ドープを製造するためのポリマーは特に限定されないが、セルロースアシレートが好ましく、セルロースの水酸基の水素へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートがより好ましい。
(I) :2.5≦A+B≦3.0
(II) :0≦A≦3.0
(III) :0≦B≦2.9
ただし、式中のAおよびBは、セルロースの水酸基中の水素がアシル基に置換されている割合を表しており、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22であるアシル基の置換度である。なお、0.1mm以上4mm以下の粒子の割合が、全重量に対して90重量%以上であるセルロースアシレートを用いることが好ましい。
セルロースを構成し、β−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部の水素が、炭素数2以上のアシル基で置換された重合体(ポリマー)である。アシル置換度とは、2位、3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合を意味する。例えば、2位の水酸基が100%エステル化されたときのアシル置換度は1であり、2位、3位、6位すべての水酸基が各100%エステル化されたときのアシル置換度は3となる。
全アシル置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値が、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは、2.22〜2.90であり、特に好ましくは、2.40〜2.88である。また、D6S/(DS2+DS3+DS6)の値が、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。なお、DS2は、グルコース単位において2位の水酸基の水素がアシル基により置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位において3位の水酸基の水素がアシル基により置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合である(以下、6位のアシル置換度と称する)。
セルロースアシレートが有するアシル基は1種類だけでもよく、あるいは2種類以上のアシル基が含まれていてもよい。アシル基が2種類以上のときには、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総数をDSAとし、2位、3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基により置換されている度合いの総数をDSBとすると、DSA+DSBの値が、2.22〜2.90であることが好ましく、より好ましくは、2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特に好ましくは、33%以上である。また、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が、0.75以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.80以上であり特に好ましくは0.85以上である。これらのセルロースアシレートを用いることにより、優れた溶解性のセルロースアシレート溶液を調製することができる。なお、セルロースアシレートは、リンター綿またはパルプ綿のどちらか一方から得られたものでも、両者を混合させたものでも使用することができるが、リンター綿から得られたものが好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが例示される。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
セルロースアシレートを溶かす溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)およびエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
上記のハロゲン化炭化水素においては、炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素や、ジクロロメタンが好ましく用いられる。セルロースアシレートの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度、光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種類ないしは数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して、2質量%以上25質量%以下が好ましく、より好ましくは、5質量%以上20質量%以下である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを用いない溶媒組成も提案されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いる。これらのエーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれか2つ以上を有する化合物も溶媒として用いることができる。溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒を用いる場合には、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
なお、セルロースアシレートの詳細は、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
本発明のセルロースアシレートフイルムの光学特性は、下記の式(IV)および(V)で表されるReレターデーション値、Rthレターデーション値が、それぞれ、下記の式(VI)および(VII)を満たすことが好ましい。
(IV) :Re(λ)=(nx−ny)×d
(V) :Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×d
(VI) :46nm≦Re(630)≦200nm
(VII) :70nm≦Rth(630)≦350nm
式(IV)中のRe(λ)は、波長λnmにおける正面レターデーション値(単位;nm)であり、式(V)中のRth(λ)は、波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位;nm)である。また、nxはフイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフイルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフイルムの厚み方向の屈折率であり、dはフイルムの厚さである。さらに好ましくは、下記の式(VIII)および(IX)を満たすことである。
(VIII) :46nm≦Re(630)≦100nm
(IX) :180nm≦Rth(630)≦350nm
湿度変化や高温下での経時による質量変化や寸法変化に伴い、ReおよびRthの光学特性値は変化するが、ReおよびRthの値の変化は少ないほど好ましい。湿度による光学特性値の変化を少なくするためには、6位アシル置換度の大きなセルロースアシレートや疎水性の各種添加剤(可塑剤,レターデーション制御剤,紫外線吸収剤など)を用いて、フイルムの透湿度や平衡含水率を小さくする。透湿度は、60℃,95%RH24時間で1平方メートル当たり400g以上2300g以下であることが好ましく、平衡含水率は、25℃,80%RHにおける測定値が3.4%以下であることが好ましい。また、25℃における湿度を10%RHから80%RHに変化させたときの光学特性の変化量が、Re値で12nm以下,Rth値で32nm以下であることが好ましい。疎水性添加剤の量は、セルロースアシレートに対して10%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは、12%以上25%以下であり、特に好ましくは、14.5%以上20.0%以下である。さらに、添加剤が揮発性や分解性を有する場合、フイルムの質量変化や寸法変化が発生して、光学特性に変化が生じる。したがって、質量変化量は、80℃,90%RHで48時間経時後において、5%以下であることが好ましく、寸法変化量は、60℃,95%RHで24時間経時後において、5%以下であることが好ましい。また、寸法変化や質量変化が少々あっても、フイルムの光弾性係数が小さいと光学特性の変化量は少なくなる。したがって、フイルムの光弾性係数が、50×10−13 cm2 /dyne以下であることが好ましい。
図1に、本発明におけるセルロースアシレートフイルムの製造工程の流れを示す。本発明でのフイルムの製造工程は、ドープ製造工程12と、流延工程14と、剥取工程16と、乾燥工程18とを有する。
ドープ製造工程12では、セルロースアシレートフイルムの原料となるドープ13を製造する。溶媒とフイルムの主成分であるセルロースアシレートと添加剤とを順次混合して調製したセルロースアシレート溶液を、金属フィルタを有する濾過装置により濾過してドープ13とする。
流延工程14では、このドープ13を走行する支持体の上に流延して流延膜15を形成する。この流延膜15が自己支持性を有するようになった後、これを支持体より連続的に剥ぎ取って、溶媒を含んだ湿潤フイルム17とする。続いて、乾燥工程18で、この湿潤フイルム17から溶媒を蒸発させてセルロースアシレートフイルム(以下、フイルムと称する)19とする。乾燥工程18には互いに異なる条件下で湿潤フイルムを乾燥する第1,第2乾燥工程18a,18bがある。第1,第2乾燥工程における乾燥条件としては、それぞれのエリア毎における温度、湿度、送風の有無、送風条件等がある。
図2に、ドープ製造工程12を実施するドープ製造ライン20を示す。ただし、本発明で用いることができるドープ13の製造方法は、図2に示す形態に限定されない。ドープ製造ライン20は、溶媒タンク21と添加剤タンク22とホッパ23と溶解タンク24と濾過装置25とストックタンク26からなる。ドープ製造ライン20を構成するこれらの各種部材は、複数本の配管によりそれぞれ接続されている。
溶媒タンク21、添加剤タンク22およびホッパ23には、ドープ13を構成する各種材料が、それぞれ供給されてある。溶媒タンク21に貯蔵されている溶媒は、セルロースアシレートを溶解させる。この溶媒としては、例えば、ジクロロメタンを主溶媒とし、これにアルコール類を混合した混合溶媒などを用いる。添加剤タンク22には、フイルムに各種機能を付与するための添加剤が貯蔵されている。この添加剤としては、例えば、可塑剤、レターデーション制御剤、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物)、マット剤(例えば、シリカ粒子)や、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、染料および剥離剤などが挙げられ、目的に応じて適宜選択して用いる。また、ホッパ23には、フイルムの主原料であるセルロースアシレートが供給されている。
前記添加剤が常温で液体の場合には、液体状態のままで溶解タンク24に送り込むことができる。また、前記添加剤が固体の場合には、ホッパを用いて溶解タンク24に送り込むこともできる。なお、複数種類の添加剤を用いる場合には、添加剤タンク22中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておき、適宜バルブ31を調整して送り出してもよいし、用いる添加剤の種類に応じて、これらの添加剤が溶解している溶液を入れた複数の添加剤タンクを用意し、バルブを設けた配管により、各種添加剤タンクと溶解タンク24とを接続させて、前記バルブを調整することで送り込むこともできる。
溶媒、添加剤およびセルロースアシレートを混合する順番は、特に限定されない。本実施形態においては、溶媒と添加剤とセルロースアシレートとをこの順で溶解タンク24に送り込んで混合した形態を示したが、これ以外の方法としては、例えば、所定量のセルロースアシレートを溶解タンク24に送り込んだ後に、所定量の溶媒および添加剤を送り込んでセルロースアシレート溶液を作製することもできるし、あらかじめ溶媒と添加剤とを混合した混合溶液を作製し、この混合溶液とセルロースアシレートとを混合してもよい。また、セルロースアシレートに添加剤を混合したものに溶媒を添加してもよい。
溶解タンク24には、これを覆うようにしてその外周に配されたジャケット32と、モータ33により回転する第1攪拌翼34と、モータ35により回転する第2攪拌翼36が取り付けられている。第1攪拌翼34は、アンカー翼であることが好ましく、第2攪拌翼36は、ディゾルバータイプの偏芯攪拌機を用いることが好ましい。ジャケット32を取り付けることで、伝熱媒体を流す流路が形成される。この流路に温度調整した伝熱媒体を流すことにより、溶解タンク13の内部温度を調整する。このとき、溶解タンク13内は−10℃以上55℃以下の範囲に温度調整することが好ましい。
加熱装置41は、ジャケット付き配管を用いるとともに、膨潤液37を加圧できる機能を有していることが好ましい。加熱装置41は、膨潤液37を所定の温度に保持できる形態であれば、特に限定はされない。このように、膨潤液37を加熱、または加圧加熱条件下に保持することで、溶媒中にセルロースアシレートを充分に溶解させたセルロースアシレート溶液を作製することができる。このとき、膨潤液37の温度は、0℃以上97℃以下であることが好ましい。なお、膨潤液37を−150℃以上−10℃以下の温度に冷却することで、溶媒中にセルロースアシレートを溶解させる冷却溶解法を実施することもできる。このような加熱溶解法、または冷却溶解法を適宜選択して行うと、溶媒中にセルロースアシレートを充分に溶解させることができる。また、加熱装置41の下流には、セルロースアシレート溶液を略室温とするための、温調機43が設けられている。
濾過装置25は金属フィルタを有しており、これにセルロースアシレート溶液を通過させることで、粒径の大きい添加剤やセルロースアシレート、または不純物などの異物を取り除くことができる。金属フィルタに関しては、その材質および孔径などは特に限定はされないが、平均孔径が100μm以下であることが好ましい。
ストックタンク26は、モータ46と連動した攪拌羽47を有し、この攪拌羽47を回転させてドープ13を攪拌し、各種材料が均一に混合している状態を保持する。なお、ドープ13は、泡抜き作業を行うことが好ましい。この泡抜きの方法においては、公知のいずれの方法を適用することができるし、その実施箇所などは、特に限定されない。
ドープ製造ライン20によるドープ13の製造方法を説明する。まず、前記溶媒を溶媒タンク21から溶解タンク24に送り込む。このとき、前記溶媒の量は、バルブ30により調整する。同様に、溶解タンク24に、バルブ31を調整して添加剤タンク22から添加剤を送り込むとともに、ホッパ23から、セルロースアシレートを送り込む。溶解タンク24では、モータ33またはモータ35を適宜選択して、第1攪拌翼34および第2攪拌翼36を回転させて、溶媒中にセルロースアシレートを膨潤させた膨潤液37を作製する。次に、ポンプ40を用いて、膨潤液37を加熱装置41に送液する。温調機43により略室温としたセルロースアシレート溶液を、バルブ44を開けて濾過装置25に送液し、濾過することでドープ13を製造する。このようにして得られたドープ13を、バルブ45によりストックタンク26に送液して、この内部に貯留する。
なお、セルロースアシレートフイルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法および添加方法、濾過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特開2005−104148号の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
図3に、フイルム製造ライン50を示す。フイルム製造ライン50は、流延室51と剥取ローラ52と渡り部53とテンタ式乾燥機54と乾燥室55と巻取室56とを備える。ただし、本発明においては、図3に示す形態に限定されるものではない。
流延室51は、流延ダイ60と、一対の回転ローラ61,62と、流延バンド63と、伝熱媒体循環装置64と、温調設備65と、回収装置66と、減圧チャンバ67と、給気ダクト68〜70とを備える。流延ダイ60の素材は、2相ステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下であることが好ましい。また、その接液面、つまりドープと接する面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下であり、真直度は、いずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは自動調整により0.5mm以上3.5mm以下の範囲とすることができる流延ダイが好ましい。このような流延ダイ60を用いると、より優れた平面性をもつフイルムを得ることができる。流延ダイ60のリップ先端の接液部における角部分のR(面取り半径)は、スリット全巾に亘り50μm以下である。なお、流延ダイ60内での剪断速度は1(1/秒)以上5000(1/秒)以下となるように調整されることが好ましい。
流延ダイ60の幅は特に限定されるものではないが、最終製品となるフイルムの幅の1.0倍〜2.0倍程度であることが好ましい。また、流延ダイ60は、コートハンガー型流延ダイであることが好ましく、厚み調整ボルト(ヒートボルト)が所定の間隔で設けられてあり、ヒートボルトによる自動厚み調整機構が取り付けられることがより好ましい。ヒートボルトはあらかじめ設定されるプログラムにより、ポンプ(例えば、高精度ギアポンプ)48の送液量に応じてプロファイルを設定するが、フイルム製造ライン50中に厚み計(例えば、赤外線厚み計)を設けて、そのプロファイルに基づく調整プログラムによりフィードバック制御されてもよい。なお、流延エッジ部を除く任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値において最も大きな差が3μm以下、厚み精度は±1.5μm以下に調整することが好ましい。
なお、流延ダイ60のリップ先端には、硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではなく、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などの方法を用いればよい。ただし、硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、切削性、耐腐食性に優れ、かつ低気孔率であり脆くない、かつ流延ダイ71と密着性がよく、かつドープ13と密着性が悪いものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al2 O3 ,TiN,Cr2 O3 などが挙げられるが特に好ましくはWCを用いることである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
流延ダイ60のスリット端には、流延されるドープ13が局所的に乾燥固化することを防止するために、溶媒供給装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。より好ましくは、ドープ13を可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビード端部とスリットとの気液界面に供給することである。このとき、供給するポンプの脈動率は5%以下のものを用いることが好ましい。
流延バンド63は、流延ダイ60の下流に設けられた回転ローラ61,62に掛け渡されており、駆動装置(図示しない)により回転ローラ61、62が回転することで、無端で走行する。流延バンド63の移動速度、すなわち流延速度は、10m/分以上200m/分以下であることが好ましい。回転ローラ61,62には、伝熱媒体循環装置64が取り付けられている。また、回転ローラ61,62の内部には、伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、伝熱媒体循環装置64により所定の温度に保持された伝熱媒体を循環させて、回転ローラ61,62を所定の温度に保持することで、流延バンド63の表面温度を所定の値に調整する。このとき、流延バンド63の表面温度は、−20℃以上40℃以下であることが好ましい。
流延バンド63の形状および材質は特に限定されるものではないが、その幅に関しては、ドープ13の流延幅に対して1.1倍以上3.0倍以下の範囲のものを用いることが好ましく、その長さは10m以上200m以下で、厚みは0.3mm以上10mm以下であり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。材質は、ステンレス製とし、充分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。また、流延バンド63の全体の厚みムラは0.5%以下のものを用いることが好ましい。
回転ローラ61,62が駆動する際の流延バンド63に生じるテンションは、1.5×104 kg/mとなるように調整することが好ましい。また、回転ローラ61,62と流延バンド63との相対速度差は、0.01m/分以下となるように調整する。流延バンド63の速度変動は0.5%以下とし、流延バンド63が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は、1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために、流延バンド63の両端を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づきフィードバック制御を行うことがより好ましい。さらに、流延ダイ60直下の回転ローラ61の回転に伴う上下方向の位置変動は、200μm以下に調整することが好ましい。
回転ローラ61,62を直接支持体として用いることもできる。このとき、回転ムラが0.2%以下となるように高精度で回転させるとともに、用いる回転ローラ61,62の表面の平均粗さを、0.01μm以下とすることが好ましい。そこで、クロムメッキ処理などを行い充分な硬度と耐久性を持たせる。なお、支持体(回転ローラ61,62や流延バンド63)の表面欠陥は、最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールは皆無とし、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2 以下とし、10μm未満のピンホールは2個/m2 以下とすることが好ましい。
流延室51には、温調設備65が設けられており、これにより、その内部温度を所定の値に保持する。流延室51の内部温度は、−10℃以上57℃以下であることが好ましい。また、流延膜15から揮発して、流延室51の内部に浮遊している有機溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)71が設けられている。凝縮液化した有機溶媒は、凝縮器71で凝縮した後に、回収装置66により回収して、ドープ調製用溶媒として再生してから再利用する。このように回収溶媒をドープ調整用溶媒として用いた場合には、原料コストの低減を実現することができるので、結果として、生産コストを低下させることができる。
流延時におけるドープ13の温度は、−10℃以上57℃以下であることが好ましい。また、減圧チャンバ67を流延するドープ13の背面付近に設けて、所望の圧力に調整しながら流延することが好ましい。減圧チャンバ67は、特に限定されるものではないが、所定の温度に保つためのジャケット(図示しない)を備えていることが好ましく、その温度が10℃以上50℃以下の範囲に保持されていることが好ましい。
流延膜15は、流延バンド63の走行とともに移動する。このとき、給気ダクト68〜70から乾燥風を吹き付けて、流延膜15中の溶媒を蒸発させる。給気ダクト68〜70の取り付け位置は、特に限定はされないが、例えば、本実施例のように、流延バンド63の上部上流側に給気ダクト68を、下流側に給気ダクト69を配し、流延バンド63の下部に給気ダクト70を設けて乾燥風を吹き付けてもよい。このように流延バンド63の上部の他に、下部から乾燥風を吹き付けると、より効果的に流延膜15を乾燥させることができる。なお、形成直後の流延膜15に乾燥風が吹き付けられることによる膜面の面状変動を抑制するために、遮風装置(図示しない)が設けられていることが好ましい。図3においては、流延膜15の支持体として流延バンド63を用いているが、この形態に限定されるものではなく、例えば、流延ドラムを用いることもできる。このとき、流延ドラムの表面温度は、−20℃以上40℃以下であることが好ましい。
渡り部53には、複数のパスローラ90と送風機(図示しない)とが備えられる。湿潤フイルム17に送風機から乾燥風を送風して乾燥する。このとき、乾燥風の温度は、20℃以上250℃以下であることが好ましい。なお、渡り部53では、下流側のパスローラの回転速度を上流側のパスローラの回転速度より速くすることにより湿潤フイルム17にドローを付与させることも可能である。
テンタ式乾燥機54は、湿潤フイルム17の両側端部を把持する把持部材(例えば、クリップ)と、異なる温度の区画域を有している。テンタ式乾燥機54内部では、湿潤フイルム17の両側端部を前記把持部材で把持して搬送する間に、溶媒を揮発させて乾燥する第1乾燥工程を行う。テンタ式乾燥機54内は、異なる温度の区画域を設けて、乾燥条件を調整しながら乾燥させることが好ましい。渡り部53とテンタ式乾燥機54との少なくともいずれか一方において、流延方向と幅方向との少なくとも1方向に湿潤フイルム17を0.5%以上300%以下の範囲で延伸することが好ましい。上述のように湿潤フイルム17を幅方向に延伸する場合には、その後に緩和することが好ましい。
第2乾燥工程を実施する乾燥室55には、湿潤フイルム17を支持するための複数の支持ローラ82が備えられてある。支持ローラ82は回転自在に搬送路に備えられてある。複数の支持ローラ82の中には、湿潤フイルム17の搬送のために回転駆動用の駆動コントローラが備えられてあるものがある。乾燥室55における湿潤フイルム17の搬送手段は、駆動コントローラが備えられた支持ローラ82に限定されず、これに代えて、または加えて他のものであってもよい。湿潤フイルム17は、乾燥室55で搬送されている間に溶媒が蒸発させて乾燥される。乾燥室55の内部温度は、特に限定されるものではないが、50℃以上180℃以下の範囲であることが好ましい。また、乾燥室55には、吸着回収装置83が取り付けられており、これにより、揮発成分を吸着回収する。揮発成分である溶媒などが除去された大気は、乾燥室55内に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室55は、乾燥温度を変えるために複数に区画されていることがより好ましい。耳切装置80と乾燥室55との間に、予備乾燥室(図示しない)を設けて湿潤フイルム17の予備乾燥を行うことが好ましい。このように予備乾燥室に湿潤フイルム17を送り込むと、湿潤フイルム17の急激な温度上昇を抑制することができるので、これに伴うフイルムの形状変化を防止することができる。
乾燥室55内で湿潤フイルム17を乾燥する際には、その長手方向に対する張力(以下、搬送長力と称する)が0.5×9.8N/m以上10×9.8N/m以下となるようにしてフイルム19を搬送する。ここでの張力の単位「N/m」とは、湿潤フイルム17の幅1mあたりに付与される力(単位N)を意味する。したがって、例えば、湿潤フイルム17の幅が1.5mで、長手方向に0.5×9.8N/mの張力をかけるためには、湿潤フイルム17に1.5×0.5×9.8(N)の引張の力を付与することになる。長手方向における張力は、より好ましくは1×9.8Nm以上9×0.8N/m以下であり、特に好ましくは2×9.8N/m以上8×9.8N/m以下である。長手方向における張力が10×9.8N/mよりも大きい場合には、搬送する力が強すぎるので長手方向または幅方向に湿潤フイルム17が変形しやすい。一方、長手方向における張力が0.5×9.8N/mよりも小さい場合には、搬送する力が弱すぎるために、しわやつれが生じてしまうので、湿潤フイルム17の光学特性が低下してしまう。上記のような張力(テンション)は、ひずみゲージ法を利用したテンションピックアップ装置(図示しない)を、各支持ローラ82間に設置して計測する。なお、張力は、エアシリンダによって荷重制御することができるダンサ(図示しない)により調整することができる。ただし、このテンションピックアップ装置の設置箇所は特に限定はされない。
乾燥室55の内部の支持ローラ82は、長手方向の長さが湿潤フイルム17の幅よりも大きく、長手方向の中央部に関して対称の形状とされている。材質および形態などは、特に限定はされない。
図4に、支持ローラ82の一例の概略図を示す。複数の支持ローラ82のうち、少なくともひとつは、長手方向に異なる径を有する円筒構造または円柱構造であることが好ましい。湿潤フイルム17を支持する範囲における最大外径をD1とし、最小外径をd1としたときに、d1/D1が0.9<d1/D1<0.99の条件を満たし、湿潤フイルム17の幅方向、つまり支持ローラ82の長手方向における中央部を中心にして両端に向かうにしたがい外径が大きくなる鼓型のローラであることが好ましく、コーンケーブローラであることがより好ましい。d1/D1は、より好ましくは0.91<d1/D1<0.98である。ただし、d1/D1の値が0.99よりも大きい場合には、湿潤フイルム17を効果的に巻き掛けることができないので、湿潤フイルム17と前記ローラとの間でずりが発生してしまうために、湿潤フイルム17の形状が変形してしまう。一方で、d1/D1の値が0.9未満の場合には、中央部と中央部よりも径の大きな両端部とは回転したときの周速が大きく異なるために、湿潤フイルム17の中央部から両端に向かってよじれたシワが発生する、搬送が好適に行われなくなる(搬送不良)等の問題が発生することがある。また、乾燥室55では、上流側であるほどフイルム中の溶媒量が多いので、このように、複数の支持ローラ82のうち上流側のものほどコーンケーブローラとすると、より効果的に幅方向への収縮を抑制して乾燥することができる。したがって、複数の支持ローラ82のうち少なくとも最上流のひとつは、コーンケーブローラとすることが好ましい。
乾燥室55の入口、つまり第2乾燥工程開始時における湿潤フイルム17の溶媒含有率は、乾量基準で5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、6重量%以上18重量%以下であり、特に好ましくは7重量%以上15重量%以下である。湿潤フイルム17の溶媒含有率が20重量%よりも多い場合には、乾燥室55内で揮発する溶媒量が多量になるので、湿潤フイルム17が収縮して変形しやすい。一方、湿潤フイルム17の溶媒含有率が5重量%未満の場合には、乾燥室55内で湿潤フイルム17が劣化してしまうおそれがある。なお、湿潤フイルム17の溶媒含有率は、下記の式(X)で表される値とする。
(X) 溶媒含有率(重量%)=(A−B)×100/A
式(X)中において、Aは、サンプリング時における湿潤フイルム17の重量、Bはサンプリングした湿潤フイルム17を110℃で1時間の条件下で熱風乾燥した後の重量(g)である。
乾燥室を出たフイルム19は、冷却室84に搬送され、続いて、冷却室84の下流に設けられる強制除電装置(除電バー)85により帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV以上+3kV以下)とされる。ただし、この強制除電装置85の設置箇所は、本実施形態に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ86を設けて、フイルム19の両縁に、エンボス加工を施してナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸は、1μm以上200μm以下であることが好ましい。
フイルム製造ライン50によるセルロースアシレートフイルム19の製造方法について説明する。まず、ドープ13を、流延ダイ60から、回転ローラ61,62で支持されながら連続的に無端で走行する流延バンド63の上に流延して、流延膜15を形成する。流延膜15が自己支持性を有するものとなった後、剥取ローラ52により支持しながら流延バンド63から流延膜15を連続的に剥ぎ取って、湿潤フイルム17を形成する。その後、湿潤フイルム17を、渡り部53に送り込んで、複数のローラで支持しながら搬送する間に、所定の溶媒量となるまで乾燥してから、テンタ式乾燥機54内部に送り込む。
フイルム19を、第2乾燥工程である乾燥室55へ送り込んで、十分に乾燥する。なお、テンタ式乾燥機54と乾燥室55との間に耳切装置80を設けて、フイルム19の両端を切断する。切断されたフイルム19の両端は、カッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ81に送られ、そこで粉砕されてチップとなる。このチップは、ドープ調製用に再利用することができ、生産コストを低減することができる。このフイルム19の両縁を切断する工程は、省略することもできるが、流延工程14から巻取工程までのいずれかで行うことが好ましい。
乾燥したフイルム19を冷却室84に搬送し、略室温まで冷却する。なお、乾燥室55と冷却室84との間に調湿室(図示しない)を設けてもよい。この調湿室内で、フイルム19に所望の湿度および温度に調整された空気を吹き付けることで、フイルム19上においてカールが発生したり巻取時に巻き取り不良が発生したりするのを抑制することができる。
フイルム19を巻取室56内に送り込み、その内部に備えられている巻取ローラ87で連続的に巻き取る。このとき、プレスローラ88で、所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフイルム19は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とし、幅方向が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。ただし、1800mmより大きい場合にも効果がある。
ただし、本発明では、第1乾燥工程直前の湿潤フイルム17の幅と巻き取られる直前のフイルム19の幅の割合が所定の値となるようにすることが好ましい。すなわち、前記第1乾燥工程で、両側端部を把持した直後の湿潤フイルム17の幅をL1(mm)とし、前記第2乾燥工程終了後であり、巻き取られる直前のフイルム19の幅をL2(mm)とするとき、L2/L1が1.1≦L2/L1≦1.5となるようにすることが好ましい。より好ましくは、1.1≦L2/L1≦1.4であり、特に好ましくは、1.1≦L2/L1≦1.3である。このように、第1,第2乾燥前後でのフイルムの収縮率をできる限り抑制することで、巻取り時における収縮を防止することができる。L2/L1が1.1未満の場合には、充分なレターデーション値を発現させることができないことがある。また、L2/L1が1.5よりも大きい場合には、幅方向への延伸が強すぎてしまうために、しわやつれなどが生じてしまうおそれがある。なお、延伸または緩和を行っている間においては、フイルムの乾燥温度が、50℃以上180℃以下の範囲で略一定に保持されていることが好ましい。
なお、本実施形態では、乾燥室55内の支持ローラ82としてコーンケーブローラを使用した例を説明したが、支持ローラ82の長手方向の長さがフイルム19の幅よりも大きく、かつ幅方向に異なる径を有しており、その長手方向の中央に関して対称の形状とされていればよく、特に限定はされない。例えば、図5に示すような、段差を有する支持ローラ100でもよい。支持ローラ100の最大外径および最小外径にはそれぞれ図4と同じ符号を付し、これらの条件は前述の実施形態の条件と同じであるので、説明を略す。支持ローラ100は、フイルム19の側端部を支持する支持部100aが両縁部に形成されてあり、この両支持部100aの間はフイルムと非接触となる凹部100bが形成されてある。支持部100aの外径と凹部100bの外径とは、支持ローラ100の長手方向においてそれぞれ一定とされてある。支持ローラ100の長手方向における凹部100bの長さL4、つまり両支持部100aの間の長さが10mm以上100mm以下であり、両支持部100aと凹部100bとの段差L5は0.1mm以上20mm以下であることが好ましい。このような支持ローラ100を用いると、フイルム19の幅方向に張力が働くので、幅方向への収縮の発生を抑制しながら搬送することができるとともに、フイルム19と支持ローラ100との接触面積も小さいので、摩擦による面状欠陥の発生を抑制することができる。
流延ダイ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フイルム回収方法まで、特開2005−104148号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフイルムの性能およびそれらの測定法は、特開2005−104148号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
[表面処理]
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。さらに、このセルロースアシレートフイルムをベースフイルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層,硬化樹脂層,反射防止層,易接着層,防眩層および光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m2 以上1000mg/m2 以下含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m2 以上1000mg/m2 以下含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m2 以上1000mg/m2 以下含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m2 以上1000mg/m2 以下含有することが好ましい。
セルロースアシレートフイルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、特開2005−104148号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
(用途)
前記セルロースアシレートフイルムは、特に偏光板保護フイルムとして有用である。セルロースアシレートフイルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすればよい。特開2005−104148号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型,その他の例が詳しく記載されている。この記載は、本発明に適用することができる。また、同出願には光学的異方性層や、反射防止,防眩機能を付与したセルロースアシレートフイルムについての記載もある。さらには、適度な光学性能を付与して二軸性セルロースアシレートフイルムとした光学補償フイルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フイルムと兼用して使用することもできる。特開2005−104148号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。これらの記載は、本発明に適用することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。フイルム製造に使用したドープ13の調製に際しての配合を下記に示す。
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
UV剤a:2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−
クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチ
ルエステル混合物) 0.006質量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05質量部
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
図2に示すドープ製造ライン20を用いてドープ13を調製した。攪拌羽を有する4000Lのステンレス製溶解タンク24で前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒の各原料としては、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパ23から徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンク24に投入されて、最初は5m/秒の周速で攪拌するディゾルバータイプの第2攪拌翼36および、中心軸に第1攪拌翼34としてアンカー翼を用いて、周速1m/秒で攪拌する条件下で30分間分散した。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンク22からバルブ31で送液量を調整して、全体が2000kgとなるようにした。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、第1攪拌翼34の周速を0.5m/秒としてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液37を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより溶解タンク24内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンク24の内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液37中の水分量は0.3質量%であった。
膨潤液37を溶解タンク24からポンプ40により加熱装置41に送り込んで、膨潤液37を50℃まで加熱してから、2MPaの加圧下で90℃まで加熱して完全に溶解させてセルロースアシレート溶液を得た。このときの加熱時間は15分であった。次に、セルロースアシレート溶液を温調機43により36℃まで温度を下げた後で、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置25を通過させドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置25における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。濾過装置25に備えるフィルタなどは、高温にさらされるので、ハステロイ(商品名)合金製で耐食性の優れたものを利用し、かつ保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置(図示しない)内でフラッシュ蒸発させてからドープ13とした。このとき、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ後のドープ13の固形分濃度は、21.8質量%となった。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置(図示しない)で回収した後に、再生装置(図示しない)で再生してから溶媒タンク21に送液した。また、回収装置および再生装置では、蒸留や脱水を行った。前記フラッシュ装置のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/秒でフラッシュされたドープを攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内におけるドープの平均滞留時間は50分であった。このドープ13を採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(秒−1)で450Pa・sであった。
次に、ドープ13に弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施してから、ドープ13の温度を36℃に調整して、2000Lのステンレス製ストックタンク26内に送液して貯蔵した。ストックタンク26では、攪拌羽47として中心軸に備えたアンカー翼を用いて、周速0.3m/秒で常時攪拌を行った。なお、濃縮前ドープからドープ13を調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
図3に示すフイルム製造ライン50を用いてフイルム19を製造した。ストックタンク26内のドープ13を流延ダイ60に送り出した。流延ダイ60は、幅が1.8mであり乾燥されたフイルムの膜厚が80μmとなるように、流延ダイ60の吐出口のドープ13の流量を調整して流延を行った。なお、流延ダイ60の吐出口からのドープ13の流延幅を1700mmとした。また、流延ダイ60からドープ13を供給する際には、ドープ13の温度を36℃に調整した。
流延ダイ60と配管とはすべて、製膜中には36℃に保温した。流延ダイ60は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ60には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。端部20mmを除いたフイルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
また、流延ダイ60の1次側には、この部分を減圧するための減圧チャンバ67を設置した。この減圧チャンバ67の減圧度は、流延ビードの前後で1〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この調整は流延速度に応じてなされる。その際に、流延ビードの長さが20〜50mmとなるように流延ビードの両面側の圧力差を設定した。また、減圧チャンバ67は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものを用いた。ダイ吐出口におけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。流延ダイ60のダイ吐出口の両端には開口部を設けるとともに、流延ビードの両縁の乱れを調整するためのエッジ吸引装置(図示しない)を取り付けた。前記エッジ吸引装置は、1〜100L/分の範囲となるようにエッジ吸引風量を調整することができるものである。
流延ダイ60の材質は、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。流延ダイ60の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。また、流延ダイ60のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けるとともに、このリップ先端での接液部の角部分のRが、スリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。なお、流延ダイ60内部でのドープ13の剪断速度は1〜5000(1/秒)の範囲であった。
流延ダイ60の吐出口には、流出するドープ13が局所的に乾燥固化することを防止するために、ドープ13を可溶化するための混合溶媒A(ジクロロメタンが86.5質量部、アセトンが13質量部、1−ブタノールが0.5質量部)を、流延ビードの両側端部と吐出口との界面部に対して、それぞれ0.5ml/分ずつ供給した。このとき、混合溶媒Aを供給するポンプの脈動率は5%以下であった。また、減圧チャンバ67により流延ビード背面側の圧力を前面部よりも150Pa低くした。なお、本実施例では、前記エッジ吸引装置のエッジ吸引風量を、30〜40L/分の範囲となるように適宜調整した。
風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室51内に設置した支持体上に、流延ダイ60からドープ13を流延した。前記支持体は、幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを流延バンド63として利用した。流延バンド63の材質はSUS316製であり、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下、全体の厚みムラが0.5%以下となるように研磨したものを使用した。流延バンド60は、2個の回転ローラ61,62により駆動させた。このとき、流延バンド60の搬送方向における張力は1.5×105 N/m2 であり、流延バンド63と回転ローラ61,62との相対速度差が0.01m/分以下になるようにそれぞれ調整した。流延バンド63の速度変動を0.5%以下とした。また、1回転の幅方向の蛇行が、1.5mm以下に制限されるように流延バンド63の両端位置を検出して制御した。流延ダイ60の直下におけるダイリップ先端と流延バンド63との上下方向の位置変動は200μm以下にした。
回転ローラ61,62は、流延バンド63の温度調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ60側の回転ローラ61には5℃の伝熱媒体を流し、他方の回転ローラ62には乾燥のために40℃の伝熱媒体を流した。流延直前の流延バンド63中央部の表面温度は15℃であり、その両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド63には、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10〜30μmのピンホールは1個/m2 以下、10μm未満のピンホールは2個/m2 以下であるものを用いた。
流延室51の温度は、温調設備65を用いて35℃に保った。流延バンド63上に流延されたドープ13から形成された流延膜15には、給気ダクト68から流延膜15に対し135℃の乾燥風を平行に吹き付けて乾燥した。また、下流側の給気ダクト69および流延バンド63下部の給気ダクト70からは、順に140℃と65℃の乾燥風を送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。なお、空気を窒素ガスで置換して、流延バンド63上の乾燥雰囲気における酸素濃度を5vol%に保持した。流延室51内に凝縮器(コンデンサ)71を設け、その出口温度を−10℃に設定して溶媒を凝縮回収してから、回収装置67で回収した。回収された溶媒は、水分量が0.5%以下となるように調整した。また、溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。
流延開始から5秒間は、乾燥風が直接に流延ビードおよび流延膜15に当たらないように遮風板(図示しない)を設置して、流延ダイ60近傍の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。流延膜15中の溶媒比率が乾量基準で50質量%になった時点で、流延バンド63から剥取ローラ52で支持しながら湿潤フイルム17として剥ぎ取った。また、剥取テンションは1×102 N/m2 とし、剥取不良を抑制するために、流延バンド63の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)を100.1〜110%の範囲になるように適宜調整した。剥ぎ取った湿潤フイルム17の表面温度は15℃であった。このとき、流延バンド63上での乾燥速度は平均で、60質量%(乾量基準溶媒)/分であった。渡り部53のローラを介して湿潤フイルム17をテンタ式乾燥機54に送った。渡り部53では、送風機(図示しない)から40℃の乾燥風を湿潤フイルム17に送風しながら、湿潤フイルム17の搬送方向に約30Nの張力を付与して搬送した。
テンタ式乾燥機54内では、湿潤フイルム17の両側端部をクリップで固定しながら搬送する間に、乾燥風を吹き付けることで乾燥してフイルム19とした。前記クリップは、20℃の伝熱媒体の供給により冷却した。また、前記クリップの搬送はチェーンで行った。このとき、前記クリップのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。
テンタ式乾燥機54内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,110℃,120℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃における飽和ガス濃度とした。テンタ式乾燥機54の出口ではフイルム19内の残留溶媒量が7質量%となるように、乾燥ゾーンの条件を調整し、平均乾燥速度は120質量%(乾量基準溶媒)/分となるようにして乾燥した。テンタ式乾燥機54内では、延伸前の湿潤フイルム17の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように幅方向に延伸しながら搬送した。剥取ローラ52からテンタ式乾燥機54の入口に至るまでの延伸率(テンタ駆動ドロー)は102%とした。なお、テンタ式乾燥機54では、湿潤フイルム17の両側端部を前記クリップで把持し延伸しながら、揮発成分量が12重量%になるまで乾燥した。
また、テンタ式乾燥機54の入口から出口までの長さに対する、クリップ把持開始位置から把持解除位置までの長さの割合は90%とした。テンタ式乾燥機54内には、凝縮回収用に凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度を−8℃に設定して、蒸発した溶媒を−10℃の温度で凝縮させて(液化)回収した。前記凝縮溶媒は、含まれる水分量が0.5質量%以下に調整されて再使用された。なお、テンタ式乾燥機54内の空気を窒素ガスで置換して、乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。さらに、乾燥室55で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフイルム19を予備加熱した。
テンタ式乾燥機54の出口から30秒以内に、湿潤フイルム17の両端を50mm幅ずつ耳切装置50としてのNT型カッターにより切断した。カットした両端は、カッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ81に送って、平均80mm2 程度のチップに粉砕した。このチップは、再度、ドープ調製用原料としてTACフレークと共に、ドープ13の原料として利用した。
湿潤フイルム17を乾燥室55で高温乾燥した。乾燥室55を4つに区画して、その区画内に複数の支持ローラ82を配して、その区画内に、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。乾燥室55内では、湿潤フイルム17の搬送方向に8kg/mの張力を付与して、最終的に揮発性分量が0.3質量%になるまで約10分間乾燥した。複数の支持ローラ82を、ラップ角度(フイルムの巻き掛け中心角)が90〜180度の範囲となるように搬送路に配した。また、その最上流の支持ローラ82は、図4に示すコーンケーブローラとした。このコーンケーブローラは、D1が100mm、d1が98mm、長手方向の長さWが1800mmであり、材質がアルミ製でその表面にハードクロムめっきされているものである。支持ローラ82の回転によるフイルム位置の振れは、全て50μm以下であった。なお、張力を8kg/mとしたときのローラ撓みは、0.5mm以下となるように選定した。
乾燥風に含まれる溶媒ガスを、吸着回収装置82により吸着回収除去した。このとき吸着剤としては活性炭を使用するとともに、乾燥窒素を用いて脱着を行った。なお、回収した溶媒は、水分量を0.3質量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。前記乾燥風には、溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤,その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却器およびプレアドソーバでこれらを除去して再生循環使用した。また、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち、凝縮法で回収する溶媒量は90質量%であり、残りのものの大部分は吸着回収により回収した。
乾燥したフイルム19を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室55と第1調湿室との間には、110℃の乾燥風を給気した。なお、第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。続いて、カールの発生を抑制する第2調湿室(図示しない)にフイルム19を搬送した。第2調湿室では、フイルム19に直接90℃,湿度70%の乾燥風を給気した。
調湿後のフイルム19を、冷却室84で30℃以下に冷却してから、強制除電装置85により、搬送中のフイルム19の帯電圧が常時−3〜+3kVの範囲となるように調整した。さらに、ナーリング付与ローラ85により、フイルム19の両端にナーリングを付与した。ナーリングは、フイルム19の片側からエンボス加工を行った。このとき、ナーリング付与ローラによる押し圧を、ナーリングを付与する幅を10mmとし、凹凸の高さがフイルム19の平均厚みよりも平均12μm高くなるように設定した。
最後に、フイルム19を巻取室56に搬送して、径が169mmの巻取ローラ87で巻き取った。巻取室56の内部に、イオン風除電装置(図示しない)を設けて、フイルム19の帯電圧が−1.5〜+1.5kVとなるように調整するととともに、室内温度28℃,湿度70%に保持した。巻き取り時のフイルム19の温度は25℃、含水量は1.4質量%、残留溶媒量は0.3質量%であった。このようにして得られたフイルム(厚さ80μm)19の製品幅は、1475mmであり、巻取り全長は3940mであった。このとき、巻き始め時および終了時での張力を、それぞれ順に300N/m、200N/mになるように調整するとともに、巻き取り時での巻きズレの変動幅(オシレート幅と称することもある)を±5mmとし、巻取ローラ87に対する巻きズレ周期を400mとした。巻取ローラ87に対するプレスローラ88の押し圧は、50N/mに設定した。また、全工程を通して平均乾燥速度は20質量%(乾量基準溶媒)/分であった。なお、L2/L1が1.3となるようにした。
〔平面性の評価〕
本実施例において製造したフイルム19の表面を目視にて観察して、しわやつれの有無を観察した。