JP2007261066A - ポリマーフイルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光軸ズレのないポリマーフイルムを製造する。
【解決手段】ポリマーと溶媒とを含んだドープを支持体上に流延して形成した流延膜を支持体から剥ぎ取って湿潤フイルム21とする。テンタ24では、湿潤フイルム21の両側端部をクリップ101で把持し、レール間隔がフイルム搬送方向に向かって次第に大きくなるよう配置されたレール102に沿ってチェーン100を走行させることで、湿潤フイルム21を幅方向に延伸する。基準チップセンサ106aによりチェーン100の任意の1つに取り付けたセンサチップを検出後、光電式センサ105aにより各クリップ101の通過を順次検出する。各センサから得られる信号を位相差として検出し、その経時変化を読み取ることで、チェーン100の緩みやクリップ101の位置ずれをオンラインで管理する。光軸ズレの発生を抑制し光学特性に優れたフイルム23を得ることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、ポリマーフイルムおよびその製造方法に関するものである。
ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート等のポリマーからなるフイルム(ポリマーフィルム)は、加工性や取り扱い性、あるいは軽量かつ透明性に優れる等の利点から光学フイルムとして使用されている。なかでも、ポリマーとしてセルロースアシレートを使用したセルロースアシレートフイルムは、優れた光学特性を有することから、主に、偏光板保護用フイルムや視野角拡大フイルム等の液晶ディスプレイ用フイルムとして盛んに利用されている。
セルロースアシレートフイルムを代表とするポリマーフイルムの製造方法としては、例えば、フイルムの原料となるポリマーと溶媒とを含んだドープを、走行する支持体の上に流延して流延膜を形成してから、この流延膜を支持体より剥ぎ取って溶媒を含んだフイルム(湿潤フイルム)とする。そして、この湿潤フイルムを搬送しながら乾燥手段を用いて乾燥させてポリマーフイルムとする溶液製膜方法が挙げられる。
一般的に、溶液製膜方法において湿潤フイルムを乾燥させる際には、湿潤フイルムの両側端部を把持する把持手段と、この把持手段が複数取り付けられた無端で走行するチェーンとを備えるテンタが用いられる。テンタでは、湿潤フイルムの両側端部を把持手段により把持した後、チェーンの走行にしたがい湿潤フイルムを搬送し、さらにこの搬送時において、湿潤フイルムの幅方向に所望の張力を付与し延伸させる。これにより、湿潤フイルムの分子配向を制御することができるので、高レタデーション値等の優れた光学特性を示すフイルムを得ることができる。しかし、上記のように湿潤フイルムを延伸させると、付与する張力の大きさやバランス等の違いによりその表面が破れたり、得られるフイルムに光軸ズレが発生したりするおそれがある。
フイルムの光軸ズレを引き起こす原因としては、機械的要因と乾燥状態要因とが挙げられ、例えば、機械的要因としてはテンタが備えるチェーンの伸び(緩み)が考えられる。すなわち、テンタを長時間使用すると、時間の経過に伴いチェーンが劣化したり磨耗したりして、特にチェーンの連結部が伸び(緩み)る場合がある。このように、チェーンの一部に伸びが生じると、湿潤フイルムの搬送バランスが崩れてしまうために、搬送安定性は低下し、さらには、破れや光軸ズレが発生してしまう。そこで、このような問題を解消する方法として、チェーンの劣化や連結部での緩みを監視することにより、搬送安定性や光学特性の低下を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−211396号公報
特許文献1の方法は、チェーンと連動する任意の1個のクリップの検出時刻または時刻に相当する数値をデータとして記憶することにより任意の1個のクリップを検知した後、同様の方法で順次クリップの通過を検出することで、チェーンの経時劣化を判断することができる。しかし、オンラインでチェーンの緩み等を管理することが困難であり、改善が必要である。また、フイルムの光軸ズレが発生する原因は、機械的要因の他に、乾燥状態にも大きく影響を受けることが分かっている(乾燥要因)。そこで、機械的要因と乾燥要因とを考慮して光軸ズレの発生を抑制することができるポリマーフイルムの製造方法の提案が望まれている。
本発明の目的は、テンタにより湿潤フイルムを乾燥させるときに、フイルムの光軸ズレの原因となる機械的要因と乾燥要因との発生を抑制しながら、幅方向への延伸を行うことにより、高レタデーション値を有する等の優れた光学特性を示すポリマーフイルムの製造方法を提案することにある。
本発明のポリマーフイルムの製造方法は、ポリマーと溶媒とを含んだドープを支持体上に流延して形成した流延膜を、支持体から剥ぎ取って湿潤フイルムとした後、無端で走行するチェーンに取り付けられた複数の把持手段により湿潤フイルムの両側端部を把持し搬送する間に、乾燥を促進させるポリマーフイルムの製造方法において、この把持手段の任意の1つを基準把持手段として特定し、基準把持手段が取り付けられているチェーンにセンサチップを設けて、このセンサチップを検知する第1検知装置により、センサチップを検知して基準把持手段の位置を検出し、さらに、把持手段の通過を検知することができる第2検知装置により、把持手段の通過を順次検知した後、第1検知装置から得られる第1の信号および第2検知装置から得られる第2の信号を照合して、経時変化により生じる信号の差を読み取ることにより、湿潤フイルムを搬送する間に生じるチェーンの緩みや把持手段の位置ずれをオンラインで管理しながら、湿潤フイルムを幅方向に延伸させて乾燥する延伸乾燥工程を有することを特徴とする。
この延伸乾燥工程では、圧力測定手段と温度測定手段とを用いて、搬送される湿潤フイルムの周囲における圧力および温度を測定することにより、湿潤フイルムの乾燥状態を把握することが好ましい。また、第1検知装置と第2検知装置とは、いずれも電子制御装置に接続されており、基準把持手段や把持手段の通過をオンラインで検出して得られる第1の信号と第2の信号とを基に、経時変化が生じているチェーンや把持手段の位置を特定して、チェーンや把持手段の位置を常時調整することが好ましい。
また、湿潤フイルムの搬送路に沿って、第1検知装置および第2検知装置を設けることが好ましい。そして、第1検知装置による測定は、最初にセンサチップを検知した開始位置から、再びセンサチップを検知する終了位置までをチェーンの1周期とし、少なくとも1周期分を測定することが好ましい。さらに、ポリマーはセルロースアシレートであることが好ましい。
また、流延膜は、セルロースアシレートを主成分とする基層と、セルロースアシレート以外の素材を主成分とし、基層の外周に設けられる少なくとも1層の外層とを有する複層構造であって、基層を形成するドープと外層を形成するドープとを、流延ダイから支持体上に共流延することで流延膜を形成することが好ましい。そして、外層を形成するドープの粘度(Pa・s)を、40Pa・s以下となるように調整することが好ましい。なお、流延膜の厚みは、10〜400μmであることが好ましい。
本発明のポリマーフイルムは、上記いずれかひとつに記載された製造方法により製造されることを特徴とする。
本発明により、テンタにより湿潤フイルムを乾燥させるときに、フイルムの光軸ズレの原因となる機械的要因と乾燥要因との発生を抑制しながら、幅方向への延伸を行うことができるので、高レタデーション値を有する等の優れた光学特性を示すポリマーフイルムを製造することができる。このポリマーフイルムは、優れた光学特性が要求される液晶表示装置用光学フイルムとしても利用することができる。
以下に、本発明の実施態様について、図を引用しながら詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
図1に、本実施形態に用いるフイルム製造設備10の概略図を示す。本実施形態では、複数種のドープを共流延して複層構造のフイルムを製造する。したがって、フイルム製造設備10には、基層用添加液13が貯留されている第2ストックタンク14と、支持体面用添加液15が貯留されている第3ストックタンク16と、エアー面用添加液17が貯留されている第4ストックタンク18とが備えられている。そして、各添加液を混合して調製した流延用ドープを支持体上に流延して流延膜19を形成する流延室20と、流延膜19を支持体から剥ぎ取って形成した湿潤フイルム21を乾燥する渡り部22と、湿潤フイルム21の乾燥を促進してフイルム23とするテンタ24と、乾燥室30と冷却室31と、乾燥が完了したフイルム23をフイルム製品としてロール状に巻き取る流延室32とが備えられている。また、フイルム製造設備10は、フイルムの原料となる原料ドープ11が貯留されている第1ストックタンク12を介してドープ製造設備120接続されている。なお、ドープ製造設備120による原料ドープ11の製造方法の詳細は、後で説明する。
第1ストックタンク12には、モータ40と、このモータ40に連動する攪拌羽40aとが備えられている。第1ストックタンク12では、モータ40により攪拌羽40aが常時回転駆動しており、これにより貯留される原料ドープ11が攪拌されるため、原料ドープ11に異物の凝集等を発生させることなく長時間の貯留を行うことができる。また、第1ストックタンク12には、基層用ドープ流路43と支持体面用ドープ流路51とエアー面用ドープ流路56とがそれぞれ接続されており、各流路中に取り付けられているポンプにより適宜適量の原料ドープ11が送液される。
第2ストックタンク14に貯留されている基層用添加液13には、あらかじめ添加剤(例えば、紫外線吸収剤、レタデーション制御剤等)を混入した溶液(または分散液)が貯留されている。また、第3ストックタンク16に貯留されている支持体面用添加液15には、支持体である流延バンド63からの剥離を容易とする剥離促進剤(例えば、クエン酸エステル等)や、フイルムをロール状に巻き取った際にフイルム面間での密着を抑制するマット剤(例えば、二酸化ケイ素等)等の添加剤が含まれている。なお、支持体面用添加液15には、上記のほかに、可塑剤や紫外線吸収剤等の添加剤が含まれていてもよい。
第4ストックタンク18に貯留されているエアー面用添加液17には、支持体面用添加液15と同様に、フイルムをロール状に巻き取った際にフイルム面間での密着を抑制するマット剤(例えば、二酸化ケイ素等)等の添加剤が含まれている。ただし、エアー面用添加液17には、上記のほかに、剥離促進剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤が含まれていてもよい。なお、第1ストックタンク12と同様に、第2ストックタンク14、第3ストックタンク16、第4ストックタンク18には、モータに連動する攪拌羽が備えられており、各添加液は常時攪拌されることにより、異物の凝集等の発生が抑制される。
第1ストックタンク12は、基層用ドープ流路43を介して第1スタティックミキサ42と接続されている。原料ドープ11を第1スタティックミキサ42へと送液する際には、ポンプ41により送液量が調整される。この基層用ドープ流路43には、第2ストックタンク14が接続されており、その送液量はポンプ44に調整される。また、第1ストックタンク12には、支持体面用ドープ流路51を介して第2スタティックミキサ52が接続されている。原料ドープ11を第2スタティックミキサ52へと送液する際には、ポンプ50により送液量が調整される。なお、この支持体面用ドープ流路51には、第3ストックタンク16が接続されており、その送液量はポンプ53により調整される。その他にも、第1ストックタンク12には、エアー面用ドープ流路56を介して第3スタティックミキサ57が接続されている。原料ドープ11を第3スタティックミキサ57へと送液する際には、ポンプ56により送液量が調整される。このエアー面用ドープ流路56には、第4ストックタンク18が接続されており、その送液量はポンプ58により調整される。
各スタティックミキサの下流に設けられた流延室20の内部には、フィードブロック60と、調製された各ドープの流延口となる流延ダイ61と、回転ローラ62a,62bに掛け渡された流延バンド63と、送風装置64と、加熱装置65と、流延バンド63から流延膜19を剥ぎ取る剥取ローラ66と、凝縮器(コンデンサ)68と、伝熱媒体循環装置69とが備えられている。また、その外部には、温調設備70と、コンデンサ68に接続された回収装置71とが取り付けられている。なお、流延ダイ61には、その背部周辺を所望の圧力に減圧させる減圧チャンバ73が取り付けられている。
流延バンド63は、駆動装置(図示しない)に回転する回転ローラ62a,62bに伴い無端で走行している。流延バンド63の移動速度(流延速度)は、10〜200m/分であることが好ましい。流延バンド63の表面温度は、伝熱媒体循環装置69により調整される。回転ローラ62a,62bの内部には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、この流路内に所定の温度に調整された伝熱媒体を流し込み、これを伝熱媒体循環装置69により循環させることで、各ローラ62a,62bの表面温度を所望の値に調整する。なお、この表面温度は、−20〜40℃の範囲内で略一定であることが好ましい。
流延バンド63の幅は、特に限定されるものではないが、流延する各ドープの幅に対して1.1〜2.0倍のものを用いることが好ましい。また、その長さが、20〜200m、厚みが0.5〜2.5mm、全体の厚みムラが0.5%以下であり、表面粗さは、0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。なお、流延バンド63は、形成される流延膜19の剥取性や耐久性または耐熱性等を考慮して、ステンレス製であることが好ましく、中でも、十分な耐腐食性と強度とを有するSUS316製であることが好ましい。
送風装置64は、流延バンド63上に形成される流延膜19の搬送方向に対して平行向きに備えられた送風口(図示しない)を有している。そして、この送風口より所望の温度に調整した乾燥風を送り出すことで、流延膜19を乾燥させる。このように、流延膜19の搬送方向に平行な乾燥風を吹き付けると、流延膜19の表面において、乾燥風による厚みムラやしわ等が生じることなく乾燥を促進させることができるので好ましい。また、加熱装置65により、流延バンド63の下部を所定の温度に加熱する。これにより、流延膜19の表面および裏面(支持体面側)から同時に加熱することができるので、流延膜19乾燥をより促進させることができ、結果として、乾燥時間の短縮等を実現させることができる。
流延室20では、温調設備70によりその内部温度が制御されている。また、本実施形態では、凝縮器(コンデンサ)68を設けて、流延膜19の乾燥促進に比例して増大する流延膜19からの揮発溶媒を凝縮液化する。この揮発溶媒は、コンデンサ68から回収装置71へと送られて、ドープ調製用溶媒として再生される。
流延ダイ61に関して説明する。流延ダイ61としては、コートハンガー型のものを用いることが好ましい。その幅は、特に限定されるものではないが、流延するドープの流延幅に対して1.05〜1.5倍の範囲のものであり、最終製品となるフイルム23の幅に対して1.01〜1.3倍程度のものを用いることが好ましい。また、その表面粗さは、0.05μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。材質としては、ジクロロメタンやメタノールと水との混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いることが好ましく、ステンレス製であることが好ましい。より好ましくは、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることであるが、電解質水溶液での強制腐食試験により、SUS316製と略同等の耐腐食性を有するものも好ましく用いることができる。なお、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下である素材を用いると、流延ダイ61への熱ダメージを考慮する必要が低減されるので好ましい。
また、流延ダイ61は、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して作製することが好ましい。これにより、流延ダイ61の内部にドープを円滑かつ一様に流すことができるので、流延膜19にスジ等が発生することを防止することができる。くわえて、流延ダイ61の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。そして、ドープの流延口となるスリットのクリアランスは、自動調整により0.5〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いることが好ましい。その他にも、流延ダイ61のリップ先端の接液部の角部分において、Rがスリット全巾に亘り50μm以下のものを用いることが好ましい。なお、流延ダイ61の内部の剪断速度は、1〜5000(1/秒)となるように調整されているものを用いることが好ましい。
また、流延ダイ61に温調機(図示しない)を取り付けて、その内部の温度が所定の範囲で保持されるように調整することが好ましい。さらに、流延ダイ61の幅方向に、所定の間隔で厚み調整ボルト(ヒートボルト)とこのヒートボルトによる自動厚み調整機構とを取り付けて、あらかじめ設定されるプログラムによりヒートボルトを制御することにより、ポンプ41、50、55の送液量を調整して製膜を行うことが好ましい。このとき、厚み計(例えば、赤外線厚み計)を設けて、このプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行ってもよい。なお、流延エッジ部を除いて任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向での厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ61のリップ先端には、耐摩耗性の向上等を目的として、硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、セラミックスコーティングやハードクロムめっき、および窒化処理方法等が挙げられる。ただし、硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削加工が可能であり、低気孔率、かつ脆性および耐腐食性に優れるとともに、流延ダイ61に対しては密着性に優れるが、一方で流延するドープに対しては密着性に劣るものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)やAl2 3 、TiN、Cr2 3 等が挙げられる。中でも、WCを用いることが好ましい。なお、WCのコーティングは、溶射法で行うことができる。
また、スリット端に溶媒供給装置(図示しない)を取り付けて、流延するドープを可溶化させる溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部及びスリットと外気との両気液界面に供給することが好ましい。これにより、流延ダイ61のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止することができる。可溶化溶媒の供給量は、特に限定されるものではないが、スリット端部の片側ごとに、0.1〜1.0mL/分の範囲で供給すると、流延膜19の内部への異物の混入を防止することができるので好ましい。なお、可溶化溶媒を供給する際には、脈動率が5%以下のポンプを用いることが好ましい。
また、流延ダイ61に取り付けられている減圧チャンバ73により、流延ビードの背面部の減圧度を調整しながらドープを流延することが好ましい。これにより、風の流れ等の影響を受けることなく安定した流延ビードを形成させることができるので、しわやつれ等を発生させずに面状に優れる流延膜19を形成させることができる。このとき、流延ビードの背面は、特に限定されるものではないが、(大気圧−2000Pa)以上(大気圧−10Pa)以下の範囲で減圧することが好ましい。
また、減圧チャンバ73にはジャケット(図示しない)を取り付けて、その内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。減圧チャンバ73の温度は特に限定されるものではないが、使用する溶媒の凝縮点以上にすることが好ましい。くわえて、流延ビードの形状を所望のものに保つため、流延ダイ61のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。このエッジ吸引風量は、1〜100L/分の範囲であることが好ましい。
流延室20の下流には、渡り部22と、テンタ24とが設けられている。渡り部22には、複数のローラ80と乾燥装置81とが備えられており、流延バンド63から剥ぎ取られた流延膜31、すなわち湿潤フイルム21をローラ80で支持しながら搬送する間に、乾燥が促進される。
テンタ24には、湿潤フイルム21の両側端部を把持する把持手段として複数のクリップと乾燥装置(図2参照)とが備えられており、このクリップで湿潤フイルム21を把持し搬送する間に、乾燥装置により乾燥を促進させてフイルム23とする。また、テンタ24では、湿潤フイルム21を幅方向に延伸および緩和させることもでき、これにより、得られるフイルム23の光学特性を所望のものとすることができる。このとき、渡り部22やテンタ24では、湿潤フイルム21の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を0.5〜300%延伸することが好ましい。なお、テンタ24の詳細については、後で説明する。
テンタ24の下流には耳切装置85が設けられている。この耳切装置85には、クラッシャ86が備えられており、耳切装置85により切断されたフイルム23の両側端部は、クラッシャ86に送り込まれて粉砕される。
乾燥室30には、多数のローラ90と吸着回収装置91とが備えられている。さらに、乾燥室30に併設された冷却室31の下流には、強制除電装置(除電バー)92が設けられている。また、本実施形態では、強制除電装置92の下流側に、ナーリング付与ローラ93を設けている。そして、巻取室32の内部には、巻取ローラ95とプレスローラ96とが備えられている。
図2に、本実施形態で使用するテンタ24の概略図を示す。テンタ24には、1対の無端チェーン100a,100bと、このチェーン100に所定のピッチで取り付けられる複数のクリップ(フイルムの把持手段)101と、チェーン100の走行を案内するレール102とが備えられている。そして、テンタ入口24aおよび出口24b付近であり、対称の位置には、チェーン100が巻き掛けられるチェーンスプロケット103が設けられている。このチェーンスプロケット103のうち、テンタ入口24a側の2機には、回転駆動する駆動部(図示しない)が接続されており、この駆動部の回転に連動して無端でチェーン100が走行する。ただし、駆動部を接続させるチェーンスプロケット103は、特に限定されるものではなく、4機のうち、テンタ入口24aまたは出口24b側のどちらか一方であればよい。なお、以下の説明においては、1対のチェーン100のうち、一方を第1チェーン100aとし、もう一方を第2チェーン100bと称する場合があるが、構成ならびに機能は同じである。
渡り部22を介して送られてきた湿潤フイルム21は、テンタ入口24aにおいて、その両側端部がクリップ101により把持される。この後、レール間隔に対応しながら走行されるチェーン100により、湿潤フイルム21が幅方向で伸縮されて横延伸(フイルムの幅方向での延伸)される。そして、テンタ出口24bにおいて、乾燥が促進されたフイルム24はクリップ101による挟持が開放される。
テンタ24の内部は、テンタ入口14aからテンタ出口24bまでの間で、レール間隔が異なるようにレール102が配置された複数の区間により構成される。本実施形態では、フイルム搬送方向に向かってレール間隔が次第に大きくなるように配置されている区間を有する。また、テンタ24の内部に設けられた区画には、所望の温度に調整することができる温度制御装置(図示しない)を設けて、区画ごとに内部の温度を調節しながら乾燥を促進するようにすると、湿潤フイルム21を段階的に乾燥させることができるので、急速な乾燥による平面性の悪化等を抑制することができるので好ましい。
テンタ14の内部には、圧力測定装置と温度測定装置とが備えられており、搬送される湿潤フイルム21の周囲の圧力および温度が、オンラインで常時測定できるようになっている。このようにオンラインで圧力および温度を測定すると、湿潤フイルム21の乾燥過多や乾燥不足等の乾燥状態を常時把握することができるので、光軸ズレの発生を事前に抑制することができたり、平面性に優れるフイルムを得ることができる。ただし、圧力測定装置および温度測定装置は、特に限定されるものではなく、市販のものを使用すればよい。また、各装置の設置箇所は、特に限定されるものではないが、搬送される湿潤フイルム21の中央部付近に設置すると、湿潤フイルム21の周囲における平均的な圧力および温度を測定することができるので好ましい。
また、テンタ出口24aで折り返されたチェーン100の走行路に沿った位置には、光電子センサ105a、105bおよび基準チップセンサ106a、106bが設置されている。光電子センサ105a、105bは、光軸を有する透過型センサであり、基準チップセンサ106a、106bは、所定のセンサチップに反応する反応型センサである。なお、各センサの設置位置は、第1チェーン100aおよび第2チェーン100bともに対称の位置とする。
図3に、本実施形態で用いるチェーン100の拡大図を示す。図3に示すように、チェーン100は、一定のピッチP1により配置された複数の鎖により構成される。そして、このチェーン100の連結部のうち、任意の1つには、基準チップセンサ106a、106bに反応するセンサチップ110が備えられている。また、クリップ設置部101には、一定の間隔P2でクリップ101が取り付けられている。なお、P1およびP2の値は、それぞれ一定であればよく、特に限定されるものではない。
テンタ14において、チェーン100を走行させる間では、光電式センサ105a、105bおよび基準チップセンサ106a、106bにより、センサチップ110およびクリップ101の通過を順次検知する。図4に、図2におけるV−V線での断面図を示す。
ここでは、第1チェーン100aでの検出機構を説明するが、第2チェーン側も同じである。
光電式センサ105aは、光軸105cを有しており、この光軸105cが、開放されたクリップ101の挟持部101aにより遮られる位置に設置されている。これにより、第1チェーン100aの走行にしたがって連続して移動するクリップ101の挟持部101cの通過を、順次検知することができる。また、基準チップセンサ106aは、第1チェーン100aの走行路の上であり、かつ、チェーン100の連結部に取り付けられているセンサチップ110を検知することができる位置に設置されている。そして、チェーン100の走行にしたがい移動するセンサチップ110の位置を検知する。このように、図2に示す箇所に光電式センサ105aおよび基準チップセンサ106aを設置すると、チェーンスプロケット103の駆動と分離して各センサによる対象物の検知を行うことができるので、チェーン100の連結部での緩み等に関して、より精密な測定を行うことができる。ただし、各センサの設置箇所は、本形態に限定されるものではない。なお、図4に示すように、クリップ101は、挟持部101aとクリップ本体101bとからなり、図2に示すV−V線断面図位置付近では、挟持部101aが開放された状態にある。
図5に示すように、第1チェーン側および第2チェーン側に設置されている光電式センサ105a,105bおよび基準チップセンサ106a,106bは、電子制御装置としてAD変換器に接続されており、チェーン100の走行に伴う位相差を経時で測定することができるようになっている。また、このAD変換器はカウンタを内蔵したCPUに接続され、このCPUでは、タイマーにより得られる時間に関する情報と位相差とを同時に処理して、時間と位相差との相関関係を算出する。なお、本発明に適用することができる位相差演算手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、エクセル演算(VBA)が挙げられる。
次に、上記のフイルム製造設備10によりフイルム24を製造する方法の一例を説明する。ただし、本発明は、ここに示す形態に限定されるものではない。
まず、流延用のドープとして、基層用ドープ、支持体面用ドープ、エアー面用ドープをそれぞれ調製する。原料ドープ11を、第1ストックタンク12から基層用ドープ流路43を介して第1スタティックミキサ42へと送液する。このとき、ポンプ41により送液量が調整する。また、第2ストックタンク14から、ポンプ44により送液量を調整しながら、基層用添加液13を第1スタティックミキサ42へと送液する。そして、第1スタティックミキサ42で、送液された各液を攪拌混合することにより均一な基層用ドープを調製する。
また、第2スタティックミキサ52の内部に、第1ストックタンク12から支持体面用ドープ流路51を介してポンプ50により適量の原料ドープ11を送液するとともに、第3ストックタンク16から、ポンプ53により支持体面用添加液15を送液する。そして、第2スタティックミキサ52において、送液した各液を攪拌混合することにより均一な支持体面用ドープを調製する。さらに、第1ストックタンク12から、ポンプ55により適量の原料ドープ11を、エアー面用ドープ流路56を介して第3スタティックミキサ57へと送液するとともに、第4ストックタンク18から、ポンプ58によりエアー面用添加液17を送液した後、第3スタティックミキサ57において、送液した各液を攪拌混合することにより均一なエアー面用ドープを調製する。
基層用ドープ、支持体面用ドープ、エアー面用ドープを、それぞれ所望の流量となるように調整しながらフィードブロック60に送り込む。フィードブロック60の内部で、各ドープが合流した後、各ドープ(エアー面用ドープ、基層用ドープ、支持体面用ドープ)を流延ダイ61から流延ビードを形成させながら流延バンド63の上に共流延して流延膜19を形成する。このとき、各ドープの温度は、−10〜57℃であることが好ましい。なお、流延膜19の厚みは、10〜400μmの範囲内で略一定の値となるようにする。より好ましくは20〜150μmの範囲内で略一定の値とすることであり、特に好ましくは25〜100μmの範囲内で略一定の値とすることである。このように形成される流延膜19の膜厚を調整すると、より短時間で流延膜19を乾燥させることができるとともに、平面性に優れる等の光学特性に優れたフイルムを製造することができる。
本実施形態では、上記のように複数のドープを共流延することにより複層構造の流延膜19を形成する。流延膜19は、基層とこの基層に接するように形成される少なくとも1層の外層とからなる多層構造となるようにする。本実施形態では、基層と、その両側に接する外層として、支持体面側の支持体面層とエアー面側のエアー面層とからなる3層構造の流延膜19を形成する。なお、上記のような複層構造の流延膜19は、各層を形成するドープをそれぞれ用意してから、各ドープを共流延することにより形成すればよい。このように共流延により多層構造の流延膜19を形成すると、製造速度の向上が図れるとともに、凹凸ムラが低減され面状に優れたフイルムを製造することができる。
また、外層を形成するドープの粘度(Pa・s)は、40Pa・s以下となるように調整する。これにより、外層となる層が基層よりも早く乾燥されて基層を保護する効果を得ることができるので、基層の内部で溶媒が発泡するのを抑制することができる。ただし、外層を形成するドープの粘度が40Pa・sよりも大きいと、流延膜19の表面には凹凸ムラが生じやすくなったり、流延速度が遅くなったりしてしまうので、製造時間が延長されてしまう等の問題が生じる。
流延バンド63の速度変動は、0.5%以下とし、流延バンド63が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は、1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために、本実施形態では、流延バンド63の両端の位置を検出する検出器(図示しない)を設けて、その測定値に基づき、流延バンド63の位置制御機(図示しない)によりフィードバック制御を行うことで、流延バンド63の位置調整を行う。そして、流延ダイ61直下では、流延バンド63の変動が流延ビードに伝達することを抑制するために、回転ローラ62aの回転に伴う上下方向の位置変動を200μm以下となるように調整することが好ましい。なお、流延室20の内部温度は、温調設備70により−10〜57℃の範囲で略一定とされていることが好ましい。
送風装置64と加熱装置65とを用いて、流延バンド63上に形成された流延膜19の乾燥を促進する。本実施形態では、加熱装置65としてヒータを用い、この温度(裏面乾燥温度)を40〜80℃の範囲内で略一定となるように調整しながら流延膜19を乾燥する。より好ましくは、流延バンド63の裏面からの乾燥温度(裏面乾燥温度)を50〜70℃の範囲内で略一定となるように調整することである。これにより、流延膜19の表面側からの乾燥風と裏面側からの加熱により、流延膜19を表裏面から同時に乾燥することができるので、乾燥をより促進させることができる。
流延膜19の乾燥が促進して自己支持性を有するものとなった後、この流延膜19を剥取ローラ66により流延バンド63から剥ぎ取って湿潤フイルム21を形成する。この剥ぎ取り時の残留溶媒量は、固形分基準で10〜200質量%となるようにする。そして、湿潤フイルム21を渡り部22に送り込み、複数のローラ80で支持しながら搬送する間に、乾燥装置81から所望の温度に調整した乾燥風を吹き付けて湿潤フイルム21の乾燥を促進させる。なお、乾燥風の温度は、20〜250℃で略一定であることが好ましい。また、渡り部22では、下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより、湿潤フイルム21に張力を付与することもできる。
なお、本発明における流延膜19の残留溶媒量とは、流延膜19中の主溶媒の残留溶媒量であり、流延膜19中に多種の溶媒が存在する場合には、流延膜19にもっとも多量に含まれる溶媒を主溶媒とみなす。この残留溶媒量は乾量基準でのものであり、サンプリング時におけるフイルム重量をx、そのサンプリングフイルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。ただし、乾量基準とは、ドープを完全に乾燥して固化したときの重量を100%とした際の溶媒の含有量とする。
続いて、乾燥が促進された湿潤フイルム21をテンタ24に送り込む。テンタ入口24a付近で、クリップ101により湿潤フイルム21の両側端部を把持した後、所定のレール間隔で配置されたレール102にしたがいチェーン101を走行させるにしたがい、湿潤フイルム21を幅方向に延伸させる。このとき、テンタ24の内部を複数に区画して、区画毎に異なる乾燥温度にする等乾燥条件を調整しながら乾燥することが好ましい。これにより、適当な乾燥温度の中で伸縮制御を行うことができるので、平面性を悪化させたり、破断したりすることなく作業を行うことができる。なお、渡り部22やテンタ24では、湿潤フイルム21の搬送方向と幅方向との少なくとも1方向を、0.5〜300%程度に延伸することが好ましい。
テンタ24において湿潤フイルム21を延伸している間は、乾燥温度を略一定に保持することが好ましい。これにより、乾燥温度による延伸への影響を低減することができるので、湿潤フイルム21が過度に伸縮されるのを抑制することができる。なお、本実施形態では、乾燥装置としてクリップを有するテンタ24を示したが、搬送させるフイルムの両側端部を把持することができる把持手段を有するものであれば特に限定されるものではない。
テンタ24により得られるフイルム23は、フイルム23の波長λnmにおける正面レタデーション値をRe(nm)とし、波長λnmにおける膜厚方向のレタデーション値をRth(nm)とするとき、10≦Re≦100であり、50≦Rth≦300の高レタデーション値を示す。なお、Reは、フイルム23の面内の遅相軸方向(搬送方向)の屈折率をnx、フイルム23の面内の進相軸方向(幅方向)の屈折率をny、フイルム23の膜厚をd(nm)とするとき、Re(λ)=(nx−ny)×dで表される数値とする。そして、Rthは、フイルム23の厚み方向での屈折率をnzとするとき、Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×dで表される数値とする。
乾燥が進行したフイルム23を耳切装置85に送り込み、その両側端部を切断する。なお、フイルム23の両側端部を切断する本処理は省略することもできるが、流延室20から巻取室32までのいずれかで行うことが好ましい。本実施形態のように、テンタ24の下流側に耳切装置85を設けて切断処理を行うと、延伸させる際にクリップで把持される等して傷付いたフイルム23の両側端部を切断して、傷の無い平面性に優れるフイルム23とすることができるので好ましい。
乾燥室30では、フイルム23を多数のローラ90に支持しながら搬送する間に乾燥を促進させる。乾燥室30の内部温度は、特に限定されるものではないが、フイルム23の膜温度が60〜145℃となるように調整すると、フイルム23を構成するポリマーの熱ダメージを抑制しながらも、溶媒を効果的に揮発させることができる。なお、フイルム23の溶媒が蒸発することにより生成した溶媒ガスは、吸着回収装置91により回収し、溶媒成分を除去した後、再度、乾燥室30の内部に乾燥風として送風する。
十分に乾燥させたフイルム23を冷却室31に送り込み、略室温となるまで冷却する。なお、乾燥室30と冷却室31との間に調湿室(図示しない)を設けて、フイルム23を調湿した後、冷却室31に送り込むようにすると、しわやつれ等を矯正することができ、平面性に優れるフイルム23を得ることができるので好ましい。
強制除電装置92により、フイルム23の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3〜+3kV)となるように調整する。なお、図1では、強制除電装置92の設置箇所を、冷却室31の下流側とする形態を示しているが、この位置に限定されるものではない。また、ナーリング付与ローラ93により、フイルム23の両側端部にエンボス加工を施してナーリングを付与させる。これにより、平面性に優れるフイルム23を得ることができる。
最後に、プレスローラ96により巻き取り時の張力を調整しながら、フイルム23を巻取ローラ95に巻き取る。なお、巻取り時の張力は、巻取開始時から終了時までの間で徐々に変化させることがより好ましい。巻き取るフイルム23は、搬送方向に少なくとも100m以上とすることが好ましく、幅方向が1400〜1800mmであることが好ましい。ただし、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果を得ることができる。また、フイルム23の厚みは、特に限定はされないが、15〜100μmの薄いフイルム23を製造する際にも本発明の効果を得ることができる。
本発明では、テンタ24において、AD変換器に接続されている光電式センサ105a,105bおよび基準チップセンサ106a,106bにより、チェーン100に取り付けられたセンサチップ110およびクリップ101の通過を常時測定する。そして、各センサにより測定されるセンサチップ110およびクリップ101の通過に関する信号から、オンラインでAD変換器に送られて位相差へと変換されることで得られる時間と位相差との相関関係を把握する(図6参照)。なお、測定の際には、基準チップセンサ106a,106bにより、最初にセンサチップ110を検知したときを開始位置とし、再び、センサチップ110を検知するときを終了位置として、これを1周期分としてカウントする。
図6に、光電式センサ105a,105bおよび基準チップセンサ106a,106bにより得られる信号の一例を示す。横軸は時間であり、縦軸は、各センサから得られる信号(位相差)である。上記でも説明したように、本発明では、チェーン100を走行させている間、センサによるチェーン100およびクリップ101の通過状態を常時測定し、得られる信号をAD変換器により位相差に変えて、これをオンラインで管理する。チェーン100のピッチP1(図3参照)が正常の場合には、第1チェーン100aおよび第2チェーン100bの走行により得られる信号は一定の規則性を示し、B1とB3およびB2とB4との大きさおよび、測定開始位置は同じとなる。ところが、チェーン100を駆動中、チェーン100の連結部に緩み等の経時変化が生じた場合には、図6に示すように、その緩みがセンサチップ110やクリップ101の通過の遅延等として現れ、検出される信号の開始位置にズレが生じる。図6では、第2チェーン100bの連結部に緩みが生じた場合を示す。ただし、本発明では、複数のクリップ101の任意の1つにセンサチップ110を設けて、これを基準位置として検出し、さらに、光電式センサ105a,105bを設けてクリップ101の通過を順次測定するようにしたので、第1チェーン側との間の時間差Aから位相ズレを算出することにより、位置ズレが生じているチェーン100の連結部やクリップ101の位置を特定することができる。
本発明での、チェーンの緩み等の検出機構を説明する。図7は、各センサにより位置ズレを検出する際のフローチャートである。光電式センサ105a,105bおよび基準チップセンサ106a,106bにより、チェーン100やクリップ101の緩み等を検出する場合、まず、走行するチェーン100の中から、基準チップセンサ106a,106bによりセンサチップ110を検出する。そして、基準チップセンサ106a,106bによりセンサチップ110の通過を確認した後、光電式センサ105a,105bにより、クリップ101の通過を順次検出する。この後、再び、センサチップ110を検出するまで、光電式センサ105a,105bにより、第2〜第n番目のクリップ101をカウントする。このとき、得られる位相差の経時変化をオンラインで確認し、クリップ101ならびにチェーン100の連結部等での緩みの有無を確認する。
位相差ズレを確認した場合には、時間差やピッチの順番等を照合して、位相差ズレが生じているチェーン100やクリップ101の位置を特定する。次に、位相差ズレの大小を判定し、フイルム製品の特性として問題ない程度(ボーダー値以下)であれば、各センサによる測定を継続する。そして、あらかじめチェーン100に取り付けられたクリップ101の数(第n番目)をカウントした時点を1周期分として、継続して測定を行う。ただし、測定中、位相差ズレが確認されない場合には、第n番目までの測定を継続して行う。また、確認された位相差ズレがボーダー値を上回り、フイルム製品に影響を及ぼす場合には、アラームを発令して、チェーン100の駆動を停止させる。そして、緩み等のズレが生じているチェーン100やクリップ101を直ちに修正し、光軸ズレの発生をできる限り防止する。
なお、回転ローラ62a,62bを支持体として用いることもできる。この場合には、回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましく、回転ローラ62a,62bの表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そのために、回転ローラの表面にクロムめっき処理等を行い、十分な硬度と耐久性を持たせるようにする。なお、回転ローラ62a,62bや流延バンド63を支持体とする場合、これらの支持体の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、表面欠陥として30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールが1個/m以下であり、10μm未満のピンホールが2個/m以下であることが好ましい。
また、耳切装置85と乾燥室30との間に予備乾燥室(図示しない)を設けて、フイルム23を予備乾燥すると、乾燥室30においてフイルム23の膜面温度が急激に上昇することによる形状変化等を抑制することができるので好ましい。
次に、本発明に用いる原料ドープ11の調製方法について説明する。図8は、本実施形態に用いるドープ製造設備120の概略図である。なお、本発明は、ここに示す形態に限定されるものではない。
ドープ製造設備120は、溶媒を貯留している溶媒タンク121と、原料ドープ11を構成する溶媒やTAC等を混合する溶解タンク122と、TACを供給するホッパ123と、添加剤を貯留している添加剤タンク124とが備えられている。また、後述する膨潤液125を加熱するための加熱装置126と、調製された原料ドープ11の温度を調整する温調機127と、この原料ドープ11中の異物を取り除く第1濾過装置128と、調製された原料ドープ11を濃縮するフラッシュ装置129と、第2濾過装置130と、溶媒を回収する回収装置131と、回収された溶媒を再生する再生装置132とが備えられている。なお、図1に示して説明したようにドープ製造設備120は、第1ストックタンク12を介してフイルム製造設備10と接続されている。
次に、このドープ製造設備120を用いて原料ドープ11を調製する手順を説明する。まず、原料ドープ11を構成する材料を、適宜、溶解タンク122に適量ずつ送り込む。溶解タンク122には、その外面を包み込むジャケット135と、モータ136により回転する第1攪拌機137と、モータ138により回転する第2攪拌機139とが備えられている。そして、溶媒タンク121からは、バルブ140を開いて適量の溶媒を溶解タンク122に送り込み、さらに、ホッパ123からは適量のTACを送り込み、添加剤タンク124からはバルブ141を開いて適量の添加剤溶液を、それぞれ溶解タンク122に送り込む。なお、原料ドープ11を構成する材料に関しては、後で説明する。
溶解タンク122は、ジャケット135の内部に伝熱媒体を流すことにより、その内部温度が適温となるように調整されている。このとき、内部温度は、−10〜55℃であることが好ましい。そして、第1攪拌機137および第2攪拌機139を適宜選択して回転させることにより、内部に送り込まれた各原料を攪拌させて、TACを溶媒中に膨潤させた膨潤液125が得られる。なお、第1攪拌機137は、アンカー翼が備えられた形態を用いることが好ましく、第2攪拌機139は、ディゾルバータイプの偏芯型撹拌機を用いることが好ましい。
次に、溶解タンク122で調製された膨潤液125を、ポンプ150により送液量等を調整しながら加熱装置126に送り込む。加熱装置126は、ジャケット付き配管であることが好ましく、さらに、膨潤液125を加圧可能な形態であることが好ましい。このような形態の加熱装置126を用いると、加熱または加圧加熱条件下で膨潤液125中の固形分を溶解させて、溶解度に優れる原料ドープ11を得ることができる。以下、この方法を加熱溶解法と称する。なお、加熱装置126により、膨潤液125の温度を、50〜120℃とすることが好ましい。ただし、膨潤液125を−100〜−30℃に冷却する冷却溶解法を行うこともできる。このような加熱溶解法または冷却溶解法を、適宜選択して、単独あるいは複合させることにより、TACを溶媒に充分溶解させることができる。
温調機127により、原料ドープ11を略室温とした後に、第1濾過装置128により濾過して原料ドープ11中に含まれる不純物を取り除く。第1濾過装置128に使用される濾過フィルタは、平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、濾過流量は、50L/時以上であることが好ましい。濾過後の原料ドープ11は、バルブ151を介して第1ストックタンク12に送り込まれ、ここに貯留される。
上記のように、膨潤液125を調製してから原料ドープ11を作製する方法は、TACの濃度を上昇させるほど、要する時間が長くなるため、製造コストの増大等の問題を引き起こすおそれがある。そこで、この問題を改善するために、上記のような方法を用いる場合には、目的とする濃度よりも低濃度の原料ドープ11を調製した後、濃縮させることにより所望の濃度の原料ドープ11を調整することが好ましい。この場合には、第1濾過装置128で濾過された原料ドープ11を、バルブ151を介してフラッシュ装置129に送った後、このフラッシュ装置129内で原料ドープ11中の溶媒の一部を蒸発させればよい。これにより、所望の濃度に濃縮された原料ドープ11を製造することができる。なお、蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮液化した後、回収装置131により回収し、さらに、再生装置132により再生することが好ましい。そして、この再生した溶媒をドープ調製用溶媒として再利用すると、製造コスト低減の効果を得ることができる。
濃縮した原料ドープ11は、ポンプ152によりフラッシュ装置129から抜き出されて第2濾過装置130に送られる。このとき、原料ドープ11中の気泡を抜くために、泡抜き処理を行うことが好ましい。この泡抜き処理の方法としては、公知の種々の方法(例えば、超音波照射法)を適用することができ、特に限定はされない。そして、第2濾過装置130により、原料ドープ11に含まれる異物が除去されて流延用の原料ドープ11を得ることができる。ただし、濾過時の原料ドープ11の温度は、0〜200℃であることが好ましい。濾過後、原料ドープ11は、第1ストックタンク12に送り込まれ、そこで貯留される。第1ストックタンク12には、モータ40により回転する攪拌羽40aが取り付けられており、攪拌羽40aを常時回転させることにより、原料ドープ11の品質を均一に保持している。なお、第1ストックタンク12の詳細は、フイルム製造設備10(図1参照)を示して既に説明したので、ここでは割愛する。
以上により得られる原料ドープ11中のTAC濃度は、5〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは、TAC濃度が15〜30質量%であり、特に好ましくは、17〜25質量%である。また、添加剤(主に可塑剤)の濃度は、原料ドープ11中の固形分全体に対して、1〜20質量%とすることが好ましい。なお、TACフイルムを製造する溶液製膜法における原料ドープ11の製造方法(例えば、素材、原料、添加剤の溶解方法および添加方法、濾過方法、脱泡等)については、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
なお、溶解タンク122に添加剤を送り込む際、本実施形態では、添加剤溶液として送り込む方法を示したが、この形態に限定されるものではない。例えば、添加剤が常温で液体の場合には、液体状態のままで溶解タンク122に送り込んでもよいし、添加剤が固体の場合には、ホッパ等を用いて添加剤を粉砕しながら溶解タンク122に送り込んでもよい。また、添加剤を複数種類用いる場合には、添加剤タンク124の中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできるし、添加剤が溶解している溶液を貯留した多数の添加剤タンクを用いて、それぞれ独立した配管により、別途溶解タンク122に送り込むこともできる。
以下、本発明において原料ドープ11を調製する際に使用する原料について説明する。
本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでもよいが、リンター綿から得られたものが好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼン等)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコール等)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトン等)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピル等)およびエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブ等)等が挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度および光学特性等の物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25質量%が好ましく、より好ましくは、5〜20質量%である。アルコールとしては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノール等が挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶媒組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステルおよびアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステルおよびアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レタデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤等の添加剤についても、同じく特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
本発明の溶液製膜方法では、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させるようにする。ただし、両共流延を組み合わせて用いることもできる。同時積層共流延を行う際には、図1に示すようにフィードブロック60を取り付けた流延ダイ61を用いてもよいし、マルチマニホールド型の流延ダイを用いてもよい。共流延により多層からなるフイルムは、空気面側の層の厚さおよび/または支持体側の層の厚さがそれぞれ全体のフイルム厚さ中で0.5〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープを低粘度ドープで包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合に、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に内部のドープは、そのドープよりもアルコールの組成比が大きなドープで包み込まれることが好ましい。
本実施形態では、3種類のドープを共流延してフイルムを製造したが、このように複数のドープを用いて共流延すると、所望の特性を有するフイルム23を製造しやすい。例えば、本実施形態のようにフイルム23をロール状に巻き取る場合には、フイルム面間での密着を防止する必要がある。密着を防止するためにはドープ中にマット剤を添加することが好ましいが、マット剤を添加すると、フイルムにおいて光学特性の悪化(例えば、透明性の悪化等)を招く。しかし、本実施形態のように、基層用ドープを除く支持体面用ドープとエアー面用ドープとにマット剤を含有ると、フイルムの表裏面となる層にのみマット剤を含有させることができるので、密着性を低下させながらも、所望の光学特性のフイルムを得ることできる。
流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フイルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフイルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[1073]段落から[1087]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
[表面処理]
前記セルロースアシレートフイルムにおいては、少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が下塗りされていてもよい。
さらに、前記セルロースアシレートフイルムをベースフイルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層としては、帯電防止層,硬化樹脂層,反射防止層,易接着層,防眩層および光学補償層のうち、少なくとも1層を設けることが好ましい。
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましく、少なくとも一種の滑り剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましく、少なくとも一種の帯電防止剤を1〜1000mg/m含有することが好ましい。セルロースアシレートフイルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1072]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
本発明により得られるフイルムの用途について説明する。本発明により得られるフイルムは、高レタデーション値を有し、透明性に優れている。そのため、特に、偏光板保護フイルムとして有用である。なお、このフイルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を液晶層に2枚貼ることにより作製した液晶表示装置は、液晶表示能力に優れる等の特長を示す。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号公報(例えば、[1088]段落から[1265]段落)には、液晶表示装置として、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型、その他の例が詳しく記載されており、この方法も本発明に適用させることができる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフイルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフイルムについての記載や、適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフイルムとして光学補償フイルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フイルムと兼用して使用することもできる。これらの記載も、本発明に適用させることができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
原料ドープ11を製造する際に使用した各種材料および質量部を下記に示す。
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 20質量部
酢酸メチル 58質量部
アセトン 5質量部
メタノール 5質量部
エタノール 5質量部
ブタノール 5質量部
可塑剤A(ジトリメチロールプロパンテトラアセテート) 1.2質量部
可塑剤B(トリフェニルフォスフェート) 1.2質量部
本実施例で使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また、6位のアシル置換度は0.91であり、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基が置換されたアセチル基であった。加えて、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。なお、このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
次に、原料ドープ11の調製方法を説明する。実施例1では、図8に示すドープ製造設備120を使用した。まず、第1攪拌機137と第2攪拌機139とを備え、容量が4000Lのステンレス製の溶解タンク122に、上記の複数の溶媒を混合し攪拌した混合溶媒を、溶媒タンク121から適量送り込んだ。なお、使用する各溶媒の含水率は、いずれも0.5質量%以下のものを使用した。次に、ホッパ123から、TACのフレーク状粉体(TAC粉末)を溶解タンク122の中に徐々に添加した。そして、TAC粉末を投入後、最初、ディゾルバータイプの第2攪拌機139により、5m/秒の周速で攪拌し、続けて、アンカー翼を有する第1攪拌機137により周速1m/秒で攪拌する条件の下で、30分間攪拌した。なお、分散開始時での溶媒とTACとの混合溶液の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。
続けて、あらかじめ調製しておいた添加剤溶液を、バルブ141で送液量を調整し、全体が2000kgとなるように添加剤タンク124から溶解タンク122に送り込んだ。そして、先ほどと同様に、第1攪拌機137および第2攪拌機139により、添加剤溶液を分散させた後、高速攪拌を停止した。次に、第1攪拌機137の周速を0.5m/秒となるように調整して、さらに100分間攪拌することにより、TACフレークを膨潤させた膨潤液125を調製した。また、膨潤終了までは、溶解タンク122に窒素ガスを送り込み、その内部圧力が0.12MPaとなるように加圧した。このとき、溶解タンク122の内部は、酸素濃度が2vol%未満であり、防爆上で問題のない状態を保った。なお、膨潤液125中の水分量は0.3質量%であった。
溶解タンク122から、膨潤液125をポンプ150により送液量を調整しながら加熱装置126に送り出した。加熱装置126はその内部温度を調整することができるジャケットと内部圧力を調整することができる加圧機能を有する形態を使用した。そして、加熱装置126により、膨潤液125を50℃まで加熱した後、さらに、2MPaの加圧下で90℃まで加熱して、TAC等の固形物を溶媒中に完全に溶解させた。このとき、加熱時間は15分であった。次に、この溶解液を、温調機127により36℃まで冷却してから、公称孔径8μmのフィルタを有する第1濾過装置128に通過させて異物を除去し、ドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。なお、第1濾過装置128における1次側圧力を1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。また、高温にさらされるフィルタや配管等は、熱ダメージを受けにくいハステロイ(商品名)合金製のものを使用した。
この濃縮前ドープを、バルブ151を切り替えてフラッシュ装置129に送り込んだ。そして、フラッシュ装置129の内部を、80℃で常圧として、濃縮前ドープをフラッシュ蒸発させることにより所望の濃度に濃縮して原料ドープ11を製造した。このとき、蒸発した溶媒は凝縮器(図示しない)で回収後、回収装置131で回収してから、再生装置132で再生することでドープ調製用溶媒とし、これを溶媒タンク121に送液してドープ調製の際に再利用した。また、回収装置131および再生装置132では、蒸留や脱水を行った。さらに、フラッシュ装置129では原料ドープ11を貯留するフラッシュタンク(図示しない)に、攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、この攪拌機を用いて、周速0.5m/秒でフラッシュされた原料ドープ11を攪拌することにより脱泡処理を行った。このフラッシュタンクの内部での原料ドープ11の温度は25℃であり、その内部に貯留される原料ドープ11の平均滞留時間は50分であった。なお、この原料ドープ11を採取して25℃でせん断粘度を測定したところ、剪断速度10秒−1において450Pa・sであった。
次に、原料ドープ11に弱い超音波を照射して泡抜きを行ってから、フラッシュ装置129からポンプ152により1.5MPaに加圧した状態で原料ドープ11を抜き出し、第2濾過装置130に送り込んだ。第2濾過装置130では、最初、公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、続けて、公称孔径10μmの焼結繊維フィルタを通過させることにより濾過処理を行い、原料ドープ11中の異物を除去した。各フィルタを通過させる際の1次側圧力は、順に1.5MPa、1.2MPaであり、2次側圧力は、順に1.0MPa、0.8MPaであった。そして、濾過後、温度を36℃に調整した原料ドープ11を、容量が2000Lのステンレス製の第1ストックタンク12に送液して貯留した。第1ストックタンク12では、中心軸にモータ40で回転駆動するアンカー翼タイプの攪拌羽40aを取り付け、周速0.3m/秒で常時、原料ドープ11を攪拌して、異物の凝集等を抑制した。
上記により調製した原料ドープ11を用いて、図1に示すフイルム製膜設備10によりフイルム24を製造した。
まず、第1スタティックミキサ42に、第1ストックタンク12に貯留されている原料ドープ11と、第2ストックタンク14に貯留されている基層用添加液13とを適量ずつ送液してから、攪拌混合して基層用ドープとした。このとき、基層用添加液13としては、あらかじめ、第2ストックタンク14の内部で、
UV剤a(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン) 0.2質量部
UV剤b(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール) 0.2質量部
UV剤c(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール) 0.2質量部
1225OCHCHO−P(=O)−(OK) 0.02質量部
と混合溶媒とを攪拌混合した。
第2スタティックミキサ52の内部に、あらかじめ第3ストックタンク16の内部で調製された、マット剤である二酸化ケイ素(粒径15nm モース硬度 約7)を0.05質量部と剥離促進剤であるクエン酸を0.02質量部との混合溶液である支持体面用添加液15と、原料ドープ11とを送液し、攪拌混合させて、支持体面用ドープを調製した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%、フイルム形態でマット剤濃度が0.05質量%、フイルム形態で剥離促進剤濃度が0.03質量%となるように行った。
あらかじめ、上記と同じ二酸化ケイ素0.05質量部を混合溶媒に分散させて第4ストックタンク18に貯留させておいたてエアー面用添加液17と原料ドープ11とを第3スタティックミキサ57に送液してから攪拌混合してエアー面用ドープを調製した。このとき、添加量は、全固形分濃度が20.5質量%、フイルム形態でマット剤濃度が0.1質量%となるように行った。なお、このエアー面用ドープの粘度が35Pa・sとなるように調整した。
流延ダイ61には、幅が1.8mであり共流延用に調整したフィードブロック60を装備して、主流のほかに両面にそれぞれ積層して3層構造のフイルムを成形できるようにした装置を用いた。以下の説明において、主流から形成される層を基層と称し、支持体面側の層を支持体面と称し、反対側の面をエアー面と称する。なお、ドープの送液流路は、基層用ドープ流路43、支持体面用ドープ流路51,エアー面用ドープ流路56の3流路を用いた。
目的とするTACフイルムの膜厚(エアー面,基層,支持体面)がそれぞれ4μm,73μm,3μmであり、製品厚みが80μmとなるように、流延幅を1700mmとして各ドープ(基層用ドープ,支持体面用ドープ,エアー面用ドープ)の流量を調整しながら、流延ダイ61から3層のドープを共流延した。このとき、各ドープの温度を36℃に調整するため、流延ダイ61にジャケット(図示しない)を設けてジャケットの内部に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
製膜時には、フィードブロック60と流延ダイ61と各配管を、すべて36℃に保温した。流延ダイ61はコートハンガータイプのものを用い、厚み調整ボルト(ヒートボルト)が20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。ヒートボルトはあらかじめ設定したプログラムにより高精度ギアポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フイルム製造設備10の内部に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものである。流延エッジ部20mmを除いたフイルムで50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm/m以下となるように調整した。また、各層の平均厚み精度は両外層が±2%以下、主流が±1%以下に制御され、全体厚みは±1.5%以下となるように調整した。
流延ダイ61の1次側には減圧するための減圧チャンバ73を設置した。また、ビード前後および後部にラビリンスパッキン(図示しない)を設けるとともに、その両端には開口部を設け、さらに、流延ビードの両縁の乱れを調整するためにエッジ吸引装置(図示しない)が取り付けられているものを用いた。
流延バンド63として、幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを利用した。流延バンド63の厚みは1.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下になるように研磨した。また、材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものとした。このとき、流延バンド63の全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド63は、2個の回転ローラ62a,62bにより駆動させた。その際、流延バンド63の張力は、1.5×10kg/mに調整し、流延バンド63と回転ローラ62a,62bとの相対速度差が0.01m/分以下になるように調整した。このとき、流延バンド63の速度変動は0.5%以下であった。なお、1回転の幅方向の蛇行は1.5mm以下に制限するように、流延バンド63の両端位置を検出して制御し、流延ダイ61の直下でのダイリップ先端と流延バンド63との上下方向の位置変動を200μm以下とした。
回転ローラ62a,62bは、流延バンド63の温度調整を行えるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ61側の回転ローラ62aには、5℃の伝熱媒体を流し、他方の回転ローラ62bには、40℃の伝熱媒体を流した。流延直前での流延バンド63の中央部の表面温度は15℃であり、その両端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド63は、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m以下、10μm未満のピンホールは2個/m以下であるものを用いた。
流延室20の温度は、温調設備70を用いて35℃に保った。また、流延ダイ61からドープを流延した直後の位置であり、流延バンド63の表面側に、流延バンド63の走行する向きに向かって送風口を備えた送風装置64を設け、さらに、流延バンド63の下方であり裏面側に加熱装置65を設けた。そして、送風口からは、表面乾燥温度が120℃となるように調整した乾燥風を、流延バンド63の走行する向きに略平行になるように送り出すとともに、加熱装置65により、裏面乾燥温度が50℃となるように調整して、流延膜19を裏面側から加熱した。
乾燥する際の乾燥風からの流延膜19への総括伝熱係数は24kcal/m・時・℃であった。また、流延バンド63上の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。このとき、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。さらに、流延室20の内部に浮遊する溶媒を凝縮回収するために凝縮器68を設けて、その出口温度を−10℃に設定することで、浮遊溶媒を凝縮液化させた後、回収装置71で回収した。そして、回収した溶媒の水分量が0.5%以下なるように水分を除去した後、ドープ調製用溶媒として再利用した。溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。なお、流延バンド63上での乾燥速度は平均して60質量%/分であった。
流延膜19が自己支持性を有するものとなった後、流延膜19を流延バンド63から剥取ローラ66により剥ぎ取って湿潤フイルム21を形成した。このとき、流延バンド63から流延膜19を剥ぎ取る際に用いる剥取張力を1×10N/mとし、剥取不良を抑制するために流延バンド63の速度に対して、剥取速度(剥取ローラドロー)を100.1〜110%の範囲で調整した。なお、剥ぎ取った湿潤フイルム21の表面温度は15℃であった。
そして、渡り部22では、複数のローラ80により支持しながら搬送する間に、乾燥装置81により乾燥風を送り出すことで湿潤フイルム21の乾燥を促進させた。乾燥装置81から送り出す乾燥風の温度は、40℃となるように調整した。また、渡り部22では、湿潤フイルム21を搬送する間に、搬送方向に対して約30Nの張力を付与することで、湿潤フイルム21を搬送方向に延伸させる一軸延伸を行った。そして、この乾燥が促進された湿潤フイルム21をテンタ24に送り込んだ。
テンタ24の内部では、湿潤フイルム21の両側端部をクリップ101で把持し搬送する間に乾燥を促進させてフイルム23とした。テンタ24は、図2に示すように、レール間隔がフイルム搬送方向に向かうにしたがい次第に大きくなるようにレール102が配置された形態のものを使用した。これにより、レール102にしたがいチェーン101を走行させることで、湿潤フイルム21を幅方向に延伸させた。そして、テンタ出口24bでクリップ101による把持を解放し、乾燥が促進されたフイルム24を乾燥室30へと送り出した。なお、テンタ24の内部は、伸縮処理の違いに応じる複数の区画ごとに、乾燥装置(図示しない)による乾燥風の温度を調整して、異なる乾燥温度で段階的に湿潤フイルム21の乾燥を促進させた。
テンタ24の内部には、AD変換器に接続される光電式センサ105と基準チップセンサ106とを所定の位置に設置して、任意のチェーン100に取り付けられたセンサチップ110とクリップ101の通過を順次測定した。そして、この測定により得られる時間と位相差との相関図を常時確認した。これにより、その波形の経時変化をオンラインで把握し、チェーン100の連結部等に生じる緩み等を管理することができるので、第1チェーン100aおよび第2チェーン100bでの搬送の遅れ等を抑制し、かつ、生じた場合には、そのズレが生じている箇所を特定して、搬送する湿潤フイルム21の両側で生じる搬送遅延を低減しながら乾燥を促進させることができた。
そして、テンタ出口24bから30秒以内に耳切装置85を設けて、フイルム23の両側端部を切除した。耳切装置85は、NT型カッタを備える形態を使用し、フイルム23の両側端部から内側に向かって50mmmの位置で切断した。切断した両側端部(耳)は、カッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ86に風送し、平均80mm程度のチップに粉砕した。なお、このチップは、TACフレークと共にドープ調製用原料として再利用した。また、耳切装置85と乾燥室30との間に予備乾燥室(図示しない)を設けて、100℃の乾燥風を供給することにより乾燥室30で高温乾燥する前にフイルム23を予備加熱した。
残留溶媒量が5重量%となったフイルム23を乾燥室30に送り込んだ。乾燥室30の内部には、送風機(図示しない)を設けて、この送風機により温調した乾燥風を給気し、フイルム23の膜面温度が140±40℃の範囲となるように調整した。そして、フイルム23の搬送張力を100N/mとしてローラ90で支持しながら搬送する間に、最終的にフイルム23の残留溶媒量が1重量%になるまで約10分間乾燥した。このとき、乾燥室30の内部に浮遊する溶媒ガスを、吸着回収装置91により回収した。吸着回収装置91としては、吸着剤が活性炭であり、脱着剤が乾燥窒素である形態を使用し、溶媒中の水分量が0.3質量%以下になるまで水分を除去した。なお、この水分を除去した溶媒は、ドープ調製用溶媒として再利用した。
乾燥室30と冷却室31との間に第1調湿室と第2調湿室(いずれも図示しない)とを設けて、フイルム23を調湿することによりカール等の矯正を行った。第1調湿室において、温度50℃,露点20℃の空気を給気した後、続けて第2調湿室にフイルム23を搬送して、フイルム23に対して直接、90℃,湿度70%の空気をあてた。
調湿後のフイルム23を、冷却室31に送り込んで30℃以下になるまで冷却した。そして、強制除電装置(除電バー)92により、フイルム23の帯電圧が、常時−3〜+3kVの範囲となるように調整した。続けて、ナーリング付与ローラ93によりフイルム44の両側端部にナーリングの付与を行った。なお、ナーリングはフイルム23の片側からエンボス加工を行うことにより付与した。このとき、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフイルム23の平均厚みよりも平均して12μm高くなるようにナーリング付与ローラによる押し圧を調整した。
そして、巻取室32の内部に設置されている巻取ローラ95(φ169mm)により、巻き始め張力を300N/mとし、巻き終わりを200N/mとなるように調整しながらフイルム23を巻き取って、フイルム23のロール状製品を得た。巻き取り時のフイルム23の温度は23℃であり、含水量が1.0重量%、残留溶媒量が1重量%であった。巻取室32の内部は、室内温度28℃,湿度70%に保持するとともに、イオン風除電装置(図示しない)を設けて、フイルム23の帯電圧が−1.5〜+1.5kVとなるように調整した。巻き取り時では、巻きズレの変動幅(オシレート幅)を±5mmとし、巻取ローラ95に対する巻きズレ周期を400mとし、巻取ローラ95に対するプレスローラ96の押し圧を50N/mに設定した。フイルム製造設備10では、全工程を通して、流延膜19や湿潤フイルム21およびフイルム23の平均乾燥速度を20重量%/分とした。なお、製膜速度は、巻取室32において50m/分とした。
上記のようにして得られたロール状のフイルム製品の表面を目視にて確認しても、傷や汚れを確認することは出来ず、非常に平面性に優れるフイルム製品を得ることができた。また、製造したフイルム製品の光軸ズレを下記方法で測定し、評価した。その結果、光軸ズレは非常に小さく、製品上問題のないレベルであった。なお、光軸ズレは、フイルム製品をサンプルとし、自動複屈折計(KOBRA21DH 王子計測(株))によりサンプルの長手方向に対して10mおきに幅方向間隔で7点の軸角度を測定し、その平均値のバラつき(°/1000m)を評価した。
以上より、本発明によると、テンタを用いてフイルムを乾燥する際に、チェーンやクリップの位置ズレ等により搬送するフイルムの両側端部に搬送ズレが生じることを抑制することができるので、非常に優れた光学特性のフイルム製品を得ることができることを確認した。
本発明に用いるフイルム製造設備の概略図である。 本発明に用いるテンタの概略図である。 本発明に用いるチェーンの概略図である。 図2のV−V線におけるテンタ内部の断面図である。 光電式センサおよび基準チップセンサ等を含む電子制御配置図である。 光電式センサおよび基準チップセンサにより得られる時間と位相差との相関図である。 本発明におけるチェーンのズレの検出機構に関するフローチャートである。 本発明に用いるドープ製造設備の概略図を示す。
符号の説明
10 フイルム製造設備
21 湿潤フイルム
23 フイルム
24 テンタ
100 チェーン
101 クリップ
102 レール
105a,105b 光電式センサ
106a,106b 基準チップセンサ
110 センサクリップ

Claims (10)

  1. ポリマーと溶媒とを含んだドープを支持体上に流延して形成した流延膜を、前記支持体から剥ぎ取って湿潤フイルムとした後、無端で走行するチェーンに取り付けられた複数の把持手段により前記湿潤フイルムの両側端部を把持し搬送する間に、乾燥を促進させるポリマーフイルムの製造方法において、
    前記把持手段の任意の1つを基準把持手段として特定し、前記基準把持手段が取り付けられている前記チェーンにセンサチップを設けて、
    前記センサチップを検知する第1検知装置により、前記センサチップを検知して前記基準把持手段の位置を検出し、
    さらに、前記把持手段の通過を検知することができる第2検知装置により、前記把持手段の通過を順次検知した後、
    前記第1検知装置から得られる第1の信号および前記第2検知装置から得られる第2の信号を照合して、経時変化により生じる信号の差を読み取ることにより、前記湿潤フイルムを搬送する間に生じる前記チェーンの緩みや前記把持手段の位置ずれをオンラインで管理しながら、前記湿潤フイルムを幅方向に延伸させて乾燥する延伸乾燥工程を有することを特徴とするポリマーフイルムの製造方法。
  2. 前記延伸乾燥工程では、
    圧力測定手段と温度測定手段とを用いて、搬送される前記湿潤フイルムの周囲における圧力および温度を測定することにより、前記湿潤フイルムの乾燥状態を把握することを特徴とする請求項1記載のポリマーフイルムの製造方法。
  3. 前記第1検知装置と前記第2検知装置とは、いずれも電子制御装置に接続されており、前記基準把持手段や前記把持手段の通過をオンラインで検出して得られる前記第1の信号と前記第2の信号とを基に、経時変化が生じている前記チェーンや前記把持手段の位置を特定して、前記チェーンや前記把持手段の位置を常時調整することを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフイルムの製造方法。
  4. 前記湿潤フイルムの搬送路に沿って、前記第1検知装置および前記第2検知装置を設けることを特徴とする請求項1ないし3いずれかひとつ記載のポリマーフイルムの製造方法。
  5. 前記第1検知装置による測定は、最初に前記センサチップを検知した開始位置から、再び前記センサチップを検知する終了位置までを前記チェーンの1周期とし、少なくとも1周期分を測定することを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつ記載のポリマーフイルムの製造方法。
  6. 前記ポリマーはセルロースアシレートであることを特徴とする請求項1ないし5いずれかひとつ記載のポリマーフイルムの製造方法。
  7. 前記流延膜は、セルロースアシレートを主成分とする基層と、前記セルロースアシレート以外の素材を主成分とし、前記基層の外周に設けられる少なくとも1層の外層とを有する複層構造であって、
    前記基層を形成するドープと前記外層を形成するドープとを、流延ダイから前記支持体上に共流延することで前記流延膜を形成することを特徴とする請求項1ないし6いずれかひとつ記載のポリマーフイルムの製造方法。
  8. 前記外層を形成するドープの粘度(Pa・s)を、40Pa・s以下となるように調整することを特徴とする請求項1ないし7いずれかひとつ記載のポリマーフイルムの製造方法。
  9. 前記流延膜の厚みは、10〜400μmであることを特徴とする請求項1ないし8いずれかひとつ記載のポリマーフイルムの製造方法。
  10. 請求項1〜9いずれかひとつ記載の製造方法により製造されることを特徴とするポリマーフイルム。
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