JP4065617B2 - 記録用インクおよび該インクを使用した記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用に適した水性インク、特に所謂普通紙に対するカラーインクとして優れた特性を示す記録用インクに関する。
【0002】
【従来技術】
近年、インクジェットプリンターは低騒音、低ランニングコストといった利点から普及し、普通紙印字可能なカラープリンターも市場に投入されている。しかしながら、画像の色再現性、耐水性、耐光性、画像の乾燥性、画像滲みと吐出の信頼性のすべてを満足することは難しい。特にカラープリンターの場合、イエロー、マゼンタ、シアンの単色印字部で画質劣化がなくとも、レッド、グリーン、ブルーの2色重ね部分で画質の劣化が発生しやすい。特に定着装置を用いないで乾燥を行う場合、特開昭55−29546号公報等のように浸透性を高めることにより乾燥性を向上しているため紙により著しく滲む。
【0003】
また、特公昭60−23793号公報には界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸が乾燥性を向上し画質劣化が少ないとされているが、紙による画素径が著しく異なり画像濃度の低下も著しいといった問題やアルカリ側では活性剤が分解し、保存時に活性効果がなくなるといった問題がある。
また、特開昭56−57862号公報等には強塩基性物質を添加するインクが開示されているが、ロジンサイズされた酸性紙では効果があるもののアルキルケテンダイマーやアルケニルスルホコハク酸をサイズ剤とした紙には効果がない。また、酸性紙でも2色重ね部分では効果がない。
また、特開平1−203483号公報には多価アルコール誘導体及びペクチンを含有することを特徴とした記録液が開示されているが、これは増粘剤としてペクチンを添加し、滲みを防止するものであるが、ペクチンは水酸基を親水基とする非イオン性であるため印字休止後の吐出安定性に欠けるという問題があった。
【0004】
一方、普通紙上での色再現と耐水性を両立するには染料そのものの改良がおこなわれているが、耐水性を向上しかつ信頼性の高い染料を得ることは難しい。
また、耐水性、耐光性を得るため顔料を用いることも考えられ種々の試みが行われているが、発色に問題があるため耐光性の要求される大型のプロッター以外では現状では採用されていない。また高解像度に対応するには目詰まりの問題もある。そこで従来より発色や信頼性を改良するために顔料と染料を混合することが試みられ、特公昭60−45669号公報、特開平6−100812号公報に開示されている。前者は染料の耐光性が不十分であったり、必ずしも普通紙へのインクの浸透性や発色が十分でなかった。後者は耐光性は前者に比べ十分であるが、発色が不十分であり、特にブルーの発色がくすむ等の問題があった。
特開平5−132642号公報にはシクロデキストリンと油溶性染料の組み合わせにより耐水性と裏抜け等の改良されたインクが開示されているが、黒インク用にはCr含金染料等安全性に問題があった。
現状では普通紙適性として耐水耐光性と色境界にじみや色再現性を満足すると共にノズル部での目詰まり等信頼性をなかなか満足できていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ランタノイドイオンとシクロデキストリン誘導体を含有したインクを用いることでインクジェットインクとして諸特性を満足し、色境界のにじみが少なく色調に優れ、耐光、耐水性も改良されて高信頼性のインクジェット用記録用インクを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは従来の水溶性染料を用いて耐水性、耐光性の改良されたインクを提供するために種種の検討を行った結果、従来知られるFe、Cr、Al、Baといった金属イオンの添加に変えてランタノイドイオンを含有させさらにシクロデキストリンまたはシクロデキストリンポリマーを含有させることでインクの保存性を確保しかつ耐水性、耐光性の改良されたインクを提供できることを見いだし、本発明に到達することができた。
【0007】
これはランタノイドイオンが特に高配位数の錯形成を行い、またアクア錯体として存在するため、従来のFeイオンに比べ親水性が高い状態であり、またシクロデキストリンまたはシクロデキストリンポリマーとの配位結合形成等によるものではないかと推測されるが、長期保存性も優れ、紙に付着した状態では不溶化されるため耐水性、耐光性が向上されるものと考えられる。
インク中にランタノイドイオンを与える化合物としては水に対して溶解性の高いランタノイド化合物であればいづれでもよく、具体的には塩化ランタン、塩化ネオジム、塩化ガドリニウム、塩化ユーロピウム等の塩化物、また硝酸ランタン、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸化物イオンである。
これらランタノイド塩の添加量としては染料の種類と添加量により変わるが、通常は0.01重量%から0.5重量%添加される。0.01重量%以下では耐水性の向上が少なく、0.5重量%以上では信頼性が悪くなる。
【0008】
シクロデキストリンとしてはα、β、γ−シクロデキストリン、これらのヒドロキシエチル誘導体、エピクロルヒドリンで架橋して得られるポリβシクロデキストリン等が使用される。これらの添加量は1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%で用いられるが、ヘッド等の仕様によってはこの範囲に限定されるものではない。
【0009】
また、本発明者等は、紙への浸透性を高める目的でアニオン系界面活性剤として、下式(I)で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩(I)および/または炭素鎖が5〜7の分岐したアルキル鎖を有するジアルキルスルホ琥珀酸(II)を添加することにより、表面張力を50mN/m以下に低下させ、インクと紙表面との濡れ性を向上し、紙への浸透速度を高め、また着色剤として顔料と分子量が5000から15万の高分子染料を用いると画像劣化およびにじみがきわめてすくないことを見いだした。
【0010】
にじみは、顔料のみを使用した場合には、通常の染料インクと同様であるが、顔料と前記高分子染料とを併用するとにじみが少なくなるのは、前記高分子染料を用いることにより繊維間への拡散が制御され、かつインクが増粘するためであると推測される。
【0011】
【化8】
(R1:炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基、m:3〜12、M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムおよびアルカノールアンモニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種のカチオン)
【0012】
【化9】
(R2:炭素数5〜7の分岐したアルキル基、M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムおよびアルカノールアンモニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種のカチオン)
【0013】
前式(I)および/または(II)の化合物の対イオンとして、ナトリウム、リチウム、下記一般式(III)で示される第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムおよびアルカノールアミン陽イオンよりなる群から選ばれた少なくとも1種のものを本発明のインク中に含有させることにより、さらに優れた溶解安定性を示すインクを得ることができる。
【0014】
【化10】
(X:窒素またはリン、R3〜R6:水素、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基およびハロゲン化アルキルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表し、互いに同一または相異なっていても良い。)
【0015】
前式(I)の化合物の添加量は、0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%である。
また、前式(II)あるいは(III)の添加量は、プリンターシステムに要求されるインク特性に対し、0.05〜10重量%の範囲が、所望の浸透性を与えることが可能であるので好ましい。ここで、0.05重量%以下ではいずれの場合も2色重ね部の境界でのにじみが発生し、10重量%以上添加する場合は、化合物自体が低温で析出しやすかったり、化合物(II)等の析出等も発生することがあり、信頼性が悪くなる。
【0016】
次に、前式(I)および(II)の具体的な化合物を遊離酸型で例示する。
【化11】
【0017】
【化12】
【0018】
【化13】
【0019】
【化14】
【0020】
本発明のインク中に、非イオン系の界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである下式(IV)、(V)、(VI)および(VII)で示される界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤をさらに含有させると、インクと紙表面との濡れ性と紙への浸透速度の向上、また、顔料と分子量が5000から15万の高分子染料を用いた場合の画像劣化とにじみの防止効果をより高めることができる。
【0021】
【化15】
(R:分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、k:5〜20)
【0022】
【化16】
(m、n:m、n≦20、0<m+n≦40)
【0023】
【化17】
(R:分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、nは、5〜20である。)
【0024】
【化18】
(R:分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、m、n:m、n≦20、0<m+n≦40)
前式(IV)、(V)、(VI)および(VII)の界面活性剤は、夫々単独で使用しても良いし、あるいは複数の種類を混合して用いても良い。
【0025】
前式(IV)、(V)、(VI)および(VII)の界面活性剤に加え、尿素及びヒドロキシエチル尿素、ジヒドロキシエチル尿素等の尿素誘導体を添加すると高分子染料と非イオン活性剤間の相互作用を弱め高分子染料の会合を緩和することで浸透性を向上させたり、吐出安定性、長期保存性を改良できることを見いだした。これら尿素誘導体の添加量は0.1重量%から5重量%の間で用いることが好ましい。0.1重量%以下では効果がなく5重量%以上では水分蒸発時の粘度変化に影響を及ぼすことがある。
【0026】
本発明のインクは、そのpHを6以上とすることによりインクの保存安定性が得られ、また、オフィスで使用されているコピー用紙や用箋等はpHが5〜6のものが多い。
したがって、前記のようなコピー用紙や用箋等に本発明のインクを20〜60μmの微細な吐出口より吐出し、重量が6ng〜160ngの液滴として5〜20m/sで飛翔させ、ステキヒトサイズ度が3秒以上の所謂普通紙に記録することにより高画質、高解像の記録画像を形成する記録方式を提供することができる。
【0027】
この記録方式による本発明のインクの紙面上への付着力は、2.0g/m2〜100g/m2、好ましくは2.0g/m2〜20g/m2であることがカール、波打ちと言った紙の吸水による変形と画像濃度を確保する点から好ましい。
【0028】
本発明の水溶性染料および界面活性剤は、保存時の熱エネルギーを与えることにより吐出を行う記録方式での信頼を向上する目的で、対イオンをリチウム、ナトリウム、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムおよびアルカノールアンモニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとすることが好ましい。
【0029】
前記対イオンの導入は、例えばリチウム塩の場合には、水酸化リチウムを添加することにより行うことができ、また、前式(III)の第4級アンモニウム、ホスホニウム、アルカノールアミン陽イオンの導入は、具体的には、例えば以下に示す水酸化物を添加することによって行うことができる。
【0030】
【化19】
【0031】
【化20】
【0032】
【化21】
(トリエタノールアミン陽イオン)
【0033】
ただし、本発明の前記界面活性剤の対イオンがすべてナトリウム、リチウムおよび前式(III)の化合物である必要はなく、他のアルカリイオンと混合したものであっても良い。
これら対イオンの量は、染料および前記界面活性剤のモル数に対して、30重量%以上、より好ましくは50重量%以上となるように添加されることが好ましい。
【0034】
本発明のインクは水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にするため、インクの乾燥を防止するために、また、本発明の化合物の溶解安定性を向上するため等の目的で水溶性有機溶媒を使用することができる。
該水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類;プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは、複数混合して用いられる。
これらの中で特に好ましいものは、ジエチレングリコール、チオジエタノール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペトリオール、1,5−ペンタンジオール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノンであり、これらを用いることにより本化合物の高い溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる。
特に本発明において化合物(I)の分散安定性を得るのに好ましい溶剤として、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のピロリドン誘導体が挙げられる。
【0035】
本発明のインクにおいて、前式(I)、(II)、(IV)、(V)、(VI)および(VII)以外に、表面張力を調整する目的で浸透剤を添加してもよい。
該浸透剤としては、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類が挙げられるが、特に好ましいのはジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0036】
本発明における表面張力とは紙への浸透性を示す指標であり、特に表面形成されて1秒以下の短い時間での動的表面張力を示し、飽和時間で測定される静的表面張力とは異なる。測定法としては特開昭63−31237号公報等に記載の従来公知の方法で1秒以下の動的な表面張力を測定できる方法であればいずれも使用できるが本発明ではWilhelmy式の吊り板式表面張力計を用いて測定した。表面張力の値は50mN/m以下が好ましく、より好ましくは40mN/m以下とすると優れた乾燥性が得られる。
【0037】
本発明の着色剤として水溶性染料であるカラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料を具体的に挙げれば、
酸性染料及び食用染料として、
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
【0038】
直接性染料として
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
【0039】
反応性染料として
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95
等が使用できる。特に酸性染料及び直接性染料が好ましく用いることができる。
【0040】
本発明のインクには、上記着色剤、溶媒の他に従来より知られている添加剤を加えることができる。
例えば、防腐防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が本発明に使用できる。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを6以上に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができる。
その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第四級アンモニウム水酸化物、第四級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
【0041】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等がある。
その他目的に応じて水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤、界面活性剤を添加することもできる。
【0042】
【実施例】
以下に本発明の実施例および比較例を示す。
【0043】
実施例1
下記組成のインク1を調整した。
C.I.アシッドイエロー23 2重量%
C.I.ダイレクトイエロー142 1重量%
硝酸ランタン 0.5重量%
ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン 2重量%
グリセロール 5重量%
N−ヒドロキシエチルピロリドン 5重量%
具体例(I−1)の活性剤 0.5重量%
(IV)の活性剤(R=C9H19、k=18) 0.5重量%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0044】
実施例2
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にし、pHを水酸化ナトリウムで8.8にしてインク2を調整した。
C.I.アシッドレッド289 2重量%
C.I.ダイレクトレッド227 1重量%
硝酸ガドリニウム 0.2重量%
ポリβ−シクロデキストリン 1重量%
1,2,6−ヘキサントリオール 4重量%
1,5−ペンタンジオール 8重量%
N−メチル−2−ピロリドン 8重量%
具体例(II−1)の活性剤 1.2重量%
一般式(V)の活性剤(m、n=10) 1.0重量%
具体例(III−1)25%水溶液 0.8重量%
アルギン酸ナトリウム 0.05重量%
尿素 5重量%
2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0045】
実施例3
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで8.5にしてインク3を調整した。
C.I.ダイレクトブルー199 3重量%
塩化ランタン 0.5重量%
β−シクロデキストリン 8重量%
ジエチレングリコール 5重量%
グリセロール 5重量%
N−ヒドロキシエチルピロリドン 10重量%
スチレンアクリル酸重合体 0.5重量%
(IV)の活性剤(R=C9H19、k=12) 2重量%
具体例(III−3)25%水溶液 0.2重量%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0046】
実施例4
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで9.5にしてインク4を調整した。
C.I.ダイレクトブラック168 3重量%
硝酸ランタン 0.2重量%
ポリβ−シクロデキストリン 1重量%
エチレングリコール 5重量%
グリセロール 2重量%
1,5−ペンタンジオール 8重量%
2−ピロリドン 2重量%
ポリオキシエチレンポリオキシエチレンブロック共重合体 1重量%
(VII)の活性剤(R=C3H7、m、n=20) 0.8重量%
具体例(III−4)25%水溶液 2重量%
尿素 5重量%
安息香酸ナトリウム 0.2重量%
イオン交換水 残量
【0047】
比較例1
実施例1において硝酸ランタンを除いた以外は同様にしてインク5とした。
比較例2
実施例2において硝酸ガドリニウムを除いた以外は同様にしてインク6とした。
比較例3
実施例3において塩化ランタンを除いた以外は同様にしてインク7とした。
比較例4
実施例4において硝酸ランタンを除いた以外は同様にしてインク8とした。
【0048】
つぎに上記実施例1〜4及び比較例1〜4について下記の試験を行った。
1)画像の鮮明性
サーマルインクジェット方式のノズル径45μm、300dpiのノズルを有するインクジェットプリンター及び積層PZTを液室流路の加圧に使用したノズル径33μm、128dpiのノズルを有するインクジェットプリンターにて印字を行い、2色重ね部境界の滲み、画像滲み、色調、濃度を目視により総合的に判断した。また、OHP投影時の発色も評価した。
印字用紙は市販の再生紙、上質紙とボンド紙の3紙に印字した。
いずれの紙においても良好なものを○、少なくとも1紙では良好なものを△、いずれの1紙でも問題なものを×、OHPとしてはPETベースでPVAを主としたインク受容層を有するインクジェット用OHPシートに印字したカラー画像でグリーン等の2次色でも問題ない場合を○、単色では問題のない場合は△、いずれでも問題の発生する場合を×とした。
【0049】
2)画像の耐水性
画像サンプルを30℃の水に1分間浸漬し、処理前後の画像濃度の変化をマクベス濃度計で測定し、下記の式にて耐水性(耐色率%)を求めた。
【数1】
いずれの紙でも10%以下となったものを○、30%未満を△、30%以上を×とした。
【0050】
3)画像の耐光性
画像サンプルをキセノンフェードメーターにてブラックパネル温度63度で3時間照射し処理前後の画像濃度の変化をマクベス濃度計で測定し、下記の式にて耐水性(耐色率%)を求めた。
【数2】
いずれの紙でも5%以下となったものを○、30%未満を△、30%以上を×とした。
【0051】
4)画像の乾燥性
印字後の画像に一定条件で濾紙を押しつけインクが濾紙に転写しなくなるまでの時間を測定した。
いずれの紙でも10秒以内で乾燥した場合に○と判定した。それ以上を×とした。
【0052】
5)保存安定性
各インクをポリエチレン容器に入れ、−20℃、5℃、20℃、70℃でそれぞれの条件下で3ヵ月保存し、保存後の表面張力、粘度、及び沈殿物析出の有無を調べた。どの条件で保存しても、物性等の変化がないものを○とした。
【0053】
6)印字休止時信頼性
ノズル径30μm、128dpiノズルを有するPZTで駆動するヘッドを有するプリンターを使用し動作中にキャップ、クリーニング等が行われないでどれだけ印字休止しても復帰できるかを調べ、600s以内でどれだけの時間で噴射方向がずれるか、あるいは吐出液滴の重量が変化するかでその信頼性を評価した結果を表に示す。特に問題なし○、滴重量の変化小、噴曲がり小△、顕著な目詰まり発生×
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【効果】
1.記録用インク、特にインクジェットとして諸特性を満足し、色境界のにじみが少なく色調に優れ、耐光、耐水性も改良された高信頼性の記録用インクを提供することができた。
2.界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩(I)および/またはジアルキルスルホ琥珀酸塩( II )を使用することにより、発色性とにじみ防止の特性を両立させ、普通紙適性が改良された記録用インクを提供することができた。
3.対イオンを使用することにより、インク中の界面活性剤の保存安定性を向上させることができた。
4.さらに、一般式( IV )〜( VII )で示されるノニオン系界面活性剤を使用することにより、着色剤の分散安定性を確保するとともに、浸透性を高めることができるので、発色性とにじみ防止の特性を両立させ、普通紙適性が改良された記録用インクを提供することができた。
5.尿素またはその誘導体を使用することにより、界面活性剤と染料の相互作用を安定化し、保存安定性と浸透特性が改良された記録用インクを提供することができた。
6.湿潤剤としてピロリドンまたはその誘導体を含有させることにより、染料の分散安定性と紙への親和力を高めた記録用インクを提供することができた。
7.請求項1〜5のいずれかに記載の記録用インクを用いることにより、良好に画像形成を行なう記録方法、特にインクジェット記録方法を提供することができるほか、それを用いたインクジェット記録用インクカートリッジおよびインクジェット記録装置を提供することができた。
Claims (8)
- 水に分散または溶解する着色剤、水および水溶性有機溶媒を主成分とする記録用インクにおいて、
(A)ランタン陽イオンおよびガドリニウム陽イオンよりなる群から選ばれたランタノイド陽イオン
(B)シクロデキストリン誘導体および/またはシクロデキストリンポリマー
(C)界面活性剤として、下式(I)のポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩および/または下式(II)のジアルキルスルホ琥珀酸塩
を含有することを特徴とする記録用インク。
- 少なくとも1種の尿素またはその誘導体を含有する請求項3記載の記録用インク。
- 少なくとも1種のピロリドンまたはその誘導体を含有する請求項1〜4いずれかに記載の記録用インク。
- 請求項1〜5いずれか記載の記録用インクを、インクジェット方式により、ステキヒトサイズ度が3秒以上の被記録材に付着させることを特徴とする記録方法。
- 請求項1〜5いずれか記載の記録用インクを収納したインクジェット記録用インクカートッリッジ。
- 請求項7記載のインクジェット記録用インクカートリッジを搭載したインクジェット記録装置。
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