JP2007161945A - セルロースアシレートドープ、及びセルロースアシレートフィルムの製造方法 - Google Patents

セルロースアシレートドープ、及びセルロースアシレートフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微粒子の凝集を抑制し、優れた生産性により異物の少ないフィルムを製造する。
【解決手段】セルロースアシレートと溶媒とを混合した混合液17を、第1濾過装置24で濾過しポリマー溶液22とする。所定の溶媒に微粒子を分散させた分散液34をポリマー溶液22にインラインで添加し、フィルムの表層となる表層用ドープ42a,42bを調製する。微粒子は、表面がアルキル化処理されたニ酸化ケイ素誘導体を使用する。また、ポリマー溶液22に添加する前の分散液34のゼータ電位Ζが、3≦|Ζ|≦9の条件を満たすようにする。表層用ドープ42a,42bと、分散液34が未添加のポリマー溶液22を基層用ドープ43として、これらを共流延し、基層の両表面の外側に表層を設けた3層構造の流延膜を形成する。この流延膜を乾燥すると、優れた生産性により異物の少ないフィルムを製造することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリマーとしてセルロースアシレートと溶媒と微粒子とを含むセルロースアシレートドープ、及びそれを用いるセルロースアシレートフィルムの製造方法に関するものである。
ポリマーフィルムは、加工性や取り扱い性が良好であり、さらには軽量かつ透明性に優れる等の利点から、液晶ディスプレイ用の光学フィルムとして使用される。中でも、ポリマーとしてセルロースアシレートを使用したセルロースアシレートフィルムは、広視野角や高透過率である等の優れた光学特性を示し、さらには、原料単価が安いので安価な光学フィルムを提供することが出来る等の利点を有することから、偏光板保護用フィルムや視野角拡大フィルム等の光学フィルムとして盛んに利用されている。このようなセルロースアシレートフィルムを含めたポリマーフィルムの製造方法としては、溶融押出方法や溶液製膜方法が挙げられる。ただし、光学フィルムを製造する場合には、透明性に優れるとともに、均一な膜厚のフィルムを製造することが出来るなどの利点から、主に溶液製膜方法が用いられている。
ところで、製造方法の違いに係わらず、完成したポリマーフィルムは、所望の用途に応じた加工や塗工等の各種工程へと供されるまでの間では、ロール状に巻き取った原反状態で貯蔵されることが多い。ただし、原反状態では、フィルム同士は接触しているので、経時変化とともに、接触界面同士が接着するという現象が起こる。このように界面同士が接着すると、使用時する際に、目的に応じて引き剥がそうとすると、破れや傷が生じて、製品として使用することができなくなったり、フィルム製品としての平面性を著しく低下させたりする。そこで、このようなフィルム同士の接着を抑制することを目的として、ドープ中に二酸化ケイ素等の微粒子をマット剤として添加し、混合することでドープ中に分散させる方法が用いられている。
しかし、上記のようにドープの中に微粒子を添加すると、粗大な微粒子や微粒子の凝集物など(以下、これらを総称して異物とする)が発生してしまうために、フィルムの表面が破れたり、析出したりして表面に欠陥(面状欠陥)が生じる恐れがある。したがって、微粒子が添加されたドープは、異物の除去を目的として、濾過装置で濾過される。
しかし、このようにドープを濾過しても、ドープ中の微粒子の分散が安定していなかったり、分散後からの時間が経過すると、ドープを貯留するタンクの内部やその流路となる配管の内部に、異物が沈降したり、付着したりする。このように異物が沈降したり付着したりすると、製造するフィルムの表面に異物が付着したり、傷が付いたりするので、結果として、表面の平面性が著しく劣ったフィルム製品しか得ることが出来ない。そのため、タンクや配管などの内部に異物の沈降や付着が生じると、その都度、フィルムの製造工程を停止させてから、対象箇所を洗浄する等の対策が必要となるが、これは、生産性の著しい低下を引き起こしてしまう。
そこで、ドープ中の微粒子の凝集を抑制する方法としては、表面をメチル化した二酸化ケイ素を微粒子として用いる方法(例えば、特許文献1参照)や、表面に炭素数が2〜20のアルキル基やアリール基を有するニ酸化ケイ素を、微粒子として使用する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、この他にも、微粒子として使用する二酸化ケイ素の含有量及び粒径を規定している方法(例えば、特許文献3参照)も提案されている。
特開平7−011055号公報 特開2001−002799号公報 特開2001−151936号公報
いずれの方法も、微粒子の凝集をある程度抑制することが出来るが、完全に抑制することは困難である。すなわち、例えば、特許文献2の方法は、所定の官能基を有する二酸化ケイ素を微粒子として用いるとともに、この微粒子を、予め溶剤に分散させた分散液をポリマーと溶剤とを混合した混合液に混合してドープとするので、微粒子の分散性に優れたドープを調製することが出来る。しかし、微粒子表面の官能基を選定するだけでは、優れた分散性を長時間保持することが困難であるため、経時変化に伴い発生する異物により、生産性が低下する。したがって、経時変化に係わらず、優れた微粒子の分散性を有するドープの提供が望まれている。
本発明は、微粒子の凝集を抑制するとともに、経時変化にもかかわらず、優れた分散性を発現するセルロースアシレートドープを提案することを目的とする。また、面状欠陥のない平面性に優れたセルロースアシレートフィルムを良好な生産性で製造することが出来るセルロースアシレートフィルムの製造方法を提案することを目的とする。
本発明のセルロースアシレートドープは、セルロースアシレートと溶媒と微粒子とを含むセルロースアシレートドープにおいて、微粒子の表面は、疎水化処理としてアルキル化処理が施されており、この溶媒の中に微粒子を分散させた分散液のゼータ電位Ζ(mV)が、3≦|Ζ|≦9の条件を満たすことを特徴とする。また、この微粒子が、二酸化ケイ素誘導体であることが好ましい。そして、アルキル化処理において微粒子の表面に導入されるアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましい。
また、溶媒は、疎水性の有機化合物を主成分とした混合物であることが好ましい。そして、疎水性の有機化合物が、塩化メチレンであることが好ましい。さらに、セルロースアシレートドープ中のセルロースアシレートや微粒子などを含む固形成分に対する微粒子の含有量が、0.2%以下であることが好ましい。なお、微粒子が添加される前、もしくは後のセルロースアシレートドープは、少なくとも1回の濾過が行なわれることが好ましい。
本発明のセルロールアシレートフィルムの製造方法は、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを基層用ドープとし、上記いずれかひとつ記載のセルロースアシレートドープを表層用ドープとして、基層用ドープと表層用ドープとを、走行する支持体上に共流延することにより、基層と、この基層の両表面に表層とを配する流延膜を形成した後、この流延膜を乾燥させて複層構造のフィルムとすることを特徴とする。
本発明は、セルロースアシレートと溶媒と微粒子とを含んだドープを調製する際に、表面が疎水化処理としてアルキル化処理された微粒子を使用し、予め、この微粒子と上記の溶媒とを混合して溶媒中に微粒子を分散させた分散液を、セルロースアシレートを溶媒に溶解させた溶液中に混合してドープとするようにしたので、微粒子の分散性を向上させることが出来る。また、本発明では、ドープに添加する前に分散液のゼータ電位(mV)を測定し、この値が3≦|Ζ|≦9の条件を満たすようにしたので、微粒子と溶媒との界面に生じる電位差を制御することにより、経時変化に係わらず、優れた分散性を発現させることが出来る。なお、微粒子としては二酸化ケイ素系を使用し、さらに、溶媒は、疎水性の有機化合物を主成分とした混合物を使用するようにしたので、ドープ中での微粒子の分散性をより向上させることが出来る。
また、セルロースアシレートドープ中のセルロースアシレートや微粒子などを含む固形成分に対する微粒子の含有量を、0.2%以下となるようにしたことからも、微粒子の凝集を抑制する効果を得ることが出来る。そして、微粒子が添加される前または後の工程で、セルロースアシレートドープを少なくとも1回濾過するようにしたので、異物を除去することにより、平面性に優れるセルロースアシレートフィルムを製造することが出来る。
さらに、本発明では、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを基層用ドープとし、上記いずれかひとつ記載のセルロースアシレートドープを表層用ドープとして、この基層用ドープと表層用ドープとを、走行する支持体上に共流延することにより、基層と、基層の両表面に表層とを配する流延膜を形成した後、この流延膜を乾燥させて複層構造のフィルムとするようにしたので、基層の外側に、微粒子を含む表層を設けたフィルムを形成することが出来る。これにより、フィルムをロール状に巻き取って原反状態で長時間保管しても、接触界面同士の接着を抑制することが出来るので扱いやすく、また、接着抑制により、製品として使用する際に、引っ付いたり、破れたりすることが無いので、平面性に優れるフィルム製品を提供することが出来る。
本発明の実施態様について、以下に説明する。ただし、本発明はここに挙げる態様に限定されるものではない。
図1に、本実施形態に用いるドープ製造設備10の一例の概略図を示す。ドープ製造設備10には、ドープの溶媒となる溶剤を貯留するための第1タンク11と、所定の添加剤を貯留する第2タンク12と、TACを供給するためのホッパ15と、ドープを構成する材料を混合する溶解タンク16とが備えられている。また、溶解タンク16の下流には、溶解タンク16で攪拌混合された混合液17を加熱する加熱装置21と、加熱された混合液17の温度を調整してポリマー溶液22とする温調装置23と、この混合液17を濾過する第1濾過装置24及び第2濾過装置25と、混合液17を濾過した後に得られるポリマー溶液22の濃度を調整するフラッシュ装置27と、ポリマー溶液22の濃度をフラッシュ装置27で調整する際に発生する溶剤ガスを回収する回収装置31と、この溶剤を再生する再生装置32と、さらには、ポリマー溶液22を貯留するためのストックタンク33とが備えられている。
このストックタンク33には、3本の送液ラインL1〜L3が接続されている。各送液ラインL1〜L3の片端は、フィルム製造設備40内の流延ダイ(図3参照)に接続されており、ポリマー溶液22の所望の微粒子を添加させてドープを調製後、このドープを、適宜適量フィルム製造設備40へと供給する。
第1送液ラインL1及び第3送液ラインL3には、分散液34が貯留されている第3タンク35がインライン接続されている。この分散液34は、予め、マット剤である微粒子と所定の溶媒とを混合し分散させた溶液である。そして、第1送液ラインL1及び第3送液ラインL3には、第3タンク35との接続点の下流側にスタティックミキサ36,37がそれぞれ配されており、各ラインにそれぞれインラインで添加された分散液35とポリマー溶液22とを攪拌混合して、流延用ドープを調製する。なお、分散液34の調製方法は、本発明において特に限定されるものではない。また、分散液34の中には、微粒子や溶媒の他に、所望の添加剤を含ませてもよい。
さらに、第1送液ラインL1及び第3送液ラインL3の各スタティックミキサの下流には、それぞれ濾過装置38,39が設けられている。これにより、分散液34が添加されたポリマー溶液22を濾過して、異物が除去された流延用ドープを調製することが出来る。ストックタンク33から第2送液ラインL2に送液されるポリマー溶液22は、分散液34が添加されること無く、そのままの状態でフィルム製造設備40に送液される。なお、本実施形態では、基層と、この基層の両表面にそれぞれ表層を配した3層構造の流延膜を形成し、流延膜の表層を形成するドープを表層用ドープ42a,42bとし、流延膜の内側に位置する基層を形成するドープを基層用ドープ43とする。以下、これらのドープは、総称して流延用ドープとする。
なお、本発明では、ポリマー溶液22に分散液34を混合した後に、濾過装置により濾過を行なうことが好ましい。このように流延する前に、流延用ドープを濾過すると、異物を除去することが出来るので、平面性に優れるフィルムを製造することが可能となる。そこで、本実施形態では、濾過装置38,39を設けて、表層用ドープ42a,42bを濾過している。ただし、濾過装置としては、第1濾過装置24及び第2濾過装置25等と略同等の形態のものを使用すればよく、特に限定されるものではない。各濾過装置の詳細は後述する。また、分散液34の分散媒として使用する液は、第1タンク11に貯留されているものを使用することが好ましい。ただし、上記の液に代えてポリマー溶液22と同じあるいは略同等の組成を示す溶液等を使用しても良い。これにより、ポリマー溶液22に対する微粒子の分散性を向上させることが出来る。
また、上述の溶解タンク16には、図1に示すように、その外面を包み込んで伝熱媒体を流すためのジャケット45と、モータ46により回転する第1攪拌機47と、モータ48により回転する第2攪拌機49とが取り付けられている。なお、第1攪拌機47は、アンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機49は、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。加えて、ストックタンク33にも、溶解タンク16と同様に、その外面を包み込んで伝熱媒体を流すためのジャケット51と、モータ52により回転する攪拌機53とが取り付けられている。その他にも、ドープ製造設備10には、送液用の第1〜第3ポンプP1〜P3と、バルブV1〜V3とが備えられているが、ポンプ及びバルブを設ける位置や、設置数等は適宜変更される。
次に、このドープ製造設備10を用いたドープ製造方法を説明する。最初に、バルブV1を開いて第1タンク11から、溶解タンク16に所定量の溶剤が送られる。このとき、ホッパ15からは、適宜適量のTACが溶解タンク16に送られる。そして、バルブV2を開いて第2タンク12から、添加剤が溶解タンク16に送られる。この添加剤は、予め所定の溶剤に溶解させた溶液状態あるいは、分散させた分散状態で、バルブV2の開閉を調整することにより必要量が溶解タンク16へと送られる。添加剤を溶解または分散させる溶剤は、通常、第1タンク11に貯留される溶剤と同一のものとされるが、添加剤の種類に応じて適宜代えることが出来る。
なお、添加剤が固体の場合には、第2タンク16に代えてホッパ等を用いて、溶解タンク16に送り込んでも良い。さらに、複数種類の添加剤を添加する場合には、予め、各添加剤を溶剤に溶解させた溶液を調製しておき、それを第2タンク12から溶解タンク16へと送液したり、各添加剤を含有した溶液の種類に応じて複数のタンクを用意し、各タンクと溶解タンク16とを送液ラインにより接続してから、溶解タンク16へと送液しても良い。また、添加剤が常温で液体の場合には、溶剤を使用せずに溶解タンク16に送り込むことも出来る。
なお、本実施形態では、溶解タンク16に送液するドープ原料の順番を、溶媒、TAC、添加剤の順としたが、この順番に限定されるものではない。例えば、TAC、溶媒、添加剤の順でも良い。また、添加剤は、溶解タンク16の中で各ドープ原料と混合する必要はなく、分子量が小さく揮発しやすい添加剤を使用する場合等は、加熱処理を行なった後の工程で添加する等、その種類や性質等を考慮して、適宜混合させれば良い。
溶解タンク16の内部温度は、ジャケット45内部に流れる伝熱媒体の温度により制御されており、その好ましい温度範囲は、−10〜55℃である。また、第1攪拌機47及び第2攪拌機49を適宜選択して回転させることにより、溶剤とTACとを混合させた混合液17を得ることが出来る。
調製された混合液17は、ポンプP1により加熱装置21に送られる。加熱装置21は、温調制御が可能なジャケット付き配管であることが好ましい。このように、加熱装置21により混合液17を加熱すると、膨潤状態の混合液17における固形分の溶解を促進させることが出来る。この加熱装置21による混合液17の加熱温度は、混合液17中に含まれる各原料が熱ダメージを受けないようにするため、0〜97℃であることが好ましい。したがって、ここでの加熱とは、室温以上の温度に混合液17を加熱するという意味ではなく、溶解タンク16から送られてきた混合液17の温度を上昇させると言う意味である。すなわち、例えば、送られてきた混合液17の温度が−7℃であるときには、0℃にする場合等も含まれる。なお、この加熱装置21には、混合液17を加圧するための加圧手段が備えられていることが好ましい。この加圧手段により混合液17を加圧することで、溶媒に対するTACの溶解をより促進させることが出来る。
なお、加熱装置21による加熱溶解に代えて、膨潤液である混合液17を冷却することにより溶解を促進させる冷却溶解法を適用することも出来る。このとき、周知のように、混合液17を−100〜−10℃に冷却させれば良い。上記の加熱溶解法及び冷却溶解法を、各原料の性状等に応じて適宜選択して実施することにより、混合液17の溶解性を制御することが出来る。
加熱して溶解を促進させた混合液17を、温調装置23により略室温とすることで溶剤にポリマーが溶解したポリマー溶液22を得ることが出来る。ただし、ここでは、温調装置23を出た後の液をポリマー溶液22と称しているが、加熱装置22を出た時点で、既に溶剤中にTACが溶解している場合が多く、このような溶剤中にポリマーが溶解した液も、本発明のポリマー溶液に含まれる。ポリマー溶液22は、第1濾過装置24により濾過されて異物等が除去される。なお、この第1濾過装置24で使用されるフィルタは、異物の除去を効率良く行なうために、その平均孔径が100μm以下であることが好ましく、濾過流量は50L/時以上であることが好ましい。濾過後のポリマー溶液22は、バルブV3を介してストックタンク33に送られ、ここに貯留される。
上記のように混合液17を作ってからポリマー溶液22を調製する方法では、作るべきポリマー溶液22の濃度が高いほど、調製に要する時間が長くなるため、製造コストの増大を引き起こす等の問題が生じる。そこで、このような問題を回避するためには、目的とする濃度よりも低濃度のポリマー溶液を調製した後、所望の濃度となるように濃縮させることが好ましい。この方法としては、先ず、上述の手順により、所望の濃度よりも低濃度のポリマー溶液22を調製する。そして、このポリマー溶液22を第1濾過装置24により濾過した後、バルブV3を介してフラッシュ装置27に送り込み、そこでポリマー溶液22中の溶媒の一部を蒸発させる。これにより、ポリマー溶液22を濃縮させて所望の濃度に調整する。なお、蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮液化された後に、回収装置31により回収される。そして、回収された溶媒は、再生装置32により再生される。この再生された溶媒を、混合液17を調整する際に使用すると、原料コストを削減出来る等の効果を得ることが可能となる。
上記のように濃縮されたポリマー溶液22は、ポンプP2によりフラッシュ装置27から抜き出される。そして、第2濾過装置25に送られ濾過されることにより異物が除去された後、ストックタンク33に送られて貯留される。なお、ポリマー溶液22をフラッシュ装置27から抜き出す際には、ポリマー溶液22中に発生した気泡を抜くために、泡抜き処理を施すことが好ましい。この泡抜き処理の方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば、超音波照射法が挙げられる。また、第2濾過装置25により濾過される際のポリマー溶液22の温度は、0〜200℃であることが好ましい。
ストックタンク33に貯留されるポリマー溶液22は、ジャケット51に流す伝熱媒体の温度制御により温度が調整されているとともに、攪拌機53の回転により常時、攪拌混合されているので、均一に保持されている。そして、このストックタンク33から、適宜適量のポリマー溶液22が各送液ラインへと送り込まれる。このとき、第1送液ラインL1及び第3送液ラインL3に送り込まれたポリマー溶液22には、ポンプP3により第3タンク35から分散液34がインライン添加される。そして、スタティックミキサ36、37により攪拌混合された後、濾過装置38,39により濾過されて、表層用ドープ42a,42bが調製される(同順符号)。一方で、第2送液ラインL2に送り込まれたポリマー溶液22は、そのままの状態で基層用ドープ43としてフィルム製造設備40に送られる。
なお、表層用ドープ42a,42b及び基層用ドープ43を形成する際にポリマーとしてトリアセチルセルロース(TAC)を使用する場合、ポリマー溶液22中のTAC濃度は、5〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは、TAC濃度が15〜30質量%であり、特に好ましくは、17〜25質量%である。また、添加剤(主に可塑剤)の濃度は、ポリマー溶液22中の固形分全体に対して、1〜20質量%とすることが好ましい。このようなTACフィルムを製造する溶液製膜法での流延用ドープの製造方法(例えば、素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡等)は、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することが出来る。
なお、本実施形態では、微粒子をポリマー溶液22に添加して分散させる方法として、インライン添加する方法(第1添加方法)を示したが、この形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示すような第2添加方法や第3添加方法も本発明に好ましく用いることが出来る。前者の第2添加方法とは、先ず、溶剤と微粒子とを攪拌混合した後、さらに、分散機を用いて分散を行なうことで分散液を調製する。次に、少量のセルロースアシレートを溶剤に加えてから攪拌溶解させたものに、前述の分散液を加え攪拌した後、ポリマー溶液に加えることで表層用ドープとする。後者の第3添加方法とは、先ず、溶剤に少量のセルロースアシレートを添加し、攪拌溶解させたところに、微粒子を加えてから分散機により攪拌分散を行う。次に、これをポリマー溶液に加えて十分に混合させる。
本発明では、表面が疎水化処理としてアルキル化処理された微粒子を使用する。また、ポリマー溶液22に添加する前に、使用する微粒子を溶媒に混合させて調製した分散液のゼータ電位(mV)を測定し、そのゼータ電位の絶対値|Ζ|が、3≦|Ζ|≦9の条件を満たすようにする。より好ましくは、4≦|Ζ|≦8であり、特に好ましくは、5≦|Ζ|≦7である。このゼータ電位Ζとは、互いに接している固体と液体とが相対運動を行なう場合に、両者の界面に生じる電位差を意味し、固体と液体との結合あるいは分散状態を示す。本発明では、分散液中の、微粒子と溶剤との電位差を指す。上記のような範囲を満たす場合には、溶剤中の微粒子の分散性に非常に優れた分散液を得ることが出来るので、このような分散液をポリマー溶液に添加することにより、微粒子の分散性に優れるドープを得ることが可能となる。本実施形態では、ポリマー溶液22に分散液34を添加する前に、分散液34を採取し、この採取液のゼータ電位を超音波測定装置(Dispersion Technology社製 DT1200)により測定する。ただし、ゼータ電位の測定方法は特に限定されるものではなく、ゼータ電位測定用装置として市販されている装置を用いれば良い。また、本実施形態では、添加前の分散液34の一部をサンプルとして採取する方法を示したが、特に限定されるものではなく、第3タンク35と第1送液ラインL1及び第3送液ラインL3とを結ぶ配管の途中にゼータ電位測定装置を設けて、送液する分散液34のゼータ電位をオンラインで測定することも可能である。なお、第3タンク35から分散液36をポリマー溶液22に添加する場合には、ポンプP3を制御することにより、その添加速度を略一定とすることが好ましい。
なお、微粒子は、二酸化ケイ素誘導体を用いる。この二酸化ケイ素誘導体とは、二酸化ケイ素であり、三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂も含まれる。このように微粒子として二酸化ケイ素誘導体であり、さらにはその表面がアルキル化処理されたものを使用すると、アルキル化処理という疎水化処理が施されているために、溶媒に対しての分散性が良い。したがって、微粒子同士の凝集を抑制してフィルムを製造することが出来るので、面状欠陥が少なく、かつ透明性に優れるフィルムを製造することが可能となる。
なお、アルキル化処理された微粒子の表面に導入されるアルキル基は、炭素数が1〜20とする。より好ましくは、導入されるアルキル基の炭素数が、1〜12であり、特に好ましくは、炭素数が1〜8である。このようなアルキル基が導入された微粒子では、微粒子同士の凝集をより抑制し、かつ分散性を向上させることが出来る。上記のように表面に炭素数が1〜20のアルキル基を有する微粒子は、例えば、二酸化ケイ素の微粒子をオクチルシランで処理することにより得ることが出来る。また、表面にオクチル基を有する二酸化ケイ素誘導体の一例としては、アエロジルR805(日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、本発明では、これも好ましく用いることが出来る。
ドープの固形分に対する微粒子の含有量は、0.2%以下となるようにする。なお、微粒子の含有量は、ドープを調製する際に、上記の範囲を満たすように使用する溶剤に対する微粒子の添加量を決定して調整する。このように含有量を制御しながら微粒子を添加して調製したドープでは、微粒子の凝集による異物の発生を抑制することが出来るので、優れた透明性を有する等の光学特性を示すフィルムを製造することが可能となる。また、上記の微粒子は、平均粒径が1.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3〜1.0μmであり、特に好ましくは、0.4〜0.8μmである。
なお、本発明においてドープを調製する際に使用する微粒子は、表面が疎水化処理された微粒子を用いる。また、これらの微粒子の疎水化度は、予めドープを調製する前に以下に示すMW(メタノールウェッタビリティー)法により定量化し、把握することが好ましい。なお、後述の式(I)により求められる値をMW値とし、これを、定量化した微粒子の疎水化度指標として扱うことが好ましい。図2に、MW法の流れを意味する説明図を示す。ただし、本発明は、以下の様態に限定されるものではない。
〔MW法〕
(1)メタノール61と純水62とを、体積比が4:6となるように混合し、第1溶液を調製する(例えば、メタノール溶液61が40mlに対して、純水62が60ml)
(2)次に、10mlの沈降管65を用意し、この中に、0.2gの微粒子粉末66と、先ほど調製した第1溶液67を7ml入れる。
(3)沈降管65に蓋をして注入口を塞いだ後、ターブラーミキサ(図示しない)により、微粒子粉末66を第1溶液67中に振盪混合する。この際、ターブラーミキサの攪拌条件を、90rpmで30秒間とする。
(4)さらに、遠心分離機(図示しない)により、微粒子粉末66の沈降物68と溶液69とを分離させる。遠心分離機の条件は、3500rpmで10分間である。
(5)沈降管65の目盛から、沈降物68の体積を読み取り、その値をtmlとする。
(6)新たに、メタノール70と純水71とを、体積比が6:4となるように混合して、第2溶液を調製する(例えば、メタノール70が60mlに対して、純水71が40ml)。
(7)第2溶液72と微粒子粉末73とを用いて、上記(2)〜(5)と同じ手順(8)〜(10)により、微粒子粉末73の沈降物75と溶液76とを分離させる。そして、沈降管74の目盛から沈降物75の体積を読み取り、その値をsmlとする。
(11)上記のようにして得られたtとsとを下記の式(I)に当てはめて、微粒子のMW値(%)を求める。
(I):MW値(%)=(t/s)×100
例えば、第1溶液67を用いた際での微粒子の沈降物68の体積tが1mlであり、第2溶液72を用いた際での微粒子の沈降物75の体積sが5mlの場合は、MW値(%)=(1/5)×100=20となり、微粒子粉末の疎水化度は20%と算出される。
使用する微粒子においては、上述のMW法により算出したMW値が、20%以下であることが好ましい。このような微粒子を用いると、微粒子同士の凝集を効果的に抑制することが出来る。ただし、本発明において、流延用ドープの溶媒を複数の化合物の混合物とする場合には、この混合物の主成分を疎水性の有機化合物(以下、疎水性溶剤と称する)とする。なお、主成分とは、混合物中にもっとも多く含まれる成分の意味である。そのため、MW値が20%を越えると、粒子表面の疎水化が不十分であるため、上記のような疎水性溶剤を用いた溶液中では、微粒子の凝集が起こりやすくなる。
次に、上記の方法により製造した表層用ドープ42a,42b及び基層用ドープ43を用いてフィルムを製造する方法を説明する。図3は、本実施形態に用いるフィルム製造設備40の概略図である。フィルム製造設備40は、流延用ドープを走行する支持体上に流延して流延膜80を形成する流延室81と、流延膜80を支持体より剥ぎ取って得られる湿潤フィルム83の乾燥を促進させてフィルム84とする渡り部86及びテンタ87と、乾燥室88と、フィルム84を略室温とする冷却室89と、乾燥したフィルム84をロール状に巻き取る巻取室90とからなる。なお、本実施形態では、表層用及び基層用となる複数種の流延用ドープを共流延することにより、複層構造のフィルム84を製造する。
流延室81には、フィードブロック93と、調製された各種ドープの流延口となる流延ダイ94と、支持体である冷却ドラム95と、冷却ドラム95の内部に冷却溶媒(冷媒)を供給する冷媒供給装置96と、冷却ドラム95から流延膜80を剥ぎ取る剥取ローラ97と、凝縮器(コンデンサ)98と、回収装置99とが備えられている。また、流延ダイ94には、その背部周辺を所望の圧力に減圧させる減圧チャンバ100が取り付けられている。
流延ダイ94に関して説明する。流延ダイ94としては、コートハンガー型のものを用いることが好ましい。その幅は、特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルム23の幅に対して1.1〜2.0倍程度のものを用いることが好ましく、その表面粗さは、1μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。そして、その材質は、耐腐食性等の観点から析出硬化型のステンレス鋼を用いることが好ましいが、塩化メチレンや。メタノール、水の混合用液に3ヶ月浸漬させても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いることが好ましい。なお、耐腐食性の観点からは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものも好ましく用いることが出来る。また、熱ダメージを抑制するために、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下である素材を用いることが好ましい。
また、流延ダイ94は、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して作製することが好ましい。これにより、流延ダイ94の内部にドープを円滑かつ一様に流すことが出来るので、スジ等の発生を抑制しながら流延膜80を形成することが出来る。その他にも、流延ダイ94の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。そして、ドープの流延口となるスリットのクリアランスは、自動調整により0.5〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いることが好ましい。その他にも、流延ダイ94のリップ先端の接液部の角部分において、Rがスリット全巾に亘り50μm以下のものを用いることが好ましい。なお、流延ダイ94の内部の剪断速度は、1〜5000(1/秒)となるように調整されているものを用いることが好ましい。
また、流延ダイ94に温調機(図示しない)を取り付けて、その内部の温度が所定の範囲で保持されるように調整することが好ましい。さらに、流延ダイ94の幅方向に、所定の間隔で厚み調整ボルト(ヒートボルト)とこのヒートボルトによる自動厚み調整機構とを取り付けて、あらかじめ設定されるプログラムによりヒートボルトを制御することにより、ドープを流延ダイ94に送液する際に使用するポンプ(図示しない)の送液量を調整しながら製膜を行うことが好ましい。このとき、フィルム製造設備10内に厚み計(例えば、赤外線厚み計)を設けて、このプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。なお、流延エッジ部を除いて任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向での厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ94のリップ先端には、耐摩耗性の向上等を目的として、硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、セラミックスコーティングやハードクロムめっき、及び窒化処理方法等が挙げられる。ただし、硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削加工が可能であり、低気孔率、かつ脆性及び耐腐食性に優れるとともに、流延ダイ94に対しては密着性に優れるが、一方で流延するドープに対しては密着性に劣るものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)やAl2 3 、TiN、Cr2 3 等が挙げられるが、中でも、WCを用いることが好ましい。なお、WCのコーティングは、溶射法で行うことが出来る。
また、スリット端に溶媒供給装置(図示しない)を取り付けて、流延するドープを可溶化させる溶媒(例えば、塩化メチレン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部及びスリットと外気との両気液界面に供給することが好ましい。これにより、流延ダイ94のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止することが出来る。可溶化溶媒の供給量は、特に限定されるものではないが、スリット端部の片側ごとに、0.1〜1.0mL/分の範囲で供給すると、流延膜80の内部への異物の混入を防止することが出来るので好ましい。なお、可溶化溶媒を供給する際には、脈動率が5%以下のポンプを用いることが好ましい。
ドープを流延する際には、流延ダイ94に取り付けられている減圧チャンバ100により、流延ビードの背面部の減圧度を調整し、流延ビードの後方を減圧することが好ましい。これにより、風の流れ等の影響を受けることなく安定した流延ビードを形成させることが出来るので、しわやつれ等を発生させずに面状に優れる流延膜80を形成させることが出来る。このとき、流延ビードの背面は、特に限定されるものではないが、(大気圧−2000Pa)以上(大気圧−10Pa)以下の範囲で減圧することが好ましい。なお、減圧チャンバ100には、ジャケット(図示しない)を取り付けて、その内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。減圧チャンバ100の温度は特に限定されるものではないが、使用する溶媒の凝縮点以上にすることが好ましい。その他に、流延ビードの形状を所望のものに保つため、流延ダイ94のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。このエッジ吸引風量は、1〜100L/分の範囲であることが好ましい。
流延ダイ94の下方に設けられている流延ドラム95には、駆動装置(図示しない)が取り付けられている。そして、流延ドラム95は、この駆動装置により所定の回転数で回転する。また、流延ドラム95の内部には、伝熱媒体流路(図示しない)が形成されている。そして、冷媒供給装置96により、この伝熱媒体流路の内部に所定の温度に調整された伝熱媒体を送液した後、これを循環または通過させると、冷却ドラム95の表面温度を所定の値に調整することが出来る。なお、流延ドラム95の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1〜2.0倍程度のものを用いることが好ましい。そして、その表面粗さは、平面性に優れる流延膜80を形成させることを目的として、表面粗さが0.05μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。加えて、その材質は、耐腐食性等の観点からステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。
また、流延室81には、その中の温度を所定の値に保つため温調設備101が取り付けられている。そして、この温調設備101により、流延室81の内部の温度は、0〜60℃となるように調整されることが好ましい。なお、流延膜80を乾燥させる際に発生し、流延室81の内部に浮遊する揮発溶媒は、凝縮器(コンデンサ)98により凝縮液化される。そして、液化された溶媒は、回収装置99により回収された後、再生装置(図示しない)で再生される。この再生溶媒は、ドープ調製用溶媒として再利用することが出来るので、原料コストの低減を図ることが可能となる。
流延室80の下流には、渡り部86とテンタ87とが設けられている。渡り部86には、複数のローラ104と乾燥装置105とが備えられており、冷却ドラム95から剥ぎ取られた流延膜80(すなわち、湿潤フィルム83)を、複数のローラ104により支持しながら搬送する間に、乾燥装置105を用いて乾燥を促進させる。テンタ87には、把持手段である複数のクリップ(図示しない)と内部温度を調整する乾燥装置(図示しない)とが備えられている。そして、各クリップにより湿潤フィルム83の両側端部を把持した後、テンタ87の内部を搬送する間に、上述の乾燥装置により乾燥を促進させてフィルム84を得る。なお、テンタ87では、湿潤フィルム83を幅方向に延伸及び緩和させることも出来る。これにより、フィルム84のレタデーション値を制御し、所望の光学特性を付与することが出来る。ただし、渡り部86やテンタ87では、所望のレタデーション値を付与するために、湿潤フィルム83の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を、0.5〜300%延伸させることが好ましい。
テンタ87の下流には、耳切装置107が設けられている。この耳切装置107には、クラッシャ108が備えられており、耳切装置107により切断されたフィルム84の両側端部は、クラッシャ108に送り込まれ、粉砕される。
乾燥室88には、複数のローラ110と吸着回収装置111とが備えられている。幅方向や搬送方向に対して延伸されたフィルム84は、各ローラ110に巻き掛けられながら搬送される間に、より乾燥が促進される。また、乾燥室88の下流には、冷却室89が設けられている。この冷却室89では、十分に乾燥が促進されたフィルム84は、その温度が略室温となるまで徐々に冷却される。これにより、急激な温度変化によりフィルム84の表面にしわやつれ等の欠陥が生じることを抑制する効果を得ることが出来る。さらに、冷却室89の下流には、強制除電装置(除電バー)113が設けられている。なお、本実施形態では、強制除電装置113の下流側に、ナーリング付与ローラ114を設けている。そして、巻取室90の内部には、巻取ローラ115とプレスローラ116とが備えられている。
上記に示すフィルム製造設備40を用いてフィルム84を製造する方法の一例を説明する。ただし、本発明は、ここに示す形態に限定されるものではない。
ドープ製造設備10内部のストックタンク33に貯留されているポリマー溶液22を、第1〜第3送液ラインL1〜L3に適宜適量送り込む。このとき、第1送液ラインL1及び第3送液ラインL3には、第3タンク35から適量の分散液36をポンプP3により送り込み、続けて、スタティックミキサ37,38で攪拌混合することにより、表層用ドープ42a,42bを調製する。なお、第2送液ラインL2に送り込まれたポリマー溶液22は、そのままの状態で基層用ドープ43としてフィルム製造設備40に送り込む。
表層用ドープ42a,42b及び基層用ドープ43を、それぞれ所望の流量となるように調整しながらフィードブロック93に送り込む。フィードブロック93の内部では、所望の層構造を有するフィルムを形成することが出来るように各ドープの流路が形成されている。次に、フィードブロック93で所定の位置で合流した各ドープを、流延ダイ94から流延ビードを形成させながら冷却ドラム95の上に流延し、流延膜80を形成する。このとき、各ドープの温度は、−10〜57℃であることが好ましい。なお、流延膜80の厚みは、10〜400μmの範囲内で略一定の値となるようにする。より好ましくは20〜150μmの範囲内で略一定の値とすることであり、特に好ましくは、厚みを25〜100μmの範囲内で略一定の値とすることである。上記の範囲を満たすような膜厚となる流延膜80を形成すると、より短時間で流延膜80の乾燥を促進させることが出来る。
本発明では、上記のように複数のドープを共流延することにより複層構造の流延膜80を形成する。流延膜80は、内側に位置する基層と、この基層の両表面に接するように形成される少なくとも1層以上の表層とからなる多層構造となるようにする。本実施形態では、基層と、その両側に接する2層の表層とからなる3層構造の流延膜80を形成する。上記のような複層構造の流延膜80は、各層を形成するドープを個々に用意し、これらのドープを共流延することにより形成すれば良い。このように共流延により複層構造の流延膜80を形成すると、製造速度の向上を図りながらも、凹凸ムラが低減された平面性に優れるフィルムを製造することができ、かつ、表層に機能性材料を含有させた場合には、様々な機能を発現させたフィルムを製造することが出来る。
なお、冷却ドラム95の速度変動を3%以下とすることが好ましい。さらに、流延ダイ94の直下での冷却ドラム95は、安定した流延ビードや平面性に優れる流延膜80を形成させるために、その上下方向の位置変動が500μm以下となるように調整することが好ましい。流延室81の内部温度は、温調設備101により−10〜57℃とされている。また、流延室81の内部では、蒸発した溶媒をコンデンサ98により凝縮液化させた後、回収装置99により回収し、さらに再生装置(図示しない)により再生させてドープ調製用溶媒として再利用する。
冷媒供給装置96から所定の温度に調整した冷媒を、冷却ドラム95の内部に供給し、これを循環・通過させることにより、冷却ドラム95の表面温度が所定の範囲を満たすように調整する。これにより、流延されるドープを冷却ゲル化させて流延膜80を形成する。そして、流延膜80の乾燥が促進されて自己支持性を有するものとなった後、この流延膜80を剥取ローラ97により冷却ドラム95から剥ぎ取って、湿潤フィルム83を形成する。なお、この剥ぎ取り時における湿潤フィルム83の残留溶媒量は、固形分基準で10〜200質量%となるようにする。
続けて、湿潤フィルム83を渡り部86に送り込み、複数のローラ104で支持しながら搬送する間に、乾燥装置105から所望の温度に調整した乾燥風を吹き付けて湿潤フィルム83の乾燥を促進する。なお、渡り部86での乾燥風の温度は、20〜250℃で略一定とすることが好ましい。この乾燥風の温度は、流延用ドープに使用するポリマーや添加剤等の原料種や製造速度を考慮して、上記の範囲の中で任意に決定すれば良い。また、渡り部86では、下流側に配されるローラ104の回転速度を、上流側に配されるローラ104の回転速度より速くすることで、湿潤フィルム83に張力を付与することも出来る。このように高残留溶媒量の湿潤フィルム83に張力を付与すると、レタデーション値を効率良く制御することが出来る等の効果を得ることが可能となるので好ましい。
なお、本発明における残留溶媒量とは、対象となるフィルム(流延膜や湿潤フィルムも含まれる)の主溶媒の残留溶媒量である。ただし、対象となるフィルム中に多種の溶媒が存在する場合には、もっとも含有量の多い溶媒を主溶媒とみなす。この残留溶媒量は乾量基準でのものであり、サンプリング時におけるフィルム重量をx、そのサンプリングフィルムを完全に乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。
続いて、乾燥を促進させた湿潤フィルム83をテンタ87に送り込む。テンタ87では、無端で走行するチェーンに取り付けられた複数のピンに湿潤フィルム83の両側端部を突き刺して固定した後、チェーンの走行に伴い搬送する。このとき、乾燥手段により湿潤フィルム83の乾燥を促進させることにより、フィルム84とする。なお、搬送する途中の段階では、チェーンの幅方向での間隔を変更することにより、湿潤フィルム83を幅方向に延伸することが好ましい。これにより、テンタ87から搬出されるフィルム84のレタデーション値を所望の値に調整することが出来る。さらには、テンタ87の内部は、複数に区画し、各区画において異なる乾燥温度にする等、乾燥条件を調整しながら乾燥すると、乾燥温度と伸縮条件とのバランスを好ましく調整しながら延伸乾燥作業を行うことが出来るので、フィルム84の平面性低下や破断による欠陥の発生を抑制することが可能となる。なお、渡り部86やテンタ87では、湿潤フィルム83のレタデーション値を調整するために、搬送方向と幅方向との少なくとも1方向を、0.5〜300%程度に延伸することが好ましい。
また、テンタ87において湿潤フィルム83を延伸している間は、乾燥温度を略一定に保持することが好ましい。これにより、乾燥温度による延伸への影響を低減することが出来るので、湿潤フィルム83が過度に伸縮されるのを抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、複数のピンを有するピン型のテンタ107を示したが、搬送させるフィルムの両側端部を固定することが出来る手段を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、チェーンの走行により移動し、湿潤フィルム83の両側端部を固定するクリップを複数設け、このクリップで湿潤フィルム83の両側端部を把持した後、テンタ87の内部を搬送する間に乾燥を促進させてもよい。ただし、本実施形態のように、冷却ドラムを使用する場合には、完全に膜化せずにゲル状である流延膜が形成されるので、優れた搬送安定性を発現させることを目的として、ピン型のテンタを使用することが好ましい。
乾燥が進行したフィルム84を耳切装置107に送り込み、その両側端部を切断する。なお、フィルム84の両側端部を切断する本処理は省略することも出来るが、流延室81から巻取室90までのいずれかで行うことが好ましい。本実施形態のように、テンタ87の下流側に耳切装置107を設け、切断処理を行うと、クリップで把持される等して傷付いたフィルム84の両側端部を切断除去することが出来るので、平面性に優れるフィルム84を得ることが出来る。
乾燥室88では、フィルム84を多数のローラ90に支持しながら搬送する間に乾燥を促進させる。乾燥室88の内部温度は、特に限定されるものではないが、フィルム84の膜温度が60〜145℃となるように調整すると、フィルム84を構成するポリマーの熱ダメージを抑制しながらも、溶媒を効果的に揮発させることが出来る。なお、フィルム84の溶媒が蒸発することにより生成した溶媒ガスは、吸着回収装置111により回収し、溶媒成分を除去した後、再度、乾燥室88の内部に乾燥風として送風する。
乾燥室88で十分に乾燥させたフィルム84を冷却室89に送り込み、略室温となるまで冷却する。なお、乾燥室88と冷却室89との間に調湿室(図示しない)を設けて、フィルム84を調湿した後、冷却室89に送り込むようにすると、フィルム84の表面に生じていたしわやつれ等を効果的に矯正することが出来るので、平面性に優れるフィルム84を得ることが可能となる。
強制除電装置113により、フィルム84の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3〜+3kV)となるように調整する。なお、図3では、強制除電装置113の設置箇所を、冷却室89の下流側とする形態を示しているが、この位置に限定されるものではない。また、ナーリング付与ローラ114により、フィルム84の両側端部にエンボス加工を施してナーリングを付与する。
以上により、図4に示すような、フィルム84を得ることが出来る。本実施形態においては、表層用ドープ42a,42b及び基層用ドープ43を同時に流延することにより、基層120の両表面に表層121a,121bが設けられた3層構造のフィルム84が得られる。このフィルム84は、異物により表面が傷ついたりすることが低減されるために、非常に平面性に優れている。
最後に、プレスローラ116により巻き取り時の張力を調整しながら、フィルム84を巻取ローラ115に巻き取る。なお、巻取り時の張力は、巻取開始時から終了時までの間で徐々に変化させることがより好ましい。巻き取るフィルム84は、搬送方向に少なくとも100m以上とすることが好ましく、幅方向が1400〜1800mmであることが好ましい。ただし、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果を得ることが出来る。また、フィルム84の厚みは、特に限定はされないが、15〜100μmの薄いフィルム23を製造する際にも本発明の効果を得ることが出来る。なお、本発明では、微粒子と溶剤とを混合させた分散液のゼータ電位を予め測定し、このゼータ電位の絶対値が所定の範囲を満たすようにしたので、経時に係わらず流延用ドープ中で微粒子が凝集する現象を抑制することが出来る。これにより、平面性に優れるフィルムを製造することができ、さらには、上記のようにロール状のフィルムを保存貯蔵しても、接触面同士での接着を抑制することが出来る等の効果を得ることが可能となる。
本発明では、基層と表層とを形成するドープを複数種用いて、これらを共流延することにより流延膜を形成させるが、この共流延は、本実施形態のように、2種類以上のドープを同時積層共流延させる形態でも良いし、図5に示すように、表層用ドープ42a,42b及び基層用ドープ43に対応する流延ダイ130〜132をそれぞれ設けて、これらの流延用ドープを、走行する支持体(冷却ドラム95)の上に、逐次に積層共流延させる形態でも良い。このように逐次共流延しても、図4に示すような所望の複層構造を有する流延膜80を形成することが出来る。なお、これらの両共流延を組み合わせても良い。
そして、同時積層共流延を行う際には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型の流延ダイを用いても良い。ただし、共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープで包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合に、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
なお、表層用ドープの粘度(Pa・s)は、40Pa・s以下となるように調整することが好ましい。これにより、内側に位置する基層よりも表層が早く乾燥されるので、基層を保護する効果を得ることが出来る。そして、表層で保護された基層の内部は、徐々に乾燥が促進されるので溶媒の発泡が抑制される。そのため、平面性に優れ、さらには発泡などの欠陥が低減された流延膜80を形成することが出来る。ただし、表層用ドープの粘度が40Pa・sよりも大きいと、高粘度のために、流延膜80の表面に凹凸ムラが生じやすく、かつ流延速度の遅延により、製造時間が延長される等の問題が生じるので好ましくない。
また、耳切装置85と乾燥室30との間に予備乾燥室(図示しない)を設けて、フィルム23を予備乾燥すると、乾燥室30においてフィルム23の膜面温度が急激に上昇することによる形状変化等を抑制することが出来るので好ましい。
本発明において、流延用ドープを調製する際に使用する各種原料について説明する。
本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(a)〜(c)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることが出来るポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(a) 2.5≦A+B≦3.0
(b) 0≦A≦3.0
(c) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することが出来る。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することが出来る。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
本発明において、ドープの溶媒には、セルロースアシレートを溶解することが出来る化合物を用いる。この溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)等が挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
ただし、溶媒としては疎水性のものが好ましく、この疎水性溶媒としては塩化メチレンがもっとも好ましい。なお、上記のハロゲン化炭化水素においては、炭素原子数1〜7のものが好ましく用いられる。また、セルロースアシレートの溶解性や、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、さらには、フィルムの機械強度、光学特性等の観点から、塩化メチレンに炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないしは、数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましい。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、塩化メチレンを用いない溶媒組成も提案されている。この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いる。なお、これらのエーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していても良いし、エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も有機溶媒として用いることが出来る。また、有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していても良い。そして、2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合には、その炭素原子数が、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であれば良く、特に限定はされない。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することが出来る。また、溶媒及び可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤等の添加剤についても、同じく、特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することが出来る。
流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することが出来る。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフィルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[1073]段落から[1087]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することが出来る。
[表面処理]
このセルロースアシレートフィルムにおいては、少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。そして、この表面処理は、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
さらに、セルロースアシレートフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。機能性層としては、帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層、及び光学補償層のうち、少なくとも1層を設けることが好ましい。そして、この機能性層は、少なくとも一種の界面活性剤を0.1〜1000mg/m2 含有することが好ましく、少なくとも一種の滑り剤を0.1〜1000mg/m2 含有することが好ましい。また、機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1〜1000mg/m2 含有することが好ましく、少なくとも一種の帯電防止剤を1〜1000mg/m2 含有することが好ましい。なお、セルロースアシレートフィルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1072]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されており、これらの記載も本発明に適用することが出来る。
本発明により得られるフィルムの用途について説明する。本発明により得られるフィルムは、高レタデーション値を有し、透明性に優れている。そのため、特に、偏光板保護フィルムとして有用である。なお、このフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を液晶層に2枚貼ることにより作製した液晶表示装置は、液晶表示能力に優れる等の特長を示す。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることが出来る。特開2005−104148号公報(例えば、[1088]段落から[1265]段落)には、液晶表示装置として、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型、その他の例が詳しく記載されており、この方法も本発明に適用させることが出来る。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルムについての記載や、適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することも出来る。これらの記載も、本発明に適用させることが出来る。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1で使用した原料の質量部は下記の通りである。なお、ドープ調製用の溶媒としては、予め、塩化メチレン(第1溶媒)とメタノール(第2溶媒)とn−ブタノール(第3溶媒)とを混合した混合溶媒を調製後、第1タンク11に貯留したものを用いた。
セルローストリアセテート(置換度2.86、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
塩化メチレン(第1溶媒) 400質量部
メタノール(第2溶媒) 77質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 5質量部
可塑剤A:(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B:(ジフェニルフォスフェート) 3.5質量部
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有量が80ppm、Mg含有量が42ppm、Fe含有量が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンが15ppm含むものであった。また、アセトン抽出分は8質量%、重量平均分子量/数平均分子量比は2.7であった。イエローインデックスは6.0であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このセルローストリアセテートは、パルプから採取したセルロースを原料としてセルローストリアセテートを合成した。
図1に示すドープ製造設備10により、流延用のドープを調製した。先ず、第1攪拌機47及び第2攪拌機49を有する4000Lのステンレス製溶解タンク16に、第1タンク11から第1〜第3溶媒を混合した混合溶媒を送液し、ホッパ15からは、セルローストリアセテートを送り込んで、全体が2000kgになるように調製した。このとき、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。なお、本実施例では、剥離促進剤等を含む添加剤液は、後述するように分散液として添加する。をそして、溶解タンク16の内部を、ディゾルバータイプの攪拌翼を備えた第2攪拌機49により攪拌剪断速度が最初は5m/秒(剪断応力5×104 kgf/m/秒2 )の周速で攪拌し、次に、中心軸にアンカー翼を備えた第1攪拌機47により、周速1m/秒(剪断応力1×104 kgf/m/秒2 )の条件下で30分間分散した。なお、分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。そして、分散終了後、高速攪拌を停止させて、第1攪拌機47の周速を0.5m/秒として、さらに100分間攪拌してから、セルローストリアセテートフレークを膨潤させて混合液17を得た。なお、膨潤終了までは、窒素ガスで溶解タンク16の内部を0.12MPaになるように加圧し、溶解タンク16の内部の酸素濃度を2vol%未満として、防爆上で問題のない状態を保った。また、混合液17中の水分量は0.3質量%であった。
次に、混合液17を溶解タンク14から溶解装置21へ送液して、混合液17中の固形分(主に、TAC)と溶媒との溶解度を高めた後、続けて、混合液17を温調装置23として、ジャケット付き配管を使用し、50℃まで加熱した後、さらに、2MPaの加圧下で90℃まで加熱して、混合液17の内部の固形分を完全に溶解させた。そして、公称孔径8μmのフィルタを有する第1濾過装置24を通過させることにより、固形分濃度が19質量%のポリマー溶液22を得た。この際、第1濾過装置24による濾過1次圧は、1.5MPa、2次圧は1.2MPaとした。なお、高温に晒されるフィルタやハウジングおよび配管はハステロイ合金製で耐食性に優れるものを使用した。また、配管等には、保温加熱用の熱媒体を流通させるジャケットを有する形態を使用した。
濃縮前のポリマー溶液22を120℃で常圧に調整されているフラッシュ装置27内でフラッシュさせて、蒸発した溶媒を凝縮器で液化して回収装置31で回収分離した。フラッシュ後、つまり濃縮後のポリマー溶液22の固形分濃度は、23.0質量%となった。なお、回収された溶媒は、再生装置32で再利用のために調整された。フラッシュ装置27内のフラッシュタンクには中心軸にアンカー翼を有しており、周速0.5m/秒で攪拌して脱泡を行った。フラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。このドープを採取して25℃で測定した剪断粘度は剪断速度10(秒-1)で450(Pa・s)であった。
次に、濃縮後のポリマー溶液22に、弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。その後、ポンプP2により1.5MPaに加圧した状態で、第2濾過装置25に送液した。第2濾過装置25では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させた後、同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次圧は1.5MPa、1.2MPaであり、2次圧は1.0MPa、0.8MPaであった。そして、濾過後のポリマー溶液22の温度を36℃に調整してから、2000Lのステンレス製のストックタンク33内に貯蔵した。なお、ストックタンク33は、中心軸にアンカー翼を有する攪拌機53を用いて周速0.3m/秒で常時攪拌した。
次に、ストックタンク33から、第1,第3送液ラインL1,L3に送り込んだポリマー溶液22に対して、第3タンク35から、予め所定の溶媒にマット剤として微粒子を分散させた分散液34をインラインで添加した。なお、分散液34の添加量は、ポリマー溶液22中の全固形分中の微粒子の重量比率が0.13%となるように調整した。
次に、分散液34を添加して調製した表層用ドープ42a,42bは、濾過装置38及び濾過装置39により濾過して不純物を除去した。また、本実施例では、図示しないが、濾過装置38,39の他に、濾紙の異なる2種類の濾過装置を設けて、3段階で濾過した。すなわち、第1濾過としては、東洋濾紙製#63を備えた濾過装置38,39で濾過し、続けて、第2濾過として、日本精線製ナスロンフィルター06N(公称孔径10μm)を備えた濾過装置(図示しない)により各表層用ドープ42a,42bを濾過した後、最後に、第3濾過として、日本精線製ナスロンフィルター12N(公称孔径40μm)を備えた濾過装置(図示しない)により、各表層用ドープ42a,42bを濾過した。
そして、各流路に接続されているタンク(図示しない)から、UV剤a(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール)とUV剤b(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)5−クロルベンゾトリアゾール)とを混合溶媒の一部に溶解させた紫外線吸収剤を、各ドープに対してインラインで適量添加し、スタティックミキサ(図示しない)により攪拌混合させて流延用ドープとした。なお、表層用ドープ42a,42b及び基層用ドープ43ともに、ドープ固形分中の紫外線吸収剤の重量比率は1.04%となるようにした。
分散液34は、予め、第3タンク35の中に、塩化メチレンを83質量部とメタノールを16質量部とn−ブタノールを1質量部とを混合調製した混合溶媒Aと、ポリマー溶液22と、微粒子としてマット剤である二酸化ケイ素(粒径15nm モース硬度 約7)と、剥離促進剤であるクエン酸エステル混合物(クエン酸、クエン酸モノエチルエステル、クエン酸ジエチルエステル、クエン酸トリエチルエステル)とを混合し、これらを溶解または分散させることにより調製した。そして、調製後の分散液34のゼータ電位を、超音波方式(Dispersion Technology社製 DT1200)により測定したところ、−6mVであった。なお、分散液34を調製する際に使用した微粒子は、MW値が20%であった。また、この分散液34を基層用ドープ42a,42bに添加する際には、添加後に調製される基層用ドープ42a,42bにおける全固形分濃度が20.5質量%であり、フィルム形態としたときマット剤の濃度及び剥離促進剤の濃度が、それぞれ0.05質量%、0.03質量%となるように添加量を調整した。
次に、上記のようにして調製した3種類の流延用ドープと、図3に示すフィルム製造設備40とを用いて、3層構造のフィルム84を製造した。流延ダイ94は、幅が1.8mであり、共流延用に調整したフィードブロック93を装備して、流延膜の内側に位置する基層のほかに、両表面にそれぞれ表層を積層して3層構造のフィルム84を成形出来るように調整された形態を用いた。なお、以下の説明では、主流から形成される層を基層とし、この基層の両表面に設けられる2層の表層のうち、支持体面側の層を支持体面層(支持体面と称する場合もある)とし、その反対側の面をエアー面層(エアー面と称する場合もある)と称する。
目的とするフィルム84の厚みは、エアー面層、基層、支持体面層が、順に、4μm、73μm、3μmであり、製品の厚みが80μmとなるように、流延幅を1700mmとして各ドープ(基層用ドープ、支持体面用ドープ、エアー面用ドープ)の流量を調整しながら、流延ダイ94より流延ドラム95の上に3種類のドープを共流延した。このとき、各ドープの流延速度は、70m/分とした。なお、各ドープの温度を36℃に調整するため、流延ダイ94にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
製膜時には、フィードブロック93や流延ダイ94及び配管は、すべて36℃に保温した。流延ダイ94は、コートハンガータイプであり、厚み調整ボルト(ヒートボルト)が20mmピッチに設けられ、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。なお、ヒートボルトは予め設定したプログラムにより高精度ギアポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フィルム製造設備40内に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによって制御も可能な性能を有するものを用いた。流延エッジ部20mmを除いたフィルムにおいて、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm/m以下となるように調整した。また、各層の平均厚み精度は両外層(エアー面側層、支持体面側層)が±2%以下、中間層が±1%以下に制御され、全体厚みは±1.5%以下になるように調整した。
流延ダイ94の1次側(流延ビードの背面側)を減圧するために減圧チャンバ100を設置した。減圧チャンバ100の減圧度は流延ビードの前後で1〜5000Paの圧力差が生じるようになっていて、流延スピードに応じて調整が可能なものである。その際に、流延ビードの長さが10±5mmとなるように圧力差を設定した。また、減圧チャンバ100は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりもその温度を高く設定できる機構を具備したものを用いた。流延ビード前部及び後部にラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、両端には開口部を設けた。さらに、そこから流延ビードの両縁の乱れを調整するためにエッジ吸引装置(図示しない)が取り付けられているものを用いた。
流延ダイ94の材質は析出硬化型のステンレス鋼であり、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の素材であり、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有する素材を使用した。また、塩化メチレン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有する素材を使用した。フィードブロック93や流延ダイ94の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。ダイリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリットの全巾に亘り500μm以下になるように加工した。ダイ内部での剪断速度は1(1/秒)〜5000(1/秒)の範囲であった。なお、流延ダイ94のリップ先端には、溶射法によりWCコーティングを行い、硬化膜を設けた。
また、流延ダイ94のスリット端には流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために、脈動率が5%以下であるポンプ(図示しない)により、ドープを可溶化する混合溶媒を流延ビード端部とスリット気液界面に片側で0.5ml/分で供給した。さらに、減圧チャンバ100により流延ビード背面の圧力を150Pa低くした。減圧チャンバ102の温度を一定にするために、ジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内に35℃に調整された伝熱媒体を供給した。エッジ吸引風量は30L/分〜40L/分の範囲で適宜調整した。なお、上記の混合溶媒は、塩化メチレンを80.0質量部と、メタノールを20質量部とを混合して調製したものを用いた。
支持体として幅2.1mのステンレス製の流延ドラム95を用いた。流延ドラム95の表面粗さは0.05μm以下になるように研磨した。十分な耐低温性と耐腐食性と強度とを有するものとした。流延ドラム95の速度変動は0.5%以下とした。また、1回転の幅方向の蛇行は1.5mm以下に制限するように流延ドラム95の両端位置を検出して制御した。流延ドラム95に冷媒供給装置95を用いて−30℃の冷却媒体を送液し、循環させることにより、表面温度を−20℃とした。なお、流延ダイ94直下におけるダイリップ先端と流延ドラム95との上下方向の位置変動は200μm以下とし、流延ドラム95は、風圧変動抑制装置(図示しない)を有した流延室81内に設置した。
流延ドラム95は、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2 以下、10μm未満のピンホールは2個/m2 以下であるものを用いた。流延室81の温度は、温調設備101を用いて35℃に保った。流延ドラム95上に流延膜80を形成した。さらに、流延室81内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)98を設け、その出口温度は、−10℃に設定した。また、流延室81の内部に送風機(図示しない)を設け、この送風機から流延膜80に対して、40℃、10%RHの乾燥風を風速10m/分で送風した。
流延膜80中の残留溶媒量が乾量基準で150質量%になった時点で、流延ドラム95から剥取ローラ97で支持しながら湿潤フィルム83として剥ぎ取った。このときの流延膜80の温度は−10℃であり、流延膜80が流延ドラム95上を搬送されていた時間は3秒であり、剥取テンションは10kgf/mであった。また、剥取不良を抑制するために、流延ドラム95の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は、100.1〜110%の範囲で適切に調整した。なお、流延ドラム95の上での流延膜80の乾燥速度は、乾量基準で平均60質量%/分であった。そして、本実施例では、乾燥して発生した溶媒ガスを、−10℃の凝縮器98で凝縮液化した後、回収装置99で回収した。回収された溶媒は水分除去の調整がなされた後に、ドープ調製用溶媒として再利用した。その際に、溶媒に含まれる水分量は0.5%以下となるように調整した。一方で、溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。
次に、渡り部86に湿潤フィルム83を送り込んでから、ローラ130を介して搬送した後、テンタ87に送った。渡り部86では、湿潤フィルム83に対して約100N/幅の張力を付与しながら搬送する間に、送風機105から40℃の乾燥風を湿潤フィルム83に送風して、その乾燥を促進させた。
テンタ87に送られた湿潤フィルム83は、複数のピンでその両端を固定されながらテンタ87の乾燥ゾーン内を搬送される間に、乾燥風により乾燥を促進させた。ピンの駆動はチェーン(図示しない)で行い、スプロケットの速度変動は0.5%以下であった。テンタ87の内部を乾燥ゾーンとして3ゾーンに分け、各ゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃、100℃、110℃とした。なお、乾燥風のガス組成は−10℃の飽和ガス濃度とした。また、テンタ87内での平均乾燥速度は、乾量基準で120質量%/分であった。そして、テンタ87の出口では、フィルム84中の残留溶媒量が7質量%となるように乾燥ゾーンの条件を調整した。
テンタ87内では、湿潤フィルム83を搬送する間に、その幅方向に対して延伸も行った。なお、この延伸は、テンタ87に搬送された際の湿潤フィルム83の幅を100%としたとき、その幅に対し拡幅量を103%とした。剥取ローラ97からテンタ87入口に至る延伸率(テンタ駆動ドロー)は、102%とした。テンタ87内の延伸率は、テンタ噛込部から10mm以上離れた部分における実質延伸率の差異が10%以下であり、且つ20mm離れた任意の2点の延伸率の差異は5%以下であった。ベース端のうちテンタピンで固定している長さの比率は90%とした。テンタ87内で蒸発した溶媒は、−10℃の温度で凝縮液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(図示しない)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。溶媒に含まれる水分量を0.5質量%以下に調整して再利用した。そして、テンタ87からフィルム84として送り出した。
テンタ87の出口から30秒以内に耳切装置107を設け、フィルム84の両端の耳切り(切断)を行った。耳切装置107としては、NT型カッターを使用し、フィルム84の両端から50mmの耳をカットした。カットした耳は、カッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ108に風送してから、平均80mm2 程度のチップに粉砕し、耳サイロ(図示しない)に収納した。この耳サイロ内には、溶媒濃度計が設けられており、常に耳サイロ内の溶媒濃度をモニタリングしていた。耳サイロ内の溶媒濃度が爆発下限値(LEL)である25体積%を超えると爆発する場合があるが、本実施例では、常に25体積%未満であり、爆発の可能性は全く無かった。そして、このチップは再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際に原料として利用した。テンタ87の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室88で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフィルム84を予備加熱した。
次に、両端を切断したフィルム84を乾燥室88で高温乾燥した。乾燥室88の内部を4区画に分割して、上流側から120℃、130℃、130℃、130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。このとき、ローラ110によるフィルム84の搬送張力は100N/幅として、最終的に残留溶媒量が0.3質量%になるまで約10分間乾燥した。このとき、ローラ110に対するフィルム84のラップ角度は、90度および180度とした。また、ローラ110の材質は、アルミニウム製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロムめっきを施し、さらに、ローラ110の表面形状は、フラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ110の回転による振れは全て50μm以下であった。なお、搬送張力が100N/幅でのローラ撓みは、0.5mm以下となるように調整した。
乾燥室88では、乾燥風に含まれる溶媒ガスを、吸着回収装置111を用いて回収除去した。吸着回収は、吸着材を活性炭とし、脱着を乾燥窒素により行った。そして、回収した溶媒は、水分量0.3質量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には溶媒ガスの他、可塑剤、UV吸収剤、その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却機及びプレアドソーバ(予備吸着材)でこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるように吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち凝縮法で回収する溶媒量は90質量%であり、残りの大部分は吸着回収により回収した。
乾燥室88と冷却室89との間に第1調湿室と第2調湿室(いずれも図示しない)とを設けて、フィルム84を調湿することによりカール等の矯正を行った。第1調湿室において、温度50℃,露点20℃の空気を給気した後、続けて第2調湿室にフィルム84を搬送して、フィルム84に対して直接、90℃,湿度70%の空気をあてた。
調湿後のフィルム84を、冷却室31に送り込んで30℃以下になるまで冷却した。そして、強制除電装置(除電バー)113により、フィルム84の帯電圧が、常時−3〜+3kVの範囲となるように調整した。続けて、ナーリング付与ローラ114によりフィルム84の両側端部にナーリングの付与を行った。なお、ナーリングはフィルム84の片側からエンボス加工を行うことにより付与した。このとき、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフィルム84の平均厚みよりも平均して12μm高くなるようにナーリング付与ローラによる押し圧を調整した。
そして、巻取室90の内部に設置されている巻取ローラ115(φ169mm)により、巻き始め張力を300N/mとし、巻き終わりを200N/mとなるように調整しながらフィルム84を巻き取って、幅が1340mmであり、ナーリングを付与した内側の幅が1313mmであるフィルム84のロール状製品を得た。巻き取り時のフィルム84の温度は23℃であり、含水量が1.0重量%、残留溶媒量が1重量%であった。巻取室90の内部は、室内温度28℃,湿度70%に保持するとともに、イオン風除電装置(図示しない)を設けて、フィルム84の帯電圧が−1.5〜+1.5kVとなるように調整した。巻き取り時では、巻きズレの変動幅(オシレート幅)を±5mmとし、巻取ローラ115に対する巻きズレ周期を400mとし、巻取ローラ115に対するプレスローラ116の押し圧を50N/mに設定した。フィルム製造設備40では、全工程を通して、流延膜80や湿潤フィルム83及びフィルム84の平均乾燥速度を20重量%/分とした。なお、製膜速度は、巻取室32において50m/分とした。
製造開始後、1日ごとに巻取り長さが1mのロール状フィルム製品をサンプルとして採取し、これを光沢のない黒色の布で覆われた水平な台の上に広げた状態で、蛍光灯の光を反射させることにより、異物やスジなどの欠陥の有無を目視にて観察した。なお、目視にて異物が確認できた場合には、この異物をサンプルとして採取し、光軸を直行させた2枚の偏光板の間にこのサンプル挟んだ状態で透過光による顕微鏡及びX線分析を行って、Siが検出されるか否かの元素分析を行なった。その結果、実施例1では、製造開始後から60日間にわたり、異物としてSiが検出されることなく、かつフィルム製品の表面には、スジ故障が確認されなかった。
実施例1と同様のドープ及び製造設備を用いて、同じく基層の両側に表層を設けた3層構造のフィルム84を製造した。ただし、表層用ドープ42a,42bを調製する際に使用した分散液34は、MW値が20%以下ながら、ゼータ電位が−2mVであった。その結果、製造開始から3日後には、異物を起点としたスジ故障が確認された。なお、このスジ故障は、その後急速に増加したため、フィルムの製造を中止した。また、スジ故障の起点となった異物を採取し、これを分析したところ、Si及び多価金属イオンを含む粗大異物であることが確認された。
実施例1では、製造開始から60日が経過しても、微粒子の凝集等に起因する異物を確認することは出来ず、かつスジ故障がない等の非常に平面性に優れるフィルムを連続して製造することができた。一方で、実施例2では、製造開始からわずか3日後には、フィルム上に異物を確認した。しかも、その後、急速に欠陥が増加したため、製造中止を余儀なくされた。その他にも、フィルム製造設備40の配管等に異物が付着したり凝集したりしたために、工程を停止させて各配管等の洗浄や濾過装置の切り換え等を行なわなければならず、生産性が著しく低下した。
以上より、ドープを調製する際の微粒子の添加方法として、予め所定の溶媒に微粒子を分散させた分散液であり、かつ、所定のゼータ電位を有する分散液を使用する方法を用いると、製造開始から長時間が経過しても、微粒子の凝集等を抑制しながらフィルムを製造することができることを確認した。したがって、本方法は、異物による欠陥等のない平面性に優れるフィルムを、優れた生産性により連続して製造することができるフィルム製造方法であることを確認した。
本発明に用いるドープ製造設備の一例の概略図である。 本発明において微粒子の疎水性を定量化する際に用いるMW法の説明図である。 本発明に用いるフィルム製造設備の一例の概略図である。 本実施形態で製造したフィルムの断面図である。 本発明に係わる共流延の別形態の概略図である。
符号の説明
10 ドープ製造設備
17 混合液
22 ポリマー溶液
34 分散液
35 第3タンク
40 フィルム製造設備
66、73 微粒子
80 流延膜
83 湿潤フィルム
84 フィルム
95 流延ドラム
120 基層
121a,121b 表層

Claims (8)

  1. セルロースアシレートと溶媒と微粒子とを含むセルロースアシレートドープにおいて、
    前記微粒子の表面は、疎水化処理としてアルキル化処理が施されており、
    前記溶媒の中に前記微粒子を分散させた分散液のゼータ電位Ζ(mV)が、
    3≦|Ζ|≦9の条件を満たすことを特徴とするセルロースアシレートドープ。
  2. 前記微粒子が、二酸化ケイ素誘導体であることを特徴とする請求項1記載のセルロースアシレートドープ。
  3. 前記アルキル化処理において前記微粒子の表面に導入されるアルキル基は、炭素数が1〜20であることを特徴とする請求項1または2記載のセルロースアシレートドープ。
  4. 前記溶媒は、疎水性の有機化合物を主成分とした混合物であることを特徴とする請求項1記載のセルロースアシレートドープ。
  5. 前記疎水性の有機化合物が、塩化メチレンであることを特徴とする請求項4記載のセルロースアシレートドープ。
  6. 前記セルロースアシレートドープ中の前記セルロースアシレートや前記微粒子などを含む固形成分に対する前記微粒子の含有量が、0.2%以下であることを特徴とする請求項1ないし5いずれかひとつ記載のセルロールアシレートドープ。
  7. 前記微粒子が添加される前、もしくは後の前記セルロースアシレートドープは、少なくとも1回の濾過が行なわれることを特徴とする請求項1ないし7いずれかひとつ記載のセルロースアシレートドープ。
  8. セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを基層用ドープとし、請求項1ないし7いずれかひとつ記載のセルロースアシレートドープを表層用ドープとして、前記基層用ドープと前記表層用ドープとを、走行する支持体上に共流延することにより、基層と、前記基層の両表面に表層とを配する流延膜を形成した後、前記流延膜を乾燥させて複層構造のフィルムとすることを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
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