JP2004188679A - セルロースアシレートフィルム及びその製造方法、並びに該フィルムを用いた光学フィルム、液晶表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
セルロースアシレートフィルム及びその製造方法、並びに該フィルムを用いた光学フィルム、液晶表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】耐久性良好なセルロースアセテートフィルムと共に、それを用いて得られる光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】セルロースアシレートフィルムを、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー、下記式で示される光熱変換熱重合開始剤を少なくとも含有するセルロースアシレート組成物を流延する工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製する。
Dn−・(K+)n
式中、Dn−は、アニオン性基含有の近赤外線吸収性色素部イオンを表す。K+はオニウムイオンを表す。nは1〜4の整数を表す。
【解決手段】セルロースアシレートフィルムを、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー、下記式で示される光熱変換熱重合開始剤を少なくとも含有するセルロースアシレート組成物を流延する工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製する。
Dn−・(K+)n
式中、Dn−は、アニオン性基含有の近赤外線吸収性色素部イオンを表す。K+はオニウムイオンを表す。nは1〜4の整数を表す。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、及びそれを用いた光学用途に利用される光学フィルムに関する。特に、液晶表示装置等に用いられる偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野拡大フィルム、プラズマディスプレーに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム、ハロゲン化銀写真感光材料に用いられる支持体フィルム、又、有機ELディスプレー等にも使用できる各種機能フィルム等に利用できる光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフィルムは透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来からハロゲン化銀感光材料フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは、引裂強度、耐折強度が低く、特に低湿度の状態下では、非常に脆くなり裂け易い欠点があった。このため、これらを改良するために、セルロースアシレートの溶液流延製膜方法を用い、セルロースアシレート溶液に低分子の可塑剤(例えば、リン酸エステル類、フタル酸エステル類等)、高分子量可塑剤(例えばポリエステルエーテル、ポリエステル−ウレタン、ポリエステル等)を、適宜選択して単独もしくは混合したドープ組成物を用いることが試みられている(例えば、特許文献1〜5参照)。また、ポリメチルアクリレート又はメチルアクリレートのコポリマーをセルローストリアセテートと混合させて、セルロースエステルフィルムの可塑性等を付与する技術も開示されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながらこれらの支持体でも、長期保存下での膜強度安定性が十分ではなく、フィルムが徐々に着色する等の問題があった。
【0004】
一方、近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルムは優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光素子との良好な接着性、優れた平面性、紫外線吸収性、帯電防止性等の性質、及び高い耐久性が求められている。また、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有する光学補償フィルムは、液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれている。
【0005】
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は、従来セルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶液塗布している為、セルロースエステルフィルム中の添加剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させてしまうなどの問題点を有していた。これらの特性を改良のするために、例えばフィルム製造中に紫外線吸収剤、帯電防止剤を添加、或いは紫外線吸収性基を含有した高分子を添加する方法が提案されてきた(例えば、特許文献7および8参照)。
【0006】
また、ドープ中に重合可能なモノマーを添加し、剥離前にイオン化照射を行い製膜速度を向上させる技術(例えば、特許文献9参照)、ドープ中に紫外線吸収性基を含む重合可能モノマーと光重合開始剤を添加し、流延工程で紫外線光照射して重合して製膜する技術(例えば、特許文献10および11参照)が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特公昭47−760号公報
【特許文献2】
特公昭43−16305号公報
【特許文献3】
特公昭44−32672号公報
【特許文献4】
特開平2−292342号公報
【特許文献5】
特開平5−197073号公報
【特許文献6】
米国特許第3277032号明細書
【特許文献7】
特開平6−148430号公報
【特許文献8】
特開2002−31715号公報
【特許文献9】
米国特許第3738924号明細書
【特許文献10】
特開2002−20410号公報
【特許文献11】
特開2002−47357号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イオン化照射による重合反応は、分子の切断などが起こり易く、不必要な又は有害な物質が生じ、後日他に悪影響を及ぼす虞がある。また、光重合反応を行う方法は、重合性モノマーの残存或いは十分な反応を進めるのに時間を必要とする懸念がある。
本発明の目的は、優れた引き裂き強度、耐折強度、優れた光学特性、及び長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することである。
他の本発明の目的は、それを用いて得られる光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム及び液晶表示装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記の構成により解決されることが見出された。
(1)溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムであって、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー(A)、光熱変換熱重合開始剤(TI)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【0010】
一般式(I)
Dn−・(K+)n
【0011】
一般式(I)中、Dは、アニオン性基含有の近赤外線吸収性化合物を表す。K+はオニウムイオンを表す。nは1〜4の整数を表す。
(2)上記の光熱変換熱重合開始剤(TI)が、波長700nm以上の近赤外波長領域に吸収帯があり、且つ分光吸光係数が10000以上の値を有する近赤外吸収性化合物であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3)前記セルロースアシレート組成物が、光安定化基を有する重合性基含有のモノマー(B)の少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4)前記セルロースアシレート組成物が、分子内に2個以上の重合性基を有する多官能モノマー(C)の少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(5)前記ラジカル重合性モノマー(A)が、多環式脂肪族炭化水素基を置換基として有する化合物であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0012】
(6)前記セルロースアシレート組成物が、微粒子を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(7)上記セルロースの水酸基への置換度が、下記式(a)〜(c)の全てを満足するセルロースアシレートであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(a) 2.6≦SA´+SB´≦3.0
(b) 2.0≦SA´≦3.0
(c) 0≦SB´≦0.8
[ここで、SA´はアセチル基の置換度、SB´は炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。]
(8)セルロースアシレートフィルムを溶液流延方法により製造するにおいて、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー(A)、及び光熱変換熱重合開始剤(TI)を少なくとも含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0013】
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム。
(10)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学用偏光フィルム。
(11)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示素材。
(12)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム。
(13)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
(14)上記(1)〜(7)のいずれかに記載され、その膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0014】
本発明は、セルロースアシレート溶液(ドープ)中に、ラジカル重合性モノマー(A)、及び光熱変換熱重合開始剤(TI)を少なくとも共存させて流延方法で流延し、かつ近赤外線照射してラジカル重合性モノマー(A)を速やかに重合反応させて、重合したポリマーがセルロースアシレートと相分離のない光学特性・膜強度に優れたフィルムが作製されるものである。即ち、近赤外線照射すると、光熱変換熱重合開始剤の[D]アニオン部がその光を吸収して熱に変換し、その熱により[K]カチオン部のオニウムイオンが熱分解し、ラジカルを発生し重合性化合物のラジカル重合反応を開始することができる。本発明の光熱変換熱重合開始剤(TI)は、同一分子内に近赤外線吸収能と熱ラジカル発生能を有する化合物であり、重合反応の開始が極めて効率良く、高感度な重合反応が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムとその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本発明のセルロールアシレートフィルムは、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー(A)、及び一般式(I)で示される光熱変換熱重合開始剤(TI)を少なくとも含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む溶液流延方法により製造されるものである。
【0016】
[セルロースアシレート]
本発明に用いられるセルロースアシレートについて、以下に記す。本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンタやパルプを精製して得られる精製リンタおよび精製高級木材パルプが原料セルロースとして用いられる。
【0017】
[セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製及びフィルムの作製]
次に上述の原料セルロースから製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。
本発明のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。
式(a):2.6≦SA´+SB´≦3.0
式(b):2.0≦SA´≦3.0
式(c): 0≦SB´≦0.8
【0018】
ここで、SA´はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB´はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA´+SB´)は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度(SB´)は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であるセルロースアシレートも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0019】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの具体的なアシル基、及びセルロースアシレートの合成方法は、公開技報2001−1745号(発明協会、2001年3月15日発行)の9頁に詳細に記載されている。
【0020】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フィルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.1〜5mmの粒子径を有することが好ましい。
【0021】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。本発明のセルロースアシレートをフィルム製造時に使用する際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。所望の含水率にするには、必要により従来公知の乾燥手段で乾燥すればよい。
本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は公開技報2001−1745号(発明協会、2001年3月15日発行)の7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0022】
次いで、ラジカル重合性モノマー(A)について詳述する。
ラジカル重合性モノマー(A)としては、具体的には、例えば下記一般式(A1−I)で表されるモノマーが挙げられる。
【0023】
【化1】
【0024】
一般式(A1−I)中、V1は−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO2−、−CO−、−CON(Q1)−、−SO2N(Q1)−又はフェニレン基(以下フェニレン基をPhで表すこともある。ただしPhは1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン基を含む)を表す。ここで、Q1は水素原子又は炭素数1〜8の置換されていてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、フロロベンジル基、メチルベンジル基、シクロヘキシルメチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表す。
V1の好ましい態様として、−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−が挙げられる。
【0025】
a1及びa2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−CN基、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又は−CH2COOR10基(R10はアルキル基を表す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等)を表す。
【0026】
Rは、脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。脂肪族基としては、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素基が挙げられ、その具体例としては、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロソナン、シクロソネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカンジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、アダマンタン等の環構造炭化水素等)が挙げられる。
これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状、並びに炭素原子数5〜16の環状の脂肪族基がより好ましい。
【0027】
かかる脂肪族基は置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OH、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO2R11、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO2R11、−N(R13)(R14)、−CO(R13)(R14)、−SO2(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R1 6)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニレン等)、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、クロメニル基、フェノキサチイニル基、インダゾイル基、ピラゾイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、ピリミデイニル基、インドイル基、イソインドイル基、キノニイル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
【0028】
前記のアルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の脂肪族基に導入し得る基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0029】
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R12は、水素原子又はR11基と同様のものを表す。
【0030】
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、又はR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員又は6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、−OH、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、又は−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。但し、かかる極性置換基において、R15及びR16の双方が−OHで表されることはない。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基又は−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
【0031】
上記式(A1−I)におけるRで表されるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。また、かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
上記式(A1−I)におけるRで表される複素環基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。また、かかる複素環基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0033】
更に好ましくは、上記ラジカル重合性モノマー(A)として、下記一般式(A1−II)で表される環状脂肪族基を置換基中に含有するモノマーが挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
一般式(A1−II)中、a1、a2及びV1はそれぞれ前記一般式(A−I)におけるa1、a2及びV1と同義である。
【0036】
R0は、炭素数5〜30個の環状構造を構成する炭化水素基であり、単環式、多環式、架橋環式、スピロ環式等の環状構造が挙げられる。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。好ましくは炭素数6〜25である。
【0037】
以下に脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。なお、下記構造例において、共役しない位置に二重結合を含有してもよい。
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
また、これらの脂環式炭化水素基は少なくとも1種の置換基を有していてもよい。脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の具体的な内容は、前記式(A−I)中のRで例示したと同一の内容のものが挙げられる。
【0041】
L1は、式(A−II)における−V1−と−R0とを連結する基を表し、直接結合又は総原子数1〜22個の連結基(ここでいう総原子数には、炭素原子、窒素原子又はケイ素原子に結合する水素原子を除く)を表す。好ましくは直接結合又は総原子数1〜12の連結基を表す。但し、R0が単環式脂肪族基の場合は、L1は直接結合ではなく、総原子数が1〜12の連結基であることが好ましく、更には総原子数1〜8の連結基であることが好ましい。
【0042】
L1における連結基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合等から構成される原子団の任意の組合せで構成される。例えば、原子団としては下記のものが挙げられる。
【0043】
【化5】
【0044】
ここで、z1、z2は各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)等を示す。z3は、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基等)等を示す。z4、z5は各々、炭素数1〜8の炭化水素基(具体的にはz3の炭化水素基と同一の内容のもの)等を表す。
【0045】
本発明におけるラジカル重合性モノマー(A)の添加量は、セルロースアシレートの添加量に対して、0.1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、1質量%〜30質量%の範囲である。
【0046】
本発明のセルロースアシレート組成物は、光安定化性能を有する基を含有するラジカル重合性モノマー(B)を含有することが好ましい。光安定化性能を有する基を含有する重合性モノマー(B)は、分子中に、前記のラジカル重合性モノマー(A)で記したと同様のラジカル重合性基から選ばれる少なくとも1つの重合性基と、光安定化性能を有する有機残基(以下「光安定化基」と称する)とを含有する化合物であり、従来公知の化合物が挙げられる。
【0047】
ラジカル重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B)と称することもある)は、分子中にラジカル重合性基の1〜4個と光安定化基の1個とを含む化合物が好ましく、ラジカル重合性基を一個含有する化合物がより好ましい。
【0048】
光安定化性能を有する化合物(B)としては、例えば、大沢善次郎「高分子材料の劣化と安定化」235頁((株)シーエムシー、1990年刊)に記載の従来公知のものが挙げられる。これらの化合物の少なくとも一つが置換された有機残基が光安定化基としてあげられる。好ましい光安定化基は、紫外線吸収性化合物を含む有機残基、ヒンダードアミン骨格を含む有機残基である。紫外線吸収性化合物を含む有機残基は、波長370nm以下の紫外線の吸収性に優れ、且つ波長420nm以上の可視光の吸収が小さいものが好ましい。例えばオキシベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、トリアジン骨格を含む基、サリチル酸エステル骨格、シアノアクリレート骨格、又はベンゼン骨格を含む基等が挙げられ、特に紫外線の波長が320〜400nmの波長域に吸収性の良好なベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、s−トリアジン骨格を含む基が好ましい。
ヒンダードアミン骨格を含む有機残基としては、2−位と6−位にそれぞれ1〜2個のアルキル基を有するピペリジン環が挙げられる。特に、少なくとも一個の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン環を含む有機残基が好ましい。
【0049】
本発明において、光安定化基を含有するモノマー(B)は、紫外線含有モノマーとヒンダードアミン含有モノマーとを共存して用いる、或いは紫外線吸収性基とヒンダードアミン骨格を含有する基とを共に含む光安定化モノマーを用いることがより好ましい。このことにより、一層の耐光性が得られる。
【0050】
具体的には、例えばベンゾフェノン系モノマーとして、米国特許4304895号、同3162676号、特開平10−1517号公報、同10−60307号公報、同10−316726号公報、同10−182743号公報、特開2001−139640号公報、同2001−139924号公報等に記載の化合物等、また、ベンゾトリアゾール系モノマーとして、例えば、ANDRES S.、CHONGLI Z.、OTTO V.、J.M.S.−PUREAPPL.、A30(9&10)、pp.741〜755(1993)、米国特許3493539号、同4528311号、特開平2−63463号公報、同8−311045号公報、同9−3133号公報、同9−5929号公報、同9−194536号公報、同10―60307号公報、国際公開94/24112号公報、特開2001−114841号公報、同2001−139924号公報等の記載の化合物、他の紫外線吸収性基含有のモノマーとして、特開平7−258166号公報、同8−188737号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0051】
ヒンダードアミン骨格を含むモノマーとして、例えば、特開平7−70067号、同9−3133号、同10−279832、同10−235992号、同11−138729号、特表平10−116883号、特開2001−114841号の公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0052】
例えば、紫外線吸収性モノマー(BU)として、下式(BU1−I)で表される、紫外線吸収有機残基を含有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0053】
【化6】
【0054】
式(BU1−I)中、V2、b1及びb2は、各々前記一般式(A−I)のV1、a1及びa2と同一の内容を表す。
b1及びb2は、いずれか一方が水素原子であることが好ましく、水素原子以外の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
L2は−V2−と−U1とを連結する基を表し、単結合又は2価の連結基を示す。2価の連結基としては、前記の一般式(A−II)のL1と同一の内容を表す。更に、L2は下記式(L2a)〜(L2d)で表されるピペリジン骨格を表す。L2全体の水素原子を含まない連結にかかわる原子数が1〜20個の範囲、且つ少なくとも一個のピペリジン骨格を含有する連結基であることが好ましい。
【0055】
【化7】
【0056】
式(L2a)〜(L2d)中、r1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、r2及びr3は同じでも異なってもよく、各々水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0057】
上記式(BU1−I)中、U1は1価の紫外線吸収基含有基を示す。
紫外線吸収基含有基は、ベンゾフェノン骨格、サリチル酸骨格、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、又はベンゼン骨格を含む基であることが好ましく、特にベンゾフェノン骨格を含む1価の基又はベンゾトリアゾール骨格を含む1価の基が好ましい。紫外線吸収基含有基U1の例を下記式(U1−I)、(U1−II)に示す。
【0058】
【化8】
【0059】
重合性基は、上記の式(U1−I)及び(U1−II)で示される骨格の各々のベンゼン環、ベンゾトリアゾール環、s−トリアジン環のいずれに存在していてもよい。ベンゾトリアゾール環の2位に1つのベンゼン環が結合している骨格を有する、しかもこのフェニル基の2位に水酸基を有するものが好ましい。また、重合性基を含有する基は2個以上存在していてもよいが1個存在することが好ましい。
【0060】
上記の各骨格の重合性基を含有する基の存在しない位置には置換基が1個以上存在していてもよい。その置換基としては、前記一般式(A−I)のRに記載の置換基と同様のものが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜18のアルキル(又は炭素数1〜6、もしくは1〜2のアルキル)、アリール(例えば、炭素数6〜20の、例えば、フェニル基)、ヘテロアリール(例えば、ピロロ、フリルもしくはチエニル)、アリールオキシ(例えば、炭素数6〜20の)、アルコキシ(例えば、炭素数1〜6又は1〜2のアルコキシ)、シアノ、ニトロ、又はハロゲン(例えば、F又はCl、特にベンゾ環上の5位及び/又は6位上に、及び/又はヒドロキシ置換フェニルの5′位上にClを有するもの)であってよい。ベンゾ環の置換基としてはまた、それに縮合した環、例えば、ベンゾ、ピロロ、フリル又はチエニル環を挙げることができる。アルキル及びアルコキシ置換基のいずれも1〜5個の(又は1〜2個の)介在する酸素、イオウ又は窒素原子を有してよい。
【0061】
ヒンダードアミン骨格を含有するモノマー(以下、モノマー(BH)と称することもある)は、2、6−テトラアルキルピペリジン骨格の1−位、3−位、4−位、5−位のいずれかの置換位置に直接又は連結基を介して重合性基が結合してなる化合物である。例えば、下記一般式(BH−I)で示される。
【0062】
【化9】
【0063】
式(BH−I)中のU2は、下記式(U2−I)又は(U2−II)を表す。
【0064】
【化10】
【0065】
式(U2−I)及び(U2−II)中、r11及びr12は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基を表わすか、又はr11及びr12は一緒になってペンタメチレン基を表す。r13は、水素原子又はシアノ基を表す。
R21は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、―C(=O)R23基(R23は、炭素数1〜18の炭化水素基)、―OCOR23基、又は−OR23基を表す。
R22は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は−OR23基を表す。
尚、上記R21及びR23の炭化水素基は、置換されてもよく、具体的には前記一般式(A−I)中のRの炭化水素基と同一の内容を表す。
Y1は、酸素原子又はイミノ基を表し、Y2は、酸素原子、メチン基又は「―L2―」に直結する基を表す。
【0066】
また、ベンゾフェノン系重合性化合物及びベンゾトリアゾール系重合性化合物以外の式(BU1−I)で表される化合物としては、(2−シアノ−2−エチル−3,3−ジフェニル−ヘキシル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
本発明における、上記ラジカル重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。モノマー(B)の種類は必要に応じて適宜変更されうる。
更には、本発明の光安定化モノマーは、上記の紫外線吸収性基とヒンダードアミン基を分子内に含有するものであってもよい。
これら光安定化モノマー(B)は、前記重合性モノマー(A)に対して1〜95質量%の割合で用いることが好ましく、更に5〜80質量%の割合が好ましい。この範囲において、セルロースアシレートフィルムの膜性(耐脆性、強度等)と耐候性を良好とすることが出来る。
以下にそれらの重合性モノマーを例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0068】
【化11】
【0069】
【化12】
【0070】
本発明のセルロースアシレート溶液には、帯電防止能を有する置換基(帯電防止性基)を有する重合性化合物を更に添加して製膜することが好ましい。
帯電防止性基としては、帯電防止性或いはイオン導電性の作用を有するとして知られる従来公知の有機性化合物から成るものが挙げられる。
例えば、ポリオキソアルキレン基、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基、ホスホン酸塩の基、スルホン酸塩の基等が挙げられる。セルロースアシレートドープ組成物への溶解性、フィルムの帯電防止性能、湿度変化での帯電防止性の安定性等から、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基が好ましい。
【0071】
これらモノマーの具体例として、ポリオキソアルキレン基を含有するモノマーとして、特開平7−238115号公報、同8−311435号公報、同9−78056号公報、同11−194448号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0072】
アルキル4級アンモニウム塩或いは含窒素複素環式4級アンモニウム塩の基を含有するモノマーとしては、特開平6−160327号公報明細書中の段落番号〔0030〕〜〔0053〕記載の化合物、同7−118480号公報明細書中の段落番号〔0032〕〜〔0036〕に記載の繰り返し単位に相当する化合物、同7−179071号公報明細書中の段落番号〔0010〕、特表2001−507380号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0073】
また、ホスホニウム塩の基を含有するモノマーとしては、特開平6−200239号公報明細書中の段落番号〔0012〕〜〔0014〕記載の化合物、同10−219233号公報明細書中の段落番号〔0011〕記載の化合物、同7−179071号公報に記載の化合物等が挙げられる。
上記の重合性化合物は、求められる要求特性に応じて任意に併用することが出来るが、全重合性化合物量に対して5〜90質量%の範囲が好ましい。更には5〜70質量%が好ましい。
【0074】
更に、本発明のセルロースアシレート組成物は、分子内に2個以上の重合性基を含有する多官能モノマー(C)を含有することが好ましい。
多官能モノマー(C)としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜5個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0075】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類との単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0076】
脂肪族多価アルコール化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等と不飽和カルボン酸(クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)とのモノ置換又はポリ置換の重合性化合物が挙げられる。
【0077】
その他のエステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0078】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロヘキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0079】
また、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、日本接着協会誌20巻、7号、300〜308頁(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの多官能性重合性化合物は、全重合性化合物中の0.5〜70質量%の範囲の使用割合が好ましい。特に、1〜40質量%が好ましい。この範囲で、セルロースアセテート溶液(ドープ液)の流延後の光重合硬化においてゲル化を生じることなく、得られたフィルムの膜性(耐脆性、強度等)が良好となる。
【0080】
次に、本発明のセルロースアシレート組成物に用いられる光熱変換熱重合開始剤(TI)について詳述する。
本発明の光熱変換熱重合開始剤(TI)は、近赤外線光照射されて光吸収して吸収した近赤外線を熱に変換する機能を有し、同時にその発生した熱により、ラジカルを発生する。
本発明において用いられる光熱変換熱重合開始剤(TI)としては、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収性で且つ熱でラジカル種を発生する化合物であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、且つ分子吸光係数は20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。本発明の重合反応は、重合開始が近赤外線の照射であり、従来の紫外線照射による重合系に比べ、セルロースアシレート組成物の紫外線吸収による照射光量の減衰が回避される。このため、重合反応が効率よく進行する。
【0081】
本発明の光熱変換熱重合開始剤(TI)は、下記一般式(I)で示される化合物が具体的に挙げられる。
【0082】
一般式(I)
Dn−・(K+)n
【0083】
一般式(I)中、Dn−は、アニオン性基含有の近赤外線吸収性化合物を表す。また、K+はオニウムイオンを表す。nは1〜4の整数を表す。
Dn−は、700nm以上の波長域の少なくとも1部に吸収帯を有する近赤外線吸収性のカチオン系色素で、且つ色素分子内に色素カチオン部と分子内塩を形成する酸性アニオン性基(スルホナート基、カルボキシラート基、ホスホナート基、又はオキシホスホナート基から選ばれる1種)とスルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、オキシホスホ基から選ばれる少なくとも1種の酸性基が解離することで発生するアニオンを含有するアニオン性色素、又は上記解離性酸性基を1個以上含有するペンタメチン鎖のオキソノール色素を表わす。
好ましくは、750〜1400nmの領域に吸収を有し、且つ分子吸光係数が20,000以上の値の色素であり、より好ましくは750〜1000nmの領域に吸収を有し、且つ分子光吸光係数50,000以上のものである。
カチオン色素としては、例えばシアニン系色素、ピリリウム系色素(チオピリリウム系色素、セレナピリリウム系色素、テルナピリリウム系色素を含む)、アズレニウム系色素、イミニウム系色素、スクアリウム系・クロロニウム系色素、トリアリルメタン系色素等が挙げられる。中でもシアニン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、イミニウム系色素が、高い分子吸光係数を有しており好ましい。
【0084】
上記の色素類としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号45〜51頁の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、「機能性色素の化学」(檜垣編集、1981年、(株)シーエムシー発行)、「色素ハンドブック」(大河・平嶋・松岡・北尾編集、講談社発行)、J.FABIAN,Chem.Rev.,92,pp.1197〜1226(1992)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログあるいは特許に記載されている公知のメチン色素が利用できる。
【0085】
例えば、以下に挙げるものを用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
米国特許第5,156,938号明細書記載、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号、同63−115173号、特開2000−347393号の各公報等に記載されているメチン色素、シアニン色素として、英国特許434875号、米国特許第4756993号、米国特許第4973572号等、特開昭57−46245号、同58−125246号、同58−219091号、同59−24692号、同59−84248号、同59−150795号、同60−78787号、特公平5−60868号、特開平2−67183号、同4−13773号、同5−139046号等、特開2001−125260号の各公報等に記載のヘプタメチン以上の色素、カルボニウム系及びイミニウム系の色素として、特開昭55−79451号、同55−163094号、同56−8149号、同58−181690号、同2000−338651号等公報に記載の色素、アズレニウム系色素として、同60−263158号、同61−15151号、同60−192691号、同61−68294号等公報に記載の色素、スクワリリウム或いはクロコニウム色素として、特開2000−171975号公報、同2000−206685号公報、Jurgen Fabian, Hiroyuki Nakazumi, and Masaru Matsuoka,“Near−Infrared Absorbing Dyes”, Chem. Rev. 92,1197−1226(1992)等に記載の色素、ピリリウム系色素として、米国特許第3881924号、米国特許第4283475号、特開昭58−181051号、同58−181689号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、同61−26044号、特公平5−13514号、同5−19702号、同6−54394号、特開平11−95421号の各公報等に開示されているピリリウム化合物等が挙げられる。
【0086】
一般式(I)中のK+は、オニウムイオンを表す。
オニウムイオンとしては、ジアゾニウムイオン、アンモニウムイオン、イミニウムイオン、ホスホニウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、アルソニウムイオン、セナニウムイオン、シリコニウムイオンが挙げられる。
好ましい例としては、“Onium ions”(A. Olha, Kennneth K. Laali, Qi Wang,G. K. Surya Prakashら著、出版:A Wiley−Interscience Pubilcation )に記載のものがあげられる。
具体例として、例えばジアゾニウム塩(S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Baletal,Polymer,21,423(1980)等に記載)、アンモニウム塩(米国特許第4069055号明細書、特開平4−365049号公報、同5−278330号公報等に記載)、ホスホニウム塩(米国特許第4069055号、同4069056号の各明細書等に記載)、ヨードニウム塩(欧州特許第104143号、米国特許第339049号、同第410201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報等に記載)、スルホニウム塩(欧州特許第370693号、同390214号、同233567号、同297443号、同297442号、米国特許第4933377号、同161811号、同410201号、同339049号、同4760013号、同4734444号、同2833827号、独国特許第2904626号、同3604580号、同3604581号の各明細書等に記載)、アルソニウム塩(C.S.Wen et al,Tech.Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p.478,Tokyo,Oct(1988)等に記載)、セレノニウム塩(J.V.Crivello,etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載)等のオニウム塩が挙げられる。
【0087】
中でも、下記一般式(I1−a)で示されるヨードニウム塩化合物、又は一般式(I1−b)で示されるスルホニウム塩化合物が好ましい。
【0088】
【化13】
【0089】
上記一般式において、Ar1、Ar2はそれぞれ、置換基を有していても良い炭素数20以下のアリール基を示す。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ドデシルフェニル基、フェニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、フェノキシフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、カルボキシフェニル基、アニリノフェニル基、アニリノカルボニルフェニル基、モルホリノフェニル基、フェニルアゾフェニル基、メトキシナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ニトロナフチル基、アントラキノニル基等が挙げられる。
【0090】
R1 、R2、R3は、置換基を有していても良い炭素数18以下の炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、ビニル基、1−メチルビニル基、2−フェニルビニル基等のアルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ドデシルフェニル基、フェニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基が挙げられる。これらの炭化水素基は、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アニリノ基、アセトアミド基等の置換基を有していても良い。また、R2 とR3 とが互いに結合し環を形成していても良い。R1〜R3の置換基中、少なくとも一つの置換基がアリール基であることが好ましい。
【0091】
これらの光熱変換熱重合開始剤(TI)は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。添加量としては、ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%の割合で添加することができる。この範囲において、ドープ組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0092】
また、本発明では、上記したラジカル重合性モノマーと共に、従来公知のカチオン重合性有機化合物を光カチオン重合開始剤と共に用いることもできる。カチオン重合性化合物を併用する場合には、本発明のセルロースアシレート組成物は、セルロースアシレートドープ組成物の粘度、反応速度、得られる製膜フィルムの力学的特性などの点から、ラジカル重合性有機化合物とカチオン重合性有機化合物とを、ラジカル重合性有機化合物:カチオン重合性有機化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。カチオン重合開始剤は、カチオン重合性化合物に対して1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。
【0093】
本発明では、耐傷性やフィルムの搬送性を良好に保持するためにセルロースアシレート組成物に微粒子を添加するのが好ましい。
それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されないが、これらのマット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましい。
又、表面処理された無機微粒子もセルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。処理法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載のものが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、なかでも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂のなかでも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましい。
【0094】
これらの添加剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法は限定されず、いずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、いわゆる直前添加方法であり、その混合にはスクリュー式混練がオンラインで設置して用いられる。添加剤の混合は、混合物それ自身を添加してもよいが、予め溶媒やバインダー(好ましくはセルロースアシレート)を用いて溶解しておいたり、場合により分散して安定化した溶媒として用いることも好ましい態様である。
【0095】
これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは0.001〜20μmであり、より好ましくは0.001〜10μmであり、更に好ましくは0.002〜1μmであり、特に好ましくは0.005〜0.5μmである。
セルロースアシレートに対する微粒子の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましい。
【0096】
更に、本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、剥離剤、等)を加えることがでる。
またその添加する時期はドープ調製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、前記した公開技報2001−1745号の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロースアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0097】
次に、本発明のセルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。用いる溶媒としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物(メチレンクロライド等)、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等)が主溶媒として挙げられる。その他の溶媒の例としては、アセトン、炭素原子数4から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の環状炭化水素類が挙げられる。本発明においては、以上のような溶媒の中で、塩化メチレン、アセトン、酢酸メチル及びジオキソランの中から選ばれる溶媒又はこれらの混合物を主溶媒とすることが好ましい。
また、メチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系として、例えば、特開2002−146045号公報の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
これらの具体的な例は、前記の公開技報2001−1745号の12頁〜16頁に記載の内容が挙げられる。
【0098】
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましいが、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレート溶液を調整する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題はない。
【0099】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらの詳細は、前記の公開技報2001−1745号の22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮、ろ過が通常実施され、同様に前記の公開技報2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で溶解される。
【0100】
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instruments社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 n* (Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率 G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paである。より好ましくは、40℃での粘度が1〜200Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が3万〜50万Paである。
【0101】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルロースアシレートフィルム製造に供するドラム方法又はバンド方法と称される、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。バンド法を例として製膜工程を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、前記の公開技報2001−1745号の25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0102】
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。更には−30〜40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度がアップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取ることが可能となり、高速流延が達成できる。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
【0103】
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
【0104】
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0105】
得られたフィルムを支持体(バンド)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の発明協会公開技報に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0106】
本発明の熱重合反応は、ドープを流延してから乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行えばよいが、特にドープ膜が支持体上にあるときに光照射することが好ましい。光照射の光源は、近赤外光であればいずれでもよく、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプ等が挙げられる。波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化照射等を採用して用いることもできる。
【0107】
近赤外線照射による光重合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性化合物の重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する近赤外線の照射強度は、1〜500mW/cm2程度が好ましく、ドープ膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cm2が好ましい。また、近赤外照射工程でのドープ膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、ドープ膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0108】
本発明に従い製造されるフィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、15〜300μmであることが更に好ましく、20〜200μmであることが最も好ましい。又、画像表示装置用の各種光学フィルムの支持体としては、15〜150μmが好ましく、更には20〜80μmが好ましい。本発明のフィルムはこのような薄膜においても、膜の強度、寸度安定性等の機械的な強度が充分に保たれる。
【0109】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0110】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行なうことも好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液としては、KOH、NaOH等のアルカリ剤と共に有機溶媒、界面活性剤を併用することが好ましく、鹸化液の透明支持体に対する濡れ性を良くし、透明支持体表面を均一に鹸化処理できる。具体的には、特開2002−82226号公報、及びWO02/46809号公報に記載の方法が挙げられる。
【0111】
フィルムと乳剤層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、前記の公開技報2001−1745号の32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が前記の公開技報2001−1745号の32頁〜45頁に詳細に記載されている。
【0112】
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途についてまず簡単に述べる。本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号の各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0113】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0114】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO98−48320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。
反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0115】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体としても有用である。本発明のセルロースアシレートフィルムは、印刷製版用、医療用、一般写真用等のいずれのハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても用いることができる。また、その膜厚は30〜250μmであることが好ましい。このようなハロゲン化銀写真感光材料についてはT. H. James et al. The Theory of the Photographic Process 第4版 (Macmillan Publishing Co. Inc. 1977)等に記載されている。
【0116】
以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は前記の公開技報2001−1745号中の45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0117】
【実施例】
以下に本発明のセルロースアシレートについての具体的な実施例を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
実施例1〜2及び比較例1
<セルローストリアセテートフィルムの製造>
{実施例1}
(セルローストリアセテート溶液(D−1)の調製)
攪拌羽根を有するステンレス製溶解タンクに、下記の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm)を徐々に添加してドープを調製した。添加後、室温(25℃)にて1時間、35℃にて放置しセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。
実施例1のドープの調製に用いた各成分の成分比を下記に示す。
【0119】
セルローストリアセテート(置換度2.83、6位のアシル化の置換度0.93、2,3位のアシル化の置換度1.90、粘度平均重合度320、含水率0.4質量%、メチレンクロライド溶液中6質量%の粘度305mPa・s)18質量部
酢酸メチル 55質量部
メチルエチルケトン 10質量部
メタノール 5質量部
エタノール 5質量部
n−ブタノール 5質量部
可塑剤A(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート) 1質量部
微粒子(シリカ(粒径20nm)) 0.1質量部
下記のUV吸収剤(1) 0.15質量部
ラジカル重合性モノマー(A−1):メチルメタクリレート 1.0質量部
下記構造の光熱変換熱重合開始剤(TI−1) 0.08質量部
増感助剤:N−フェニルグリシン 0.005質量部
【0120】
【化14】
【0121】
つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。脱泡したドープは1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径5μmの焼結金属フィルターを通過させ、ついで同じく2.5μmの焼結金属フィルターを通過させた。それぞれの1次圧は、1.5、1.2MPaであり、2次圧はそれぞれ1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープの温度は35℃に調整してステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。
【0122】
(フィルム製膜)
上記の溶解法で得られたドープを40℃にし、流延ギーサーを通して表面温度20℃とした鏡面ステンレス支持体上に流延して製膜した。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部で140℃、下部で100℃とした。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当らない様にし、その後、2kWハロゲンランプを用いて、ドープ表面の全光照射量が500mJ/cm2となる条件で光照射した。しかる後に、多数のロールを有する乾燥ゾーンを搬送することで、厚さ60μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0123】
{実施例2}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)のメチルメタクリレート(モノマー(A−1))の代わりに、下記構造のラジカル重合性モノマー(A−2)を同量用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0124】
【化15】
【0125】
{比較例1}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)の調製における組成分において、ラジカル重合性モノマー(A−1)、および光熱変換熱重合開始剤(TI−1)を除いた他は、実施例1と同様にして乾燥後の膜厚60μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。
【0126】
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であった。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた偏光子の550nmにおける透過率43.9%、偏光度は99.97%であった。
【0127】
<偏光板の作製>
上記の各製膜したセルローストリアセテートフィルムを55℃の1.5N NaOH水溶液に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸及び水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着剤を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光子の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作製した。
【0128】
<結果>
上記の得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能の評価結果を表−Aに記載した。
【0129】
【表1】
【0130】
表−A記載の評価項目の評価方法は以下の通りにして行なった。
膜の離型性
セルローストリアセテートフィルムの製膜実験中において、流延バンドからの製膜フィルムの離型性を目視観察した。
〇:流延バンドから問題なく離型出来る。
×:流延バンド上に付着現象を生じ、離型されない。
【0131】
ヘイズ
セルローストリアセテートフィルムのヘイズは、日本電色工業(株)製、1001DP型を用いて、90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。
A:初期の値。B:経時後の値。
【0132】
引き裂き強度
セルローストリアセテートフィルムの引き裂き強度は、東洋精機製作所製軽過重引き裂き強度試験器を用い、ISO6383/2−1983に従って引き裂きに要する過重を評価した。90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。試料サイズは50mm×64mm、25℃60%RHで2時間調整した後に実施した。
A:初期の値。 B:経時後の値。
【0133】
異物・汚れ
セルローストリアセテートフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
A:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、0〜10個観察された。
B:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、11〜30個観察された。
C:50μm以上の大きさの異物、汚れが1〜10個観察され、50μm以下のものが31〜50個観察された。
D:50μm以上の大きさの異物、汚れが11〜30個観察され、50μm以下のものが51〜99個観察された。
E:50μm以上の大きさの異物、汚れが31個以上観察され、50μm以下のものが100個以上観察された。
【0134】
耐候性
各セルローストリアセテートフィルムをキセノンランプ2万ルックス、1カ月の光劣化試験(強制評価)を実施した。光劣化試験の前と後とのヘイズ値を測定し、その値の増加の有無を下記のグレードで評価した。
◎:変化が0.3%未満。
○:変化が0.3%以上で0.6%未満。
□:変化が0.6%以上で1.0%未満。
×:変化が1.0%以上。
【0135】
偏光度
偏光板の偏光度は、分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め、次式に基づき偏光度Pを決定した。
【0136】
P=√(Yp−Yc)/(Yp+Yc)
【0137】
耐久性
偏光板から150mm×150mmの大きさの試料を2枚切り出し、(50℃/80%RH)の条件下に100時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
◎:白抜け部分が全くなかった。
○:白抜けが全体の面積に対して2%未満。
○〜△:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上5%未満。
△:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満。
×:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
【0138】
本発明の実施例1及び実施例2のセルローストリアセテートフィルムの光学特性(ヘイズ値、異物・汚れ、等)、膜の強度(引き裂き強度)及び耐候性は良好であり、それらを用いて作製した偏光板も、偏光度、耐久性は良好であった。
更に、重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基を含有する化合物を用いた実施例2の試料は、ヘイズ値がより小さく良化し、且つ膜の引き裂き強度が向上していることが見出された。
一方、比較例1のセルローストリアセテートフィルムは、引き裂き強度、異物・汚れ、耐候性が低い値を示した。又、偏光板とした場合にも耐久性が不充分であった。
これらは、フィルム作製工程で重合性モノマーが速やかに且つ充分に重合し難いためによるものと推察される。
以上の様に、本発明のセルローストリアセテートフィルム及びそれを用いた偏光板は、優れた性能を示した。
【0139】
{実施例3〜実施例5}
実施例1におけるセルローストリアセテートフィルム溶液(D−1)において、ラジカル重合性モノマー(A−1)、光熱変換熱重合開始剤(TI−1)の替わりに下表−Bの各化合物を同量ずつ用いた他は、実施例1と同様にして、乾燥後の膜厚60μmの各セルローストリアセテートフィルム、更に各偏光板を作製した。
【0140】
【表2】
【0141】
得られた実施例3〜5の各セルローストリアセテートフィルム及び各偏光板を、実施例1と同様にして性能と評価を行なった。各実施例のものは、実施例2と同等以上の性能を示し、良好であった。
【0142】
{実施例6}
(セルローストリアセテート溶液の調製)
実施例1におけるセルローストリアセテート溶液の組成物の代わりに、下記内容の組成物(D−6)を用いた他は、実施例1と同様にしてセルローストリアセテート溶液を得た。
【0143】
セルローストリアセテート(置換度2.82、6位アセチル基の置換度0.93、粘度平均重合度320、含水率0.2質量%) 20質量部
ジクロロメタン 62質量部
アセトン 5質量部
メタノール 6質量部
ブタノール 5質量部
可塑剤(C):ジペンタエリスリトールヘキサアセテート 0.6質量部
シリカ微粒子(粒径20nm) 0.1質量部
ラジカル重合性モノマー
:シクロオクチルメチルアクリレート 0.6質量部
:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート0.10質量部
下記光安定化モノマー(1) 0.22質量部
下記光安定化モノマー(2) 0.15質量部
下記構造の光熱変換熱重合開始剤(TI−5) 0.18質量部
【0144】
【化16】
【0145】
【化17】
【0146】
次に、上述したセルローストリアセテート溶液をスクリュー押し出し機で送液して、−70℃で10分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製、『フロリナート』を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は、静止型混合器を設置した熱交換器により120℃まで温度を上昇させ、3分間保持した後冷却し50℃としてステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し脱泡を行った。この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、『#63』)で濾過し、さらに、絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、『FH 025』)にて濾過し、セルローストリアセテート溶液を調製した。
【0147】
(フィルム製膜)
実施例1と同様にして、膜厚65μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0148】
(偏光板の作製)
上記のフィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られたフィルム及び偏光板の性能について、実施例1と同様に評価した。その結果を表−Cに記載した。
【0149】
【表3】
【0150】
以上の結果の様に、本発明のセルロースアセテートフィルムは、膜の離型性に全く問題がなく、ヘイズ値も小さくて、異物・汚れも見られなかった。又、引き裂き強度及び耐候性も極めて良好であった。偏光板の性能も良好であった。
【0151】
{実施例7〜10}
実施例6において、セルローストリアセテート溶液(D−6)の光熱変換熱重合開始剤(TI−5)の替わりに、下記の光熱変換熱重合開始剤(TI−6)を用い、更に光安定化モノマー(1)及び(2)の代わりに下記表−Dの各光安定化モノマーを用いた他は、実施例6と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0152】
【化18】
【0153】
【表4】
【0154】
{実施例11〜14}
実施例6において、セルローストリアセテート溶液(D−6)の光熱変換熱重合開始剤(TI−6)の代わりに下記の光熱変換熱重合開始剤(TI−7)を用い、又、重合性モノマー[シクロオクチルメチルメタクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート]の代わりに、下記表−Eの各ラジカル重合性モノマーを用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0155】
【化19】
【0156】
【表5】
【0157】
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例1と同等以上の良好なものであった。
【0158】
{実施例15〜17}
実施例6のセルローストリアセテート溶液(D−6)において、ラジカル重合性モノマーおよび光熱変換熱重合開始剤の代わりに、下記表−F記載の各化合物を用いた他は、実施例6と同様にしてセルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例6と同等の良好な性能であった。
【0159】
【表6】
【0160】
{実施例18}
特開平11−316378号の(実施例1)において、その第1透明支持体を本発明の実施例1の試料1〜6で得られるセルローストリアセテートフィルム(第2フィルム)の厚さを80μmとしたものに変更する以外は、全く同様にして特開平11−316378号の(実施例1)を実施して試料1〜6を作製した。得られた各楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルローストリアセテートフィルムが光学偏光板に適応されても問題のない好ましい態様であることが明らかである。
【0161】
{実施例19}
特開平7−333433の実施例1の富士写真フイルム(株)製セルローストリアセテートを、本発明の実施例7〜17のセルローストリエステルフィルムに変更する以外は、特開平7−333433の実施例1と全く同様にした各光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0162】
{実施例20}
本発明では更に、多種の光学用途に利用され、本発明の代表として実施例1〜17を、例えば特開平10−48420実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0163】
{実施例21}
本発明の実施例1、6、15、16、17において、そのフィルム厚さを100μmとする以外は、実施例1と全く同様にしてそのフィルムである本発明の試料1〜5を作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号の実施例1の(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号の実施例1の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフィルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【0164】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた引き裂き強度、耐折強度、優れた光学特性、及び長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することができる。また、それを用いて得られる光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、及びそれを用いた光学用途に利用される光学フィルムに関する。特に、液晶表示装置等に用いられる偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野拡大フィルム、プラズマディスプレーに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム、ハロゲン化銀写真感光材料に用いられる支持体フィルム、又、有機ELディスプレー等にも使用できる各種機能フィルム等に利用できる光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフィルムは透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来からハロゲン化銀感光材料フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは、引裂強度、耐折強度が低く、特に低湿度の状態下では、非常に脆くなり裂け易い欠点があった。このため、これらを改良するために、セルロースアシレートの溶液流延製膜方法を用い、セルロースアシレート溶液に低分子の可塑剤(例えば、リン酸エステル類、フタル酸エステル類等)、高分子量可塑剤(例えばポリエステルエーテル、ポリエステル−ウレタン、ポリエステル等)を、適宜選択して単独もしくは混合したドープ組成物を用いることが試みられている(例えば、特許文献1〜5参照)。また、ポリメチルアクリレート又はメチルアクリレートのコポリマーをセルローストリアセテートと混合させて、セルロースエステルフィルムの可塑性等を付与する技術も開示されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながらこれらの支持体でも、長期保存下での膜強度安定性が十分ではなく、フィルムが徐々に着色する等の問題があった。
【0004】
一方、近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルムは優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光素子との良好な接着性、優れた平面性、紫外線吸収性、帯電防止性等の性質、及び高い耐久性が求められている。また、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有する光学補償フィルムは、液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれている。
【0005】
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は、従来セルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶液塗布している為、セルロースエステルフィルム中の添加剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させてしまうなどの問題点を有していた。これらの特性を改良のするために、例えばフィルム製造中に紫外線吸収剤、帯電防止剤を添加、或いは紫外線吸収性基を含有した高分子を添加する方法が提案されてきた(例えば、特許文献7および8参照)。
【0006】
また、ドープ中に重合可能なモノマーを添加し、剥離前にイオン化照射を行い製膜速度を向上させる技術(例えば、特許文献9参照)、ドープ中に紫外線吸収性基を含む重合可能モノマーと光重合開始剤を添加し、流延工程で紫外線光照射して重合して製膜する技術(例えば、特許文献10および11参照)が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特公昭47−760号公報
【特許文献2】
特公昭43−16305号公報
【特許文献3】
特公昭44−32672号公報
【特許文献4】
特開平2−292342号公報
【特許文献5】
特開平5−197073号公報
【特許文献6】
米国特許第3277032号明細書
【特許文献7】
特開平6−148430号公報
【特許文献8】
特開2002−31715号公報
【特許文献9】
米国特許第3738924号明細書
【特許文献10】
特開2002−20410号公報
【特許文献11】
特開2002−47357号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イオン化照射による重合反応は、分子の切断などが起こり易く、不必要な又は有害な物質が生じ、後日他に悪影響を及ぼす虞がある。また、光重合反応を行う方法は、重合性モノマーの残存或いは十分な反応を進めるのに時間を必要とする懸念がある。
本発明の目的は、優れた引き裂き強度、耐折強度、優れた光学特性、及び長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することである。
他の本発明の目的は、それを用いて得られる光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム及び液晶表示装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記の構成により解決されることが見出された。
(1)溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムであって、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー(A)、光熱変換熱重合開始剤(TI)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【0010】
一般式(I)
Dn−・(K+)n
【0011】
一般式(I)中、Dは、アニオン性基含有の近赤外線吸収性化合物を表す。K+はオニウムイオンを表す。nは1〜4の整数を表す。
(2)上記の光熱変換熱重合開始剤(TI)が、波長700nm以上の近赤外波長領域に吸収帯があり、且つ分光吸光係数が10000以上の値を有する近赤外吸収性化合物であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3)前記セルロースアシレート組成物が、光安定化基を有する重合性基含有のモノマー(B)の少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4)前記セルロースアシレート組成物が、分子内に2個以上の重合性基を有する多官能モノマー(C)の少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(5)前記ラジカル重合性モノマー(A)が、多環式脂肪族炭化水素基を置換基として有する化合物であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0012】
(6)前記セルロースアシレート組成物が、微粒子を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(7)上記セルロースの水酸基への置換度が、下記式(a)〜(c)の全てを満足するセルロースアシレートであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(a) 2.6≦SA´+SB´≦3.0
(b) 2.0≦SA´≦3.0
(c) 0≦SB´≦0.8
[ここで、SA´はアセチル基の置換度、SB´は炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。]
(8)セルロースアシレートフィルムを溶液流延方法により製造するにおいて、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー(A)、及び光熱変換熱重合開始剤(TI)を少なくとも含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0013】
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム。
(10)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学用偏光フィルム。
(11)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示素材。
(12)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム。
(13)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
(14)上記(1)〜(7)のいずれかに記載され、その膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0014】
本発明は、セルロースアシレート溶液(ドープ)中に、ラジカル重合性モノマー(A)、及び光熱変換熱重合開始剤(TI)を少なくとも共存させて流延方法で流延し、かつ近赤外線照射してラジカル重合性モノマー(A)を速やかに重合反応させて、重合したポリマーがセルロースアシレートと相分離のない光学特性・膜強度に優れたフィルムが作製されるものである。即ち、近赤外線照射すると、光熱変換熱重合開始剤の[D]アニオン部がその光を吸収して熱に変換し、その熱により[K]カチオン部のオニウムイオンが熱分解し、ラジカルを発生し重合性化合物のラジカル重合反応を開始することができる。本発明の光熱変換熱重合開始剤(TI)は、同一分子内に近赤外線吸収能と熱ラジカル発生能を有する化合物であり、重合反応の開始が極めて効率良く、高感度な重合反応が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムとその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本発明のセルロールアシレートフィルムは、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー(A)、及び一般式(I)で示される光熱変換熱重合開始剤(TI)を少なくとも含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む溶液流延方法により製造されるものである。
【0016】
[セルロースアシレート]
本発明に用いられるセルロースアシレートについて、以下に記す。本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンタやパルプを精製して得られる精製リンタおよび精製高級木材パルプが原料セルロースとして用いられる。
【0017】
[セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製及びフィルムの作製]
次に上述の原料セルロースから製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。
本発明のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。
式(a):2.6≦SA´+SB´≦3.0
式(b):2.0≦SA´≦3.0
式(c): 0≦SB´≦0.8
【0018】
ここで、SA´はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB´はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA´+SB´)は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度(SB´)は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であるセルロースアシレートも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0019】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの具体的なアシル基、及びセルロースアシレートの合成方法は、公開技報2001−1745号(発明協会、2001年3月15日発行)の9頁に詳細に記載されている。
【0020】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フィルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.1〜5mmの粒子径を有することが好ましい。
【0021】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。本発明のセルロースアシレートをフィルム製造時に使用する際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。所望の含水率にするには、必要により従来公知の乾燥手段で乾燥すればよい。
本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は公開技報2001−1745号(発明協会、2001年3月15日発行)の7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0022】
次いで、ラジカル重合性モノマー(A)について詳述する。
ラジカル重合性モノマー(A)としては、具体的には、例えば下記一般式(A1−I)で表されるモノマーが挙げられる。
【0023】
【化1】
【0024】
一般式(A1−I)中、V1は−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO2−、−CO−、−CON(Q1)−、−SO2N(Q1)−又はフェニレン基(以下フェニレン基をPhで表すこともある。ただしPhは1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン基を含む)を表す。ここで、Q1は水素原子又は炭素数1〜8の置換されていてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、フロロベンジル基、メチルベンジル基、シクロヘキシルメチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表す。
V1の好ましい態様として、−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−が挙げられる。
【0025】
a1及びa2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−CN基、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又は−CH2COOR10基(R10はアルキル基を表す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等)を表す。
【0026】
Rは、脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。脂肪族基としては、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素基が挙げられ、その具体例としては、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロソナン、シクロソネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカンジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、アダマンタン等の環構造炭化水素等)が挙げられる。
これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状、並びに炭素原子数5〜16の環状の脂肪族基がより好ましい。
【0027】
かかる脂肪族基は置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OH、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO2R11、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO2R11、−N(R13)(R14)、−CO(R13)(R14)、−SO2(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R1 6)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニレン等)、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、クロメニル基、フェノキサチイニル基、インダゾイル基、ピラゾイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、ピリミデイニル基、インドイル基、イソインドイル基、キノニイル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
【0028】
前記のアルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の脂肪族基に導入し得る基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0029】
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R12は、水素原子又はR11基と同様のものを表す。
【0030】
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、又はR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員又は6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、−OH、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、又は−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。但し、かかる極性置換基において、R15及びR16の双方が−OHで表されることはない。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基又は−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
【0031】
上記式(A1−I)におけるRで表されるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。また、かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
上記式(A1−I)におけるRで表される複素環基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。また、かかる複素環基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0033】
更に好ましくは、上記ラジカル重合性モノマー(A)として、下記一般式(A1−II)で表される環状脂肪族基を置換基中に含有するモノマーが挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
一般式(A1−II)中、a1、a2及びV1はそれぞれ前記一般式(A−I)におけるa1、a2及びV1と同義である。
【0036】
R0は、炭素数5〜30個の環状構造を構成する炭化水素基であり、単環式、多環式、架橋環式、スピロ環式等の環状構造が挙げられる。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。好ましくは炭素数6〜25である。
【0037】
以下に脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。なお、下記構造例において、共役しない位置に二重結合を含有してもよい。
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
また、これらの脂環式炭化水素基は少なくとも1種の置換基を有していてもよい。脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の具体的な内容は、前記式(A−I)中のRで例示したと同一の内容のものが挙げられる。
【0041】
L1は、式(A−II)における−V1−と−R0とを連結する基を表し、直接結合又は総原子数1〜22個の連結基(ここでいう総原子数には、炭素原子、窒素原子又はケイ素原子に結合する水素原子を除く)を表す。好ましくは直接結合又は総原子数1〜12の連結基を表す。但し、R0が単環式脂肪族基の場合は、L1は直接結合ではなく、総原子数が1〜12の連結基であることが好ましく、更には総原子数1〜8の連結基であることが好ましい。
【0042】
L1における連結基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合等から構成される原子団の任意の組合せで構成される。例えば、原子団としては下記のものが挙げられる。
【0043】
【化5】
【0044】
ここで、z1、z2は各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)等を示す。z3は、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基等)等を示す。z4、z5は各々、炭素数1〜8の炭化水素基(具体的にはz3の炭化水素基と同一の内容のもの)等を表す。
【0045】
本発明におけるラジカル重合性モノマー(A)の添加量は、セルロースアシレートの添加量に対して、0.1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、1質量%〜30質量%の範囲である。
【0046】
本発明のセルロースアシレート組成物は、光安定化性能を有する基を含有するラジカル重合性モノマー(B)を含有することが好ましい。光安定化性能を有する基を含有する重合性モノマー(B)は、分子中に、前記のラジカル重合性モノマー(A)で記したと同様のラジカル重合性基から選ばれる少なくとも1つの重合性基と、光安定化性能を有する有機残基(以下「光安定化基」と称する)とを含有する化合物であり、従来公知の化合物が挙げられる。
【0047】
ラジカル重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B)と称することもある)は、分子中にラジカル重合性基の1〜4個と光安定化基の1個とを含む化合物が好ましく、ラジカル重合性基を一個含有する化合物がより好ましい。
【0048】
光安定化性能を有する化合物(B)としては、例えば、大沢善次郎「高分子材料の劣化と安定化」235頁((株)シーエムシー、1990年刊)に記載の従来公知のものが挙げられる。これらの化合物の少なくとも一つが置換された有機残基が光安定化基としてあげられる。好ましい光安定化基は、紫外線吸収性化合物を含む有機残基、ヒンダードアミン骨格を含む有機残基である。紫外線吸収性化合物を含む有機残基は、波長370nm以下の紫外線の吸収性に優れ、且つ波長420nm以上の可視光の吸収が小さいものが好ましい。例えばオキシベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、トリアジン骨格を含む基、サリチル酸エステル骨格、シアノアクリレート骨格、又はベンゼン骨格を含む基等が挙げられ、特に紫外線の波長が320〜400nmの波長域に吸収性の良好なベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、s−トリアジン骨格を含む基が好ましい。
ヒンダードアミン骨格を含む有機残基としては、2−位と6−位にそれぞれ1〜2個のアルキル基を有するピペリジン環が挙げられる。特に、少なくとも一個の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン環を含む有機残基が好ましい。
【0049】
本発明において、光安定化基を含有するモノマー(B)は、紫外線含有モノマーとヒンダードアミン含有モノマーとを共存して用いる、或いは紫外線吸収性基とヒンダードアミン骨格を含有する基とを共に含む光安定化モノマーを用いることがより好ましい。このことにより、一層の耐光性が得られる。
【0050】
具体的には、例えばベンゾフェノン系モノマーとして、米国特許4304895号、同3162676号、特開平10−1517号公報、同10−60307号公報、同10−316726号公報、同10−182743号公報、特開2001−139640号公報、同2001−139924号公報等に記載の化合物等、また、ベンゾトリアゾール系モノマーとして、例えば、ANDRES S.、CHONGLI Z.、OTTO V.、J.M.S.−PUREAPPL.、A30(9&10)、pp.741〜755(1993)、米国特許3493539号、同4528311号、特開平2−63463号公報、同8−311045号公報、同9−3133号公報、同9−5929号公報、同9−194536号公報、同10―60307号公報、国際公開94/24112号公報、特開2001−114841号公報、同2001−139924号公報等の記載の化合物、他の紫外線吸収性基含有のモノマーとして、特開平7−258166号公報、同8−188737号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0051】
ヒンダードアミン骨格を含むモノマーとして、例えば、特開平7−70067号、同9−3133号、同10−279832、同10−235992号、同11−138729号、特表平10−116883号、特開2001−114841号の公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0052】
例えば、紫外線吸収性モノマー(BU)として、下式(BU1−I)で表される、紫外線吸収有機残基を含有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0053】
【化6】
【0054】
式(BU1−I)中、V2、b1及びb2は、各々前記一般式(A−I)のV1、a1及びa2と同一の内容を表す。
b1及びb2は、いずれか一方が水素原子であることが好ましく、水素原子以外の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
L2は−V2−と−U1とを連結する基を表し、単結合又は2価の連結基を示す。2価の連結基としては、前記の一般式(A−II)のL1と同一の内容を表す。更に、L2は下記式(L2a)〜(L2d)で表されるピペリジン骨格を表す。L2全体の水素原子を含まない連結にかかわる原子数が1〜20個の範囲、且つ少なくとも一個のピペリジン骨格を含有する連結基であることが好ましい。
【0055】
【化7】
【0056】
式(L2a)〜(L2d)中、r1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、r2及びr3は同じでも異なってもよく、各々水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0057】
上記式(BU1−I)中、U1は1価の紫外線吸収基含有基を示す。
紫外線吸収基含有基は、ベンゾフェノン骨格、サリチル酸骨格、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、又はベンゼン骨格を含む基であることが好ましく、特にベンゾフェノン骨格を含む1価の基又はベンゾトリアゾール骨格を含む1価の基が好ましい。紫外線吸収基含有基U1の例を下記式(U1−I)、(U1−II)に示す。
【0058】
【化8】
【0059】
重合性基は、上記の式(U1−I)及び(U1−II)で示される骨格の各々のベンゼン環、ベンゾトリアゾール環、s−トリアジン環のいずれに存在していてもよい。ベンゾトリアゾール環の2位に1つのベンゼン環が結合している骨格を有する、しかもこのフェニル基の2位に水酸基を有するものが好ましい。また、重合性基を含有する基は2個以上存在していてもよいが1個存在することが好ましい。
【0060】
上記の各骨格の重合性基を含有する基の存在しない位置には置換基が1個以上存在していてもよい。その置換基としては、前記一般式(A−I)のRに記載の置換基と同様のものが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜18のアルキル(又は炭素数1〜6、もしくは1〜2のアルキル)、アリール(例えば、炭素数6〜20の、例えば、フェニル基)、ヘテロアリール(例えば、ピロロ、フリルもしくはチエニル)、アリールオキシ(例えば、炭素数6〜20の)、アルコキシ(例えば、炭素数1〜6又は1〜2のアルコキシ)、シアノ、ニトロ、又はハロゲン(例えば、F又はCl、特にベンゾ環上の5位及び/又は6位上に、及び/又はヒドロキシ置換フェニルの5′位上にClを有するもの)であってよい。ベンゾ環の置換基としてはまた、それに縮合した環、例えば、ベンゾ、ピロロ、フリル又はチエニル環を挙げることができる。アルキル及びアルコキシ置換基のいずれも1〜5個の(又は1〜2個の)介在する酸素、イオウ又は窒素原子を有してよい。
【0061】
ヒンダードアミン骨格を含有するモノマー(以下、モノマー(BH)と称することもある)は、2、6−テトラアルキルピペリジン骨格の1−位、3−位、4−位、5−位のいずれかの置換位置に直接又は連結基を介して重合性基が結合してなる化合物である。例えば、下記一般式(BH−I)で示される。
【0062】
【化9】
【0063】
式(BH−I)中のU2は、下記式(U2−I)又は(U2−II)を表す。
【0064】
【化10】
【0065】
式(U2−I)及び(U2−II)中、r11及びr12は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基を表わすか、又はr11及びr12は一緒になってペンタメチレン基を表す。r13は、水素原子又はシアノ基を表す。
R21は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、―C(=O)R23基(R23は、炭素数1〜18の炭化水素基)、―OCOR23基、又は−OR23基を表す。
R22は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は−OR23基を表す。
尚、上記R21及びR23の炭化水素基は、置換されてもよく、具体的には前記一般式(A−I)中のRの炭化水素基と同一の内容を表す。
Y1は、酸素原子又はイミノ基を表し、Y2は、酸素原子、メチン基又は「―L2―」に直結する基を表す。
【0066】
また、ベンゾフェノン系重合性化合物及びベンゾトリアゾール系重合性化合物以外の式(BU1−I)で表される化合物としては、(2−シアノ−2−エチル−3,3−ジフェニル−ヘキシル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
本発明における、上記ラジカル重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。モノマー(B)の種類は必要に応じて適宜変更されうる。
更には、本発明の光安定化モノマーは、上記の紫外線吸収性基とヒンダードアミン基を分子内に含有するものであってもよい。
これら光安定化モノマー(B)は、前記重合性モノマー(A)に対して1〜95質量%の割合で用いることが好ましく、更に5〜80質量%の割合が好ましい。この範囲において、セルロースアシレートフィルムの膜性(耐脆性、強度等)と耐候性を良好とすることが出来る。
以下にそれらの重合性モノマーを例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0068】
【化11】
【0069】
【化12】
【0070】
本発明のセルロースアシレート溶液には、帯電防止能を有する置換基(帯電防止性基)を有する重合性化合物を更に添加して製膜することが好ましい。
帯電防止性基としては、帯電防止性或いはイオン導電性の作用を有するとして知られる従来公知の有機性化合物から成るものが挙げられる。
例えば、ポリオキソアルキレン基、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基、ホスホン酸塩の基、スルホン酸塩の基等が挙げられる。セルロースアシレートドープ組成物への溶解性、フィルムの帯電防止性能、湿度変化での帯電防止性の安定性等から、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基が好ましい。
【0071】
これらモノマーの具体例として、ポリオキソアルキレン基を含有するモノマーとして、特開平7−238115号公報、同8−311435号公報、同9−78056号公報、同11−194448号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0072】
アルキル4級アンモニウム塩或いは含窒素複素環式4級アンモニウム塩の基を含有するモノマーとしては、特開平6−160327号公報明細書中の段落番号〔0030〕〜〔0053〕記載の化合物、同7−118480号公報明細書中の段落番号〔0032〕〜〔0036〕に記載の繰り返し単位に相当する化合物、同7−179071号公報明細書中の段落番号〔0010〕、特表2001−507380号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0073】
また、ホスホニウム塩の基を含有するモノマーとしては、特開平6−200239号公報明細書中の段落番号〔0012〕〜〔0014〕記載の化合物、同10−219233号公報明細書中の段落番号〔0011〕記載の化合物、同7−179071号公報に記載の化合物等が挙げられる。
上記の重合性化合物は、求められる要求特性に応じて任意に併用することが出来るが、全重合性化合物量に対して5〜90質量%の範囲が好ましい。更には5〜70質量%が好ましい。
【0074】
更に、本発明のセルロースアシレート組成物は、分子内に2個以上の重合性基を含有する多官能モノマー(C)を含有することが好ましい。
多官能モノマー(C)としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜5個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0075】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類との単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0076】
脂肪族多価アルコール化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等と不飽和カルボン酸(クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)とのモノ置換又はポリ置換の重合性化合物が挙げられる。
【0077】
その他のエステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0078】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロヘキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0079】
また、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、日本接着協会誌20巻、7号、300〜308頁(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの多官能性重合性化合物は、全重合性化合物中の0.5〜70質量%の範囲の使用割合が好ましい。特に、1〜40質量%が好ましい。この範囲で、セルロースアセテート溶液(ドープ液)の流延後の光重合硬化においてゲル化を生じることなく、得られたフィルムの膜性(耐脆性、強度等)が良好となる。
【0080】
次に、本発明のセルロースアシレート組成物に用いられる光熱変換熱重合開始剤(TI)について詳述する。
本発明の光熱変換熱重合開始剤(TI)は、近赤外線光照射されて光吸収して吸収した近赤外線を熱に変換する機能を有し、同時にその発生した熱により、ラジカルを発生する。
本発明において用いられる光熱変換熱重合開始剤(TI)としては、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収性で且つ熱でラジカル種を発生する化合物であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、且つ分子吸光係数は20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。本発明の重合反応は、重合開始が近赤外線の照射であり、従来の紫外線照射による重合系に比べ、セルロースアシレート組成物の紫外線吸収による照射光量の減衰が回避される。このため、重合反応が効率よく進行する。
【0081】
本発明の光熱変換熱重合開始剤(TI)は、下記一般式(I)で示される化合物が具体的に挙げられる。
【0082】
一般式(I)
Dn−・(K+)n
【0083】
一般式(I)中、Dn−は、アニオン性基含有の近赤外線吸収性化合物を表す。また、K+はオニウムイオンを表す。nは1〜4の整数を表す。
Dn−は、700nm以上の波長域の少なくとも1部に吸収帯を有する近赤外線吸収性のカチオン系色素で、且つ色素分子内に色素カチオン部と分子内塩を形成する酸性アニオン性基(スルホナート基、カルボキシラート基、ホスホナート基、又はオキシホスホナート基から選ばれる1種)とスルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、オキシホスホ基から選ばれる少なくとも1種の酸性基が解離することで発生するアニオンを含有するアニオン性色素、又は上記解離性酸性基を1個以上含有するペンタメチン鎖のオキソノール色素を表わす。
好ましくは、750〜1400nmの領域に吸収を有し、且つ分子吸光係数が20,000以上の値の色素であり、より好ましくは750〜1000nmの領域に吸収を有し、且つ分子光吸光係数50,000以上のものである。
カチオン色素としては、例えばシアニン系色素、ピリリウム系色素(チオピリリウム系色素、セレナピリリウム系色素、テルナピリリウム系色素を含む)、アズレニウム系色素、イミニウム系色素、スクアリウム系・クロロニウム系色素、トリアリルメタン系色素等が挙げられる。中でもシアニン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、イミニウム系色素が、高い分子吸光係数を有しており好ましい。
【0084】
上記の色素類としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号45〜51頁の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、「機能性色素の化学」(檜垣編集、1981年、(株)シーエムシー発行)、「色素ハンドブック」(大河・平嶋・松岡・北尾編集、講談社発行)、J.FABIAN,Chem.Rev.,92,pp.1197〜1226(1992)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログあるいは特許に記載されている公知のメチン色素が利用できる。
【0085】
例えば、以下に挙げるものを用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
米国特許第5,156,938号明細書記載、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号、同63−115173号、特開2000−347393号の各公報等に記載されているメチン色素、シアニン色素として、英国特許434875号、米国特許第4756993号、米国特許第4973572号等、特開昭57−46245号、同58−125246号、同58−219091号、同59−24692号、同59−84248号、同59−150795号、同60−78787号、特公平5−60868号、特開平2−67183号、同4−13773号、同5−139046号等、特開2001−125260号の各公報等に記載のヘプタメチン以上の色素、カルボニウム系及びイミニウム系の色素として、特開昭55−79451号、同55−163094号、同56−8149号、同58−181690号、同2000−338651号等公報に記載の色素、アズレニウム系色素として、同60−263158号、同61−15151号、同60−192691号、同61−68294号等公報に記載の色素、スクワリリウム或いはクロコニウム色素として、特開2000−171975号公報、同2000−206685号公報、Jurgen Fabian, Hiroyuki Nakazumi, and Masaru Matsuoka,“Near−Infrared Absorbing Dyes”, Chem. Rev. 92,1197−1226(1992)等に記載の色素、ピリリウム系色素として、米国特許第3881924号、米国特許第4283475号、特開昭58−181051号、同58−181689号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、同61−26044号、特公平5−13514号、同5−19702号、同6−54394号、特開平11−95421号の各公報等に開示されているピリリウム化合物等が挙げられる。
【0086】
一般式(I)中のK+は、オニウムイオンを表す。
オニウムイオンとしては、ジアゾニウムイオン、アンモニウムイオン、イミニウムイオン、ホスホニウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、アルソニウムイオン、セナニウムイオン、シリコニウムイオンが挙げられる。
好ましい例としては、“Onium ions”(A. Olha, Kennneth K. Laali, Qi Wang,G. K. Surya Prakashら著、出版:A Wiley−Interscience Pubilcation )に記載のものがあげられる。
具体例として、例えばジアゾニウム塩(S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Baletal,Polymer,21,423(1980)等に記載)、アンモニウム塩(米国特許第4069055号明細書、特開平4−365049号公報、同5−278330号公報等に記載)、ホスホニウム塩(米国特許第4069055号、同4069056号の各明細書等に記載)、ヨードニウム塩(欧州特許第104143号、米国特許第339049号、同第410201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報等に記載)、スルホニウム塩(欧州特許第370693号、同390214号、同233567号、同297443号、同297442号、米国特許第4933377号、同161811号、同410201号、同339049号、同4760013号、同4734444号、同2833827号、独国特許第2904626号、同3604580号、同3604581号の各明細書等に記載)、アルソニウム塩(C.S.Wen et al,Tech.Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p.478,Tokyo,Oct(1988)等に記載)、セレノニウム塩(J.V.Crivello,etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載)等のオニウム塩が挙げられる。
【0087】
中でも、下記一般式(I1−a)で示されるヨードニウム塩化合物、又は一般式(I1−b)で示されるスルホニウム塩化合物が好ましい。
【0088】
【化13】
【0089】
上記一般式において、Ar1、Ar2はそれぞれ、置換基を有していても良い炭素数20以下のアリール基を示す。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ドデシルフェニル基、フェニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、フェノキシフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、カルボキシフェニル基、アニリノフェニル基、アニリノカルボニルフェニル基、モルホリノフェニル基、フェニルアゾフェニル基、メトキシナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ニトロナフチル基、アントラキノニル基等が挙げられる。
【0090】
R1 、R2、R3は、置換基を有していても良い炭素数18以下の炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、ビニル基、1−メチルビニル基、2−フェニルビニル基等のアルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ドデシルフェニル基、フェニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基が挙げられる。これらの炭化水素基は、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アニリノ基、アセトアミド基等の置換基を有していても良い。また、R2 とR3 とが互いに結合し環を形成していても良い。R1〜R3の置換基中、少なくとも一つの置換基がアリール基であることが好ましい。
【0091】
これらの光熱変換熱重合開始剤(TI)は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。添加量としては、ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%の割合で添加することができる。この範囲において、ドープ組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0092】
また、本発明では、上記したラジカル重合性モノマーと共に、従来公知のカチオン重合性有機化合物を光カチオン重合開始剤と共に用いることもできる。カチオン重合性化合物を併用する場合には、本発明のセルロースアシレート組成物は、セルロースアシレートドープ組成物の粘度、反応速度、得られる製膜フィルムの力学的特性などの点から、ラジカル重合性有機化合物とカチオン重合性有機化合物とを、ラジカル重合性有機化合物:カチオン重合性有機化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。カチオン重合開始剤は、カチオン重合性化合物に対して1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。
【0093】
本発明では、耐傷性やフィルムの搬送性を良好に保持するためにセルロースアシレート組成物に微粒子を添加するのが好ましい。
それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されないが、これらのマット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましい。
又、表面処理された無機微粒子もセルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。処理法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載のものが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、なかでも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂のなかでも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましい。
【0094】
これらの添加剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法は限定されず、いずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、いわゆる直前添加方法であり、その混合にはスクリュー式混練がオンラインで設置して用いられる。添加剤の混合は、混合物それ自身を添加してもよいが、予め溶媒やバインダー(好ましくはセルロースアシレート)を用いて溶解しておいたり、場合により分散して安定化した溶媒として用いることも好ましい態様である。
【0095】
これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは0.001〜20μmであり、より好ましくは0.001〜10μmであり、更に好ましくは0.002〜1μmであり、特に好ましくは0.005〜0.5μmである。
セルロースアシレートに対する微粒子の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましい。
【0096】
更に、本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、剥離剤、等)を加えることがでる。
またその添加する時期はドープ調製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、前記した公開技報2001−1745号の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロースアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0097】
次に、本発明のセルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。用いる溶媒としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物(メチレンクロライド等)、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等)が主溶媒として挙げられる。その他の溶媒の例としては、アセトン、炭素原子数4から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の環状炭化水素類が挙げられる。本発明においては、以上のような溶媒の中で、塩化メチレン、アセトン、酢酸メチル及びジオキソランの中から選ばれる溶媒又はこれらの混合物を主溶媒とすることが好ましい。
また、メチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系として、例えば、特開2002−146045号公報の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
これらの具体的な例は、前記の公開技報2001−1745号の12頁〜16頁に記載の内容が挙げられる。
【0098】
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましいが、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレート溶液を調整する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題はない。
【0099】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらの詳細は、前記の公開技報2001−1745号の22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮、ろ過が通常実施され、同様に前記の公開技報2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で溶解される。
【0100】
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instruments社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 n* (Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率 G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paである。より好ましくは、40℃での粘度が1〜200Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が3万〜50万Paである。
【0101】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルロースアシレートフィルム製造に供するドラム方法又はバンド方法と称される、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。バンド法を例として製膜工程を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、前記の公開技報2001−1745号の25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0102】
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。更には−30〜40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度がアップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取ることが可能となり、高速流延が達成できる。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
【0103】
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
【0104】
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0105】
得られたフィルムを支持体(バンド)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の発明協会公開技報に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0106】
本発明の熱重合反応は、ドープを流延してから乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行えばよいが、特にドープ膜が支持体上にあるときに光照射することが好ましい。光照射の光源は、近赤外光であればいずれでもよく、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプ等が挙げられる。波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化照射等を採用して用いることもできる。
【0107】
近赤外線照射による光重合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性化合物の重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する近赤外線の照射強度は、1〜500mW/cm2程度が好ましく、ドープ膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cm2が好ましい。また、近赤外照射工程でのドープ膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、ドープ膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0108】
本発明に従い製造されるフィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、15〜300μmであることが更に好ましく、20〜200μmであることが最も好ましい。又、画像表示装置用の各種光学フィルムの支持体としては、15〜150μmが好ましく、更には20〜80μmが好ましい。本発明のフィルムはこのような薄膜においても、膜の強度、寸度安定性等の機械的な強度が充分に保たれる。
【0109】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0110】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行なうことも好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液としては、KOH、NaOH等のアルカリ剤と共に有機溶媒、界面活性剤を併用することが好ましく、鹸化液の透明支持体に対する濡れ性を良くし、透明支持体表面を均一に鹸化処理できる。具体的には、特開2002−82226号公報、及びWO02/46809号公報に記載の方法が挙げられる。
【0111】
フィルムと乳剤層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、前記の公開技報2001−1745号の32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が前記の公開技報2001−1745号の32頁〜45頁に詳細に記載されている。
【0112】
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途についてまず簡単に述べる。本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号の各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0113】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0114】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO98−48320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。
反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0115】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体としても有用である。本発明のセルロースアシレートフィルムは、印刷製版用、医療用、一般写真用等のいずれのハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても用いることができる。また、その膜厚は30〜250μmであることが好ましい。このようなハロゲン化銀写真感光材料についてはT. H. James et al. The Theory of the Photographic Process 第4版 (Macmillan Publishing Co. Inc. 1977)等に記載されている。
【0116】
以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は前記の公開技報2001−1745号中の45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0117】
【実施例】
以下に本発明のセルロースアシレートについての具体的な実施例を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
実施例1〜2及び比較例1
<セルローストリアセテートフィルムの製造>
{実施例1}
(セルローストリアセテート溶液(D−1)の調製)
攪拌羽根を有するステンレス製溶解タンクに、下記の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm)を徐々に添加してドープを調製した。添加後、室温(25℃)にて1時間、35℃にて放置しセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。
実施例1のドープの調製に用いた各成分の成分比を下記に示す。
【0119】
セルローストリアセテート(置換度2.83、6位のアシル化の置換度0.93、2,3位のアシル化の置換度1.90、粘度平均重合度320、含水率0.4質量%、メチレンクロライド溶液中6質量%の粘度305mPa・s)18質量部
酢酸メチル 55質量部
メチルエチルケトン 10質量部
メタノール 5質量部
エタノール 5質量部
n−ブタノール 5質量部
可塑剤A(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート) 1質量部
微粒子(シリカ(粒径20nm)) 0.1質量部
下記のUV吸収剤(1) 0.15質量部
ラジカル重合性モノマー(A−1):メチルメタクリレート 1.0質量部
下記構造の光熱変換熱重合開始剤(TI−1) 0.08質量部
増感助剤:N−フェニルグリシン 0.005質量部
【0120】
【化14】
【0121】
つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。脱泡したドープは1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径5μmの焼結金属フィルターを通過させ、ついで同じく2.5μmの焼結金属フィルターを通過させた。それぞれの1次圧は、1.5、1.2MPaであり、2次圧はそれぞれ1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープの温度は35℃に調整してステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。
【0122】
(フィルム製膜)
上記の溶解法で得られたドープを40℃にし、流延ギーサーを通して表面温度20℃とした鏡面ステンレス支持体上に流延して製膜した。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部で140℃、下部で100℃とした。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当らない様にし、その後、2kWハロゲンランプを用いて、ドープ表面の全光照射量が500mJ/cm2となる条件で光照射した。しかる後に、多数のロールを有する乾燥ゾーンを搬送することで、厚さ60μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0123】
{実施例2}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)のメチルメタクリレート(モノマー(A−1))の代わりに、下記構造のラジカル重合性モノマー(A−2)を同量用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0124】
【化15】
【0125】
{比較例1}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)の調製における組成分において、ラジカル重合性モノマー(A−1)、および光熱変換熱重合開始剤(TI−1)を除いた他は、実施例1と同様にして乾燥後の膜厚60μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。
【0126】
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であった。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた偏光子の550nmにおける透過率43.9%、偏光度は99.97%であった。
【0127】
<偏光板の作製>
上記の各製膜したセルローストリアセテートフィルムを55℃の1.5N NaOH水溶液に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸及び水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着剤を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光子の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作製した。
【0128】
<結果>
上記の得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能の評価結果を表−Aに記載した。
【0129】
【表1】
【0130】
表−A記載の評価項目の評価方法は以下の通りにして行なった。
膜の離型性
セルローストリアセテートフィルムの製膜実験中において、流延バンドからの製膜フィルムの離型性を目視観察した。
〇:流延バンドから問題なく離型出来る。
×:流延バンド上に付着現象を生じ、離型されない。
【0131】
ヘイズ
セルローストリアセテートフィルムのヘイズは、日本電色工業(株)製、1001DP型を用いて、90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。
A:初期の値。B:経時後の値。
【0132】
引き裂き強度
セルローストリアセテートフィルムの引き裂き強度は、東洋精機製作所製軽過重引き裂き強度試験器を用い、ISO6383/2−1983に従って引き裂きに要する過重を評価した。90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。試料サイズは50mm×64mm、25℃60%RHで2時間調整した後に実施した。
A:初期の値。 B:経時後の値。
【0133】
異物・汚れ
セルローストリアセテートフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
A:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、0〜10個観察された。
B:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、11〜30個観察された。
C:50μm以上の大きさの異物、汚れが1〜10個観察され、50μm以下のものが31〜50個観察された。
D:50μm以上の大きさの異物、汚れが11〜30個観察され、50μm以下のものが51〜99個観察された。
E:50μm以上の大きさの異物、汚れが31個以上観察され、50μm以下のものが100個以上観察された。
【0134】
耐候性
各セルローストリアセテートフィルムをキセノンランプ2万ルックス、1カ月の光劣化試験(強制評価)を実施した。光劣化試験の前と後とのヘイズ値を測定し、その値の増加の有無を下記のグレードで評価した。
◎:変化が0.3%未満。
○:変化が0.3%以上で0.6%未満。
□:変化が0.6%以上で1.0%未満。
×:変化が1.0%以上。
【0135】
偏光度
偏光板の偏光度は、分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め、次式に基づき偏光度Pを決定した。
【0136】
P=√(Yp−Yc)/(Yp+Yc)
【0137】
耐久性
偏光板から150mm×150mmの大きさの試料を2枚切り出し、(50℃/80%RH)の条件下に100時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
◎:白抜け部分が全くなかった。
○:白抜けが全体の面積に対して2%未満。
○〜△:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上5%未満。
△:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満。
×:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
【0138】
本発明の実施例1及び実施例2のセルローストリアセテートフィルムの光学特性(ヘイズ値、異物・汚れ、等)、膜の強度(引き裂き強度)及び耐候性は良好であり、それらを用いて作製した偏光板も、偏光度、耐久性は良好であった。
更に、重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基を含有する化合物を用いた実施例2の試料は、ヘイズ値がより小さく良化し、且つ膜の引き裂き強度が向上していることが見出された。
一方、比較例1のセルローストリアセテートフィルムは、引き裂き強度、異物・汚れ、耐候性が低い値を示した。又、偏光板とした場合にも耐久性が不充分であった。
これらは、フィルム作製工程で重合性モノマーが速やかに且つ充分に重合し難いためによるものと推察される。
以上の様に、本発明のセルローストリアセテートフィルム及びそれを用いた偏光板は、優れた性能を示した。
【0139】
{実施例3〜実施例5}
実施例1におけるセルローストリアセテートフィルム溶液(D−1)において、ラジカル重合性モノマー(A−1)、光熱変換熱重合開始剤(TI−1)の替わりに下表−Bの各化合物を同量ずつ用いた他は、実施例1と同様にして、乾燥後の膜厚60μmの各セルローストリアセテートフィルム、更に各偏光板を作製した。
【0140】
【表2】
【0141】
得られた実施例3〜5の各セルローストリアセテートフィルム及び各偏光板を、実施例1と同様にして性能と評価を行なった。各実施例のものは、実施例2と同等以上の性能を示し、良好であった。
【0142】
{実施例6}
(セルローストリアセテート溶液の調製)
実施例1におけるセルローストリアセテート溶液の組成物の代わりに、下記内容の組成物(D−6)を用いた他は、実施例1と同様にしてセルローストリアセテート溶液を得た。
【0143】
セルローストリアセテート(置換度2.82、6位アセチル基の置換度0.93、粘度平均重合度320、含水率0.2質量%) 20質量部
ジクロロメタン 62質量部
アセトン 5質量部
メタノール 6質量部
ブタノール 5質量部
可塑剤(C):ジペンタエリスリトールヘキサアセテート 0.6質量部
シリカ微粒子(粒径20nm) 0.1質量部
ラジカル重合性モノマー
:シクロオクチルメチルアクリレート 0.6質量部
:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート0.10質量部
下記光安定化モノマー(1) 0.22質量部
下記光安定化モノマー(2) 0.15質量部
下記構造の光熱変換熱重合開始剤(TI−5) 0.18質量部
【0144】
【化16】
【0145】
【化17】
【0146】
次に、上述したセルローストリアセテート溶液をスクリュー押し出し機で送液して、−70℃で10分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製、『フロリナート』を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は、静止型混合器を設置した熱交換器により120℃まで温度を上昇させ、3分間保持した後冷却し50℃としてステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し脱泡を行った。この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、『#63』)で濾過し、さらに、絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、『FH 025』)にて濾過し、セルローストリアセテート溶液を調製した。
【0147】
(フィルム製膜)
実施例1と同様にして、膜厚65μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0148】
(偏光板の作製)
上記のフィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られたフィルム及び偏光板の性能について、実施例1と同様に評価した。その結果を表−Cに記載した。
【0149】
【表3】
【0150】
以上の結果の様に、本発明のセルロースアセテートフィルムは、膜の離型性に全く問題がなく、ヘイズ値も小さくて、異物・汚れも見られなかった。又、引き裂き強度及び耐候性も極めて良好であった。偏光板の性能も良好であった。
【0151】
{実施例7〜10}
実施例6において、セルローストリアセテート溶液(D−6)の光熱変換熱重合開始剤(TI−5)の替わりに、下記の光熱変換熱重合開始剤(TI−6)を用い、更に光安定化モノマー(1)及び(2)の代わりに下記表−Dの各光安定化モノマーを用いた他は、実施例6と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0152】
【化18】
【0153】
【表4】
【0154】
{実施例11〜14}
実施例6において、セルローストリアセテート溶液(D−6)の光熱変換熱重合開始剤(TI−6)の代わりに下記の光熱変換熱重合開始剤(TI−7)を用い、又、重合性モノマー[シクロオクチルメチルメタクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート]の代わりに、下記表−Eの各ラジカル重合性モノマーを用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0155】
【化19】
【0156】
【表5】
【0157】
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例1と同等以上の良好なものであった。
【0158】
{実施例15〜17}
実施例6のセルローストリアセテート溶液(D−6)において、ラジカル重合性モノマーおよび光熱変換熱重合開始剤の代わりに、下記表−F記載の各化合物を用いた他は、実施例6と同様にしてセルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例6と同等の良好な性能であった。
【0159】
【表6】
【0160】
{実施例18}
特開平11−316378号の(実施例1)において、その第1透明支持体を本発明の実施例1の試料1〜6で得られるセルローストリアセテートフィルム(第2フィルム)の厚さを80μmとしたものに変更する以外は、全く同様にして特開平11−316378号の(実施例1)を実施して試料1〜6を作製した。得られた各楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルローストリアセテートフィルムが光学偏光板に適応されても問題のない好ましい態様であることが明らかである。
【0161】
{実施例19}
特開平7−333433の実施例1の富士写真フイルム(株)製セルローストリアセテートを、本発明の実施例7〜17のセルローストリエステルフィルムに変更する以外は、特開平7−333433の実施例1と全く同様にした各光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0162】
{実施例20}
本発明では更に、多種の光学用途に利用され、本発明の代表として実施例1〜17を、例えば特開平10−48420実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0163】
{実施例21}
本発明の実施例1、6、15、16、17において、そのフィルム厚さを100μmとする以外は、実施例1と全く同様にしてそのフィルムである本発明の試料1〜5を作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号の実施例1の(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号の実施例1の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフィルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【0164】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた引き裂き強度、耐折強度、優れた光学特性、及び長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することができる。また、それを用いて得られる光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム及び液晶表示装置を提供することができる。
Claims (5)
- 溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムであって、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー(A)、下記一般式(I)で示される光熱変換熱重合開始剤(TI)を少なくとも含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
一般式(I)
Dn−・(K+)n
一般式(I)中、Dn−は、アニオン性基含有の近赤外線吸収性色素部イオンを表す。K+はオニウムイオンを表す。nは1〜4の整数を表す。 - セルロースアシレートフィルムの溶液流延方法により製造するにおいて、セルロースアシレート、ラジカル重合性モノマー(A)、及び上記一般式(I)で示される光熱変換熱重合開始剤(TI)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム。
- 請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
- 請求項1に記載され、その膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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