JP2006248136A - 溶液製膜方法 - Google Patents

溶液製膜方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006248136A
JP2006248136A JP2005070529A JP2005070529A JP2006248136A JP 2006248136 A JP2006248136 A JP 2006248136A JP 2005070529 A JP2005070529 A JP 2005070529A JP 2005070529 A JP2005070529 A JP 2005070529A JP 2006248136 A JP2006248136 A JP 2006248136A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
casting
film
dope
solvent
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2005070529A
Other languages
English (en)
Inventor
Kentaro Tanimura
健太郎 谷村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2005070529A priority Critical patent/JP2006248136A/ja
Publication of JP2006248136A publication Critical patent/JP2006248136A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Polarising Elements (AREA)
  • Moulding By Coating Moulds (AREA)

Abstract

【課題】 マット剤異物を含まないTACフィルムを得る。
【解決手段】 TACと溶媒などとから原料ドープ27を調製する。紫外線吸収剤溶液71,マット剤液76も調製する。これら液27,71,76を混合した後にスタティックミキサ56で均一にして流延用ドープとする。流延用ドープをフレキシブル配管57を介して流延ダイ43に送液する。フレキシブル配管57は横断面積変動が±5%未満、表面粗さ最大高さRyが2μm以下、長さ2500mm以下のPTFEから形成されている。流延ダイ43から流延バンド46上に流延用ドープを流延して流延膜86を形成する。流延膜86を流延バンド46から剥ぎ取りTACフィルム102を得る。
【選択図】 図2

Description

本発明は溶液製膜方法に関し、より詳しくは光学フィルムに用いられるフィルムを製造する溶液製膜方法に関する。
セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACとも称する)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用支持体として利用されている。また、TACフィルムは光学等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フィルム,光学補償フィルム(例えば、視野角拡大フィルムなど)などに用いられている。
TACフィルムは、通常溶液製膜方法により製造されている。溶液製膜方法は、溶融製膜方法などの他の製造方法と比較して、光学的性質などの物性に優れたフィルムを製造することができる。溶液製膜方法は、ポリマーをジクロロメタンや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解した高分子溶液(以下、ドープと称する)を調製する。そのドープを流延ダイより支持体上に流延して流延膜を形成する。その流延膜が支持体上で自己支持性を有するものとなった後に、支持体から膜(以下、この膜を湿潤フィルムと称する)として剥ぎ取り、乾燥させた後にフィルムとして巻き取る。
フィルムとして巻き取る際に、フィルム間での密着を防止するため予めドープ中にマット剤を添加している。マット剤を含むドープから製造されるフィルムは、表面に微小な凹凸が形成され、フィルム搬送中のきしみや取り扱い上発生する擦り傷、接着などを抑制する。マット剤を含む液(以下、マット剤液とも称する)をドープ(以下、原料ドープとも称する)に混合してスタティックミキサにより混合してドープ(以下、流延用ドープとも称する)を調製している。この流延用ドープを用いることでマット剤異物のないフィルムが得られる(例えば、非特許文献1参照。)。
発明協会公開技報公技番号2001−1745号
ところで、マット剤を混合した流延用ドープは、流延ダイに供給されるまでの過程で、配管の軸芯が完全に一致しなくても漏れなくドープ送液するために、また作業性を向上させるために、樹脂配管(以下、フレキシブル配管と称する)を使用している。しかしながら、フレキシブル配管の形状、素材特性によってはマット剤異物を発生するという問題が生じている。
本発明の目的は、フィルム中にマット剤異物の発生を抑制する溶液製膜方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明の溶液製膜方法は、流延ダイに流延用ドープを供給する過程で使用するフレキシブル配管が、
1.一定流速を得るために、均一な断面積を有するもの
2.界面付近のドープが一定速度で置換されるために、表面粗さ,形状の滑らかなもの
3.フレキシブル配管はガス透過する性質であるため、ガス透過に対し留意したもの
を使用することで、フィルム中のマット剤異物発生を抑制できる溶液製膜方法を見出した。
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含む原料ドープにマット剤を含む添加液を混合してドープとした後に、前記ドープをフレキシブル配管を介して流延ダイに送り、前記流延ダイから支持体に流延して流延膜を形成し、前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取りフィルムとする溶液製膜方法において、前記フレキシブル配管の前記ドープが通液する方向に直交する面の断面積の変化が、±5%未満である。
前記フレキシブル配管の内面の表面粗さの最大高さRy(μm)が、2μm以下であることが好ましい。前記フレキシブル配管の長さが、2500mm以下であることが好ましい。前記フレキシブル配管の少なくとも内面が、フッ素系樹脂から形成されていることが好ましい。前記フレキシブル配管に含有される前記溶媒が、1atm,25℃の条件下で20mg/hr/m2以下であることが好ましい。
本発明の溶液製膜方法によれば、ポリマーと溶媒とを含む原料ドープにマット剤を含む添加液を混合してドープとした後に、前記ドープをフレキシブル配管を介して流延ダイに送り、前記流延ダイから支持体に流延して流延膜を形成し、前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取りフィルムとする溶液製膜方法において、前記フレキシブル配管の前記ドープが通液する方向に直交する面の断面積の変化が、±5%未満であるから、前記フレキシブル配管内面に異物の付着が抑制され、光学特性に優れるフィルムを得ることができる。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
[原料]
本実施形態においては、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
また、本発明に用いられるポリマーはセルロースアシレートに限定されるものではない。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは
0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2質量%〜25質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特願2004−264464号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特願2004−264464号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
[ドープ製造方法]
上記原料を用いて、まずドープを製造する。図1にドープ製造ライン10を示す。ドープ製造ライン10には、溶媒を貯留するための溶媒タンク11と、溶媒とTACなどとを混合するための溶解タンク12と、TACを供給するためのホッパ13と、添加剤を貯留するための添加剤タンク14とが備えられている。さらに、後述する膨潤液を加熱するための加熱装置15と、調製されたドープの温度を調整する温調機16と、濾過装置17とを備えている。さらに、調製されたドープを濃縮するフラッシュ装置30,濾過装置31なども備えられている。また、溶媒を回収するための回収装置32と、回収された溶媒を再生するための再生装置33とが備えられている。そして、このドープ製造ライン10は、ストックタンク41を介してフィルム製造ライン40と接続されている。
上記ドープ製造ライン10を用いて以下の方法でドープが製造される。まず始めに、バルブ18を開き、溶媒が溶媒タンク11から溶解タンク12に送られる。次にホッパ13に入れられているTACが、計量されながら溶解タンク12に送り込まれる。また、添加剤溶液は、バルブ19の開閉操作により必要量が添加剤タンク14から溶解タンク12に送り込まれる。
添加剤は、溶液として送り込む方法の他に、例えば添加剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンク12に送り込むことが可能である。また、添加剤が固体の場合には、ホッパなどを用いて溶解タンク12に送り込む方法も可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンク14の中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、多数の添加剤タンクを用いてそれぞれに添加剤が溶解している溶液を入れて、それぞれ独立した配管により溶解タンク12に送り込むこともできる。
前述した説明においては、溶解タンク12に入れる順番が、溶媒(混合溶媒の場合も含めた意味で用いる)、TAC、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。例えば、TACを計量しながら溶解タンク12に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも溶解タンク12に予め入れる必要はなく、後の工程でTACと溶媒との混合物(以下、これらの混合物もドープと称する場合がある)に混合させることもできる。
溶解タンク12には、図1に示すようにその外面を包み込むジャケット20と、モータ21により回転する第1攪拌機22とが備えられている。さらに、図1に示すように溶解タンク12には、モータ23により回転する第2攪拌機24が取り付けられていることが好ましい。なお、第1攪拌機22は、アンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機24は、ディゾルバータイプの偏芯型撹拌機であることが好ましい。そして、溶解タンク12には、ジャケット20の内部に伝熱媒体を流すことにより温度調整されており、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃の範囲である。第1攪拌機22,第2攪拌機24のタイプを適宜選択して使用することにより、TACが溶媒中で膨潤した膨潤液25を得る。
次に、膨潤液25は、ポンプ26により加熱装置15に送られる。加熱装置15は、ジャケット付き配管であることが好ましく、さらに、膨潤液25を加圧することができる構成のものが好ましい。このような加熱装置15を用いることにより、加熱条件下または加圧加熱条件下で膨潤液25中の固形分を溶解させてドープ27を得る。以下、この方法を加熱溶解法と称する。なお、この場合に膨潤液25の温度は、50℃〜120℃であることが好ましい。また、膨潤液25を−100℃〜−30℃の温度に冷却する冷却溶解法を行うこともできる。加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択して行うことでTACを溶媒に充分溶解させることが可能となる。ドープ27を温調機16により略室温とした後に、濾過装置17により濾過してドープ27中に含まれる不純物を取り除く。濾過装置17に使用される濾過フィルタは、その平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、濾過流量は、50L/hr以上であることが好ましい。濾過後のドープ27は、バルブ28を介してフィルム製造ライン40中のストックタンク41に送られここに貯留される。
ところで、上記のように、一旦膨潤液25を調製し、その後にこの膨潤液25をドープ27とする方法は、TACの濃度を上昇させるほど要する時間が長くなり、製造コストの点で問題となる場合がある。その場合には、目的とする濃度よりも低濃度のドープを調製し、その後に目的の濃度とするための濃縮工程を行うことが好ましい。このような方法を用いる際には、濾過装置17で濾過されたドープをバルブ28を介してフラッシュ装置30に送り、このフラッシュ装置30内でドープ中の溶媒の一部を蒸発させる。蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮されて液体となり回収装置32により回収される。回収された溶媒は再生装置33によりドープ調製用の溶媒として再生されて再利用される。この再利用はコストの点で効果がある。
また、濃縮されたドープ27は、ポンプ34によりフラッシュ装置30から抜き出される。さらに、ドープ27に発生した気泡を抜くために泡抜き処理が行われることが好ましい。この泡抜き方法としては、公知の種々の方法が適用され、例えば超音波照射法が挙げられる。ドープ27は続いて濾過装置31に送られて、異物が除去される。なお、濾過の際のドープ27の温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。そしてドープ27はストックタンク41に送られ、貯蔵される。
以上の方法により、TAC濃度が5質量%〜40質量%であるドープ27を製造することができる。より好ましくはTAC濃度が15質量%以上30質量%以下であり、最も好ましくは17質量%以上25質量%以下の範囲とすることである。また、添加剤(主には可塑剤である)の濃度は、ドープ中の固形分全体を100質量%とした場合に1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。なお、TACフィルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特願2004−264464号の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用できる。
[溶液製膜方法]
次に、上記で得られたドープ27を用いてフィルムを製造する方法を説明する。図2はフィルム製造ライン40を示す概略図である。ただし、本発明は、図2に示すようなフィルム製造ラインに限定されるものではない。フィルム製造ライン40には、ストックタンク41、濾過装置42、流延ダイ43、回転ローラ44,45に掛け渡された流延バンド46及びテンタ式乾燥機47などが備えられている。さらに耳切装置50、乾燥室51、冷却室52及び巻取室53などが配されている。
ストックタンク41には、モータ60で回転する攪拌機61が取り付けられている。そして、ストックタンク41は、ポンプ62及び濾過装置42を介して流延ダイ43と接続している。また、濾過装置42と流延ダイ43との間には、紫外線吸収剤溶液ライン54とマット剤液ライン55とが接続されてスタティックミキサ56が設けられている。そして、スタティックミキサ56と流延ダイ43との間はフレキシブル配管57で接続されている。
流延ダイ43の材質としては、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するものも、この流延ダイ43の材質として用いることができ、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いられる。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ43を作製することが好ましい。これにより流延ダイ43内を流延用ドープ58が一様に流れ、後述する流延膜にスジなどが生じることが防止される。流延ダイ43の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流延ダイ43のスリットのクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされている。流延ダイ43のリップ先端の接液部の角部分について、そのRは全巾にわたり50μm以下とされている。また、流延ダイ43内部における剪断速度が1(1/sec)〜5000(1/sec)となるように調整されていることが好ましい。
流延ダイ43の幅は、特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルムの幅の1.01倍〜1.3倍であることが好ましい。また、製膜中の温度が所定温度に保持されるように、この流延ダイ43に温調機を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ43にはコートハンガー型のものを用いることが好ましい。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を流延ダイ43の幅方向において所定の間隔で設け、ヒートボルトによる自動厚み調整機構が流延ダイ43に備えられていることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)62の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フィルム製造ライン40中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて製品フィルムの幅方向の任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、2μm以下に調整することがより好ましい。また、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ43のリップ先端には、硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ43と密着性が良く、ドープとの密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al23 ,TiN,Cr23などが挙げられるが、なかでも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
流延ダイ43のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために溶媒供給装置(図示しない)をスリット端に取り付けることが好ましい。この場合には、ドープを可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部、ダイスリット端部及び外気が形成する三相接触線の周辺部付近に供給することが好ましい。端部の片側それぞれに0.1mL/min〜1.0mL/minで供給することが、流延膜中への異物混合を防止するために好ましい。なお、この液を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
紫外線吸収剤溶液ライン54は、ストックタンク70とストックタンク70内の紫外線吸収剤溶液72とポンプ73とから形成されている。また、マット剤液ライン55は、ストックタンク75とストックタンク75内のマット剤液76とポンプ77とから形成されている。
流延ダイ43の下方には、回転ローラ44,45に掛け渡された流延バンド46が設けられている。回転ローラ44,45は図示しない駆動装置により回転し、この回転に伴い流延バンド46は無端で走行する。流延バンド46は、その移動速度、すなわち流延速度が10m/分〜200m/分で移動できるものであることが好ましい。また、流延バンド46の表面温度を所定の値にするために、回転ローラ44,45に伝熱媒体循環装置80が取り付けられていることが好ましい。流延バンド46は、その表面温度が−20℃〜40℃に調整可能なものであることが好ましい。本実施形態において用いられている回転ローラ44,45内には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラ44,45の温度を所定の値に保持されるものとなっている。
流延バンド46の幅は特に限定されるものではないが、流延用ドープ58の流延幅の1.05倍〜1.5倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、長さは20m〜200m、厚みは0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。流延バンド46は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。また、流延バンド46の全体の厚みムラは0.5%以下のものを用いることが好ましい。
なお、回転ローラ44,45を直接支持体として用いることも可能である。この場合には、回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。この場合には、回転ローラ44,45の表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そこで、回転ローラの表面にクロムメッキ処理などを行い、十分な硬度と耐久性を持たせる。なお、支持体(流延バンド46や回転ローラ44,45)の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であることが好ましい。
流延ダイ43、流延バンド46などは流延室81に収められている。流延室81には、その内部温度を所定の値に保つための温調設備82と、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)83とが設けられている。そして、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置84が流延室81の外部に設けられている。また、流延ダイ43から流延バンド46にかけて形成される流延ビードの背面部を圧力制御するための減圧チャンバ85が配されていることが好ましく、本実施形態においてもこれを使用している。
流延膜86中の溶媒を蒸発させるため送風口90,91,92が流延バンド46の周面近くに設けられている。また、流延直後の流延膜86に乾燥風が吹き付けられることによる流延膜86の面状変動を抑制するため流延ダイ43近傍の送風口90には遮風板93が設けられていることが好ましい。
渡り部100には、送風機101が備えられ、テンタ式乾燥機47の下流の耳切装置50には、切り取られたフィルム102の側端部(耳と称される)の屑を細かく切断処理するためのクラッシャ110が接続されている。
乾燥室51には、多数のローラ111が備えられており、蒸発して発生した溶媒ガスを吸着回収するための吸着回収装置112が取り付けられている。そして、図2においては、乾燥室51の下流に冷却室52が設けられているが、乾燥室51と冷却室52との間に調湿室(図示しない)を設けても良い。冷却室52の下流には、フィルム102の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように調整するための強制除電装置(除電バー)113が設けられている。図2においては、強制除電装置113は、冷却室52の下流側とされている例を図示しているが、この設置位置に限定されるものではない。さらに、本実施形態においては、フィルム102の両縁にエンボス加工でナーリングを付与するためのナーリング付与ローラ114が強制除電装置113の下流に適宜設けられる。また、巻取室53の内部には、フィルム102を巻き取るための巻取ローラ115と、その巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ116とが備えられている。
次に、以上のようなフィルム製造ライン40を使用してフィルム102を製造する方法の一例を以下に説明する。原料ドープ27は、攪拌機61の回転により常に均一化されている。原料ドープ27は、ポンプ62により濾過装置42に送られてここで濾過される。また、紫外線吸収剤溶液71はポンプ72によりストックタンク70内から所望の流量で抜き出されて紫外線吸収剤溶液ライン54内を通液する。マット剤液73もポンプ77によりストックタンク75から所望の流量で抜き出されてマット剤液ライン55内を通液する。
原料ドープ27と紫外線吸収剤溶液71とマット剤液76とが混合されてスタティックミキサ56に送られて、そこで均一混合がなされて流延用ドープとなる。流延用ドープはフレキシブル配管57内を通液して、流延ダイ43に送られる。
図3は、フレキシブル配管57の横断面を示している。フレキシブル配管57は、内周からポリマーパイプ120,ステンレスメッシュ121とから構成されている。さらに、その外周に補強スプリングを巻きつけても良い。ポリマーパイプ120の原料ポリマーはフッ素系樹脂であることが好ましい。例えば、ポリ四フッ化エチレン(PTFE),ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA),四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP),エチレン四フッ化エチレン共重合体(ETFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE),フッ化ビニル(PVF)などが挙げられ、特に好ましくはPTFEである。
フッ素系樹脂の密度も特に限定されるものではない。しかしながら、2g/cm3以上3g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは2.1g/cm3以上2.5g/cm3以下であり、最も好ましくは2.15g/cm3以上2.20g/cm3以下のものを用いることである。
フレキシブル配管57に含有される流延用ドープの溶媒が、1atm,25℃の条件下で20mg/hr/m2以下であることが好ましく、より好ましくは15mg/hr/m2以下であり、最も好ましくは10mg/hr/m2以下である。溶媒含有量を20mg/hr/m2以下とすることで、壁面近傍のドープの変質防止の効果がある。
また、フレキシブル配管57の形態は特に限定されるものではないが、具体的には内径D(mm)が60mm以上90mm以下で、厚みt(mm)が1mm以上3mm以下のものが挙げられる。
流延用ドープの送液流量も特に限定されるものではないが5L/min以上200L/min以下であることが好ましく、より好ましくは10L/min以上150L/min以下であり、最も好ましくは15L/min以上100L/min以下である。
前記各条件を適宜選択することでフレキシブル配管57の横断面積変化が、5%未満でとすることができ、より好ましくは3%未満とし、最も好ましくは1%未満とすることができる。フレキシブル配管57の横断面積変化を5%未満とすることで、ポリマーパイプ120内に流延用ドープ中の成分、特に不溶解なマット剤が付着することが抑制される。なお、本発明においてフレキシブル配管57の横断面積変化とは、以下で定義される値である。フレキシブル配管57の任意の位置で、流延用ドープを通液しない静止状態における横断面積をA1とする。そして、流延用ドープを通液している際のその位置での横断面積をA2とし、(A2−A1)/A1×100%で算出される値である。
ポリマーパイプ120の内面120aの表面粗さの最大高さRy(μm)が、2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.5μm以下であり、最も好ましくは1μm以下である。内面120aの平滑性を高めることにより異物の凝集を防止できる。
フレキシブル配管57の長さも特に限定されるものではないが、2500mm以下であることが好ましく、より好ましくは2300mm以下であり、最も好ましくは2000mm以下である。フレキシブル配管57の長さを2500mm以下とすることで、異物が凝集する箇所を減少させることができる。また、フレキシブル配管57の最小長さは特に限定されるものではないが、あまりに短いとスタティックミキサ56と流延ダイ43とを接続する際に、無理な応力が付加されるおそれがある。また、スタティックミキサ56と流延ダイ43との設置位置の自由度が制限されるおそれがある。そこで、500mm以上であることが好ましい。
流延ダイ43から流延用ドープが流延バンド46上に流延される。回転ローラ44,45の駆動は、流延バンド46に生じるテンションが104N/m〜105N/mとなるように調整されることが好ましい。また、流延バンド46と回転ローラ44,45との相対速度差は、0.01m/min以下となるように調整する。流延バンド46の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド46が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために流延バンド46の両端の位置を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づき流延バンド46の位置制御機(図示しない)にフィードバック制御を行い、流延バンド46の位置の調整を行うことがより好ましい。さらに、流延ダイ43直下における流延バンド46について、回転ローラ55の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以下となるように調整することが好ましい。また、流延室81の温度は、温調設備82により−10℃〜57℃とされていることが好ましい。なお、流延室81の内部で蒸発した溶媒は、コンデンサ83で凝縮液化した後に回収装置84により回収されたる。その後に再生させてドープ調製用溶媒として再利用される。
流延ダイ43から流延バンド46にかけては流延ビードが形成され、流延バンド46上には流延膜86が形成される。流延時の流延用ドープの温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。また、流延ビードを安定させるために、この流延ビードの背面が減圧チャンバ85により所望の圧力値に制御されることが好ましい。ビード背面は、前面よりも−2000Pa〜−10Paの範囲で減圧することが好ましい。さらに、減圧チャンバ85にはジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。減圧チャンバ85の温度は特に限定されるものではないが、用いられている有機溶媒の凝縮点以上にすることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものに保つために流延ダイ43のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。このエッジ吸引風量は、1L/min〜100L/minの範囲であることが好ましい。
流延膜86は、流延バンド46の走行とともに移動し、このときに送風口90,91,92により流延膜86に乾燥風があてられて溶媒の蒸発が促進される。そして、この乾燥風の吹き付けにより流延膜86の面状が変動することがあるが、遮風板93がこの変動を抑制している。なお、流延バンド46の表面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。
流延膜86は、自己支持性を有するものとなった後に、湿潤フィルム94として剥取ローラ95で支持されながら流延バンド46から剥ぎ取られる。剥ぎ取り時の残留溶媒量は、固形分基準で20質量%〜250質量%であることが好ましい。その後に多数のローラが設けられている渡り部100を搬送させて、テンタ式乾燥機47に湿潤フィルム94を送り込む。渡り部100では、送風機101から所望の温度の乾燥風を送風することで湿潤フィルム94の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度が、20℃〜250℃であることが好ましい。なお、渡り部100では下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フィルム94にドローテンションを付与させることも可能である。
テンタ式乾燥機47に送られている湿潤フィルム94は、その両端部がクリップで把持されて搬送されながら乾燥される。また、テンタ式乾燥機47の内部を温度ゾーンに区画分割して、その区画毎に乾燥条件を適宜調整することが好ましい。テンタ式乾燥機47を用いて湿潤フィルム94を幅方向に延伸させることも可能である。このように、渡り部100及び/またはテンタ式乾燥機47で湿潤フィルム94の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を0.5%〜300%延伸することが好ましい。
湿潤フィルム94は、テンタ式乾燥機47で所定の残留溶媒量まで乾燥された後、フィルム102として下流側に送り出される。フィルム102の両側端部は、耳切装置50によりその両縁が切断される。切断された側端部は、図示しないカッターブロワによりクラッシャ110に送られる。クラッシャ110により、フィルム側端部は粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用されるので、この方法はコストの点において有効である。なお、このフィルム両側端部の切断工程については省略することもできるが、前記流延工程から前記フィルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
両側端部を切断除去されたフィルム102は、乾燥室51に送られ、さらに乾燥される。乾燥室51内の温度は、特に限定されるものではないが、50℃〜160℃の範囲であることが好ましい。乾燥室51においては、フィルム102は、ローラ111に巻き掛けられながら搬送されており、ここで蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置112により吸着回収される。溶媒成分が除去された空気は、乾燥室51の内部に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室51は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置50と乾燥室51との間に予備乾燥室(図示しない)を設けてフィルム102を予備乾燥すると、乾燥室51においてフィルム温度が急激に上昇することが防止されるので、これによりフィルム102の形状変化をより抑制することができる。
フィルム102は、冷却室52で略室温まで冷却される。なお、乾燥室51と冷却室52との間に調湿室(図示しない)を設けても良く、この調湿室でフィルム102に対して、所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付けられることが好ましい。これにより、フィルム102のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制することができる。
また、強制除電装置(除電バー)113により、フィルム102が搬送されている間の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)とされる。図2では冷却室52の下流側に設けられている例を図示しているがその位置に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ114を設けて、フィルム102の両縁にエンボス加工でナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸が、1μm〜200μmであることが好ましい。
最後に、フィルム102を巻取室53内の巻取ローラ115で巻き取る。この際には、プレスローラ116で所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフィルム112は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フィルム112の幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果がある。フィルム112の厚みが15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用される。
本発明の溶液製膜方法において、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させることもできる。さらに両共流延を組み合わせても良い。同時積層共流延を行う際には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5%〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合には、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特願2004−264464号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフィルムの性能及びそれらの測定法は、特願2004−264464号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらも本発明にも適用できる。
[表面処理]
前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
さらに前記セルロースアシレートフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。セルロースアシレートフィルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特願2004−264464号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
(用途)
前記セルロースアシレートフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。セルロースアシレートフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特願2004−264464号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルムについての記載もある。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもできる。これらの記載は、本発明にも適用できる。特願2004−264464号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
また、本発明の製造方法により光学特性に優れるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を得ることができる。前記TACフィルムは、偏光板保護フィルムや写真感光材料のベースフィルムとして用いることができる。さらにテレビ用途の液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フィルムとしても使用可能である。特に偏光板の保護膜を兼ねる用途に効果的である。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどに用いられる。また、前記偏光板保護膜用フィルムを用いて偏光板を構成しても良い。
次に、本発明の実施例である実験1及び実験2並びに比較例である実験3を説明する。
[実験1]
[組成]
原料ドープ27の組成を下記に示す。
セルローストリアセテート(置換度2.84、 粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
紫外線吸収剤溶液71の組成を下記に示す。
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−
クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチ
ルエステル混合物) 0.006質量部
マット剤液76の組成を下記に示す。
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05質量部
セルローストリアセテート(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
(1−1)ドープ仕込み
図1に示すドープ製造ライン10を用いて原料ドープ27を調製した。攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製溶解タンク12で前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒の各原料としては、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパ13から徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンク12に投入されて、最初は5m/secの周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌機24及び中心軸にアンカー翼を有する攪拌機22を周速1m/secで攪拌する条件下で30分間分散した。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液(可塑剤溶液)を添加剤溶液タンク14からバルブ19で送液量を調整して、全体が2000kgとなるようにした。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、攪拌機22のアンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液25を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより溶解タンク12内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンク12の内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液25中の水分量は0.3質量%であった。
(1−2)溶解・濾過
膨潤液25を溶解タンク12からポンプ26を用いてジャケット付配管15に送液した。ジャケット付き配管15で膨潤液25を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に溶解された液を温調機16で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置17を通過させドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置17における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(商品名)合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
(1−3)濃縮・濾過・脱泡・添加剤
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置30内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ後の原料ドープ27の固形分濃度は、21.8質量%となった。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置32で回収した。その後に再生装置33で再生した後に溶媒タンク11に送液した。回収装置32,再生装置33では、蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置30のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/secでフラッシュされたドープを攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内におけるドープの平均滞留時間は50分であった。この原料ドープ27を採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(sec-1)で450Pa・sであった。
次に、この原料ドープ27に弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後、ポンプ34を用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置31を通過させた。濾過装置31では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製ストックタンク41内にドープ27を送液して貯蔵した。ストックタンク41は中心軸にアンカー翼を備えた攪拌機61を有しており、周速0.3m/secで常時攪拌を行った。なお、濃縮前ドープから原料ドープ27を調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
また、ジクロロメタンが86.5質量部、アセトンが13質量部、1−ブタノールが0.5質量部の混合溶媒Aを作製した。
(1−4)吐出・直前添加・流延・ビード減圧
図2に示すフィルム製造ライン40を用いてフィルム102を製造した。前述した組成の紫外線吸収剤溶液71をストックタンク70に入れ、マット剤液76をストックタンク75に入れた。
ストックタンク41内の原料ドープ27を高精度のギアポンプ62で濾過装置42へ送った。このギアポンプ62は、ポンプ62の1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプ62の上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプ62は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、吐出圧力は1.5MPaであった。
紫外線吸収剤溶液71をポンプ72で紫外線吸収剤溶液ライン54に送り、マット剤液76をポンプ77でマット剤液ライン55に送った。なお、原料ドープ27,紫外線吸収剤溶液71,マット剤液76の送液流量比は98:1:1(vol%基準)として総送液流量は0.03m3/minとした。その後にスタティックミキサ(エレメント数10個)56で混合して流延用ドープとした。流延用ドープをフレキシブル配管57を介して流延ダイ43に送液した。
フレキシブル配管57のポリマーパイプ120は、内径D(mm)が65mm、厚みt(mm)が1.75mmのPTFEを用いた。また、このPTFEの密度は2.14g/cm3〜2.18g/cm3であり、長さは1515mmであった。内面120aの表面粗さの最大高さRy(μm)は、25μmであった。さらに、その外周に補強スプリング(SUS製)を巻き付けた。
流延ダイ43は、幅が1.8mであり乾燥されたフィルム102の膜厚が80μmとなるように、流延ダイ43の吐出口の流延用ドープの流量を調整して流延を行った。また流延ダイ43の吐出口からの流延用ドープの流延幅を1700mmとした。なお、流延速度は、40m/minとした。流延用ドープの温度を36℃に調整するために、流延ダイ43にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
流延ダイ43と配管とはすべて、製膜中には36℃に保温した。流延ダイ43は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ43には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプ62の送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フィルム製造ライン40に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフィルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
また、流延ダイ43の1次側には、この部分を減圧するための減圧チャンバ85を設置した。この減圧チャンバ85の減圧度は、流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この調整は流延速度に応じてなされる。その際に、流延ビードの長さが20mm〜50mmとなるように流延ビードの両面側の圧力差を設定した。また、減圧チャンバ85は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものを用いた。ダイ吐出口におけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、流延ダイのダイ吐出口の両端には開口部を設けた。さらに、流延ダイ43には、流延ビードの両縁の乱れを調整するためのエッジ吸引装置(図示しない)を取り付けた。
(1−5)流延ダイ
流延ダイ43の材質は、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬
しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ43の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。流延ダイ43のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ43内部での流延用ドープの剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)の範囲であった。また、流延ダイ43のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
さらに流延ダイ43の吐出口には、流出する流延用ドープが局所的に乾燥固化することを防止するために、流延用ドープを可溶化するための混合溶媒Aを流延ビードの両側端部と吐出口との界面部に対し、それぞれ0.5ml/minずつ供給した。混合溶媒を供給するポンプの脈動率は5%以下であった。また、減圧チャンバ85により流延ビード背面側の圧力を前面部よりも150Pa低くした。減圧チャンバ85の内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内には35℃に調整された伝熱媒体を供給した。前記エッジ吸引装置は、1L/min〜100L/minの範囲となるようにエッジ吸引風量を調整することができるものであり、本実施例ではこれを30L/min〜40L/minの範囲となるように適宜調整した。
(1−6)金属支持体
支持体として幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを流延バンド46として利用した。流延バンド46は、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものを用いた。流延バンド46の全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド46は、2個の回転ローラ44,45により駆動させた。その際の流延バンド46の搬送方向における張力は1.5×105 N/m2 なるように調整した。また、流延バンド46と回転ローラ44,45との相対速度差が0.01m/min以下になるように調整した。このときに、流延バンド46の速度変動を0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行が、1.5mm以下に制限されるように流延バンド46の両端位置を検出して制御した。流延ダイ43の直下におけるダイリップ先端と流延バンド46との上下方向の位置変動は200μm以下にした。流延バンド46は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室81内に設置した。この流延バンド46上に流延ダイ43から流延用ドープを流延した。
回転ローラ44,45は、流延バンド46の温度調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ43側の回転ローラ45には5℃の伝熱媒体を流し、他方の回転ローラ44には乾燥のために40℃の伝熱媒体を流した。流延直前の流延バンド46中央部の表面温度は15℃であり、その両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド46には、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であるものを用いた。
(1−7)流延乾燥
流延室81の温度は、温調設備82を用いて35℃に保った。流延バンド46上に流延された流延用ドープから形成された流延膜86には、最初に流延膜86に対して平行に流れる乾燥風を送り、流延膜86を乾燥した。この乾燥風からの流延膜86への総括伝熱係数は24kcal/(m2・hr・℃)であった。乾燥風の温度は、流延バンド46上部の上流側の送風口90からは135℃の乾燥風を送風した。また下流側の送風口91からは140℃の乾燥風を送風し、流延バンド46下部の送風口92からは65℃の乾燥風を送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。流延バンド43上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、この酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。また、流延室81内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)83を設け、その出口温度を−10℃に設定した。
流延後5秒間は乾燥風が、直接に流延ビード及び流延膜86に当たらないように遮風板93を設置して、流延ダイ43近傍の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。流延膜86中の溶媒比率が乾量基準で50質量%になった時点で流延バンド46から剥取ローラ95で支持しながらフィルム(以下、湿潤フィルムと称する)94として剥ぎ取った。なお、この乾量基準による溶媒含有率は、サンプリング時におけるフィルム重量をx、そのサンプリングフィルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。
また剥取テンションは1×102N/m2あり、剥取不良を抑制するために流延バンド46の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。剥ぎ取った湿潤フィルム94の表面温度は15℃であった。流延バンド46上での乾燥速度は、平均60質量%乾量基準溶媒/minであった。乾燥により発生した溶媒ガスは−10℃の凝縮器83で凝縮液化して回収装置84で回収した。回収された溶媒は、水分量が0.5%以下となるように調整した。また、溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。湿潤フィルム94を渡り部100のローラを介して搬送し、テンタ式乾燥機47に送った。この渡り部100では送風機101から40℃の乾燥風を湿潤フィルム94に送風した。なお、渡り部100のローラで搬送している際に、湿潤フィルム94に約30Nのテンションを付与した。
(1−8)テンタ搬送・乾燥・耳切
テンタ式乾燥機47に送られた湿潤フィルム94は、クリップでその両端を固定されながらテンタ式乾燥機47の乾燥ゾーン内を搬送され、この間に乾燥風により乾燥された。クリップは、20℃の伝熱媒体の供給により冷却した。クリップの搬送は、チェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、テンタ式乾燥機47内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,110℃,120℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃における飽和ガス濃度とした。テンタ式乾燥機47内での平均乾燥速度は120質量%(乾量基準溶媒)/minであった。テンタ式乾燥機47の出口ではフィルム102内の残留溶媒量が7質量%となるように、乾燥ゾーンの条件を調整した。テンタ式乾燥機47内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。なお、この延伸前の湿潤フィルム94の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように延伸した。剥取ローラ95からテンタ式乾燥機47の入口に至るまでの延伸率(テンタ駆動ドロー)は102%とした。
テンタ式乾燥機47内での延伸率は、クリップによる噛み込み開始位置から10mm以上離れた位置の任意の2点における各実質延伸率の差異が10%以下であり、かつ20mm離れた任意の2点の延伸率の差は5%以下であった。また、テンタ式乾燥機47の入口から出口までの長さに対する、クリップ挟持開始位置から挟持解除位置までの長さの割合は90%とした。テンタ式乾燥機47内で蒸発した溶媒は−10℃の温度で凝縮させ液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。そして凝縮溶媒は、含まれる水分量が0.5質量%以下に調整されて再使用された。そして、テンタ式乾燥機47からフィルム102として送り出した。
テンタ式乾燥機47の出口から30秒以内にフィルム102の両端の耳切を耳切装置50で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ110に風送して平均80mm2 程度のチップに粉砕した。このチップは、再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際の原料として利用した。テンタ式乾燥機47の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室51で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフィルム102を予備加熱した。
(1−9)後乾燥・除電
フィルム102を乾燥室51で高温乾燥した。乾燥室51を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フィルム102のローラ111による搬送テンションを100N/mとして、最終的に残留溶媒量が0.3質量%になるまで約10分間乾燥した。ローラ111のラップ角度(フィルムの巻き掛け中心角)は、90度および180度とした。ローラ111の材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラ111の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ111の回転によるフィルム位置の振れは、全て50μm以下であった。また、テンション100N/mでのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置112を用いて吸着回収除去した。ここに使用した吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶媒は、水分量を0.3質量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には、溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤,その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却器およびプレアドソーバでこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち、凝縮法で回収する溶媒量は90質量%であり、残りのものの大部分は吸着回収により回収した。
乾燥されたフィルム102を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室51と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フィルム102のカールの発生を抑制する第2調湿室(図示しない)にフィルム102を搬送した。第2調湿室では、フィルム102に直接90℃,湿度70%の空気をあてた。
(1−10)ナーリング、巻取条件
調湿後のフィルム102は、冷却室52で30℃以下に冷却した後に耳切装置(図示しない)で再度両端の耳切りを行った。搬送中のフィルム102の帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)113を設置した。さらにフィルム102の両端にナーリング付与ローラ114でナーリングの付与を行った。ナーリングはフィルム102の片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフィルム102の平均厚みよりも平均12μm高くなるようにナーリング付与ローラ114による押し圧を設定した。
そして、フィルム102を巻取室53に搬送した。巻取室53は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。巻取室53の内部には、フィルム102の帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVとなるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフィルム(厚さ80μm)102の製品幅は、1475mmとなった。巻取ローラ115の径は169mmのものを用いた。巻き始めテンションは300N/mであり、巻き終わりが200N/mになるようなテンションパターンとした。巻き取り全長は3940mであった。巻き取りの際の巻きズレの変動幅(オシレート幅と称することもある)を±5mmとした、巻取ローラ115に対する巻きズレ周期を400mとした。また、巻取ローラ115に対するプレスローラ116の押し圧は、50N/mに設定した。巻き取り時のフィルム102の温度は25℃、含水量は1.4質量%、残留溶媒量は0.3質量%であった。全工程を通しても平均乾燥速度は20質量%(乾量基準溶媒)/minであった。また巻き緩み、シワもなく、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。また、ロール外観も良好であった。
フィルム102のフィルムロールを25℃、55%RHの貯蔵ラックに1ヶ月保管して、さらに上記と同様に検査した結果、いずれも有意な変化は認められなかった。さらにロール内においても接着も認められなかった。また、フィルム102を製膜した後に、流延バンド46上にはドープから形成された流延膜86の剥げ残りは全く見られなかった。
フィルム102の5000m2当たりにおける50μm以上の異物を反射光をあて、目視にて検出した。その後に偏光顕微鏡で異物(リント)を確認して個数を測定したところ10個未満(○)であった。
[実験2]
実験2で用いたフレキシブル配管57は、長さが1620mmであった以外は実験1と同様の形態であった。また、実験条件も実験1と同じで行った。フィルム102の5000m2当たりにおける50μm以上の異物を反射光をあて、目視にて検出した。その後に偏光顕微鏡で異物(リント)を確認して個数を測定したところ10個未満(○)であった。
比較例である実験3で用いたフレキシブル配管のポリマーパイプは、内径が65mm、厚みが1.5mmのPTFEを用いた。また、このPTFEの密度は2.10g/cm3〜2.12g/cm3であり、長さは1515mmであった。内面の表面粗さの最大高さRy(μm)は、4μmであった。また、ステンレスブレードを巻き付けた。それ以外の実験条件は実験1と同じ条件で行った。
フィルムの5000m2当たりにおける50μm以上の異物を反射光をあて、目視にて検出した。その後に偏光顕微鏡で異物(リント)を確認して個数を測定したところ10個以上(×)であった。
本発明に係る溶液製膜方法に用いられる原料ドープを製造する製造ラインの概略図である。 本発明に係る溶液製膜方法を実施するためのフィルム製造ラインの概略図である。 本発明に係る溶液製膜方法に用いられるフレキシブル配管の横断面図である。
符号の説明
40 フィルム製造ライン
56 スタティックミキサ
57 フレキシブル配管
102 フィルム
120 ポリマーパイプ
121 ステンレスメッシュ

Claims (5)

  1. ポリマーと溶媒とを含む原料ドープにマット剤を含む添加液を混合してドープとした後に、
    前記ドープをフレキシブル配管を介して流延ダイに送り、前記流延ダイから支持体に流延して流延膜を形成し、
    前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取りフィルムとする溶液製膜方法において、
    前記フレキシブル配管の前記ドープが通液する方向に直交する面の断面積の変化が、±5%未満であることを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記フレキシブル配管の内面の表面粗さの最大高さRy(μm)が、2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記フレキシブル配管の長さが、2500mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記フレキシブル配管の少なくとも内面が、フッ素系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  5. 前記フレキシブル配管に含有される前記溶媒が、1atm,25℃の条件下で20mg/hr/m2以下であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
JP2005070529A 2005-03-14 2005-03-14 溶液製膜方法 Pending JP2006248136A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005070529A JP2006248136A (ja) 2005-03-14 2005-03-14 溶液製膜方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005070529A JP2006248136A (ja) 2005-03-14 2005-03-14 溶液製膜方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006248136A true JP2006248136A (ja) 2006-09-21

Family

ID=37089110

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005070529A Pending JP2006248136A (ja) 2005-03-14 2005-03-14 溶液製膜方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006248136A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006291079A (ja) * 2005-04-13 2006-10-26 Du Pont Toray Co Ltd 厚みの均一なポリイミドフィルム及びその製造方法
JP2013195499A (ja) * 2012-03-16 2013-09-30 Nippon Zeon Co Ltd 光学フィルムロール及び光学フィルムロールの製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006291079A (ja) * 2005-04-13 2006-10-26 Du Pont Toray Co Ltd 厚みの均一なポリイミドフィルム及びその製造方法
JP4619853B2 (ja) * 2005-04-13 2011-01-26 東レ・デュポン株式会社 厚みの均一なポリイミドフィルム及びその製造方法
JP2013195499A (ja) * 2012-03-16 2013-09-30 Nippon Zeon Co Ltd 光学フィルムロール及び光学フィルムロールの製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4889335B2 (ja) 溶液製膜方法
JP4792357B2 (ja) ポリマーフィルムの製造方法
JP4749741B2 (ja) テンタ式乾燥機及び溶液製膜方法
JP4607795B2 (ja) 溶液製膜方法及び減圧装置
JP4849927B2 (ja) 溶液製膜方法
JP4446915B2 (ja) ドープの製造方法及び装置、並びに製膜方法
JP5042074B2 (ja) 溶液製膜方法及び溶液製膜設備
JP4610507B2 (ja) 溶液製膜方法
JP4833012B2 (ja) ポリマーフイルムの製造方法及び装置
JP4607792B2 (ja) 流延装置、溶液製膜設備および溶液製膜方法
JP2006265405A (ja) セルロースエステルフィルム及びその製造方法
JP2006188052A (ja) 溶液製膜方法
JP2006306052A (ja) 溶液製膜方法
JP4841273B2 (ja) 溶液製膜方法
JP4593329B2 (ja) ドープの製造方法及び装置、並びに製膜方法
JP2007290370A (ja) ポリマーフイルムの製造装置及び製造方法
JP2008260271A (ja) 溶液製膜設備及び溶液製膜方法
JP2008132778A (ja) 積層フイルムの製造方法及びその製造設備
JP2006188048A (ja) 溶液製膜装置及び方法
JP4496114B2 (ja) 溶液製膜方法
JP2006248136A (ja) 溶液製膜方法
JP5192569B2 (ja) ポリマーフイルムの製造方法
JP4764750B2 (ja) 溶液製膜方法
JP2006306029A (ja) ポリマーフイルムの製造方法
JP2006095846A (ja) 溶液製膜方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20070111