JP4840965B2 - 空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents

空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、タイヤ内周面に発生するクラックを抑制しうる空気入りタイヤと、その空気入りタイヤの製造方法に関する。
従来、インナーライナー部材に代表されるタイヤ用ゴム部材の成形方法として、リボン巻き工法が知られている。リボン巻き工法によれば、例えば下記特許文献1に開示されるように、未加硫ゴム組成物からなる小巾且つ小厚さのゴムリボンを周方向に沿って複数周巻き付けることによって、所望の断面形状をなすゴム部材を形成することができる。これにより、カットしたゴム押出品を環状に連ねて成形する場合に比べて、ゴム部材を精度良く容易に成形することができる。
しかしながら、リボン巻き工法により形成されたインナーライナー部材を用いて、タイヤ断面高さが110mm未満の偏平率(タイヤ断面高さ/タイヤ断面幅)が小さい空気入りタイヤを成形した場合、次のような不具合を生じることが分かった。即ち、タイヤ断面高さが110mm未満の空気入りタイヤでは、走行中にベルト層の端部近傍からタイヤ断面最大幅位置にかけて大きな歪みが作用するため、かかる領域のタイヤ内周面に形成されたリボン界面からクラックが発生し、タイヤの耐久性を低下させることが分かった。
ここで、下記特許文献2には、インナーライナー部材をリボン巻き工法により成形し、そのインナーライナー部材とカーカスプライとの間に、ベルト層の端部近傍からタイヤ断面最大幅位置に延びるインスレーションゴムを配した空気入りタイヤが開示されている。しかしながら、かかる空気入りタイヤは、リボン界面がタイヤ内周面に一律に形成されるものであるため、上記の内周面クラックの問題を解決しうるものではない。
また、下記特許文献3には、幅寸法が40mm以下のゴムリボンを所定の重なり幅で巻き付けしてなる表面層により、インナーライナー部材のタイヤ内周面となる面を形成する方法が開示されている。しかしながら、当該方法によれば、比較的幅狭のゴムリボンの使用を前提としているため、タイヤ断面高さが110mm未満である空気入りタイヤにおいて、走行時に大きな歪みが作用する領域のタイヤ内周面にリボン界面が形成され、上記の内周面クラックの発生を抑制することができない。
更に、下記特許文献4には、一体に押出成形されたゴム押出品の両縁部にゴムリボンを巻き付けて、インナーライナー部材を成形する方法が開示されている。しかしながら、当該方法は、ゴム押出品を用いることによりゴムリボンの巻き付け工程を低減し、生産性を高めるためのものであり、リボン巻き工法単独でインナーライナー部材を成形するものではない。そもそも、上記内周面クラックの問題に対しては、走行時に大きな歪みが作用する領域のタイヤ内周面におけるリボン界面を低減させることが大変重要となってくるが、上記いずれの製造方法もそのことを開示するものではない。
特開2002−178415号公報 特開2002−160508号公報 特開2002−79590号公報 特開2000−94542号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行時に大きな歪みが作用する領域のタイヤ内周面に発生するクラックを抑制しうる空気入りタイヤと、その空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ断面高さが110mm未満であり、一対のビードの間に架け渡されるように配されたカーカス層と、前記カーカス層のトレッド部外側に配されたベルト層と、前記カーカス層のタイヤ内側に配されたインナーライナー層とを備える空気入りタイヤにおいて、前記インナーライナー層が、幅広ゴムリボンをタイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付けてなる幅広ゴムリボン領域を有し、最内周側の一巻きの前記幅広ゴムリボンが、少なくとも前記ベルト層の端部よりタイヤ幅方向内側に15mmの位置からタイヤ断面最大幅位置にわたる領域のタイヤ内周面を形成するものである。
上記構成によれば、インナーライナー層の幅広ゴムリボン領域を構成する幅広ゴムリボンのうち、最内周側の幅広ゴムリボンが、少なくともベルト層の端部近傍からタイヤ断面最大幅位置にわたる領域のタイヤ内周面を形成することにより、タイヤ断面高さが110mm未満の空気入りタイヤにおいて、走行時に大きな歪みが作用する領域のタイヤ内周面におけるリボン界面を低減することができ、該リボン界面に起因して発生する内周面クラックを抑制することができる。
上記において、前記幅広ゴムリボン領域が、幅寸法が60mmを超える幅広ゴムリボン
をタイヤ外側に向かってタイヤ径方向内側にずらして巻き付けてなるとともに、前記ベル
ト層の端部よりタイヤ幅方向内側に15mmの位置からタイヤ径方向内側端にわたって配されているものが好ましい。
上記構成によれば、幅広ゴムリボン領域が、幅寸法が60mmを超える幅広ゴムリボンを巻き付けてなることにより、タイヤ断面高さが110mm未満である空気入りタイヤの、走行時に大きな歪みが作用する領域を含むタイヤ内周面のリボン界面を効率的に低減することができる。そして、その幅広ゴムリボン領域が、幅広ゴムリボンをタイヤ外側に向かってタイヤ径方向内側にずらして巻き付けてなるとともに、ベルト層の端部近傍からタイヤ径方向内側端にわたって配されていることにより、幅広ゴムリボン間に形成されるリボン界面がインナーライナー層のタイヤ径方向内側端近傍に配される。その結果、走行時に大きな歪みが作用する領域の近傍に幅広ゴムリボン間のリボン界面が形成されることなく、内周面クラックの発生をより好適に抑制することができる。
上記において、前記インナーライナー層は、前記幅広ゴムリボン領域と、前記幅広ゴムリボンよりも幅寸法が小さい幅狭ゴムリボンをタイヤ周方向に沿ってらせん状に巻き付けて形成され、前記幅広ゴムリボン領域の縁部に続け合わされた幅狭ゴムリボン領域とからなるものが好ましい。
上記構成によれば、インナーライナー層を構成するインナーライナー部材の重量バランス及び均一性を高めることができ、幅広ゴムリボンを用いながらもタイヤのユニフォミティを良好に確保することができる。
また、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、インナーライナー部材を形成し、タイヤ内周面に配してインナーライナー層とする工程を備える空気入りタイヤの製造方法において、幅広ゴムリボンを周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付け、前記インナーライナー部材を構成する幅広ゴムリボン領域を形成し、少なくともベルト層の端部よりタイヤ幅方向内側に15mmの位置からタイヤ断面最大幅位置にわたる領域のタイヤ内周面を、最内周側の一巻きの前記幅広ゴムリボンにより形成するものである。
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法によれば、少なくともベルト層の端部近傍からタイヤ断面最大幅位置にわたる領域のタイヤ内周面を、最内周側の幅広ゴムリボンによって形成することにより、その領域のタイヤ内周面に形成されるリボン界面を低減することができる。その結果、偏平率が小さい空気入りタイヤであっても、走行時に大きな歪みが作用する領域における内周面クラックの発生を抑制することができる。
上記において、前記幅広ゴムリボン領域の形成工程は、幅寸法が60mmを超える幅広ゴムリボンを外周側に向かって前記インナーライナー部材の幅方向外側にずらして巻き付けるものであり、形成した前記幅広ゴムリボン領域を前記インナーライナー部材の端部に配するものが好ましい。
上記構成によれば、幅広ゴムリボン領域が、幅寸法が60mmを超える幅広ゴムリボンを巻き付けてなることにより、ベルト層の端部近傍からタイヤ断面最大幅位置にわたる領域を含むタイヤ内周面のリボン界面を効率的に低減することができる。そして、その幅広ゴムリボンを外周側に向かってインナーライナー部材の幅方向外側にずらして巻き付け、形成した幅広ゴムリボン領域をインナーライナー部材の端部に配することにより、幅広ゴムリボン間に形成されるリボン界面をインナーライナー層のタイヤ径方向内側端近傍に配することができる。その結果、走行時に大きな歪みが作用する領域に幅広ゴムリボン間のリボン界面が形成されることなく、内周面クラックの発生をより好適に抑制することができる。
上記において、前記幅広ゴムリボンよりも幅寸法が小さい幅狭ゴムリボンを周方向に沿ってらせん状に巻き付け、前記幅広ゴムリボン領域の縁部に続け合わされる幅狭ゴムリボン領域を形成する工程を備えるものが好ましい。
上記構成によれば、インナーライナー層を構成するインナーライナー部材の重量バランス及び均一性を高めることができ、幅広ゴムリボンを用いながらもタイヤのユニフォミティを良好に確保することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を示す子午線半断面図である。図2は、その空気入りタイヤが備えるインナーライナー層の構造を模式的に示す断面図である。
タイヤTは、一対のビード部1と、ビード部1から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端にショルダー部を介して連なるトレッド部3とを備える。ビード部1には、ビードワイヤの収束体である環状のビード1aと、ビード1aのタイヤ径方向外側に配されたビードフィラー1bとが配設されている。カーカス層4は、ポリエステルコード等のコードをタイヤ赤道線Cに対して略90°の角度で平行配列した少なくとも1枚のカーカスプライからなり、本実施形態では一対のビード1aの間に2枚のカーカスプライが架け渡されるように配されている。
カーカス層4のトレッド部外側には、たが効果による補強を行うベルト層6が配設されている。ベルト層6は、スチールコードがタイヤ赤道線Cに対して20°前後に傾斜した2枚のベルトプライを、該スチールコードの傾斜方向が互いに逆向きになるように積層してなる。ベルト層6のタイヤ外側には、上記たが効果を補強するベルト補強層7が配され、更にそのタイヤ外側にはトレッドゴム8が配されている。
一方、カーカス層4のタイヤ内側には、タイヤの内圧を保持するためのインナーライナー層5が配されている。インナーライナー層5は、インナーライナー部材12がタイヤ内周面に配されてなり、ベルト層6の端部E近傍からタイヤ径方向内側端にわたる領域に配された幅広ゴムリボン領域10と、ベルト層6の端部E近傍からタイヤ赤道線Cにわたる領域に配された幅狭ゴムリボン領域11とを有する。
図2に示すように、本実施形態の幅広ゴムリボン領域10は、幅広ゴムリボン10aをタイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて2周巻き付けることで形成されている。即ち、説明の便宜上、幅広ゴムリボン10a´と幅広ゴムリボン10a´´とを区別して記載しているが、これらは連続した1本の幅広ゴムリボン10aである一方、幅狭ゴムリボン領域11は、幅広ゴムリボン10aよりも幅寸法が小さい幅狭ゴムリボン11aをタイヤ周方向に沿ってらせん状に多数周巻き付けることで形成されており、幅広ゴムリボン領域10の縁部に続け合わされている。
タイヤTは、タイヤ断面高さHが110mm未満に設定されており、そのためベルト層6の端部E近傍からタイヤ断面最大幅位置Wにわたる領域20には、走行中に大きな歪みが作用する。しかしながら、その領域20のタイヤ内周面は、幅広ゴムリボン領域10を構成する幅広ゴムリボン10aのうち、最内周側に配された幅広ゴムリボン10a´により形成されており、これによって領域20のタイヤ内周面に形成されるリボン界面が低減され、該リボン界面に起因して発生する内周面クラックが好適に抑制される。ここで、タイヤ断面最大幅位置Wとは、タイヤ子午線断面におけるタイヤプロファイルの最大幅位置を意味し、図1に示すような外側に膨出するリムプロテクタ9は考慮しないものとする。
次に、上記の空気入りタイヤの製造方法について説明する。まず、成形ドラムの外周面に、図3に示すようなインナーライナー部材12を形成する。詳しくは、幅広ゴムリボン10aをタイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付けて幅広ゴムリボン領域10を形成し、続いて幅狭ゴムリボン11aを同様にして巻き付け、幅広ゴムリボン領域10の縁部に続け合わせて幅狭ゴムリボン領域11を形成する。このとき、幅広ゴムリボン領域10は、幅広ゴムリボン10aを外周側に向かってインナーライナー部材12の幅方向外側(図3の右側)にずらして巻き付けて形成され、インナーライナー部材12の端部に配される。また、最内周側の幅広ゴムリボン10a´が、タイヤ成形時に少なくとも上記領域20のタイヤ内周面を形成するように配される。
インナーライナー部材12は、例えば図4に示す装置を用いて形成することができる。成形ドラム15は、軸16を中心としてR方向に回転可能に構成されていると共に、不図示の移動機構によりドラム軸方向に水平動可能に構成されている。ゴムリボン供給装置17は、所定形状の口金を介してゴムリボンを押出成形しうる押出機を備えており、幅広ゴムリボン10a又は幅狭ゴムリボン11aを成形ドラム15に供給する機能を有する。制御装置18は、ゴムリボン供給装置17の作動、成形ドラム15の回転及び水平動を制御する機能を有する。
上記の装置によれば、まず、成形ドラム15の外周面に幅広ゴムリボン10aの巻き付け始端を固定し、成形ドラム15を回転させながら水平動させることで、幅広ゴムリボン10aを巻き付けて幅広ゴムリボン領域10を形成することができる。続いて、幅広ゴムリボン領域10の縁部に幅狭ゴムリボン11aの巻き付け始端を固定し、上記と同様にして幅狭ゴムリボン領域11を形成することができる。成形ドラム15の回転速度及び水平動速度は、制御装置18により適切に調節され、所定の寸法及び断面形状を有するインナーライナー部材12が形成される。
幅広ゴムリボン10a及び幅狭ゴムリボン11aの断面形状は特に限られるものではなく、横長矩形や台形などを採用することができる。なお、幅狭ゴムリボン領域11を先に形成し、その縁部に続け合わせるようにして幅広ゴムリボン領域10を形成しても構わない。幅広ゴムリボン領域10を先に形成する場合、幅広ゴムリボン10aの断面形状は台形であることが好ましく、これにより幅広ゴムリボン領域10の縁部に幅狭ゴムリボン11aを巻き付けやすくなって、継ぎ目における段差を抑制することができる。
幅広ゴムリボン10aは、ずらし量を10mm以下として、好ましくは5mm以下としてらせん状に巻き付けられることが好ましい。該ずらし量が10mmを超えると、幅広ゴムリボン10aの巻き付け始端及び巻き付け終端の近傍に、幅広ゴムリボン10aが配されないスペースが比較的大きく形成される場合があり、タイヤの内圧保持の観点から好ましくない。なお、ずらし量が0mmであると、縁部に続け合わされる幅狭ゴムリボン11aとの継ぎ目に段差が発生し、ユニフォミティが損なわれる場合がある。
インナーライナー部材12を形成した後は、従来のタイヤ製造工程と同様にして行うことができる。即ち、インナーライナー部材12の外周側に所定幅のカーカスプライを巻き付けて円筒状に形成し、その端部近傍に外挿したビード1aを介して該カーカスプライの端部を巻き返した後、ビード1a同士の間隔を狭めながらカーカスプライの中央部を膨出変形させる。この動作に伴って、インナーライナー部材12の中央部も膨出変形し、図3に示す形状から図2に示すようなタイヤ内周面に沿った形状に変形する。
その後、カーカスプライのトレッド部3外側にベルト層6、ベルト補強層7及びトレッドゴム8を配設し、必要に応じて他のゴム部材を貼り付けて生タイヤを成形する。インナーライナー部材12はタイヤ内周面に配されてインナーライナー層5となり、少なくとも領域20のタイヤ内周面を最内周側の幅広ゴムリボン10a´により形成する。
上述した内周面クラックの抑制効果は、幅広ゴムリボン10a´が領域20のタイヤ内周面を形成することにより奏されるが、幅広ゴムリボン10a´のタイヤ幅方向内側の端部は、ベルト層6の端部Eからタイヤ幅方向内側15mmの位置に達することが好ましく、これによって領域20のベルト層6の端部E近傍におけるリボン界面を確実に低減して、内周面クラックを効果的に抑制することができる。
幅広ゴムリボン10aの幅寸法は、60mmを超えるものが好ましく、70mmを越えるものがより好ましい。これによりリボン界面を効率的に低減しうるとともに、幅広ゴムリボン領域10を少ない巻き付け回数で形成して、幅広ゴムリボン10a間に形成されるリボン界面を低減することができる。なお、タイヤ断面高さが110mm未満の空気入りタイヤにおいては、幅広ゴムリボン10aの幅寸法が110mmまであれば、領域20のタイヤ内周面を形成するのに十分である。一方、幅狭ゴムリボン11aの幅寸法は、30mm未満であることが好ましく、15mmを超えて30mm未満であるものが例示される。これにより、幅狭ゴムリボン領域11を精度良く形成することができ、ユニフォミティが良好なインナーライナー部材12を精度良く形成することができる。
本実施形態では、幅広ゴムリボン領域10が、幅広ゴムリボン10aをらせん状に重ねて2周巻き付けることで形成されている。これにより、幅広ゴムリボン10a間に形成されるリボン界面を極力低減して、内周面クラックを効果的に抑制しうるとともに、幅広ゴムリボン領域10の形成時間を短縮することができる。
なお、ゴム押出し品を1周巻き付けして幅広ゴムリボン領域を形成する場合には、タイヤサイズ等に応じて異なる口金を準備する必要が生じるが、本実施形態のように幅広ゴムリボン10aをらせん状に複数周巻き付けるものであれば、単一の口金で種々のタイヤサイズに対応することができ、コストや作業性の点で有利となる。また、幅広ゴムリボン10aの厚みは比較的小さくなり、タイヤ周方向のジョイント部における段差が低減され、インナーライナー部材12のユニフォミティの点においても有利となる。
本実施形態では、幅広ゴムリボン10aをタイヤ外側に向かってタイヤ径方向内側にずらして巻き付けてなる幅広ゴムリボン領域10が、ベルト層6の端部E近傍からタイヤ径方向内側端にわたって配されていることにより、幅広ゴムリボン10a´と幅広ゴムリボン10a´´との間に形成されるリボン界面が、インナーライナー層5のタイヤ径方向内側端近傍に配されている。その結果、領域20の近傍に該リボン界面が形成されることなく、内周面クラックの発生をより好適に抑制することができる。
本発明では、各ゴムリボン10a、11aの厚みは特に限られるものではなく、インナーライナー部材12に応じた厚みのゴムリボン10a、11aを適宜に使用しうるが、本実施形態の幅広ゴムリボン10aの厚みとしては0.4〜1.0mmが例示される。
[別実施形態]
前述の実施形態では、幅広ゴムリボン10aが、タイヤ成形時ではタイヤ外側に向かってタイヤ径方向内側に、インナーライナー部材成形時では外周側に向かってインナーライナー部材12の幅方向外側にずらして巻き付けられる例を示したが、幅広ゴムリボン10aのずらし方向は前記の逆でも構わない。かかる場合、幅広ゴムリボン10a間に形成されるリボン界面が、ベルト層6の端部Eよりもタイヤ幅方向内側に配されることが好ましい。
本発明の効果を具体的に示すため、耐久性試験を行ったので以下に説明する。試験はJISD4230に規定する方法に従って行い、図1に示すタイヤ構造を有するタイヤサイズ205/40R17 80V(タイヤ断面高さ80mm)のテストタイヤを用いて、走行距離と故障との関係について調査した。
幅狭ゴムリボン(幅18mm、厚み1.2mm)のみを用いて形成したインナーライナー部材からなるインナーライナー層を備える空気入りタイヤを従来例とした。また、前述の実施形態で示したように、上記幅狭ゴムリボンと幅広ゴムリボン(幅95mm、厚み0.6mm)とを用いて形成したインナーライナー部材からなるインナーライナー層を備える空気入りタイヤを実施例とした。試験結果を表1に示す。
Figure 0004840965
表1に示すように、従来例では、走行距離が7000kmを越えた時点でタイヤ内周面にクラックが確認された。このクラックは、ベルト層の端部近傍からタイヤ断面最大幅位置にわたる領域のタイヤ内周面において、ゴムリボンの界面に沿って周方向に発生したものであった。一方、実施例では、走行距離が12000kmを越えた時点においてもクラック等の故障が確認されなかった。以上の結果から、実施例では内周面クラックの発生が抑制されており、従来例に比べて耐久性に優れていることがわかる。
本発明に係る空気入りタイヤの一例を示す子午線半断面図 インナーライナー層の構造を模式的に示す断面図 インナーライナー部材の構造を模式的に示す断面図 ゴムリボンの巻き付けを行う装置を示す概略構成図
符号の説明
1 ビード部
1a ビード
3 トレッド部
4 カーカス層
5 インナーライナー層
6 ベルト層
10 幅広ゴムリボン領域
10a 幅広ゴムリボン
11 幅狭ゴムリボン領域
11a 幅狭ゴムリボン
12 インナーライナー部材
15 成形ドラム
E ベルト層の端部
W タイヤ断面最大幅位置

Claims (6)

  1. タイヤ断面高さが110mm未満であり、一対のビードの間に架け渡されるように配されたカーカス層と、前記カーカス層のトレッド部外側に配されたベルト層と、前記カーカス層のタイヤ内側に配されたインナーライナー層とを備える空気入りタイヤにおいて、
    前記インナーライナー層が、幅広ゴムリボンをタイヤ周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付けてなる幅広ゴムリボン領域を有し、最内周側の一巻きの前記幅広ゴムリボンが、少なくとも前記ベルト層の端部よりタイヤ幅方向内側に15mmの位置からタイヤ断面最大幅位置にわたる領域のタイヤ内周面を形成することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記幅広ゴムリボン領域が、幅寸法が60mmを超える幅広ゴムリボンをタイヤ外側に向かってタイヤ径方向内側にずらして巻き付けてなるとともに、前記ベルト層の端部よりタイヤ幅方向内側に15mmの位置からタイヤ径方向内側端にわたって配されている請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記インナーライナー層は、前記幅広ゴムリボン領域と、前記幅広ゴムリボンよりも幅寸法が小さい幅狭ゴムリボンをタイヤ周方向に沿ってらせん状に巻き付けて形成され、前記幅広ゴムリボン領域の縁部に続け合わされた幅狭ゴムリボン領域とからなる請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
  4. インナーライナー部材を形成し、タイヤ内周面に配してインナーライナー層とする工程を備える空気入りタイヤの製造方法において、
    幅広ゴムリボンを周方向に沿ってらせん状に重ねて巻き付け、前記インナーライナー部材を構成する幅広ゴムリボン領域を形成し、少なくともベルト層の端部よりタイヤ幅方向内側に15mmの位置からタイヤ断面最大幅位置にわたる領域のタイヤ内周面を、最内周側の一巻きの前記幅広ゴムリボンにより形成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  5. 前記幅広ゴムリボン領域の形成工程は、幅寸法が60mmを超える幅広ゴムリボンを外周側に向かって前記インナーライナー部材の幅方向外側にずらして巻き付けるものであり、
    形成した前記幅広ゴムリボン領域を前記インナーライナー部材の端部に配する請求項4記載の空気入りタイヤの製造方法。
  6. 前記幅広ゴムリボンよりも幅寸法が小さい幅狭ゴムリボンを周方向に沿ってらせん状に巻き付け、前記幅広ゴムリボン領域の縁部に続け合わされる幅狭ゴムリボン領域を形成する工程を備える請求項4又は5記載の空気入りタイヤの製造方法。
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