実施の形態1.
実施の形態1では、半導体装置の製造過程において、導電性材料の一例であるCuを用いた配線形成を行なう工程について重点をおいて説明する。
以下、図面を用いて、実施の形態1について説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図1において、本実施の形態では、低誘電率の絶縁性材料からなるlow−k膜の薄膜を形成するlow−k膜形成工程(S102)、キャップ膜を形成するキャップ膜形成工程(S104)、開口部を形成する開口部形成工程(S106)、導電性材料を用いた導電性材料膜を形成する導電性材料膜形成工程として、バリアメタル膜形成工程(S108)、シード膜形成工程(S110)、めっき工程(S114)と、導電性材料膜研磨工程(S116)と、洗浄研磨工程(S118)という一連の工程を実施する。そして、導電性材料膜研磨工程(S116)として、回転工程(S202)、液供給工程(S204)、研磨工程(S206)という一連の工程を実施する。同様に、洗浄研磨工程(S118)として、回転工程(S212)、液供給工程(S214)、研磨工程(S216)という一連の工程を実施する。
図2は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図2では、図1のlow−k膜形成工程(S102)から開口部形成工程(S106)までを示している。それ以降の工程は後述する。
図2(a)において、low−k膜形成工程として、基体の一例となる基板200の上に多孔質の低誘電率絶縁性材料を用いたlow−k膜220の薄膜を例えば200nmの厚さで形成する。low−k膜220を形成することで、比誘電率kが3.0以下の層間絶縁膜を得ることができる。ここでは、一例として、比誘電率が2.5未満の低誘電率絶縁材料となるポリメチルシロキサンを用いたLKD(Low−K Dielectric material:JSR製)を用いてlow−k膜220を形成する。low−k膜220の材料としては、ポリメチルシロキサンの他に、例えば、ポリシロキサン、ハイドロジェンシロセスキオキサン、メチルシロセスキオキサンなどのシロキサン骨格を有する膜、ポリアリーレンエーテル、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾシクロブテンなどの有機樹脂を主成分とする膜、および多孔質シリカ膜などのポーラス膜からなる群から選択される少なくとも一種を用いて形成しても構わない。かかるlow−k膜220の材料では、比誘電率が2.5未満の低誘電率を得ることができる。形成方法としては、例えば、溶液をスピンコートし熱処理して薄膜を形成するSOD(spin on dielectic coating)法を用いることができる。例えば、スピナーで成膜し、このウエハをホットプレート上で窒素雰囲気中でのベークを行った後、最終的にホットプレート上で窒素雰囲気中ベーク温度よりも高温でキュアを行なうことにより形成することができる。low−k材料や形成条件などを適宜調節することにより、所定の物性値を有する多孔質の絶縁膜が得られる。また、基板200として、例えば、直径200ミリのシリコンウェハを用いる。また、ここでは、low−k膜220の下層に位置するデバイス部分やプラグ等の形成については説明を省略している。
図2(b)において、キャップ膜形成工程として、low−k膜220上にCVD法によってキャップ絶縁膜として炭酸化シリコン(SiOC)を例えば膜厚50nm堆積することで、SiOC膜222の薄膜を形成する。SiOC膜222を形成することで、直接リソグラフィーを行うことが困難なlow−k膜220を保護し、low−k膜220にパターンを形成することができる。キャップ絶縁膜の材料として、SiOCの他に、TEOS(テトラエトキシシラン)、炭化シリコン(SiC)、炭水化シリコン(SiCH)、炭窒化シリコン(SiCN)、およびSiOCHからなる群から選択される少なくとも一種の比誘電率2.5以上の絶縁材料を用いて形成しても構わない。ここでは、CVD法によって成膜しているが、その他の方法を用いても構わない。
図2(c)において、開口部形成工程として、リソグラフィー工程とドライエッチング工程でダマシン配線を作製するための配線溝構造である開口部150をSiOC膜222とlow−k膜220内に形成する。図示していないレジスト塗布工程、露光工程等のリソグラフィー工程を経てSiOC膜222の上にレジスト膜が形成された基板200に対し、露出したSiOC膜222とその下層に位置するlow−k膜220を異方性エッチング法により除去することで、基板200の表面に対し、略垂直に開口部150を形成することができる。例えば、一例として、反応性イオンエッチング法により開口部150を形成すればよい。
図3は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図3では、図1のバリアメタル膜形成工程(S108)からめっき工程(S114)までを示している。それ以降の工程は後述する。
図3(a)において、バリアメタル膜形成工程として、開口部形成工程により形成された開口部150及びSiOC膜222表面にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜240を形成する。物理気相成長法(physical vapor deposition:PVD)法の1つであるスパッタ法を用いるスパッタリング装置内でチタン(Ti)膜の薄膜を例えば膜厚5nm堆積し、バリアメタル膜240を形成する。バリアメタル材料の堆積方法としては、PVD法に限らず、原子層気相成長(atomic layer deposition:ALD法、あるいは、atomic layer chemical vapor deposition:ALCVD法)やCVD法などを用いることができる。PVD法を用いる場合より被覆率を良くすることができる。また、バリアメタル膜の材料としては、Tiの他、窒化チタン(TiN)等のチタン系のチタン含有物質、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)等のタンタル系のタンタル含有物質、窒化タングステン(WN)等のタングステン系のタングステン含有物質、もしくはTaとTaN等これらを組合せて用いた積層膜であっても構わない。
図3(b)において、シード膜形成工程として、スパッタ等の物理気相成長(PVD)法により、次の工程である電解めっき工程のカソード極となるCu薄膜をシード膜250としてバリアメタル膜240が形成された開口部150内壁及び基板200表面に堆積(形成)させる。ここでは、シード膜250を例えば基板200表面で膜厚45nm堆積させる。
図3(c)において、めっき工程として、シード膜250をカソード極として、電解めっき等の電気化学成長法によりCu膜260の薄膜を開口部150及び基板200表面に堆積させる。ここでは、例えば、膜厚800nmのCu膜260を堆積させ、堆積させた後にアニール処理を例えば250℃の温度で30分間行なう。
図4は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図4では、図1の導電性材料膜研磨工程(S116)から洗浄研磨工程(S118)までを示している。
図4において、導電性材料膜研磨工程として、CMP法によって、基板200の表面を研磨して、開口部以外に表面に堆積した導電部としての配線層となるシード膜250を含むCu膜260とバリアメタル膜240を研磨除去して、図4に示すように平坦化する。以下、導電性材料膜の研磨方法となる導電性材料膜研磨工程の内部工程について説明する。
図5は、実施の形態1におけるCMP装置の構成を示す概念図である。
図6は、図5のCMP装置を上面から見た場合のCMP装置の動作を説明するための概念図である。
図7は、図5に示すCMP装置の断面構成を示す概念図である。
図5〜図7において、研磨装置の一例となるロータリ型のCMP装置では、ターンテーブル520上に配置された研磨布525上に、研磨面を下に向けて基板300をキャリア510が保持する。
S202において、回転工程として、キャリア510を回転することで基板300を回転させ、ターンテーブル520も回転させる。ターンテーブル520を回転させることで研磨布525も共に回転させる。
S204において、液供給工程として、回転する研磨布525の表面に対して実質的に斜め方向から研磨布525の表面に接液するように供給ノズル530から研磨液となる薬液540を供給する。ここで、実施の形態1では、図5及び図7に示すように、研磨布525の表面に対して角度θの方角から研磨液となる薬液540を供給する。また、図5及び図6に示すように、研磨液となる薬液540を供給する際に、研磨布525の略中心部から研磨布525の外側に向かって供給する。そして、角度φで示す、ターンテーブル520の回転方向先に位置する基板300の手前(基板300の上流側)に研磨液となる薬液540を供給する。このように、基板300の上流側で研磨布525の略中心部から研磨布525の外側に向かって斜め方向から研磨布525の表面に接液するように研磨液となる薬液540を供給することで、研磨布525の径方向の速度成分を研磨液となる薬液540に持たせることができる。
S206において、研磨工程として、研磨布525の径方向速度成分をもった研磨液となる薬液540を供給しながら基板300の表面をキャリア510で研磨布525に押圧することによって基板300表面を研磨する。
ここで、研磨条件としては、研磨荷重Pを2.94×104Pa(300gf/cm2)、キャリア510の回転スピードを62min−1(rpm)、ターンテーブル520の回転スピードを60min−1(rpm)とし、研磨布525としてIC1000(RODEL社)を用いる。また、研磨時間として、シード膜250を含むCu膜260がオールクリアとなった時間に+30%のオーバーポリッシュを行なう。
そして、Cu膜260研磨用(Cu−CMP用)に用いる研磨液は、酸化剤として過硫酸アンモニウム(1.5wt%)、錯体形成剤としてキナルジン酸(0.3wt%)とドデシルベンゼンスルホン酸カリウム(0.06wt%)、有機酸としてシュウ酸(0.1wt%)、研磨粒子としてコロイダルシリカ(0.6wt%)、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.05wt%)をそれぞれ純水に配合し、水酸化カリウム(KOH)でpH9に調整した。
ここで、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の内側から外側に向けて研磨液を供給する場合に、研磨液の流量、流速、研磨布525面(xy面)におけるターンテーブル520の回転中心を中心とした場合の基板300中心方向に対する供給ノズル530の供給口の角度φ、研磨布525面と直交する方向(z方向)における研磨布525面に対する供給ノズル530の供給口の角度θをそれぞれパラメータとして、複数の条件にて研磨し、各条件における研磨速度、ディッシング量、研磨温度について比較した。いずれの条件でも研磨液が研磨布525の略回転中心位置で研磨布525に接液するように構成した。この接液位置は、基板300の端部より研磨布525の回転中心位置側が望ましい。そして、各条件における供給時におけるレイノルズ数も算出した。
従来例1.0として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量が0.3L/min(300ml/min)、その時の供給ノズル530の供給口での流速が0.3m/sec(30cm/sec)の薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.23×10−2m(0.23cm)とした。
サンプル1.0として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量が0.15L/min(150ml/min)、その時の供給ノズル530の供給口での流速が0.15m/sec(15cm/sec)の薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.23×10−2m(0.23cm)とした。
サンプル1.1として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.15m/sec(15cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.23×10−2m(0.23cm)とした。
サンプル1.2として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.2m/sec(20cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.2×10−2m(0.2cm)とした。
サンプル1.3として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.25m/sec(25cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.18×10−2m(0.18cm)とした。
サンプル1.4として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.30m/sec(30cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.16×10−2m(0.16cm)とした。
サンプル1.5として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.15×10−2m(0.15cm)とした。
サンプル1.6として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=25度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.15×10−2m(0.15cm)とした。
サンプル1.7として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=45度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.15×10−2m(0.15cm)とした。
サンプル1.8として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=60度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.15×10−2m(0.15cm)とした。
サンプル1.9として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=75度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.15×10−2m(0.15cm)とした。
サンプル1.10として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.15×10−2m(0.15cm)とした。
サンプル1.11として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=135度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.15×10−2m(0.15cm)とした。
サンプル1.12として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=270度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。また、供給ノズル530の配管半径は、0.15×10−2m(0.15cm)とした。
以下、表1に上述した各条件における研磨結果を示す。
判定基準は、次のようにした。研磨速度が850nm/minより遅いか若しくはディッシング量が30nmを越えるものはNG(×)とした。研磨速度が850nm/min以上1150nm/min未満でかつディッシング量が30nm以下のものは使用可(○)とした。そして、研磨速度が1150nm/min以上でかつディッシング量が30nm以下のものは優良(◎)とした。
ここで、流速は超音波流量計を用い測定した。超音波流量計とは超音波で振動するセンサーを供給ノズル530の配管の2箇所に密接させた上で、一方のセンサーから超音波を発信させ、他方で受信するという送受信機である。送信信号が配管内の流体の速度により影響を受け、受信信号の変化として検出される。その変化値を演算して流速を表示するものである。また、流速は、供給ノズル530の配管径を変えることで調整した。
また、平均流速をU、管の内径をd、スラリの動粘性係数をνとして、レイノルズ数Reは、Re=Ud/νで計算することができる。また、平均流速Uは、最大流速Umの1/2とする。また、各条件での平均流速を上述した各条件での流速とする。
表1において、従来例1.0は現行条件であり、研磨速度が1000nm/minと、Cuディッシング量が20nmであり、研磨中の温度も50度以下で安定している。一方、サンプル1.0では、現行条件からスラリの流量を単に下げた場合であるが、この場合には、研磨速度が700nm/min、Cuディッシング量が80nmとなり、研磨中の温度も60度に達し不安定な研磨となった。この結果より、単に、スラリの流量を減らすだけではプロセス性能を満たさないことがわかる。そして、サンプル1.1からサンプル1.5では、流量を半減した状態で、角度φを90度にし、角度θを0度にした場合に流速を上げていき、流速の効果を確認した。次に、サンプル1.5からサンプル1.10では、サンプル1.5の条件から角度θを振っていき、角度θの効果を確認した。次に、サンプル1.5とサンプル1.11からサンプル1.12では、サンプル1.5の条件から角度φを振っていき、角度φの効果を確認した。
以上の結果から、サンプル1.5に示すような供給方法が最も効果的であることをつきとめた。つまり、流速を0.35m/min(35cm/min)に上げ、供給ノズル530を基板300中心に対してφ=90度上流にし、研磨布525に対して水平(θ=0度)に向けた。このとき流速をあげるために供給ノズル530の供給口の内径を直径4.6mmから3mmに細くした。このような条件にすることで、研磨速度は流量削減前よりも速い1240nm/minとなり、Cuディッシング量も18nmと小さく、研磨中の温度も48度以下で安定させることが可能となった。また、サンプル1.1からサンプル1.5の結果が示すように、流量を減らしても、流速を上げることで、大きな効果が得られていることが分かる。そして、0.25m/sec(25cm/sec)まで上げることで研磨液の流量を半減する前の状態と同等の特性が得られている。更に0.35m/sec(35cm/sec)まで上げた場合では、表1に示すように研磨液の流量を半減する前よりもむしろ特性は向上している。すなわち、流速を上げていくに従ってより良好な結果を得ることができる。研磨液の流量を半減してもこのような性能を引き出すことができる点で、いかにこれまでの供給方法に無駄があったかが分かる。ただし、流速を過度に上げると、研磨液が霧状に舞い上がってダスト増加の原因となり、またそのためにノズル530の供給口の内径を極端に細くすると研磨液が供給口付近に固着して不具合を招くおそれを生じるので、これらの問題が発生しない範囲内で流速は適宜設定可能である。
次に、サンプル1.5とサンプル1.11からサンプル1.12の結果が示すように、角度φが90度では優良、角度φが135度では使用可能であるが、角度φが270度ではNGである。このことから研磨液の供給方向に関して、基板300の上流側に向けて研磨液を供給することが有効であることがわかる。つまり、角度φが180度を越え、サンプル1.12のように基板300中心に対し、270度の方向に向けて供給した場合、流速をあげてもほとんど効果がないことがわかる。そして、サンプル1.5からサンプル1.10の結果が示すように、研磨液を研磨布525の表面に対して確実に斜め方向から接液させる観点から、角度θが0に近いほど望ましいが60度以下であれば使用可能であることがわかる。研磨液の飛び出し角度θ(供給される方角)についてはその角度依存性は小さいが、サンプル1.10のように垂直にしてしまうと流速を速めても効果が全くなくなる。これは、基板300の上流側へ基板面内方向に速度成分を持たせて研磨液を供給することが重要であり、そうするためには最小限の飛び出し角度が必要であることを意味している。
これらの結果を踏まえ、さらに、発明者等が試行錯誤した結果、以下の範囲が好適であることを見出した。供給ノズル530から放出される研磨液となる薬液540のxy方向における放出角度φは、基板300中心に対し、研磨布525の回転方向の上流方向に向かって、45度から180度に設定されると好適である。また、供給ノズル530から放出される研磨液となる薬液540のz方向の角度θが研磨布525面に対して0度から60度に設定されると好適である。そして、供給される研磨液となる薬液540の流速は、0.2m/sec(20cm/sec)以上、1m/sec(100cm/sec)以下で供給すると好適である。このように設定することで、プロセス性能を劣化させることなく、従来0.3L/min(300ml/min)必要であった研磨液となる薬液540の供給量を0.05L/min(50ml/min)〜0.2L/min(200ml/min)に低減することができる。
従来のCMP装置では、研磨液が研磨布525の表面に対して略直角の上方から供給されていた。言い換えれば、供給ノズルが真下ではなく多少斜めに向いていたとしても実質的には垂直方向への滴下であり、研磨面に対し垂直方向から接液していた。よって、研磨布525の表面に供給された研磨液は、ターンテーブル520の回転による遠心力によって研磨布525の外側に向かって広がっていくだけであった。そのため、基板300を研磨する場合に必要な十分な研磨液を研磨面に供給するには、従来のターンテーブル520の回転速度では大量の流量が必要であった。例えば、従来、0.3L/min(300ml/min)の流量が必要であった研磨液について、上述したように流量を0.15L/min(150ml/min)に半減させると、研磨温度上昇、研磨速度低下、平坦性悪化を招いた。これに対して、本実施の形態では、供給ノズル530を斜めに向けて、研磨布525の径方向速度成分を研磨液となる薬液540に持たせることにより、ターンテーブル520の回転による遠心力による径方向への研磨液の移動を補い、従来よりも少ない流量で十分な研磨液を研磨面に供給することができる。
ここで、上述したCu−CMP用の研磨液は、酸化剤として過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸カリウム、過水(過酸化水素)を用いることができる。そして、錯体形成剤としてキナルジン酸の他に、キノリン酸、ベンゾトリアゾール、アラニン、グリシンを用いることができる。そして、有機酸としてシュウ酸の他に、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸を用いることができる。そして、粒子としてコロイダルシリカの他に、フュームドシリカ、コロイダルアルミナ、フュームドアルミナ、セリア、チタニア、有機粒子、無機と有機の一体化した複合型粒子を用いることができる。そして、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルの他に、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリビニルピロリドン、アセチレングリコール系の非イオン系界面活性剤を用いることができる。
また、図6では、研磨布525の略中心位置から研磨布525の径方向に研磨液となる薬液540が供給されるように供給ノズル530の供給口が配置されているが、これに限るものではない。好ましくは供給ノズル530の配置位置及び向きは、基板300の上流側で研磨布525の周方向速度成分より大きな径方向速度成分を研磨液となる薬液540に持たせることができる位置及び向きであればよい。
以上のように余分なCu膜260をCMP法で除去した後、余分なバリアメタル膜240もCMP法で研磨除去して、図4に示すように平坦化する。バリアメタル膜240の研磨詳細については説明を省略する。同じ装置で研磨してもよいし、別の装置で研磨してもよい。
次に、洗浄研磨工程として、CMP法により余分なCu膜260を除去し、引き続きバリアメタル膜240であるTiを研磨した後に、CMP装置を用いて洗浄液による洗浄研磨を行なう。以下、洗浄液を用いた研磨方法となる洗浄研磨工程の内部工程について説明する。洗浄研磨におけるCMP装置は、図5〜図7に示したCMP装置と同様で構わない。
そして、ターンテーブル520上に配置された研磨布525上に、研磨面を下に向けて基板300をキャリア510が保持する。
S212において、回転工程として、キャリア510を回転することで基板300を回転させ、ターンテーブル520も回転させる。ターンテーブル520を回転させることで研磨布525も共に回転させる。
S214において、液供給工程として、回転する研磨布525の表面に対して実質的に斜め方向から研磨布525の表面に接液するように供給ノズル530から洗浄液となる薬液540を供給する。ここで、実施の形態1では、図5及び図7に示すように、研磨布525の表面に対して角度θの方角から洗浄液となる薬液540を供給する。また、図5及び図6に示すように、洗浄液となる薬液540を供給する際に、研磨布525の略中心部から研磨布525の外側に向かって供給する。そして、角度φで示すターンテーブル520の回転方向先に位置する基板300の手前(基板300の上流側)に洗浄液となる薬液540を供給する。このように、基板300の上流側で研磨布525の略中心部から研磨布525の外側に向かって斜め方向から研磨布525の表面に接液するように洗浄液となる薬液540を供給することで、研磨布525の径方向の速度成分を洗浄液となる薬液540に持たせることができる。
S216において、研磨工程として、研磨布525の径方向速度成分をもった洗浄液となる薬液540を供給しながら基板300の表面をキャリア510で研磨布525に押圧することによって基板300表面を研磨する。
ここで、研磨条件としては、研磨荷重Pを0.98×104Pa(100gf/cm2)、キャリア510の回転スピードを62min−1(rpm)、ターンテーブル520の回転スピードを60min−1(rpm)とし、研磨布525としてIC1000(RODEL社)を用いた。また、研磨時間として、30秒の研磨をおこなった。そして、洗浄研磨用に用いる洗浄液となる薬液540は、クエン酸0.2wt%の溶液を用いた。
ここで、Cu−CMPと同様、洗浄研磨においても、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の内側から外側に向けて洗浄液を供給する場合に、洗浄液の流量、流速、研磨布525面(xy面)におけるターンテーブル520中心を中心とした場合の基板300中心に対する供給ノズル530の供給口の角度φ、研磨布525面と直交する方向(z方向)における研磨布525面に対する供給ノズル530の供給口の角度θをパラメータとして、複数の条件にて研磨し、各条件における各基板あたりのダスト数、コロージョン発生数について比較した。いずれの条件でも洗浄液が研磨布525の略回転中心位置で研磨布525に接液するように構成した。この接液位置は、基板300の端部より研磨布525の回転中心位置側が望ましい。
従来例2.0として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量が0.3L/min(300ml/min)、その時の供給ノズル530の供給口での流速が0.3m/sec(30cm/sec)の薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.0として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量が0.15L/min(150ml/min)、その時の供給ノズル530の供給口での流速が0.15m/sec(15cm/sec)の薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.1として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.15m/sec(15cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.2として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.2m/sec(20cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.3として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.25m/sec(25cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.4として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.30m/sec(30cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.5として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.6として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=25度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.7として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=45度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.8として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=60度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.9として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=75度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.10として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.11として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=135度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル2.12として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=270度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる洗浄液を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
以下、表2に上述した各条件における洗浄研磨結果を示す。
判定基準は、次のようにした。基板1枚に対してダスト数が50個を越えるか若しくはコロージョン発生数が10個を越えるものはNG(×)とした。ダスト数が20以上50個未満でかつコロージョン発生数が10個以下のものは使用可(○)とした。そして、ダスト数が20個未満でかつコロージョン発生数が10個以下のものは優良(◎)とした。
ここで、流速はCu−CMPと同様、超音波流量計を用い測定した。また、流速は、供給ノズル530の配管径を変えることで調整した。
表2において、従来例2.0は現行条件であり、基板に対してダスト数が30個でかつコロージョン発生数が0個であり良好であった。一方、サンプル2.0では、現行条件から洗浄液の流量を単に下げた場合であるが、この場合には、ダスト数が750でかつコロージョン発生数が82個であり、使用不可(NG)の研磨となった。この結果より、単に、洗浄液の流量を減らすだけではプロセス性能を満たさないことがわかる。そして、サンプル2.1からサンプル2.5では、流量を半減した状態で、角度φを90度にし、角度θを0度にした場合に流速を上げていき、流速の効果を確認した。次に、サンプル2.5からサンプル2.10では、サンプル2.5の条件から角度θを振っていき、角度θの効果を確認した。次に、サンプル2.5とサンプル2.11からサンプル2.12では、サンプル2.5の条件から角度φを振っていき、角度φの効果を確認した。
以上の結果から、サンプル2.4に示すような供給方法が最も効果的であることをつきとめた。つまり、流速を0.3m/min(30cm/min)に上げ、供給ノズル530を基板300中心に対してφ=90度上流にし、研磨布525に対して水平(θ=0度)に向けた。このような条件にすることで、ダスト数が15個でかつコロージョン発生数が2個と、特にダスト数を従来よりも大幅に低減させることが可能となった。また、サンプル2.1からサンプル2.5の結果が示すように、流速を上げることで、大きな効果が得られていることが分かる。そして、0.25m/sec(25cm/sec)まで上げることで洗浄液の流量を半減する前の状態と略同等の特性が得られている。更に0.30m/sec(30cm/sec)まで上げた場合では、表2に示すように洗浄液の流量を半減する前よりもむしろ特性は向上している。0.35m/sec(35cm/sec)まで上げた場合も同様である。すなわち、流速を上げていくに従ってより良好な結果を得ることができる。洗浄液の流量を半減してもこのような性能を引き出すことができる点で、いかにこれまでの供給方法に無駄があったかが分かる。次に、サンプル2.5とサンプル2.11からサンプル2.12の結果が示すように、角度φが90度では優良、角度φが135度では使用可能であるが、角度φが270度ではNGである。このことから洗浄液の供給方向に関して、基板300の上流側に向けて洗浄液を供給することが有効であることがわかる。つまり、角度φが180度を越え、サンプル2.12のように基板300中心に対し、270度の方向に向けて供給した場合、流速をあげてもほとんど効果がないことがわかる。そして、サンプル2.5からサンプル2.10の結果が示すように、洗浄液を研磨布525の表面に対して確実に斜め方向から接液させる観点から角度θが45度以下であることが望ましいが60度以下であれば使用可能であることがわかる。洗浄液の飛び出し角度θ(供給される方角)についてはその角度依存性は小さいが、サンプル2.10のように垂直にしてしまうと流速を速めても効果が全くなくなる。これは、基板300の上流側へ基板面内方向に速度成分を持たせて洗浄液を供給することが重要であり、そうするためには最小限の飛び出し角度が必要であることを意味している。
これらの結果を踏まえ、さらに、発明者等が試行錯誤した結果、以下の範囲が好適であることを見出した。供給ノズル530から放出される洗浄液となる薬液540のxy方向における放出角度φは、基板300中心に対し、研磨布525の回転方向の上流方向に向かって、45度から180度に設定されると好適である。また、供給ノズル530から放出される洗浄液となる薬液540のz方向の角度θが研磨布525面に対して0度から60度に設定されると好適である。そして、供給される洗浄液となる薬液540の流速は、0.2m/sec(20cm/sec)以上、1m/sec(100cm/sec)以下で供給すると好適である。このように設定することで、プロセス性能を劣化させることなく、従来0.3L/min(300ml/min)必要であった洗浄液となる薬液540の供給量を0.05L/min(50ml/min)〜0.2L/min(200ml/min)に低減することができる。
従来の洗浄研磨に用いていたCMP装置では、洗浄液が研磨布525の表面に対して略直角の上方から供給されていた。言い換えれば、供給ノズルが真下ではなく多少斜めに向いていたとしても実質的には垂直方向への滴下であり、研磨面に対し垂直方向から接液していた。よって、研磨布525の表面に供給された洗浄液は、ターンテーブル520の回転による遠心力によって研磨布525の外側に向かって広がっていくだけであった。そのため、基板300を研磨する場合に必要な十分な洗浄液を研磨面に供給するには、従来のターンテーブル520の回転速度では大量の流量が必要であった。例えば、従来、0.3L/min(300ml/min)の流量が必要であった洗浄液について、流量を0.15L/min(150ml/min)に半減させると、絶縁膜上のダスト数は30個/基板から750個/基板まで増加した。また、Cu配線端にコロージョンの発生が確認され、コロージョン発生数は0個/基板から82個/基板まで増加した。これに対して、本実施の形態では、研磨布525の径方向速度成分を洗浄液となる薬液540に持たせることにより、ターンテーブル520の回転による遠心力による径方向への洗浄液となる薬液540の移動を補い、従来よりも少ない流量で十分な洗浄液となる薬液540を研磨面に供給することができる。
また、Cu−CMPと同様、図6では、研磨布525の略中心位置から研磨布525の径方向に洗浄液となる薬液540が供給されるように供給ノズル530の供給口が配置されているが、これに限るものではない。好ましくは供給ノズル530の配置位置及び向きは、基板300の上流側で研磨布525の周方向速度成分より大きな径方向速度成分を洗浄液となる薬液540に持たせることができる位置及び向きであればよい。
以上のようにして、図4に示すダマシン配線を形成することができる。以降、多層配線を形成する場合も同様である。また、デュアルダマシン配線を形成する場合も同様である。
以上のように、Cu−CMPにおいて、基板300の上流側に斜め上方から径方向に速度成分を持つように研磨液となる薬液540を研磨布525上に供給することで、研磨液の流量を低減することができる。そして、同様に、洗浄研磨において、基板300の上流側に斜め上方から径方向に速度成分を持つように洗浄液となる薬液540を研磨布525上に供給することで、洗浄液となる薬液540の流量を低減することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、半導体装置の製造過程において、導電性材料の一例であるCuを用いた配線形成を行なう工程について重点をおいて説明したが、半導体装置の製造過程において、基板の研磨を行なう工程はこれに限るものではない。実施の形態2では、半導体装置の製造過程において、酸化膜CMPの一例として、デバイス部分と配線部分とをつなぐプラグ形成を行なう過程における酸化膜CMPについて重点をおいて説明する。
以下、図面を用いて、実施の形態2について説明する。
図8は、実施の形態2における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図8において、実施の形態2では、SiO2膜の薄膜を形成するSiO2膜形成工程(S1402)、SiO2膜の薄膜を研磨するSiO2膜研磨工程(S1406)、開口部を形成する開口部形成工程(S1408)、バリアメタル膜形成工程(S1410)、W膜の薄膜を形成するW膜形成工程(S1412)、バリアメタル膜とW膜とを研磨するプラグ材料膜研磨工程(S1416)という一連の工程を実施する。そして、SiO2膜研磨工程(S1406)の内部工程として、回転工程(S222)、液供給工程(S224)、研磨工程(S226)という一連の工程を実施する。
図9は、図8のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図9では、図8のSiO2膜形成工程(S1402)から開口部形成工程(S1408)までを示している。それ以降の工程は後述する。
図9(a)において、SiO2膜形成工程として、デバイス部分が形成された基板200の表面にCVD法によって、例えば、膜厚500nmのSiO2膜の薄膜を堆積し、プラグ層の絶縁膜となるSiO2膜210を形成する。ここでは、CVD法によって成膜しているが、その他の方法を用いても構わない。ここで、SiO2膜210の薄膜を堆積する場合に、堆積前の基板200の表面が平らであれば好ましいが、例えば、ゲート形成等により基板200の表面が波打っている場合、堆積したSiO2膜210の表面も波打ってしまう。そのため、ここでもSiO2膜210の表面を平坦化するため研磨することが望ましい。
図9(b)において、SiO2膜研磨工程として、基板200の表面に形成されたSiO2膜210の薄膜を研磨する。SiO2膜210を平坦にすることで、後述する工程で堆積させるバリアメタルやWがプラグとして所望する位置とは異なる位置にて凹部に残ることを防止することができる。ここで、装置構成は、図5〜図7で示したCMP装置の構成と同様で構わないので説明を省略する。そして、ターンテーブル520上に配置された研磨布525上に、研磨面を下に向けて基板300をキャリア510が保持する。
S222において、回転工程として、キャリア510を回転することで基板300を回転させ、ターンテーブル520も回転させる。ターンテーブル520を回転させることで研磨布525も共に回転させる。
S224において、液供給工程として、回転する研磨布525の表面に対して実質的に斜め方向から研磨布525の表面に接液するように供給ノズル530から研磨液となる薬液540を供給する。ここで、実施の形態1と同様、図5及び図7に示すように、研磨布525の表面に対して角度θの方角から研磨液となる薬液540を供給する。また、図5及び図6に示すように、研磨液となる薬液540を供給する際に、研磨布525の略中心部から研磨布525の外側に向かって供給する。そして、角度φで示すターンテーブル520の回転方向先に位置する基板300の手前(基板300の上流側)に研磨液となる薬液540を供給する。このように、基板300の上流側で研磨布525の略中心部から研磨布525の外側に向かって斜め方向から研磨布525の表面に接液するように研磨液となる薬液540を供給することで、研磨布525の径方向の速度成分を研磨液となる薬液540に持たせることができる。
S226において、研磨工程として、研磨布525の径方向速度成分をもった研磨液となる薬液540を供給しながら基板300の表面をキャリア510で研磨布525に押圧することによって基板300表面を研磨する。
ここで、研磨条件としては、研磨荷重Pを3.92×104Pa(400gf/cm2)、キャリア510の回転スピードを105min−1(rpm)、ターンテーブル520の回転スピードを100min−1(rpm)とし、研磨布525としてIC1000(RODEL社)を用いた。
そして、SiO2膜210研磨用(酸化膜−CMP用)に用いる研磨液となる薬液540は、研磨粒子にセリア(5wt%)を含有したスラリを用いた。また、ここでは、2液をテーブル上で混合するプロセスを用い、図示しない第2の供給ノズルから別途、界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.05wt%)の溶液を0.003L/min(3ml/min)同時に供給する。
ここで、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の内側から外側に向けて研磨液を供給する場合に、研磨液の流量、流速、研磨布525面(xy面)におけるターンテーブル520中心を中心とした場合の基板300中心に対する供給ノズル530の供給口の角度φ、研磨布525面と直交する方向(z方向)における研磨布525面に対する供給ノズル530の供給口の角度θをパラメータとして、複数の条件にて研磨し、各条件における研磨速度、ディッシング量、研磨温度について比較した。いずれの条件でも研磨液が研磨布525の略回転中心位置で研磨布525に接液するように構成した。この接液位置は、基板300の端部より研磨布525の回転中心位置側が望ましい。
従来例3.0として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量が0.3L/min(300ml/min)、その時の供給ノズル530の供給口での流速が0.3m/sec(30cm/sec)の薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.0として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量が0.15L/min(150ml/min)、その時の供給ノズル530の供給口での流速が0.15m/sec(15cm/sec)の薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.1として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.15m/sec(15cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.2として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.2m/sec(20cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.3として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.25m/sec(25cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.4として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.30m/sec(30cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.5として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.6として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=25度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.7として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=45度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.8として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=60度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.9として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=75度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.10として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.11として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=135度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル3.12として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=270度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.15L/min(150ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となるセリア(5wt%)を含有した研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
以下、表3に上述した各条件における研磨結果を示す。
判定基準は、次のようにした。研磨速度が350nm/minより遅いか若しくはディッシング量が30nmを越えるものはNG(×)とした。研磨速度が350nm/min以上450nm/min未満でかつディッシング量が30nm以下のものは使用可(○)とした。そして、研磨速度が450nm/min以上でかつディッシング量が30nm以下のものは優良(◎)とした。
ここで、実施の形態1と同様、流速は超音波流量計を用い測定した。また、流速は、供給ノズル530の配管径を変えることで調整した。
表3において、従来例3.0は現行条件であり、研磨速度が400nm/minと、酸化膜ディッシング量が20nmであり、研磨中の温度も50度以下で安定している。一方、サンプル3.0では、現行条件からスラリの流量を単に下げた場合であるが、この場合には、研磨速度が300nm/min、酸化膜ディッシング量が80nmとなり、研磨中の温度も60度に達し不安定な研磨となった。この結果より、単に、スラリの流量を減らすだけではプロセス性能を満たさないことがわかる。そして、サンプル3.1からサンプル3.5では、流量を半減した状態で、角度φを90度にし、角度θを0度にした場合に流速を上げていき、流速の効果を確認した。次に、サンプル3.5からサンプル3.10では、サンプル3.5の条件から角度θを振っていき、角度θの効果を確認した。次に、サンプル3.5とサンプル3.11からサンプル3.12では、サンプル3.5の条件から角度φを振っていき、角度φの効果を確認した。
以上の結果から、サンプル3.5に示すような供給方法が最も効果的であることをつきとめた。つまり、流速を0.35m/min(35cm/min)に上げ、供給ノズル530を基板300中心方向に対してφ=90度上流にし、研磨布525に対して水平(θ=0度)に向けた。このような条件にすることで、研磨速度は流量削減前よりも速い500nm/minとなり、酸化膜ディッシング量も23nmと小さく、研磨中の温度も48度以下で安定させることが可能となった。また、サンプル3.1からサンプル3.5の結果が示すように、流速を上げることで、大きな効果が得られていることが分かる。そして、0.25m/sec(25cm/sec)まで上げることで研磨液の流量を半減する前の状態を超える特性が得られている。すなわち、流速を上げていくに従ってより良好な結果を得ることができる。研磨液の流量を半減してもこのような性能を引き出すことができる点で、いかにこれまでの供給方法に無駄があったかが分かる。次に、サンプル3.5とサンプル3.11からサンプル3.12の結果が示すように、角度φが90度では優良、角度φが135度では使用可能であるが、角度φが270度ではNGである。このことから研磨液の供給方向に関して、基板300の上流側に向けて研磨液を供給することが有効であることがわかる。つまり、角度φが180度を越え、サンプル3.12のように基板300中心に対し、270度の方向に向けて供給した場合、流速をあげてもほとんど効果がないことがわかる。そして、サンプル3.5からサンプル3.10の結果が示すように、研磨液を研磨布525の表面に対して確実に斜め方向から接液させる観点から、角度θが0に近いほど望ましいが60度以下であれば使用可能であることがわかる。研磨液の飛び出し角度θ(供給される方角)についてはその角度依存性は小さいが、サンプル3.10のように垂直にしてしまうと流速を速めても効果が全くなくなる。これは、基板300の上流側へ基板面内方向に速度成分を持たせて研磨液を供給することが重要であり、そうするためには最小限の飛び出し角度が必要であることを意味している。
これらの結果を踏まえ、さらに、発明者等が試行錯誤した結果、実施の形態1と同様に以下の範囲が好適であることを見出した。供給ノズル530から放出される研磨液となる薬液540のxy方向における放出角度φは、基板300中心に対し、研磨布525の回転方向の上流方向に向かって、45度から180度に設定されると好適である。また、供給ノズル530から放出される研磨液となる薬液540のz方向の角度θが研磨布525面に対して0度から60度に設定されると好適である。そして、供給される研磨液となる薬液540の流速は、0.2m/sec(20cm/sec)以上、1m/sec(100cm/sec)以下で供給すると好適である。このように設定することで、プロセス性能を劣化させることなく、従来0.3L/min(300ml/min)必要であった研磨液となる薬液540の供給量を0.05L/min(50ml/min)〜0.2L/min(200ml/min)に低減することができる。
従来のCMP装置では、ベースとなる研磨液が研磨布525の表面に対して略直角の上方から供給されていた。言い換えれば、供給ノズルが真下ではなく多少斜めに向いていたとしても実質的には垂直方向への滴下であり、研磨面に対し垂直方向から接液していた。よって、研磨布525の表面に供給された研磨液は、ターンテーブル520の回転による遠心力によって研磨布525の外側に向かって広がっていくだけであった。そのため、基板300を研磨する場合に必要な十分な研磨液を研磨面に供給するには、従来のターンテーブル520の回転速度では大量の流量が必要であった。例えば、従来、0.3L/min(300ml/min)の流量が必要であった研磨液について、上述したように流量を0.15L/min(150ml/min)に半減させると、研磨温度上昇、研磨速度低下、平坦性悪化を招いた。これに対して、本実施の形態では、供給ノズル530を斜めに向けて、研磨布525の径方向速度成分を研磨液となる薬液540に持たせることにより、ターンテーブル520の回転による遠心力による径方向への研磨液の移動を補い、従来よりも少ない流量で十分な研磨液を研磨面に供給することができる。
ここで、酸化膜のCMP用の研磨液としては、研磨粒子としてセリアの他に、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、コロイダルアルミナ、フュームドアルミナ、チタニア、有機粒子、無機と有機の一体化した複合型粒子を用いることができる。また、別途供給される2液目の溶液に使用する界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリビニルピロリドン、アセチレングリコール系の非イオン系界面活性剤を用いることができる。
図9(c)において、開口部形成工程として、リソグラフィー工程とドライエッチング工程でプラグを作製するためのプラグ孔(ホール)構造である開口部152をSiO2膜210内に形成する。図示していないレジスト塗布工程、露光工程等のリソグラフィー工程を経てSiO2膜210の上にレジスト膜が形成された基板200に対し、露出したSiO2膜210を異方性エッチング法により除去して開口部152を形成すればよい。異方性エッチング法を用いることで、基板200の表面に対し、略垂直に開口部152を形成することができる。例えば、一例として、反応性イオンエッチング法により開口部152を形成すればよい。
図10は、図8のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
図10では、図8のバリアメタル膜形成工程(S1410)からプラグ材料膜研磨工程(S1416)までを示している。
図10(a)において、バリアメタル膜形成工程として、前記開口部形成工程により形成された開口部152及びSiO2膜210表面にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜となる窒化チタン(TiN)膜214を形成する。物理気相成長法(physical vapor deposition:PVD)法の1つであるスパッタ法を用いるスパッタリング装置内でTiN膜214の薄膜を形成する。バリアメタル材料の堆積方法としては、PVD法に限らず、上述したALD法、ALCVD法、或いはCVD法などを用いることができる。PVD法を用いる場合より被覆率を良くすることができる。
図10(b)において、W膜形成工程として、CVD法により、TiN膜214が形成された開口部152内壁及び基板200表面にW膜216の薄膜を堆積(形成)させる。
図10(c)において、プラグ材料膜研磨工程として、基板200の表面を研磨して、開口部152以外にSiO2膜210の表面に堆積されたW膜216及びTiN膜214を研磨除去して、図10(c)に示すようなプラグを形成する。ここで、装置構成は、図5〜図7に示したCMP装置と同様で構わないので説明を省略する。また、研磨条件は、W膜216及びTiN膜214を研磨する条件に適宜調整すればよい。
図11は、プラグ層の上に配線層が形成された様子を示す断面図である。
図10(c)に示すようなプラグを形成した後に図11に示すような配線形成を行なっていけばよい。
以上のように、酸化膜CMPにおいても、基板300の上流側に斜め上方から径方向に速度成分を持つように研磨液を研磨布525上に供給することで、研磨液の流量を低減することができる。
実施の形態3.
上述した実施の形態1や実施の形態2では、CMP装置で薬液540を供給する際、薬液540を研磨布525の略中心部から外周側に向かって供給していたが、これに限るものではない。実施の形態3では、薬液540を供給する際に、研磨布525の外側から研磨布525の略中心部に向かって供給する構成について説明する。実施の形態3では、特に、Cu−CMPの場合について説明する。実施の形態3における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャート及びフローチャートに対応して実施される工程を表す各工程断面図は、実施の形態1と同様である。
S102〜S114については、実施の形態1と同様であるため省略する。図4において、導電性材料膜研磨工程(S116)として、CMP法によって、基板200の表面を研磨して、開口部以外に表面に堆積した導電部としての配線層となるシード膜250を含むCu膜260とバリアメタル膜240を研磨除去して、図4に示すように平坦化する。以下、導電性材料膜の研磨方法となる導電性材料膜研磨工程の内部工程について説明する。
図12は、実施の形態3におけるCMP装置の構成を示す概念図である。
図13は、図12のCMP装置を上面から見た場合のCMP装置の動作を説明するための概念図である。
図14は、図12に示すCMP装置の断面構成を示す概念図である。
図12〜図14において、研磨装置の一例となるロータリ型のCMP装置では、ターンテーブル520上に配置された研磨布525上に、研磨面を下に向けて基板300をキャリア510が保持する。
S202において、回転工程として、キャリア510を回転することで基板300を回転させ、ターンテーブル520も回転させる。ターンテーブル520を回転させることで研磨布525も共に回転させる。
S204において、液供給工程として、回転する研磨布525の表面に対して実質的に斜め方向から研磨布525の表面に接液するように供給ノズル530から研磨液となる薬液540を供給する。ここで、実施の形態3では、図12及び図14に示すように、研磨布525の表面に対して角度θの方角から研磨液となる薬液540を供給する。また、図12及び図13に示すように、研磨液となる薬液540を供給する際に、研磨布525の外側から研磨布525の略中心部に向かって供給する。そして、角度φで示すターンテーブル520の回転方向先に位置する基板300の手前(基板300の上流側)に研磨液となる薬液540を供給する。このように、基板300の上流側で研磨布525の外部から研磨布525の略中心部に向かって斜め上方の方角から研磨布525の表面に接液するように研磨液となる薬液540を供給することで、研磨布525の径方向の速度成分を研磨液となる薬液540に持たせることができる。
S206において、研磨工程として、研磨布525の径方向速度成分をもった研磨液となる薬液540を供給しながら基板300の表面をキャリア510で研磨布525に押圧することによって基板300表面を研磨する。
ここで、研磨条件としては、研磨荷重Pを0.98×104Pa(100gf/cm2)、キャリア510の回転スピードを183min−1(rpm)、ターンテーブル520の回転スピードを150min−1(rpm)とし、研磨布525としてIC1000(RODEL社)を用いる。また、研磨時間として、シード膜250を含むCu膜260がオールクリアとなった時間に+30%のオーバーポリッシュを行なう。研磨条件は、ターンテーブル520とキャリア510の回転数、及び研磨荷重P以外は、実施形態1と同じである。Cu膜260研磨用(Cu−CMP用)に用いる研磨液も、実施の形態1と同様である。このように、実施の形態3では、実施の形態1に比べ、低荷重、高速回転を基本としている。低荷重、高速回転とすることで、スクラッチや膜剥がれを抑制することができる。しかしながら、この回転数で、従来のようなターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて、流量が0.3L/min(300ml/min)、流速が0.3m/sec(30cm/sec)の薬液540となる研磨液(スラリ)を供給したのでは、遠心力によりほとんどの研磨液が基板300に到達するまえにテーブル外に排出されてしまう。そのため、後述するように、ウエハ中央の研磨速度が遅くなってしまう。そのため、面内均一性について例えば3sigma(σ)で30%となり実施の形態1における回転数での結果に比べ著しく悪化してしまう。そこで、実施の形態3では、後述するように、高速回転に対応した研磨液の向き、流速等を構成する。
ここで、研磨液の流量、流速、研磨布525面(xy面)におけるターンテーブル520中心を中心とした場合の基板300中心に対する供給ノズル530の供給口の角度φ、研磨布525面と直交する方向(z方向)における研磨布525面に対する供給ノズル530の供給口の角度θをパラメータとして、複数の条件にて研磨し、各条件における研磨速度、ディッシング量、面内均一性について比較した。また、ここでは、回転半径が370mmのターンテーブル520を用いた。同様に、回転半径が370mmの研磨布525がターンテーブル520上に配置されている。そして、図13に示すように、上方から見て時計回り(右回り)にターンテーブル520を回転させる。また、以下に記載する条件では、図13に示すように、ターンテーブル520の回転中心位置を原点とするxy座標系で位置を特定する。
従来例4.0として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量が0.3L/min(300ml/min)、その時の供給ノズル530の供給口での流速が0.3m/sec(30cm/sec)の薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.1として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.15m/sec(15cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.2として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.2m/sec(20cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.3として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.25m/sec(25cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.4として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.30m/sec(30cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.5として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.6として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=25度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.7として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=45度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.8として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=60度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.9として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=90度、θ=75度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.10として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で真下(θ=90度)に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.11として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=135度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.12として、供給ノズル530をターンテーブル520の略中心位置(研磨布525の略回転中心位置)で角度φ=270度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の外側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
従来例4.0及びサンプル4.1〜サンプル4.12のいずれの条件でも研磨液が研磨布525の略回転中心位置で研磨布525に接液するように構成した。しかしながら、以降の条件では、研磨液が、研磨布525の外側から内側に向けて供給されるように、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の内側に向けて配置する。そのため、研磨液が研磨布525に接液する位置も異なってくる。
サンプル4.13として、供給ノズル530を研磨布525面上の図13に示すxy座標(0,180)の位置付近で研磨液が研磨布525に接液する位置で、なおかつ角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の中心部側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.14として、供給ノズル530を研磨布525面上の図13に示すxy座標(0,330)の位置付近で研磨液が研磨布525に接液する位置で、なおかつ角度φ=90度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の中心部側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.15として、供給ノズル530を研磨布525面上の図13に示すxy座標(−250,250)の位置付近で研磨液が研磨布525に接液する位置で、なおかつ角度φ=135度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の中心部側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
サンプル4.16として、供給ノズル530を研磨布525面上の図13に示すxy座標(−330,0)の位置付近で研磨液が研磨布525に接液する位置で、なおかつ角度φ=180度、θ=0度で、供給ノズル530の供給口の向きを研磨布525の中心部側に向けて配置した。そして、流量を0.3L/min(300ml/min)、供給ノズル530の供給口での流速を0.35m/sec(35cm/sec)とした薬液540となる研磨液(スラリ)を供給ノズル530から研磨布525面上に供給した。
以下、表4に上述した各条件における結果を示す。
判定基準は、次のようにした。研磨速度が1200nm/minより遅いか若しくはディッシング量が30nmを越えるか若しくは面内均一性(3σ)が20%を越えるものはNG(×)とした。研磨速度が1200nm/min以上1500nm/min未満でかつディッシング量が30nm以下でかつ面内均一性(3σ)が10%を越え20%以下のものは使用可(○)とした。そして、研磨速度が1500nm/min以上でかつディッシング量が30nm以下でかつ面内均一性(3σ)が10%以下のものは優良(◎)とした。
流速は超音波流量計を用い測定した。また、流速は、供給ノズル530の配管径を変えることで調整した。
表4において、従来例4.0は現行条件であり、高速研磨の結果、研磨速度が1100nm/minで、Cuディッシング量が80nmとなり、面内均一性も30%に達し不安定な研磨となった。この結果より、従来条件で回転数を上げると遠心力によりほとんどの研磨液が基板300に到達するまえにテーブル外に排出されてしまうため、ウエハ中央の研磨速度が遅くなってしまうことがわかる。そのため、面内均一性について例えば3σで30%となり実施の形態1における回転数での結果に比べ著しく悪化してしまう。よって、従来の条件で高速回転させる場合にはさらに流量を増やす必要があることがわかる。
また、サンプル4.1からサンプル4.12は、実施の形態1におけるサンプル1.1からサンプル1.12と条件が同様であるが、サンプル4.5とサンプル4.6を用いることで基板300中央に効率よくスラリが供給され面内均一性が改善される(3σ=16%、18%)。このように、研磨布525の径方向に速度成分を持たせてスラリを供給することによりスクラッチや膜剥がれを抑制することが可能となる。ここで、サンプル4.5とサンプル4.6も使用可能ではあるが、発明者等はさらなる性能改善を試みた。ターンテーブル520の回転が速い場合に遠心力によりほとんどの研磨液が基板300に到達するまえにテーブル外に排出されてしまうのであれば、それに応じて研磨液を供給する向きを考慮することが望ましい。そこで、サンプル4.13からサンプル4.16では、遠心力に対向する向きに研磨液を供給し、研磨液が研磨布525上に留まるように構成した。その際、各条件で供給ノズル530から吐出された研磨液が研磨布525に接液する概略位置と供給ノズル530の向きを変えてその効果を確認した。
図15は、実施の形態3における研磨液の接液位置と供給ノズルの向きを示す概念図である。
図15において、矢印542aは、サンプル4.5での接液位置と供給ノズル530の向きを示している。矢印542bは、サンプル4.13での接液位置と供給ノズル530の向きを示している。矢印542cは、サンプル4.14での接液位置と供給ノズル530の向きを示している。矢印542dは、サンプル4.15での接液位置と供給ノズル530の向きを示している。矢印542eは、サンプル4.16での接液位置と供給ノズル530の向きを示している。これらの位置と向きとでCu−CMPを実施した結果、表4に示すように、遠心力に対向する向きに速度成分を持つように研磨布525の外側から内側(中央部側)に向かって研磨液を供給することが効果的であることがわかる。このように、供給ポイントをテーブル中心からずらすことで、研磨速度の向上と面内均一性のさらなる向上を達成することができる。
これらの結果を踏まえ、さらに、発明者等が試行錯誤した結果、ターンテーブル520を高速化する場合には、以下の範囲が好適であることを見出した。供給ノズル530から放出される研磨液となる薬液540のxy方向における放出角度φは、基板300中心に対し、研磨布525の回転方向の上流方向に向かって、45度から180度に設定されると好適である。また、供給ノズル530から放出される研磨液となる薬液540のz方向の角度θが研磨布525面に対して0度から25度に設定されると好適である。そして、供給される研磨液となる薬液540の流速は、0.35m/sec(35cm/sec)以上1m/sec(100cm/sec)以下で供給すると好適である。また、研磨布525の外側から研磨布525の内側(中央部側)に向かって供給すると好適である。このように設定することで、プロセス性能を劣化させることなく、従来0.3L/min(300ml/min)必要であった研磨液となる薬液540の供給量を増やすことなく高速回転に対応させることができる。
上述したように、従来技術ではCMPスラリ、洗浄液は高価であるため少量での処理がのぞまれていたのにも関わらずCMP特性の劣化、洗浄能力の低下が生じるため流量削減の実用化は困難であった。しかしながら、上述した実施の形態で示したように、供給される液体の供給量、供給速度、供給の角度(キャリア510に装備されるトップリングに対する角度φ、水平方向に対する角度θ(あおり))等を最適化することで、プロセス性能を低下することなく、スラリ使用量を削減することができる。よって、コスト削減と高いパフォーマンスを両立することができる。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述したように最適な流速、方向等は一義的に決まるものではなく、プロセス条件に依存する。よって、各種プロセス条件に合わせて薬液540が研磨布525の面内方向に速度成分を持つような供給条件を適宜定めればよい。例えば、研磨布525の外側から内側に向かって供給する場合及び内側から外側に向かって供給する場合に、上方から見た供給ノズル530の向きは、研磨布525の径方向に完全に一致させる場合に限るものではない。好ましくは、供給される薬液54が研磨液525の径方向に速度成分を持ち、さらに好ましくは、薬液54の径方向速度成分が周方向速度成分よりも大きくなる向きであればよい。また、Cu配線層の絶縁膜として、low−k膜220を用いたが、これに限るものではなく、例えば、SiO2膜等であってもよい。
また、層間絶縁膜の膜厚や、開口部のサイズ、形状、数などについても、半導体集積回路や各種の半導体素子において必要とされるものを適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての研磨方法及び半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
また、説明の簡便化のために、半導体産業で通常用いられる手法、例えば、フォトリソグラフィープロセス、処理前後のクリーニング等は省略しているが、それらの手法が含まれ得ることは言うまでもない。