JP4183395B2 - リチウム二次電池用電極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池用電極の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、研究開発が盛んに行われているリチウム二次電池は、用いられる電極により充放電電圧、充放電サイクル寿命特性、保存特性などの電池特性が大きく左右される。このことから、電極に用いる活物質を改善することにより、電池特性の向上が図られている。
【0003】
負極活物質としてリチウム金属を用いると、重量当たり及び体積当たりともに高いエネルギー密度の電池を構成することができるが、充電時にリチウムがデンドライト状に析出し、内部短絡を引き起こすという問題があった。
【0004】
これに対し、充電の際に電気化学的にリチウムと合金化するアルミニウム、シリコン、錫などを電極として用いるリチウム二次電池が報告されている(Solid State Ionics,113-115,p57(1998)) 。これらのうち、特にシリコンは理論容量が大きく、高い容量を示す電池用負極として有望であり、これを負極とする種々の二次電池が提案されている(特開平10−255768号公報)。しかしながら、この種の合金負極は、電極活物質である合金自体が充放電により微粉化し集電特性が悪化することから、十分なサイクル特性は得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人は、シリコン等を電極活物質とし、良好な充放電サイクル特性を示すリチウム二次電池用電極として、CVD法またはスパッタリング法などの薄膜形成方法により、集電体上に微結晶薄膜または非晶質薄膜を形成したリチウム二次電池用電極を提案している(特願平11−301646号など)。
【0006】
このようなリチウム二次電池用電極においては、集電体の成分が活物質薄膜に拡散することにより、集電体と活物質薄膜との密着性が保たれ、充放電サイクル特性が向上することがわかっている。しかしながら、集電体の成分が活物質薄膜に過度に拡散し過ぎると、充放電容量が低下し、充放電サイクル特性が悪くなることがわかっている。従って、優れた充放電サイクル特性を得るためには、集電体と活物質薄膜との界面の形成を最適な条件で制御して行うことが好ましい。
【0007】
また、リチウム二次電池の重量当り及び体積当りのエネルギー密度を高めるためには、集電体の両面上に活物質薄膜を形成することが好ましい。集電体の両面上に活物質薄膜を形成する場合にも、集電体と活物質薄膜との界面の形成を最適な条件で制御して行うことが好ましく、集電体の両面において集電体成分の活物質薄膜への拡散が実質的に同じになるように制御することが好ましい。
【0008】
本発明の目的は、集電体の両面上に活物質薄膜を堆積させてリチウム二次電池用電極を製造するにあたり、集電体の両面において集電体成分の活物質薄膜への拡散が実質的に同じになるように制御することができるリチウム二次電池用電極の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に従うリチウム二次電池用電極の製造方法は、銅からなる集電体の両面上にシリコンからなる活物質薄膜を堆積させてリチウム二次電池用電極を製造する方法であり、集電体の第1面上に活物質薄膜を堆積させた後、該第1面に対し裏側となる第2面上に活物質薄膜を堆積させ、集電体の両面において集電体成分の活物質薄膜への拡散が実質的に同じになるように、第2面上に活物質薄膜を堆積させる際の集電体表面の最高到達温度を、第1面上に堆積させる際の集電体表面の最高到達温度よりも低く、かつ100℃より高い温度に制御することを特徴としている。
【0019】
集電体の第1面上に活物質薄膜を堆積させた後、第2面上に活物質薄膜を堆積させると、集電体の温度は再度上昇して、第1面上の活物質薄膜への集電体成分の拡散がさらに進行し、充放電サイクル特性が低下するおそれがある。
【0020】
本発明では、第2面上に活物質薄膜を堆積させる際、このときの集電体表面の最高到達温度が、第1面上に活物質薄膜を堆積させた際の集電体表面の最高到達温度よりも低くなるように制御しているので、上記のような第1面上の活物質薄膜に対する悪影響を低減することができる。この結果、充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池用電極とすることができる。
【0021】
第2面上に活物質薄膜を堆積させる際の集電体表面の最高到達温度を、第1面上に活物質薄膜を堆積させる場合に比べ低くする方法としては、(1)第2面上に活物質薄膜を堆積させる際の投入エネルギーを第1面上に活物質薄膜を堆積させる際の投入エネルギーよりも小さくする方法、及び(2)第2面上に活物質薄膜を堆積させる際の集電体の冷却効率を、第1面上に活物質薄膜をさせる際の集電体の冷却効率よりも大きくする方法などが挙げられる。
【0022】
投入エネルギーを小さくする方法としては、スパッタリング法などの薄膜形成条件におけるパワー密度を低くする方法などが挙げられる。
本発明においては、第1面上の堆積工程と第2面上の堆積工程の間において、集電体を冷却する工程を備えてもよい。
【0023】
本発明においては、集電体が帯状の集電体であることが好ましい。このような帯状の集電体を用いることにより、複数個の電極に相当する面積の活物質薄膜を集電体上に堆積して形成することができ、活物質薄膜を堆積した後、該帯状の集電体を切断して、個々の電極に分割することができる。従って、帯状の集電体を用いることにより、効率的に生産性良くリチウム二次電池用電極を製造することができる。
【0024】
活物質薄膜を形成した後の帯状集電体の切断は、レーザー照射により切断する方法が好ましく用いられる。カッター等による機械的な切断方法で切断してもよいが、レーザー切断は、このようなカッター等の機械的切断に比べ、バリの発生や、歪みの発生が少なく、電池の組み立て等が行い易くなる。
【0025】
本発明においては、活物質薄膜を堆積する前の集電体を真空中または減圧雰囲気中で保存しておくことが好ましい。真空中または減圧雰囲気中で薄膜形成前の集電体を保存することにより、集電体の表面に付着している水分などの不純物を除去することができる。
【0030】
本発明における活物質薄膜は、リチウムを吸蔵・放出することができる材料から形成されるものであれば、特に限定されるものではないが、リチウムと合金化することによりリチウムを吸蔵する材料が好ましく用いられる。このような材料としては、シリコン、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、カリウム、インジウムなどが挙げられる。これらの中でも、特にシリコンは理論容量が高いので好ましく用いられる。シリコンとしては、非晶質シリコン薄膜または微結晶シリコン薄膜であることが好ましい。
【0031】
本発明において用いられる集電体は、リチウムと合金化しない金属から形成されることが好ましい。リチウムと合金化しない金属としては、例えば、銅などが挙げられる。集電体は厚みが薄いことが好ましく、金属箔であることが好ましい。従って、銅箔が好ましく用いられ、銅箔としては、表面に凹凸を有する銅箔が好ましく用いられる。表面粗さRaは、0.01〜2μm程度の集電体が好ましく用いられる。このような表面粗さRaを有する銅箔としては、電解銅箔が挙げられる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0033】
〔負極の作製〕
(参考例1)
図1に示す装置を用いて集電体の両面上に活物質薄膜としての非晶質シリコン薄膜を形成した。図1に示すように、この装置は、準備室1、成膜室2、及び収納室3の3つの部屋に仕切られており、準備室1には供給ローラー4が設けられており、収納室3には巻取りローラー5が設けられている。集電体10は、供給ローラー4から巻取りローラー5に送られる。
【0034】
成膜室2には、集電体10の一方面と対向する位置にターゲット6が設けられており、集電体10の他方面と対向する位置にターゲット7が設けられている。ターゲット6及びターゲット7には、それぞれ直流(DC)電源8及び9が接続されている。成膜室2においては、集電体の一方面及び他方面の上に同時にシリコン薄膜を堆積させることができる。
【0035】
集電体10は帯状の集電体であり、ここでは電解銅箔(厚さ18μm)を用いている。ターゲット6及び7としては、単結晶シリコンターゲット(P型、1Ωcm以下)を用いている。
【0036】
帯状集電体10は、供給ローラー4に巻き付けた状態で、成膜前に減圧下で1時間保管することにより、集電体表面に付着した水分等の不純物を除去した後用いた。集電体10の先端を巻取りローラー5に巻き取った状態で集電体10の位置を固定し、集電体10の両面上に非晶質シリコン薄膜を堆積した。成膜室2は、集電体10を導入する前に1×10-3Pa以下になるまで真空引きし、導入口からアルゴンガスを導入して圧力0.5Paに維持した。スパッタリング条件としては、パワー密度2.5W/cm2、ターゲットと基板(集電体)間の距離10cmとした。集電体10の両面上にシリコン薄膜を厚さ6μmとなるまで堆積させた。薄膜形成の間における集電体表面の最高到達温度は280℃であった。
【0037】
(比較例1)
図2に示す装置を用いて、集電体の上に非晶質シリコン薄膜を形成した。図2に示すように、集電体10をステンレスからなる支持体11の上に固定具14,15により固定し、DC電源13に接続された単結晶シリコンターゲット12(P型、1Ωcm以下)を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により集電体10の上に非晶質シリコン薄膜を形成した。集電体10としては参考例1と同様のものを用いた。装置内は、1×10-3Pa以下になるまで真空引きした後、アルゴンガスを導入口から圧力が0.5Paになるまで導入し、パワー密度:5W/cm2、ターゲット−基板間距離:10cmとして、厚み6μmになるまでシリコン薄膜を形成した。
【0038】
まずは、集電体10の一方面上にシリコン薄膜を形成した後、同様にして集電体の他方面上にもシリコン薄膜を形成した。ここでは、参考例1と同じスループットとするために、パワー密度を約2倍にしており、薄膜形成の間の集電体表面の最高到達温度は約300℃であった。
【0039】
(参考例2)
図1に示す薄膜形成装置を用い、本参考例では、集電体10を移動させながら集電体10の両面上に非晶質シリコン薄膜を堆積させた。集電体10の移動速度は20cm/分とした。この移動速度では、集電体10を供給ローラー4から巻取りローラー5に1回移動させるだけでは厚み6μmの薄膜を形成することができないので、集電体10を複数回供給ローラー4と巻取りローラー5の間で往復させ、厚み6μmのシリコン薄膜を集電体10の両面上に形成した。パワー密度は、比較例1と同じ5W/cm2としたが、集電体10は薄膜形成の間移動しているので、集電体表面の最高到達温度は280℃であった。
【0040】
図1に示す装置では、集電体10を水平方向に移動させ、ターゲットを集電体の上方及び下方に配置しているが、例えば、集電体10を垂直方向に移動するように配置し、その両側にターゲットを配置して、集電体の両面上に薄膜を形成してもよい。
【0041】
また、成膜室を複数に分割し、活物質薄膜の堆積を複数の工程に分割して行ってもよい。図3は、活物質薄膜の堆積を複数の工程に分割して行うための薄膜形成装置の一例を示す模式的断面図である。この装置では、準備室21、第1の成膜室22、冷却室23、第2の成膜室24、及び収納室25の5つの部屋が設けられている。準備室21には、集電体10を供給する供給ローラー26が設けられている。収納室25には、集電体10を巻き取る巻取りローラー27が設けられている。
【0042】
第1の成膜室22においては、集電体10の上方及び下方にターゲット28及び29がそれぞれ設けられており、それぞれのターゲットにはDC電源32及び33が接続されている。冷却室23においては、集電体を挟むように一対の冷却ローラー36及び37が設けられており、この冷却ローラー36及び37により薄膜が形成された集電体が冷却される。第2の成膜室24においては、集電体10の上方及び下方にそれぞれターゲット30及び31が設けられており、これらのターゲットにはそれぞれDC電源34及び35が接続されている。
【0043】
図3に示す装置では、成膜工程が第1の成膜室22と第2の成膜室24の2つに分割されているので、集電体表面の最高到達温度をさらに低下させることができる。また、第1の成膜室22と第2の成膜室24の間に冷却室23が設けられ、冷却ローラー36及び37によって集電体が冷却されているので、さらに集電体表面の最高到達温度を低下させることができる。従って、集電体表面の最高到達温度を従来法による場合と同程度の温度にしてもよい場合には、薄膜形成におけるパワー密度を高くすることができ、高い成膜速度を得ることができる。従って、電極の生産性を高めることができる。
【0044】
(参考例3)
図4に示す薄膜形成装置を用い、集電体の上にシリコン薄膜を形成した。集電体としては参考例1と同様のものを用いた。
【0045】
図4に示すように、この装置においては、準備室41、成膜室42、及び収納室43の3つの部屋が設けられている。準備室41には、集電体10を供給するための供給ローラー44が設けられている。収納室43においては、集電体10を巻き取るための巻取りローラー45が設けられている。準備室41と収納室43の間に位置する成膜室42には、蒸着源46が設けられている。この蒸着源46は、電子ビーム蒸着法によりシリコン薄膜を蒸着させることができる蒸発源である。蒸着源46の蒸着材料としてはシリコンチップ(純度99.999%以上)を用いた。
【0046】
装置内の圧力を1×10-3Pa以下に減圧した後、投入パワー10kW、蒸着源−集電体の距離40cmとして、集電体10の上に厚み6μmの非晶質シリコン薄膜を形成した。集電体10の移動速度は20cm/分とし、シリコン薄膜の厚みが6μmとなるまで、供給ローラー44と巻取りローラー45の間で往復させた。集電体の両面上に薄膜を形成した後、この装置から取り出し、1×10-3Pa以下の電気炉に入れ、400℃で1時間熱処理を行った。
【0047】
本参考例で用いている蒸着法は、スパッタリング法よりも相対的に成膜速度が大きい。従って、蒸着法を用いることにより、生産性を高めることが可能であるが、蒸着法を用いた場合、集電体成分が活物質薄膜に充分に拡散しない場合があるので、このような場合には、上記のように薄膜形成後熱処理を行う。この熱処理により、集電体成分である銅を、シリコン薄膜中に拡散することができ、シリコン薄膜の集電体に対する密着性を高めることができる。
【0048】
(実施例4)
図5に示す薄膜形成装置を用いて、集電体の上にシリコン薄膜を形成した。図5に示す薄膜形成装置は、集電体の一方面上に薄膜を形成した後、他方面上に薄膜を形成することができる装置である。
【0049】
図5に示すように、この装置は、準備室51、成膜室52、及び収納室53の3つの部屋を有している。準備室51には集電体10を供給するための供給ローラー54が設けられている。収納室53には、集電体10を巻き取るための巻取りローラー56が設けられている。
【0050】
成膜室52では、供給ローラー54より供給された集電体10を、ガイドローラー61で案内し、支持ローラー62に導く。支持ローラー62の外周面に対向するように、ターゲット57が設けられており、ターゲット57にはDC電源59が接続されている。支持ローラー62を通った集電体10は、一対の冷却ローラー63及び64の間を通り、この冷却ローラー63及び64により冷却された後、支持ローラー65に導かれる。支持ローラー65の外周面に対向するように、ターゲット58が設けられており、ターゲット58にはDC電源60が接続されている。支持ローラー65を通った集電体10はガイドローラー66を通り、収納室53の巻取りローラー56に巻き取られる。
【0051】
支持ローラー62の外周面では、ターゲット57により、集電体10の一方面上に非晶質シリコン薄膜が堆積される。次に支持ローラー65の外周面では、ターゲット58により集電体10の他方面上に非晶質シリコン薄膜が堆積される。ターゲット57及び58は、参考例1で用いたターゲットと同様のものであり、スパッタリング条件はパワー密度5W/cm2とし、ターゲットと基板間の距離は10cmとし、集電体10の移動速度は20cm/分とした。堆積するシリコン薄膜の厚みが集電体10の両面上において、それぞれ厚み6μmとなるまで、供給ローラー54と巻取りローラー56の間で往復させた。
【0052】
本実施例では、支持ローラー62及び支持ローラー65内に設けられた冷却手段により、集電体10を冷却するとともに、冷却ローラー63及び64によっても冷却している。なお、集電体10が供給ローラー54から巻取りローラー56に移動する時には、支持ローラー65内に設けられた冷却手段の冷却効率を、支持ローラー62内の冷却手段の冷却効率よりも大きくしている。このため、ターゲット57による薄膜形成の際の集電体表面の最高到達温度は約280℃であるのに対し、ターゲット58による薄膜形成の際の集電体表面の最高到達温度は約250℃に制御されている。従って、集電体の他方面上にシリコン薄膜を形成する際、集電体の温度がそれ程高くならないので、集電体の一方面上に形成されているシリコン薄膜へ集電体成分が拡散するのを防止することができる。このため、集電体の両面において集電体成分が同程度に拡散した状態とすることができる。
【0053】
また、集電体10を供給ローラー54から巻取りローラー56に移動させた後、逆方向に移動させて、巻取りローラー56から供給ローラー54に移動させる時には、支持ローラー62内の冷却手段の冷却効率を、支持ローラー65内の冷却手段の冷却効率よりも大きくしている。従って、ターゲット58による薄膜形成の際の集電体表面の最高到達温度が約280℃となり、ターゲット57による薄膜形成の際の集電体表面の最高到達温度が約250℃となる。
【0054】
(実施例5)
図5に示す薄膜形成装置を用い、支持ローラー62と支持ローラー65内の冷却装置の冷却効率を同等にし、集電体10を供給ローラー54から巻取りローラー56に移動させる場合には、ターゲット58に投入するパワー密度を3W/cm2に低減させることにより、集電体の他方面上に薄膜を形成する際の集電体表面の最高到達温度を250℃となるように制御した。また、集電体10を巻取りローラー56から供給ローラー54に逆方向に移動させて薄膜を形成する際には、ターゲット58に投入するパワー密度を5W/cm2とし、ターゲット57に投入するパワー密度を3W/cm2に低減させることにより、ターゲット57を用いて形成する際の集電体表面の最高到達温度を250℃となるように制御した。その他は、実施例4と同様にして集電体10の両面上にシリコン薄膜を形成した。
【0055】
以上のようにして得られた参考例1〜3、実施例4〜5及び比較例1のシリコン薄膜を両面に形成した集電体を切断し、シリコン薄膜が形成されていない部分に負極タブを取り付け、負極を完成した。
【0056】
〔正極の作製〕
LiCoO2粉末90重量部、及び導電剤としての人造黒鉛粉末5重量部を、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン5重量部を含む5重量%のN−メチルピロリドン水溶液に混合し、正極合剤スラリーとした。このスラリーをドクターブレード法により、正極集電体であるアルミニウム箔(厚み20μm)上に塗布した後乾燥し、正極活物質層を形成した。正極活物質を塗布しなかったアルミニウム箔の領域の上に正極タブを取り付け、正極を完成した。
【0057】
〔電池の作製〕
図7に示すように、正極81と負極82の間にセパレータ83を配置し、さらに正極81の上にセパレータ83を配置した状態で、これを巻き付け扁平状態にし、外装体80内に挿入した。次に、外装体80内に電解液を注入し、注入後外装体80の開口部80aを封口して、リチウム二次電池を作製した。電解液は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒にLiPF6を1モル/リットル溶解させて作製したものを用いた。
【0058】
〔充放電サイクル試験〕
以上のようにして作製した各リチウム二次電池について、充放電サイクル試験を行った。充放電の条件は、充放電ともに140mAの定電流で、4.2Vとなるまで充電した後、2.75Vとなるまで放電し、これを1サイクルの充放電として、40サイクルまで充放電を行い、初期放電容量(1サイクル目の放電容量)と40サイクル目の放電容量を測定し、以下の式で定義される容量維持率を算出した。
【0059】
40サイクル後の容量維持率=(40サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
初期放電容量と40サイクル後の容量維持率を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から明らかなように、本発明に従う実施例4〜5及び参考例1〜3で作製した電極を用いたリチウム二次電池は、比較例1で作製した電極を用いたリチウム二次電池に比べ、良好な充放電サイクル特性が得られている。これは、比較例1において作製した電極においては、集電体の第2面上に薄膜を形成する際の温度上昇により、第1面上に形成したシリコン薄膜中への集電体成分の拡散が増加し、集電体への活物質薄膜の密着性が低下したためと思われる。
【0062】
これに対し、実施例4〜実施例5及び参考例1〜3においては、集電体の第1面及び第2面の上に形成されたシリコン薄膜には、同程度に銅が拡散しており、集電体の両面において活物質薄膜の密着性が良好であるため、良好な充放電サイクル特性が得られたものと考えられる。
【0063】
図6は、帯状の集電体の上に活物質薄膜を形成した後、これをレーザー照射により切断して、個々の電極に分割する装置を示す模式的断面図である。両面上に活物質薄膜が形成された集電体10は、シャッター75を通り、駆動ローラー74により切断室80に送られる。切断室80に送られた集電体10は、吸着盤72を有した治具71により保持され、レーザー73により切断される。切断された集電体は1個分の電極70となり、治具71が矢印A方向に移動し、次に、矢印B方向に移動して、電極収納部76内に向かう。吸着盤72が吸着を解除し、電極70を電極収納部76に収納した後、治具71は再び元の位置に戻る。
【0064】
集電体上に活物質薄膜を形成した電極は、ペースト式電極のような結着剤を有するものではないので、活物質薄膜自体が切断時に脆く破壊され易い場合がある。従って、図6に示すようにレーザー照射により切断することが好ましい。しかしながら、レーザーによる切断に限定されるものではなく、従来と同様カッターによる機械的な切断が施されてもよい。
【0065】
切断後の電極70は、例えばアルゴンガスなどの不活性ガスが充填された電極収納部76に保管され、順次取り出される。取り出された電極には、必要に応じて負極タブがスポット溶接される。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、集電体の両面において集電体成分の活物質薄膜への拡散が実質的に同じになるように制御することができる。従って、充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池用電極とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例において用いられた薄膜形成装置を示す模式的断面図。
【図2】 比較例において用いられた薄膜形成装置を示す模式的断面図。
【図3】 参考例において用いられた薄膜形成装置を示す模式的断面図。
【図4】 参考例において用いられた薄膜形成装置を示す模式的断面図。
【図5】 本発明に従う実施例において用いられた薄膜形成装置を示す模式的断面図。
【図6】 両面上に活物質薄膜を形成した集電体をレーザーにより切断する装置を示す模式的断面図。
【図7】 本発明に従う実施例において作製されたリチウム二次電池を示す分解斜視図。
【符号の説明】
1,21,41,51…準備室
2,22,24,42,52…成膜室
3,25,43,53…収納室
4,26,44,54…供給ローラー
5,27,45,56…巻取りローラー
6,7,28〜31,57,58…ターゲット
8,9,32〜35,59,60…DC電源
10…集電体
36,37,63,64…冷却ローラー
62,65…支持ローラー
Claims (4)
- 銅からなる集電体の両面上にシリコンからなる活物質薄膜を堆積させてリチウム二次電池用電極を製造する方法において、
前記集電体の第1面上に活物質薄膜を堆積させた後、該第1面に対し裏側となる第2面上に活物質薄膜を堆積させ、前記集電体の両面において前記集電体成分の活物質薄膜への拡散が実質的に同じになるように、第2面上に活物質薄膜を堆積させる際の集電体表面の最高到達温度を、第1面上に堆積させる際の集電体表面の最高到達温度よりも低く、かつ100℃より高い温度に制御することを特徴とするリチウム二次電池用電極の製造方法。 - 第2面上に活物質薄膜を堆積させる際の投入エネルギーを、第1面上に堆積させる際の投入エネルギーよりも小さくすることによって、集電体表面の最高到達温度を低くすることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 第2面上に活物質薄膜を堆積させる際の集電体の冷却効率を、第1面上に堆積させる際の集電体の冷却効率よりも大きくすることによって、集電体表面の最高到達温度を低くすることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 第1面上への堆積工程と第2面上への堆積工程の間において、集電体を冷却する工程を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001093064A JP4183395B2 (ja) | 2001-03-28 | 2001-03-28 | リチウム二次電池用電極の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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