JP2008254431A - 溶液製膜方法及び溶液製膜設備 - Google Patents

溶液製膜方法及び溶液製膜設備 Download PDF

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Abstract

【課題】光学特性にすぐれたフイルムを製造する。
【解決手段】流延バンドの上に流延ドープを流延して流延膜を形成する。流延膜を流延バンドから剥ぎ取って湿潤フイルム18を得る。湿潤フイルム18は、渡り部90を介してテンタ乾燥室45へ案内される。テンタ乾燥室45は、第1〜第3ゾーン121〜123を有する。第1ゾーン121では、湿潤フイルムに乾燥処理と予備加熱を行う。第2ゾーン122では、湿潤フイルムに乾燥処理と延伸処理を行う。第3ゾーン123では、湿潤フイルムに乾燥処理と緩和処理を行い、フイルム22とする。第2ゾーン122における温度をT2とし、第3ゾーン123における温度をT3としたときに、T2−T3が0より大きく50未満とする。

【選択図】図3

Description

本発明は、溶液製膜方法及び溶液製膜設備に関するものである。
ポリマーフイルム(以下、フイルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学機能性フイルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフイルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフイルム用支持体として利用されている。また、TACフイルムは、光学等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フイルム,光学補償フイルム(例えば、視野角拡大フイルムなど)などの光学フイルムとして用いられている。
主なフイルムの製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフイルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、フイルムの厚さの精度を調節することが難しく、また、フイルム上に細かいスジ(ダイライン)ができるために、光学フイルムの製造方法に適していない。一方、溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含んだポリマー溶液(以下、ドープと称する)を支持体上に流延して形成した流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フイルムとし、湿潤フイルムの両端部をテンタで担持し、所定の方向に搬送しながら、延伸処理や緩和処理を行うと同時に、乾燥し、十分に乾燥した湿潤フイルムをフイルムとして巻き取る方法である。この溶液製膜方法は、溶融押出方法と比べて、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフイルムを得ることができるため、フイルム、特に光学フイルムの製造方法として、溶液製膜方法が採用されている。
上述した溶液製膜方法では、湿潤フイルムに、湿潤フイルムを所定の方向に延伸する延伸処理と、延伸処理で湿潤フイルム内に生じる残留応力を緩和する緩和処理とを行う。これら延伸処理や緩和処理を湿潤フイルムに施すことより、最終形態であるフイルムの表面の平滑化、及び、レターデーション値や遅相軸の向きなどを調整し、光学特性の向上を図っている。テンタ等を用いた延伸処理や緩和処理では、湿潤フイルムにボーイング現象が発生する。そして、このボーイング現象により、湿潤フイルムの幅方向において、遅相軸にばらつきが生じることが知られている。近年では、液晶表示装置のコントラスト比の向上、画面輝度向上といった品質向上などの光学特性の要求が強くなってきている。こうした背景から、光学フイルムにも遅相軸のばらつきの低減等の光学特性の向上が要求され、光学フイルムを製造する製造方法の改良方法が望まれている。特に、偏光板の保護フイルムにおいては、直線偏光の楕円化を防止するため、非常に低いレターデーションRth値(0nm〜5nm)が要求される。したがって、溶液製膜方法を用いて光学用途のフイルムを製造する場合において、フイルム内の遅相軸を均一にすることが大きな課題となっている。
溶液製膜方法におけるボーイング現象の発生を防止する手段として、(1)フイルム中央部よりフイルム端部の温度を高くする。(2)フイルム中央部よりフイルム端部の残留溶媒量を大きくする。(3)テンタ式乾燥機内に温度の異なるゾーンを設けるといった手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−314529号公報
しかしながら、特許文献1に記載される手法では、延伸処理や緩和処理において、湿潤フイルムの幅方向における温度や残留溶媒量の分布を所定のものに制御する必要がある。延伸処理や緩和処理において、このような複雑な制御を行う当該手法を用いると、製造に要する時間やコストなどが膨大になるだけでなく、品質の安定が困難になり、大量生産には適していない。更に、特許文献1に記載される手法では、ボーイング現象の抑制を抑えることができるが、延伸処理時にフィルムに生成し、光学特性の劣化を誘発するムラを消失することができない。
本発明者は、鋭意検討の結果、緩和処理における処理温度を延伸処理における処理温度より低くすることにより、ボーイング現象の発生を抑制し、延伸時に生成し、光学特性の劣化を誘発するムラを消滅することができることを見出しだした。本発明は、優れた光学特性のフィルムを製造しうる溶液製膜方法及び溶液製膜設備を提供することを目的とする。
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むドープを支持体上に流出する流出工程と、前記支持体上の前記ドープから流延膜を形成する流延膜形成工程と、自己支持性を有する前記流延膜を湿潤フイルムとして剥ぎ取る剥取工程と、前記溶媒を含む前記湿潤フイルムの延伸を行いながら、前記溶媒の蒸発を行う第1空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥する第1乾燥工程と、前記延伸を止め、前記溶媒の蒸発を行う第2空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥し、フイルムを得る第2乾燥工程と、を備え、下記式3を満たすことを特徴とする。
(式3)0(℃)<(前記第1乾燥工程における前記湿潤フイルムの温度)−(前記第2乾燥工程における前記湿潤フイルムの温度)<50(℃)
また、残留溶媒量が25重量%未満、且つ、剥ぎ取り時の前記流延膜の残留溶媒量との差が20重量%より大きい前記湿潤フイルムを延伸しながら乾燥することが好ましい。
また、本発明の溶液製膜設備は、支持体と、ポリマーと溶媒とを含むドープを前記支持体上に流出する流出手段と、前記支持体上に流延膜を形成する流延膜形成手段と、自己支持性を有する前記流延膜を湿潤フイルムとして剥ぎ取る剥取手段と、前記溶媒を含む前記湿潤フイルムの延伸を行いながら、前記溶媒の蒸発を行う第1空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥する第1乾燥手段と、前記延伸を止め、前記溶媒の蒸発を行う第2空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥し、フイルムを得る第2乾燥手段と、を備え、下記式4を満たすことを特徴とする。
(式4)0(℃)<(前記第1乾燥工程における前記湿潤フイルムの温度)−(前記第2乾燥工程における前記湿潤フイルムの温度)<50(℃)
また、残留溶媒量が40重量%より大きい前記流延膜を剥ぎ取る前記剥取手段と、残留溶媒量が25重量%未満、且つ、剥ぎ取り時の前記流延膜の残留溶媒量との差が20重量%より大きい前記湿潤フイルムを延伸しながら乾燥する前記第1乾燥手段と、を有することが好ましい。
本発明の溶液製膜方法によれば、ポリマーと溶媒とを含むドープを支持体上に流出する流出工程と、前記支持体上の前記ドープから流延膜を形成する流延膜形成工程と、自己支持性を有する前記流延膜を湿潤フイルムとして剥ぎ取る剥取工程と、前記溶媒を含む前記湿潤フイルムの延伸を行いながら、前記溶媒の蒸発を行う第1空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥する第1乾燥工程と、前記延伸を止め、前記溶媒の蒸発を行う第2空気をあて、前記湿潤フイルムを乾燥し、フイルムを得る第2乾燥工程と、を備え、前記第1空気の温度をT1とし、前記第2空気の温度をT2とするときに、式3を満たすため、ボーイングと共にムラの発生を抑えることが可能になり、結果として、フイルムの表面欠陥の発生や遅相軸のばらつきが抑えられ、レターデーションや表面の平滑性に優れたフイルムを容易且つ安価に製造することができる。したがって、本発明により得られるフイルムは、液晶表示装置などの光学フイルムとして好適に用いることができる。
また、本発明は、残留溶媒量が40重量%より大きい前記流延膜を剥ぎ取り、25重量%未満、且つ、剥ぎ取り時の前記流延膜の残留溶媒量との差が20重量%より大きい残留溶媒量の前記湿潤フイルムを延伸しながら乾燥するため、レターデーションの優れたフイルムを製造することができる。
本発明の溶液製膜設備によれば、支持体と、ポリマーと溶媒とを含むドープを前記支持体上に流出する流出手段と、前記支持体上に流延膜を形成する流延膜形成手段と、自己支持性を有する前記流延膜を湿潤フイルムとして剥ぎ取る剥取手段と、前記溶媒を含む前記湿潤フイルムの延伸を行いながら、前記溶媒の蒸発を行う第1空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥する第1乾燥手段と、前記延伸を止め、前記溶媒の蒸発を行う第2空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥し、フイルムを得る第2乾燥手段と、を備え、式4を満たすため、ボーイングと共にムラの発生を抑えることが可能になり、結果として、フイルムの表面欠陥の発生や遅相軸のばらつきが抑えられ、レターデーションや表面の平滑性に優れたフイルムを容易且つ安価に製造することができる。したがって、本発明は、光学フイルムの大量生産に適している。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
[原料]
本実施形態においては、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
また、本発明に用いられるポリマーはセルロースアシレートに限定されるものではない。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは
0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度など及びフイルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
(レターデーション制御剤)
本発明では、製造したフィルムに所望のレターデーションを発現させるために、レターデーション制御剤を用いることが好ましい。本発明において用いることができるレターデーション制御剤としては、棒状化合物または円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状化合物または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション制御剤として用いることが好ましい。
棒状化合物からなるレターデーション制御剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。円盤状化合物からなるレターデーション制御剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100重量部に対して、0.05重量部以上20重量部以下であることが好ましく、1.0重量部以上15重量部以下であることがより好ましく、3.0重量部以上10重量部以下であることが更に好ましい。
円盤状化合物は、棒状化合物に比べ、レターデーション(Rth)の発現性が優れているため、大きなレターデーション(Rth)を必要とする場合には、レターデーション制御剤として円盤状化合物を用いることが好ましい。なお、二種類以上のレタでーション制御剤を併用しても良い。レターデーション制御剤としては、250nm以上400nm以下の波長領域に最大吸収波長を有することが好ましい。また、可視領域での吸収が実質的に起こらないものであることが好ましい。
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。本明細書において、「芳香族環」とは、芳香族炭化水素環に加え、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)、或いは6員環を含むもの(縮合ベンゼン環やビフェニール環)であることが好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に不飽和へテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性へテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1、3、5−トリアジン環が含まれる。
上記の芳香族環のうち、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニール環、及び1、3、5−トリアジン環であることが好ましく、1、3、5−トリアジン環であることがより好ましい。したがって、レターデーション制御剤として、例えば、化1や化2に示す化合物を用いることが好ましい。
Figure 2008254431
Figure 2008254431
[ドープ製造方法]
上記原料を用いて、まずドープを製造する。ドープ製造ラインには、溶媒を貯留するための溶媒タンクと溶媒とTACなどとを混合するための溶解タンクとTACを供給するためのホッパと添加剤を貯留するための添加剤タンクとが備えられている。さらに、後述する膨潤液を加熱するための加熱装置と調製されたドープの温度を調整する温調機と濾過装置とを備えている。また、溶媒を回収するための回収装置と、回収された溶媒を再生するための再生装置とが備えられている。そして、このドープ製造ラインは、ストックタンク39を介してフイルム製造設備40と接続されている。
まず始めに、バルブを開き、溶媒が溶媒タンクから溶解タンクに送られる。次にホッパに入れられているが、計量されながら溶解タンクに送り込まれる。また、添加剤溶液(主に可塑剤が含まれている)は、バルブの開閉操作により必要量が添加剤タンクから溶解タンクに送り込まれる。添加剤は、溶液として送り込む方法の他に、例えば添加剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンクに送り込むことが可能である。また、添加剤が固体の場合には、ホッパなどを用いて溶解タンクに送り込む方法も可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンクの中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、多数の添加剤タンクを用いてそれぞれに添加剤が溶解している溶液を入れて、それぞれ独立した配管により溶解タンクに送り込むこともできる。
前述した説明においては、溶解タンクに入れる順番が、溶媒(混合溶媒の場合も含めた意味で用いる)、TAC、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。例えば、TACを計量しながら溶解タンクに送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも溶解タンクに予め入れる必要はなく、後の工程でTACと溶媒との混合物(以下、これらの混合物もドープと称する場合がある)に混合させることもできる。
溶解タンクには、その外面を包み込むジャケットと、モータにより回転する第1攪拌機とが備えられている。さらに、モータにより回転する第2攪拌機が取り付けられていることが好ましい。なお、第1攪拌機は、アンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機は、ディゾルバータイプの偏芯型撹拌機であることが好ましい。そして、溶解タンクには、ジャケットの内部に伝熱媒体を流すことにより温度調整されており、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃の範囲である。第1攪拌機,第2攪拌機のタイプを適宜選択して使用することにより、TACが溶媒中で膨潤した膨潤液を得る。
次に、膨潤液は、ポンプにより加熱装置に送られる。加熱装置は、ジャケット付き配管であることが好ましく、さらに、膨潤液を加圧することができる構成のものが好ましい。このような加熱装置を用いることにより、加熱条件下または加圧加熱条件下で膨潤液中の固形分を溶解させてドープを得る。以下、この方法を加熱溶解法と称する。なお、この場合に膨潤液の温度は、50℃〜120℃であることが好ましい。また、膨潤液を−100℃〜−30℃の温度に冷却する冷却溶解法を行うこともできる。加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択して行うことでTACを溶媒に充分溶解させることが可能となる。ドープを温調機により略室温とした後に、濾過装置により濾過してドープ中に含まれる不純物を取り除く。濾過装置に使用される濾過フィルタは、その平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、濾過流量は、50L/hr以上であることが好ましい。濾過後のドープ11は、フイルム製造設備40中のストックタンク39に送られここに貯留される。
ところで、上記のように、一旦膨潤液を調製し、その後にこの膨潤液をドープとする方法は、TACの濃度を上昇させるほど要する時間が長くなり、製造コストの点で問題となる場合がある。その場合には、目的とする濃度よりも低濃度のドープを調製し、その後に目的の濃度とするための濃縮工程を行うことが好ましい。このような方法を用いる際には、濾過装置で濾過されたドープをフラッシュ装置に送り、フラッシュ装置内でドープ中の溶媒の一部を蒸発させる。蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮されて液体となり回収装置により回収される。回収された溶媒は再生装置によりドープ調製用の溶媒として再生されて再利用される。この再利用はコストの点で効果がある。
また、濃縮されたドープは、ポンプによりフラッシュ装置から抜き出される。さらに、ドープに発生した気泡を抜くために泡抜き処理が行われることが好ましい。この泡抜き方法としては、公知の種々の方法が適用され、例えば超音波照射法が挙げられる。ドープは続いて濾過装置に送られて、異物が除去される。なお、濾過する際のドープの温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。そして、濾過後のドープ11は、ストックタンク39に送られ、貯蔵される。
以上の方法により、TAC濃度が5重量%〜40重量%であるドープ11を製造することができる。より好ましくはTAC濃度が15重量%以上30重量%以下であり、最も好ましくは17重量%以上25重量%以下の範囲とすることである。また、添加剤(主には可塑剤である)の濃度は、ドープ中の固形分全体を100重量%とした場合に1重量%以上20重量%以下の範囲とすることが好ましい。なお、TACフイルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特開2005−104148号の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用できる。
(フイルム製造工程)
次に、上記で得られたドープ11を用いてフイルムを製造するフイルム製造工程10について説明する。図1のように、本発明のフイルム製造工程10は、ドープ11から流延ドープ14を調製する流延ドープ調製工程15と、流延ドープ14を支持体上に流延して流延膜16を形成する流延工程17と、自己支持性を有する流延膜16を支持体から剥ぎ取って湿潤フイルム18とする剥取工程19と、湿潤フイルム18を乾燥する第1乾燥工程20と、湿潤フイルム18を延伸しながら乾燥するテンタ乾燥工程21と、湿潤フイルム18を十分に乾燥し、フイルム22を得る第2乾燥工程23とを有する。なお、このフイルム22を巻き取り、フイルムロールとする巻取工程を行っても良い。
また、テンタ乾燥工程21は、無端走行する担持手段を用いて両側端部で担持しながら、所定条件下で湿潤フイルム18を乾燥する予熱工程31と、延伸工程32と、緩和工程33とを有する。予熱工程31の主たる目的は、延伸工程32を行う前に、湿潤フィルム18を乾燥するとともに、延伸工程32のために湿潤フィルム18を予熱することにある。
延伸工程32では、所定方向に延伸しながら、湿潤フイルム18を乾燥する。この延伸工程32の主たる目的は、延伸処理と乾燥処理を同時に行いながら、ボーイング現象の発生を抑えつつ、レターデーション値などの光学特性の付与若しくはその調節、及び湿潤フイルム18の表面の平滑化を行うことにある。
本明細書でいうレターデーションとは、面内レターデーション(Re)値及び厚み方向レターデーション(Rth)値のいずれかをいい、それぞれ、次のように定義される。
Re=|nMD−nTD|・d
Rth={(nMD+nTD)/2−nTH} ・d
(nMD;フイルムの長手方向の屈折率、nTD;フイルムの幅方向の屈折率、nTH;フイルムの厚み方向の屈折率、d;フイルムの厚さ)
緩和工程33では、幅方向の延伸を行わずに湿潤フイルム18を乾燥する。緩和工程33の主たる目的は、延伸工程32にて湿潤フイルム18に生成する残留応力やムラの発生を除去しながら、ボーイング現象の発生を抑えることにある。なお、緩和工程33を、湿潤フイルム18の両端部の担持しながら行っても良いし、両端部の担持を解放してから行っても良い。
ボーイング現象は、幅方向の両端部を担持手段で担持し、担持手段を所定方向に搬送することにより発生し、幅方向における湿潤フイルム18の中央部分が、両端部に比べて遅れが生じる状態をいう。つまり、湿潤フイルム18の両端部を担持しながら、搬送することにより、湿潤フイルム18の中央部分に遅れが生ずる。この遅れは、両端部に加わっていた幅方向の張力を除するときにも、湿潤フイルム18に発生する。ボーイング現象により生成する遅れは、遅相軸のずれとして湿潤フイルム18に生成する。
(溶液製膜方法)
次に、上記で得られたドープ11を用いてフイルム22を製造する方法を説明する。図2はフイルム製造設備40を示す概略図である。ただし、本発明は、図2に示すようなフイルム製造設備に限定されるものではない。フイルム製造設備40には、ストックタンク39、流延ダイ41、回転ローラ42,43に掛け渡された流延バンド44、テンタ乾燥室45、耳切装置46、乾燥室47、冷却室48及び巻取室49などが備えられている。
ストックタンク39には、モータ55で回転する攪拌機56が取り付けられている。そして、ストックタンク39は、ポンプ58と濾過装置59とスタティックミキサ60とを備える配管61を介して、流延ダイ41と接続する。
第1タンク65にはマット剤液が貯留している。マット剤液はドープ11を構成する溶媒とポリマーと添加剤などとを含みドープ11に混合し易いように調製されている。第1タンク65は、ポンプ66が設けられている配管67が接続されている。なお、本発明に用いられるマット剤は特に限定されるものではないが、シリカ,アルミナなどが好ましく用いられる。また、濃度も特に限定されるものではないが、0.01重量%〜0.50重量%の範囲であることが好ましい。
第2タンク70には紫外線吸収剤溶液が貯留している。紫外線吸収剤溶液はドープ11を構成する溶媒とポリマーと添加剤などとを含みドープ11に混合し易いように調製されている。第2タンク70は、ポンプ71が設けられている配管72が接続されている。この配管72には前記マット剤液が送液されている配管67と接続している。また、配管72と接続する部分よりも下流側の配管67にはスタティックミキサ74が取り付けられている。さらに、配管67は、スタティックミキサ74の下流側でドープ11が送液されている配管61と接続されている。なお、本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されるものではないが、ベンゾトリアゾール系,ベンゾフェノン系などが好ましく用いられる。また、濃度も特に限定されるものではないが、0.1重量%〜3.0重量%の範囲であることが好ましい。
マット剤液は、配管67を通り紫外線吸収剤溶液に混合される。その後にスタティックミキサ74により均一に混合攪拌される。以下、混合攪拌された液を添加液と称する。
添加液は、配管61内を送液しているドープ11に混合される。その後にスタティックミキサ60で混合攪拌されて均一な液となる。以下、この液を流延ドープ14と称する。
流延ダイ41の材質としては、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するものも、この流延ダイ41の材質として用いることができ、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いられる。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ41を作製することが好ましい。これにより流延ダイ41内を流延ドープ14が一様に流れ、後述する流延膜にスジなどが生じることが防止される。流延ダイ41の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流延ダイ41のスリットのクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされている。流延ダイ41のリップ先端の接液部の角部分について、そのRは全巾にわたり50μm以下とされている。また、流延ダイ41内部における流延ドープ14の剪断速度が1(1/秒)〜5000(1/秒)となるように調整されていることが好ましい。
流延ダイ41の幅は、特に限定されるものではないが、最終製品となるフイルムの幅の1.1倍〜2.0倍であることが好ましい。また、製膜中の温度が所定温度に保持されるように、流延ダイ41に温調機を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ41にはコートハンガー型のものを用いることが好ましい。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を流延ダイ41の幅方向において所定の間隔で設け、ヒートボルトによる自動厚み調整機構が流延ダイ41に備えられていることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)58の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フイルム製造設備40中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて製品フイルムの幅方向の任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、2μm以下に調整することがより好ましい。また、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ41のリップ先端には、硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ41と密着性が良く、ドープとの密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al23,TiN,Cr23などが挙げられるが、なかでも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
流延ダイ41のスリット端に流出する流延ドープ14が、局所的に乾燥固化することを防止するために溶媒供給装置(図示しない)をスリット端に取り付けることが好ましい。この場合には、流延ドープ14を可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5重量部,メタノール13重量部,n−ブタノール0.5重量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部、ダイスリット端部及び外気が形成する三相接触線の周辺部付近に供給することが好ましい。端部の片側それぞれに0.1mL/分〜1.0mL/分で供給することが、流延膜中への異物混合を防止するために好ましい。なお、この液を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
流延ダイ41の下方には、回転ローラ42,43に掛け渡された流延バンド44が設けられている。回転ローラ42,43は図示しない駆動装置により回転し、この回転に伴い流延バンド44は無端で走行する。流延バンド44は、その移動速度、すなわち流延速度が10m/分〜200m/分で移動できるものであることが好ましい。また、流延バンド44の表面温度を所定の値にするために、回転ローラ42,43に伝熱媒体循環装置80が取り付けられていることが好ましい。流延バンド44は、その表面温度が−20℃〜40℃に調整可能なものであることが好ましい。本実施形態において用いられている回転ローラ42,43内には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラ42,43の温度を所定の値に保持されるものとなっている。
流延バンド44の幅は、特に限定されるものではないが、流延ドープ14の流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、長さは20m〜200m、厚みは0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。流延バンド44は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。また、流延バンド44の全体の厚みムラは0.5%以下のものを用いることが好ましい。
なお、回転ローラ42,43を直接支持体として用いることも可能である。この場合には、回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。この場合には、回転ローラ42,43の表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そこで、回転ローラの表面にクロムメッキ処理などを行い、十分な硬度と耐久性を持たせる。なお、支持体(流延バンド44や回転ローラ42,43)の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であることが好ましい。
流延ダイ41、流延バンド44などは流延室81に収められている。流延室81には、その内部温度を所定の値に保つための温調設備(図示しない)と、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)82とが設けられている。そして、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置83が流延室81の外部に設けられている。また、流延ダイ41から流延バンド44にかけて形成される流延ビードの背面部を圧力制御するための減圧チャンバ85が配されていることが好ましく、本実施形態においてもこれを使用している。
流延膜16に含まれる溶媒を蒸発させるため送風口87a,87b,87cが流延バンド44の周面近くに設けられている。また、遮風板87dが、流延ダイ41近傍の下流側に設けられていることが好ましい。遮風板87dは、乾燥風を遮るため、流延直後の流延膜16の面状変動を防ぐことができる。また、流延室81には、流延バンド44の走行により流延膜16が搬送される路(以下、搬送路と称する)が形成される。下流側の搬送路の近傍には、剥取ローラ89が設けられる。剥取ローラ89は、流延バンド44によって搬送される流延膜16を剥ぎ取り、湿潤フイルム18として流延室81の外部へ送り出す。
流延室81とテンタ乾燥室45との間には、渡り部90が設けられる。渡り部90には、送風機91が備えられる。テンタ乾燥室45では、湿潤フイルム18に所定の条件の乾燥処理と所定の条件の延伸処理を施し、湿潤フイルム18からフイルム22が生成される。また、テンタ乾燥室45の下流の耳切装置46には、切り取られたフイルム22の側端部(耳と称される)の屑を細かく切断処理するためのクラッシャ93が接続されている。テンタ乾燥室45の詳細については後述する。
乾燥室47には、多数のローラ100が備えられており、蒸発して発生した溶媒ガスを吸着回収するための吸着回収装置101が取り付けられている。そして、乾燥室47の下流に冷却室48が設けられているが、乾燥室47と冷却室48との間に調湿室(図示しない)を設けても良い。冷却室48の下流には、フイルム22の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように調整するための強制除電装置(除電バー)102が設けられている。強制除電装置102は、冷却室48の下流側とされている例を図示しているが、この設置位置に限定されるものではない。さらに、本実施形態においては、フイルム22の両縁にエンボス加工でナーリングを付与するためのナーリング付与ローラ103が、強制除電装置102の下流に適宜設けられる。また、巻取室49の内部には、フイルム22を巻き取るための巻取ローラ110と、その巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ111とが備えられている。
(テンタ乾燥室)
次に、テンタ乾燥室45の詳細について説明する。図3のように、テンタ乾燥室45の内部は、3つの温度ゾーン(以下、第1ゾーン121〜第3ゾーン123と称する)を有する。これら第1ゾーン121〜第3ゾーン123では、前述した図1の各工程31〜33が行われる。なお、本発明は、テンタ乾燥室45に限られない。
テンタ乾燥室45の内部には、テンタ130が配される。テンタ130は、無端走行する1対のチェーン131a、131bと、このチェーン131a、131bに所定のピッチで取り付けられ、湿潤フイルム18の把持手段となるクリップ132a、132bと、チェーン131a、131bの走行を案内するレール133a、133bと、チェーン131a、131bが巻き掛けられるチェーンスプロケット134a、134bと、チェーンスプロケット134a、134bを回転駆動する駆動部135a、135bとを備えている。駆動部135a、135bにより、チェーン131a、131bに備え付けられるクリップ132a、132bは、レール133a、133bに沿って、所定の速度で走行する。更に、テンタ130は、入口130aと出口130bとを備える。そして、入口130aが第1ゾーン121内に、出口130bが第3ゾーン123内になるように、テンタ130がテンタ乾燥室45内に配される。
入口130aでは、クリップ132a、132bが湿潤フイルム18の両端部を担持する。そして、このクリップ132a、132bの走行により、湿潤フイルム18は、テンタ130の入口130aから、出口130bに向けて送られる。出口130bでは、湿潤フイルム18の両端部がクリップ132a、132bの担持から開放され、出口130bの下流側に配される図示しないローラにより、湿潤フイルム18は耳切装置46へ送られる。なお、駆動部135a、135bは、入口130aおよび出口130bのいずれか一方に設置し、かつ、対面するチェーンスプロケット134a、134bを連動させるように設置する。ただし、駆動部135a、135bの設置箇所は、特に限定されるものではない。
また、第1〜第3ゾーン121〜123には、空調機141〜143がそれぞれ配される。空調機141〜143は、第1〜第3ゾーン121〜123の温度などの条件(以下、空調条件と称する)を所定の範囲(例えば、100℃以上160℃以下)に保持する。また、第1〜第3ゾーン121〜123には図示しない循環機が備えられる。この循環器は、第1〜第3ゾーン121〜123内の空気を循環させて、第1〜第3ゾーン121〜123内の空調条件を均一にする。こうして、第1〜第3ゾーン121〜123を通過する湿潤フイルム18の乾燥の進行度を所望のものにすることができる。
また、第1〜第3ゾーン121〜123には、回収機151〜153がそれぞれ配される。回収機151〜153は、第1〜第3ゾーン121〜123内の空気を回収し、第1〜第3ゾーン121〜123に含まれる溶媒を回収する。そして、溶媒が除去された空気は、当該ゾーン121〜123内へ送風される。また、回収した溶媒は、ドープ調整ラインなどに送られ、再利用することが好ましい。この回収機151〜153により、第1〜第3ゾーン121〜123の気体に含まれる溶媒の濃度を、第1〜第3ゾーン121〜123における乾燥に適した範囲に調節する。各ゾーン121〜123の気体における溶媒の濃度として、−10℃以上0℃以下における溶媒の飽和濃度とすることが好ましい。
第1ゾーン121のテンタ130の入口130aにおいて、湿潤フイルム18の両端部は、クリップ132a、132bにより担持される。クリップ132a、132bにより担持される湿潤フイルム18は、第1ゾーン121から第3ゾーン123へかけて案内される。湿潤フイルム18の搬送中において、空調機141〜143や駆動部135a、135bは、第1〜第3ゾーン121〜123における空調条件を所望の範囲に保持しつつ、残留溶媒量が所望の範囲になるまで湿潤フイルム18を乾燥する。そして、出口130bでは、湿潤フイルム18の両端部が、クリップ132a、132bの担持から開放される。クリップ132a、132bの担持から解放された湿潤フイルム18は、所定の条件で乾燥されながら、図示しないローラによりフイルム22として耳切装置46へ送られる。
レール133a、133bは、各ゾーン121〜123における1対のレール133a、133bの間隔が、徐々に変化しながら所定の幅となるように配される。具体的には、第1ゾーン121と第2ゾーン122との境界における湿潤フイルム18の幅がL1、第2ゾーン122と第3ゾーン123との境界における湿潤フイルム18の幅がL2、となるように、1対のレール133a、133bが配される。また、L3は、テンタ乾燥室45の出口45bにおける湿潤フイルム18の幅である。なお、各ゾーン121〜123におけるレール間隔の変更装置としては、例えば、特開2003−276082号公報などに、詳しく説明されている。
こうして、湿潤フイルム18は、テンタ乾燥室45内の通過中に、幅方向における延伸処理、緩和処理及び乾燥処理が段階的に施される。なお、延伸処理とは、湿潤フイルム18を所定の方向に延伸する処理をいい、緩和処理は、延伸処理で湿潤フイルム内に生じる残留応力を緩和する処理である。この緩和処理としては、湿潤フイルム18の両端部をクリップ132a、132bで担持しながら行うケースと、両端部の担持を解除して行うケースのいずれであっても良い。また、この緩和処理における湿潤フイルム18の幅は、延伸処理後の幅、すなわち幅L2と同一、或いは、小さい幅のいずれで行っても良い。
次に、以上のようなフイルム製造設備40を使用してフイルム22を製造する方法の一例を以下に説明する。
ドープ11は、攪拌機56の回転により常に均一化されている。ドープ11には、この攪拌の際にも可塑剤などの添加剤を混合させることもできる。ドープ11は、ポンプ58により濾過装置59に送られてここで濾過される。マット剤液はポンプ66で配管67内に送液される。紫外線吸収剤溶液はポンプ71で配管72内を送液される。配管67内のマット剤液は配管67内の紫外線吸収剤溶液内に混合される。その後にスタティックミキサ74で攪拌混合されて均一な添加液となる。添加液は配管67内を送液され、配管61内に送液されているドープ11に混合される。その後にスタティックミキサ60で攪拌混合されて組成が略均一な流延ドープ14となる。ドープ11とマット剤液と紫外線吸収剤溶液との混合比は特に限定されるものではないが、90重量%:5重量%:5重量%〜99重量%:0.5重量%:0.5重量%の範囲であることが好ましい。
流延ドープ14は、流延ダイ41から流延バンド44上に流延される。回転ローラ42,43の駆動は、流延バンド44に生じるテンションが10N/m〜10N/mとなるように調整されることが好ましい。また、流延バンド44と回転ローラ42,43との相対速度差は、0.01m/分以下となるように調整する。流延バンド44の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド44が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために流延バンド44の両端の位置を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づき流延バンド44の位置制御機(図示しない)にフィードバック制御を行い、流延バンド44の位置の調整を行うことがより好ましい。さらに、流延ダイ41直下における流延バンド44について、回転ローラ42,43の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以下となるように調整することが好ましい。また、流延室81の温度は、温調設備(図示しない)により−10℃〜57℃とされていることが好ましい。なお、流延室81の内部で蒸発した溶媒は凝縮器82で凝縮液化した後に回収装置83により回収された後に、再生させてドープ調製用溶媒として再利用される。
流延ダイ41から流延バンド44にかけては流延ビードが形成され、流延バンド44上には流延膜16が形成される。流延時の流延ドープ14の温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。また、流延ビードを安定させるために、この流延ビードの背面が減圧チャンバ85により所望の圧力値に制御されることが好ましい。ビード背面は、前面よりも−2000Pa〜−10Paの範囲で減圧することが好ましい。さらに、減圧チャンバ85にはジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。減圧チャンバ85の温度は特に限定されるものではないが、用いられている有機溶媒の凝縮点以上にすることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものに保つために流延ダイ41のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。このエッジ吸引風量は、1L/分〜100L/分の範囲であることが好ましい。
流延膜16は、流延バンド44の走行とともに移動し、このときに送風口87a〜87cにより流延膜16に乾燥風があてられて溶媒の蒸発が促進される。そして、この乾燥風の吹き付けにより流延膜16の面状が変動することがあるが、遮風板87dがこの変動を抑制している。なお、流延バンド44の表面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。
流延膜16は、自己支持性を有するものとなった後に、湿潤フイルム18として剥取ローラ89で支持されながら流延バンド44から剥ぎ取られ、渡り部90へ送られる。剥ぎ取り時の流延膜16残留溶媒量Z0は、乾量基準で40重量%より大きく250重量%未満であることが好ましく、40重量%より大きく150重量%未満であることがより好ましい。残留溶媒量Z0が乾量基準で40重量%以下の場合には、後の延伸処理による効果、すなわち、湿潤フイルム18にレターデーションの付与や平面性の向上が困難になるため好ましくなく、残留溶媒量Z0が乾量基準で250重量%以上の場合には、流延膜16に剥取ローラ89による剥ぎ取りに耐えうる十分な強度が発現しないため好ましくない。なお、本明細書における残留溶媒量は、サンプリング時におけるフイルム(流延膜16、湿潤フイルム18やフイルム22)の重量をx、そのサンプリングフイルムの乾燥後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。
渡り部90では、送風機91から所望の温度(50℃以上150℃以下)の乾燥風を送風することで湿潤フイルム18の乾燥を進行させながら、多数のローラを用いて、湿潤フイルム18をテンタ乾燥室45に送る。なお、渡り部90では下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フイルム18にドローテンションを付与させることも可能である。
テンタ乾燥室45に送られている湿潤フイルム18は、入口130aでクリップ132a、132bにより両端部を担持され、レール133a、133bに沿って第1ゾーン121から第3ゾーン123へかけて搬送される。そして第3ゾーン123において、湿潤フイルム18の両端部がクリップ132a、132bの担持から開放される。そして、湿潤フイルム18は、所定の条件で乾燥されながら、図示しないローラにより、クラッシャ93へ送り出される。なお、テンタ乾燥室45における湿潤フイルム18の乾燥については後に詳細に説明する。
湿潤フイルム18は、テンタ乾燥室45で所定の残留溶媒量まで乾燥された後、フイルム22として下流側の耳切装置46に送り出される。フイルム22の両側端部は、耳切装置46によりその両縁が切断される。切断された側端部は、図示しないカッターブロワによりクラッシャ93に送られる。クラッシャ93により、フイルム側端部は粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用されるので、この方法はコストの点において有効である。なお、このフイルム両側端部の切断工程については省略することもできるが、前記流延工程から前記フイルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
両側端部を切断除去されたフイルム22は、乾燥室47に送られ、さらに乾燥される。乾燥室47内におけるフイルム22の温度は、特に限定されるものではないが、50℃〜160℃の範囲であることが好ましい。乾燥室47においては、フイルム22は、ローラ100に巻き掛けられながら搬送されており、ここで蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置101により吸着回収される。溶媒成分が除去された空気は、乾燥室47の内部に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室47は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置46と乾燥室47との間に予備乾燥室(図示しない)を設けてフイルム22を予備乾燥すると、乾燥室47においてフイルム温度が急激に上昇することが防止されるので、これによりフイルム22の形状変化をより抑制することができる。
フイルム22は、冷却室48で略室温まで冷却される。なお、乾燥室47と冷却室48との間に調湿室(図示しない)を設けても良く、この調湿室において、所望の湿度及び温度に調整された空気をフイルム22に吹き付けることが好ましい。これにより、フイルム22のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制することができる。
また、強制除電装置(除電バー)102により、フイルム22が搬送されている間の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)とされる。図3では冷却室48の下流側に設けられている例を図示しているがその位置に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ103を設けて、フイルム22の両縁にエンボス加工でナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸が、1μm〜200μmであることが好ましい。
最後に、フイルム22を巻取室49内の巻取ローラ110で巻き取る。この際には、プレスローラ111で所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、巻き取り時のテンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻取ローラ110に巻き取られるフイルム22は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フイルム22の幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果がある。フイルム22の厚みが15μm以上100μm以下の薄いフイルムを製造する際にも本発明は適用される。
次に、テンタ乾燥室45内の湿潤フイルム18に施す各処理の詳細について説明する。
図3に示すように、渡り部90から送り出された湿潤フイルム18は、第1ゾーン121内のテンタ130の入口130aで、クリップ132a、132bで両端部が把持される。チェーン131a、131bの移動に伴い、湿潤フイルム18は、入口130aから出口130bに向かって送られる。出口130bでは、湿潤フイルム18の両端部がクリップ132a、132bによる担持から開放される。両端部の担持から開放される湿潤フイルム18は、図示しないローラにより、第3ゾーン123を通過する。こうして、湿潤フイルム18は、第1ゾーン121から第3ゾーン123の各ゾーンを順次通過する。第3ゾーン123を通過した湿潤フイルム18、フイルム22となって、図示しないローラにより耳切装置46へ送られる。
第1ゾーン121から第3ゾーン123に配される空調機141〜143は、第1〜第3ゾーン121〜123の空調条件を所定の範囲に保持する。なお、本実施形態では、第1〜第3ゾーン121〜123の空調条件として、第1〜第3ゾーン121〜123の温度T1〜T3を用いている。
(第1ゾーン)
第1ゾーン121では、第2ゾーン122以降の各ゾーンにおける乾燥のための予熱工程を行う。この第1ゾーンにおける湿潤フイルム18の残留溶媒量Z1や温度T1は、次工程で要求される残留溶媒量Z2や温度T2に応じて適宜調整すればよい。例えば、温度T1は、100℃以上160℃以下とすることが好ましい。温度T1が100℃未満の場合には、湿潤フィルム18の予熱を十分に行うことができないため好ましくない。一方、温度T1が160℃を超えると、湿潤フィルム18が急激に収縮し、湿潤フィルム18にシワが発生するため好ましくない。また、残留溶媒量Z1は、30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。残留溶媒量Z1が30重量%未満である場合には、流延バンド44における乾燥時間が長くなり、生産効率が低下するため好ましくない。一方、残留溶媒量Z1が70重量%を超えると、次の延伸工程において湿潤フィルム18を延伸が困難となるため、或いは、湿潤フィルム18の延伸が可能となっても湿潤フィルム18にレターデーションの付与や表面の平滑化を行うことが困難となる好ましくない。
(第2ゾーン)
第2ゾーン122では、本発明に係る第1乾燥工程(延伸処理及び乾燥処理)を湿潤フイルム18に施し、湿潤フイルム18のレターデーションの付与や表面の平滑化を行う。第2ゾーン122における湿潤フイルム18の温度T2は、製造条件に応じて適宜決定すればよい。例えば、温度T2は温度100℃以上160℃以下であることが好ましい。温度T2が100℃未満では、延伸により湿潤フィルム18が裂けてしまい、搬送が困難となるため好ましくない。一方、温度T2が160℃を超えると、遅相軸の配向や表面の平滑化を行うことができないため好ましくない。また、高温雰囲気下による湿潤フイルム18の急速な乾燥は、湿潤フイルム18における弾性率のばらつきを生じ、このばらつきによりボーイング現象が誘発するため好ましくない。
第2ゾーン122における湿潤フイルム18の残留溶媒量Z2は、25重量%未満であり、且つ、残留溶媒量Z0と残留溶媒量Z2との差が20重量%より大きいことが好ましい。残留溶媒量Z2が25重量%以上である場合や、残留溶媒量Z0と残留溶媒量Z2との差が20重量%以下である場合には、遅相軸の配向や表面の平滑化を行うことができないため好ましくない。こうして、ボーイング現象の発生を抑えながら、湿潤フイルム18に延伸処理及び乾燥処理を施すことが可能になり、湿潤フイルム18の遅相軸の配向と湿潤フイルム18の表面の平滑化を行うことができる。
(第3ゾーン)
第3ゾーン123では、湿潤フイルム18に本発明に係る第2乾燥工程(緩和処理及び乾燥処理)を施す。第3ゾーン123における湿潤フイルム18の温度T3は、式5を満たす。(T2−T3)が0℃以下である場合には、延伸処理に生成したムラが湿潤フイルム18に残ってしまう。一方、(T2−T3)が50℃以上である場合には、湿潤フィルム18中のポリマー分子の流動性が大きくなりボーイング現象が起こりやすくなること、及び延伸により湿潤フィルム18が裂けてしまい、搬送が困難となるため好ましくない。なお、(T2−T3)が3℃より大きく30℃より小さい場合はより好ましく、5℃より大きく15℃より小さい場合は特に好ましい。このようにして、延伸処理で湿潤フイルム18に生成したムラを緩和処理で消失することが可能となり、結果として、光学特性に優れたフイルムを製造することができる。なお、温度T2は、本発明に係る第1乾燥工程における湿潤フィルム18の温度であり、温度T3は、本発明に係る第2乾燥工程における湿潤フィルム18の温度である。

(式5)0(℃)<T2−T3<50(℃)
また、第3ゾーン123における湿潤フイルム18の残留溶媒量Z3は、5重量%以下であることが好ましい。また、残留溶媒量Z3が5重量%を超える場合には、湿潤フィルム18の表面が均一に平滑化されないため好ましくない。
なお、第2ゾーン122における延伸処理の倍率(以下、延伸倍率と称する)R1は、5%以上60%以下であることが好ましい。延伸倍率R1が5%未満である場合には、湿潤フイルム18のレターデーションの調節や表面の平滑化を十分に行うことができないため好ましくない。一方、延伸倍率R1が60%を超えると、延伸により湿潤フィルム18が裂けてしまい、搬送が困難となるため好ましくない。また、第3ゾーン123における緩和処理の倍率(以下、緩和率と称する)R2は、0.5%以上5%以下であることが好ましい。緩和率R2が0.5%未満である場合には、湿潤フィルム18が不均一に収縮する結果、湿潤フィルム18にシワが発生するため好ましくない。一方、緩和率R2が5%を超えると、湿潤フィルム18にタルミが発生する結果、搬送不良となるため、好ましくない。ここで、延伸倍率R1は、100・(L2−L1)/L1で表され、緩和率R2は、100・(L2−L3)/L3で表される。
本発明は、延伸時或いは緩和時にフィルムに生成するボーイング現象やムラの生成を抑制しながら、テンタ乾燥工程21(図1)を行うことができる。したがって、本発明によって製造されるフイルムは、レターデーションの調節や表面の平滑化と同時に、遅相軸のばらつきが抑えられるため、光学特性に優れ、光学フイルムとして用いることができる。また、本発明のテンタ乾燥工程21は、従来用いられるテンタ乾燥室45やテンタ130に適用可能であるため、設備に膨大コストを掛けずに、光学特性の優れたフイルム22を製造することができる。
第1〜第3ゾーン121〜123の溶媒残留量Z1〜Z3は、湿潤フイルム18の搬送速度や空調機141〜143からの空気200、202、204により調節することが可能である。テンタ乾燥室45における湿潤フィルム18の搬送速度は、10m/分以上150m/分以下であることが好ましい。湿潤フイルム18の搬送速度を上記範囲に保持するためには、駆動部135a、135bを用いてクリップ132a、132bの移動速度を制御すればよい。また、この空調機141〜143は、単に第1〜第3ゾーン121〜123における雰囲気を空調条件に基づいて調節するだけでなく、所望の空調条件に調節される風を直接湿潤フイルム18にあててもよい。この場合には、空調機141〜143から送り出される風の送風速度や湿度などを空調条件に含めて、湿潤フイルム18を乾燥することが好ましい。更に、第1〜第3ゾーン121〜123を通過する湿潤フイルム18の雰囲気の気圧を制御する減圧機を用いても良い。空調機141〜143と共に減圧機を用いて、湿潤フイルム18の乾燥の進行を制御することも可能である。
なお、上記実施形態における第1〜第3ゾーン121〜123の残留溶媒量Z1〜Z3は、所定の乾燥条件により決定される。この乾燥条件は、空調条件、湿潤フイルム18の搬送速度、レール133a、133bの長さなどを調整して行う製造実験から求めることができる。また、残留溶媒量の測定方法は、上述した製造実験を行い、各工程における湿潤フイルム18と実験で製造されたフイルムとの同一面積当たり重量の計測から測定することができる。
また、本発明に用いられるポリマーはセルロースアシレートに限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン系のポリマーを含む。
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フイルム回収方法まで、特開2005−104148号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
[性能・測定法]
巻き取られたセルロースアシレートフイルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらも本発明にも適用できる。
[表面処理]
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
さらに前記セルロースアシレートフイルムをベースフイルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。セルロースアシレートフイルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特開2005−104148号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
(用途)
前記セルロースアシレートフイルムは、特に偏光板保護フイルムとして有用である。セルロースアシレートフイルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフイルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフイルムについての記載もある。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフイルムとして光学補償フイルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フイルムと兼用して使用することもできる。これらの記載は、本発明にも適用できる。特開2005−104148号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
また、本発明の製造方法により光学特性に優れるセルローストリアセテートフイルム(TACフイルム)を得ることができる。前記TACフイルムは、偏光板保護フイルムや写真感光材料のベースフイルムとして用いることができる。さらにテレビ用途の液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フイルムとしても使用可能である。特に偏光板の保護膜を兼ねる用途に効果的である。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどに用いられる。また、前記偏光板保護膜用フイルムを用いて偏光板を構成しても良い。
次に、本発明の実施例を説明する。なお、以下の各実験において、実験1〜14は本発明の実施様態の例であり、比較実験1〜10は実験1〜14に対する比較実験である。また、実施例の説明は実験1で詳細に行い、本発明に係る実験2〜14、及び比較実験1〜10については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略する。
[実験1]
次に、本発明の実験1を説明する。フイルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.81(平均酢化度60.2%)、粘度平均重合度306、含水率0.2重量%、ジクロロメタン溶液中6重量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100重量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 441重量部
メタノール(第2溶媒) 66重量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート:TPP) 7重量部
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート:BDP) 3重量部
化1のレターデーション制御剤 7重量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.03重量部
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8重量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
(1−1)ドープ仕込み
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製溶解タンクで前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒の各原料としては、すべてその含水率が0.5重量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパから徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンクに投入されて、最初は5m/秒の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌機及び中心軸にアンカー翼を有する攪拌機を周速1m/秒で攪拌する条件下で30分間分散した。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンク送液量を調整して、全体が2000kgとなるように送液した。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、アンカー翼の周速を0.5m/秒としてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより溶解タンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンクの内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液中の水分量は0.3重量%であった。
(1−2)溶解・濾過
膨潤液を溶解タンクジャケット付配管に送液した。ジャケット付き配管で膨潤液を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に溶解された液を温調機で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置を通過させドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(商品名)合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
(1−3)濃縮・濾過・脱泡・添加剤
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、21.8重量%となった。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置で回収した。再生装置で再生した後に溶媒タンクに送液した。回収装置,再生装置では、蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/秒でフラッシュされたドープを攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内におけるドープの平均滞留時間は50分であった。このドープを採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(秒−1)で450Pa・sであった。
次に、このドープに弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後にポンプを用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置を通過させた。濾過装置では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製ストックタンク39内にドープ11を送液して貯蔵した。ストックタンク39は中心軸にアンカー翼を備えた攪拌機56を有しており、周速0.3m/秒で常時攪拌を行った。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
(1−4)吐出・直前添加・流延・ビード減圧
図2に示すフイルム製造設備40を用いてフイルム22を製造した。ストックタンク39内のドープを高精度のギアポンプ58で濾過装置59へ送った。このギアポンプ58は、ポンプ58の1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプ58の上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプ58は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、吐出圧力は1.5MPaであった。そして、濾過装置59を通ったドープを流延ダイ41に送液した。
流延ダイ41は、幅が1.8mであり乾燥されたフイルム22の膜厚が80μmとなるように、流延ダイ41の吐出口でドープの流量を調整して流延を行った。また流延ダイ41の吐出口からのドープの流延幅を1700mmとした。なお、流延速度は、100m/分とした。ドープの温度を36℃に調整するために、流延ダイ41にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
流延ダイ41と配管とはすべて、製膜中には36℃に保温した。流延ダイ41は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ41には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプ58の送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フイルム製造設備40に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフイルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
また、流延ダイ41の1次側には、この部分を減圧するための減圧チャンバ85を設置した。この減圧チャンバ85の減圧度は、流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この調整は流延速度に応じてなされる。その際に、流延ビードの長さが20mm〜50mmとなるように流延ビードの両面側の圧力差を設定した。また、減圧チャンバ85は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものを用いた。ダイ吐出口におけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、流延ダイのダイ吐出口の両端には開口部を設けた。さらに、流延ダイ41には、流延ビードの両縁の乱れを調整するためのエッジ吸引装置(図示しない)を取り付けた。
(1−5)流延ダイ
流延ダイ41の材質は、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ41の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。流延ダイ41のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ41内部でのドープの剪断速度は1(1/秒)〜5000(1/秒)の範囲であった。また、流延ダイ41のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
また、ジクロロメタンが86.5重量部、メタノールが13重量部、n−ブタノールが0.5重量部の混合溶媒Aを作製した。
さらに流延ダイ41の吐出口には、流出するドープが局所的に乾燥固化することを防止するために、ドープを可溶化するための混合溶媒Aを流延ビードの両側端部と吐出口との界面部に対し、それぞれ0.5ml/分ずつ供給した。混合溶媒を供給するポンプの脈動率は5%以下であった。また、減圧チャンバ85により流延ビード背面側の圧力を前面部よりも150Pa低くした。減圧チャンバ85の内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内には35℃に調整された伝熱媒体を供給した。前記エッジ吸引装置は、1L/分〜100L/分の範囲となるようにエッジ吸引風量を調整することができるものであり、本実施例ではこれを30L/分〜40L/分の範囲となるように適宜調整した。
(1−6)金属支持体
支持体として幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを流延バンド44として利用した。流延バンド44は、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものを用いた。流延バンド44の全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド44は、2個の回転ローラ42,43により駆動させた。その際の流延バンド44の搬送方向における張力は1.5×105 N/m2 となるように調整した。また、流延バンド44と回転ローラ42、43との相対速度差が0.01m/分以下になるように調整した。このときに、流延バンド44の速度変動を0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行が、1.5mm以下に制限されるように流延バンド44の両端位置を検出して制御した。流延ダイ41の直下におけるダイリップ先端と流延バンド44との上下方向の位置変動は200μm以下にした。流延バンド44は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室81内に設置した。この流延バンド44上に流延ダイ41からドープを流延した。
回転ローラ42,43は、流延バンド44の温度調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ41側の回転ローラ42には5℃の伝熱媒体を流し、他方の回転ローラ43には乾燥のために40℃の伝熱媒体を流した。流延直前の流延バンド44中央部の表面温度は15℃であり、その両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド44には、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であるものを用いた。
(1−7)流延乾燥
流延室81の温度は、図示しない温調設備を用いて35℃に保った。流延バンド44上に流延されたドープから形成された流延膜16には、最初に流延膜16に対して平行に流れる乾燥風を送り、流延膜16を乾燥した。この乾燥風からの流延膜16への総括伝熱係数は24kcal/(m2・hr・℃)であった。乾燥風の温度は、流延バンド44上部の上流側の送風口87aからは135℃の乾燥風を送風した。また下流側の送風口87bからは140℃の乾燥風を送風し、流延バンド44下部の送風口87cからは65℃の乾燥風を送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。流延バンド44上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、この酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。また、流延室81内の溶媒を凝縮回収するために、回収装置83と、回収装置83に接続する凝縮器(コンデンサ)82を設け、その出口温度を−10℃に設定した。
流延後5秒間は乾燥風が、直接に流延ビード及び流延膜16に当たらないように遮風板87dを設置して、流延ダイ41近傍の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。流延膜16中の残留溶媒量Z0が乾量基準で略45重量%になった時点で流延バンド44から剥取ローラ89で支持しながらフイルム(以下、湿潤フイルムと称する)18として剥ぎ取った。また、剥取テンションは1×102N/m2であり、剥取不良を抑制するために流延バンド44の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。剥ぎ取った湿潤フイルム18の表面温度は15℃であった。流延バンド44上での乾燥速度は、平均60重量%(乾量基準溶媒)/分であった。乾燥により発生した溶媒ガスは−10℃の凝縮器82で凝縮液化して回収装置83で回収した。回収された溶媒は、水分量が0.5%以下となるように調整した。また、溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。
湿潤フイルム18を渡り部90のローラを介して搬送し、テンタ乾燥室45に送った。この渡り部90では送風機91から40℃の乾燥風を湿潤フイルム18に送風した。なお、渡り部90のローラで搬送している際に、湿潤フイルム18に約30Nのテンションを付与した。この乾燥風に含まれる溶媒の濃度は、−10℃における飽和濃度に保持した。
(1−8)テンタ搬送・乾燥・耳切
テンタ乾燥室45に送られた湿潤フイルム18は、クリップでその両端を固定されながらテンタ乾燥室45の乾燥ゾーン内を搬送され、この間に乾燥風により乾燥された。クリップは、20℃の伝熱媒体の供給により冷却した。クリップの搬送は、チェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、テンタ乾燥室45内を第1〜第3ゾーン121〜123に分けた。空調機141〜143は、第1〜第3ゾーン121〜123の温度T1〜T3を、略120℃、略145℃、略100℃に保持した。循環器は、第1〜第3ゾーン121〜123内の空気を循環させて、第1〜第3ゾーン121〜123内の空調条件を均一にした。回収機151〜153は、第1〜第3ゾーン121〜123の気体に含まれる溶媒の濃度を、−10℃における飽和濃度に保持した。テンタ乾燥室45内での平均乾燥速度は120重量%(乾量基準溶媒)/分であった。剥取ローラ89からテンタ乾燥室45の入口に至るまでの延伸率(テンタ駆動ドロー)は102%とした。
テンタ乾燥室45において、残留溶媒量Z1が30〜35重量%の湿潤フイルム18を、第1ゾーン121へ案内し、湿潤フイルム18の予備加熱を行った。次に、残留溶媒量Z2が略20重量%の湿潤フイルム18を第2ゾーン122へ案内し、湿潤フイルム18の乾燥処理を行った。そして、残留溶媒量Z3が略5重量%の湿潤フイルム18を第3ゾーン123へ案内し、湿潤フイルム18の乾燥処理を行った。
また、テンタ乾燥室45では、延伸倍率R1=30%、緩和率R2=5%、延伸速度V1=100%/分で、湿潤フイルム18に延伸処理、及び緩和処理を行った。ここで、本明細書では、延伸速度V1は、単位時間あたりの延伸倍率R1である。
なお、残留溶媒量は、ガスクロマトグラフィー(GC−18A,島津製作所(株)製)を用いて、サンプリングフイルムからサンプリング時におけるフイルムの重量xと、サンプリングフイルムの乾燥後の重量yとの測定結果より算出した。サンプリングフイルムとして、7mm×35mmに切断された湿潤フイルムやフイルム22を用いた。
テンタ乾燥室45内で蒸発した溶媒は−10℃の温度で凝縮させ液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。そして凝縮溶媒は、含まれる水分量が0.5重量%以下に調整されて再使用された。そして、テンタ乾燥室45からフイルム22として送り出した。
テンタ乾燥室45の出口から30秒以内にフイルム22の両端の耳切を耳切装置46で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ93に風送して平均80mm2 程度のチップに粉砕した。このチップは、再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際の原料として利用した。テンタ乾燥室45の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室47で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフイルム22を予備加熱した。
(1−9)後乾燥・除電
フイルム22を乾燥室47で高温乾燥した。乾燥室47を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フイルム22のローラ100による搬送テンションを100N/mとして、最終的に残留溶媒量が0.3重量%になるまで約10分間乾燥した。ローラ100のラップ角度(フイルムの巻き掛け中心角)は、90度および180度とした。ローラ100の材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラ100の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ100の回転によるフイルム位置の振れは、全て50μm以下であった。また、テンション100N/mでのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置101を用いて吸着回収除去した。ここに使用した吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶媒は、水分量を0.3重量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には、溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤,その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却器およびプレアドソーバでこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち、凝縮法で回収する溶媒量は90重量%であり、残りのものの大部分は吸着回収により回収した。
乾燥されたフイルム22を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室47と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フイルム22のカールの発生を抑制する第2調湿室(図示しない)にフイルム22を搬送した。第2調湿室では、フイルム22に直接90℃,湿度70%の空気をあてた。
(1−10)ナーリング、巻取条件
調湿後のフイルム22は、冷却室48で30℃以下に冷却した後に耳切装置(図示しない)で再度両端の耳切りを行った。搬送中のフイルム22の帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)102を設置した。さらにフイルム22の両端にナーリング付与ローラ103でナーリングの付与を行った。ナーリングはフイルム22の片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフイルム22の平均厚みよりも平均12μm高くなるようにナーリング付与ローラ103による押し圧を設定した。
そして、フイルム22を巻取室49に搬送した。巻取室49は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。巻取室49の内部には、フイルム22の帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVとなるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフイルム(厚さ80μm)82の製品幅は、1475mmとなった。巻取ローラ110の径は169mmのものを用いた。巻き始めテンションは300N/mであり、巻き終わりが200N/mになるようなテンションパターンとした。巻き取り全長は3940mであった。巻き取りの際の巻きズレの変動幅(オシレート幅と称することもある)を±5mmとした、巻取ローラ110に対する巻きズレ周期を400mとした。また、巻取ローラ110に対するプレスローラ111の押し圧は、50N/mに設定した。巻き取り時のフイルム22の温度は25℃、含水量は1.4重量%、残留溶媒量は0.3重量%であった。全工程を通しても平均乾燥速度は20重量%(乾量基準溶媒)/分であった。また巻き緩み、シワもなく、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。また、ロール外観も良好であった。
フイルム22のフイルムロールを25℃、55%RHの貯蔵ラックに1ヶ月保管して、さらに上記と同様に検査した結果、いずれも有意な変化は認められなかった。さらにロール内においても接着も認められなかった。また、フイルム22を製膜した後に、流延バンド44上にはドープから形成された流延膜16の剥げ残りは全く見られなかった。
得られたフィルム22の面内レターデーションReは51nmであり、厚み方向レターデーションRthは195nmであった。なお、面内レターデーションRe及び厚み方向レターデーションRthの測定方法は次の通りである。
(面内レターデーションReの測定方法)
得られたフイルムを70mm×100mmに切断し、温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21DH 王子計測(株))にて632.8nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値の外挿値より次式に従い算出した。
Re=|nMD−nTD|×d
nMDは、長手方向(流延方向)の屈折率,nTDは流延幅方向の屈折率,dはフイルムの厚み(膜厚)を意味している。なお、測定波長には、632.8nm以外の波長を用いた場合もある。
(厚み方向レターデーションRthの測定方法)
得られたフイルムを30mm×40mmに切断し、温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、エリプソメータ(M150 日本分光(株)製)で632.8nmにより垂直方向から測定した値と、フイルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値とから下記式に従い算出した。
Rth={(nMD+nTD)/2−nTH}×d
nMDは長手方向(流延方向)の屈折率,nTDは流延幅方向の屈折率,nTHはフィルム厚み方向の屈折率,dはフイルムの厚み(膜厚)を意味している。
フイルムの厚みdは次のようにして求めた。アンリツ電気社製の電子マイクロメーターを用いて600mm/分の速度にて連続的にフイルム22の厚みを測定した。測定により得られたデータは、縮尺1/20、チャート速度30mm/分にてチャート紙上に記録された。そして定規によりデータ曲線に関して計測を実施したのちに、その計測値を基に厚みの平均値とを求め、この値をフイルムの厚みdとした。
[実験2〜14、比較実験1〜10]
表1及び表2に記載される条件以外は、実験1と同様にして、溶液製膜方法によりフイルムを製造した。
上述した実験1〜14及び比較実験1〜10で得られたフィルムの光のムラの有無について評価を行った。この評価方法について下記に示す。
測定用試料として、全幅×1.5mのフイルムを用いた。偏光軸が90°異なる偏光板でフイルムをはさんだ。そして、シャカステンを用いて、一の偏光板から入射した光が他の偏光板から出射する光のムラを調べた。
◎:光のムラが全くなかった。
○:光のムラがわずかにみられた。
△:光のムラが発生しているが、光学フィルムとして実用上の問題ないレベルであった。
×:光のムラが発生しており、光学フィルムとして用いることができないレベルであった。
各実験、及び比較実験における製造条件及び光のムラの有無についての評価結果を、表1、表2に纏めて示す。
Figure 2008254431
Figure 2008254431
表1、表2からも明らかなように、本発明により、ボーイング現象の発生や光ムラを抑え、優れた光学特性を有するフイルムを製造することができることを確認した。
本発明に係るフイルム製造工程の概要を示す説明図である。 本発明に係るフイルム製造設備の概要を示す説明図である。 第1の実施形態のテンタ乾燥室の概要を示す説明図である。
符号の説明
10 フイルム製造工程
16 流延膜
18 湿潤フイルム
21 テンタ乾燥工程
22 フイルム
32 延伸工程
33 緩和工程
40 フイルム製造設備
45 テンタ乾燥室
121〜123 第1〜第3ゾーン
130 テンタ
141〜144 空調機
Z0〜Z3 残留溶媒量
T1〜T3 温度

Claims (4)

  1. ポリマーと溶媒とを含むドープを支持体上に流出する流出工程と、
    前記支持体上の前記ドープから流延膜を形成する流延膜形成工程と、
    自己支持性を有する前記流延膜を湿潤フイルムとして剥ぎ取る剥取工程と、
    前記溶媒を含む前記湿潤フイルムの延伸を行いながら、前記溶媒の蒸発を行う第1空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥する第1乾燥工程と、
    前記延伸を止め、前記溶媒の蒸発を行う第2空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥し、フイルムを得る第2乾燥工程と、
    を備え、
    下記式1を満たすことを特徴とする溶液製膜方法。
    (式1)0(℃)<(前記第1乾燥工程における前記湿潤フイルムの温度)−(前記第2乾燥工程における前記湿潤フイルムの温度)<50(℃)
  2. 残留溶媒量が40重量%より大きい前記流延膜を剥ぎ取り、 残留溶媒量が25重量%未満、且つ、剥ぎ取り時の前記流延膜の残留溶媒量との差が20重量%より大きい前記湿潤フイルムを延伸しながら乾燥することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 支持体と、
    ポリマーと溶媒とを含むドープを前記支持体上に流出する流出手段と、
    前記支持体上に流延膜を形成する流延膜形成手段と、
    自己支持性を有する前記流延膜を湿潤フイルムとして剥ぎ取る剥取手段と、
    前記溶媒を含む前記湿潤フイルムの延伸を行いながら、前記溶媒の蒸発を行う第1空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥する第1乾燥手段と、
    前記延伸を止め、前記溶媒の蒸発を行う第2空気をあてて、前記湿潤フイルムを乾燥し、フイルムを得る第2乾燥手段と、
    を備え、
    下記式2を満たすことを特徴とする溶液製膜設備。
    (式2)0(℃)<(前記第1乾燥工程における前記湿潤フイルムの温度)−(前記第2乾燥工程における前記湿潤フイルムの温度)<50(℃)
  4. 残留溶媒量が40重量%より大きい前記流延膜を剥ぎ取る前記剥取手段と、
    残留溶媒量が25重量%未満、且つ、剥ぎ取り時の前記流延膜の残留溶媒量との差が20重量%より大きい前記湿潤フイルムを延伸しながら乾燥する前記第1乾燥手段と、
    を有することを特徴とする請求項3記載の溶液製膜設備。
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