JP4831946B2 - 非水電解質電池 - Google Patents
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Description
上記構成であれば、第1工程の後に行われる第2工程における活物質の堆積速度は、第1工程における活物質の堆積速度よりも全て大きくなるので、活物質の形成に要する時間をより短縮することかできる。したがって、充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池用電極を一層効率的に製造することができる。
上記構成であれば、活物質層形成工程において、活物質を大気にさらすことなく連続形成できるので、活物質層内に不純物が混入するのを防止できる。加えて、最初の工程で減圧雰囲気とすれば、その後の工程で減圧雰囲気とするための再度の減圧処理が不要となるので、リチウム二次電池用電極の生産性の向上を図ることができる。
上記構成の如く、蒸着源が各工程毎に設けられていれば、短時間で活物質層形成工程を終了させることができるので、リチウム二次電池用電極の生産性が更に向上する。
リチウム二次電池等の二次電池の集電体としては、一般に銅箔などの金属箔が用いられており、この金属箔表面には、通常、腐食を防止する目的で施された防錆処理により、表面層が形成されている。ここで、防錆処理としては、クロメート処理、シランカップリング処理、ベンゾトリアゾール処理などが知られている。また、そのような防錆処理が施されていない場合であっても、金属箔の表面には酸化膜が形成されている場合がある。そこで、集電体上にこのような表面層が存在する場合には、表面層の少なくとも一部を除去し、集電体材料を円滑に活物質層へ拡散することにより、集電体と活物質層との密着性を向上させるものである。
ドライエッチング法であれば、ウエットエッチング法の如く洗浄等の工程が不要となるので、リチウム二次電池用電極を容易に製造することができる。
蒸着法による活物質層の形成も、ドライエッチング(イオンビームまたはプラズマの照射等)法による集電体表面層の除去も、減圧雰囲気下で行われるものである。したがって、エッチング工程と活物質層形成工程とが減圧雰囲気を保持したまま連続して行われる構成とすれば、ドライエッチング工程で減圧雰囲気にすると、活物質層形成工程で減圧雰囲気とするための再度の減圧処理が不要となるので、リチウム二次電池用電極の生産性の向上を図ることができる。
加えて、ドライエッチング工程及び活物質層形成工程において、集電体や活物質を大気にさらすことがないので、集電体表面や活物質層内に不純物が混入するのを防止できる。
上記構成の如く、エッチング工程と活物質層形成工程とが、同一の蒸着装置内で集電体を移動させながら行われていれば、リチウム二次電池用電極の生産性が更に向上する。
シリコンは理論容量が大きいので、シリコンを活物質として用いると、リチウム二次電池の容量が大きくなる。
シリコンとして非晶質シリコンを用いれば、非晶質シリコンは多結晶シリコンや単結晶シリコンに比べて膜形成が容易となる。即ち、結晶性を有するシリコン膜を作製する場合には、高温のプロセス(550℃以上)、又は特殊処理(レーザーアニール等)が必要となるが、非晶質シリコン膜を作製する場合には、これらの処理等が不要だからである。なお、非晶質シリコンの充放電特性は、多結晶シリコンや単結晶シリコンと同等かそれ以上であるので、特性面での問題はない。また、シリコンとしては、非晶質シリコンの他、微結晶シリコンであってもよい。
本発明は、リチウム二次電池用電極の製造方法であり、負極及び正極のいずれの製造にも適用することができるものであるが、活物質として上記シリコン等の材料を用いる場合には、一般的に負極として用いられる。
これらの金属はリチウムと合金化しないので、リチウム二次電池のサイクル特性が劣化するのを抑制することができる。
図1に示すように、本発明に用いる薄膜形成装置6内には、集電体1が巻回されたローラー2とローラー3とが設けられており、これらローラー2、3の間には支持ローラー7が配置されている。この支持ローラー7の外周面に沿って、上記集電体1がローラー2からローラー3に、あるいはローラー3からローラー2に移動する構造である。また、上記支持ローラー7の外周部に臨む位置にはイオン照射源4と蒸着源5とが設けられており、イオン照射源4と対向する領域において、集電体1のエッチングが行われる一方、蒸着源5と対向する領域において、集電体1の上に蒸着法により薄膜(活物質層)が形成される。尚、イオン照射源4と蒸着源5との間には、それぞれのプロセスを行う領域の圧力を独立に制御するための仕切り8が設けられている。また、上記蒸着源5は電子ビーム蒸着法による蒸着源であり、蒸着材料としては純度99.99%のシリコンを用いている。
負極は上記薄膜形成装置を用いて作製した。具体的には、以下の如く、エッチング工程と蒸着工程とから成り、これらの工程を集電体1の両面に行った。尚、集電体1としては、表面に電解法で銅を析出させることにより、表面を粗面化した圧延銅箔(厚み26μm)を用いた。使用した集電体表面の算術平均粗さRaは0.5μmである。この算術平均粗さRaは、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に定められており、例えば触針式表面粗さ計により測定できる。
・第1エッチング工程
まず、集電体1をローラー2に巻き取った状態としておき、集電体1を矢印A方向に連続的に移動させ、ローラー3でこれを巻き取りながら、集電体1におけるイオン照射源4と対抗する領域(集電体1における送り方向長さは20cm)において、集電体1にイオンビームを照射して、集電体1の表面をエッチングした。
次に、1回目のイオンビーム照射が行われた集電体1をローラー3に巻き取った後、集電体1を矢印B方向(上記A方向とは逆方向)に移動させ、これをローラー2で巻き取りながら、イオン照射源4と対向する領域において、集電体1に2回目のイオンビームを照射して、集電体1の表面を再度エッチングした。
このときのイオンビーム照射条件を表1に示す。照射したイオン種にはArガスを用いた。
・第1蒸着工程
以上のようにして、2回のイオンビーム照射を行った集電体1をローラー2に巻き取った後、集電体1を矢印A方向に連続的に移動させ、これをローラー3で巻き取りながら、蒸着源5と対向する領域(集電体1における送り方向長さは80cm)における集電体1上にシリコン薄膜を堆積させて(蒸着条件は表2に示す通り)、低堆積速度層を形成した。
イオン照射および1段階目のシリコン薄膜の形成が行われた集電体1をローラー3に巻き取った後、集電体1を矢印B力向に移動させ、これをローラー2で巻き取りながら、蒸着源5により2段階目のシリコン薄膜を低堆積速度層上に堆積させて(蒸着条件は表2に示す通り)、高堆積速度層を形成した。この高堆積速度層と上記低堆積速度層とにより、負極活物質層が構成される。
以上述べた手順により集電体1の片側の面への負極活物質層の形成が行われた集電体1を、ローラー2に巻き取り、ロール状態のまま薄膜形成装置から取り出した。尚、薄膜形成装置から取り出した状態の集電体には、ロール内面側のみに負極活物質層が形成されている。
次に、ロール反転装置を用いて集電体1の内面側と外面側を反転させた後、集電体1を薄膜形成装置のローラー2に取り付けた。尚、この際、集電体1には、ロール外面側のみに負極活物質層が形成されている。
しかる後、上記エッチング工程、上記蒸着工程と同じ手順によって、負極活物質層が形成されていない側の面にイオン照射およびシリコン薄膜の形成を行って、当該面にも負極活物質層を形成した。
先ず、出発原料としてLi2CO3及びCoCO3を用い、Li:Coの原子比が1:1となるように両者を秤量して乳鉢で混合し、これを直径17mmの金型でプレスした。次に、これを加圧成形した後、空気中において800℃で24時間焼成して、LiCoO2の焼成体を得た。最後にこの焼成体を乳鉢で粉砕し、平均数径20μmのLiCoO2粉末を作製した。
先ず、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを体積比3:7で混合した混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットルの割合で溶解させた。次に、これを5℃まで冷却し、二酸化炭素雰囲気下で,二酸化炭素ガスを電解液に300ml/minで20分間吹き込んだ。最後に、これを25℃まで昇温して、電解液とした。
上記の正極、負極及び非水電解液を使用して、小型ラミネートリチウム二次電池を作製した。図2は作製したリチウム二次電池の平面図、図3は図2のA−A線矢視断面図である。 上記リチウム二次電池の具体的な構造は、図2及び図3に示すように、電極体25、外装体21などからなる。上記正負両極はポリエチレン多孔質体から成るセパレータを介して対向配置されて電極体25を構成し、この電極体25は外装体21内に収容されている。この外装体21の周縁は封止部22によって封止されており、外装体21内には上記電解液が注入されている。また、上記負極にはニッケルから成る負極タブ24が、上記正極にはアルミニウムから成る正極タブ23が、それぞれ取り付けられており、これら両タブ23,24は上記封止部22を通り外部に延出されている。これにより、電池内部に生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部へ取り出し得るようになっている。なお、このような電池は、常温,常圧の二酸化炭素ガス雰囲気下で作製した。
(実施例)
下記表3に示すように、低堆積速度層形成時の集電体送り速度を0.35m/min、低堆積速度層の膜厚を約2.3μmとし、且つ、高堆積速度層形成時の集電体送り速度を0.35m/min、高堆積速度層の膜厚を約5.7μmとした他は、上記発明を実施するための最良の形態と同様にして、負極活物質層と電池とを作製した。
このようにして作製した負極活物質層及び電池を、以下それぞれ、本発明活物質層a及び本発明電池Aと称する。
下記表3に示すように、低堆積速度層を形成せず、且つ、高堆積速度層形成時の集電体送り速度を0.25m/min、高堆積速度層の膜厚を約8μmとする他は、上記実施例と同様にして、負極活物質層と電池とを作製した。
このようにして作製した負極活物質層及び電池を、以下それぞれ、比較活物質層x及び比較電池Xと称する。
上記本発明活物質層a及び比較活物質層xについてラマン発光分析を行い、その結晶性を同定した。
その結果、いずれのシリコン薄膜についても、480cm−1近傍のピークが実質的に認められたものの、520cm−1近傍のピークが実質的に認められなかった。このことから、いずれのシリコン薄膜も非晶質シリコン薄膜であることが確認された。
上記本発明電池A及び比較電池Xについて、下記に示す条件(温度は25℃)で充放電を行い、1サイクル目の放電容量、充放電効率及び100サイクル目の容量維持率について調べたので、その結果を上記表3に示す。尚、1サイクル目の充放電効率及び100サイクル目の容量維持率は、下記数1、数2により算出した。
充電条件:充電電流26mAで充電終止電圧4.2Vとなるまで充電するという条件
放電条件:放電電流26mAで放電終止電圧2.75Vとなるまで放電するという条件
そこで、このような実験結果となった理由を明らかにすべく、集電体の変形及び集電体に対する活物質薄膜の密着性について調べると共に、活物質薄膜の断面観察を行ったので、それらについて下記に示す。
100サイクル充放電を行った後の本発明電池A及び比較電池Xについて、各負極を肉眼で観察し、集電体の変形および集電体に対する活物質薄膜の密着性を調べた。
しかし、本発明電池Aに用いる負極では、極坂内の一部に局所的な活物質の剥離が観察されただけであるのに対して、比較電池Xに用いる負極では、極板内の約半分の領域で、活物質の剥離が観察された。以上のことから、本発明電池Aに用いる負極は、比較電池Xに用いる負極に比べて、集電体に対する活物質層の密着性が優れていると考えられる。
本発明電池A及び比較電池Xに用いる負極における活物質層形成後(充放電前)の電極断面を走査型電子顕微鏡により観察した。図4は本発明電池Aに用いる負極の模式的断面図、図5は比較電池Xに用いる負極の模式的断面図である。
これは、本発明電池Aに用いる負極においては、活物層形成の第1段階を低堆積速度で形成する低堆積速度層11が設けられているので、高堆積速度層13のみの比較電池Xに用いる負極に比べて、集電体1の表面谷部における埋め込み性が向上したことによるものと考えられる。
(1)負極活物質として用いられる材料は、上記シリコンに限定するものではなく、リチウムを吸蔵、放出することができるものであれば、特に限定されるものではない。但し、リチウムと合金化することによりリチウムを吸蔵する材料、例えば、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、カリウム、インジウムなどが好ましい。
4 イオン照射源
5 蒸着源
6 薄膜形成装置
11 低堆積速度層
12 空隙
13 高堆積速度層
Claims (15)
- 活物質からなる薄膜を蒸着法にて集電体上に堆積して、活物質層を形成する活物質層形成工程を備えたリチウム二次電池用電極の製造方法において、
前記集電体の表面には凹凸が形成されると共に、前記活物質層形成工程が活物質の堆積速度が異なる複数の工程からなり、且つ、前記集電体上に最初に活物質を堆積させる工程の堆積速度が、それ以降の工程のうち少なくとも1つの工程における活物質の堆積速度より小さくなるように規制されることを特徴とするリチウム二次電池用電極の製造方法。 - 前記活物質層形成工程が活物質の堆積速度が異なる2つの工程からなり、且つ、前記集電体上に最初に活物質を堆積させる第1工程の堆積速度が、この第1工程の後に行われる第2工程における活物質の堆積速度より小さくなるように規制することにより、前記集電体側から順に、低堆積速度層と高堆積速度層とを形成する、請求項1記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記堆積速度が異なる複数の工程からなる活物質層形成工程が、減圧雰囲気を保持したまま連続して行われる、請求項1又は2記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記堆積速度が異なる複数の工程に対応する蒸着源が、同一装置内で各工程毎に設けられ、前記集電体を移動させながら蒸着を行うことを特徴とする、請求項3記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記集電体上に表面層が形成されている場合に、前記活物質層形成工程の前に、集電体上に形成された表面層の少なくとも一部を除去するエッチング工程を備える、請求項1〜4に記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記表面層が、防錆処理層又は集電体の表面酸化膜である、請求項5記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記エッチング工程がドライエッチング法により行われる、請求項5又は6記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記ドライエッチング法として、イオンビーム照射法又はプラズマ照射法を用いる、請求項7記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記エッチング工程と活物質層形成工程とが減圧雰囲気を保持したまま連続して行われる、請求項7又は8記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記エッチング工程と活物質層形成工程とが、同一の装置内で前記集電体を移動させながら行われる、請求項9記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記集電体の両面に前記活物質層が形成される、請求項1〜10記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記活物質層には、少なくともシリコンが含まれている、請求項1〜11記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記シリコンが非晶質シリコンである、請求項12記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- リチウム二次電池用電極が負極である、請求項1〜13記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記集電体が、銅、銅を含む合金、ニッケル、及びステンレスから成る群から選択される1種から成るか、又は2種以上を積層したものから成る、請求項14記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
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