JP4361192B2 - 安定化芳香族ポリカーボネート組成物 - Google Patents

安定化芳香族ポリカーボネート組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定化された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関するものであり、さらに詳しくは、該組成物を製造後直ちに、あるいは数ヶ月長期保管した後、加熱成形しても、色調悪化が少なく、分子量低下並びに黒色異物の生成の少ない耐熱安定性の良好な組成物に関する。
本発明の更なる目的は、上記耐熱安定化組成物からの射出成形物、とりわけ光学材料成形品を提供することに有る。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性などの機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性などにも優れており、広範な用途に用いられている。上記ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性前駆体のホスゲンを直接反応させる方法(界面重合法)、あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性前駆体の炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換反応(溶融法)させる方法などが知られている。
【0003】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応(溶融法)でポリカーボネート樹脂を製造する方法は、界面重合法による方法に比べて、有毒なホスゲンや、メチレンクロライド等のハロゲン化合物を溶媒として使用する問題がなく、安価にポリカーボネート樹脂を製造出来る利点があり、将来有望であると考えられる。
【0004】
エステル交換反応による溶融重合法では、製造効率を上げる為、プラスチック材料講座17 ポリカーボネート 頁48〜53頁等の文献に記載のように通常エステル交換触媒を使用する。
【0005】
エステル交換触媒としては、塩基性窒素化合物あるいは塩基性リン化合物とアルカリ金属化合物とを併用する触媒が、ポリカーボネート樹脂の生産性及び、樹脂の色調が良好でありポリマー分子中、分岐構造の生成も少なく、流動性等の品質が良好であり、ゲル等の異物の生成も少なく好ましい触媒といえる。
【0006】
しかし溶融重合法ポリカーボネート樹脂は、エステル交換触媒として使用するアルカリ金属化合物、その他、反応装置あるいは原料より混入する金属化合物のため、安定性に問題がある。とりわけ成形加工時の着色、分子量低下、黒色異物生成等の問題がある。
【0007】
この問題を解決する為、特開平4−328124号公報および、特開平4−328156号公報には、スルホン酸エステルを含む酸性化合物でエステル交換触媒を中和する方法が提案されている。しかしこの方法では、スルホン酸エステルから強酸が副生し、成形加工時、着色、分子量低下、黒色異物の生成、及びポリカーボネート成形品の使用時、加水分解等の劣化が起こる問題点の充分な解決には成っていない。
【0008】
溶融重合法ポリカーボネート樹脂に特開平8−59975号公報記載の方法に従い、スルホン酸ホスホニウム塩を単独で、あるいは、亜燐酸エステル系化合物あるいはフェノール系抗酸化剤を併用した場合、前述の問題点はかなり改善されるが、光学情報記録媒体、光学レンズ、その他耐熱成形品等さらに高度の耐熱安定性が要求される用途に対しては、長期間、高温環境下組成物を保管後、成形加工した場合、着色、分子量低下、黒色異物生成等の問題が依然残存している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、加熱成形加工時の着色、分子量低下、黒色異物の生成を抑制された耐熱安定化組成物を提供することであり、第二の目的は、該組成物を長期間保存した後、加熱成形加工した場合でも着色、分子量低下、及び黒色異物の生成を安定的に良好に低い水準に押さえることの出来る組成物を提供するものである。さらに第三の目的として、上記安定化組成物からの射出成形品、とりわけ光情報記録媒体用基板、光学材料を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、前述した特定物性を有するポリカーボネート樹脂、とりわけ、含窒素塩基性化合物あるいは含リン塩基性化合物とアルカリ金属化合物とよりなる触媒の存在下、エステル交換法により製造した芳香族ポリカーボネート樹脂と1)特定過酸化物分解性及び水分吸収能を有する芳香族亜燐酸エステル系化合物とよりなり、2)水分含有量0.2wt%以下の耐熱安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、加熱成形時、良好な色調安定性、分子量安定性、低い黒色異物生成能を有するとともに、長期保管した後、成形加工しても加熱成形時、良好な色調安定性、分子量安定性、低い黒色異物生成能を有すること、及び該組成物が射出成形品、とりわけ光記録媒体基板、光学レンズの成形に好適であることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物と、カーボネート結合形成性前駆体とより製造され、主たる繰り返し単位が一般式(1)
【0012】
【化2】
Figure 0004361192
【0013】
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Wは、炭素数2〜10のアルキリデン基、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜15のシクロアルキリデン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数8〜15のアルキレンアリーレンアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基もしくはスルホン基又は直接結合である。)
で表される、溶融粘度安定性;0.5%以下、末端水酸基濃度50モル%以下の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部と、特定の過酸化物分解性、および水分吸収能値を有する芳香族亜燐酸エステル系化合物;(リン原子として)5×10-6〜5×10-3重量部とからなり、かつ水分量0.2wt%以下の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が加熱成形時、良好な色調安定性、分子量安定性、低い黒色異物生成能を有するとともに、長期保管した後、成形加工しても加熱成形時、良好な色調安定性、分子量安定性、低い黒色異物生成能を有し、該組成物は射出成形品、とりわけ光記録媒体基板、レンズ等の光学材料の成形に好適であることを見出した。
【0014】
芳香族亜燐酸エステル系化合物の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂、100重量部当たり、(リン原子として)5×10-5〜5×10-3重量部の範囲である。好ましくは1×10-4ー5×10-3重量部の範囲で、さらに好ましくは1×10-4〜4×10-3重量部の範囲で、特に好ましくは2×10-4〜3×10-3重量部の範囲である。
【0015】
従来、各種亜燐酸エステル系化合物は樹脂の酸化防止剤として有効であることは公知であるが、上記のごとく特定の溶融粘度安定性、及び特定末端水酸基濃度を有する芳香族ポリカーボネート樹脂と特定の過酸化物分解性および水分吸収能を有する芳香族亜燐酸エステル系化合物とからなる、水分含有率0.2wt%以下の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、短期、長期にわたり、溶融成形加工時の着色、分子量低下、黒色異物の生成が良好であることは、従来技術範囲よりは、計り知れない新規知見である。
【0016】
芳香族亜燐酸エステル系化合物の過酸化物分解性;A値は、クメンハイドロパーオキシド;2×10-2モルと芳香族亜燐酸エステル系化合物;1×10-2化学当量とを含むクロロベンゼン溶液を30分、25℃に保持し、芳香族亜燐酸エステル系化合物が分解したクメンハイドロパーオキサイドの量を、芳香族亜燐酸エステル系化合物が化学量論的に分解しうる量で除した値である。本発明における芳香族亜燐酸エステル系化合物の過酸化物分解性;A値は50%以上である。
【0017】
この値が大で有るほど過酸化物分解性能が高いと判断される。しかし単にこの値が高いのみでは、本発明の目的を達成することは出来ない。亜燐酸エステル系化合物の水分吸収能との関係が重要である。
【0018】
分解したクメンハイドロパーオキサイドの量は、ヒドロキシパーオキシドが分解反応において、未反応で残ったヒドロキシパーオキシドをヨウ素法による滴定など公知の方法で定量することにより求めることができる。
【0019】
芳香族亜燐酸エステル系化合物の水分吸収能値;B値は、亜燐酸エステルをシャーレー中90%RH、50℃雰囲気下、所定時間保持後の重量増加分が、亜燐酸エステル系化合物が化学量論的に加水分解したときの重量増加分で除した値に100を乗じた値が1を超える時間である。B値は20Hr以上、好ましくは20から350Hr、特に好ましくは20から300Hrである。この値が高いと、長期保管後の加熱成形時、着色、黒色異物の生成が顕著である。
【0020】
なお加水分解したときの重量増加は亜燐酸エステルとしてP(OAr)3を例に説明すると、P(OAr)3+3H2O→P(OH)3+3ArOH(式中Arは芳香族環を表す。)の反応のP(OAr)3とP(OH)3+3ArOHの重量比較による。
【0021】
本発明で言う、芳香族亜燐酸エステル系化合物とは、芳香族残基が少なくとも一個、酸素原子を介してリン原子に結合した、活性水素を有しない三価のりん化合物である。したがって亜燐酸トリエステルに加え、亜ホスホン酸ジエステル、亜ホスフイン酸エステルも上記亜燐酸エステル系化合物に含有される。なお芳香族亜燐酸エステル系化合物の詳しい定義は現代有機合成シリーズ;5 有機リン化合物 (有機合成化学協会編)P78 を参照されたい。
【0022】
本発明で言う芳香族亜燐酸エステル系化合物としては具体的には例えば;
A−1)ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−2)ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−3)ビス(2,4−ジ−t−アミル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−4)ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−5)ビス(2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−6)2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、A−7)ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)オクチルフォスファイト、A−8)ビス(2,4−ジクミルフェニル)ノニルフォスファイト、A−9)ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)デシルフォスファイト、A−10)テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ジフェニルー4,4’−ジフォスフォナイト、A−11)トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等が例示される。しかしこれらに限定されるものではない。これらの中ではA−1、3、4、5、6、10などが好ましいものとして例示される。
【0023】
該安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、さらに燐酸エステル系化合物を芳香族ポリカーボネート樹脂、100重量部当たり、リン原子として、5×10-6〜5×10-3重量部、好ましくは1×10-5〜5×10-3重量部、さらに好ましくは2×10-5〜4×10-3重量部含むことが好ましい。
【0024】
かかる量の燐酸エステル系化合物の存在により芳香族亜燐酸エステル系化合物との共存作用が発揮され、加熱成形時、色調悪化が少なく、分子量低下並びに黒色異物の生成の少ない耐熱安定性の向上が実現される。かかる燐酸エステル系化合物及び芳香族亜燐酸エステル系化合物はその一部が芳香族ポリカーボネート分子鎖に結合していても良い。
【0025】
本発明で使用される燐酸エステル系化合物としては
B−1)ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスフェート、B−2)ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスフェート、B−3)ビス(2,4−ジ−t−アミル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスフェート、B−4)ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスフェート、B−5)ビス(2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスフェート、B−6)2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、B−7)トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)フォスフェート、B−8)トリス(2,4−ジクミルフェニル)フォスフェート、B−9)トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、B−10)テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ジフェニルー4,4’−ジフォスフォネート、B−11)燐酸トリメチル、B−12)燐酸トリフェニル、B−13)燐酸トリブチル、B−14)燐酸トリオクチル、B−15)燐酸トリブトキシエチル、B−16)燐酸トリクレジル、B−17)燐酸ジクレジルフェニル、B−18)燐酸ジイソプロピルフェニル、B−19)燐酸トリス(クロロエチル)、B−20)燐酸トリス(ジクロロプロピル)、B−21)ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、B−22)トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート等があげられる。しかしこれらに限定されるものではない。これらの中ではB−1、B−3、B−4、B−5、B−6、B−10などが好ましいものとして例示される。
【0026】
本発明安定化芳香族ポリカーボネート組成物においては、さらにフェノール系抗酸化剤をポリカーボネート樹脂100重量部当り1×10-4〜1×10-1重量部、好ましくは、5×10-4〜1×10-1重量部、さらに好ましくは、5×10-4〜5×10-2重量部含有することが好ましい。斯かるフェノール性抗酸化剤としてはフェノール性水酸基を有する化合物であり、該水酸基の、オルソ位の少なくとも一方が第3級炭素原子で置換されたものが好ましい。
【0027】
これらの具体例としては、たとえば
C−1)n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、C−2)テトラキス{メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、C−3)トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、C−4)1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、C−5)2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンペンタエリスリチルーテトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、C−6)2,2−チオジエチレンビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、C−7)2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、C−8)N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、C−9)3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネートジエチルエステル、C−10)トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、C−11)イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、 C−12)2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、C−13)N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヒドラジン}等が挙げられる
これらのうちC−1)n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、C−2)テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、C−3)トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}等が好ましいものとして例示される。
【0028】
芳香族ポリカーボネート樹脂には、溶融成形時の金型から離型性を向上させるために、多価アルコールと炭素数10〜22の飽和、或いは不飽和高級脂肪酸の部分エステル化合物を含有するのが好ましい。
【0029】
例えば飽和、或いは不飽和の脂肪族のモノ、ジあるいはトリカルボン酸と飽和、或いは不飽和の多価アルコール、たとえば;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブテンジオール、ジエチレングリコール等の飽和、不飽和の2価のアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の飽和、不飽和の3価のアルコール、ペンタエルスリトール等の飽和、不飽和の4価のアルコール、または5価以上の飽和、不飽和の多価アルコール、との部分エステルが挙げられる。
【0030】
具体的にはたとえば;高級脂肪酸としては;ステアリン酸、カプロン酸、オレイン酸、ベヘン酸、リグノグリセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸等を挙げる事ができる。
【0031】
多価アルコール類の具体例としてはたとえ;プロピレングリコール、グリセリン、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノールネオペンチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0032】
これらの多価アルコールと高級脂肪酸からの部分エステルとしてはたとえば;D−1)ペンタエリスリトールトリステアレート、D−2)ペンタエリスリトールジステアレート、D−3)ペンタエリスリトールモノオレート、D−4)ペンタエリスリトールモノベヘネート、D−5)グリセロールモノベヘネート、D−6)クグリセロールジベヘネート、D−7)グリセロールモノラウレート、D−8)グリセロールジラウレート、D−9)グリセロールモノステアレート、D−10)グリセロールジステアレート、D−11)トリメチロールプロパンモノオレート、D−12)トリメチロールプロパンジステアレート等が例示される。これらの好ましい配合量は;ポリカーボネート樹脂;100重量部当たり5×10-3〜2×10-1重量部、好ましくは6×10-3〜1×10-1重量部、の範囲である。限界値の範囲外の配合量では本発明の目的に不都合な場合が発生することがあり好ましくない。
【0033】
そのほか、以下例示する離型剤を所望により併用しても良い。
即ち、1)炭化水素系離形剤として、天然、合成パラフィンワックス類、ポリエチレンワックス、フルオロカーボン類等、2)脂肪酸系離形剤としては;ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、等の高級脂肪酸、オキシ脂肪酸トリメチロールプロパン、3)脂肪酸アミド系離形剤としては;エチレンビスステアリルアミドなどの脂肪酸アミド、エルカ酸アミド、等のアルキレンビス脂肪酸アミド類、アルコール系離形剤としては、ステアリルアルコール、セチルアルコール、などの脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール類などをあげることができる。その他ポリシロキサン類も使用可能である。
【0034】
かかる離型剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部が好ましい。
【0035】
本発明で言う芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般式(2)
【0036】
【化3】
Figure 0004361192
【0037】
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Wは、炭素数2〜10のアルキリデン基、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜15のシクロアルキリデン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数8〜15のアルキレンアリーレンアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基もしくはスルホン基又は直接結合である。)
であらわされる芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性前駆体とを溶液法または溶融法で反応させて製造された、一般式(1)
【0038】
【化4】
Figure 0004361192
【0039】
(式中の記号の定義は上記式(2)と同じである)
で表される主たる繰り返し単位を有するものである。
【0040】
溶融法で製造されたポリカーボネート樹脂のうち、エステル交換触媒の存在下、とりわけエステル交換触媒としてア)塩基性含窒素化合物およびまたは塩基性含リン化合物及びまたはイ)アルカリ金属化合物を含有するエステル交換触媒の存在下重縮合された芳香族ポリカーボネート樹脂が、本発明の目的、即ち成形加工時の安定性に関し、好ましく使用される。
【0041】
芳香族ジヒドロキシ化合物(2)としては;
具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシフェニル−1,1’−m−ジイソプロピルベンゼン、等のビス(4−ヒドロキシアリール)アルカン類
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−シクロヘキサン、4−[1−〔3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル〕−1−メチルエチル]−フェノール、4,4’−〔1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル〕ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシ3,3’ジメチルフェニル−9,9−フルオレン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類
ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類
4,4’−ジヒドロキシジフェニル−3,3’−イサチン等のジヒドロキシジアリールイサチン類、3,6−ジヒドロキシ−9,9−ジメチルキサンテン等のジヒドロキシジアリールキサンテン類、レゾルシン、5−フェニルレゾルシン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン等のジヒドロキシベンゼン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類が挙げられる。
【0042】
中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、がモノマーとしての安定性、更にはそれに含まれる不純物の量が少ないものの入手が容易である点、等より好ましいものとしてあげられる。
【0043】
本発明においては、ガラス転移温度の制御、流動性の向上、屈折率のアップ、あるいは複屈折の低減等光学的性質の制御等を目的として、各種モノマーを必要に応じて、芳香族ポリカーボネート中に一種あるいは2種以上を含有させることも可能である。
【0044】
これらの具体例としては、たとえば脂肪族ジヒドロキシ化合物類例えば、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,10−デカンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等あるいはジカルボン酸類、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、あるいはオキシ酸類例えばp−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、乳酸等が挙げられる。
【0045】
カーボネート結合形成性前駆体としては、溶液法では、ホスゲンなどのハロゲン化カルボニル、ハロホーメート化合物が、溶融法では、炭酸ジエステルが、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、等が挙げられる。その他ジメチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等も所望により使用できる。これらの内、ジフェニルカーボネートが、反応性、得られる樹脂の着色に対する安定性、更にはコストの点よりも好ましい。
【0046】
固相重合法で、上述の溶液法または溶融法で製造された分子量の小さなポリカーボネートオリゴマーを結晶化させ、高温、(所望により減圧)下、固体状態で重合を進めるたポリカーボネート樹脂も同様に好ましく使用することができる。
【0047】
またポリカーボネート樹脂の製造時、炭酸ジエステルとともに、ジカルボン酸、ジカルボン酸ハライド、ジカルボン酸エステル等のエステル結合形成前駆体のジカルボン酸誘導体を併用して製造された、エステル結合を含有するポリ(エステルカーボネート)に対しても本発明の剤は有効に使用できる。
【0048】
エステル結合形成性前駆体であるジカルボン酸誘導体としては;テレフタル酸、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルなどの芳香族ジカルボン酸誘導体、コハク酸、アジピン酸、ドデカンニ酸、ダイマー酸、アジピン酸クロリド、デカン二酸ジフェニル、ドデカンニ酸ジフェニル等の脂肪族ジカルボン酸誘導体類、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸クロリド、シクロプロパンジカルボン酸ジフェニル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニル等の脂環式ジカルボン酸誘導体類をあげることができる。
【0049】
また一般式(2)であらわされる上記のジヒドロキシ化合物とともに、一分子中に3個以上の官能基を有する多官能化合物を併用することもできる。このような多官能化合物としてはフェノール性水酸基、カルボキシル基を有する化合物が好ましく使用される。
具体的にはたとえば;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α、α’、α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン−2、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、トリメリット酸、ピロメリット酸などがあげられる。
【0050】
これらのうち1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α、α’、α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、トリメリット酸等が好ましく使用できる。
【0051】
たとえばポリカーボネートの溶融粘度をあげる目的で多官能化合物を併用するときは、芳香族ジヒドロキシ化合物に1モルに対して0.01モル以下、好ましくは0.00005〜0.01モル、さらに好ましくは0.0001〜0.007モルの範囲で選択される。
【0052】
繰り返し単位(1)のポリカーボネートを製造する方法において、溶液法では、触媒として3級アミン、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物及びその塩、イミノエーテルおよびその塩、アミド基を有する化合物などが使用される。
【0053】
溶液法では反応の際生じる塩酸などのハロゲン化水素の捕捉剤として多量のアルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物が使用されるので、製造後のポリマー中に、こうした不純物が残留しないように十分な洗浄、精製をする事が好ましい。
【0054】
溶融法、固相重合法では触媒系については、アルカリ金属化合物を含有する触媒系が好ましく使用されるが、ア)塩基性窒素化合物及びまたは塩基性リン化合物とイ)アルカリ金属化合物とよりなる触媒が好ましく使用される。アルカリ金属化合物の使用量は、アルカリ金属として、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し1×10-8から1×10-6当量にする事が重要である。上記範囲を逸脱すると、得られるポリカーボネート樹脂の諸物性に悪影響及ぼしたり、あるいはエステル交換反応が十分に進行せず、高分子量のポリカーオネート樹脂が得られない等の問題があり、好ましくない。
【0055】
アルカリ金属化合物としては、従来エステル交換触媒として公知のアルカリ金属の水酸化物、炭化水素化合物、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、有機カルボン酸塩、水素化硼素塩、燐酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。
具体例としては水酸化ナトリウム、炭酸リチウム、酢酸カリウム、硝酸ルビジウム、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、シアン酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、
ステアリン酸リチウム、水素化ホウソナトリウム、水素化ホウソリチウム、フェニル化硼素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸水素ジカリウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、モノカリウム塩、ナトリウムカリウム塩、フェノールのナトリウム塩等が挙げられる。
【0056】
塩基性窒素化合物の具体例としてはたとえば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(MeNOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(BuNOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(φ−CH(Me)NOH)、などのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する第4級アンモニウムヒドロキシド類、
テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムフェノキシド、テトラブチルアンモニウム炭酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムエトキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する塩基性アンモニウム塩、トリエチルアミン、などの第三級アミン、あるいはテトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラメチルアンモニウムトラフェニルボレート(Me4NBPh4)などの塩基性塩などを挙げることができる。
【0057】
塩基性リン化合物の具体例としてはたとえばテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(Bu4POH)、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3POH)、ヘキサデシルトリメチルホスホニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する第4級ホスホニウムヒドロキシド類、あるいはテトラブチルホスホニウムボロハイドライド(Bu4PBH4)、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(Bu4PBPh4)、などの塩基性塩などを挙げることができる。
【0058】
塩基性窒素化合物及びまたは塩基性リン化合物は、塩基性窒素原子あるいは塩基性リン原子として芳香族ジヒドロキシ化合物、1モルに対し、1×10-5〜5×10-4化学当量となる割合で用いるのが好ましい。より好ましい使用割合は、同じ基準に対し2×10-5〜5×10-4化学当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し5×10-5〜5×10-4化学当量となる割合である。
【0059】
本発明ポリカーボネート樹脂は溶融粘度安定性0.5%以下のものであり、溶融粘度安定性を0.5%以下にするためには、重縮合反応後、さらには所望により末端水酸基の端封止反応終了後のポリカーボネート樹脂に対し溶融粘度安定剤(D)を特定量を添加する。溶融粘度安定性の劣ったポリカーボネート樹脂においては、成形加工時の安定性不良に加えて、高湿条件化および成型品の長期使用時の機械的物性の安定性不良、とりわけ耐衝撃性の悪化=低下が著しく、実用性に耐えない。
【0060】
本発明で使用する溶融粘度安定剤は、(D)−1;スルホン酸ホスホニウム塩、アンモニウム塩及びまたは(D)−2;スルホン酸、及びあるいはスルホン酸低級エステルである。
【0061】
(D)−1で表わされる化合物の具体的な例としては、たとえば;オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、ーSO3−(CH23−P+(C253、等々である。
【0062】
(D)−2;のスルホン酸、スルホン酸低級エステルとしては
p−トルエンスルホン酸、のごとき芳香族スルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸、等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、ヘキサデシルスルホン酸エチル、デシルスルホン酸ブチル、等が例示される。
好ましくはスルホン酸そのものよりエステル化合物が使用される。
【0063】
溶融粘度安定剤は、溶融重合法ポリカーボネート樹脂中、残存する塩基性アルカリ金属化合物の活性を低減するのに有効である。アルカリ金属化合物触媒のアルカリ金属元素、1化学当量あたり、(D)−1の化合物においては0.7〜50化学当量を好ましくは0.8〜20化学当量を、さらに好ましくは、0.9〜10化学当量を、(D)−2の化合物においては0.7〜20化学当量、好ましくは0.8〜10化学当量を、さらに好ましくは0.9〜5化学当量使用することにより、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度安定性を0.5%以下に押さえることができる。
【0064】
(D)−2の溶融粘度安定剤を使用した場合、溶融粘度安定処理を施した、ポリカーボネート樹脂に対し減圧処理を加えるのが好ましい。かかる減圧処理装置の形式は特に制限されるものではない。他方(D)−1の溶融粘度安定剤を使用した場合はかかる減圧処理を加える必要はない。
【0065】
減圧処理は、縦形槽型反応器、横形槽型反応器あるいはベント付き1軸、あるいは2軸押し出し機において0.05〜60mmHg、好ましくは1.3×104Pa以下の減圧下減圧処理可能である。減圧処理時間は、槽型反応器においては5分〜3時間、2軸押し出し機を使用した場合、5秒〜15分程度、処理温度は240℃から350℃で実施できる。減圧処理は押し出し機にてペレタイズと同時に行うこともできる。上記のような減圧処理を行うことにより、ポリカーボネート中残存する原料モノマー低減されるかまたは完全に除去される。
【0066】
本発明において、上記芳香族ポリカーネート樹脂の分子末端構造が好ましくは、実質的にアリールオキシ基とフェノール性水酸基とより成り、かつフェノール性末端基濃度が50モル%以下であることを特徴とする。アリールオキシ基としては炭素数1〜20の炭化水素基置換、あるいは無置換フェニールオキシ基が好ましく選択される。樹脂熱安定性の点から上記炭化水素基置換としては、第3級アルキル基、第3級アラルキル基、アリール基あるいは単に水素原子のものが好ましい。ベンジルタイプの水素原子を有するものは、耐活性放射線安定性の向上など所望の目的を有する場合、使用可能であるが、熱熱老化、熱分解等に対する安定性の観点よりは避けたほうが良い。好ましいアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、4−t−ブチルフェニルオキシ基、4−t−アミルフェニル基、4−フェニルフェニルオキシ基、4−クミルフェニルオキシ基等である。
【0067】
さらに望ましい実施態様に於いては、上記芳香族ポリカーボネート樹脂のフェノール性末端基濃度が50モル%以下、さらに好ましくは、3−40モル%以下さらに好ましくは5〜35モル%含有されることを特徴とする。フェノール性末端基濃度を5モル%より減少させても更なる物性の向上は少ない。、またフェノール性末端基濃度を50%を超えて導入した時は、本発明の目的に好ましくないことは、上記議論より自明である。
【0068】
界面重合法では分子量調節剤として使用される単官能性化合物により末端水酸基は低い濃度に押さえられ、末端水酸基濃度は上記範囲内に入っているが、溶融重合法においては、化学反応論的に末端水酸基が50モル%程度のものが製造されやすいため、積極的に末端水酸基を減少させる必要がある。
【0069】
即ち末端水酸基濃度を上記範囲内にするには、以下記述する従来公知の1)或いは2)などの方法で達成しうる。
【0070】
1)重合原料仕込みモル比制御法;重合反応仕込み時のDPC/BPAモル比を高めることにより、たとえば重合反応装置の特徴を考え1.03から1.10の間に設定する。
【0071】
2)末端封止法;重合反応終了時点において例えば、米国特許第5696222号明細書記載の方法に従い、上記文献中記載のサリチル酸エステル系化合物により末端水酸基を封止する。
【0072】
サリチル酸エステル系化合物の使用量は封止反応前の末端水酸基、1化学当量当たり0.8〜10モル、より好ましくは0.8〜5モル、特に好ましくは0.9〜2モルの範囲である。かかる量比で添加することにより、末端OH基の80%以上を好適に封止することができる。又本封止反応を行う時、上記特許記載の触媒を使用するのが好ましい。
末端水酸基濃度の低減は、重合触媒を失活させる以前の段階において好ましく実施される。
【0073】
サリチル酸エステル系化合物としては具体的には、2−メトキシカルボニルフェニル−フェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−クミルフェニルカーボネートのごとき2−メトキシカルボニルフェニルアリールカーボネート類、
2−メトキシカルボニルフェニル−ラウリルカーボネート、のごとき2−メトキシカルボニルフェニル−アルキルカーボネート類、
2−エトキシカルボニルフェニル−フェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−ヘキシルフェニルカーボネート、のごとき2−エトキシカルボニルフェニル−アリールカーボネート類、
2−エトキシカルボニルフェニル−オクチルカーボネート、のごとき2−エトキシカルボニルフェニル−アルキルカーボネート類、
(2−メトキシカルボニルフェニル)ベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−ブトキシベンゾエート、4−(o−エトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニル安息香酸(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステルのごとき芳香族カルボン酸の(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステル、
(2−エトキシカルボニルフェニル)ベンゾエート、のごとき芳香族カルボン酸の(2’−エトキシカルボニルフェニル)エステル、
(2−メトキシカルボニルフェニル)ステアレート、ビス(2−メトキシカルボニルフェニル)アジペートのごとき脂肪族カルボン酸エステルが挙げられる。
【0074】
本発明の樹脂組成物には所望により従来公知の難燃剤を併用してもかまわない。例えばリン酸エステル系化合物としては燐酸トリメチル、燐酸トリブチル、燐酸トリオクチル、燐酸トリブトキシエチル、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジクレジルフェニル、燐酸ジイソプロペニルフェニル、燐酸トリス(クロロエチル)、燐酸トリス(ジクロロプロピル)、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート等があげられる。好ましくは燐酸トリフェニル及び各種芳香族ポリヒドロキシ化合物のホスフェート(特にレゾルシンポリホスフェートまたはビスフェノールAポリホスフェート)である。
【0075】
また本発明においては所望により、ドリップ防止剤として、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)などを配合しても良い。
【0076】
本発明において、耐久性、安定性に優れた樹脂組成物が得られるが、これを用いて各種成形品を成形する場合に用途に応じて従来公知の加工安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤などを添加してもよい。
【0077】
例えば所望により分子量の低下や色相の悪化を防止するために以下のごとき通常の耐熱安定剤を添加することができる。かかる安定剤としては具体的には、たとえば従来公知の、リン系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤などを挙げることができる。
【0078】
リン系安定剤としては上記の本発明の亜燐酸エステル系化合物のほか、リン酸、亜燐酸、次亜燐酸、ピロリン酸、ポリリン酸、及びこららのエステルなどを用いる事ができる。本発明で使用するリン系安定剤としては例えば酸化防止剤として安定剤メーカーから市販されているものを含めて使用できる。
【0079】
例えば亜燐酸エステル類として;1)アリールアルキルホスファイト類;ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2−{{2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ{d,f}{1,3,2}ジオキサフォスフェピンー6−イル}オキシ}−N,N−ビス{2−{{2,4,8,10−テトラキス(1,1ージメチルエチル)ジベンゾ{d,f}{1,3,2}ジオキサフォスフェピンー6−イル}オキシ}−エチル}エタナミン等のアリールアルキルホスファイト類;2)トリアルキルホスファイト類;トリノニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスチルジホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイト等のトリアルキルホスファイト類;3)トリシクロアルキルホスファイト類;トリシクロヘキシルホスファイト等のトリシクロアルキルホスファイト類;4)トリアリールホスファイト類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルフォスファイト等のトリアリールホスファイト類
燐酸エステル類として、水添ビスフェノールーAのペンタエリスリチルホスフェートポリマー等のホスフェートポリマー、トリデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、等のトリアルキルホスフェート類;トリシクロヘキシルホスファイト等のトリシクロアルキルホスフェート類;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスフェート、等のトリアリールホスフェート類その他ホスホナイト類;等が挙げられる。
【0080】
チオエーテル系安定剤としてはたとえば;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等を、ヒンダードアミン系安定剤としてはたとえば;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−〔2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等を挙げることができる。
【0081】
これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.1重量部が更に好ましい。
これらは単独で用いても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0082】
また酸性物質補足剤として、分子中にエポキシ基を一個以上保有する化合物を使用しても良い。酸性物質補足剤としてはたとえば;エポキシ化大豆油、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2−エチルヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、等をあげる事ができる。
【0083】
これらのうち脂環式エポキシ化合物が好ましく使用できる。特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましく使用できる。このようなエポキシ化合物は、樹脂成分に対して1〜2000pm、好ましくは10〜1000ppmの量で添加される。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0084】
本発明所望の目的を達成するため従来公知の各種添加剤を使用できる。例えば1)紫外線吸収安定剤として;2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3、5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3、5−ジ−t−ペンチルー2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)フェニル}ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、等のベンゾフェノン系化合物2、4−ジ−t−ブチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンボエート等のベンゾエート系化合物をあげることができる。
【0085】
これらの紫外線吸収光安定剤は、樹脂成分100重量部に対し通常0.001〜5重量部、好ましくは0.05〜1.0重要部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部の量で用いることができる。これらの剤は単独で用いても良いし混合して使用しても良い。
【0086】
2)クエンチャーとして例えばニッケルジブチルジチオカーバメート、{2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)}−2−エチルヘキシルアミンニッケル、等のニッケル系クエンチャー、3)金属不活性化剤として例えば;N,N’−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン等の化合物
4)金属石鹸として例えば;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ニッケル等の化合物、5)造核剤として例えば;ジベンジリデンソルビトール、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノールアッシドホスフェートナトリウム塩)等のソルビトール系、リン酸塩系化合物が挙げられる。
【0087】
6)帯電防止剤として例えば;
(βーラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
【0088】
また本発明の樹脂においては所望により有機、あるいは無機の染料、顔料等の着色剤を使用できる。
【0089】
7)無機系着色剤として具体的には、二酸化チタン、などの酸化物、アルミナホワイト、などの水酸化物、硫化亜鉛などの硫化物、紺青などのフェロシアン化物、ジンククロメート、などのクロム酸塩、硫酸バリウムなどの硫酸塩、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、群青などの珪酸塩、マンガンバイオレットなどのリン酸塩、カーボンブラックなどの炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉などの金属着色剤などが挙げられる。
【0090】
8)有機系着色剤として具体的には、ナフトールグリーンBなどのニトロソ系、ナフトールイエローSなどのニトロ系、ナフトールレッド、クロモフタールイエローなどのアゾ系、フタルシアニンブルーやファストスカイブルーなどのフタロシアニン系、インダントロンブルー、等の縮合多環系着色剤などがあげられる。
【0091】
これら着色剤は単独で使用しても良いし、あるいは混合で使用しても良い。これら着色剤は樹脂成分100重量部あたり通常1×10-6〜5重量部、好ましくは1×10-6〜3重量部、さらに好ましくは1×10-5〜1重量部の量で用いることができる。
【0092】
更に、本発明の芳香族ポリカーボネートに本発明の目的を損なわない範囲で、剛性などを改良する為に無機および有機充填材を配合することが可能である。かかる無機充填材のとしてはタルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の板状または粒状の無機充填材やガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラストナイト、カーボン繊維、アラミド繊維、金属系導電性繊維等の繊維状充填材、架橋アクリル粒子、架橋シリコーン粒子等の有機粒子を挙げることができる。これら無機および有機充填材の配合量は本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して1〜150重量部が好ましく、3〜100重量部が更に好ましい。また、本発明で使用可能な無機充填材はシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。この表面処理により、芳香族ポリカーボネートの分解が抑制されるなど良好な結果が得られる。
【0093】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂には、特定の目的をもって以下の熱可塑性樹脂を本発明の目的の損なわれない範囲で配合することもできる。
【0094】
かかる他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0095】
本発明で製造されるポリカーボネートから射出成形法などにより、耐久性、安定性が良好な成形品を得ることができる。
【0096】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記特定配合剤を適用することにより該ポリマー組成物の耐久性、特に厳しい温湿条件下での長時間の耐久性を保持する効果及び帯電防止性が得られ、該ポリマーを使用して得られたコンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW等、マグネット・オプティカルディスク(MO)等、デジタルバーサタイルディスク(DVD−ROM、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−R、DVD−RAM等)で代表される高密度光ディスク用の基板は長期に渡って高い信頼性が得られる。特にデジタルバーサタイルディスクの高密度光ディスクに有用である。
【0097】
本発明で製造される芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からのシートは、難燃性、帯電防止性、に加え接着性や印刷性の優れたシートであり、その特性を生かして電気部品、建材部品、自動車部品等に広く利用され、具体的には各種窓材即ち一般家屋、体育館、野球ドーム、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車両等)等の窓材のグレージング製品、また各種側壁板(スカイドーム、トップライト、アーケード、マンションの腰板、道路側壁板)、車両等の窓材、OA機器のデイスプレーやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、水槽用ポリカーボネート樹脂積層板、プロジェクションテレビやプラズマディスプレイの前面板やフレンネルレンズ、光カード、光ディスクや偏光板との組合せによる液晶セル、位相差補正板等の光学用途等に有用である。かかる芳香族ポリカーボネート組成物シートの厚みは特に制限する必要はないが、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜8mm、0.2〜3mmがが特に好ましい。また、かかる芳香族ポリカーボネート組成物シートに、新たな機能を付加する各種加工処理(耐候性を改良するための各種ラミネート処理、表面硬度改良のための耐擦傷性改良処理、表面のしぼ加工、半および不透明化加工等)を施してもよい。
【0098】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂に添加剤を配合するには、任意の方法が採用される。例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、溶融押出法でシート化する。
【0099】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分を任意の方法、例えばタンブラー、ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押し出し機等により混合して製造することができる。
【0100】
本発明で製造されるポリカーボネートから射出成形法などにより、難燃性、帯電防止性、塵付着防止性、耐久性、安定性が良好な成形品を得ることができる。
【0101】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【0102】
[分析]
1)ポリカーボネートの固有粘度[η];塩化メチレン中、20℃ウベローデ粘度管にて測定した。固有粘度より粘度平均分子量は字式より計算した。
[η]=1.23×10-4Mw0.83
【0103】
2)末端基濃度;サンプル0.02gを0.4mlのクロロホルムに溶解し、20℃で1H−NMR(日本電子社製EX−270)を用いて、末端水酸基、(A)構造末端基及び末端フェニル基濃度を測定した。
【0104】
3)溶融粘度安定性;レオメトリックス社のRAA型流動解析装置を用い窒素気流下、剪断速度1rad/sec.300℃で測定した溶融粘度の変化の絶対値を30分間測定し、1分当たりの変化率を求めた。ポリカーボネート樹脂組成物の短期、長期安定性が良好であるためには、この値が0.5%を超えてはならない。
【0105】
4)組成物水分含有率;
試料約100gを精秤、次いで真空乾燥機中120℃で、3Pa以下で10hr乾燥し、秤量、その重量減より含水率を求めた。
【0106】
5)成形加工時の熱安定性;滞留安定性と黒色異物の生成
射出成形機よりシリンダー温度300℃、金型温度80℃の条件で、成形した色見本板の色相(カラーL,a,b)とシリンダー中380℃×10分間滞留させた後成形して得た色見本板の色相(カラーL’,a’,b’)を色差計で測定し、△E;により滞留安定性を評価した。
【0107】
△E値は分子量低下の大きさとも関係する一方、成形品の官能テストを大きく左右する。△E値として3を超えるものは成形品の色相を大幅に悪化、黄色味の強い成形品が得られる可能性が大であるため、NGと判定、2.5−3.0のもの;合格、2.0−2.5未満のもの;良好合格、2未満のもの;優秀合格と判定した。
△E=〔(L−L’)2+(a−a’)2+(b−b’)21/2
日本電色(株)製Z−1001DP色差計
黒色異物の生成数;100mm×100mm×2mmの平板を、射出成形機よりシリンダー温度380℃、金型温度80℃の条件及び、とシリンダー中380℃×10分間滞留させた後成形して得た平板中5枚中の黒色異物の合計個数を目視、;計測評価した。黒色異物数は成形品の品質そのものを直接左右する重要判定項目である。
0−2個;優秀OK、3−5;良好OK、5−9;OK、10以上;NGと判定した。
組成物製造直後及び3ヶ月室温保管後に実施した。
【0108】
[参考例1:PC−1の製造]
芳香族ポリカーボネートの製造は以下のように行った。
攪拌装置、精留塔および減圧装置を備えた反応槽に、原料として精製ビスフェノールAを137重量部、および精製ジフェニルカーボネートを133重量部、重合触媒としてビスフェノール2ナトリウム塩4.1×10-5重量部、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド5×10-3重量部を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
【0109】
攪拌下、反応槽内を13.33kPa(100mmHg)に減圧し、生成するフェノールを溜去しながら20分間反応させた。次に200℃に昇温した後、徐々に減圧し、フェノールを溜去しながら4.000kPa(30mmHg)で20分間反応させた。さらに徐々に昇温し220℃で20分間、240℃で20分間、260℃で20分間反応させ、その後、260℃で徐々に減圧し2.666kPa(20mmHg)で10分間、1.333kPa(10mmHg)で5分間反応を続行し、最終的に260℃/66.7Pa(0.5mmHg)で粘度平均分子量が15300になるまで反応せしめた。
【0110】
最終的に、粘度平均分子量が15300、末端OH基濃度130、フェノキシ末端基濃度109(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性1.1であった。
【0111】
樹脂水分率を低下させるためには120℃1.333kPa以下で10Hr以上乾燥後、アルミラミネート袋に密封保存した。
また樹脂を水冷、チップ化した後ポリエチレン製袋に密封保管した場合水分率は0.3%であった。(PC−1)
【0112】
[参考例2:PC−2の製造]
参考例1と同様にポリカーボネートを製造し、その粘度平均分子量が15300になった時点で、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート(以後表を含めSAMと略称)を4.0重量部を添加、260℃、133.3Pa(1mmHg)で10分間攪拌し、その後ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(以後表中を含めDBSPと略称する)3.6×10-4重量部を添加、260℃、66.7Pa(0.5mmHg)で10分間攪拌した。得られたポリカーボネートの粘度平均分子量は15300、末端OH基濃度48、フェノキシ末端基濃度191(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。(PC−2)
【0113】
[参考例3、4:PC−3、PC−4の製造]
参考例1と同様にして重合反応を継続し、粘度平均分子量22500になるまで重合反応を継続した。最終的に粘度平均分子量22500、端OH基濃度73、末端フェノキシ基濃度77(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性1.0のポリマーを得た。(PC−3)
得られたポリカーボネートを参考例2同様に処理し、SAM;1.95重量部、DBSP;3.6×10-4重量部を添加した。最終的に得られたポリカーボネートの粘度平均分子量は、22500、末端OH基濃度37、末端フェノキシ基濃度113(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0であった。(PC−4)
【0114】
[参考例5:PC−5の製造;界面重合]
ホスゲン吹き込み管、温度計及び攪拌機を設けた、容量5lの反応槽にビスフェノールA、502.8g(2.21モル)、7.2%水酸化ナトリウム水溶液、2.21l(水酸化ナトリウム4.19モル)及び、ハイドロサルファイトナトリウム、0.98g(0.0056モル)を仕込んで溶解し、攪拌下、塩化メチレン、1.27l及び48.5%水酸化ナトリウム水溶液、80.70g(水酸化ナトリウム、0.98モル)を加えた後、ホスゲン、250.80g(0.253モル)を25℃で180分かけて加え、ホスゲン化反応を行った。
【0115】
ホスゲン化終了後p−tert−ブチルフェノール、17.51g(0.117モル)、及び48.5%水酸化ナトリウム水溶液、80.40g(0.97モル)及び触媒としてトリエチルアミン、1.81ml(0.013モル)を加え、33℃に保持し2時間攪拌して反応を終了させた。反応混合液より、塩化メチレン層を分離し、水洗を5回繰り返し精製して、粘度平均分子量15300、末端OH基濃度15、末端フェノキシ基濃度224(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0.1のポリカーボネート樹脂を得た。
【0116】
[実施例1〜6および比較例1〜5:ペレットの作成]
上記参考例の芳香族ポリカーボネート樹脂に、表中記載の種類、量のA)芳香族亜燐酸エステル系化合物、B)燐酸エステル系化合物、c)フェノール系化合物及びD)多価アルコールの脂肪酸部分エステルを加えた。
A−1)ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、
A−3)ビス(2,4−ジ−t−アミル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−9)ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)デシルフォスファイト、A−10)テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ジフェニルー4,4’−ジフォスフォナイト、
A−030;トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)フォファイト;A−031;(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ジオクチルフォスファイト
B−1)ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスフェート、B−7)トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)フォスフェート、B−7)トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)フォスフェート、
C−1)n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、C−2)テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、C−3)トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、
D−9)グリセロールモノステアレート
【0117】
次に、かかる組成物をベント式二軸押出機[神戸製鋼(株)製KTX−46]によりシリンダー温度240℃で脱気しながら溶融混練し、ペレットを得た。
【0118】
該組成物を使用した安定性の評価を表1、2に記す。滞留安定性−1;チップ作成直後の成形評価値、滞留安定性−2;チップ作成3ヶ月後の成形評価値である。
【0119】
[実施例7;シート評価例]
上記実施例5の組成物を溶融した後、ギアポンプで定量供給し、成形機のTダイに送った。鏡面冷却ロールと鏡面ロールで挟持または片面タッチで厚さ2mmまたは0.2mm、幅800mmのシートに溶融押出した。
【0120】
得られた芳香族ポリカーボネートシート(2mm厚み)の片面に可視光硬化型プラスチック接着剤[(株)アーデル BENEFIX PC]を塗布し、同じシートを気泡が入らないように一方に押し出すようにしながら積層後、可視光線専用メタルハライドタイプを備えた光硬化装置により5,000mJ/cm2の光を照射して得られた積層板の接着強度をJIS K−6852(接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法)に準拠して測定した結果、接着強度が10.4MPa(106Kgf/cm2)で良好であった。
【0121】
一方、厚み0.2mmの芳香族ポリカーボネートシートに、インキ[ナツダ 70−9132:色 136Dスモーク]および溶剤[イソホロン/シクロヘキサン/イソブタノール=40/40/20(wt%)]を混合させて均一にし、シルクスクリーン印刷機で印刷を行い、100℃で60分間乾燥させた。印刷されたインキ面には転移不良もなく、良好な印刷であった。
【0122】
別に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンとホスゲンとを通常の界面重縮合反応させて得られたポリカーボネート樹脂(比粘度0.895、Tg175℃)30部、染料としてPlast Red 8370(有本化学工業製)15部、溶剤としてジオキサン130部を混合した印刷用インキで印刷されたシート(厚み0.2mm)を射出成形金型内に装着し、ポリカーボネート樹脂ペレット(パンライトL−1225 帝人化成製)を用いて310℃の成形温度でインサート成形を行った。インサート成形後の成形品の印刷部パターンに滲みやぼやけ等の異常もなく、良好な印刷部外観を有したインサート成形品が得られた。
【0123】
[実施例8〜13;ポリマーブレンドコンパウンド]
上記実施例5芳香族ポリカーボネートに、さらにトリメチルホスフェートを0.05重量%、及び表3、4記載の下記記載の記号で示した各成分をタンブラーを使用して均一に混合した後、30mmφベント付き二軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−30)により、シリンダー温度260℃、1.33kPa(10mmHg)の真空度で脱気しながらペレット化し、得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG150U型)を使用して、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件で測定用の成形片を作成し、下記の評価を実施した結果を表3、4に示す。
【0124】
▲1▼−1 ABS:スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体;サンタックUT−61;三井化学(株)製
▲1▼−2 AS:スチレン−アクリロニトリル共重合体;スタイラック−AS 767 R27;旭化成工業(株)製
▲1▼−3 PET:ポリエチレンテレフタレート;TR−8580;帝人(株)製、固有粘度0.8
▲1▼−4 PBT:ポリブチレンテレフタレート;TRB−H;帝人(株)製、固有粘度1.07
▲2▼−1 MBS:メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体;カネエースB−56;鐘淵化学工業(株)製
▲2▼−2 E−1:ブタジエン−アルキルアクリレート−アルキルメタアクリレート共重合体;パラロイドEXL−2602;呉羽化学工業(株)製
▲2▼−3 E−2:ポリオルガノシロキサン成分及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が相互侵入網目構造を有している複合ゴム;メタブレンS−2001;三菱レイヨン(株)製
▲3▼−1 T:タルク;HS−T0.8;林化成(株)製、レーザー回折法により測定された平均粒子径L=5μm、L/D=8
▲3▼−2 G:ガラス繊維;チョップドストランドECS−03T−511;日本電気硝子(株)製、ウレタン集束処理、繊維径13μm
▲3▼−3 W:ワラストナイト;サイカテックNN−4;巴工業(株)製、電子顕微鏡観察により求められた数平均の平均繊維径D=1.5μm、平均繊維長17μm、アスペクト比L/D=20
▲4▼ WAX:α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合によるオレフィン系ワックス;ダイヤカルナ−P30;三菱化成(株)製(無水マレイン酸含有量=10wt%)
【0125】
(A)曲げ弾性率
ASTM D790により、曲げ弾性率を測定した。
(B)ノッチ付衝撃値
ASTM D256により厚み3.2mmの試験片を用いノッチ側からおもりを衝撃させ衝撃値を測定した。
(C)流動性
シリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧力98.1MPaでアルキメデス型スパイラルフロー(厚さ2mm、幅8mm)により流動性を測定した。
(D)耐薬品性
ASTM D638にて使用する引張り試験片に1%歪みを付加し、30℃のエッソレギュラーガソリンに3分間浸漬した後、引張り強度を測定し保持率を算出した。保持率は下記式により計算した。
保持率(%)=(処理サンプルの強度/未処理サンプルの強度)×100
【0126】
【表1】
Figure 0004361192
【0127】
【表2】
Figure 0004361192
【0128】
【表3】
Figure 0004361192
【0129】
【表4】
Figure 0004361192
【0130】
【発明の効果】
本発明のように、芳香族ポリカーボネートと特定の過酸化物分解性;A値、および水分吸収能;B値を有する芳香族亜燐酸エステル系化合物とからなる安定化された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。さらに詳しくは、該組成物を製造後直ちに、あるいは数ヶ月長期保管した後、加熱成形しても、色調悪化が少なく、分子量低下並びに黒色異物の生成の少ない耐熱安定性の良好な組成物提供することができる。

Claims (10)

  1. 芳香族ジヒドロキシ化合物と、カーボネート結合形成性前駆体とより製造され、主たる繰り返し単位が下記式(1)
    Figure 0004361192
    (式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Wは、炭素数2〜10のアルキリデン基、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜15のシクロアルキリデン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数8〜15のアルキレンアリーレンアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基もしくはスルホン基又は直接結合である。)
    で表される、溶融粘度安定性が0.5%以下であり、かつ末端水酸基濃度50モル%以下の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部と、
    過酸化物分解性;A値(2×10-2モルのクメンハイドロパーオキシドおよび1×10-2化学当量の芳香族亜燐酸エステル系化合物とを溶解させたクロロベンゼン溶液を30分、25℃に保持したときの、芳香族亜燐酸エステル系化合物により分解されたクメンハイドロパーオキサイドの量を、該芳香族亜燐酸エステル系化合物が化学量論的に分解しうるクメンハイドロパーオキサイドの量で除した値で表される)が50%以上であり、かつ水分吸収能;B値(亜燐酸エステルをシャーレー中90%RH、50℃雰囲気下、所定時間保持後の重量増加分が、亜燐酸エステル系化合物が化学量論的に加水分解したときの重量増加分で除した値に100を乗じた値が1を超える時間である。)が20hr以上であり、
    A−1)ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−2)ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−3)ビス(2,4−ジ−t−アミル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−4)ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−5)ビス(2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、A−6)2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、A−7)ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)オクチルフォスファイト、A−8)ビス(2,4−ジクミルフェニル)ノニルフォスファイト、A−9)ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)デシルフォスファイト、A−10)テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ジフェニルー4,4’−ジフォスフォナイト、および、A−11)トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトからなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族亜燐酸エステル系化合物;(リン原子として)5×10-6〜5×10-3重量部とからなる水分量0.2wt%以下の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 芳香族ポリカーボネート樹脂;100重量部当たり、燐酸エステル系化合物(リン原子として)5×10-6〜1×10-3重量部をさらに含有することを特徴とする請求項1記載の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 芳香族ポリカーボネート樹脂;100重量部当たり、フェノール系酸化防止剤;1×10-4〜1×10-1重量部をさらに含有することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 芳香族ポリカーボネート樹脂;100重量部当り、多価アルコールと炭素数10〜22の高級脂肪酸との部分エステル化合物を5×10-3〜2×10-1重量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 該芳香族ポリカーボネート樹脂が、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換触媒の存在下で溶融縮重合させて得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 該エステル交換触媒が芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して塩基性窒素化合物及び又は塩基性リン化合物50〜500μ化学当量、かつアルカリ金属化合物0.01〜10μ化学当量からなることを、特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項記載の安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる射出成形物。
  9. 射出成形物が光情報記録媒体基板である請求項8記載の射出成形物。
  10. 射出成形物がレンズ或いはレンズカバーである請求項8記載の射出成形物。
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