JP4928018B2 - 芳香族ポリカーボネート、その製造法および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の金属元素の含量が少なく、特に高温高湿条件下での長時間の使用において、高い耐久性、安定性をもつ芳香族ポリカーボネート、その製造法並びにその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは、色相、透明性、機械強度に優れたエンジニアリングプラスチックである。近年その用途は多岐にわたり、使用される環境条件も幅広くなりつつあることから、特に高温高湿条件下における長時間使用においても上記の特長が維持されるような高い耐久性、安定性が要求されている。
【0003】
従来の芳香族ポリカーボネートは、高温高湿条件下での長時間使用によって分子量低下や色相や透明性の悪化が生じて耐久性、安定性の点で問題があることが指摘される。分子量の低下はポリマーの機械強度を低下させ、また色相や透明性の悪化は芳香族ポリカーボネートの利点を著しく減少させる。
【0004】
湿熱による劣化は、ポリマー中に含まれる微量の不純物、とりわけ存在化学種の明確な化学構造は不明であるが、金属化合物による影響が懸念されることから、従来より原料やポリマーの精製方法および耐熱安定性に対する金属含量低減の効果について検討されている。
【0005】
特開平5−148355号公報では、鉄含有重量5ppm以下およびナトリウム含有重量1ppm以下の芳香族ポリカーボネートが開示され、また特開平6−32885号公報では鉄、クロムおよびモリブデンの合計含有重量が10ppm以下、ニッケルおよび銅の合計含有重量が50ppm以下であるポリカーボネートが開示されている。
【0006】
特開平2−175722号公報では原料中の加水分解可能な塩素含有量、ナトリウムイオンおよび鉄イオンの含有量を低減し、色調が改良されたポリカーボネートが得られることが開示されている。
【0007】
また特開平11−310630号公報では原料であるビスフェノールAに含有される不純物について、鉄分を10重量ppb、クロマン系不純物を40重量ppmまで低減することによる芳香族ポリカーボネートの製造法が開示されており、色調、耐熱安定性、ゲルの改良を図り、一応の成果を上げている。
【0008】
いずれの場合も、最適条件が実現されている実施例において、開示されている金属含有量はppmオーダーで依然多く、本発明で開示する厳しい湿熱条件下で長時間、芳香族ポリカーボネートの良好な色相、透明性、機械強度を維持するには不十分である。
【0009】
また不純物として低減の対象とされている金属種がナトリウムや鉄、および数種の遷移金属に限られているが、これらの金属の含量の低減だけでは、求められる厳しい条件下での耐久性、安定性の実現は不十分である。
【0010】
さらに、本発明者の研究によれば、ポリマー安定性は単に不純物量を減少させればよいというものではなく、原料中含有される特定不純物量とエステル交換触媒構成との関係、さらに、ポリカーボネート分子の構造特性もまた重要な因子であることが明らかにされた。従来は、ポリカーボネート分子の末端フェノール性水酸基数を減少させることは試みられていたがそれ以上のことはなされていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来では考えられなかったレベルの湿熱条件下で、良好な色相、透明性、機械強度を長時間維持することのできる、優れた耐久性と安定性を持つ、芳香族ポリカーボネートを提供することにある。
本発明の他の目的は、本発明の上記芳香族ポリカーボネートを工業的に有利に製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記芳香族ポリカーボネートからなる成形品例えば射出成形品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
主たる繰返し単位が下記式(1)
【0013】
【化7】
【0014】
(式中のR1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基または炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、mおよびnは、互いに独立に、0〜4の整数であり、Xは単結合、酸素原子、カルボニル基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数6〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のシクロアルキリデン基または炭素数6〜20のアリーレン基または炭素数6〜20のアルキレンアリーレンアルキレン基である。)
で表され、
末端基が実質的にアリールオキシ基(A)とフェノール性水酸基(B)とからなり、これらのモル比(A)/(B)が95/5〜40/60であり、
溶融粘度安定性が0.5%以下であり、
ナトリウム金属元素の含有重量が100ppb以下であり、かつNi、Pb、Cr、MnおよびFeのそれぞれの第1元素の含有重量が70ppb以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネートによって達成される。
【0015】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、本発明の芳香族ポリカーボネートの成形品によって達成される。
【0016】
また本発明の上記目的および利点は、第3に、芳香族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り ア)含窒素塩基性化合物および含リン塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物10〜1,000μ化学当量および イ)芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.05〜5μ化学当量を含有する触媒の存在下、重縮合させてポリカーボネートを製造する方法において、
1)Na金属元素含有重量が各52ppb以下であり、かつ
2)Fe、Cr、Mn、NiおよびPbのそれぞれの第1元素の含有重量が40ppb以下である、
芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルを用い、
3)芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当りの塩基性化合物の使用量を、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルが含有するFeの合計重量Fe*(ppb)に対し20×(Fe*)+200を超えない量とすることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法によって達成される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の芳香族ポリカーボネートは主たる繰返し構造が下記式(1)
【0018】
【化8】
【0019】
(式中のR1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、または炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、mおよびnは0〜4の整数であり、Xは単結合、酸素原子、カルボニル基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数6〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のシクロアルキリデン基または炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数6〜20のアルキレンアリーレンアルキレン基である。)
で表され、
末端基が実質的にアリールオキシ基(A)とフェノール性水酸基(B)とからなり、これらのモル比(A)/(B)が95/5〜40/60であり、かつ、
溶融粘度安定性が0.5%以下である。
【0020】
本発明により、芳香族ポリカーボネート中に含まれる特定の元素を、それぞれ影響の大きさにもとづいてグループに分けて、それらの含有量をそれぞれ特定値以下に規定することにより、従来では考えられなかったほどの厳しい湿熱条件下での長時間の使用において優れた耐久性、安定性、透明性をもつ芳香族ポリカーボネートが提供される。
【0021】
本発明において、芳香族ポリカーボネートおよび原料中に不純物として含まれ、問題となる微量元素は、得られる芳香族ポリカーボネートの耐久性、色調、透明性におよぼす影響の大きさに基づき、ナトリウムおよび、以下の第1〜第4グループに分類された。
【0022】
各グループに属する元素は以下のとおりである。
第1元素;Ni、Pb、Cr、MnおよびFe
第2元素;Cu、Zn、Pd、In、SiおよびAl
第3元素;Ti
第4元素;P、N、S、ClおよびBr
本発明における芳香族ポリカーボネートは、厳しい高温高湿条件下での、長時間使用において良好な耐久性、安定性をもつために、ナトリウム金属元素の含有重量が100ppb以下であり、第1元素のそれぞれの含有重量が70ppb以下である。
【0023】
また、かかる芳香族ポリカーボネートのうち、より優れた耐久性、安定性を持つために、ナトリウム金属元素の含有重量は、好ましくは70ppb以下、さらに好ましくは20ppb以下である。また、第1元素のそれぞれの含有重量は40ppb以下であることが好ましく、20ppb以下、特に10ppb以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の芳香族ポリカーボネートの末端基は、アリールオキシ基(A)とフェノール性水酸基(B)とから実質的になりそしてこれらのモル比(A)/(B)は95/5〜40/60である。好ましいモル比(A)/(B)は90/10〜50/50、さらに好ましくは85/15〜60/40、特段に好ましくは80/20〜70/30である。
【0025】
本発明において、芳香族ポリカーボネートがより優れた耐久性、安定性を持つために、フェノール性末端水酸基濃度;(H)(eq/ton−ポリカーボネート)が第1元素(Ni、Pb、Cr、MnおよびFe)の含有重量の合計;Σ第1元素(ppb)に対し、次の関係
(H)≦Σ第1元素にあることが好ましい。
【0026】
さらに、かかる芳香族ポリカーボネートのうち、より優れた耐久性、安定性を持つために、(H)がΣ第1元素に対し、
(H)≦0.5×(Σ第1元素)であることがより好ましい。
【0027】
さらに、かかる芳香族ポリカーボネートのうち、より優れた耐久性、安定性を持つ芳香族ポリカーボネートを得るために、第2元素のそれぞれの含有重量は、20ppb以下であることが好ましく、第3元素の含有重量は、1ppb以下であることが好ましくそして第4元素とのそれぞれの含有重量は1ppm以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明の芳香族ポリカーボネートの溶融ポリマーの粘度安定性(以下に定義を示す)は、0.5%以下である。この値が0.5%より大きいと芳香族ポリカーボネートの加水分解劣化が促進される。実際的な耐加水分解安定性を確保するためにはこの値を0.5%以下にしておくと十分である。そのために、本発明の芳香族ポリカーボネートは、特に重合後に、後述する溶融粘度安定化剤を用いて溶融粘度を安定化されることが好ましい。ここで溶融粘度安定性は、窒素気流下、せん断速度1rad/sec、300℃で30分間測定した溶融粘度の変化の絶対値で評価し、1分あたりの変化率で表される。
【0029】
本発明の芳香族ポリカーボネートは、従来公知の溶融重合法、界面重合法等いかなる方法で製造してもよいが、プロセス、原料を含めたコスト面、塩素化炭化水素などの重合溶媒を用いずにすむことやさらに炭酸エステル形成化合物としてホスゲンなどの有害化合物を用いずにすむなどの点から、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合させる方法により製造するのが好ましい。
【0030】
溶融法は常圧および/または減圧窒素雰囲気下、エステル交換触媒の存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物(以下BPA類ということがある)と炭酸ジエステル(以下DPC類ということがある)とを加熱しながら攪拌して、炭酸ジエステルに由来して生成するアルコールまたはフェノールを留出させることで行われる。その反応温度は生成物の沸点等により異なるが、反応により生成するアルコールまたはフェノールを除去するため通常120〜350℃の範囲であり、不純物の少ない芳香族ポリカーボネートを得るために好ましくは180〜280℃の範囲であり、さらに好ましくは、250〜270℃の範囲である。
【0031】
反応後期には系を減圧にして生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応後期の系の内圧は、好ましくは133.3Pa(1mmHg)以下であり、より好ましくは66.7Pa(0.5mmHg)以下である。
【0032】
本発明では、芳香族ポリカーボネートを製造する本発明方法として、芳香族ジヒドロキシ化合物(BPA類)と、炭酸ジエステル類(DPC類)とを、上記のとおり、ア)含窒素塩基性化合物および含リン塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物(以下、NCBAということがある)を10〜1,000μ化学当量/BPA類1モル、および イ)アルカリ金属化合物、およびアルカリ土類金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、AMCということがある)を、0.05〜5μ化学当量/BPA類1モル含有する触媒の存在下、加熱溶融、重縮合させて芳香族ポリカーボネートを製造する方法が提供される。本発明方法において、BPA類およびDPC類として、各々の中の、Na金属元素含有重量が52ppb以下、さらに好ましくは35ppb以下、特に好ましくは6ppb以下でありかつ第1元素グループに属する各元素の重量濃度が40ppb以下、さらに好ましくは23ppb以下、特に好ましくは6ppb以下であるBPA類およびDPC類が用いられる。また、NCBA使用量(μ化学当量/BPA類1モル)は、Fe*(DPC類とBPA類のFe含有重量合計;ppb)に対し(20×Fe*+200)を超えない量とする必要がある。
【0033】
さらにDPC類およびBPA類中に含有される第2元素のそれぞれの重量濃度は、好ましくは10ppb以下であることが望ましい。
【0034】
また、DPC類およびBPA類中含有される第3元素のそれぞれの重量濃度は、好ましくは1ppb以下でありそして第4元素のそれぞれの重量濃度が1ppmであることが望ましい。
【0035】
原料として上記のごとき特定の元素の含有量が特定値以下であるBPA類およびDPC類を共に用いるとともにさらに鉄の含有重量に対して特定量比のNCBA触媒を使用することで、本発明によれば、優れた耐久性をもつ芳香族ポリカーボネートを得ることができる。これまで知られていた原料中の金属含有重量がppmレベルであったのに対し、本発明において規定される原料中の金属含有重量は1オーダー低く、それぞれ0〜80ppbであり、さらに原料に含まれる特定の金属元素をそれぞれ影響の大きさにもとづいてグループに分けて、それらの含有重量をそれぞれ特定値以下に規定するとともに、特定の非金属元素の含有重量を規定し、さらには原料中の鉄の含有重量に対して特定量比のNCBA触媒を使用することで、従来では考えられなかった程度の湿熱条件下での長時間の使用において優れた耐久性、安定性、透明性をもつ芳香族ポリカーボネートを製造することを可能とした。
【0036】
特にNCBA触媒の使用量を、鉄不純物に対して特定量使用することにより、耐熱テスト時、耐衝撃性の向上がもたらされることは驚くべき事実である。
【0037】
本発明においては原料として使用するBPA類としてビスフェノールA(以下BPAということがある)を使用する場合、有機性不純物濃度を規定することにより一層色調良好な芳香族ポリカーボネートを製造することができる。すなわち、BPAとして、特定高速液体クロマトグラフ分析(細孔径100オングストロームの高純度球状シリカゲルに15%(炭素量として)のオクタデジル基を結合させた吸着剤(ジーエルサイエンス社製イナートシルODS−3型吸着剤)を充填した内径4.6mmで長さが250mmのカラムを40℃±0.1℃に保持した高速液体クロマトグラフにより、溶離液Aとして0.1%リン酸水溶液を、溶離液Bとしてアセトニトリルをそれぞれ使用し、測定開始から5分までは溶離液A:溶離液Bの比率が1:1で溶離液Aと溶離液Bの合計の流量が0.9ml/minとなるように測定を行い、合計の流量を一定にしたまま、測定開始後5分から溶離液Bの割合を連続的に増加し、測定開始後55分までに溶離液A:溶離液Bの比率が0:1となるように溶離液Bの割合を上昇させるグラジエント操作を行い、波長254nmの紫外線検出器によりBPAを分析)により15.5分から24分までの間に、溶離する化合物群(以下化合物群Aと略称する)の吸収ピーク面積の合計がBPAの吸収ピーク面積に対する割合で2.0×10-3以下、さらに好ましくは1.0×10-3以下であるBPAを使用する方法である。
【0038】
さらに好ましくは上記特定高速液体クロマトグラフ分析において、22分から24分の間に溶離する化合物群(以下化合物群Bと略称する)の吸収ピーク面積の合計がBPAの吸収ピーク面積に対する割合で5×10-5(50ppm)以下、さらに好ましくは、上記分析において、22分から24分の間に溶離する分子量307から309の化合物の吸収ピークの合計がBPAの吸収ピーク面積に対する割合で2×10-5(20ppm)以下であるBPAを使用する方法である。
【0039】
さらに好ましくは下記式(2)で表される1−ナフトール類:
【0040】
【化9】
【0041】
(式中R3およびR4はそれぞれ独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル基、あるいはイソプロペニル基である。)
の含有量がBPA1重量部に対し2×10-4重量部以下、さらに好ましくは1×10-4以下であるBPAを使用する方法である。なお、上記式(2)において、R3およびR4のそれぞれはナフタレン環の1位(水酸基が置換している)以外の2〜8位のいずれかに重複せずに結合することができる。
【0042】
さらに好ましくは下記式(3)
【0043】
【化10】
【0044】
(式中、R5〜R7はそれぞれ独立に炭素数1〜4個のアルキル基であり、R8およびR9はそれぞれ独立に、炭素数1〜4個のアルキル基でありそしてpおよびqはそれぞれ独立に0〜4の整数である。)
で示されるパラフラバン化合物の含有量がBPA1重量部に対し5×10-5重量部以下であり、かつ下記式(4)
【0045】
【化11】
【0046】
(式中、R10〜R12はそれぞれ独立に炭素数1〜4個のアルキル基であり、R13およびR14はそれぞれ独立に、炭素数1〜4個のアルキル基でありそしてsおよびtはそれぞれ独立に0〜4の整数である。)
で表されるコダイマー誘導体の含有量が、BPA1重量部に対し5×10-5重量部以下であるBPAを使用する方法である。
【0047】
さらに好ましくはBPAとして、下記式(5)
【0048】
【化12】
【0049】
(式中、R15〜R17はそれぞれ独立に炭素数1〜4個のアルキル基であり、R18はそれぞれ独立に、炭素数1〜4個のアルキル基でありそしてaは0〜4の整数である。)
で示されるクロメン化合物の含有量がBPA1重量部に対し1×10-5重量部以下であり、かつ下記式(6)
【0050】
【化13】
【0051】
(式中R19およびR20はそれぞれ独立に炭素数1〜4個のアルキル基であり、R21およびR22はそれぞれ独立に、炭素数1〜4個のアルキル基でありそしてbおよびcはそれぞれ独立に0〜4の整数である。)
で表されるキサンテン類の含有量が、BPA1重量部に対し1×10-5重量部以下であるBPAを使用する方法である。
【0052】
式(2)で表される1−ナフトール類は、例えば2,4−ジメチル−1−ヒドロキシナフタレン、2,6−ジメチル−1−ヒドロキシナフタレン、2,7−ジメチル−1−ヒドロキシナフタレン、3,6−ジメチル−1−ヒドロキシナフタレン、2−イソプロピル−1−ヒドロキシナフタレン、6−イソプロペニル−1−ヒドロキシナフタレンである。
【0053】
式(3)で表されるパラフラバン化合物は、例えば2−(4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4−トリメチルクロマン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4−トリメチルクロマン、2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4−トリメチルクロマン、2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4−トリメチルクロマン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4,8−テトラメチルクロマンである。
【0054】
式(4)で表されるコダイマー誘導体は、例えば4−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2,4−トリメチルクロマン、4−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,2,4−トリメチルクロマン、4−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,2,4−トリメチルクロマン、4−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,2,4−トリメチルクロマン、4−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4,8−テトラメチルクロマンである。
【0055】
式(5)で表されるクロメン化合物は、例えば2,2,4−トリメチルクロマン−(3)−エン、2,2−ジメチル−4−エチルクロマン−(3)−エン、2,2−ジメチル−4−エチルクロマン−(3)−エン、2,2,6−トリメチルクロマン−(3)−エン、2,2−ジメチル−6−エチルクロマン−(3)−エン、2,2,4,6−テトラメチルクロマン−(3)−エン、2,2,4−トリメチル−7−ブチルクロマン−(3)−エンである。
【0056】
また、式(6)で表されるキサンテン類は、例えば9,9−ジメチルキサンテン、2−ブチル−9,9−ジメチルキサンテン、3−メチル−9,9−ジエチルキサンテン、9,9−ジエチルキサンテン、9−メチルキサンテン、2,6,9,9−テトラメチルキサンテンである。
【0057】
ビスフェノールAは、アセトンと過剰のフェノールとを、酸触媒例えば塩酸のごとき均一酸あるいはイオン交換樹脂のごとき固体酸の存在下に脱水縮合せしめることにより製造される。このような製造法により得られたビスフェノールAは市販品として容易に入手され、上記式(2)〜(6)で表される化合物(不純物)を通常含有する。
【0058】
本発明においてBPA類としては、従来公知のジヒドロキシ化合物が好適に使用できる。例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちBPA)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシー3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシー3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシー3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンおよびこれらの化合物の芳香環に例えばアルキル基、アリール基が置換された化合物が挙げられる。中でもコスト面からBPAが特に好ましい。これらは単独で用いてもまたは2種以上併用してもよい。
【0059】
またDPC類としては例えばジフェニルカーボネート(以下DPCということがある)、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートが挙げられる。中でもコスト面からDPCが好ましい。
【0060】
不純物として含まれる特定の金属元素の含有量が上記のように少ない、耐久性、色調、透明性に優れた芳香族ポリカーボネートは、原料として用いられるBPA類やDPC類を精製することによりあるいは芳香族ポリカーボネートを精製することにより得ることができる。
【0061】
原料として用いられるBPA類やDPC類は、公知の精製方法、例えば、蒸留、抽出、再結晶のごとき精製法の単独または組合せにより精製することができる。
【0062】
それらの方法のほか、原料をできるだけ低温で、長時間の昇華法によって精製する方法も好ましく、また、昇華に加えてさらに上記の精製法を種々組合せることがより好ましい。
【0063】
これらの方法によって、従来は上記のごとき不純物元素の含有量がppmレベルであったものを、その1,000分の1以下であるppbレベルまで減らすことができる。加えて従来注目されていなかった、前述の有機不純物の含有量を所定の値まで低減することができる。
【0064】
また、芳香族ポリカーボネートは、ポリマー溶液の水洗浄、再沈殿などの精製方法により精製することができる。ポリマーの水洗浄では、洗浄後にポリマー溶液を十分に脱水することが好ましい。脱水方法としては、例えばシリカゲル処理、微細孔フィルターを用いたろ過が用いられる。ポリマーの再沈殿は、塩化メチレンや1−メチル−2−ピロリジノン(以下NMPということがある)のごとき溶媒中のポリマー溶液に、メタノール、アセトニトリルのごときポリマーの貧溶媒を加えて行われる。その際、より精製度の高いポリマーを得るために、貧溶媒を長時間かけて徐々に加えることが好ましい。
【0065】
すなわち不純物元素の少ない芳香族ポリカーボネートを得るためには、上記の原料精製方法で精製された原料を用いてポリマーを製造し、さらに得られたポリマーを上記の方法で精製することが好ましい。
【0066】
また、本発明の不純物元素の少ない芳香族ポリカーボネートを得るためには、原料、ポリマーの精製において、不純物元素の含有量が極めて少ない高純度の溶媒を用いるのが好ましい。そのため例えば電子工業用の溶媒などが使用できる。
【0067】
本発明においては、芳香族ポリカーボネートのエステル交換溶融重合に際し、好ましくは、特定の触媒すなわち;ア)含窒素塩基性化合物および含リン塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物(NCBA)および イ)アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(AMC)より選択される少なくとも1種からなる触媒が使用される。
【0068】
触媒NCBAの具体例としては、含窒素塩基性化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3NOH)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドのごときアルキル、アリールまたはアルキルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類;テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムフェノキシド、テトラブチルアンモニウム炭酸塩、ベンジルトリメチルアンモニウム安息香酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムエトキシドのごときアルキル、アリールまたはアルキルアリール基などを有する塩基性アンモニウム塩;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ヘキサデシルジメチルアミンのごとき第3級アミン;およびテトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)のごとき塩基性塩を挙げることができる。
【0069】
また含リン塩基性化合物の具体例としては例えばテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(Bu4POH)、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3POH)、ヘキサデシルトリメチルホスホニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するホスホニウムヒドロキシド類、あるいはテトラブチルホスホニウムボロハイドライド(Bu4PBH4)、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(Bu4PBPh4)、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(Me4PBPh4)のごとき塩基性塩を挙げることができる。
【0070】
上記NCBAは、塩基性窒素原子あるいは塩基性リン原子がBPA類、1モルに対し、10〜1,000μ化学当量となる割合で用いるのが好ましい。より好ましい使用割合は同じ基準に対し20〜500μ化学当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し50〜500μ化学当量となる割合である。
【0071】
特にこの時、得られる芳香族ポリカーボネートの色相を良好にするためには、NCBA使用量を原料DPC類およびBPA類中に含有される鉄分合計重量;Fe*(ppb)に対し(20×Fe*+200)μ化学当量を超えないように、使用すると有効であることを見出した。特に好ましくは(20×Fe*+150)μ化学当量を超えない範囲である。
【0072】
理由は明確ではないが、原料DPC類およびBPA類中に含有される鉄分がNCBAと何らかの相互作用をして芳香族ポリカーボネートの色調を悪化させるものと推定される。かかる意味において各種不純物元素の含量はできる限り減少させるのが好ましい。
【0073】
さらに本発明においては、原料中不純物を低減させた効果を、ポリマー色調、安定性に実現するために、上記、NCBAとともにAMCを併用するが、AMCとしては、アルカリ金属化合物を含有する化合物が好ましく使用される。かかるアルカリ金属化合物は、好ましくは、BPA類1モルに対し、アルカリ金属元素として5×10-8〜5×10-6化学当量の範囲で使用される。かかる量比の触媒を使用することにより、分子末端の封鎖反応や重縮合反応速度を損うことなく重縮合反応中に生成しやすい分岐反応、主鎖開裂反応や、成形加工時における装置内での異物の生成、焼けといった好ましくない現象を効果的に抑止できるので好ましい。
【0074】
上記範囲を逸脱すると、得られる芳香族ポリカーボネートの諸物性に悪影響をおよぼしたり、またエステル交換反応が十分に進行し難く、高分子量の芳香族ポリカーボネートが得られ難くなる問題があり、好ましくない。
【0075】
触媒AMCとしては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭化水素化合物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化硼素塩、安息香酸塩、リン酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩が挙げられる。
【0076】
具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸ルビジウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硫酸カリウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化硼素ナトリウム、水素化硼素リチウム、フェニル化硼素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素ジカリウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジリチウム塩、モノナトリウム塩、ナトリウムカリウム塩、ナトリウムリチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0077】
また、アルカリ金属化合物としては、(ア)周期律表第14族元素のアート錯体アルカリ金属塩または(イ)周期律表第14族元素のオキソ酸のアルカリ金属塩を用いることができる。ここで周期律表第14族の元素とは、ケイ素、ゲルマニウム、スズのことをいう。
【0078】
かかるアルカリ金属化合物を重縮合反応の触媒として用いることにより、前記のごとく重縮合反応を迅速にかつ十分に進めることができる利点を有する。また重縮合反応中に進行する分岐反応のような好ましくない副反応を低いレベルに押さえることができる。
【0079】
ここで(ア)の周期律表第14族元素のアート錯体アルカリ金属塩としては、特開平7−268091号公報に記載のものをいうが、具体的にはNaGe(OMe)5、NaGe(OPh)5、LiGe(OPh)5、NaSn(OMe)3、NaSn(OMe)5、NaSn(OPh)5を挙げることができる。
【0080】
また(イ)周期律表第14族元素のオキソ酸のアルカリ金属塩としては、例えばケイ酸、スズ酸、ゲルマニウム(II)酸、ゲルマニウム(IV)酸のアルカリ金属塩を好ましいものとして挙げることができる。
【0081】
これらの具体例としては、オルトケイ酸ジナトリウム、オルトケイ酸テトラナトリウム、モノスズ酸ジナトリウム、ゲルマニウム(II)酸モノナトリウム(NaHGeO2)、オルトゲルマニウム(IV)酸ジナトリウム、ジゲルマニウム(IV)酸ジナトリウム、(Na2Ge2O5)を挙げることができる。
【0082】
本発明の重縮合反応には、上記触媒と一緒に、必要により周期律表第14属元素のオキソ酸、酸化物および同元素のアルコキシド、フェノキシドよりなる群から選ばれる少なくとも、1種の化合物を助触媒として共存させることができる。これらの助触媒を特定の割合で用いることにより末端の封鎖反応、重縮合反応速度を損うことなく重縮合反応中に生成しやすい分岐反応、主鎖開裂反応や、成形加工時における装置内での異物の生成、焼けといった好ましくない現象をより一層効果的に抑止できるので好ましい。
【0083】
周期律表第14族のオキソ酸としては、例えばケイ酸、スズ酸、ゲルマニウム酸を挙げることができる。
【0084】
周期律表第14族の酸化物としては、二酸化ケイ素、二酸化スズ、二酸化ゲルマニウム、シリコンテトラブトキシド、シリコンテトラフェノキシド、テトラエトキシスズ、テトラフェノキシスズ、テトラメトキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウム、テトラフェノキシゲルマニウムおよびこれらの縮合体を挙げることができる。
【0085】
助触媒は重縮合反応触媒中のアルカリ金属元素1モル原子当り、周期律表第14族の元素が50モル原子以下となる割合で存在せしめるのが好ましい。同金属元素が50モル原子を超える割合で助触媒を用いると、重縮合反応速度が遅くなり好ましくない。
【0086】
助触媒は、重縮合反応触媒のアルカリ金属元素1モル原子当り助触媒としての周期律表第14族の元素が0.1〜30モル原子となる割合で存在せしめるのがさらに好ましい。
【0087】
ナトリウム化合物は、ナトリウム以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属の化合物に比べて、製造される芳香族ポリカーボネートの耐久性に与える影響が少ないことから、本発明において耐久性に優れた芳香族ポリカーボネートを得るためには触媒としてナトリウム化合物を使用することが好ましい。
【0088】
重合触媒としてAMCを使用する場合には、前記のとおり、BPA類1モルに対し好ましくは0.05〜5μ化学当量で用いられる。さらに好ましくは0.07〜3μ化学当量、特に好ましくは0.07〜2μ化学当量である。
【0089】
触媒としてナトリウム化合物を使用すると、ポリマー中に原料などから混入されるナトリウムに加え触媒から由来するナトリウムが加わるため、ポリマー中のナトリウム金属元素含有量の総量が本発明における規定量を超えない範囲でナトリウム化合物触媒を使用しなければならないことが理解されよう。
【0090】
本発明においては、分子量の低下や着色の起こりにくい芳香族ポリカーボネートを得るために、溶融ポリマーの粘度安定性(以下に定義を示す)に注目し、この値を0.5%以下にすることが必要である。この値が大きいと芳香族ポリカーボネートの加水分解劣化が促進される。実際的な耐加水分解安定性を確保するためにはこの値を0.5%以下にしておけば十分である。そのためには特に重合後に溶融粘度安定化剤を用いて溶融粘度を安定化することが好ましい。なお、溶融粘度安定性は、窒素気流下、せん断速度1rad/sec、300℃で30分間測定した溶融粘度の変化の絶対値で評価し、1分当りの変化率で表す。
【0091】
本発明における溶融粘度安定化剤は、芳香族ポリカーボネート製造時に使用する重合触媒の活性の一部または全部を失活させる作用を有する。
【0092】
溶融粘度安定化剤は、例えば重合後にポリマーが溶融状態にある間に添加してもよいし、一旦ポリカーボネートをペレタイズした後、再溶解し、添加してもよい。前者においては、反応槽内または押出機内の反応生成物であるポリカーボネートが溶融状態にある間に溶融粘度安定化剤を添加してもよいし、また重合後得られたポリカーボネートが反応槽から押出機を通ってペレタイズされる間に、溶融粘度安定化剤を添加して混練することもできる。
【0093】
溶融粘度安定化剤としては公知の剤が使用できる。得られるポリマーの色相や耐熱性、耐沸水性などの物性の向上に対する効果が大きいことから、有機スルホン酸の塩、有機スルホン酸エステル、有機スルホン酸無水物、有機スルホン酸ベタインのごときスルホン酸化合物、中でもスルホン酸のホスホニウム塩および/またはスルホン酸のアンモニウム塩を使用することが好ましい。その中でも特に、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩やパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩などが好ましい例として挙げられる。
【0094】
上記の方法により本発明の重合体が得られるが、これを用いて各種成形品を成形する場合に用途に応じて従来公知の加工安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤などを添加してもよい。
【0095】
また、本発明の芳香族ポリカーボネートの分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルが挙げられる。ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、トリメチルホスフェートおよびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.1重量部がさらに好ましい。
【0096】
また、本発明の芳香族ポリカーボネートには溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損わない範囲で離型剤を配合することも可能である。かかる離型剤としては、オレフィン系ワックス、カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、1価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、パラフィンワックス、蜜蝋が挙げられる。かかる離型剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましい。
【0097】
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の1価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和または不飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。かかる1価または多価アルコールと飽和または不飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。かかる離型剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましい。
【0098】
さらに、本発明の芳香族ポリカーボネートに本発明の目的を損わない範囲で、剛性などを改良するために無機および有機充填材を配合することが可能である。かかる無機充填材としては、例えばタルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、酸化チタンのごとき板状または粒状の無機充填材;ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラストナイト、カーボン繊維、アラミド繊維、金属系導電性繊維のごとき繊維状充填材および架橋アクリル粒子、架橋シリコーン粒子のごとき有機粒子を挙げることができる。これら無機および有機充填材の配合量は芳香族ポリカーボネート100重量部に対して1〜150重量部が好ましく、3〜100重量部がさらに好ましい。
【0099】
また、本発明で使用可能な無機充填材はシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。この表面処理により、芳香族ポリカーボネートの分解が抑制されるなど良好な結果が得られる。
【0100】
本発明の芳香族ポリカーボネートには、本発明の目的が損われない範囲で、他の樹脂を配合することもできる。
【0101】
かかる他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレンおよびポリプロピレンのごときポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのごときポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0102】
本発明の芳香族ポリカーボネートは、耐久性、特に厳しい温湿条件下での長時間の耐久性を保持する効果に優れている。それ故、このポリマーを使用して得られたコンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、マグネット・オプティカルディスク(MO)、デジタルバーサタイルディスク(DVD−ROM、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−R、DVD−RAM等)で代表される高密度光ディスク用の基板は長期に渡って高い信頼性が得られる。特にデジタルバーサタイルディスクの高密度光ディスクに有用である。
【0103】
本発明の芳香族ポリカーボネートからのシートは、接着性や印刷性に優れている。そのため、その特性を生かして電気部品、建材部品、自動車部品等に広く利用され、具体的には各種窓材すなわち一般家屋、体育館、野球ドーム、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車両等)等の窓材のグレージング製品、また各種側壁板(スカイドーム、トップライト、アーケード、マンションの腰板、道路側壁板)、車両等の窓材、OA機器のデイスプレーやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、水槽用ポリカーボネート樹脂積層板、プロジェクションテレビやプラズマディスプレイの前面板やフレネルレンズ、光カード、光ディスクや偏光板との組合せによる液晶セル、位相差補正板等の光学用途に有用である。かかる芳香族ポリカーボネートシートの厚みには特に制限はないが、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜8mm、0.2〜3mmが特に好ましい。また、かかる芳香族ポリカーボネートシートに、新たな機能を付加する各種加工処理(耐候性を改良するための各種ラミネート処理、表面硬度改良のための耐擦傷性改良処理、表面のしぼ加工、半および不透明化加工等)を施してもよい。
【0104】
本発明の芳香族ポリカーボネートに前記の各成分を配合するには、任意の方法が採用される。例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま、または溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、溶融押出法でシート化することができる。
【0105】
本発明の芳香族ポリカーボネートから例えば射出成形法などの成形法により、耐久性、安定性が良好な成形品を得ることができる。
【0106】
本発明の芳香族ポリカーボネートはいかなる用途に使用してもよく、1部前記したごとく、例えば電子・通信器材、OA機器、レンズ、プリズム、光ディスク基板、光ファイバーなどの光学部品、家庭電器、照明部材、重電部材などの電子・電機材料、車両内外装、精密機械、絶縁材などの機械材料、医療材料、保安・保護材料、スポーツレジャー用品、家庭用品などの雑貨材料、容器・包装材料、表示・装飾材料など、また他の樹脂や有機・無機材料との複合材料として好適に用いることができる。
【0107】
とくに本発明の芳香族ポリカーボネートは耐久性、安定性が良好なことから光ディスク基板に特に好ましく用いることができる。
【0108】
【発明の効果】
本発明のように、芳香族ポリカーボネート中の上記の特定不純物含有量を特定値以下に抑えることで、該ポリマーの耐久性、特に厳しい温湿条件下での長時間の耐久性を著しく向上させ、かつ良好な色調、透明性、機械強度を保持する効果が得られる。
【0109】
また原料として、特定金属元素の含有量が特定値以下であるDPC類、BPA類を用いて重合することにより、安定性良好な芳香族ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0110】
【実施例】
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例によって製造した芳香族ポリカーボネートの試験方法は以下の方法によった。
【0111】
1)粘度平均分子量(Mw):塩化メチレン中、20℃でウベローデ粘度計で測定した固有粘度([η])より、以下の式によって求めた。
[η]=1.23×10-4Mw0.83
【0112】
2)金属不純物含有量の定量方法
ポリマー中の金属含有量は、ポリマー0.5gを電子工業用NMP25gに溶解した溶液をセイコー電子工業(株)製ICP−MS、SPQ9000で、検量線を作成、定量測定した。
【0113】
3)BPAの高速液体クロマトグラフ分析;
カラム;細孔径100オングストロームの高純度球状シリカゲルに15%(炭素量として)のオクタデシル基を結合させたジーエルサイエンス社製イナートシルODS−3型吸着剤を充填した内径4.6mmで長さが250mmのカラムを用い、カラム温度を40±0.1℃に保持した。
溶離条件;溶離液Aとして0.1%リン酸水溶液を、溶離液Bとしてアセトニトリルをそれぞれ使用し、測定開始から5分までは溶離液A:溶離液Bの比率が1:1で溶離液Aと溶離液Bの合計の流量が0.9ml/minとなるように測定を行い、合計の流量を一定にしたまま、測定開始後5分から溶離液Bの割合を連続的に増加し、測定開始後55分までに溶離液A:溶離液Bの比率が0:1となるように溶離液Bの割合を上昇させるグラジエント操作を行う。
なお0.1%リン酸水溶液;JIS試薬特級以上のリン酸を高速液体クロマトグラフ用蒸留水で0.1±0.0001%に希釈、溶離液B;高速液体クロマトグラフ用アセトニトリルを使用。
クロマトグラフ装置;島津製作所(株)製LC−10A
検出器;波長254nmの紫外線検出器
ア)化合物群Aの分析法;BPAを、2gをアセトニトリル3mlに溶解、分析したときに15.5分から24分までの間に溶離する化合物の吸収ピーク面積の合計をBPAの吸収ピーク面積に対する割合として測定した。この値が2.0×10-3以下であるBPAを使用すれば良好な水準の色相を有するポリカーボネートを製造することができる。
イ)化合物群B分析法;BPAを、2gをアセトニトリル3mlに溶解、分析したときに22から24分までの間に溶離する化合物の吸収ピーク面積の合計をBPAの吸収ピーク面積に対する割合として測定した。この値が50ppm以下であるBPAを使用すれば良好な水準の色相を有するポリカーボネートを製造することができる。
【0114】
4)溶融粘度安定性
ポリマーの溶融粘度安定性によって評価した。レオメトリックス社のRAA型流動解析装置を用い窒素気流下、せん断速度1rad/sec、300℃で測定した溶融粘度の変化の絶対値を30分間測定し、1分あたりの変化率を求めた。芳香族ポリカーボネートの長時間安定性が良好であるためには、この値が0.5%を超えてはならない。
【0115】
5)芳香族ポリカーボネート温湿劣化試験
長時間で厳しい高温度、高湿度条件下での芳香族ポリカーボネートの耐久性を試験するために、芳香族ポリカーボネートを温度90℃、相対湿度90%で1,000時間保持した。各ポリマーにつき10検体用意し、それぞれ以下の測定を行いその平均値によってポリマーを評価した。
【0116】
5−1)色相悪化:ポリマーチップの色相を日本電色(株)製Z−1001DP色差計により測定した。L値が高いほど明度が高く、b値が低いほど黄色着色が少なく好ましいことを示し、L値の低下、b値の増加(表中の△b値)が1.0以下であれば厳しい温湿条件での長時間使用においても所望の色相安定性を維持しているものと評価した。
【0117】
5−2)透明性:50×50×5mmの平板を住友重機(株)製ネオマットN150/75射出成形機によりシリンダー温度280℃成形サイクル3.5秒で成形し、平板の全光線透過率を日本電色(株)製NDH−Σ80により測定した。全光線透過率が高いほど透明性がよいことを示し、劣化試験後の全光線透過率の保持率が90%以上であれば厳しい温湿条件での長時間使用においても所望の透明性を維持しているものと評価した。
【0118】
5−3)耐衝撃性の湿熱安定性:アイゾット衝撃強度ASTM D−256(ノッチ付き)によって評価した。ポリマーを120℃、高真空下で12時間乾燥した後、金型を用いて厚さ3.2mmの射出成形板を作成した。これを湿熱処理前後のアイゾット衝撃強度の保持率を求めた。保持率が90%以上であれば長時間の湿熱条件で所望の強度が維持されているものと判断した。
【0119】
6)末端水酸基濃度、アリールオキシ末端数の定量
ポリマーのサンプル0.02gを0.4mlの重クロロフォルムに溶解し20℃で1H−NMR(日本電子社製EX−270)を用いて、OH末端濃度測定した。またアリールオキシ末端基数は次式で求めた全末端数とOH末端数の差として計算した。
全末端数=56.54/[η]1.4338
【0120】
7)溶融ハーゼン色数(APHA)
JIS K−4101に示される色数試験方法に基づき、直径23mm、肉圧1.5mmの平底パイレックス比色管を用い、溶融状態で液深140mmでの溶融ハーゼン色数をハーゼン標準比色液と比較測定した。
測定法;ビスフェノールA(54g)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2mgを仕込み、大気中175℃での溶融状態で溶融ハーゼン色数、および175℃で2時間保持後の溶融ハーゼン色数を測定した。
測定法;ジフェニルカーボネート(54g)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2mgを仕込み、大気中250℃での溶融状態で溶融ハーゼン色数、および250℃で2時間保持後の溶融ハーゼン色数を測定した。
【0121】
ビスフェノールAでは、175℃溶融ハーゼン色数20番以下、175℃2時間保持後溶融ハーゼン色数40番以下がポリカーボネート原料として使用可能かどうかの限界である。
【0122】
ジフェニルカーボネートでは、250℃溶融ハーゼン色数10番以下、250℃2時間保持後溶融ハーゼン色数20番以下がポリカーボネート原料として使用可能かどうかの限界である。
【0123】
[原料の精製方法]
芳香族ポリカーボネートの原料として、以下のように精製したビスフェノールA(BPA)およびジフェニルカーボネート(DPC)を用いた。
【0124】
1)BPAの精製
1)−1 昇華精製法
市販BPAをガラス製の昇華精製装置に仕込み、減圧装置を用いて、窒素雰囲気下で、圧力13Pa (0.1Torr)、140℃、5時間かけゆっくりと昇華精製を行い、精製BPAを得た。必要に応じ昇華精製を2〜4回繰返して精製試料を作成した。
得られた精製BPAについて、1回昇華精製品;Aa*1、2回昇華精製品;Aa*2、昇華精製回数をさらに3,4回、さらにn回繰返した試料には、Aa*3、Aa*4、・・・、Aa*nと名づけた。
【0125】
1)−2 洗浄精製
昇華精製BPAの、Aa*1をアセトンあるいはメタノールでリンス洗浄、乾燥した。それぞれ試料名を、A−Rac、A−Rmeと名づけた。
【0126】
1)−3 再結晶精製
市販BPAをアセトンより再結晶、真空乾燥した。1回再結晶品をAb*1、2回再結晶品をAb*2と名づけた。
【0127】
またこれとは別に原料として昇華精製品Aa*1を使用して再結晶を一回行い、さらに該再結晶品を再度昇華精製し、さらに再結晶精製した精製ビスフェノール試料、Aab*2を作成した。
【0128】
1)−4 晶析精製
市販BPAを5倍量のフェノールに溶解、40℃でビスフェノールとフェノールのアダクト結晶を得た。得られたアダクト結晶を5.33kPa(40Torr)、180℃でBPA中のフェノールの濃度が、3%になるまでフェノールを除去し、スチームストリッピングによりフェノールを除去した。晶析精製を行った試料は晶析の回数により,Ac*1、Ac*2と名づけた。
【0129】
2)DPCの製造
原料1(Dg):プラスチック材料講座17、ポリカーボネート、坂尻昭一他著45から46ページ記載の方法に従い製造したDPC。
原料2;特許公開公報、特開平7−188116号(バイエル社)実施例1の記載に従い製造したDPCをプラスチック材料講座17、ポリカーボネート、坂尻昭一他著45から46ページ記載の方法に従い精製したDPC。
原料3;市販ジメチルカーボネートを使用し、特公平7−091230号(旭化成)実施例1の記載方法に習い、ただし触媒としてTi(OBu)4を使用しDPCを製造し、上記の方法に従い精製した。
原料2、3については不純物のためAPHA(溶融ハーゼン色数)が非常に悪く、使用困難と判断した。
【0130】
3)DPCの精製
3)−1 昇華精製
DPCに置いてもBPAの昇華精製に使用したと同じ装置を使用し、窒素雰囲気下、圧力30Pa(0.3Torr)、77℃、4時間の昇華精製をn回繰返し行い、精製DPCを得た。
1回昇華精製品;Da*1、2回昇華精製品;Da*2、昇華精製回数をさらに3,4回、さらにn回繰返した試料には、Da*3、Da*4、・・・、Da*nと名づけた。
【0131】
3)−2 水洗+蒸留+昇華精製
またこれとは別に原料DPCを“プラスチック材料講座 17 ポリカーボネート 著者 立川利久ほか(日刊工業新聞社)”45ページ記載の方法に従い温水(50℃)洗浄を3回繰返し、乾燥後、減圧蒸留を行い167〜168℃/2.000kPa(15mmHg)の留分を採取し、さらに上記昇華精製を行いジフェニルカーボネートの精製物D−cを得た。
【0132】
3)−3 イオン交換精製
原料DPCを10倍量のアセトンに溶解し、カチオン、アニオン混合イオン交換樹脂カラムを通した後溶媒を、上記の減圧留去、昇華精製を行い、ジフェニルカーボネートの精製物D−dを得た。
【0133】
精製したビスフェノールAおよびジフェニルカーボネートに含まれる不純物を上記の方法で測定し、結果を下記表1〜表3に示した。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
[比較例1]
芳香族ポリカーボネートの製造は以下のように行った。攪拌装置、精留塔および減圧装置を備えた反応槽に、原料として市販BPA(Ag)を137重量部、および精製DPC(Da*1)を135重量部、重合触媒としてビスフェノールAのジナトリウム塩8.2×10-6重量部、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下TMAHと略称)5.5×10-3重量部を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
【0138】
攪拌下、反応槽内を13.33kPa(100mmHg)に減圧し、生成するフェノールを溜去しながら20分間反応させた。次に200℃に昇温した後、徐々に減圧し、フェノールを溜去しながら4.000kPa(30mmHg)で20分間反応させた。さらに徐々に昇温し220℃で20分間、240℃で20分間、260℃で20分間反応させ、その後、260℃で徐々に減圧し2.666kPa(20mmHg)で10分間、1.333kPa(10mmHg)で5分間反応を続行し、最終的に260℃/66.7Pa(0.5mmHg)で粘度平均分子量が15,300になるまで反応せしめた。
【0139】
その後、それぞれにドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(以下DBSPと略称)を3.6×10-4重量部加え、260℃/66.7Pa(0.5mmHg)で10分間攪拌した。最終的に、粘度平均分子量が15,300、末端水酸基濃度85、フェノキシ末端基濃度154(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0140】
[比較例2]
比較例1においてTMAHに替えテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(以下TBPHと略称)を1.7×10-2重量部使用し同様に重合を行った。最終的に、粘度平均分子量が15,300、末端水酸基濃度87、フェノキシ末端基濃度152(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0141】
[実施例1]
比較例1で得られた芳香族ポリカーボネートを電子工業用NMP1.5×103重量部に溶解したのち、電子工業用メタノール1.1×104重量部を加えて、沈殿したポリマーをろ別し、13.3Pa(0.1mmHg)、100℃にて24時間乾燥させた。得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度85、フェノキシ末端基濃度154(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0142】
[実施例2]
比較例1でポリカーボネートを製造時、粘度平均分子量15,300になった時点で、ポリマー1重量部当り、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート(以下SAMと略称)を8.0×10-3重量部添加、260℃、133.3Pa(1mmHg)で10分間攪拌、その後、DBSPを2.3×10-6重量部添加し、260℃、66.7Pa(0.5mmHg)で10分間攪拌した。
【0143】
得られた芳香族ポリカーボネートを電子工業用NMP1.5×103重量部に溶解したのち、電子工業用メタノール1.1×104重量部を加えて、沈殿したポリマーをろ別し、13.3Pa(0.1mmHg)、100℃にて24時間乾燥させた。得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度60、フェノキシ末端基濃度179(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0144】
[実施例3]
実施例2においてポリマー1重量部当り、SAMを17.6×10-3重量部使用し、以下同様に処理した。得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度30、フェノキシ末端基濃度209(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0145】
[実施例4]
比較例1においてBPA、DPCとして、精製BPA(Ac*1)および精製DPC(Da*1)を使用し、溶融重合を行った。重合後実施例3と同様にSAM、DBSPを使用し、最終的に得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度30、フェノキシ末端基濃度209(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0146】
[実施例5]
比較例1で得られた芳香族ポリカーボネートを電子工業用NMP1.5×103重量部に溶解し、活性炭処理をした後、溶液を攪拌しつつ、電子工業用メタノール1.1×104重量部を1×102重量部/minにて滴下し、沈殿したポリマーをろ別した。この再沈殿操作を2回繰返し行い、得られたポリマーを13.3Pa(0.1mmHg)、100℃にて24時間乾燥させた。得られたポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度85、末端フェノキシ基濃度154(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0147】
[実施例6]
比較例1においてBPA、DPCとして、精製BPA(Ab*2)および精製DPC(D−c)を使用し、溶融重合を行った。重合後実施例3と同様にSAM、およびDBSPを使用し、最終的に得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度30、フェノキシ末端基濃度209(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0148】
[実施例7]
実施例6においてTMAHの量を5.5×10-2重量部使用した以外は、同様に操作した。最終的に得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度30、フェノキシ末端基濃度209(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0149】
[実施例8]
比較例1で得られた芳香族ポリカーボネートを電子工業用NMP1.5×103重量部に溶解し、混合イオン交換樹脂カラム処理をした後、溶液を攪拌しつつ、電子工業用メタノール1.1×104重量部を1×102重量部/minにて滴下し、沈殿したポリマーをろ別した。この再沈殿操作を2回繰返し行い、得られたポリマーを13.3Pa(0.1mmHg)、100℃にて24時間乾燥させた。最終的に得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度85、末端フェノキシ基濃度154(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0150】
[実施例9]
比較例1においてBPA、DPCとして、精製BPA(Aab*2)および精製DPC(D−d)を使用し、溶融重合を行った。重合後実施例3と同様にSAM、およびDBSPを使用し、最終的に得られた芳香族ポリカーボネートは粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度30、フェノキシ末端基濃度209(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0151】
[比較例3]
攪拌装置、精留塔および減圧装置を備えた反応槽に、比較例1と同様にして原料を仕込み、ただし重合触媒としてビスフェノールAのジナトリウム塩8.2×10-5重量部、TMAH5.5×10-3重量部を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
【0152】
攪拌下、反応槽内を13.33kPa(100mmHg)に減圧し、生成するフェノールを溜去しながら20分間反応させた。次に200℃に昇温した後、徐々に減圧し、フェノールを溜去しながら4.000kPa(30mmHg)で20分間反応させた。さらに徐々に昇温し220℃で20分間、240℃で20分間、260℃で20分間反応させ、その後、260℃で徐々に減圧し2.666kPa(20mmHg)で10分間、1.333kPa(10mmHg)で5分間反応を続行し、最終的に280℃、66.7Pa(0.5mmHg)で粘度平均分子量が15,300になるまで反応せしめた。
【0153】
その後、DBSPを1.3×10-3重量部加え、280℃、66.7Pa(0.5mmHg)で10分間攪拌し、芳香族ポリカーボネートを得た。得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度85、末端フェノキシ基濃度154(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0154】
[比較例4](Mw=22,500の例)
比較例1において、芳香族ポリカーボネートの重合をさらに継続し、最終的に粘度平均分子量22,500のポリカーボネートを製造した。得られた芳香族ポリカーボネートは、粘度平均分子量22,500、末端水酸基濃度73、末端フェノキシ基濃度77(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0155】
[実施例10および11]
比較例4で得られた芳香族ポリカーボネートを実施例1、および実施例8と同様にそれぞれ処理した。得られたポリカーボネートは、粘度平均分子量いずれも、22,500、末端水酸基濃度73、末端フェノキシ基濃度77(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。
【0156】
[比較例5]
ホスゲン吹き込み管、温度計および攪拌機を設けた、容量5Lの反応槽に、原料ビスフェノールA、502.8g(2.21モル)、7.2%水酸化ナトリウム水溶液、2.21L(水酸化ナトリウム4.19モル)および、ハイドロサルファイトナトリウム、0.98g(0.0056モル)を仕込んで溶解し、攪拌下、塩化メチレン、1.27Lおよび48.5%水酸化ナトリウム水溶液、80.70g(水酸化ナトリウム、0.98モル)を加えた後、ホスゲン、250.80g(0.253モル)を25℃で180分かけて加え、ホスゲン化反応を行った。
【0157】
ホスゲン化終了後p−tert−ブチルフェノール、17.51g(0.117モル)、および48.5%水酸化ナトリウム水溶液、80.40g(0.97モル)および触媒としてトリエチルアミン、1.81ml(0.013モル)を加え、33℃に保持し2時間攪拌して反応を終了させた。反応混合液より、塩化メチレン層を分離し、水洗を5回繰返し精製して、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度15、末端フェノキシ基濃度224(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0.1のポリカーボネート樹脂を得た。
【0158】
[実施例12]
比較例5のポリマーに実施例1と同様の処理を行った。最終的に、粘度平均分子量15,300、末端水酸基濃度15、末端フェノキシ基濃度224(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0のポリカーボネート樹脂を得た。
【0159】
実施例1〜12および比較例1〜5で得られた芳香族ポリカーボネート中の含有不純物(単位;ppb、ppm)を下記表4に示す。
【0160】
【表4】
【0161】
実施例1〜12および比較例1〜5の製造法で得られた芳香族ポリカーボネートの物性を下記表5に示す。
【0162】
【表5】
【0163】
[実施例13、14および比較例6]
上記実施例8、9および比較例3の芳香族ポリカーボネートに、それぞれトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.01重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.08重量%加えた。次に、かかる組成物をベント式二軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−46)によりシリンダー温度240℃で脱気しながら溶融混練し、ペレットを得た。このペレットを用いてDVD(DVD−Video)ディスク基板温湿劣化試験を行った。
【0164】
射出成形機、住友重機械工業製DISK3 M III にDVD専用の金型を取り付け、この金型にアドレス信号などの情報の入ったニッケル製のDVD用スタンパーを装着し、上記ペレットを自動搬送にて成形機のホッパに投入し、シリンダー温度380℃、金型温度115℃、射出速度200mm/sec、保持圧力3,432kPa(35kgf/cm2)の条件で直径120mm、肉厚0.6mmのDVDディスク基板を成形した。
【0165】
長時間で厳しい温度、湿度条件下での光ディスクの信頼性を試験するために、芳香族ポリカーボネート光ディスク基板を温度80℃、相対湿度85%で1,000時間保持したのち、以下の測定によって基板を評価した。
【0166】
白点発生数:偏光顕微鏡を用いて温湿劣化試験後の光ディスク基板を観察し、20μm以上の白点が発生する数を数えた。これを25枚の光ディスク基板(直径120mm)について行い、その平均値を求め、これを白点個数とした。
【0167】
その結果、実施例13、実施例14および比較例6の白点数は、各々0.2個、0.1個および3.5個であった。
【0168】
[実施例15]
上記実施例10の芳香族ポリカーボネートを溶融した後、ギアポンプで定量供給し、成形機のTダイに送った。ギアポンプの手前からトリスノニルフェニルホスファイトを0.003重量%加え、鏡面冷却ロールと鏡面ロールで挟持または片面タッチで厚さ2mmまたは0.2mm、幅800mmのシートに溶融押出した。
【0169】
得られた芳香族ポリカーボネートシート(2mm厚み)の片面に可視光硬化型プラスチック接着剤((株)アーデル製 BENEFIX PC)を塗布し、同じシートを気泡が入らないように一方に押し出すようにしながら積層後、可視光線専用メタルハライドタイプを備えた光硬化装置により5,000mJ/cm2の光を照射して得られた積層板の接着強度をJIS K−6852(接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法)に準拠して測定した結果、接着強度が10.4MPa(106Kgf/cm2)であった。
【0170】
一方、厚み0.2mmの芳香族ポリカーボネートシートに、インキ(ナツダ 70−9132:色 136Dスモーク)および溶剤(イソホロン/シクロヘキサン/イソブタノール=40/40/20(wt%))を混合させて均一にし、シルクスクリーン印刷機で印刷を行い、100℃で60分間乾燥させた。印刷されたインキ面には転移不良もなく、良好な印刷であった。
【0171】
別に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンとホスゲンとを通常の界面重縮合反応させて得られたポリカーボネート樹脂(比粘度0.895、Tg175℃)30部、染料としてPlast Red 8370(有本化学工業製)15部、溶剤としてジオキサン130部を混合した印刷用インキで印刷されたシート(厚み0.2mm)を射出成形金型内に装着し、ポリカーボネート樹脂ペレット(パンライトL−1225 帝人化成(株)製を用いて310℃の成形温度でインサート成形を行った。インサート成形後の成形品の印刷部パターンに滲みやぼやけ等の異常もなく、良好な印刷部外観を有したインサート成形品が得られた。
【0172】
[実施例16〜22]
上記実施例10の芳香族ポリカーボネートにトリスノニルフェニルホスファイトを0.003重量%、トリメチルホスフェートを0.05重量%となるようにそれぞれ加え、均一に混合した芳香族ポリカーボネートパウダーを得た。このパウダーおよび表6、7記載の各成分(下記記載の記号で示した各成分)をタンブラーを使用して均一に混合した後、30mmφベント付き二軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−30)により、シリンダー温度260℃、1.33kPa(10mmHg)の真空度で脱気しながらペレット化し、得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG150U型)を使用して、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件で測定用の成形片を作成し、下記の評価を実施した。結果を表6および7に示す。
▲1▼−1 ABS:スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体;サンタックUT−61;三井化学(株)製
▲1▼−2 AS:スチレン−アクリロニトリル共重合体;スタイラック−AS 767 R27;旭化成工業(株)製
▲1▼−3 PET:ポリエチレンテレフタレート;TR−8580;帝人(株)製、固有粘度0.8
▲1▼−4 PBT:ポリブチレンテレフタレート;TRB−H;帝人(株)製、固有粘度1.07
▲2▼−1 MBS:メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体;カネエースB−56;鐘淵化学工業(株)製
▲2▼−2 E−1:ブタジエン−アルキルアクリレート−アルキルメタアクリレート共重合体;パラロイドEXL−2602;呉羽化学工業(株)製
▲2▼−3 E−2:ポリオルガノシロキサン成分およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が相互侵入網目構造を有している複合ゴム;メタブレンS−2001;三菱レイヨン(株)製
▲3▼−1 T:タルク;HS−T0.8;林化成(株)製、レーザー回折法により測定された平均粒子径L=5μm、L/D=8
▲3▼−2 G:ガラス繊維;チョップドストランドECS−03T−511;日本電気硝子(株)製、ウレタン集束処理、繊維径13μm
▲3▼−3 W:ワラストナイト;サイカテックNN−4;巴工業(株)製、電子顕微鏡観察により求められた数平均の平均繊維径D=1.5μm、平均繊維長17μm、アスペクト比L/D=20
▲4▼ WAX:α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合によるオレフィン系ワックス;ダイヤカルナ−P30;三菱化成(株)製(無水マレイン酸含有量=10wt%)
【0173】
(A)曲げ弾性率
ASTM D790により、曲げ弾性率を測定した。
(B)ノッチ付衝撃値
ASTM D256により厚み3.2mmの試験片を用いノッチ側からおもりを衝撃させ衝撃値を測定した。
(C)流動性
シリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧力98.1MPaでアルキメデス型スパイラルフロー(厚さ2mm、幅8mm)により流動性を測定した。
(D)耐薬品性
ASTM D638にて使用する引張り試験片に1%歪みを付加し、30℃のエッソレギュラーガソリンに3分間浸漬した後、引張り強度を測定し保持率を算出した。保持率は下記式により計算した。
保持率(%)=(処理サンプルの強度/未処理サンプルの強度)×100
【0174】
【表6】
【0175】
【表7】
【0176】
【発明の効果】
本発明のように、芳香族ポリカーボネート中の上記の特定不純物含有量を特定値以下に抑えることで、該ポリマーの耐久性、特に厳しい温湿条件下での長時間の耐久性を著しく向上させ、かつ良好な色調、透明性、機械強度を保持する効果が得られる。
また原料として、特定金属元素の含有量が特定値以下であるDPC類、BPA類を用いて重合することにより、安定性良好な芳香族ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
Claims (14)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り ア)含窒素塩基性化合物および含リン塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物10〜1,000μ化学当量および イ)芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当り、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.05〜5μ化学当量を含有する触媒の存在下、重縮合させてポリカーボネートを製造する方法において、1)Na金属元素含有重量が52ppb以下であり、かつ2)Fe、Cr、Mn、NiおよびPbのそれぞれの第1元素の含有重量が40ppb以下である、芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルを用い、3)芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当りの塩基性化合物の使用量を、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルが含有するFeの合計重量Fe*(ppb)に対し20×Fe*+200を超えない量とすることを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルのそれぞれが1)Na金属元素を35重量ppb以下で含有し、かつ2)第1元素を23重量ppb以下で含有する請求項1記載の方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルのそれぞれが1)Na金属元素を重量6ppb以下で含有し、かつ2)第1元素を重量6ppb以下で含有する請求項1記載の方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルのそれぞれがCu、Zn、In、Pd、SiおよびAlのそれぞれの第2元素を10重量ppb以下で含有する請求項1に記載の方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルのそれぞれが第3元素であるTiを1重量ppb以下で含有しそしてP、N、S、ClおよびBrのそれぞれの第4元素を1重量ppm以下で含有する請求項1に記載の方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物がビスフェノールAである請求項1に記載の方法。
- ビスフェノールAが、高速液体クロマトグラフ分析(細孔径100オングストロームの高純度球状シリカゲルに15%(炭素量として)のオクタデシル基を結合させた吸着剤を充填した内径4.6mmで長さが250mmのカラムを40℃±0.1℃に保持した高速液体クロマトグラフにより、溶離液Aとして0.1%リン酸水溶液を、溶離液Bとしてアセトニトリルをそれぞれ使用し、測定開始から5分までは溶離液A:溶離液Bの比率が1:1で溶離液Aと溶離液Bの合計の流量が0.9ml/minとなるように測定を行い、合計の流量を一定にしたまま、測定開始後5分から溶離液Bの割合を連続的に増加し、測定開始後55分までに溶離液A:溶離液Bの比率が0:1となるように溶離液Bの割合を上昇させるグラジエント操作を行い、波長254nmの紫外線検出器によりBPA類を分析)したときに、15.5分から24分までの間に溶離する化合物の吸収ピーク面積の合計がビスフェノールAの吸収ピーク面積に対する割合で2.0×10-3以下である請求項6に記載の方法。
- 上記溶離する化合物の吸収ピーク面積の合計がビスフェノールAの吸収ピーク面積に対して1.0×10-3以下である請求項7に記載の方法。
- ビスフェノールAが高速液体クロマトグラフ分析により、22分から24分までの間に溶離する化合物の吸収ピーク面積の合計がビスフェノールAの吸収ピーク面積に対する割合で5×10-5以下である請求項7に記載の方法。
- ビスフェノールAが高速液体クロマトグラフ分析により、22分から24分までの間に溶離しかつ分子量が307以上309以下の化合物の吸収ピーク面積の合計がビスフェノールAの吸収ピーク面積に対して2×10-5以下である請求項9記載の方法。
- 1−ナフトール類の含有量がビスフェノールA1重量部に対し1×10-4重量部以下である請求項11記載の方法。
- ビスフェノールAが、下記式(3)
- ビスフェノールAが、下記式(5)
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