JP4769612B2 - 溶液製膜方法及び流延装置 - Google Patents

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Description

本発明は、溶液製膜方法及び流延装置に関するものであり、特に、セルロースアシレートドープからセルロースアシレートフィルムを製造する溶液製膜方法及び流延装置に関するものである。
光学用途に広く利用されるセルロースアシレートフィルムは、一般には溶液製膜方法により製造される。この方法では、セルロースアシレートが溶剤に溶解したセルロースアシレート溶液(セルロースアシレートドープ)を、走行する流延支持体上に流延ダイから流出することにより流延させて流延膜を形成し、この流延膜が自己支持性をもったところでフィルムとして剥ぎ取り、テンタや乾燥装置等で乾燥する。
しかし、流延膜では厚みムラが発生し、この厚みムラは、支持体から剥がされたフィルムをテンタ等で延伸処理しても完全にはなくならない。流延膜の厚みムラの種類は様々あり、例えば、流延ダイのドープ流出口とドープとが接触している固液接触線が流延中には不安定であることによって発生する厚み変動、流延ダイのドープ流出口の微小な傷や異物付着によるフィルム表面の荒れによるスジ状の面状欠陥、ドープの流出量の微小変化や機械振動・風圧変動による段状の面状欠陥、乾燥風の吹き付けによる表面の荒れ(風ムラ)等がある。
これらの厚みムラを防ぐために種々の提案がなされている。例えば、特許文献1では、ドープの粘度を所定の範囲内とし、さらに、乾燥温度や流延支持体の走行速度を所定の範囲内とする方法が提案されている。これによると、流延ダイのドープ流出口での溶媒蒸発によるゲル化物付着を抑制し、フィルムの平面性を向上させることができる。また、特許文献2では、所望のフィルム製品厚みを得るためのドープ粘度とドープ濃度とを、所定の数式で得られる範囲内とすることにより流延後のドープを流動させる方法が提案されており、これによると、流延支持体上のドープ液膜(流延膜)の厚みムラを解消(レベリング)することができる。
特開平8−25381号公報 特開2001−129838号公報
しかしながら、特許文献1の方法によると、流延ダイのドープ吐出口への異物付着によるスジ状の面上欠陥は抑制されるが、上記に挙げたような各種の厚みムラをすべて解消するには至らない。また、この方法では、流延支持体の走行速度が制限されるため、生産速度に限界がある。また、特許文献2の方法によると、流延膜のレベリングにより上記の種々の厚みムラを抑制することができるが、ドープの濃度や粘度が制限されるために、近年の多品種フィルムに応じるような各種ドープのすべてに適用することができず、生産能力の向上に寄与するには至らないという問題がある。
そこで、本発明では、流延膜の種々の厚みムラを抑制する溶液製膜方法及び流延装置を提案することを目的とする。具体的には、ドープ流出口とドープとの固液接触線が流延中に不安定であることによる厚み変動、流延ダイのドープ流出口の微小な傷や異物付着によるフィルム表面の荒れ、スジ状の面状欠陥、段状の面状欠陥、風ムラ等を抑制、解消する溶液製膜方法及び流延装置を提案することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の溶液製膜方法は、単一のドープを支持体に向けて流延し、前記ドープからなる流延膜を前記支持体の表面上に形成する膜形成工程と、前記支持体の加熱により前記流延膜を裏面側から加熱する膜加熱工程と、前記加熱中の流延膜の表面に冷風をあてることにより、液状の前記ドープからなる内層及びゲル化した前記ドープからなる表層を備えた前記流延膜を得るゲル化層形成工程と、前記膜加熱工程及び前記ゲル化層形成工程の後に行われ前記流延膜の乾燥を行う乾燥工程と、前記乾燥後の流延膜を前記支持体から剥ぎ取る剥離工程とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の溶液製膜方法は、第1ドープ及び第2ドープを支持体に向けて流延し、液状の前記第1ドープからなる表層及び液状の前記第2ドープからなる内層を備えた流延膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、前記支持体の加熱により前記内層を加熱する膜加熱工程と、前記加熱中の流延膜の表面に風をあてることにより、ゲル化した前記第1ドープからなる表層及び液状の前記第2ドープからなる内層を備えた流延膜を得るゲル化層形成工程と、前記膜加熱工程及び前記ゲル化層形成工程の後に行われ前記流延膜の乾燥を行う乾燥工程と、前記乾燥後の流延膜を前記支持体から剥ぎ取る剥離工程とを備えたことを特徴とする。また、前記風は冷風や温風であることが好ましい。
本発明の流延装置は、単一のドープを流出する流延ダイと、前記流延ダイから流出した前記ドープを表面で支持して前記ドープからなる流延膜を形成する移動支持体と、前記流延ダイよりも前記移動支持体の移動方向の下流側であって前記移動支持体の表面側に設けられ前記流延膜の表面に冷風をあてる冷風供給手段と、前記冷風供給手段と対向するように前記移動支持体の裏面側に設けられ前記移動支持体を加熱する加熱手段と、前記冷風供給手段及び前記加熱手段よりも前記移動方向の下流側に設けられ前記流延膜の乾燥を行う乾燥手段と、前記乾燥した流延膜を前記移動支持体から剥離する剥離手段とを備えたことを特徴とする。また、本発明の流延装置は、第1ドープ及び第2ドープを流出する流延ダイと、前記流延ダイから流出した前記第1ドープ及び第2ドープを表面で支持し、前記第2ドープからなる内層及び前記第1ドープからなる表層を備えた流延膜を形成する移動支持体と、前記流延ダイよりも前記移動支持体の移動方向の下流側であって前記移動支持体の表面側に設けられ前記移動支持体上の前記流延膜の表面に風をあてる風供給手段と、前記風供給手段と対向するように前記移動支持体の裏面側に設けられ前記移動支持体を加熱する加熱手段と、前記風供給手段及び前記加熱手段よりも前記移動方向の下流側に設けられ前記流延膜の乾燥を行う乾燥手段と、前記乾燥した流延膜を前記移動支持体から剥離する剥離手段とを備えたことを特徴とする。また、前記風供給手段は、前記移動支持体上の前記流延膜の表面に冷風をあてる冷風供給手段や、前記移動支持体上の前記流延膜の表面に温風をあてる温風供給手段を有することが好ましい。
本発明によると、流延膜の種々の厚みムラ、具体的には、ドープ流出口とドープとの固液接触線が流延中に不安定であることによる厚み変動、流延ダイのドープ流出口の微小な傷や異物付着によるフィルム表面の荒れ、スジ状の面状欠陥、段状の面状欠陥、風ムラ等を抑制、解消することができる。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
[原料]
本発明においては、セルロースアシレートとしてはトリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACを用いる場合には、その90質量%以上は0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
ドープの溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明におけるドープは、必ずしも溶液でなくてもよく分散液であってもよい。
上記溶媒の中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度及び光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールを混合する場合には、アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2質量%〜25質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。混合するアルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましい。なお、後述のように溶媒中に貧溶媒成分を混合させる際には、貧溶媒成分としてアルコールまたはこれと略同等の溶解性をもつ化合物や混合物が好ましく、炭素数5以下のアルコールがより好ましい。
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステルは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステルの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。2種類以上の官能基をもつ溶媒の場合には、その炭素原子数は、いずれかひとつの官能基に関して化合物を分類し、その炭素原子数が上記範囲内であればよい。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
[ドープ製造方法]
本発明のセルロースアシレートドープの製造設備及び製造方法について以下に説明する。ただし、以下の実施様態は本発明の一例として挙げるものであって、本発明はこの実施様態に限定されるものではない。図1はドープ製造設備の概略図である。第1ドープ製造設備10には、溶剤を貯留するための第1タンク11と、第1の添加剤を貯留するための第2タンク12と、TACを供給するためのホッパ15と、溶剤とTACと第1添加剤とを混合するための第3タンク16と、第3タンク16で撹拌されて得られた混合液17を加熱するための加熱装置21と、加熱された混合液17の温度を調整してポリマー溶液22が得られる温調装置23と、第1及び第2のろ過装置24,25と、ポリマー溶液22の濃度を調整するためのフラッシュ装置27とが備えられている。
さらに、第1ドープ製造設備10には、溶剤を回収するための回収装置31と、回収された溶剤を再生するための再生装置32とが備えられているとともに、ポリマー溶液22を貯留するための第4タンク33と、第2の添加剤を貯留するための第5タンク36と、第2添加剤をポリマー溶液22にインライン混合して第1ドープ37を生成するためのインラインミキサ38とが備えられ、この第1ドープ製造設備10は溶液製膜設備40に接続されている。
第3タンク16には、図1に示すようにその外周を包み込んで伝熱媒体を流すためのジャケット16aと、モータ41により回転する第1攪拌機42とが備えられている。さらに、この第3タンク16には、モータ44により回転する第2攪拌機45が取り付けられている。なお、第1攪拌機42はアンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機45はディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。また、このドープ製造設備10には、送液用の第1及び第2ポンプ51,52とバルブ55〜57とが備えられており、また、バルブ57は三方バルブであるが、ポンプ及びバルブを設ける位置や設置数、形態等は適宜変更される。なお、第1ドープとは異なる第2ドープを製造するための第2ドープ製造設備60も溶液製膜設備40に接続されているが、第1ドープ製造設備10と同様な構成としているので、詳細についての図示及び説明は略す。
次に、この第1ドープ製造設備10を用いた場合のドープ製造方法について説明する。第1タンク11の中の溶媒とホッパ15に供給されるTACとは、第3タンク16に送られる。
第2タンク12の中の第1添加剤は、溶剤に溶解した溶液状態あるいは分散した分散状態で、バルブ56の開閉操作により必要量が第3タンク16に送り込まれる。第1添加剤の溶剤は、通常は第1タンク11の溶剤と同一のものとされるが、第1添加剤の種類等に応じて適宜代えることができる。第1添加剤が固体の場合には、第2タンク12に代えてホッパ等を用い、第3タンク16に送り込むことも可能である。複数種類の添加剤を添加する場合には、それら複数の添加剤を溶解させた溶液を予め作っておき、それを第2タンク12から第3タンク16へ送液する方法、あるいは、各添加剤の溶液を複数のタンクにそれぞれ入れて、それぞれ独立した送液管により第3タンク16に送り込む方法等もある。また、第1添加剤が常温で液体の場合には、溶剤を使用せずに溶解タンク13に送り込むことが可能である。
第3タンク16に入れる各原料の順番は特に限定されるものではない。例えば、溶媒、TAC、添加剤の順であっても、TAC、溶媒、添加剤の順等でもよい。なお、第1添加剤は、本実施形態におけるタイミングでTAC及び溶剤と混合されずともよく、第1添加剤の種類及び性質とを考慮して、後の工程でTAC及び溶剤と混合してもよい。
第3タンク16の内部温度は、ジャケット16aの中の伝熱媒体により制御されており、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃である。第1攪拌機42,第2攪拌機45のタイプやセルロースアシレートの種類、溶媒の種類等に応じて、セルロースアシレートの溶解性を調整することができる。したがって、本実施形態においては、混合液17はTACが溶媒中で膨潤した膨潤液として得られるが、本発明はこの様態に限定されるものではない。
次に、混合液17は、ポンプP1により加熱装置21に送られる。加熱装置21は、ジャケット付き配管であることが好ましく、加熱により、膨潤液状態の混合液17における固形分の溶解を進めることができる。この加熱装置21での溶解における温度は、0℃〜97℃であることが好ましい。したがって、ここでの加熱とは、室温以上の温度に加熱するという意味ではなく、第3タンク16から送られてきた混合液17の温度を上昇させる意味であり、例えば、送られてきた混合液の温度が−7℃であるときにこれを0℃にする場合等も含められる。さらに、この加熱装置21には、混合液17を加圧するための加圧手段が備えられることがより好ましく、この加圧手段により、溶解をより効率的に進めることができる。
なお、加熱装置21による加熱溶解に代えて、膨潤液である混合液17をさらに冷却して−100℃〜−10℃とする周知の冷却溶解法を適用することもでき、これらの加熱溶解法、冷却溶解法を、各原料の性状等に応じて適宜選択して実施することにより、溶解性を制御することができる。
そして加熱された混合液17を、温調装置23により略室温としてポリマーが溶剤に溶解されたポリマー溶液22が得られる。ここでは温調装置23をでたときの液をポリマー溶液と称しているものの、TACは加熱装置21を経た段階で既に溶剤に溶解していることが多い。このポリマー溶液22は、第1ろ過装置24によりろ過されて未溶解物や不溶解物等が取り除かれる。この第1ろ過装置24に使用されるフィルタは、その平均孔径が100μm以下のものであることが好ましい。第1ろ過装置24でのろ過流量は50リットル/hr.以上であることが好ましい。ろ過後のポリマー溶液22は、バルブ57を介して、第4タンク33に送られて貯留される。
ところで、上記のように一旦混合液17をつくってからポリマー溶液22とする方法は、高い濃度のポリマー溶液をつくる場合ほど要する時間が長くなり、そのため製造コストの点で問題となる場合がある。そこで、目的とする濃度よりも低濃度のポリマー溶液をつくってから、その後に目的の濃度とするための濃縮工程を行うことが好ましい。その方法としては、図1に示すように、所定の濃度よりも低濃度につくられたポリマー溶液22を、第1ろ過装置24でろ過した後に、バルブ57を介してフラッシュ装置27に送り、このフラッシュ装置27でポリマー溶液22の溶媒の一部を蒸発させる方法がある。蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示せず)により凝縮されて液体となり回収装置31により回収される。回収された溶媒は、再生装置32により再生されて再利用される。この方法により、上記の製造効率の向上と溶媒の再利用によるコストダウンとが図られる。
上記のように濃縮されたポリマー溶液22は、ポンプ52によりフラッシュ装置27から下流側工程へ送られる。フラッシュ装置27から出てきたポリマー溶液22の気泡を抜くために、泡抜き処理が行われることが好ましい。この泡抜き方法としては、公知の種々の方法が適用され、例えば超音波照射法が挙げられる。ポリマー溶液は、続いて第2ろ過装置25に送られ、未溶解物や不溶解物等がさらに除去される。なお、第2ろ過装置25におけるポリマー溶液22の温度は0℃〜200℃であることが好ましい。そして、ポリマー溶液22は第4タンク33に送られて貯蔵される。
第4タンク33から溶液製膜設備40に送られるポリマー溶液22には第5タンク36からの第2添加剤がインライン添加され、第1ドープ61が製造される。
一方、第2ドープ製造設備60では、第2ドープ62が製造される。本実施形態は、2層構造のフィルムを製造する場合を例示するものであり、第2ドープ62は反流延支持体側、つまり外部に露出する層を生成するドープとして、一方、第1ドープ61は溶液製膜における流延支持体側のドープとして製造されるものである。そして、本実施形態では、第1ドープ62における溶剤には、TACの貧溶媒である化合物を混合させている。貧溶媒とは、セルロースアシレートを均一に溶解することが現実的に不可能である溶媒を意味する。そのような貧溶媒の中でも好ましいものとしては、炭素数が5以下のアルコールが例示される。第1ドープ61の溶媒全量に対する貧溶媒の割合(重量%)は、第2ドープ62の溶媒全量に対する貧溶媒の割合(重量%)よりも、1〜15重量%大きくなるようにすることが好ましい。つまり、第2ドープ62に貧溶媒が含有されないときには、第1ドープ62の溶媒全量に対する貧溶媒の割合(重量%)を1〜15重量%とし、第2ドープ62に貧溶媒が含有されるときには、第1ドープ62の溶媒全量に対する貧溶媒の割合(重量%)を第2ドープ62における含有率よりも1〜15重量%高くする。第1ドープ61の溶媒全量に対する貧溶媒の割合(重量%)は、第2ドープ62の溶媒全量に対する貧溶媒の割合(重量%)よりも、3〜15重量%大きくなるようにすることがより好ましく、3〜12重量%大きくなるようにすることがさらに好ましい。
第1及び第2ドープ61,62は、TAC濃度が5質量%〜40質量%であることが好ましい。より好ましくはTAC濃度が15質量%以上30質量%以下であり、最も好ましくは17質量%以上25質量%以下である。また、添加剤(主として可塑剤)の濃度は、第1及び第2ドープ61,62における固形分全体を100質量%としたときに1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。なお、第1ドープ61と第2ドープ62とは、TAC濃度や添加剤濃度が互いに同じであっても、異なっていてもよい。また、TACフィルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、ろ過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用することができる。
[溶液製膜方法]
次に、上記で得られたドープを用いてフィルム製造をする方法について説明する。図2は溶液製膜設備40を示す概略図である。ただし、本発明は、図2に示すような溶液製膜設備に限定されるものではない。溶液製膜設備40は、ドープを流延するための流延部81と、流延部81から送られてきたフィルムを乾燥するための乾燥部82と、乾燥されたフィルムを巻き取るための巻取部83とを有している。しかし、これらは設備内で明確に区画されているわけではない。
まず流延部81について説明する。流延部81には、バックアップローラ84,85の回転により連続走行する流延支持体86としてのバンドと、この流延支持体86の上に第1及び第2のドープ61,62を流延して流延膜87を形成するための流延ダイ89と、流延ダイ89から流延膜87を剥がす際にフィルム90を支持するローラ91とが備えられ、バックアップローラ84,85にはその表面温度を制御するための伝熱媒体循環装置92が取り付けられている。流延部81には、さらに、流延ダイ89から流延支持体86にかけて形成されるビードの背面部を圧力制御するための減圧チャンバ93と、流延支持体86を加熱する加熱装置94とが配される。
以上の流延ダイ89、流延支持体86等の流延用機器は流延室95に収められ、この流延室95には、その内部温度を制御する温度コントローラ96と、揮発した有機溶媒を凝縮するための凝縮器(コンデンサ)98とが設けられている。そして、流延室95の外部には、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置101が設けられている。
また、流延室95には、流延膜87に送風するための送風装置105を設けている。送風装置105の取り付け位置は、流延ダイ89の下流側であって、走行する流延支持体86に流延膜が形成されたときから20秒以内の間に少なくとも10秒間送風することができる位置であることが好ましい。また、流延ダイ89の下流であって流延支持体86の近傍には、遮風装置109が備えられている。
流延ダイ89は、第1及び第2ドープ61,62が送液路L1,L2を通って供給されるフィードブロック110を備える。流延ダイ89の材質としては、オーステナイト相とフェライト相との混合組成をもつ2相系ステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するものもこの流延ダイ89の材質として用いることができ、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものが好ましい。流延ダイ89は、さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して作製されたものであることが好ましく、これにより流延ダイ89内を流れるドープの面状が一定に保たれる。流延ダイ89と後述するフィードブロック110との接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流延ダイ89のスリットのクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされている。流延ダイ89のリップ先端の接液部の角部分について、その面取り半径Rは全巾にわたり50μm以下とされている。また、流延ダイ89の内部における剪断速度は、1(1/秒)〜5000(1/秒)となるように調整されていることが好ましい。
流延ダイ89の幅は特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルムの幅の1倍〜2.0倍程度であることが好ましい。また、製膜中の温度が所定温度に保持されるように、この流延ダイ89に温度コントローラ(図示なし)を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ89としてはコートハンガー型ダイが好ましい。さらに、フィルムの厚みを調整するために、例えば流延ダイ89の幅方向に所定の間隔で設ける厚み調整ボルト(ヒートボルト)等の自動厚み調整機構が、この流延ダイ89に備えられていることがより好ましい。ここでのフィルム厚みとは、厚み変動と、幅方向における平坦性とを含めて意味している。ヒートボルトの使用に関しては、予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)43の送液量に応じてプロファイルが設定されることが好ましい。また、赤外線厚み計等の厚み計(図示せず)のプロファイルに基づく調整プログラムによってヒートボルトの調整量をフィードバック制御してもよい。リップクリアランスは、流延エッジ部を除いて幅方向の任意の2箇所の厚み差が1μm以内となるように、かつ、幅方向厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整されることが好ましく、2μm以下に調整されることがより好ましい。また、リップクリアランス精度は±1.5μm以下とされているものを用いることが好ましい。
流延ダイ89のリップ先端には硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜の素材としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良いものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al,TiN,Crなどが挙げられるが、中でも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
また、流延ダイ89のスリット端に流出する第1及び第2ドープ61,62が、局所的に乾燥固化することを防止するために、そのスリット端には溶媒供給装置(図示せず)を取り付けることが好ましい。この場合には、ドープを可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部,メタノール13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)が、ビードの両端部と外気との気液界面、及びスリットにおける第1,第2ドープと外気との気液界面に供給されることが好ましい。そしてこの供給速度は、片端部のそれぞれに0.02mL/分〜1.0mL/分であることが好ましく、これにより、ビード両端部の固化を防止して流延膜中への固化物混入を防止することができる。なお、この溶媒供給のためのポンプとしては、脈動率が5%以下のものが好ましい。
流延支持体86については、その幅は特に限定されるものではないが流延幅の1.1倍〜2.0倍であることが好ましく、長さは20〜200m、厚みは0.5〜2.5mmが好ましい。そしてその表面は、粗さが0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。流延支持体86は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。流延支持体86の厚みムラは0.5%以内であることが好ましい。
なお、バンドに代えてドラムを、流延支持体86として用いることもできる。この場合には、偏芯等による回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるドラムを用いることが好ましく、その表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そして、クロムメッキ処理などを行い十分な硬度と耐久性を持たせたドラムであることがより好ましい。以上のように流延支持体86についてはその表面欠陥を最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m以下であることが好ましい。
次に、乾燥部82について説明する。乾燥部82は、フィルム90を所定方向に延伸しながら乾燥するテンタ122と、テンタ122の下流に備えられてフィルム90の両側端部を切断する切断装置123とを備えるとともに、側端部を切断除去されたフィルム90をローラ126で搬送しながら乾燥する乾燥装置127と、フィルム90を冷却する冷却装置128とを備える。そして、乾燥装置127には溶媒ガスを吸着回収するための吸着回収装置131が取り付けられている。なお、前記切断装置123には、切断されたフィルム側端部を細かく切断するためのクラッシャ132が接続されている。また、フィルム90がテンタ122へ導入される前の渡り部133には、第2送風装置134が備えられている。
巻取部83には、フィルム90の帯電圧値を所定の値となるように調整するための強制除電装置(除電バー)137と、フィルム90の両側端部にエンボス加工をするためのナーリング付与ローラ138と、フィルム90を巻き取るための巻取ローラ141とが備えられ、巻取ローラ141は巻き取り時のフィルム張力を制御するためのプレスローラ142を備える。なお、巻取ローラ141とプレスローラ142とは、巻取室143の内部に配される。
図3は、第1送風装置105及びその周辺の概略図である。第1送風装置105は、図3に示すように、流延ダイ89の下流側であって流延膜87の上方に配されており、冷風を送風ダクト161のスリット161aから吹き出す。送風口は必ずしも本実施形態のようなスリット161aでなくてもよく、多孔板の孔等に変えてもよい。また、スリット161aからの送風の向きは、流延膜87に対して垂直な向きや流延膜の走行の向き等に適宜変えてもよい。送風ダクト161に所定条件の風を送るための送風機162と、送風条件を制御するための送風コントローラ163とが第1送風装置105には備えられる。ここで、送風条件とは、風量、風速、風温である。なお、遮風装置109は、第1送風装置105からの送風と流延支持体86の走行とにより発生してしまう風を遮り、流延膜87の面状への影響を防止するために備えられる。
また、流延支持体86の反フィルム側に備えられる加熱装置94は、流延膜の裏面を乾燥するために設けられた熱風を吹き付ける送風装置である。ただし、加熱装置94は、熱風吹き付けの装置に限定されず、例えば周面が所定温度に加熱可能なヒートローラ等に代えてもよい。この加熱装置94は温度コントローラ166を備え、また、流延支持体86の近傍には非接触で流延支持体86の温度を検知する温度センサ(図示なし)が備えられており、この温度センサの検知結果に応じて、温度コントローラ166は加熱装置94の温度制御を行う。
次に、溶液製膜設備40によるフィルム製造方法を以下に説明する。流延ダイ89の下方のバックアップローラ84,85は図示しない駆動装置により回転し、この回転に伴い流延支持体86は無端走行する。そして、10m/分〜200m/分の流延速度とされることが好ましい。バックアップローラ84,85は、流延支持体86に生じるテンションが1.5×10kg/mとなるように、駆動を制御されることが好ましく、流延支持体86とバックアップローラ84,85との相対速度差が0.01m/分以下となるように調整されることが好ましい。そして、流延支持体86については、その速度変動を0.5%以下とするとともに、一回転する際に生じる幅方向の蛇行を1.5mm以内に抑制することが好ましい。この蛇行を抑制するために、流延支持体86の両側縁の位置を検出する検出器(図示せず)を設け、その測定値に基づきバンドの位置をフィードバック制御することがより好ましい。さらに、流延ダイ89直下における流延支持体86について、バックアップローラ84の回転に伴う上下方向の位置変動は、200μm以下とされることが好ましい。
本発明では、上記のように製造された第1及び第2ドープ61,62が図3に示すように流延ダイ89からともに流出することにより、流延膜87が形成される。しかし、本発明では、このような同時共流出型の共流延方法に代えて、第2ドープ62を第1の流延ダイより流出させ、この第1の流延ダイよりも下流側に備えられる第2の流延ダイから第1ドープ61を流出するような、いわゆる逐次型の重層流延を適用してもよい。共流出型の共流延を行う際には、本実施形態のようにフィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイ(図示なし)を用いても良い。
流延ダイ89から流延支持体86にかけて形成されるビードの背面部は減圧チャンバ93により圧力制御される。これによりビード形成が安定化するとともに、ビードの揺れ等を抑制することができる。ビードの背面側の圧力は、前面側よりも5〜1000Pa減圧されることが好ましい。減圧チャンバ93の内部温度は特に限定されるものではないが、25〜55℃に調整されていることが好ましく、この内部温度制御のために減圧チャンバ93にジャケット等を設けることができる。また、減圧チャンバ93には、ドープの流出口の両側端近傍に吸引装置(図示なし)をさらに設ける場合がある。これにより、ビードの両側端部を吸引してビードの形状をより安定化することができる。この場合には、吸引風力を1〜100L/分とすることが好ましい。
本発明では、流延膜87において、ゲル層171を非ゲル層172の上に生成させる。つまり、流延膜87の露出面をゲル化して、流延膜87の表面を含む一部をゲル層171とする。ゲル層171を形成しないときの流延膜87は、形成直後は液体状態であって、その表面張力はドープのときの表面張力と略同等とみなすことができる。この表面張力がはたらいている間はこの表面張力と重力との作用により、流延膜はそれ自身での平滑化力(自己平滑化性、自己レベリング性)を有するが、乾燥が進むにつれて表面張力がはたらかなくなり自己平滑化は不可能となる。そこで、本発明では、流延膜87が乾燥する前に、ゲル層171を流延膜87の露出側表面に形成することにより前記表面張力よりも大きな収縮力を露出側表面に発現させ、その収縮力をレベリングの促進力とするものである。これにより、流延膜87は、乾燥する前に表面の凹凸がなくなりその状態で乾燥されるので、平滑なフィルム90を得ることができる。なお、本発明において、ゲルとは、溶媒がセルロースアシレートの分子鎖の中で保持された状態で流動性を失い、結果的に溶液の流動性が失われた状態を意味するものである。
ゲル層171を生成させる方法としては、第2ドープ62のみならず、これと異なる第1ドープ61を用いて、両者を共流延する方法が好ましい。つまり、第1ドープ61はゲル層171となり、第2ドープ62は非ゲル層172を形成する。これにより良好かつ容易にゲル層171を生成させることができる。
そして、2種類のドープを用いるとともに、そのうち一方の第1ドープ61を、溶媒中の貧溶媒比率が他方の第2ドープ62よりも1〜15重量%高くすることがより好ましい。第1ドープ61における溶媒中貧溶媒比率が、第2ドープ62のそれよりとくらべて1重量%にも満たないときには、平滑化に十分な収縮力を発現するようなゲル層171を生成することができないことがある。一方、第1ドープ61における溶媒中貧溶媒比率が、第2ドープ62におけるそれより15重量%より大きいときには、ゲル層171の乾燥速度が速くなりすぎて平滑化ができなくなる、ドープ中のTACが析出してしまう、ゲル層171と非ゲル層172との乾燥速度差が大きくなりすぎてフィルムとしたときにゲル層由来の層と被ゲル層由来の層とが剥がれてしまう等の各種問題が発生することがある。ただし、この重量比率の好適な値は、セルロースアシレートのアシル基置換度や含水率等に応じて変動することがある。なお、第1ドープ61と第2ドープとが共に貧溶媒成分を含んでいるときには、その貧溶媒成分は、互いに同じ化合物であってもよいし異なる化合物であってもよい。なお、貧溶媒は、互いに異なる化合物の混合物であってもよい。なお、第1ドープ61と第2ドープ62とのこのような重量比率関係を満たすとともに、前述のように溶媒全量に対するアルコールの含有率を満たすことがより好ましい。
流延膜87の露出表面を含む一部をゲル層171とする他の方法としては、第1ドープ61の粘度を第2ドープ62の粘度よりも大きくする方法がある。粘度の調整方法としては、ドープ中の固形分濃度、溶媒の種類、セルロースアシレートの分子量または分子量分布を変える等の方法がある。第1ドープ61の粘度は、高すぎるとメルトフラクチャ現象などの問題が発生する場合があるので、第2ドープ62の粘度よりも5〜50%高いことが好ましく、5〜30%高いことがさらに好ましく、10〜20%高いことが特に好ましい。なお、このような粘度条件を満たすのみでは充分な平滑化力をもつゲル層が生成されないときには、前述のような貧溶媒成分を第1,第2ドープ61,62に含有する方法と組み合わせるとよい。
また、流延膜87の露出表面を含む一部をゲル層171とする別の方法としては、流延膜87が形成されたときから20秒以内の間に、少なくとも10秒間前記セルロースアシレートドープの温度よりも20℃以上低い温度の冷気を流延膜87に吹き付ける方法がある。冷風を開始するタイミングは、流延膜87が形成されたときから3秒以上経過した後とすることがより好ましい。これは、形成直後、つまり形成後10秒以内の流延膜87に風を吹き付けると、流延ダイ89のドープ流出口でドープの一部が固まってしまう、いわゆる皮ばりが発生することがある。ただし、この皮ばりの発生を抑制するためには、本実施形態のように、遮風装置109を第1送風装置105の上流側に設ける、あるいは、送風ダクト161のスリット161aを流延膜87の進行の向きに向けるとよい。流延膜87が形成されたときから3秒以上経過した後に送風する場合であっても遮風装置109を使用すると、より長期の連続流延が可能となる。一方、送風開始のタイミングが遅すぎる、送風時間が短すぎるという場合、つまり、流延膜87が形成されてから20秒以上経過した後に送風を開始する、送風時間が10秒未満である場合には、十分な収縮力をもつゲル層171を形成できないうちに流延膜87が乾燥してしまうことがある。したがって、流延膜87が形成されてから20秒以内の間に、できるだけ長い時間冷風を送ることが好ましい。
第1送風装置105による冷風の温度は、ドープの温度よりも20℃以上低い温度とする。冷風の温度とドープの温度との差が20℃以内であると、十分な収縮力をもつゲル層171を生成させることができないことがある。一方、冷風温度は低すぎても問題が出る場合があり、例えば、ゲル化は促進されるが、水分や溶媒分の結露によりフィルムの面状が荒れてしまうこと等がある。そこで、この冷風の温度は、−10〜15℃とすることがより好ましい。
なお、流延膜87の露出表面を含む一部をゲル層171とする方法としては、上記の方法のうち少なくともいずれかひとつを用いても、いくつかを任意に組み合わせてもよい。また、冷風の吹き付け以外の方法を用いる場合には、温風を吹き付けても良い。一方、冷風の吹き付けによるゲル化を実施する場合には、冷風の吹きつけの後に、温風の吹き付けを実施してもよい。
ところで、ゲル層171の厚みを厚くするほど、レベリング性が大きくなる。しかし、ゲル層171を生成させるために貧溶媒を用いる場合には、貧溶媒の蒸発速度が良溶媒である主溶媒の蒸発速度よりも遅いことが一般的であるため、ゲル層171が厚いほど乾燥が非効率になって生産性が低下するという問題がある。そこで、第1ドープ61と第2ドープ62とを共流延する場合には、ゲル層171の厚みを以下のようにすることが好ましい。図4は、乾燥後のフィルムの断面の説明図である。フィルム90は、ゲル層が乾燥することにより生成された第1層201と非ゲル層が乾燥することにより生成された第2層202とを有している。乾燥後のフィルム90の厚みをTA、第1層201の厚みをT1とする。そして、ゲル層171は、第1層201の厚みT1が0.03×TA以上0.25×TA以下となるように生成されることが好ましく、0.03×TA以上0.20×Ta以下となるように生成されることがより好ましく、0.03×Ta以上0.10×Ta以下となるように生成されることがさらに好ましい。
なお、第1,第2ドープ61,62は、流延時における温度が−10〜57℃とされることが好ましい。
また、本実施形態では、伝熱媒体循環装置92によりバックアップローラ84,85が温度調整されている。このバックアップローラ84,85からの伝熱と、加熱装置94とにより流延支持体86の表面温度が−20℃〜40℃に調整されることが好ましい。これにより、流延膜87の非ゲル層172はゲル化を抑制されるので、ゲル層171の収縮力をレベリングにより効果的に作用させることができる。なお、バックアップローラ84,85には伝熱媒体の流路(図示せず)が形成されており、その流路を、伝熱媒体循環装置92により所定温度に制御されている伝熱媒体が通過することにより、バックアップローラ84,85の温度が所定の値に保持される。
流延膜87から揮発した有機溶媒は、コンデンサ98により凝縮され、回収装置101により凝縮された有機溶媒が回収されドープ製造用溶媒として再利用される。
流延室95の内部温度は、温度コントローラ96により−10℃〜57℃とされることが好ましい。
フィルム90は、第2送風装置134から所定温度の乾燥風を必要に応じて吹き付けられることにより乾燥を進行されてテンタ122へ搬送される。第2送風装置134からの乾燥風の温度は20℃〜250℃であることが好ましい。なお、渡り部133では、所定のローラの回転速度を、そのローラよりも上流側のローラの回転速度よりも大きくすることによりフィルム90に搬送方向における張力を付与させることが可能となっている。
テンタ122に送られたフィルム90は、その両端部がクリップ等の保持部材で把持されて搬送されながら乾燥される。本実施形態におけるテンタ122は、フィルム90を幅方向に延伸させることができる。このように、渡り部133とテンタ122との少なくともいずれかひとつにおいては、フィルム90の流延方向と幅方向との少なくとも1方向について0.5%〜300%延伸することが好ましい。なお、テンタ122の区画することにより、その区画毎に温度等の乾燥条件を適宜調整することが好ましい。
フィルム90は、テンタ122で所定の残留溶媒量となるまで乾燥された後、切断装置123により両側端部を切断除去される。切断された両側端部は、カッターブロワ(図示なし)によりクラッシャ132に送られ、このクラッシャ132により粉砕されてチップとなる。このチップはドープ製造用として再利用されるので、製造コストの改善という観点から有効である。なお、この両側端部の切断工程については省略することもできるが、前記流延工程から巻取部83による巻き取り工程までのいずれかの工程で行うことが好ましい。
両側端部を切断除去されたフィルム90は、乾燥装置127に送られてさらに乾燥される。乾燥装置127においては、フィルム90は、ローラ126に巻き掛けられながら搬送されており、乾燥装置127の内部温度は、特に限定されるものではないが、60〜145℃の範囲であることが好ましい。乾燥装置127によりフィルム90から蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置131により吸着回収される。そして溶媒成分が除去された空気は乾燥風として乾燥装置127で再利用される。なお、乾燥装置127は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、切断装置123と乾燥装置127との間に予備乾燥装置(図示せず)を設けて、この予備乾燥装置によりフィルム90を予備乾燥すると、フィルム90の温度が乾燥装置127で急激に上昇してしまうことを防止することができるので、フィルム90の形状変化をより抑制することができる。
フィルム90は、冷却装置128において略室温にまで冷却される。なお、乾燥装置127と冷却装置128との間に調節手段としての調湿室(図示しない)等を設けてもよく、この調湿手段ではフィルム90に所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付けられることが好ましい。これにより、フィルム90のカール発生や巻き取り工程における巻き取り不良の発生を抑制することができる。
続いてフィルム90は、除電バー137により所定の帯電圧値(例えば、−3kV〜+3kV)とされる。ただし、この除電の工程位置は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、乾燥部82の内部の所定位置やナーリング付与ローラ138の下流位置等であってもよく、また、複数箇所であってもよい。そしてフィルム81は、図4に示すように、その両側端部がナーリング付与ローラ138によりエンボス加工されてナーリングを付与されることが好ましく、施されたエンボスの凹凸差が1〜200μmであることが好ましい。
最後に、フィルム90を巻取ローラ141で巻き取る。巻き取り時のフィルム90は、プレスローラ142により所望のテンションを付与されながら巻き取られる。このテンションは、巻取開始時から終了時にかけて徐々に変化されることがより好ましい。本実施形態におけるフィルム90は、長手方向の長さが100m以上、幅が600mm以上とされている。本発明は、フィルム90の幅が1400mm以上1800mm以下であるときにより効果があり、1800mmよりも大きい場合にも効果がある。また、フィルムが15μm以上100μm以下の薄いものであるときにも本発明を適用することができる。
また、流延膜87はゲル層171と非ゲル層172との2層構造としているが、非ゲル部分が多層構造であってもよい。この場合には、流延支持体と接する支持体接触層は、厚み方向以外に収縮力が働くことはないので、本発明は支持体接触層については特に限定しない。
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取り方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフィルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらの性能及び測定法は本発明に適用することができる。
[表面処理]
得られるセルロースアシレートフィルムは、その少なくとも一方の面が表面処理されてから、種々の用途に用いられることが好ましい。表面処理としては、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種が好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
得られるセルロースアシレートフィルムは、その少なくとも一面に下塗り層がさらに設けられて各種用途に用いられても良い。
さらに、得られるセルロースアシレートフィルムは、これをベースフィルムとし、このベースフィルムに他の機能性層を付与した機能性材料として好ましく用いることできる。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層であることが好ましい。
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1〜1000mg/m含有すること、少なくとも一種の滑り剤を0.1〜1000mg/m含有すること、少なくとも一種のマット剤を0.1〜1000mg/m含有すること、少なくとも一種の帯電防止剤を1〜1000mg/mの比率で含有すること、がさらに好ましい。このような機能性層の付与方法としては、特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されていれており、本発明に適用することができる。
(用途)
製造されるセルロースアシレートフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。セルロースアシレートフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、周知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号公報には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用することができる。また、同公開公報には光学的異方性層を付与したセルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルムについての記載もある。更には、適度な光学性能を付与した二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもできる。これらの記載内容は、本発明にも適用することができ、特開2005−104148号公報の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
また、本発明の製造方法により光学特性に優れるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を得ることができる。前記TACフィルムは、偏光板保護フィルムや写真感光材料のベースフィルムとして用いることができる。さらにテレビ用途などの液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フィルムとしても使用可能である。特に偏光板の保護膜を兼ねる用途に効果的である。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどにも用いられる。また、前記偏光板保護膜用フィルムを用いて偏光板を構成しても良い。
以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例2〜6については、実施例1と異なる条件のみを記載し、同じ条件については説明を略す。なお、実施例4と5とは、実施例1と2とに対する各比較実施例である。
[バインダ用セルローストリアセテート溶液A]
・ジクロロメタン(第1溶媒) 75.0重量部
・メタノール(第2溶媒) 6.0重量部
上記配合の溶媒を第1の混合用タンクに入れて、これを撹拌しながら下記の固形分を入れて完全に溶解させ、ろ過し、バインダ用セルローストリアセテート溶液Aとした。ろ過に用いたフィルタは、東洋濾紙製#63ろ紙(保有粒子径4μm)である。
・セルローストリアセテート(酢化度60.9%) 17.0重量部
・可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 1.3重量部
・可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 0.7重量部
[微粒子分散液B]
・微粒子R972(日本アエロジル(株)製) 6.0重量部
・ジクロロメタン(第1溶媒) 76.0重量部
・メタノール(第2溶媒) 6.0重量部
上記の化合物を第2の混合用タンクに入れて撹拌し、均一状態にした。これに、バインダ用セルローストリアセテート溶液Aを12.0重量部入れて撹拌し、均一状態にした。得られた混合液を分散器(三井鉱山(株)製 アトライタSE60)を用いて、分散後の微粒子の平均粒子径が約0.5μmとなるように分散し、微粒子分散液Bとした。なお、平均粒子径は粒径分布測定機(LA920、堀場製作所製)にて測定した。
[微粒子添加液C]
・微粒子分散液B 12.0重量部
・ジクロロメタン(第1溶媒) 66.0重量部
・メタノール(第2溶媒) 6.0重量部
上記の混合物を第3の混合タンクに入れて撹拌し、均一状態にした。さらに、この混合液にバインダ用セルローストリアセテート溶液Aを16.0重量部入れて撹拌し、均一状態にして、微粒子添加液Cとした。この微粒子添加液Cを第1及び第2ドープ製造設備10,60の各第2ランク12に入れた。
[紫外線吸収剤溶液D]
・紫外線吸収剤(1) (2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール) 6.0重量部
・紫外線吸収剤(2) (2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール) 12.0重量部
・ジクロロメタン(第1溶媒) 66.0重量部
・メタノール(第2溶媒) 6.0重量部
上記の混合物を第4の混合タンクに入れて撹拌し、溶解した。この溶液にバインダ用セルローストリアセテート溶液Aを10.0重量部入れて撹拌し、均一状態にした。得られた液を2回ろ過して紫外線吸収剤溶液Dとし、第1及び第2ドープ製造設備10,60の各第5タンク36に入れた。なお、ろ過に用いたフィルタは、富士写真フイルム(株)製アストロポアフィルタ(孔径;10μm)である。
[第1ドープ61]
第1ドープ製造設備10において、第1ドープ61を以下のように製造した。以下の各化合物を第1タンク11に入れて混合溶媒とした後、第3タンク16に送った。
・ジクロロメタン(第1溶媒) 70.0重量部
・メタノール(第2溶媒) 8.0重量部
・n−ブタノール(第3溶媒) 3.0重量部
一方、以下の固形分をホッパ15から第3タンク16へ送り、撹拌し、混合溶媒で溶解させた。
・セルローストリアセテート(酢化度60.9%) 17.0重量部
・可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 1.3重量部
・可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 0.7重量部
さらに、第2タンク12の微粒子添加液Cを、撹拌中の第3タンク16へ送り、均一化するまで撹拌を続けた。なお微粒子添加液Cの添加量は、全固形分中における微粒子の重量比率が0.13重量%となるようにした。そして、3段のろ過工程を経た。各ろ過工程におけるフィルタは、第1段ろ過では東洋濾紙製#63ろ紙、第2段ろ過では日本精線製ナスロンフィルタ06N(公称孔径10μm)、第3段ろ過では日本精線製ナスロンフィルタ12N(公称孔径40μm)である。ろ過後の液に、第5タンク36から紫外線吸収剤液Dをインライン混合し、第1ドープ61とした。インラインミキサとしてはスタチックミキサ(ノリタケカンパニー製)を用いた。紫外線吸収剤液Dの添加量は、全固形分中における紫外線吸収剤の比率が1.04重量%となるようにした。
[第2ドープ62]
次に、第2ドープ製造設備において第2ドープ62を以下のようにして製造した。以下の各化合物を第1タンクに入れて混合溶媒とした後、第3タンクに送った。
・ジクロロメタン(第1溶媒) 75.0重量部
・メタノール(第2溶媒) 6.0重量部
一方、以下の固形分をホッパから第3タンクへ送り、撹拌し、混合溶媒で溶解させた。
・セルローストリアセテート(酢化度60.9%) 17.0重量部
・可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 1.3重量部
・可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 0.7重量部
さらに、第2タンクの微粒子添加液Cを、撹拌中の第3タンク16へ送り、均一化するまで撹拌を続けた。なお微粒子添加液Cの添加量は、全固形分中における微粒子の重量比率が0.13重量%となるようにした。そして、3段のろ過工程を経た。各ろ過工程におけるフィルタは、第1段ろ過では東洋濾紙製#63ろ紙、第2段ろ過では日本精線製ナスロンフィルタ06N(公称孔径10μm)、第3段ろ過では日本精線製ナスロンフィルタ12N(公称孔径40μm)である。ろ過後の液に、第5タンク36から紫外線吸収剤液Dをインライン混合し、第1ドープ61とした。インラインミキサとしてはスタチックミキサ(ノリタケカンパニー製)を用いた。紫外線吸収剤液Dの添加量は、全固形分中における紫外線吸収剤の比率が1.04重量%となるようにした。
第1,第2ドープ61,62を同時に流延ダイ89から流出させて共流延した。流延支持体86はステンレス製のエンドレスバンドである。乾燥後のフィルム90において第1層201の厚みT1が5μm、全厚みTAが80μmとなるように、第1及び第2ドープ61,62の流出量を調整した。流延直前の第1、第2ドープ61,62は、共に35℃に温度制御されており、この温度における各粘度は、第1ドープ61が22Pa・s、第2ドープ62が20Pa・sであった。なお、この粘度測定は、落球法による。流延膜87には温風を吹き付けて、流延膜87が自己支持性をもつまで乾燥し、フィルム90として剥ぎ取った。なお、流延膜87の露出面ではゲル層171が生成した。フィルムを乾燥させて、ナーリング付与ローラ138でナーリングを付与して両側端部を切断除去し、巻き取った。巻き取られたフィルム90の幅は1340mmであり、ナーリングを付与された両側部分を除いた幅は1308mmである。
得られたフィルムを黒色の布を敷いた平坦な台の上に広げ、蛍光灯の光をフィルムで反射させて、平面性を目視で評価した。評価結果については表1に示す。なお、評価項目のダイスジとは、巻き取られたフィルムの長手方向に沿って長く伸びたスジ状の面状欠陥であり、段ムラとは、フィルムの幅方向に沿って長く伸びているようなスジ状の面状欠陥であり、また、風ムラとは、長手方向と幅方向とに交差するスジ状の面状欠陥と、スジ状以外の面状欠陥との両方としている。表1において、◎は、各面状欠陥が全く確認されずたいへん良好、○は、わずかに確認されるものの良好、△は、確認されるが実用的には問題がなく良好、×は、実用的に問題がある、ということを意味する。
第1層201の厚みが5μm、つまり全厚みが40μmとなるように第2ドープ62の流出量を、実施例1とは変えた。また、第1,第2ドープ61,62における各紫外線吸収剤が、各ドープにおける固形分中の2.08重量%となるように、第1,第2ドープ61,62を製造した。その他の条件は実施例1と同じである。なお、流延膜87の露出面にはゲル層171が生成していた。
流延膜87が形成されたときから約5秒経過後から約10秒間の位置で冷風の吹きつけ行った。冷風温度は−3℃である。冷風吹き付けの下流側では温風を吹き付けた。その他の条件は実施例1と同じである。本実施例3においても、流延膜87の露出面ではゲル層171が生成した。
第1ドープ61を使用せず、第2ドープのみで流延し、乾燥後の厚みTAが80μmのフィルムを製造した。その他の条件は実施例1と同じである。本実施例4では、流延膜の露出面ではゲル層が生成しなかった。
第1ドープ61を使用せず第2ドープのみで流延し、乾燥後の厚みTAが40μmとなるようにフィルムを製造した。その他の条件は実施例2と同じである。本実施例5においても、流延膜の露出面ではゲル層が生成しなかった。
流延膜87が形成されたときから約5秒経過後から約10秒間の位置で冷風の吹きつけ行った他は、実施例4と同じ条件でフィルムを製造した。本実施例6では、流延膜87の露出面にゲル層171が生成した。
Figure 0004769612
以上の実施例1〜6より、ゲル層を流延膜中の露出面側に生成させることにより、面状故障が抑制させることができることがわかる。また、ゲル層171を生成させる方法として、流延膜の露出側と流延支持体側とを互いに異なるドープで形成することが有効であり、形成直後の流延膜に冷風を吹き付けることも好ましいことがわかる。また、両者を組み合わせることにより、より面状故障を抑制できることが実施例3によりわかる。
セルロースアシレートドープの製造設備の概略図である。 セルロースアシレートフィルムの製造設備の概略図である。 流延ダイ周辺の概略図である。 セルロースアシレートフィルムの断面の説明図である。
符号の説明
61,62 第1,第2ドープ
81 流延部
82 乾燥部
86 流延支持体
87 流延膜
90フィルム
105 第1送風装置
110 フィードブロック
161 送風ダクト
171 ゲル層
172 非ゲル層
201,202 第1層,第2層

Claims (8)

  1. 単一のドープを支持体に向けて流延し、前記ドープからなる流延膜を前記支持体の表面上に形成する膜形成工程と、
    前記支持体の加熱により前記流延膜を裏面側から加熱する膜加熱工程と、
    前記加熱中の流延膜の表面に冷風をあてることにより、液状の前記ドープからなる内層及びゲル化した前記ドープからなる表層を備えた前記流延膜を得るゲル化層形成工程と、
    前記膜加熱工程及び前記ゲル化層形成工程の後に行われ前記流延膜の乾燥を行う乾燥工程と、
    前記乾燥後の流延膜を前記支持体から剥ぎ取る剥離工程とを備えたことを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 第1ドープ及び第2ドープを支持体に向けて流延し、液状の前記第1ドープからなる表層及び液状の前記第2ドープからなる内層を備えた流延膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、
    前記支持体の加熱により前記内層を加熱する膜加熱工程と、
    前記加熱中の流延膜の表面に風をあてることにより、ゲル化した前記第1ドープからなる表層及び液状の前記第2ドープからなる内層を備えた流延膜を得るゲル化層形成工程と、
    前記膜加熱工程及び前記ゲル化層形成工程の後に行われ前記流延膜の乾燥を行う乾燥工程と、
    前記乾燥後の流延膜を前記支持体から剥ぎ取る剥離工程とを備えたことを特徴とする溶液製膜方法。
  3. 前記風は冷風であることを特徴とする請求項2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記風は温風であることを特徴とする請求項2記載の溶液製膜方法。
  5. 単一のドープを流出する流延ダイと、
    前記流延ダイから流出した前記ドープを表面で支持して前記ドープからなる流延膜を形成する移動支持体と、
    前記流延ダイよりも前記移動支持体の移動方向の下流側であって前記移動支持体の表面側に設けられ前記流延膜の表面に冷風をあてる冷風供給手段と、
    前記冷風供給手段と対向するように前記移動支持体の裏面側に設けられ前記移動支持体を加熱する加熱手段と、
    前記冷風供給手段及び前記加熱手段よりも前記移動方向の下流側に設けられ前記流延膜の乾燥を行う乾燥手段と、
    前記乾燥した流延膜を前記移動支持体から剥離する剥離手段とを備えたことを特徴とする流延装置。
  6. 第1ドープ及び第2ドープを流出する流延ダイと、
    前記流延ダイから流出した前記第1ドープ及び第2ドープを表面で支持し、前記第2ドープからなる内層及び前記第1ドープからなる表層を備えた流延膜を形成する移動支持体と、
    前記流延ダイよりも前記移動支持体の移動方向の下流側であって前記移動支持体の表面側に設けられ前記移動支持体上の前記流延膜の表面に風をあてる風供給手段と、
    前記風供給手段と対向するように前記移動支持体の裏面側に設けられ前記移動支持体を加熱する加熱手段と、
    前記風供給手段及び前記加熱手段よりも前記移動方向の下流側に設けられ前記流延膜の乾燥を行う乾燥手段と、
    前記乾燥した流延膜を前記移動支持体から剥離する剥離手段とを備えたことを特徴とする流延装置。
  7. 前記風供給手段は、前記移動支持体上の前記流延膜の表面に冷風をあてる冷風供給手段を有することを特徴とする請求項6記載の流延装置。
  8. 前記風供給手段は、前記移動支持体上の前記流延膜の表面に温風をあてる温風供給手段を有することを特徴とする請求項6記載の流延装置。
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