JP4948654B2 - リチウムイオン二次電池の負極集電体用銅箔、その製造方法、及びリチウムイオン二次電池の負極電極、その製造方法 - Google Patents
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Description
更に本発明は、銅箔からなる集電体に活物質を積層してなるリチウムイオン二次電池の負極電極とその製造方法に関するものである。
ケイ素系活物質はカーボン系活物質に比べ充放電容量が非常に大きい。また、粒径を小さくできることから、充放電サイクルによる容量の低下が小さく抑えられる。これらのことから、ケイ素系の活物質は最も実用性に近い材料として期待されている。
ケイ素系の活物質の採用には、該材料の特性に追従できる集電体が求められる。ケイ素系の活物質はその粒径の細かさから、結着対象となる集電体の表面に適宜な“粗度”が求められる。集電体の表面粗度が適正であると、所謂“活物質をたくさん詰め込む”ことができ電池容量向上に寄与することができ、好ましい。また、ケイ素系の活物質の採用には、集電体(金属箔)は適宜な硬度と金属的な塑性(伸び)を有することも必須要件となる。
同時に、リチウムイオン二次電池がハイブリット車等の大衆車に搭載される場合を想定すると電池自体のコストを大幅にアップさせることは許されない。
二次電池の高容量化の要求に対し、活物質がカーボン系活物質から上述したようにケイ素系活物質に変更されようとしている。
しかし一方で、ケイ素係活物質は特有の硬さと、充放電時の粒子間の膨張収縮が大きいため、このケイ素系活物質の特性を最大限に発揮させ得る集電体の選定が最大の課題となってきている。かかる課題を満足する集電体としては、集電体の表裏両面の形状が均一で活物質を薄く保持することができる金属箔で、高容量と充放電の長寿命が同時に達成できる負極材料である。
しかし電解銅箔はその製箔技術から表裏両面の表面形状を同一にすることは技術的に困難である。そのため、活物質を表裏両面に同じ厚さで積層することができず、かかる銅箔を集電体として採用した場合には、電極の両面で電位の差が生じてしまう。電位の差が生ずると、複数本を直列または並列に組んで回路を構成するPCや据え置き型の蓄電装置、個々の電位特性に影響を受けやすいハイブリッド自動車や電気自動車用には、充放電効率の観点から不具合を誘発する場合がある。
本発明の実施の形態の表面処理は、1次表面粗化処理(ステップ1)、2次表面粗化処理(または平滑処理、ステップ3)を基本とする。
すなわち、基材としての無酸素銅からなる未処理圧延銅箔Aの表面をパルス陰極電解メッキ処理により未処理圧延銅箔Aの表面を、図3(A)に例示したように、均一に粗化し(ステップ1)、さらに、平滑銅メッキ処理により粗面aを、図3(B)に例示したように、平滑にする(ステップ3)。
未処理圧延銅箔Aの表面を粗面化する理由は、たとえば、二次電池の集電体として用いる銅箔の表面に対する結着剤を混合したケイ素系活物質の密着性を改善すること、および、より多くのケイ素系活物質を脱落させることなく均一に塗工するためである。
このように、本発明の第1実施の形態による表面粗化した銅箔は、結着剤を混合したケイ素系活物質との密着性と、より多くの活物質を脱落させることなく均一に塗工できる粗化(凹凸)が施されている。
本発明の実施の形態の表面処理は、好ましくは、さらに、防錆層の形成処理(ステップ5、ステップ5A)を行う。
本発明の実施の形態の表面処理は、さらに、好ましくは、保護層の形成処理(ステップ7)を行う。
基材
本発明の実施の形態において、表面処理の対象となる基材として、リール6Aに巻き取られた、表面処理されていない(以下、未処理という)酸素を含有しない銅(無酸素銅、酸素フリー銅)からなる圧延銅箔(以下、未処理・無酸素・圧延銅箔という)Aを準備する。
無酸素銅からなる圧延銅箔を使用するのは、銅箔に圧延するインゴットに不純物が含まれると、製箔した銅箔に部分的に不純物が入り、該不純物により銅箔の性質が変化し、特に脆性による不具合が懸念されるためである。例えばインゴットにタフピッチ銅(有酸素銅)を用いて製箔すると脆性による材料不具合が発生する恐れがある。
未処理圧延銅箔としては、その表面の粗度がJIS−B−0601に規定されるRzで0.8〜2.5μmの範囲にあるものを採用することが好ましく、また、IPC‐TM‐650に規定される値で35〜45kN/cm2範囲(ヤング率であれば50〜65MPa)の伝導性に優れる無酸素銅(酸素フリー銅)箔が好ましい。
本発明の実施の形態の表面粗化した銅箔(集電体)は、結着剤を混合したケイ素系活物質との密着性とより多くの活物質を脱落させることなく均一に塗工できる粗化(凹凸)が施されている。前記粗化は、一次粗化処理として銅箔表面に極めて低粗化に、かつ均一に、銅粒子をパルス陰極電解メッキにより施す。次いで該一次粗化処理層上に、該一次粗化処理で付着した銅粒子を健全に保つために平滑な銅メッキからなるカプセル銅層を二次粗化処理として陰極電解メッキで付着する。
該第二平滑銅メッキ処理後の粗面は、JIS−B−0601に規定されるRzで3.0μm以下、好ましくは2.5〜3.0μmの範囲とする。
なお、図中13は遮蔽板である。
この工程以外は図1と同じである。
第一粗化処理は銅箔表面に銅のコブ状の粗化粒子を形成させる。具体的には、硫酸銅を銅として20〜30g/L、硫酸濃度をH2SO4として90〜110g/L、モリブデン酸ナトリウムをMoとして0.15〜0.35g/L、塩素を塩素イオン換算で0.005〜0.010g/L混入した電解液で、浴温度18.5〜28.5℃に設定し、パルス陰極電解メッキ電流密度を22〜31.5A/dm2に設定し、適宜な流速と極間距離とで、健全な銅コブ粗化粒子の層を銅箔表面に形成する。
第一粗化処理槽1には、遮蔽板13を挟んで隔離された2対の酸化イリジウムアノード11の各対が圧延銅箔Aの両面に配置されている。
銅−硫酸電解液12は第一粗化処理槽1内において所定の流速で流動している。たとえば、第一粗化処理槽1には銅−硫酸電解液12が充填されており所定の流速で攪拌されている、または、銅−硫酸電解液12は第一粗化処理槽1のボトムから給液されてオーバーフローさせる循環層流状態で所定の流速(以下、「第一循環層流速度」という)で流動している。
給電コンタクトロール7と酸化イリジウムアノード11との間にパルス状の電流を印加するパルス陰極電解メッキ処理を行う上での、オン・タイム(電流を印加する時間)とオフ・タイム(電流を印加しない期間)とを決定するには、銅濃度・硫酸濃度・平均電流密度・電解液の流速・浴温・処理時間を考慮する必要がある。これらの設定には、経験的に、直流電解メッキ処理で、健全な「ヤケメッキ」ができる条件を、パルス陰極電解メッキ処理に置き換えて、同等もしくはそれ以上に健全な処理ができることを確認しておく。
通常ピーク電流値は、おおよそ(オンタイムとオフタイムとの比率の合計)×平均電流値が、オンタイム時に流れる。
オンタイムとオフタイムとの比率の合計は、たとえば、オンタイム10ms、オフタイム40msのときは比率の合計は5、オンタイム10ms、オフタイム60msのときは比率の合計は7である。
銅−硫酸電解液22は第二銅メッキ処理槽2内において所定の流速で流動している。たとえば、第二銅メッキ処理槽2には銅−硫酸電解液22が充填されており所定の流速で攪拌される、または、銅−硫酸電解液22が第二銅メッキ処理槽2のボトムから給液されてオーバーフローさせる循環層流状態で所定の流速(以下、「第二循環層流速度」という)で流動している。
第一次粗化処理により施したコブ状の銅粒子個々の表面に付着した銅粒子の層aを健全に保つために、給電コンタクトロール7と酸化イリジウムアノード21とに印加された低電流により平滑銅メッキ処理が行われ、図3(B)に例示したように、一次粗化処理層aが形成された銅箔Bの両側に銅−硫酸電解液22を介して、図3(B)に例示した、平滑な銅メッキからなるカプセル銅層bを二次粗化処理として陰極電解メッキで付着する、平滑銅メッキ層(第二銅メッキ層)bが形成される。
この平滑銅メッキ処理により、1次粗化処理によるコブ状の微細粒子の層aは、健全な形状を維持すると共に粒子の均一性が保たれる。
ロール7とアノード21との間に連続的に印加する陰極電解メッキ電流密度を、たとえば、15〜20A/dm2に設定した。
第二処理槽2における電解液は具体的には、硫酸銅を銅として35〜55g/L、硫酸濃度をH2SO4として90〜110g/Lとし、浴温度35〜55℃に設定して、陰極電解メッキ電流密度を15〜20A/dm2に設定する。適宜な電解液22の流速と、適宜な酸化イリジウムアノード21の極間距離とで、平滑な銅メッキを第一粗化処理層(微細銅粗化粒子)の表面に形成する。
たとえば、銅箔の搬送速度は、第1ステップにおける搬送速度、たとえば、6〜12m/分と同じであり、第二循環層流速度は、3〜6m/分である。
電解時間は、平滑メッキなので、(電流密度×処理時間*メッキ量)で規定され、たとえば、3.75〜7.5秒程度である。
防錆層の形成にはベンゾ・トリ・アゾールに代表される有機系防錆剤でもその誘導体化合物に耐熱性に優れるものが市販されており、適宜使い分けることができる。因みに有機防錆剤であれば例えば、千代田ケミカル株式会社の品番C−143の5.0Wt%(重量パーセント)で35〜40℃に建浴された浴中に浸漬し乾燥させたものでも、クロメート処理と遜色ない防錆効果が得られる。
また、本発明においては品種種類を限定しないが、少なくともケミカル的に密着性を向上させるため、粗化処理面に塗布するシランカップリング剤の付着量はケイ素として0.001〜0.015mg/dm2の範囲であることが好ましい。
次いで平滑銅メッキ処理を、槽入口からボトム側で同時に両第一粗化処理層面に直流電解カプセルメッキで施した。
また、実施例、比較例では陰極電解条件を「パルス陰極電解」と「直流陰極電解」とに分けて記載する。
硫酸銅・・・・・・・・・・・・・・・・金属銅として23.5g/L
硫酸として・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g/L
モリブデン酸ナトリウム・・・・・・モリブデンとして0.25g/L
塩酸・・・・・・・・・・・・・・・塩素イオンとして0.002g/L
硫酸第二鉄・・・・・・・・・・・・・・金属鉄として0.20g/L
硫酸クロム・・・・・・・・・・・・三価クロムとして0.20g/L
浴温度:25.5℃
パルス陰極電解オンタイム・・・・・10ms
パルス陰極電解オフタイム・・・・・60ms
パルス陰極電解平均メッキ電流密度:・・・・・22.5A/dm2
硫酸銅・・・・・・・・・・・・・・・・・金属銅として45g/L
硫酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110g/L
浴温度:・・・・・・・・・・・・・・・・・50.5℃
直流陰極電解メッキ電流密度:・・・・・・・18.5A/dm2
粗化処理の均一性は次のようにして評価した。
先ず、前記処理銅箔を250mm角に切断し、その粗化処理両面に市販のポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂系基板(Panasonic電工製メグトロン−6プリプレグ相当)を重ね合わせて加熱プレス積層して、両面銅張積層板として、引き剥がし密着性の状態から下記のように粗化処理の均一性を評価した。
残銅は、前記銅張積層板の面をエッチング後、単位面積(0.5mm×0.5mm)当たりの残銅が全く見られない場合を◎、殆ど見られない場合を○、多少見られる場合を△、顕著に見られる場合を×として評価して表1に記載した。
実施例1に用いた無酸素銅からなる未処理圧延銅箔の両面側に実施例1同様の浴組成でパルス処理に代えて、直流陰極電解処理を施し、得られた表裏両粗化面の粗度がRzで3.0μm以下となるように処理した以外は実施例1と同じ処理を施し、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
実施例2に用いた未処理圧延銅箔に、比較例1と同様な処理を施した以外は、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
実施例3に用いた未処理圧延銅箔に、比較例1と同様な処理を施した以外は、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
電解製箔条件により柱状結晶でIPC規格に分類されるミドルプロファイル(MP)形状に製箔された未処理のMP−18μmの銅箔マット面側(電着液面側のRzは3.8μm)に、直流電解処理により比較例1と同様の処理および評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
特に実施例1〜3は評価結果が良好であり、第一粗化処理の電解のオン/オフを10ms/60msにするのがより好ましいことがわかる。
2 第二銅メッキ処理槽
3 第三表面処理(防錆処理)槽
4 第四表面処理(カップリング処理)槽
A 未処理銅箔
B 一次処理銅箔
C 二次処理銅箔
D 三次処理銅箔
E 四次処理銅箔
Claims (10)
- 無酸素銅からなり、常温での伸びが、3.5%以上であり、両表面の表面素地がJIS−B−0601に規定されるRzで0.8〜2.5μmである未処理圧延銅箔の両表面にパルス陰極電解粗化処理で金属銅からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑銅メッキ処理により両表面の粗度がRzで3.0μm以下である第二銅メッキ層が設けられているリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅箔。
- 前記第二銅メッキ層上に、防錆剤による第三防錆層、カップリング剤による第四保護層がこの順に設けられている請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅箔。
- 前記第三防錆層がクロム層からなり、該クロム層のクロム付着量が、金属クロムとして0.005〜0.025mg/dm2である請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅箔。
- 前記第四保護層がシランカップリング剤からなり、該シランカップリング剤の付着量が、ケイ素として0.001〜0.015mg/dm2である請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅箔。
- 無酸素銅からなり、常温での伸びが、3.5%以上であり、両表面の表面素地がJIS−B−0601に規定されるRzで0.8〜2.5μmである未処理圧延銅箔の両表面にパルス陰極電解粗化処理で金属銅からなる第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑銅メッキ処理により両表面の粗度がRzで3.0μm以下である第二銅メッキ層を設けるリチウムイオン二次電池の負極集電体用銅箔の製造方法。
- 無酸素銅からなり、常温での伸びが、3.5%以上であり、両表面の表面素地がJIS−B−0601に規定されるRzで0.8〜2.5μmである未処理圧延銅箔の両表面にパルス陰極電解粗化処理で金属銅からなる第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑銅メッキ処理により両表面の粗度がRzで3.0μm以下である第二銅メッキ層を設け、次いで前記第二銅メッキ層表面に防錆剤による第三防錆層を設け、次いで該第三防錆層表面にカップリング剤による第四保護層を設けるリチウムイオン二次電池負極集電体用銅箔の製造方法。
- 無酸素銅からなり、常温での伸びが、3.5%以上であり、両表面の表面素地がJIS−B−0601に規定されるRzで0.8〜2.5μmである未処理圧延銅箔の両表面にパルス陰極電解粗化処理で金属銅からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑銅メッキ処理により両表面の粗度がRzで3.0μm以下である第二銅メッキ層が設けられ、該第二銅メッキ層表面にケイ素系活物質が積層されているリチウムイオン二次電池の負極電極。
- 無酸素銅からなり、常温での伸びが、3.5%以上であり、両表面の表面素地がJIS−B−0601に規定されるRzで0.8〜2.5μmである未処理圧延銅箔の両表面にパルス陰極電解粗化処理で金属銅からなる第一粗化処理層が設けられ、該第一粗化処理層表面に平滑銅メッキ処理により両表面の粗度がRzで3.0μm以下である第二銅メッキ層が設けられ、該第二銅メッキ層表面に防錆処理により第三防錆層が設けられ、該第三防錆層表面にカップリング剤による第四保護層が設けられ、該第四保護層上にケイ素系活物質が積層されているリチウムイオン二次電池の負極電極。
- 無酸素銅からなり、常温での伸びが、3.5%以上であり、両表面の表面素地がJIS−B−0601に規定されるRzで0.8〜2.5μmである未処理圧延銅箔の両表面にパルス陰極電解粗化処理で金属銅からなる第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑銅メッキ処理により両表面の粗度がRzで3.0μm以下である第二銅メッキ層を設け、次いで該第二銅メッキ層表面にケイ素系活物質を塗工し乾燥して活物質層を積層するリチウムイオン二次電池負極電極の製造方法。
- 無酸素銅からなり、常温での伸びが、3.5%以上であり、両表面の表面素地がJIS−B−0601に規定されるRzで0.8〜2.5μmである未処理圧延銅箔の両表面にパルス陰極電解粗化処理で金属銅からなる第一粗化処理層を設け、次いで該第一粗化処理層表面に平滑銅メッキ処理により両表面の粗度がRzで3.0μm以下である第二銅メッキ層を設け、次いで前記第二銅メッキ層表面に防錆処理による第三防錆層を設け、次いで該第三防錆層表面にカップリング剤による第四保護層を設け、次いで第四保護層上にケイ素系活物質を塗工し乾燥して活物質層を積層するリチウムイオン二次電池負極電極の製造方法。
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