JP4087193B2 - 騒音予測装置及び方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、騒音予測装置及び方法に係り、特に、空気を伝播して入る直接音成分の車室内騒音や、車体を伝達して入る間接音成分の車室内騒音を予測する騒音予測装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
特開2000−241309号公報では、路面凹凸によるタイヤへの入力を定量的に求めて、タイヤの振動及び騒音の少なくとも一方を求めるタイヤの振動・騒音シミュレーション方法(以下「従来技術1」という。)が提案されている。
【0003】
ここでは、タイヤは、各突起を乗り越えたときに、各突起から力を受けているものとする。そこで、従来技術1は、タイヤが突起を覆う路面に垂直な方向の長さに基づいてタイヤの各接触点への突起による振動入力を定量的に求め、この振動入力とタイヤの各接触点への振動入力に対するタイヤ軸への伝達特性とに基づいて、タイヤの振動を求めている。
【0004】
また、特開平11−6758号公報では、ロードノイズの予測を簡便に行う車内騒音の予測方法及び装置(以下「従来技術2」という。)が提案されている。従来技術2は、標準タイヤの4輪全部の周波数応答関数と騒音予測対象タイヤのオートパワースペクトル及びクロスパワースペクトルとを4輪分合成し、ロードノイズのパワースペクトルを演算している。
【0005】
しかし、タイヤ転勤解析により車軸力を予測し、車軸力を用いて車室内騒音を予測するシステムは実現されていない。また、タイヤ転動解析によりタイヤ表面振動を予測し、これを用いて境界要素法により車外騒音を予測し、車外騒音から車室内騒音を予測するシステムは実現されていない。このため、従来は、車室内騒音における直接音成分と間接音成分を同時に予測して、総合的な騒音を予測することができなかった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、車室内騒音における直接音成分と間接音成分をそれぞれ予測して、総合的な車室内騒音を精度よく予測する騒音予測装置及び方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項に記載の発明は、有限要素法によりタイヤ車軸力を予測するタイヤ車軸力予測手段と、タイヤ車軸力が車体を伝達する特性を表す伝達特性を選択する伝達特性選択手段と、前記タイヤ車軸力予測手段により予測されたタイヤ車軸力と、前記伝達特性選択手段により選択された伝達特性とに基づいて、間接音成分の車室内騒音を予測する間接音成分予測手段と、境界要素法により車外騒音を予測する車外騒音予測手段と、車外騒音が車室内に入るときの車体の遮音特性を選択する遮音特性選択手段と、前記車外騒音予測手段により予測された車外騒音と、前記遮音特性選択手段により選択された遮音特性とに基づいて、直接音成分の車室内騒音を予測する直接音成分予測手段と、前記間接音成分予測手段により予測された間接音成分の車室内騒音と、前記直接音成分予測手段により予測された直接音成分の車室内騒音とに基づいて、車室内騒音を予測する予測手段と、を備えている。
【0014】
請求項に記載の発明は、有限要素法によりタイヤ車軸力を予測し、タイヤ車軸力が車体を伝達する特性を表す伝達特性を選択し、前記予測されたタイヤ車軸力と、前記選択された伝達特性とに基づいて、間接音成分の車室内騒音を予測し、境界要素法により車外騒音を予測し、車外騒音が車室内に入るときの車体の遮音特性を選択し、前記予測された車外騒音と、前記選択された遮音特性とに基づいて、直接音成分の車室内騒音を予測し、前記予測された間接音成分の車室内騒音と、前記予測された直接音成分の車室内騒音とに基づいて、車室内騒音を予測する。
【0015】
請求項およびに記載の発明によれば、有限要素法によりタイヤ車軸力を予測し、予測されたタイヤ車軸力と、タイヤ車軸力が車体を伝達する特性を表す伝達特性とに基づいて、タイヤ車軸力が車体を伝達することによって車室内に入ったときの間接音成分の車室内騒音を予測し、さらに、境界要素法により予測された車外騒音と、車外騒音が車室内に入るときの車体の遮音特性とに基づいて、車外騒音が空気を伝播して車室内に入ったときの直接音成分の車室内騒音を予測することにより、直接音成分及び間接音成分の車室内騒音から総合的な車室内騒音を予測することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る騒音予測装置の構成を示す図である。騒音予測装置は、オペレータの操作に応じた情報を入力するキーボード1と、ポインティングデバイス2と、処理状況やシミュレーション結果等を表示するディスプレイ3と、シミュレーションを実行するコンピュータ10と、を備えている。
【0018】
ここで、コンピュータ10は、プログラムが記憶されたROM11と、プログラムに従って演算処理を実行するCPU12と、データのワークエリアであるRAM13と、を備えている。ROM11、CPU12、RAM13は、互いにバスを介して接続されている。
【0019】
さらに、コンピュータ10は、シミュレーションプログラムや所定のモデル等を記憶する記憶装置14と、キーボード1、ポインティングデバイス2、ディスプレイ3及び記憶装置14のインタフェースである入出力ポート15と、を備えている。
【0020】
記憶装置14には、騒音シミュレーションプログラムが予め記憶されている。騒音シミュレーションプログラムは、予め記憶装置14に記憶されたものに限らず、例えば、図示しない外部記憶媒体を介して入力されたものであってもよいし、図示しないネットワークを介して外部から送信されたものであってもよい。なお、記憶装置14は、例えばハードディスクドライブ等の内部記憶装置でもよいし、フレキシブルディスクドライブ、光ディスクドライブ、光磁気ディスクドライブ等の外部記憶装置であってもよい。
【0021】
また、記憶装置14には、タイヤの種類に応じて各々複数個作成されたタイヤ本体モデル及びトレッドパターンモデルから構成された複数のタイヤモデルが記憶されている。
【0022】
図2は、有限要素法で表されたタイヤモデル20を示す図である。タイヤモデル20は、タイヤ本体モデル22とトレッドパターンモデル24とを結合することにより作成されている。タイヤ本体モデル22及びトレッドパターンモデル24は、複数の陸部からなるパターンを備えたパターン付きタイヤを、タイヤ本体とトレッドパターン部とに分割し、タイヤ本体及びトレッドパターン部各々を多数要素に分割した有限要素で表すことにより作成されている。
【0023】
さらに、記憶装置14には、複数種類のタイヤホイールの各々を多数要素に分割して作成した複数のホイールモデル、複数種類のサスペンションの各々を多数要素に分割して作成した複数のサスペンションモデル、複数種類の車体の各々を多数要素に分割して作成した複数の車体モデル、複数の車両の機構解析モデル、複数のサスペンションの機構解析モデルも同様に記憶されている。
【0024】
図3は、騒音シミュレーションプログラムに従ってコンピュータ10が騒音シミュレーションを実行するときのメインルーチン処理を説明するフローチャートである。
【0025】
ステップST1では、オペレータから入力されたデータに基づいて、複数の路面モデルから1つの路面モデルを選択する。ここで、路面は、ミクロ的に観察すると多数の凹凸を有するので、面状に複数間隔配置された突起の集合体として定義できる。もちろん、路面形状をそのまま形取りしたような3次元モデルでもよい。
【0026】
図4は、長方形の突起を用いて路面をモデル化した路面モデルを示す図である。突起102、104、106の高さ及び長さは一定ではない。したがって、タイヤと各突起102、104、106とが接触した場合、タイヤへの入力の大きさも当然一定ではない。そこで、各突起102、104、106ごとに、タイヤへの入力の大きさは定量的に求められている。そして、このように構成された複数の路面モデルから1つの路面モデルが選択されると、ステップST2に移行する。
【0027】
ステップST2では、オペレータから入力されたデータに基づいて、記憶装置14に記憶されている複数のタイヤ本体モデル22から、性能を解析する1つのタイヤ本体モデル22を選択して、ステップST3に移行する。
【0028】
ステップST3では、ステップST2で選択されたタイヤ本体モデル22に対応するトレッドパターンモデル24を1つ選択して、ステップST4に移行する。
【0029】
ステップST4では、オペレータから入力されたデータに基づいて、タイヤを組付けるホイールモデルを1つ同様に選択して、ステップST5に移行する。
【0030】
ステップST5では、解析対象モデルを作成する。具体的には最初に、タイヤホイール組付体を取り付けるための取付対象モデルを1つ同様に選択する。取付対象モデルとしては、サスペンションモデル、サスペンションモデル及び車体モデルの2モデル、車両の機構解析モデル、及びサスペンションの機構解析モデルのいずれか1つ等とすることができる。
【0031】
次に、ステップST2で選択されたタイヤ本体モデルと、ステップST3で選択されたドレッドパターンモデルとを結合してタイヤモデルを作成する。さらに、作成したタイヤモデルに対して、ステップST4で選択されたホイールモデルを結合してタイヤホイール組付モデルを作成する。
【0032】
そして、このように作成されたタイヤホイール組付モデルと、上述の取付対象モデルとを結合することで、解析対象モデルを作成して、ステップST6に移行する。なお、解析対象モデルとしては、次のようなものがある。
【0033】
図5は、車体モデル、サスペンションモデル、及びタイヤホイール組付体モデルの3つのモデルを結合した解析対象モデルを示す図である。図6は、車体モデル無し(ボディー無し)で、サスペンションモデルとタイヤホイール組付体モデルとを結合した解析対象モデルを示す図である。図7は、車両を表す機構解析モデルとタイヤホイール組付体モデルとを結合した解析対象モデルを示す図である。図8は、車体モデル無しで、サスペンションを表す機構解析モデルとタイヤホイール組付体モデルとを結合した解析対象モデルを示す図である。
【0034】
さらに、解析対象モデルとしては、タイヤが回転のみ可能軸並進拘束としたベアリングモデル(サスペンションモデルの一種)とタイヤホイールモデルを結合したモデル、剛体ホイールモデルを組付けたタイヤホイールモデルとサスペンションモデルとを結合したモデル、車両を表す機構解析モデルとタイヤホイール組付体モデルとを結合したモデル、サスペンションを表す機構解析モデル、車体モデル、及びタイヤホイール組付体モデルの3つのモデルを結合したモデル、車両を表す機構解析モデルとタイヤホイール組付体モデルとを結合したモデルを使用することもできる。
【0035】
ステップST6では、予め定められた解析プログラムに従って、有限要素法(FEM)により、解析シミュレーションを行い、タイヤ車軸力(上記取付対象モデルがタイヤホイールモデルから受ける力)、タイヤ車軸変位ベクトル{Ui}、タイヤ形状、及びタイヤ表面振動のデータ等を取得して、ステップST7に移行する。
【0036】
ステップST7では、タイヤ車軸力、タイヤ形状及びタイヤ表面振動を用いて、直接音成分及び間接音成分の車室内騒音をそれぞれ予測して、ステップST8に移行する。ここで、直接音成分の車室内騒音とは、空気中をそのまま伝播して車室内に入った騒音をいう。間接音成分の車室内騒音とは、タイヤ車軸力が車体を伝達することによって車室内に入った騒音をいう。ステップST7における具体的な処理についてはそれぞれ次の通りである。
【0037】
図9は、ステップST7における直接音成分の車室内騒音を予測するサブルーチン処理を説明するフローチャートである。
【0038】
ステップST11では、オペレータから入力されたデータに基づいて、複数の車両表面形状モデルから1つの車両表面形状モデルを選択して、ステップST12に移行する。
【0039】
ステップST12では、解析対象モデルを作成して、ステップST13に移行する。具体的には、車両表面形状モデルと、ステップST6で取得されたタイヤ形状とを組み合わせる。
【0040】
ステップST13では、ステップST6で取得されたタイヤ表面振動と、ステップST12で作成された解析対象モデルとを用いて、境界要素法(BEM)によりシミュレーションを実行する。そして、シミュレーションの結果から車外騒音(直接音)を予測して、ステップST14に移行する。
【0041】
ステップST14では、オペレータから入力されたデータに基づいて、複数の車体の遮音特性(透過損失)から1つの車体の遮音特性を選択して、ステップST15に移行する。
【0042】
ステップST15では、ステップST13において予測された車外騒音と、ステップST14において選択された車体の遮音特性との合成計算を実行して、直接音成分の車室内騒音を予測した後、リターンする。
【0043】
このように、騒音予測装置は、BEMによりシミュレーションを実行して車外騒音を予測し、車体の遮音特性を考慮して、予測した車外騒音による車室内騒音(直接音成分)を予測することができる。
【0044】
図10は、ステップST7における間接音成分の車室内騒音を予測するサブルーチン処理を説明するフローチャートである。
【0045】
ステップST21では、車両の伝達特性を選択する。具体的には、後述する伝達関数ベクトルを1つ選択する。
【0046】
ここでは、最初に、車両の伝達特性と間接音成分の車室内騒音の関係、具体的には、装着しているタイヤの特性を一部含む特性を用いることで、間接音成分の車室内騒音を求めることができる原理を説明する。
【0047】
なお、説明を簡単にするため、車輛の1輪のみが凹凸路面上を走行しているときに発生する仮想的な車室内騒音について考える。この理由は、ロードノイズのようなランダムな路面入力による車室内騒音については、各車輪からの路面入力は互いに相関が小さく、4輪全部による車室内騒音はそれぞれ1輪からの寄与の和(パワー加算)で与えられるとみなすことができるからである。このことは、室内ドラム試験機に4輪を装着した車輛を1輪ずつ搭載して行なった実験で近似的に成り立つことを発明者らは確認している。また、説明を簡単にするため、加振力を加える方向は直交3軸(X=車輛前後方向,Y=車輛左右方向,Z=車輛上下方向)とした。
【0048】
車輛のみの特性として、タイヤを装着していない車輛の車軸の駆動点動剛性行列をK(S)=[Kij (S)](ただし、i,j=X,Y,Z)、同じくタイヤを装着していない車輛の車軸の変位から車室内騒音への伝達関数ベクトルを{Si }(ただし、i=X,Y,Z)、タイヤ側のみの特性としてタイヤの接地点が固定でかつ軸が自由の時の軸側駆動点動剛性行列をK(22)=[Kij (22)](ただし、i,j=X,Y,Z)、同じくタイヤのみの特性として軸が固定でかつ接地点を加振した時の伝達動剛性行列をK(21)=[Kij (21)](ただし、i,j=X,Y,Z)とし、路面凹凸によるタイヤ接地点への等価変位入力ベクトルを{Xi (1)}(ただし、i=X,Y,Z)とする。伝達関数合成法によれば、凹凸路面走行時の車室内騒音は次の(1)式で与えられる。ただし、Tは転置を表す。
【0049】
【数1】
Figure 0004087193
一方、車輛側の伝達関数としてのタイヤ装着時の車軸を加振したときの車軸加振力から車室内騒音への伝達関数ベクトルを{Gi}(ただし、i=X,Y,Z)とし、タイヤ側の特性としての軸固定状態でドラム試験機上で騒音予測タイヤを走行させたときのタイヤ車軸力ベクトルを{Fi}(ただし、i=X,Y,Z)とすると、上記と同様に伝達関数合成法から次の(2)及び(3)式を導くことができる。
【0050】
【数2】
Figure 0004087193
ここで、(1)式から(3)式によって次の(4)式が成り立つ。
【0051】
【数3】
Figure 0004087193
このように、伝達関数ベクトル{Gi}及びタイヤ車軸力ベクトル{Fi}を用いることによって、車室内騒音を求めることができる。
【0052】
ここで、(4)式を成分に展開すると、(5)式となる。
【0053】
【数4】
Figure 0004087193
(4)式から車室内騒音のパワースペクトルを求めるには、共役複素量を乗算して(4)式の絶対値の2乗を演算し、その時間平均を計算すればよい。
【0054】
【数5】
Figure 0004087193
(6)式の「*」は共役複素量を意味する。これを展開して整理すると次の(7)式ようになる。
【0055】
【数6】
Figure 0004087193
なお、(7)式のRe( )は、( )内の複素数の実数部を意味する。
【0056】
したがって、伝達関数合成法によって、車輛側の伝達関数とタイヤ車軸力の所定方向に関連するパワースペクトルとを周波数領域において方向別に乗算し加え合わせることで、具体的には車輛側の伝達関数とタイヤ車軸力のパワースペクトルとをそれぞれ対応する方向に乗算して加え合せることにより、1輪が粗い舖装路等の凹凸を持つ路面を走行したときの車室内騒音のオートパワースペクトルを再現することができる。また、4輪全部による車室内騒音は、各1輪からのオートパワースペクトルを加算することで求めることができる。
【0057】
そして、上述したような伝達関数ベクトル{Gi}を1つ選択した後、ステップST22に移行する。
【0058】
ステップST22では、ステップST6で求められたタイヤ車軸力ベクトル{Fi}と、ステップST21で選択された伝達関数ベクトル{Gi}とを用いて、上述した(7)式に従って合成計算をすることで、間接音成分の車室内騒音を予測した後、リターンする。
【0059】
また、簡易的に、タイヤ装着時の車軸を加振したときの車軸変位から車室内騒音への伝達関数ベクトル{Hi}と、ステップST6で求められたタイヤ車軸変位ベクトル{Ui}とを用いて合成計算し、間接音成分の車室内騒音を予測することもできる。
【0060】
このように、本実施の形態に係る騒音予測装置は、FEMモデルによりシミュレーションを実行してタイヤ車軸力を予測し、予測したタイヤ車軸力と車両の伝達特性とに基づいて、間接音成分の車室内騒音を予測することができる。
【0061】
そして、上述した直接音成分及び間接音成分のサブルーチン処理を終了するとステップST7の処理が終了して、ステップST8に移行する。
【0062】
ステップST8では、直接音成分及び間接音成分の車室内騒音の合計計算を実行し、直接音成分及び間接音成分を考慮した総合的な車室内騒音を予測して、処理を終了する。
【0063】
以上のように、本実施の形態に係る騒音予測装置は、直接音成分及び間接音成分の車室内騒音をそれぞれ予測し、直接音成分及び間接音成分を考慮した総合的な車室内騒音を予測することができる。さらに、各周波数帯において、直接音成分と間接音成分の割合が明確になるので、車室内騒音を低減するためのタイヤ/車両の改良方針を明らかにすることができる。
【0064】
また、上記騒音予測装置は、車系を伝達関数/遮音特性の形で表現することができるので、適時実験値を使用することも可能であり、これにより車系をすべてモデル化する必要がなく、コストを抑制することができる。さらに、上記騒音予測装置は、車系とタイヤ系とを分離しているので、タイヤ系のみ又は車系のみを変更して解析することができ、コストを抑制することができる。
【0065】
【実施例】
以下、車室内騒音の実測値と予測値の比較結果を説明するが、本発明はこの結果に限定されるものではない。
【0066】
195/65R14のタイヤと14−6JJのアルミリムを用い、空気圧200kpaになるまで空気を充填し、実車実走による車室内音測定結果を予測した。なお、車内音測定条件の詳細な内容としては、2000ccクラスの乗用車に2名相当が乗車した。乗用車は車速50km/hでアスファルト路を走行し、ドライバの耳元で騒音を測定した。
【0067】
(比較例1)
アスファルトを模擬した路面モデルを用い、ホイールモデルとタイヤモデルを組合せ、タイヤ単体で解析できるベアリングモデルに取り付けて解析した。そして、得られたタイヤ車軸力と実測に用いた車両の伝達特性(実測)から車室内騒音(間接音成分)を予測した。さらに、得られたタイヤ表面速度とタイヤ形状、車両の形状から車外騒音を予測し、この結果と車両の遮音特性(実測)から車室内騒音(直接音成分)を予測した。最終的に間接音成分と直接音成分を合わせた車室内騒音を予測した。
【0068】
表1に、実測の車室内騒音の各帯域値をそれぞれ基準とし、当該実施例1の予測値との差を比較した結果を示す。
【0069】
【表1】
Figure 0004087193
表1によると実測値と予測値の差は比較的小さく、予測値は車室内騒音の傾向を捉えていることが分かった。
【0070】
(比較例2)
アスファルトを模擬した路面モデルを用い、ホイールモデルとタイヤモデルを組合せ、車体モデル無しで、サスペンションモデルと結合したシミュレーションを実施した。そして、得られたタイヤ車軸変位と実測に用いた車両の伝達特性(実測)から車室内騒音(間接音成分)を予測した。さらに、得られたタイヤ表面速度とタイヤ形状、車両の形状から車外騒音を予測し、この結果と車両の遮音特性(実測)から車室内騒音(直接音成分)を予測した。最終的に間接音成分と直接音成分を合わせた車室内騒音を予測した。
【0071】
表2に、実測の車室内騒音の各帯域値をそれぞれ基準とし、当該実施例2の予測値との差を比較した結果を示す。
【0072】
【表2】
Figure 0004087193
表2によると実測値と予測値の差は比較的小さく、予測値は車室内騒音の傾向を捉えていることが分かった。
【0073】
【発明の効果】
本発明に係る騒音予測装置及び方法は、有限要素法によりタイヤ車軸力を予測し、予測されたタイヤ車軸力と、タイヤ車軸力が車体を伝達する特性を表す伝達特性とに基づいて、間接音成分の車室内騒音を予測することにより、タイヤ車軸力が車体を伝達することによって車室内に入ったときの車室内騒音を精度よく予測することができる。
【0074】
本発明に係る騒音予測装置及び方法は、境界要素法により予測された車外騒音と、車外騒音が車室内に入るときの車体の遮音特性とに基づいて、直接音成分の車室内騒音を予測することにより、車外騒音が空気を伝播して車室内に入ったときの車室内騒音を精度よく予測することができる。
【0075】
本発明に係る騒音予測装置及び方法は、タイヤ車軸力が車体を伝達することによって車室内に入ったときの間接音成分の車室内騒音を予測し、さらに、車外騒音が空気を伝播して車室内に入ったときの直接音成分の車室内騒音を予測することで、直接音成分及び間接音成分の車室内騒音から総合的な車室内騒音を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る騒音予測装置の構成を示す図である。
【図2】有限要素法で表されたタイヤモデルを示す図である。
【図3】騒音シミュレーションプログラムに従ってコンピュータが騒音シミュレーションを実行するときのメインルーチン処理を説明するフローチャートである。
【図4】長方形の突起を用いて路面をモデル化した路面モデルを示す図である。
【図5】車体モデル、サスペンションモデル、及びタイヤホイール組付体モデルの3つのモデルを結合した解析対象モデルを示す図である。
【図6】車体モデル無し(ボディー無し)で、サスペンションモデルとタイヤホイール組付体モデルとを結合した解析対象モデルを示す図である。
【図7】車両を表す機構解析モデルとタイヤホイール組付体モデルとを結合した解析対象モデルを示す図である。
【図8】車体モデル無しで、サスペンションを表す機構解析モデルとタイヤホイール組付体モデルとを結合した解析対象モデルを示す図である。
【図9】ステップST7における直接音成分の車室内騒音を予測するサブルーチン処理を説明するフローチャートである。
【図10】ステップST7における間接音成分の車室内騒音を予測するサブルーチン処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 キーボード
2 ポインティングデバイス
3 ディスプレイ
10 コンピュータ
11 ROM
12 CPU
13 RAM
14 記憶装置
20 タイヤモデル
22 タイヤ本体モデル
24 トレッドパターンモデル

Claims (2)

  1. 有限要素法によりタイヤ車軸力を予測するタイヤ車軸力予測手段と、
    タイヤ車軸力が車体を伝達する特性を表す伝達特性を選択する伝達特性選択手段と、
    前記タイヤ車軸力予測手段により予測されたタイヤ車軸力と、前記伝達特性選択手段により選択された伝達特性とに基づいて、間接音成分の車室内騒音を予測する間接音成分予測手段と、
    境界要素法により車外騒音を予測する車外騒音予測手段と、
    車外騒音が車室内に入るときの車体の遮音特性を選択する遮音特性選択手段と、
    前記車外騒音予測手段により予測された車外騒音と、前記遮音特性選択手段により選択された遮音特性とに基づいて、直接音成分の車室内騒音を予測する直接音成分予測手段と、
    前記間接音成分予測手段により予測された間接音成分の車室内騒音と、前記直接音成分予測手段により予測された直接音成分の車室内騒音とに基づいて、車室内騒音を予測する予測手段と、
    を備えた騒音予測装置。
  2. 有限要素法によりタイヤ車軸力を予測し、タイヤ車軸力が車体を伝達する特性を表す伝達特性を選択し、前記予測されたタイヤ車軸力と、前記選択された伝達特性とに基づいて、間接音成分の車室内騒音を予測し、
    境界要素法により車外騒音を予測し、車外騒音が車室内に入るときの車体の遮音特性を選択し、前記予測された車外騒音と、前記選択された遮音特性とに基づいて、直接音成分の車室内騒音を予測し、
    前記予測された間接音成分の車室内騒音と、前記予測された直接音成分の車室内騒音とに基づいて、車室内騒音を予測する
    騒音予測方法。
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