JP2008188941A - 溶液製膜方法及び溶液製膜設備 - Google Patents

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Abstract

【課題】支持体表面における異物の生成を抑制することを目的とする。
【解決手段】流延ドラム32が回転し、その周面32aが走行方向A1に走行する。流延ダイ30は流延ドラム32上にドープ21を流出する。流出されるドープ21は、流延ビード21aを形成しながら、周面32aに流延膜33を形成する。減圧チャンバ36は、流延ビード21aの背面側を所定値まで減圧する。減圧チャンバ36は、流延ビード21aに近接して配される遮風シール88を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、溶液製膜方法及び溶液製膜設備に関する。
ポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学機能性フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、強靭性や低複屈折率であることから、写真感光用フィルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置(LCD)の構成部材である偏光板の保護フィルムまたは光学補償フィルムなどに用いられている。
主なフィルムの製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフィルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、膜厚精度を調整することが難しく、また、フィルム上に細かいスジ(ダイライン)ができるために、光学機能性フィルムへ使用することができるような高品質のフィルムを製造することが困難である。一方、溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含んだポリマー溶液(ドープ)を支持体上に流延して形成した流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとし、さらに、この湿潤フィルムを乾燥させてフィルムとする方法である。溶融押出方法と比べて、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフィルムを得ることができるため、LCD用途などの光学機能性フィルムは、主に溶液製膜方法で製造されている。
この溶液製膜方法は、セルローストリアセテートなどのポリマーをジクロロメタンや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解した高分子溶液(以下、ドープと称する)を調製する。更に、このドープに所定の添加剤を混合し、流延ドープを調製する。流延ドープを流延ダイより流延ビードを形成させて、キャスティングドラムやエンドレスバンドなどの支持体上に流延して流延膜を形成する(以下、流延工程と称する)。その流延膜が支持体上で冷却され、自己支持性を有するものとなった後に、支持体から膜(以下、この膜を湿潤フィルムと称する)として剥ぎ取り、この湿潤フィルムを乾燥させたものをフィルムとして巻き取る。
ところで、近年の液晶表示装置等の需要の著しい伸長に応えるため、生産効率の高い溶液製膜方法の確立が求められている。生産効率の向上の点から考慮すると、流延工程が溶液製膜方法の高速化についての律速であることは周知である。溶液製膜方法の高速化のために、支持体の走行速度の高速化、そして、減圧チャンバ等の減圧手段を用いて、流延ビードの背面側(以下、減圧ゾーンと称する)の減圧は、周知の手法である。しかしながら、支持体の走行速度の高速化、及び減圧チャンバの吸引により、支持体表面における異物の析出が頻発していた。この異物が付着した支持体をそのまま用いて溶液製膜方法を行うと、この異物や異物の跡がフィルムの表面に転写され(以下、プレートアウトと称する)、光学特性のムラの原因となる。このため、溶液製膜方法では、定期的に支持体表面を洗浄する必要があった。
この支持体表面の洗浄方法として、有機溶液等を浸した不織布を用いて支持体表面を連続的に拭く方法(特許文献1)や、フィルム表面に溶媒処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、及び火炎処理などの処理を施し、フィルム表面の異物を除去する方法(特許文献2)が開示されている。
特開2003−1654号公報 特開2001−89590号公報
しかしながら、特許文献1のようなWet処理では、有機溶液の洗浄跡が支持体表面に残りやすい。この有機溶液が残留した支持体表面に流延膜を形成すると、流延膜の表面には有機溶液の残存に起因するスジ状のムラや凹凸が形成され、2次故障の原因となる。更に、洗浄中に不織布と支持体の間に硬い異物が混入し、支持体表面が損傷するなどの2次故障が懸念される。表面が損傷した支持体上にドープを流延すると、この傷がフィルムに転写され、フィルムの光学特性のムラの原因となる。
また、特許文献2のようなフィルム表面上の付着物の除去処理を行う場合には、フィルムの特性に影響を及さないような条件で除去処理を施すことが望ましいが、この条件を見出すことは容易ではない。また、この処理条件がフィルムを構成する材料及びその組成に依存するため、多品種のフィルム製造に対応可能なフィルム製造装置への適用は困難である。
更に、上記のような洗浄方法を行うためには、溶液製膜の停止、或いは、ドープの流延速度の低下した状態で行わなければならず、この支持体の洗浄作業を1回行うごとに、溶液製膜方法の時間のロスが生じてしまう。したがって、プレートアウトの原因となる支持体表面における異物の析出は、製造するフィルムの光学特性の低下のみならず、溶液製膜の生産効率の低下の要因となってしまう。
本発明者は、鋭意検討の結果、減圧ゾーン内の溶媒が凝縮する温度(以下、凝縮点と称する)が、プレートアウトを誘発する異物が生成するまでの時間(以下、プレートアウト生成時間と称する)を決定する因子であること、そして、この凝縮点を所定の範囲に維持することにより、支持体表面における異物の析出を抑制することができることを見出した。
本発明は、ポリマーと溶媒とを含むドープを走行する支持体上に流延装置から流延して流延膜を形成する溶液製膜方法において、前記流延装置から前記支持体に渡って前記ドープにより形成される流延ビードの、前記支持体の走行方向の上流側を減圧装置により減圧し、前記減圧装置に遮風部材を設け、この遮風部材と前記流延ビードとの間の範囲の前記溶媒が凝縮する温度を一定の範囲に保持することを特徴とする。
前記溶媒が凝縮する前記温度を−10℃以上25℃以下に保持することが好ましい。また、前記流延ビードと前記遮風部材との空隙が、1mm以上300mm以下であることが好ましい。
前記支持体と前記遮風部材との空隙が、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。また、前記流延ビードの幅をW0とし、前記遮風部材の前記流延ビードの幅方向の長さをW1とするときに、W1/W0が、0.5以上であることが好ましい。
また、本発明の溶液製膜設備は、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延する流延手段と、所定方向に走行し、前記流延手段からの前記ドープから流延膜を形成する支持体と、前記流延手段から前記支持体に渡って前記ドープにより形成される流延ビードの、前記支持体の走行方向の上流側を減圧する減圧手段と、前記減圧手段に設けられ、前記流延ビードとの間の範囲の前記溶媒が凝縮する温度を一定の範囲に保持する遮風手段と、を有することを特徴とする。
前記流延ビードと前記遮風部材との空隙が、1mm以上300mm以下であることが好ましい。また、前記支持体と前記遮風部材との空隙が、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。更に、前記流延ビードの幅をW0とし、前記遮風部材の前記流延ビードの幅方向の長さをW1とするときに、W1/W0が、0.5以上であることが好ましい。
本発明の溶液製膜方法によれば、流延ビードの上流側を減圧装置により減圧し、前記減圧装置に遮風部材を設け、この遮風部材と前記流延ビードとの間の範囲の前記溶媒が凝縮する温度を一定の範囲に保持するため、支持体上における異物の析出を抑制することができる。したがって、本発明を用いることにより、光学特性のムラの原因となる支持体の汚染を抑制することが可能となり、光学特性のムラのないフィルムを高い生産効率で製造することができる。
また、本発明では、減圧チャンバの減圧度に関わらず、減圧ゾーンの凝縮点を一定の範囲に保持することができる。すなわち、本発明は、高い減圧度の環境下で行われる高速流延の溶液製膜方法にも適用可能であり、品質のよいフィルムを、大量に生産することを可能にする。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
図1に、本実施形態で用いるフィルム製造ライン10の概略図を示す。フィルム製造ライン10は、ストックタンク11と流延室12とピンテンタ13とクリップテンタ14と乾燥室15と冷却室16と巻取室17とを有する。
ストックタンク11には、モータ11aで回転する攪拌翼11bとジャケット11cとが備えられており、その内部にはフィルム20の原料となるドープ21が貯留されている。ストックタンク11は、常時、その外周面に設けられているジャケット11cにより、ドープ21の温度が略一定となるように調整されるとともに、攪拌翼11bが回転される。このため、ストックタンク11は、ポリマーなどの凝集を抑制しながら、ドープ21を均質に保持する。また、ストックタンク11の下流には、ポンプ25と濾過装置26とが備えられている。なお、ドープ21の調製方法に関しては、後で詳細に説明する。
流延室12には、ドープ21の流出手段である流延ダイ30と、支持体であるキャスティングドラム(以下、流延ドラムと称する)32と、流延ドラム32から流延膜33を剥ぎ取る剥取ローラ34と、流延室12の内部温度を調整する温調設備35と、減圧手段である減圧チャンバ36とが備えられている。
図2のように、流延ダイ30の先端には、ドープ21を流出する流出口30aを備える。流出口30aは、その下方に配置される流延ドラム32の周面32a上にドープ21を流延する。流延ダイ30の材質は、電解質水溶液やメチレンクロライドやメタノールなどの混合液に対する高い耐腐食性や低い熱膨張率などを有する素材から形成される。また、流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。このような流延ダイ30を用いることにより、スジ及びムラのない流延膜33を流延ドラム32上に形成することができる。
略円柱状、或いは略円筒状に形成される流延ドラム32は、駆動装置により軸を中心に回転する。この駆動装置によって、流延ドラム32は、その周面32aが所定の走行方向A1に所定の走行速度(10〜300m/分)になるように回転する。流延ドラム32の周面32aは、クロムメッキ処理が施され、十分な耐腐食性と強度を有する。また、伝熱媒体循環装置37が、流延ドラム32に取り付けられている。この伝熱媒体循環装置37にて所望の温度に保持されている伝熱媒体が、流延ドラム32内の伝熱媒体流路を通過することにより、流延ドラム32の表面温度を所望の範囲に保持することができる。
流延工程では、流延ダイ30から流延ドラム32の周面32aへドープ21が流出される。また、流延ダイ30から流延ドラム32の周面32aにかけて流延ビード21aが形成する。走行する周面32a上では、ドープ21が流れ延ばされ、流延膜33が形成する。この流延膜33は、流延ドラム32の回転によって走行方向A1に所定の速度で搬送される。
減圧チャンバ36は、流延ダイ30より走行方向A1の上流側に配され、流延ビード21aの背面側を減圧する。流延ビード21aの背面側を負圧にすることにより、周面32aと流延ビード21aとの間の密着性が向上するため、流延膜33と周面32aとの間に空気が混入することを防ぐことができる。ここで、背面側とは、走行方向A1の上流側に位置する流延ビード21aの片面側であり、前面側とは、走行方向A1の下流側に位置する流延ビード21aの他面側である。減圧チャンバ36は、図示しない吸引装置を有し、この吸引装置により、流延ビード21aの背面側を−1500Pa〜−10Paの範囲で減圧することができる。流延ドラム32上での冷却により自己支持性を備えた流延膜33は、剥取ローラ34によって、流延ドラム32から剥ぎ取られ、湿潤フィルム38となる。
また、図1のように、流延室12の内部温度は、温調設備35により所定の範囲内で略一定となるように調整される。流延室12の内部温度は、10℃以上30℃以下であることが好ましい。流延室12内には、気化している溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)39と凝縮液化した溶媒を回収する回収装置40とが備えられている。凝縮器39で凝縮液化した有機溶媒は、回収装置40により回収される。その溶媒は再生装置で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。この回収装置40により、流延室12における凝縮点を−10℃以上25℃以下に保持する。流延室12における凝縮点が−10℃未満の場合は、溶媒が蒸発しやすくなるためにプレートアウトが起こりやすくなるため好ましくなく、また、凝縮点が25℃を超える場合には、フイルムの面状故障の原因となる溶媒の凝縮が周面32a上で起こりやすくなるため好ましくない。ここで、凝縮点とは、雰囲気に含まれる溶媒の凝集が開始する温度である。
流延室12の下流には、湿潤フィルム38を乾燥させてフィルム20とするピンテンタ13と、このフィルム20を乾燥させながら延伸するクリップテンタ14とが設けられている。フィルム20は、クリップテンタ14の所定条件下の延伸処理によって、所望の光学特性が付与される。なお、ピンテンタ13は、固定手段として複数のピンを有する乾燥装置であり、クリップテンタ14は、把持手段としてクリップを有する乾燥装置である。なお、クリップテンタ14は省略しても良い。
クリップテンタ14の下流には耳切装置43が設けられている。この耳切装置43には、クラッシャ44が備えられており、ここで、フィルム20の両側端部は切断された後、クラッシャ44に送り込まれて粉砕される。粉砕されたフィルム細片は、原料ドープとして再利用される。
乾燥室15には、多数のローラ47と吸着回収装置48とが備えられている。さらに、乾燥室15に併設された冷却室16の下流には、強制除電装置(除電バー)49が設けられている。また、本実施形態では、強制除電装置49の下流側に、ナーリング付与ローラ50を設けている。巻取室17の内部には、巻取ローラ51とプレスローラ52とが備えられている。
図3に示すように、減圧チャンバ36は上部70と下部71とから構成される。上部70は、中空部70aを有する。更に、上部70は、配管72と中空部70aとを接続するための接続孔70bと、中空部70aと下部71の中空部71aと接続するための開口部70dとを有する。また、上部70に設けられる接続孔70bは、配管72を介して、図示しない吸引装置と接続する。
一方、下部71は、流延ビード21a(図2)の背面側にある空気を吸引するための吸引口71bと、吸引口71bから流入する空気を中空部70aに流出する流出口71cと、吸引口71bと流出口71cとを接続する中空部71aとを有する。図3のように、吸引口71bは、下部71の幅方向の両端に位置する外サイドシール75と、外サイドシール75の内側に位置する耳サイドシール76と、耳サイドシール76の内側に位置する内サイドシール77a〜77cと、シール板78と、遮風シール88とから形成される。また、外サイドシール75と、耳サイドシール76と、内サイドシール77a〜77cとは、流延ドラム32の走行方向A1と略平行の向きに空気を送るように配される。シール板78は、吸引口71bの開口部を塞ぐように配される。このシール板78により、吸引口71bの開口部の面積を調節することができる。なお、本実施形態における遮風シール88は、シール板78と連結するように記載しているが、本発明の遮風部材としては、遮風シール88の態様に限らず、例えば、2枚の内サイドシール77cとを接続するように遮風シールを設ける、或いは、内サイドシールなどと一体成形される遮風シールを用いてもよい。
流出口71cは、外サイドシール75と、2枚の外サイドシール75と略垂直に接続する外幅シール80と、2枚の耳サイドシール76と略垂直に接続する内幅シール81とから形成される。また、外幅シール80と、内幅シール81とは、中空部71aにある空気を中空部70aへ送るように配される。また、シール板82は、流出口71cの開口部を塞ぐように配される。このシール板82により、流出口71aの開口部の面積を調節することができる。
開口部70dと流出口71cとが密閉接続するように上部70と下部71とを嵌合することにより、減圧チャンバ36が形成される。また、図2に示すように、シール板78には、パッキン78aが設けられる。減圧チャンバ36は、このパッキン78aが流延ダイ30に当接するように配置される。
遮風部材である遮風シール88は、板状に形状され、気体の流れを遮る遮風面88aを有する。この遮風シール88は、2枚のシール板77cとの間に、且つ、遮風面88aが走行方向A1の上流側になるように配される。本実施形態における遮風シール88は、内サイドシール77cとの間の吸引口71bの開口部を塞ぐように、且つ、遮風シール88と流延ドラム32の周面32aとが形成する空隙の長さがCL1となるように、流延ビード21aと遮風面88aとが形成する空隙の長さがCL2となるように配される(図2)。
配管72を介して、上部70と接続する吸引装置は、予め設定された減圧値に従って、配管72を介して中空部70a内の空気を吸引する。吸引装置の吸引により、この減圧チャンバ36の中空部70aの雰囲気が所定圧力まで減圧される。中空部70aの減圧に伴って、流出口71c及び中空部71aを介して、吸引口71bの近傍が中空部70aと同様に所定の圧力に減圧される。こうして、減圧チャンバ36は、流延ビード21aの背面側を所望の圧力に減圧することができる。本明細書では、減圧値を負の符号と圧力の差とを用いて表す。圧力の差とは、減圧前からの圧力の差を表す。
図4に示すように、減圧チャンバ36内に配される各シール板75〜77c及び80,81、88は、整流板の役割を果たす。ここで、内幅シール81と遮風シール88と、2枚の内サイドシール77aによって囲まれる範囲を第1減圧ゾーン91とし、外幅シール80と内幅シール81と、2枚の内サイドシール77aと、2枚の外サイドシール75とで囲まれる範囲を第2減圧ゾーン92とし、周面82aと流延ビード21aと流延ダイ30とパッキン78aと遮風シール88とより囲まれる範囲を第3減圧ゾーン93(図2)と称する。減圧チャンバ36の減圧により、この第1〜第3減圧ゾーン91〜93の圧力を所定の減圧値に減圧することができる。
空隙CL1は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5mm以上2mm以下である。この空隙CL1が5mmを超える場合には、同伴風が第3減圧ゾーン93に流入し、第3減圧ゾーン93の凝縮点TR1が低下するなどして、凝縮点TR1を所望の範囲に保持することが困難になるため好ましくない。一方、間隔CL1が0.1mm未満である場合には、遮風シール88との擦れによる周面32aの損傷の恐れがあること、更に、凝縮点TR1が過剰に上昇し、第3減圧ゾーン93における溶媒の凝縮が過剰になり、溶媒の凝縮による故障が発生するため好ましくない。なお、同伴風とは、流延ドラム32の走行により、周面32a近傍に発生する風のことである。この同伴風は、周面32aの走行方向A1と略逆の方向の向きを持つ。
また、空隙CL2は、1mm以上300mm以下であることが好ましく、10mm以上300mm以下であることがより好ましく、20mm以上60mm以下であることが最も好ましい。この空隙CL2が300mmを超える場合には、同伴風が第3減圧ゾーン93に流入するため好ましくない。一方、この空隙CL2が1mm未満である場合には、第3減圧ゾーン93における溶媒の凝縮が過剰により、フィルムの平面性が劣化する故障が発生するため好ましくない。
流延ビード21aの幅をW0とするとき、遮風シール88の流延ビード21aの幅方向における長さをW1とするときに、W1/W0が、0.5以上であることが好ましい。W1/W0が0.5未満である場合には、同伴風が第3減圧ゾーン93に流入するため好ましくない。
また、減圧チャンバ36は、流延バンド32の周面32との空隙がCL3となるように配される。このCL3は、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。空隙CL3が0.1mm未満である場合には流延ドラム32と接触するおそれがあるため好ましくなく、空隙CL3が1mmを超える場合には、第3減圧ゾーン93の密閉性の低下により凝縮点TR1を一定に保つことが困難であるため好ましくない。
次に、図1を用いて、フィルム製造ライン10によりフィルム20を製造する方法の一例を説明する。ストックタンク11では、ジャケット11cの内部に伝熱媒体を流すことによりドープ21の温度を25〜35℃に調整するとともに、攪拌翼11bの回転により常に均一化している。適宜適量のドープ21を、ポンプ25によりストックタンク11から濾過装置26に送り込み濾過することにより、ドープ21中の不純物を取り除く。
流延ドラム32は、駆動装置により所定の走行速度(10m/分以上200m/分以下)で走行する。また、伝熱媒体循環装置37により、流延ドラム32の周面32aの温度は所望の範囲内で略一定となるように調整されている。流延ドラム32の周面32aの温度は、−15℃以上0℃以下であることが好ましく、−10℃以上−5℃以下であることがより好ましく、−10℃以上−8℃以下であることが好ましい。また、30℃以上40℃以下の範囲で保持されているドープ21を、流延ダイ30から流延ドラム32の周面32a上に流延する。ドープ21は、流延ドラム32の周面32a上で流延膜33を形成する。こうして、流延ドラム32の周面32a上では、流延膜33が冷却される。流延膜33の冷却が進行すると、結晶の基となる架橋点が形成されて流延膜33のゲル化が促進される。ゲル化の進行により、流延膜33が自己支持性を有するものとなった後、剥取ローラ34により流延ドラム32から剥ぎ取って湿潤フィルム38を形成する。そして、この湿潤フィルム38をピンテンタ13に送り込む。
ピンテンタ13では、多数のピンを湿潤フィルム38の両側端部に差し込み固定した後、この湿潤フィルム38を搬送する間に乾燥を促進させてフィルム20とする。そして、まだ溶媒を含んでいる状態のフィルム20をクリップテンタ14に送り込む。
クリップテンタ14では、チェーンの動きにより無端で走行する多数のクリップによりフィルム20の両側端部を挟持した後、このフィルム20を搬送する間に、乾燥を促進させる。このとき、対面するクリップの幅を拡げてフィルム20の幅方向に張力を付与することでフィルム20を延伸する。このように、フィルム20の幅方向への延伸処理により、フィルム20中の分子が配向し、所望のレターデーション値をフィルム20に付与することができる。
クリップテンタ14から送り出されたフィルム20は、耳切装置43により両側端部が切断される。両側端部が切断されたフィルム20は、乾燥室15と冷却室16とを経由し、巻取室17内の巻取ローラ51で巻き取られる。なお、耳切装置43によって切断された両側端部は、クラッシャ44により粉砕されて、ドープ調製用チップとなり再利用される。
次に、流延工程の詳細について説明する。図2及び図4のように、ドープ21が流延ダイ30の流出口30aから流出する。流出口30aから流延ドラム32にかけて流延ビード21aが形成する。減圧チャンバ36により、第1〜第3減圧ゾーン91〜93における圧力が所望の圧力まで減圧される。こうして、第3減圧ゾーン93の圧力が所定の値まで減圧されることにより、流延ビード21aの背面と流延ドラム32の周面32aとの密着性が向上する。
また、流延ドラム32の走行により、周面32a近傍に同伴風が発生する。この同伴風の凝縮点は、第3減圧ゾーン93内の雰囲気の凝縮点TR1と比べて低い。そのため、この同伴風が第3減圧ゾーン93に流入すると、第3減圧ゾーン93内の凝縮点TR1が低下してしまう。しかしながら、本実施形態では、遮風シール88の遮風面88aが、同伴風の第3減圧ゾーン93への流入を防ぐため、第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1の低下を防ぐことができる。なお、凝縮点TR1とは、第3減圧ゾーン93の雰囲気に含まれる溶媒が凝縮する温度である。
この遮風シール88により、第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1を所望の範囲に調節することができる。そして、第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1が−10℃以上25℃以下であるときには、周面32aにおける異物の析出が抑制されるため、結果として、生産効率の高い溶液製膜方法を行うことができる。
この異物の析出が抑制されるプロセスは次のように考えられる。遮風シール88の遮風面88aが、同伴風の第3減圧ゾーン93への流入を防ぐため、第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1が、所定の範囲に保持される。そして、第3減圧ゾーン93において、一定量の溶媒の凝縮が行われる。この溶媒の凝縮の程度に応じて、周面32a上に液膜が形成される。周面32aに形成した液膜が、周面32aに異物として生成しうる化合物を溶解するため、結果として、周面32aにおける異物の析出を抑制していると推測される。
凝縮点TR1が−10℃未満である場合には、第3減圧ゾーン93の周面32aにプレートアウトの原因となる異物が析出してしまうため好ましくない。一方、凝縮点TR1が25℃を超える場合には、溶媒が過剰に凝縮し、第3減圧ゾーン93の周面32aに形成した余剰の液膜により、流延膜33の平面性が劣化するため好ましくない。
また、第3減圧ゾーン93の凝縮点TR1の調節方法としては、この遮風シール88の配置位置(CL1やCL2など)、寸法(W1など)や形状によるものの他、流延室12の雰囲気に含まれる溶媒が凝縮する温度、流面ドラム32の温度、減圧チャンバ36による減圧度、周面32aの走行速度などが挙げられる。しかしながら、これらの条件は、目標とするフィルムの製造条件や品質条件等による制限がかかるため、凝縮点TR1の調整方法としては十分でない。したがって、凝縮点TR1の調整方法として、製造条件などと独立して調節することが容易な遮風シール88を用いることがよい。また、第3減圧ゾーン93が狭いなどの理由で、凝縮点TR1の調節を独立して行うことができない場合は、第1減圧ゾーン91または第2減圧ゾーン92における凝縮点を調節することにより、凝縮点TR1を所望の範囲に調節することができる。第1減圧ゾーン91または第2減圧ゾーン92における凝縮点の調節方法は、上述した凝縮点TR1の調節方法の同様にして行うことができる。第1減圧ゾーン91または第2減圧ゾーン92における凝縮点と、凝縮点TR1との相関は、流延室12内の各条件により異なる。したがって、これらの凝縮点の相関として、製造条件と同一の実験で得られたデータのプロファイルを用いることができる。
凝縮点TR1の計測方法としては、公知の光学式や演算方式など用いればよい。光学式とは、結露(凝縮)状態を光で検出する方法であり、具体的には、光学式露点計を用いることが好ましい。演算方式とは、温度センサ及び湿度センサにより、温度と湿度(相対湿度)を測定し、演算により凝縮点を求める方式である。
本発明は、第3減圧ゾーン93の凝縮点TR1を所望の範囲に調節することを容易にし、結果として、プレートアウト生成時間の長期化が可能となり、生産効率の高い溶液製膜方法を可能にすることができる。
上記実施形態では、遮風部材として、板状の遮風シール88を用いると記載したが、これに限らず、他の形状の遮風部材を有する減圧チャンバ等の減圧手段を用いても良い。例えば、上記の遮風シール88に代わりにブロック状の遮風ブロック100を有する減圧チャンバ101(図5)を用いても良い。
上記実施形態では、遮風シール88や遮風ブロック100などの遮風部材を、2枚のサイドシール77cの間に設けると記載したが、これに加えて、サイドシール77aとサイドシール77bとの間、或いは、サイドシール77bとサイドシール77cとの間に設けても良い。
上記実施形態では、ポリマーとして、セルロースアシレートやTACを用いると説明したが、これらに限られない。
本発明の溶液製膜方法では、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時に共流延させて積層させる同時積層共流延、または、複数のドープを逐次に共流延して積層させる逐次積層共流延を行うことができる。なお、両共流延を組み合わせてもよい。同時積層共流延を行う場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いてもよいし、マルチマニホールド型の流延ダイを用いてもよい。ただし、共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましく、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
本発明は、流延ドラム32の替わりに、回転ローラに掛け渡されて移動する流延バンドを用いる溶液製膜方法にも適用可能である。また、流延ダイ、減圧室、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
(ドープ原料)
以下、本発明においてドープ21を調製する際に使用する原料について説明する。本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでもよい。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)およびエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度および光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。アルコールとしては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶媒組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステルおよびアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステルおよびアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
次に、本発明の実施例を説明する。なお、以下の各実施例において、実施例1〜26は本発明の実施様態の例であり、比較例1〜10は、実施例1〜26に対する比較実験である。また、説明は実施例1で詳細に行い、本発明に係る実施例2〜26や比較例1〜10については、実施例1と同じ条件の箇所の説明は省略する。
次に、フィルム20の製造に使用するポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。なお、本実施例で用いるドープをドープAと称する。
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2重量%、ジクロロメタン溶液中6重量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100重量部
混合溶媒A 446重量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6重量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8重量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール 0.7重量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−
クロルベンゾトリアゾール 0.3重量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチ
ルエステル混合物) 0.006重量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05重量部
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Ca含有率が5ppm、Mg含有率が80ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを10ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8重量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。
(ドープ仕込み)
次のようにして、ドープAを調製した。攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製溶解タンクで混合溶媒Aを混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。次に、TACのフレーク状粉体をホッパから徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンクに投入されて、最初は5m/秒の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌機及び中心軸にアンカー翼を有する攪拌機を周速1m/秒で攪拌する条件下で30分間分散した。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンクからバルブで送液量を調整して、全体が2000kgとなるようにした。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、攪拌機のアンカー翼の周速を0.5m/秒としてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより溶解タンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンクの内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液中の水分量は0.3重量%であった。
また、混合溶媒Aとして、ジクロロメタンが87重量部と、メタノールが10重量部と、1−ブタノールが3重量部とからなる混合溶媒を用いた。なお、混合溶媒Aの各原料として、含水率が0.5重量%以下のものを使用した。
(溶解・濾過)
膨潤液を溶解タンクからポンプを用いてジャケット付配管に送液した。ジャケット付き配管で膨潤液を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に溶解された液を温調機で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置を通過させドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(登録商標)合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
(濃縮・濾過・脱泡・添加剤)
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ蒸発により、ドープAの固形分濃度が22重量%以上23重量%以下の範囲になるように調整した。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置で回収した。その後に再生装置で再生した後に溶媒タンクに送液した。回収装置,再生装置では、蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/秒でフラッシュされたドープを攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内におけるドープの平均滞留時間は50分であった。このドープを採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(秒−1)で450Pa・sであった。
次に、このドープに弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後、ポンプを用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置を通過させた。濾過装置では、最初に、公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製ストックタンク内にドープを送液して貯蔵した。ストックタンク11は、貯蔵するドープAの温度を30℃以上40℃以下になるように保持した。ストックタンク11は中心軸にアンカー翼を備えた攪拌機を有しており、周速0.3m/秒で常時攪拌を行った。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
(吐出・直前添加・流延・ビード減圧)
図1に示すフィルム製造ライン10を用いてフィルム20を製造した。ストックタンク11内のドープAを高精度のギアポンプ25で濾過装置26へ送った。このギアポンプ25は、ギアポンプ25の1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプ25の上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプ25は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、吐出圧力は1.5MPaであった。そして、濾過装置26を通ったドープAを流延ダイ30に送液した。
流延ダイ30は、乾燥されたフィルム20の膜厚が70μmとなるように、流延ダイ30の流出口30aのドープAの流量を調整して流延を行った。また流延ダイ30の流出口30aからのドープAの流延幅、すなわち流延ビードの幅W0を1500mm以上2200mm以下とした。ドープAの温度を25℃以上40℃以下に調整するために、流延ダイ30にジャケット(図示しない)を設けて、ジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を略36℃とした。
流延ダイ30と配管とはすべて、製膜中には36℃に保温した。流延ダイ30は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ30には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプ25の送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フィルム製造ライン10に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフィルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
流延ダイ30の流出口30aにおける流延ビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、流延ダイ30の流出口30aの両端には開口部を設けた。さらに、流延ダイ30には、流延ビードの両縁の乱れを調整するためのエッジ吸引装置(図示しない)を取り付けた。前記エッジ吸引装置は、1L/分〜100L/分の範囲となるようにエッジ吸引風量を調整することができるものであり、本実施例ではこれを30L/分〜40L/分の範囲となるように適宜調整した。
(流延ダイ)
流延ダイ30の材質は、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは、0.5mm以上2mm以下になるように調整した。流延ダイ30のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ30内部でのドープAの剪断速度は1(1/秒)〜5000(1/秒)の範囲であった。また、流延ダイ30のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
(支持体)
支持体としてステンレス製のドラムを流延ドラム32として利用した。流延ドラム32の表面粗さは0.05μm以下になるように研磨した。材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度とを有するものとした。流延ドラム32の速度変動は0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行は1.5mm以下に制限するように流延ドラム32の両端位置を検出して制御した。また、流延ダイ30直下におけるダイリップ先端と流延ドラム32との上下方向の位置変動は200μm以下とした。流延ドラム32は、風圧変動抑制装置(図示しない)を有した流延室12内に設置した。
流延ドラム32は、周面32aに欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m以下、10μm未満のピンホールは2個/m以下であるものを用いた。図示しない駆動部により、流延ドラム32は、流延ドラム32の周面32aの走行速度が35m/分以上110m/分以下になるように、軸を中心に回転した。また、流延ドラム32に取り付けられている伝熱媒体循環装置37により、流延ドラム32の周面32aの温度は、−15℃以上0℃以下の範囲内になるように保持した。
温調設備35を用いて、流延室12の温度を35℃に、溶媒の凝縮する温度を−10℃に保った。流延ドラム32上に流延膜33を形成した。また、流延室12内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)39を設け、その出口温度は、−10℃に設定した。
(減圧チャンバ)
また、流延ダイ30より流延ドラム32の走行方向の上流側には、図3に示すような遮風シール88などを有する減圧チャンバ36を設置した。減圧チャンバ36は、前面側と背面側との圧力差P1が−100Paとなるように、流延ビード21aの背面側を減圧する。また、減圧チャンバ36には、減圧チャンバ36の内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内には35℃に調整された伝熱媒体を供給した。また、減圧チャンバ36と流延ドラム32の周面32aとの間隔CL3を0.7mmにした。
(遮風シール)
遮風シール88は、遮風シール88の端面と流延ドラム32の周面32aとの空隙CL1が0.7mm、そして、流延ビード21aと遮風シール88との空隙CL2が30mmとなるように配される。また、流延ビード21aの幅をW0、遮風シール88の流延ビード21aの幅方向における長さをW1とするときに、W1/W0が、0.9であった。
(凝縮点の計測場所・方法)
凝縮点TR1は、第3減圧ゾーン93に設けられる光学式露点計(ゼネラルイースタン社製 Hygro−M2)を用いて計測した。本実施例における凝縮点TR1は14℃であった。
流延膜33中の溶媒比率が乾量基準で150重量%になった時点で流延ドラム32から剥取ローラ34で支持しながら湿潤フィルム38として剥ぎ取った。このときの剥取テンションは[10kgf/m]であり、剥取不良を抑制するために流延ドラム32の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は、100.1%以上110%以下の範囲で適切に調整した。湿潤フィルム38の表面温度は[15℃]であった。流延ドラム32上での流延膜33の乾燥温度は、平均[60重量%乾量基準溶媒/分]であった。乾燥して発生した溶媒ガスは、−10℃の凝縮器39で凝縮液化して回収装置40で回収した。回収された溶媒は調整がなされた後に、ドープ調製用溶媒として再利用した。その際に、溶媒に含まれる水分量を0.5%以下に調整した。溶媒が除去された乾燥風は再度加熱して乾燥風として再利用した。湿潤フィルム38は、ピンテンタ13を介して、クリップテンタ14に案内された。
なお、この乾量基準による残留溶媒量は、サンプリング時におけるフィルム重量をx、そのサンプリングフィルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。この残留溶媒量は、サンプリング時の流延膜33、湿潤フィルム38、フィルム20から所定の寸法に切り出されたサンプリングフィルムについて、ガスクロマトグラフィー(GC−18A,島津製作所(株)製)を用いて、測定することができる。
(テンタ搬送・乾燥・耳切)
クリップテンタ14に送られた湿潤フィルム38は、クリップでその両端を固定されながらクリップテンタ14の乾燥ゾーン内を搬送され、乾燥風により乾燥した。クリップには、20℃の伝熱媒体を供給して冷却した。クリップの駆動はチェーンで行い、スプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、乾燥ゾーンを3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,100℃,110℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃の飽和ガス濃度とした。クリップテンタ14内での平均乾燥速度は120重量%(乾量基準溶媒)/分であった。クリップテンタ14の出口ではフィルム20中の残留溶媒量が乾量基準で7重量%となるように乾燥ゾーンの条件を調整した。
また、クリップテンタ14内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。クリップテンタ14に搬送された際の湿潤フィルム38の幅を100%としたときの拡幅量を103%とした。剥取ローラ34からクリップテンタ14入口に至る延伸率(テンタ駆動ドロー)は、102%とした。クリップテンタ14内の延伸率は、テンタ噛込部から10mm以上離れた部分における実質延伸率の差異が10%以下であり、且つ20mm離れた任意の2点の延伸率の差異は5%以下であった。ベース端のうちテンタクリップで固定している長さの比率は90%とした。クリップテンタ14内で蒸発した溶媒は、−10℃の温度で凝縮液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(図示しない)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。溶媒に含まれる水分量を0.5重量%以下に調整して再利用した。そして、クリップテンタ14からフィルム20として送り出した。
そして、クリップテンタ14の出口から30秒以内にフィルム20の両端の耳切りを耳切装置43で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ44に風送して平均80mm程度のチップに粉砕し、耳サイロ(図示しない)に収納した。耳サイロ内には、溶媒濃度計が設けられており、常に耳サイロ内の溶媒濃度をモニタリングしていた。耳サイロ内の溶媒濃度が爆発下限値(LEL)である25体積%を超えると爆発する場合がある。しかしながら、本実験においては、常に25体積%未満であり爆発の可能性は全く無かった。このチップは再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際に原料として利用した。クリップテンタ14の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室15で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフィルム20を予備加熱した。
フィルム20を乾燥室15で高温乾燥した。乾燥室15を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。ローラ47によるフィルム20の搬送テンションは100N/巾として、最終的に残留溶媒量が乾量基準で0.3重量%になるまで約10分間乾燥した。前記ローラ47のラップ角度は、90度および180度とした。前記ローラ47の材質はアルミニウム製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロムメッキを施した。ローラ47の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ47の回転による振れは全て50μm以下であった。また、テンション100N/巾でのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
吸着回収装置48を用いて、乾燥風に含まれる溶媒を回収した。溶媒の回収方法として、溶媒の吸着材である活性炭を用いる吸着回収方法を用いた。また、活性炭からの溶媒の脱着には乾燥窒素を用いた。回収した溶媒は、水分量0.3重量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤、その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却機及びプレアドソーバ(予備吸着材)でこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるように吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち凝縮法で回収する溶媒量は90重量%であり、残りの大部分は吸着回収により回収した。
乾燥されたフィルム20を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室15と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フィルム20のカールの発生を抑制するため第2調湿室(図示しない)にフィルム20を搬送した。第2調湿室では、フィルム20に直接90℃,湿度70%の風をあてた。
調湿後のフィルム20は、冷却室16で30℃以下に冷却して両端耳切りを行った。搬送中のフィルム帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)49を設置した。さらにフィルム20の両端にナーリング付与ローラ50でナーリングを行った。ナーリングは片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングする幅は10mmであり、最大高さは平均厚みよりも平均12μm高くなるように押し圧を設定した。
そして、フィルム20を巻取室17に搬送した。巻取室17は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。さらに、フィルム帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVになるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフィルム(厚さ80μm)20の製品幅は、1475mmとなった。巻取ローラ51の径は169mmのものを用いた。巻き始めテンションは360N/巾であり、巻き終わりが250N/巾になるようなテンションパターンとした。巻取全長は3940mであった。巻き取りの際の周期を400mとし、オシレート幅を±5mmとした。また、巻取ローラ51にプレスローラ52を押し圧50N/巾に設定した。巻き取り時のフィルム20の温度は25℃、含水量は1.4重量%、残留溶媒量は乾量基準で0.3重量%であった。全工程を通しても平均乾燥速度は20重量%(乾量基準溶媒)/分であった。また巻き緩み、シワもなく、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。また、ロール外観も良好であった。
フィルム20のフィルムロールを25℃、55%RHの貯蔵ラックに1ヶ月間保管して、さらに上記と同様に検査した結果、いずれも有意な変化は認められなかった。さらにロール内においても接着も認められなかった。また、フィルム20を製膜した後に、流延ドラム32上にはドープAから形成された流延膜33の剥げ残りは全く見られなかった。
間隔CL2を50mmにした以外は、実施例1と同様にして、溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は12℃であった。
圧力差P1を−200Paとし、間隔CL1を0.5mmにし、間隔CL2を40mmにした以外は、実施例1と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は13℃であった。
間隔CL1を0.7mmにした以外は、実施例3と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は11℃であった。
圧力差P1を−400Paとし、間隔CL1を0.6mmとし、間隔CL3を0.5mmとし、W1/W0を0.85とした以外は、実施例3と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は10℃であった。
圧力差P1を−400Paとし、間隔CL1を0.6mmとし、間隔CL3を0.5mmとし、W1/W0を0.85とした以外は、実施例3と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は10℃であった。
圧力差P1を−500Paとし、間隔CL2を1mmとした以外は、実施例5と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は25℃であった。
間隔CL2を50mmとした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は10℃であった。
間隔CL2を300mmとした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は0℃であった。
間隔CL1を0.1mmとし、間隔CL2を50mmとした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は20℃であった。
間隔CL1を0.8mmとし、間隔CL2を50mmとした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は10℃であった。
間隔CL1を2mmとし、間隔CL2を50mmとした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は4℃であった。
間隔CL1を10mmとし、間隔CL2を50mmとした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は−5℃であった。
間隔CL2を50mmとし、W1/W0を1とした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は15℃であった。
間隔CL2を50mmとし、W1/W0を0.91とした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は10℃であった。
間隔CL2を50mmとし、W1/W0を0.74とした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は7℃であった。
間隔CL2を50mmとし、W1/W0を0.5とした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は1℃であった。
圧力差P1を−700Paとし、間隔CL2を30mmとした以外は、実施例7と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は10℃であった。
間隔CL2を40mmとした以外は、実施例18と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は10℃であった。
圧力差P1を−1000Paとし、間隔CL1を0.9mmとし、間隔CL2を25mmとし、W1/W0を0.91とした以外は、実施例18と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は9℃であった。
間隔CL1を1mmとした以外は、実施例20と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は9℃であった。
圧力差P1を−1500Paとした以外は、実施例21と同様にして溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は9.5℃であった。
<比較例1>
間隔CL2を400mmにした以外は、実施例3と同様にして、溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は−12℃であった。
<比較例2>
間隔CL2を0.5mmにした以外は、実施例3と同様にして、溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は34℃であった。
<比較例3>
間隔CL1を0.05mmにした以外は、実施例5と同様にして、溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は29℃であった。
<比較例4>
間隔CL1を15mmにした以外は、実施例5と同様にして、溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は−13℃であった。
<比較例5>
間隔CL1を0.8mmとし、間隔CL2を40mmとし、W1/W0を0.4とした以外は、実施例7と同様にして、溶液製膜方法を行い、フィルムを得た。第3減圧ゾーン93における凝縮点TR1は−13℃であった。
上記溶液製膜方法におけるプレートアウトが生成時間、及び第3減圧ゾーン93における余剰の溶媒の凝縮による故障の有無について評価した。これらの評価は、実施例1〜22及び比較例1〜5全てに共通であり、各実施例での評価結果を纏めて表1に示す。なお、表1における評価項目の番号は、各評価項目に付した番号に対応する。
Figure 2008188941
1.プレートアウト生成時間
周面32aを洗浄した流延ドラム32を用いて流延工程を行い、流延工程開始からプレートアウトが発生するまでに要するプレートアウト生成時間TIME1を計測した。そして、従来のプレートアウト生成時間をTIME0とする場合のTIME1/TIME0の値から以下の条件で評価した。周面32aにプレートアウトが生成したか否かは、目視により判断した。
◎:TIME1/TIME0が1.3以上である。
○:TIME1/TIME0が1以上1.3未満である。
×:TIME1/TIME0が1未満である。
2.溶媒の凝縮による故障の有無
周面32aを洗浄した流延ドラム32を用いて流延工程を行い、製造したフイルムの平面性が劣化しているか否かを、目視で観察し、その面状を以下の如く評価した。
○:フィルム表面は平滑である。
×:フィルム表面に凹凸が見られた。
以上より、本発明は、同伴風の減圧ゾーンへの流入を防ぐ遮風シール88を有する減圧チャンバ36を用いることにより、プレートアウトの生成を抑制することができる。また、比較例1〜5の結果より、遮風シール88の各パラメータ(空隙CL1及びCL2、並びにW1/W0)が一定の条件を満足することにより、溶媒の余剰の凝縮を回避しながら、プレートアウトの生成を抑制することができる。したがって、本発明により、品質のよいフィルムを効率よく製造することができる。
フィルム製造ラインの概要を示す説明図である。 流延ドラム及びこの近傍に配置される各部の概要を示す側面図である。 減圧チャンバの斜視図である。 減圧チャンバを流延ドラムの周面からみた平面図である。 遮風ブロックを有する減圧チャンバの概要を示す説明図である。
符号の説明
10 フィルム製造ライン
12 流延室
20 フィルム
21 ドープ
30 流延ダイ
32 流延ドラム
32a 周面
33 流延膜
34 剥取ローラ
36 減圧チャンバ
88 遮風シール
88a 遮風面
78a パッキン
91 第1減圧ゾーン
92 第2減圧ゾーン
93 第3減圧ゾーン
CL1、CL2、CL3 空隙
W0,W1 幅

Claims (9)

  1. ポリマーと溶媒とを含むドープを走行する支持体上に流延装置から流延して流延膜を形成する溶液製膜方法において、
    前記流延装置から前記支持体に渡って前記ドープにより形成される流延ビードの、前記支持体の走行方向の上流側を減圧装置により減圧し、
    前記減圧装置に遮風部材を設け、この遮風部材と前記流延ビードとの間の範囲の前記溶媒が凝縮する温度を一定の範囲に保持することを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記溶媒が凝縮する前記温度を−10℃以上25℃以下に保持することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記流延ビードと前記遮風部材との空隙が、1mm以上300mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記支持体と前記遮風部材との空隙が、0.1mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の溶液製膜方法。
  5. 前記流延ビードの幅をW0とし、
    前記遮風部材の前記流延ビードの幅方向の長さをW1とするときに、
    W1/W0が、0.5以上であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の溶液製膜方法。
  6. ポリマーと溶媒とを含むドープを流延する流延手段と、
    所定方向に走行し、前記流延手段からの前記ドープから流延膜を形成する支持体と、
    前記流延手段から前記支持体に渡って前記ドープにより形成される流延ビードの、前記支持体の走行方向の上流側を減圧する減圧手段と、
    前記減圧手段に設けられ、前記流延ビードとの間の範囲の前記溶媒が凝縮する温度を一定の範囲に保持する遮風手段と、
    を有することを特徴とする溶液製膜設備。
  7. 前記流延ビードと前記遮風部材との空隙が、1mm以上300mm以下であることを特徴とする請求項6記載の溶液製膜設備。
  8. 前記支持体と前記遮風部材との空隙が、0.1mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項6または7記載の溶液製膜設備。
  9. 前記流延ビードの幅をW0とし、
    前記遮風部材の前記流延ビードの幅方向の長さをW1とするときに、
    W1/W0が、0.5以上であることを特徴とする請求項6ないし8いずれか1項記載の溶液製膜設備。
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