JP4149601B2 - 安定化芳香族ポリカーボネート組成物及びそれよりの射出成型品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の安定剤を配合して成る安定化芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、レンズ、プリズム、光ディスク、シート、フィルムなどの透明性、色相安定性を要求される用途に好適な成形時の滞留安定性、具体的には、▲1▼熱安定性、色相安定性、さらに▲2▼精密成型品のための離型性、成形性の良好な前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及び該組成物の射出成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、光学特性、電気特性、寸法安定性に優れ、しかも自己消火性を有し、且つ耐衝撃性、破断強度などの機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性などにも優れた性質を持っており、このため広範な用途に、大量に使用されている。とりわけその透明性を生かし、レンズ、プリズム、光ディスク、シート、フィルム等に大量に使用されている。
【0003】
特にレンズや光ディスクのような光学樹脂用途に於いては、成型品に優れた透明性、及び色相が要求される。具体的には樹脂組成物の成形時の滞留安定性、とりわけ熱安定性、色相安定性が、さらに成形時における成形性、即ち設計どうりの形状、寸法の精密成形品を与える転写性、離型性等が、さらには成形品の湿熱耐久性などの環境安定性などが要求される。
【0004】
ポリカーボネート樹脂組成物の成形品を製造する場合、特にディスク等の精密成形品を成形する場合、通常、金型と成形品の離型性向上に効果が大きく、又該離型剤の適用によって、成型品の色相、透明性、表面性等の物性の低下の少ない離型剤として脂肪酸エステル系の離型剤が従来好適に使用されている。しかしながら脂肪酸エステル系化合物の特徴として、離型性は比較的良好な反面、耐熱性が低く、熱分解しやすい傾向がある。
【0005】
特に脂肪酸エステル系離型剤は、酸性あるいは塩基性化合物あるいは金属化合物の存在下、ポリカーボネート樹脂の成型温度条件下、特に340℃を超えた条件下、分解を起こし、離型能が低下したり、あるいは激しい場合は成形品の着色を引き起こしたり、成型金型を汚染する問題点を含んでいる。
【0006】
ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、芳香族ジヒドロキシ化合物にホスゲンを直接反応させる方法(界面重合法)、あるいはジフェニルカーボネートなどのジアリルカーボネートとを溶融状態でエステル交換反応(溶融法)させる方法などが知られている。
【0007】
界面重合法ポリカーボネート樹脂においては、上記問題を解決するため、ポリカーボネート樹脂に各種精製処理を施し、樹脂中の不純物を減少せしめるとともに、各種安定剤を併用し、上記離型剤の分解をある程度減少せしめることに成功している。
【0008】
しかしながら近年新規規格のDVDディスクの出現により、従来より高温の350℃あるいはそれ以上の温度条件下での基板成型が必要になり、基板成型時の離型剤あるいは樹脂組成物の分解、着色が新たな問題となってきている。
【0009】
エステル交換反応による溶融法ポリカーボネート製造法では、製造効率を上げる為、プラスチック材料講座17 ポリカーボネート 頁48〜53頁等の文献に記載のように通常エステル交換触媒を使用する。これらエステル交換触媒の内で、含窒素塩基性化合物あるいは含リン塩基性化合物とアルカリ金属化合物とを併用する触媒系が、ポリカーボネート樹脂の生産性、色調が良好であり、ポリマー分子中分岐構造の生成も少なく、流動性等の品質が良好でありゲル等の異物の生成も少なく好ましい触媒といえる。
【0010】
しかしながら溶融重合法ポリカーボネート樹脂では、エステル交換触媒として使用するアルカリ金属化合物あるいは各種添加剤に由来する副反応活性能のため、樹脂自身の熱、酸化雰囲気あるいは、加水分解的条件下での不安定性に加え、精密成型用助剤として添加される離型剤が上記分解等を引き起こすため、界面重合法ポリカーボネート樹脂、樹脂組成物に比較し離型剤が本来の能力を発揮しない場合が顕著に発生する問題がある。
【0011】
これらの問題を解決する為、特開平4―328124号公報および、特開平4―328156号公報には、スルホン酸エステルを含む酸性化合物でエステル交換触媒を中和する方法が提案されている。。
【0012】
又特開平8―59975号公報には、スルホン酸ホスホニウム塩と、亜燐酸エステル系化合物あるいはフェノール系抗酸化剤を併用する提案がなされている。
【0013】
かかる対策を講じた溶融重合法ポリカーボネート樹脂においても、脂肪酸エステル系離型剤を使用して精密成形品を成型すると、離型剤が分解等の副反応を起こし、期待される離型性能が発揮されず、成型品の変形、更には成型品の着色、及び成形機の金型表面の汚れがはなはだしく、問題に成ることが多い。特にDVD基板成型に必要な、高温条件下においてはこの傾向がはなはだしい。かかる欠点は、光ディスク等精密成型品の成型時には例えばグループ、ピット等の転写不良の原因と成る重大欠点となる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
成形加工時の安定性が良好な、樹脂及び離型剤の溶融成形時の分解着色、分子量低下、黒色異物の生成を抑制し、該組成物を使用して金型成形を行った場合の金型の汚れが少なくさらに金型からの離型性も良好で精密成形に好適で成形操作効率が良好なポリカーボネート樹脂を得ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成化合物とを反応して成る粘度平均分子量13,000〜100,000、且つ末端OH基量3〜80eq/tonの芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部と、
ア)脂肪酸エステル系離型剤;100*10-4〜5000*10-4重量部
イ)亜燐酸エステル系安定剤(リン分として);0.5*10-4〜25*10-4重量部
ウ)燐酸エステル系安定剤
とからなる残存溶融粘度安定性が0.5%以下である芳香族ポリカーボネート組成物であって、イ)亜燐酸エステル系安定剤(リン分としてQ*10-4重量部)、ポリカーボネート末端OH基濃度、およびウ)燐酸エステル系安定剤の含有量(リン分としてP*10-4重量部)について、特定量の関係を満たすことにより、該芳香族ポリカーボネート組成物の成形加工時の安定性向上、すなわち溶融成形時の樹脂及びまたは離型剤の分解着色、分子量低下、黒色異物の生成の低減を図り、さらに金型成型時の金型の汚れを減少させるとともに、結果的には離型剤の分解を抑制できる為、金型からの成形品の離型性も良好で精密成形に好適で成形操作効率の良好な芳香族ポリカーボネート組成物を得ることができることを見出した。
【0016】
即ち本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性化合物とを反応せしめて成る、主たる繰り返し単位が次式(1)
【0017】
【化2】
【0018】
(R1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基又はアリール基であり、Wは炭素数1〜10のアルキリデン基、アルキレン基、シクロアルキリデン基、シクロアルキレン基、アリール基置換アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、またはスルホン基である。)
で表わされる粘度平均分子量13,000〜100,000、且つ末端OH基量3〜80eq/tonの芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部と、
ア)脂肪酸エステル系離型剤;100*10-4〜5000*10-4重量部
イ)亜燐酸エステル系安定剤(リン分として);0.5*10-4〜25*10-4重量部
ウ)燐酸エステル系安定剤
とからなる残存溶融粘度安定性が0.5%以下である芳香族ポリカーボネート組成物であって、イ)亜燐酸エステル系安定剤(リン分としてQ*10-4重量部)、およびウ)燐酸エステル系安定剤の含有量(リン分としてP*10-4重量部)について、下記式(B)
【0019】
【数2】
0.1*(P)0.5+0.1*(OH)0.5≦Q≦(P)0.5+(OH)0.5・・(B)
を満足することを特徴とする安定化された芳香族ポリカーボネート組成物である。
【0020】
該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、成形加工時の安定性が向上し、すなわち溶融成形時の着色、分子量低下、黒色異物の生成が低減し、該組成物を使用して金型成形を行った場合、金型の汚れが減少し、さらに金型からの成形品の離型性も良好で精密成形に好適で成形操作効率の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であることを見出し本発明に到達した。
【0021】
ここで重要な点は、粘度平均分子量13,000〜100,000、且つ末端OH基量が3〜80eq/tonの芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を使用し、組成物の物性、とりわけ組成物の溶融粘度安定性を0.5%以下に保っておくことであり、かかる樹脂において始めて本発明の添加剤系を適用することにより、本発明の目的を達成できる。
【0022】
また、本発明の芳香族ポリカーボネート組成物のフェノール性OH濃度は3〜80eq/tonとすることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の末端OH基量が3〜80eq/tonであり、上記のようにア)脂肪酸エステル系離型剤、イ)亜燐酸エステル系安定剤、ウ)燐酸エステル系安定剤を特定量含む芳香族ポリカーボネート組成物のフェノール性OH濃度は3〜80eq/tonとなるが、さらに該芳香族ポリカーボネート組成物中に各種添加剤を含んでも芳香族ポリカーボネート組成物のフェノール性OH濃度はこの範囲とすることが好ましい。
【0023】
さらに本発明の芳香族ポリカーボネート組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度安定性を0.5%以下に保っておくことにより、本発明の目的を好適に達成できる。
【0024】
すなわち、粘度平均分子量13,000〜100,000、末端OH基量が3〜80eq/ton、且つ残存溶融粘度安定性が0.5%以下の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、特定量のア)脂肪酸エステル系離型剤、イ)亜燐酸エステル系安定剤、およびウ)燐酸エステル系安定剤を含む残存溶融粘度安定性が0.5%以下、フェノール性OH濃度が3〜80eq/tonである芳香族ポリカーボネート組成物を得ることにより、成形加工時の安定性、すなわち溶融成形時の着色、分子量低下、黒色異物の生成が大きく低減され、該組成物を使用して射出成形を行った場合の、金型の汚れの減少、さらに金型からの成形品の離型性も良好で精密成形品を好適に与える、成形操作効率のたいへん良好な芳香族ポリカーボネート組成物を提供できることを見出し本発明に到達した。
【0025】
又、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を溶融エステル交換法により製造するに於いては、触媒系が下記エ)、およびオ)
エ)塩基性窒素化合物及び/または塩基性リン化合物:芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり10μ〜500μ化学当量、
オ)アルカリ金属化合物:芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり0.05μ〜1μ化学当量、
の限定された種類、量比を満足する特定のエステル交換触媒系を使用することが好ましい。
【0026】
さらに芳香族ポリカーボネート樹脂(A)において、サリチル酸系化合物群より選択された少なくとも1種の化合物をエステル交換触媒の存在下、処理させることが好ましい。サリチル酸系化合物を処理させることにより、末端OH基濃度を3〜80eq/tonの範囲に押さえることが好適に達成される。
【0027】
本発明により得られた芳香族ポリカーボネート組成物により射出成型を行った場合、金型の汚れが少なく、さらに金型からの成形品の離型性も良好な成形品を得ることができ、光学記録用ディスク基板のように、精密な成形品を好適に得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するア)脂肪酸エステル系離形剤としては従来公知の一般的な脂肪族カルボン酸とアルコールよりなる脂肪酸エステルが良好に使用でき、ポリカーボネート樹脂100重量部当たり100*10-4〜5000*10-4重量部使用される。
【0029】
脂肪族カルボン酸とアルコールよりなる脂肪酸エステルとしては、例えば飽和、または不飽和の脂肪族モノ、ジあるいはトリカルボン酸とエタノール、ブタノール、あるいはステアリルアルコール等の飽和、または不飽和の一価のアルコール、エチレングリコール、1,4−ブテンジオール、あるいはジエチレングリコール等の飽和、または不飽和の2価のアルコール、グリセロール等の飽和、または不飽和の3価のアルコール、ペンタエリスリトール等の飽和、または不飽和の4価のアルコールまたは5価以上の等の飽和、または不飽和の多価アルコールとのエステルが挙げられるが、これらに限定される物ではない。なおここで脂肪族カルボン酸とは脂環式のカルボン酸をも包含する。
【0030】
好ましくは式
【0031】
【化3】
CNH2N+1−COOH、又は
HOOC−CNH2N−COOH
(ここでNは5〜34の整数である)
で表わされる脂肪酸と次式
【0032】
【化4】
CN’H2N'+1−CH2OH、
(R'''1)(R'''2)C(CH2OH)2、
(HOCH2)4−C、
(R'''3)(CH2OH)2C−R'''4−C(CH2OH)2(R'''5)、
(HOCH2)3−C−R'''6−C−(CH2OH)3、
HOCH2−CH2−CH(CH3)−CH2−(CH2OH)
(式中N’は1〜20の整数であり、R'''1、R'''2はそれぞれ独立に炭素数1〜10の置換基を有していてもよいアルキル基又はR'''1とR'''2が結合して5又は6員環を形成しており、R3およびR5はそれぞれ独立して炭素数1〜4の置換基を有していてもよいアルキル基、R'''4、R'''6は炭素数1〜4のアルキレン基又は−(CH2)n''−O−(CH2)n''−(ここでn''は1〜4の整数)である。)
のいずれかにより表わされるアルコールとのエステルを使用する。
【0033】
上記式で表わされるカルボン酸の具体例としてはステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げる事ができる。
【0034】
又上記式で表わされるアルコールの具体例としては、グリセリン、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0035】
本発明で使用するイ)亜燐酸エステル系安定剤はポリカーボネート樹脂の物性をコントロールしている分、従来の使用量より減少して使用することも可能であり、ポリカーボネート樹脂100重量部当たり、リン分として0.5*10-4〜25*10-4重量部使用される。ディスク用途での本剤の使用量は、記録膜の保護のため通常の成型用途に比較して減少させた量使用するのが好ましい。具体的には、0.5*10-4〜4*10-4重量部程度、好ましくは0.5*10-4〜4*10-4重量部程度使用される。
【0036】
本発明で使用する亜燐酸エステル系安定剤イ)の具体例としては従来公知の剤が好ましく使用できる。たとえば以下のものが好ましいものとして例示される。
【0037】
ビス(2,3−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト、テトラフェニルプロピレングリコールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2−{{2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ{d,f}{1,3,2}ジオキサフォスフェピン6−イル}オキシ}−N,N−ビス{2−{{2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ{d,f}{1,3,2}ジオキサフォスフェピン6−イル}オキシ}−エチル}エタナミン等のアリールアルキルホスファイト類、
トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリメオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスチルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリチルジホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイト等のトリアルキルホスファイト類、
トリシクロヘキシルホスファイト等のトリシクロアルキルホスファイト類、
トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイト等のトリアリールホスファイト類、
水添ビスフェノール−A、およびペンタエリスリチルホスファイトポリマー等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも芳香族亜燐酸エステルが好ましく、特に、トリス〔2,4−ジt−ブチルフェニル〕ホスファイト、あるいは、ビス(2,4−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイトが好ましく用いられる。これらの化合物は単独で使用することもできるし場合により2種以上の化合物を使用することも可能である。
【0039】
本発明で使用される、ウ)燐酸エステル系安定剤は、その効果を十分に発揮させる為には、単に所定量添加すれば効果を発揮するものではなく、亜燐酸エステル系安定剤及びポリカーボネート末端OH基濃度に対し特定量使用することが必要であり、本発明の要点もこの点に存在する。
【0040】
即ちイ)亜燐酸エステル系安定剤(リン分としてQ*10-4重量部)、ポリカーボネート末端OH基濃度、およびウ)燐酸エステル系安定剤の含有量(リン分としてP*10-4重量部)について、下記式(B)
【0041】
【数3】
0.1*(P)0.5+0.1*(OH)0.5≦Q≦(P)0.5+(OH)0.5・・(B)
を満足するように使用されたときその効果は顕著である。
【0042】
本発明で好適に使用できるウ)燐酸エステル系化合物は、従来公知の燐酸エステル化合物が好ましく使用されるが、特に好ましくは亜燐酸エステル系安定剤化合物と同じ骨格を有する燐酸エステル系化合物が本発明の目的を達成するために、好ましく使用できる。
【0043】
亜燐酸エステル系安定剤化合物が分子中、複数の亜燐酸エステル構造を保有する場合、該当する燐酸エステル化合物としては、該亜燐酸エステル構造の全部が燐酸エステル化した化合物とともに一部が燐酸エステル化した化合物が、好ましく使用できる。
【0044】
本発明で使用するウ)燐酸エステル系安定剤の具体例としてはたとえば以下のものが好ましいものとして例示される。
【0045】
ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフェート、ペンタエリスリチル(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフェート、ペンタエリスリチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスフェート(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフェート、ペンタエリスリチル(ノニルフェニル)ホスフェート(ノニルフェニル)ホスホスファイト、ジフェニルデシルホスフェート、ジフェニルイソオクチルホスフェート、フェニルジイソオクチルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、テトラフェニルプロピレングリコールジホスフェート、プロピレングリコールジフェニルホスフェートジフェニルホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスフェート、4,4’−イソプロピリデンジフェニルビス(トリデシル)ホスフェートビス(トリデシル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスフェート、2−{{2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ{d、f}{1,3,2}ジオキサフォスフェピン6−イル}オキシ}−N,N−ビス{2ー{{2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ{d、f}{1,3,2}ジオキサフォスフェピン6−イル}オキシ}−エチル}エタナミン等のアリールアルキルホスフェート類、
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリメオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスチルジホスフェート、ペンタエリスチルステアリルホスフェートステアリルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリチルジホスフェート、ペンタエリスリチルトリデシルホスフェートトリデシルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート類、
トリシクロヘキシルホスフェート等のトリシクロアルキルホスフェート類、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(エチルフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、トリス(ヒドロキシフェニル)ホスフェート等のトリアリールホスフェート類、
水添ビスフェノール−A、ペンタエリスリチルホスフェートポリマー等が例示される。これらの化合物は単独で使用することもできるし、場合により2種以上の化合物を使用することも可能である。
【0046】
本発明において上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に配合して成るイ)亜燐酸エステル系安定剤とウ)燐酸エステル系安定剤のエステル結合形成性リン原子の合計のモル数をXモルとし、ポリカーボネート分子と結合したエステル結合形成性リン原子のモル数をYモルとするとき、Yは特定範囲内に入っているほうが好ましく、例えば、0.01X≦Y≦0.6*X(モル)の関係を満たす時本発明の目的を果たすために好適である。さらにお0.05X≦Y≦0.5*X(モル)の関係を満たすことが好ましい。特には0.07X≦Y≦0.4*X(モル)の関係を満たすことが好ましい。
【0047】
本発明に於いて好ましく使用される主たる繰り返し単位が次式(1)
【0048】
【化5】
【0049】
(R1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基又はアリール基であり、Wは炭素数1〜10のアルキリデン基、アルキレン基、シクロアルキリデン基、シクロアルキレン基、アリール基置換アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、またはスルホン基である。)
で表わされる粘度平均分子量13,000〜100,000、且つ末端OH基量3〜80eq/tonの芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性化合物とより界面重合法等のホスゲン法、あるいは溶融重合法、固相重合法等、従来公知の方法で好ましく製造する事ができる。
【0050】
かかる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(2)に示される化合物が好ましく使用できる。
【0051】
【化6】
【0052】
(R1,R2,R3,R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アラルキル基又はアリール基であり、Wは炭素数1〜10のアルキリデン基、アルキレン基、シクロアルキリデン基、シクロアルキレン基、フェニル基置換アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、またはスルホン基である。)
このような芳香族ジヒドロキシ化合物(2)としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシフェニル−1,1’−m−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシフェニル−9,9−フルオレンなどのビス(4−ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−シクロヘキサン、4−[1−〔3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル〕−1−ネチルエチル]−フェノール、4,4’−〔1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル〕ビスフェノール、2,2,2’,2’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビス−〔1H−インデン〕−6,6’−ジオールなどのビス(ヒドロキイシアリール)シクロアルカン類、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルスルホキシド類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、などのジヒドロキシジアリールスルホン類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニル−3,3’−イサチンなどのジヒドロキシジアリールイサチン類、
3,6−ジヒドロキシ−9,9−ジメチルキサンテンなどのジヒドロキシジアリールキサンテン類、
レゾルシン、3−メチルレソルシン、3−エチルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−t−ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾルシン、3−クミルレゾルシン、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル等ジヒドロキシジフェニル類が挙げられる。
【0053】
中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンがモノマーとしての安定性、更にはそれに含まれる不純物の量が少ないものの入手が容易である点等より好ましいものとしてあげられる。
【0054】
本発明の芳香族ポリカーボネート分子中には、ガラス転移温度の制御、あるいは流動性の向上、あるいは、屈折率のアップ、あるいは複屈折の低減等、光学的性質の制御等を目的として各種モノマーを必要に応じて、一種あるいは2種以上を含有させることも可能なことは言うまでもない。
【0055】
これらの具体例としては、たとえば脂肪族ジヒドロキシ化合物類例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等、
あるいはジカルボン酸類、たとえばコハク酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、あるいはオキシ酸類例えばp−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、乳酸等が挙げられる。
【0056】
ホスゲン法ではカーボネート結合形成性化合物としては、ホスゲンなどのハロゲン化カルボニル、ハロホーメート化合物があげられる。
【0057】
また溶融重合法ではカーボネート結合形成性化合物としては芳香族炭酸エステルが、具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(4−フェニルフェニル)カーボネート等が挙げられる。其の他ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等も所望により使用できることは当然である。
【0058】
これらの内ジフェニルカーボネートが、反応性、得られる樹脂の着色に対する安定性、更にはコストの点よりも、好ましいものとしてあげられる。
【0059】
固相重合法では、上述のホスゲン法または溶融重合法で製造される分子量の小さなポリカーボネートオリゴマーを結晶化させ、高温、さらには所望により減圧下、固体状態で重合を進める事により、(1)式で示される繰り返し単位構造を有するポリカーボネート樹脂とすることができる。
【0060】
また上記のようなポリカーボネートの製造方法において、ホスゲンまたは炭酸ジエステルとともにジカルボン酸、ジカルボン酸ハライド、ジカルボン酸エステル等のジカルボン酸誘導体を使用することによりポリエステルカーボネートを製造できる。
【0061】
かかるジカルボン酸あるいはジカルボン酸誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルなどの芳香族ジカルボン酸類、
コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンニ酸、ドデカンニ酸、アジピン酸クロリド、スベリン酸クロリド、アゼライン酸クロリド、セバシン酸クロリド、アゼライン酸ジフェニル、セバシン酸ジフェニル、デカンニ酸ジフェニル、ドデカンニ酸ジフェニル、などの脂肪族ジカルボン酸類、
シクロプロパンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、
シクロプロパンジカルボン酸クロリド、1,2−シクロブタンジカルボン酸クロリド、1,3−シクロブタンジカルボン酸クロリド、1,2−シクロペンタンジカルボン酸クロリド、1,3−シクロペンタンジカルボン酸クロリド、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸クロリド、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸クロリド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロリド、
シクロプロパンジカルボン酸ジフェニル、1,2−シクロブタンジカルボン酸ジフェニル、1,3−シクロブタンジカルボン酸ジフェニル、1,2−シクロペンタンジカルボン酸ジフェニル、1,3−シクロペンタンジカルボン酸ジフェニル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニルなどの脂環式ジカルボン酸類を挙げることができる。
【0062】
また上記一般式(1)であらわされる繰り返し単位構造を有するポリカーボネートを製造するとき、上記のジヒドロキシ化合物とともに、一分子中に3個以上の官能基を有する多官能化合物を併用することもできる。このような多官能化合物としてはフェノール性水酸基、カルボキシル基を有する化合物が好ましく使用される。
【0063】
具体的には例えば1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’,2''−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、α−メチル−α,α’,α''−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、α,α’,α''−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン−2、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンベン、2,2−ビス〔4,4−(4,4’−ジヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパン、トリメリット酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸などがあげられる。
【0064】
これらのうち1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α''−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなどが好ましく使用できる。
【0065】
多官能化合物を併用するとき、たとえばポリカーボネートの溶融粘度をあげる目的では、多官能化合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物に1モルに対して0.03モル以下、好ましくは0.00005〜0.02モル、さらに好ましくは0.0001〜0.01モルの範囲で選択される。
【0066】
本発明芳香族ポリカーボネート樹脂(A)において、末端水酸基濃度が3〜80eq/tonであるものが好ましく使用されるが、ホスゲン法ポリカーボネートにおいては、分子量調節剤として加える単官能性化合物により分子末端が封止され、本質的にOH末端基が3〜20eq/tonと少ないポリカーボネートが製造されるが、溶融重合法あるいは固相重合法においては、積極的にOH末端基を減少させる必要がある。
【0067】
本発明の目的を達成する好ましい実施態様においては上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)において、末端水酸基濃度が少なくとも3〜80eq/ton、さらに好ましくは3〜70eq/ton、さらに好ましくは3〜60eq/tonに減少させることが必要である。
【0068】
即ちOH末端基濃度を上記範囲内にするには、ホスゲン法においては分子量調節剤として使用される末端封止剤により必然的に上記範囲内に収まるが、反応プロセスの特徴上、OH末端基が多く生成する溶融重合法、あるいは固相重合法においては、特別のOH末端基減少策を講じる必要がある。例えば、以下記述する従来公知の方法で達成しうることはよく知られている。
【0069】
1)重合原料仕込みモル比制御法;重合反応仕込み時のDPC/BPAモル比を高めることにより、たとえば重合反応装置の特徴を考え1.03から1.10の間に設定する。あるいは
2)末端封止法;重合反応終了時点において例えば、米国特許第5696222号明細書記載の方法に従い、サリリチル酸エステル系化合物によりOH末端基を封止することにより達成される。サリチル酸エステル系化合物の使用量は封止反応前の末端OH基、1化学当量当たり0.8〜10モル、より好ましくは0.8〜5モル、特に好ましくは0.9〜2モルの範囲である。かかる量比で添加することにより、末端OH基の80%以上を好適に封止することができる。又本封止反応を行う時、上記特許記載の触媒を使用するのが好ましい。
【0070】
これらサリチル酸エステル系化合物としては具体的には、2−メトキシカルボニルフェニル−フェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−メチルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−エチルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−3’−ブチルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−ドデシルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−ヘキサデシルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’,4’−ジブチルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−ジノニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−シクロヘキシルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−ビフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−クミルフェニルカーボネート、
2−メトキシカルボニルフェニル−2’−メトキシフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−ブトキシフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−4’−クミルオキシフェニルカーボネート、ジ(2−メトキシカルボニルフェニル)カーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2−エトキシフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−(O−メトキシカルボニルフェニル)オキシクミルフェニルカーボネートのごとき2−メトキシカルボニルフェニルアリールカーボネート類、
2−メトキシカルボニルフェニル−メチルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−ブチルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−セチルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−ラウリルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−エトキシカルボニルエチルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニル−2’−(O−メトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニルエチルカーボネートのごとき2−メトキシカルボニルフェニル−アルキルカーボネート類、
2−エトキシカルボニルフェニル−フェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−プロピルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−ヘキシルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−ジブチルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−ジノニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−シクロヘキシルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−クミルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−4’−エトキシカルボニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−4’−クミルオキシフェニルカーボネート−2−エトキシカルボニルフェニル−カーボネート、ジ(2−エトキシカルボニルフェニル)カーボネートのごとき2−エトキシカルボニルフェニル−アリールカーボネート類、
2−エトキシカルボニルフェニル−メチルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−オクチルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−2’−メトキシカルボニルエチルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−カーボネート、2−エトキシカルボニルフェニル−2−(O−エトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニルエチルカーボネートのごとき2−エトキシカルボニルフェニル−アルキルカーボネート類、
(2−メトキシカルボニルフェニル)ベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−メチルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−ブチルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−クミルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−ブトキシベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−2−メトキシカルボニルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−メトキシカルボニルベンゾエート、(2−メトキシカルボニルフェニル)−4−エトキシカルボニルベンゾエート、3−(O−メトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニル安息香酸(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステル、4−(O−エトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニル安息香酸(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステルのごとき、芳香族カルボン酸の(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステル、
(2−エトキシカルボニルフェニル)ベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−メチルベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−ブチルベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−ノニルベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−クミルベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−メトキシベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−ノニルオキシベンゾエート、(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−クミルオキシベンゾエート、
(2−エトキシカルボニルフェニル)−4−エトキシカルボニルベンゾエートのごとき芳香族カルボン酸の(2’−エトキシカルボニルフェニル)エステル、
(2−メトキシカルボニルフェニル)アセテート、(2−メトキシカルボニルフェニル)ステアレート、(2−メトキシカルボニルフェニル)オレート、(2−エトキシカルボニルフェニル)シクロヘキサンカルボン酸エステル、ビス(2−メトキシカルボニルフェニル)サクシネート、ビス(2−メトキシカルボニルフェニル)アジペートのごとき脂肪族カルボン酸エステルが挙げられる。
【0071】
繰り返し単位が上記式(1)であらわされるポリカーボネート樹脂を製造する方法において、前述したホスゲン法では、触媒として3級アミン、4級アンモニウム塩、3級ホスフィン、4級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物及びその塩、イミノエーテルおよびその塩、アミド基を有する化合物などが使用される。
【0072】
このホスゲン法では反応の際生じる塩酸などのハロゲン化水素の捕捉剤として多量のアルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物が使用されるので、製造後のポリマー中に、こうした不純物が残留しないように十分な洗浄、精製をする事が好ましい。
【0073】
溶融重合法、固相重合法では、触媒系については、アルカリ金属化合物を含有する触媒系が好ましく使用されるが、触媒として使用されるアルカリ金属化合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物、1モルに対し、アルカリ金属元素として1*10-8〜1*10-6当量の範囲で使用される。上記範囲を逸脱すると、得られるポリカーボネートの諸物性に悪影響及ぼしたり、またエステル交換反応が十分に進行せず、高分子量のポリカーオネートが得られない等の問題があり、好ましくない。
【0074】
ポリカーボネート樹脂中の触媒系由来のアルカリ金属元素量をかかる量範囲において使用することによりポリカーボネートの製造を効率的に生産性よく実施しうるとともに得られたポリカーボネートの物性も本発明の目的を達成するために好ましいものとなる。
【0075】
触媒として本発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、たとえばアルカリ金属の水酸化物、炭化水素化合物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化硼素塩、安息香酸塩燐酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。
【0076】
具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硝酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、シアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウソナトリウム、水素化ホウソカリウム、水素化ホウソリチウム、フェニル化硼素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素ジカリウム、リン酸水素ジリチウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩、ジリチウム塩、モノナトリウム塩、モノカリウム塩、ナトリウムカリウム塩、ナトリウムリチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
【0077】
又触媒として含窒素塩基性化合物、及びまたは含リン塩基性化合物を併用するのが好ましい。
【0078】
これらのうち含窒素塩基性化合物の具体例としてはたとえばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3NOH)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類、
テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムフェノキシド、テトラブチルアンモニウム炭酸塩、ベンジルトリメチルアンモニウム安息香酸塩ヘキサデシルトリメチルアンモニウムエトキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する塩基性アンモニウム塩、
トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ヘキサデシルジメチルアミンなどの第三級アミン、
あるいはテトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)、テトラメチルアンモニウムトラフェニルボレート(Me4NBPh4)などの塩基性塩などを挙げることができる。
【0079】
また含りん塩基性化合物の具体例としてはたとえばテトラメチルホスホニウムヒドロキシド(Me4POH)、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド(Et4POH)、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(Bu4POH)、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3POH)、ヘキサデシルトリメチルホスホニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するホスホニウムヒドロキシド類、あるいはテトラメチルホスホニウムボロハイドライド(Me4PBH4)、テトラブチルホスホニウムボロハイドライド(Bu4PBH4)、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(Bu4PBPh4)、テトラメチルホスホニウムトラフェニルボレート(Me4PBPh4)などの塩基性塩などを挙げることができる。
【0080】
上記含窒素塩基性化合物及びまたは含リン塩基性化合物は、塩基性窒素原子あるいは塩基性リン原子が芳香族ジヒドロキシ化合物、1モルに対し、1*10-5〜5*10-4化学当量となる割合で用いるのが好ましい。より好ましい使用割合は同じ基準に対し2*10-5〜5*10-4化学当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し5*10-5〜5*10-4化学当量となる割合である。
【0081】
又本発明においては所望により触媒として使用するアルカリ金属化合物として、(C)周期律表第14族元素のアート錯体アルカリ金属塩又は(D)周期律表第14族元素のオキソ酸のアルカリ金属塩を用いることができる。ここで周期律表第14族の元素とは、ケイ素、ゲルマニウム、スズのことをいう。かかるアルカリ金属化合物を重縮合反応の触媒として用いることにより、重縮合反応を迅速にかつ十分に進めることができる利点を有する。又重縮合反応中に進行する分岐反応のような好ましくない副反応を低いレベルに押さえることができる。
【0082】
ここで(A)の周期律表第14族元素のアート錯体アルカリ金属塩としては、特開平7−268091号公報に記載のものをいうが、具体的にはNaGe(OMe)5、NaGe(OEt)5、NaGe(OPh)5、LiGe(OMe)5、LiGe(OBu)5、LiGe(OPh)5NaSn(OMe)3、NaSn(OEt)2(OMe)、NaSn(OMe)5、NaSn(OPh)5などを挙げることができる。
【0083】
又(D)周期律表第14族元素のオキソ酸のアルカリ金属塩としてはたとえばケイ酸、スズ酸、ゲルマニウム(II)酸、ゲルマニウム(IV)酸のアルカリ金属塩を好ましいものとしてあげることができる。
【0084】
これらの具体例としてはオリトケイ酸モノナトリウム、オリトケイ酸ジナトリウム、オリトケイ酸テトラナトリウム、モノスズ酸ジナトリウム、モノスズ酸テトラナトリウム、ゲルマニウム(II)酸モノナトリウム(NaHGeO2)、オルトゲルマニウム(IV)酸モノリチウム(LiH3GeO4)オルトゲルマニウム(IV)酸ジナトリウム、オルトゲルマニウム(IV)酸ジナトリウム、オルトゲルマニウム(IV)酸テトラナトリウム、ジゲルマニウム(IV)酸ジナトリウム、(Na2Ge2O5)、ペンタゲルマニウム(IV)酸ジナトリウム、(Na2Ge5O11)を挙げることができる。
【0085】
本発明の重縮合反応には、上記触媒といっしょに、必要により周期律表第14属元素のオキソ酸、酸化物および同元素のアルコキシド、フェノキシドより成る群から選ばれるすくなくとも、一種の化合物を助触媒として共存させることができる。
【0086】
これらの助触媒を特定の割合で用いることにより末端の封鎖反応、重縮合反応速度を損なうことなく重縮合反応中に生成しやすい分岐反応、主鎖開裂反応や、成形加工時における装置内での異物の生成、焼けといった好ましくない現象を効果的に抑止でき本発明の目的に好ましい。
【0087】
周期律表第14族のオキソ酸としては、たとえばケイ酸、スズ酸、ゲルマニウム酸を挙げることができる。
【0088】
周期律表第14族の酸化物としては、一酸化珪素、二酸化珪素、二酸化スズ、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、シリコンテトラメトキシドシリコンテトラブトキシド、シリコンテトラフェノキシド、テトラエトキシスズ、テトラノニルオキシスズ、テトラドデシルオキシスズ、テトラフェノキシスズ、テトラメトキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウム、テトラオクチルオキシゲルマニウム、テトラフェノキシゲルマニウムおよびこれらの縮合体を挙げることができる。
【0089】
助触媒は重縮合反応触媒中のアルカリ金属元素1モル原子当たり、周期律表第14族の元素が50モル原子以下となる割合で存在せしめるのが好ましい。同金属元素が50モル原子を超える割合で助触媒を用いると、重縮合反応速度が遅くなり好ましくない。助触媒は、重縮合反応触媒のアルカリ金属元素1モル原子当たり助触媒としての周期律表第14族の元素が0.1〜30モル原子となる割合で存在せしめるのが更にこのましい。
【0090】
本発明ポリカーボネート樹脂(A)は溶融粘度安定性0.5%以下のものが好ましく使用されるが、さらに好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.1%以下特に好ましくは0%のものが使用される。
【0091】
ポリカーボネートの溶融粘度安定性を0.5%以下にするためには、重縮合反応後、より好ましくは、末端封止反応終了後のポリカーボネート樹脂に対し溶融粘度安定剤(E)を特定量を添加すること等により達成しうる。溶融粘度安定性の劣ったポリカーボネート樹脂においては、成形加工時の安定性不良に加えて、高湿条件化および成型品の長期使用時の機械的物性の安定性不良とりわけ耐衝撃性の悪化=低下が著しく、実用性に耐えないものとなってしまう。
【0092】
本発明で使用する溶融粘度安定剤は、(E)−1;スルホン酸ホスホニウム塩、アンモニウム塩及びまたは(E)−2;スルホン酸、及びあるいはスルホン酸低級エステルである。
【0093】
(E)−1;スルホン酸ホスホニウム塩、アンモニウム塩としては、下記式(I)〜(III)で表される化合物を挙げることができる。
【0094】
【化7】
A1−(SO3X1)m・・・・(I)
(ここでA1は置換基を有していてもよいm価の炭化水素基であり、X1はアンモニウム、またはホスホニウムカチオンである。mは1〜4の整数である。)
ここでアンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンとしては、
【0095】
【化8】
+N(R''1)(R''2)(R''3)(R''4)・・・・(Ia)
+P(R''1)(R''2)(R''3)(R''4)・・・・(Ib)
(式中R''1〜R''4は互いに独立に水素原子、または一価の炭化水素基である。)
で表わされるカチオンを挙げることができる。
【0096】
【化9】
+X2−A2−SO3 -・・・・(II)
(ここでA2は2価の炭化水素基であり、+X2はアンモニウム、またはホスホニウムカチオンである。)
ここでアンモニウム、またはホスホニウムカチオンとしては
【0097】
【化10】
−N+(R''5)(R''6)(R''7)・・・・(IIa)
−P+(R''5)(R''6)(R''7)・・・・(IIb)
(ここでR''5〜R''7は互いに独立に水素原子、または一価の炭化水素基である。)
で表わされるカチオンを挙げることができる。
【0098】
【化11】
A3−(+X3)n・(R−SO3 -)n・・・・(III)
(ここでA3はn価の炭化水素基であり、X3はアンモニウム、またはホスホニウムカチオンである。Rは一価の炭化水素基、nは2〜4の整数である。)
ここでアンモニウム、またはホスホニウムカチオンとしては、上記(IIa)(IIb)で表わされる物を挙げることができる。
【0099】
上記式(I)で表わされる化合物の具体的な例としては、たとえば;オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩、
-SO3−(CH2)3−P+(C2H5)3、-SO3−(CH2)15−P+(C4H9)3、-SO3−(CH2)15−N+(C4H9)3、{(C4H9)3P+−(CH2)10−P+(C4H9)3}、(CH3−C6H4−SO3 -)2等々である。
【0100】
(E)−2;のスルホン酸、スルホン酸低級エステルとしてはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸のごとき芳香族スルホン酸、ドデシルスルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸、ノニルスルホン酸、等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニル、ドデシルスルホン酸メチル、ヘキサデシルスルホン酸エチル、ノニルスルホン酸プロピル、デシルスルホン酸ブチル等が例示される。好ましくはスルホン酸そのものより、エステル化合物が使用される。
【0101】
かかる溶融粘度安定剤は、ホスゲン法で製造されたポリカーボネートに対しても有効であるが、特に溶融重合法、あるいは固相重合法でポリカーボネートを製造したポリカーボネート中、残存する塩基性アルカリ金属化合物、すなわち塩基性アルカリ金属化合物触媒のアルカリ金属元素、1化学当量あたり、上記(E)−1の化合物においては0.7〜100化学当量を好ましくは0.8〜30化学当量を、さらに好ましくは、0.9〜20化学当量を、特に好ましくは0.9〜10化学当量を使用することにより、上記(E)−2の化合物においては0.7〜20化学当量、好ましくは0.8〜10化学当量を、さらに好ましくは0.9〜5化学当量使用することにより、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度安定性を0.5%以下に押さえることができる。
【0102】
(E)−2の溶融粘度安定剤を使用した場合、溶融粘度安定処理を施した、ポリカーボネート樹脂に対し減圧処理を加えるのが、好ましい。かかる減圧処理をするに際し、処理装置の形式は特に制限されるものではない。他方(E)−1の溶融粘度安定剤を使用した場合はかかる減圧処理を加える必要はない。
【0103】
減圧処理は、縦形槽型反応器、横形槽型反応器あるいはベント付き1軸、あるいは2軸押し出し機において0.05〜60mmHg、好ましくは0.05〜100mmHgの減圧下、減圧処理可能である。
【0104】
減圧処理時間は、槽型反応器においては5分〜3時間、2軸押し出し機を使用した場合5秒〜15分程度、処理温度は240℃から350℃で実施できる。減圧処理は押し出し機にてペレタイズと同時に行うこともできる。上記のような減圧処理を行うことにより、ポリカーボネート中に残存する原料モノマーは低減されるかまたは完全に除去される。
【0105】
かくして得られるポリカーボネート樹脂は、優れた成形性、滞留安定性を有し、熱的、色相安定性がとりわけ良好で、本発明の目的を達成するために好適のものである。
【0106】
本発明のポリカーボネート樹脂は格別、多種の耐熱安定剤を添加する必要はないが、本発明の目的を損なわない限り、所望により以下のごとき通常の耐熱安定剤を添加することができる。かかる安定剤としては具体的には、たとえば上記以外のリン系安定剤、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤などを挙げることができる。
【0107】
上記以外のリン系安定剤としては例えばテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレンジホスホナイト、4,4’−フェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル等のホスホナイト類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
【0108】
フェノール系安定剤としては例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ジステアリル(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルベンジル)マロネート、トリエチレグリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−アニリノ)−1,3,5−トリアジン、
ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2−チオジエチレンビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネートジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスレウホン酸エチル)カルシウム、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス{(オクチルチオ)メチル}−O−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,5,7,8−テトラメチル−2(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
【0109】
有機チオエーテル系安定剤としては、たとえばジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、lジトリデシル−3,3’−チオプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)などを挙げることができる。これらは単独で使用しても良いし2種以上混合して用いても良い。
【0110】
またヒンダードアミン系安定剤としてはたとえば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−〔2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0111】
これらの耐熱安定剤は樹脂成分100重量部あたり0.0001〜5重量部、好ましくは0.0005〜1重量部、さらに好ましくは0.001〜0.5重量部の量で使用できる。また酸性物質補足剤として、分子中にエポキシ基を一個以上保有する化合物を使用しても良い。
【0112】
これらの酸性物質補足剤としてはたとえば;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルクロヘキシルカルボキシレート、2,3,−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルメチル−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ビスエポキシジシクロペンタジエニルエーテル、エポキシ化ポリブタジエン、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、オクタデシル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル−2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−エチルヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸などをあげる事ができる。
【0113】
これらのうち脂環式エポキシ化合物が好ましく使用できる。特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましく使用できる。このようなエポキシ化合物は、樹脂成分に対して1〜2000pm、好ましくは10〜1000ppmの量で添加される。これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0114】
さらに本発明では、上記の脂肪酸エステル系離形剤の他、従来公知の一般的なものが良好に使用できる。炭化水素系離形剤としては、天然、合成パラフィンワックス類、ポリエチレンワックス、フルオロカーボン類をあげることができる。脂肪酸系離形剤としては、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、などの高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、などをあげることができる。脂肪酸アミド系離形剤としてはステアリン酸アミド、エチレンビスステリルアミドなどの脂肪酸アミド、エルカ酸アミド等のアルキレンビス脂肪酸アミド類をあげることができる。
【0115】
アルコール系離形剤としては、ステアリルアルコール、セチルアルコールなどの脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール類などをあげることができる。その他ポリシロキサン類も使用可能である。
【0116】
本発明所望の目的を達成するため従来公知の各種添加剤を使用できる。例えば光安定剤としての2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)フェニル}ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンボエート等のベンゾエート系化合物、
紫外線吸収剤例えばエチル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系化合物が挙げられる。
【0117】
これらの光安定剤、紫外線吸収剤は樹脂成分100重量部に対し通常0.001〜5重量部、好ましくは0.05〜1.0重要部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部の量で用いることができる。これらの剤は単独で用いても良いし混合して使用しても良い。
【0118】
クエンチャーとしては例えばニッケルジブチルジチオカーバメート、{2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)}−2−エチルヘキシルアミンニッケル等のニッケル系クエンチャーが挙げられる。
【0119】
金属不活性化剤としては例えば、N,N’−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン等の化合物が挙げられる。
【0120】
金属石鹸としては例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ニッケル等の化合物が挙げられる。
【0121】
又造核剤としては例えばジ(4−t−ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム、ジベンジリデンソウビトール、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アッシドホスフェートナトリウム塩等のソリビトール系、リン酸塩系化合物が挙げられる。
【0122】
帯電防止剤としては例えば(β−ラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムスルフェート等の第4級アンモニウム塩系、アルキルホスフェート系化合物が挙げられる。
【0123】
難燃剤としては例えばトリス(2−クロロエチル)ホスフェートなどの含ハロゲンリン酸エステル類、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモフェニルオキシドなどのハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウムなどの金属無機化合物類、これらの混合物が挙げられる。
【0124】
また本発明の樹脂においては所望により有機、あるいは無機の染料、顔料等の着色剤を使用できる。
【0125】
無機系着色剤としては;具体的には、二酸化チタン、ベンガラなどの酸化物、アルミナホワイトなどの水酸化物、硫化亜鉛などの硫化物、セレン化物、紺青などのフェロシアン化物、ジンククロメート、モリブデンレッドなどのクロム酸塩、硫酸バリウムなどの硫酸塩、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、群青などの珪酸塩、マンガンバイオレットなどのリン酸塩、カーボンブラックなどの炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉などの金属着色剤などが挙げられる。
【0126】
有機系着色剤としては、ナフトールグリーンBなどのニトロソ系、ナフトールイエローSなどのニトロ系、リソールレッドやボルド−10B、ナフトールレッド、クロモフタールイエローなどのアゾ系、フタルシアニンブルーやファストスカイブルーなどのフタロシアニン系、インダントロンブルーやキナクリドンバイオレット、ジオクサジンバイオレットなどの縮合多環系着色剤などが挙げられる。
【0127】
これら着色剤は単独で使用しても良いし、あるいは混合で使用しても良い。これら着色剤は樹脂成分100重量部あたり通常1*10-6〜5重量部、好ましくは1*10-6〜3重量部、さらに好ましくは1*10-5〜1重量部の量で用いることができる。
【0128】
【発明の効果】
本発明により、透明性、色相安定性を要求される用途に好適な成形性、環境安定性の良好な前記芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。特定溶融粘度安定性を有するポリカーボネートに於いて、特定構造の末端基を、特にOH末端基含有量に対し、特定量含有せしめることにより、成形加工時の成形性、滞留安定性を飛躍的に高めることができる。
【0129】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0130】
1)ポリカーボネートの固有粘度[η];塩化メチレン中、20℃ウベローデ粘度管にて測定した。固有粘度より粘度平均分子量は次式より計算した。
【0131】
【数4】
〔η〕=1.23MW0.83
2)末端基濃度;サンプル0.02gを0.4mlの重クロロホルムに溶解し、20℃で1H−NMR(日本電子社製EX−270)を用いて、末端水酸基、及び末端フェニル基濃度を測定した。
【0132】
3)溶融粘度安定性;レオメトリックス社のRAA型流動解析装置を用い窒素気流下、剪断速度1rad/sec.300℃で測定した溶融粘度の変化の絶対値を30分間測定し、1分当たりの変化率を求めた。ポリカーボネート樹脂組成物の長期安定性が良好であるためには、この値が0.5%を超えてはならない。
【0133】
4)透明性;平板の全光線透過率を日本電色(株)製NDH−Σ80により測定した。全光線透過率が高いほど透明性がよいことを示す。
【0134】
5)ヘーズ;平板のヘーズを日本電色(株)製NDH−Σ80により測定した。ヘーズが高いほど濁りが少ないことを示す。
【0135】
6)湿熱耐久性、耐衝撃性;アイゾット衝撃強度ASTMD−790(ノッチ付き)による。厚さ1/8インチの試験片を85℃*90%RHの恒温、恒湿槽中、1000hr保持後アイゾット衝撃強度の保持率を求めた。
【0136】
7)滞留安定性;50mm×50mm×5mmの平板を名機製作所(株)製、M50B射出成形機によりシリンダー温度380度C、金型温度75℃、射出圧300Kg、型締め力50トンで成形した、この成形品につき平板のL/a/b値及びX,Y,Z値を日本電色(株)製Z−1001DP色差計により測定した。YI値は次式により求めた。
【0137】
さらに同樹脂温度で15分間シリンダー内に滞留させた後成形を行い色相YI、光透過率を測定、滞留前後のYI値の変化量ΔYIを求めた。
【0138】
【数5】
YI=(100/Y)*(1.277X−1.060Z)
YI、ΔYI;ゲィスク用途(分子量=約15000のもの)で目視で黄色味をあまり感じないYI値1.5以下をOKとした。初期YIがOKでもΔYIが大で滞留後のYIが1.5を超えるものはNGと判定し、汎用グレードではYI値の限界を2.0とした。
【0139】
光線透過率;ポリカーボネート本来の90%台のものをOK、この値を大きく割り込む80%台のものをNGと判定した。
【0140】
8)ディスクの成形性;金型汚れ;(DVD基板の作成)得られたポリカーボネート組成物ペレットを使用し、東芝機械社製IS80EPN、成形機を使用し、
型締め力;50トン、
射出速度;250CM3/秒、
射出圧力;1500Kg/CM2
金型材質;ジュラルミン2024
成形温度;380℃
金型温度;115℃
冷却時間;5秒
キャビティ部;無電解ニッケルメッキ
の条件で径120mm、厚さ0.6mmのDVD基板10K枚を作成した。なお成形時ロボットがディスクを金型より良好に取り外しができなかった組成物ロットは離型性不良と判断した。
【0141】
金型汚れ性;10K枚成形時スタンパの汚れを目視、判定した。
◎;良好汚れ認めがたし
○;良好汚れ極めて小
△;不良汚れやや認められる
×;不良汚れ明瞭に認められる
【0142】
9)汎用グレード品の成形性、及金型汚れ性;50mm×50mm×5mmの平板を名機製作所(株)製、M50B射出成形機によりシリンダー温度300度C成形サイクル20秒、金型温度75℃、射出圧300Kg、型締め力50トンで1Kショット成形した、この時成形品が金型より良好に離型ロットをOKロットと判定した。
【0143】
又金型汚れ性については1K枚成形時金型の汚れを目視判定した。
◎;良好汚れ認めがたし
○;良好汚れ極めて小
△;不良汚れやや認められる
×;不良汚れ明瞭に認められる
【0144】
[ポリマー製造例1:実施例1〜6、比較例1〜6]
ホスゲン吹き込み管、温度計及び攪拌機を設けた、容量500lの反応槽に、ビスフェノールA50,280g(221モル)7.2%水酸化ナトリウム水溶液221l(水酸化ナトリウム419モル)及び、ハイドロサルファイトナトリウム98g(0.56モル)を仕込んで溶解し、攪拌下、塩化メチレン127l及び48.5%水酸化ナトリウム水溶液8070g(水酸化ナトリウム98モル)を加えた後、ホスゲン25,080g(25.3モル)を25℃で180分かけて加え、ホスゲン化反応を行った。
【0145】
ホスゲン化終了後p−tert−ブチルフェノール1751g(11.7モル)、及び48.5%水酸化ナトリウム水溶液8,040g(97モル)及び触媒としてトリエチルアミン181ml(1.3モル)を加え、33℃に保持し2時間攪拌して反応を終了させた。反応混合液より、塩化メチレン層を分離し、水洗を5回繰り返し精製して、粘度平均分子量15,300のポリカーボネート樹脂を得た。該ポリカーボネート樹脂中、下記表1、2中記載の種類、量の脂肪酸エステル系離型剤、亜燐酸エステル系安定剤及び燐酸エステル系安定剤及び必要時其の他の安定剤を添加し、2軸押し出し機で混練ペレット化した。
【0146】
この樹脂組成物の物性を表1、2中に示す。
【0147】
[ポリマー製造例2:実施例7〜9、比較例7〜8]
ホスゲン吹き込み管、温度計及び攪拌機を設けた、容量500lの反応槽に、ビスフェノールA50、280g(221モル)、7.2%水酸化ナトリウム水溶液221l(水酸化ナトリウム419モル)及び、ハイドロサルファイトナトリウム98g(0.56モル)を仕込んで溶解し、攪拌下、塩化メチレン127l及び48.5%水酸化ナトリウム水溶液8,070g(水酸化ナトリウム98モル)を加えた後、ホスゲン25,080g(253モル)を25℃で180分かけて加え、ホスゲン化反応を行った。
【0148】
ホスゲン化終了後p−tert−ブチルフェノール、930g(6.2モル)、48.5%水酸化ナトリウム水溶液、8、040g(97モル)及び触媒としてトリエチルアミン、181ml(1、3モル)を加え、33℃に保持し2時間攪拌して反応を終了させた。反応混合液より、塩化メチレン層を分離し、水洗を5回繰り返し精製して、粘度平均分子量25,100のポリカーボネート樹脂を得た。該ポリカーボネート樹脂中、表 中記載の種類、量の脂肪酸エステル系離型剤、亜燐酸エステル系安定剤及び燐酸エステル系安定剤及び必要時其の他の安定剤を添加、2軸押し出し機で混練ペレット化した。この樹脂組成物の物性を表2中に示す。
【0149】
[ポリマー製造例3、4:比較例9]
ポリマー製造例2において重合後、水洗を回数を3回とした以外同様の処理を行ったところ溶融粘度安定性0.7%のポリカーボネート樹脂が得られた。(ちなみに該ポリカーボネート中イオンクロマト分析の結果、Naイオンがポリカーボネート繰り返し単位1モル当たり10*10-6含有されていた。)これをポリマー製造例3とする。
【0150】
ポリマー製造例4においては、上記安定剤のほかに該ポリマー1Kg当たりドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩(以下DBSPと略称)0.03gを添加、混練ペレット化した。この樹脂組成物の物性を表2中に示す。
【0151】
[ポリマー製造例5、6:実施例10〜19、比較例10〜16]
BPA;22.8Kg,DPC;22.0Kg重量部及び重合触媒としてNaOH;0.004g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド;0.91gを攪拌装置,蒸留塔及及び、減圧装置を備えた反応槽に仕込み、窒素置換した後,140℃で溶解した。30分間攪拌後、内温を180℃に昇温し,内圧100mmHgで30分間反応させ,生成するフェノールを溜去した。
【0152】
ついで内温を200℃に昇温しつつ徐々に減圧し50mmHgで30分間フェノールを溜去しつつ反応させた。さらに220℃、30mmHgまで徐々に昇温、減圧し、同温度、同圧力条件下で30分間反応させ、さらに240℃,10mmHg,260℃,1mmHg,260℃,1mmHg以下にまで上記と同じ手順で昇温,減圧を繰り返し反応を続行した。
【0153】
最終的に同温、同圧で重合反応を継続し重合反応装置の攪拌電力より判断し、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が15300(ポリマー製造例5)、あるいは25100(ポリマー製造例6)に成った時点で、ポリマーの一部を採取し粘度平均分子量、末端水酸基濃度を測定しつつ粘度平均分子量15300(OH末端基濃度110eq/ton)、25100の(OH末端基濃度70eq/ton)樹脂を製造した。前者はディスク成形用途に、後者は一般成形品用として、評価した。
【0154】
[末端封止反応、触媒不活性化]
該ポリカーボネート1Kg当たり表中記載量の末端封止剤(2−メトキシカルボニルフェニル−フェニル−カーボネート;以下SAM−DPCと略称する。)、及び表中記載の種類、量のSAM−Bカーボネートを50mmHgの減圧下270℃で添加した.その後270℃、1mmHg以下で5分間末端封止反応を継続した。
【0155】
その後表中の溶融粘度安定化剤DBSP;0.0034g(Na触媒の1.5倍当量)を添加し、同温同圧にて10分間混合攪拌し,触媒を失活、不活性化した。得られたポリカーボネート樹脂の分子量、末端水酸基濃度、溶融粘度安定性を表3、4中に示す。
【0156】
[安定剤の添加]
上記ポリマー1Kg当たり表中記載の種類、量の脂肪酸エステル系離型剤、亜燐酸エステル系安定剤及び燐酸エステル系安定剤及び必要時其の他の安定剤を添加、2軸押し出し機で混練ペレット化した。この樹脂組成物の物性を表3、4中に示す。
【0157】
[ポリマー製造例7、8:比較例17]
ポリマー製造例5においてDBSPを使用しないものをポリマー製造例7、又ポリマー製造例6においてDBSPを使用しないものをポリマー製造例8とした。
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
離型剤
1;グリセリンモノステアレート、 2;グリセリンジステアレート、 3;グリセリントリステアレート、 4;ペンタエリスリトールモノステアレート、 5;ペンタエリスリトールテトラステアレート
亜燐酸エステル系安定剤
1;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、 2;ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、 3;ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、 4;ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、 5;2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、 6;ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)アシッドフォスファイト、 7;モノ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)アシッドフォスファイト
燐酸エステル系安定剤
a−1);トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、 a−2);ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスフェート、 a−3);ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスフェート、 a−4);ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスフェート、 a−5);2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルフォスフェート、 a−6);ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)アシッドフォスフェート、 a−7);モノ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)アシッドフォスフェート、
其の他添加剤
1;2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、 2;5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、 3;ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
Claims (6)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成化合物とを反応して成る、主たる繰り返し単位が次式(1)
で表わされる粘度平均分子量13,000〜100,000、且つ末端OH基量3〜80eq/tonの芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部と、
ア)脂肪酸エステル系離型剤;100*10-4〜5000*10-4重量部
イ)亜燐酸エステル系安定剤(リン分として);0.5*10-4〜25*10-4重量部、および
ウ)燐酸エステル系安定剤
とからなる残存溶融粘度安定性が0.5%以下である芳香族ポリカーボネート組成物であって、イ)亜燐酸エステル系安定剤(リン分としてQ*10-4重量部)、ポリカーボネート末端OH基濃度、およびウ)燐酸エステル系安定剤の含有量(リン分としてP*10-4重量部)について、下記式(B)
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度安定性が0.5%以下であることを特徴とする請求項1記載の安定化された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、下記エ)およびオ)成分
エ)塩基性窒素化合物及び/または塩基性リン化合物:芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり10μ〜500μ化学当量、
オ)アルカリ金属化合物:芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり0.05μ〜1μ化学当量、
を含有するエステル交換触媒の存在下、溶融重縮合したものである事を特徴とする請求項1または2記載の安定化された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 - 該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、サリチル酸エステル系化合物によりエステル交換触媒の存在下処理された芳香族ポリカーボネート樹脂である事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の安定化された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を射出成型してなる成型品。
- 成形品が光学記録用ディスク基板であることを特徴とする請求項5の成形品。
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