JP4811842B2 - ゴルフボールカバー用組成物及びゴルフボール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性が良好で、反発性、耐久性、打感に優れたカバーを得ることができるゴルフボールカバー用組成物と、このゴルフボールカバー用組成物で形成されたカバーを具備し、反発性、耐久性、打感に優れ、飛距離の増大化を図ることができるゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、ゴルフボール用カバー材として、アイオノマー樹脂が広く用いられている。このアイオノマー樹脂は、例えば、エチレン等のオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸或いはマレイン酸等の不飽和カルボン酸からなるイオン性共重合体の酸性基のある部分をナトリウム、亜鉛等の金属イオンによって中和したものであり、耐久性、反発性などの面で優れた性質を有し、ゴルフボール用カバー材のベース樹脂として好適なものである。
【0003】
また、比較的硬いアイオノマー樹脂をゴルフボール用カバー材として用いることは、ドライバーショットの際のクラブフェースとボールとの摩擦を減らすことができ、ショット時にバックスピンの比較的少ない風に強く、ランの出やすい大きな飛距離を生み出すことができる。
【0004】
しかしながら、上記アイオノマー樹脂をゴルフボール用カバー材として使用した場合、打撃時のフィーリングが非常に硬くなるという問題点がある。
【0005】
このため、このような点の改良として、比較的柔軟なエチレン−(メタ)アクリル酸エステルターポリマーのアイオノマー樹脂をある物性範囲のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂に一定量ブレンドしたものを軟・硬アイオノマー樹脂ブレンドゴルフボールカバーとして使用することが提案されている(米国特許第4884814号公報、特開平1−308677号公報)。
【0006】
この提案は、従来のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂をカバーに用いたゴルフボールの問題点である打感の硬さを大きく改善する技術として非常に有効なものといえる。
【0007】
しかしながら、この提案に係る軟・硬アイオノマー樹脂ブレンドゴルフボールカバーは次のような問題がある。即ち、比較的柔軟なエチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステルターポリマーのアイオノマー樹脂は、反発性が低く、機械的強度が弱いため、成形したゴルフボールの反発性が低下し、飛距離が低下したり、耐久性が悪化したりする。また、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステルターポリマーのアイオノマー樹脂は粘度が高く、ブレンド樹脂の粘度が上がってしまい、成形性が悪くなり、真球度の悪いボールとなりやすい。
【0008】
米国特許第4674751号公報では、特定硬度のアイオノマー樹脂と特定硬度の熱可塑性ウレタン樹脂を熱溶融ブレンドした特定硬度のカバー樹脂からなるゴルフボールが提案されている。
【0009】
しかしながら、この提案されているカバー材料は、アイオノマー樹脂と、熱可塑性ウレタン樹脂との両者の相溶性が悪く、成形性や打撃耐久性が悪いものである。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、成形性が良好で、反発性、耐久性、打感に優れたカバーを得ることができるゴルフボールカバー用組成物と、このゴルフボールカバー用組成物で形成されたカバーを具備し、反発性、耐久性、打感に優れ、飛距離の増大化を図ることができるゴルフボールを得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果(a)アイオノマー樹脂と、(b)熱可塑性ウレタン系材料と、(c)ゴム状弾性体、(d)極性基を持つ化合物及び(f)有機パーオキシドを必須成分として配合してなる(A)ゴム状弾性体組成物とを配合してなり、成形物のショアーD硬度が45から63であることを特徴とするゴルフボールカバー用組成物が材料及び硬度の適正化による相乗効果で成形性が良好で、反発性、耐久性、打感に優れたカバーを得ることができ、このゴルフボールカバー用組成物にて形成されたカバーを具備してなるゴルフボールは、反発性、耐久性、打感に優れ、飛距離の増大化を図ることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は、下記ゴルフボールカバー用組成物及びゴルフボールを提供する。
〔請求項1〕 (a)アイオノマー樹脂と、
(b)熱可塑性ウレタン系材料と、
下記成分を必須成分として配合してなる(A)ゴム状弾性体組成物
とを配合してなり、成形物のショアーD硬度が45から63であることを特徴とするゴルフボールカバー用組成物。
(c)ゴム状弾性体として、(c−1)スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体(H−SBR)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS)、水素添加スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)から選ばれる共重合体
(d)極性基を持つ化合物として、(d−4)水酸基と不飽和二重結合とを有する液状ポリブタジエン
(f)有機パーオキシド
〔請求項2〕(A)ゴム状弾性体組成物が、更に、
(d−1)不飽和グリシジル化合物及び/又はその誘導体、
(d−2)不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体、
(d−3)水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物、
(d−5)エステル系化合物、
(e)パーオキシド分解型オレフィン系樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴム、及び
(g)ゴム用軟化剤
より成る群から選ばれる一つ又はそれ以上の物質を含むものである請求項1に記載のゴルフボールカバー用組成物。
〔請求項3〕(a)アイオノマー樹脂と(b)熱可塑性ウレタン系材料との合計量100質量部に対して、(A)ゴム状弾性体組成物を1〜20質量部配合して成る請求項1又は2に記載のゴルフボールカバー用組成物。
〔請求項4〕(a)アイオノマー樹脂と(b)熱可塑性ウレタン系材料との配合質量比が(a)アイオノマー樹脂:(b)熱可塑性ウレタン系材料=75:25〜25:75である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフボールカバー用組成物。
〔請求項5〕請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフボールカバー用組成物で形成されたカバーを具備してなることを特徴とするゴルフボール。
【0013】
以下、本発明につき、更に詳しく説明すると、本発明のゴルフボールカバー用組成物は、必須成分として(a)アイオノマー樹脂を配合するものである。
【0014】
ここで、(a)アイオノマー樹脂は、オレフィン−不飽和カルボン酸系共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルを金属イオンで中和することによって得られ、一般に、オレフィン−不飽和カルボン酸系共重合体等の高剛性タイプアイオノマー樹脂と、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル等の柔軟タイプアイオノマー樹脂としてそれぞれ知られているものを使用することができる。
【0015】
上記アイオノマー樹脂中のオレフィンとしては、炭素数2〜8個を持つ炭化水素が好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、特にエチレンが好ましい。
【0016】
上記不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8個を持つ不飽和カルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0017】
上記高剛性タイプのアイオノマー樹脂は、該樹脂中のオレフィン不飽和カルボン酸系共重合体の含有量(酸含量)が、通常10質量%以上、上限としては、通常25質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下、最も好ましくは15質量%以下であることが推奨される。酸含量が少なすぎると、得られる成形物の剛性が低くなり、反発性が劣る場合があり、多すぎると、成形物の剛性が高くなりすぎて、打撃時のフィーリングが損なわれる場合がある。
【0018】
上記柔軟タイプのアイオノマー樹脂は、該樹脂中のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体中のカルボン酸含量が、通常5質量%以上、上限として15質量%以下のものであることが好ましい。
【0019】
不飽和カルボン酸エステルとしては、上記不飽和カルボン酸に、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソプロパノール等の低級アルコールを反応させて得たもの等が挙げられる。共重合体中のエステル成分は、通常3質量%以上、上限として40質量%以下の割合とすることが好ましい。
【0020】
本発明の(a)アイオノマー樹脂が有する不飽和カルボン酸のカルボキシル基は、金属イオンにて中和されたものであり、その中和度は、通常20モル%以上、好ましくは25モル%以上、上限として80モル%以下、好ましくは70モル%以下であることが推奨される。中和度が少なすぎると、成形物の剛性が不足して反発性が低下する場合があり、多すぎると組成物の性能の向上が認められない上に、樹脂の流れ性、加工性が損なわれる場合がある。
【0021】
上記中和に使われる金属イオンとしては、Li+、Na+、K+、Zn++、Co++、Ni++、Cu++、Pb++及びMg++等を挙げることができるが、特にLi+、Na+、Zn++及びMg++のいずれかであることが好ましい。なお、これらの金属イオンは、ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素酸塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物から導入できる。
【0022】
このようなアイオノマー樹脂としては、通常、ゴルフボールのゴルフボールカバー用組成物として用いられる市販品を使用することができ、例えば、ハイミランAM7315、ハイミランAM7317、ハイミランAM7318、ハイミラン1706、ハイミラン1605、ハイミラン1601、ハイミラン1557(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン8120、サーリン6320(いずれも米国デュポン社製)などが挙げられる。
【0023】
(a)アイオノマー樹脂は、上述したアイオノマー樹脂を単独で又は2種以上をブレンドして使用することができ、本発明においては、特に上述したアイオノマー樹脂のうち、硬度又は組成の異なるアイオノマー樹脂を2種以上ブレンドした樹脂の使用が推奨される。ブレンドするアイオノマー樹脂の硬度は、ショアD硬度40以上、特に42以上、好ましくは56以上、更に好ましくは60以上、上限としては75以下、好ましくは65以下、更に好ましくは63以下のものであることが推奨される。ショアD硬度が低すぎると、成形物の反発性が不十分となってしまう場合があり、ショアD硬度が高すぎると、成形物の打感が硬く、打撃耐久性も劣る場合がある。
【0024】
次に、本発明の必須成分の(b)ウレタン系材料としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、ウレタン樹脂等を挙げることができる。これら材料は、以下の分子構造が高分子ポリオール化合物からなるソフトセグメントと、ハードセグメントを構成する単分子鎖延長剤と、芳香族、脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート等を用いて公知の方法にて製造することができる。
【0025】
ここで、上記高分子ポリオールとしては、特に制限されず、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、コポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等が挙げられ、これらポリオールのいずれも好適に使用することができる。
【0026】
ここで、ポリエステル系ポリオールとしては、ポリカプロラクトングリコール、ポリ(エチレン−1,4−アジペート)グリコール、ポリ(ブチレン−1,4−アジペートグリコール等が挙げられる。
【0027】
コポリエステル系ポリオールとしては、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)グリコール等が挙げられる。
【0028】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、(ヘキサンジオール−1,6−カーボネート)グリコール等が挙げられる。
【0029】
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0030】
これら高分子ポリオールの数平均分子量は、約600以上、好ましくは1000以上、上限として5000以下、好ましくは3000以下であることが推奨される。
【0031】
ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族又は脂環族ジイソシアネート等を挙げることができ、いずれも好適に用いることができる。
【0032】
具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフタリンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水素添加MDI)等が挙げられる。特に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水素添加MDI)の使用が、耐変色性の点で好適である。
【0033】
単分子鎖延長剤としては、特に制限されず、通常の多価アルコール類、アミン類等を用いることができ、具体的には1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,6−ヘキシルグリコール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメタンジアミン(水素添加MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)などが挙げられる。
【0034】
本発明の(b)ウレタン系材料は、上記材料を使用して公知の方法で製造することができる。
【0035】
また、(b)ウレタン系材料の反発弾性率(JIS−K7311)は、高い方が好ましく、特に40%以上、更に好ましくは50%以上であることが推奨され、反発率が少なすぎると、ゴルフボールカバー用組成物の反発性付与効果が十分でなくなってしまう場合がある。
【0036】
更に(b)ウレタン系材料のショアD硬度は、通常20以上、好ましくは30以上、更に好ましくは35以上、上限として70以下、好ましくは60以下、更に好ましくは55以下であることが推奨される。ショアD硬度が高すぎると、得られる成形物に十分な柔軟性を付与させることが困難になり、低すぎると成形物の耐久性が低下する場合がある。
【0037】
(b)ポリウレタン系材料としては、市販品を好適に用いることができ、例えば、商品名:パンデックスT8190、T−R3080、T−7298、T−7890(ディーアイシーバイエルポリマー社製)、テキシンDP7−3005(バイエル社製)等を挙げることができる。
【0038】
本発明の(A)ゴム状弾性体組成物は、上記(a)アイオノマー樹脂及び(b)ウレタン系材料と併せて配合される必須成分で、以下に述べる(c)ゴム状弾性体、(d)極性基を持つ化合物及び(f)有機パーオキシドを必須成分としかつこれに加えて(e)パーオキシド分解型オレフィン系樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴムを使用してもよい。
【0039】
本発明の(A)ゴム状弾性体組成物は、上記(a)アイオノマー樹脂と(b)ウレタン系樹脂との相溶性を向上するための成分で、この(A)成分が配合されないと、相溶性が悪く成形品の層剥離が起こる。
以下、本発明の(A)ゴム状弾性体組成物を構成する必須成分(c)及び上記成分(d)〜(g)について順に説明する。
【0040】
(c)ゴム状弾性体
(c)ゴム状弾性体としては、上記(a)アイオノマー樹脂と(b)ウレタン系材料との相溶化が可能なゴム状弾性体を配合することが必要である。
【0041】
ここで、本発明の(c)ゴム状弾性体としては、例えば、天然ゴム(NR)、ジエン系合成ゴム、非ジエン系合成ゴム等のゴム状弾性体を挙げることができ、より具体的には、天然ゴム(NR)、ジエン系合成ゴムとして、例えば、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体(H−SBR)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS)、水素添加スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、ABS等を、非ジエン系合成ゴムとして、例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−ブテン共重合体ゴム(EBR)、エチレン−プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)及びメタロセン触媒を用い合成したエチレン−α−オレフィン共重合体、アクリル系ゴム(ACM、ANM)、フッ素系ゴム、ポリエステル系(共)重合体(エラストマー)、ポリアミドポリエステル系(共)重合体(エラストマー)等を挙げることができる。
【0042】
上記本発明の(c)ゴム状弾性体は、特に、下記(c−1)〜(c−3)成分を好適に使用することができる。
(c−1)芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックとからなるブロック共重合体及び/又はこのブロック共重合体の水素添加物
(c−2)エチレン系共重合体(ゴム)及び/又はエチレン−αオレフィン共重合体(ゴム)
(c−3)芳香族ビニル化合物と、共役ジエン化合物とを主成分とするランダム共重合体及び/又はこのランダム共重合体の水素添加物
以下、これら成分について順に説明する。
【0043】
(c−1)成分
芳香族ビニル化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックと、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックとからなるブロック共重合体及び/又はこれを水素添加して得られる共重合体ブロックを好適に挙げることができ、前者のブロックをAとし、後者のブロックをBとした場合、例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−Aなどの構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体或いはこれらを水素添加してなるものを挙げることができる。
【0044】
上記(c−1)成分は、芳香族ビニル化合物を5質量%以上、好ましくは20質量%以上、上限として60質量%以下、特に50質量%以下含むものであることが推奨される。
【0045】
(c−1)成分中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、芳香族ビニル化合物のみからなるものであっても、芳香族ビニル化合物を50質量%以上、好ましくは70質量%以上配合するものであって、かつ(水素添加)共役ジエン化合物(以下、(水素添加)共役ジエン化合物とは、共役ジエン化合物及び/又は水素添加共役ジエン化合物を意味する。)を主成分とした化合物との共重合体ブロックであってもよい。
【0046】
(c−1)成分中の(水素添加)共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、(水素添加)共役ジエン化合物のみからなるか、または(水素添加)共役ジエン化合物50質量%以上、好ましくは70質量%以上と、芳香族ビニル化合物を主成分とした化合物との共重合体ブロックであってもよい。
【0047】
更に、本発明の(c−1)成分は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、分子鎖中の共役ジエン化合物又は芳香族ビニル化合物又は芳香族ビニル化合物由来の単位の分布が、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が漸次増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの任意の組み合わせになっていてもよい。
【0048】
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA又は共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBがそれぞれ2個以上ある場合には、各重合体ブロックは同一構造でも異なる構造であってもよい。
【0049】
上記重合体ブロックAを構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種又は2種以上を選択でき、中でもスチレンが好ましい。
【0050】
また、上記重合体ブロックBを構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種又は2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0051】
特に、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、そのミクロ構造は任意に選ぶことができ、例えば、ポリブタジエンブロックBにおいては、1,2−ミクロ構造が20質量%以上、好ましくは25質量%以上、上限として50質量%以下、好ましくは45質量%以下であることが推奨される。
【0052】
例えば、ポリイソプレンブロックにおいては、イソプレンは、通常70質量%以上、上限として100質量%以下が1,4−ミクロ構造を有するものであることが推奨される。また、共役ジエン、特にイソプレン、ブタジエンに由来する脂肪族二重結合は、少なくとも70%以上、より好ましくは90%以上が水素添加されたものであることが好ましい。
【0053】
(c−1)成分のブロック共重合体の数平均分子量は、通常5,000以上、好ましくは10,000以上、更に好ましくは50,000以上、上限として1,500,000以下、好ましくは550,000以下、更に好ましくは400,000以下の範囲であり、分子量分布(多分散度 Mw/Mn)は、通常10以下、好ましくは5以下、更に好ましくは2以下であることが推奨される。
【0054】
ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状或いはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。上記(水素添加)ブロック共重合体の具体例としては、SBS、SIS,SIBS及びこれらの水素添加物を挙げることができる。
【0055】
これらのブロック共重合体の製造方法としては、数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒又はチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得る方法や、水素添加する公知の方法等を好適に採用することができる。
【0056】
(c−2)成分
(c−2)エチレン共重合体(ゴム)及び/エチレン−αオレフィン共重合体(ゴム)としては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−ブテン共重合体ゴム(EBR)並びにエチレン、プロピレン及び/又は非共役ジエンのターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0057】
ここで、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)とは、エチレンとプロピレンのゴム状共重合体であり、エチレン成分含量が、通常40質量%以上、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、上限として80質量%以下、好ましくは75質量%以下とすることが推奨される。エチレン成分含量が少なすぎると、成形物の耐磨耗性が不足し、粘着性が生じ易くなり、エチレン成分含量が多すぎると、成形物の柔軟性が低下する場合がある。
【0058】
上記エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)としては、エチレン、プロピレン以外の第3成分として、更に非共役ジエンを加えたエチレン−プロピレンターポリマー(EPDM)等を使用することもできる。この場合の非共役ジエンとしては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−ビニルノルボルネン(VNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン及び/又はジシクロペンタジエン(DCPD)等が挙げられる。
【0059】
また、エチレン−ブテン共重合体ゴム(EBR)とは、エチレンとブテンのゴム状共重合体であり、エチレン成分含量が40質量%以上、好ましくは60質量%以上、上限として85質量%以下、好ましくは80質量%以下である。エチレン成分含量が少なすぎると、成形物の耐磨耗性が不足し、エチレン成分含量が多すぎると、成形物の柔軟性が低下する。
【0060】
本発明の(c−2)成分のムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、通常5以上、好ましくは10以上、上限として120以下、好ましくは100以下であることが推奨される。ムーニー粘度が低すぎると得られる成形物のゴム弾性が劣ることがあり、ムーニー粘度が高すぎると成形加工性が悪くなる場合がある。
【0061】
(c−3)成分
(c−3)成分中の芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物としては、前記成分(c−1)と同様の芳香族ビニル化合物と、共役ジエン化合物を用いることができるのでその説明は省略する。
【0062】
(c−3)成分中の芳香族ビニル化合物の含有量は、50質量%以下、好ましくは35質量%以下、下限として5質量%以上であることが推奨される。含有量が多すぎると、得られる成形品の感触が硬くなり、本発明の目的に添わない場合がある。
【0063】
また、共役ジエン化合物も、(c−1)と同様のものが用いられ、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ペンタジエンなどが挙げられ、特に、該共役ジエン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも70%以上、特に90%以上が水素添加されたものであることが好ましい。
【0064】
本発明の(c−3)成分は、ランダム共重合体としては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物50質量%以下とのランダム共重合体であって、数平均分子量が5,000以上、上限として1,000,000以下であり、多分散度(Mw/Mn)の値が10以下であるものが推奨される。
【0065】
また、このようなランダム共重合体は、その共役ジエン部の1,2−又は3,4−等のビニル結合含有量が5%以上であり、好ましくは20%以上、上限として90%以下であることが推奨され、少なすぎると成形品の感触が悪くなり、本発明の目的に添わない場合がある。
【0066】
成分(c−3)における芳香族ビニル化合物としては、前記成分(c−1)と同様のものが用いられる。該芳香族ビニル化合物は、ランダムに結合しており、コルソフ[I.M.Kolthoff,J.Polymer Sci.,Vol1 p.429 (1946)]の方法によりブロック状の芳香族ビニル化合物含量が全結合芳香族ビニル化合物中10質量%以下、好ましくは5質量%以下のものであることが推奨される。
【0067】
本発明の上記(c)成分は、上記成分をそのまま使用することもできるが、その構造中に極性を有する物であることが推奨される。ここで構造中に有する極性基としては、例えば、エステル基、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物基、アミノ基、ヒドロキシル基、グリシジル基及びオキサゾリル基よりなる群から選ぶことができ、特に、このような極性基を有するゴム状弾性体は、成形品表面の表面剥離を著しく抑制すると共に、柔軟性を付与する効果があり、いずれも好適に使用することができるが、特に酸無水物基、ヒドロキシル基、グリシジル基であることが好ましい。
【0068】
(d)極性基を持つ化合物
本発明の(d)極性基を持つ化合物とは、極性基として、例えば、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、ヒドロキシル基、グリシジル基及びオキサゾリル基よりなる群から選ばれる一つ又はそれ以上の基を持つ化合物であることが推奨される。具体的には下記(d−1)〜(d−5)成分を挙げることができる。
(d−1)不飽和グリシジル化合物及び/又はその誘導体
(d−2)不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体
(d−3)水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物
(d−4)液状ポリブタジエン
(d−5)エステル系化合物
以下、上記(d−1)〜(d−5)成分についてそれぞれ説明する。
【0069】
(d−1)成分
不飽和グリシジル化合物及び/又はその誘導体は、変性剤として使用されるものであり、好ましくは分子中にオレフィンと共重合し得る不飽和基とグリシジル基とを有するグリシジル化合物が用いられ、特に好ましくは、グリシジルメタクリレート(GMA)であることが推奨される。
【0070】
(d−1)成分は、例えば上記(c)成分における(水素添加)ブロック共重合体のソフト成分、後述する(e)成分のパーオキサイド分解型オレフィン樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴムを変性することができ、成分(a)と(b)の相溶性を更に向上させることができる。
【0071】
(d−1)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、上限として20質量部以下、好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下であり、下限を設けるならば0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上とすることができる。配合量が多すぎると、添加量に見合う効果が望めない上に、加工性が低下するため、精度のよいゴルフボールが得られず、少なすぎると、成分(a)、(b)を配合した際に、該成分の相溶性を改良する効果が認められなくなる場合がある。
【0072】
(d−2)成分
不飽和カルボン酸又はその誘導体は、変性剤として使用されるものであり、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ジカルボン酸又はその誘導体、例えば、酸、ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等を挙げることができ、特に、無水マレイン酸(MAH)を好適に用いることができる。
【0073】
上記(d−2)成分の配合により、(c)成分における(水素添加)ブロック共重合体のソフト成分、後述する(e)パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴム、例えば特にポリプロピレン等を変性することが可能になる。
【0074】
(d−2)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、上限として20質量部以下、好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下であり、下限を設けるならば0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上とすることができる。配合量が多すぎると、添加量に見合う効果が望めない上に、加工性が低下するため、精度のよいゴルフボールが得られず、少なすぎると、成分(a)、(b)を配合した際に、該成分の相溶性を改良する効果が認められなくなる場合がある。
【0075】
(d−3)成分
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物であり、(a)と(b)の相溶性を向上させる効果を有する。例として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、エチル−2−ヒドロキシエチルフマレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート及びこれからなる重合体、共重合体、あるいは他の単量体との共重合体等を挙げることができ、共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等を挙げることができる。好ましくは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを使用することができる。
【0076】
(d−3)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、上限が100質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下であり、下限を設けるならば0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。配合量が多すぎると、混合混練するときに発生するガス量が多く、作業性が低下する場合ばかりか、添加量に見合う効果が得られない上、材料コストが大きくなり、少なすぎると、成分(a)、(b)を配合した際に、該成分の相溶性を改良する効果が認められなくなる場合がある。
【0077】
(d−4)液状ポリブタジエン
液状ポリブタジエンは、主鎖の微細構造がビニル−1,2−結合、トランス−1,4−結合、シス−1,4−結合からなり、室温において透明な液状の重合体である。ここで、ビニル−1,2−結合は30質量%以下であることが好ましく、液状ポリブタジエンのビニル−1,2−結合が多すぎると、得られる組成物の低温特性が低下するために好ましくない場合がある。
【0078】
該液状ポリブタジエンの数平均分子量は、上限は5,000以下、好ましくは4,000以下である。下限としては1,000以上、好ましくは2,000以上であり、少なすぎると得られる組成物の耐熱変形性が低下し、多すぎると得られる組成物の相溶性が低下する。
【0079】
また、液状ポリブタジエンは、エポキシ基、水酸基、イソシアネート基、エステル基、カルボキシル基、カルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の基を有する共重合性化合物であることが好ましい。中でも、水酸基と不飽和二重結合とを有するものが、特に好ましく、例えば、市販品の出光石油化学株式会社製R−45HT(商標)等を挙げることができる。
【0080】
(d−4)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、上限を80質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、下限を設けるならば1質量部以上、好ましくは3質量部以上とすることができる。少なすぎると添加効果が認められず、多すぎると組成物の機械的特性が低下する場合がある。
【0081】
(d−5)エステル系化合物
本発明で用いる(d−5)エステル系化合物は、エステル系の可塑剤であって、リン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、二価アルコールエステル、オキシ酸エステル、アクリル系高分子等の環状、非環状の可塑剤などが挙げられる。
【0082】
環状可塑剤としては、例えば、無水フタル酸エステルおよびトリメリット酸エステル、更にはN−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、ジベンジルセバケート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジ−t−オクチルフェニルエーテル、ジプロパンジオールジベンゾエート、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、イソプロピリデンジフェノキシプロパノール、アルキル化ナフタレン、ポリエチレングリコールジベンゾエート、o,p−トルエンスルホンアミド、トリメチルペンタンジオールジベンゾエートおよびトリメチルペンタンジオール・モノイソブチレート・モノベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、無水フタル酸エステル及びトリメリット酸エステルが好ましい。
【0083】
無水フタル酸エステルの代表的な例としては、例えば、ブチルオクチルフタレート、ブチル・2−エチルヘキシルフタレート、ブチル・n−オクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジ−トリデシルフタレート、n−ヘキシル・n−デシルフタレート、n−オクチル・n−デシルフタレート、アルキル・ベンジルフタレート、ビス(4−メチル−1,2−ペンチル)フタレート、ブチル・ベンジルフタレート、ブチル・シクロヘキシルフタレート、ジ(2−ブトキシエチル)フタレート、シクロヘキシル・イソデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジエチルイソフタレート、ジ−n−ヘプチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ(2−メトキシエチル)フタレート、ジメチルイソフタレート、ジノニルフタレート、ジオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)イソフタレート、混合ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレート、2−(エチルヘキシル)イソブチルフタレート、ブチル・フタリルブチルグリコレート、エチル(およびメチル)フタリルエチルグリコレート、ポリプロピレングリコール・ビス(アミル)フタレート、ヘキシル・イソデシルフタレート、イソデシル・トリデシルフタレート、イソオクチル・イソデシルフタレート等が挙げられる。
【0084】
トリメリット酸エステルの代表的な例としては、例えば、トリイソオクチルトリメリテート、トリ−n−オクチル・n−デシルトリメリテート、トリオクチルトリメリテート、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート(TOTM)、トリ−n−ヘキシル・n−デシルトリメリテート、トリ−n−ヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートおよびトリイソノニルトリメリテート等が挙げられる。
【0085】
また、非環状可塑剤としては、リン酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、ミリスチン酸エステル、リシノレイン酸エステル、アセチルリシノレイン酸エステル、セバシン酸エステル、ステアリン酸エステル、エポキシ化エステル、更には、1,4−ブタンジオール・ジカプリレート、ブトキシエチルペラルゴネート・ジ[(ブトキシエトキシ)エトキシ]メタン、ジブチルタータレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ジイソオクチルジグリコレート、イソデシルノナノエート、テトラエチレングリコール・ジ(2−エチル−ブチレート)、トリエチレングリコール・ジ(2−エチル−ヘキサノエート)、トリエチレングリコールジペラルゴネート及び分岐脂肪族二価アルコールのエステル化合物である2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)、アクリル系高分子等が挙げられる。
【0086】
リン酸エステルの代表的な例としては、例えば、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、メチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリ(2−ブトキシエチル)ホスフェート、トリ(2−クロロエチル)ホスフェート、トリ(2−クロロプロピル)ホスフェートおよびトリオクチルホスフェート等が挙げられる。
【0087】
アジピン酸エステルの代表的な例としては、例えば、ジ[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジオクチルアジペート(ジイソオクチルアジペートを含む)、n−ヘキシル・n−デシルアジペート、n−オクチル・n−デシルアジペートおよびジ−n−ヘプチルアジペート等が挙げられる。
【0088】
セバシン酸エステルの代表的な例としては、例えば、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブトキシエチルセバケート、ジイソオクチルセバケートおよびジイソプロピルセバケート等が挙げられる。
【0089】
アゼライン酸エステルの代表的な例としては、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)アゼラエート、ジシクロヘキシルアゼラエート、ジイソブチルアゼラエートおよびジイソオクチルアゼラエート等が挙げられる。
【0090】
アクリル系高分子可塑剤としては、(i)ラジカル重合性単量体と(ii)改質用化合物との混合物を、重合開始剤の存在下又は非存在下に、反応させて得られる反応生成物からなる重合体等が挙げられる。この重合体は、(ii)改質用化合物の重合体への結合様式がエステル結合である重合体が好ましく、(i)ラジカル重合性単量体として(メタ)アクリル酸等を用い、かつ(ii)改質用化合物として脂肪族または脂環式アルコールを用いる重合体等であってもよい。
【0091】
アクリル系高分子可塑剤において、ラジカル重合性単量体(i)としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノ及びジアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン等のアルケン;ブタジエン、イソプレン等のジエン;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライドおよびアリルアルコール等が挙げられる。
【0092】
また、改質用化合物(ii)としては、シクロヘキシルアルコール等のシクロアルカノール;イソプロピルアルコール等のアルカノール;フルオロアルキルアルコール等のハロゲン基含有アルコール;エチレングリコール、ブタンジオール等のアルキレンジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロアルキレンジオール;末端に水酸基を有するポリエーテル、ポリエステル等のポリマーの水酸基含有改質剤、シクロヘキシルカルボン酸、シクロヘキシルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、フルオロアルキルジカルボン酸、無水マレイン酸およびフマル酸等のカルボキシル基含有化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、メチルプロピレングリコールアセテート、カルビトールアセテートおよびエチルカルビトールアセテート等のエステル基含有改質剤、シクロヘキセン、シクロペンテンおよびイソブテン等のアルケンが挙げられる。
【0093】
上記(i)と(ii)の組み合わせにおけるアクリル系重合体の製法例としては、(i)の(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸またはマレイン酸のモノアルキルエステル等と、(ii)の水酸基を有する化合物を用い、エステル化反応により、重合体に改質用化合物が導入された重合体が得られる。また、(i)のメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート等のエステル基含有単量体と(ii)の水酸基を有する化合物を用いれば、エステル交換反応をさせることにより、機能性重合体が得られる。更に、(i)の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの水酸基含有単量体と(ii)のカルボキシル基またはエステル基含有化合物との反応によるエステル結合の形成により、機能性基を導入された重合体が得られる。更にまた、(i)の(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体と(ii)のアルケンを用いることによりカルボキシル基がエチレン性不飽和結合に付加反応してエステル結合が形成され、改質用化合物が導入した重合体を得ることができる。
【0094】
本発明で用いることのできるアクリル系高分子可塑剤においては、上記(i)としては、例えば、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、メソオキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等が好ましく、中でもエチルアクリレートが主成分であることが最適である。
【0095】
また、上記アクリル系高分子可塑剤の重量平均分子量(Mw)は、500〜10000が好ましく、より好ましくは1000〜6000、更に好ましくは1000〜3000であり、粘度は、100〜9000mPa・sが好ましく、より好ましくは1000〜6000mPa・s、更に好ましくは3000〜5000mPa・sであり、Acetone−Water Toleranceから求めたSP値は、10.5〜16.5が好ましく、より好ましくは13〜16、更に好ましくは14〜16であることが推奨される。
【0096】
これらのエステル系化合物である可塑剤の中では、DINP、TOTM、TXIB(イーストマンケミカル社製)を特に好ましく用いることができる。(d−5)成分は、(f)有機パーオキシドを配合した場合に(c)成分にグラフト重合し、成分(a)、(b)との相溶性を向上させる機能を主に果たすものである。
【0097】
(d−5)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、下限値を設けるならば0.1質量部以上、好ましくは5質量部以上、上限として150質量部以下、好ましくは80質量部以下とすることができる。配合量が少なすぎると、得られるゴルフボールカバー用組成物の成形性が悪化する場合があり、多すぎると得られるゴルフボールカバー用組成物から(d−5)成分がブリードアウトしやすく、剥離や変形及びフローマークが成形品に生じ易くなり、更に加工時の発生ガスが顕著になる場合がある。
【0098】
(e)成分
パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴムは、得られる組成物のゴム分散を良好にし、かつ成形品の外観を良好にすると共に、硬度及び収縮率の調整効果を付与できるものである。(e)成分は、後述する(f)有機パーオキサイドの存在下で加熱処理することによって熱分解して分子量を減じ、溶融時の流動性が増大するオレフィン系の重合体又は共重合体であり、例えば、アイソタクチックポリプロピレンやプロピレンと、他のα−オレフィン、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等との共重合体等を挙げることができる。
【0099】
(e)成分の230℃におけるMFR(JIS K−7210 2.16kg荷重)は、好ましくは0.1g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上、上限として200g/10分以下、好ましくは100g/10分以下であることが推奨される。小さすぎると成形性が低下し、大きすぎると、成形品の反発弾性率が低下して、ゴルフボールの機能を満足させることができない場合がある。
【0100】
(e)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、上限として200質量部以下、好ましくは100質量部以下、更に好ましくは50質量部以下であり、下限を設けるならば1質量部以上、好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であることが推奨される。配合量が少なすぎると、得られる組成物の成形性が悪化し、多すぎると、成形物の硬度が高くなりすぎ、柔軟性が失われてゴム的感触の成形物が得られない場合がある。
【0101】
(f)成分
有機パーオキサイドは、ラジカルを発生せしめ、そのラジカルを連鎖的に反応させて、(c)成分を架橋せしめる働きを有するものである。また、同時に、成分(d)を成分(c)にグラフト重合させ、成分(a)と成分(b)との相溶性を向上させる働きをする。更に、必要に応じて配合する成分(e)、(g)、(i)、(j)、(k)を分解又は架橋して溶融混練時の組成物の流動性をコントロールしてゴム成分の分散を良好にせしめる。
【0102】
(f)成分の有機パーオキサイドとして、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうちで、臭気性、着色性、スコーチ安全性の観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が特に好ましい。
【0103】
(f)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、上限が3.5質量部以下、好ましくは3.0質量部以下であり、下限が0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であることが推奨される。配合量が多すぎると成形性が悪くなり、少なすぎると架橋を十分達成できない上、(d)成分、特に(d−1)〜(d−5)を効率的に反応させることができない上、(a)成分と(b)成分との相溶性が低下する場合がある。
【0104】
(g)成分
(g)ゴム用軟化剤としては、例えば、非芳香族系の鉱物油、液状又は低分子量の合成軟化剤等が挙げられる。ゴム用鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖を組合せた混合物であって、一般に、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%を占めるものをナフテン系、芳香族炭素数が30%以上を占めるものを芳香族系と呼び区別されており、本発明の(g)ゴム用軟化剤は、特にゴム用鉱物油軟化剤であることが推奨され、上記のパラフィン系及びナフテン系が好ましく、芳香族系の軟化剤の使用は、(c)成分との関係で分散性が悪く好ましくない。
【0105】
(g)成分として、パラフィン系の鉱物油軟化剤が好ましく、パラフィン系の中でも芳香族成分が少ないものが特に好ましい。
【0106】
該非芳香族系のゴム用軟化剤は、37.8℃における動的粘度が20〜50000cSt、好ましくは20〜500cSt、100℃における動的粘度が2〜1500cSt、好ましくは2〜50cSt、流動点が−25℃〜15℃、好ましくは−25℃〜0℃、より好ましくは−25℃〜−10℃、引火点(COC)が170℃〜350℃、更に重量平均分子量が100〜3000、好ましくは100〜2000のものであることが推奨される。
【0107】
(g)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、上限としては240質量部以下、好ましくは200質量部以下、更に好ましくは150質量部以下であり、下限を設けるならば1質量部以上、好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上配合することができる。配合量が多すぎると、軟化剤のブリードアウトを生じ易く、成形物に粘着性を与えるおそれがあり、機械的性質が低下し、配合量が少なすぎると、実用的には差し支えないが、組成物の成形性が低下して、精度の高いゴルフボールを得ることが難しくなる場合がある。
【0108】
本発明の(A)ゴム状弾性体組成物中には、上記(d)〜(g)成分以外に、更に、下記の(h)〜(k)成分を適宜必要に応じて配合することができる。
(h)エステル系架橋助剤
(i)極性樹脂
(j)非晶質ポリオレフィン成分
(k)パーオキシド架橋型オレフィン系樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴム
以下、これら任意成分について説明する。
【0109】
(h)エステル系架橋助剤
本発明の(h)成分のエステル系架橋助剤は必要に応じて、上記の(f)有機パーオキサイドによる架橋処理に際して、均一かつ効率的な架橋反応を行うために好適に配合することができる。
【0110】
(h)成分の具体例としては、例えば、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールの繰り返し数が9〜14のポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート等の多官能性メタクリレート化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート等の多官能性アクリレート化合物、ビニルブチラート又はビニルステアレート等の多官能性ビニル化合物などを挙げることができる。上記エステル系架橋助剤は単独あるいは2種類以上を組み合わせても良い。これらの架橋助剤のうち、トリエチレングリコールジメタクリレート等を使用することが特に好ましい。
【0111】
(h)エステル系架橋助剤の配合量は、(c)ゴム状弾性体100質量部に対して、上限が50質量部以下、特に好ましくは20質量部以下であり、下限を設けるならば0.02質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上であることが好ましい。上記上限を超えては、自己重合性により架橋の度合が低下して効果が得られなくなり、上記下限未満では(h)成分配合の効果を十分に達成できない場合がある。
【0112】
(i)極性樹脂
また、本発明のゴルフボールカバー用組成物は、上記の成分の他、更に必要に応じて、エステル基、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物基、アミノ基、ヒドロキシル基、グリシジル基及びオキサゾリル基より成る群から選ばれる一つ又はそれ以上の極性基を有する(i)極性樹脂を含有することも可能である。例えば、鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体(鹸化EVA)、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられ、含有する場合は(c)成分100質量部に対し、0.1質量部以上、上限として100質量部以下、好ましくは50質量部以下であることが推奨される。
【0113】
(j)非晶質ポリオレフィン成分
本発明のゴルフボールカバー用組成物においては、必要に応じて、(j)非晶質ポリオレフィン成分を配合することができる。本発明で用いる(j)非晶質ポリオレフィン成分は、190℃における溶融粘度が250〜50,000mPa・s、好ましくは10,000〜25,000mPa・sのプロピレンを主成分とする非晶質共重合体からなり、X線回析により測定した結晶化度が50%以下、好ましくは20%以下である比較的低分子量の重合体を好適に挙げることができる。また、該非晶質ポリオレフィンのガラス転移温度は−33〜−23℃が好ましく、軟化点は120〜135℃が好ましい。
【0114】
非晶質ポリオレフィンの具体例としては、非晶質単独重合体のアタクチックポリプロピレン、プロピレンを主体とする他のオレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等)との非晶質共重合体等を挙げることができる。これらの非晶質ポリオレフィンのうち、アタクチックポリプロピレン、プロピレン/エチレン非晶質共重合体、プロピレン/1−ブテン非晶質共重合体が好ましい。前記非晶質ポリオレフィンは、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよいが、ブロック共重合体の場合、プロピレン単位の結合様式はアタクチック構造である必要がある。また、非晶質共重合体がプロピレンとエチレンとの共重合体である場合、該プロピレン単位の含有量は、50モル%以上が好ましく、特に60モル%以上、上限として100モル%以下が好ましい。
【0115】
(j)成分の配合量は、配合する場合は、(c)成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは3質量部以上、上限として150質量部以下、好ましくは80質量部以下であることが推奨される。配合量が多すぎると、得られるゴルフボールカバー用組成物から(g)軟化剤を配合した際に(g)軟化剤がブリードアウトしやすく、剥離や変形及びフローマークが成形品に生じ易くなる場合がある。
【0116】
(k)パーオキシド架橋型オレフィン系樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴム
(k)パーオキシド架橋型オレフィン系樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴムとしては、高密度ポリエチレン(低圧法ポリエチレン)、低密度ポリエチレン(高圧法ポリエチレン)、線状低密度ポリエチレン(エチレンと少量の好ましくは1〜10モル%のブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などのα−オレフィンとのコポリマー)などのポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸エステルコポリマーなどの中から選ばれる1種又は2種以上が好ましく用いられる。特に好ましいのはメタロセン触媒(シングルサイト触媒)を用いて製造されたエチレン・オクテン・コポリマー又はエチレン・ヘキセン・コポリマーである。
【0117】
例えば、特開昭61−296008号公報に記載された方法に従い、支持体及び周期律表の4b族、5b族並びに6b族の金属の少なくとも1つを含むメタロセンとアルモキサンとの反応生成物で構成され、当該反応生成物が支持体の存在のもとで形成されることを特徴とするオレフィン重合体触媒によって重合されたオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0118】
(k)成分は、190℃おけるMFR(JIS K−7210、荷重2.16kg)が、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.3〜50g/10分であるものを使用することが推奨される。
【0119】
また、(k)成分の配合量は、(c)成分100質量部に対して、上限が100質量部以下、好ましくは50質量部以下であり、下限値を設けるならば、5質量部以上であることが推奨され、上限を超えると、得られるゴルフボールカバー用組成物の柔軟性が失われ、(i)成分ゴム用軟化剤を配合した際にブリードアウトが生じ易くなる場合がある。
【0120】
(A)ゴム状弾性体組成物の製造
本発明の(A)ゴム状弾性体組成物は、上記成分(c)、(d)及び(f)に加え、必要に応じて成分(e)、(g)〜(k)を加えて、各成分を同時にあるいは任意の順に加えて溶融混練することにより製造することができる。
【0121】
溶融混練の方法は、特に制限はなく、通常公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。例えば、適度なL/Dの二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いることにより、上記操作を連続して行うこともできる。ここで、溶融混練の温度は、好ましくは160〜220℃である。
【0122】
以上のように、本発明のゴルフボールカバー用組成物は、上記(a)アイオノマー樹脂、(b)ウレタン系材料、(A)ゴム状弾性体組成物を必須成分とするものであるが、更に必要に応じて、ポリウレタン系重合体及び/又はその共重合体、ポリエステル系重合体及び/又はその共重合体、ポリアミド系重合体及び/又はその共重合体、各種のブロッキング防止剤、シール性改良剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、着色剤、無機充填剤、発泡剤(有機系、無機系)等を含有することも可能である。また、必要に応じて、染料、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの顔料、耐光安定剤等の材料などを常用量添加することもできる。
【0123】
上記酸化防止剤として、具体的には、2,6−ジ−tert−p−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンなどのフェノール系酸化防止剤と、ホスファイト系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤などがあり、特にフェノール系酸化防止剤とホスファイト系酸化防止剤の使用が好ましい。
【0124】
また、上記成分の他に、ポリエチレンワックス、金属石鹸、脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド等の分散助剤を添加することが可能で、このような分散助剤の配合目的は、ボールの性能に影響するものではなく、組成物の成形性を向上させることにある。例えば、ポリエチレンワックスを用いる場合、その配合量は、ゴルフボール用組成物全体の0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.6質量%以上、上限として10.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下であることが推奨される。
【0125】
本発明のゴルフボールカバー用組成物は、(a)アイオノマー樹脂と(b)ウレタン系材料とを併用配合するものであるが、この場合、(a)アイオノマー樹脂の配合量は、75質量部以下、下限として25質量部以上であり、(b)ウレタン系材料の配合量は、25質量部以上、上限として75質量部以下とし、このような比率に配合された(a)アイオノマー樹脂と(b)ウレタン系材料との合計量100質量部に対し、(c)ゴム状弾性体を含む(A)ゴム状弾性体組成物を、1質量部以上、特に3質量部以上、好ましくは5質量部以上、上限として20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下配合することが好ましく、配合量が上記範囲を逸脱すると、反発性の低下や相溶性の悪化による層分離が生じ、成形物の打撃耐久性などが低下し、ゴルフボールカバー用組成物として改良効果が十分発揮されない場合がある。
【0126】
上記混合時の混合方法は、特に制限されるものではなく、必須成分の(a)アイオノマー樹脂、(b)ウレタン系材料及び(A)ゴム状弾性体組成物の混合比に応じてロール、インターナルミキサー、一軸、二軸押出し機などを用いることができる。この場合、予めウレタン系材料を各種溶剤に溶解後、ベース樹脂と混合して用いる方法等も好適に採用することができる。なお、組成物の調整は、150〜270℃で加熱混合することにより得ることができる。
【0127】
本発明のゴルフボールカバー用組成物は、比較的薄いカバーの形成に好適に用いることができ、この場合、溶融粘度は、低く調整されることが推奨され、この場合、190℃におけるMFR(JIS K−7210、2.16kg荷重)が、通常1g/10分以上、上限として10g/10分以下であることが推奨される。
【0128】
本発明のゴルフボール用組成物は、公知の方法で調製し、硬化させることができるが、組成物の硬化物の硬度は、ショアD硬度が45以上、好ましくは48以上、更に好ましくは52以上、上限として63以下、好ましくは61以下とする必要がある。ショアD硬度が低すぎると、成形物の打撃耐久性の悪化がみられ、高すぎると打感や耐久性の悪化が起こる。
【0129】
本発明のゴルフボールは、上記本発明のゴルフボールカバー用組成物にて形成されたカバーを具備してなるものであり、公知の方法で製造することができ、具体的には、単層構造のコアを具備したツーピースソリッドゴルフボール、2層構造コア又はカバーを具備したスリーピースソリッドゴルフボール、或いは3層構造以上のコア又はカバーを具備した多層構造のマルチピースソリッドゴルフボール等を挙げることができる。この場合、本発明の組成物で形成されるカバーは、最外層、内層カバーのいずれとしても具備することが可能である。
【0130】
また、本発明のゴルフボールのコアは、特に制限されず、糸巻きコアとしてもソリッドコアとしてもよいが、カバーを射出成形により形成することが成形性、量産性に優れているため、このような観点からソリッドコアの使用が好適である。
【0131】
ここで、上記ソリッドコアは、シス−1,4−ポリブタジエンを主成分とするゴム組成物を用いて形成することが好ましく、その他、公知の材料を使用して常法に従って製造することができる。
【0132】
コアの直径、重量、硬度等は特に制限されず、種々設定することができるが、直径は34.67mm以上、特に36.67mm以上、上限として40.90mm以下、特に40.50mm以下、重量は21.4g以上、特に26.0g以上、上限として40.5g以下、特に39.45g以下、硬度は100kg荷重負荷時の変形量で2.0mm以上、特に2.4mm以上、上限として4.2mm以下、特に3.8mm以下とすることができる。
【0133】
本発明のゴルフボールは、上記ソリッドコアに上記本発明のゴルフボールカバー用組成物にて形成されたカバーを具備してなるもので、上述したように射出成形方法を好適に採用することができ、従来のアイオノマー樹脂カバーと同様に、例えば、コアにゴルフボール用組成物をそのまま射出成形すればよい。また、本発明のゴルフボールカバー用組成物で予め半球殻状の2個のハーフカップを形成し、これらハーフカップでコアを被包し、140〜180℃で2〜10分間加圧加熱成形する方法等を採用することができる。
【0134】
このようにして得られたゴルフボールは、表面にディンプルを有するものであるが、ディンプル形成方法は特に制限されるものではない。更に、成形した後、その表面にバフ研磨、スタンプ、塗装等の完成作業を行うことができる。
【0135】
本発明のゴルフボールカバー用組成物にて形成されるカバーは、厚さ、比重等については、特に、制限されるものではなく、種々設定することができるが、カバーの厚さは0.2mm以上、好ましくは0.5mm以上、上限として4.0mm以下、特に3.0mm以下、比重は0.94以上、特に0.96以上、上限として1.35以下、特に1.30以下とすることができる。
【0136】
本発明のゴルフボールは、ボール硬度が100kg荷重負荷時の変形量で2.2mm以上、特に2.4mm以上、上限として4.0mm以下、特に3.5mm以下、更に好ましくは3.1mm以下であることが好ましい。
【0137】
更に、本発明のゴルフボールは、その直径、重さはゴルフ規則に従い、直径42.67mm以上、重量は45.93g以下に形成することができる。
【0138】
【発明の効果】
本発明のゴルフボールカバー用組成物は、成形性が良好で、反発性、耐久性、打感に優れたカバーを得ることができ、本発明のゴルフボールは、上記ゴルフボールカバー用組成物で形成されたカバーを具備し、反発性、耐久性、打感に優れ、飛距離の増大化を図ることができるものである。
【0139】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0140】
〔実施例、比較例〕
表1に示したコア用組成物を混練して、モールド内で155℃、20分間加硫成形することによりA〜Cの3種類のソリッドコアを製造した。
【0141】
得られたソリッドコアの直径、比重及び硬度を測定した。結果を表1に併記する。なお、表1の各成分の配合量は、すべて質量部である。
【0142】
【表1】
Figure 0004811842
*1:商品名BR01(日本合成ゴム(株)製)
*2:100kg荷重負荷時の変形量(mm)
【0143】
一方、下記表2の組成に従って相溶化剤(ゴム状弾性体組成物)A〜Cを調製した。
【0144】
【表2】
Figure 0004811842
【0145】
次いで、表3の組合わせに従い、スクリュー式二軸押出機で混練し、カバー組成物を調製し、上記得られたソリッドコアA〜Cに射出成形し、カバーを形成し、実施例1〜8、及び比較例1〜6のツーピースソリッドゴルフボールを得た。
なお、(a)アイオノマー樹脂と(b)ウレタン系材料の合計量100質量部に対し、チタン白を3質量部を配合してカバー材の調製を行った。
【0146】
得られた各ゴルフボールについて下記方法に従って諸特性を評価した。結果を表3に併記する。
ゴルフボール硬度
ボールに100kg荷重をかけた時の変形量(mm)を測定した。数値が大きいほどボールが軟らかいことを示す。
初速
USGA(R&A)の測定法に準拠して測定した。
成形性
成形安定性:ボール射出成形時の安定性を下記基準で目視評価した
○:特に問題なく成形可
△:流動性が不十分なため真球度がやや低下
×:流動性が不十分又は不安定なため偏芯、真球度のばらつき大
毛羽立ち:ボール表面バリ研磨後の表面ざらつき(なお、(a)と(b)との相溶性の評価は、ゴルフボール成形後の研磨による毛羽立ちで評価した。)
○:ざらつきなし
×:ざらつきあり
飛び性能
スウィングロボットマシンを用い、クラブは1番ウッド(ドライバー)を用いてヘッドスピード45m/sec(HS45)で実打した時のスピン量、キャリー、トータル飛距離を測定した。
ドライバーショット打感
プロ、トップアマ各5人のゴルファーによる1番ウッド(ドライバー)での実打テストにより、下記評価基準で評価し、最も多かった評価を各ボールの評価とした。
○:大変良い
△:普通
×:悪い(硬すぎる・軟らかすぎる)
繰り返し打撃耐久性
ヘッドスピード38m/sで繰返し打撃した際の割れ回数を示すと共に下記基準で評価した。
◎:300回以上割れなし
○:200〜299回で割れ発生
△:150〜199回で割れ発生
×:149回以下で割れ発生
【0147】
なお、表3、表4の項目に記載された商品名は、以下の通りである。なお、硬度は、別に作成した樹脂シートの表面硬度をショアーD硬度計にて測定した。
*3:デュポン社製エチレン−メタクリル酸・メタクリル酸エステル三元共重合体アイオノマー、イオン種Mg、表面硬度=ショアD硬度42
*4:三井・デュポンポリケミカル(株)製エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、イオン種Na、表面硬度=ショアD硬度63
*5:三井・デュポンポリケミカル(株)製エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、イオン種Zn、表面硬度=ショアD硬度62
*6:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製脂肪族イソシアネート/ポリエステルポリオールの無黄変タイプ熱可塑性ポリウレタンエラストマー、表面硬度=ショアD硬度41、反発弾性率=60%
*7:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製脂肪族イソシアネート/ポリエステルポリオールの無黄変タイプ熱可塑性ポリウレタンエラストマー、表面硬度=ショアD硬度51、反発弾性率=57%
*8:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製MDI/ポリエステルポリオールの標準タイプ熱可塑性ポリウレタンエラストマー、表面硬度=ショアD硬度40、反発弾性率=48%
【0148】
【表3】
Figure 0004811842
【0149】
【表4】
Figure 0004811842

Claims (5)

  1. (a)アイオノマー樹脂と、
    (b)熱可塑性ウレタン系材料と、
    下記成分を必須成分として配合してなる(A)ゴム状弾性体組成物
    とを配合してなり、成形物のショアーD硬度が45から63であることを特徴とするゴルフボールカバー用組成物。
    (c)ゴム状弾性体として、(c−1)スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体(H−SBR)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS)、水素添加スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)から選ばれる共重合体
    (d)極性基を持つ化合物として、(d−4)水酸基と不飽和二重結合とを有する液状ポリブタジエン
    (f)有機パーオキシド
  2. (A)ゴム状弾性体組成物が、更に、
    (d−1)不飽和グリシジル化合物及び/又はその誘導体、
    (d−2)不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体、
    (d−3)水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物、
    (d−5)エステル系化合物、
    (e)パーオキシド分解型オレフィン系樹脂及び/又はそれを含む共重合体ゴム、及び
    (g)ゴム用軟化剤
    より成る群から選ばれる一つ又はそれ以上の物質を含むものである請求項1に記載のゴルフボールカバー用組成物。
  3. (a)アイオノマー樹脂と(b)熱可塑性ウレタン系材料との合計量100質量部に対して、(A)ゴム状弾性体組成物を1〜20質量部配合して成る請求項1又は2に記載のゴルフボールカバー用組成物。
  4. (a)アイオノマー樹脂と(b)熱可塑性ウレタン系材料との配合質量比が(a)アイオノマー樹脂:(b)熱可塑性ウレタン系材料=75:25〜25:75である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフボールカバー用組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフボールカバー用組成物で形成されたカバーを具備してなることを特徴とするゴルフボール。
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