JP5153393B2 - セルロースアシレートフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示装置における偏光板の保護フィルムや視野角拡大フィルム、光学補償フィルム等に利用されるセルロースアシレートフィルムの製造方法に関するものである。
セルロースアシレートフィルムは、セルロースをエステル化させることにより生成するセルロースアシレートを原料とし、透明度が高く、強靭性や光学等方性に優れる等の理由から、例えば、液晶表示装置の偏光板の保護フィルムや視野角拡大フィルム、光学補償フィルム等に利用されている。
光学用途のセルロースアシレートフィルムは、一般的に溶液製膜方法で製造されている。溶液製膜方法とは、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを、走行する支持体上に流延して流延膜を形成した後、この流延膜を支持体から剥ぎ取り、乾燥してフィルムとする方法であり、熱ダメージを与えることなく製膜することができるので、完成したフィルムは透明度が高く、光学特性に優れている。
ところで、溶液製膜方法では、製膜を続けていると支持体の表面に汚れが発生する。汚れは、ドープ原料などに起因する金属塩等の異物が支持体の表面に析出したものと考えられているが、汚れが発生した箇所では、流延膜を支持体から円滑に剥ぎ取ることが困難となり、最悪の場合には、剥ぎ取り不能となって製膜を一時中断しなければならない。また、汚れが流延膜に転写すればフィルムの光学ムラを引き起こす。このため、支持体の表面に汚れを発生させることなく製膜することができる技術の構築が望まれている。
汚れに纏わる諸問題を解決する方法としては、(1)支持体の表面に付着した汚れを清掃する、(2)支持体の表面における汚れの発生を防止する、この2点が重要視され、古くから様々な方法が検討されている。例えば、特許文献1では、上記の(1)に着目し、有機溶剤等を染み込ませた布で支持体上に発生した汚れを拭き取る方法が提案されている。また、例えば、特許文献2では、上記の(2)に着目し、汚れとなり得る成分の含有量を減らしたドープを所定の条件下で支持体上に流延し、さらに、流延膜を剥ぎ取った支持体の表面に対して、支持体の温度よりも2〜10℃の範囲で低い露点に制御した風を供給することにより異物の析出を抑制する方法が提案されている。
特開2006−110881号公報 特開2006−095971号公報
しかし、特許文献1のように有機溶剤等を染み込ませた布等で直接的に支持体の表面を拭き取る方法では、製膜速度を落としたり、一旦製膜ラインを停止させる必要があるので生産性の低下が問題視されているほか、支持体の表面に傷が付くおそれがある。このように傷付いた支持体を使い続ければ、流延膜の表面に傷が転写され、完成したフィルムの光学特性を著しく低下させるため問題である。
また、現在、溶液製膜方法に対しては、製膜速度の高速化及びフィルムの薄手化が強く望まれている。この背景には、近頃の液晶表示装置の発展に伴う著しい需要の増大と、薄型化・軽量化への動向が理由として挙げられる。このため、製膜現場では、上記課題に対する様々な検討が行われているが、この中で、製膜速度を高速化するほど、汚れの発生サイクルが短くなることが確認されている。このため、従来よりも汚れの発生をより有効に防止することができ、さらには、薄手のフィルムを製造することができる技術の構築が望まれている。しかしながら、特許文献2のように、比較的常温付近で流延膜を乾燥する方法では、ある程度流延膜の乾燥に時間をかけなければ乾燥ムラ等により剥取性の低下が懸念されるため製膜速度の高速化は難しい。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて、製膜速度の高速化を実現し、支持体の表面において汚れを発生させることなく薄手のフィルムを製造することができるセルロースアシレートフィルムの製造方法の提供を目的とする。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、エンドレスで走行する支持体上に、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを流延ダイから流延して流延膜を形成した後、流延膜を支持体から剥ぎ取り、渡り部を介してテンタ装置に送り、乾燥してフィルムとするセルロースアシレートフィルムの製造方法において、支持体の表面温度が−10℃以上10℃以下であり、流延ダイに対して支持体の走行方向の上流側及び下流側に、支持体の幅方向に仕切り部材を設置することにより流延ダイの周りを区画した流延ダイ室を形成し、溶媒が蒸発した溶媒ガスを含む流延ダイ室内の圧力を渡り部よりも高くして、流延ダイ室内の溶媒ガスの露点温度を−5℃以上0℃以下の範囲に保持することを特徴とする。
このとき、流延ダイ室と渡り部との圧力差Pを0<P≦20[Pa]とすることが好ましい。
また、前記流延ダイより前記支持体の走行方向の上流側であり、かつ前記流延膜が剥ぎ取られる位置より前記支持体の走行方向の下流側に、前記流延膜が形成される前記支持体の近傍で前記溶媒が蒸発した溶媒ガスの圧力を周囲よりも高く維持する遮風領域を形成し、
前記遮風領域内の前記溶媒ガスの露点温度を−5℃以上0℃以下の範囲に保持することが好ましい。
また、流延膜を冷却によりゲル化して自己支持性を持たせることが好ましい。そして、支持体は周面を流延面とする流延ドラムであり、流延面の走行速度が50m/分以上であることが好ましい。なお、完成したフィルムの膜厚が20μm以上70μmであり、その幅が1500mm以上3000mm以下であることが好ましい。
本発明によれば、支持体の表面に汚れを発生させることなく、製膜速度の高速化を実現し、薄手のセルロースアシレートフィルムを製造することができる。
本発明に係わるセルロースアシレートフィルムの製造方法について説明する。図1に示すように、本実施形態で用いるフィルム製造設備10は、流延室12、渡り部13、テンタ14、加熱室15、冷却室16、巻取室17等から構成されている。
また、フィルム製造設備10には、配管を介してストックタンク18が接続されている。ストックタンク18は、フィルム20の原料となるドープ21を貯留するためのものであり、モータ18aで回転する攪拌翼18bと、ストックタンク18の内部温度を調節するためのジャケット18cとが備えられている。ジャケット18cは、ストックタンク18の外周面に設けられており、ジャケット18cの内部に温度を調節した伝熱媒体が供給される。これによりストックタンク18の内部温度が所定の範囲で制御され、ストックタンク18に貯留されるドープ21の温度が略一定に保持される。モータ18aにより攪拌翼18bが回されて、ドープ21が常時攪拌される。これにより貯留するドープ21の中に凝集物などを発生させず均一な品質を保持する。ストックタンク18の下流にはポンプ25と濾過装置26とが備えられている。なお、ドープ21に関しては、後で詳細に説明する。
流延室12は、ドープを流延する流延ダイ30と、支持体として作用する流延ドラム32と、流延ダイ30の吐出口付近を減圧する減圧チャンバ34と、温調装置35と、流延ドラム32から流延膜33を剥ぎ取る際に使用する剥取ローラ36と、流延ドラム32に接続された伝熱媒体循環装置37と、凝縮器(コンデンサ)39とが備えられている。
また、流延室12には、流延ダイ30を挟んで流延ドラム32の上流側と下流側に第1、第2仕切り板41a,41bが設置されており、更に、剥取ローラ36に対して流延ドラム32の走行方向の上流側には第3仕切り板41cが設置されている。これら各仕切り板41a〜41cにより流延室12は、流延ダイ30を含む流延ダイ室としての流延ダイ室42と、流延膜33を乾燥する乾燥室43と、剥取ローラ36を取り囲む剥取室44とに区画される。第1〜第3仕切り板41a〜41cは、ラビリンス型シール板が好適であるが、形状や材質等は特に限定されない。更に、その設置箇所や数も限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択すれば良い。
第1、第2仕切り板41a,41bの間に形成された流延ダイ室42では、流延ドラム32の近傍に存在する流延膜33やドープ21から蒸発した溶媒のガス(以下、溶媒ガスと称する)が、第1、第2仕切り板41a,41bに遮られるため、ここに滞留する。これにより流延ダイ室42では溶媒ガスの濃度が高く保持される。また、流延ダイ室42内において溶媒ガスを高濃度に保持するために、流延ダイ室42にはガス循環装置45が設けられている。ガス循環装置45は、その内部に図示しないガス供給部を具備し、さらに、配管を介してガス循環装置45に接続された供給ダクト45a及び排気ダクト45bを備え、流延ダイ室42内の溶媒ガス濃度を略一定に保持し、かつ流延ダイ室42内のガス圧力を乾燥室43及び剥取室44よりも少し高く保持する。上記のガス供給部では、溶媒ガス濃度が略一定のガスを供給ダクト45aに送り、排気ダクト45bから回収する。ここで、供給ダクト45aからの供給量を排気ダクト45bからの排気量よりも僅かに大きく設定することで流延ダイ室42内を加圧状態に保持している。
流延ダイ30には、ドープ21の吐出口が形成されており、この吐出口が流延ドラム32に向って開口した状態で設置されている。流延ダイ30の材質は、電解質水溶液やジクロロメタン、メタノールなどの混合液に対する高い耐腐食性や、熱膨張率が低いなどの特性を有するものが好適である。また、流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものが好適である。このような流延ダイ30を用いれば、流延ドラム32の上にスジ及びムラのない流延膜33を形成することができる。
流延ドラム32は、円筒形状或いは円柱状であって、駆動装置により円筒の軸を中心に回転する。流延ドラム32の表面には、十分な耐腐食性と強度とを付与する目的でクロムめっき処理が施されている。また、流延ドラム32の内部には伝熱媒体の流路が形成されている。この伝熱媒体は、流延ドラム32に取り付けられた伝熱媒体循環装置37から供給される。流路に伝熱媒体を通過又は循環させることにより流延ドラム32の表面温度が所望の温度に保持される。
減圧チャンバ34は、流延ダイ30の剥取ローラ36側に設置されており、流延ダイ30から流延ドラム32の間に形成されるドープ21の流れ(流延ビード)の背面側を所望の圧力に減圧する。流延ビードの背面側とは、後で流延ドラム32の表面に接する面である。剥取ローラ36は、流延ドラム32から流延膜33を剥ぎ取って湿潤フィルム38とする際に、流延膜33を支持する。凝縮器39は、ドープ21や流延膜33の内部から揮発した有機溶媒を含むガスを凝縮液化する。この凝縮器39には回収装置40が接続されており、凝縮液化した有機溶媒が回収される。なお、回収された溶媒は再生装置で再生された後にドープ調製用溶媒として再利用される。
乾燥室43に設けられた温調装置35は、給気ダクト、排気ダクト、乾燥風循環部(いずれも図示しない)を備えている。給気ダクトは、剥取室44の近くで乾燥室43内に設けられており、一定温度の乾燥風を乾燥室43内に送り込む。一方、排気ダクトは、流延膜33から蒸発した溶媒ガスを含む乾燥風を乾燥室43内から排気する。また、乾燥風循環部は、排気ダクトからの乾燥風をその溶媒ガス濃度を略一定にし、かつ温度を調節した後に、給気ダクトを介し再び乾燥室43内に送る。
流延室12の下流に設置された渡り部13には、多数のローラと送風装置13aとが設置されている。テンタ14は、湿潤フィルム38の両側端部を保持する複数のピンを備えた乾燥装置であり、湿潤フィルム38の乾燥を進めてフィルム20とする。
テンタ14の下流に設置された耳切装置54はフィルム20の両側端部を切断する。この耳切装置54にはクラッシャ56が取り付けられており、フィルム20の切断片をチップ状に粉砕する。
加熱室15には、多数のローラ47と溶媒の吸着回収装置48とが備えられており、ここでフィルム20の乾燥が十分に行なわれる。加熱室15に併設された冷却室16は、加熱室15で加温されたフィルム20を略室温まで冷却する。この冷却室16の下流には、フィルム20の帯電圧を調節するための強制除電装置(除電バー)49が設けられている。また、本実施形態では、強制除電装置49の下流側にフィルム20にナーリングを付与するためのナーリング付与ローラ50を設けている。巻取室17の内部には、フィルム20を巻き取るための巻取ローラ51と、フィルム20に押圧するためのプレスローラ52とが備えられている。
次に、上記のフィルム製造設備10によりフィルム20を製造する方法の一例を説明する。ストックタンク18では、ジャケット18cの内部に伝熱媒体が流されて、ドープ21の温度が25〜35℃に調整される。また、攪拌翼18bが常時回されて、ドープ21の品質が均一に保持される。適宜適量のドープ21が、ポンプ25によりストックタンク18からフィルタを備える濾過装置26へ送られ、ドープ21に含まれている不純物が取り除かれる。不純物としては、ドープ原料に起因し、ドープの溶媒に不溶な金属塩等が挙げられる。
流延ドラム32は、駆動装置により所定の回転数で連続的に回転している。回転速度は50m/分以上であることが好ましい。本発明では、支持体として流延バンドを使用することもできるが、バンド型の支持体と比べて本実施形態のように流延ドラム32を使用すると、走行時のブレ等が少なく50m/分以上としても安定な走行が保持されるので、製膜速度の高速化には好適である。
また、流延ドラム32は、この内部にある流路に伝熱媒体循環装置37から伝熱媒体が供給されて、その表面温度が−10〜10℃の範囲内で略一定となるよう保持される。流延ダイ30の吐出口から流延ドラム32の上にドープ21が流延される。ここで、完成したフィルム20の膜厚が所望とする値となるようにドープ21の流延量が調節される。流延に供されるドープ21の温度は30〜35℃であることが好ましい。流延ドラム32の表面に到達したドープ21は速やかに冷やされて、短時間のうちにゲル状の流延膜33が形成される。流延膜33は流延ドラム32の上に滞在する時間が長くなるほど冷却が進み、流延膜33のゲル化がよりいっそう促進される。このように表面を冷却させた流延ドラム32を支持体とすれば、短時間のうちに自己支持性を持つ流延膜33を形成することができるため、製造時間の短縮による製膜速度の高速化が図れる。自己支持性を持たせた流延膜33は、剥取ローラ36で支持された状態で流延ドラム32から剥ぎ取られ湿潤フィルム38とされる。
流延室12における乾燥室43及び流延ダイ室42内の内部温度は、温調装置35及びガス循環装置45により10〜30℃の範囲内で略一定となるように調節される。また、本実施形態では、流延室12の内部に存在するドープ21や流延膜33から蒸発した溶媒ガスを凝縮器39により凝縮液化した後、回収装置40で回収し、更に再生装置で再生させてドープ調製用溶媒として再利用する。
また、前述した通り、流延ダイ室42は、溶媒ガス濃度が高く保持されている。このような雰囲気下では溶媒ガスの露点は高い値を示す。本発明では、流延ダイ室42内の溶媒ガスの露点を−5℃以上0℃以下に保持する。このような雰囲気中では、凝結した溶媒が多く含まれているが、全ての溶媒ガスが完全には凝結していない非常に湿った状態にある。このため、流延ドラム32が流延ダイ室42内を通過すると、高ガス露点の雰囲気中を通過することになり、流延膜33から析出して流延ドラム32の表面に付着した金属塩等の付着物の増大が抑えられる。加えて、既に流延ドラム32の表面に付着している微小な付着物は、次のドープの流延時までに溶解し、流延膜33内に取り込まれる。析出物としての付着物は、流延膜33内に取り込まれても、溶解しているのでフィルムの面状故障や光学特性の低下を引き起こすことはない。
このように、流延ドラム32の表面を高ガス露点雰囲気中に通過させれば、異物の抑制や洗浄効果が得られるため、従来のような頻度で流延ドラム32等の支持体の表面を洗浄する必要がなくなり、製膜効率が向上する。また、溶剤を染み込ませた布等を使用せずとも流延ドラム32の表面を清潔に保持することができるので、汚れの表面が傷付くこともない。ただし、流延ダイ室42内の圧力が渡り部13よりも低い場合には、ガス露点の低い風が渡り部13から第2仕切り板41b側の隙間を介して流延ダイ室42内に流入するため、流延ダイ室42内のガス露点が低下してしまう。
また、ガス露点に着目した場合、ガス露点が0℃を超えた雰囲気では、凝結した溶媒が多量に含まれているので、流延膜33の表面に溶媒が付着し、その平面性が損なわれるおそれがある他、流延膜33に比較的多量の溶媒が浸透するため、流延膜33に自己支持性を持たせるまでの時間が長くなる。一方で、ガス露点が−5℃を下回る場合には、凝結溶媒の量が少ないために異物の析出を抑制したり、異物を溶解させる効果を得ることができない。なお、乾燥室43には、流延室12の外部に繋がる排出口(図示しない)が取り付けられている。排出口から乾燥室43内の空気が外部に排出され、乾燥室43内の圧力が流延ダイ室42よりも低圧とされる。これにより乾燥室43から流延ダイ室42への風の流入が抑制され、流延ダイ室42内のガス露点は高く保持される。
流延ダイ室42により汚れの発生を防止する等のより優れた効果を得る上で、ガス露点を効果的に上昇させるには、渡り部13から流延ダイ室42内への風の流入を防ぐことが必要である。このため、流延ダイ室42と渡り部13との圧力差Pは、0Pa<P≦20Paの範囲で保持する。なお、圧力差は、渡り部13よりも流延ダイ室42を高圧としたとき、流延ダイ室42の圧力から渡り部13の圧力を減算した値である。ここで、圧力差が20Paを超えると、所望とする以上に流延ダイ室42内が高ガス露点雰囲気となり、凝結した溶媒が液適する等の弊害が大きくなる。また、圧力差が0に近づく程、高ガス露点雰囲気を保持することが困難となり、異物の抑制や洗浄効果を得ることが難しくなる。
流延ダイ室42内の溶媒ガス濃度を一定に保持するために、上記差圧を保持する他に、流延ダイ室42内にガス露点計を設けて常時ガス露点を監視し、ガス露点が下がったときに流延ダイ室42内の圧力を高める制御を行うことが好ましい。なお、流延ダイ室42内のガス露点は、流延ドラム32の表面温度にも影響を受けることが予想される。このため、ドープを流延している間、露点計によるガス露点を常時測定しながら、その測定値と流延ドラム32の表面温度とをバランスを取りながら適宜調節することが好ましい。
流延ダイ室42内の状態を好適に保持する上で、第1仕切り板41a及び第2仕切り板41bは、その幅方向の長さが流延ドラム32の幅と略同等かそれ以上であり、流延ドラム32に対して略平行に設置する。これにより、外部から流延ダイ室42内へのガス露点が低い風の流入を効果的に防止する。各仕切り板の設置箇所は、その先端を流延ドラム32の表面近傍にできるかぎり近づけ、この部分にラビリンスを形成している。上記の間隔は設置スペース等に応じて適宜調節すれば良いが、間隔が大きければ流延ダイ室42の内部に滞留していた高ガス露点の風が乾燥室43へ放出されるため流延ダイ室42内のガス露点が低下してしまう。
渡り部13では、多数のローラで湿潤フィルム38を支持しながら搬送する間に、送風装置13aから乾燥風を供給して乾燥を進める。テンタ14では、その入口付近で湿潤フィルム38の両側端部に多数のピンが差し込まれ、湿潤フィルム38の両側端部が保持される。湿潤フィルム38は、両側端部が保持された状態で、テンタ14の内部を搬送される間に、乾燥が進められてフィルム20とされる。テンタ14の出口付近においてフィルム20の両側端部からピンが抜かれて保持が解放される。
テンタ14の下流にクリップテンタを設けてフィルム20を乾燥しても良い。クリップテンタは、フィルム20の両側端部を把持する把持手段として複数のクリップを備えた乾燥装置である。各クリップは、無端で走行するチェーンに取り付けられており、このチェーンの動きに応じてクリップテンタ内を移動する。クリップテンタでは、多数のクリップによりフィルム20の両側端部が把持した後、その内部を搬送する間に乾燥をよりいっそう促進させる。フィルム20を搬送する際に対面するクリップの間隔を拡げてフィルム20の幅方向に張力を付与する。フィルム20を幅方向に延伸しその分子配向を調節することにより所望のレタデーション値を付与することができる。クリップテンタに送る直前のフィルム20の残留溶媒量は、50〜150重量%であることが好ましい。本発明の残留溶媒量とは、フィルム中に残留する溶媒量を乾量基準で示したものである。残留溶媒量は、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をxとし、乾燥した後のサンプルの重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出される。
フィルム20は、耳切装置54に送られてその両側端部が切断される。耳切装置54によって切断された両側端部はクラッシャ56で細かくされ、ドープ調製用チップとして再利用される。両側端部が切断されたフィルム20は、加熱室15と冷却室16とを経由し、巻取室17内の巻取ローラ51で巻き取られる。巻取り時には、巻取開始時から終了時までの間で徐々に張力を変化させることが好ましい。また、巻き取られるフィルム20の長さは、搬送方向に少なくとも100m以上とすることが好ましく、幅方向が1500mm以上3000mm以下であることが好ましい。ただし、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果を得ることができる。完成したフィルム20の膜厚は、20μm以上70μm以下である。
図2に示すように、流延ダイ室42内であって、剥取室44と流延ダイ30との間の流延ドラム32の一部を覆うように遮風室60を形成し、この遮風室60内を高ガス露点雰囲気としても、流延ドラム32上での異物の析出を抑制し、かつ洗浄する優れた効果を得ることができる。遮風室60には、前述と同じ構成のガス循環装置45が接続されており、その内部の溶媒ガス濃度やガス露点、圧力等が好適に調節される。また、流延膜33が剥ぎ取られた後、再びドープが流延されるまでの間では、流延膜33が剥ぎ取られてから時間が経っていないので、流延ドラム32の表面には析出してまもない異物が付着している。このような異物は、凝結溶媒により容易に溶解するため効率良く取り除かれる。更に、図3に示すように、遮風室61は流延ダイ室42の外側に設けても良い。遮風室61による効果等は上記と同じであるため、説明は省略する。なお、図2、図3に示した実施形態では、遮風室60,61を設ける他に、流延ダイ室42にガス循環装置45を接続して、流延ダイ室42内部を好適に保持すれば、流延ドラム32を洗浄するより優れた効果を得ることができる。
本発明に係わるフィルム製造設備のうち、流延ダイ、減圧チャンバ、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
本発明に係わるドープについて説明する。なお、ここに示す形態は本発明に係わる一例であって、本発明を限定するものではない。
先ず、ドープの原料について説明する。本発明に使用されるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(1)〜(3)の全てを満足するものがより好ましい。式(1)〜(3)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、セルロースアシレートの90重量%以上が、0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。
(1) 2.5≦A+B≦3.0
(2) 0≦A≦3.0
(3) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
ただし、本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、溶解度が高いドープを得ることができる。
セルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
セルロースアシレートの原料となるセルロースは、木材又は綿花からなるものどちらでも良く、特に限定されるものではないが、剥取性の向上が見込まれるため木材からなるものが好ましく、中でも針葉樹からなるものが特に好ましい。木材の中でも広葉樹と対比して針葉樹が剥取性向上に作用する理由は十分に解明できていないが、針葉樹から得られるセルロースは、例えば、NMRやFT−IR法等の成分分析により広葉樹を原料とするセルロースと対比して脂肪酸エステル類の含有量が少ないこと、また、針葉樹は、広葉樹と対比して繊維の形状やセルロースの組成が異なること等が分かっており、これらが要因の1つとして考えられる。なお、原料となる木材の種類は、被対象とするセルロースアシレートをサンプルとし、これを構成する糖分析を行うことで推定することができる。
本発明の特徴以外で係るセルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
ドープの原料として好適な溶媒は、セルロースアシレートを溶解できるものが好ましい。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)等が挙げられる。上記のハロゲン化炭化水素においては、炭素原子数1〜7のものが好ましい。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
中でも、溶媒としては、疎水性のものが好ましい。特に、ポリマーに対する溶解度や、ドープ中に添加剤として微粒子を用いる場合、この分散性に優れる等の観点から塩化メチレンが好ましい。また、セルロースアシレートの溶解度、流延膜と支持体との剥取性、フィルムの機械強度、光学特性等の観点からは塩化メチレンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種、ないしは数種類を混合することが好ましい。アルコールの含有量は溶媒全体に対して2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、中でも、メタノール、エタノール、n−ブタノール、或いはこれらの混合物が好適である。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、塩化メチレンを使用しない溶媒組成も提案されている。この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いる。これらのエーテル、ケトン、及びエステルは環状構造を有するものでも良いし、エーテル、ケトン、及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−、及び−COO−)のいずれかを2つ以上有するものでも良い。また、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していても良い。なお、2種類以上の官能基を有する場合、その炭素原子数がいずれかの官能基を有する場合の規定範囲内であれば良く、特に限定はされない。
また、ドープには必要に応じて添加剤を加えても良い。添加剤としては、例えば、可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、微粒子等のマット剤、剥離剤、剥離促進剤等が挙げられる。これら添加剤は、特に限定されず、各種添加剤として公知であるものを使用すれば良い。
ドープには、フィルム同士の接着を防ぐこと等を目的として微粒子を添加することが好ましい。微粒子としては、二酸化ケイ素誘導体が好適である。本発明における二酸化ケイ素誘導体とは、二酸化ケイ素や三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂も含まれる。また、その表面にはアルキル化処理の施されているものが好ましい。アルキル化処理のような疎水化処理が施された微粒子を用いると溶媒に対する分散性が向上する。
微粒子の表面にアルキル化処理が施されている場合、微粒子の表面に導入されるアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましい。より好ましくは、導入されるアルキル基の炭素数が、1〜12であり、特に好ましくは、炭素数が1〜8である。このようなアルキル基が導入された微粒子は、微粒子同士の凝集が抑制されると共に分散性が向上する。表面に炭素数が1〜20のアルキル基を有する微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素の微粒子をオクチルシランで処理したものが挙げられる。なお、表面にオクチル基を有する二酸化ケイ素誘導体の一例としては、アエロジルR805(日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、本発明において好適に使用できる。
また、微粒子の含有量はドープの固形分に対して0.2%以下とすることが好ましい。このように微粒子の含有量が制御されたドープは微粒子の凝集が抑制されるため、透明度が高く、優れた光学特性を示すフィルムが製造できる。なお、フィルムの透明度の高さ、光学特性、或いは微粒子の凝集を抑制する上で、微粒子はその平均粒径が1.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.3〜1.0μmであり、特に好ましくは0.4〜0.8μmである。
本発明に係る溶媒、各種添加剤については、特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
〔ドープ製造〕
次に、上記のドープ原料を使用して、実際にドープを調製する手順を説明する。図4に示すように、本実施形態で使用するドープ製造設備80は、溶媒を貯留する溶媒タンク81と、セルロースアシレートを供給するホッパ82と、添加剤を貯留する添加剤タンク85と、溶媒とセルロースアシレートと添加剤とを混合して混合液86とする混合タンク87と、混合液86を加熱する加熱装置88と、加熱された混合液86の温度を調整する温度調整器91と、温度調整器91からの混合液86を濾過してドープ21とする濾過装置82と、ドープ21の濃度を調整するフラッシュ装置96と、濃度調整されたドープ21を濾過する濾過装置97とを備える。この他にもドープ製造設備80には、溶媒を回収する回収装置98と、回収された溶媒を再生するための再生装置99とが備えられている。また、このドープ製造設備80は、ストックタンク18を介してフィルム製造設備10に接続される。なお、送液量を調節するバルブV1〜V3と、送液用のポンプP1、P2とがドープ製造設備80には設けられるが、これらが配される位置及びポンプ数の増減については適宜変更される。
上記のドープ製造設備80によりドープ21は以下の方法で製造される。バルブV2を開とすることにより溶媒は溶媒タンク81から混合タンク87に送られる。次に、セルロースアシレートがホッパ82から混合タンク87に送り込まれる。このとき、セルロースアシレートは、計量と送出とを連続的に行う送出手段により混合タンク87に連続的に送りこまれてもよいし、計量して所定量を送出するような送出手段により混合タンク87に断続的に送り込まれてもよい。また、添加剤溶液は、バルブV1の開閉操作により必要量が添加剤タンク85から混合タンク87に送り込まれる。
添加剤は、溶液として送り込む方法の他に、例えば、添加剤が常温で液体である場合には、その液体状態のままで混合タンク87に送り込むことができる。また、添加剤が固体の場合には、ホッパ等を用いて混合タンク87に送り込む方法も可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンク85の中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。この他にも、独立した配管で混合タンク87と接続した複数の添加剤タンクを用いて、それぞれに添加剤が溶解している溶液を入れ、この溶液を別個独立して混合タンク87に送ることもできる。
前述した説明においては、混合タンク87に入れる順番が、溶媒、セルロースアシレート、添加剤であったが、この順番に限定されない。また、添加剤は必ずしも混合タンク87でセルロースアシレート及び溶媒と混合することに限定されず、後の工程でセルロースアシレートと溶媒との混合物にインライン混合方式等で混合されてもよい。
混合タンク87には、その外表を覆い、混合タンク87との間に伝熱媒体が供給されるジャケット106と、モータ107により回転する第1攪拌機108と、モータ111により回転する第2攪拌機112が取り付けられていることが好ましい。混合タンク87は、ジャケット86の内側に流れ込む伝熱媒体により温度調整され、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃の範囲である。第1攪拌機108、第2攪拌機112のタイプを適宜選択して使用することによりセルロースアシレートが溶媒により膨潤した混合液86を得る。第1攪拌機108は、アンカー翼を有するものであることが好ましく、第2攪拌機112は、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。
次に、混合液86は、ポンプP1により加熱装置88に送られる。加熱装置88は、管本体(図示せず)とこの管本体との間に伝熱媒体を通すためのジャケットとを有するジャケット付き管であることが好ましく、さらに、混合液86を加圧する加圧部(図示せず)を有することが好ましい。このような加熱装置88を用いることにより、加熱条件下または加圧加熱条件下で混合液86中の固形分を効果的かつ効率的に溶解させることができる。以下、上記の様に加熱により固形成分を溶媒に溶解する方法を加熱溶解法と称する。加熱溶解法においては、混合液86を0℃〜97℃となるように加熱することが好ましい。
なお、加熱溶解法に代えて冷却溶解法により固形成分を溶媒に溶解させてもよい。冷却溶解法とは、混合液86を温度保持した状態またはさらに低温となるように冷却しながら溶解を進める方法である。冷却溶解法では、混合液86を−100℃〜−10℃の温度に冷却することが好ましい。以上のような加熱溶解法または冷却溶解法によりセルロースアシレートを溶媒に十分溶解させることが可能となる。
混合液86を温度調整器91により略室温とした後に、濾過装置92により濾過して不純物や凝集物等の異物を取り除きドープ21とする。濾過装置92に使用されるフィルタは、その平均孔径が100μm以下であることが好ましい。濾過流量は、50リットル/時以上であることが好ましい。
濾過後のドープ21は、バルブV3によりストックタンク18に送られて一旦貯留された後、フィルムの製造に用いられる。
ところで、上記のように、固形成分を一旦膨潤させてから、溶解して溶液とする方法は、セルロースアシレートの溶液における濃度を上昇させる場合ほど、ドープ製造に要する時間が長くなり、製造効率の点で問題となる場合がある。そのような場合には、目的とする濃度よりも低濃度のドープを一旦調製し、その後に目的の濃度とする濃縮工程を実施することが好ましい。例えば、バルブV3により、濾過装置92で濾過されたドープ21をフラッシュ装置96に送り、このフラッシュ装置96でドープ21の溶媒の一部を蒸発させることによりドープ21を濃縮することができる。濃縮されたドープ21はポンプP2によりフラッシュ装置96から抜き出されて濾過装置97へ送られる。濾過の際のドープ21の温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。濾過装置97で異物を除去されたドープ21は、ストックタンク18へ送られ一旦貯留されてからフィルム製造に用いられる。なお、濃縮されたドープ21には気泡が含まれていることがあるので、濾過装置97に送る前に予め泡抜き処理を実施することが好ましい。泡抜き方法としては、例えばドープ21に超音波を照射する超音波照射法等の、公知の種々の方法が適用される。
また、フラッシュ装置96でのフラッシュ蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示せず)を備える回収装置98により凝縮されて液体となり回収される。回収された溶媒は、再生装置99によりドープ製造用の溶媒として再生されて再利用される。このような回収及び再生利用により、製造コストの点での利点があるとともに、閉鎖系で実施されるために人体及び環境への悪影響を防ぐ効果がある。
以上の製造方法により、セルロースアシレート等の固形分の溶解度が高いドープを得ることができる。ドープにおけるセルロースアシレート濃度は5重量%〜40重量%であることが好ましい。ここで、より好ましくは、セルロースアシレート濃度は15重量%以上30重量%以下の範囲とすることであり、特に好ましくは、17重量%以上25重量%以下の範囲である。また、添加剤の濃度は、固形分全体に対して1重量%以上20重量%以下の範囲とすることが好ましい。
なお、本発明に係わるセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、溶液製膜方法に関するドープの原料、添加剤の溶解方法、濾過方法、脱泡、添加方法については、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落が詳しく、これらの記載も本発明に適用することができる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
本発明で得られるフィルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[0112]段落から[0139]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
[表面処理]
また、完成したフィルムの少なくとも一方の面には、表面処理されていることが好ましい。この表面処理は、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
完成したフィルムの少なくとも一方の面は下塗りされていても良い。
また、本発明に係わるフィルムをベースとして他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。機能性層としては、帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層、及び光学補償層のうち、少なくとも1層を設けることが好ましい。そして、この機能性層は、少なくとも一種の界面活性剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましく、少なくとも一種の滑り剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましい。機能性層は少なくとも一種のマット剤を0.1〜1000mg/m含有することが好ましく、少なくとも一種の帯電防止剤を1〜1000mg/m含有することが好ましい。なお、フィルムに対して様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
本発明で得られるフィルムの用途について説明する。当該フィルムは、平面性に優れると共に、優れた光学特性を有することから、偏光板の保護フィルム等として有用である。このフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を液晶層に2枚貼ることにより作製した液晶表示装置は、液晶表示能力に優れる等の特長を示す。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号公報には、例えば、[1088]段落から[1265]段落に、液晶表示装置として、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型、その他の例が詳しく記載されており、この方法も本発明に適用させることができる。また、同出願には光学的異方性層を付与したフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したフィルムについての記載、適度な光学性能を付与した光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これらの記載も本発明に適用させることができる。
次に、本発明に係わる実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、ここに示す形態は、本発明に係わる一例であって、本発明を限定するものではない。
先ず、下記の原料を混合し、ドープ21を調製した。
〔ドープ原料〕
・セルローストリアセテート(置換度2.85、粘度平均重合度306、含水率0.2重量%、ジクロロメタン溶液中6重量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100重量部
・混合溶媒 446重量部
・可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6重量部
・可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8重量部
・UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール 0.7重量部
・UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’tert−ブチル,5’−メチル)クロロベンゾトリアゾール 0.3重量部
・微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05重量部
上記のセルローストリアセテート(以下、TACと称する)は、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Ca含有率が5ppm、Mg含有率が50ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを10ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8重量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。そして、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。
混合溶媒は、予め、ジクロロメタンを87重量部と、メタノールを10重量部と、1−ブタノールを3重量部と、を混合したものを使用した。なお、混合溶媒の各原料は、含水率が0.5重量%以下のものを使用した。
〔ドープ仕込み〕
以下に、ドープ21を調製した手順を説明する。攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製の混合タンク87で混合溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした後、TACのフレーク状粉体をホッパ82から徐々に添加した。TAC粉末を混合タンク87に投入した後、先ず、中心軸にアンカー翼を有する第1攪拌機108の周速を1m/秒とし、ディゾルバータイプの第2攪拌機112の周速を5m/秒とする条件下で、30分間攪拌した。攪拌開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。次に、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンク85からバルブで送液量を調整して、全体が2000kgとなるようにした。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、第1攪拌機108の周速を0.5m/秒としてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて混合液86とした。膨潤終了までは窒素ガスにより混合タンク87内を0.12MPaになるように加圧した。この際の混合タンク87の内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また混合液86中の水分量は0.3重量%であった。
〔溶解・濾過〕
混合液86を混合タンク87からポンプP1を用いて加熱装置88に送液した。加熱装置88としては、ジャケット付き配管を使用し、ここで混合液86を50℃まで加熱した後、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱した。加熱時間は15分とした。次に、混合液86を温度調整器91に送り、36℃まで温度を下げた後、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置92を通過させてドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。なお、高温に晒されるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(登録商標)合金製で耐食性の優れたものを使用した。
〔濃縮・濾過・脱泡〕
濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置96内でフラッシュ蒸発させた。このとき、ドープの固形分濃度が22重量%以上23重量%以下となるまで濃縮させた。凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置98で回収した。その後に再生装置99で再生した後に溶媒タンクに送液した。なお、回収装置98、再生装置99では蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置96のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/秒でフラッシュされたドープを攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内におけるドープの平均滞留時間は50分であった。このドープを採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(秒−1)で450Pa・sであった。
次に、このドープに弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後、ポンプP2を用いて1.5MPaに加圧した状態で濾過装置97を通過させた。濾過装置97では、最初に、公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク18内にドープを21送液して貯蔵した。ストックタンク18は、貯蔵するドープ21の温度を30℃以上40℃以下になるように保持した。ストックタンク18は中心軸に攪拌翼18bとしてアンカー翼を備えたものを使用し、ドープ21を貯留する間、周速0.3m/秒で常時攪拌した。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には腐食などの問題は全く生じなかった。
〔フィルム製造〕
図1に示すフィルム製造設備10を用いてフィルム20を製造した。ストックタンク18内のドープ21を高精度のギアポンプ25で濾過装置26へ送った。このギアポンプ25は、ギアポンプ25の1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプ25の上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプ25は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、吐出圧力は1.5MPaであった。そして、濾過装置26を通ったドープ21を流延ダイ30に送液した。
流延ダイ30は、乾燥されたフィルム20の膜厚が70μmとなるように、流延ダイ30の吐出口のドープ21の流量を調整しながら流延した。ドープ21の温度を25℃以上40℃以下に調整するために、流延ダイ30にジャケット(図示しない)を設けて、ジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を略36℃とした。
流延ダイ30と配管とはすべて製膜中には36℃に保温した。流延ダイ30は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ30には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプ25の送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フィルム製造設備10に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフィルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
流延ダイ30の材質は、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは、0.5mm以上2mm以下になるように調整した。流延ダイ30のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ30内部でのドープ21の剪断速度は1(1/秒)〜5000(1/秒)の範囲であった。また、流延ダイ30のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
支持体としてステンレス製のドラムを流延ドラム32として利用した。流延ドラム32の表面粗さは0.05μm以下になるように研磨した。材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度とを有するものとした。流延ドラム32の速度変動は0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行は1.5mm以下に制限するように流延ドラム32の両端位置を検出して制御した。また、流延ダイ30直下におけるダイリップ先端と流延ドラム32との上下方向の位置変動は200μm以下とした。流延ドラム32は、風圧変動抑制装置(図示しない)を有した流延室12内に設置した。
流延ドラム32は、その表面に欠陥がないものが好ましいので、30μm以上のピンホールが皆無であり、10μm〜30μmのピンホールが1個/m以下、10μm未満のピンホールが2個/m以下のものを使用した。図示しない駆動装置により、流延ドラム32は、その軸を中心に回転させた。また、流延ドラム32に取り付けられている伝熱媒体循環装置37により、流延ドラム32の表面温度を−10℃以上10℃以下の範囲内になるように保持した。
温調装置35により流延室12の温度を35℃に保った。流延ドラム32の上にゲル状の流延膜33を形成した。また、流延室12内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)39を設け、その出口温度を−10℃に設定した。
また、流延ダイ30より流延ドラム32の走行方向の上流側には減圧チャンバ34を設置し、流延ビードの背面側を減圧した。なお、減圧チャンバ34は、この内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)が取り付けられたものを使用し、このジャケット内に35℃に調整された伝熱媒体を供給した。
流延ダイ30を挟んで流延ドラム32の上流側と下流側とに、第1、第2仕切り板41a,41bを設置して流延ダイ室42を形成した。流延ダイ室42には、ガス循環装置45に配管を介して接続された供給ダクト45aと排気ダクト45bとを取り付け、製膜中、渡り部13よりも高圧であって、その圧力差が10Paとなるように流延ダイ室42内を調節した。また、流延ダイ室42では、光学式の露点計(ゼネラルイースタン社製 Hygro−M2)を設置し、ガス露点を計測しながらガス循環装置45を制御することにより、本実施例では流延ダイ室42内のガス露点を−2℃に保持した。
流延膜33中の溶媒比率が乾量基準で150重量%になった時点で、流延膜33を剥取ローラ36で支持しながら流延ドラム32から剥ぎ取り、湿潤フィルム38とした。このときの剥取テンションは10×9.8N/mであり、剥取性は良好であった。また、剥取不良を抑制するために流延ドラム32の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は、100.1%以上110%以下の範囲で適切に調整した。湿潤フィルム38の表面温度は−10℃であった。また、流延室12では、凝縮器39により溶媒ガスを凝縮液化した後に、回収装置40で回収した。回収された溶媒は調整がなされた後に、ドープ調製用溶媒として再利用した。ここで溶媒に含まれる水分量は、0.5%以下とした。溶媒が除去された乾燥風は再度加熱して乾燥風として再利用した。
なお、乾量基準による残留溶媒量は、被対象となるサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。また、残留溶媒量は、サンプリング時の流延膜33、湿潤フィルム38、フィルム20から所定の寸法に切り出されたサンプリングフィルムについて、ガスクロマトグラフィー(GC−18A,島津製作所(株)製)により測定することができる。
テンタ14にて湿潤フィルム38の乾燥を進め、フィルム20とした後、テンタ14の出口から30秒以内に設置した耳切装置54によりフィルム20の両側端部を切断した。ここで切断片は、クラッシャ56に風送し、平均80mm程度のチップに粉砕し、再度、ドープの原料としてTACフレークと共に利用した。テンタ14の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持し、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。また、加熱室15で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフィルム20を予備加熱した。
フィルム20を加熱室15で高温乾燥した。加熱室15を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。ローラ47によるフィルム20の搬送テンションは100N/巾として、最終的に残留溶媒量が乾量基準で0.3重量%になるまで約10分間乾燥した。ローラ47のラップ角度は、90度および180度とした。ローラ47の材質はアルミニウム製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロムメッキを施した。ローラ47の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ47の回転による振れは全て50μm以下であった。また、テンション100N/幅でのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
吸着回収装置48により乾燥風に含まれる溶媒を回収した。溶媒の回収方法として、溶媒の吸着材である活性炭を用いる吸着回収方法を用いた。また、活性炭からの溶媒の脱着には乾燥窒素を用いた。回収した溶媒は、水分量0.3重量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤、その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却機及びプレアドソーバ(予備吸着材)でこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるように吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち凝縮法で回収する溶媒量は90重量%であり、残りの大部分は吸着回収により回収した。
フィルム20を第1調湿室(図示しない)に搬送した。また、加熱室15と第1調湿室との間に渡り部を設け、110℃の乾燥風を給気した。なお、第1調湿室には温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フィルム20のカールの発生を抑制するため第2調湿室(図示しない)にフィルム20を搬送した。第2調湿室では、フィルム20に直接90℃,湿度70%の風をあてた。
調湿後のフィルム20を、冷却室16に搬送し、30℃以下になるまで冷却した。この後、強制除電装置(除電バー)49により搬送中のフィルム帯電圧を常時−3kV〜+3kVの範囲となるよう調整した。続けて、フィルム20の両端にナーリング付与ローラ50でナーリングを行った。ナーリングは片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングする幅は10mmであり、最大高さは平均厚みよりも平均12μm高くなるように押し圧を設定した。
そして、フィルム20を巻取室17に搬送した。巻取室17は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。巻取ローラ51の径は169mmのものを用いた。巻き始めテンションは360N/幅であり、巻き終わりが250N/幅になるようなテンションパターンとした。巻き取りの際の周期を400mとし、オシレート幅を±5mmとした。また、巻取ローラ51にプレスローラ52を押し圧50N/幅に設定した。巻き取り時のフィルム20の温度は25℃、含水量は1.4重量%、残留溶媒量は乾量基準で0.3重量%であった。全工程を通しても平均乾燥速度は20重量%(乾量基準溶媒)/分であった。このようにして得られたフィルム20は、膜厚が60μmと薄手であって、製品幅は1900mm、巻取全長は5000mであった。ここで、巻き緩みやシワは観察されず、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。なお、ロール外観も良好であった。また、フィルム20のフィルムロールを25℃、55%RHの貯蔵ラックに1ヶ月間保管して、さらに上記と同様に検査した結果、いずれも有意な変化は認められなかった。さらにロール内においても接着も認められなかった。
実施例2では、流延ダイ室42の圧力が渡り部13よりも15Pa高くなるように流延し、ダイ室42内を加圧した以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
実施例3では、更に、実施例1に加えて、図2に示す遮風室60を設けて、遮風室60の内のガスの露点を−3℃とした。上記以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
実施例4では、遮風室60の内のガスの露点を−5℃とした以外は、全て実施例3と同様にフィルム20を製造した。
実施例5では、遮風室60の内のガスの露点を0℃とした以外は、全て実施例3と同様にフィルム20を製造した。
実施例6では、遮風室60の内のガスの露点を−10℃とした以外は、全て実施例3と同様にフィルム20を製造した。
実施例7では、遮風室60の内のガスの露点を5℃とした以外は、全て実施例3と同様にフィルム20を製造した。
〔比較例1〕
比較例1では、流延ダイ室42と渡り部13との圧力差を0Paとし、流延ダイ室42内のガス露点を−1℃とした以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
〔比較例2〕
比較例2では、流延ダイ室42内のガス露点は−7℃とした以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
〔比較例3〕
比較例3では、流延ダイ室42よりも渡り部13の圧力を高くし、その圧力差が30Paとなるようにガス循環装置45等を制御した。ここで、流延ダイ室42内のガス露点は−10℃とした以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
〔比較例4〕
比較例4では、流延ダイ室42よりも渡り部13の圧力を0Paとし、流延ダイ室42内のガス露点は−7℃とした以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
〔比較例5〕
比較例5では、流延ダイ室42よりも渡り部13の圧力を0Paとし、流延室12の内のガス露点は3℃とした以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
〔比較例6〕
比較例6では、流延室12を区画せずに、流延室12よりも渡り部13の圧力を0Paとし、流延室12の内のガス露点は−2℃とした以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
〔比較例7〕
比較例7では、流延室12を区画せずに、流延室12よりも渡り部13の圧力を0Paとし、流延室12の内のガス露点は−7℃とした以外は、全て実施例1と同様にフィルム20を製造した。
本発明の効果を把握するために、各実施例及び各比較例において、流延膜33を剥ぎ取った後の流延ドラム32の表面を定期的に目視により観察して、ドラム汚れ及び剥離性を評価した。ドラム汚れについては、流延ドラム32にドープ21を流延し、流延ドラム32を連続的に回転させ始めてから、少なくとも1000時間経過するまでに、流延ドラム32に汚れを観察しなかった場合には、◎とした。回転させ始めてから少なくとも500時間経過するまでに、流延ドラム32に汚れを観察しなかった場合には、○とした。回転させ始めてから少なくとも100時間経過するまでに、流延ドラム32に汚れを観察しなかった場合には、△とした。回転させ始めてから100時間経過するまでの間に、流延ドラム32に汚れを観察した場合には、×とした。
剥離性については、回転させ始めてから500時間経過後に、流延ドラム32の上にある流延膜33を剥ぎ取る位置における、流延膜33の端が左右に変動する幅を調べた。少なくとも目視では、変動する幅を観察できなかった場合には、◎とした。変動する幅が1mm以内となった場合には、○とした。変動する幅が1mmより大きく5mm以下となった場合には、△とした。変動する幅が5mmより大きい場合には、×とした。変動する幅が1mm以内となる場合には、流延ドラム32の回転速度を50m/分以上のように高速化しても、安定して流延ドラム32の回転を維持して、70μm以下であるフィルムを製造することができる。変動する幅が1mmより大きくなる場合には、流延ドラム32の回転速度を50m/分以上のように高速化すると、安定して流延膜33を剥離できない。以下の表1に、各実施例及び各比較例の条件及び結果を示す。なお、表中の(−)は、遮風室を設けなかったことを示す。
Figure 0005153393
本発明を満たさない比較例1〜7では、ドラム汚れや剥離性の評価が良好でなく、流延ドラム32の回転速度を50m/分以上に維持することができなかった。一方、本発明を満たす実施例1〜7では、流延ドラム32の表面においてドラム汚れが観察されず、や流延膜33の剥離性が良好であり、流延ドラム32の回転速度を50m/分以上に維持して、所望の薄膜なフィルムを製造することができた。
以上の結果から、本発明のように、流延室の内部に仕切り部材を設置することにより流延ダイ室として区画した後に、流延ダイ室内の溶媒ガス濃度を高くすることにより高ガス露点を保持し、かつ、流延ダイ室内の圧力を渡り部よりも高くして、この流延ダイ室内に流延ドラムを通過させれば、流延ドラムの表面における異物の析出を抑制し、かつ既に析出した異物を凝結した溶媒により溶解することができるので、流延ドラムの表面を傷付けることなく清潔な状態を維持することができる。また、剥取性を低下させることなく製膜を続けることができるので製膜速度の高速化を実現しながら、ドープの流延量を調節することにより薄手のフィルムを製造することができる。
本発明に係わるフィルム製造設備の一例の概略図である。 本発明に係わる遮風室を設置した流延室内の一例の概略図である。 本発明に係わる遮風室を設置した流延室内の一例の概略図である。 本発明に係わるドープ製造設備の一例の概略図である。
符号の説明
10 フィルム製造設備
12 流延室
13 渡り部
13a 送風装置
20 フィルム
21 ドープ
30 流延ダイ
36 剥取ローラ
41a 第1仕切り板
41b 第2仕切り板
41c 第3仕切り板
42 流延ダイ室
43 乾燥室
44 剥取室
45 ガス循環装置
60,61 遮風室

Claims (6)

  1. エンドレスで走行する支持体上に、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを流延ダイから流延して流延膜を形成した後、前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取り、渡り部を介してテンタ装置に送り、乾燥してフィルムとするセルロースアシレートフィルムの製造方法において、
    前記支持体の表面温度が−10℃以上10℃以下であり、
    前記流延ダイに対して前記支持体の走行方向の上流側及び下流側に、前記支持体の幅方向に仕切り部材を設置することにより前記流延ダイの周りを区画した流延ダイ室を形成し、
    前記溶媒が蒸発した溶媒ガスを含む前記流延ダイ室内の圧力を前記渡り部よりも高くして、前記流延ダイ室内の前記溶媒ガスの露点温度を−5℃以上0℃以下の範囲に保持することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  2. 前記流延ダイ室と前記渡り部との圧力差Pを0<P≦20[Pa]とすることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  3. 前記流延ダイより前記支持体の走行方向の上流側であり、かつ前記流延膜が剥ぎ取られる位置より前記支持体の走行方向の下流側に、
    前記流延膜が形成される前記支持体の近傍で前記溶媒が蒸発した溶媒ガスの圧力を周囲よりも高く維持する遮風領域を形成し、
    前記遮風領域内の前記溶媒ガスの露点温度を−5℃以上0℃以下の範囲に保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  4. 記流延膜を冷却によりゲル化して自己支持性を持たせることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  5. 前記支持体は、周面を流延面とする流延ドラムであり、前記流延面の走行速度が50m/分以上であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  6. 完成した前記フィルムの膜厚が20μm以上70μmであり、その幅が1500mm以上3000mm以下であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
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