JP5019654B2 - リチウムイオン二次電池の負極集電体用銅(合金)箔、その製造方法、及びリチウムイオン二次電池の負極電極、その製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の負極集電体用銅(合金)箔、その製造方法、及びリチウムイオン二次電池の負極電極、その製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の負極電極用集電体に適した圧延銅箔、圧延銅合金箔とその製造方法に関するものである。
更に本発明は、圧延銅箔、圧延銅合金箔からなる集電体に活物質を積層してなるリチウムイオン二次電池の負極電極とその製造方法に関するものである。
本明細書において、圧延銅箔と、圧延銅合金箔とを区別して表現する必要がないときは、圧延箔、又は圧延銅(合金)箔と表現することがある。
通信端末機器や携帯電話に代表されるIT(情報通信技術)分野では小型化・薄型化が要求され、それに伴って電池も高性能で充放電容量や電位の高い小型で薄型の二次電池が求められている。
リチウムイオン二次電池は、正極と同様に負極の特性が二次電池としての充放電特性や高電位維持の優劣を左右する。従来のリチウムイオン二次電池の負極集電体は銅箔の両表面に活物質として結着剤(バインダー)を混ぜ合わせたカーボン(黒鉛)を塗工加圧乾燥させて製造されていたが、このような製造方法で製造された二次電池では高容量と充放電の長期寿命を必要とするハイブリット自動車や電気自動車用として、満足できるものではなかった。
リチウムイオン二次電池の特性を向上させる上で、正極と負極夫々を個々に改良する必要があるが、本願は負極、特に負極集電体に関する発明である。リチウムイオン二次電池の高容量化は、負極の集電容量を向上させることが必要である。負極の集電容量向上は前記結着剤(バインダー)を混ぜ合わせたカーボンからなる活物質の厚みを増すことで可能であるが、集電体(銅箔)の両面に均一な厚みでカーボンを積層させることが技術的に困難であり、また、活物質を厚く積層することで電池の大きさが大きくなり、実用性に乏しいものとなっていた。そのため現在では、粒径を小さくし、カーボンの表面積を大きくして、集電容量の向上を図っている。
しかし近年、二次電池の高容量化の要求はさらに大きくなっており、カーボン系活物質ではこのような要求を解決できないため、例えば、活物質をケイ素系に変更してリチウムの吸蔵量を著しく向上させる技術が進んできている。
ケイ素系の活物質の採用には、該材料の特性に追従できる集電体が求められる。ケイ素系の活物質はその粒径の細かさから、結着対象となる集電体の表面に適宜な粗度が求められる。集電体の表面粗度が適正であると、所謂「活物質をたくさん詰め込む」ことができ、電池容量向上に寄与することができ、好ましい。また、ケイ素系の活物質の採用には、集電体(金属箔)は適宜な硬度と金属的な塑性(伸び)を有することも必須要件となる。
同時に、リチウムイオン二次電池がハイブリット車等の大衆車に搭載される場合を想定すると電池自体のコストを大幅にアップさせることは許されない。
特開2008−127618号公報 特開平10−168596号公報
リチウムイオン二次電池の高容量化と充放電の長期寿命化を満足させる条件の一つは、負極に容量向上に期待の高い活物質と該活物質を積層する集電体として好適な金属箔の選定である。
現在、容量向上に期待の高い活物質としてケイ素系の活物質が浮上してきている。ケイ素系活物質は粒径を小さく、表面の吸着面積が他の活物質と比較して大幅に大きいことから最も実用性に近い材料として期待されている。例えば、天然黒鉛成分である炭素系活物質に比べると10倍以上の理論容量がある。しかし一方でケイ素系活物質は特有の硬さと、充放電時の粒子間の膨張収縮が大きいため、このケイ素系活物質の特性を最大限に発揮させ得る集電体の選定が最大の課題となってきている。かかる課題を満足する集電体としては、集電体の表裏両面の形状が均一で活物質を薄く保持することができる金属箔である。かかる金属箔を集電体とし、該集電体にケイ素系活物質を積層して負極電極とすることでリチウムイオン二次電池の高容量と充放電の長寿命化が同時に達成できると期待されている。
一般にリチウムイオン二次電池の負極集電体材料として要求される金属箔の要件は、伝導性、表裏両面の表面加工の容易性、活物質との密着性、強いては集電端子の超音波接合性に優れる特性を有することである。従来の銅箔はこれらの要件のうち伝導性、集電端子の超音波接合性は兼ね備えているが、活物質としてケイ素系活物質を採用した場合、該活物質特有の硬さに耐え得る追随性と、表裏の表面形状、活物質との密着性については未だ改善の余地を残している。
リチウムイオン二次電池負極用金属箔には、当初圧延銅箔が採用されたが、急激な携帯端末や携帯電話、PC(パーソナルコンピューター)の普及に伴い近年では電解銅箔も用いられるようになってきている。
しかし電解銅箔はその製箔技術から圧延銅箔並みに硬度を大きくする事が容易ではなく、また表裏両面の表面形状を同一にすることは困難である。そのため、活物質を表裏両面に同じ厚さで積層することができず、かかる電解銅箔を集電体として採用した場合には、電極の両面で電位の差が生じてしまう。電位の差が生ずると、複数本を直列または並列に組んで回路を構成するPCや据え置き型の蓄電装置、個々の電位特性に影響を受けやすいハイブリッド自動車や電気自動車用には、充放電効率の観点から不具合を誘発する場合がある。
かかる不具合を解消するために、ケイ素系活物質を用いるリチウムイオン二次電池の集電体には表裏両面が均一に仕上げられている圧延銅箔、あるいは導電率と硬度を調整する観点から銅成分を主体とした圧延銅合金箔を集電体として用いている。しかし、該集電体ではケイ素系活物質に対して表裏の形状や硬度については満足するものの、ケイ素系活物質を積層するための十分な表面積(粗化形状)を有していないため、ケイ素系活物質の特性を充分に引き出すことができていない状況にあった。
本発明はかかる状況に鑑み、表裏両面の表面粗度が均一な形状で、特にケイ素系活物質の特性を充分に発揮させ、リチウムイオン二次電池の高容量と充放電の長寿命化を同時に達成できる負極集電体用圧延銅(合金)箔を提供し、同時に該圧延銅(合金)箔を用いた負極電極を提供することを目的とするものである。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極集電体用圧延銅箔又は圧延合金箔は、表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅箔の表裏両面にパルス陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層が設けられ、該第二メッキ層表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅(合金)箔である。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極集電体用圧延銅箔又は圧延合金箔は、表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅箔の表裏両面に直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層が設けられ、該第二メッキ層表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅(合金)箔である。
前記第二メッキ層表面の表裏各々の粗度が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで3.0μm以下であることが望ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池負極集電体用銅(合金)箔の製造方法は、表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅を第一粗化処理槽に送り、該第一粗化処理槽の電解液水面(入口)から深さ(ボトム)方向に送られる側で未処理圧延銅箔の一方の表面にパルス陰極電解粗化処理で粗化処理を行い、ボトム側から槽出口側でもう一方の表面にパルス陰極電解粗化処理で粗化処理を行って箔の表裏両面に第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層を設け、該第二メッキ層表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池負極集電体用銅(合金)箔の製造方法である
本発明のリチウムイオン二次電池負極集電体用銅(合金)箔の製造方法は、表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅を第一粗化処理槽に送り、該第一粗化処理槽の電解液水面(入口)から深さ(ボトム)方向に送られる側で未処理圧延銅箔の一方の表面に直流陰極電解粗化処理で粗化処理を行い、ボトム側から槽出口側でもう一方の表面に直流陰極電解粗化処理で粗化処理を行って箔の表裏両面に第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層を設け、該第二メッキ層表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池負極集電体用銅(合金)箔の製造方法である
本発明のリチウムイオン二次電池の負極集電体用圧延箔の製造方法においては、前記パルス陰極電解粗化処理は、粗化処理槽の入口からボトム側で未処理圧延銅(合金)箔の一方の表面に、ボトムから槽出口側でもう一方の表面にそれぞれ粗化処理を行い、表裏別々に一次粗化処理層を設けることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極集電体用圧延箔の製造方法においては、前記直流陰極電解粗化処理が、粗化処理槽の入口からボトム側で未処理圧延銅(合金)箔の一方の表面に、ボトムから槽出口側でもう一方の表面にそれぞれ粗化処理を行い、表裏別々に一次粗化処理層を設けることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極電極は、圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延箔の表裏両面に、パルス陰極電解粗化処理又は直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる一次粗化処理層が設けられ、該一次粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる二次粗化処理層が設けられ、該二次粗化処理層表面にケイ素系活物質が積層されている。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極電極は、圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延箔の表裏両面に、パルス陰極電解粗化処理又は直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる一次粗化処理層が施され、該一次粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる二次粗化処理層が施され、前記二次粗化処理層表面に防錆処理により三次防錆層が設けられ、該三次防錆層表面にカップリング剤による四次保護層が設けられ、該四次保護層上にケイ素系活物質が積層されている。
本発明のリチウムイオン二次電池負極電極の製造方法は、圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延箔の表裏両面に、パルス陰極電解粗化処理又は直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる一次粗化処理層を設け、次いで該一次粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる二次粗化処理層を設け、次いで該二次粗化処理層表面にケイ素系活物質を塗工し乾燥して活物質層を積層する。
本発明のリチウムイオン二次電池負極電極の製造方法は、圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延箔の表裏両面に、パルス陰極電解粗化処理又は直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる一次粗化処理層を設け、次いで該一次粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる二次粗化処理層を設け、次いで前記二次粗化処理層表面に防錆処理による三次防錆層を設け、次いで該三次防錆層表面にカップリング剤による四次保護層を設け、次いで四次保護層上にケイ素系活物質を塗工し乾燥して活物質層を積層する。
本発明のリチウムイオン二次電池負極集電体用圧延箔は、表裏両面の表面粗度が均一な形状で、特にケイ素系活物質の特性を充分に発揮させ、リチウムイオン二次電池の高容量と充放電の長寿命化を同時に達成できるリチウムイオン二次電池負極集電体用圧延箔を提供することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池負極集電体用圧延箔の製造方法は、表裏両面の表面粗度が均一な形状で、特にケイ素系活物質の特性を充分に発揮させ、リチウムイオン二次電池の高容量と充放電の長寿命化を同時に達成できるリチウムイオン二次電池負極集電体用圧延箔を製造することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極電極は表裏両面の表面粗度が均一な形状で、特にケイ素系活物質の特性を充分に発揮する圧延箔からなる集電体にケイ素系活物質を積層しているので、該電極をリチウムイオン二次電池用負極電極として組み込むことで、高容量で長寿命なリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池負極集電体用圧延箔の製造方法は、表裏両面の表面粗度が均一な形状で、特にケイ素系活物質の特性を充分に発揮する圧延箔からなる集電体を製造し、該集電体にケイ素系活物質を積層して電極とするので、該電極をリチウムイオン二次電池用負極電極として組み込むことで、高容量で長寿命なリチウムイオン二次電池を提供することができる。
図1は本発明の表面処理工程の一実施形態を示す工程説明図である。 図2は本発明の表面処理工程の他の実施形態を示す工程説明図である。 図3は本発明実施形態による銅箔の断面形状を図解する説明図で、(A)は一次粗化処理層aの断面、(B)は二次粗化処理層bの断面である。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極集電体用圧延銅(合金)箔は、該未処理圧延銅(合金)箔の表面にパルス陰極電解粗化処理、または直流陰極電解粗化処理で金属銅又は銅合金からなる一次粗化処理層が設けられている。
本発明は未処理銅箔としてタフピッチ銅、無酸素銅からなる圧延銅箔や適宜な金属配合により鋳造圧延された銅合金箔を使用し、表面処理を施して集電体に加工する。
これらのうち無酸素銅からなる圧延銅箔は導電性や伸びの点で好ましい。この理由は、インゴットに酸素や金属酸化物が含まれていないからである。
圧延銅合金箔は、銅箔の使用条件により無酸素銅からなる圧延銅箔では達成できない性質、例えば伸び率や導電率の調整が必要なときに採用する。銅合金箔としては硬度、伸び、耐熱性、防錆性等々の特性を勘案して銅と種々の金属との銅合金が選択できるが、例えば加工性(伸び率)や導電率が電解銅箔に近似する性質を有し、圧延条件が有利な銅−錫系、銅−クロム系、銅−亜鉛系、銅−鉄系、銅−錫−クロム系、銅−亜鉛−錫系、銅−ニッケル−錫系等の中から用途により選択して採用することができる。
未処理圧延銅(合金)箔としては、その表裏の粗度がJIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmの範囲にあるものを採用することが好ましく、また、IPC−TM−650に規定される値で35〜45kN/cmの範囲(ヤング率であれば50〜65MPa)の伝導性に優れる圧延銅(合金)箔が好ましい。
また、前記圧延銅(合金)箔の機械的特性は、常温での伸びが、3.5%以上であるものを採用することが好ましい。その理由は、充放電時のケイ素系活物質の膨張収縮に対して密着性を維持し、かつ伸び縮みに追随する必要が求められるからである。
本発明は未処理圧延銅(合金)箔の表面をパルス陰極電解処理または直流陰極電解粗化処理と、平滑メッキ処理により粗面化する。未処理圧延銅(合金)箔の表裏を粗面化するのは銅箔(集電体)の表面に対するケイ素系活物質の密着性を改善することと、より多くの活物質を脱落させることなく均一に塗工するためである。
本発明の銅箔(集電体)の表面には、結着剤を混合したケイ素系活物質との密着性を向上させ、かつより多くの活物質を脱落させることなく均一に塗工できる粗化(凹凸)が施されている。この粗化は、一次粗化処理として未処理圧延銅(合金)箔表面に極めて低粗化に、かつ均一に、銅(合金)粒子をパルス陰極電解処理または直流陰極電解粗化処理により施す。
次いで該一次粗化処理層上に、該一次粗化処理で付着した銅(合金)粒子を健全に保つために平滑メッキからなるカプセル銅(合金)層を二次粗化処理として陰極電解メッキで付着する。平滑メッキ処理により一次粗化処理で付着したコブ状の微細粒子は健全な形状を維持すると共に粒子の均一性を保つ。該二次粗化処理層の粗面はJIS−B−0601に規定される表面粗さRzで3.0μm以下、好ましくは2.5〜3.0μmの範囲とする。
次いで必要により前記二次粗化処理層の表面に防錆層(三次防錆層)を設ける。防錆層としては、クロメート防錆でも有機防錆でも良いが、クロメート防錆処理の場合のクロム付着量は、金属クロムとして0.005〜0.020mg/dmとすることが好ましい。有機防錆剤として、例えばBTA(ベンゾ・トリ・アゾール)系の誘導体を選定した場合は、JIS−Z−2371に規定される塩水噴霧試験(塩水濃度:5%−NaCl、温度35℃)の条件下で24時間までは表面が酸化銅の色に変色しない程度の被膜を形成する。
前記防錆層の表面にシランカップリング剤の単分子層からなる保護層(四次保護層)を設けることが望ましい。シランカップリング剤の付着量はケイ素として0.001〜0.015mg/dmとすることが望ましい。
次に、図により本発明の負極集電体用として好適な未処理圧延銅(合金)箔の表面処理方法につきその一実施形態を説明する。
図1においてリールに巻き取られた未処理圧延銅(合金)箔(圧延後電解脱脂処理した圧延箔)Aをパルス陰極電解処理または直流陰極電解粗化処理により粗化粒子を付着するための第一粗化処理槽1に導く。第一処理粗化槽1には酸化イリジウムからなる電極11が配置され、電解液12が充填され、該第一処理粗化槽1で圧延銅(合金)箔Aの両面にコブ状の微細粗化銅粒子からなる一次粗化処理層a(図3参照)を形成する。第一処理粗化槽1で一次粗化処理層aが形成された銅箔Bは水洗槽15で洗浄された後第二メッキ処理槽2へ導かれる。
図1では第一処理粗化槽1に酸化イリジウムからなる電極11を粗化処理槽1の入口からボトム側と、ボトム側から出口側とにそれぞれ設け、箔両面に2か所でコブ状の微細粗化銅粒子からなる一次粗化処理層を形成しているが、第一粗化処理槽1の入口からボトム側のみ、またはボトム側から出口側のみの1か所に電極11を設け、箔両面に1か所でコブ状の微細粗化銅粒子からなる一次粗化処理層を形成するようにしてもよい。
なお、図中13は遮蔽板である。
前記の工程説明では第一処理粗化槽1で圧延銅(合金)箔Aの両面に同一箇所で同時にパルス陰極電解処理または直流陰極電解粗化処理で微細粗化銅(合金)粒子を付着させたが、図2に示すように第一粗化処理槽1の入口からボトム側の粗化処理で未処理銅(合金)箔の一方の面を粗化処理し、粗化処理槽1のボトム側から出口側で他方の面に粗化処理を施すようにしても良い。すなわち、第一粗化処理槽1の入口からボトム側に未処理銅(合金)箔の一方の面を粗化するための電極11を配置して銅箔の一方の面にパルス陰極電解処理または直流陰極電解粗化処理を行い、一方の面に粗化処理を施す。一方の面に粗化処理を施された銅箔は、粗化処理槽1のボトム側から出口側に送られ、その途中に配置された電極11で未処理銅(合金)箔の他方の面にパルス陰極電解処理または直流陰極電解粗化処理を施し、銅箔の他方の面に粗化処理を施す。このように圧延箔の両面に一度に粗化処理するのではなく、片方の面のみに別々に粗化処理する利点については後述する。
このようにして両面に一次粗化処理層が施された圧延銅(合金)箔Bは水洗槽15で洗浄された後第二メッキ処理槽2へ導かれる。
第二メッキ処理槽2には酸化イリジウム電極21が配置され、第一処理粗化槽1と同様組成の電解液22が充填されており、平滑メッキ処理が施され、一次粗化処理層aの表面に二次粗化処理層b(図3参照)が施される。該平滑メッキ処理(二次粗化処理層b)が施された銅(合金)箔Cは水洗槽25で洗浄された後、第三表面処理槽3へ導かれる。
第三表面処理槽3にはSUSアノード31が配置され、クロメート電解液32が充填されており、クロメート防錆層が設けられる。第三表面処理槽3においてクロメート防錆層(三次防錆層)が設けられた銅(合金)箔Dは水洗槽35で洗浄された後、第四表面処理槽4へ導かれる。
第四表面処理槽4にはシランカップリング液42が充填されており、銅(合金)箔Dの表面にシランカップリング剤を塗布する。第四表面処理槽4においてシランカップリング剤による四次保護層が設けられた銅(合金)箔Eは乾燥装置5を経て巻取りロール6に巻き取られる。
なお、図中7は給電コンタクトロールである。
なお、防錆層は有機防錆剤で形成することも可能である。図2は防錆層を有機防錆剤で形成する工程を示しており、第三表面処理槽3にはBTA溶液37が充填され、銅箔Cの表面にBTA膜を塗布し、乾燥装置34で乾燥させてBTAからなる三次防錆層を形成する。防錆層を形成された銅(合金)箔Dは次のカップリング剤42が充填された第四表面処理槽4へ送られる。なお図2において、図1と同じ箇所には同一符号を付して説明は省略する。
未処理銅(合金)箔Aの表面をリチウムイオン二次電池の負極集電体用に粗化する方法としては、ケイ素系活物質との密着性を高め、結着剤(バインダー)との結着特性の向上を図るために、粗化処理面が低粗化で均一性に優れ、かつ粗化銅粒子の表層を平滑とすることが重要である。このためには、圧延銅箔の両面共に形状粗度がJIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μm、かつ常温伸びが3.5%以上ある銅箔を用いることが好ましい。
本発明の表面処理銅(合金)箔は、特に活物質塗工積層乾燥工程時と二次電池に組み込まれた後の充放電時の耐熱性と塑性追随性を重視することから、機械的特性、例えばビッカース硬度Hv(Vickers Hardness)値で、80〜180の範囲が好ましく、銅(合金)箔の伸び(常温での伸び物性率、以下同様)は3.5%以上であれば十分である。このような銅(合金)箔であれば熱履歴による著しい塑性変形から生じる活物質の剥離や集電体として破断は起きない。
未処理圧延銅(合金)箔Aに一次粗化処理層aを設ける手法の一実施形態は、パルス陰極電解メッキ法である。
一次粗化処理は未処理銅(合金)箔表面に銅または銅合金のコブ状の粗化粒子を形成させる。一次粗化粒子層を形成する具体例として、硫酸銅を銅として20〜30g/L、硫酸濃度(HSO)を90〜110g/L、モリブデン酸ナトリウムをMoとして0.15〜0.35g/L、塩素を塩素イオン換算で0.005〜0.010g/L混入した電解液で、浴温度18.5〜28.5℃に設定し、パルス陰極電解メッキ平均電流密度を22〜31.5A/dmに設定し、適宜な流速と極間距離とで、健全な銅コブ粗化粒子の層を銅箔表面に形成する。
一次粗化処理について図1を参照して更に詳述する。
第一粗化処理槽1には、遮蔽板13を挟んで隔離された2対の酸化イリジウムアノード11の各対が圧延銅箔Aの両面に配置されている。
銅−硫酸電解液12は第一粗化処理槽1内において所定の流速で流動している。たとえば、第一粗化処理槽1には銅−硫酸電解液12が充填されており所定の流速で攪拌されている、または、銅−硫酸電解液12は第一粗化処理槽1のボトム側から給液されてオーバーフローさせる循環層流状態で所定の流速(以下、「第一循環層流速度」という)で流動している。
第一粗化処理槽1において、基材の銅箔表面に極めて低粗化に、かつ均一に、銅粒子をパルス陰極電解処理により表面処理を施す。すなわち、図3(A)に例示した、未処理圧延銅箔の双方の面に(ただし、図3(A)の図解は一方の面のみ示している)、たとえば、表面粗さRzで1.5〜1.6μm程度の均一なコブ状の銅粒子の層(一次粗化処理層a)を形成する。
パルス陰極電解メッキ処理法
給電コンタクトロール7と酸化イリジウムアノード11との間にパルス状の電流を印加するパルス陰極電解メッキ処理を行う上での、オン・タイム(電流を印加する時間)とオフ・タイム(電流を印加しない時間)とを決定するには、銅濃度・硫酸濃度・平均電流密度・電解液の流速・浴温・処理時間を考慮する必要がある。これらの設定には、経験的に直流電解メッキ処理で、健全な「ヤケメッキ」ができる条件を、パルス陰極電解メッキ処理に置き換えて、同等もしくはそれ以上に健全な処理ができることを確認しておく。
パルス陰極電解メッキ処理法で重要なことは、給電コンタクトロール7とアノード11とに印加する電流の最大値(ピーク)である。
通常ピーク電流値は、おおよそ
(オンタイムとオフタイムとの比率の合計)×(平均電流値)
がオンタイム時に流れる。
オンタイムとオフタイムとの比率の合計は、たとえば、オンタイム10ms、オフタイム40msのときは比率の合計は5、オンタイム10ms、オフタイム60msのときは比率の合計は7である。
この場合、銅−硫酸電解液12の流速が遅く銅イオンの供給が不十分であったり、或いは、銅−硫酸電解液12の流速が速く銅イオンの供給が過剰であると、健全な「ヤケメッキ」ができない。そこで、銅−硫酸電解液12の管理容易性に富む銅濃度浴を設定して、平均電流密度・流速・浴温・処理時間を制御して処理する。
平均電流密度は、上記設定浴温で健全な「ヤケメッキ」が可能となる「直流電解メッキ処理」を行った時の電流値を設定することが一般的であるのでそれを採用すると、浴温と処理時間(通電時間)も「直流電解メッキ処理」を行った時の値を用いることが好ましい。たとえば、処理時間は2.5〜5.0秒である。
銅−硫酸電解液12の流速は、健全なヤケメッキ限界電流密度に追従できる銅イオンの供給が可能であればよいので、銅箔Aの搬送速度の半分程度の速さで十分である。たとえば、搬送速度を6〜12m/分とすると、流速は3〜6m/分となる。
なお、パルス陰極電解メッキ処理の場合、ピーク電流時の銅イオンの供給が重要となり、理論上は、銅箔の搬送速度より速い銅−硫酸電解液12の流速を必要とする。しかしながら、オフタイム時も銅イオンは供給されるので、オンタイムの比率の合計が大きくなるに従って銅−硫酸電解液12の流速を速くする必要はなく、実用上は、銅−硫酸電解液12の流動速度は直流電解メッキ処理と同様の銅箔の搬送速度の半分程度の流速で処理が可能である。
オンタイム・オフタイムの決定としては、実験室では、オンタイムとオフタイムとの比率、すなわち、オンタイム/オフタイムが1:4〜1:6の範囲であることが必須であることを見いだした。
なお、ピーク電流密度(オンタイム時の電流密度)は、オンタイム時間、オフタイム時間とパルス陰極電解平均メッキ電流密度によって決まり、特に限定はされないが、例えばオンタイムを10msとした場合には、ピーク電流密度は157.5A/dm2以下となる様に設定するのが好ましく、154〜157.5A/dm2の範囲であるとより好ましい。
一次粗化処理層の形成は図2に示すように、粗化処理槽の入口からボトム側間で片側一方の表面を前記した処理条件で粗化処理をし、次いでボトム側から処理槽の出口にかけてもう一方の表面を粗化する方法が、粗化形状の均一安定性の面からも好ましくパルス陰極電解メッキ方法としては好ましい手法であり、両面を同時に粗化処理する方法と比較して、瞬時のピーク電流密度の合算による箔の発熱から波及する「ダレ延び」や、「ヤケ処理異常」等々の不具合を抑制する等の効果がある。
パルス陰極電解制御についての手法は上記両面同時に粗化処理する場合と同様である。
未処理圧延銅(合金)箔Aに一次粗化処理層aを設ける手法の第二の実施形態は、直流陰極電解粗化処理である。
銅粗化粒子層を形成する具体例として、基本的には前記のパルス陰極電解メッキ法で用いたメッキ浴組成と浴温度条件を用いることが出来るが、陰極電解メッキ電流密度は28〜38.5A/dmに設定し、適宜な流速と極間距離とで、健全な銅コブ粗化粒子の層を銅箔表面に形成する。この場合低流速を選択する場合には低電流密度条件で行い、高流速の場合には高電流密度の設定選択が好ましい。
第二銅メッキ処理槽2では、一次粗化処理で付着した微細粗化粒子を銅(合金)箔の面上より脱落させないようにすることと、個々の微細粗化粒子の表面形状を整え、表面積を小さく均一に整えることを目的として平滑メッキ処理を施す。この二次粗化処理で銅(合金)粒子離脱による充放電への不具合やセパレーターへの不用意な付着、正極に用いられるリチウム化合物との異常電析を回避することができる。
二次粗化処理層bの形成方法について図面を参照して詳述する。
銅−硫酸電解液22は第二銅メッキ処理槽2内において所定の流速で流動している。たとえば、第二銅メッキ処理槽2には銅−硫酸電解液22が充填されており所定の流速で攪拌される、または、銅−硫酸電解液22が第二銅メッキ処理槽2のボトム側から給液されてオーバーフローさせる循環層流状態で所定の流速(以下、「第二循環層流速度」という)で流動している。
一次粗化処理により施したコブ状の銅粒子個々の表面に付着した銅粒子の層(一次粗化処理層a)を健全に保つために、給電コンタクトロール7と酸化イリジウムアノード21とに印加された低電流による陰極電解メッキで平滑銅メッキ処理が行われ、図3(B)に例示したように、一次粗化処理層aが形成された銅箔Bの両側に銅−硫酸電解液22を介して平滑な銅メッキからなるカプセル銅層を二次粗化処理層bとして付着する。
この平滑銅メッキ処理により、一次粗化処理によるコブ状の微細粒子の層(一次粗化処理層a)は、健全な形状を維持すると共に粒子の均一性が保たれる。
平滑電解メッキ条件
ロール7とアノード21との間に連続的に印加する陰極電解メッキ電流密度を、たとえば、15〜20A/dm2に設定する。
第二銅メッキ処理槽2における電解液は具体的には、硫酸銅を銅として35〜55g/L、硫酸濃度をH2SO4として90〜110g/Lとし、浴温度35〜55℃に設定して、陰極電解メッキ電流密度を15〜20A/dm2に設定する。適宜な電解液22の流速と、適宜な酸化イリジウムアノード21の極間距離とで、平滑な銅メッキを一次粗化処理層a(微細銅粗化粒子)の表面に形成する。
たとえば、銅箔Bの搬送速度は、銅箔Aにおける搬送速度、たとえば、6〜12m/分と同じであり、第二循環層流速度は、3〜6m/分である。
電解時間は、平滑メッキなので、(電流密度×処理時間*メッキ量)で規定され、たとえば、3.75〜7.5秒程度である。
この場合の平滑メッキ後の最終的な粗化形状の粗度はJIS−B−0601に規定される表面粗さRzで銅箔の両面共に3.0μm以下、好ましくは、2.3〜3.0μmの範囲、さらに好ましくは、2.4〜2.5μmの範囲にすることが好ましい。
平滑銅メッキ処理により、表面処理銅箔Eを二次電池の集電体として用いた場合に、銅粒子離脱による充放電への不具合や、二次電池内のセパレーターへの不用意な付着、二次電池の正極に用いられるリチウム化合物との異常電析を回避することができる。
次いで、二次粗化処理層bを設けることで表面粗さRz3.0μm以下に仕上がった表面に、必要によりクロメート防錆剤を浸漬処理或いは必要に応じて陰極電解処理(図1の第三表面処理槽3)して三次防錆層を設け、防錆力を高める。クロメート処理の場合の皮膜厚みは、金属クロム量として0.005〜0.025mg/dmの範囲が好ましい。この付着量範囲であればJIS-Z−2371に規定される塩水噴霧試験(塩水濃度:5%−NaCl、温度35℃)の条件下で24時間までは表面が酸化銅の色に変色しない。
防錆層の形成にはベンゾ・トリ・アゾールに代表される有機系防錆剤でもその誘導体化合物に耐熱性に優れるものが市販されており、適宜使い分けることができる。因みに有機防錆剤であれば例えば、千代田ケミカル株式会社の品番C−143の5.0Wt%(重量パーセント)で35〜40℃に建浴された浴中に浸漬し乾燥させたものでも、クロメート処理と遜色ない防錆効果が得られる。
更にクロメート処理の施された面には必要に応じてシランカップリング剤を適宜コーティング(四次保護層)する。シランカップリング剤処理により特にケイ素系活物質に混合されるバインダーとの密着性を高めることができる。なお、カップリング剤は対象となる活物質により適宜選択されるが、特にケイ素系活物質との相性に優れるエポキシ系、アミノ系、ビニル系のカップリング剤を選択することが好ましく、その構造式に二重結合やアゾ基を有するカップリング剤は、架橋反応に富み密着効果に優れ、好ましい。
また、本発明においては品種、種類を限定しないが、少なくとも化学的に密着性を向上させるため、粗化処理面に塗布するシランカップリング剤の付着量はケイ素として0.001〜0.015mg/dmの範囲であることが好ましい。
[実施例1]
無酸素銅からなり、厚み0.018mmの未処理圧延銅箔で、表裏両面の表面粗度がJIS−B−0601に規定の表面粗さRzで0.8μmで、常温伸びが6.2%の圧延銅箔を用いて、該箔の両面に以下の条件で粗化処理を施した。
この粗化処理では図2に示す工程に従い、第一粗化処理槽の入口からボトム側で表面に、ボトム側から槽出口側で裏面に粗化処理を分けてオンタイムは10ms、オフタイムは60msに設定してパルス陰極電解粗化処理を行い両面に一次粗化処理層を設けた。パルス処理を二回に分けた理由は、ON−OFFタイムの設定効果を確実にするためであり、限られた槽内流速での両面処理は、ピーク電流に達した場合に銅イオンの供給が両面共に不十分となり粗化処理ムラ不具合を起こすのを回避するためである。
次いで一次粗化処理層面に平滑メッキ処理を槽入口からボトム側で表裏両面同時に直流電解カプセルメッキで施し、二次粗化処理層を設けた。
〔一次粗化処理層形成浴組成と処理条件〕
硫酸銅・・・・・・・・・・・・・・・・金属銅として23.5g/L
硫酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g/L
モリブデン酸ナトリウム・・・・・・モリブデンとして0.25g/L
塩酸・・・・・・・・・・・・・・・塩素イオンとして0.002g/L
硫酸第二鉄・・・・・・・・・・・・・・金属鉄として0.20g/L
硫酸クロム・・・・・・・・・・・・三価クロムとして0.20g/L
浴温度:25.5℃
パルス陰極電解オンタイム・・・・・10ms
パルス陰極電解オフタイム・・・・・60ms
パルス陰極電解平均メッキ電流密度:・・・・・22.5A/dm
〔二次粗化処理層形成浴組成と処理条件〕
硫酸銅・・・・・・・・・・・・・・・・・金属銅として45g/L
硫酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110g/L
浴温度:・・・・・・・・・・・・・・・・・50.5℃
直流陰極電解メッキ電流密度:・・・・・・・18.5A/dm
防錆処理は、CrOとして3g/Lを含むクロメート浴中に浸漬・乾燥して防錆層を形成した。その後、0.5wt%に建浴したエポキシ系のシランカップリング剤(チッソ株式会社製サイラエースS−510)をその上に薄膜塗布した。
得られた両面粗化処理銅箔の表面粗度をJIS−B−0601に規定される表面粗さRzで測定し、その結果を表1に記載した。
粗化処理した銅箔の樹脂基板との密着強度、並びに密着の均一性は次のようにして評価した。
先ず、前記粗化処理銅箔を250mm角に切断し、その粗化処理両面に市販のポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂系基板(Panasonic電工製メグトロン−6プリプレグ相当)を重ね合わせて加熱プレス積層して、両面銅張積層板とし、密着強度と密着均一性の測定試料とした。
密着性の強度と均一性の測定は前記試料の銅箔と基板とをJIS−C−6481に規定される測定方法により引き剥がし、引き剥がしに要した力(kg/cm)で密着強度を計測し、均一性の評価は次の基準で判定した。
密着強度の均一性の評価(バラツキチャート評価)は引き剥がしに要した力を時間軸で測定した測定チャートの最大値と最小値の差で判定し、差が無く引き剥がされていれば(即ち、チャートにブレが無く直線的に描かれていれば)粗化均一性に優れるとして評価を「◎」、チャートのブレが0.02kg/cm未満であれば評価を「○」、0.02kg/cm以上で0.05kg/cm未満であれは評価を「△」、0.05kg/cm以上0.10kg/cm未満は評価を「×」とした。評価結果を表1に記載した。
また、異常粗化処理の有無は残銅(全面エッチング後の基板表面)の程度を光学顕微鏡による目視観察で評価した。
残銅は、前記試料(銅張積層板)の面をエッチング後、単位面積(0.5mm×0.5mm)当たりの残銅が全く見られない場合を◎、殆ど見られない場合を○、多少見られる場合を△、顕著に見られる場合を×として評価し、表1に記載した。
[実施例2]
タフピッチ銅の圧延箔(古河電気工業(株)製造)からなり、厚み0.018mmの未処理圧延銅箔で、両面の表面粗度がJIS−B−0601に規定の表面粗さRzで2.5μm、常温伸びが6.2%の圧延銅箔を用いた他は、実施例1で施したと同様な条件で粗化処理を施し、二次粗化処理層の表面粗さRzが3.0μm以下となるように粗化および表面処理を行い、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
[実施例3]
実施例1で用いた未処理の圧延銅箔の代わりに厚さ0.018mmで、常温伸びが3.6%で、表面粗さRzが1.1μmのEFTEC−3銅−錫合金圧延箔(古河電気工業(株)製造)を用いた以外は実施例1と同様の粗化および表面処理を行い、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
[実施例4]
実施例1で用いた未処理圧延銅箔を用い、一次粗化処理条件のパルス陰極電解時のオフタイムを40msとした以外は、実施例1と同様の粗化および表面処理を行い、得られる表面処理側の表面粗さRzが3.0μm以下となるように実施例1と同様の粗化処理および表面処理を行い、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
[実施例5]
実施例1に用いた無酸素銅からなる未処理圧延銅箔に、得られる表裏粗化面の表面粗さRzが3.0μm以下となるように以下の条件で直流陰極電解処理(電流密度値は28.5A/dm)を施した。二次粗化処理層形成工程以降は実施例1と同じ処理を施し、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
〔一次粗化処理層形成浴組成と処理条件〕
硫酸銅・・・・・・・・・・・・・・・・金属銅として23.5g/L
硫酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g/L
モリブデン酸ナトリウム・・・・・・モリブデンとして0.25g/L
塩酸・・・・・・・・・・・・・・・塩素イオンとして0.002g/L
硫酸第二鉄・・・・・・・・・・・・・・金属鉄として0.20g/L
硫酸クロム・・・・・・・・・・・・三価クロムとして0.20g/L
浴温度:25.5℃
直流陰極電解メッキ電流密度:・・・28.5A/dm
[比較例1]
電解製箔条件により柱状結晶でIPC規格に分類されるミドルプロファイル(MP)形状に製箔された未処理のMP−18μmの銅箔(電着液面側のRzは3.8μm、ドラム面側のRzは2.2μm)に、実施例1と同様の処理および評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
[比較例2]
電解製箔条件により柱状結晶でIPC規格に分類されるミドルプロファイル(MP)形状に製箔された未処理のMP−18μmの銅箔(電着液面側のRzは3.8μm、ドラム面側のRzは2.2μm)に、実施例4と同様の処理および評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
[比較例3]
電解製箔条件により柱状結晶でIPC規格に分類されるミドルプロファイル(MP)形状に製箔された未処理のMP−18μmの銅箔(電着液面側のRzは3.8μm、ドラム面側のRzは2.2μm)に、実施例5と同様の処理および評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
Figure 0005019654
表1から明らかなように、実施例1〜5の銅箔は、粗化形状のバラツキが無く、両面の粗化特性が遜色ないものであった。かかる銅(合金)箔を集電体とし、その表面にケイ素系活物質を塗工加圧乾燥し、負極電極を形成したところ、ケイ素系活物質を均一な厚みに積層できた。該負極電極を組み込んだリチウムイオン二次電池は充放電特性に優れ、長期の寿命を有するものであった。特に実施例1、2は評価結果が実施例4に比べ良好であり、第一粗化処理のパルス電解のオン/オフを10ms/60msにするのが好ましいことが分かる。
実施例と比較して比較例1〜3の電解銅箔は、光沢面側の粗度は同程度で、かつ密着強度は実施例より高いものの、表裏双方の粗度が大きく異なっているために、両面の粗化状態を同様にすることができず、密着強度が表裏で大きく異なってしまった。また特に電着液面側の残銅の点でも満足が得られなかった。この銅箔を集電体として表面上にケイ素系活物質を塗工加圧乾燥したが、負極集電体としての厚み均一性の観点から満足できなかった。このため該積層体を負極電極としたリチウムイオン二次電池は負極電極の表裏両面で電位に差が生じ、このように電位に差が生ずると、複数本を直列または並列に組んで回路を構成すると充放電効率に不具合を誘発し、集電体としての特性を満足することができなかった。
上述したように本発明のパルス陰極電解粗化処理または直流陰極電解粗化処理により粗化された圧延銅(合金)箔は、両面を略同様な特性に製造することができるので、リチウムイオン二次電池用の集電体として好適であり、該圧延銅(合金)箔による負極電極はリチウムイオン二次電池の電位不具合を回避し、充放電寿命の長寿をもたらす、優れた効果を有するものである。
1 第一粗化処理槽
2 第二銅メッキ処理槽
3 第三表面処理(防錆処理)槽
4 第四表面処理(カップリング処理)槽
A 未処理銅(合金)箔
B 一次処理銅(合金)箔
C 二次処理銅(合金)箔
D 三次処理銅(合金)箔
E 四次処理銅(合金)箔
a 一次粗化処理層
b 二次粗化処理層

Claims (9)

  1. 表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅箔の表裏両面にパルス陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層が設けられている、表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅(合金)箔。
  2. 表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅箔の表裏両面に直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層が設けられている、表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅(合金)箔。
  3. 前記第二メッキ層表面に、防錆剤による第三防錆層、カップリング剤による第四保護層がこの順に設けられている、請求項1又は2に記載の表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅(合金)箔。
  4. 表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅を第一粗化処理槽に送り、該第一粗化処理槽の電解液水面(入口)から深さ(ボトム)方向に送られる側で未処理圧延銅箔の一方の表面にパルス陰極電解粗化処理で粗化処理を行い、ボトム側から槽出口側でもう一方の表面にパルス陰極電解粗化処理で粗化処理を行って箔の表裏両面に第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層を設け、表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池負極集電体用銅(合金)箔の製造方法。
  5. 表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅を第一粗化処理槽に送り、該第一粗化処理槽の電解液水面(入口)から深さ(ボトム)方向に送られる側で未処理圧延銅箔の一方の表面に直流陰極電解粗化処理で粗化処理を行い、ボトム側から槽出口側でもう一方の表面に直流陰極電解粗化処理で粗化処理を行って箔の表裏両面に第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層を設け、表面にケイ素系活物質層を塗工し乾燥して積層するリチウムイオン二次電池負極集電体用銅(合金)箔の製造方法。
  6. 表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅箔の表裏両面に、パルス陰極電解粗化処理又は直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層が設けられ、該第二メッキ層表面にケイ素系活物質が積層されているリチウムイオン二次電池の負極電極。
  7. 表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅箔の表裏両面に、パルス陰極電解粗化処理又は直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層が設けられ、前記第二メッキ層表面に防錆処理により第三防錆層が設けられ、該第三防錆層表面にカップリング剤による第四保護層が設けられ、該第四保護層上にケイ素系活物質が積層されているリチウムイオン二次電池の負極電極。
  8. 表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅箔の表裏両面に、パルス陰極電解粗化処理又は直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層を設け、次いで該第二メッキ層表面にケイ素系活物質を塗工し乾燥して活物質層を積層するリチウムイオン二次電池負極電極の製造方法。
  9. 表裏の素地が、JIS−B−0601に規定される表面粗さRzで0.8〜2.5μmであり、常温での伸びが、3.5%以上である圧延銅箔又は圧延銅合金箔からなる未処理圧延銅箔の表裏両面に、パルス陰極電解粗化処理又は直流陰極電解粗化処理で銅又は銅合金からなる第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑メッキ処理により銅又は銅合金からなる第二メッキ層を設け、次いで前記第二メッキ層表面に防錆処理による第三防錆層を設け、次いで該第三防錆層表面にカップリング剤による第四保護層を設け、次いで第四保護層上にケイ素系活物質を塗工し乾燥して活物質層を積層するリチウムイオン二次電池負極電極の製造方法。
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