JP4528231B2 - 溶液製膜設備及び方法 - Google Patents
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Description
セルロースアシレートとしてはトリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACを用いる場合には、その90質量%以上は0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
セルロースアシレートドープの製造設備及び製造方法について以下に説明する。ただし、以下の実施様態は本発明の一例として挙げるものであって、本発明はこの実施様態に限定されるものではない。図1はドープ製造設備の概略図である。ドープ製造設備10には、溶剤を貯留するための第1タンク11と、添加剤を貯留するための第2タンク12と、TACを供給するためのホッパ15と、溶剤とTACと添加剤とを混合するための第3タンク16と、第3タンク16で撹拌されて得られた混合物17を加熱するための加熱装置21と、加熱された混合物17の温度を調整してドープ22が得られる温調装置23と、第1及び第2のろ過装置24,25と、ドープ22の濃度を調整するためのフラッシュ装置27とが備えられている。
次に、ドープ22を用いてフィルム製造をする方法について説明する。図2は溶液製膜設備40を示す概略図であり、図3は流延支持体の幅方向に沿った断面図である。ただし、本発明は、図2に示すような溶液製膜設備に限定されるものではない。溶液製膜設備40は、ドープ22を流延するための流延部81と、流延部81から送られてきたフィルムを乾燥するための乾燥部82と、乾燥されたフィルムを巻き取るための巻取部83とを有している。しかし、これらは設備内で明確に区画されているわけではない。
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフィルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらの性能及び測定法は本発明に適用することができる。
得られるセルロースアシレートフィルムは、その少なくとも一方の面が表面処理されてから、種々の用途に用いられることが好ましい。表面処理としては、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種が好ましい。
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
得られるセルロースアシレートフィルムは、その少なくとも一面に下塗り層がさらに設けられて各種用途に用いられても良い。
製造されるセルロースアシレートフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。セルロースアシレートフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、周知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号公報には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用することができる。また、同出願には光学的異方性層を付与したセルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルムについての記載もある。更には、適度な光学性能を付与した二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもできる。これらの記載内容は、本発明にも適用することができる。特開2005−104148号公報の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
セルローストリアセテート(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチルエステル混合物) 0.006質量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05質量部
セルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
図1に示すドープ製造設備10を用いてドープ22を調製した。攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製第1タンク11で前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒の各原料としては、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパ15から徐々に添加した。TAC粉末は、第3タンク16に投入されて、最初は5m/secの周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯型の第1攪拌機42と中心軸にアンカー翼を有する第2攪拌機45とにより撹拌し、その後、周速1m/secで30分間撹拌して固形分を分散させた。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液を、第2タンク12からバルブ56で送液量を調整して、第3タンク16の内容量全体が2000kgとなるようにした。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌を停止した。そして、第1攪拌機42のアンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液である混合物17を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより第3タンク16内を0.12MPaになるように加圧した。この際の第3タンク16の内部は、酸素濃度が2vol%未満であり、防爆上で問題のない状態とされた。また混合物17中の水分量は0.3質量%であった。
ポンプ51により混合物17を第3タンク16から加熱装置21としてのジャケット付配管に送液した。加熱装置21で混合物17を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、膨潤物質を完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に溶解された液を温調同値23で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する第1ろ過装置24を通過させた。この際、第1ろ過装置24における1次側圧力が1.5MPa、2次側圧力が1.2MPaとなるようにした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(商品名)合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
このようにして得られたドープ22を80℃で常圧とされたフラッシュ装置27内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ後のドープ22の固形分濃度は、21.8質量%となった。凝縮された溶媒は、ドープ製造用の溶媒として再利用すべく回収装置31で回収された。凝縮溶媒は、その後、再生装置32で再生した後に第1タンク11に送液される。回収装置31,再生装置32では、蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置27のタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)が設けられ、フラッシュされたドープ22をその攪拌機により周速0.5m/secで攪拌して脱泡した。このタンク内のドープ22の温度は25℃であり、タンク内におけるドープ22の平均滞留時間は50分であった。このドープ22を採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(sec−1)で450Pa・sであった。
図2に示すフィルム製造設備40を用いてフィルム90を製造した。第4タンク33内のドープ22を高精度のギアポンプでろ過装置(図示せず)へ送った。このギアポンプは、ポンプの1次側を増圧する機能を有している。そして、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプの上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプは容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、吐出圧力は1.5MPaであった。そして、ろ過装置を通ったドープ22を流延ダイ89に送液した。
流延ダイ89の材質は、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の2層ステンレス鋼である。そしてこれは、電解質水溶液での強制腐食試験においてSUS316製と略同等の耐腐食性を有する素材であり、また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有する。流延ダイ89の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。ダイ89のリップ先端の接液部の角部分については、面取り半径Rがスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されている。ダイ89の内部での剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)の範囲であった。また、流延ダイ89のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイド)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
流延支持体86として、幅2.1mで長さ70mのSUS316のエンドレスバンド83を用いた。流延支持体86は、互いに10mm離れた、つまりL=10mmである任意の2点P1,P2を直線で結んだときに、その直線に沿って測定される流延面86aの凹凸の最大値DEが20μmとなるように研磨され、圧縮残留応力が100MPaとなるように熱処理されたものである。2点P1,P2間の凹凸深さの最大値DEは、形状測定機(CONTRACER、(株)ミツトヨ製)またはプロファイルスキャナ((株)東京精密製)にて測定し、残留応力測定及び金属組織解析はX線回折装置にて実施し、また、幅方向における厚みのばらつき測定は超音波厚み計にて実施した。
流延室95の内部を35℃に保った。流延膜87には、最初に、膜面に対し平行に流れる乾燥風を送り、流延膜87を乾燥した。この乾燥風からの流延膜87への総括伝熱係数は24kcal/(m2 ・hr・℃)であった。乾燥風の温度は、流延支持体86上部の上流側の送風装置105からは135℃の乾燥風、下流側の送風装置106からは140℃の乾燥風を送風し、流延支持体86下部の送風装置107からは65℃の乾燥風を送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。流延支持体86上での乾燥雰囲気における酸素濃度については、これを5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するために、空気を窒素ガスで置換した。また、流延室95内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)98を設け、その出口温度を−10℃に設定した。
テンタ122に送られたフィルム90は、クリップでその両端を固定されながらテンタ122の乾燥ゾーン内を搬送され、この間、乾燥風により乾燥される。クリップは、20℃の伝熱媒体の供給により冷却した。テンタ122におけるクリップの搬送はチェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。乾燥風のガス組成は−10℃における飽和ガス濃度とした。テンタ122内での平均乾燥速度は120質量%(乾量基準)/min.であった。テンタ122の出口におけるフィルム90の残留溶媒量が7質量%となるように、乾燥ゾーンの条件を調整した。テンタ122内ではフィルム90を搬送しつつ幅方向における延伸も行った。なお、この延伸前のフィルム90の幅を100%としたとき、延伸後の幅が延伸前の110%となるように延伸した。剥取用のローラからテンタ122の入口に至るまでの延伸率(テンタ駆動ドロー)は102%とした。また、テンタ入口から出口までの長さに対する、クリップ狭持開始位置から狭持解除位置までの長さの割合は90%とした。テンタ122内で蒸発した溶媒は−10℃の温度で凝縮させ液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。そして凝縮溶媒は、含まれる水分量が0.5質量%以下に調整されて再使用された。
フィルム90を乾燥室127で高温乾燥した。乾燥室127を搬送方向に4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フィルム90のローラ126による搬送テンションを100N/mとして、最終的に残留溶媒量が0.3質量%になるまで約10分間乾燥した。ローラ126におけるラップ角(フィルムの巻き掛け中心角)は、90度および180度とした。ローラ126の材質はアルミもしくは炭素鋼であり、表面にはハードクロムメッキが施されてある。ローラ126は、その表面がフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ126の回転によるフィルム位置の振れは、全て50μm以下であった。また、テンション100N/mでのローラたわみは0.5mm以下となるように選定した。
調湿後のフィルム90は、冷却室で30℃以下に冷却した後に、第2耳切装置137により耳切りを行った。搬送中のフィルム90の帯電圧を、常時−3kV〜+3kVの範囲とするために強制除電装置を搬送路に設置した。さらにフィルム90の両端にナーリング付与ローラ138でナーリングの付与を実施した。ナーリングはエンボス加工による。ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフィルム90の平均厚みよりも平均12μm高くなるようにナーリング付与ローラ119による押し圧を設定した。
84,85 バックアップローラ
86 流延支持体
87 流延膜
88 シフト装置
90 フィルム
DE 流延支持体上の2点P1,P2の流延面の高さの差
L 2点P1,P2の距離
Claims (6)
- ステンレス鋼からなる流延支持体にドープを流延し、流延されたドープを剥ぎ取る剥取位置からドープが流延される流延位置に戻るように前記流延支持体が循環して連続走行する溶液製膜設備において、
前記ステンレス鋼はオーステナイト系の結晶構造を有し、前記流延支持体の流延面は、互いに10mm離れた任意の2点を結ぶ直線に沿って凹凸が測定されたときに、その凹凸の深さの最大値DEが40μm以内であることを特徴とする溶液製膜設備。 - 前記流延支持体は、予め、圧縮残留応力が500MPa以下とされたことを特徴とする請求項1記載の溶液製膜設備。
- 前記流延支持体が巻き掛けられて回転するローラ対を有し、
前記ローラ対の一方のローラには、前記流延支持体の搬送方向における張力を調整するように変位するためのシフト機構が備えられることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜設備。 - 流延ダイから流出されたドープを、ステンレス鋼からなり循環して連続走行する流延支持体上に流延してフィルムとして剥がし、前記フィルムを乾燥させ、前記ドープを剥がした前記流延支持体にドープを再び流延する溶液製膜方法において、
前記ステンレス鋼はオーステナイト系の結晶構造を有し、前記流延支持体の流延面は、互いに10mm離れた任意の2点を結ぶ直線に沿って凹凸が測定されたときに、その凹凸の深さの最大値DEが40μm以内であることを特徴とする溶液製膜方法。 - 圧縮残留応力が500MPa以下とされた前記流延支持体を用いることを特徴とする請求項4記載の溶液製膜方法。
- 前記流延支持体の走行方向における張力を50N/mm2 以上200N/mm2 以下とすることを特徴とする請求項4または5記載の溶液製膜方法。
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