JP4884449B2 - 薬剤揮散装置 - Google Patents
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Description
また、第2発明は、第1発明の揮散性薬剤の漏れ防止に有効な揮散性薬剤に関する。
そして、第3発明は、第1発明の揮散性薬剤の光及び/又は紫外線劣化を防止するのに有効な光・紫外線安定化剤に関する。
従来、例えばネット状の薬剤保持体に含まれる揮散性薬剤を雰囲気中に揮散させる装置としては、図9に示すように、揮散性薬剤が含浸された薬剤保持体105を、チャンバ106内に収納保持した装置100等が知られている(例えば、特許文献1参照)。この薬剤保持体105は、枠体101と、この枠体101の中央に配置された板状の中央部102と、この中央部102から枠体に延びる桟103と、枠体101と中央部102と桟と103により区画される開口部に架け渡されたネット状部材104とを有しており、例えば製造時において、この枠体101の中央部102の一方の平面に揮散性薬剤が滴下(供給)されることで、中央部102及び桟103を通じてネット状部材104に揮散性薬剤が含浸される。
また、従来、いわゆる殺虫マットなるマット状製剤が知られていた。
この製剤は、これを製造するに当たりマットの中心部にノズルから薬液を滴下していた。この際薬液には、殺虫成分を均一にマット中に浸透させるためにピペロニルブトキサイドを配合していた。ところで最近になって薬液を通気性シートに滴下して製造する送風式薬剤カートリッジが知られるようになってきた。そして薬剤カートリッジは、気体が通過する孔の断面積が大きいものは、薬液を滴下させたときに、該液が該保持材を通過して下に垂れてしまうので、このため薬液を滴下させたときに保持材の下に受け皿等を設けて薬液を損失しないようにしていた。
しかしながら、かかる受け皿にはその大きさを大きくできない製造上の制約が自ずとあるため、どうしても受けきらない量の薬液が滴下されたときには、殺虫成分の特定溶媒が配合された薬液では受け皿から薬液が溢れてしまい、薬剤カートリッジをうまく製造することができなかった。
また、従来、シクロプロパンカルボン酸誘導体は、熱や光、更に酸素による酸化等により安定性が悪いため、シクロプロパンカルボン酸誘導体自体、より安定な誘導体としての合成が検討される一方シクロプロパンカルボン酸誘導体を有効成分とする組成物中のその化合物を安定化するために、該組成物に酸化防止剤等の化合物を添加したり、該組成物を冷暗所に貯蔵したり、該組成物を密封状態にするパッケージに入れたり、シクロプロパンカルボン酸誘導体をマイクロカプセルに封入した剤型にすることがなされ、各種薬剤組成物としても使用されていた。例えば、シクロプロパンカルボン酸誘導体自体に紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系誘導体、トリアゾール系誘導体、置換アクリロニトリル系化合物、立体障害アミン等の添加(特開昭59−39807号を参照)が知られている。
ところで、通常、ネット状部材を有した薬剤保持体(ネット状の薬剤保持体)に揮散性薬剤を保持させる場合、揮散性薬剤をネット状部材に直接滴下すると揮散性薬剤がネット状部材を通過して垂れてしまい、ネット状部材に効率よく薬剤を含浸・拡散させることができない問題があった。
また、通風性基材(薬剤保持体)に薬液を滴下して蒸散材を製造する際に、受け皿の大きさによっては、滴下した薬液を多くしたり、振動などが加わると滴下した薬液が受け皿からあふれてしまい、したがって通風性基材に薬液を効率よく拡散・含浸させることができないことがあった。第2発明はこれらの課題を解決するもので、受け皿の大きさが小さくても、滴下した薬液を多くしても、振動などが加わっても、滴下した薬液が受け皿からあふれることのない、したがって通風性基材(薬剤保持体)に薬液を効率よく拡散・含浸させることができるようにすることを第2の課題とする。
また、前記のシクロプロパンカルボン酸誘導体自体に紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系誘導体、トリアゾール系誘導体、置換アクリロニトリル系化合物、立体障害アミン等を添加した従来知られている紫外線吸収剤(後述する表3の比較例2および3参照)では十分な安定化効果が得られず、コスト的にも満足できるものではなかった。
そこで、第3発明は大きな光量を受け、特に紫外線に曝されるような場所であっても、シクロプロパンカルボン酸誘導体の安定性を高め、かつそれにより効力の持続性を大きくすることができる安定化剤を提供することを第3の課題とするものである。
前述した第1の課題は、下記の構成により達成される。
(1) 揮散性薬剤を保持するための薬剤保持体と、前記薬剤保持体を表側と裏側からそれぞれ挟んで保持する表容器および裏容器、を備えた薬剤揮散装置において、
前記表容器および前記裏容器はそれぞれ揮散口を有しており、
前記表容器には前記裏容器側に皿形状部が形成され、前記皿形状部の底板部には貫通孔が少なくとも1つ設けられ、
前記裏容器には前記底板部と対向する平板部が設けられており、
前記薬剤保持体を挟んで前記表容器と前記裏容器を合体した状態で、前記薬剤保持体は前記表容器の前記皿形状部の前記底板部と前記裏容器の前記平板部の間に挟まれ、
前記揮散性薬剤を前記皿形状部に供給することにより、前記揮散性薬剤が前記貫通孔を通って前記薬剤保持体に拡散・含浸して、前記薬剤保持体が薬剤を保持するようになることを特徴とする薬剤揮散装置。
(2) 前記貫通孔が複数ある場合は、前記皿形状部の前記底部の縁部近傍に、周方向にわたって略等間隔に配設されていることを特徴とする上記(1)の薬剤揮散装置。
(3) 使用時に前記薬剤揮散装置を所定の設置箇所に保持するため、着脱自在な保持手段を更に備えることを特徴とする上記(1)又は(2)の薬剤揮散装置。
(4) 前記保持手段は、略コ字形状の板部材により形成されており、そして当該板部材の互いに対向する側板部の中央部各々には、スリットを介して折り曲げ自在なスタンド用片が設けられていることを特徴とする上記(3)の薬剤揮散装置。
拡散・含浸されていくことになる。したがって、ネット状の薬剤保持体に揮散性薬剤を効率良く多量に拡散・含浸させることができるので、害虫防除効果の向上を図ることができる。加えて製造時等の揮散性薬剤の供給効率を高めることができる。なお、皿形状部の内径は約10〜20mmが好適である。また貫通孔の径は約1〜3mm、そして、その個数は4〜8個が好適である。なお、皿形状部内の面積が、約75〜350mm2程度であれば、皿形状は円形に限られず各種形状にすることができる。
上記(2)の構成によれば、複数の貫通孔が皿形状部の底部の縁部近傍に、周方向にわたって略等間隔に配設されているので、底部の中央部に設けた場合と比較して、貫通孔を介した薬剤保持体への供給量と薬剤保持体の挟持部分を介した薬剤保持体全体への含浸量とのバランスを適切に調整することができ、揮散性薬剤の垂れを防止して、ネット状の薬剤保持体に揮散性薬剤をさらに効率良く拡散・含浸させることができる。また、製造時等、揮散性薬剤の垂れを防止することができるので、無駄を防止することができて供給効率を高めることができる。
上記(3)の構成によれば、着脱自在な保持手段を更に備えることにより、薬剤揮散装置が必要とされる設置箇所(例えば、屋外、トイレ等)に適宜設置することができて、取扱性の向上を図ることができる。
上記(4)の構成によれば、保持手段が略コ字形状の板部材により形成され、且つこの板部材の互いに対向する側板部の中央部各々には、スリットを介して折り曲げ自在なスタンド用片が設けられているので、この保持手段は所謂ハンガーとしてぶら下げて用いたり、或いは薬剤揮散装置から取り外してから所謂スタンドとしてテーブルや机等に立てたりして用いることができて、さらに取扱性の向上を図ることができる。
この中でも、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリンがよく、これらを組み合わせたもの、特にメトフルトリン、プロフルトリンを併用するのがよい。
ここで、香料、精油としては、例えば、リナロール、α―ピネン、β−ピネン、リモネン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、ヒノキオイル、月桃オイル、ヒバオイル、スペアミントオイル、バジルオイル、バラオイル、ジャスミンオイル、ユーカリオイル、キュベバオイル、ハッカオイル、オレンジオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイル、ライムオイル、ペチバーオイル、レモングラスオイル、ローズマリーオイル、ラベンダーオイル、イランイランオイル、ティートリーオイル、ボアドローズオイル、マジョラムオイル、ホップオイル、シソオイル、ベルガモットオイル、ゼラニウムオイル、ニ
ームオイル、防虫菊オイル、カモミールオイル、等を例示することができる。
前述した第2の課題を解決するため、第2発明は前記揮散性薬剤が、さらに、無機粉が含有された組成物を含むことを特徴としている。これにより、揮散性薬剤が薬剤保持体に拡散して含浸し、無機粉が揮散性薬剤供給手段に留まるようになる。
前述した第3の課題を解決するため、前記揮散性薬剤が、さらに、常温液状のアルカン又はシクロアルカンを安定化作用成分として含むシクロプロパンカルボン酸誘導体の光・紫外線安定化剤を含むことを特徴とするものである。
第1発明によれば、ネット状の薬剤保持体に揮散性薬剤を効率良く多量に拡散・含浸させて、害虫防除効果等の向上を図ると共に、加えて製造時等の揮散性薬剤の供給効率を高めることができる薬剤揮散装置を提供することができる。
第2発明によれば、通風性基材に薬液を滴下して蒸散材を製造する際に、受け皿の大きさはそのままでも、無機粉により粘性が高くなっているので振動が生じても滴下した薬液が受け皿から漏れ出にくくなり、しかも揮散性薬剤は通風性基材に薬液を極めて効率よくもれなく拡散・含浸させることができるようになる。
第3発明によれば、安定化剤として常温液状のアルカン又はシクロアルカンを選択することにより、シクロプロパンカルボン酸誘導体を安定化せしめ、特に光や紫外線に対する安定性を大きくし、その組成物を光や紫外線に曝露された窓ガラス等の表面に塗布して大きな光量を受けても、シクロプロパンカルボン酸誘導体の安定性を高めてかつそれにより効力の持続性を大きくすることができる安定化剤が得られ、したがってまた、紫外線に曝されるような場所であっても性能が安定した薬剤揮散装置が得られる。
第3発明の安定化方法としては、常温液状のアルカン又はシクロアルカンをシクロプロパンカルボン酸誘導体に添加することにより上記の効果を有するようになる。
〈第1発明を実施するための最良の形態〉
図1〜図5は第1発明に係る薬剤揮散装置の一実施形態を示すものであり、図1は本発明の一実施形態に係る薬剤揮散装置の分解斜視図であり、図2は図1の薬剤揮散装置の組立後の外観斜視図であり、図3は図1の薬剤揮散装置の使用例を説明する外観斜視図であり、図4は揮散性薬剤供給部の断面図であり、図5は第1の揮散性薬剤供給部の周りの正面図である。
なお、今回開示される実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。第1発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
即ち、これら表供給部19a、19bは、その略コ字形状の端部で前方揮散口17の縁部をそれぞれ上下方向で架け渡すように表容器11の内方に屈曲した状態で形成されており、またその底板部それぞれには、皿形状部20a、20bが形成されている。
即ち、これら裏供給部24a、24bは、その略コ字形状の端部で後方揮散口23の縁部をそれぞれ上下方向で架け渡すように裏容器12の内方に屈曲した状態で形成されており、またその底板部それぞれには、平板部25a、25bが形成されている。
なお、薬剤保持体13として、ネット状部材に代えて、浸透性のある紙材や不織布を用いて板形状に形成したものも適用できる。
なお、表容器11及び裏容器12それぞれの両側部には、4(2+2)箇所の切欠が合体時に互いに対向するようにそれぞれ設けられているので、その合体時に、周板16、22の上方側に一対の保持部材取付孔26が互いに対向する位置で形成されることになる。
このため、保持部材取付孔26に、保持部材14が着脱自在に取り付けられ得る。
なお、保持部材14は、コ字形状に代えて、単純なU字形状に形成されても良い。
一方、裏供給部24a、24bの底板部には前述したような段部又は貫通孔は設けられておらず、そのまま平板部25a、25bとして形成されている。
なお、図4は両揮散性薬剤供給部18a、18bの断面を示し、図5はそのうち第1の揮散性薬剤供給部18aを示している。
なお、揮散性薬剤供給部は、上述した上下一対に限らず、複数個所(例えば4隅部)に更に設けられてもよい。
性の向上を図ることができる。
以下に示すように、第1発明に係る皿形状部20a、20bの底部に複数の貫通孔を有した2種類の薬剤揮散装置(実施例1、2)と、皿形状部20a、20bの底部に1つの貫通孔を有した薬剤揮散装置(比較例1)、皿形状部20a、20bを有していない薬剤揮散装置(比較例2)と、を用意し、これら揮散性薬剤供給部18a、18bそれぞれに、140μLの揮散性薬剤{組成:メトフルトリン(150mg)、プロフルトリン(100mg)、流動パラフィン(100mg)}を注入し、注入直後と注入後(24時間後)とにおける、薬剤揮散装置の内部及び外部における垂れ量を測定した。この試験結果を表1に示す。
(本試験のため用意された薬剤揮散装置)
なお、下記に示す揮散性薬剤供給部18a,18bの皿形状部20a,20bはいずれも約1mmの深さに設定されている。
[実施例1]:揮散性薬剤供給部18a,18bの皿形状部20a,20bの底部の縁部近傍に4個の貫通孔32(径:2mm)を円周方向に等間隔に設けたもの(図5参照)
[実施例2]:揮散性薬剤供給部18a,18bの皿形状部20a,20bの底部の縁部近傍に6個と、底の中央に1個、との計7個の貫通孔52(径:2mm)が設けられたもの(図7参照)
[比較例1]:揮散性薬剤供給部18a,18bの皿形状部20a,20bの底部中央に単一の貫通孔51(径:2mm)が設けられたもの(図6参照)
[比較例2]:図8に示すように、揮散性薬剤供給部18a,18bに皿形状部が設けられず、そのまま円形状の貫通孔53(径:13mm)が設けられたもの(図8参照)
これに対して、実施例1、実施例2、比較例1は、いずれも垂れが発生しなかった。しかしながら、比較例1は、揮散性薬剤の垂れは認められなかったものの、揮散性薬剤の薬剤保持体への拡散・含浸が不十分であり、皿形状部20a、20bに揮散性薬剤の多くが貯留されたままであった。これは、皿形状部20a、20bの周縁近傍の内周面における
揮散性薬剤の液保持力が依然として高い状態のままであり、貫通孔51を介した薬剤保持体13への供給が不十分になったためだと推測される。一方、底部の周縁部に貫通孔32、52が設けられる実施例1及び実施例2は、その位置によりその液保持力の影響を受けないので薬剤保持体13への供給が十分になったものと推測される。
なお、所定時間後に両容器11、12を開放して薬剤保持体13への揮散性薬剤の拡散性・含浸性を調べたところ、事実、実施例1、実施例2が、比較例1と比べて、薬剤保持体13への薬剤の拡散性・含浸性が良好であり、ネット状の薬剤含浸体に効率よく拡散していることがわかった。
また、第1発明に係る揮散性薬剤の処方としては以下のものが挙げられる。
[処方例1]
メトフルトリン 150mg
トランスフルトリン 50mg
流動パラフィン 100mg
[処方例2]
メトフルトリン 50mg
プロフルトリン 100mg
流動パラフィン 300mg
無水ケイ酸 9mg
[処方例3]
エムペンスリン 100mg
プロフルトリン 50mg
流動パラフィン 100mg
[処方例4]
ローズマリーオイル 100mg
流動パラフィン 50mg
[処方例5]
緑茶抽出物 0.1mg
柿抽出液 50mg
エタノール 30mg
[処方例6]
ラウリルメタアクリレート 50mg
エタノール 30mg
例えば、前述した実施形態では、V字状をなす揮散口17,23を複数有する樹脂材料の容器11,12として説明したが、本発明に係る容器は通気性を有する揮散口が設けられていればよく、例えば全体又は一部が格子状(ネット状を含む)に形成したものでもよく、この場合には、人(特に幼児)の指と薬剤保持体13との接触をより確実に防止することができてよい。さらに、容器11,12の前面、後面に揮散口17,23を設けたが、薬剤保持体13が外れないように、例えばその周壁等に更に設けるようにしてもよい。
また、前述した実施形態では、着脱自在の保持部材14を備える構成としたが、これに限らず、容器11,12の周壁、容器11,12の前面・後面に、揮散口を塞がないように、例えば貼付粘着剤、クリップ等の装置支持部を取り付けるように構成してもよい。
第2発明は組成物に係り、揮散性薬剤と共に、薬剤保持体に該揮散性薬剤を拡散・含浸させるために漏れ防止として無機粉が含有されたことを特徴としている。
そして、その組成物を請求項1記載の薬剤揮散装置の揮散性薬剤供給手段に供給することにより、揮散性薬剤が薬剤保持体に拡散して含浸し、無機粉が揮散性薬剤供給手段に留まるようになることを特徴としている。
ここで「揮散性薬剤供給手段」とは「薬液を受けるための手段(皿、トレー、シャーレ、ロート、シートなど)を言う。
また、無機粉の比重および粒径は、例えば無水ケイ酸で、その比重が0.03〜0.10g/ml、粉径が0.5〜10μmのものが好ましい。
〈漏れ防止試験の目的〉
自然蒸散型ネット製剤は薬液保持部にネットを使用しており、薬液滴下皿に点滴した薬液が徐々にネット全体に拡散することで完成品となる。薬液の点滴からネット全体に拡散するまで、一定の時間が必要であり、その間に強い振動や衝撃が加わると、点滴皿からの薬液漏れが発生することがある。
また、薬液滴下皿の大きさに制限がある場合には、薬液が多ければ、必然的に皿の薬液保持能力を超えてしまい、漏れが発生する。
そこで、薬液の濃度を調整することで安定した薬液の点滴から拡散を行えるようにすることに着目した。
〈漏れ防止試験の方法〉
「供試検体」としてアドソリダー101(日本薬局方 軽質無水ケイ酸)を用いて、それぞれ1.0%、1.5%、1.75%、および2.0%となるように薬液を調製した。
「試験方法」は、実施例1〜4として上記アドソリダー101処方調合液を、比較例としてアドソリダ無添加処方調合液をハホネ薬剤滴下皿に150μL点滴し、10分後における薬液の漏れを確認した。その際に、滴下皿を地面と水平に保持した場合と、さらに点滴後に垂直にした場合の漏れを確認した。
〈漏れ防止試験の結果〉
アドソリダー濃度と薬液の漏れの関係を表2に示した。
アドソリダーを濃度1.0%から2.0%まで添加したいずれの処方においても水平漏れは認められなかった。なかでも1.75%濃度の調合液が最も最適な物性を示し、それよりも低濃度では点滴後に垂直にした際に薬液の漏れが確認された。
比較例であるアドソリダ無添加処方調合液の場合は、薬液の垂直漏れは勿論、水平漏れも確認された。
第3発明は、常温液状のアルカン又はシクロアルカンが上記したような条件あるいは場所においてもシクロプロパンカルボン酸誘導体を十分安定化することができることを見出して、それに基いてなされたものである。
そして、この光・紫外線安定化剤を上記揮散性薬剤に含有させることで、紫外線に強い薬剤揮散装置が得られることとなった。
本発明で安定化しようとするシクロプロパンカルボン酸誘導体としては、それに包含されることが知られているすべてのものが入るが、例えば、例えば、次のような構造式のメトフルトリン[C18H20F4O3]、プロフルトリン[C17H18F4O2]、トランスフルトリン[C15H12Cl2F4O2]及び、これらの異性体、類縁体、誘導体を挙げることができる。
これらの添加剤の上記化合物への配合割合は、剤型、使用場面、適用対象等により異なるが、通常全組成物中に有効成分量あるいは溶解量までの量を配合することができる。
第3発明安定化剤の添加によって得られる組成物を具体的に適用する場所、すなわち使用場面としては、外光にさらされる病院、薬局、一般家屋又は商店等のガラス窓、例えばショーウインド、又は網戸、あるいは自動販売機の電光表示面、屋内の電灯、又は街灯等の外部照明灯の個所に、シクロプロパンカルボン酸誘導体を適切な濃度で配合された前記組成物を噴霧、塗布等の操作で付着させることにより有効に使用できる。
そのさい、有効にその作用を発揮しうる適用対象としては、処置の必要な生物が例示できる。
シクロプロパンカルボン酸誘導体の経時的分解率をみるため次の安定性試験を行なった。
〈薬剤耐光試験の目的〉
メトフルトリン自然蒸散剤の使用場所として、屋内および屋外を設定しており、屋外使用を想定した場合の耐光性を評価する。
〈薬剤耐光試験の方法〉
「供試検体」として、100×100mmに裁断した150dネット(丸紅)に、以下の実施例(1)〜(4)の薬剤アセトン溶液、すなわち、メトフルトリン150mgに流動パラフィン40Sを50mg(実施例1)、75mg(実施例2)、100mg(実施例3)、150mg(実施例4)をそれぞれ添加した溶液を滴下・拡散し、アセトンを揮散させた後、包材(PET単体)で包んだ。また、比較例として、比較例1は流動パラフィン40Sを添加しないメトフルトリン150mgのみの液、比較例2は、4−ドデシル−2−ヒドロキシベンゾフェノン添加量1%(1.5mg)添加した溶液、比較例3は、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾー8添加量1%(1.5mg)添加した溶液とした。
「試験場所」は、日当たりのよい社屋の屋上。
「試験方法」は、上記比較例および実施例1〜4の各供試検体を以下の条件A、B下で1カ月間放置し、その後、残存薬剤を定量した。
条件A:白紙上に設置し、上からアルミシートで覆った。
条件B:白紙上にそのまま設置した。
〈薬剤耐光試験の結果〉
流動パラフィン添加量とメトフルトリン残存率の関係を表4に示した。
ここで、メトフルトリン残存率(%)=(条件B/条件A)×100
〈結果の考察〉
流動パラフィンを添加しない比較例1では残存率22.5%。ベンゾフェノン系誘導体を添加した比較例2ではメトフルトリン残存率5.3%。トリアゾール系誘導体を添加した比較例3ではメトフルトリン残存率28.0%、といずれも低いが、流動パラフィンを添加した実施例(1) →(5)では添加量が50mg、75mg、100mg、150mgと増加するにつれて、残存率も42.5%、57.0%、61.1%、70.1%と増加していく関係が認められた。
すなわち、流動パラフィンの添加量とメトフルトリン安定性の関係は図10のような線図となった。図10において、横軸は流動パラフィンの添加量(単位mg)、縦軸はメトフルトリンの残存率(%)である。0%はメトフルトリンのすべてが揮散してメトフルトリンは1mgたりとも残存していないこと、100%はメトフルトリンがそのまま残存していることを意味する。図10からは流動パラフィンの添加量が増えれば、メトフルトリンの残存率が高くなることが判り、安定性には正の相関性あることが認められる。
パラフィンの添加によりメトフルトリンの光分解が抑制されることを見い出した本願発明についてさらに、その有効なパラフィンなどの範囲を設定するため以下のような耐光性試験を行った。
〈メトフルトリンについての光・紫外線に対する安定性試験〉
20mlの硝子瓶に下記パラフィン類、エステル類を100μl、メトフルトリンを200μlを量り取り、密封した後、サンルームにて1ヶ月放置した。所定時間後、内容物を量り取り、これに内部標準の入ったアセント溶液を加え分析用サンプルとした。
実施例1は、光・紫外線安定化剤として出光興産製IPソルベント1620(以下、「IP1620」と言う。)、実施例2は、光・紫外線安定化剤として出光興産製IPソルベント2028(以下、「IP2028」と言う。)、実施例3は、光・紫外線安定化剤として三光化学製流動パラフィン40−Sである(以下、「流パラ40S」と言う。)。
一方、比較例1はフタル酸ジプロピル、比較例2はマレイン酸ジプチル、比較例3はラウリン酸ヘキシルを用い、比較例4はメトフルトリンのみを用いた。
その結果、表4が得られた。
上記メトフルトリンについての光・紫外線に対する安定性試験のメトフルトリンに代えてプロフルトリンを用いた。
実施例4は、光・紫外線安定化剤として「流パラ40S」を用い、比較例5はメトフルトリンのみを用いた。
その結果、表5が得られた。
表4から、実施例1では残存率が89.2%、実施例2及び3では77.6%となり、パラフィン類にはメトフルトリンの耐光性を向上させる効果が認められた。
これに対して、比較例1では73.1%、比較例2では72.1%、比較例3では60.8となり、吸光度がより高いと思われていたエステル系化合物に耐光性を向上させる効果が認められなかった。また、比較例4では69.2となり、同じく耐光性を向上させる効果が認められなかった。
また、表5からは、「流パラ40S」を用いたら83.3%となり、「流パラ40S」にプロフルトリンの耐光性を向上させる効果が認められた。
これに対して、比較例5では67.1となり、耐光性を向上させる効果が認められなかった。
したがってこのことから、本発明が見出したパラフィン類の耐光性を向上させる効果(すなわち、光・紫外線に対する安定作用)が容易に類推できるものではないことが示されたと言える。
11 表容器(容器)
12 裏容器(容器)
13 薬剤保持体
14 保持部材(保持手段)
18a 第1の揮散性薬剤供給部(揮散性薬剤供給手段)
18b 第2の揮散性薬剤供給部(揮散性薬剤供給手段)
20a 第1の皿形状部(皿形状部)
20b 第2の皿形状部(皿形状部)
25a 第1の平板部(平板部)
25b 第2の平板部(平板部)
32 貫通孔
27 側板部
29 スリット
30 スタンド用片
Claims (6)
- 揮散性薬剤を保持するための薬剤保持体と、前記薬剤保持体を表側と裏側からそれぞれ挟んで保持する表容器および裏容器、を備えた薬剤揮散装置において、
前記表容器および前記裏容器はそれぞれ揮散口を有しており、
前記表容器には前記裏容器側に皿形状部が形成され、前記皿形状部の底板部には貫通孔が少なくとも1つ設けられ、
前記裏容器には前記底板部と対向する平板部が設けられており、
前記薬剤保持体を挟んで前記表容器と前記裏容器を合体した状態で、前記薬剤保持体は前記表容器の前記皿形状部の前記底板部と前記裏容器の前記平板部の間に挟まれ、
前記揮散性薬剤を前記皿形状部に供給することにより、前記揮散性薬剤が前記貫通孔を通って前記薬剤保持体に拡散・含浸して、前記薬剤保持体が薬剤を保持するようになることを特徴とする薬剤揮散装置。 - 前記貫通孔が複数ある場合は、前記皿形状部の前記底部の縁部近傍に、周方向にわたって略等間隔に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。
- 使用時に前記薬剤揮散装置を所定の設置箇所に保持するため、着脱自在な保持手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤揮散装置。
- 前記保持手段は、略コ字形状の板部材により形成されており、そして当該板部材の互いに対向する側板部の中央部各々には、スリットを介して折り曲げ自在なスタンド用片が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の薬剤揮散装置。
- 前記揮散性薬剤が、さらに、無機粉が含有された組成物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬剤揮散装置。
- 前記揮散性薬剤が、さらに、常温液状のアルカン又はシクロアルカンを安定化作用成分として含むシクロプロパンカルボン酸誘導体の光・紫外線安定化剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤揮散装置。
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