JP4999764B2 - ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
近年、各種部品の軽量化が急速に進んでおり、材質も金属から樹脂への代替が進んでいる。その一例として、デジタルカメラ等のデジタル光学機器のシャッター部品の樹脂化を挙げる事ができる。このシャッター部品に要求される特性としては、光遮光性が挙げられる。
熱可塑性樹脂に光遮光性を持たせる方法としては、カーボンブラック等の顔料を熱可塑性樹脂に添加し溶融混練する手法が取られている。しかしながら、熱可塑性樹脂がポリアセタール樹脂である場合、カーボンブラックは結晶化核剤として働くため、ポリアセタール樹脂の結晶化速度を早めてしまい、ゲートシールが速まることにより成形時の流動性が悪化し、0.5mm厚以下のシャッター部品を完全充填させる事ができないという問題があった。
ポリアセタール樹脂のデジタル家電用シャッター部品に関する技術は、特許文献1に成形性に優れた技術が紹介されている。しかしながら、カーボンブラックの添加量が少なすぎるため光遮光性に関しては満足のいくものではない。
また、導電カーボンブラックとポリエチレンワックスを添加した技術(例えば、特許文献2参照)、顔料としてのカーボンブラックとポリエチレンワックスを添加した技術(例えば、特許文献3参照)が紹介されている。しかしながら、何れも光遮光性を満足するものではない。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)(A)ポリアセタール樹脂と(B)カーボンブラックと(C)分散剤から成るポリアセタール樹脂組成物であって、(A)100質量部に対して、(B)+(C)のトータル添加量が1〜4質量部であって、(B)/(C)の比が40/60〜60/40であって、厚み0.25mm成形品の光透過率が1%以下であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
(2)(B)カーボンブラックの平均粒子径が1nm〜50nmであることを特徴とする上記1記載のポリアセタール樹脂組成物。
(4)上記1〜3の何れか一項に記載の樹脂組成物を射出成形及び/又は押出成形によって得られる成形体。
(5)上記1〜3の何れか一項に記載の樹脂組成物から成るデジタル機器用機構部品。
(6)(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して(B)+(C)のトータル添加量が1〜4質量部、且つ(B)/(C)の比が40/60〜60/40の配合量で、(B)カーボンブラックと(C)分散剤を予め均一に混合された混合物(D)として(A)ポリアセタール樹脂に添加し、溶融混練して成ることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂と(B)カーボンブラックと(C)分散剤から成るポリアセタール樹脂組成物であって、厚み0.25mm成形品の光透過率が1%以下のポリアセタール樹脂組成物である。
本発明に用いる(A)ポリアセタール樹脂は、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーである。ポリアセタールホモポリマーはオキシメチレン基を主鎖に有し、重合体の両末端がエステル基又はエーテル基により封鎖され、ホルムアルデヒド及び公知の分子量調節剤を原料とし公知のオニウム塩系重合触媒を用いて炭化水素等を溶媒として公知のスラリー法、例えば特公昭47―6420号公報や特公昭47−10059号公報に記載の重合方法で得ることが出来る。
環状エーテル及び/又は環状ホルマールは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキセタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられ、中でもエチレンオキサイド、1,3−ジオキソランが好ましい。
(A)ポリアセタール樹脂の分子量はメルトインデックス値(ASTM−D1238に準拠)で代用可能である。好ましいメルトインデックス値は9g/10min〜150g/10minの範囲であり。更に好ましくは30g/10min〜120g/10min、最も好ましくは50g/10min〜100g/10minの範囲に相当する分子量を有する(A)ポリアセタール樹脂である。
(B)カーボンブラックの平均粒子径としては、光遮光性の観点から、1nm〜50nmが好ましい。更に好ましくは5nm〜40nmであり、最も好ましくは10〜30nmである。
平均粒子径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて検査する(B)カーボンブラックのサンプリングを行い、これを用いて粒子像を倍率1千倍から5万倍で撮影し、無作為に選んだ最低100個の(B)カーボンブラックの粒子からそれぞれ長さを測定してその平均値を求める。
これらの中でもポリオレフィンワックス、又は脂肪酸アマイドが好ましく、その中でも
ポリエチレンワックス、又はエチレンビスステアリン酸アマイドが好ましい。これらは、一種で用いても二種以上を組み合わせて用いる事も可能である。
(B)カーボンブラックと(C)分散剤のトータル添加量、すなわち予め均一混合された混合物(D)の添加量は、光遮光性、機械的物性、熱安定性の観点から、1.0質量部〜4.0質量部であり、好ましくは1.5質量部〜3.5質量部であり、さらに好ましくは2.0質量部〜3.0質量部である。
(B)カーボンブラックと(C)分散剤の割合は、光遮光性、成形性、機械的物性、熱安定性の観点から、(B)カーボンブラック/(C)分散剤の混合比(質量比)が、40/60〜60/40である必要がある。好ましくは45/55〜55/45であり、より好ましくは50/50である。
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、従来のポリアセタール樹脂に使用されている添加剤、例えば熱安定剤、耐候(光)安定剤、離型剤等を単独、又はこれらを組み合わせて用いることが出来る。
これらヒンダードフェノール系酸化防止剤 のなかでもトリエチレングリコールービス−(3−(3 −t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3− (3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタンが好ましい。
(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物としては、(1)ジシアンジアミド、(2)アミノ置換トリアジン、(3)アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物等が挙げられる。(2)アミノ置換トリアジンとしては、例えば、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2, 4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N′,N″−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N′−ジメチロールメラミン、N,N′,N″−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4 −ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−s ym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−s ym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト −sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ −sym−トリアジン(アメライト)、2−オキシ− 4,6−ジアミノ−sym−トリアジン(アメリン)、N,N′,N′−テトラシアノエチルベンゾグアナミン 等がある。(3)アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物としては、例えば、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等がある。これらの中で、ジシアンジアミド、メラミン及びメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物が好ましい。
アルコールとしては1価アルコール、多価アルコールがあり、例えば1価アルコールの例としては、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ベンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘブタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、ペヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、ユニリンアルコールがあげられる。多価アルコールとしては、2〜6個の炭素原子を含有する多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトールがあげられる。
溶融混練は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して(B)+(C)のトータル添加量が1〜4質量部、且つ(B)/(C)の比が40/60〜60/40の配合量で、(B)カーボンブラックと(C)分散剤を予め均一混合された混合物(D)として(A)ポリアセタール樹脂に添加し溶融混練する。溶融混練は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。(A)に(D)を添加する方法は、(イ)窒素雰囲気下でヘンシェルミキサーやタンブラー混合機を用いて(A)と(D)を混合する方法、(ロ)(A)と(D)を押出し機の同一の添加口へ別々に添加する方法、が挙げられる。好ましいのは(イ)の方法である。(イ)の方法であれば、所望のものが安定して得られる。
ポリアセタール樹脂組成物の成形方法としては、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを射出成形、押出し成形することによって所望の形状に成形することができる。
デジタル機器機構部品としては、例えば通信機器、映像機器等に使用される機構部品であり、具体的にはシャッター、絞り、レンズ保持枠、レンズ移動枠、レンズカバー、内部フレーム、ギヤ、ギヤボックス等を挙げることができる。これらの中でもシャッター、絞り等に好適に使用することができる。
尚、実施例及び比較例中の用語及び測定法は以下の通りである。
[(A)ポリアセタール樹脂]
A−1:ポリアセタールコポリマー
MFI=70g/10min、結晶化速度=60sec
(旭化成ケミカルズ(株)製、Tenac−C 9520)
A−2:ポリアセタールコポリマー
MFI=9g/10min、結晶化速度=62sec
(旭化成ケミカルズ(株)製、Tenac−C 4520)
B−1:平均粒子径8nm
B−2:平均粒子径16nm
B−3:平均粒子径50nm
B−4:平均粒子径75nm
[(C)分散剤]
C−1:ポリエチレンワックス
C−2:エチレンビスステアリン酸アマイド
1)カーボンブラックの平均粒子径の測定
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて検査するカーボンブラックのサンプリングを行い、これを用いて粒子像を倍率1千倍から5万倍で撮影し、無作為に選んだ最低100個のカーボンブラックの粒子からそれぞれ長さを測定してその平均値を求めた。
2)光遮光性の測定
射出成形機(東芝(株)製、IS100GN)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度110℃、射出時間60秒、冷却時間30秒で、厚み0.25mmの50mm×50mmの薄肉片を成形した。
評価は、日本電色工業(株)製、COLORandCOLOR DIFFERENCE METER MODEL 1001DPを用いて、JIS−Z8722に従い、0°リード法、C光源2°にて、全透過率を測定した。
値の小さい方が光遮光性に優れる。厚みは、マイクロメータを用いて測定した。
パーキンエルマー(株)製、DSC−2Cを用いて、試料5mgを使って、200℃まで320℃/分で昇温し、2分間ホールドさせる。次いで、149.3℃まで80℃/分で降温しホールドさせ、ホールドさせてから、吸熱ピークのピークトップが観察されるまでの時間を測定した。結晶化速度が速いと成形性が悪いことを示す。
4)MFI(メルトインデックス)の測定
ポリアセタール樹脂及び樹脂組成物のペレットを、80℃で3時間乾燥した後、ASTM D1238に従い、東洋精機製のMELT INDEXERを用いて、シリンダー温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
実施例及び比較例で作成した樹脂組成物を、射出成形機(東芝(株)製、IS100GN)を用いて、シリンダー温度205℃、金型温度90℃、射出時間60秒、冷却時間15秒で、ISO試験片を成形した。評価は、以下の通りの試験法にて測定した。
・引張強度、引張伸度、引張弾性率は、ISO527に従った。
・曲げ強度、曲げ弾性率は、ISO178に従った。
・Charpyは、ISO179/1eAに従った。
実施例及び比較例で作成した樹脂組成物を、80℃で3時間乾燥した後、そのペレット3gを、窒素気流(50NL/hr)下、220℃に加熱溶融し、発生するホルムアルデヒドを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により滴定した。その際、以下の通りの時間帯に分けてホルムアルデヒドの発生量を測定した。
・10分〜30分の発生速度
・50分〜90分の発生速度
これらの値はそれぞれ、ポリアセタール樹脂の末端分解によるもの、ポリアセタール樹脂の主鎖分解によるものに分ける事ができ、いずれもポリアセタール樹脂の熱安定性評価の指標として有効である。
平均粒子径8nmのカーボンブラック(B−1)と、ポリエチレンワックス(C−1)の質量比50/50のものをヘンシェルミキサーに仕込み、窒素ガスを流しながら5分間混合し混合物を得た。次いで、(A−1)ポリアセタール樹脂と上記混合物をヘンシェルミキサーで窒素ガスを流しながら5分間混合した。その後、200℃に設定した30φ、L/D=24の単軸押出し機を用いて窒素ガスを流しながら溶融混練し、ペレットを得た。以降、表1に記載の評価を行った。評価結果を、表1に示す。
表1に示す組成で、実施例1と同じ操作を行った。結果を、表1に示す。
ポリアセタール樹脂として、MFI=9g/10minのもの(A−2)を使用した以外は、実施例1と同じ操作を行った。結果を、表1に示す。
表1に示す組成で、実施例1と同じ操作を行った。結果を、表1に示す。
表1に示す組成で、カーボンブラック(B−2)と分散剤(C−1)を予め混合せずに使用した以外は、実施例1と同じ操作を行った。結果を、表1に示す。
Claims (6)
- (A)ポリアセタール樹脂と(B)カーボンブラックと(C)分散剤から成るポリアセタール樹脂組成物であって、(A)100質量部に対して、(B)+(C)のトータル添加量が1〜4質量部、且つ(B)/(C)の比が40/60〜60/40であり、厚み0.25mm成形品の光透過率が1%以下であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
- (B)カーボンブラックの平均粒子径が1nm〜50nmであることを特徴とする請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
- (C)分散剤がポリオレフィンワックス、又は脂肪酸、脂肪酸アマイド、ポリアルキレングリコールの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂組成物から成る成形体。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂組成物から成るデジタル機器用機構部品。
- (A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して(B)+(C)のトータル添加量が1〜4質量部、且つ(B)/(C)の比が40/60〜60/40の配合量で、(B)カーボンブラックと(C)分散剤を予め均一に混合された混合物(D)として(A)ポリアセタール樹脂に添加し、溶融混練して成ることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
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