JP4888386B2 - エンジン音加工装置 - Google Patents

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    • G10K15/04Sound-producing devices

Description

この発明は、自動車のエンジン音を加工して車室内で再生するエンジン音加工装置に関する。
近年、自動車の騒音規制の観点から、特にエンジン音について静粛性が要求されており、エンジンルームや排気ラインに遮音材を取り付ける等して、静粛性が高められている。また、燃費性能を重視する観点からもエンジン回転数が低く抑えられ、エンジン音が低減されるような設計がなされている。
しかし、上記のような高い静粛性が、自動車の乗員にとって快適な運転環境であるとは、必ずしも言えない。すなわち、ドライブ愛好家などの運転者にとっては、車室内に適度なエンジン音が聴こえている状況がより快適な運転環境である場合がある。
このようなドライブ愛好家の嗜好を実現するために、車室内に人工的にエンジン音を発生する装置が提案されている。
このような装置としては、たとえば、エンジンの回転数に合わせた(エンジン音に同期した)正弦波やパルス音を発生して車室内に放音して実際に車室内に漏れてくるエンジン音に付加することにより、エンジン音の一部周波数帯を強調して聴かせることができるもの(たとえば特許文献1)や、予め所望のエンジン音を録音しておき、これをエンジンの回転数に応じて再生することによって車室内に所望のエンジン音を響かせるもの(たとえば特許文献2参照)や、ヘッドレストに備えたマイクロフォンから車室内のエンジン音を収音し、一部周波数帯域を強調して聴かせることができるもの(たとえば特許文献3)が提案されている。
特開平5−80790号公報 特開平7−302093号公報 特開2004−74994号公報
しかし、特許文献1、2、3のいずれに記載されているものも、その自動車の実際のエンジン音とは異なる別の音を発生するものであるため、いかに多種類のセンサを用いて運転状況を検出しても、その運転状況に応じた実際のエンジン音を正確に反映した音声を発生できるとは限らなかった。
この発明は、実際のエンジン音を車室外で収音して加工後に出力することにより、車室内によりリアルなエンジン音を発生させることができるエンジン音加工装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明では以下の手段を採用している。
(1) 自動車の車室外に設置され、該自動車のエンジン音を収音するマイクと、
該自動車の運転状況を検出するセンサと、
前記センサの検出内容を基に前記マイクが収音したエンジン音を信号処理して出力する信号処理部と、
前記信号処理部で信号処理されたエンジン音を出力するスピーカと
を備えるエンジン音加工装置。
(2) 前記信号処理部は、車室壁面における遮音特性をシミュレートする遮音特性フィルタと運転状況に応じて特性が変化するアクティブフィルタとを有する(1)に記載のエンジン音加工装置。
(3) 前記マイクは複数設けられ、前記エンジンの吸気口、排気口、エンジンヘッド、エンジンルームの壁面の一部または複数部に配置されている(1)に記載のエンジン音加工装置。
(4) 前記センサは、エンジン回転数を検出するセンサ、アクセル開角を検出するセンサ、自動車の速度を検出するセンサの一部または全部である(1)に記載のエンジン音加工装置。
(5) 前記センサの検出内容を基に信号処理特性を決定し、前記信号処理部を制御する制御部を備える(1)に記載のエンジン音加工装置。
(6) 前記制御部は、センサの検出内容と信号処理特性との関係を記憶したパラメータテーブルを備える(5)に記載のエンジン音加工装置。
(7) 前記制御部に接続され、ユーザが前記制御部の信号処理特性を操作可能な操作部を備える(5)に記載のエンジン音加工装置。
(8) 前記マイクが収音したエンジン音を周波数分析して、スペクトルを割り出しする周波数分析手段とを備え、
前記信号処理部は前記周波数分析手段で割り出しされたスペクトルを加工して前記スピーカに出力する(5)に記載のエンジン音加工装置。
(9) 前記制御部は、前記周波数分析手段が決定したスペクトルのピークを強調する(8)に記載のエンジン音加工装置。
(10) 前記制御部は、前記周波数分析手段が決定したスペクトルのピークの谷間のレベルを上げる(8)に記載のエンジン音加工装置。
(11) 前記マイクが収音したエンジン音を周波数分析して、スペクトルのピークを検出する周波数分析手段とを備え、
前記信号処理部は、前記周波数分析手段で決定されたスペクトルのピークをピッチシフトして、特定周波数成分を強調して出力し、
前記制御部は、前記信号処理部がピッチシフトする周波数を設定する(5)に記載のエンジン音加工装置。
(12) 変調信号波形を生成する波形生成部を備え、
前記信号処理部は、前記波形生成部が生成した変調信号波形をスピーカに出力する(5)に記載のエンジン音加工装置。
(13) 前記制御部は、前記センサの検出内容に基づいて変調周期を設定する(12)に記載のエンジン音加工装置。
(14) 前記制御部は、前記センサの検出内容に基づいて変調の深さを設定する(12)に記載のエンジン音加工装置。
(15) 前記波形生成部は、前記マイクの収音するエンジン音のそれぞれに対応する変調信号波形を生成し、
前記制御部は、前記マイクの収音するエンジン音のそれぞれと同期した周期で前記変調信号波形の変調周期を設定する(12)に記載のエンジン音加工装置。
(16) 前記制御部は、収音するエンジン音のそれぞれのピークと同じタイミングで変調信号波形のピークを出力するように設定する(15)に記載のエンジン音加工装置。
(17) 和音構成情報が与えられた場合に、前記和音構成情報に従って前記マイクにより収音された前記エンジン音のピッチと協和関係にあるピッチを有する協和音の音声信号を生成し、前記協和音の音声信号を前記エンジン音に付加して出力する和音構成手段を含む(5)に記載のエンジン音加工装置。
(18) 前記制御手段は、前記センサの検出内容に応じて和音構成情報を生成し、前記和音構成手段に与える(17)に記載のエンジン音加工装置。
(19) 前記制御部は、前記センサの検出内容の現在値または前記センサの出力信号の過去一定期間内における変化の態様に基づいて前記運転状態を特定し、前記運転状態に応じて和音構成情報を生成することを特徴とする(17)に記載のエンジン音加工装置。
(20) 前記和音構成手段は、収音された前記エンジン音にピッチ変換を施して前記協和音の音声信号を生成するピッチ変換部を有することを特徴とする(17)に記載のエンジン音加工装置。
(21) 前記和音構成手段は、前記車両のエンジンの点火パルスをトリガとして、目的とするピッチを有する協和音の音声信号を合成する合成部を有することを特徴とする(17)に記載のエンジン音加工装置。
(22) 前記信号処理部は、複数種類の補正モードを有し、ユーザにより選択された補正モードに基づき前記スピーカに供給するエンジン音の位相特性に対し、周波数に応じた補正を施す位相補正手段を具備する(1)に記載のエンジン音加工装置。
(23) 前記車両のエンジン回転数を測定するエンジン回転数センサを具備し、
前記位相補正手段は、前記エンジン回転数センサにより測定されるエンジン回転数に基づき、前記位相特性の補正を行う周波数を決定する(22)に記載のエンジン音生成装置。
(24) 前記車両のアクセル踏み込み量を測定するアクセル踏み込み量センサを具備し、
前記位相補正手段は、前記アクセル踏み込み量センサにより測定されるアクセル踏み込み量に応じて、前記位相特性の補正量を増減させる(22)に記載のエンジン音生成装置。
(25) 前記信号処理部は該マイクロフォンで収音されたエンジン音に対して歪みを付加する(1)に記載のエンジン音生成装置。
(26) 前記歪みの度合いは、エンジン回転数又はアクセルの踏み込み度の少なくともいずれか一方に応じて動的に変更されるようになされていることを特徴とする(25)に記載のエンジン音加工装置。
(27) 前記付加される歪みのタイプは、エンジン回転数又はアクセルの踏み込み度の少なくともいずれか一方に応じて動的に変更されるようになされていることを特徴とする(25)に記載のエンジン音加工装置。
(28) 前記マイクロフォンと前記ディストーション部との間に、少なくともエンジン回転数又はアクセルの踏み込み度のいずれか一方に応じて周波数特性が動的に変更されるイコライザ部が設けられていることを特徴とする(25)に記載のエンジン音加工装置。
(29) 前記歪みが付加されたエンジン音を、少なくともエンジン回転数又はアクセルの踏み込み度に応じて動的に制御される音量で前記スピーカに出力する増幅器を有することを特徴とする(25)に記載のエンジン音加工装置。
(30) 前記信号処理部により付加される歪み、前記フィルタにおける周波数特性又は前記増幅器における音量の動的に変更される態様は、前記エンジン回転数の変化の速度又はアクセルの踏み込み度の変化の速度に応じて変更されるようになされていることを特徴とする(25)に記載のエンジン音加工装置。
(31) 車両内に設けられたスピーカと、
擬似的なエンジン音を表す音声信号を生成する信号生成手段と、
前記音声信号からエンジン音信号を生成して前記スピーカに供給する手段であって、和音構成情報が与えられた場合に、前記和音構成情報に従って前記音声信号のピッチと協和関係にあるピッチを有する協和音の音声信号を生成し、前記協和音の音声信号を前記音声信号に付加して前記エンジン音信号を生成する和音構成手段を含むエンジン音信号生成手段と、
運転状態を監視し、運転状態に応じて和音構成情報を生成し、前記和音構成手段に与える制御手段と
を具備することを特徴とする車室内音響制御装置。
(32) 車両内に設けられたスピーカと、
擬似的なエンジン音を表すエンジン音信号を生成して前記スピーカに供給する信号生成手段とを具備し、
前記信号生成手段は、複数種類の補正モードを有し、ユーザにより選択された補正モードに基づき前記スピーカに供給するエンジン音の位相特性に対し、周波数に応じた補正を施す位相補正手段を具備するエンジン音生成装置。
上記の構成によれば、実際のエンジン音を車室外で収音して加工後に出力することにより、車室内によりリアルなエンジン音を発生させることができるエンジン音加工装置を提供することができる。
この発明に係るエンジン音加工装置のブロック図 この発明の第1の実施形態であるエンジン音加工装置のブロック図 第1の実施形態であるエンジン音加工装置のマイクおよびスピーカの取り付け位置を説明する図 第1の実施形態であるエンジン音加工装置の制御系統を説明する図 第1の実施形態であるエンジン音加工装置におけるスペクトル変形特性を説明する図 第1の実施形態であるエンジン音加工装置における別のスペクトル変形特性を説明する図 第1の実施形態であるエンジン音加工装置におけるセンサ出力に応じたスペクトル変形特性を説明する第1の図 第1の実施形態であるエンジン音加工装置におけるセンサ出力に応じたスペクトル変形特性を説明する第2の図 第1の実施形態であるエンジン音加工装置におけるセンサ出力に応じたスペクトル変形特性を説明する第3の図 エンジン音の周波数スペクトルのうち、一つのピークのゲインと回転数の関係を説明する第1の図 エンジン音の周波数スペクトルのうち、一つのピークのゲインと回転数の関係を説明する第2の図 エンジン音の周波数スペクトルのうち、一つのピークのゲインと回転数の関係を説明する第3の図 この発明の実施形態であるエンジン音加工装置のブロック図 同エンジン音加工装置のマイクおよびスピーカの取り付け位置を説明する図 同エンジン音加工装置の制御系統を説明する図 同エンジン音加工装置のピッチシフタを詳細に説明する図 同エンジン音加工装置におけるピッチシフト特性を説明する第1の図 同エンジン音加工装置におけるピッチシフト特性を説明する第2の図 同エンジン音加工装置におけるピッチシフト特性を説明する第3の図 同エンジン音加工装置におけるピッチシフト特性を説明する第4の図 同エンジン音加工装置におけるセンサ出力に応じたフィルタ特性を説明する第1の図 同エンジン音加工装置におけるセンサ出力に応じたフィルタ特性を説明する第2の図 同エンジン音加工装置におけるセンサ出力に応じたフィルタ特性を説明する第3の図 同エンジン音加工装置におけるセンサ出力に応じたフィルタ特性を説明する第4の図 この発明の第3の実施形態であるエンジン音加工装置のブロック図 同エンジン音加工装置のマイクおよびスピーカの取り付け位置を説明する図 同エンジン音加工装置の制御系統を説明する図 同エンジン音加工装置における波形生成部の出力信号を説明する図 同エンジン音加工装置における変調の深さ制御を説明する図 同エンジン音加工装置における変調周波数制御を説明する図 同エンジン音加工装置におけるフィルタ特性を説明する第1の図 同エンジン音加工装置におけるフィルタ特性を説明する第2の図 同エンジン音加工装置におけるフィルタ特性を説明する第3の図 同エンジン音加工装置におけるフィルタ特性を説明する第4の図 この発明の第4の実施形態である車室内音場制御装置の構成を示すブロック図 同実施形態におけるフィルタ21〜24の第1の構成例を示すブロック図 同実施形態におけるフィルタ21〜24の第2の構成例を示すブロック図 第4の実施形態の第2の構成例における合成部205−jの構成例を示すブロック図 同実施形態の動作例を示す波形図 この発明の第5の実施形態であるエンジン音生成装置の構成を示すブロック図 同実施形態における信号処理部740の構成例を示すブロック図 同実施形態における振幅特性データおよび位相特性データの補正処理の内容を説明する図 この発明の第6の実施形態において行われる位相特性データの補正処理を説明する図 この発明の第7実施形態において用いられる位相補正データの生成方法を説明する図 本発明の第8の実施形態の構成を示すブロック図 アナログ方式のディストーション部4の構成例を示す図 デジタル方式のディストーション部4の構成例を示す図 イコライザにおいて制御される内容について説明するための図 エンジン回転数及びアクセルの踏み込み度に応じたイコライザの制御について説明する図であり、エンジン回転数と中心周波数との対応関係を示す図 エンジン回転数及びアクセルの踏み込み度に応じたイコライザの制御について説明する図であり、アクセルの踏み込み度とゲインとの対応関係を示す図 ディストーション処理について説明するための図 アナログ回路によるディストーション回路の構成例を示す図 アナログ回路によるディストーション回路の他の構成例を示す図 アナログ回路によるディストーション回路の他の構成例を示す図 ディストーションの歪み具合を示すDRIVEパラメータ(Kd)について説明するための図 エンジン回転数やアクセルの踏み込み度に応じたパラメータKdの変化の態様について説明するための第1の図 エンジン回転数やアクセルの踏み込み度に応じたパラメータKdの変化の態様について説明するための第2の図 エンジン回転数やアクセルの踏み込み度に応じたパラメータKdの変化の態様について説明するための第3の図 ディストーションの歪みパターンを示すTYPEパラメータ(Kp)について説明するための図 エンジン回転数と音量V(Volume)との対応関係を示す図 アクセルの踏み込み度と音量V(Volume)の対応関係を示す図 エンジン回転数と音量V(Volume)との対応関係を示す図 遮音板の伝達特性をシミュレートするフィルタを設けた実施の形態の要部構成を示す図
図面を参照してこの発明の実施形態であるエンジン音加工装置について説明する。図1はエンジン音加工装置のブロック図である。
エンジン音加工装置1は、自動車の車室外に配置された、エンジン音を収音するためのマイク10と、マイク10から入力された音声信号を増幅するアンプ11と、アンプ11からの増幅信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ12と、デジタル信号を信号処理する信号処理部2と、信号処理部2からの出力をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ19と、アナログ信号を出力するスピーカ41とを備える。
さらに、エンジン音加工装置1は、運転状況を検出するためのセンサ30を備えている。センサの検出値は制御部3に入力される。
制御部3は、このセンサ出力に応じて信号処理部2の信号処理特性を決定する。制御部3は、この決定した信号処理特性を信号処理部2に出力して、信号処理を制御する。
制御部3には、操作部4が接続されている。利用者(運転者)は、この操作部4を操作して、運転状況(センサ30の出力)に応じ信号処理部2の信号処理特性を設定する。
以上の構成によれば、マイクから実際のエンジン音を収音し、運転状況に応じて信号処理をすることで、リアルなエンジン音を発生させることができる。
また、信号処理部2において、車室壁面における遮音特性をシミュレートするフィルタを設けてもよい。すなわち、マイク10は、直接エンジンルーム内で音声を収音しているため、その音声信号は高音域の機械ノイズが高レベルで含まれており、運転者等の乗員が車室内で聴くエンジン音とはかけ離れている。このため、この音声信号を車室で聴くエンジン音と類似した音質(周波数分布)となるように、フィルタで車室壁面の遮音特性をシミュレートし、低音域は残しつつ高音域をカットした音に加工する。この遮音特性は必ずしもこの装置が搭載される自動車の遮音特性をシミュレートする必要はなく、スポーツカーや高級車の遮音特性をシミュレートするものであってもよい。
また、上記の構成では、マイクは一つしか設けられていないが、複数のマイクを設けることもできる。この場合、前記エンジンの吸気口、排気口、エンジンヘッド、エンジンルームの壁面のうちの複数の個所にマイクを配置することができ、よりリアルなエンジン音を発生させることができる。
また、上記の構成では、運転状況を検出するためのセンサを複数配置してもよい。この場合、エンジン回転数、アクセル開角、自動車の速度など、複数の運転状況を検出することが可能になる。
以下、より具体的な本発明の実施形態を説明する。
図面を参照してこの発明の実施形態であるエンジン音加工装置について説明する。図2は同エンジン音加工装置のブロック図である。図3は同エンジン音加工装置のマイクおよびスピーカの取り付け位置を説明する図である。
図3に示すように、エンジン音加工装置101は、2つのマイク110、マイク120を備えており、それぞれエンジンの吸気口およびエンジンルームの車室側の壁面にそれぞれ取り付けられている。エンジンの吸気口に取り付けられたマイク110は、主としてエンジンの吸気音を収音する。また、エンジンルームの車室側の壁面に取り付けられたマイク120は、主としてエンジンの爆発や回転等の動作音(以下、エンジン爆発音と言う。)を収音する。ただし、マイクの設置位置および個数はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、マフラー付近に取り付けて排気音を収音してもよいし、エンジンヘッド付近に取り付けてチェーン等の機械音を収音してもよい。
なお、それぞれの位置に取り付けるマイクは、その設置位置により異なる音を収音することができるので、それぞれの設置位置においてさらに複数のマイクを取り付けて収音した音をミキシングするようにしてもよい。例えば、エンジンルームの車室側の壁面に取り付けるマイクは、その取り付け位置によりエンジンの異なる部分の動作音を収音することができる。したがって、マイクをエンジンルームの車室側の壁面に複数取り付けて、それぞれのマイクが収音した音をミキシングしてもよい。必要とする音質に基づいてミキシング比率を調整し、エンジン動作音を収音すればよい。
また、マイクは音響マイクに限定されるもではない。例えば可聴帯域の振動をピックアップする振動センサ等であってもよい。この振動センサをエンジンに取り付ければ、エンジンの可聴帯域の振動を直接(音になる前に)収音することができる。すなわち、振動センサはエンジンの振動パルスを検出するのではなく、エンジンの音源としての信号をピックアップするものである。また、エンジンの吸気口に振動センサを取り付けることで、エンジン回転に関わらない風切り音等を収音することなく、純粋に吸気音のみを収音することが可能である。一方、マフラー付近は音響マイクを取り付け、エンジン回転次数に対応する周波数ピークを有する排気音を収音する。また、排気音を振動センサにより収音する場合は、マフラーの取付部付近に振動センサを取り付ける。このように、設置位置に応じて音響マイクと振動センサをそれぞれ取り付ければよい。
車室内にはフロント左右およびリヤ左右の4個のスピーカ141が設置されている。このスピーカ141は、カーオーディオ機器のものであり、エンジン音加工装置独自のものではない。すなわち、このエンジン音加工装置は、エンジン音を収音して加工したのち、そのオーディオ信号をカーオーディオ機器105に入力し、カーオーディオ機器105を介して車室内にエンジン音を出力するようにしている。
図2において、マイク110、マイク120は、それぞれアンプ111、アンプ121に接続されている。アンプ111、アンプ121は、それぞれマイク110、マイク120から入力された音声信号(吸気音、エンジン爆発音)を増幅する。増幅された音声信号は、A/Dコンバータ112、A/Dコンバータ122でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された音声信号は、フィルタ113、フィルタ123で吸気音やエンジン爆発音をほとんど含まない不要な周波数帯をカットされる。また、信号レベルが大きすぎる場合には、このフィルタにおいてアッテネートされる。したがって、フィルタ113、フィルタ123は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、アッテネータ等を組み合わせたもので構成すればよい。
フィルタ113、フィルタ123で周波数帯域および信号レベルを制限された信号は、信号処理部102に入力される。信号処理部102では、マイク110で収音された吸気音およびマイク120で収音されたエンジンルーム壁面におけるエンジン爆発音の両方に対してそれぞれ別系統で信号処理を実行する。なお、この信号処理は、両方の信号をミキシングしたのち1系統で行うようにしてもよい。
信号処理部102において、フィルタ114、フィルタ124は、車室壁面における遮音特性をシミュレートするフィルタである。すなわち、マイク110およびマイク120は、直接エンジンルーム内で音声を収音しているため、その音声信号は高音域の機械ノイズが高レベルで含まれており、運転者等の乗員が車室内で聴くエンジン音とはかけ離れている。このため、この音声信号を車室で聴くエンジン音と類似した音質(周波数分布)となるように、フィルタ114、フィルタ124で車室壁面の遮音特性をシミュレートし、低音域は残しつつ高音域をカットした音に加工する。この遮音特性は必ずしもこの装置が搭載される自動車の遮音特性をシミュレートする必要はなく、スポーツカーや高級車の遮音特性をシミュレートするものであってもよい。
なお、このフィルタ114、フィルタ124のフィルタ特性(遮音特性)は、固定でもよいが、設定変更を可能にしてエンジン音の周波数特性を変えられるようにしてもよい。
フィルタ114、フィルタ124でフィルタリングされた信号は、FFT部115、FFT部125に入力される。FFT部115、FFT部125は、それぞれの入力信号を高速フーリエ変換して周波数成分を抽出する。抽出した周波数成分から周波数スペクトルを得る。
次に接続される変換部116、変換部126は、FFT部115、FFT部125から出力された周波数スペクトルの形状をそのときの運転状況に応じて変形するアクティブフィルタである。この周波数スペクトルの形状の変形特性については後で説明する。
変換部116、変換部126から出力された変形後の周波数スペクトルは、IFFT部117、IFFT部127で時間軸波形に変換する。その後、ミキサ118でミキシングされて1系統の音声信号となり、D/Aコンバータ119でアナログのオーディオ信号に変換されて、カーオーディオ機器105に出力される。なお、この1系統の音声信号は、ステレオ出力(L/R)を含むものである。
なお、変形後の周波数スペクトルを先にミキサでミキシングして1系統の信号にしてからIFFT部で時間軸波形に変換するように接続してもよい。この場合、変換部116、変換部126の出力側にミキサ118を接続し、ミキサ118の出力側に単一のIFFT部(IFFT部117、またはIFFT部127)を接続する。さらにIFFT部の出力信号がD/Aコンバータ119に入力されるように接続する。
運転状況を検出するためのセンサとして、エンジンの回転数を検出するための回転数センサ130、アクセルの開角を検出するためのアクセル開角センサ131、自動車の速度を検出するための車速センサ132を備えている。各センサの検出値はインタフェース133を介して制御部103に入力される。インタフェース133は、必要に応じてA/Dコンバータを内蔵しているものとする。また、回転数センサ130、車速センサ132がエンジンの回転または車軸の回転に応じてパルスを出力するエンコーダの場合には、このパルスの積算値またはパルス間隔に基づいて制御部103がエンジンの回転数や車速を算出するようにしてもよい。
制御部103は、このセンサ出力に応じて前記変換部116、変換部126の周波数スペクトルの変形特性を決定するパラメータおよびミキサ118のミキシング比率を決定する。制御部103は、この決定したパラメータおよびミキシング比率を信号処理部102に出力して、変換部116、変換部126およびミキサ118を制御する。
制御部103には、操作部104が接続されている。この操作部104は、カーオーディオ機器105と共有であってもよく、オーディオ機器の操作部から信号を入力するようにしてもよい。利用者(運転者)は、この操作部104を操作して、運転状況(センサ130、センサ131、センサ132の出力)に応じた変換部116、変換部126、ミキサ118の制御特性を設定する。また、この操作部4を操作して、フィルタ114、フィルタ124のフィルタ特性(遮音特性)を設定する。
すなわち、このエンジン音加工装置の制御系統を図示すると図4のようになる。操作部104の設定により、フィルタ114、フィルタ124、変換部116、変換部126、および、ミキサ118の制御特性が設定され、このうち変換部116、変換部126、およびミキサ118は、センサ130、センサ131、センサ132の出力に応じてリアルタイムにその特性が制御される。
操作部104によるスペクトル変形特性、ミキシング比率の設定は、各変換部について1または複数のパラメータをマニュアル操作で設定するようにしてもよく、予め1または複数のパラメータセットを制御部103に記憶しておき、そのパラメータセットのいずれかを選択して設定するようにしてもよい。複数のパラメータセットを準備する場合には、たとえば、V型エンジンのような力強さ感のあるエンジン音効果が得られるパラメータセット、直列エンジンのようなクリア感のあるエンジン音効果が得られるパラメータセットなどを準備しておき、V型エンジンモード、直列エンジンモードなどのモード切り換えができるようにしておけばよい。なお、このエンジン音加工装置の機能をオフしてエンジン音効果を発生させないようにすることも当然可能である。
また、フラッシュメモリやROMパックのコネクタを設けておき、パラメータセットをフラッシュメモリやROMから供給するようにしてもよい。また、カーナビゲーション装置のハードディスクから供給を受けるようにしてもよい。さらに、インターネットを介してパラメータセットをダウンロードできるようにしてもよい。また、LANコネクタなどを設けておき、このコネクタを介して接続されたコンピュータ(ノートパソコン)からパラメータセットの供給やパラメータのマニュアル設定ができるようにしてもよい。
次に、図5を参照して変換部116、変換部126のスペクトル変形特性制御の例について説明する。図5に示すグラフの横軸は周波数、縦軸は変換部のゲインを示し、同図に示すグラフは、収音したエンジン音の周波数スペクトルの一例を示すものである。このように、収音したエンジン音は、周波数軸上で所定間隔にピーク(同図中の白丸152)を示す。これらのピーク周波数は、エンジン回転数に応じた周波数のほぼ倍音周波数上にあり、それ以外に大きなレベルを持つピークは存在しない。
一般に、このように周波数軸上で等間隔にピークを示し、それ以外に大きなレベルをもつピークが存在しないスペクトル151は、クリアで歪みのない音質となるが、ドライブ愛好家にとって快適な音質であるとは必ずしも言えない。すなわち、V型エンジンのようにノイズ感があり、力強さ感のあるエンジン音が好まれる場合があり、このようなドライブ愛好家にとっては歪み感のある音質が好まれる。
変換部116、変換部126は、入力した周波数スペクトルからピークを検出し、ピーク間のスペクトル形状を変更する。具体的には、各ピーク倍音周波数の中心周波数(図5中の破線部153)のレベルを上昇させて、歪み感のある音質に変更する。なお、レベルを上昇させる周波数は、厳密に各ピーク倍音周波数の中心周波数(起音を周波数foとすると、周波数1.5fo、2.5fo、・・・)に限らず、各ピーク倍音周波数の間であればよい(例えば、周波数1.4fo、2.6fo・・・)。
なお、以下のように各ピーク周波数周辺のレベルを変更するようにしてもよい。図6は、周波数スペクトルのうち、一つのピーク周波数周辺のゲインを示した図である。同図に示すように、実線で示された周波数スペクトルを、ピーク周波数についてはレベルを変化させずに、破線で示すようにピーク周波数から離れるにしたがってレベルを上昇させる。この場合、ピーク周波数成分以外のスペクトル成分が大きくなり、歪み感のある音質となって、エンジン音の力強さ感が強調される。
一方で、本実施形態においては、変換部116、変換部126は、上記処理の逆の処理を行うこともできる。すなわち、周波数スペクトルのピークを強調して、よりクリアで歪み感の無い音質に変換することも可能である。この場合、ピーク周波数のレベルを上昇させるようにする。クリアで歪み感の無い音に変換することで、モータ音のように静粛感のあるエンジン音を好む運転者のニーズに対応することが可能となる。
上述したように、これらの特性制御は、利用者の操作に応じてそのパラメータセットを変更できるものである。ピーク間のレベルを上昇させて力強さ感を強調するV型エンジンモードや、ピークのレベルを上昇させてクリア感を強調する直列エンジンモード等のパラメータセットを設定して、運転者等が変更できるようにすればよい。
なお、上記の処理は全周波数帯域について行う例を示したが、周波数帯域を限定して処理を行ってもよい。例えば低域のみ力強さ感を強調することで、大排気量で少気筒エンジンのような迫力のある音質にすることができる。
次に、図7A〜7Cを参照してセンサ130、センサ131、およびセンサ132の検出値に応じてスペクトル変形特性を制御する場合について説明する。図7A〜7Cに示すグラフの横軸は周波数、縦軸は変換部のゲインを示し、同図に表示するフィルタの周波数ゲインは以下のような特徴を有している。
図7Aは、エンジン回転数に基づくエンジン爆発音のスペクトル変形制御特性を示しており、
(a)エンジン回転数が低いときは、全周波数帯域でピークを強調する。
(b)エンジン回転数が高いときは、全周波数帯域でピーク以外のレベルを上げる。
というルールに基づくものである。
図7Bは、アクセル開角に基づく吸気音のスペクトル形状制御特性を示しており、
(c)アクセル開角が小さいときは、スペクトル形状を変形しない。
(d)アクセル開角が大きいときは、吸気音の低音のピークを強調する。
というルールに基づくものである。
図7Cは、車速に基づく全体音量の制御特性を示しており、
(e)車速が小さいときは、スペクトル形状を変形しない。
(f)車速が大きいときは、全周波数帯域でスペクトル形状はそのまま、全体音量を大きくする。
というルールに基づくものである。
以上のルールは、「エンジンの回転数が低いときは静粛感を強調するためにピークを強調してクリアな音質とするが、エンジンの回転数が高いときはエンジンの力強さ感を強調するために全周波数帯域でピーク以外のレベルを上げる。アクセル開角が大きいときはエンジンに負荷が掛かっているため、吸気音の低域ピークを強調して低音のクリア感を強調する。車速が大きいときは、風切り音やタイヤノイズなどエンジン音以外のノイズが大きくなるため、全体の音量を大きくする。」という趣旨に基づくものであり、V型エンジンモードに相当するルールである。V型エンジンモードは、実際のエンジン音にさらにそのときの運転状況に応じてエンジンの力強さ感を強調するためのルールである。
なお、低音域の周波数帯域は、エンジン音の周波数分布に基づいて決定すればよいが、一般的には、低音域の周波数帯域は300〜500Hzにすればよい。
また、スペクトル変形特性の制御ルールは上記のものに限定されない。
以下、別の例における変換部116、変換部126のスペクトル変形特性制御について説明する。図8A〜8Cは、エンジン音の周波数スペクトルのうち、一つのピークのレベルと回転数の関係を示した図である。図8Aに示すグラフの横軸は時間を表し、縦軸は変換部のゲインを表している。図8Bおよび8Cに示すグラフの横軸はエンジン回転数を表し、縦軸は変換部のゲインを表している。
図8Aは、エンジン回転数一定のもと、変換部のゲインの時間変化を表したグラフであり、図中のようにエンジン音のレベルは一定ではなく不規則に増減する。一般には、図8Aに示すように、エンジン回転数が一定であってもエンジン音のレベルは一定ではなく、不規則に変化するが、このような状況はドライブ愛好家にとって快適な音とは言えない。すなわち、ドライブ愛好家にとっては、エンジンの回転数にリニアにエンジン音量が対応するエンジン音が好まれ、このようにリニア感のあるエンジン音が質の良いエンジンであると判断される。
変換部116、変換部126は、入力した周波数スペクトルからピークを検出し、ピークレベルの時間変化を測定する。ピークレベルは、エンジンの回転数にリニアに対応するとすれば、エンジン回転数によってピークレベルの時間変化は予測することができる。したがって、変換部116、変換部126は、測定したピークレベルが予測したピークレベルよりも小さくなった場合に、その周波数成分について予測したピークレベルになるようにレベルを上昇させる。
図8Bは、エンジン回転数と変換部のゲインの関係を表したグラフである。図8Bの実線に示すように、通常、エンジン音はエンジン回転数にリニアに対応せずに不規則に変化する。また、性能の低いエンジンは、あるエンジン回転数から出力が急激に低下して音量も低下する。変換部116、変換部126は、予測したピークレベルよりも測定したピークレベルが小さくなった場合に、図8Bの破線に示すように、エンジン音がエンジン回転数にリニアに対応するようにピークレベルを上昇させる。
図8Cは、エンジン回転数と変換部のゲインの関係を表したグラフであるが、図8Cにおいては、破線に示すようにあるエンジン回転数から急激にエンジン音が大きくなるようにピークレベルを上昇させる。
これにより、エンジン回転数に応じて音圧が上昇するリニア感を再現することが可能となり、また、あるエンジン回転数から急激に音圧が上昇するターボエンジンのような非リニア感を再現することも可能となる。
なお、これらの処理は全周波数帯域で、検出したピークすべてに行ってもよいし、周波数帯域を限定して行ってもよい。
以上のルールをスペクトル変形特性に的確に反映させるためには、たとえば、各センサ出力を変数にした関数を作成しておき、この関数にセンサ出力を入力して特性を求めるようにしてもよく、ファジィ推論によって求めるようにしてもよい。また、各センサ出力の所定ステップ毎にスペクトル変形特性を決定するテーブルを求めておき、センサ出力でこのテーブルを検索して該当するスペクトル変形特性を読み出すようにしてもよい。いずれにしても利用者によって設定される上記パラメータセットにはこのセンサ出力に基づいてスペクトル変形特性を求めるための情報が含まれているものとする。
〔第2の実施形態〕
図面を参照してこの発明の第2の実施形態であるエンジン音加工装置について説明する。図9は同エンジン音加工装置のブロック図である。図10は同エンジン音加工装置のマイクおよびスピーカの取り付け位置を説明する図である。
図11に示すように、エンジン音加工装置1は、4つのマイク210、マイク220、マイク230、およびマイク240を備えており、それぞれエンジンの吸気口、エンジンルームの車室側の壁面、エンジンヘッド、および排気口(マフラー)付近にそれぞれ取り付けられている。エンジンの吸気口に取り付けられたマイク210は、主としてエンジンの吸気音を収音する。エンジンルームの車室側の壁面に取り付けられたマイク220は、主としてエンジンの爆発や回転等の動作音(以下、エンジン爆発音と言う。)を収音する。エンジンヘッドに取り付けられたマイク230は、主としてチェーン等の機械音を収音する。また、マフラー付近に取り付けたマイク240は、排気音を収音する。ただし、マイクの設置位置および個数はこの実施形態に限定されるものではない。
なお、それぞれの位置に取り付けるマイクは、その設置位置により異なる音を収音することができるので、それぞれの設置位置においてさらに複数のマイクを取り付けて収音した音をミキシングするようにしてもよい。例えば、エンジンルームの車室側の壁面に取り付けるマイクは、その取り付け位置によりエンジンの異なる部分の動作音を収音することができる。したがって、マイクをエンジンルームの車室側の壁面に複数取り付けて、それぞれのマイクが収音した音をミキシングしてもよい。必要とする音質に基づいてミキシング比率を調整し、エンジン動作音を収音すればよい。
また、マイクは音響マイクに限定されるもではない。例えば可聴帯域の振動をピックアップする振動センサ等であってもよい。この振動センサをエンジンに取り付ければ、エンジンの可聴帯域の振動を直接(音になる前に)収音することができる。すなわち、振動センサはエンジンの振動パルスを検出するのではなく、エンジンの音源としての信号をピックアップするものである。また、エンジンの吸気口に振動センサを取り付けることで、エンジン回転に関わらない風切り音等を収音することなく、純粋に吸気音のみを収音することが可能である。一方、マフラー付近は音響マイクを取り付け、エンジン回転次数に対応する周波数ピークを有する排気音を収音する。また、排気音を振動センサにより収音する場合は、マフラーの取付部付近に振動センサを取り付ける。このように、設置位置に応じて音響マイクと振動センサをそれぞれ取り付ければよい。
車室内にはフロント左右およびリヤ左右の4個のスピーカ271が設置されている。このスピーカ271は、カーオーディオ機器のものであり、エンジン音加工装置独自のものではない。すなわち、このエンジン音加工装置は、エンジン音を収音して加工したのち、そのオーディオ信号をカーオーディオ機器205に入力し、カーオーディオ機器205を介して車室内にエンジン音を出力するようにしている。
図9において、マイク210、マイク220、マイク230、およびマイク240は、それぞれアンプ211、アンプ221、アンプ231、およびアンプ241に接続されている。アンプ211、アンプ221、アンプ231、およびアンプ241は、それぞれマイク210、マイク220、マイク230、およびマイク240から入力された音声信号(吸気音、エンジン爆発音、機械音、排気音)を増幅する。増幅された音声信号は、A/Dコンバータ212、A/Dコンバータ222、A/Dコンバータ232、およびA/Dコンバータ242でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された音声信号は、ミキサ250に入力される。
ミキサ250は、4つの信号をミキシングした後2系統で信号処理部202のピッチシフタ213とフィルタ223に出力する。信号処理部202では、ミキシングされた2つの信号に対してそれぞれ別系統で信号処理を実行する。主としてマイク220、マイク240で収音したエンジン爆発音、排気音をピッチシフタ213に入力されるようにし、マイク210、マイク230、で収音した吸気音、機械音をフィルタ223に入力されるようにミキシングする。ミキシング比率はあらかじめ固定であってもよいし、制御部203によって制御されるようにしてもよい。
ピッチシフタ213は、入力された信号をピッチシフトする。ピッチシフトする周波数は、制御部203によって制御され、運転状況に応じてリアルタイムに特性が変化する。この発明におけるピッチシフタ213は、収音したエンジン音(ここでは主にエンジン爆発音と排気音)をピッチシフトし、他の形式のエンジン音特性に変化させる。例えばエンジンが4気筒エンジンであるとして、収音したエンジン音の周波数特性をピッチシフトすることで8気筒エンジンの周波数特性を有するエンジン音に加工する。8気筒エンジンのエンジン回転数に対する特定の次数成分が強調されるように加工する。
フィルタ223は、入力された信号をフィルタリングするアクティブフィルタである。そのフィルタ特性は、制御部203によって制御され、運転状況に応じてリアルタイムに変化する。フィルタ223は、収音したエンジン音(ここでは主に吸気音と機械音)をフィルタリングし、他の形式のエンジン音特性に変化させる。例えばエンジンが4気筒エンジンであれば、8気筒エンジンのようなエンジン音に加工する。エンジン回転数に対する特定の次数成分が強調され、かつ他の周波数成分が抑制されるようにフィルタ特性を変化させればよい。
ピッチシフタ213の周波数変換比率およびフィルタ223のフィルタ特性は、あらかじめ規定しておいた加工テーブルを制御部203が読み出すことで決定される。加工テーブルは制御部203の内蔵メモリ等に記憶されているが、フラッシュメモリ等に記憶しておいてもよい。加工テーブルについては後ほど詳細に述べる。
ピッチシフタ213、フィルタ223から出力される信号はそれぞれ、フィルタ214、フィルタ224で吸気音やエンジン爆発音をほとんど含まない不要な周波数帯をカットされる。また、信号レベルが大きすぎる場合には、このフィルタにおいてアッテネートされる。したがって、フィルタ214、フィルタ224は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、アッテネータ等を組み合わせたもので構成すればよい。
フィルタ214、フィルタ224で周波数帯域および信号レベルを制限された信号は、フィルタ215、およびフィルタ225に入力される。
フィルタ215、フィルタ225は、車室壁面における遮音特性をシミュレートするフィルタである。すなわち、マイク210、マイク220およびマイク230は、直接エンジンルーム内で音声を収音し、マイク240はマフラー付近の車外で音声を収音しているため、その音声信号は高音域のノイズが高レベルで含まれており、運転者等の乗員が車室内で聴くエンジン音とはかけ離れている。このため、この音声信号を車室で聴くエンジン音と類似した音質(周波数分布)となるように、フィルタ215、フィルタ225で車室壁面の遮音特性をシミュレートし、低音域は残しつつ高音域をカットした音に加工する。この遮音特性は必ずしもこの装置が搭載される自動車の遮音特性をシミュレートする必要はなく、スポーツカーや高級車の遮音特性をシミュレートするものであってもよい。
なお、このフィルタ215、フィルタ225のフィルタ特性(遮音特性)は、固定でもよいが、設定変更を可能にしてエンジン音の周波数特性を変えられるようにしてもよい。
次段のフィルタ216、フィルタ226は、運転状況に応じてリアルタイムに特性が変化するアクティブフィルタであり、エンジン音(吸気音、エンジン爆発音、機械音、および排気音)を運転状況に応じて加工する。このフィルタ特性の変化については後で説明する。
2段のフィルタ215−フィルタ216、およびフィルタ225−フィルタ226から出力された信号はミキサ217でミキシングされて1系統の音声信号となり、D/Aコンバータ218でアナログのオーディオ信号に変換されて、カーオーディオ機器5に出力される。なお、この1系統の音声信号は、ステレオ出力(L/R)を含むものである。
運転状況を検出するためのセンサとして、エンジンの回転数を検出するための回転数センサ260、アクセルの開角を検出するためのアクセル開角センサ261、自動車の速度を検出するための車速センサ262を備えている。各センサの検出値はインタフェース263を介して制御部203に入力される。インタフェース263は、必要に応じてA/Dコンバータを内蔵しているものとする。また、回転数センサ260、車速センサ262がエンジンの回転または車軸の回転に応じてパルスを出力するエンコーダの場合には、このパルスの積算値またはパルス間隔に基づいて制御部203がエンジンの回転数や車速を算出するようにしてもよい。
制御部203は、このセンサ出力に応じて前記ミキサ217のミキシング比率、ピッチシフタ213のピッチシフト特性、およびフィルタ223、フィルタ216、フィルタ226のフィルタ特性を決定するパラメータを決定する。制御部203は、この決定したパラメータおよびミキシング比率を信号処理部202に出力して、ピッチシフタ213、フィルタ223、フィルタ216、フィルタ226およびミキサ217を制御する。
制御部203には、操作部204が接続されている。この操作部204は、カーオーディオ機器205と共有であってもよく、オーディオ機器の操作部から信号を入力するようにしてもよい。利用者(運転者)は、この操作部204を操作して、運転状況(センサ260、センサ261、センサ262の出力)に応じたピッチシフタ213、フィルタ223、フィルタ216、およびフィルタ226の制御特性を設定する。また、この操作部4を操作して、フィルタ215、フィルタ225のフィルタ特性(遮音特性)を設定する。
すなわち、このエンジン音加工装置の制御系統を図示すると図11のようになる。操作部204の設定により、ピッチシフタ213、フィルタ223、フィルタ215、フィルタ225、フィルタ216、フィルタ226、および、ミキサ17の制御特性が設定され、このうちピッチシフタ213、フィルタ223、フィルタ216、フィルタ226およびミキサ217は、センサ260、センサ261、センサ262の出力に応じてリアルタイムにその特性が制御される。
操作部204によるピッチシフト特性、フィルタ特性、ミキシング比率の設定は、ピッチシフタ213、各フィルタ、ミキサ217のそれぞれについて1または複数のパラメータをマニュアル操作で設定するようにしてもよく、予め1または複数のパラメータセットを制御部203に記憶しておき、そのパラメータセットのいずれかを選択して設定するようにしてもよい。複数のパラメータセットを準備する場合には、たとえば、8気筒エンジンのようなエンジン音効果が得られるパラメータセット、12気筒エンジンのようなエンジン音効果が得られるパラメータセットなどを準備しておき、8気筒エンジンモード、12気筒エンジンモードなどのモード切り換えができるようにしておけばよい。また、8気筒エンジンモードの中でもスポーツカーモード、クルージングモード等のパラメータセットを切り換えできるようにしてもよい。なお、このエンジン音加工装置の機能をオフしてエンジン音効果を発生させないようにすることも当然可能である。
また、フラッシュメモリやROMパックのコネクタを設けておき、パラメータセットをフラッシュメモリやROMから供給するようにしてもよい。また、カーナビゲーション装置のハードディスクから供給を受けるようにしてもよい。さらに、インターネットを介してパラメータセットをダウンロードできるようにしてもよい。また、LANコネクタなどを設けておき、このコネクタを介して接続されたコンピュータ(ノートパソコン)からパラメータセットの供給やパラメータのマニュアル設定ができるようにしてもよい。
なお、信号処理部2の構成は上記実施形態に限るものではない。例えば、ピッチシフタ213〜FIRフィルタ216の1系統だけの構成であってもよい。ピッチシフタ213〜FIRフィルタ216の1系統でエンジン音をピッチシフトすれば、運転者等に聞こえるエンジン音をほぼ他の型式のエンジン音に加工することができる。また、フィルタ214(フィルタ224)やFIRフィルタ216(FIRフィルタ226)は、本発明の必須の構成要素ではなく、ピッチシフタ213、およびFIRフィルタ215からなる構成であってもよい。また、各フィルタは接続順序を入れ替えてもよいものである。
次に、図12、および図13を参照してピッチシフト特性の例について説明する。
図12は、エンジン音加工装置のピッチシフタ213を詳細に説明する図である。同図に示すように、ピッチシフタ213に入力されたエンジン音は、複数のバンドパスフィルタ(以下BPFと言う)280に入力され、所定のレベル以上のピークを有する周波数帯域が切り出される。それぞれのBPF280の通過周波数帯域は、制御部203によって制御される。制御部203は、回転数センサ260の検出値であるエンジン回転数に応じて回転1次、回転2次、・・・に相当する周波数帯域についてそれぞれ信号を通過するようにリアルタイムにBPF280の通過周波数帯域を設定する。
なお、高い回転次数のピークまで全て切り出す必要はなく、主要な低次のピークを切り出してピッチシフトすれば、運転者等に聞こえるエンジン音を、ほぼ他の型式のエンジン音に加工することができる。切り出すピークは1つ〜複数であればよい。また、複数のピークをまとめて切り出すようにしてもよい。例えばエンジン音が100Hz、200Hzにピークを有する場合には、これらを含む周波数帯域をまとめて1つのBPF280で切り出すように設定してもよい。
BPF280でエンジン回転次数の回転1次、回転2次、・・・に相当する周波数帯域に分割されたエンジン音は、それぞれに接続されるシフト処理部290に入力される。シフト処理部290は、それぞれ入力されたエンジン音を所定の周波数にピッチシフトする。ピッチシフトされたエンジン音は、それぞれレベル調整部200でレベル変更された後、合成され1系統の信号として出力される。
ここで、シフト処理部290およびレベル調整部200は、制御部3によって制御される。制御部203は、回転数センサ260の検出値であるエンジン回転数と加工テーブルを参照してシフト処理部290のピッチシフト比率(周波数変換比率)とレベル調整部200のレベル変更比率を設定する。加工テーブルは、エンジン回転数に対して、どのようなエンジン回転次数の成分が発生するかを規定したテーブルである。
なお、図12においてピッチシフタ213は、複数の系統のBPF280、シフト処理部290、およびレベル調整部200を備え、複数のピークを切り出す例を示したが、切り出すピークが単一である場合、または複数のピークをまとめて1つの周波数帯域で切り出す場合などは、1系統のBPF280、シフト処理部290、およびレベル調整部200であってもよいものである。
次に、図13A〜13Dを用いて加工テーブルについて説明する。
図13A、および図13Cに示すグラフの横軸は回転数センサ260から読み出したエンジン回転数、縦軸は周波数を示し、図13Bおよび図13Dに示すグラフの横軸は周波数、縦軸はゲインを示す。同図に示すグラフは、収音したエンジン音の周波数特性の一例を示すものである。この例においては、4気筒エンジンのエンジン音を収音するものとする。
図13Aは、収音したエンジン音のピークについて、エンジン回転数と周波数の関係を示したグラフである。図13Aに示すように、4気筒エンジンのエンジン音は、エンジン回転次数の整数倍(回転1次、2次、3次・・・)の成分のいずれかに所定レベル以上のピークを有する。この例においては回転2次、回転4次に所定レベル以上のピークを有する。これを図13Bにおいて詳細に説明する。図13Bは、エンジン回転数が6000回転の場合に収音したエンジン音の周波数特性を示したグラフである。このように、エンジン回転数が6000回転であるとすると、回転2次に相当する周波数200Hzと、回転4次に相当する周波数400Hzにレベルの大きいピークを有する。この例においては、回転2次、回転4次の成分がレベルの大きいピークとして発生しているが、エンジンによって発生する次数成分は異なる。
加工テーブルは、図13Aのようにそれぞれのエンジン(例えば4気筒エンジン、8気筒エンジンなど)において、エンジン回転数に対してどのような回転次数(周波数)のピークが発生するかを規定している。つまり、加工テーブルは4気筒エンジンテーブル、8気筒エンジンテーブルなど複数のエンジン回転次数成分のテーブルからなる。これらのエンジンテーブルの各次数成分は予め対応付けされており、制御部3は、回転数センサ260で読み出したエンジン回転数と、それぞれのエンジンテーブルからエンジン回転数に対応する次数(周波数)成分を読み出して、シフト処理部290の周波数変換比率を設定する。さらに、レベル調整部200のレベル変更量も設定する。なお、それぞれのエンジンテーブルの対応付けは、低い回転次数から順に対応付けておいてもよいし、別途対応付け専用テーブルを設けておき、これを制御部203が読み出してもよい。
図13Cは、収音したエンジン音をピッチシフトした場合のピークを示したグラフである。図13Dは、エンジン回転数が6000回転の場合に収音したエンジン音をピッチシフトした場合の周波数特性を示したグラフである。このように、ピッチシフタ213は、収音したエンジン音のうち、4気筒エンジン回転2次成分、および回転4次成分を8気筒エンジン回転4次成分、および8次成分にピッチシフトする。ピッチシフトすることで、エンジン音は図13Dに示すような周波数特性を示し、8気筒エンジン回転4次成分、8次成分(400Hz、800Hz付近)がレベルの大きいピークとなる。
上記実施形態では2次成分、4次成分についてのピッチシフトを示したが、無論、この例に限るものではなく、このエンジン音加工装置を搭載する自動車のエンジン型式と、目的とするエンジン音のエンジン型式に応じて様々な加工テーブルを規定しておけばよいものである。
なお、上記においては、加工テーブルに規定された次数成分についてピッチシフトをする例を示したが、いずれか1つの成分についてのみピッチシフトするようにしてもよい。最もレベルの大きい成分、または最も高い周波数の成分だけをピッチシフトするようにしてもよい。
また、エンジン回転数が低回転の場合、ピッチシフトをせずに収音したエンジン音をそのまま出力し、所定の回転数(例えば5000回転等)以上となった場合にピッチシフトを行い、多気筒エンジンのエンジン音効果を発生させるようにしてもよい。
なお、ピッチシフト処理は、この例に限るものではなく、エンジン音をFFT(Fast Fourie Transform)することで周波数スペクトルを求め、所定レベル以上のピークを有する周波数について、ピーク形状をそのままに周波数シフトをするようにしてもよい。
上述したように、これらの特性制御は、利用者の操作に応じてそのパラメータセットを変更できるものである。8気筒エンジンのようなエンジン音効果が得られるパラメータセット、12気筒エンジンのようなエンジン音効果が得られるパラメータセット等を設定して、運転者等が変更できるようにすればよい。この場合、上記テーブルは8気筒エンジンテーブル、12気筒エンジンテーブル等をそれぞれ規定しておく。
次に、フィルタ223のフィルタ特性について説明する。フィルタ223は、ミキサ250から主としてマイク210、マイク230で収音した吸気音、機械音の信号が入力される。フィルタ223においても、加工テーブルに基づいて他の形式のエンジン音に加工する。すなわち、上述したピッチシフタ213のように、8気筒エンジンのエンジン音に加工する場合は8気筒エンジンの次数成分(周波数)が強調されるようにフィルタ特性をリアルタイムに変化させ、他の次数成分を抑制する。強調する周波数は、エンジン回転数センサ260の検出値であるエンジン回転数にと加工テーブルに基づいて制御部203が設定する。
なお、マイク210、マイク230で収音した吸気音、機械音のピークに関しては、マイク220、マイク240で収音したエンジン爆発音、排気音のピークに比較して、エンジンの気筒数に起因する割合が小さい。したがって、フィルタ223においては、収音したエンジン音のピークを極端に抑制するものではない。
次に、図14A〜14Dを参照してフィルタ216、フィルタ226の特性制御の一例について説明する。図14A〜14Cに示すグラフの横軸は周波数、縦軸はフィルタの周波数ゲインを示し、同図に表示するフィルタの周波数ゲインは以下のような特徴を有している。
図14Aは、エンジン回転数に基づく吸気音、エンジン爆発音のフィルタ制御特性を示しており、
(a)エンジン回転数が低いときは、低音を強調し、高音を抑制する。
(b)エンジン回転数が高いときは、低音を抑制し、高音を強調する。
というルールに基づくものである。
図14Bは、アクセル開角に基づく吸気音のフィルタ制御特性を示しており、
(c)アクセル開角が小さいときは、吸気音の低音を抑制する。
(d)アクセル開角が大きいときは、吸気音の低音を強調する。
というルールに基づくものである。
図14Cは、車速に基づく全体音量の制御特性を示しており、
(e)車速が小さいときは、全体音量を小さくする。
(f)車速が大きいときは、全体音量を大きくする。
というルールに基づくものである。
図14Dに示すグラフの横軸はアクセル開角値およびエンジン回転数、縦軸はミキシングウェイトを示している。図14Dは、アクセル開角およびエンジン回転数に基づく吸気音、機械音、およびエンジン爆発音、排気音のミキシングウェイト制御特性を示しており、
(g)アクセル開角が大きくなるにつれて、吸気音、機械音のミキシングウェイトを大きくする。
(h)エンジン回転数が大きくなるにつれて、エンジン爆発音、排気音のミキシングウェイトを大きくする。
というルールに基づくものである。
なお、ミキシング比率は、吸気音、機械音のミキシングウェイトとエンジン爆発音、排気音のミキシングウェイトの比率によって決定される。以上のルールは、「エンジンの回転数が低いときは大排気量のエンジンの雰囲気を出すために低音を強調し、エンジンの回転数が高いときはエンジンの高速回転を強調するために高音を強調するとともにエンジン爆発音、排気音のミキシングウェイトを大きくする。アクセル開角が大きいときはエンジンに負荷が掛かっているため、吸気音を大きくするとともに吸気音、機械音のミキシングウェイトを大きくする。車速が大きいときは、風切り音やタイヤノイズなどエンジン音以外のノイズが大きくなるため、全体の音量を大きくする。」という趣旨に基づくものであり、スポーツカーモードに相当するルールである。スポーツカーモードは、実際のエンジン音にさらにそのときの運転状況を強調するためのルールである。
なお、低音域、高音域の中心周波数は、エンジン音の周波数分布に基づいて決定すればよいが、一般的には、低音域の中心周波数は500Hz前後、高音域の中心周波数は1000Hz前後にすればよい。
以上のルールをフィルタ特性に的確に反映させるためには、たとえば、各センサ出力を変数にした関数を作成しておき、この関数にセンサ出力を入力して特性を求めるようにしてもよく、ファジィ推論によって求めるようにしてもよい。また、各センサ出力の所定ステップ毎にフィルタ特性を決定するテーブルを求めておき、センサ出力でこのテーブルを検索して該当するフィルタ特性を読み出すようにしてもよい。いずれにしても利用者によって設定される上記パラメータセットにはこのセンサ出力に基づいてフィルタ変形特性を求めるための情報が含まれているものとする。
以上のように、本発明の実施形態であるエンジン音加工装置においては、車室外に設置したマイクから実際のエンジン音を収音し、特定の周波数成分を強調加工して、異なる形式のエンジン音を車室内に出力することができるため、容易な処理で多気筒エンジン音のようなクリアで軽やかな音質を持つリアルなエンジン音効果を発生させることができ、ドライブ愛好家にとって心地よい車室空間を作り出すことができる。
〔第3の実施形態〕
図面を参照してこの発明の実施形態であるエンジン音加工装置について説明する。図15は同エンジン音加工装置のブロック図である。図16は同エンジン音加工装置のマイクおよびスピーカの取り付け位置を説明する図である。
図17に示すように、エンジン音加工装置1は、2つのマイク310、マイク320を備えており、それぞれエンジンの吸気口およびエンジンルームの車室側の壁面にそれぞれ取り付けられている。エンジンの吸気口に取り付けられたマイク310は、主としてエンジンの吸気音を収音する。また、エンジンルームの車室側の壁面に取り付けられたマイク320は、主としてエンジンの爆発や回転等の動作音(以下、エンジン爆発音と言う。)を収音する。ただし、マイクの設置位置および個数はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、マフラー付近に取り付けて排気音を収音してもよいし、エンジンヘッド付近に取り付けてチェーン等の機械音を収音してもよい。
なお、それぞれの位置に取り付けるマイクは、その設置位置により異なる音を収音することができるので、それぞれの設置位置においてさらに複数のマイクを取り付けて収音した音をミキシングするようにしてもよい。例えば、エンジンルームの車室側の壁面に取り付けるマイクは、その取り付け位置によりエンジンの異なる部分の動作音を収音することができる。したがって、マイクをエンジンルームの車室側の壁面に複数取り付けて、それぞれのマイクが収音した音をミキシングしてもよい。必要とする音質に基づいてミキシング比率を調整し、エンジン動作音を収音すればよい。
また、マイクは音響マイクに限定されるもではない。例えば可聴帯域の振動をピックアップする振動センサ等であってもよい。この振動センサをエンジンに取り付ければ、エンジンの可聴帯域の振動を直接(音になる前に)収音することができる。すなわち、振動センサはエンジンの振動パルスを検出するのではなく、エンジンの音源としての信号をピックアップするものである。また、エンジンの吸気口に振動センサを取り付けることで、エンジン回転とは無関係な風切り音等を収音することなく、純粋に吸気音のみを収音することが可能である。一方、マフラー付近は音響マイクを取り付け、エンジン回転次数に対応する周波数ピークを有する排気音を収音する。また、排気音を振動センサにより収音する場合は、マフラーの取付部付近に振動センサを取り付ける。このように、設置位置に応じて音響マイクと振動センサをそれぞれ取り付ければよい。
車室内にはフロント左右およびリヤ左右の4個のスピーカ51が設置されている。このスピーカ351は、カーオーディオ機器のものであり、エンジン音加工装置独自のものではない。すなわち、このエンジン音加工装置は、エンジン音を収音して加工したのち、そのオーディオ信号をカーオーディオ機器305に入力し、カーオーディオ機器305を介して車室内にエンジン音を出力するようにしている。
図15において、マイク310、マイク320は、それぞれアンプ311、アンプ321に接続されている。アンプ311、アンプ321は、それぞれマイク310、マイク320から入力された音声信号(吸気音、エンジン爆発音)を増幅する。増幅された音声信号は、A/Dコンバータ312、A/Dコンバータ322でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された音声信号は、フィルタ313、フィルタ323で吸気音やエンジン爆発音をほとんど含まない不要な周波数帯をカットされる。また、信号レベルが大きすぎる場合には、このフィルタにおいてアッテネートされる。したがって、フィルタ313、フィルタ323は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、アッテネータ等を組み合わせたもので構成すればよい。
フィルタ313、フィルタ323で周波数帯域および信号レベルを制限された信号は、信号処理部302に入力される。信号処理部302では、マイク310で収音された吸気音およびマイク320で収音されたエンジン爆発音の両方に対してそれぞれ別系統で信号処理を実行する。なお、この信号処理は、両方の信号をミキシングしたのち1系統で行うようにしてもよい。
信号処理部302において、フィルタ314、フィルタ324は、車室壁面における遮音特性をシミュレートするフィルタである。すなわち、マイク310およびマイク320は、直接エンジンルーム内で音声を収音しているため、その音声信号は高音域の機械ノイズが高レベルで含まれており、運転者等の乗員が車室内で聴くエンジン音とはかけ離れている。このため、この音声信号を車室で聴くエンジン音と類似した音質(周波数分布)となるように、フィルタ314、フィルタ324で車室壁面の遮音特性をシミュレートし、低音域は残しつつ高音域をカットした音に加工する。この遮音特性は必ずしもこの装置が搭載される自動車の遮音特性をシミュレートする必要はなく、スポーツカーや高級車の遮音特性をシミュレートするものであってもよい。
なお、このフィルタ314、フィルタ324のフィルタ特性(遮音特性)は、固定でもよいが、設定変更を可能にしてエンジン音の周波数特性を変えられるようにしてもよい。
次段のフィルタ315、フィルタ325は、運転状況に応じて特性が変化するアクティブフィルタであり、エンジン音(マイク310、マイク320で収音した吸気音およびエンジン爆発音)を運転状況に応じて加工する。したがって、このフィルタ315、フィルタ325は、運転状況に応じてリアルタイムに特性が変化するアクティブフィルタである。このフィルタ特性の変化については後で説明する。
2段のフィルタ314−フィルタ315、およびフィルタ324−フィルタ325から出力された吸気音およびエンジン爆発音はそれぞれ乗算器316、および乗算器326において波形生成部330から出力された信号と合成(乗算)される。波形生成部330が出力する信号は、所定の周期で振幅変調した信号であり、この信号の波形パラメータは制御部303によって決定される。波形生成部330は、乗算器316、乗算器326のぞれぞれに対して異なる信号を出力することが可能である。波形生成部330の出力信号は、吸気音、およびエンジン爆発音と合成され、それぞれの音に変調感を付加する。詳細は後述する。その後、吸気音およびエンジン爆発音は、ミキサ317でミキシングされて1系統の音声信号となり、ゲインコントローラ318でレベルコントロールされ、D/Aコンバータ319でアナログのオーディオ信号に変換されて、カーオーディオ機器305に出力される。なお、この1系統の音声信号は、ステレオ出力(L/R)を含むものである。
なお、ミキサ317の後段に乗算器を接続して、1系統の信号にミキシングした後に波形生成部330の出力信号を合成するようにしてもよい。吸気音とエンジン爆発音がミキシングされた後のエンジン音に波形生成部330の出力信号を合成しても、エンジン音全体に変調感を付加することができる。
運転状況を検出するためのセンサとして、エンジンの回転数を検出するための回転数センサ340、アクセルの開角を検出するためのアクセル開角センサ341、自動車の速度を検出するための車速センサ342を備えている。各センサの検出値はインタフェース343を介して制御部303に入力される。インタフェース343は、必要に応じてA/Dコンバータを内蔵しているものとする。また、回転数センサ340、車速センサ342がエンジンの回転または車軸の回転に応じてパルスを出力するエンコーダの場合には、このパルスの積算値またはパルス間隔に基づいて制御部303がエンジンの回転数や車速を算出するようにしてもよい。また、イグニッションのパルスを検出して、回転数を算出するようにしてもよい。イグニッションのパルスから回転数を算出することで、測定タイムラグなくエンジン回転数を検出することができる。
制御部303は、このセンサ出力に応じてフィルタ315、フィルタ325のフィルタ特性、波形生成部330の波形パラメータおよびミキサ317のミキシング比率を決定する。制御部303は、この決定したフィルタ特性、波形パラメータ、およびミキシング比率を信号処理部2に出力して、フィルタ315、フィルタ325、波形生成部330およびミキサ317を制御する。
制御部303には、操作部304が接続されている。この操作部304は、カーオーディオ機器305と共有であってもよく、オーディオ機器の操作部から信号を入力するようにしてもよい。利用者(運転者)は、この操作部304を操作して、運転状況(回転数センサ340、アクセル開角センサ341、車速センサ342の出力)に応じたフィルタ315、フィルタ325、波形生成部330、およびミキサ317の制御特性を設定する。
すなわち、このエンジン音加工装置の制御系統を図示すると図17のようになる。操作部304の設定により、フィルタ314、フィルタ324、フィルタ315、フィルタ325、波形生成部330およびミキサ317の制御特性が設定され、このうちフィルタ315、フィルタ325、波形生成部330およびミキサ317は、回転数センサ340、アクセル開角センサ341、車速センサ342の出力に応じてリアルタイムにその特性が制御される。
操作部34によるフィルタ特性、波形パラメータ、ミキシング比率の設定は、各構成部について1または複数のパラメータをマニュアル操作で設定するようにしてもよく、予め1または複数のパラメータセットを制御部303に記憶しておき、そのパラメータセットのいずれかを選択して設定するようにしてもよい。複数のパラメータセットを準備する場合には、たとえば、粗さ感のあるエンジン音パラメータセット、滑らかさ感のあるエンジン音パラメータセットなどを準備しておき、これらのモード切り換えができるようにしておけばよい。なお、このエンジン音加工装置の機能をオフしてエンジン音効果を発生させないようにすることも当然可能である。
また、フラッシュメモリやROMパックのコネクタを設けておき、パラメータセットをフラッシュメモリやROMから供給するようにしてもよい。また、カーナビゲーション装置のハードディスクから供給を受けるようにしてもよい。さらに、インターネットを介してパラメータセットをダウンロードできるようにしてもよい。また、LANコネクタなどを設けておき、このコネクタを介して接続されたコンピュータ(ノートパソコン)からパラメータセットの供給やパラメータのマニュアル設定ができるようにしてもよい。
なお、信号処理部302の構成は上記実施形態に限るものではない。上述したように、マイク310、マイク320からの信号を信号処理部302の前段でミキシングしたのち1系統で信号処理を行うようにしてもよい。また、排気音や機械音等を収音するため、さらに複数のマイクを設置する場合において、それぞれの信号を個別に処理してもよいし、ミキシングして2系統、または1系統で処理するようにしてもよい。
また、フィルタ314(フィル・BR>^324)やフィルタ315(フィルタ325)は、本発明の必須の構成要素ではなく、波形生成部330、および乗算器316(乗算器326)からなる構成であってもよい。また、各フィルタは接続順序を入れ替えてもよいものである。
次に、図18を参照して、波形生成部330の波形パラメータについて説明する。図18に示すグラフの横軸は時間、縦軸は振幅割合を示し、同図に示すグラフは、波形生成部330の出力する信号の波形の一例を示すものである。このように、波形生成部330の出力する信号の波形は、所定の周期で振幅変調した波形である。この波形は、以下のような式で表される。
Figure 0004888386
ここで、tは時間、kは変調の深さ、fはこの変調信号波形の基本周波数(Hz)、θは初期位相を表す。すなわち、この信号波形m(t)は、周波数f(周期1/f)の正弦波となる。周波数fは以下のような式で表される。
Figure 0004888386
ここで、rはエンジン回転数(rpm)、Nはエンジン気筒数(自然数)を表す。エンジン回転数は、回転数センサ340の検出値から読み取り、運転状況に応じてリアルタイムに変化する。つまり、波形生成部330の出力する変調信号波形m(t)の周期は、エンジン爆発の基本周期とほぼ等しくなる。このような周期の変調信号m(t)を収音したエンジン音と合成すると、エンジン音に変動感が生じ、粗さ感のある音質に加工することができる。これは、人間の聴覚特性であるテンポラルマスキング(ある音が鳴り止んだ直後に別の音を鳴らした場合、後の音が前の音にマスキングされる現象)を利用するものである。テンポラルマスキングにより、出力されるエンジン音について、レベルの大小(波形の山、谷)を聞き分けることはできないが、変動の成分(変動感)を感じることができる。この変動を感じている状態が音の粗さを感じている状態となり、このような変調信号波形m(t)を合成することでエンジン音を粗さ感のある音質に加工することができる。なお、変調信号波形の周期はエンジン爆発の基本周期の整数倍周期としてもよい。
波形生成部330は、変調信号波形m(t)の波形パラメータのうち変調の深さkを制御部303に従って設定する。変調の深さkは0〜1の間に設定する(0≦k≦1)。変調の深さkを大きくすると変調成分が強調されて、より粗さ感のある音質に加工することができる。図18に示す変調波形おいては、上側ピークは振幅割合が1のままで、下側ピークの深さがkの値に応じて変化する。
変調の深さkは、マニュアル操作で設定するようにしてもよく、上述したように予め1または複数のパラメータセットを制御部303に記憶しておき、そのパラメータセットのいずれかを選択して設定するようにしてもよい。
変調の深さkは、定数としてもよいし、運転状況(主にエンジン回転数)に応じて変化する関数としてもよい。図19を参照して回転数センサ340の検出値に応じて変調の深さkを制御する場合の1例について説明する。同図に示すグラフの横軸はエンジン回転数(rpm)、縦軸はkの大きさを示し、以下のような特徴を有している。
同図は、エンジン回転数に基づく変調の深さkの制御特性を示しており、
(a)エンジン回転数がおよそ3000回転以下のときは、kを小さくして(同図においては0.4にして)粗さ感を強調しない(滑らかさ感のある)エンジン音とする
(b)エンジン回転数が3000〜5000回転のときは、kを大きくして(同図においては0.8にして)粗さ感を強調したエンジン音とする
(c)エンジン回転数がおよそ5000回転以上のときは、kを小さくして(同図においては0.4にして)滑らかさ感のあるエンジン音とする
というルールに基づくものである。
このルールは、自動車を強く加速させるとき(エンジンの軸出力が最も強くなるとき)の主たる回転域である3000〜5000回転のときにkを大きくしてエンジンの荒々しさを強調するルールである。
なお、変調の深さkの制御ルールは上記のものに限定されない。また、回転数センサ340の検出値に応じた制御に限定されるものではない。例えば、アクセル開角50%以上のときにkを大きくして粗さ感を強調する等の制御をしてもよい。
なお、変調の深さkをマイナス側に設定することも可能である。変調の深さkをマイナスに設定して、変調成分のレベルを増大させることでも粗さ感のある音質に加工することができる。
また、変調信号m(t)の波形パラメータのうち周波数fについても上記数式に限定せずに、運転状況に応じてさらに変化する関数としてもよい。同じエンジン回転数であっても周波数fを高くすると、さらに変動感が認識されて粗いエンジン音に加工することができる。図20を参照してエンジン回転数に応じて周波数fの割合を制御する場合の1例について説明する。図20に示すグラフの横軸はエンジン回転数、縦軸は周波数fの数値割合を示し、以下のような特徴を有している。
同図は、エンジン回転数に基づく周波数fの制御特性を示しており、
(a)エンジン回転数が3000回転以下のときは、周波数fを高くして(同図においては1.2倍にして)粗さ感をさらに強調したエンジン音とする
(b)エンジン回転数が3000回転以上のときは、周波数fを通常設定にして(同図においては1.0倍にして)若干粗さ感のあるエンジン音とする
というルールに基づくものである。
このルールは、アイドリング中や減速中などエンジン回転数が低く、エンジン音のレベルが小さいときに周波数fを大きくしてエンジンの粗さ感をさらに強調し、低回転でも迫力のあるエンジン音とするルールである。この周波数fの制御ルールについても上記に限定されるものではない。アクセル開角センサ41等、他の運転状況を検出するセンサに基づいて制御するようにしてもよい。
波形パラメータである上記変調の深さkと周波数fを運転状況(主にエンジン回転数)に応じて制御する場合、変調の深さkを固定にして周波数fを運転状況に応じて制御するようにしてもよいし、この逆に変調の深kを運転状況に応じて変化させて周波数fの割合を固定(数値はエンジン回転数に基づく)ようにしてもよい。また、変調の深さkと周波数fの両方を運転状況に応じて変化させるようにしてもよい。無論、両方を固定(周波数fの数値はエンジン回転数に基づく)にしてもよい。
変調波形m(t)の初期位相を示すθは変調のピーク(最も振幅割合が低い)タイミングとエンジン音のピーク(最も音量が大きくなる)タイミングを一致させるためのパラメータである。変調のピークタイミングとエンジン音のピークタイミングを一致させることで、効率よく変動感を認識させることができる。波形生成部330は、制御部303の制御によって、複数の変調波形を出力してそれぞれのエンジン音(吸気音、エンジン爆発音)を加工する場合、それぞれのピークタイミングと一致するようにθを設定する。それぞれのタイミングは、運転状況を検出するセンサに応じてリアルタイムに制御すればよい。例えば、回転数センサ340がイグニッションのパルスから回転数を検出するセンサである場合は、このパルスに応じて(吸気、爆発〜排気のタイムラグも考慮して)θを設定する。
なお、変調波形は正弦波に限るものではない。三角波、矩形波、のこぎり波等他の波形であっても周期関数であれば粗さ感のあるエンジン音に加工することができる。
以上のルールを変調波形パラメータに的確に反映させるためには、上述のように各センサ出力を変数にした関数を作成しておき、この関数にセンサ出力を入力して求めるようにしてもよく、ファジィ推論によって求めるようにしてもよい。また、各センサ出力の所定ステップ毎に変調波形パラメータを決定するテーブルを求めておき、センサ出力でこのテーブルを検索して該当する波形パラメータを読み出すようにしてもよい。いずれにしても利用者によって設定される上記パラメータセットにはこのセンサ出力に基づいて波形パラメータを求めるための情報が含まれているものとする。
以上の制御を行い、変調波形をエンジン音に合成することでエンジンの粗さ感や滑らかさ感等を表現したリアルなエンジン音効果を発生させることができる。
次に、図21A〜21Dを参照してフィルタ315,フィルタ325の特性制御の一例について説明する。図21A〜21Cに示すグラフの横軸は周波数、縦軸はフィルタの周波数ゲインを示し、同図に表示するフィルタの周波数ゲインは以下のような特徴を有している。
図21Aは、エンジン回転数に基づく吸気音、エンジン爆発音のフィルタ制御特性を示しており、
(a)エンジン回転数が低いときは、低音を強調し、高音を抑制する。
(b)エンジン回転数が高いときは、低音を抑制し、高音を強調する。
というルールに基づくものである。
図21Bは、アクセル開角に基づく吸気音のフィルタ制御特性を示しており、
(c)アクセル開角が小さいときは、吸気音の低音を抑制する。
(d)アクセル開角が大きいときは、吸気音の低音を強調する。
というルールに基づくものである。
図21Cは、車速に基づく全体音量の制御特性を示しており、
(e)車速が小さいときは、全体音量を小さくする。
(f)車速が大きいときは、全体音量を大きくする。
というルールに基づくものである。
図21Dに示すグラフの横軸はアクセル開角値およびエンジン回転数、縦軸はミキシングウェイトを示している。図21Dは、アクセル開角およびエンジン回転数に基づく吸気音、エンジン爆発音のミキシングウェイト制御特性を示しており、
(g)アクセル開角が大きくなるにつれて、吸気音のミキシングウェイトを大きくする。
(h)エンジン回転数が大きくなるにつれて、エンジン爆発音のミキシングウェイトを大きくする。
というルールに基づくものである。
なお、ミキシング比率は、吸気音のミキシングウェイトとエンジン爆発音のミキシングウェイトの比率によって決定される。以上のルールは、「エンジンの回転数が低いときは大排気量のエンジンの雰囲気を出すために低音を強調し、エンジンの回転数が高いときはエンジンの高速回転を強調するために高音を強調するとともにエンジン爆発音のミキシングウェイトを大きくする。アクセル開角が大きいときはエンジンに負荷が掛かっているため、吸気音を大きくするとともにこの吸気音のミキシングウェイトを大きくする。車速が大きいときは、風切り音やタイヤノイズなどエンジン音以外のノイズが大きくなるため、全体の音量を大きくする。」という趣旨に基づくものであり、実際のエンジン音にさらにそのときの運転状況を強調するためのルールである。
なお、低音域、高音域の中心周波数は、エンジン音の周波数分布に基づいて決定すればよいが、一般的には、低音域の中心周波数は500Hz前後、高音域の中心周波数は1000Hz前後にすればよい。
また、フィルタ特性の制御ルールは上記のものに限定されない。フィルタ特性の制御ルールもマニュアル操作で設定するようにしてもよく、上述したように予め1または複数のパラメータセットを制御部3に記憶しておき、そのパラメータセットのいずれかを選択して設定するようにしてもよい。
以上のように、本発明の実施形態であるエンジン音加工装置においては、車室外に設置したマイクから実際のエンジン音を収音し、運転状況に応じた変調波形を合成することで、安易な処理でエンジンの粗さ感や滑らかさ感等を表現したリアルなエンジン音効果を発生させることができ、ドライブ愛好家にとって心地よい車室空間を作り出すことができる。
図22は、この発明の第4の実施形態である車室内音響制御装置の構成を示すブロック図である。この車室内音響制御装置は、車両において収音されたエンジン音に加工を施してスピーカ460Lおよび460Rから出力する装置である。図22に示す例では、吸気音、エンジンルーム内の音、排気音、車外音がエンジン音の構成要素として選択されており、マイク411〜414は、それらの音を収音可能な各位置に配置されている。フィルタ部420は、フィルタ421〜424により構成されている。これらのフィルタ421〜424は、マイク411〜414から得られる各電気信号に前処理を施す機能と、和音構成情報が与えられた場合に、和音構成情報に従い、各電気信号のピッチと協和関係にあるピッチを有する協和音の音声信号を生成して、前処理を経た電気信号に付加する和音構成機能を備えている。前処理に関する指示情報および和音構成情報は、制御部500により与えられる。なお、和音構成情報、フィルタ421〜424の構成の詳細および制御部500については後述する。ミキサ430は、フィルタ421〜424の各出力信号から左右2チャネルのエンジン音信号XLおよびXRを合成して出力する装置である。
フィルタ部440は、2個のフィルタ440Lおよび440Rにより構成されている。これらのフィルタ440Lおよび440Rは、例えば畳み込み演算器により構成されており、エンジン音信号XLおよびXRに対し、制御部500から与えられる2組のフィルタ係数列を各々畳み込み、その結果得られるエンジン音信号YLおよびYRを出力する。制御部500は、例えば、図示しない操作子の操作に応じて、フィルタ440Lおよび440Rに与えるフィルタ係数列を切り換える。好ましい態様において、制御部500は、フィルタ440Lおよび440Rに与える2組のフィルタ係数列の相関係数を調節することにより、スピーカ再生音の広がり感の調節を行う。すなわち、スピーカ再生音の音像を広範囲に分散させる場合には、ともにフラットなフィルタ特性に対応し、かつ、相関の低い2組のフィルタ係数列が制御部500からフィルタ440Lおよび440Rに与えられ、スピーカ再生音の音像を狭い範囲に集中させる場合には、ともにフラットなフィルタ特性に対応し、かつ、相関の低い2組のフィルタ係数列が制御部500からフィルタ440Lおよび440Rに与えられる。
信号処理部450は、エンジン音信号YLおよびYRに各々所定の信号処理を施して左右2チャネルのスピーカ460Lおよび460Rに出力する回路である。エンジン音信号YLおよびYRは、この信号処理部450内の、左右の各チャネルに対応したATT(減衰器)451Lおよび451Rと、HPF(高域通過フィルタ)452Lおよび452Rと、LPF(ローパスフィルタ)453Lおよび453Rと、遮音特性フィルタ454Lおよび454Rと、動的フィルタ455Lおよび455Rとを順次通過し、最終的なエンジン音信号ZLおよびZRとしてスピーカ460Lおよび460Rに各々出力される。
ここで、ATT451Lおよび451Rは、エンジン音信号YLおよびYRのレベルをスピーカ駆動に適したレベルに調整する回路である。HPF452Lおよび452RとLPF453Lおよび453Rは、スピーカ460Lおよび460Rから出力するのに適さない不要な高域成分および低域成分をATT451Lおよび451Rの各出力信号から除去する。遮音特性フィルタ454Lおよび454Rは、車両のボディの遮音特性、すなわち、エンジンから車両のボディを介して運転者の耳に至る音の伝達系の特性をシミュレートしたフィルタである。そして、動的フィルタ455Lおよび455Rは、周波数対利得特性の制御が可能なフィルタである。好ましい態様では、運転者に聴取されるエンジン音に対し、エンジン回転数に応じた迫力を与えるため、例えば単位時間当たりのエンジン回転数が例えば3000rpm付近である場合には、400Hz付近の周波数帯域の利得を持ち上げ、単位時間当たりのエンジン回転数が例えば6000rpm付近である場合には、1kHz付近の周波数帯域の利得を持ち上げる、という具合に、この動的フィルタ455Lおよび455Rの周波数対利得特性の制御が行われる。
制御部500は、エンジン回転数センサ511、アクセル踏み込み量センサ512、シフトポジションセンサ513などの各種のセンサの計測結果を監視することにより、車両の運転状態を特定し、この運転状態に応じて、各部の制御を行う。パラメータメモリ520には、予め定義された各種の運転状態に対応つけて、各部の制御に用いるパラメータが記憶されている。このパラメータのうち主要なものとして和音構成情報がある。制御部500は、何らかの運転状態を特定した場合、その運転状態に対応つけられたパラメータをパラメータメモリ520から読み出し、そのパラメータに含まれる和音構成情報をフィルタ421〜424に与える。
フィルタ421〜424として、各種の構成のものが考えられる。図2は、フィルタ421〜424の第1の構成例を示すブロック図である。この第1の構成例であるフィルタ421〜424は、前処理部601と、n個のピッチ変換部602−j(j=1〜n)と、n+1個の乗算器603−j(j=0〜n)と、加算器604とにより構成されている。
前処理部601は、マイク411等の出力信号に対して前処理を施す装置である。前処理としては、次の3通りがある。
a.何もしない。
b.入力音声信号に対して雑音抑圧処理を施す。
c.入力音声信号における特徴的な倍音成分、すなわち、吸気音、エンジンルーム内の音、排気音、車外音といった音源の種類により定まる特徴的な倍音成分を選択して出力する。
上述したパラメータメモリ520において、運転状態に対応つけられたパラメータには、この前処理の種類を指定する情報が含まれている。制御部500は、運転状態に対応したパラメータをパラメータメモリ520から読み出した場合に、このパラメータから前処理の種類を指定する情報を取り出し、前処理部601に与える。そして、前処理部601は、与えられた情報により指示された前処理をマイク411等の出力信号に施すのである。
n個のピッチ変換部602−j(j=1〜n)は、各々前処理部601の出力信号に対してピッチ変換を施して出力する装置である。制御部500から各フィルタ421〜424に与えられる和音構成情報は、1または複数のピッチ変換部602−jに対するピッチ変換の指示と、それらのピッチ変換に用いるピッチ変換比P−j(j=1〜n)を含んでおり、これらは、該当するピッチ変換部602−jに与えられるようになっている。ピッチ変換の指示およびピッチ変換比P−jを受け取ったピッチ変換部602−jは、前処理部601から出力される音声信号を元のピッチのP−j倍のピッチの音声信号に変換して出力する。
乗算器603−j(j=0〜n)は、前処理部601またはピッチ変換部602−k(k=1〜n)の各出力信号に乗算係数kj(j=0〜n)を乗算して出力する。制御部500から各フィルタ421〜424に与えられる和音構成情報には、この乗算係数kj(j=0〜n)も含まれる。加算器604は、前処理部601の出力信号および乗算器603−j(j=0〜n)の各出力信号を加算して、和音の音声信号を生成し、ミキサ430に出力する。その際、和音を構成する各音のピッチは、前処理部601から出力される音声信号のピッチと和音構成情報に含まれる1または複数のピッチ変換比P−jにより決定され、和音を構成する各音の音量バランスは、乗算係数kj(j=0〜n)により決定される。
図3は、フィルタ421〜424の第2の構成例を示すブロック図である。この第2の構成例では、第1の構成例におけるピッチ変換部602−j(j=1〜n)が、合成部605−j(j=1〜n)に置き換えられている。図4は、各合成部605−j(j=1〜n)の構成例である。第1の構成例と同様、ピッチ変換の指示が与えられる合成部605−jにはピッチ変換比P−jが与えられる。また、各合成部605−j(j=1〜n)には、エンジンの点火タイミングにおいて発生する点火パルスが供給される。合成部605−j(j=1〜n)は、点火パルスに位相同期し、かつ、点火パルスの周波数のP−j倍の周波数を有する鋸歯状波形の掃引信号を出力するPLL(Phase Locked Loop;位相同期ループ)606と、1周期分のエンジン音波形のサンプルデータを記憶し、掃引信号がアドレス信号として供給される波形メモリ607とにより構成されている。合成部605−jでは、ピッチ変換の指示が与えられることにより、エンジンの点火パルスの周波数にピッチ変換比P−jを乗じた掃引周波数の掃引信号がPLL606により発生され、この掃引信号の1回の掃引毎に1周期分のエンジン音波形のサンプルデータが読み出され、後段の乗算器603−jに供給される。ここで、点火パルスの周波数は、前処理部601の出力信号のピッチに対応しているので、波形メモリ207から読み出されるサンプルデータのピッチは、前処理部601の出力信号のピッチのP−j倍のピッチとなる。
以上が本実施形態の構成の詳細である。
以下、具体例を挙げ、本実施形態の動作について説明する。
<第1の具体例>
本実施形態では、フィルタ421〜24の前処理部601から出力される音声信号を例えばC音(以下、元の音という)とした場合に、この元の音に対して例えば以下のような関係を有する協和音をピッチ変換または合成により生成する。
D:元の音のピッチの9/8倍のピッチを有する音
E:元の音のピッチの5/4倍のピッチを有する音
F:元の音のピッチの4/3倍のピッチを有する音
G:元の音のピッチの3/2倍のピッチを有する音
A:元の音のピッチの5/3倍のピッチを有する音
B:元の音のピッチの15/8倍のピッチを有する音
E♭:元の音のピッチの6/5倍のピッチを有する音
B♭:元の音のピッチの9/5倍のピッチを有する音
本実施形態では、元の音と上記の各音における1または複数の音とを組み合わせた和音を構成するための各種の和音構成情報が、各種の運転状態に対応つけて、パラメータメモリ520に予め記憶され、運転の際には、その時点における運転状態に対応したものが制御部500によって読み出され、フィルタ421〜424に与えられる。
図26はこのような制御により得られる動作例を示している。この動作例では、エンジン回転数センサ511により得られるエンジン回転数が運転状態とされており、各種の運転状態(エンジン回転数)に対応つけて各種の和音構成情報、すなわち、1または複数のピッチ変換部602−jまたは合成部605−jに対する指示、それらに与える1または複数のピッチ変換比P−j、乗算係数kj(j=0〜n)がパラメータメモリ520に格納されている。そして、運転時においては、運転状態(エンジン回転数)に応じて和音構成情報が読み出されてフィルタ421〜424に与えられ、図示のようにエンジン回転数に応じて構成の変化する和音がフィルタ421〜424により生成され、スピーカ460Lおよび460Rを介して出力される。
図示の例では、エンジンの回転数の増加に伴って、元の音であるC音にF音が付加される。さらにエンジン回転数が増加することにより、G音を得るためのピッチ変換または合成が開始され、F音に適用される乗算係数を減少させる一方においてG音に適用される乗算係数を増加させる制御が行われ、元の音に付加される音がF音からG音にクロスフェードされる。さらにエンジン回転数が増加すると、元の音に付加される音にB音がさらに追加される。このようにして、力強く加速して軽やかに伸びる、という印象を与える和音が得られ、運転者は、この和音を聴くことにより運転状態を体感することができる。
<第2の具体例>
上記第1の具体例では、運転状態として、センサの出力信号の現在値により把握される状態を用いたが、この第2の具体例では、センサの出力信号の時間的変化の態様を運転状態として用いる。具体的には、一定期間内における1または複数のセンサの出力信号の変化の態様を運動状態として複数種類定義し、これらの運動状態に対応つけて和音構成情報をパラメータメモリ520に予め記憶しておく。そして、運転時には、過去一定時間内における各センサの出力信号の変化の態様と、パラメータメモリ520内に記憶された各運転状態とのパターンマッチングを行い、一致する運動状態に対応した和音構成情報を用いて和音であるエンジン音を生成するのである。これにより、例えば次のような複雑な制御を行うことが可能となる。まず、シフトポジションセンサ513によりシフトダウンが検出された場合には、元の音であるC音に対してF音を付加する。その後、エンジン回転数センサ511により検出されるエンジン回転数が上昇するにつれ、さらにG音を追加する。そして、エンジン回転数の上昇が収まるにつれてF音とG音のレベルを下げ、定常走行になると、元のC音のみにするのである。
<第3の具体例>
上記第1の具体例では、1つのセンサの出力信号に応じて和音の構成を変化させたが、複数のセンサの出力信号の組み合わせに応じて和音の構成を変化させてもよい。例えば、シフトポジションセンサ513によりシフトアップ操作が検出される場合、ギアが2速、3速、4速、5速とシフトアップされるにつれて、元の音に付加する音をD音、E音、G音、A音という具合に切り換える。その際、付加する音の音量を、アクセル踏み込み量センサ512により検出されるアクセル踏み込み量に比例させる。
以上説明したように、本実施形態によれば、車両において収音したエンジン音に対し、運転状態に応じて、元の音とピッチの異なる音を付加し、和音としてスピーカから再生するようにしたので、運転者は、再生されるエンジン音から運転の手ごたえを感じ、快適な運転をすることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明にはこれ以外にも他の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)車両の現在位置を運転状態として扱ってもよい。より具体的には、車両にナビゲーション装置を設けるとともに、パラメータメモリ520には、運転状態である車両の現在位置に対応つけて和音構成情報を記憶しておくのである。そして、制御部500は、ナビゲーション装置から得られる現在位置の情報(運転状態)に対応した和音構成情報をパラメータメモリ520から読み出し、フィルタ421〜424に与えるのである。この態様によれば、例えば海岸沿いの道を走ると、F音とG音が元の音に付加される、といった動作が可能になる。
(2)上記実施形態では、ピッチ変換または合成により和音を構成する装置をミキサ430の前段のフィルタ421〜424に設けたが、この和音を構成する装置をミキサ430の後段に設けてもよい。あるいはミキサ430の前段と後段の両方に、和音を構成する装置を設け、操作子の操作により、あるいは運転状態により、前段か後段のいずれかを選択し、選択した装置に和音を構成する処理を実行させるようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、フィルタ421〜424の全てに、和音を構成する装置を設けたが、一部のフィルタのみにこの装置を設けてもよい。あるいはフィルタ421〜424の全てに和音を構成する装置を設け、操作子の操作により、あるいは運転状態により、和音を構成する処理を実行させる装置を選択するようにしてもよい。
(4)運動状態に応じて、エンジン音の和音の構成を変化させることに加えて、フィルタ440Lおよび440Rに与える2組のフィルタ係数列の相関係数を変化させ、音の広がりを変化させるようにしてもよい。
(5)上記実施形態では、エンジン音を収音して、これに音場効果を付与してスピーカから再生した。しかし、このように実際にエンジン音を収音する代わりに、エンジン音の波形データを予め記憶したメモリから、エンジンの回転数に応じた読み出し速度で波形データを読み出して、擬似エンジン音信号を再生し、この擬似エンジン音信号から、運転状態に応じた和音を生成するようにしてもよい。この態様によれば、エンジンを有しておらず、モータにより走行する車両においても上記実施形態と同様な効果を得ることができる。
(6)上記実施形態では、2チャネルのスピーカによりエンジン音の再生を行ったが、4チャネル、5.1チャネルなどの多チャネルのスピーカによりエンジン音の再生を行うようにしてもよい。
<第5の実施形態>
図27は、この発明の第5の実施形態であるエンジン音生成装置の構成を示すブロック図である。このエンジン音生成装置は、車両において収音されたエンジン音に加工を施してスピーカ760Lおよび760Rから車両内に出力する装置である。図27に示す例では、マイク711および712は、エンジン音の特徴的な成分を収音可能な2箇所に設けられている。マイク711および712の各出力信号は、アンプ721および722により増幅され、ミキサ730によりミキシングされて出力される。ここで、ミキサ730のミキシング比は、エンジン音の特徴的な各周波数成分が適切なバランスでミキサ730の出力信号中に現れるように定められている。アンプ721および722とミキサ730との間にエンジン音の特徴的な周波数成分を抽出するフィルタを介挿してもよい。
信号処理部740は、ミキサ730の出力信号に対して各種の信号処理を施す装置であり、例えばDSP(Digital Signal Processor)などにより構成可能である。この信号処理部740には、エンジンの回転数を測定するエンジン回転数センサ811とアクセル踏み込み量を測定するアクセル踏み込み量センサ812とが接続されている。信号処理部740は、ミキサ730の出力信号の周波数特性に対して、エンジン回転数センサ811およびアクセル踏み込み量センサ812の各出力信号に基づいて必要な補正を施し、補正後の周波数特性から車両内再生用のエンジン音信号を合成する。こうした処理により得られる車両内再生用のエンジン音信号は、LチャネルおよびRチャネルのエンジン音信号に分離され、信号処理部740から出力される。このLチャネルおよびRチャネルのエンジン音信号は、アンプ750Lおよび750Rによって増幅され、スピーカ760Lおよび760Rから出力される。
図28は信号処理部740の構成例を示すブロック図である。A/D変換器741は、アナログ音声信号であるミキサ730の出力信号を所定周波数のサンプリングクロックによりサンプリングし、デジタル音声信号に変換する。FFT部742は、A/D変換器741により得られるデジタル音声信号に対してFFT(高速フーリエ変換)を施し、周波数特性H(jω)を求め、その絶対値を示す振幅特性データ|H(jω)|と、その偏角を表す位相特性データarg{H(jω)}を出力する。
振幅特性補正部743は、エンジン回転数センサ811およびアクセル踏み込み量センサ812の各出力信号に基づいて振幅特性データ|H(jω)|の補正を行う装置である。また、位相特性補正部744は、エンジン回転数センサ811およびアクセル踏み込み量センサ812の各出力信号に基づいて位相特性データarg{H(jω)}の補正を行う装置である。本実施形態の最大の特徴は、この位相特性補正部44によって行われる位相特性データarg{H(jω)}の補正にある。本実施形態では、この位相特性データarg{H(jω)}の補正の際、位相の補正を行う周波数がエンジン回転数センサ811によって測定されるエンジン回転数に基づいて決定され、位相の補正量がアクセル踏み込み量センサ812によって測定されるアクセル踏み込み量に応じて制御される。
本実施形態では、振幅特性データ|H(jω)|および位相特性データarg{H(jω)}の補正の態様(以下、便宜上、補正モードという)が複数種類想定されており、それらの各補正モードでの補正を振幅特性補正部743および位相特性補正部744に行わせるためのパラメータがパラメータメモリ748に記憶されている。運転者(ユーザ)は、図示しない操作子の操作により所望の補正モードを選択することができ、本実施形態では、この選択された補正モードに対応したパラメータがパラメータメモリ748から読み出されて振幅特性補正部743および位相特性補正部744に設定され、当該補正モードでの補正が行われるようになっている。なお、位相特性データおよび振幅特性データの補正の詳細については、説明の重複を避けるため、本実施形態の動作説明において明らかにする。
逆FFT部745は、振幅特性補正部743による補正後の振幅特性データと位相特性補正部744による補正後の位相特性データとに対して逆FFTを施し、時間信号であるエンジン音信号を合成する装置である。ボリューム746は、この逆FFT部745から出力されるエンジン音信号を増幅して出力する装置である。好ましい態様では、ボリューム746の利得は、エンジン回転数センサ811およびアクセル踏み込み量センサ812の各出力信号に応じて増減される。ボリューム746の出力信号は、D/A変換器747によってアナログ化され、上述した車両内再生用のエンジン音信号となる。
以下、本実施形態の動作を説明する。図29は本実施形態におけるFFT部742から得られる振幅特性データ|H(jω)|および位相特性データarg{H(jω)}を例示する図である。振幅特性データ|H(jω)|は、エンジン音のスペクトルの角周波数ωを横軸として表すと、図示のように、角周波数軸方向に複数の山が並んだ特性となる。本実施形態では、これらの山の頂上部に相当するエンジン音のスペクトルの中からエンジンの爆発に起因した成分と考えられるものが選択され、この成分を基準として、他の成分の振幅および位相の補正が行われる。その際、エンジンの爆発に起因した成分は、エンジン回転数センサ811によって測定されるエンジン回転数から推定される。例えば4気筒エンジンの場合、エンジンが1回転する間に2回の爆発が発生する。このため、振幅特性データ|H(jω)|の各山頂部のうち、最も高く、かつ、エンジン回転数の2倍に相当する角周波数付近にあるものの角周波数がエンジンの爆発に起因した回転2次角周波数ω2と推定される。
振幅特性補正部743は、回転2次角周波数ω2における振幅特性データ|H(jω2)|を固定した状態において、パラメータメモリ748から読み出される補正モードに対応したパラメータに従い、振幅特性データ|H(jω)|の山頂部を上昇させる補正、山頂部を下降させる補正、振幅特性データ|H(jω)|の谷の部分を上昇させる補正、または谷の部分を下降させる補正などが行われる。どのような種類の補正を行うか、また、どの程度、山頂部や谷を上昇もしくは下降させるかは、補正モードにより異なる。
次に位相特性データarg{H(jω)}の補正について説明する。本実施形態では、振幅特性データ|H(jω)|の各山頂部の角周波数のうち回転2次角周波数ω2の1/2付近のものが、エンジンの回転数に対応した回転1次角周波数ω1として推定される。そして、この回転1次角周波数ω1が位相特性補正部744による位相の補正が行われる角周波数となる。位相特性補正部744は、アクセル踏み込み量センサ812により測定されるアクセル踏み込み量をDACCとした場合、例えば次式(1)に従い、位相補正データΔφを算出する。
Δφ=(φ2−φ1)(D0+D1・DACC) ……(1)
ここで、φ2は、回転2次角周波数ω2における位相特性データの値arg{H(jω2)}、φ1は、回転1次角周波数ω1における位相特性データの値arg{H(jω1)}である。また、D0およびD1は、補正モード毎に定められたパラメータである。
そして、位相特性補正部744は、次式(2)に示すように、回転1次角周波数ω1における位相特性データarg{H(jω1)}が位相補正データΔφだけ現状値から増減するように、回転2次角周波数ω2以下の周波数領域における位相特性データarg{H(jω)}(ω<ω2)を、位相特性データarg{H(jω1)}の増減に合わせて一律増減させる補正を行う。
arg{H(jω1)}=arg{H(jω1)}+
Δφ ……(2)
本実施形態では、以上のような補正を経た振幅特性データ|H(jω)|および位相特性データarg{H(jω)}が逆FFT部45に送られ、時間信号であるエンジン音信号が合成され、スピーカ760Lおよび760Rから出力されるのである。ここで、図示のように、φ2>φ1である場合、補正後の位相特性データarg{H(jω1)}は、アクセル踏み込み量DACCが増加するに従い、位相特性データarg{H(jω2)}に近づく。そして、アクセル踏み込み量DACCが小さく、エンジン音における回転2次角周波数ω2の成分の位相と回転1次角周波数ω1の成分の位相との間に大きな隔たりがある場合、そのエンジン音を聴いた運転者は、エンジンが前方の遠くにあるように感じる。一方、アクセル踏み込み量DACCが大きく、エンジン音における回転2次角周波数ω2の成分の位相と回転1次角周波数ω1の成分の位相とが接近している場合、そのエンジン音を聴いた運転者は、エンジンが近くにあるように感じる。
以上のように、本実施形態によれば、アクセル踏み込み量に応じて、エンジン音における回転2次角周波数成分の位相に対する回転1次角周波数成分の位相の位相差を増減し、運転者が感じるエンジンの位置までの距離感を変えることができる。従って、本実施形態によれば、グラフィックイコライザを用いて振幅特性の調整を行う場合に比べ、運転者によって聴取されるエンジン音を大きく様変わりさせることができる。また、運転者は、選択する補正モードを変えることにより、アクセル踏み込み量に応じた回転1次角周波数成分の位相の補正に用いるパラメータ(上記の例ではD0、D1)を変化させ、位相の補正の態様を変化させることができるので、適切な補正モードを選択して自分の好みの印象のエンジン音を楽しむことができる。また、本実施形態によれば、アクセルを踏み込む操作により、エンジン音の距離感を変化させることができるので、運転動作に合ったエンジン音が得られる。また、本実施形態では、エンジン回転数に応じて、エンジン音において位相の補正を行う周波数成分を選択するようにしているので、車両において実際に発生するエンジン音と、信号処理部740によって合成されてスピーカ760Lおよび760Rから出力されるエンジン音とは調和したものとなり、両者が混じりあったとしても、聴感上違和感を生じない。また、本実施形態では、実際に車両から収音されるエンジン音の周波数特性を補正して、スピーカ760Lおよび760Rから出力するエンジン音を合成しているので、
自然なエンジン音を得ることができる。
<第6の実施形態>
次に図30を参照し、この発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第5の実施形態における位相特性補正部744の構成を変更したものである。本実施形態において、パラメータメモリ748(図28参照)には、各種の補正モードに対応付けて、角周波数ωの関数である位相補正データΔφ(ω)が記憶されている。図30にはその一例である位相補正データΔφa(ω)と位相補正データΔφb(ω)が図示されている。本実施形態における位相特性補正部では、これらの位相補正データΔφ(ω)のうち運転者によって選択された補正モードに対応付けられたものが選択される。そして、FFT部742から位相特性データarg{H(jω)}が出力された場合に、これに対し、加算器744aにより、選択された位相補正データΔφ(ω)を加算する補正が行われ、補正後の位相特性データが逆FFT部745(図28参照)に送られる。
ここで、位相補正データとしてΔφa(ω)が選択されたとすると、次のような動作が得られる。まず、低速では、車両において収音されるエンジン音の回転1次角周波数および回転2次角周波数は、角周波数の増加に応じて位相補正データΔφa(ω)が下降する領域に位置する。このため、スピーカ760Lおよび760Rから得られるエンジン音は、その回転2次角周波数成分の位相と回転2次角周波数成分の位相の位相差がエンジン回転数の増加に応じて変化し、車両がフワーッと動いているような印象の不安定な音となる。そして、中高速になると、車両において収音されるエンジン音の回転1次角周波数および回転2次角周波数は、位相補正データφa(ω)の角周波数ωに対する勾配の小さい領域に位置する。このため、スピーカ760Lおよび760Rから得られるエンジン音は、落ち着いた感じの音となる。
一方、位相補正データとしてΔφb(ω)が選択されたとすると、低速では、車両において収音されるエンジン音の回転1次角周波数および回転2次角周波数は、位相補正データφb(ω)の角周波数ωに対する勾配の小さい領域にあるため、スピーカ760Lおよび760Rから得られるエンジン音は、落ち着いた感じの音となる。そして、中高速では、車両において収音されるエンジン音の回転1次角周波数および回転2次角周波数は、角周波数の増加に応じて位相補正データΔφb(ω)が増加する領域に位置するため、スピーカ760Lおよび760Rから得られるエンジン音は、車両がフワーッと動いているような印象の不安定な音となる。
以上のように、本実施形態によれば、運転者は、選択する補正モードを変えることにより、エンジン音の位相の補正の態様を変化させ、自分の好みの印象のエンジン音を楽しむことができる。また、上記第5の実施形態のようなエンジン回転数に応じて位相の補正を行う周波数を選択したり、補正の程度をアクセル踏み込み量に応じて調節する処理が不要であるため、信号処理部740の処理を簡単化することができるという利点がある。
<第7の実施形態>
次に図31を参照し、この発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第6の実施形態においてパラメータメモリ748(図28参照)に予め記憶しておく位相補正データΔφ(ω)の生成方法に関するものである。本実施形態では、エンジン音に関する各種の嗜好、より具体的には運転者がエンジン音から感じるエンジンの距離感のエンジン回転数依存性に関する嗜好を各種想定し、角周波数ωの関数である目標位相特性データφt(ω)が各種用意されている。本実施形態の実施に当たっては、エンジン音生成装置が搭載される車両からエンジン音が収音され、この実測のエンジン音にFFTが施され、実測位相特性データφm(ω)が求められる。そして、この実測位相特性データφm(ω)を各種の目標位相特性データφt(ω)から減算することにより、各種の嗜好に対応付けられた位相補正データΔφ(ω)が求められ、各々異なる補正モードに対応付けてパラメータメモリ748に格納するのである。この位相補正データΔφ(ω)を用いたエンジン音の位相特性の補正の処理内容は上記第6の実施形態と同様である。
図31に示す例において、実測位相特性データφm(ω)は、低速から中速に変化する過程において、急激に位相が遅相から進相に変化し、その後、速度(角周波数)の増加に従い、脈打ちつつ増加する。エンジン音をこのような位相特性のままスピーカから出力したとすると、中高速域において、スピーカ再生音にいわゆるカラーレーションが生じ、音質が悪くなってしまう。これに対し、上記のようにして得られた位相補正データΔφ(ω)を用いて、車両から収音されるエンジン音の位相特性を補正すると、補正後の位相特性データは、図示のような目標位相特性データφt(ω)と一致したものとなる。この場合、スピーカ再生音は、低速域において速度の増加に応じて位相が回転するが、中高速では、位相の回転が収まり、落ち着いた印象のエンジン音となる。他の印象のエンジン音をスピーカから再生する場合には、そのようなエンジン音を想定して用意された位相補正データに対応した補正モードを選択すればよい。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明にはこれ以外にも他の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)上記第6の実施形態または第7の実施形態において、アクセル踏み込み量に応じて、位相補正データΔφ(ω)の角周波数に対する依存性の強い領域における位相補正データΔφ(ω)のスロープの傾きを変化させるようにしてもよい。この場合において、アクセル踏み込み量が増加した場合に、位相補正データΔφ(ω)のスロープの傾きを増加させるのか減少させるのかを運転者が選択し得るように構成してもよい。
(2)上記各実施形態では、車両からエンジン音を収音して、これに加工を施してスピーカから再生した。しかし、このように実際にエンジン音を収音する代わりに、エンジン音の波形データを予め記憶したメモリから、エンジンの回転数に応じた読み出し速度で波形データを読み出して、擬似エンジン音信号を再生し、この擬似エンジン音信号に信号処理部740による処理を施してエンジン音信号を生成するようにしてもよい。この態様によれば、エンジンを有しておらず、モータにより走行する車両においても上記各実施形態と同様な効果を得ることができる。
図32は、本発明のエンジン音加工装置の第8の実施の形態の構成を示すブロック図である。
この図において、901a、901bは車内のエンジンルームなどに設置され、エンジン音を収音するマイクロフォン又はセンサー(以下、マイクロフォンであるとする。)である。この実施の形態においては、エンジンルーム内の902箇所(例えば、吸気口の近傍とエンジンの近傍)にマイクロフォン901aと901bを設置し、2箇所でエンジン音を収音するようにしているが、これに限られることはなく、1箇所又は3箇所以上のポイントでエンジン音を収音するようにしても良い。
マイクロフォン901a及び901bで収音されたエンジン音は、それぞれ対応するヘッドアンプ902a及び902bで増幅された後、ミキサ903に入力され、該ミキサ903においてノイズが除去された後加算される。
ミキサ903で加算されたエンジン音の信号は、信号処理部であるディストーション部904に入力され、歪み(ディストーション)効果を付与される。このとき、車内ネットを介して供給されるエンジン回転数のデータ(Cycle)905や同じく車内ネットから供給されるアクセルの踏み込み度のデータ(Accelerator)906に応じて付与されるディストーション効果が制御される。
なお、この詳細については後述する。
ディストーション部904で歪みが付与されたエンジン音は、パワーアンプ907a及び907bでそれぞれ増幅され、車室内に設置されたスピーカ908a及び908bから再生される。なお、この例では車室内に908a及び908bで示す2個のスピーカを設置しているがスピーカの個数は任意の個数とすることができる。
前記ディストーション部4はアナログ回路を使用したアナログ方式、DSP(Digital Signal Processor)などを使用したデジタル方式のいずれでも実現することができる。図33A、33Bは、前記ディストーション部4の構成例を示す図であり、図33Aはアナログ方式の場合、図33Bはデジタル方式の場合を示している。
図33Aに示すように、アナログ方式のディストーション部904は、前記ミキサ部903からのエンジン音の信号が入力されるアナログ回路によるイコライザ911、該イコライザ911の出力が入力されるアナログ回路によるディストーション回路912、及び、該ディストーション回路912の出力が入力されるゲインが制御可能な増幅器913を有しており、これらの回路には、前記エンジン回転数のデータ(Cycle)905及びアクセル踏み込み度のデータ(Accelerator)906が制御パラメータとして供給されている。
また、図33Bに示すように、デジタル方式のディストーション部904は、前記ミキサ部903からのエンジン音の信号をデジタルデータに変換するA/D変換器921、該A/D変換器921の出力が入力されるデジタルデータに対するイコライザ手段922、該デジタルイコライザ手段922の出力が入力されるデジタルデータに対するディストーション手段923、該デジタルディストーション手段923の出力が入力されるデジタルデータに対する増幅手段924、及び、該増幅手段924の出力データをアナログ信号に変換するD/A変換器925から構成されている。ここで、前記イコライザ手段922、ディストーション手段923及び増幅手段924には、前記エンジン回転数のデータ(Cycle)905及びアクセル踏み込み度のデータ(Accelerator)906が供給されており、これらのデータに応じてそれらの特性が制御されるようになされている。前記イコライザ手段922、前記ディストーション手段923及び増幅手段924は、例えば、DSPにより実現されている。
前記イコライザ911及びイコライザ手段922は、前記ミキサ903からのエンジン音の信号に対して、BPF(Band Pass Filter)やHPF(High Pass Filter)、LPF(Low Pass Filter)といったフィルター処理を行い、歪みを付与する対象となる周波数領域を選択する処理を行う。このとき、前記エンジン回転数のデータ(Cycle)905や前記アクセル踏み込み度のデータ(Accelerator)906に基づいて、そのフィルタの特性を動的に変化させる。このイコライザ911又はイコライザ手段922としては、パラメトリックイコライザ又はグラフィックイコライザのいずれもタイプのものであってもよい。
図34は、パラメトリックイコライザの場合を示す図であり、エンジン回転数905やアクセル踏み込み度906に基づいて、通過帯域の中心周波数(f0)やその周波数帯域幅(ワイズQ)、ゲイン(G)を動的に変化させる。例えば、エンジン回転数が上昇していくとエンジン音の周波数も高くなる。これに応じて、イコライザの周波数特性を動的に変化させることにより、エンジン音の周波数の変化に追従することが可能となり、聴感上、加工音とエンジン音との間の違和感が生じることなく、自然な効果付けができることとなる。
図35A、35Bは、前記エンジン回転数のデータ(Cycle)905及び前記アクセルの踏み込み度のデータ(Accelerator)906に応じて、前記中心周波数(f0)、ゲイン(G)又はワイズ(Q)を動的に変化させる態様について説明する図であり、図35Aはエンジン回転数と中心周波数との対応を示す図、図35Bはアクセルの踏み込み度とゲインとの対応を示す図である。
図35Aに示すように、基本的に、エンジンの回転数が高くなるに従って、中心周波数(f0)も高くなるように制御する。中心周波数f0としては、エンジン音の基本周波数を中心周波数f0としてもよいし、倍音を中心周波数f0として選択しても良い。ユーザにより、中心周波数を基本周波数とするか2倍音又は3倍音とするかを選択することができるようにしてもよい。
そして、エンジンの回転数が短期間に高くなるときは、図中CL−1で示す曲線のように中心周波数f0も急激に高くなるように制御し、中程度の速度で高くなるときはCL−2で示す曲線のようにリニアに高くなるようにし、回転数がゆっくりと高くなるときは中心周波数もCL−3で示す曲線のように徐々に高くなるように制御するようにしてもよい。このように、エンジン回転数の変化の速度に応じて、リニアリティの振れ幅Cvの中で異なる変化の態様を示す曲線CL−1〜CL−3を選択して中心周波数を動的に制御することにより、ユーザの運転動作により対応した加工音を得ることができるようになる。
また、図35Bに示すように、アクセルの踏み込み度が大きくなるに従って前記ゲイン(G)も大きくなるように制御する。ここで、上記と同様に、アクセルが急激に踏まれたときには図中CL−1で示すようにゲインも急激に増加させ、中程度のときはリニアに増加させ(CL−2)、アクセルがゆっくりと踏み込まれていったときには徐々に増加させる(CL−3)ようにしてもよい。
なお、アクセルの踏み込み度に応じて中心周波数を図35Aと同様に変化させても良いし、エンジンの回転周波数に応じてゲインGを図35Bのように変化させても良い。さらに、ワイズQをエンジン回転数又はアクセルの踏み込み度に応じて図35A又は図35Bと同様に変化させても良い。すなわち、エンジン回転数又はアクセルの踏み込み度の増加にともなって、ワイズを広くするように制御する。
前記ディストーション回路912及び前記ディストーション手段923は、前記イコライザ911又はイコライザ手段922から出力されるエンジン音の信号に対して、歪ませ(Distortion)効果を付与する。このとき、前記エンジン回転数のデータ(Cycle)905及び前記アクセル踏み込み度のデータ(Accelerator)906に応じて、どれくらい歪ませるかを示すパラメータ(DRIVE)及びどのように歪ませるかを示すパラメータ(TYPE)を動的に変化させる。
図36A、36Bは、ディストーション回路912又はディストーション手段923によるディストーション処理について説明するための図である。図36Aに示すように、ディストーション回路912又はディストーション手段923は、基本的には、入力信号の振幅をクリップすることにより入力されたエンジン音信号を歪ませる。
入力信号が規定の入力レベルを超えると、出力信号の波形の頭部(許容入力を超えた部分)が削り取られた状態になる。これをクリッピング又はクリップという。この波形には無数の高調波が含まれているので、音がつまって、音色としては濁った感じになる。
図36A、36Bは、アナログ回路によるディストーション回路12の構成例を示す図である。この図に示すように、アナログのクリッピング回路により実現することができる。図36Aの場合は非対称なクリッピングが行われる。
なお、例えば、非線形特性を利用するなど、クリップ処理以外の方法で歪みを付与するようにしてもよい。
図37は、どれくらい歪ませるかを示すDRIVEパラメータについて説明するための図である。
図37に示す歪み具合を示すパラメータKdがDRIVEパラメータとされる。この歪み具合を示すパラメータKdは、図37に示すように、元波形の最大振幅が1/2まで縮まる度合いを示すパラメータであり、0%〜100%までの値をとる。Kd=0%のときはクリップされず、Kd=100%のときは元波形の振幅の1/2の振幅にクリップされる。
前記エンジン回転数のデータ(Cycle)905や前記アクセルの踏み込み度のデータ(Accelerator)906の値に応じて、Kdの値は動的に変化される。
図38A〜38Cは、エンジン回転数やアクセルの踏み込み度に応じたパラメータKdの変化のさせ方について説明するための図である。
図38Aはエンジン回転数に応じて歪み具合Kdを変化させる態様を示す図であり、この図に示すように、エンジン回転数が高くなるにつれて歪み具合Kdも上昇するように制御する。このとき、エンジン回転数の加速度、すなわち、エンジン回転数が短期間で上昇したか、あるいは、ゆっくり上昇したかに応じてリニアリティの異なる曲線に応じて歪み具合Kdを変化させるようにしてもよい。すなわち、エンジン回転数が急激に上昇したときには、曲線CL−1のように歪み具合Kdも急激に増加するようにし、ゆっくりと上昇したときは、曲線CL−3のように歪み具合Kdが徐々に増加するようにする。中程度の場合には、曲線CL−2のようにリニアに変化させればよい。
図38Bはアクセルの踏み込み度に対する歪み具合Kdの変化の態様を示す図である。この図に示すように、アクセルの踏み込み度が大きくなるにつれて歪み具合Kdも大きくなるように制御する。このとき、前述の場合と同様に、アクセルを急激に踏み込んだときには、CL−1で示す曲線のように歪み具合を急激に増加するようにし、ゆっくりと踏み込んでいったときには、CL−3で示す曲線のように歪み具合を徐々に増加するようにしてもよい。中程度のときは、CL−2で示す曲線のようにリニアに変化させればよい。
図38Cは、前記エンジン回転数に応じて歪み具合Kdを変化させる態様の他の例を示す図である。
この図に示す例は、低回転数のときに目立つような変曲点を持った曲線に従ってKdを制御する。この場合には、低回転数のときに歪み具合Kdが大きく変化し、高回転数のときには小さくなるので、例えば高速道路などにおける高速運転時には歪み具合が小さく、静かなエンジン音となる。
アクセルの踏み込み度についても図38Cと同様の曲線で歪み具合Kdを変化させるようにしても良い。
図39は、どのように歪ませるかを示すTYPEパラメータについて説明するための図である。
図39に示す歪みパターンを示すパラメータKpがTYPEパラメータとされる。この歪みパターンを示すパラメータKpは、図39に示すように、ディストーションをかけられた信号がどれだけ矩形波的になるかを表すパラメータであり、歪ませられた波形のクリッピングレベルでの横幅が、元波形の横幅の1/2まで縮まる度合いを示している。Kpは0%〜100%までの値をとり、Kp=0%のときは元波形の横幅と同じであることを示し、Kp=100%のときは元波形の横幅の1/2であることを示している。
この歪みパターンKp(TYPEパラメータ)についても、前記歪み具合Kdと同様の変化の態様を有している。すなわち、前記図38A及び38Bに示したように、エンジン回転数(Cycle)又はアクセルの踏み込み度(Accelerator)が大きくなるにつれて歪みパターンKpも大きくなるように制御される。そして、エンジン回転数又はアクセルの踏み込み度が急激に変化したとき、中程度に変化したとき、及び、ゆっくりと変化したときとで、前述したリニアリティの異なる変化曲線(CL−1〜CL−3)に従って歪みパターンを変化させるようにしても良い。
さらに、図38Cに示したようなエンジンが低回転数のとき又はアクセルの踏み込み度が小さいときに目立つような変曲点を持った曲線に従って変化させるようにしても良い。
前記ゲインが制御可能な増幅器913又は増幅手段924は、前記エンジン回転数のデータ(Cycle)905又は前記アクセルの踏み込み度のデータ(Accelerator)906に応じてそのゲインが制御され、これにより再生される加工されたエンジン音の音量V(Volume)が制御される。
図40A〜40Cは、前記エンジン回転数又は前記アクセルの踏み込み度と前記増幅器913又は増幅手段924における音量V(Volume)との関係を示す図であり、図40Aはエンジン回転数と音量Vの関係、図40Bはアクセルの踏み込み度と音量Vの関係を示す図である。
図40Aに示すように、エンジン回転数が増加すると加工されたエンジン音の音量も増加するように制御される。ここで、エンジン回転数の増加の速度に応じて、音量の増加の態様も変化するように制御し、エンジン回転数が急激に増加したときは音量も急激に増加させ(CL−1)、ゆっくりと増加したときは音量も徐々に増加する(CL−3)ように制御しても良い。
また、図40Bに示すように、アクセルの踏み込み度と音量Vとの関係も、エンジン回転数との関係と同様に制御するようにしても良い。
さらに、図40Cに示すように、エンジン回転数が低回転数のときに目立つような変曲点を有する特性曲線としても良い。アクセルの踏み込み度に対しても、図40Cに示すような曲線としても良い。
なお、前記図35A、35B、38A、38B、38C、40A、40B及び40Cに示したエンジン回転数やアクセルの踏み込み度に対する各パラメータの変化特性は、本発明のエンジン音加工装置が搭載されるエンジンの特性に応じて設定するのが望ましい。
また、上記図35A、35B、38A、38B、38C、40A、40B及び40Cにおいては、エンジン回転数及びアクセルの踏み込み度に応じた各パラメータを変化特性を3本の曲線に従って制御する場合について説明したが、これに限られることはなく、任意の本数の曲線を用いて制御を行うことができる。
さらに、エンジン回転数の変化速度やアクセルの踏み込み度の変化速度に応じてどの曲線CL−1〜CL−3に従った制御を行うかについてユーザが任意に設定することができるようにしてもよい。
さらにまた、曲線CL−1〜CL−3をユーザが編集することができるようにしてもよいし、使用する曲線数もユーザが任意に設定することができるようにしてもよい。
前記図32に示した実施の形態においては、前記エンジンルーム内に設置されたマイクロフォン901a,901bで収音されたエンジン音をディストーション部4に入力していた。通常、自動車のエンジンルームと車室の間には遮音板が設けられており、ユーザは該遮音板を通過してきたエンジン音を聞いている。そこで、遮音板の遮音特性(伝達特性)をシミュレートするフィルタを設け、前記マイクロフォン901a,901bで収音されたエンジン音に該フィルタを通過させた音を前記ディストーション部4に入力して上述した加工を施すようにしても良い。
図41は、遮音板の伝達特性をシミュレートするフィルタを設けた実施の形態の要部構成を示す図である。
この図に示すように、この実施の形態においては、エンジンルーム内に配置されたマイクロフォン901a,901bで収音されたエンジン音をヘッドアンプ902a,902bで増幅した後、遮音板の伝達特性をシミュレートするフィルタ931a,931bを通過させて前記ミキサ903に入力している。
これにより、前記マイクロフォン901a,901bで収音されたエンジン音に含まれているメカニカルノイズ等を除去することができ、ユーザが通常聞きなれているエンジン音を素材として上述した加工が施されることとなり、人間にとってより自然なエンジン音とすることが可能となる。
なお、上記においては、前記ディストーション部4内に、イコライザ911又はイコライザ手段922、ディストーション回路912又はディストーション手段923、及び、増幅器913又は増幅手段924が全て設けられている場合について説明したが、イコライザ911又はイコライザ手段922、及び、増幅器913又は増幅手段924は必ずしも必須ではなく、最低限ディストーション回路912又はディストーション手段923が設けられていればよい。

Claims (4)

  1. 自動車の車室外に設置され、該自動車のエンジン音を収音するマイクと、
    該自動車の運転状況を検出するセンサと、
    前記センサの検出内容に基づいて信号処理特性を決定する制御部と、
    前記マイクが収音したエンジン音を周波数分析して、スペクトルを割り出す周波数分析手段と、
    前記周波数分析手段により割り出されたスペクトルを、前記制御部で決定された信号処理特性に基づき信号処理して出力する信号処理部と、
    前記信号処理部で信号処理されたエンジン音を出力するスピーカと
    を備えるエンジン音加工装置において、
    前記制御部は、前記周波数分析手段が決定したスペクトルのピークを強調する特性とするエンジン音加工装置
  2. 前記制御部は、さらに、前記周波数分析手段が決定したスペクトルのピークの谷間のレベルを上げる特性とする請求項に記載のエンジン音加工装置。
  3. 前記信号処理部は、前記周波数分析手段で決定されたスペクトルのピークをピッチシフトして、特定周波数成分を強調して出力し、
    前記制御部は、前記信号処理部がピッチシフトする周波数を設定する請求項1または2に記載のエンジン音加工装置。
  4. 前記制御部は、センサの検出内容と信号処理特性との関係を記憶するテーブルを備える請求項1から3のいずれかに記載のエンジン音加工装置。
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