糖や果糖は、血糖成分であるグルコースと類似の波長に吸収を有するからである、このように本実施形態の精神を逸脱しない範囲で、本実施形態に係る測定装置及び測定装置制御方法を様々の対象に適用できることは言うまで無い。
(第4実施例)
図58に第4実施例に係る血液成分濃度測定装置の構成を示す。第4実施例は、第1実施例(その1)から(その4)で説明した血液成分濃度測定装置に接触温度計138をさらに導入した場合である。
図58で示した構成において第1の光源101の波長を、1608nmに設定し、一方、第2の光源105の波長は、1381nmに設定したが、これら波長値は、図7に示した水温39℃における水の吸光度に基づいている。この基準温度39℃は、体温としては平熱よりも高い値であり、また厳密には被験者の体温すなわち生体被検部110の温度に応じて、上記レーザ光源の波長の設定を変える必要がある。何故ならば、水の光吸収特性は水温に依存して変化するからである。
かかる水温に依存する水の吸光度を、図58に示す。図54は、水温をパラメータとし、25℃から55℃まで5℃刻みの水温について、波長1450nm近傍に極大を持つ水の吸収バンドの吸光度を示している。該図58に徴するに、水の吸収バンドは水温の上昇とともに、短波長方向にシフトし、それに伴い、短波長側の吸収は増大する一方、長波長側の吸収は減少する。
かかる性質を詳細に見るために、一定の波長における水の吸光度の温度変化を示すと、図59を得る。長波長側の上記第1の光源101の波長1608nmにおいて、水の吸光度は温度に対し1.366×10−3mm−1/℃の割合で減少している。一方、短波長側の上記第2の光源105の波長1381nmにおいては、水の吸光度は1.596×10−3mm−1/℃の割合で増加する。
この結果、上記2波長間の吸光度の差は2.962×10−3mm−1/℃、比吸光度では1.001×10−2/℃の割合で、温度に対して減少する。この変化率に、1608nmにおけるグルコースの比吸光度値0.114M−1を用いると、体温の上記基準温度からの偏差1/℃当たり、グルコース濃度Mにして87.78mM(1581mg/dl)の過小評価が生ずることが分かる。
この誤差への対策として、生体被検部110の光照射側に、接触温度計138を設置し、光照射部近傍の局所的体温を計測し、この測温値から上記基準温度を減じた温度差に上記補正係数1581mg/dl/℃を乗じた値を、上数式(4)によるグルコース濃度Mの算定値に加算する。該接触温度計138を光照射側に設置する理由は、上記補正に関与するのは、光の吸収が生ずる生体被検部の照射側表面の温度だからである。これを例えば、超音波検出器113側に接触する側の生体表面の温度で代用したとすると、該超音波検出器113との不可避の熱接触により変化を蒙った体表温度を用いることになり、大きな誤差を招く虞がある。
また、図57に示す血液成分濃度測定装置において校正用検体を用いる場合、前記表面体温計測に基づく補正は、以下のように行えば良い。図60に、図57に示す血液成分濃度測定装置にさらに校正用検体を適用した実施例を示す。
該校正用検体141内の液温を計測する温度計143を、校正用検体141に装着する。上記手順において、出力端子115からの光音響信号出力が零になり、駆動回路104の出力を固定した時点での、該温度計の読みを校正温度として記録する。爾後の生体被検部110に対する測定においては、前記実施例に示した補正算法の基準温度の代わりに該校正温度を用いて、補正を行う。すなわち、接触温度計138により、光照射部近傍の局所的体温を計測し、この測温値から上記校正温度を減じた温度差に前記補正係数1581mg/dl/℃を乗じた値を、上数式(4)によるグルコース濃度Mの算定値に加算すればよい。
該校正用検体141に、液温を一定に保つ恒温手段(図60では省略)を設置する場合、生体被検部110に対する測定時に、校正用検体141に設置した温度計143および該生体被検部110の接触温度計138を同時に動作させ、その読みの差から上記温度差を求めることもできる。特にこの場合、温度計143および接触温度計138を同種の温度計とすれば、例えばブリッジ回路を用いて、両者の出力値の差を高精度に読み取る平衡構成ができる。かかる平衡構成では、温度計143および接触温度計138に絶対温度の確度が要求されないので、サーミスタの如き簡易な測温体を用いて実施することができる。
(第5実施例)
図61に第5実施例に係る血液成分濃度測定装置の構成を示す。第5実施例は、第2実施例(その1)から(その3)で説明した血液成分濃度測定装置に接触温度計138をさらに導入した場合である。
本実施例においては、前記表面体温計測に基づく補正のための接触温度計138は、上記音響結合器142の生体被検部110に接する面に埋め込むのが良い。この場合、望ましくは、上記音響結合器142の音響インピーダンスに近似する音響インピーダンスを持つ接触温度計138を用いるのが良い。これは、該接触温度計138によって、該音響結合器142内の超音波の伝搬が乱されることを抑制するためである。爾後、該接触温度計138により計測した表面体温値に基づく補正は、前記第4実施例と同一の算法によって行う。また、校正用検体141を、生体被検部110の代わりに装着して行う校正手順、また前記接触温度計138による表面体温計測に基づく補正等も、上記、第4実施例に準ずて行えばよい。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る血液成分濃度測定装置を図14、図15に示す。図14、図15において、100は発振器、101は第1の光源、102は駆動回路、103は発振器、105は第2の光源、116は駆動回路、106は第3の光源、117は駆動回路、118は分周器、119は180°移相器、120は合成器、111は生体被検部、121は超音波検出器、122はフィルタ、123は同期検波増幅器、124は光音響信号出力端子である。発振器103、駆動回路102及び第1の光源101で光出射手段としての第1の照射部を、発振器103、180°移相器119、駆動回路116及び第2の光源105で光出射手段としての第2の照射部を、発振器100、駆動回路117及び第3の光源106で第2の光出射手段としての第3の照射部を構成する。超音波検出器121及びフィルタ122で音波検出手段を構成する。
図14において、発振器103は、一定周波数で発振し、第1の光源101及び第2の光源105を強度変調する周波数を決定することになる。発振器100は、断続的に発振する発振器であって、第3の光源106を強度変調する周期を決定することになる。発振は一定周波数で発振してもよいし、不定期な発振でもよく、前述の発振器103の一定周波数の繰り返し間隔よりも長い間隔で断続的に発振すれば足りる。その結果、該第3の光源106は、上記第1の光源101、第2の光源105に対して、発光の繰り返し間隔が長く、光音響信号が生じない程度に変調されるように構成されている。
第1の光源101、第2の光源105及び第3の光源106を同じ発振器で強度変調する構成としてもよい。例えば、図15において、発振器103は、一定周波数で発振し、第1の光源101、第2の光源105及び第3の光源106を強度変調する周波数を決定することになる。発振器103からの信号を分周器118で分周することにより、第3の光源106は、第1の光源101及び第2の光源105を強度変調する一定の周波数の繰り返し間隔よりも長い間隔で周期的に発振することになる。
第3の光源の発振周波数の決定を除いて、図14と図15では同じ機能、作用を奏するため、図14を用いて説明する。図14において、発振器103からの信号は駆動回路102に入力され、駆動回路102は第1の光源101を駆動する。また、発振器103からの信号は180°移相器119に入力され、反転される。反転された信号は駆動回路116に入力され、駆動回路116は第2の光源105を駆動する。第1の光源101と第2の光源105とは変調周波数が同じで、互いに逆相で強度変調されることになる。
第1の光源101、第2の光源105、第3の光源106は各々駆動回路102、駆動回路116、駆動回路117に駆動され、各々所定の波長で、かつ変調された光を出力する。合成器120は第1の光源101からの光のビームと第2の光源105からの光のビームとを合成し、被検体としての生体被検部111に照射する。第3の光源106からの光のビームも合成する構成にすると、生体被検部111に光を集中させることができるため、効率的に光音響信号を発生させることができる。なお、第1の光源101からの光のビーム、第2の光源105からの光のビーム及び第3の光源106からの光のビームを合成することは、本実施形態において適用する他、第1実施形態、並びに後に説明する第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても適用することができる。
超音波検出器121は、生体被検部111に対して、合成器120からの合波光および第3の光源106の出力光が照射される面と反対側の面に接して設置される。超音波検出器121は、生体被検部111で発生した音波、すなわち光音響信号を受信し、音圧に比例した電気信号に変換し、出力する。フィルタ122は発振器103の発振周波数と同じ周波数の信号を通過させ、同期検波増幅器123はフィルタ122から入力される信号を、同期信号入力端子から入力される同期信号により同期検波し、同期検波した超音波の振幅を光音響信号出力端子124へ出力する。同期検波増幅することにより、光音響信号から高感度に超音波の振幅を検出することができる。なお、同期検波増幅器123により同期検波増幅することは、本実施形態において適用する他、第1実施形態、並びに後に説明する第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても適用することができる。
ここで、第1の光源101の出力する光の波長をλ
1、第2の光源105の出力する光の波長をλ
2、第3の光源106の出力する光の波長をλ
3と定義する。波長λ3の光の生体への照射によって、血液密度が大きい部位にのみ吸収が生じ、光―熱変換により温度が上昇する。例えば、光CT法においては、およそ波長800nm程度の光が用いられるが、測定においては、生体内部の温度が0.1℃程度変化することが報告されており、またこの程度の温度上昇では人体に害がないことが知られている。さて、断続的な光照射によって生ずる音圧Pは以下のように表せる。
ここで、Iは照射光強度、βは熱膨張係数、cは音速、Cpは比熱である。上記、パラメータの内、β、cのみが温度に依存する。熱膨張係数βは1℃当たり3%変化するため、0.1℃の温度変化によって、数式(14)に従えば、光音響信号は約0.3%変化することになる。グルコースの変化量5mg/dLによる光音響信号の変化が0.017%であるから、それに比し、20倍の信号の変化を生じうる。波長λ3の光の同時照射による温度上昇が、血液密度の高い部位において発生した光音響信号の増加をもたらす。
次に、本実施形態による血液成分算定方法を以下に式を用いて述べる。波長λ1、λ2の各々に対して、主に水の背景による吸収係数α1 (b)、α2 (b)及び血液成分のモル吸収係数α1 (0)、α2 (0)を知る時、各波長における光音響信号測定値s1、s2を含む連立方程式、数式(1)を解いて、濃度Mを求める。
ここで、Cは、変化し制御或は予想困難な係数、即ち、音響結合、超音波検出器の感度、照射部から接触部の距離r、比熱、熱膨張係数、音速、並びに変調周波数、更に、吸収係数にも依存する未知乗数である。数式(1)において、Cを消去すると、数式(4)となり、光音響信号s、および既知の吸収係数αより濃度Mを求めることができる。但し、数式(1)は、波長λ1、λ2の各々に対して、主に水の背景による吸収係数α1 (b)とα2 (b)がほぼ等しいことを前提にしている。また、s1≒s2という性質を用いている。
さて、本実施形態に係る方法では、血液部分と表皮、細胞、脂肪などの組織部分での水の音響発生量に差異があることから、数式(1)を次のように書き換える。
ここで、C
bは血液における未知係数、C
tは表皮、細胞、脂肪などの組織における未知係数である。波長λ
3の光の同時照射による温度変化により、血液密度の高い部位において発生した光音響信号を増幅する。この増幅率をAとすれば、数式(15)は、
と書き換えられる。
数式(16)の両式から数式(15)の差分をとれば、
となり、非血液部位である組織からの水の光音響信号を除去される。
ここで、数式(17)において、(A−1)を消去すると、
となり、数式(4)と同様に差分音響信号Δs、および既知の吸収係数αより濃度Mを求めることができる。但し、数式(18)は、波長λ
1、λ
2の各々に対して、主に水の背景による吸収係数α
1 (b)とα
2 (b)がほぼ等しいことを前提にしている。また、Δs
1≒Δs
2という性質を用いている。
ここで、血液成分の分離による成分濃度算出の精度向上だけではなく、元来グルコースの存在が無視し得るほど少なく、また全体に占める光音響信号の発生量が大きい非血液組織からの背景信号が除去できる点にある。従って、従来法に比べ、組織内温度変化等が予測される背景雑音が、本方式では測定結果に影響を与えない利点を有する。
図16は本実施形態による血液成分算定方法を示した図である。図15を参照しつつ、本実施形態における測定手順を詳述する。前記第1の光源101は、発振器103から駆動回路102を介して強度変調され、図16の上段に示すような波長λ1の第1の光源の出力波形194の光を出力する。一方、前記第2の光源105は、第1の光源101に同期して強度変調される。第2の光源105は前記180°移相器119により、上記第1の光源101に対して、逆相に変調される結果、図16の中段に示すような波長λ2の第2の光源の出力波形195の光を出力する。上記第3の光源106は、発振器103の発振周波数が分周器118により分周された周波数で、かつ発振器103に同期して強度変調され、図16の下段に示すような波長λ3の第3の光源の出力波形196の光を出力する。
図17は本実施形態によって測定される光音響信号を示した図である。図15を参照しつつ、本実施形態によって測定される光音響信号について説明する。波長を異にする2つの光のビームは、合成器120により合成され、生体被検部111に照射される。ここで、各光は、独立に音波を発生するものと考える。音波についての線形の重畳は、Helmholtz方程式の線形性より既に保証されているからである。従って、図17第1段に示すような第1の光源(波長λ1)による光音響信号197、及び図17第2段に示すような第2の光源(波長λ2)による光音響信号198が発生する。更に図17第3段に示すような第3の光源(波長λ3)による温度変化199が生ずるため、超音波検出器121に音圧として検出され、フィルタ122を通過した光音響信号の総和200は図17第4段に示すような変調を受けている。
検出された光音響信号の総和200における第1ピーク値と第2ピーク値の差からΔs1:208が得られる。また、第1谷値と第2谷値の差からΔs2:209が得られ、数式(17)から、成分濃度Mを算出できる。若しくは、温度上昇時の信号振幅はAs11−As2に対応し、温度下降時の信号振幅はs1−s2に対応することから、両者の差をとることで、Δs1―Δs2を得ることができる。あるいは、信号Δs1、Δs2を得るために、波長λ1またはλ2の光のみの照射下で、光音響信号を測定する方法もある。この場合、第1の光源101の波形を保ったまま、第2の光源105の出力を零とする。これは、合成器120の入力部の前に、第1の光源101若しくは第2の光源105の出力光を機械的なシャッターで遮る、又は、駆動回路102若しくは駆動回路116の出力を第1の光源101若しくは第2の光源105の発振閾値以下に落とすことにより実現できる。
以上説明したように、第1の光源及び第2の光源に対して、血液成分として血液のみに存在するヘモグロビンが特徴的な吸収を呈する波長を有する第3の光源を追加し、且つ光音響信号が生じない程度の変調周波数を用い、測定を行えば、血液の吸収による血液密度が高い領域における温度上昇が生じ、音速の変化から生じる光音響信号は増大する。この結果、光音響信号の変化は即ち、血液の温度変化に対応しており、血液部位で発生する光音響信号を増大させることができる。従って、生体に直接的に圧力を与えず、かつ血液部位のみに単独に温度変化を生じさせることができるため、血液部位を効果的に判別することができる。本実施形態は、このように血液部位と非血液部位の分離を非侵襲に再現できる手法である。
ここでは、生体の血液成分濃度測定装置及び生体の血液成分濃度測定装置制御方法について説明したが、生体に代えて液体を対象とした場合も同様である。即ち、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置および血液成分濃度測定装置制御方法は、生体以外の測定対象に対しても実施できる。この場合、一般に液体に対しては等しい吸収係数を有し、対象物質に対し吸収係数が異なる2つの波長を用いれば、液体の吸収に掩蔽されることなく、液体中の成分の検出が行える。さらに、前述の実施形態や実施例の構成において、生体被検部に代えて果物をおけば、果実糖度計として機能する。これは、果実の甘さ成分である蔗糖や果糖は、血糖成分であるグルコースと類似の波長に吸収を有するからである、このように本実施形態の精神を逸脱しない範囲で、本実施形態に係る測定装置及び測定装置制御方法を様々の対象に適用できることは言うまで無い。
(実施例)
ここで、第2実施形態における具体的な実施例について説明する。
(第1実施例)
図18に第1実施例に係る血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定装置制御方法の構成を示す。図18において、523は第1の半導体レーザ光源、524は駆動電流源、525は発振器、526はレンズ、527は第2の半導体レーザ光源、528は駆動電流源、529は180°移相器、530はレンズ、531は合成器、532は第3の半導体レーザ光源、533は駆動電流源、534は分周器、535はレンズ、536は合成器、537は生体被検部、516は音響レンズ、517は音響整合器、518は超音波検出器、519は高域通過フィルタ、520は同期検波増幅器、521は光音響信号出力端子、522は温度計測器である。
図18において、発振器525は一定周波数で発振し、第1の半導体レーザ光源523及び第2の半導体レーザ光源527を強度変調する周波数を決定することになる。発振器525からの信号を分周器534で分周することにより、第3の半導体レーザ光源532は、第1の半導体レーザ光源523及び第2の半導体レーザ光源527を強度変調する一定の周波数の繰り返し間隔よりも長い間隔で周期的に発振することになる。
発振器525からの信号は駆動電流源524に入力され、駆動電流源524は第1の半導体レーザ光源523を駆動する。また、発振器525からの信号は180°移相器529に入力され、反転される。反転された信号は駆動電流源528に入力され、駆動電流源528は第2の半導体レーザ光源527を駆動する。第1の半導体レーザ光源523と第2の半導体レーザ光源527とは変調周波数が同じで、互いに逆相で強度変調されることになる。
第1の半導体レーザ光源523、第2の半導体レーザ光源527、第3の半導体レーザ光源532は各々駆動電流源524、駆動電流源528、駆動電流源533に駆動され、各々所定の波長で、かつ変調された光を出力する。第1の半導体レーザ光源523からの光はレンズ526でビームに変換され、第2の半導体レーザ光源527からの光はレンズ530でビームに変換され、合成器531で1つのビームに合成される。第3の半導体レーザ光源532からの光はレンズ535でビームに変換され、合成器536で合成器531からのビームにさらに合成される。合成されたビームは、被検体としての生体被検部537に照射される。なお、前述したように、第1の光源523からの光のビーム、第2の光源527からの光のビーム及び第3の半導体レーザ光源532からの光のビームを合成することは、本実施例において適用する他、第1実施形態、並びに後に説明する第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても適用することができる。
合成器536の出力光が照射される生体被検部537の近傍に温度計測器522が設置され、第3の半導体レーザ光源532の光によって生ずる生体被検部537の温度変化が検出され、温度計測器522の出力を駆動電流源533の制御端子に入力して、生体被検部537の温度変化が所望の値となるように駆動電流源533の駆動電流を調整する。
合成器536からの光のビームが照射される生体被検部537の面の反対側の面に接して、音響レンズ516、音響整合器517及び超音波検出器518が設置される。音響レンズ516は、生体被検部537の中に発生する音波すなわち光音響信号を収束し、音響整合器517を介して、超音波検出器518へ効率よく伝達する。音響整合器517は音響レンズ516と超音波検出器518の間の光音響信号の伝達効率を高める。超音波検出器518は、生体被検部537で発生した光音響信号を受信し、音圧に比例した電気信号に変換し、出力する。高域通過フィルタ519は発振器525の発振周波数と同じ周波数の信号を通過させ、同期検波増幅器520は高域通過フィルタ519から入力される信号を、同期信号入力端子から入力される同期信号により同期検波し、同期検波した光音響信号の振幅を光音響信号出力端子521へ出力する。
上記構成において第1の半導体レーザ光源523の波長を1380nmとし、第2の半導体レーザ光源527の波長を1608nmとし、第3の半導体レーザ光源532の波長を800nmとした。また、第1の半導体レーザ光源523および第2の半導体レーザ光源527は200kHzの変調周波数で強度変調した。人体に害を及ぼさない温度上昇2℃以下である。従って、初期温度37℃とした時の最大許容温度は39℃である。例えば、生体内に0.1〜0.2℃の温度変調が起こるように、生体組織の熱拡散定数を考慮し、第3の半導体レーザ光源532の変調周波数を100Hz以下に分周器の分周率を設定するが、所望の温度変化を生じさせる変調周波数は光源の波長およびビーム径に依存するため、温度計測器や光音響信号の強度を見つつ、光源出力等を含めた調整が必要である。但し、最も測定時間を短くするには、第3の半導体レーザ光源532の出力光は、第1の半導体レーザ光源523および第2の半導体レーザ光源527の出力光と同軸上に合わせ、ビーム径も同程度となるようにレンズ535を選択、調整することが効果的である。以上を考慮して、それぞれの光源出力は5mWに設定した。レンズ526、レンズ530、レンズ535を調整し、ビーム径をそれぞれ3mmと設定した。なお、第1の半導体レーザ光源523および第2の半導体レーザ光源527のビーム径を同程度とすることは、本実施形態において適用する他、第1実施形態、並びに後に説明する第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び第6実施形態においても適用することができる。
光を生体被検部537に照射することで生じる生体からの光音響信号は音響レンズ516、音響整合器517を介して超音波検出器518に到達する。超音波を超音波検出器518の中央部に収束させる音響レンズ516は、生体組織と音響インピーダンスが近い部材を用い、例えばシリコーンを用いて作製した。また、光音響整合器517の部材は音響レンズ516の部材と超音波検出器518の部材のほぼ中間の音響インピーダンスを有している部材、例えばアクリルを用いて作製した。超音波検出器518は、第1の半導体レーザ光源523、第2の半導体レーザ光源527の変調周波数と同程度の固有振動数を持つように設計された圧電素子、若しくはコンデンサマイクロフォンである。光音響信号は超音波検出器518で電気信号に変換され、同期検波増幅器520で超音波の振幅が検出される。
第1の半導体レーザ光源523を遮った時、即ち第2の半導体レーザ光源527のみの場合、同期検波増幅器520の出力レベルは20μV程度であった。第3の半導体レーザ光源532を遮り、第1の半導体レーザ光源523および第2の半導体レーザ光源527を同時に照射した場合、同期検波増幅器520の出力レベルは5nV程度であった。更に第3の半導体レーザ光源532を追加し、温度変調しつつ、信号を検出した。温度上昇時の得られた同期検波増幅器520の出力レベルは5.37nVであった。また、温度下降時に得られた同期検波増幅器520の出力レベルは5.33nVであった。
両者の差から数式(18)におけるΔs1−Δs2は42.1pVとなる。また、Δs2は温度上昇時の谷値と温度下降時の谷値の差を、例えば、オシロスコープ等で読むことで求まり、60.3nVであった。以上から、数式(18)を用いて、既知の1608nmにおける比吸光度値0.114M−1を用いて、グルコース濃度Mが3mM(50mg/dL)と求まった。
以上の実施例において説明した血液成分濃度測定では、生体被検部537に対して、光を照射する面と反対側の面で光音響信号を測定する前方伝搬型である。これに対して、生体被検部537に対して、光を照射する面と同じ面で光音響信号を測定する後方伝搬型の構成も可能であり、動作は上記の前方伝搬型と同様である。
ここでは、生体の血液成分濃度測定装置及び生体の血液成分濃度測定装置制御方法について説明したが、生体に代えて液体を対象とした場合も同様である。即ち、本実施形態の血液成分濃度測定装置および血液成分濃度測定装置制御方法は、生体以外の測定対象に対しても実施できる。この場合、一般に溶媒に対しては等しい吸収係数を有し、液体成分に対し吸収係数が異なる2つの波長を用いれば、溶媒の吸収に掩蔽されることなく、液体成分の検出が行える。
(第2実施例)
図19に本実施形態に係る血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定装置制御方法の発明を液体成分分析に用いた実施例を示す。液体試料の例を挙げれば、糖類を添加した液状食品若しくは飲料品である。図19において、701は第1の半導体レーザ光源、702は駆動電流源、703は発振器、704はレンズ、705は第2の半導体レーザ光源、706は駆動電流源、707は180°移相器、708はレンズ、709は合成器、710は第3の半導体レーザ光源、711は駆動電流源、712は分周器、713はレンズ、714は合成器、715は液体試料、716は試料セル、717は音響整合器、718は超音波検出器、719は高域通過フィルタ、720は同期検波増幅器、721は光音響信号出力端子、722は温度計測器である。
重複を避けるため、図18に示す血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定装置制御方法の実施例と異なる部分を中心に説明する。
合成器714により合成された合成光は液体試料715へ照射される。合成器714の出力光が照射される部分の近傍の試料セル716に温度計測器722が設置され、温度計測器722の出力端子は信号線により駆動電流源711の制御端子に接続されている。温度計測器722は液体試料715の温度を計測して、測定結果を電気信号として出力端子へ出力する機能を有する。
合成器714の出力光が照射される試料セル716の面の反対側の面に接して、音響整合器717が設置される。音響整合器717を介して、超音波検出器718が設置される。音響整合器717は試料セル716と超音波検出器718の間の光音響信号の伝達効率を高める機能を有する。
本実施例において、測定対象は脂肪分と水分が混合された食品溶液中に含まれる糖分濃度である。2種類の混合溶液の脂肪分のみに含有される糖分濃度のみを測定するため、図19において、第1の半導体レーザ光源701の波長を1380nmとし、第2の半導体レーザ光源705の波長を1608nmとし、第3の半導体レーザ光源710の波長を脂肪分が顕著に吸収を呈する1710nmとした。
第1の半導体レーザ光源701及び第2の半導体レーザ光源705の変調周波数を200kHzとした。液体の熱拡散定数を考慮し、液体内に0.1〜0.2℃の温度変調が起こるように分周器712の分周比を設定して、第3の半導体レーザ光源710の変調周波数を100Hz以下とした。実際には、所望の温度変化を生じさせる変調周波数は光源の波長及びビーム径に依存するため、温度計測器722の測定する温度や光音響信号の強度を見つつ、光源出力を含めた調整を行った。
測定時間を短くするには、第3の半導体レーザ光源710の出力光は、第1の半導体レーザ光源701及び第2の半導体レーザ光源705の出力光と同軸上に合わせ、ビーム径も同程度となるようにレンズ713を選択、調整することが効果的である。
以上を考慮して、第1の半導体レーザ光源701、第2の半導体レーザ光源705及び第3の半導体レーザ光源710の光源出力はそれぞれ12mWとした。また、レンズ704、レンズ708及びレンズ713を調整し、第1の半導体レーザ光源701、第2の半導体レーザ光源705及び第3の半導体レーザ光源710のビーム径をそれぞれ4mmとした。
第1の半導体レーザ光源701、第2の半導体レーザ光源705及び第3の半導体レーザ光源710からの照射光を液体試料715に照射すると、液体試料715で生じる音波すなわち光音響信号は試料セル716、音響整合器717を介して超音波検出器718に到達する。音響整合器717の部材は、試料セル716の部材、例えばガラスと、超音波検出器718の部材、例えばセラミックスとの中間の音響インピーダンスを有している部材、例えばアルミニウムを用いて作製した。
試料セル716と音響整合器717との間、及び音響整合器717と超音波検出器718との間に音響整合剤を塗布し、空気層の介在による反射の影響を低減した。超音波検出器718は、第1の半導体レーザ光源701及び第2の半導体レーザ光源705の変調周波数と同程度の固有振動数を持つように設計された圧電素子又はコンデンサマイクロフォンである。光音響信号は超音波検出器718で電気信号に変換され、高域通過フィルタ719を通過する。このときに、200kHz近傍では減衰せず、1kHzで20dB以上減衰するように遮断周波数及び時定数を設定した。
高域通過フィルタ719から出力した電気信号は、同期検波増幅器720で検出される。第1の半導体レーザ光源701の出力を遮ったとき、即ち、第2の半導体レーザ光源705のみの場合の同期検波増幅器720の出力は、120μV程度であった。第3の半導体レーザ光源710の出力を遮り、第1の半導体レーザ光源701及び第2の半導体レーザ光源705を同時に照射した場合、得られた同期検波増幅器720の出力は、12nVp−p程度であった。さらに、第3の半導体レーザ光源710を追加し、温度変調した。温度上昇時に得られた同期検波増幅器720の出力は、4.33μVp−pであった。また、温度下降時に得られた同期検波増幅器720の出力は、4.36μVp−pであった。両者の差から数式(18)において、Δs1−Δs2は30nVであった。
Δs2は温度上昇時の谷値と温度下降時の谷値の差を、例えば、オシロスコープ等で読むことにより求まる。本実施例では5.4μVであった。
これらの結果、数式(18)を用いて、既知の1608nmの波長における比吸光度値0.114M−1を用いると、グルコース濃度Mは45mM(750mg/dL)と求まった。
以上の実施例において説明した液体成分濃度測定では、液体試料715に対して、光を照射する面と反対側の面で光音響信号を測定する前方伝搬型である。これに対して、液体試料715に対して、光を照射する面と同じ面で光音響信号を測定する後方伝搬型の構成も可能であり、動作は上記の前方伝搬型と同様である。
前述の実施形態や実施例の構成において、液体試料に代えて果物をおけば、果実糖度計として機能する。これは、果実の甘さ成分である蔗糖や果糖は、血糖成分であるグルコースと類似の波長に吸収を有するからである。
(第3実施形態)
本実施形態の血液成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段と、前記光発生手段が発生する光を変調する変調周波数を掃引する周波数掃引手段と、前記周波数掃引手段からの信号により前記光発生手段で発生した光を電気的に強度変調する光変調手段と、前記強度変調された光を液体に向けて出射する光出射手段と、前記出射された光により液体内に発生する音波、すなわち光音響信号を検出する音波検出手段と、前記音波検出手段が検出した光音響信号を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手段と、を備えた血液成分濃度測定装置である。
図20を参照して本実施形態の血液成分濃度測定装置を説明する。図20に示す本実施形態の血液成分濃度測定装置の構成例は光発生手段としての光源112、光出射手段としてのレンズ99、変調手段としての駆動回路104および発振器103、周波数掃引手段としての制御回路125、音波検出手段としての音響結合器126、超音波検出器127および位相検波増幅器128、積算手段としての計算機129、を含んで構成される。
発振器103は信号線により駆動回路104、位相検波増幅器128、制御回路125とそれぞれ接続され、また発振器103は発振した信号を、駆動回路104、位相検波増幅器128のそれぞれに送信するとともに、制御回路125から発振周波数の掃引を制御する信号を受信する。
駆動回路104は発振器103から送信された信号を受信し、信号線により接続されている光源112へ駆動電力を供給し、光源112を発光させ、さらに光源112の出力する光を発振器103の発振周波数に同期して強度変調する。ここで、光源112の出力する光の波長は生体内の測定対象の血液成分が吸収を呈する波長に設定されている。
光源112が出力した光はレンズ99を通過し、生体被検部110の所定の位置へ照射され、生体被検部110の内部に光音響信号を発生させる。
超音波検出器127は音響結合器126を介して、生体被検部110の中に発生した前記音波を検出し、検出した前記音波の大きさに比例する電気信号に変換して、信号線で接続されている位相検波増幅器128へ送信する。ここで、音響結合器126は一方の面を生体被検部110に接し、他方の面を超音波検出器127に接し、生体被検部110の中に発生した前記光音響信号を効率よく超音波検出器127へ伝達する機能を有する。
位相検波増幅器128は発振器103から送信されて来る信号を受信し同期検波のための同期信号として、超音波検出器127から送信されて来る前記光音響信号の大きさに比例する電気信号を受信して、同期検波ならびに増幅、濾波し、信号線により接続されている計算機129へ送信する。
計算機129は位相検波増幅器128から送信されて来る前記信号を受信し、受信した前記信号を、制御回路125から受信する発振器103の掃引する発振周波数範囲で、積算し、積算した前記光音響信号の検出結果から、超音波検出器127の検出感度が増加する共振周波数における検出値を選択して、選択した値を積算する。ここで、計算機129又は図示していない外部の装置により、積算した検出値から測定対象の血液成分濃度を算定することができる。
さらに、計算機129は位相検波増幅器128から送信されて来る前記信号を受信し、受信した前記信号と、制御回路125から受信する発振器103の掃引する発振周波数から、発振器103の発振周波数、すなわち変調周波数の掃引の範囲が超音波検出器127の共振周波数の変化の範囲を含むように発振器103を制御するための制御信号を、信号線で接続されている制御回路125へ送信する。
ここで、計算機129は光源112の前記変調周波数を、図21に示す超音波検出器の感度特性の例において、例えば、共振特性の半値幅の周波数よりも広い範囲を掃引するように、発振器103の発振周波数の掃引を制御する信号を制御回路125へ送信してもよい。また、共振特性のピーク値から数分の1、例えば2分の1になる周波数範囲で掃引するように、発振器103の発振周波数の掃引を制御する信号を制御回路125へ送信してもよい。制御回路125は計算機129から送信される制御信号に従って発振器103の発振周波数を制御する。
上記のように、本実施形態の血液成分濃度測定装置は超音波検出器127の共振特性が変化した場合でも、生体へ照射する光の変調周波数を掃引して生体内の光音響信号を検出することにより、光音響信号の検出値の中から超音波検出器127の共振周波数に合った状態で、高感度で検出された値を選定して、積算して、正確に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、光を発生する光発生手順と、周波数掃引手段が、前記光発生手順で発生した光を変調する周波数を掃引する周波数掃引手順と、光変調手段が、前記周波数掃引手順で掃引した信号により前記光発生手順で発生した光を電気的に強度変調する光変調手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において前記光変調手順において強度変調された光を液体に向けて出射する光出射手順と、積算手段が、出射された光により液体内に発生する音波、ずなわち光音響信号を検出する音波検出手順と、積算手段が、前記音波検出手順で検出した光音響信号を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手順と、を順に含む血液成分濃度測定装置制御方法である。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、例えば、図20に示す制御回路125により周波数を制御され発振周波数が掃引する発振器103の出力を駆動回路104へ送信し、掃引する周波数を受信した駆動回路104により、例えば半導体レーザにより構成される光源112を駆動して光を発生させ、さらに強度変調する。この場合、光源112は光を発生し、発生する光を前記掃引する周波数により強度変調することができる。ここで、光源112が発生する光の波長は測定対象とする血液成分が吸収を呈する波長に設定する。
上記のように、前記強度変調された光を生体へ照射して、照射された前記強度変調された光により生体内に発生する光音響信号を例えば、図20に示す音響結合器126を介して超音波検出器127で検出し、光音響信号の大きさに比例する電気信号に変換して位相検波増幅器128により同期検波し増幅し濾波し、さらに所定の時間にわたり積算し平均して、計算機129へ送信する。
上記のように、検出された前記光音響信号は圧力に比例する電気信号として、例えば図20に示す計算機129により掃引された変調周波数範囲で積算し、積算した前記光音響信号の大きさに比例する電気信号の中から、検出感度が増加する共振周波数における検出値又は周波数を選択して、選択した周波数範囲で積算して、前記血液成分濃度を算定する。
上記の方法により、生体内の光音響信号を検出する超音波検出器127の共振周波数が変化した場合でも、超音波検出器127の共振周波数に一致する周波数における光音響信号の検出値を選定し、積算して、血液成分濃度を算定できるので、正確に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置は、異なる波長の2波の光を発生する光発生手段と、前記光発生手段が発生した光を変調する周波数を掃引する周波数掃引手段と、前記周波数掃引手段からの信号により前記異なる波長の2波の光を各々逆位相で電気的に強度変調する光変調手段と、前記強度変調された異なる波長の2波の光を1の光束に合波し液体に向けて出射する光出射手段と、前記出射された光により液体内に発生する音波、すなわち光音響信号を検出する音波検出手段と、前記音波検出手段が検出した光音響信号を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手段と、を備えた血液成分濃度測定装置である。
さらに、本実施形態の血液成分濃度測定装置においては、前記光発生手段は、1波の光の波長を血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することもできる。
図22を参照して、本実施形態の血液成分濃度測定装置の構成について説明する。図22に示す本実施形態の血液成分濃度測定装置は光発生手段としての第1の光源301および第2の光源302、光出射手段としての合波器308、変調手段としての発振器298、駆動回路303、駆動回路297および180°移相器299、周波数掃引手段としての制御回路300、音波検出手段としての音響結合器327および超音波検出器328および位相検波増幅器329、積算手段としての計算機330、を含んで構成される。
発振器298は信号線により駆動回路303、180°移相器299、位相検波増幅器329、制御回路300とそれぞれ接続され、また発振器298は発振した信号を、駆動回路303、180°移相器299、位相検波増幅器329のそれぞれに送信するとともに、制御回路300から発振周波数の掃引を制御する信号を受信する。
駆動回路303は発振器298から送信された信号を受信し、信号線により接続されている第1の光源301へ駆動電力を供給し、第1の光源301を発光させ、さらに第1の光源301の出力する光を発振器298の発振周波数に同期して強度変調する。
180°移相器299は発振器298から送信された信号を受信し、受信した信号に180°の位相変化を与えた信号を、信号線により接続されている駆動回路297へ送信する。
駆動回路297は180°移相器299から送信された信号を受信し、信号線により接続されている第2の光源302へ駆動電力を供給し、第2の光源302を発光させ、さらに第2の光源302の出力する光を発振器298の発振周波数に180°の位相変化を与えた信号に同期して強度変調する。従って、第1の光源301と第2の光源302の各々の出力する光は互いに逆相の信号により変調される。
ここで、図22に示す第1の光源301および第2の光源302の各々の波長は、1波の光の波長を測定対象とする血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定する。
第1の光源301および第2の光源302の各々は、上記のように互いに異なる波長の光を出力し、各々が出力した光は、第1の光源301および第2の光源302の各々と光波伝送手段により接続された合波器308へ入力される。
第1の光源301の出力した光と第2の光源302の出力した光は、合波器308に入力され、合波されて、1の光束として被検体としての生体被検部309の所定の位置へ照射され、生体被検部309内に音波、すなわち光音響信号を発生させる。
超音波検出器328は音響結合器327を介して、生体被検部309の中に発生した前記光音響信号を検出し、検出した前記光音響信号の大きさに比例する電気信号に変換して、信号線で接続されている位相検波増幅器329へ送信する。
ここで、第1の光源301および第2の光源302の各々の波長は、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差が水の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する。一方、上記水の呈する吸収の差を0とし、1波の光の波長を測定対照とする血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することもできる。さらに、第1の光源301および第2の光源302の各々の波長は、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差がそれ以外の血液成分の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定することが望ましい。なお、第1の光源301および第2の光源302の各々の波長を上記の値に設定することは、本実施形態に適用する他、第1実施形態、第2実施形態、及び後に説明する第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態においても適用することができる。
そして、第1の光源301および第2の光源302の各々が出力した光は互いに逆相に変調されているので、生体被検部309へ照射された第1の光源301および第2の光源302の各々が出力した光を合波した光により生体被検部309内に発生する光音響信号は、生体被検部309へ照射された合波光を測定対象とする血液成分と水が吸収して発生した光音響信号と、水のみが吸収して発生した光音響信号が、光音響信号の段階で相互に重畳して、光音響信号の大きさの差として超音波検出器328に検出される。
音響結合器327は一方の面を生体被検部309に接し、他方の面を超音波検出器328に接し、生体被検部309の中に発生した前記光音響信号を効率よく超音波検出器328へ伝達する機能を有する。
位相検波増幅器329は発振器298から送信されて来る信号を受信し同期検波のための同期信号として、超音波検出器328から送信されて来る前記光音響信号の大きさに比例する電気信号を受信して、同期検波ならびに増幅、濾波し、信号線により接続されている計算機330へ送信する。
計算機330は位相検波増幅器329から送信されて来る前記信号を受信し、受信した前記信号を、制御回路300から受信する発振器298の掃引する発振周波数範囲で、積算し、積算した前記光音響信号の検出結果から、超音波検出器328の検出感度が増加する共振周波数における検出値又は周波数を選択して、選択した範囲で積算して、前記血液成分濃度を算定する。ここで、計算機330又は図示していない外部の装置により、積算した検出値から測定対象の血液成分濃度を算定することができる。
さらに、計算機330は位相検波増幅器329から送信されて来る前記信号を受信し、受信した前記信号と、制御回路300から受信する発振器298の掃引する発振周波数から、発振器298の発振周波数、すなわち変調周波数の掃引の範囲が超音波検出器328の共振周波数の変化の範囲を含むように発振器298を制御するための制御信号を、信号線で接続されている制御回路300へ送信する。
ここで、計算機330は第1の光源301および第2の光源302の変調周波数を、図21に示す超音波検出器の感度特性の例において、例えば、共振周波数特性の半値幅の周波数よりも広い範囲を掃引するように、発振器298の発振周波数の掃引を制御する信号を制御回路300へ送信してもよい。共振特性のピーク値から数分の1、例えば2分の1になる周波数範囲を掃引するように、発振器298の発振周波数の掃引を制御する信号を制御回路300へ送信してもよい。制御回路300は計算機330から送信される制御信号に従って発振器298の発振周波数を制御する。
上記のように、本実施形態の血液成分濃度測定装置においては第1の光源301の出力した光と第2の光源302の出力した光は、同一の周波数の信号により強度変調されているので、従来技術において、複数の周波数の信号により強度変調している場合に問題となる測定系の周波数特性の不均一性の影響は存在しない。
また、上記のように、本実施形態の血液成分濃度測定装置は超音波検出器328の共振特性が変化した場合でも、変調周波数を掃引して生体内の光音響信号を検出することにより、光音響信号の検出値の中から超音波検出器328の共振周波数に合った状態で、高感度で検出された値を選定して、積算して、正確に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、異なる波長の2波の光を発生する光発生手順と、周波数掃引手段が、前記光発生手順で発生した光を変調する周波数を掃引する周波数掃引手順と、光変調手段が、前記周波数掃引手順で掃引した信号により前記異なる波長の2波の光を各々逆位相で電気的に強度変調する光変調手順と、光出射手段が、前記光変調手順において強度変調された異なる波長の2波の光を1の光束に合波し液体に向けて出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において出射された光により液体内に発生する音波、すなわち光音響信号を検出する音波検出手順と、積算手段が、前記音波検出手順で検出した光音響信号を掃引された変調周波数範囲で積算する積算手順と、を順に含む血液成分濃度測定装置制御方法である。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、例えば、図22に示す制御回路300により周波数を制御され発振周波数が掃引する発振器298の出力を駆動回路303、および180°移相器299を介して駆動回路297、の各々へ送信し、掃引する周波数を受信した駆動回路303および駆動回路297により、例えば半導体レーザにより構成される第1の光源301および第2の光源302の各々を駆動して光を発生させ、さらに強度変調する。この場合、第1の光源301および第2の光源302の各々は光を発生し、各々が発生する光を前記掃引する周波数により強度変調することができる。
ここで、第1の光源301および第2の光源302の各々の波長は、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差が水の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定する。一方、上記水の呈する吸収の差を0とし、第1の光源301および第2の光源302の各々の波長は、1波の光の波長を測定対象とする血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することもできる。さらに、第1の光源301および第2の光源302の各々の波長は、測定対象とする血液成分の呈する吸収の差がそれ以外の血液成分の呈する吸収の差よりも大きい2波の光の波長に設定することが望ましい。なお、第1の光源301および第2の光源302の各々の波長を上記の値に設定することは、本実施形態に適用する他、第1実施形態、第2実施形態、及び後に説明する、第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態においても適用することができる。
次に、第1の光源301が発生した光と第2の光源302が発生した光を、例えば図22に示す合波器308に入力し、合波して、1の光束として生体被検部309の所定の位置へ照射し、生体被検部309内に音波、すなわち光音響信号を発生させる。
上記のように、前記強度変調された光を生体へ照射して、照射された前記強度変調された光により生体内に発生する光音響信号を例えば、図22に示す音響結合器327を介して超音波検出器328で検出し、光音響信号の大きさに比例する電気信号に変換して位相検波増幅器329により同期検波し増幅し濾波し、さらに所定の時間にわたり積算し平均して、計算機330へ送信する。
上記のように、検出された前記光音響信号は圧力に比例する電気信号として、例えば図22に示す計算機330により掃引された周波数範囲で、積算し、積算した前記光音響信号の大きさに比例する電気信号の中から、検出感度が増加する共振周波数における検出値又は周波数を選択し、選択した範囲で積算して、前記血液成分濃度を算定する。
上記の方法により、生体内の光音響信号を検出する超音波検出器328の共振周波数が変化した場合でも、超音波検出器328の共振周波数に一致する周波数おける光音響信号の検出値を選定し、積算して、血液成分濃度を算定できるので、正確に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置は、前記音波検出手段が、前記周波数掃引手段が掃引する変調周波数に追尾して、照射された光により液体内に発生する音波、すなわち光音響信号を検出し、前記積算手段が、前記音波検出手段が高い検出感度を有する変調周波数範囲で、前記音波検出手段が検出した光音響信号を積算する血液成分濃度測定装置である。
本実施形態の血液成分濃度測定装置の構成は図20および図22を参照して説明した前述の血液成分濃度測定装置と同様である。
本実施形態の血液成分濃度測定装置は図20および図22を参照して説明した前述の血液成分濃度測定装置において、変調周波数の掃引に対応して超音波検出器127又は超音波検出器328が検出する光音響信号の大きさを、位相検波増幅器128又は位相検波増幅器329の出力として、計算機129又は計算機330が追尾して監視し、超音波検出器127又は超音波検出器328の感度が増加する変調周波数を探索し、超音波検出器127又は超音波検出器328の感度が増加する変調周波数の範囲において検出する光音響信号の大きさを位相検波増幅器128又は位相検波増幅器329の出力から取得し、積算する場合である。
上記のように、本実施形態の血液成分濃度測定装置は、超音波検出器127および超音波検出器328の感度が最大になる変調周波数付近において検出する光音響信号の大きさを、位相検波増幅器128および位相検波増幅器329の出力から取得し、積算して、正確に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、前記音波検出手順が、前記周波数掃引手順において掃引する変調周波数に追尾して、照射された光により生体内に発生する音波を検出し、前記積算手順が、前記音波検出手順において光音響信号の検出感度が高い変調周波数範囲で、前記音波検出手順で検出した光音響信号を積算する血液成分濃度測定装置制御方法である。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、前述の血液成分濃度測定装置制御方法において、音波検出手順では、例えば、図20および図22を参照して説明した前述の血液成分濃度測定装置において、変調周波数の掃引に対応して、超音波検出器127又は超音波検出器328が検出し、前記積算手順では、超音波検出器127又は超音波検出器328が検出する光音響信号の大きさを、位相検波増幅器128又は位相検波増幅器329の出力として、計算機129又は計算機330により追尾して監視し、超音波検出器127又は超音波検出器328の感度が増加する変調周波数の点を探索し、超音波検出器127又は超音波検出器328が高い検出感度を有する変調周波数範囲において検出する光音響信号の大きさを位相検波増幅器128又は位相検波増幅器329の出力から取得し、積算する場合である。
以上説明したように、本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、強度変調周波数が掃引する光信号を生体に照射して生体内に発生する音波、すなわち光音響信号を検出し、検出した値から、超音波検出器の感度が増加する共振周波数に一致する変調周波数を探索し、超音波検出器の感度が最大となる共振周波数に一致する変調周波数付近において、光音響信号を検出することにより、正確に血液成分を測定する血液成分濃度測定装置制御方法を提供できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置は、前記検出された光音響信号の大きさから生体内の血液成分濃度を算定する血液成分濃度算定手段をさらに備える血液成分濃度測定装置である。
本実施形態の血液成分濃度測定装置の構成は、例えば、図20および図22を参照して説明した前述の血液成分濃度測定装置と同様の構成として、計算機129又は計算機330に血液成分濃度算定手段としての機能を持たせた場合である。
すなわち、本実施形態の血液成分濃度測定装置は、図20および図22に示す前述の血液成分濃度測定装置において、計算機129又は計算機330が、位相検波増幅器128又は位相検波増幅器329から受信する信号を積算し平均したあとに、所定の算定方法に従って、血液成分濃度を算定する血液成分濃度算定手段としての機能を有する場合である。
ここで、前記所定の算定方法としては、例えば、生体内の測定対象の血液成分の量と測定対象の血液成分が吸収を呈する波長の光を生体に照射して発生する光音響信号の大きさの関係を示す数値データ、あるいは理論式から算定してもよい。
上記のように、本実施形態の血液成分濃度測定装置は血液成分濃度算定手段を備えることにより、容易に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、前記音波検出手順で検出された光音響信号の大きさから生体内の血液成分濃度を算定する血液成分濃度算定手順をさらに含む血液成分濃度測定装置制御方法である。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、前述の血液成分濃度測定装置制御方法の前記音波検出手順が、例えば、図20および図22を参照して説明した前述の血液成分濃度測定装置の、計算機129又は計算機330が、位相検波増幅器128又は位相検波増幅器329から受信する信号を積算し平均したあとに、所定の算定方法に従って、血液成分濃度を算定する血液成分濃度算定手順をさらに含む場合である。
ここで、前記所定の算定方法としては、例えば、生体内の測定対象の血液成分の量と測定対象の血液成分が吸収を呈する波長の光を生体に照射して発生する音波、すなわち光音響信号の大きさの関係を示す数値データ、あるいは理論式から算定してもよい。
上記のように、本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は血液成分濃度算定手順を含むことにより、容易に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置は、前記音波検出手段が検出した光音響信号を掃引された変調周波数に対応して記録する記録手段をさらに備える。
本実施形態の血液成分濃度測定装置の構成は、例えば、図20および図22を参照して説明した前述の血液成分濃度測定装置において、計算機129又は計算機330に、記録手段としての記録器(不図示)を接続する構成とする場合である。
前記記録器は、計算機129又は計算機330が、位相検波増幅器128又は位相検波増幅器329から受信する、生体被検部110又は生体被検部309内に発生する光音響信号の大きさに比例する信号を、前述の掃引する変調周波数に対応して記録する。
前記記録器の記録により、超音波検出器127又は超音波検出器328の共振周波数が変化する場合、生体被検部110又は生体被検部309に照射する光の変調周波数の掃引範囲が、前記共振周波数の変化する範囲を含んでいるか、あるいは、超音波検出器127又は超音波検出器328が検出した光音響信号の大きさの値の中から、前記共振周波数に一致する変調周波数により高精度に測定した値を選定しているか、を確認することができる。なお、上記記録手段は、本実施形態に適用できる他、第1実施形態、第2実施形態、及び後に説明する、第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態においても適用することができる。
上記のように、本実施形態の血液成分濃度測定装置は記録手段を備えることにより、的確に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、前記音波検出手順のあとに、前記音波検出手順で検出した光音響信号を掃引された変調周波数に対応して記録する記録手順をさらに含む血液成分濃度測定装置制御方法である。
本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、前述の血液成分濃度測定装置制御方法の前記音波検出手順のあとに、例えば、図20および図22を参照して説明した前述の血液成分濃度測定装置制御方法において、計算機129又は計算機330に接続する記録器(不図示)に、計算機129又は計算機330が、位相検波増幅器128又は位相検波増幅器329から受信する信号を、掃引する発振周波数に対応して記録する記録手順をさらに含む場合である。
前記記録手順により、超音波検出器127又は超音波検出器328の共振周波数が変化する場合、生体被検部110又は生体被検部309に照射する光の変調周波数の掃引範囲が、前記共振周波数の変化する範囲を含んでいるか、あるいは、超音波検出器127又は超音波検出器328が検出した光音響信号の大きさの値の中から、前記共振周波数に一致する変調周波数により高精度に測定した値を選定しているか、を確認することができる。
上記のように、本実施形態の血液成分濃度測定装置制御方法は、前記記録手順を含むことにより、的確に血液成分濃度を測定できる。なお、上記記録手順は、本実施形態に適用できる他、第1実施形態、第2実施形態、及び後に説明する、第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態においても適用することができる。
(第4実施形態)
図23は、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置の一例を示す模式図である。図23に示す血液成分濃度測定装置は、光を発生する光発生手段としての光発生部11と、光発生部11の発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手段としての光変調部12と、光変調部12の強度変調した強度変調光1を被検体としての生体被検部97に向けて出射する光出射手段としての光出射部13と、強度変調光1を照射された生体被検部97から放射される音波、すなわち光音響信号3を検出する音波検出手段としての超音波検出部14と、を備えた血液成分濃度測定装置であって、光出射部13と超音波検出部14との間である内部22に生体被検部97と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質及び生体被検部97が配置可能となっている。
さらに、図23に示す血液成分濃度測定装置は、光出射部13と超音波検出部14との間である内部22を生体被検部97と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填する容器21と、容器21の内壁面に配置された吸音材15と、容器21内に配置された音響整合物質の温度を測定する温度計測手段としての温度計測部16と、容器21の内壁面に配置された強度変調光1に対して透明な出射窓17と、を含む。図23は、容器21の内部22に音響整合物質及び生体被検部97が配置されている様子を示しており、生体被検部97と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質が充填された内部22に光出射部13と超音波検出部14とが生体被検部97を挟んで配置され、出射窓17、超音波検出部14の表面がそれぞれ音響整合物質と接している。
なお、図23では、光出射部13と超音波検出部14とは、略対向する位置に配置されている例を示した。生体被検部97から放射される光音響信号3は、光出射部13が強度変調光1を出射する方向で最も大きな信号強度で検出される。光出射部13と超音波検出部14とが略対向する位置に配置されていることによって、超音波検出部14が検出する光音響信号の精度をさらに向上することができる。なお、上記のように光出射部13と超音波検出部14とが略対向する位置に配置することは、本実施形態に適用できる他、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、並びに後に説明する第5実施形態及び第6実施形態においても適用することができる。
光発生部11は、光を発生するものであり、例えば、蛍光灯、ハロゲンランプ、半導体レーザを含むレーザ、発光ダイオードを含む発光素子が例示できる。光発生部11は、濃度を測定する成分で吸収される波長の光を発生するものが好ましく、例えばレーザや発光素子等の波長選択性のあるものが好ましい。
光変調部12は、光発生部11の発生した光を一定周波数で電気的に強度変調するものである。発振器、駆動回路、180°移相器等を含むものが例示できる。
なお、光発生部11は、異なる波長λ1、λ2の2波の光を発生し、光変調部12は、同一周波数かつ互いに逆位相となる強度変調光1に波長λ1、λ2の光の各々を強度変調することが好ましい。例えば、血糖値の指標としてグルコース血中濃度とし、音響整合物質を水とした場合、グルコースは1600nmで吸収を呈するため、波長λ1に1600nm近傍の波長を選択し、波長λ2に水の吸収係数が相等しくなる波長である1400nm近傍と、を選択すればよい。
以下に、波長λ1を血液成分の吸収する波長、波長λ2を水が波長λ1におけるのと相等しい吸収を呈する波長とした場合に測定される濃度について説明する。波長λ1、λ2に対して、水の吸収係数α1 (b)、α2 (b)及び血液成分のモル吸収係数α1 (0)、α2 (0)を知るとき、各波長における光音響信号の測定値s1、s2を含む連立方程式、数式(1)を解いて、濃度Mを求める。ここで、Cは係数であり、音響結合、超音波検出部の感度、光出射部から生体被検部までの距離、比熱、熱膨張係数、音速、変調周波数、吸収係数に依存する未知定数である。数式(1)からCを消去すると、数式(4)となり、光音響信号s1、s2、及び既知の各吸収係数から濃度Mを求めることができる。但し、数式(4)とは、波長λ1、λ2の各々に対して、主に水による吸収係数α1 (b)、α2 (b)がほぼ等しいことを前提としている。また、s1≒s2という性質を用いている。このように、強度変調光1に、同一周波数かつ互いに逆位相となる異なる波長の2波の強度変調光を用いることにより、光音響信号の受ける水からの影響を除去することができる。
光出射部13は、光変調部12の強度変調した強度変調光1を出射するものである。強度変調光1を出射する部分に配置される部材であり、強度変調光1に対して透明な材質であることが好ましい。透明な材質として、ガラス、プラスチックが例示できる。音響整合物質と接触する場合は、音響整合物質と反応しない材質であることが好ましく、例えば、石英板や光学ガラス板、サファイア板がある。さらに、光出射部13は、強度変調光1を導くことのできる光ファイバを含んでもよい。光ファイバを含むことで、光出射部13から離れた場所に光発生部11及び光変調部12を配置して、強度変調光1を生体被検部97に照射できる位置まで導くことができる。
超音波検出部14は、音波である光音響信号3を検出するものである。例えば、クリスタルマイクロフォン、セラミックマイクロフォン、セラミック超音波センサ等の圧電効果・電歪効果を用いたもの、ダイナミックマイクロフォン、リボンマイクロフォン等の電磁誘導を用いたもの、コンデンサマイクロフォン等の静電効果を用いたもの、磁歪振動子等の磁歪を用いたものが例示できる。圧電効果を持つものには、例えばPZT又はPVDF等の結晶を含むものが例示できる。さらに、音響整合物質を伝わる音波を検出するので、ハイドロフォン等の水中マイクであることが好ましい。さらに、表面に音響整合物質の音響インピーダンスと整合させるための層(例えば、シリコンゴム。)が形成されているものが好ましい。
温度計測部16は、音響整合物質の温度を測定する温度計である。音響整合物質は液体、ゾル又はゲルであることが好ましいので、温度計測部16は接触式の温度計を用いることができる。非接触式の放射温度計を用いてもよい。
さらに、図23に示した血液成分濃度測定装置は、温度計測部16の測定した温度に応じて音響整合物質の温度を調節する温度調節部(不図示)を備えてもよい。温度調節部としては、ヒータが例示できる。温度計測部16の測定した温度に応じて音響整合物質の温度を調節することにより、音響整合物質及び光音響信号表面の温度を安定化することができる。例えば、温度上昇とともに音響整合物質の温度を調節することが可能である。音響整合物質及び光音響信号表面の温度を安定化により、温度変化による光音響信号3の変化を安定化し、血液成分濃度の算出の精度が増す。
図23に示す容器21は、内部22に音響整合物質を充填することのできるものである。
図23では、容器21の内壁面に吸音材15を含む例を示した。吸音材15は、光音響信号3を吸収するものである。例えば、エポキシ樹脂に金属酸化物の粉末(酸化チタンや酸化タングステン)を含む材料等を用いることができる。容器21の内壁面の少なくとも一部に吸音材15を含むことにより、生体被検部97の内部構造の不均一性から生じる多重反射した音波を吸収し、除去することができる。これにより、超音波検出部14は、生体被検部97から放射された光音響信号3を効率よく検出することができる。
また、図23では、容器21が出射窓17を備える例を示した。出射窓17は、強度変調光1に対して透明なものである。例えば、透明なガラス又はプラスチックがある。出射窓17は、傷がつきづらいものが好ましく、例えば、石英板や光学ガラス板、サファイア板が例示できる。また、強度変調光1を吸収しない材質のものが好ましい。出射窓17を備えることによって、光出射部13を容器21の内部22の外に配置することができるので、光出射部13の配置が容易になる。また、容器21の内壁面から強度変調光1を出射することができるので、容器21の内壁面の凹凸がなくなり、光音響信号3の反射を低減することができる。
音響整合物質は、生体被検部97と略等しい音響インピーダンスを有するものである。例えば、ゴム、樹脂などの柔軟性のある固体、液体、ゾル又はゲルがある。音響整合物質は、水であってもよい。すなわち容器21は、音響整合物質としての水で充填されてもよい。生体の音響インピーダンスは水に非常に近いので、生体被検部97の周囲である内部22を水で取り囲んだ環境下で光音響信号3を検出することで、生体被検部97とその周囲である内部22との境界反射及び生体被検部97と超音波検出部14との接触により生じる光音響信号3の劣化を低減することができる。
図24は、図23に示すD−D’横断面図であり、血液成分濃度測定装置の第1形態を示す。容器21は、横断面の形状が円形となっている。容器21の側面に、光出射部13と超音波検出部14とが略対向する位置に配置されている。
図25は、図23に示すD−D’横断面図であり、血液成分濃度測定装置の第2形態を示す。図25に示す容器21は、横断面の形状が半円形であり、前記半円形の円の略中心点の位置に光出射部13が配置されている。さらに図25では、容器21の前記半円形の円弧の部分に、超音波検出部14a、14b、14c、14d、14eが配置されている例が示されている。超音波検出部14aは、光出射部13と対向する位置に配置され、超音波検出部14bから14eは前記円弧の部分に分散して配置されている。
図25に示すように、容器21の横断面の形状を半円として、円の略中心点に光出射部13を配置することで、前記半円の円弧の部分に相当する容器の側面と光出射部13との距離を均一にすることができる。これにより、半円の中心を含む平面上に押し当てるように生体被検部97を設置すれば、ほぼ半円の中心で光音響信号3が発生し、放射状に広がる。ここで、超音波検出部14aから14eと光音響信号3の発生源の距離は一定であるので、超音波検出部14aから14eは同位相の光音響信号3を検出することができる。超音波検出部14aから14eで検出した光音響信号3を合波すれば、光音響信号3を効率よく検出することができる。さらに、同時刻の検出信号を比較すれば、生体被検部97内構造に起因する影響を補正することも可能になる。このように、音波検出手段での集音状態を改善することにより、さらに光音響信号の精度を向上することができる。さらに、半円の円弧の部分に相当する容器の側面に2個以上の音波検出手段を配置することにより、音波検出手段は放射状に広がった光音響信号をさらに効率よく検出することができる。
図26は、血液成分濃度測定装置の第4形態を示す縦断面図である。図26に示す血液成分濃度測定装置は、容器21の内部底面が半球となっている。本形態の血液成分濃度測定装置は、E−E’断面が図25に示した横断面である場合に用いることができる。図26では底面に超音波検出部14fが示されており、超音波検出部14fは光出射部13からの距離が超音波検出部14aと略等しい距離に配置されている。このように、生体被検部97から放射状に放射された光音響信号3を、図25に示した超音波検出部14aから14eに加えて14fを用いることで、さらに効率よく検出することができる。なお、E−E’断面は前述の図25に限定されるものではなく、横断面の形状は、45度、90度、135度などの任意の角度の扇形にしてもよい。
血液成分濃度測定装置の第5形態について図27及び図28を用いて説明する。図27は、血液成分濃度測定装置の第5形態を示す縦断面図である。図28は、図27のF−F’横断面図である。図27及び図28に示す血液成分濃度測定装置では、容器21は、底部が2つの焦点を断面に含む半楕円球であり、光出射部13及び超音波検出部14がそれぞれ略前記2つの焦点に配置されている。容器21の底部を2つの焦点を断面に含む半楕円球として、光出射部13及び超音波検出部14をそれぞれ2つの焦点の近傍に配置することで、光音響信号3を容器の底部で散乱させて超音波検出部14に効率的に集めることができる。さらに、光音響信号3が超音波検出部14に到達するまでの距離は変わらないので、光音響信号3は多重散乱の音波の影響を受けづらくなる。このように、音波検出手段での集音状態を改善することにより、さらに光音響信号3の精度を向上することができる。さらに容器21は、図27に示すように、底部の内壁面に反射材18を含む。反射材18は、光音響信号3を反射するものである。音響整合物質と反応しないものが好ましく、例えば、音響整合物質が水であるならば、ステンレス又はアルミ等の安定した金属が例示できる。容器21の内壁面の少なくとも一部に反射材18を含むことによって、光音響信号3を音波検出手段に集める効率を向上することができる。これにより、超音波検出部14が検出する光音響信号3の精度をさらに向上することができる。
なお、血液成分濃度測定装置の第5形態では底面について説明したが、図28に示すように、容器21は、横断面の形状が楕円形であり、光出射部13及び超音波検出部14が楕円形の略焦点の位置のそれぞれに配置されていてもよい。横断面の内壁面の形状を楕円形とし、光出射部13及び超音波検出部14を前記楕円形の略焦点の位置のそれぞれに配置することで、光音響信号3を容器21の内壁面の側面で散乱させて超音波検出部14に効率よく集めることができる。このように、超音波検出部14での集音状態を改善することにより、さらに光音響信号3の精度を向上することができる。
以上説明したように、容器21を備えることで、生体被検部97と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質で充填した容器21の内部22に生体被検部97を配置して、生体被検部97の周囲である内部22を音響整合物質で取り囲んだ環境下で生体被検部97からの光音響信号3を検出することができる。生体被検部97の周囲である内部22を音響整合物質で取り囲んだ環境下で光音響信号3を検出することで、生体被検部97とその周囲である内部22との境界反射及び生体被検部97と超音波検出部14との接触により生じる光音響信号3の劣化を低減することができる。
なお、生体被検部97は、人間の生体である。図23から図28の例では指での例を示したが、生体のどの部分でもよい。例えば、手や腕でもよい。
さらに、生体被検部97は、動物、鳥、或いは、果実又は野菜等の植物のいずれの被測定物でもよい。被測定物は、流動物の流れる管や、液体、ゾル又はゲルを内蔵するボトルやタンク等の容器を含む。例えば被測定物が果実であれば、果実の糖度を非侵襲で測定することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法は、光発生手段が、光を発生する光発生手順と、前記光発生手順で発生した光を一定周波数で電気的に強度変調する光変調手順と、光変調手段が、前記光変調手順で強度変調した強度変調光1を生体被検部97に向けて出射する光出射手順と、音波検出手段が、前記光出射手順において強度変調光1を照射された生体被検部97から放射される音波、すなわち光音響信号3を検出する音波検出手順と、を含む血液成分濃度測定装置制御方法であって、前記光出射手順及び前記音波検出手順を、生体被検部97と音響インピーダンスの略等しい音響整合物質の充填された容器21内で行うことを特徴とする。
このように、光出射部13と超音波検出部14との間に生体被検部97と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質及び生体被検部97が配置可能であることで、生体被検部97と超音波検出部14の間に音響整合物質を配置して、生体被検部97とその周囲である内部22との境界における境界反射を低減することができる。
また、前記光出射手順において、前述したように、光発生部11は、異なる波長λ1、λ2の2波の光を発生し、前記光変調手順において、光変調部12は、同一周波数かつ互いに逆位相となる強度変調光1に波長λ1、λ2の光の各々を強度変調することが好ましい。
さらに、前述で説明した図23から図28に示したように、前記光出射手順において、生体被検部97は強度変調光1の出射面と接して配置され、強度変調光1は生体被検部97に直接照射されることが好ましい。出射面は、図23から図28では出射窓17となっているが、出射窓17を含まない場合は光出射部13が出射面となる。生体被検部97を強度変調光1の出射面と接するように配置し、生体被検部97に強度変調光1を直接照射することによって、音響整合物質等での吸収による強度変調光1の劣化を防ぐことができる。これにより、強度変調光1を生体被検部97に効率よく照射することができるので、生体被検部97から放射される光音響信号3の強度が上がり、超音波検出部14が検出する光音響信号3の精度をさらに向上することができる。なお、上記のように生体被検部97を強度変調光1の出射面と接するように配置することは、本実施形態に適用できる他、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態及び後に説明する、第5実施形態、第6実施形態においても適用することができる。
さらに、前述で説明した図23から図28に示したように、前記音波検出手順において、光音響信号3は、生体被検部97と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質を介して検出されることが好ましい。図23から図28では、容器21の内部22に充填された音響整合物質を介して検出する例を示したが、生体被検部97と超音波検出部14との間に配置されたシリコンゴムなどの個体であってもよい。生体被検部97と略等しい音響インピーダンスの音響整合物質を介して光音響信号3を検出することで、生体被検部97とその周囲である内部22との境界反射並びに超音波検出部14に掛かる圧力及び振動を防ぐことができる。
さらに、前述で説明した図23から図28に示したように、前記光出射手順において、強度変調光1は、容器21の内壁面に配置され、強度変調光1に対して透明な出射窓17を介して生体被検部97に照射されることが好ましい。容器21が強度変調光1に対して透明な出射窓17を備えることにより、光出射部13を容器21外に配置することができるので、光出射部13の配置が容易になる。また、容器21の内壁面から強度変調光1を出射することができるので、容器21の内壁面の凹凸がなくなり、光音響信号3の反射を低減することができる。
さらに、前述で説明した図23から図28に示したように、生体被検部97は、前記強度変調光1を照射される部分が、液状、ゾル状又はゲル状の前記音響整合物質で覆われていることが好ましい。生体被検部97の強度変調光1を照射される部分が、液状、ゾル状又はゲル状の音響整合物質で覆われていることによって、生体被検部97の周囲である内部22を音響整合物質で取り囲んだ環境下で生体被検部97からの光音響信号3を検出することができる。
(実施例)
ここで、第4実施形態における具体的な実施例について説明する。
(第1実施例)
光発生手段が異なる波長の2波の光を発生し、光変調手段が同一周波数かつ互いに逆位相となる強度変調光に前記2波の光の各々を強度変調する場合の実施例について図29を用いて説明する。図29は、血液成分濃度測定装置の一例を示す回路図である。発振器51は一定周波数で駆動回路53a及び53bを駆動する。発振器51と駆動回路53bとの間には180°移相器52が配置されており、駆動回路53bは駆動回路53aと逆位相で駆動される。光発生部11aと11bは異なる波長の光を発生する。駆動回路53aは、光発生部11aの発生した光を強度変調し、強度変調光1aを出力する。駆動回路53bは、光発生部11bの発生した光を強度変調し、強度変調光1bを出力する。これにより、波長が異なり、同一周波数かつ互いに逆位相となる強度変調光1aと1bを発生することができる。この例では、発振器51、駆動回路53a、53b及び180°移相器52が、図23に示す光変調部12に相当する。
さらに、合波器55で強度変調光1a及び1bは合波され、強度変調光1として光出射部13から出力される。光出射部13から出射された強度変調光1は、生体被検部97に照射され、生体被検部97で放射した光音響信号3を超音波検出部14で検出する。超音波検出部14で検出された光音響信号3は、フィルタ57で光音響信号3が抽出され、位相検波増幅器58で増幅後、光音響信号出力端子59から出力される。
(第2実施例)
前述の図25及び図26に示した第4形態の血液成分濃度測定装置の実施例について図30及び図31を用いて説明する。図30は、血液成分濃度測定装置の縦断面図であり、血液成分濃度測定装置を人体の指先に対して適用した例を示す。図31は、H−H’横断面図である。図30及び図31において、生体被検部97を挿入する筒型の容器21の内部22は、水で満たされており、容器21の内壁には出射窓17及び超音波検出部14が内蔵され、光源チップ39bと超音波検出部14に電力を供給する電源31と、超音波検出部14の出力信号を増幅する位相検波増幅器32と、血液成分濃度を算出する信号処理器33と、台座外部に備えた表示機(不図示)に表示するための表示処理部34とが容器の台座内に装備されている。超音波検出部14と信号処理器33とは接続ケーブル35により接続される。容器21の内壁には温度調整部36が設置されており、容器21の内部22と接するようにヒータ37と温度計測部16が容器21に内蔵されている。
筒型の容器21の底部は半径5cmの4分割した球状にした。容器21の内壁に内蔵した超音波検出部14においては、超音波検出部14と検出した光音響信号3を増幅する前置増幅器38を設置した。超音波検出部14には、圧電効果を持つ結晶を用いたPZTやPVDFを用いる。超音波検出部14の表面は、水と音響インピーダンスを整合させるために整合層が形成されている。超音波検出部14の整合層には、経皮医療具でよく用いられるシリコンゴムなどを用いることで、表面での反射を9%に減らすことができた。
また、水を満たした容器21の内壁には整合層と容器21の材料との境界での反射を低減するために、超音波検出部14の表面以外の容器21の内壁には吸音材15を充填する。このような反射を防止する吸音材としては、エポキシ樹脂に金属酸化物の粉末(酸化チタンや酸化タングステン)を含む材料等を用いるのも有効である。図23に示す、光出射部13においては、光源チップ39a及び39b及びレンズ40a及び40bを用いて、2波の波長の光を発生し、偏光ビームスプリッタ41を用いて、2波の波長の光を合波し、指先部にコリメート光を、出射窓17を介して照射する。光源チップ39a及び39bには半導体レーザを用いることが、価格、サイズ、チップ寿命の面で有効である。2つの波長は、光源チップ39aを1380nmとし、光源チップ39bを1608nmとした。
レンズ40a及び40bを用いて、光源チップ39a及び39bからの強度変調光1a、1bをコリメートし、光源チップ39aとレンズ40aの距離及びレンズ材質・曲率及び光源チップ39bとレンズ40bの距離及びレンズ材質・曲率を調整することで、強度変調光1a、1bを光音響計測に適したビーム径に調整することができる。本例の場合は、2つの直径を5.0mmとした。出射窓17には、2つの波長が吸収を呈さず、傷がつきづらい材質が最適であり、例えば、石英板や光学ガラス板、サファイア板を用いた。生体被検部97と接する出射窓17の縁部には、圧電材料を用いた感圧素子が内蔵され、出射窓17に掛かる圧力を感知し、光源チップ39a及び39bに給電を開始するようにした。
温度調整部36においては、ヒータ37を容器21の内壁に内蔵し、温度計測部16で測定した温度と容器21の内部22の音響整合物質の温度の設定値との違いをモニターしつつ、ヒータ37の電流を調整する。音響整合物質の温度の設定値には、生体の体温に近い温度36℃とした。容器21の内壁には、熱伝導率の高い金属(銅、アルミ)の金属層(不図示)を設け、ヒータ37と金属層を接触させることで、効率よく音響整合物質の温度が制御できる。
(第3実施例)
前述の図27及び図28に示した第5形態の血液成分濃度測定装置の実施例について図32及び図33を用いて説明する。図32は、血液成分濃度測定装置の縦断面図であり、血液成分濃度測定装置を人体の指先に対して適用した例を示す。図33は、図32のN−N’横断面図である。筒状の容器の底部は長軸100mm、短軸50mmの半楕円球形となっている。光源チップ39a及び39bからの強度変調光1a、1bをレンズ40a又は40b、並びにビームスプリッタ41を介して光ファイバ42に導く。光ファイバ42に入射した強度変調光1は、光ファイバ42内を通じて出射窓17に導かれ、容器21の内部22に出射される。出射窓17から出射した強度変調光1が、生体被検部97に照射される。
光ファイバ42の端面にレンズ40a又は40bを置き、両者の距離から強度変調光1a及び1bの照射ビーム径を調整し、2波の強度変調光1の直径を5.0mmとした。また、照射する強度変調光1のパワーは4mWとなるように、光源チップ39a及び39bの駆動電流を調整し、発振器(不図示)により200kHzに強度変調した。出射窓17の位置は、出射窓17と音響整合物質としての水との界面が楕円の焦点の位置になるように設置し、即ち、測定時には出射窓17と生体被検部97との界面を楕円の焦点の位置とした。超音波検出部14には、水との音響整合をした市販のハイドロフォンを用い、生体被検部97の照射部と異なる楕円の焦点の位置に設置した。超音波検出部14は、ニードルハイドロフォンを採用して位置を微調整し、光音響信号が最大になる位置に設置した。
出射窓17と水平面上の内壁面とそれ以下の底面には、効率よく光音響信号3の反射をするために反射材18を充填した。反射材18には、水と化学的に反応しない安定した金属(ステンレス、アルミ)を用いた。それ以外の内壁面には、吸音材15を充填し、多重反射の影響を低減した。
(第5実施形態)
図34は、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置の回路図である。図34に示す血液成分濃度測定装置は、一定周波数で強度変調された強度変調光1を出射する光発生手段、光変調手段及び光出射手段としての励起用光源23と、音響波2を出力する音響波発生器24と、強度変調光1を照射された被検体としての生体被検部97から放射される音波、すなわち光音響信号3及び音響波発生器24から生体被検部97を透過する音響波2を検出する音波検出手段としての音響波検出器25と、を備える。さらに図34では、音響波検出器25で検出された音響波2の出力信号4から音響波2の信号強度を比較し、音響波2の強度が特定の値になるように制御信号5を出力して駆動部27を制御する制御部26と、制御信号5により励起用光源23、音響波発生器24及び音響波検出器25の位置を可変する駆動部27と、音響波発生器24及び音響波検出器25の生体被検部97の接する面に、生体被検部97と音響インピーダンスの略等しい音響結合部材28を含む。
さらに図34では、音響波発生器24の中央部に励起用光源23からの強度変調光1を透過させる透過窓29を有し、この透過窓29によって強度変調光1を透過させている例を示した。音響波発生器24は、励起用光源23からの強度変調光1のビームに近接して配置されていることが好ましい。励起用光源23からの強度変調光1のビームに近接して音響波発生器24を配置することで、光音響信号3の伝搬経路での反射/散乱を更に正確に検査することができる。また、生体被検部97に近接する位置で、生体被検部97に対して音響波2を発生させることが好ましい。光音響信号3は強度変調光1を入射された生体被検部97の表皮近傍で発生するので、光音響信号3の伝搬経路での反射/散乱を更に正確に検査することができる。また、生体被検部97に近接する位置で音響波2を発生させることにより、効率的に音響波2を生体被検部97に伝搬することができる。
図34に示す励起用光源23は、一定周波数で強度変調された強度変調光1を出射するものである。さらに励起用光源23は、濃度を測定する測定対象の吸収波長で出射するものであり、例えば測定対象がグルコースの場合は1608nmとなる。特定の波長で発光する光源素子からの光を、発振器、駆動回路、180°移相器等を用いて一定周波数で強度変調するものでもよい。特定の波長で発光する光源素子としては、例えば、気体レーザ、固体レーザ、半導体レーザを含む各種レーザ、発光ダイオードがある。さらに、強度変調光1の光路の少なくとも一部の周囲に、強度変調光1が血液成分濃度測定装置の外部へ漏洩することを防ぐ遮光フードをさらに備えてもよい。遮光フードをさらに備えることにより、検査する部分以外の生体被検部97の部分を含む血液成分濃度測定装置の外部へ強度変調光1が漏洩するのを防ぐことができる。なお、上記遮光フードは、本実施形態に適用する他、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、及び、後に説明する第6実施形態においても同様に適用することができる。
ここで、励起用光源23は、音響波発生器24と連動するよう音響波発生器24に固定されていてもよい。例えば、励起用光源23は音響波発生器24と一体化されていてもよい。励起用光源23が音響波発生器24と連動するので、測定に適した位置に自動的に励起用光源23を移動することができる。なお、本実施形態では、励起用光源23は、1つの光を出射する形態を示しているが、異なる波長λ1、λ2の2波の光を発生し、同一周波数かつ互いに逆位相となる強度変調光を出射することもできる。第1実施形態から第4実施形態で説明したように、強度変調光1として同一周波数かつ互いに逆位相となる異なる波長の2波の強度変調光を用いることにより、光音響信号の受ける水からの影響を除去することができる。
図34に示す音響波発生器24は、超音波である音響波2を発生して出力するものである。音響波発生器24の発生する超音波の周波数は、生体被検部97で発生する光音響信号3の周波数を発生するものである。例えば、略200kHzの周波数の音響波を発生するものでもよい。
さらに音響波発生器24は、出力する音響波2の周波数及び/又は強度が可変であることが好ましい。出力する音響波2の周波数が可変であれば、生体被検部97が変化して、発生する周波数が変化した光音響信号3の周波数を音響波発生器24から出力することができる。また、出力する音響波2の強度が可変であれば、音響波検出器25で検出された音響波2の強度に応じて音響波発生器24から出力する音響波2の強度を大小させることができるので、音響波検出器25で検出された強度が小さい場合でも検出された強度を比較することができる。
図35は、音響波発生器24及び音響波検出器25の一例を示す模式図であり、(a)は外観図、(b)は音響波発生器の上面図、(c)は音響波発生器の斜視図、(d)は音響波発生器の下面図である。(a)では、音響結合部材28の配置された音響波発生器24及び音響結合部材28の配置された音響波検出器25で生体被検部97を挟持した様子を示している。(b)、(c)及び(d)に示すように、音響波発生器24の一部に、強度変調光のビームを透過する透過窓29をさらに備えてもよい。透過窓29は、貫通した空孔としてもよい。また、生体被検部97と接する面に、強度変調光に対して透明な部材が配置されていてもよい。透明な部材は、音響結合部材28であってもよい。このように、透過窓29をさらに備えることで、励起用光源と生体被検部97との間に音響波発生器24を配置して、音響波発生器24の上から強度変調光を生体被検部97に照射することができる。これにより、測定に適した音響波を出力した位置と略同じ位置に強度変調光を照射できるので、音響波で確認した測定に適した伝搬経路で光音響信号が伝搬するように強度変調光を生体被検部97に照射することができる。
図34に示す音響波検出器25は、超音波である音響波2及び光音響信号3を検出するものである。光音響信号3を検出して、音響波2及び光音響信号3の音圧に比例する電気信号を出力信号4として出力するものを含む。音響波検出器25は、例えば、クリスタルマイクロフォン、セラミックマイクロフォン、セラミック超音波センサ等の圧電効果・電歪効果を用いたもの、ダイナミックマイクロフォン、リボンマイクロフォン等の電磁誘導を用いたもの、コンデンサマイクロフォン等の静電効果を用いたもの、磁歪振動子等の磁歪を用いたものが例示できる。圧電効果を持つものには、例えば周波数平坦型電歪素子(ZT)又はPVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の結晶を含むものが例示できる。音響波検出器25は、FET(電界効果トランジスタ)増幅器を内蔵するPZTを用いてもよい。
図34に示す音響結合部材28は、生体被検部97と音響インピーダンスの略等しい部材である。例えば、ゴム、樹脂等の柔軟性のある固体、液体、ゾル又はゲルがある。前記音響波発生器24又は前記音響波検出器25の少なくともいずれかの生体被検部97の接する面に配置されていることが好ましく、音響結合部材28が配置されていることで生体被検部と接触する面での反射/散乱を軽減することができる。
図34に示す駆動部27は、音響波発生器24又は音響波検出器25の少なくともいずれかの位置を可変するものである。例えば、励起用光源23と音響波発生器24は、励起用光源23の光軸と音響波発生器24の透過窓29が一致するように構造物で固定され、両者は互いの位置を保ちながら生体被検部97の周囲を回転するものでもよい。このような円周上を移動可能なものでもよい。さらに前記円周の距離が可変のものであってもよい。また、生体被検部97に接する面上を移動可能なものであってもよい。また、3次元方向に移動可能なものであってもよい。なお、図34では、具体的な駆動部27の駆動機構は省略した。
駆動部27は、音響波検出器25が固定されており、音響波発生器24が移動可能なものでもよい。また、音響波発生器24が固定されており、音響波検出器25が移動可能なものでもよい。また、音響波発生器24及び音響波検出器25が移動可能なものでもよい。さらに、駆動部27は、励起用光源23が移動可能なものでもよい。また、励起用光源23を音響波発生器24に連動させて移動させるものでもよい。励起用光源23が音響波発生器24と連動するので、測定に適した位置に自動的に励起用光源23を移動することができる。さらに、駆動部27は、制御部26からの指示により動作するものでもよい。
このような駆動部27を備えることにより、駆動部27で音響波発生器24を移動させて、生体被検部97内の部位ごとの散乱体の影響を、音響波2を用いて検査できる。これにより、光音響信号3の伝搬経路での光音響信号3の透過性を推定できる。さらに、励起用光源23と音響波発生器24を連動させて移動することによって、生体被検部97への強度変調光1の照射角又は照射位置の少なくともいずれかを変え、その都度音響波検出器25に到達する音響波発生器24からの音響波2が特定の値となるようにモニターをし、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を伝搬経路ごとに検出し、検出された最適な配置で光音響信号を検出することができる。
図34に示す制御部26は、音響波検出器25で検出された音響波2の強度が特定の値になるように駆動部27を制御するものである。例えば、音響波検出器25から出力されかつ音響波2の音圧に比例する信号強度を有する出力信号4の信号強度から音響波2の強度が特定の値になる位置を判断して、制御信号5を駆動部27へ出力するものである。特定の値は、例えば音響波検出器25で検出された音響波2のうちの最大の値である。最大の値とすることで、最も反射/散乱の少ない配置で光音響信号3を検出することができる。また、特定の値は、測定前に予め決められた値であってもよい。予め決められた値とすることで、一定の強度の音響波2を出力し、予め決められた強度で音響波2が検出されるような伝搬経路を走査して、その伝搬経路で光音響信号3を検出すれば、反射/散乱の影響の略等しい光音響信号3を検出することができる。これにより、検出された最適な配置での光音響信号3の検出が自動化できる。
信号強度の比較は、例えば2つ以上の信号強度を比較する比較回路を用いることができる。比較する出力信号4は、平滑化回路を用いて直流信号に変換された電気信号であってもよい。さらに、連続して検出された2つの信号強度を比較して、より信号強度の大きい方向へ移動させる微小振動法を用いて駆動部を制御してもよい。
なお、制御信号5は、励起用光源23、音響波検出器25のいずれを移動させるものでもよい。励起用光源23と音響波発生器24とが一体化されている場合は、制御信号5は、音響波発生器24を移動するものであってもよい。また、励起用光源23、音響波発生器24及び音響波検出器25を移動させるものであってもよい。このように、音響波検出器25で検出された音響波2の強度が特定の値になるように駆動部27を制御することによって、最適な伝搬経路で光音響信号3を検出することが自動で可能になる。
血液成分濃度測定装置の動作について図34を用いて説明する。まず、指等の生体被検部97を音響波発生器24と音響波検出器25との間に挿入した後、駆動部27で音響波発生器24と音響波検出器25を生体被検部97に接触させる。次いで、音響波発生器24から音響波2を発生させて出力する。出力された音響波2は、音響波発生器24に配置された音響結合部材28、生体被検部97及び音響波検出器25に配置された音響結合部材28を透過して、音響波検出器25で検出される。検出された音響波2は、音圧に比例した電気信号として音響波検出器25に含まれる位相検波増幅器(不図示)で信号の積算、平均化処理がされ、出力信号4が出力される。制御部26は、この出力信号4を駆動部27で設定された第1の状態での参照信号として取得する。次に、駆動部27によって生体被検部97への出力位置を変えた第2の状態を制御部26で設定し、第1の状態と同様の測定をする。このようにして、制御部26は、出力位置ごとの参照信号を取得する。所定の回数又は範囲の音響波2を検出したところで音響波発生器24の動作を停止する。
制御部26は、参照信号を検出するたびに強度を比較し、特定の値の強度が得られた位置を特定する。ここで、特定の値は、音響波検出器25で検出された音響波2のうちの最大の値とする。制御部26は、特定の値の強度が得られた位置で検出できるような制御信号5を駆動部27に出力する。駆動部27は、励起用光源23、音響波発生器24及び音響波検出器25を特定の値の強度が得られた位置で検出できるような位置に移動させる。励起用光源23は、移動された位置から強度変調光1を出射する。強度変調光1は、透過窓29を透過し、生体被検部97に照射される。生体被検部97で発生した光音響信号3を音響波検出器25が検出する。検出された光音響信号3は、前述の音響波2と同じようにして音響波検出器25から出力信号4として出力される。なお、駆動部27は、音響波発生器24から出力する音響波2の出力位置でなく、生体被検部97への出力角度を可変してもよい。上記動作により光音響信号3を検出することにより、反射/散乱の影響の最も少ない配置で光音響信号3を検出することができる。
さらに、本血液成分濃度測定装置の他の動作について図34を用いて説明する。まず、指等の生体被検部97を音響波発生器24と音響波検出器25との間に挿入した後、駆動部27で音響波発生器24と音響波検出器25を生体被検部97に接触させる。次いで、音響波発生器24から音響波2を発生させる。この音響波2は、音響波発生器24に配置された音響結合部材28、生体被検部97及び音響波検出器25に配置された音響結合部材28を透過して、音響波検出器25で検出される。検出された音響波2は、音圧に比例した電気信号として音響波検出器25に含まれる位相検波増幅器(不図示)で信号の積算、平均化処理がされ、出力信号4が出力される。制御部26は、この出力信号4を駆動部27で設定された第1の状態での参照信号として取得する。
次に、音響波発生器24の動作を停止し、励起用光源23から出射して透過窓29を透過した強度変調光1を生体被検部97に照射する。音響波検出器25で検出された光音響信号3は、前述の音響波2と同じようにして音響波検出器25から出力信号4として、出力される。この光音響信号3からの出力信号4が、第1の状態での実際信号となる。ここで、生体被検部97に対する音響波発生器24と音響波検出器25の設定が完了した後の、参照信号と実際信号の取得は電子的に瞬時に行なわれるため、体動などによる生体被検部97の位置変化はほとんど生じない。
さらに、駆動部27によって生体被検部97への照射角度、照射位置を変えた第2の状態を制御部26で設定し、第1の状態と同様の測定をする。なお、第1と第2の状態のみを例示したが、3以上の状態で上記測定を行なってもよい。このようにして逐次測定し、参照信号が特定の値となる状態に対応する実際信号を測定値として利用することができる。ここで、特定の値は測定前に予め決められた値であってもよい。予め決められた信号強度の音響波2が検出された状態に対応する実際信号を測定値として利用することにより、反射/散乱の影響の略等しい光音響信号3を検出することができる。したがって、血液成分濃度測定装置の配置の変化に伴う多数のパラメータの影響を排除した血液成分濃度を測定することができる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置制御方法は、音響波発生器24が、音響波2を2箇所以上の異なる位置から被検体としての生体被検部97に出力し、音波検出手段としての音響波検出器25が、生体被検部97を透過した音響波2の強度が特定の値になる位置を検出する最適位置検出手順と、光発生手段、光変調手段及び光出射手段としての励起用光源23が、音響波2の強度が特定の値となった位置から一定周波数で強度変調された強度変調光を生体被検部97に入射し、音響波検出器25が、生体被検部97から放射される光音響信号3を検出する光音響信号検出手順と、を順に含む。
音響波2の伝搬経路を変化させて、反射/散乱する散乱体が光音響信号に与える影響を伝搬経路ごとに検出した後に、音響波検出器25で検出された音響波2の強度が特定の値になる経路を光音響信号3が伝搬するように強度変調光1を生体被検部97に照射して光音響信号3を検出する。これにより、最適な配置で光音響信号を検出することができる。
さらに、前記最適位置検出手順において、音響波発生器24は、音響波2を生体被検部97の表面に出力することが好ましい。これにより、発生した音響波2を生体被検部97に効率的に伝搬することができる。
さらに、前記光音響信号検出手順において、励起用光源23は、音響波発生器24の一部に設けられた、強度変調光1に対して透明な透過窓を介して生体被検部97に照射することが好ましい。励起用光源23は、音響波発生器24の上から強度変調光1を生体被検部97に照射することができる。これにより、最適な音響波2の検出された音響波発生器24の位置と略同じ位置から強度変調光1を生体被検部97に照射することができる。
また、前記光出射手順において、前述したように、励起用光源23は、異なる波長λ1、λ2の2波の光を発生し、同一周波数かつ互いに逆位相となる強度変調光1に波長λ1、λ2の光の各々を強度変調して出射することが好ましい。
さらに、前記最適位置検出手順において、音響波発生器24は、強度変調光1と周波数の略等しい周波数の音響波2を出力することが好ましい。検出する光音響信号3と周波数の等しい音響波2で散乱体を検出できるので、散乱体が光音響信号3に与える影響をより正確に検査することができる。
さらに、前記最適位置検出手順において、音響波発生器24は、音響波検出器25で検出される音響波2の強度に応じて出力する音響波2の強度を大小させることが好ましい。音響波検出器25で検出された音響波2の強度に応じて音響波発生器24から出力する音響波2の強度を大小させることができるので、音響波検出器25で検出された強度が小さい場合でも検出された強度を比較することができる。
さらに、前記最適位置検出手順において、音響波発生器24及び音響波検出器25は、圧力が制御可能な押圧力で音響波発生器24及び音響波検出器25を生体被検部97に押圧して音響波2を検出することが好ましい。音響波発生器24及び音響波検出器25が生体被検部97を押圧する圧力が可変なので、音響波発生器24及び音響波検出器25が生体被検部97と接触する圧力を所定の圧力に保つことができる。これにより、生体被検部97を押圧する圧力の影響を軽減することができる。
なお、図34で示す血液成分濃度測定装置の回路図は、圧力が制御可能な押圧力で前記音響波発生器及び前記音響波検出器を前記生体被検部に押圧する押し付け手段(不図示)を含んでもよい。押し付け手段は、例えば、前記音響波発生器及び前記音響波検出器が両端に固定されたコの字形のアームを用いることができる。アームが前記音響波発生器及び前記音響波検出器の距離を可変して、音響波発生器及び音響波検出器が生体被検部を押圧する圧力を可変することができる。これにより、音響波発生器及び音響波検出器が生体被検部と接触する圧力を所定の圧力に保つことができる。
また、生体被検部97は、図34では人体の指としたが、動物、鳥、或いは、果実又は野菜等の植物のいずれの被測定物でもよい。被測定物は、流動物の流れる管や、液体、ゾル又はゲルを内蔵するボトルやタンク等の容器を含む。例えば被測定物が果実であれば、果実の糖度を非侵襲で測定することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置は、光音響信号の発生源と音響波検出器の位置関係が最適となる配置を検出することにより、骨などの散乱体が影響の少ない最適な配置で光音響信号を検出し、血液成分濃度を測定することができる。さらに、検出される音響波の信号強度が予め定められた値となる配置で光音響信号を検出することにより、血液成分濃度測定装置の配置の変化に伴う多数のパラメータの影響を排除した血液成分濃度を測定することができる。
(実施例)
ここで、第5実施形態における具体的な実施例について説明する。
(第1実施例)
本発明に係る血液成分濃度測定装置の実施例について図36を参照して説明する。図36は、本実施例に係る血液成分濃度測定装置の回路図である。音響波発生器404は発振器403に接続されている。音響波発生器404には、被検体405の上部から強度変調光1を照射するのに十分な大きさの空孔410が出射窓として空いている。音響波発生器404は発振器403の発振周波数に伴い、音響波2を発生する。音響波2は被検体405を通過し、音響結合部材406を経て音響波検出器407により検出され、音圧に比例した出力信号4に変換される。出力信号4の波形は位相検波増幅器408で観測され、出力端子409に出力される。この位相検波増幅器408は発振器403の周波数に同期した信号によりトリガーされ、出力信号4は位相検波増幅器408により信号を積算・平均して測定することができる。音響波検出器407の配置、被検体405との押し付け圧力を変えながら、音響波発生器404から発生する音響波2の検出を行なう。このように検出された音響波2の信号強度を逐次測定し、特定の値の強度になる位置に音響波検出器407を固定する。各素子を生体内の反射/散乱の影響を避けた最適な配置を実現する。
一方、発振器403は駆動電源402も接続されている。駆動電源402は発振器403の発振周波数に伴った矩形状の励起電流を半導体レーザ素子401に供給する。
各素子の配置の校正を行った後、半導体レーザ素子401に発振器403の周波数で強度変調を行なって強度変調光1を発生させる。強度変調光1は音響波発生器404の中心に空いている空孔410より被検体405に照射される。強度変調光1は被検体405内に光音響信号3を発生させる。光音響信号3は音響結合部材406を経て音響波検出器407により検出され、音圧に比例した出力信号4に変換される。出力信号4の波形は位相検波増幅器408により観測される。この位相検波増幅器408は発振器403の周波数に同期した信号によりトリガーされ、音圧に比例した出力信号4は位相検波増幅器408により積算・平均して測定することができる。測定した信号は出力端子409から外部へと出力される。
上記構成において、音響波発生器404は直径が30mm程度の大きさで、中心に半径10mmの大きさの空孔を有している。音響波発生器は被検体405に超音波ジェルを介して密着している。発生する音響波2は200kHzであり、発振器403により制御されている。
音響波検出器407は、FET(電界効果トランジスタ)増幅器を内蔵する周波数平坦型電歪素子(PZT)であり、また音響結合部材406は超音波ジェルを用いた。上記の構成において、時定数を0.1秒に設定した位相検波増幅器408の出力端子409には、音響波2に対応する出力信号4としてVr=1〜15mVの信号強度が得られた。このため最適な配置としてVr=15mVを検出した位置に固定した。
一方、半導体レーザ素子401の波長は、1608nmに設定されている。この波長はグルコースの吸収波長に対応している。強度変調光1が強度変調される変調周波数は200kHzに設定されており、出力は5.0mWである。
被検体405に照射される光のビーム径は、ビームの照射されている被検体405の位置から音響波検出器407までの距離を10mmとして、フレネル数が0.1となるように2.7mmと設定されている。
上記の状態において、半導体レーザ素子401の出力光の皮膚への照射強度は0.22mW/mm2であり、最大許容値を2倍以上下回る安全なレベルである。しかし、測定中、又は被検体405が置かれていない際に音響結合部材406から反射又は散乱した光が、外部に漏洩しないように、被検体405の配置されている位置に遮光フード(不図示)を設置するとよい。
音響波検出器407はFET(電界効果トランジスタ)増幅器を内蔵する周波数平坦型電歪素子(PZT)であり、また、音響結合部材406には超音波ジェルを用いた。上記の構成において、半導体レーザ素子401の出力する強度変調光1のみを照射した場合、時定数を0.1秒に設定した位相検波増幅器408の出力端子409には、光音響信号3に対応する出力信号4としてVr=20μVの信号強度が得られた。
以上のように光音響測定を行なう前に、音響波発生器404により発生させた音響波2を参照信号として用い配置の校正を行い、その後、半導体レーザ素子401により光音響信号3の音圧に比例した出力信号4を測定し、被検体405内のグルコースの吸収に対応する光音響信号3の測定を行なった。
(第2実施例)
図36を参照して説明する。音響波発生器は、発振器に接続されている。音響波発生器404には、被検体405の上部から励起光を照射するのに十分な大きさの空孔が中心に空いている。
音響波発生器404は発振器403の発振周波数に伴い、音響波2を発生する。音響波2は被検体405を通過し、音響結合部材406を経て音響波検出器407により検出され、音圧に比例した出力信号4に変換される。出力信号4の波形は位相検波増幅器408により信号を積算・平均して測定することができる。ここで音響波検出器407の配置、被検体405との押し付け圧力を変えながら、音響波発生器404からの発生する音響波2の検出を行なう。このように検出出力強度を逐次測定し、特定の値の強度になる位置に音響波検出器407を固定する。各素子を生体内の反射/散乱の影響を避けて最適な配置を実現する。
一方、駆動電源402は発振器403も接続されている。駆動電源402は区形状の励起電流を半導体レーザ素子401に供給する。
各素子の配置の校正を行った後、半導体レーザ素子401に発振器403の周波数で強度変調を行なって強度変調光1を発生させる。強度変調光1は音響波発生器404の中心に空いている空孔410より被検体405照射される。強度変調光1は被検体405内に光音響信号3を発生させる。光音響信号3は音響結合部材406を経て音響波検出器407により検出され、音圧に比例した出力信号4に変換される。出力信号4の波形は位相検波増幅器408により観測される。この位相検波増幅器408は発振器403の周波数に同期した信号によりトリガーされ、音圧に比例した出力信号4は位相検波増幅器408により積算・平均して測定することができる。測定した出力信号4は出力端子409により外部へと出力される。
上記構成において、音響波発生器404は直径が30mm程度の大きさで、中心に半径10mmの大きさの空孔410を有している。音響波発生器404は被検体405に超音波ジェルを介して密着している。発生する音響波2は200kHzであり、発振器403により制御されている。
音響波検出器407はFET(電界効果トランジスタ)増幅器を内蔵する周波数平坦型電歪素子(PZT)であり、また音響結合部材406は超音波ジェルを用いた。上記の構成において、時定数を0.1秒に設定した位相検波増幅器408の出力端子409には、音響波2に対応する出力信号4としてVr=1〜15mVの信号強度が得られた。このため最適な配置としてVr=15mVを検出した位置に固定した。
一方、半導体レーザ素子401の波長は、1608nmに設定されている。この波長はグルコースの吸収波長に対応している。強度変調周波数は200kHzに設定されており、出力は5.0mWである。
被検体405に照射される強度変調光1のビーム径は、ビームの照射されている被検体405の位置から音響波検出器407までの距離を10mmとして、フレネル数が0.1となるように2.7mmと設定されている。
上記の状態において、半導体レーザ素子401の出力光の被検体405の皮膚への照射強度は0.22mW/mm2であり、最大許容値を2倍以上下回る安全なレベルである。しかし、測定中、又は被検体405が置かれていない際に音響結合部材406から反射又は散乱した光が、外部に漏洩しないように、被検体405に遮光フード(不図示)を設置するとよい。
音響波検出器407はFET(電界効果トランジスタ)増幅器を内蔵する周波数平坦型電歪素子(PZT)であり、また、音響結合部材406は超音波ジェルを用いた。上記の構成において、半導体レーザ素子401の出力する強度変調光1のみを照射した場合、時定数を0.1秒に設定した位相検波増幅器408の出力端子409には、光音響信号3に対応する出力信号4としてVr=20μVの信号強度が得られた。
上記測定を行なった後、一度測定装置を外し、再度同様の測定を行なった。まず音響波検出器407の配置、被検体405との押し付け圧力を変えながら、音響波発生器404から発生する音響波2の検出を行なう。時定数を0.1秒に設定した位相検波増幅器408の出力端子409には、音響波2に対応する出力信号4として、Vr=1〜15mVの信号強度が得られた。このため最適な配置としてVr=15mVを検出した位置に固定した。
次に、上記の固定した位置において、半導体レーザ素子401により発生した光音響信号3を位相検波増幅器408により測定したところ、Vr=20μVの信号強度が得られた。
以上のように、再測定を行なう際に、音響波発生器404により発生させた音響波2を参照信号として用い配置の校正を行なうことで、光音響信号3の測定に対して、再現性よく測定を行なうことができる。
(第6実施形態)
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置は、異なる波長の2波の光を発生する光発生手段と、前記異なる波長の2波の光の各々を同一周波数で逆位相の信号により電気的に強度変調する光変調手段と、前記強度変調された異なる波長の2波の光を1の光束に合波し生体に向けて出射する光出射手段と、前記出射された光により生体内に発生する音波を検出する音波検出手段と、少なくとも前記光出射手段及び前記音波検出手段を搭載し、生体の一部を囲んで装着される環状部分を有する装身手段と、を備えた血液成分濃度測定装置であって、前記光出射手段及び前記音波検出手段は、それぞれ前記装身手段の環状部分の内側の生体に接する部分に配置されていることを特徴とする血液成分濃度測定装置である。本実施形態に係る装身手段は、前述の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、及び第5実施形態に係る血液成分濃度測定装置においても適用することができる。
特に、本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置においては、前記光発生手段は、1波の光の波長を血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定することが有効である。
図37を参照して、本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置における測定系の基本構成について説明する。図37は、本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置における測定系の基本構成を示している。ここで、図37には後述する実装に関わる部分、および電源などの通常の技術により実現できる部分は表示していない。
図37において、光発生手段の一部としての第1の光源101は、光変調手段の一部としての駆動回路104により、光変調手段の一部としての発振器103に同期して強度変調されている。
一方、光発生手段の一部としての第2の光源105は、光変調手段の一部としての駆動回路108により、同じく上記発振器103に同期して強度変調されている。但し、駆動回路108には、発振器103の出力が、光変調手段の一部としての180°移相回路107を経て給電され、その結果、第2の光源105は、上記第1の光源101に対して、180°位相が変化した信号により強度変調されるように構成されている。
ここで、図37に示す第1の光源101および第2の光源105の各々の波長は、1波の光の波長を血液成分が特徴的な吸収を呈する波長に設定し、他の1波の光の波長を水が前記1波の光の波長におけるのと相等しい吸収を呈する波長に設定する。
ここで、一例として、測定対象とする血液成分をグルコース、すなわち血糖値の測定の場合、第1の光源101の波長(λ1)を1608nm、第2の光源105の波長λ2を1381nmと設定するのが有効である。さらに長波長の波長帯の場合は、第1の光源101の波長(λ1)を2126nm、第2の光源105の波長(λ2)を1837nmあるいは2294nmと設定するのも有効である。図7に第1の光源101の波長(λ1)と第2の光源105の波長(λ2)の関係を示す。
第1の光源101および第2の光源105は各々異なる波長の光を出力し、各々の出力する光は、光出射手段としての合波器109により合波され、1本の光束として、生体被検部110に向けて出射される。出射された第1の光源101および第2の光源105の各々が出力する光により生体被検部110内に発生される音波、すなわち光音響信号は、音波検出手段の一部としての超音波検出器113により検出され、光音響信号の音圧に比例した電気信号に変換される。前記電気信号は、上記発振器103に同期した音波検出手段の一部としての位相検波増幅器114により同期検波され、音圧に比例する電気信号が出力端子115に出力される。
ここで、出力端子115に出力される信号の強度は第1の光源101および第2の光源105の各々が出力する光が生体被検部110内の成分により吸収された量に比例するので、前記信号の強度は生体被検部110内の成分の量に比例する。従って、出力端子115に出力される前記信号の強度の測定値から、血液成分濃度算定手段(図示せず)が生体被検部110内の血液中の測定対象の成分の量を算定する。
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置は第1の光源101および第2の光源105の出力する異なる波長の2波の光を同一周期、すなわち同一周波数の信号で強度変調しているので、超音波検出器113の周波数特性の不均一の影響を受けない特徴があり、この点が既存技術より優れている点である。
さらに、本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置において、前記光変調手段は生体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調する光変調手段とすることも有効である。
上記のように、異なる波長の2波の光の各々を生体内に発生する音波の検出に関わる共鳴周波数と同一の周波数で変調することにより、生体内に発生する音波を高感度に検出できる。
一方、従来技術において問題となる光音響信号の測定値に存在する非線形的な吸収係数依存性は、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置においては等しい吸収係数を与える複数の波長の光を用いて測定することにより解決できることを、以下に説明する。
波長λ1および波長λ2の各々光に対して、背景の吸収係数α1 (b)、α2 (b)及び測定対象とする血液成分のモル吸収α1 (0)、α2 (0)が既知の場合、各波長における光音響信号の測定値s1およびs2を含む連立方程式は数式(1)で表される。
数式(1)を解いて未知の血液成分濃度Mを求める。ここで、Cは、変化し制御或は予想困難な係数、即ち、音響的な結合状態、超音波検出器の感度、前記光出射手段と前記音波検出手段の間の距離(以下rと定義する)、比熱、熱膨張係数、音速、変調周波数、更に、吸収係数にも依存する未知乗数である。
数式(1)の1行目と2行目のCに差異が生ずるならば、それは、照射光に関係する量、即ち、吸収係数による差異以外にはあり得ない。ここで、数式(1)の各行の括弧の中、即ち吸収係数が互いに等しくなるように、波長λ1および波長λ2の組合せを選べば、吸収係数が等しくなり、1行目と2行目のCは等しい。しかしこれを厳密に行うと、波長λ1および波長λ2の組合せが、未知の血液成分濃度Mに依存することになるため、不便である。
ここで、数式(1)の吸収係数(各行括弧中)に占める比率は、背景(αi (b)、i=1、2)の方が、血液成分濃度Mを含む項(Mαi (0))よりも著しく大きい。そこで、各行の吸収係数を正確に等しくする代わりに、背景、αi (b)の吸収係数を等しくすれば十分である。即ち、異なる波長λ1および波長λ2の2波の光は、各々における背景の吸収係数、α1 (b)、α2 (b)が互いに等しくなるように選べば良い。このように1行目と2行目のCを等値できれば、それを未知定数として消去し、測定対象の血液成分濃度Mは数式(4)で表される。数式(4)の後段の変形にはs1≒s2という性質を用いている。
ここで、数式(4)を見ると、分母に波長λ1および波長λ2における測定対象の血液成分の吸収係数の差が現れている。この差が大きい方が、光音響信号の差信号s1−s2が大きく、その測定が容易となる。この差を最大とするには、測定対象の成分の吸収係数α1 (0)が極大となる波長を波長λ1に選び、かつ、α2 (0)=0即ち、測定対象の成分が吸収特性を示さない波長に波長λ2を選ぶのが良い。ここで、前の条件から、この第2の波長λ2は、α2 (b)=α1 (b)、即ち、背景の吸収係数が第1の波長λ1の吸収係数に等しくなければならない。
さらに、数式(4)において、光音響信号s1は、光音響信号s2との差s1−s2の形でのみ登場している。今、測定対象の成分としてグルコースを例にとると、上述したように、2つの光音響信号s1および光音響信号s2の強度には、0.1%以下の差異しかない。
しかし、数式(4)の分母の光音響信号s2には5%程度の精度があれば十分である。従って、2つの光音響信号s1および光音響信号s2を逐次個別に測定するよりも、それらの差s1−s2を測定しこの測定値を、個別に測定した光音響信号s2で除する方が、格段に容易に精度が保てる。従って、本実施形態に係る血液成分濃度測定装置においては、2つの波長λ1および波長λ2の光を、互いに逆相に強度変調して出射することにより、生体内で光音響信号s1および光音響信号s2が相互に重畳されて生じる光音響信号の差信号s1−s2を測定する。
以上説明したように、血液成分濃度を測定する場合、異なる特定の波長の2波の光を用いて、前記異なる特定の波長の2波の光が生体内に発生する光音響信号を各々個別に測定するよりも、前記光音響信号の差信号を測定し、さらに、所定の一方の光音響信号を零として、他方の光音響信号を測定して、これらを数式(4)により演算して、容易に血液成分濃度を測定できることが分かる。
次に、本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置の実装構造について説明する。本実施形態に係る血液成分濃度測定装置の装身手段の構成を図38に示す。図38に示す装身手段としての装身部130において、被検体としての生体131を囲む環状の形状を有する環状支持体132の内側には少なくとも光出射手段としての光照射部133および音波検出手段としての超音波検出部135が搭載されている。図38において、光照射部133および超音波検出部135は、環状支持体132の内側の生体131に接する面に搭載され、光照射部133の光照射部分と超音波検出部135の超音波受信部分は生体131を挟んで対向する位置に搭載される。
上記のような構造の装身部130は、生体131を確実に保持し、生体131の動きおよび形の変化を最小限にとどめる効果を有し、光照射部133と超音波検出部135の間の生体131の厚さを一定に保ち、かつ、超音波検出部135の周辺の生体131の形の変化も抑制し、超音波検出部135の周辺の生体131からの超音波の反射の変化を減少させるので、血液成分濃度を正確に測定できる。
上記のように光照射部133と超音波検出部135は装身部130の環状部分の略対向する位置に配置することにより、光照射部133が照射した光により生体131内に発生した超音波は超音波検出部135により効率よく検出される。
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置において、前記音波検出手段の配置箇所を含んで、前記装身手段の環状部分の内側の生体に接する部分の少なくとも半周にわたる部分に該生体に近似する音響インピーダンスを有する緩衝材の層を配置することが好ましい。本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置の装身手段の構成は、例えば図39に示すように、超音波検出部135の配置箇所を含んで、装身部130の環状部分の内側の生体に接する部分の少なくとも半周にわたる部分に該生体に近似する音響インピーダンスを有する緩衝材136の層を配置する。
ここで、仮にZ1およびZ2の音響インピーダンスを有する媒質の界面に、音波が入射する際、一般に、入射した音波は透過波と反射波とに分かれて伝搬する。後者の音圧の入射波のそれに対する比率は、圧力反射率と称され、界面に垂直に音波が入射する場合、数式(4)で表されることが知られている。
今、生体131の音響インピーダンスZ1は、水に近似することが知られているので、概略1.48MRays(但し、1MRays=106kg/m2・s)である。他方、生体131の表面が通常接している空気は、音響インピーダンス4.08×104MRaysであり、生体131に対して3桁を越える開きがある。その結果、生体131の表面においては、音波が垂直に入射した場合、圧力反射率が99.9%を越え、斜めに入射する場合の反射率はさらに大きい。
このような反射は、生体131に近似する音響インピーダンスを有する緩衝材136を用いて、音響整合をとることで減少させることができる。例えば、生体131に無害であり、体内埋め込み型の医療具にも用いられているシリコンゴムの場合、典型的な音響インピーダンスが1.24MRであり、シリコンゴムを緩衝材136として使用することにより生体131との界面での圧力反射率を9%程度にまで減じることができる。
また、本実施形態に係る前記非侵襲血液成分濃度測定装置においては、波長1μm以長の光を照射するが、この場合、生体131の大部分を占める水分は強い吸収を呈するために、光照射部133からの光により照射された部分の生体131の直下の皮膚表面の近くで局部的に音源が形成され、発生する超音波は球面波と見なせる。
さらに後述するように、光照射部133が照射する光のビーム径は直径約5mmに拡大して照射するので、照射光により形成される音源は円盤状を呈し、この円盤の厚みは、生体131の吸収長α−1によって決まり、上述の波長約1.6μmの光照射においては、約1.6mmとなり、波長約2.1μmの光照射においては、約0.4mmである。
音源がこのような薄い円盤上を呈するために、発生する超音波に指向性が生じ、生体131内に発生する超音波は超音波検出部135の方向へ集中して伝搬する。従って、緩衝材136は超音波検出部135の配置箇所を含んで、装身部130の環状部分の内側の生体に接する部分の少なくとも半周にわたる部分に設置するのが有効である。
上記のように、超音波検出部135の配置箇所を含んで、装身部130の環状部分の内側の生体131に接する部分の少なくとも半周にわたる部分に、生体131に近似する音響インピーダンスを有する緩衝材136の層を配置することにより、光照射部133が照射した光により生体131内に発生した超音波のうち超音波検出部135に直接到達する分は超音波検出部135により効率よく検出され、かつ生体131内で発生した超音波で生体131と装身部130の環状支持体132の内側の界面で多重反射した後に超音波検出部135に受信され雑音となる超音波の量を減少させることにより、より正確に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置において、前記緩衝材の層と前記装身手段の環状部分の内側の面の間に吸音材を充填することもできる。本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置の前記装身手段の構成は図40に示すように、緩衝材136と装身部130の環状部分の環状支持体132の内側の面の間に吸音材137を充填する。ここで、吸音材137は、超音波を良く吸収する材料を使用する。例えば、緩衝材136としてシリコンゴムを使用する場合、仮に吸音材137が充填されていない場合を考えると、緩衝材136の中を進んできた超音波は、例えば金属で作成された環状支持体132に達すると、シリコンゴムと金属の間は約60%の圧力反射率を呈するため、超音波は環状支持体132の表面で反射され、緩衝材136のシリコンゴム中を逆行して、再び生体131に到達する。
上記のような反射を防止するための吸音材137としては、エポキシ樹脂に金属酸化物の粉末(酸化チタンや酸化タングステン)を含む材料などを用いるのも有効である。
上記のように、緩衝材136と装身部130の環状部分の環状支持体132の内側の面の間に吸音材137を充填することにより、光照射部133が照射した光により生体131内に発生した超音波が緩衝材136と環状支持体132の界面により反射した後に超音波検出部135により検出され雑音となる超音波の量を減少させることにより、より正確に血液成分濃度を測定できる。
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置において、前記光発生手段は、複数の半導体レーザ素子によって異なる波長の2波の光を発生する前記光発生手段とすることもできる。
上記のように、前記光発生手段は、複数の半導体レーザ素子によって異なる波長の2波の光を発生することにより、本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置は装置の大幅な小型、軽量化が可能となる。
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置において、前記光出射手段は前記光発生手段の発生した光のビーム径を拡大するビーム径拡大器を備えることが好ましい。
上記のように、前記光出射手段は前記光発生手段の発生した光のビーム径を拡大するビーム径拡大器を備えることにより、前記生体に出射する光ビームを拡大し、前記生体に悪影響を与えることなく、比較的に強い光を出射することが可能となり、さらに正確に該生体の血液成分濃度を測定することができる。
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置において、前記装身手段が人体の手指に装着される指輪であり、かつ、前記光出射手段が前記手指の手背側に配置され、前記音波検出手段が前記手指の手掌側に配置されていること前記装身手段とすることもできる。
上記のように、前記装身手段が人体の手指に装着される指輪であり、かつ、前記光出射手段を前記手指の手背側に配置し、前記音波検出手段を前記手指の手掌側に配置することにより、前記音波検出手段は前記手指の比較的柔らかい皮膚と容易に接触し、前記音波検出手段は該手指内に発生する超音波を効率よく測定できるので、一層正確に、血液成分濃度を測定できる。さらに前記光出射手段と前記音波検出手段を指輪の内面に実装することにより、日常生活に支障なく、簡易かつ連続的に該人体の血液成分濃度を測定できる。
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置において、前記装身手段が人体の腕に装着される腕輪であり、かつ前記光出射手段を手掌側に配置し、前記音波検出手段を手背側に配置する前記装身手段とすることもできる。
上記のように、前記装身手段が人体の腕に装着される腕輪であり、かつ前記光出射手段を手掌側に配置し、前記音波検出手段を手背側に配置することにより、前記音波検出手段は前記腕の比較的柔らかい皮膚と容易に接触し、前記音波検出手段は該腕内に発生する超音波を効率よく測定できるので、一層正確に、血液成分濃度を測定できる。さらに前記光出射手段と前記音波検出手段を腕輪の内面に実装することにより、日常生活に支障なく、簡易かつ連続的に該人体の血液成分濃度を測定できる。
(実施例)
ここで、第6実施形態における具体的な実施例について説明する。
(第1実施例)
本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置を人体に対して適用し、前記装身手段を指輪として実施した実施例を図41に示す。
図41は本実施形態に係る血液成分濃度測定装置の第1実施例である手への装着形態を示す。図41において、被検体としての生体193に装着される指輪型の前記装身手段としての装身部207には、前記光出射手段及び前記音波検出手段が内蔵され、前記光出射手段と前記音波検出手段に電力を供給する電源、並びに、前記音波検出手段の一部としての前記超音波検出器の出力電気信号を増幅する前記音波検出手段の一部としての位相検波増幅器および血液成分濃度の検出手段は、腕時計型の表示部221内に装備されている。装身部207と表示部221の間は接続ケーブル210により接続される。
表示部221の外側には、測定した血液成分濃度の表示器が備わり、また、少なくとも1つの測定開始を指示するための釦が装備される。さらに、時計機能、測定濃度データの記憶および呼出機能、記憶した測定データの外部機器への通信機能の装備も有効である。
上記接続ケーブル210は、手の動きの支障とならないように、伸縮性を備え、更に、手背における指伸筋の腱の問に沿うことが望ましい。なお装身部207は、図41においては左手第2指に装着されているが、何れの手、何れの指にでも装着できるように形成できることはいうまでもない。
図42は、指輪型の装身部207を指から取り外した状態を示す図であり、手指を通す指輪の枠222における接続ケーブル210の設置状況を示している。上記の接続ケーブル210を手指の腱問に保持するために、接続ケーブル210の装身部207の引出し部が、指輪のビゼル(bezel)の頂を外して、設けてある。枠222の幅の中央、すなわち図42の中に示すa−aの破線に沿った切断面を、図43に示す。
図43の装身部207の断面を示す図において、装着時に指の手背側(図の上方)に位置する指輪のビゼルに相当する部分に、前記光発生手段の一部としての光源チップ314および前記光出射手段を構成する照射窓313、反射鏡316、凹面鏡317などが設置され、一方、指の手掌側(図の下方)に位置する部分に前記音波検出手段の一部としての超音波検出器305が設置されている。
超音波検出器305の出力インピーダンスは、一般に高インピーダンスであるため出力を直接、接続ケーブル310によって図41に示す表示部221まで導くのは、雑音の観点から得策でない。それ故、超音波検出器305の直近にインピーダンスを変換する前置増幅器312を設置し、超音波検出器305の出力端子と接続し、超音波検出器305の出力インピーダンスを低く変換して、前置増幅器312の出力信号を図41に示す接続ケーブル210を経て、表示部221に供給している。
図43に示すように超音波検出器305の両側には、前述した超音波の反射対策が施される。即ち、装身部207の内側の面の超音波検出器305の直上を含むおよそ半周にわたって、緩衝材306としてのシリコンゴムを設置し、また緩衝材306と枠311の問は、吸音材307によって充填されている。
前記光発生手段としての光源チップ314としては、半導体レーザ素子を用いるのが良い。半導体レ一ザは、小型で、かつ長寿命であることに加えて、注入電流を変調することにより、前記光音響法に必要な強度変調動作が素子に対して直接行えるという利点を有するからである。
光源チップ314として半導体レーザ素子を使用した場合の出射光束315は、通常、拡散光束であり、出射直後のビーム径は、光音響法に適したビーム径よりも遥かに小さい。それ故、ビーム径を拡大させた後に、生体への照射光304を得る必要がある。本実施例では、ビーム径を拡大させるための光学系を、反射鏡316および凹面鏡317よって構成している。即ち、出射全角46°(開口数NA=0.39)を持つ出射光束315に対し、光源チップ314の出射端面から1.2mmの距離に反射鏡316が設置され、出射光束315を上方の凹面鏡317に向けて反射する。凹面鏡317は、反射鏡316から4.7mm離して保持され、反射鏡316からの入射光束を平行光束に変換して図面下方の照射窓313方向に反射する。
本実施例では、凹面鏡317の焦点距離、即ち曲率半径の1/2が、光源チップ314の出射端から反射鏡316までの光路と、当該反射鏡316から凹面鏡317までの光路との和に等しく設定されているので、5.0mmの直径を有する照射光304が、照射窓313を経て得られる。
照射窓313は、光源チップ314、反射鏡316および凹面鏡317の保護と、光源チップ314および反射鏡316を高い寸法精度を以て取付ける座板を兼ねている。照射窓313の材料としては照射光304対して透明で、かつ、傷に強い性質が要求されるので、本実施例では、サファイア板を使用している。
凹面鏡317の裏側は、装身部207において指輪のビゼルの頂に相当する部分にあり、指輪の装飾品としての通常用途においては、中心的役割を担う箇所である。本実施例において、この凹面鏡317の裏側は、装飾の目的に利用できる。
照射窓313と凹面鏡317は、相対位置を保って、枠311に固定される必要がある。そのため、枠311には、照射窓313と凹面鏡317の位置合せのための切掛けが設けられる。更に枠311は、電気配線の布線のための中空部分(布線腔)、および、吸音材307と緩衝材306の貼付の為の溝を備える。このような構造を有する枠311は、宝飾業における鋳型(キャステイング)の手法により、通常の指輪の台と同様にして十分作成可能である。
図44に、光源チップ314の実装形態を示す。本実施例においては、波長の互いに異なる2個の半導体レーザ素子を使用している。具体的には図44に示す基板321上にMEMS技術を用いて形成した。図44に示す光源チップ314の概略の寸法は、1mm×1.5mm×(厚さ)0.6mmであり、指輪型の前記装身手段として容易に実装可能な大きさである。
図44において、第1の半導体レーザ318はフッ化ポリイミドによる光導波路322の主枝の端面に設置され、光導波路322の主枝中にレーザ発振光を出力する。一方、第2の半導体レーザ319は、同じくフッ化ポリイミドによる光導波路322の側枝の端面に設置され、光導波路322の側枝中にレーザ発振光を出力する。これら2個の半導体レーザ素子には、各々の電極パッド320を介して、駆動電流が供給される。
光導波路322の主枝と側枝の交点には、前記光出射手段としての合波器323が形成されている。合波器323は、フッ化ポリイミドの除去された間隙であり、多重干渉効果、所謂、エタロン効果により、第1の半導体レーザ318の発振波長に対しては透過、第2の半導体レーザ319の発振波長に対しては反射を呈するように作成されている。
上記の構成により、波長の互いに異なる2個の半導体レーザ素子の出力光が合波され、光導波路322の中を伝搬した後、光導波路322の半導体レーザ素子が設置されていない方の端面から出射光束315が出射される。
図45に、指輪型の前記装身手段の、図42に示すa−aにおける断面図を示す。図45においては、超音波検出器305が埋設されている周辺が拡大して示されている。超音波検出器305としては、PZTあるいはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの公知の圧電超音波検出素子を使用できる。但し、PZTは音響インピーダンスが高くインピーダンス整合層の付加の必要があり、一方、PVDFは音響インピーダンスの整合には有利であるが出力電圧、即ち感度が低い。本実施例においては、これらPZTあるいはPVDF替えて、MEMS技術により形成したMEMS型超音波検出素子を用いた。
図45において、超音波検出器305は、振動膜324および固定電極325により構成される。
上述した音響整合用の緩衝材306は、超音波検出器305において、振動膜324に接している。このようなMEMS型の超音波検出器305の、固定電極325側の背圧を逃すために、固定電極325の背後の枠311に設けられた細経穴を経て大気圧に通じる流路が設けられている。超音波検出器305は、振動膜324と固定電極325により形成される平板容量(キャパシター)における、振動膜324の変位による容量変化によって、超音波を検出する。従って、超音波検出器305に接続される前置増幅器312は、前記のインピーダンス変換機能に加えて、超音波検出器305の平板容量に一定電荷を供給する機能が付加されている。
前置増幅器312は、図43に示す接続ケーブル310までの配線のための布線腔326と共に、吸音材307の背後の枠311に設置されている。このような構成は、前置増幅器312および布線腔326により、超音波が反射されるのを防止する配慮である。
図41において、指輪型の装身部207と表示部221の各々に内蔵する素子あるいは回路、およびそれらの間の接続方法については、本実施例に示した以外にも、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、種々考案し得る。例えば、前記接続ケーブル内に光ファイバ(ケーブルの伸縮性を保つために、曲げ半径の小さいものが良い)を含め、光源チップ314を表示部221に設置し、指輪型の装身部207の前記光出射手段としては、ビーム拡大のための光学系のみを残すこともできる。
一方、指輪型の装身部207に電池を内蔵し、光源の駆動電源や位相検波増幅器までを含めた携帯型非侵襲血液成分濃度測定装置に関わる全要素を、指輪型の装身部207に実装することも可能である。この場合、指輪型の装身部207と表示部221の間の血液成分濃度計測値の通信は、接続ケーブル無しに無線によって行うこともできる。
(第2実施例)
本実施形態に係る血液成分濃度測定装置を人体に対して適用し、手首に装着する腕環型の前記装身手段として実施した構成を図46に示す。
図46は本実施形態に係る前記血液成分濃度測定装置を、腕環型の前記装身手段として、手首へ装着した状態を示す。図46に示す前記血液成分濃度測定装置の腕環型の前記装身手段の手首への装着形態において、被検体としての生体400に装着される腕環型の表示部419は、実施例1において説明した腕時計型の表示部221と指輪型の装身部207が一体化した構成である。
表示部419は音波検出手段としての超音波検出器を内蔵し、更に、前記光発生手段、前記光変調手段、前記光出射手段も内蔵した場合であり、表示部419の外側には、血液成分濃度の測定結果の表示器が備わり、また、少なくとも1つの測定開始を指示するための釦が装備される。さらに表示部419へ付加する機能は、前述の実施例1と同様である。
図47は、腕環型の前記装身手段を手首から取り外した状態を示した図であり、手首を囲む表示部419、側帯428および前記光出射手段としての光照射部421により構成している。腕環型の前記装身手段は、通例の腕時計と類似した外観を有するが、その装着方法においては相異している。即ち、通例の腕時計の場合は、一般に着脱のためのバックル等が装備される両側帯(腕時計にあっては時計バンドと称される)の重なり部分が、腕環型の前記装身手段の場合は光照射部421によって占められている。従って、このような腕環型の前記装身手段には、別種の着脱機構が必要となる。
本実施例においては、腕環型の前記装身手段の着脱機構として、図47に示す挿入片429、開口430および着脱釦431から構成されるシートベルトに類似の着脱機構を装備している。
本実施例において、音波検出手段としての超音波検出器は、表示部419の裏蓋に埋設されている。前記超音波検出器としては、前述の第1実施例と同様に、PZT,PVDFあるいはMEMS型などの超音波検出素子を使用できる。
前記超音波検出器、およびその両側における生体との接触面には、緩衝材418が設置され、この緩衝材418の内側には、前記吸音材が充填されている。
本実施例においては、腕環型の前記装身手段は前記超音波検出器が手背側に接し、光照射部421が手掌側に接するように装着する。その理由は、手首の手掌側には、長掌筋の腱、尺側皮(正中)静脈等による凹凸があり、手首の手掌側においては、前記超音波検出器を皮膚に密着させ、良好な音響結合を期待し難いからである。
光照射部421を側帯428の方向へ向かう中央線に沿った切断面を、図48に示す。図48は図47に示す腕環型の前記装身手段の光照射部421の断面を示す図であり、上記の第1実施例と同様の前記光発生手段の一部としての光源チップ414の出射光束415のビーム径を拡大した後に、生体への出射光417を得ている。
本実施例では、ビーム径拡大のための光学系を、反射鏡416およびレンズ432により構成している。即ち、出射全角46°(開口数NA=0.39)を持つ出射光束415に対し、光源チップ414の出射端から2.7mmの距離に反射鏡416が設置され、出射光束415をレンズ432の方向へ反射する。レンズ432は、反射鏡416から3.2mm離して保持され、反射鏡416からの入射光束を平行光束に変換して図面の上方、照射窓413の方向に照射する。
本実施例では、レンズ432の焦点距離が、丁度光源チップ414の出射端から反射鏡416までの光路と当該反射鏡416からレンズ432までの光路との和に等しく設定されているので、5.0mmのビーム直径を有する出射光417が、照射窓413を経て得られる。照射窓413は、光照射部421の内部の部品の保護のため設けられ、出射光417に対して透明で、かつ傷つき難い性質が要求される。光源チップ414および反射鏡416は、高い寸法精度を以て光源座板433に取付けられている。
本実施形態に係る腕環型の前記装身手段としては、以上の実施例で例示した他にも、上腕部に装着する腕環(アームレット)、躁に装着するアンクレット、さらに首に装着する首輪等(但し、後二者としては密着性の良い形態のもの)を、本実施形態の精神を逸脱しない範囲で選択して実施できることは、言うまでもない。