JP4864239B2 - 水性インクおよびこれを用いた記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用に適した水性インク、特に所謂普通紙に対するカラーインクとして優れた特性を示す水性インク並びにそれを用いた記録方法に関する。又、本発明は水性筆記用具、記録計、ペンプロッター用水性インク組成物に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェットプリンターは低騒音、低ランニングコストといった利点から普及し、普通紙印字可能なカラープリンターも市場に投入されている。しかしながら、画像の色再現性、耐水性、耐光性、画像の乾燥性、画像滲みと吐出の信頼性のすべてを満足することは難しい。さらに高速対応が可能な高性能のヘッドが開発されているが、普通紙での高速印字を行うと文字滲みの発生、色境界での滲みの発生等の問題がある。
【0003】
文字滲みと色境界の滲みはインク特性としては相反するためいろいろと検討されているが、印字速度の高速化を行うほど両立は困難となる。
【0004】
特に定着装置を用いないで乾燥を行う場合、特開昭55−29546号公報等のように浸透性を高めることにより色境界滲みは軽減するが、紙により著しく滲む。
【0005】
また、特公昭60−23793号公報には界面活性剤としてジアルキルスルホ琥珀酸が乾燥性を向上し画質劣化が少ないとされているが、紙による画素径が著しく異なり画像濃度の低下も著しいといった問題や、アルカリ側では活性剤が分解し、保存時に活性効果がなくなるといった問題がある。
【0006】
また、特開昭56−57862号公報等には強塩基性物質を添加するインクが開示されているが、ロジンサイズされた酸性紙では効果があるもののアルキルケテンダイマーやアルケニルスルホ琥珀酸をサイズ剤とした紙には効果がない。また、酸性紙でも2色重ね部分では効果がない。
【0007】
特開平5−13643号公報には両性イオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤を混合して色境界滲みを軽減することが開示されているが、起泡性が高く高周波での吐出安定性に欠ける問題があった。
【0008】
特開平6−256696号公報等にアセチレングリコール系の界面活性剤が開示されている。この界面活性剤は、浸透性が高く色境界滲みがかなり軽減され比較的文字品位も良いが、着色剤の種類により相互作用が大きく、保存時に凝集を引き起こすといった問題がある。
【0009】
このものの改良の試みが特開平8−337749号公報に開示されておりアセチレングリコール系のエチレンオキサイド鎖の先にカルボン酸基が導入されている界面活性剤が提案されている。しかしながら、十分に保存性を改善するには至っていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の第1の目的は、インクジェットインクとして諸特性を満足し、普通紙上で色境界の滲みが少なく色再現性の優れたカラー画像が得られ、従来のアニオン系界面活性剤に比べ低起泡性の新規な界面活性剤を用いた高信頼性の水性インクを提供することにある。
【0011】
本発明の第2の目的は、従来のアニオン系界面活性剤と併用することにより普通紙上で色境界滲みが少なく色再現性が優れたカラー画像が得られ、高信頼性の水性インクを提供することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、特に信頼性が高くかつ普通紙での画像が満足された水性インクを提供することにあり、特に保存安定性が高められるアニオン系界面活性剤の対イオンの態様を提示し保存性の高い水性インクを提供することにある。
【0013】
本発明の第4の目的は、該インクにおいて着色剤の分散安定性を改良し、アニオン系界面活性剤と併用し浸透性を高める目的で添加する好ましく使用されるノニオン系界面活性剤の構造を特定することにある。これにより、発色性と色境界滲みの両立により普通紙適性の改良された信頼性の高いインクを提供するものである。
【0014】
本発明の第5の目的は、該インクにおいてノニオン系界面活性剤と染料の相互作用を安定化し、保存安定性と浸透特性が改良された水性インクを提供することにある。
【0015】
本発明の第6の目的は、該インクにおいて着色剤の溶解性・分散安定性と紙への親和力を高めることが可能な好適な湿潤剤を示すことにある。
【0016】
本発明の第7の目的は、該インクにおいて界面活性剤と共に用いて紙への濡れ性を向上する目的で、好ましく用いられる水溶性有機溶剤を特定することにより、普通紙及び再生紙での画像の改良された水性インクを提供することにある。
【0017】
本発明の第8の目的は、該インクにおいて保存時に炭酸ガスの吸収による析出等の発生がない安定した特性が得られるpH範囲を提示し、信頼性の高い水性インクを提供することにある。
【0018】
本発明の第9の目的は該インクを用いて普通紙に対して良好に画像形成を行なう記録方法を提供することにある。
【0019】
【発明を解決するための手段】
普通紙に水性インクで印字する場合、従来から知られる浸透性を付与する界面活性剤や有機溶剤を用いても浸透性が十分に得られず色境界滲みが発生したり、不規則な濡れ性のため文字滲みが発生するといった問題があった。本発明者らは鋭意検討の結果、下記一般式(I)に示す新規な特定のアニオン界面活性剤ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル酢酸塩を用いることで不規則な濡れ性を均一化し、浸透性を改良できることが明らかとなった。
【0020】
【化6】
R1 :炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基
m、n:1〜20の整数
M :アルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム又は
アルカノールアミン
【0021】
また、従来のアニオン系界面活性剤に比べ起泡性も低減され、これにより維持機構での泡立ちによる問題等の発生も押さえることが可能となることがわかり、高速応答性も改良され、高速高画質の印字を普通紙で実施することが可能となる。
【0022】
本発明では該界面活性剤とともに従来から知られる界面活性剤を併用することも可能であり、アニオン系界面活性剤としては下記一般式(II)に示すポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、及び/又は下記一般式(III)に示す炭素数が5〜7の分岐したアルキル基を有するジアルキルスルホ琥珀酸塩を用いることで普通紙特性も改善され、さらに着色剤の溶解・分散安定性が得られることが明らかになった。また一般式(II)、(III)の界面活性剤を単独で用いる場合に比べ起泡性も低減され吐出安定性も改良される。
【0023】
R2−O−(CH2CH2O)OCH2COOM - - -(II)
R2:炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基
O :3〜12の整数
M :アルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム又は
アルカノールアミン
【0024】
【化7】
R3、R4:炭素数5〜7の分岐したアルキル基
M:アルカリ金属、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム又は
アルカノールアミン
【0025】
さらに本発明の界面活性剤の対イオンとして、ナトリウム、リチウム、及び下記一般式(IV)で示される第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミンイオンを用いることにより界面活性剤が優れた溶解安定性を示すことを見いだした。
【0026】
【化8】
X :窒素又はリン
R5〜R8:水素、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は
ハロゲン化アルキル基
【0027】
また併用して用いるのに好ましい非イオン系の界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである一般式(V)、アセチレングリコール系界面活性剤である一般式(VI)の活性剤があげられる。これらを併用することによりさらに相乗効果として浸透性があげられ、これにより色境界滲みが低減され、また文字滲みも少ないインクが得られる。
【0028】
【化9】
R:炭素数6〜14の分岐しても良いアルキル基
k:5〜12の整数
【0029】
【化10】
p、q:0〜40の整数
【0030】
これら活性剤(V)、(VI)に加え尿素及び/又はヒドロキシエチル尿素、ジヒドロキシエチル尿素等の尿素誘導体を添加すると着色剤と非イオン活性剤間の相互作用を弱め、着色剤の会合を緩和することで浸透性を向上させたり、吐出安定性、長期保存性を改良できることを見いだした。これら尿素及び/又は尿素誘導体の添加量は0.1重量%〜10重量%の間で用いることが好ましい。0.1重量%未満では効果がなく10重量%を超えると水分蒸発時の粘度変化に影響を及ぼすことがある。
【0031】
なお、このインクのpHを6以上にすることによりインクの保存安定性が得られる。また、オフィスで使用されているコピー用紙や用箋等はpHが5〜6のものが多く、これらの記録紙にインクを20〜60μmの微細な吐出口より吐出し、重量が3ng〜50ngの液滴として5〜20m/sで飛翔させ、単色での付着量を1.5g/m2〜30g/m2としてJIS P−8122試験法によるステキヒトサイズ度が3秒以上の所謂普通紙に記録することにより高画質、高解像度の記録画像を形成する記録方式を提供することができる。インクのpHは6〜11が好ましい。ただし、pHが9を超えると保存時に(III)の活性剤では分解による物性変化が起こりやすいため(III)を用いる場合はpHを6〜9とすることが好ましい。
【0032】
本発明に用いることができる化合物(I)〜(III)、(V)、(VI)の添加量は0.05〜10重量%の間でプリンターシステムにより要求されるインク特性に対し所望の浸透性をあたえることが可能である。ここで0.05重量%未満ではいずれの場合も2色重ね部の境界での滲みが発生し、10重量%を超えて添加する場合は化合物自体が低温で析出しやすいことがあり信頼性が悪くなる。
【0033】
本発明に用いる(I)の界面活性剤は、Boehme Fettchemの方法(D.A.S.1126140、1959)によりまず高級アルコールにエチレンオキサイドを導入し水溶性とし、さらにプロピレンオキサイドを縮合することでエチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテルを得て、これにクロル酢酸を反応させることで得ることができる。得られた界面活性剤を電気透析法・逆浸透膜等で脱塩処理して本発明の水性インクに用いる。
【0034】
次に本発明に用いる化合物(I)の遊離酸型を具体的に示す。
【0035】
【化11】
次に本発明に用いる界面活性剤(II)、(III)を具体的に遊離酸型で示す。
【0036】
【化12】
【0037】
本発明においてアニオン性解離基を有する着色剤及び界面活性剤は、保存時の溶解安定性を得る目的、熱エネルギーを与えることにより吐出を行う記録方式での信頼を向上する目的で対イオンをリチウム、ナトリウム、第4級アンモニウム又は第4級ホスホニウム、アルカノールアミンイオンとするのが好ましい。例えばリチウム塩とする場合は水酸化リチウムを添加することにより行え、一般式(IV)の第4級アンモニウム、ホスホニウム、アルカノールアミン陽イオンに関しては、具体的には以下に示す水酸化物を添加することにより行われる。
【0038】
【化13】
【0039】
尚、本発明において該染料及び活性剤の対イオンがすべてがナトリウム、リチウムおよび/又は上記の一般式(IV)の化合物である必要はなく、他のアルカリイオンと混合することもできる。ナトリウム、リチウムおよび/又は上記一般式(IV)の化合物によるイオンの量としては着色剤の官能基及び活性剤のモル数に対して30%以上、より好ましくは50%以上となるように添加されることが好ましい。
【0040】
本発明のインクは水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にするため、インクの乾燥を防止するために、また、本発明の化合物の溶解安定性を向上するため等の目的で下記の水溶性有機溶媒を使用することができる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは、複数混合して用いられる。
【0041】
これらの中で特に好ましいものはジエチレングリコール、チオジエタノール、ポリエチレングリコール200〜600、トリエチレングリコール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペトリオール、1,5−ペンタンジオール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノンであり、これらを用いることにより本化合物の高い溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる。
特に本発明において着色剤の分散安定性を得るのに好ましい溶剤としてN−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のピロリドン誘導体が挙げられる。
【0042】
また、本発明のインクに用いる界面活性剤(I)〜(III)、(V)、(VI)以外で表面張力を調整する目的で添加される浸透剤としてはジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等のジオール類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類が挙げられるが、特に好ましいのは多価アルコールアルキルエーテルとしてジエチレングリコールモノブチルエーテル、炭素数6以上のジオールとして2−エチル−1,3−ヘキサンジオールである。
【0043】
上記表面張力とは紙への浸透性を示す指標であり、特に表面形成されて1秒以下の短い時間での動的表面張力を示し、飽和時間で測定される静的表面張力とは異なる。測定法としては特開昭63−31237号公報等に記載の従来公知の方法で1秒以下の動的な表面張力を測定できる方法であればいずれも使用できるが本発明ではWilhelmy式の吊り板式表面張力計を用いて測定した。表面張力の値は50mN/m以下が好ましく、より好ましくは40mN/m以下とすると優れた乾燥性が得られる。
【0044】
本発明の着色剤としては下記記載の染料、顔料を単独或いは混合して用いることができる。用いられる水溶性染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これらは効果が阻害されない範囲で添加される。これら染料を具体的に挙げれば、酸性染料及び食用染料として、
C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッドレッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッドブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッドブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フードイエロー 3,4
C.I.フードレッド 7,9,14
C.I.フードブラック 1,2
【0045】
直接性染料として
C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクトオレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクトブルー 1,2,6,15,22,,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクトブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
【0046】
塩基性染料として
C.I.ベーシックイエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシックレッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112C.I.ベーシックブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシックブラック 2,8
【0047】
反応性染料として
C.I.リアクティブブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブイエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブレッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95
等が使用できる。特に酸性染料及び直接性染料が好ましく用いることができる。
【0048】
顔料としては、有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
【0049】
黒色としては酸性カーボンブラックが好ましく、また酸化処理したカーボンブラックやジアゾニウム処理して解離基を導入したカーボンブラックがさらに好ましい。イエロー顔料としてはベンチジン骨格を含まないアゾ顔料が好ましい。マゼンタ顔料としてはキナクリドン系のC.I.ピグメントレッド122が好ましい。シアンはフタロシアニン化合物であるC.I.ピグメントブルー15:3やアルミ配位フタロシアニン、無金属フタロシアニンが好ましい。これらカラー有機顔料も表面処理したものはさらに分散安定性が優れる。
【0050】
顔料分散剤としては親水性高分子として、天然系では、アラビアガム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子、半合成系では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子、純合成系では、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸及びそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
【0051】
本発明のインクには上記着色剤、溶媒の他に従来より知られている添加剤を加えることができる。
【0052】
例えば、防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が本発明に使用できる。
【0053】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずに本発明の好ましいpH範囲に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができる。
その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
【0054】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0055】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニイウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等がある。
【0056】
その他目的に応じて水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤、界面活性剤を添加することもできる。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例および比較例を示す。
実施例1
具体例(I−1)の化合物を分散剤の存在下で超音波ホモジェナイザーにて分散し、粒子径を0.1μm以下とし、この分散液を用いて下記処方の組成物を攪拌溶解し、pHが8.5になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整し、これを0.45μmのテフロンフィルターにて濾過しインク1を作製した。
カルボン酸基の導入されたカーボンブラック 5重量%
具体例(I−1)の活性剤 1.5重量%
具体例(II−1)の活性剤 0.5重量%
スチレンアクリル酸重合体 0.1重量%
グリセロール 15重量%
N−ヒドロキシエチルピロリドン 5重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 1重量%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0058】
実施例2
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にし、水酸化リチウムにてpH8.8にしてインク2を調製した。
C.I.ピグメントイエロー74 2重量%
C.I.ダイレクトイエロー132 1重量%
1,2,6−ヘキサントリオール 8重量%
1,5−ペンタンジオール 8重量%
2−ピロリドン 8重量%
具体例(I−3)の活性剤 1.0重量%
具体例(II−1)の活性剤 1.2重量%
具体例(IV−1)25%水溶液 0.8重量%
アルギン酸ナトリウム 0.05重量%
尿素 5重量%
2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0059】
実施例3
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8.5にしてインク3を調製した。
C.I.ピグメントレッド122 2重量%
C.I.アシッドレッド289 1重量%
ジエチレングリコール 5重量%
グリセロール 5重量%
2−ピロリドン 2重量%
スチレンアクリル酸重合体 0.5重量%
具体例(I−2)の活性剤 1重量%
(V)の活性剤 R:C9H19 k:12 1重量%
具体例(III−3)25%水溶液 0.2重量%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0060】
実施例4
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで9.5にしてインク4を調製した。
C.I.ピグメントブルー15:3 1.0重量%
プロジェットファストシアン2TM (ゼネカ製) 1.2重量%
エチレングリコール 5重量%
グリセロール 2重量%
1,5−ペンタンジオール 8重量%
2−ピロリドン 2重量%
ポリオキシエチレンポリオキシエチレンブロック共重合体 1重量%
具体例(I−4)の活性剤 1重量%
(VI)の活性剤 p、q:20 0.8重量%
具体例(III−4)25%水溶液 2重量%
尿素 5重量%
安息香酸ナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0061】
実施例5
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化ナトリウムで7.8にしてインク5を調製した。
C.I.ダイレクトブラック168 5重量%
トリエチレングリコール 5重量%
ペトリオール 10重量%
N−メチル−2−ピロリドン 5重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2重量%
具体例(I−5)の活性剤 1重量%
(V)の活性剤 R:C10H21 k:7 1重量%
具体例(IV−2)25%水溶液 1.5重量%
ヒドロキシエチル尿素 5重量%
2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0062】
実施例6
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8にしてインク6を調製した。
C.I.アシッドイエロー23 1重量%
C.I.ダイレクトイエロー142 1重量%
2−ピロリドン 8重量%
グリセロール 7重量%
具体例(I−1)の活性剤 1重量%
(VI)の活性剤 p+q=15 0.5重量%
(VI)の活性剤 p、q:0 0.5重量%
具体例(III−7)25%水溶液 2重量%
ヒドロキシエチル尿素 5重量%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0063】
実施例7
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8にしてインク7を調製した。
C.I.ダイレクトレッド227 1.2重量%
C.I.アシッドレッド289 0.8重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 0.8重量%
N−メチル−2−ピロリドン 8重量%
1,5−ペンタンジオール 8重量%
具体例(I−1)の活性剤 1.2重量%
具体例(III−4)の活性剤 0.8重量%
安息香酸ナトリウム 0.5重量%
イオン交換水 残量
【0064】
実施例8
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで7.5にしてインク8とした。
C.I.アシッドブルー9 0.5重量%
C.I.アシッドブルー249 0.5重量%
C.I.ダイレクトブルー199 2重量%
チオジエタノール 5重量%
グリセロール 10重量%
2−ピロリドン 2重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 2重量%
具体例(I−4)の活性剤 1重量%
(VI)の活性剤 R:C10H21 k:12 1重量%
安息香酸ナトリウム 0.5重量%
イオン交換水 残量
【0065】
実施例9
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8にしてインク9とした。
スルホン酸が導入されたカーボン 5重量%
2−ピロリドン 5.0重量%
グリセロール 15.0重量%
具体例(I−4)の活性剤 2重量%
(VI)の活性剤 p+q=40 1重量%
具体例(I−2)の活性剤 1重量%
ペンタクロロフェノールナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0066】
実施例10
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで9にしてインク10とした。
酸化処理したカーボン 5.0重量%
ポリビニルピロリドン 1重量%
2−ピロリドン 5.0重量%
グリセロール 15.0重量%
(VI)の活性剤 p+q=40 1重量%
具体例(I−2)の活性剤 2重量%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0067】
比較例1
実施例1において具体例(I−1)、(II−1)の活性剤に換えてドデシルベンゼンスルホン酸にかえた以外は同様にしてインク11とした。
【0068】
比較例2
実施例2において具体例(I−3)の活性剤をN、N-ジメチル−N−ドデシルアミンオキサイドにかえた以外は同様にしてインク12とした。
【0069】
比較例3
実施例4において具体例(I−4)の活性剤を除き相当する量を実施例4で用いた(VI)の活性剤とし、尿素を除いた以外は同様ににしてインク13とした。
【0070】
比較例4
実施例5において具体例(I−5)の活性剤を除き相当する量を実施例5で用いた(V)の活性剤とした以外は同様にしてインク14とした。
【0071】
つぎに上記実施例1〜10及び比較例1〜4について下記の試験を行った。
1)画像の鮮明性
サーマルインクジェット方式のノズル径45μm、300dpiのノズルを有するインクジェットプリンター及び積層PZTを液室流路の加圧に使用したノズル径33μm、128のノズルを有するインクジェットプリンターにて印字を行い、2色重ね部境界の滲み、画像滲み、色調、濃度を目視により総合的に判断した。またOHP投影時の発色も評価した。
印字用紙は市販の再生紙、上質紙とボンド紙の3紙に印字した。
【0072】
2)画像の耐水性
画像サンプルを30℃の水に1分間浸漬し処理前後の画像濃度の変化をマクベス濃度計で測定し、下記の式にて耐水性(耐色率%)を求めた。
【0073】
【数1】
いずれの紙でも20%以下となったものを○、20%を超え30%未満となったものをを△、30%以上となったものを×とした。
【0074】
3)画像の乾燥性
印字後の画像に一定条件で濾紙を押しつけインクが濾紙に転写しなくなるまでの時間を測定した。
いずれの紙でも10秒以内で乾燥した場合に○と判定した。それ以上を×とした。
【0075】
4)保存安定性
各インクをポリエチレン容器に入れ、−20℃、5℃、20℃、70℃それぞれの条件下で3カ月保存し、保存後の表面張力、粘度、及び沈澱物析出の有無を調べた。どの条件で保存しても、物性等の変化がないものを○とした。
【0076】
5)印字休止時信頼性
ノズル径30μm128ノズルを有するPZTで駆動するヘッドを有するプリンターを使用し動作中にキャップ、クリーニング等を行わないでどれだけ印字休止しても復帰できるかを調べ、どれだけの時間で噴射方向がずれるか、あるいは吐出液滴の重量が変化するかでその信頼性を評価した結果を表に示す。特に問題なしを○、滴重量の変化小、噴曲がり小を△、顕著な目詰まり発生を×とした。
【0077】
【表1】
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、特定のアニオン界面活性剤を用いることでインクジェットインクとして諸特性を満足し、普通紙上で色境界の滲みが少なく色再現性の優れた高品質のカラー画像が得られ、従来のアニオン系界面活性剤に比べ低起泡性の高信頼性の水性インクを提供することができる。
【0079】
本発明によれば、該界面活性剤と従来のアニオン系界面活性剤と併用することにより従来のインクの起泡性を改良し、普通紙上で色境界滲みが少なく色再現性が優れたカラー画像が得られ、高信頼性の水性インクを得ることができる。
【0080】
本発明によれば、保存安定性が高められるアニオン系界面活性剤の対イオンの態様を提示することで、信頼性が高くかつ普通紙での画像が満足され保存性の高い水性インクを提供することができる。
【0081】
本発明によれば、該インクにおいて着色剤の分散安定性を改良し、アニオン系界面活性剤と併用し浸透性を高める目的で添加する好ましく使用されるノニオン系界面活性剤の構造を特定することにより発色性と色境界滲みの両立により普通紙適性の改良された信頼性の高い水性インクを提供することができる。
【0082】
本発明によれば、尿素誘導体を添加することによりノニオン系界面活性剤と着色剤の相互作用を安定化し保存安定性と浸透特性が改良された水性インクを提供することができる。
【0083】
本発明によれば、湿潤剤を特定することで該インクにおいて着色剤の溶解性・分散安定性と紙への親和力を高めることが可能となりべた画像の均一性が高まる。
【0084】
本発明によれば、浸透性を付与する水溶性有機溶剤を特定することで特に再生紙での色境界滲みを低減する画像品質の改良された水性インクを提供することができる。
【0085】
本発明によれば、pH範囲を規定することで該インクにおいて保存時に炭酸ガスの吸収により析出等発生がない安定した特性が選られる信頼性の高い水性インクを提供することができる。
【0086】
本発明によれば、該インクを用いてある特定のサイズ特性を有する所謂普通紙に対して特定の解像度で付着量を特定することにより文字滲み色境界滲みが低減され、カール、コックリング等の少ない高品質の画像が得られる記録方法を提供することができる。
Claims (9)
- 前記水性インクが尿素及び/又は尿素誘導体を含有することを特徴とする請求項4記載の水性インク。
- 湿潤剤としてピロリドン誘導体を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水性インク。
- 界面活性剤と共に多価アルコールアルキルエーテル及び/又は炭素数6以上のジオールを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水性インク。
- インクのpHが6〜11に調整されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水性インク。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の水性インクを熱エネルギー又は機械エネルギーにより微小な液滴として飛翔させ、これをJIS P−8122試験法によるステキヒトサイズ度が3秒以上の被記録材に付着せしめることにより画像形成をする記録方法において解像度が10ドット/mm×10ドット/mmであり被記録材上のインク付着量が1.5g/m2〜30g/m2であることを特徴とする記録方法。
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