JP4594570B2 - 安定化された芳香族ポリカーボネートの製造方法およびその組成物 - Google Patents

安定化された芳香族ポリカーボネートの製造方法およびその組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は上記式(1)で表される硫酸塩に由来する安定剤により安定化された芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する。さらに詳しくは透明性良好で、ヘーズの小さい優れた安定化された芳香族ポリカーボネートの製造方法に関する
【0002】
更に本発明は、第4に第2の方法により製造された安定化された芳香族ポリカーボネートと固体無機フィラー、および/または該安定化された芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂との組成物に関する。
【0003】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは、耐衝撃性などの機械的特性、耐熱性、透明性などにも優れており、広範な用途に用いられている。一般的に芳香族ポリカーボネートの製造方法としては、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性前駆体の1種であるホスゲンを直接反応させる方法(界面重合法)、あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性前駆体の1種である炭酸ジエステルとをエステル交換反応させる方法(エステル交換法)などが知られている。
【0004】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応(エステル交換法)で芳香族ポリカーボネートを製造する方法は、界面重合法による方法に比べて、有毒なホスゲンや、メチレンクロライド等のハロゲン化合物を溶媒として使用する問題がなく、安価に芳香族ポリカーボネートを製造出来る利点があり、将来有望であると考えられる。エステル交換反応による重合法では、製造効率を上げる為、プラスチック材料講座5 芳香族ポリカーボネート;日刊工業新聞社(昭和44年) 62〜67頁等の文献に記載のように通常エステル交換触媒を使用する。
【0005】
しかしエステル交換法ではエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを通常使用するため、芳香族ポリカーボネートは、残存する触媒により溶融安定性に欠け、溶融成形するときその一部が熱分解する事があり分子量が低下したり着色したりすることがある。これらの好ましくない副反応を抑制するために以下に記述するように各種の”スルホン酸誘導体”の応用が検討されてきた。
【0006】
すなわち特公昭54−44303号公報には、ベンゼンスルホン酸メチルに代表されるスルホン酸エステルを芳香族ポリカーボネートに配合した組成物が、特開平5−171024号公報にはスルホン酸ホスホニウム塩を芳香族ポリカーボネートに配合した組成物が開示されている。更に特開昭64−14267号公報には、上記組成物において硫黄含有化合物に代えて、亜燐酸エステルを配合した組成物が開示されている。
【0007】
上記スルホン酸ホスホニウム塩を配合した組成物はいずれも芳香族ポリカーボネートの安定剤、帯電防止性の付与を目的とするものであり、スルホン酸ホスホニウム塩を芳香族ポリカーボネート100重量部当り、0.1〜20重量部と多量に使用しているため、芳香族ポリカーボネートの重要物性である色相、透明性、耐加水分解性に好ましくない影響がみられている。
【0008】
さらに特開平5−9285号公報、特開平5−17564号公報、特開平8−59975公報等には、芳香族シヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合して得られた芳香族ポリカーボネートにスルホン酸化合物を極少量、0.05〜10ppm添加し、芳香族ポリカーボネートを安定化する方法が開示され芳香族ポリカーボネートの安定化に対しては所期の効果を挙げている。
【0009】
しかしながらかかるスルホン酸誘導体を芳香族ポリカーボネートに適用した場合、安定剤、帯電防止性を目的に比較的大量に該スルホン酸誘導体を配合した組成物はもちろんエステル交換触媒の不活性化を目的に、該スルホン酸誘導体を少量添加した芳香族ポリカーボネートにおいても、芳香族ポリカーボネートが本来有する透明性を損ない、成形品においてヘーズが高くなる傾向がある。さらに該スルホン酸誘導体を少量添加した芳香族ポリカーボネートのヘーズは成形品を高温高湿度で、長時間保持することにより悪化する傾向がある。
【0010】
原因は明確ではないが、これらのスルホン酸誘導体が芳香族ポリカーボネート中で局所的に高濃度となるとき、この領域の吸水性が上がることが原因ではないかと推定される。
【0011】
さらに英国特許808488、および英国特許808489には触媒中和剤として硫酸ジメチル、硫酸ジブチル等が例示されているがこれらの硫酸化合物は安全性に問題があり、工業的にこれらの化合物を使用する事は考えられない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特定化学構造を有する硫酸塩がエステル交換法芳香族ポリカーボネートの安定剤として有効であり、該安定剤をエステル交換法芳香族ポリカーボネートに添加することにより、溶融粘度安定性、溶融成形性、耐加水分解性が良好な芳香族ポリカーボネートが得られると同時に該芳香族ポリカーボネートが、芳香族ポリカーボネート本来の特性である透明性に優れるとともに、従来のスルホン酸誘導体をエステル交換法で製造された芳香族ポリカーボネートに適用したときには得ることができないヘーズ値を達成することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換触媒の存在下重縮合せしめ、生成した芳香族ポリカーボネートの固有粘度が少なくとも0.1に達した後、ついで下記式(1)
【0014】
【化7】
Figure 0004594570
【0015】
(式中X,Yは各々独立にプロトン、1当量金属カチオン、アンモニウムカチオン、またはホスホニウムカチオンをあらわす。但しX、Yの両者が同時に、プロトン、1当量金属カチオンであることはない。)
で表される化合物群から選択される少なくとも1種の安定剤を、生成した芳香族ポリカーボネートに対し0.01ppm〜1wt%の割合で添加して、所望の固有粘度の芳香族ポリカーボネートを生成せしめることを特徴とする安定化された芳香族ポリカーボネートの製造方法についてである
【0016】
【発明の実施の形態】
(本発明の安定剤)
本発明において使用される安定剤は下記式(1)
【0017】
【化8】
Figure 0004594570
【0018】
(式中X,Yは各々独立にプロトン、1当量金属カチオン、アンモニウムカチオン、またはホスホニウムカチオンをあらわす。但しX、Yの両者が同時に、プロトン、1当量金属カチオンであることはない。)
で表される、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換触媒の存在下、重縮合せしめたエステル交換法芳香族ポリカーボネートの安定剤である。より好ましくは上記式(1)においてX,Yが各々独立にプロトン、1当量金属カチオン、下記式(1)−a
【0019】
【化9】
Figure 0004594570
【0020】
(式中R1,R2,R3,R4は各々独立に水素原子、または炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
で表されるアンモニウムカチオンまたは下記式(1)−b
【0021】
【化10】
Figure 0004594570
【0022】
(式中R5,R6,R7,R8は各々独立に水素原子、または炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
であらわされるホスホニウムカチオンであるエステル交換法用芳香族ポリカーボネートの安定剤である。
【0023】
1当量金属カチオンとしては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウムの如きアルカリ金属カチオン;カルシウム、バリウムの如き2価のアルカリ土類金属カチオンもしくはアルカリ土類金属カチオン以外の2価の金属カチオンの1/2当量;またはアルミニウムの如き3価の金属カチオンの1/3当量等を挙げる事ができる。
【0024】
本発明において好ましくは、上記式(1)においてX,Yが各々独立にプロトン、1当量金属カチオン、下記式(1)−a
【0025】
【化11】
Figure 0004594570
【0026】
(式中R1,R2,R3,R4は各々独立に水素原子、または炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
で表されるアンモニウムカチオンまたは下記式(1)−b
【0027】
【化12】
Figure 0004594570
【0028】
(式中R5,R6,R7,R8は各々独立に水素原子、または炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
であらわされるホスホニウムカチオンであることが好ましい。
【0029】
上記式(1)−a、(1)−bにおいて、R1〜R8は各々独立に水素原子、または炭素数1〜20の1価の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の1価の炭化水素としては、例えば炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましいものとして例示される。
【0030】
さらに具体的には炭素数1〜20のアルキル基としてはメチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基,tert−ブチル基,ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ヘキサデシル基等が例示される。炭素数5〜20のシクロアルキル基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、デカヒドロナフチル基、3,5,5−トリメチルシクロヘキシル基等が、炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、p−tert−ブチルフェニル基、ナフチル基等が、また炭素数7〜20のアラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基、クミル基等が例示される。中でもメチル基、エチル基、n−ブチル基等の低級アルキル基、フェニル基等が好ましいものとして例示される。
【0031】
上記式(1)で表されるより具体的な硫酸塩としては(1)硫酸ジホスホニウム塩、(2)硫酸水素ホスホニウム塩、(3)硫酸金属ホスホニウム塩、(4)硫酸ホスホニウムアンモニウム塩、(5)硫酸ジアンモニウム塩、(6)硫酸水素アンモニウム塩、(7)硫酸金属アンモニウム塩等が例示される。
これらの化合物の具体例としては、
(1)硫酸ジホスホニウム塩としては、例えば硫酸ビス(テトラメチルホスホニウム)、硫酸テトラメチルホスホニウムテトラエチルホスホニウム、硫酸テトラオクチルホスホニウムテトラプロピルホスホニウム、硫酸ビス(メチルトリエチルホスホニウム)、硫酸テトラメチルホスホニウムテトラブチルホスホニウム、硫酸ビス(テトラブチルホスホニウム)、硫酸ビス(テトラエチルホスホニウム)、硫酸ビス(ジエチルジブチルホスホニウム)、硫酸ビス(テトラデシルホスホニウム)、硫酸ビス(テトラフェニルホスホニウム)、硫酸ビス(トリメチルフェニルホスホニウム)、硫酸ビス(テトラベンジルホスホニウム)、硫酸ビス(トリエチルベンジルホスホニウム)等が挙げられる。
(2)硫酸水素ホスホニウム塩としては例えば硫酸水素テトラメチルホスホニウム、硫酸水素テトラブチルホスホニウム、硫酸水素テトラプロピルホスホニウム、硫酸水素テトラオクチルホスホニウム、硫酸水素テトラフェニルホスホニウム、硫酸水素エチルトリブチルホスホニウム、硫酸水素トリメチルオクチルホスホニウム、硫酸水素テトラベンジルホスホニウム、硫酸水素ジエチルジブチルホスホニウム、硫酸水素ベンジルトリメチルホスホニウム等が挙げられる。
(3)硫酸金属ホスホニウム塩としては、例えば硫酸ナトリウムテトラブチルホスホニウム、硫酸カリウムテトラメチルホスホニウム、硫酸リチウムジメチルジエチルホスホニウム、硫酸リチウムトリメチルベンジルホスホニウム、硫酸リチウムトリプロピルブチルホスホニウム、硫酸ナトリウムトリメチルオクチルホスホニウム等が挙げられる。
(4)硫酸ホスホニウムアンモニウム塩としては、例えば硫酸テトラメチルアンモニウムテトラエチホスホニウム、硫酸テトラオクチルアンモニウムテトラプロピルホスホニウム、硫酸テトラメチルアンモニウムテトラブチルホスホニウム、硫酸テトラフェニルアンモニウムテトラエチルホスホニウム等が挙げられる。
(5)硫酸ジアンモニウム塩としては、例えば硫酸ビス(テトラメチルアンモニウム)、硫酸テトラメチルアンモニウムテトラエチアンモニウム、硫酸テトラオクチルアンモニウムテトラプロピルアンモニウム、硫酸ビス(メチルトリエチルアンモニウム)、硫酸テトラメチルアンモニウムテトラエチルアンモニウム、硫酸ビス(テトラブチルアンモニウム)、硫酸ビス(ジエチルジブチルアンモニウム)、硫酸ビス(テトラデシルアンモニウム)、硫酸ビス(テトラフェニルアンモニウム)、硫酸ビス(トリメチルフェニルアンモニウム)、硫酸ビス(テトラベンジルアンモニウム)、硫酸ビス(トリエチルベンジルアンモニウム)等が挙げられる。
(6)硫酸水素アンモニウム塩としては、例えば硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラプロピルアンモニウム、硫酸水素テトラオクチルアンモニウム、硫酸水素テトラフェニルアンモニウム、硫酸水素エチルトリブチルアンモニウム、硫酸水素トリメチルオクチルアンモニウム、硫酸水素テトラベンジルアンモニウム、硫酸水素ジエチルジブチルアンモニウム、硫酸水素ベンジルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
(7)硫酸金属アンモニウム塩としては、例えば硫酸ナトリウムテトラブチルアンモニウム、硫酸カリウムテトラメチルアンモニウム、硫酸リチウムジメチルジエチルアンモニウム、硫酸リチウムトリメチルベンジルアンモニウム、硫酸リチウムトリプロピルブチルアンモニウム、硫酸ナトリウムトリメチルオクチルアンモニウム等が挙げられる。
【0032】
これらのなかでは硫酸ジホスホニウム塩、硫酸水素ホスホニウム塩、硫酸ジアンモニウム塩等が本発明の目的である芳香族ポリカーボネート成形品のヘーズを抑制する効果が大きい点より好ましい。さらに上記式(1)であらわされる安定剤のうちジホスホニウム塩型の安定剤は、熱安定性が高く、又保管時分解等も起こりがたく取り扱いが容易である点から更に好ましい。
【0033】
即ち硫酸ビス(テトラブチルホスホニウム)、硫酸ビス(テトラエチルホスホニウム)、硫酸ビス(テトラフェニルホスホニウム)、硫酸テトラエチルホスホニウムテトラブチルホスホニウム、硫酸水素テトラメチルホスホニウム、硫酸ビス(テトラメチルアンモニウム)、硫酸ビス(テトラエチルアンモニウム)等が本発明において最も好ましいものとして例示される。
【0034】
上記式(1)で表される安定剤を芳香族ポリカーボネート中に添加した場合、触媒をすみやかに無毒化し、溶融粘度安定性、溶融成形性、耐加水分解性が良好であると同時に滞留焼けが起こりにくく、透明性、ヘーズの良好な芳香族ポリカーボネートを得ることができる。
【0035】
本発明の製造方法では上記式(1)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の安定剤を生成した芳香族ポリカーボネートにたいし0.01ppm〜1wt%の割合で添加される。触媒の無毒化を主たる目的とするときは0.01〜1000ppm、好ましくは0.01〜500ppm、さらに好ましくは0.01〜300ppmの割合で使用される。
かかる製造方法において、理論的には該安定剤はエステル交換触媒1当量に対し1当量の使用で十分であるが、一般的には0.5〜100当量、好ましくは0.5〜50当量、さらに好ましくは0.6〜30当量、最も好ましくは0.6〜20当量の割合で用いる。さらに好ましい製造方法は、該安定剤を生成した芳香族ポリカーボネート中に含有するアルカリ金属化合物触媒またアルカリ土類金属化合物触媒1当量あたり、0.5〜100当量、好ましくは0.5〜50当量、さらに好ましくは0.6〜30当量、最も好ましくは0.6〜20当量の割合で用いることである。
【0036】
(本発明において用いる芳香族ポリカーボネート)
本発明において芳香族ポリカーボネートを製造する際に使用される該芳香族ジヒドロキシ化合物は、下記式(2)
【0037】
【化13】
Figure 0004594570
【0038】
(式中R21,R22,R23,R24はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルキルオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、Wは単結合、炭素数2〜10のアルキリデン基、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキリデン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のフェニル基置換アルキレン基、炭素数8〜20のアルキリデン−アリーレン−アルキリデン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、またはスルホン基である。)
であらわされる化合物が好ましい。
【0039】
このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA、BPAと略称する)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等があげられる。
【0040】
さらに上記式(2)に含まれない芳香族ジヒドロキシ化合物で本発明において好ましく使用される芳香族ジヒドロキシ化合物として9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2,2’,2’−テトラヒドロー3,3,3’,3’−テトラメチルー1,1’−スピロビス[1H−インデン]―6,6’−ジオール、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン等があげられる。
【0041】
本発明においてはこれら上記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物および上記式(2)に含まれない芳香族ジヒドロキシ化合物を合わせて単独または2種以上を混合して使用できる。
【0042】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールを用いて得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特にビスフェノールAの単独重合体およびビスフェノールAを主とする共重合体が好ましく使用される。
【0043】
そのほか上記以外の各種化合物を本発明の目的に反しない範囲で、所望の目的を持ち芳香族ポリカーボネート主鎖中に組み込むことも可能である。
【0044】
例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2、4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリシクロデカンジメタノール等の脂肪族、脂環式のジオール類、ポリオール類;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチルー4−ヒドロキシフェニル)エタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物類;乳酸、パラヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の脂肪族、芳香族のヒドロキシカルボン酸類;
アジピン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等のジカルボン酸類、ポリカルボン酸類等が例示される。
【0045】
また芳香族ポリカーボネートを製造する際に使用される該炭酸ジエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基などの炭酸ジエステルが好ましい。具体例としては、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略称することがある。)、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートジシクロヘキシルカーボネート等が用いられる。これらのうちではジフェニルカーボネートが反応性、純度およびコストの点より好ましい。
【0046】
また本発明で使用されるエステル交換触媒としては、前述の炭酸ジエステル及び芳香族ジヒドロキシ化合物を出発原料として、副反応少なく、着色等少なく、品質良好な芳香族ポリカーボネートポリマーを与えるものが好ましい。
さらに該エステル交換触媒と本発明の安定剤との反応物が、芳香族ポリカーボネートに従来、配合されている各種添加剤に好ましくない副反応を引き起こさないものがさらに好ましい。
【0047】
例えばアルカリ金属化合物、若しくはアルカリ土類金属化合物の少なくとも1種、および有機塩基性化合物である含窒素塩基性化合物、若しくは含燐塩基性化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する触媒が好ましく使用される。これらのエステル交換触媒とともに、他の触媒を併用することも有利な場合がある。
【0048】
エステル交換触媒としてのアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物としてはたとえば水酸化物、炭化水素化合物、炭酸塩、カルボン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、水素化硼素塩、燐酸水素化物、芳香族ヒドロキシ化合物塩等が挙げられる。
【0049】
アルカリ金属化合物の具体例としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ルビジウム、ステアリン酸セシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸ルビジウム、安息香酸セシウム、硝酸セシウム、亜硝酸ルビジウム、亜硫酸カリウム、シアン酸リチウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸ルビジウム、シアン酸セシウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ルビジウム、チオシアン酸セシウム、水素化硼素リチウム、水素化硼素ナトリウム、水素化硼素カリウム、テトラフェニル化硼素カリウム、亜燐酸ジリチウム、次亜燐酸カリウム、リン酸水素ジリチウム、リン酸トリリチウム、ビスフェノールAのジリチウム塩、モノリチウム塩、リチウムナトリウム塩、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、ルビジウムフェノキシド、セシウムフェノキシド、リチウム2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド、ナトリウム2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド、ルビジウム2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド、セシウム2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシドなどが挙げられる。
【0050】
アルカリ土類金属化合物の具体例としては水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酢酸バリウム、ミリスチン酸マグネシウム、安息香酸ストロンチウム、シアン酸カルシウム、シアン酸バリウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸バリウム等が例示される。水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、酢酸バリウム、ミリスチン酸マグネシウム、安息香酸ストロンチウム等が例示される。
【0051】
本願発明の目的をより一層好ましく達成するためには、エステル交換触媒成分であるアルカリ金属化合物として、リチウム、ルビジウム及びセシウムより選択される金属化合物(以下リチウム金属化合物等と略称することがある)を含有する触媒を使用するのが好ましい。なかでもルビジウム、セシウムより選択される金属化合物を使用するのが好ましい。
【0052】
本発明におけるこれらの重合触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当りアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物の総量として0.01〜5μ化学当量、好ましくは0.02〜3μ化学当量であり、さらに好ましくは0.02〜2.5μ化学当量の範囲である。これらの使用態様の中でリチウム金属化合物等のみを使用することも可能であるが、その他のアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物との併用も好ましい方法である。この場合のリチウム金属化合物等の使用量は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物の総量に対し化学当量比で0.3以上、好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5、特に好ましくは0.7以上の量比が選択される。かかる量比でエステル交換触媒成分としてリチウム金属化合物等を含有する触媒を使用し、本願発明の特定化学構造を有する安定剤と併用することにより、芳香族ポリカーボネート自身あるいは芳香族アミノ基、脂肪族エステル基等不安定な官能基を保有する添加剤に付き、分解、着色等の各種好ましくない副反応をより有効に抑制できる利点を有する。
【0053】
また本発明においては芳香族ポリカーボネートのエステル交換速度を早め芳香族ポリカーボネートの生産効率を向上させる目的で有機塩基性化合物である含窒素塩基性化合物、及びまたは含燐塩基性化合物を併用する事が好ましい。
【0054】
これら含窒素塩基性化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、などのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する第4級アンモニウムヒドロキシド類;テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムフェノキシド、テトラブチルアンモニウムカーボネート、ベンジルトリメチルアンモニウムベンゾエートなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する塩基性アンモニウム塩類;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどの第3級アミン類;あるいはテトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどの塩基性塩などを挙げることができる。
【0055】
また含燐塩基性化合物の具体例としては、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシド、などのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する第4級ホスホニウムヒドロキシド類、あるいはテトラメチルホスホニウムボロハイドライド、テトラブチルホスホニウムボロハイドライド、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、などの塩基性塩などを挙げることができる。
【0056】
上記含窒素塩基性化合物、含燐塩基性化合物は、塩基性窒素原子あるいは塩基性リン原子が芳香族ジヒドロキシ化合物、1モルに対し、10〜1000μ化学当量となる割合で用いるのが好ましい。より好ましい使用割合は同じ基準に対し20〜500μ化学当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し50〜500μ化学当量となる割合である。
【0057】
さらに本発明の芳香族ポリカーボネートは、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、エステル交換触媒の存在下、加熱溶融反応させる溶融重合法により製造されることが好ましい。この場合の重合方法は既に特開平8−59975号公報等に記載の公知の手法にて製造することができる。
【0058】
このようにして、上記の条件を適切に選択する事により、本発明において用いる繰り返し単位が下記式(3)
【0059】
【化14】
Figure 0004594570
【0060】
(式中R21、R22、R23,R24はそれぞれ上記式(2)のR21,R22,R23,R24の定義に同じある。)
で表される芳香族ポリカーボネートが得られる。上記式(3)で表される芳香族ポリカーボネートの置換基R21、R22、R23,R24は前述の本発明で好適に使用される芳香族ジヒドロキシ化合物の説明の際に例示した化合物に対応した置換基が好ましくあげられる。またWにおいても前述の本発明で好適に使用される芳香族ジヒドロキシ化合物の説明に例示した化合物に対応した基が好ましくあげられる。
【0061】
(末端基)
本発明の芳香族ポリカーボネートは、主たる末端基構造が、アリールオキシ基とフェノール性水酸基とよりなり、かつフェノール性水酸基濃度が全末端基中5〜60モル%であることが好ましい。更に好ましくは、フェノール性水酸基濃度が10〜50モル%、さらに好ましくは、10〜40モル%含有される。特段に好ましくは15〜30モル%含有することを特徴とする。主たる末端基構造がアリールオキシ基とフェノール性水酸基とよりなるとは、全末端基中95モル%以上がアリールオキシ基とフェノール性水酸基とからなることを指している。かかる量比でフェノール性水酸基が含有されることにより、本発明の芳香族ポリカーボネートを射出成形する時、金型の形状をより良好に転写する利点を有する。
【0062】
かかる量比でフェノール性水酸基が含有されることにより芳香族ポリカーボネート分子末端の運動性が、転写性良好にする範囲に制御されるものと判断される。
【0063】
フェノール性水酸基濃度を5モル%未満より減少させても更なる転写性の向上は少ない。またフェノール性水酸基濃度を60%を越えて導入した時は、該芳香族ポリカーボネートより得られる組成物の射出成形時、酸化反応に起因すると推定される、成形品の焼けが発生し本発明の目的に好ましくない。
【0064】
アリールオキシ基としては炭素数1〜20の炭化水素基が置換したあるいは無置換のフェノキシ基が好ましく選択される。熱安定性の点から該置換基としては、第3級アルキル基、第3級アラルキル基、アリール基あるいは単に水素原子のものが好ましい。ベンジル位に水素原子を有するものも、耐活性放射線の向上など所望の目的を有する場合、使用可能であるが、熱、熱老化、熱分解等に対する安定性の観点よりは避けたほうが良い。
【0065】
転写性の観点より好ましいアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、4−t−ブチルフェニルオキシ基、4−t−アミルフェニルオキシ基、4−フェニルフェニルオキシ基、4−クミルフェニルオキシ基等である。フェニルオキシ基の置換基の位置は上記のように4−位のみでなく、2−位に置換基有するものが少量存在すると流動性の点で好ましいことがある。
【0066】
界面重合法では分子量調節剤により末端のフェノール性水酸基濃度は5〜60モル%の範囲に抑えられるが、溶融重合法においては、化学反応論的に末端のフェノール性水酸基が60モル%、或いはそれ以上のものが製造されやすいため、積極的に末端のフェノール性水酸基を減少させる必要がある。
【0067】
即ち末端のフェノール性末端基濃度を上記範囲内にするには、以下記述する従来公知の1)或いは2)の方法で達成しうる。
1)重合原料仕込みモル比制御法;重合反応仕込み時の炭酸ジエステル/芳香族ジヒドロキシ化合物のモル比を高めることにより達成できる。具体的には重合反応装置の特徴を考える必要があるが、該モル比を1.03から1.10の間に設定する。
2)末端封止法;重合反応終了時点において例えば、米国特許第5696222号明細書記載の方法に従い、上記明細書中文献中記載のサリチル酸エステル系化合物により末端のフェノール性水酸基を封止する。
【0068】
サリチル酸エステル系化合物により末端のフェノール性水酸基を封止する場合の、サリチル酸エステル系化合物の使用量は封止反応前の末端のフェノール性水酸基1化学当量当たり0.8〜10モル、より好ましくは0.8〜5モル、特に好ましくは0.9〜2モルの範囲である。かかる量比で添加することにより、末端のフェノール性水酸基の80モル%以上を好適に封止することができる。又該封止反応を行う時、上記特許記載の触媒を使用するのが好ましい。
【0069】
方法2)に従う末端のフェノール性水酸基濃度の低減は、重合触媒を無毒化させるための式(1)であらわされる安定剤を添加する以前の段階において好ましく実施される。
【0070】
該サリチル酸エステル系化合物としては、米国特許第5696222号明細書記載のサリチル酸エステル系化合物が好ましく使用でき、具体的には、2−メトキシカルボニルフェニル−フェニルカーボネートのごとき2−メトキシカルボニルフェニルアリールカーボネート類、2−メトキシカルボニルフェニル−ラウリルカーボネートのごとき2−メトキシカルボニルフェニル−アルキルカーボネート類、(2−メトキシカルボニルフェニル)ベンゾエートのごとき芳香族カルボン酸の(2’−メトキシカルボニルフェニル)エステル、(2−メトキシカルボニルフェニル)ステアレート、ビス(2−メトキシカルボニルフェニル)アジペートのごとき脂肪族カルボン酸エステルが挙げられる。
【0071】
(各種添加剤)
(▲1▼離型剤)
本発明の芳香族ポリカーボネートにおいては成形時金型からの成形品の離型性を向上させる為、芳香族ポリカーボネート100重量部当り、炭素数10〜25の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族多価アルコールから生成される脂肪酸エステル化合物を離型剤として5×10-3〜2×10-1重量部含有することが好ましい。かかる量比で離型剤を含有する事により、例えば光ディスク基板を成形する場合、スタンパーより基板表面に転写されたグルーブ、ピット等が変形する事無くディスク基板を金型より取りだす事が安定的に実施する事ができる。上記目的を達成する為好ましくは本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部当り、炭素数10〜25の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族多価アルコールから得られる脂肪酸エステル化合物を5×10-3〜1×10-1重量部、更に好ましくは7.5×10-3〜7×10-2重量部、更に好ましくは1×10-2〜5×10-2重量部の範囲で添加することが好ましい。
【0072】
本発明でいう該炭素数10〜25の脂肪族モノカルボン酸とは、脂肪族の直鎖状若しくは分岐状カルボン酸を含有し、又飽和若しくは不飽和カルボン酸を共に含有する。
【0073】
かかる脂肪族飽和モノカルボン酸としては、具体的には、直鎖状カルボン酸であるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、および分岐脂肪酸であるイソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸[下記式(4)で表される混合物]、
【0074】
【化15】
Figure 0004594570
【0075】
イソパルミチン酸[下記式(5)]、
【0076】
【化16】
Figure 0004594570
【0077】
イソステアリン酸[下記式(6)]、
【0078】
【化17】
Figure 0004594570
【0079】
イソアラキン酸[下記式(7)]、
【0080】
【化18】
Figure 0004594570
【0081】
イソヘキサコ酸[下記式(8)]、
【0082】
【化19】
Figure 0004594570
【0083】
が挙げられる。その他脂肪族不飽和カルボン酸である、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸等が例示される。
【0084】
また本発明の該炭素数2〜10の脂肪族多価アルコールとしては具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、或は1,4−ブテンジオール、さらにはソルビトール、ソルビタン等が例示される。
【0085】
これら炭素数10〜25の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族多価アルコールから得られる脂肪酸エステル化合物の具体例としては、上記脂肪族モノカルボン酸のすくなくとも1種と、上記脂肪族多価アルコールのすくなくとも1種とから生成される脂肪酸エステル化合物が示される。
【0086】
中でも、多価アルコールと脂肪族酸モノカルボンとから得られる脂肪酸エステル化合物の内、HLB値3〜7の脂肪酸エステル化合物が好ましく、更に好ましくはHLB値が3〜6の脂肪酸エステル化合物が離型性良好であるとともに成形金型の汚染が少なく、適切なものとして例示される。
【0087】
ここでHLB値とは、たとえば[界面活性剤;(講談社)著;北原文男ほか3名;p24]に記載されるよう、hydrophile-lipophile balanceの略であり、親水・疎水バランスをあらわすパラメーターである。かかるパラメーター範囲を満足する脂肪酸エステル化合物としては、具体的には、エチレングリコールモノイソパルミテート、プロピレングリコールジオレート、1,4−ブタンジオールジイソパルミテート、1,4−ブテンジオールジイソステアレート、1,4−ブテンジオールモノステアレート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノミリステート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノベヘネート、グリセロールモノイソミリステート、グリセロールモノイソステアレート、グリセロールモノオレート、グリセロールモノリノレート、グリセロールジパルミテート、グリセロールジステアレート、グリセロールジイソパルミテート、グリセロールジイソステアレート、グリセロールジオレート、グリセロールステアレートイソパルミテート、グリセロールトリミリステート、グリセロールトリステアレート、グリセロールトリベヘネート、グリセロールトリイソステアレート、トリメチロールプロパンモノステアレート、トリメチロールプロパンモノイソパルミテート、トリメチロールプロパンモノオレート、トリメチロールプロパンジパルミテート、トリメチロールプロパンジイソステアレート、トリメチロールプロパントリステアレート、トリメチロールプロパントリイソミリステート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールジイソパルミテート、ペンタエリスリトールトリオレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトライソパルミテート、ペンタエリスリトールジオレートジステアレート、その他ソルビタンモノステアレート、ショ糖ジイソステアレート等が例示される。
【0088】
これらの中でのグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル化合物が好ましく使用される。そのほか、以下例示する離型剤を所望により併用しても良い。
【0089】
即ち、炭化水素系離型剤として、天然、合成パラフィンワックス類、ポリエチレンワックス、フルオロカーボン類等が;脂肪酸系離型剤としてはステアリン酸等の高級脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸等のオキシ脂肪酸等が;脂肪酸アミド系離型剤としてはエチレンビスステアリルアミドなどの脂肪酸アミド、エルカ酸アミド等のアルキレン脂肪酸アミド類が;アルコール系離型剤としてはステアリルアルコール、セチルアルコールなどの脂肪族アルコール、多価アルコールとしてポリグリコール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン類などをあげることができる。その他ポリシロキサン類も使用可能である。これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0090】
(▲2▼耐熱安定剤)
本発明においては芳香族ポリカーボネートの熱成形加工時の着色、分子量低下、黒色異物の生成を低いレベルに抑えるため、通常の耐熱安定剤を添加することができる。かかる安定剤としては具体的には、たとえば従来公知のリン系安定剤、フェノール系抗酸化剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤などを挙げることができる。
【0091】
リン系安定剤としては;従来公知の亜燐酸、次亜燐酸、燐酸、ピロリン酸、ポリリン酸、及びこれらのエステル系化合物などを用いる事ができる。本発明で使用するリン系安定剤としては例えば酸化防止剤として安定剤の市販メーカーから市販されているものを含めて使用できる。
【0092】
本発明で言う、「亜燐酸エステル系化合物」とは、炭化水素基が少なくとも1個、酸素原子を介して三価のリン原子に結合した、活性水素を有しない三価のリン化合物である。したがって亜燐酸トリエステルに加え、亜ホスホン酸ジエステル注1)、亜ホスフイン酸エステル注1)も上記「亜燐酸エステル系化合物」に含有される。
[注]1;現代有機合成シリーズ;5 有機リン化合物 (有機合成化学協会編)p78]
本発明で言う「亜燐酸エステル系化合物」としては具体的には例えば;ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−アミル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)オクチルフォスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ノニルフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)デシルフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ジフェニルー4,4’―ジフォスフォナイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が例示される。その他亜燐酸等も使用可能である、しかしこれらに限定されるものではない。これらの中では亜燐酸、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ジフェニル−4,4’―ジフォスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイトなどが好ましいものとして例示される。
【0093】
これら亜燐酸エステル系化合物は本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部あたりリン原子として、5×10-6〜5×10-3重量部、好ましくは1×10-5〜5×10-3重量部、さらに好ましくは2×10-5〜4×10-3重量部添加するのが好ましい。
【0094】
また本発明においては芳香族ポリカーボネート100重量部当たり、燐酸エステル系化合物をリン原子として、5×10-6〜5×10-3重量部、好ましくは1×10-5〜5×10-3重量部、さらに好ましくは2×10-5〜4×10-3重量部添加するのが好ましい。かかる量比の存在により「亜燐酸エステル系化合物」との共存作用が発揮され、加熱成形時、色調悪化が少なく、分子量低下並びに黒色異物の生成の少ない耐熱安定性の向上が実現される。かかる燐酸エステル系化合物及び亜燐酸エステル系化合物はその一部が芳香族芳香族ポリカーボネート分子鎖に結合していても良い。
【0095】
本発明で使用される燐酸エステル系化合物としては具体的にはビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフホスフェート、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフェート、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ジフェニルー4,4’―ジホスフォネート、トリメチルホスフェート、トリフェニルフォスフェート、燐酸トリメチル、燐酸モノオクチル、燐酸トリブトキシエチル、燐酸トリクレジル、燐酸クレジルフェニル、燐酸ジイソプロペニルフェニル、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート等があげられる。そのほか燐酸、ピロ燐酸等も使用可能である、しかしこれらに限定されるものではない。これらの中では燐酸、ピロ燐酸、トリメチルホスフェート、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジフホスフェートなどが好ましいものとして例示される。
【0096】
また本発明においてはフェノール系抗酸化剤を本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部当り1×10-4〜1×10-1重量部、好ましくは、5×10-4〜1×10-1重量部、さらに好ましくは、5×10-4〜5×10-2重量部添加するのが好ましい。かかるフェノール系抗酸化剤としてはフェノール性水酸基を有する化合物であり該フェノール性水酸基の、オルト位の少なくとも一方が第3級炭素原子で置換されたものが好ましい。
【0097】
これらフェノール系抗酸化剤の具体例としては、例えばn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’―ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス{メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3、5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2−チオジエチレンビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートイソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’、8’、12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヒドラジン}等が挙げられる。
【0098】
また有機チオエーテル系安定剤としては例えばジラウリルチオプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β―ラウリルチオプロピオネート)などを挙げることができる。
【0099】
またヒンダードアミン系安定剤としては例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−〔2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)等を挙げることができる。
【0100】
これらの耐熱安定剤は単独で用いても良いし、2種以上混合して使用しても良い。またこれらの耐熱安定剤(ただしリン系安定剤を除く)は本発明の芳香族ポリカーボネート成分100重量部あたり1×10-4〜5重量部、好ましくは5×10-4〜1重量部、さらに好ましくは1×10−3〜0.5重量部の量で使用できる。
【0101】
本発明にかかわる芳香族ポリカーボネートの製造方法では、上記耐熱安定剤とともに、エポキシ化合物を添加する事も好ましく実施し得る。このようなエポキシ化合物としては分子中にエポキシ基を1個以上含有する化合物を使用することが好ましい。
【0102】
具体的には例えばエポキシ化大豆油、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン等をあげる事ができる。
これらのうち3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物が好ましく使用できる。特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましく使用できる。このようなエポキシ化合物は、本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して1×10-4〜0.2重量部の割合で、より好ましくは1×10-4〜0.1重量部の割合で添加される。
【0103】
(▲3▼光安定剤、紫外線吸収剤)
他に本発明の芳香族ポリカーボネートにおいては光安定剤、紫外線吸収剤を配合することもできる.該光安定剤、該紫外線吸収剤としては具体的には2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系化合物、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系化合物等が例示される。
【0104】
該光安定剤、紫外線吸収剤は本発明の本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対し通常1×10-3〜5重量部、好ましくは1×10-2〜1重要部、さらに好ましくは1×10-2〜0.5重量部の量で用いることができる。これらの光安定剤、紫外線吸収剤は単独で用いても良いし複数を混合して使用しても良い。
【0105】
(▲4▼他の安定剤)
重金属イオンクエンチャーとしては例えばニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル系クエンチャーを、金属不活性化剤としては例えばN,N’−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等の化合物を、金属石鹸としては例えばステアリン酸カルシウム等の化合物を、造核剤としては例えばメチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)1水素ホスフェートナトリウム塩等のソルビトール系、リン酸塩系化合物が挙げられる。さらに帯電防止剤としては例えば(β―ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
【0106】
また本発明の芳香族ポリカーボネートにおいては所望により有機、あるいは無機の染料、顔料等の着色剤を使用できる。無機系着色剤として具体的には、二酸化チタンなどの酸化物、アルミナホワイトなどの水酸化物、硫化亜鉛などの硫化物、紺青などのフェロシアン化物、ジンククロメートなどのクロム酸塩、硫酸バリウムなどの硫酸塩、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、群青などの珪酸塩、マンガンバイオレットなどのリン酸塩、カーボンブラックなどの炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉などの金属着色剤などが挙げられる。有機系着色剤として具体的には、ナフトールグリーンBなどのニトロソ系、ナフトールイエローSなどのニトロ系、ナフトールレッド、クロモフタルイエローなどのアゾ系、フタロシアニンブルーやファストスカイブルーなどのフタロシアニン系、インダントロンブルー等の縮合多環系着色剤などがあげられる。
【0107】
これらの着色剤は単独で使用しても良いし、あるいは複数を混合して使用しても良い。これら着色剤は芳香族ポリカーボネート成分100重量部あたり通常1×10-6〜5重量部、好ましくは1×10-6〜3重量部、さらに好ましくは1×10-5〜1重量部の量で用いることができる。
【0108】
(▲5▼青み着色剤)
本発明の芳香族ポリカーボネート組成物には、成形品の官能好感度を向上させるため、前述の着色剤とは別に有機系青み着色剤が使用されることがある。該青み着色剤は加熱溶融成型加工時に変色する傾向が通常大きい。しかし本発明の上記式(1)の安定剤を用いると変色を抑えることができることがわかった。さらに好ましくは溶融重合の際にエステル交換触媒としてルビジウム金属化合物、あるいはセシウム金属化合物を含有する触媒を用い、上記式(1)で表される安定剤を用いると変色を抑える効果がより一層大きいことがわかった。
【0109】
該青み着色剤の具体例としては;
一般名、Solvent Violet 13
[CA.No.(カラーインデックスNo)60725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」,住友化学工業製「スミプラストバイオレットB」、有本化学製「プラストバイオレット8840」]
一般名; Solvent Violet 31
[CA.No.68210;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]
一般名; Solvent Violet 33
[CA.No.609725;商標名 三菱化学(株)「ダイアレジンブルーJ」]
一般名; Solvent Blue 94
[CA.NO.61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]
一般名; Solvent Violet 36
[CA.NO68210;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」]
一般名; Solvent Blue 97
[商標名 バイエル社「マクロレックスブルーRR」]
一般名; Solvent Blue 45 [CA.NO61110;商標名 サンド社製「テトラゾールブルーRLS」]
その他チバスペシャリティー.ケミカルズ社のマクロレックスバイオレットやトリアゾールブルーRLSなどがあげられる。これらの内で、マクロレックスバイオレットやトリアゾールブルーRLSが好ましい。該青み着色剤は単独で使用しても良いし、あるいは複数を混して使用しても良い。該青み着色剤は芳香族ポリカーボネート100重量部あたり通常0.01×10-4〜10×10-4重量部、好ましくは0.05×10-4〜5×10-4重量部、さらに好ましくは0.1×10-4〜3×10-4重量部の量で用いることができる。
【0110】
(▲6▼難燃剤)
本発明の芳香族ポリカーボネートには所望により難燃剤として以下に例示する従来公知の各種難燃剤を併用してもかまわない。例えばリン酸エステル系化合物としては燐酸トリメチル、燐酸トリエチル、燐酸トリブチル、燐酸トリオクチル、燐酸トリブトキシエチル、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジイソプロペニルフェニル、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェートで挙げられる。また本発明においては所望により、ドリップ防止剤として、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)などを配合しても良い。
【0111】
(▲7▼有機、無機フィラー等の固体フィラー)
更に、本発明の芳香族ポリカーボネートに本発明の目的を損なわない範囲で、剛性などを改良する為に無機および有機の固体フィラーを配合し芳香族ポリカーボネート組成物とすることもできる。かかる固体フィラーとしてはタルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の板状または粒状の無機充填剤;ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラストナイト、カーボン繊維、アラミド繊維、金属系導電性繊維等の繊維状充填剤;架橋アクリル粒子、架橋シリコーン粒子等の有機粒子充填剤を挙げることができる。これら無機および有機フィラーの配合量は本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して1〜150重量部が好ましく、3〜100重量部が更に好ましい。
【0112】
また、本発明で使用可能な無機フィラーはシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。この表面処理により、芳香族ポリカーボネートの分解が抑制されるなど良好な結果が得られる。
【0113】
(▲8▼他の熱可塑性樹脂)
本発明の芳香族ポリカーボネートには、本発明の目的が損なわれない範囲であれば他の熱可塑性樹脂を配合し芳香族ポリカーボネート組成物とすることもできる。
【0114】
かかる他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、液晶性ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。これら他の熱可塑性樹脂の配合量は本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して10〜150重量部が好ましく、30〜100重量部が更に好ましい。
【0115】
さらに本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して本発明の目的が損なわれない範囲で、1〜150重量部、および他の熱可塑性樹脂を10〜150重量部配合し芳香族ポリカーボネート組成物とすることもできる。
【0116】
(用途)
本発明で製造される芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネート組成物から射出成形法などにより、耐久性、安定性が良好な成形品を得ることができる。
【0117】
本発明の芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネート組成物は、上記の各種添加剤を適切に配合することにより該芳香族ポリカーボネート組成物の耐久性、特に厳しい温度湿度条件下での長時間の耐久性を保持する効果及び帯電防止性が得られる。該芳香族ポリカーボネート組成物を使用して製造された光記録媒体、具体的にはコンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW等、マグネット・オプティカルディスク(MO)等、デジタルバーサタイルディスク(DVD−ROM、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−R、DVD−RAM等)で代表される高密度の光ディスク基板は長期に渡って高い信頼性が得られる。特にデジタルバーサタイルディスクの高密度の光ディスク基板に有用である。
【0118】
本発明で言う光記録媒体とは、レーザー光などの光によって情報の記録、再生および/または消去を行う記録媒体のことである。具体的には再生専用のコンパクトディスクやビデオディスク、追記可能な光ディスク、書き換え可能な光磁気ディスク、相変化ディスクなどを包含する。これらのディスクの中でも各種のものが提案されているが、樹脂の転写性が厳しくなる0.6mm厚さの基板を用いるDVD―RAM、ASMO.90mm1.3GB相変化ディスクなどに特に好適に用いられる。そして本発明の光記録媒体基板上に記録層を設置しこうした光記録媒体を構成することで欠陥セクタのない、且つ優れた光学特性を有するものを得ることができる。
【0119】
本発明は現在の光記録媒体の主流である1.2mmの厚さの光ディスク基板を始めとする光記録媒体基板に用いられるのは言うまでもない。また更に、その他の厚みの光記録媒体基板、特に最近開発が行われている0.6mm前後の厚みの光記録媒体基板等を成形する金型キャビティーでの冷却条件が厳しくなっている基板に対しても有効に適用できる。
【0120】
本発明の芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネート組成物より光記録媒体基板、媒体を製造する方法は特に限定されず、一般的な基板、媒体成形技術が適用できる。
【0121】
さらに本発明で製造される芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネート組成物から製造されるシートは、難燃性、帯電防止性、に加え接着性や印刷性の優れたシートであり、その特性を生かして電気部品、建材部品、自動車部品等に広く利用され、具体的には各種窓材即ち一般家屋、体育館、野球ドーム、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車両等)等の窓材のグレージング製品、また各種側壁板(スカイドーム、トップライト、アーケード、マンションの腰板、道路側壁板)、車両等の窓材、OA機器のデイスプレーやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、水槽用芳香族ポリカーボネート樹脂積層板、プロジェクションテレビやプラズマディスプレイの前面板やフレンネルレンズ、光カード、光ディスクや偏光板との組合せによる液晶セル、位相差補正板等の光学用途等に有用である。該シートの厚みは特に制限する必要はないが、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜8mm、0.2〜3mmが特に好ましい。また、かかる芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネート組成物から製造されるシートに、新たな機能を付加する各種加工処理(耐候性を改良するための各種ラミネート処理、表面硬度改良のための耐擦傷性改良処理、表面のしぼ加工、半および不透明化加工等)を施してもよい。
【0122】
本発明の芳香族ポリカーボネートに先述したような添加剤、固体フィラー、他の熱可塑性樹脂を配合するには、任意の方法が採用される。例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られる芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネート組成物は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、溶融押出法でシート化するあるいは射出成形機により成形品を製造することができる。
【0123】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお以下本発明において用いた各種の分析評価方法を以下に示した。
a.分析評価
1) 芳香族ポリカーボネートの固有粘度[η];塩化メチレン中、20℃でウベローデ粘度管にて測定した固有粘度より粘度平均分子量Mvは下記式(9)より計算した。
[η]=1.23×10-4×Mv0.83 (9)
【0124】
2) 末端のフェノール性水酸基濃度(モル%);サンプル0.02gを0.4mlの重クロロホルムに溶解し、20℃で1H−NMR(日本電子社製EX−270)を用いて、末端のフェノール性水酸基濃度(eq/ton)を測定した。ついで下記式(10)を用いて固有粘度から全末端基数を計算した。末端のフェノール性水酸基濃度に対応する末端フェノール性水酸基数を全末端基数から差し引いて末端のアリールオキシ基数および末端のアリールオキシ基濃度(eq/ton)を求めた。
(全末端基数)=56.54/[η]1.4338 (10)
【0125】
3) 溶融粘度安定性;レオメトリックス社のRAA型流動解析装置を用い窒素気流下、剪断速度1rad/sec、280℃で測定した溶融粘度の変化の絶対値を30分間測定し、1分当たりの変化率を求めた。芳香族ポリカーボネート及び芳香族ポリカーボネート組成物の短期、長期安定性が良好であるためには、この値が0.5%を超えてはならない。特に、この値が0.5%を超えた場合、芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネート組成物の加水分解安定性が不良となる可能性が大きくなる。
【0126】
4) 耐加水分解性(%);試料を125℃の水封オートクレーブ中、20hr処理し、処理前後の粘度平均分子量を1)に記載の方法で測定し分子量低下率(%)を求めた。ベースポリマーの評価として、本発明の硫酸塩に由来する安定剤又は比較例のスルホン酸誘導体の安定剤のみを添加した芳香族ポリカーボネートの耐加水分解性は、各種添加剤を添加する場合の耐加水分解性のベースとなるものである。この値が1.0%未満を合格、それ以上を不合格とした。
【0127】
5) その他;光ディスク基板の評価は品質の安定性が第1であり、耐加水分解性についても添加剤を添加した状態において1.0%未満を合格、それ以上を不合格とした。汎用成形品用は初期分子量が大きく加水分解による分子量低下率の影響が大きいので、1,5%超を不合格、1.5%以下〜1.0%超を合格、1.0%以下〜0.5%超を良好合格、0.5%以下を優秀合格とした。
【0128】
6) 成形加工時の熱安定性;滞留安定性
(▲1▼光ディスク基板評価)
射出成形機よりシリンダー温度300℃、金型温度80℃の条件で、成形した色見本板の色相(カラー:L,a,b)とシリンダー中380℃×10分間滞留させた後成形して得た色見本板の色相(カラー:L’,a’,b’)を色差計(日本電色(株)製Z−1001DP色差計を使用)で測定し、下記式(11)で表される△Eにより滞留安定性を評価した。△E値は分子量低下の大きさとも関係する一方、成形品の官能テストを大きく左右する。
ΔE={(L−L’)2+(a−a’)2+(b−b’)20.5 (11)
本発明の硫酸塩の安定剤、スルホン酸誘導体の安定剤のみを添加したベースポリマーは、各種添加剤を添加した芳香族ポリカーボネート組成物の滞留焼けのベースとなるものである。△E値として1.5を超えるものは各種添加剤を添加する成形品の色相を大幅に悪化させ、黄色味の強い成形品が得られる可能性が大きいため、不合格と判定、1.5以下のもの良好合格と判定した。
イ)光ディスク基板を成形するのに好適な組成である、粘度平均分子量20000以下の芳香族ポリカーボネートに亜燐酸エステル系化合物および/若しくは燐酸エステル系化合物、並びに脂肪酸エステル化合物を添加した芳香族ポリカーボネート組成物の場合、△E値として2.5以下を合格、2.5超を不合格と判定した。
【0129】
(▲2▼光ディスク基板以外の汎用成形品の評価)
各種汎用成形品を製造するのに好適な組成である粘度平均分子量が20000を超える芳香族ポリカーボネートに青み着色剤、亜燐酸エステル系化合物および/若しくは燐酸エステル系化合物、フェノール系抗酸化剤、並びに脂肪酸エステル化合物を添加した芳香族ポリカーボネート組成物の場合、△E値として1.0以下を合格、1.0超を不合格と判定した。青み着色剤のため△E値は小さな値と成るためである。
【0130】
7) 透明性、透明性耐久性:芳香族ポリカーボネートの透明性、及び厳しい条件下での透明性が保持されるかどうかを判定する評価方法として、上記色見本板でのヘーズ及び上記色見本板を80℃×相対湿度85%Rhで500時間保持した後のヘーズを測定する耐久テストをおこなった。
測定条件;上記成形板を日本電色(株)自動デジタルヘーズメーター UDH−20Dにて実施した。
▲1▼光ディスク基板用途に主として使用される粘度平均分子量20000以下のベースポリマー、芳香族ポリカーボネート組成物については耐久テスト前においてヘーズ0.5以下、かつ耐久テスト後においてヘーズ0.6以下を合格と判定した。この値を超えるときには不合格と判定した。
▲2▼粘度平均分子量20000超のベースポリマーについては、耐久テスト前後においてヘーズ各々1.5、1.7以下を合格、その値を超えるときには不合格と判定した。粘度平均分子量20000超の芳香族ポリカーボネート組成物については耐久テスト前後においてヘーズ各々0.7、0.8以下を合格、その値を超えるときには不合格と判定した。
【0131】
8) 黒色異物の生成数(汎用成形品用の評価);120mm×120mm×2mmの平板を、射出成形機よりシリンダー温度340℃、金型温度80℃の条件下、10000枚成形した。続いて芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネート組成物をシリンダー中溶融状態で10分間滞留させその後成形した平板10枚中の黒色異物を目視にて計測し平板1枚あたりの平均個数を算出した。黒色異物数は成形品の品質そのものを直接左右する重要判定項目である。
0〜3(個/枚)を合格と、3(個/枚)を越えた場合は不合格と判定した。
【0132】
9) 偏光異常点:光ディスク基板用途の評価として、日精樹脂工業(株)製射出成形機(型名 MO40D3H)を使用、金型とスタンパーには記憶容量2.6GBの相変化型光記録媒体基板用(ディスク径120mm、厚さ0.6mm)のものを用いた。成形条件は金型温度が可動部が123℃、固定部が128℃、又カッター、スプルーの温度は60℃とした。またシリンダー温度380℃とし、射出速度250mm/secで芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリカーボネート組成物を金型キャビティーに充填し光ディスク基板を成形した。
【0133】
該光ディスク基板を80℃×85%RH×1000Hrの条件に暴露後、偏光顕微鏡で20μm以上の偏光異常点を計測し、光ディスク基板使用の適合性を判断した。かかる偏光異常点の多い光ディスク基板を使用した光記録媒体はデータ異常の原因となる可能性が高く、避けなくてはならない。該偏光異常点が1.5超(個/枚)のものはNG;×,1.5以下〜1.0超(個/枚)のものは合格;〇’,1.0以下〜0.5超(個/枚)のものは良好合格:〇、0.5(個/枚)以下のものは優秀合格:◎とした。
【0134】
b.ベースポリマーの製造
[実施例1](EPC−1の製造)
本発明の芳香族ポリカーボネートの製造は以下のように行った。攪拌装置、精留塔および減圧装置を備えた反応槽に、原料として精製BPAを137重量部、および精製DPCを131重量部、重合触媒としてビスフェノールA2ナトリウム塩4.1×10-5重量部、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下TMAHと略称する事がある)5.5×10-3重量部を仕込んで窒素雰囲気下180℃で溶融した。
【0135】
攪拌下、反応槽内を13.33kPa(100mmHg)に減圧し、生成するフェノールを留去しながら20分間反応させた。次に200℃に昇温した後、徐々に減圧を行い、フェノールを留去しながら4.000kPa(30mmHg)で20分間反応させた。さらに徐々に昇温を行い220℃で20分間、240℃で20分間、260℃で20分間反応させ、その後、260℃で徐々に減圧を実施し2.666kPa(20mmHg)で10分間、1.333kPa(10mmHg)で5分間反応を続行し、最終的に260℃/66.7Pa(0.5mmHg)で固有粘度[η]が0.37、粘度平均分子量が15300になるまで反応せしめた。粘度平均分子量が15300になった時点で、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート(以後表を含めSAMと略称)4.0重量部を添加、260℃、133.3Pa(1mmHg)で10分間攪拌し、その後芳香族ポリカーボネート100重量部に対して硫酸ビス(テトラブチルホスホニウム)2.7×10-4重量部を添加、260℃、66.7Pa(0.5mmHg)で10分間攪拌した。得られた芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は15300、末端のフェノール性水酸基濃度47(eq/ton−ポリカーボネート)、末端のアリールオキシ基濃度192(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0%あった。得られた芳香族ポリカーボネートの物性を表1、表2に示した。
【0136】
[実施例2〜4](EPC−2〜4の製造)
実施例1と同様にして、但し表2中記載の種類、量の触媒、安定剤を使用し、以下の物性の芳香族ポリカーボネートを製造した。得られた芳香族ポリカーボネートの物性を表1、表2に示した。
【0137】
[比較例1,2](CPC−1,2の製造)
実施例1と同様にして、但し表2中記載の種類、量の触媒、安定剤を使用し芳香族ポリカーボネートを製造した。最終的に得られた芳香族ポリカーボネートの物性は、比較例1においては、粘度平均分子量は15300、末端のフェノール性水酸基濃度46(eq/ton−ポリカーボネート)、末端のアリールオキシ基濃度193(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0%、比較例2においては、粘度平均分子量15200、末端のフェノール性水酸基濃度48(eq/ton−ポリカーボネート)、末端のアリールオキシ基濃度191(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0.2%であった。得られた芳香族ポリカーボネートの物性を表1、表2に示した。
【0138】
[実施例5〜7](EPC−5〜7の製造)
実施例2、3,4において、さらに重合反応をすすめ粘度平均分子量がほぼ22500になるまで重合を行った。次いで得られた芳香族ポリカーボネートを実施例1と同様に処理した。但しSAMは1.95重量部を添加した。最終的に得られた芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量、末端のフェノール性水酸基濃度、および溶融粘度安定性の測定結果を実施例5については表1、表2に、実施例6,7については表1に記した。
【0139】
[比較例3,4](CPC−3,4の製造)
比較例1、2においてさらに重合反応をすすめ分子量25000の芳香族ポリカーボネートを製造した。最終的に得られた芳香族ポリカーボネートの物性は比較例3においては、粘度平均分子量25100、末端のフェノール性水酸基濃度36(eq/ton−ポリカーボネート)、末端アリールオキシ基濃度114(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0%であり、
比較例4においては、粘度平均分子量25200、末端のフェノール性水酸基濃度38(eq/ton−ポリカーボネート)、末端アリールオキシ基濃度112(eq/ton−ポリカーボネート)、溶融粘度安定性0.3%であった。
これらの芳香族ポリカーボネートの評価結果を表1、表2に記載した。なおこれらの芳香族ポリカーボネートは以下に示す各種の成形品の評価のベースポリマーとして使用した。
【0140】
【表1】
Figure 0004594570
【0141】
【表2】
Figure 0004594570
【0142】
c.EPC−1〜4,CPC−1〜2を用いた芳香族ポリカーボネート組成物の製造評価
【0143】
[実施例8〜14および比較例5,6]
上記実施例1〜4および比較例1,2で製造したEPC−1〜4,CPC−1〜2の芳香族ポリカーボネートに、表3中に記載の種類、および量のA)亜燐酸エステル系化合物、B)燐酸エステル系化合物、C)脂肪酸エステル化合物の各成分を、タンブラーを使用して均一に混合した後、30mmφベント付き2軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−30)により、シリンダー温度、260℃、1.33kPa(10mmHg)の真空度で脱気しながら表3中に記載の組成の芳香族ポリカーボネート組成物を製造した。
これらの芳香族ポリカーボネート組成物の評価結果を表3中に記載した。
【0144】
【表3】
Figure 0004594570
【0145】
[実施例15〜21および比較例7,8]
ついで前述の方法に従い日精樹脂工業(株)製射出成形機(型名 MO40D3H)を使用、金型とスタンパーにはそれぞれ記憶容量2.6GBの相変化型光記録媒体基板用(ディスク径120mm、厚さ0.6mm)のものを用い基板を成形した。金型温度は可動部が123℃、固定部が128℃とした。又カッター、スプルーの温度は60℃とした。芳香族ポリカーボネートの溶融温度はシリンダー温度380℃とした。射出速度250mm/secで芳香族ポリカーボネート組成物を金型キャビティーに充填し光ディスク基板を成形した。
実施例8〜14、比較例5,6の芳香族ポリカーボネート組成物につき、光ディスク基板を作製した。実施例15〜21の芳香族ポリカーボネート組成物は良好な成形性と転写性を示した。比較例7,8の芳香族ポリカーボネート組成物はピット形状の転写性にやや劣った。
【0146】
d.PC−7〜11を用いた芳香族ポリカーボネート組成物の製造評価
[実施例22〜24および比較例9,10]
上記実施例5〜7、比較例3,4で製造したEPC−5〜7,CPC−3,4の芳香族ポリカーボネートに、表4に記載の種類、および量のA)亜燐酸エステル系化合物、B)燐酸エステル系化合物、C)脂肪酸エステル化合物の各成分を,タンブラーを使用して均一に混合した後、30mmφベント付き2軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−30)により、シリンダー温度260℃、1.33kPa(10mmHg)の真空度で脱気しながら表4中に記載の添加剤を配合して芳香族ポリカーボネート組成物を製造した。評価結果を表4に示した。
【0147】
【表4】
Figure 0004594570
【0148】
e.シートの製造評価
[実施例25]
上記EPC−5の芳香族ポリカーボネートと脂肪酸エステル化合物としてペンタエリスリトールテトラステアレート(表3にてC)3と称する)を芳香族ポリカーボネートに対して1000ppmになる量を混合溶融した後、ギアポンプで定量供給し、成形機のTダイに送った。鏡面冷却ロールと鏡面ロールで挟持または片面タッチで厚さ2mmまたは0.2mm、幅800mmのシートに溶融押出成形を行った。
【0149】
得られた芳香族ポリカーボネートシート(2mm厚み)の片面に可視光硬化型プラスチック接着剤[(株)アーデル BENEFIX PC]を塗布し、同じシートを気泡が入らないように一方に押し出すようにしながら積層した。その後可視光線専用メタルハライドタイプを備えた光硬化装置により5,000mJ/cm2の光を照射して、得られた積層板の接着強度をJIS K−6852(接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法)に準拠して測定した結果、接着強度が10.4MPa(106Kgf/cm2)で良好であった。
【0150】
一方、厚み0.2mmの芳香族ポリカーボネートシートに、インキ[ナツダ 70−9132:色 136Dスモーク]および溶剤[イソホロン/シクロヘキサン/イソブタノール=40/40/20(wt%)]を混合させて均一にし、シルクスクリーン印刷機で印刷を行い、100℃で60分間乾燥させた。印刷されたインキ面には転移不良もなく、良好な印刷であった。
【0151】
別に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンとホスゲンとを通常の界面重縮合反応させて得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(比粘度0.895、Tg175℃)30部、染料としてPlast Red 8370(有本化学工業製)15部、溶剤としてジオキサン130部を混合した印刷用インキで印刷されたシート(厚み0.2mm)を射出成形金型内に装着し、芳香族ポリカーボネート樹脂ペレット(パンライトL−1225;帝人化成(株)製)を用いて310℃の成形温度でインサート成形を行った。インサート成形後の成形品の印刷部パターンに滲みやぼやけ等の異常もなく、良好な印刷部外観を有したインサート成形品が得られた。
【0152】
f.ポリマーブレンドコンパウンドの製造評価
[実施例26〜32]
上記実施例6で製造したEPC−6に、芳香族ポリカーボネート重量基準で、グリセロールモノステアレート、1000ppm、青み着色剤としてプラストバイオレット8840(有本化学(株)製)を0.8ppm、トリメチルホスフェートを0.05重量%、及び表5、表6記載の記号で示した各成分をタンブラーを使用して均一に混合した後、30mmφベント付き2軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−30)により、シリンダー温度260℃、1.33kPa(10mmHg)の真空度で脱気しながらペレット化し、得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG150U型)を使用して、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件で測定用の成形片を作成し、下記の評価を実施した結果を表5および表6に示す。また表5、表6に記号で記載の各成分は以下のとおりである。
▲1▼−1 ABS:スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体;サンタックUT−61;三井化学(株)製
▲1▼−2 AS:スチレン−アクリロニトリル共重合体;スタイラック−AS 767 R27;旭化成工業(株)製
▲1▼−3 PET:ポリエチレンテレフタレート;TR−8580;帝人(株)製、固有粘度0.8
▲1▼−4 PBT:ポリブチレンテレフタレート;TRB−H;帝人(株)製、固有粘度1.07
▲2▼−1 MBS:メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体;カネエースB−56;鐘淵化学工業(株)製
▲2▼−2 E−1:ブタジエン−アルキルアクリレート−アルキルメタアクリレート共重合体;パラロイドEXL−2602;呉羽化学工業(株)製
▲2▼−3 E−2:ポリオルガノシロキサン成分及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が相互侵入網目構造を有している複合ゴム;メタブレンS−2001;三菱レイヨン(株)製
▲3▼−1 T:タルク;HS−T0.8;林化成(株)製、レーザー回折法により測定された平均粒子径L=5μm、L/D=8
▲3▼−2 G:ガラス繊維;チョップドストランドECS−03T−511;日本電気硝子(株)製、ウレタン集束処理、繊維径13μm
▲3▼−3 W:ワラストナイト;サイカテックNN−4;巴工業(株)製、電子顕微鏡観察により求められた数平均の平均繊維径D=1.5μm、平均繊維長17μm、アスペクト比L/D=20
▲4▼ WAX:α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合によるオレフィン系ワックス;ダイヤカルナ−P30;三菱化成(株)製(無水マレイン酸含有量=10wt%)
(A)曲げ弾性率
ASTM D790により、曲げ弾性率を測定した。
(B)ノッチ付衝撃値
ASTM D256により厚み3.2mmの試験片を用いノッチ側からおもりを衝撃させ衝撃値を測定した。
(C)流動性
シリンダー温度250℃、金型温度80℃、射出圧力98.1MPaでアルキメデス型スパイラルフロー(厚さ2mm、幅8mm)により流動性を測定した。
(D)耐薬品性
ASTM D638にて使用する引張り試験片に1%歪みを付加し、30℃のエッソレギュラーガソリンに3分間浸漬した後、引張り強度を測定し保持率を算出した。保持率は下記式により計算した。
保持率(%)=(処理サンプルの強度/未処理サンプルの強度)×100
【0153】
【表5】
Figure 0004594570
【0154】
【表6】
Figure 0004594570
【0155】
【発明の効果】
本発明のように、芳香族ポリカーボネート中の上記の特定不純物含有量を特定値以下に抑えることで、該ポリマーの耐久性、特に厳しい温湿条件下での長時間の耐久性を著しく向上させ、かつ良好な色調、透明性、機械強度を保持する効果が得られる。

Claims (8)

  1. 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換触媒の存在下重縮合せしめ、生成した芳香族ポリカーボネートの固有粘度が少なくとも0.1に達した後、ついで下記式(1)
    Figure 0004594570
    (式中X,Yは各々独立にプロトン、1当量金属カチオン、アンモニウムカチオン、またはホスホニウムカチオンをあらわす。但しX、Yの両者が同時に、プロトン、1当量金属カチオンであることはない。)
    で表される化合物群から選択される少なくとも1種の安定剤を、生成した芳香族ポリカーボネートに対し0.01ppm〜1wt%の割合で添加して、所望の固有粘度の芳香族ポリカーボネートを生成せしめることを特徴とする安定化された芳香族ポリカーボネートの製造方法。
  2. 上記式(1)においてX、Yが各々独立にプロトン、1当量金属カチオン、下記式(1)−a、
    Figure 0004594570
    (式中R,R,R,Rは各々独立に水素原子、または炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
    で表されるアンモニウムカチオン、または下記式(1)−b
    Figure 0004594570
    (式中R,R,R,Rは各々独立に水素原子、または炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
    で表されるホスホニウムカチオンであることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
  3. 該エステル交換触媒がアルカリ金属化合物若しくはアルカリ土類金属化合物の少なくとも1種、および有機塩基性化合物を含有することを特徴とする請求項または請求項に記載の製造方法。
  4. 該アルカリ金属化合物がルビジウム化合物,あるいはセシウム化合物を含有することを特徴とする請求項に記載の製造方法。
  5. 該有機塩基性化合物が含窒素塩基性化合物または含リン塩基性化合物よりなる群から少なくとも1種を選択されることを特徴とする請求項または請求項に記載の製造方法。
  6. 該安定剤を、生成した芳香族ポリカーボネート中に含有するアルカリ金属化合物触媒またはアルカリ土類金属化合物触媒1当量あたり0.5〜100当量の割合で用いることを特徴とする請求項〜請求項のいずれか1つに記載の製造方法。
  7. 該安定剤を芳香族ポリカーボネートの固有粘度が少なくとも0.2に達した後に添加することを特徴とする請求項〜請求項のいずれか1つに記載の製造方法。
  8. 該安定剤を芳香族ポリカーボネートの固有粘度が少なくとも0.3に達した後に添加することを特徴とする請求項〜請求項のいずれか1つに記載の製造方法。
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