JP2008260271A - 溶液製膜設備及び溶液製膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶液製膜方法を用いて、効率良くフイルムをつくる。
【解決手段】流延ダイ81は、リップ板210、211やインナーディッケル板223、224とを有する。これらの接液面210a、211a、223a、224aが流出口81aを形成する。リップ板210及びインナーディッケル板223は、流出方向A1における稜211cと稜223cとの距離CL1が9μm以下になるように配される。同様にして、距離CL2〜CL4が、それぞれ9μm以下になるように、リップ板210、211やインナーディッケル板223、224が配される。液法用ノズル252、253が流出口81aの近傍に配される。流延ドープ51は流出口81aから流出し、周面82bにかけて流延ビード230を形成する。液法用ノズル252、253は、側端部230aに液法用溶液250を供給する。
【選択図】図6

Description

本発明は、溶液製膜設備及び溶液製膜方法に関する。
ポリマーフイルム(以下、フイルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学機能性フイルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフイルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフイルム用支持体として利用されている。また、TACフイルムは光学等方性に優れていることから、市場が急激に拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フイルム,光学補償フイルム,視野角拡大フイルムなどの光学機能性フイルムに用いられている。
主なフイルムの製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフイルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、フイルムの厚さの精度を調節することが難しく、また、フイルム上に細かいスジ(ダイライン)ができやすいため、光学機能性フイルムとして使用することができるような高品質のフイルムを製造することが困難である。一方、溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含んだポリマー溶液(以下、ドープと称する)を支持体上に流延し、流延膜を形成し、流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フイルムとし、湿潤フイルムを乾燥しフイルムとして巻き取る方法である。この溶液製膜方法は、溶融押出方法と比べて、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフイルムを得ることができるため、フイルム、特に光学機能性フイルムの製造方法として、溶液製膜方法が採用されている。
溶液製膜方法では、流延ダイの流出口から流出したドープは、流出口から支持体にかけて流延ビードを形成しながら、走行する支持体に流出する。流延ビードの両側端部において、他の場所に比べて、溶媒が蒸発しやすい。そのため、流延ビードの両側端部における局所的な乾燥が著しくなると、流延ダイの流出口の両側端部近傍に皮張りが発生する。「皮張り」とは、溶媒の蒸発等によるドープのゲル化物をいう。流出口の近傍における皮張りの発生により、流延ビードにはスジが形成してしまい、結果として、幅方向におけるフイルムの厚みムラとして問題となる。また、皮張りが発生したままフイルムの製造を続けると、皮張りがツララ状に成長し、上述した深刻な厚みムラ故障を誘発するだけでなく、成長した皮張りが流延ダイの流出口から離脱し、離脱した皮張りが搬送ロール等に付着して、流延膜や湿潤フイルムに押し傷を発生させるという問題が生じていた。
この皮張り発生の防止対策として、ドープに可溶な溶剤を流下する方法や、流出における流延ドープの滞留を防止する方法が知られている。特許文献1、2には、セルローストリアセテート等の溶液を流延するダイの両端のドープ流出端よりやや内側に流延されたドープの両端の上に乗せるようにジクロロメタン等の溶剤を供給する(以下、液法と称する)ことによって皮張りの発生を防止する方法が開示されている。特許文献3には、流延ドープの滞留が起こりにくい特殊な形状の流出口を有する流出装置を用いる方法が開示され、この流出口の形状が、2つの接液面のなす角の角度が120度以上であり、2つの接液面が交差する部分が屈曲部のない弧状であるときに、皮張りの発生が防止されると報じている。
特許第2687260号公報 特開2002−337173号公報 特開2002−103361号公報
しかしながら、上述の各対策を施した場合でも、溶液製膜方法を、例えば1000時間程度行うと、流出口の両側端部近傍にて皮張りが発生した。この皮張りが発生した場合は、外乱により流延膜が切断しない速度まで流延速度を減速し、皮張りを除去しなければならず、流延工程における生産性を著しく低下させる原因となっていた。
本発明の目的は、上記課題に鑑みて、皮張り発生を抑制しながら、高い生産性でフイルムを製造することのできる溶液製膜設備及び溶液製膜方法を提供することにある。
本発明は、ポリマー及び溶媒を含むドープを流延ダイの流出口から流延ビードとして、連続走行する支持体上に流出し、前記支持体上に流延膜を形成した後に剥がして、乾燥し、ポリマーフイルムを製造する溶液製膜方法において、前記流出口周縁の前記流延ダイの前記ドープ流出方向における凹凸を9μm以下に形成し、前記ポリマーの溶媒を含む溶液を、前記流延ビードの両側端部に供給することを特徴とする。
前記両側端部への前記溶液の供給量が、0.05mL/分以上0.2mL/分以下であることが好ましい。前記溶液が前記ポリマーの良溶媒と前記ポリマーの貧溶媒とを含み、式1を満たすことが好ましい。前記良溶媒がジクロロメタンを含み、前記貧溶媒がメタノールを含むことが好ましい。
(式1) 0.4≦RY1/(RY1+HY1)≦0.6
(前記溶液に含まれる前記良溶媒及び前記貧溶媒の重量をRY1、HY1とする。)
本発明の溶液製膜設備は、ポリマー及び溶媒を含むドープを流出する流出口を有し、前記流出口の縁部における、ドープ流出方向での凹凸を9μm以下にした流延ダイと、エンドレスに走行し、前記流出口から流出されるドープからなる流延ビードを受けて流延膜を形成する支持体と、前記流延ビードの両側端部に、前記ポリマーの溶媒を含む溶液を供給する溶液供給部と、前記支持体上の流延膜を剥がして乾燥させる乾燥装置とを備えることを特徴とする。
前記溶液供給部が、前記溶液を0.05mL/分以上0.2mL/分以下で前記両側端部へ供給することが好ましい。前記溶液供給部が、前記ポリマーの良溶媒と前記ポリマーの貧溶媒とを含み、式2を満たす前記溶液を前記両側端部へ供給することが好ましい。前記良溶媒がジクロロメタンを含み、前記貧溶媒がメタノールを含むことが好ましい。
(式2) 0.4≦RY1/(RY1+HY1)≦0.6
(前記溶液に含まれる前記良溶媒及び前記貧溶媒の重量をRY1、HY1とする。)
本発明の溶液製膜設備や溶液製膜方法によれば、前記流出口周縁の前記流延ダイの前記ドープ流出方向における凹凸を9μm以下に形成し、前記ポリマーの溶媒を含む溶液を、前記流延ビードの両側端部に供給するため、連続で長時間の溶液製膜を行っても、皮張りの発生を抑制することができる。また、この溶液の供給量や組成割合の適性化を行うことにより、皮張りの発生を抑えつつ、液飛散故障及び剥ぎ残り故障を回避することができる。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
(ポリマー)
本実施形態においては、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
また、本発明に用いられるポリマーはセルロースアシレートに限定されるものではない。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
(溶媒)
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度など及びフイルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
(ドープ製造方法)
図1にドープ製造ライン10を示す。ドープ製造ライン10には、溶媒を貯留するための溶媒タンク11と、溶媒とTACなどとを混合するための溶解タンク13と、TACを供給するためのホッパ14と、添加剤液を貯留するための添加剤タンク15と、後述する膨潤液を加熱するための加熱装置18と、調製されたドープの温度を調整する温調機19と、ドープを濾過する濾過装置20と、ドープを濃縮するフラッシュ装置21と,濃縮後のドープを濾過する濾過装置22などが備えられている。また、溶媒を回収するための回収装置23と、回収された溶媒を再生するための再生装置24とが備えられている。また、溶解タンク13の下流にはポンプ25が設けられ、フラッシュ装置21の下流にはポンプ26が設けられる。ポンプ25は溶解タンク13中の膨潤液44を加熱装置18に送り、ポンプ26はフラッシュ装置21中の濃縮後の濾過装置22に送る。そして、濾過装置20,22の下流側には、ストックタンク30が接続する。ドープ製造ライン10は、ストックタンク30を介してフイルム製造ライン32に接続されている。
初めに、溶媒タンク11と溶解タンク13とを接続する配管に設けられたバルブ35を開き、溶媒を溶媒タンク11から溶解タンク13に送る。次に、ホッパ14に入れられているTACを計量しながら溶解タンク13に送り込む。添加剤タンク15と溶解タンク13とを接続する配管に設けられたバルブ36の開閉操作を行って、必要量の添加剤溶液を添加剤タンク15から溶解タンク13に送り込む。なお、添加剤は溶液として送り込む方法以外にも、例えば添加剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンク13に送り込むことも可能である。また、添加剤が固体の場合には、ホッパ14を用いて溶解タンク13に送り込むことも可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンク15中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、多数の添加剤タンク15を用いてそれぞれに添加剤が溶解している溶液を入れて、それぞれ独立した配管により溶解タンク13に送り込むこともできる。
前述した説明においては、溶解タンク13に入れる順番が、溶媒(混合溶媒の場合も含めた意味で用いる)、TAC、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。TACを計量しながら溶解タンク13に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも溶解タンク13に予め入れる必要はなく、後の工程でTACと溶媒との混合物に混合させることもできる。
溶解タンク13には、その外面を包み込むジャケット37と、モータ38により回転する第1攪拌翼39とが備えられている。さらに、溶解タンク13には、モータ40により回転する第2攪拌翼41が取り付けられていることが好ましい。なお、第1攪拌翼39は、アンカー翼であることが好ましく、第2攪拌翼41は、ディゾルバータイプのものを用いることが好ましい。ジャケット37に伝熱媒体を流して溶解タンク13内を−10℃以上55℃以下の範囲に温度調整することが好ましい。第1攪拌翼39,第2攪拌翼41を適宜選択して回転させることでTACが溶媒中で膨潤した膨潤液44を得ることができる。
膨潤液44をポンプ25により加熱装置18に送液する。加熱装置18は、ジャケット付き配管を用いることが好ましく、更に膨潤液44を加圧できる構成であることが好ましい。膨潤液44を加熱または加圧加熱条件下でTACなどを溶媒に溶解させてドープを得る。なお、この場合に膨潤液44の温度は、0℃以上97℃以下であることが好ましい。加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択して行うことでTACを溶媒に十分溶解させることが可能となる。温調機19によりドープの温度を略室温とした後に、濾過装置20により濾過を行いドープ中の不純物を取り除く。濾過装置20の濾過フィルタの平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、濾過流量は、50L/時以上であることが好ましい。濾過後のドープは、バルブ46を介してストックタンク30に入れられる。
前記ドープは、後述する原料ドープとして用いることが可能である。しかしながら、膨潤液44を調製した後にTACを溶解させる方法は、TACの濃度を上昇させるほど時間がかかりコストの点で問題が生じる場合がある。その場合には、目的とするTAC濃度より低濃度のドープを調製した後に目的とする濃度のドープを調製する濃縮工程を行うことが好ましい。濾過装置20で濾過されたドープを、バルブ46を介してフラッシュ装置21に送液する。フラッシュ装置21内でドープ中の溶媒の一部を蒸発させる。蒸発した溶媒は、凝縮器(図示しない)により液体とした後に回収装置23で回収する。その溶媒は再生装置24によりドープ調製用の溶媒として再生を行い再利用することがコストの点から有利である。
濃縮されたドープをフラッシュ装置21からポンプ26を用いて抜き出す。さらに、ドープ中の泡抜きを行うことが好ましい。泡抜きは、公知のいずれの方法により行っても良く、例えば超音波照射法が挙げられる。その後に濾過装置22に送液して異物の除去を行う。なお、この際にドープの温度が0℃以上200℃以下であることが好ましい。そして、ストックタンク30にドープを入れる。
これらの方法により、TAC濃度が5重量%以上40重量%以下のドープを製造することができる。なお、製造されたドープ(以下、原料ドープと称する)48は、ストックタンク30に貯蔵される。
上述したドープ製造ライン10での、素材、原料、添加剤の溶解方法、濾過方法、脱泡、添加方法については、特開2005−104148号の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用できる。
(フイルム製造工程)
次に、本発明のフイルム製造工程50について説明する。図2のように、フイルム製造工程50は、上記で得られた原料ドープ48から流延ドープ51を調製する流延ドープ調製工程52と、流延ドープ51を支持体上に流延して流延膜53を形成する流延工程54と、自己支持性を有する流延膜53を支持体から剥ぎ取って湿潤フイルム55とする剥取工程56と、湿潤フイルム55を乾燥して、フイルム57を得る乾燥工程58とを有する。なお、このフイルム57を巻き取り、フイルムロールとする巻取工程を行っても良い。
(溶液製膜方法)
図3に、本実施形態で用いるフイルム製造ライン32の概略図を示す。フイルム製造ライン32は、液法装置61と流延室62とパスローラ63とピンテンタ64と耳切装置65と乾燥室66と冷却室67と巻取室68とを有する。
ストックタンク30には、モータ30aで回転する攪拌翼30bとジャケット30cとが備えられており、その内部にはフイルム57の原料となる原料ドープ48が貯留されている。ストックタンク30は、常時、その外周面に設けられているジャケット30cにより、原料ドープ48の温度が略一定となるように調整されるとともに、攪拌翼30bが回転されているので、ポリマーなどの凝集を抑制しながら、原料ドープ48の均一な品質が保持されている。
ストックタンク30は、配管71により、流延室62と接続する。配管71には、ギアポンプ73と濾過装置74とインラインミキサ75が備えられている。配管71のインラインミキサ75の上流側には添加剤供給ライン78が接続する。添加剤供給ライン78は、所定量の紫外線吸収剤、マット剤やレターデーション制御剤などの添加剤、或いはこれらを含む高分子溶液(以下、これらを混合添加剤と称する。)を、配管71中の原料ドープ48へ添加する。インラインミキサ75は、原料ドープ48と混合添加剤とを攪拌混合し、流延ドープ51を調製する。
ギアポンプ73は、流延制御部79と接続する。流延制御部79の制御の下、ギアポンプ73は、流延ドープ51を所定の流量で、流延室62内に配される流延ダイ81へ送る。
流延室62には、流延ドープ51を流出する流延ダイ81と、支持体であり、流延ドープ51から流延膜53を形成するキャスティングドラム(以下、流延ドラムと称する)82と、流延ドラム82から流延膜53を剥ぎ取る剥取ローラ83と、流延室62の内部温度を調整する温調設備86と流延室62内で気化している溶媒を凝縮して回収するための凝縮器(コンデンサ)87と凝縮液化した溶媒を回収する回収装置88とが備えられている。
(流延ドラム)
流延ダイ81の下方には、略円柱状に形成される流延ドラム82が設けられる。流延ドラム82は、流延制御部79と接続する軸82aを有する。流延制御部79の制御の下、流延ドラム82は、周面82bが走行方向Z1に所定速度で走行するように、軸82aを中心に回転する。
また、流延ドラム82の周面82bの温度T1を所望の温度に保つために、流延ドラム82に伝熱媒体循環装置89が取り付けられている。この伝熱媒体循環装置89にて所望の温度に保持されている伝熱媒体が、流延ドラム82内の伝熱媒体流路を通過することにより、流延ドラム82の周面82bの温度T1を所望の温度に保持できる。また、減圧チャンバ90は、走行方向Z1からみて、流延ダイ81よりも上流側に配される。
流延ドラム82の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。周面82bの表面粗さは0.01m以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。周面82bの表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であることが好ましい。流延ドラム82の回転に伴う周面82bの上下方向の位置変動は200μm以下であることが好ましい。流延ドラム82の速度変動を3%以下とし、流延ドラム82が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は3mm以下とすることが好ましい。
流延ドラム82の材質は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。流延ドラム82の周面82bは、クロムメッキ処理が施されていることが好ましい。これにより、周面82bは、流延ドープ51の流延に十分な耐腐食性と強度を有する。
(剥取ローラ)
剥取ローラ83は、走行方向Z1からみて流延ダイ81より下流側、流延ドラム82の周面82bの近傍に配される。剥取ローラ83は、流延ドラム82上の流延膜53を剥ぎ取り、湿潤フイルム55とする。
流延室62内の温度を所定の範囲に保つ温調設備86が取り付けられている。また、流延室62内で蒸発している溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)87が設けられている。凝縮液化した有機溶媒は、回収装置88により回収され再生させた後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。回収装置88は、流延室62内の雰囲気に含まれる溶媒の蒸気圧を、所定の範囲に保つ。
流延室62の下流には、複数のパスローラ63と湿潤フイルム55を乾燥させてフイルム57とするピンテンタ64と耳切装置65とが順次設けられている。
剥取ローラ83は、湿潤フイルム55をパスローラ63に案内する。パスローラ63は、流延室62から送られる湿潤フイルム55を、ピンテンタ64に案内する。図示は省略するが、パスローラ63の近傍には、乾燥風供給装置が設けられる。乾燥風供給装置は、乾燥風をパスローラ63上の湿潤フイルム55にあてて、湿潤フイルム55を乾燥させる。
ピンテンタ64は、湿潤フイルム55の固定手段である複数のピン(図示しない)を有する。これらのピンは、環状のチェーンに取り付けられる。このチェーンの走行により、ピンは無端走行する。ピンテンタ64は、剥取ローラ83から送られた湿潤フイルム55の両側端部を、それぞれピンで突き刺して、湿潤フイルム55を固定する。そして、ピンテンタ64は、2つのチェーンを所定方向へ搬送する。ピンテンタ64には図示しない乾燥風供給装置が設けられる。乾燥風供給装置は、乾燥風をピンテンタ64内の湿潤フイルム55にあてて、湿潤フイルム55を乾燥させる。この乾燥により、湿潤フイルム55の残留溶媒量が減少し、湿潤フイルム55はフイルム57となる。
ピンテンタ64と乾燥室66との間には耳切装置65が設けられている。この耳切装置65には、クラッシャ95が備えられている。耳切装置65は、フイルム57の両側端部を切断し、切断した両側端部をクラッシャ95に送る。クラッシャ95は、切断した両側端部を粉砕し、フイルム細片とする。このフイルム細片は、原料ドープ48として再利用される。
なお、ピンテンタ64と耳切装置65との間に、このフイルム57を乾燥させながら延伸するクリップテンタ97を設けても良い。クリップテンタ97は、フイルム57の把持手段としてクリップを有する乾燥装置である。クリップテンタ97の所定条件下の延伸処理によって、フイルム57に所望の光学特性を付与することができる。
乾燥室66には、多数のローラ100と吸着回収装置101とが備えられている。さらに、乾燥室66に併設された冷却室67の下流には、強制除電装置(除電バー)104が設けられている。また、本実施形態では、強制除電装置104の下流側に、ナーリング付与ローラ105を設けている。
乾燥室66内の温度は、特に限定されるものではないが、50℃以上160℃以下の範囲であることが好ましい。乾燥室66においては、フイルム57は、ローラ100に巻き掛けられながら搬送されており、ここで蒸発して発生した溶媒成分である溶媒化合物は、吸着回収装置101により吸着回収される。溶媒化合物が除去された空気は、乾燥室66の内部に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室66は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置65と乾燥室66との間に予備乾燥室(図示しない)を設けてフイルム57を予備乾燥すると、乾燥室66においてフイルム温度が急激に上昇することが防止されるので、これによりフイルム57の形状変化をより抑制することができる。
冷却室67はフイルム57を略室温まで冷却する。なお、乾燥室66と冷却室67との間に調湿室(図示しない)を設けても良い。調湿室でフイルム57に所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付ける。これにより、フイルム57のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制できる。
強制除電装置104は、搬送されているフイルム57の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3kV以上+3kV以下)にする。さらに、ナーリング付与ローラ105は、フイルム57の両縁にエンボス加工でナーリングを付与する。ナーリングされた箇所の凹凸が、1μm以上200μm以下であることが好ましい。
巻取室68の内部には、巻取ローラ107とプレスローラ108とが備えられている。この際には、プレスローラ108で所望のテンションを付与しつつ巻き取る。
(流延ダイ)
図4のように、流延ダイ81は、リップ板210、211を有する。リップ板210、211には、それぞれ所定の形状の孔が形成されている。これらの孔が向き合うようにしてリップ板210、211を組み合わせることにより、リップ板210,211に設けられる孔が、マニホールド215とスリット216との主要部を形成する。
図5及び図6のように、リップ板210、211の両端には、側板218、219とが配される。パッキンは、リップ板210、211と側板218、219との間に配され、リップ板210、211と側板218、219とをそれぞれ密着させる。
マニホールド215の形状は、コートハンガー状をしている。マニホールド215には、配管71と接続する供給口220が設けられている。マニホールド215の下側にはスリット216が形成される。マニホールド215及びスリット216の両端部には、前述したパッキンと密着するように、インナーディッケル板223、224が配される。なお、インナーディッケル板223の拡開面224aは、流延ドープ51が流れる方向の上流側に向かうように伸びるように設けられ、その上流側端部224x(図4参照)がスリット216の途中に位置しているが、本発明はこれに限られず、上流側端部224xがマニホールド215の上流側端部まで伸びていてもよいし、マニホールド215の途中、或いは、マニホールド215の下流側端部まで伸びていてもよい。また、リップ板210、211と側板218、219との間の密着性が高く、マニホールド215やスリット216等の密閉性が十分確保できる場合には、パッキンは用いなくてもよい。
リップ板210、211とインナーディッケル板223、224とは、流延ドープ51と接触しうる接液面210a、211a、223a、224aをそれぞれ有する。これら接液面210a、211a、223a、224aに囲まれる部分が、マニホールド215、スリット216及び流出口81aを形成する。
図4のように、接液面210a、211aにより、スリット216の間隙W1を調節することができる。接液面211aは、斜面227を有する。斜面227よりも流出口81a側の間隙W1が斜面227よりもマニホールド215側の間隙W1よりも狭くなるように、接液面210a、211aが形成される。
図5のように、接液面223a、224aにより、スリット216の間隙W2を調節することができる。マニホールド215から接液面210aの斜面227までの間隙W2が略一定であり、斜面227から流出口81aに向かうに従って間隙W2が徐々に広くなるように、接液面223a、224aが形成される。
図5及び図7のように、供給口220からマニホールド215に流入した流延ドープ51は、スリット216を介して、流出口81aから流出方向A1へ流出する。流出口81aから流出した流延ドープ51は、周面82bに掛けて流延ビード230を形成する。
ここで、流出方向A1は、流出口81aからの流延ドープ51の流出する方向である。流出方向A1は、トレーサ物質を流延ドープ51の中に注入し,個々のトレーサ物質の運動軌跡を観察して流跡を調べる注入流跡法や、高分子溶液の流動副屈折現象を利用する光弾性装置により得られる等剪断応力面により決定することができる。
図6のように、リップ板211やインナーディッケル板223の流出口81a側の端面を端面211b、223bとし、接液面211aと端面211bとにより形成される稜211cとし、接液面223aと端面223bとにより形成される稜223cとする。このとき、リップ板211とインナーディッケル板223とは、流延ドープ51が流出する流出口81aの凹凸、すなわち、流出方向A1における稜211cと稜223cとの距離CL1が9μm以下になるように配される。同様にして、リップ板210とインナーディッケル板224との流出口81a側の端面を端面210b、224bとし、接液面210aと端面210bとにより形成される稜210cとし、接液面224aと端面224bとにより形成される稜224cとしたときに、流出方向A1における稜210cと稜223cとの距離CL2と、流出方向A1における稜211cと稜224cとの距離CL3と、流出方向A1における稜210cと稜224cとの距離CL4とが、それぞれ9μm以下になるように、リップ板210、211とインナーディッケル板223、224とが配される。
(材料)
流延ダイ81を構成するリップ板210、211とインナーディッケル板223、224を形成する材料に求められる材質として、流延ドープ51との接触による酸化や腐食等に耐えうること、そして、前述した距離CL1〜CL4を所定の範囲内に維持するため、流延工程54において、寸法の変動が起こりにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、リップ板210、211とインナーディッケル板223、224の形成材料としては、下記(条件1)〜(条件3)を満たすものを用いることが好ましい。
(条件1) 電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するもの。
(条件2) ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するもの。
(条件3) 熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下であること。
したがって、リップ板210、211や、側板212,213を形成する材料としては、析出硬化型のステンレス鋼が好ましい。
リップ板210、211やインナーディッケル板223、224の接液面210a、211a、223a、224aの仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。接液面210a、211a、223a、224aの上記仕上げ精度により、流出口81aから流出する流延ドープ51から形成される流延膜53にスジやムラが生成することを防ぐことができる。リップ板210、211やインナーディッケル板223、224の端面210b、211b、223b、224bの平滑度は、最大2μm以下であることが好ましい。スリット216の間隙W1の平均値が、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いる。流延ダイ81のリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリット216の全巾に亘り50μm以下のものを用いる。
また、端面210b、211bに、硬化膜を形成することがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ81と密着性が良く、ドープとの密着性がないものが好ましい。硬化膜の組成として、タングステン・カーバイド(WC),Al23 ,TiN,Cr23などが挙げられるが、特に好ましいものはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
流延ダイ81の幅は、特に限定されるものではないが、最終製品となるフイルムの幅の1.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。また、流延ダイ81の外周面には、伝熱媒体が通過するジャケット(図示しない)が設けられている。また、流延ダイ81には温調機240(図3参照)が取り付けられている。温調機240は、所定の温度の伝熱媒体をジャケットに供給する。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を流延ダイ81の幅方向において所定の間隔で設け、ヒートボルトによる自動厚み調整機構が流延ダイ81に備えられていることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりギアポンプ73の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フイルム製造ライン32中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて製品フイルムの幅方向の任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、2μm以下に調整することがより好ましい。また、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。また、流延ダイ81内部における流延ドープ51の剪断速度が1(1/秒)以上5000(1/秒)以下となるように調整されていることが好ましい。
(液法装置)
図3のように、液法装置61は、液法用溶液250を貯留する溶液タンク251と、液法用溶液250を流延ビード230(図7)の側端部230a近傍に供給する液法用ノズル252、253(図7)と、溶液タンク251と液法用ノズル252、253とを接続する液法用配管255、256とを有する。
溶液タンク251には、モータ251aで回転する攪拌翼251bとジャケット251cとが備えられている。溶液タンク251は、常時、その外周面に設けられているジャケット251cにより、液法用溶液250の温度が略一定となるように調整されるとともに、液法用溶液250の均一な品質が保持されている。
液法用配管255には、液法用ポンプ260と液法用濾過装置261とが設けられる。液法用配管256には、液法用ポンプ262と液法用濾過装置263とが設けられる。液法用濾過装置261は、溶液タンク251からの液法用溶液250を濾過する。液法用ポンプ260は、液法用濾過装置261を介して、溶液タンク251からの液法用溶液250を液法用ノズル252へ送液する。同様にして、液法用濾過装置263は、溶液タンク251からの液法用溶液250を濾過する。液法用ポンプ262は、液法用濾過装置263を介して、溶液タンク251からの液法用溶液250を液法用ノズル253へ送液する。
液法用ポンプ260、262は、液法用制御部270に接続する。液法用制御部270の制御の下、液法用ポンプ260、262は、液法用溶液250を所定の流量で供給することができる。
(液法用ノズル)
図7のように、液法用ノズル252、253は、液法用溶液250を流出する流出口252a、253aを有する。液法用配管255,256を送られた液法用溶液250は、流出口252a、253aから外部へ流出する。液法用ノズル252、253は、流出口252a、253aが流延ダイ81の流出口81aの側端部近傍になるように、それぞれ配される。流出口252a、252cは、略円形状に形成される。これらの液法用ノズル252、253により、流延ビード230の両側端部に液法用溶液250を供給することができる。流出口252a、253aと側端部230aとの距離は、流出口252a、253aから流出した液法用溶液250が周面82b、流延膜53や流延ビード230などに飛散しない程度の範囲で、製造条件に応じて適宜決定すればよい。液法用溶液250の周面82b、流延膜53や流延ビード230などへの飛散は、フイルムの面状故障の原因となるからである。
(液法用溶液)
液法用溶液250としては、ポリマーの貧溶媒と良溶媒との混合物であることが好ましい。ポリマーの貧溶媒は、流延膜53中のポリマーを凝集させて、ゲル化させやすいため、流延膜53に自己支持性を発現させる。しかしながら、液法用溶液250が貧溶媒リッチとなる場合には、側端部230aにおける局所的な乾燥が進行し、皮張りが発生しやすくなる。一方、ポリマーの良溶媒は、流延ビード230の側端部230aにおける局所的な乾燥の進行を抑え、皮張りの発生を抑える。しかしながら、液法用溶液250が良溶媒リッチとなる場合には、側端部230aにおける皮張りの発生を抑えることはできるが、流延膜53の両側端部のゲル化が他の部分に比べて遅延するため、剥ぎ取りに十分な自己支持性をもたないまま流延膜53を剥ぎ取ることとなり、結果として、流延膜53の両側端部が流延ドラム82に剥ぎ残りとして残ってしまう。したがって、皮張りや剥ぎ残りの発生を回避するために、液法用溶液250として、貧溶媒と良溶媒との組成割合が式1を満たすようなものを用いることが好ましい。また、RY1/(RY1+HY1)の値が、0.45以上0.55であることがより好ましく、RY1/(RY1+HY1)の値が、略0.5であることが特に好ましい。なお、側端部230a近傍の厚さの向上を抑えつつ、側端部230aの強度を向上させることが可能となり、結果として、流延ビード230の形成を安定化することができるため、液法用溶液250における貧溶媒の含有割合は、流延ドープ51における貧溶媒の含有割合よりも大きいほうが好ましい。また、液法用溶液250を構成するポリマーの貧溶媒と良溶媒として、流延ドープ51に含まれているものを用いることが好ましい。
溶媒がそのポリマーの貧溶媒であるか良溶媒であるかの判断方法は、ポリマーが全重量の5重量%となるように当該溶媒とポリマーとを混合し、その混合物中に不溶解物が有るか否かにより行うことができる。そして、混合物中に不溶解物がある場合には、当該溶媒は貧溶媒であり、混合物中に不溶解物がない場合には、当該溶媒は良溶媒である。
(良溶媒)
ポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合、ポリマーの良溶媒成分としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)を用いること好ましい。これらの中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素を用いることがより好ましく、ジクロロメタンを用いることが最も好ましい。
(貧溶媒)
ポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合、ポリマーの貧溶媒成分としては、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)やケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)を用いることが好ましい。これらの中でも、炭素原子数1〜12のアルコールを用いることがより好ましく、メタノールを用いることが最も好ましい。なお、液法用溶液250を構成する良溶媒や貧溶媒としては、複数の化合物を混合した混合物を用いてもよい。
(減圧チャンバ)
図2のように、減圧チャンバ90は、流延ビード230(図7)を安定させるために、この流延ビード230の走行方向Z1からみて上流側(以下、背面側と称する)を負圧にする。減圧チャンバ90は、流延ビード230の背面側を、流延ビードの走行方向Z1からみて下流側(以下、前面と称する)の圧力よりも10Pa以上2000Pa以下の範囲で減圧することができる。さらに、減圧チャンバ90にはジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。減圧チャンバ90の温度は特に限定されるものではないが、用いられている有機溶媒の凝縮点以上にすることが好ましい。
次に、以上のようなフイルム製造ライン32を使用してフイルム57を製造する方法の一例を以下に説明する。図3のように、原料ドープ48は、攪拌翼30bの回転により常に均一化されている。原料ドープ48には、この攪拌の際にも可塑剤などの添加剤を混合させることもできる。また、ジャケット30c内に伝熱媒体が供給されており、原料ドープ48の温度を25℃以上35℃以下の範囲で略一定に保持している。
流延制御部79の制御の下、ギアポンプ73は、濾過装置74を介して、原料ドープ48を配管71へ送る。濾過装置74では、原料ドープ48が濾過される。添加剤供給ライン78は、マット剤液及び紫外線吸収剤溶液などを含む混合添加剤を配管71に送液する。インラインミキサ75が、原料ドープ48と混合添加剤とを攪拌混合して、流延ドープ51となる。このインラインミキサ75において、原料ドープ48の温度が、30℃以上40℃以下の範囲で略一定に保持されていることが好ましい。原料ドープ48とマット剤液と紫外線吸収剤溶液との混合比は特に限定されるものではないが、90重量%:5重量%:5重量%〜99重量%:0.5重量%:0.5重量%の範囲であることが好ましい。そして、流延ドープ51は、ギアポンプ73により、流延室62内の流延ダイ81へ送られる。
回収装置88は、流延室62内の雰囲気に含まれる溶媒の蒸気圧を、所定の範囲で略一定に保持する。温調設備86は、流延室62内の雰囲気の温度を−10℃以上57℃以下の範囲で略一定に保持する。
温調機240は伝熱媒体の温度を略36℃に保持し、この伝熱媒体をジャケットに供給する。これにより、流延ダイ81の温度が略36℃に保持される。また、ジャケット251bにより、液法用タンク251に貯留する液法用溶液250の温度は、20℃以上30℃以下の範囲内で略一定に保持される。
流延制御部79の制御の下、流延ドラム82は軸82aを中心に回転する。この回転により、周面82bは、50m/分以上200m/分の速度で走行方向Z1へ走行する。また、伝熱媒体循環装置89により、周面82bの温度T1は、−10℃以上10℃以下の範囲内で略一定に保持される。
図7のように、流延ダイ81は、流出口81aから流延ドープ51を流出する。流延ドラム82の周面82b上には流延膜53が形成される。流延膜53は、周面82b上で冷却され、ゲル化が進行する。なお、流延ドープ51が流出口81aから流出する際の詳細については、後述する。
図3のように、流延膜53は、自己支持性を有するものとなった後に、湿潤フイルム55として剥取ローラ83で支持されながら流延ドラム82から剥ぎ取られ、パスローラ63へ送られる。パスローラ63は、送風機から所望の温度の乾燥風を送風することで湿潤フイルム55の乾燥を進行させながら、湿潤フイルム55をピンテンタ64に送る。
ピンテンタ64に送られた湿潤フイルム55は、その入口でピンなどの固定手段により両側端部を保持される。この固定手段により、湿潤フイルム55は、ピンテンタ64内を搬送されながら、所定の条件で乾燥処理が施され、フイルム57となる。そして、固定手段からの固定から開放されたフイルム57は、クリップテンタ97に送られる。クリップテンタ97では、その入口でクリップなどの担持手段により両側端部を担持される。この担持手段により、フイルム57は、クリップテンタ97内を搬送されながら、所定の条件で乾燥処理が施される。クリップテンタ97による搬送中のフイルム57には、担持手段による延伸処理が所定方向に施される。
フイルム57は、ピンテンタ64やクリップテンタ97などで所定の残留溶媒量まで乾燥された後、耳切装置65に送り出される。フイルム57の両側端部は、耳切装置65によりその両縁が切断される。切断された側端部は、図示しないカッターブロワによりクラッシャ95に送られる。クラッシャ95により、フイルム57の両側端部は粉砕されてフイルム細片チップとなる。
両側端部を切断除去されたフイルム57は、乾燥室66に送られ、さらに乾燥される。この乾燥により、フイルム57の残留溶媒量が、乾量基準で5重量%以下であることが好ましい。この乾量基準による残留溶媒量は、サンプリング時におけるフイルム重量をx、そのサンプリングフイルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。十分に乾燥したフイルム57は、冷却室67に送られる。フイルム57は、冷却室67で略室温まで冷却される。
また、強制除電装置104により、フイルム57が搬送されている間の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)とされる。ナーリング付与ローラ105は、フイルム57の両縁にエンボス加工でナーリングを付与する。最後に、プレスローラ108で所望のテンションを付与しつつ、フイルム57を巻取室68内の巻取ローラ107で巻き取る。なお、巻き取り時のテンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。
巻取ローラ107に巻き取られるフイルム57は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フイルム57の幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、2500mmより大きい場合にも効果がある。フイルム57の厚みが20μm以上80μm以下の薄いフイルムを製造する際にも本発明は適用される。
次に、流延工程54(図2)における詳細の説明をする。図6及び図7のように、ギアポンプ73により、流延ドープ51は、流延ダイ81の流出口81aから流出方向A1に向かって流出する。流出口81aから流延ドラム82の周面82bにかけて流延ビード230が形成される。
流出口81aの凹凸、つまり、稜210c、211cと稜223c、224cとの距離CL1〜CL4が、いずれも流出方向A1において9μm以下であるため、流出口81aから流出する流延ドープ51は、流出口81a近傍で滞留せずに流延ドラム82上に流出する。こうして、流延ダイ81は、皮張りを発生させず、流延膜53を流延ドラム82に形成することができる。
距離CL1〜CL4の大きさと、流延ドープ51の皮張り生成の因果関係について、詳細な知見は得られていないが、この効果について次のことが考えられる。粘弾性流体である流延ドープ51から流出口81aから流出するときに、ダイスウェル現象が発生し、この現象により、流延ドープ51が流出口81a近傍で滞留する。このダイスウェル現象は、粘弾性流体が管内での流れで弾性せん断ひずみを受け、管の出口近傍でこのひずみが回復するために発生するといわれている。
一般に、一対のリップ板、インナーディッケル板から構成される流延ダイでは、距離CL1〜CL4が0ではない。このような流延ダイの流出口から、流出方向A1に向かって流出する流延ドープは、ある方向では接液面に接しながらも、他の方向では接液面に接していない状態を経る。このような状態にある流延ドープのうち、接液面に接していない流延ドープは、ダイスウェル現象により弾性せん断ひずみが回復しやすくなり、膨張しやすくなる一方、接液面に接している流延ドープは弾性せん断ひずみが回復しにくい。このように、弾性せん断ひずみの回復が局所的に発生する状態が一定の期間続くと、流延ドープの全体としての流れに乱れが生じ、この流延ドープの流れの乱れが、接液面に接している流延ドープの滞留を誘発する。また、流延ドープの流れの乱れは、CL1〜CL4が大きくなるほどより大きくなる。本発明では、距離CL1〜CL4が9μm以下であるため、ダイスウェル現象に起因する流延ドープの滞留を防ぐことができる。
したがって、距離CL1〜CL4の小ささ、すなわち、流出口81aにおける平面性の高さが、ダイスウェル現象によって発生する流延ドープ51の形状の変化を抑え、結果として、この形状変化により誘発する流延ドープ51のリップへの付着及び滞留を回避することができる。
溶液製膜方法の高速化(50m/分以上)を考慮したときに、流延工程54の高速化が大きな課題の一つとして挙げられる。本発明は、このような溶液製膜の高速化においても皮張りを発生することなく、安定した流延工程54を行うことができる。さらに、本発明の効果は、あらゆる形状の流出口81aを有する流出装置でも、発現するため、従来、流延ドープ51の滞留が発生しやすいと考えられていた矩形の形状の流出口を有する流延ダイなどに適用することも可能である。更に、本発明は、皮張りの生成のみならず、ドープの滞留により発生し、溶液製膜方法に悪影響を与える要因を排除することができる。この好ましくない要因として、例えば、ダイリップの近傍の内側に、すなわち接液面210a、211a、223a、224aに形成するドープの核によって、生じるダイラインなどがある。
また、液法用制御部270の制御の下、液法用ポンプ260、262は、液法用溶液250を流量V1で流延ビード230の両側の側端部230aに供給する。なお、液法用ポンプ260,262の脈動率は5%以下であることが好ましい。そして、液法用溶液250は、液法用ノズル252、253から流延ビード230の側端部230aへ流出する。流量V1の最適値は、周面82bの走行速度、いわゆる流延速度及び流延される流延ドープの厚みなどにより変動する。したがって、流量V1の調節は、各製造条件に応じて適宜、最適化されていることが好ましい。
液法用溶液250の側端部230aへの流量V1は、0.05mL/分以上0.2mL/分以下であることが好ましい。流量V1が0.05mL/分未満である場合には、側端部230aにおける局所的な乾燥が進行し、皮張りが発生しやすくなるため、好ましくない。一方、液法用溶液250の側端部230aへの流量V1が0.2mL/分を超える場合には、流延ビード230の側端部230a近傍の膜厚が大きくなり、側端部230aの強度が低下する。この場合には、減圧チャンバ90による吸引風や流延ドラム82の回転による同伴風などにより、側端部230aがばたつき、流延ビード230の形成が不安定になる。流延ビード230の形成の不安定化は、流延膜53、ひいてはフイルム57の長さ方向の厚みムラとなって現れるため好ましくない。更に、液法用溶液250の側端部230aへの流量V1が0.2mL/分を超える場合には、余剰な液法用溶液250が流延室62内に飛散する恐れがあるため好ましくない。この飛散した液法用溶液250が流延膜53や湿潤フイルム55に付着すると、フイルム57の面状故障となって現れるからである。
上述の流延ダイ81を用いて流延ドープ51を流出することにより、皮張りの原因となるリップ近傍での付着及び滞留を低減することができる。また、貧溶媒と良溶媒との組成割合が式1を満たす液法用溶液250を、流延ビード230の側端部230aに所定の流量で供給するため、液法用溶液250の飛散や剥ぎ残りなど、側端部230aへの液法用溶液250の供給による弊害を回避しつつ、溶液製膜を連続して長時間(略1000時間以上)行う場合に発生しうる皮張りを抑えることができる。
したがって、本発明の溶液製膜方法及び溶液製膜設備は、長時間連続運転下でも、支持体の洗浄等、製膜中に皮張りの除去を行う手間が不要となるため、結果として、高い生産効率でフイルムを製造することができる。
上記実施形態では、流出口81aを形成する各部材210、211、223、224の端面210b、211b、223b、224bが平行な場合を図示し、これについて説明したが、現実の端面加工を考慮すると、各部材210、211、223、224の端面210b、211b、223b、224bが平行であるケースはまれである。しかしながら、本発明は、各端面210b、211b、223b、224bが平行でない場合であっても適用することができる。また、本発明は、CL1〜CL4の距離に代えて、流出口81aを構成する部材のうち、一の部材の端面の、一の部材と隣り合う他の部材の端面に対する突出量を、流出方向A1について9μm以下としてもよい。したがって、インナーディッケル板223、224が、流出方向A1においてリップ板210、211に対して突出するように設けられる場合も、リップ板210,211が、流出方向A1においてインナーディッケル板223、224に対して突出するように設けられる場合も、端面の突出量が9μm以下であれば、本発明の効果を発現することができる。なお、流出口が1つの流出形成部材から形成される場合など、流出口の流出方向A1における凹凸がない場合も、この「凹凸が9μm以下」に含まれ、この場合においても当然のように本発明の効果が発現する。
なお、ドープの滞留を誘発する、弾性せん断ひずみの回復が局所的に発生する状態を短くするためには、上記のような端面の突出量を所定の値以下にすることに限られず、スロット216を形成する部材が1つであるか複数であるかに関らず、スロット216の内壁面の下流端部の、流出方向A1における突出量に着目すればよい。ここで、スロット216の内壁面の下流端部には、インナーディッケル板223、224がリップ板210、211よりも流出方向A1に突出して設けられる場合では、稜210c、211c、230c、231cとともに、接液面端部223x、223y、224x、224yが含まれる。接液面端部223xは、稜210cと稜223cと結ぶ接液面223aの端部であり、接液面端部223yは、稜211cと稜223cと結ぶ接液面223aの端部であり、接液面端部224xは、稜210cと稜224cと結ぶ接液面224aの端部であり、接液面端部224yは、稜211cと稜224cと結ぶ接液面224aの端部である。そして、スロット216の内壁面の下流端部が流出方向A1に突出して形成される場合は、この突出量を9μm以下にすればよい。なお、リップ板210、211がインナーディッケル板223、224よりも流出方向A1に突出して設けられる場合も同様である。また、スロット216の内壁面の下流端を湾曲に形成することが好ましい。
溶液製膜方法に用いられるドープは粘弾性流体であるため、ネックイン現象により、流出口から支持体にかけて形成した流延ビードの両端部は厚くなる(以下、耳厚故障と称する)。このような流延ビードからフイルムを製造しても、フイルムの両端部は、製品として使用できず、切り捨てられるため、結果として、フイルムの製造効率の低下の原因となる。加えて、フイルム製造工程において、両端部の膜厚が厚い流延膜は、支持体への密着性の低下を誘発する、支持体上の自己支持性が十分に発現しない、あるいは、搬送ローラ等に巻き付く原因となる。
耳厚故障を誘発するネックイン現象は、ドープの粘度が高くなるほど、また、流出口から支持体までのエアギャップが大きくなるほど、より顕著に発生することが知られている。ドープの粘度を低くするためには、ポリマーの組成を変える、または、ポリマー濃度が低いドープを用いる必要がある。ポリマーの組成を変えることは、得られるフイルムの光学特性に制限が課されるため好ましくなく、ポリマー濃度が低いドープを用いると、流延膜に自己支持性を発現させるのが困難になり、生産性が下がる。
そこで、流延ドープ51のネックイン現象に起因する弊害を防ぐため、エアギャップAG(図11参照)は、100mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが更に好ましい。このエアギャップAGは、周面82bと、稜210c、211c、223c、224c(図6参照)との最短距離である。流延ドラム82と硬質の材料から形成されるインナーディッケル板223、224との接触による、周面82bの損傷を避けるために、エアギャップAGは0.1mm以上であることが好ましい。エアギャップAGの調整は、流延ダイ81の配置位置、前述したCL1〜CL4の大きさや、走行により生ずる流延ドラム82の周面82bの上下方向の位置変動などにより決定すればよい。
更に、エアギャップAGを小さくするために、稜223c、224cが稜210c、211cよりも流延ドラム82の周面82bに近接するように、接液面210a、211a、223a、224aが形成されることが好ましい。なお、皮張り発生防止のみを目的とする場合は、稜210c、211cが稜223c、223cよりも周面82bに近接するように、接液面210a、211a、223a、224aを形成してもよい。
従来、エアギャップAGを小さくする場合には、エアギャップAGの調節時、または、流延ドープ14の流延時において、インナーディッケル板223,224との接触による流延バンド44の損傷を避けるために、テフロン(登録商標)など樹脂製のインナーディッケル板を設けたが、本発明は、ステンレス鋼やセラミックなどの硬質な材料からインナーディッケル板を設けるため、図11で示すようなCL1〜CL4の調整やエアギャップAGの調整において、高い精度を出すことができる。したがって、本発明によれば、ネックイン現象による弊害を防止しつつ、皮張り発生を防止することが可能になる。
ダイスウェル現象やネックイン現象による弊害を回避するために、流延ダイ81の流出口81aから流出する流延ドープ51の粘度は、10Pa・s以上200Pa・s以下であることが好ましい。
上記実施形態では、インナーディッケル板223、224の接液面223a、224aが、マニホールド215から接液面211aの斜面227までの間隙W2が略一定であり、斜面227から流出口81a近傍に向かうに従って間隙W2が徐々に広くなるように形成されていると記載したが、本発明はこれに限られない。例えば、図8に示すようなインナーディッケル板300、301を有する流延ダイ302や、図9に示すようなインナーディッケル板310、311を有する流延ダイ312でもよい。
図8に示すように、インナーディッケル板300、301は、流延ドープ51と接触しうる接液面300a、301aを有する。接液面300a、301aは、マニホールド215から接液面211aの斜面227までの間隙W2が略一定であり、斜面227から流出口81aに向かうに従って間隙W2が徐々に広くなるように、且つ、湾曲に形成される。
図9に示すように、インナーディッケル板310、311は、流延ドープ51と接触しうる接液面310a、311aを有する。接液面310a、311aは、スリット216から流出口81aに向かうに従って間隙W2が徐々に広くなるように形成されている。
上記実施形態では、板状のインナーディッケル板としたが、本発明は、これに限られず、流出口から流出するドープの幅を規制する接液面を有するインナーディッケル部材も、その形状に関わらず、当然にして含まれる。
上記実施形態では、流延ドラム82に形成される流延膜53を冷却して、流延膜53に自己支持性を発現させたが、本発明はこれに限られず、乾燥により流延膜53に自己支持性を発現させる溶液製膜方法にも適用できる。また、支持体として、軸を中心に回転する流延ドラム82を用いたが、これに代えて、走行するエンドレスバンドを支持体として用いてもよい。なお、支持体としては、走行する支持体に限られず、静止した支持体を用いても良い。
上記実施形態では、流出口81aから流出した流延ドープ51、すなわち流延ビード230の両側端部に液法用溶液250を供給すると記載したが、本発明はこれに限られない。本明細書における流延ビードとは、将来、流延ビード230の側端部230aとなる、すなわち吐出直前の流延ドープ51を含む。したがって、将来、流延ビード230の側端部230aとなる流延ドープ51に液法用溶液250を供給するために、流延ダイ81のスリット216の両側端部に予め液法用溶液250を供給してもよい。
前述した距離CL1〜CL4の調整方法の一例について、説明する。なお、本発明は、下記の調整方法に限られない。まず、リップ板210、211、インナーディッケル板223、224とを所定の形状に加工する。第2に、リップ板210、211とインナーディッケル板223、224とを組合せる(図10(A))。第3に、組合せ時の距離CL1〜CL4を計測する。この計測の際には、インナーディッケル板223の端面223dとリップ板211の斜面227とが当接するよう、インナーディッケル板223に方向A2から力を印加した状態で、距離CL1〜CL4を計測することが好ましい。距離CL1〜CL4の計測については、図示しないインナーディッケル板224についても同様である。第4に、インナーディッケル板223、224を取り外して、距離CL1〜CL4がそれぞれ9μm以下になるように端面223b、224bを加工する。こうして、リップ板210、211とインナーディッケル板223、224とが形成する流出口81aの凹凸、つまり距離CL1〜CL4が所定の条件を満たすように調整することができる(図10(B))。なお、方向A2は、流延方向A1としてもよい。
上記の調整方法を用いる場合には、リップ板210、211やインナーディッケル板223、224の形成材料に求められる材質として、上記(条件1)〜(条件3)に加えて、下記条件を満たすことが好ましい。
(条件4) 加工時のリップ板210、211及びインナーディッケル板223,224の体積変化率が0.05%以下であること。
(条件5) インナーディッケル板223、224の硬さがリップ板210、211を傷つけない程度のものであること。
上記条件(4)より、リップ板210、211及びインナーディッケル板223,224の材料は、体積変化率が上記条件を満たすものであればよい。ここで体積変化率とは、x軸、y軸、z軸の直交座標系における、インナーディッケル板223,224の寸法変化量a、寸法変化量a、寸法変化量aの最大値である。また、寸法変化量aは、1mm2 当たりの外力F(略90N)をx軸に印加したときのインナーディッケル板223,224の寸法変化量をΔbとし、外力F印加前のx軸方向の寸法をbとするときに、Δb/bとして表される。同様にして、寸法変化量aは、外力Fをy軸に印加したときのインナーディッケル板223,224の寸法変化量をΔbとし、外力F印加前のy軸方向の寸法をbとするときに、Δb/bとして、寸法変化量aは、外力Fをz軸に印加したときのインナーディッケル板223,224の寸法変化量をΔbとし、外力F印加前のz軸方向の寸法をbとするときに、Δb/bとして表される。
また、上記条件(5)について、例えば、リップ板210,211の材料として、析出硬化型のステンレス鋼などを用いる場合には、インナーディッケル板223、224の形成材料として、ビッカース硬さ200Hv以上1000Hv以下のものを用いることが好ましい。したがって、インナーディッケル板223、224の形成材料として、ステンレス鋼やセラミックスなどを用いることが好ましい。なお、インナーディッケル板223、224の材料として、磁性を有する材料を用いることが好ましい。端面223b、224bの加工時において、磁石によってインナーディッケル板223、224を固定することが可能になるため、距離CL1〜CL4の加工精度をより高いものにすることができる。
本発明は、流延ドラム82の替わりに、回転ローラに掛け渡されて移動する流延バンドを用いる溶液製膜方法にも適用可能である。
本発明は、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時に共流延させて積層させる同時積層共流延、または、複数のドープを逐次に共流延して積層させる逐次積層共流延を行うことができる。なお、両共流延を組み合わせてもよい。同時積層共流延を行う場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いてもよいし、マルチマニホールド型の流延ダイを用いてもよい。ただし、共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましく、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フイルム回収方法まで、特開2005−104148号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
[性能・測定法]
巻き取られたセルロースアシレートフイルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらも本発明にも適用できる。
[表面処理]
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
さらに前記セルロースアシレートフイルムをベースフイルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m 〜1000mg/m含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。セルロースアシレートフイルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特開2005−104148号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
(用途)
前記セルロースアシレートフイルムは、特に偏光板保護フイルムとして有用である。セルロースアシレートフイルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフイルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフイルムについての記載もある。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフイルムとして光学補償フイルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フイルムと兼用して使用することもできる。これらの記載は、本発明にも適用できる。特開2005−104148号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
また、本発明は、上記のような光学フイルムのほか、溶液製膜方法で製造されるポリマーフイルムであってもよい。例えば、燃料電池に用いられるプロトン伝導材料としての固体電解質フイルムなどがある。なお、本発明に用いられるポリマーはセルロースアシレートに限定されるものではなく、公知のポリマーを用いることができる。
次に、本発明の実施例を説明する。なお、以下の各実験において、実験1〜16のうち、実験5、8、9、13、14は、本発明の比較実験であり、それ以外は本発明の実施様態の例である。また、説明は実験1で詳細に行い、実験2〜16については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略する。
(実験1)
次に、本発明の実験1について説明する。フイルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
[ドープの調製]
原料ドープ48の調製に用いた化合物の処方を下記に示す。
セルローストリアセテート(置換度2.8) 89.3重量%
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.1重量%
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.6重量%
の組成比からなる固形分(溶質)を
ジクロロメタン 87重量%
メタノール 12重量%
n−ブタノール 1重量%
からなる混合溶媒に適宜添加し、攪拌溶解して原料ドープ48を調製した。なお、原料ドープ48の固形分濃度は19.3重量%になるように調整した。原料ドープ48を濾紙(東洋濾紙(株)製,#63LB)にて濾過後さらに焼結金属フィルタ(日本精線(株)製06N,公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフイルタで濾過した後にストックタンク30に入れた。
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8重量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
[マット剤液の調製]
下記の処方からマット剤液を調製した。なお、TACは、原料ドープ48の調製に用いたものと同じ物を用いた。
シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジルR972) 0.67重量%
セルローストリアセテート 2.93重量%
トリフェニルフォスフェート 0.23重量%
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.12重量%
ジクロロメタン 88.37重量%
メタノール 7.68重量%
上記処方からマット剤液を調製して、アトライターにて体積平均粒径0.7μmになるように分散を行った後、富士フイルム(株)製アストロポアフィルタにてろ過した。そして、マット剤液用タンクに入れた。
[紫外線吸収剤溶液の調製]
下記の処方から紫外線吸収剤溶液を調製した。なお、TACは、原料ドープ48の調製に用いたものと同じ物を用いた。
UV剤1 2(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−tert―ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 5.83重量%
UV剤2 2(2´−ヒドロキシ3´,5´−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール 11.66重量%
セルローストリアセテート 1.48重量%
トリフェニルフォスフェート 0.12重量%
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.06重量%
ジクロロメタン 74.38重量%
メタノール 6.47重量%
上記処方から紫外線吸収剤溶液を調製し、富士フイルム(株)製のアストロポアフィルタにてろ過した後に紫外線吸収剤液法用タンクに入れた。
また、液法用溶液250として、ジクロロメタンが50重量%、n−ブタノールが50重量%の混合溶媒Aを作製した。液法用溶液250を溶液タンク251に貯留し、液法用溶液250の温度を20℃以上30℃以下の範囲で略一定に保持した。液法用制御部270の制御の下、液法用ポンプ260、262は、流出口260a、262aから液法用溶液250が流出するように、液法用溶液250を略0.13mL/分で液法用配管255、256へ送った。
フイルム製造ライン32を用いてフイルム57を製造した。ギアポンプ73は、その1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプ73の上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプ73は容積効率99.2%、流出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、流出圧力は1.5MPaであった。流延制御部79の制御の下、ギアポンプ73は、原料ドープ48をインラインミキサ75へ送った。濾過装置74では原料ドープ48を濾過した。
添加剤供給ライン78では、紫外線吸収剤溶液にマット剤液を混合し、インラインミキサで混合攪拌して混合添加剤を得た。添加剤供給ライン78は、混合添加剤を配管71内に送液した。インラインミキサ75は原料ドープ48と混合添加剤とを混合攪拌して流延ドープ51を得た。
流出装置として、体積変化率0.002%の析出硬化型のステンレス鋼から形成されたリップ板210、211や、側板212,213と、インナーディッケル板223、224とを備える流延ダイ81を用いた。リップ板210、211やインナーディッケル板223、224の接液面210a、211a、223a、224aの仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であった。この流延ダイ81について、距離CL1〜CL4を2μm以下に調整した。そして、幅が1.8mであり乾燥されたフイルムの膜厚が60μmとなるように、流延ドープ51の流量を調整して流延工程を行った。流延ドープ51の温度を36℃に調整するために、流延ダイ81にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の温度を略36℃とした。
体積変化率の算出のためのリップ板210、211及びインナーディッケル板223,224の寸法、及びその変化量の計測は、分解能1μmのマイクロスコープを用いた。
温調機240により、製膜中における流延ダイ81と配管71との温度は略36℃に保温した。流延ダイ81は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ81には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプ73の送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フイルム製造ライン32に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフイルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
また、流延ダイ81の1次側には、この部分を減圧するための減圧チャンバ90を設置した。この減圧チャンバ90の減圧度は、流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この調整は流延速度に応じてなされる。その際に、流延ビードの長さが20mm〜50mmとなるように流延ビードの両面側の圧力差を設定した。減圧チャンバ90の内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内には35℃に調整された伝熱媒体を供給した。また、減圧チャンバ90は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものを用いた。流出口81aにおけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。
リップ板210、211、側板212,213や、インナーディッケル板223、224の形成材料として、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ81の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。流延ダイ81のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ81内部での流延ドープ51の剪断速度は1(1/秒)〜5000(1/秒)の範囲であった。また、流延ダイ81のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
支持体として流延ドラム82として利用した。流延ドラム82は、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものを用いた。流延ドラム82は、流延制御部79の制御の下、軸82aの駆動により回転させた。流延速度、すなわち、周面82bの走行方向Z1における速度は、50m/分以上60m/分以下とした。このときに、流延ドラム82の速度変動を0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行が、1.5mm以下に制限されるように流延ドラム82の両端位置を検出して制御した。流延ダイ81の直下におけるダイリップ先端と流延ドラム82との上下方向の位置変動は200μm以下にした。流延ドラム82は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室62内に設置した。
流延ドラム82は、周面82bの温度T1の調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。伝熱媒体循環装置89は、流延ドラム82に、30℃以上40℃以下の伝熱媒体を流した。流延直前の流延ドラム82中央部の表面温度は0℃であり、その両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延ドラム82には、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であるものを用いた。
流延ドラム82上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、この酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。また、流延室62内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)87を設け、その出口温度を−3℃に設定した。流延ダイ81近傍の静圧変動は、±1Pa以下に抑制した。
流延ダイ81は、流延ドープ51を流延ドラム82上に流延し、流出口81aから周面82bに掛けて流延ビード230が形成した。液法用ノズル252、253は、液法用溶液250を側端部230aに供給した。流延ドラム82の周面82b上には流延ドープ51から形成された。冷却により、流延膜53が自己支持性を有するものとなった後に流延ドラム82から剥取ローラ83で支持しながら湿潤フイルム55として剥ぎ取った。剥取不良を抑制するために流延ドラム82の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。流延室62内で気化した溶媒化合物は−3℃の凝縮器87で凝縮液化して回収装置88で回収した。回収された溶媒は、水分量が0.5%以下となるように調整した。また、溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。湿潤フイルム55をパスローラ63の2本のローラを介して搬送し、ピンテンタ64に送った。このパスローラ63では送風機から60℃の乾燥風を湿潤フイルム55に送風した。
ピンテンタ64に送られた湿潤フイルム55は、ピンでその両端を担持されながら、ピンテンタ64内の設けられる各区画を順次通過した。ピンテンタ64内の搬送の間、湿潤フイルム55に所定の乾燥処理を施した後、残留溶媒量が5重量%以下のフイルム57としてピンテンタ64から耳切装置65へ送り出した。
ピンテンタ64内で蒸発した溶媒は、凝縮回収用に凝縮器(コンデンサ)を設け、−3℃の温度で凝縮させ液化して回収した。そして凝縮溶媒は、含まれる水分量が0.5重量%以下に調整されて再使用された。
ピンテンタ64の出口から30秒以内にフイルム57の両端の耳切を耳切装置65で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ95に風送して平均80mm2 程度のチップに粉砕した。このチップは、再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際の原料として利用した。後述する乾燥室66で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフイルム57を予備加熱した。
フイルム57を乾燥室66で高温乾燥した。乾燥室66を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フイルム57のローラ100による搬送テンションを100N/mとして、最終的に残留溶媒量が0.3重量%になるまで約5分間乾燥した。ローラ100のラップ角度(フイルムの巻き掛け中心角)は、80°〜190°とした。ローラ100の材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラ100の表面形状はフラットなものとディンプル加工したものとを用いた。ローラ100の回転によるフイルム位置の振れは、全て50μm以下であった。また、テンション100N/mでのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置101を用いて吸着回収除去した。ここに使用した吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶媒は、水分量を0.3重量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には、溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤,その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却器およびプレアドソーバでこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち、凝縮法で回収する溶媒量は90重量%であり、残りのものの大部分は吸着回収により回収した。
乾燥されたフイルム57を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室66と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フイルム57のカールの発生を抑制する第2調湿室(図示しない)にフイルム57を搬送した。第2調湿室では、フイルム57に直接90℃,湿度70%の空気をあてた。
調湿後のフイルム57は、冷却室67で30℃以下に冷却した後に耳切装置(図示しない)で再度両端の耳切りを行った。搬送中のフイルム57の帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置104を設置した。さらにフイルム57の両端にナーリング付与ローラ105でナーリングの付与を行った。ナーリングはフイルム57の片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフイルム57の平均厚みよりも平均12μm高くなるようにナーリング付与ローラ105による押し圧を設定した。
そして、フイルム57を巻取室68に搬送した。巻取室68は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。巻取室68の内部には、フイルム57の帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVとなるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。最後に、プレスローラ108で所望のテンションを付与しつつ、フイルム57を巻取室68内の巻取ローラ107で巻き取った。
(実験2)
流延ダイ81について、距離CL1〜CL4を2μm以下に調整した。液法用ポンプ260、262による液法用溶液250の流量を、略0.2mL/分にしたこと、幅が1.4mであり乾燥されたフイルムの膜厚が80μmとなるように、流延ドープ51の流量を調整したこと以外は、実験1と同様にしてフイルムを製造した。
(実験3)
流延ダイ81について、距離CL1〜CL4を2μm以下に調整した。液法用ポンプ260、262による液法用溶液250の流量V1を、略0.06mL/分にしたこと、幅が2mであり乾燥されたフイルムの膜厚20μmとなるように、流延ドープ51の流量を調整したこと以外は、実験1と同様にしてフイルムを製造した。
(実験4)
液法用ポンプ260、262による液法用溶液250の流量V1を、略0.3mL/分にしたこと以外は、実験1と同様にしてフイルムを製造した。
(実験5)
液法用溶液250を流延ビード230に供給しなかったこと以外は、実験1と同様にしてフイルムを製造した。
(実験6)
液法用溶液250として、ジクロロメタンが70重量%、n−ブタノールが30重量%の混合溶媒Bを用いたこと以外は、実験1と同様にしてフイルムを製造した。
(実験7)
液法用溶液250として、ジクロロメタンが30重量%、n−ブタノールが70重量%の混合溶媒Cを用いたこと以外は、実験1と同様にしてフイルムを製造した。
(実験8)
距離CL1〜CL4が10μm以上に調整された流延ダイを用いて、流延工程を行ったこと以外は、実験1と同様にして、溶液製膜方法によりフイルムを製造した。
(実験9)
距離CL1〜CL4が10μm以上に調整された流延ダイを用いて、流延工程を行ったこと以外は、実験4と同様にして、溶液製膜方法によりフイルムを製造した。
(実験10〜実験16)
表1に記載される条件で流延工程を行ったこと以外は、実験1と同様にして、溶液製膜方法によりフイルムを製造した。実験14では、CL1〜CL4を9μmにしたこと以外は実験5と同様にして、溶液製膜方法によりフイルムを製造した。実験15ではジクロロメタンが40重量%、n−ブタノールが60重量%の混合溶媒Dを、実験16ではジクロロメタンが60重量%、n−ブタノールが40重量%の混合溶媒Eを、それぞれ液法用溶液250として用いた。
〔フイルムの評価〕
上記実施例1において、皮張りの生成の有無、及び、フイルムの平面性を下記の方法により評価した。なお、以下の測定は、実験1〜16全てに共通であり、実験1〜16での評価結果を纏めて表1に示す。なお、表1における評価項目の番号は、以下の各評価項目に付した番号に対応する。
1.皮張りの生成の有無
溶液製膜を1000時間以上連続で行った後、流出口81a近傍や流延ビードに皮張りが生成されているか否かを目視で調べた。そして、以下の判定を行った。
○:皮張りを確認できなかった。
△:皮張りを確認したものの、製造したフイルムにおいて厚さムラ故障が起こらなかった。
×:皮張りを確認し、これにより、製造したフイルムの厚さムラ故障に至った。
2.液法用溶液の飛散の有無
溶液製膜を1000時間以上連続で行った後、流延ドラム82や流延膜53などに液法用溶液が飛散しているか否かを目視で調べた。そして、以下の判定を行った。
○:液法用溶液の飛散を確認できなかった。
×:液法用溶液の飛散を確認し、これにより、製造したフイルムの面状故障に至った。
3.剥ぎ残り故障の有無
溶液製膜を1000時間以上連続で行った後、流延ドラム82に剥ぎ残りが発生しているか否かを目視で調べた。そして、以下の判定を行った。
○:剥ぎ残りを確認できなかった。
×:剥ぎ残りを確認した。
Figure 2008260271
表1からも明らかなように、本発明を適用した各実験から、溶液製膜の長時間稼動下において、厚みムラ故障を誘発する皮張りの発生を抑制することがわかった。そして、この効果は、製造するフイルムの厚さや、幅に関わらず、得られるものであることがわかった。また、CL1〜CL4が9μmを超えると、溶液製膜設備の長時間連続稼動下では、皮張りが生成しまうことがわかった。また、液法用溶液250による皮張り生成の抑制効果を発現させつつ、液法用溶液250の飛散を防止するために、液法用溶液250の流量を0.05mL/分以上0.2mL/分以下にしなければならないことがわかった。更に、液法用溶液250の組成が、貧溶媒リッチ或いは良溶媒リッチになると、皮張りや剥ぎ残りが発生しやすくなるため、これを回避するためには貧溶媒と良溶媒との混合割合が式1を満たすことが必要であることがわかった。
[実験1]
使用したセルローストリアセテートは、木材から採取したセルロースを原料として合成されたものであり、Ca含有率が5ppmであったこと、UV剤1として、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを用いたこと以外は、実施例1の実験1と同様にして、溶液製膜方法によりフイルムを製造した。
[実験2〜16]
セルローストリアセテート及びUV剤1は、実施例2の実験1と同様のものを用いて、それ以外は実施例1の実験2〜16と同様にして、溶液製膜方法によりフイルムを製造した。
実施例1、2における実験1〜16において、混合溶媒A〜Eの成分のn−ブタノールをメタノールに代えたこと以外は同様にして溶液製膜方法によりフイルムを製造した。
また、実施例1と同様に、実施例2の各実験1〜16及び実施例3の各実験において、皮張りの生成の有無、及び、フイルムの平面性を評価したところ、実施例2の各実験1〜16及び実施例3の各実験における評価結果は、対応する実施例1、2の各実験1〜16の評価結果と同様のものが得られた。
したがって、本発明の溶液製膜方法及び溶液製膜設備は、長時間稼動下でも、皮張りの発生を抑制することができるため、流延ダイや流延ドラムなど流延室62内の各部の洗浄を行わずに、フイルムを効率よく製造することができる。
原料ドープをつくるドープ製造ラインの概要を示す説明図である。 フイルム製造工程の概要を示す説明図である。 フイルム製造ラインの概要を示す説明図である。 第1の流延ダイの断面図である。 図4に示すV−V線断面図である。 流延ダイの流出口およびその周囲の概要を示す斜視図である。 流延ビードの両側端部に液法用溶液が供給される様子を示す説明図である。 第2の流延ダイの断面図である。 第3の流延ダイの断面図である。 (A)は、リップ板の端面とインナーディッケル板の端面との距離CL1〜CL4の調整の概要を示す側面図である。(B)は、距離CL1〜CL4の調整後のインナーディッケル板とリップ板を組み合わせて形成される流延ダイの概要を示す側面図である。 流延工程の概要を示す説明図である。
符号の説明
10 ドープ製造ライン
32 フイルム製造ライン
44 膨潤液
48 原料ドープ
50 フイルム製造工程
51 流延ドープ
52 流延ドープ調製工程
53 流延膜
54 流延工程
55 湿潤フイルム
56 剥取工程
57 フイルム
58 乾燥工程
61 液法装置
62 流延室
79 流延制御部
81、302、312 流延ダイ
81a 流出口
82 流延ドラム
82a 軸
82b 周面
83 剥取ローラ
86 温調設備
89 伝熱媒体循環装置
210、211 リップ板
210a,211a 接液面
210b、211b、 端面
210c、211c、 稜
215 マニホールド
216 スリット
218 側板
220 供給口
223、224、300,301、310、311 インナーディッケル板
223a,224a 接液面
223b、224b 端面
223c、224c 稜
223d 端面
227 斜面
230 流延ビード
230a 両側端部
250 液法用溶液
251 溶液タンク
252、253 液法用ノズル
252a、253a 流出口
255、256 液法用配管
260、262 液法用ポンプ
261、263 液法用濾過装置
270 液法用制御部

Claims (8)

  1. ポリマー及び溶媒を含むドープを流延ダイの流出口から流延ビードとして、連続走行する支持体上に流出し、前記支持体上に流延膜を形成した後に剥がして、乾燥し、ポリマーフイルムを製造する溶液製膜方法において、
    前記流出口周縁の前記流延ダイの前記ドープ流出方向における凹凸を9μm以下に形成し、
    前記ポリマーの溶媒を含む溶液を、前記流延ビードの両側端部に供給することを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記両側端部への前記溶液の供給量が、0.05mL/分以上0.2mL/分以下であることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記溶液が前記ポリマーの良溶媒と前記ポリマーの貧溶媒とを含み、式1を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
    (式1) 0.4≦RY1/(RY1+HY1)≦0.6
    (前記溶液に含まれる前記良溶媒及び前記貧溶媒の重量をRY1、HY1とする。)
  4. 前記良溶媒がジクロロメタンを含み、前記貧溶媒がメタノールを含むことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の溶液製膜方法。
  5. ポリマー及び溶媒を含むドープを流出する流出口を有し、前記流出口の縁部における、ドープ流出方向での凹凸を9μm以下にした流延ダイと、
    エンドレスに走行し、前記流出口から流出されるドープからなる流延ビードを受けて流延膜を形成する支持体と、
    前記流延ビードの両側端部に、前記ポリマーの溶媒を含む溶液を供給する溶液供給部と、
    前記支持体上の流延膜を剥がして乾燥させる乾燥装置とを備えることを特徴とする溶液製膜設備。
  6. 前記溶液供給部が、前記溶液を0.05mL/分以上0.2mL/分以下で前記両側端部へ供給することを特徴とする請求項5記載の溶液製膜設備。
  7. 前記溶液供給部が、前記ポリマーの良溶媒と前記ポリマーの貧溶媒とを含み、式2を満たす前記溶液を前記両側端部へ供給することを特徴とする請求項5または6記載の溶液製膜設備。
    (式2) 0.4≦RY1/(RY1+HY1)≦0.6
    (前記溶液に含まれる前記良溶媒及び前記貧溶媒の重量をRY1、HY1とする。)
  8. 前記良溶媒がジクロロメタンを含み、前記貧溶媒がメタノールを含むことを特徴とする請求項5ないし7のうちいずれか1項記載の溶液製膜設備。
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