JP2006306025A - 溶液製膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】剥ぎ取りが安定する流延膜を形成し、光学特性に優れるフィルムを得る。
【解決手段】TACを、酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解して原料ドープ22を得る。回転ドラム111を支持体として用いる。回転ドラム111は耐低温性に優れる素材から形成する。回転ドラム111の表面温度が−20℃となるように温度調整する。原料ドープ22に所望の添加剤を添加して流延用ドープとする。流延ダイ101から回転ドラム111上に流延ドープを流延して流延膜117を形成する。流延膜は−10℃となるため剥取ローラ116で湿潤フィルム118として剥ぎ取る際に、剥取安定性に優れる。回転ドラム111表面には剥ぎ残りが生じない。湿潤フィルム118を乾燥して得られるフィルム143は光学特性に優れる。
【選択図】図2

Description

本発明は、溶液製膜方法に関するものである。
セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(TAC)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用支持体として利用されている。また、TACフィルムは光学等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、光学補償フィルム(例えば、視野角拡大フィルムなど)などに用いられている。
TACフィルムは、通常溶液製膜方法により製造されている。溶液製膜方法は、溶融製膜方法などの他の製造方法と比較して、光学的性質などの物性に優れたフィルムを製造することができる。溶液製膜方法は、ポリマーなどをジクロロメタンや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解した高分子溶液(以下、ドープと称する)を調製する。そのドープを流延ダイより支持体上に流延して流延膜を形成する。その流延膜が支持体上で自己支持性を有するものとなった後に、支持体から膜(以下、湿潤フィルムと称する)として剥ぎ取り、乾燥させた後にフィルムとして巻き取る(例えば、非特許文献1参照)。
発明協会公開技報公技番号2001−1745号
ところで、近年、支持体を冷却して、その上にドープを流延してゲル化された流延膜からフィルムを製造する溶液製膜方法が行われている。ドープをゲル化するには、支持体の温度をより低温にすることが有効である。従来、支持体として用いられている回転ドラムの素材には、主にステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS316など)が使用されている。ステンレス鋼は、平面性の点で支持体の素材として利用することが好ましく、また、5℃程度までの冷却では流延に問題が生じていない。
また、流延膜を回転ドラムから剥離する際に、剥離を安定化するために従来は、(1)ドープ中のポリマー濃度を上げる。(2)支持体上での乾燥風量を上げる。などの方法が取られてきた。しかしながら、(1)の方法では、フィルムの外観面状が悪化し、製品の品質レベルを維持することが困難であるという欠点を有している。また、(2)の方法は乾燥風量を上げることで外観面状が悪化するまた流延ビードの安定化が保てないという欠点を有している。
そこで、回転ドラムからの流延膜の剥離を安定化させる方法として、超冷却(例えば、−10℃以下)とすることで流延膜のゲル化が進行するために有効な方法である。しかしながら、ステンレス鋼は、耐低温性の面で劣るため、支持体が−20℃以下に冷却できない問題が生じている。このため、更なる速度上昇を実施した際に回転ドラムからの流延膜を安定して剥離できない欠点を有している。
流延膜が形成されている支持体を超冷却することで、製膜速度を上昇させても前記流延膜の前記支持体からの剥離を安定にする溶液製膜方法を提供することを目的とする。
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ダイから支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有する膜となった後に、前記支持体から前記流延膜を剥離してフィルムとし、前記フィルムを乾燥させる溶液製膜方法において、低温耐性を有するステンレス鋼から形成されている前記支持体上で前記流延膜を冷却する。
前記支持体の表面温度が5℃以下となるように冷却することが好ましく、より好ましくは−10℃以下であり、最も好ましくは−25℃以下である。前記支持体から前記流延膜を剥離するときの前記流延膜の温度が、10℃以下であることが好ましく、より好ましくは−5℃以下であり、最も好ましくは−15℃以下である。前記流延膜に30℃以上140℃以下の風を送風し、前記流延膜を乾燥させることが好ましく、前記風の温度は30℃以上100℃以下であることがより好ましく、最も好ましくは30℃以上50℃以下である。前記流延膜に風速が2m/分以上25m/分以下の風を送風し、前記流延膜を乾燥させることが好ましく、前記風の風速は10m/分以上25m/分以下であることがより好ましい。前記流延膜が前記支持体上に搬送されている時間が、3秒以上180秒以下であることが好ましい。
前記支持体が回転ドラムであることが好ましいが、流延バンドを用いることもできる。前記回転ドラムは、その内部に冷却媒体が通過する流路が形成されているものであって、前記流路に冷却媒体を通過させることで前記回転ドラムを冷却することが好ましい。前記冷却媒体がグリセリンと水の混合物であることが好ましい。
前記溶媒がジクロロメタンまたは酢酸メチルを主溶媒とすることが好ましい。前記ポリマーがセルロースアシレートであることが好ましく、より好ましくはセルロースアセテートであり最も好ましくはセルローストリアセテートである。
本発明には、前記溶液製膜方法で製造されるフィルムも含まれる。また、前記フィルムを用いて構成される偏光板、光学補償フィルム、写真感光材料も本発明に含まれる。さらに、前記偏光板、光学補償フィルムを用いて構成される液晶表示装置も本発明に含まれる。
前記溶媒がジクロロメタンを主溶媒とする場合には、前記ドープ中の溶質の濃度は、重量比率で18重量%以上35重量%以下であることが好ましい。また、前記ジクロロメタン以外の有機溶媒としてメタノール、n−ブタノールなどが用いられ、全溶媒中重量比で13重量%以上25重量%以下混合されることが好ましい。
前記溶媒が酢酸メチルを主溶媒とする場合には、前記ドープ中の溶質の濃度は、重量比率で18重量%以上35重量%以下であることが好ましい。また、前記酢酸メチル以外の有機溶媒としてアセトン、メタノール、n−ブタノールなどが用いられ、全溶媒中重量比で15重量%以上30重量%以下混合されることが好ましい。
本発明の溶液製膜方法によれば、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ダイから支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有する膜となった後に、前記支持体から前記流延膜を剥離してフィルムとし、前記フィルムを乾燥させる溶液製膜方法において、低温耐性を有するステンレス鋼から形成されている前記支持体上で前記流延膜を冷却するから、前記支持体の表面温度をより低温にできるため前記流延膜を剥ぎ取る際の前記流延膜の剥取温度を低温にできるため、前記流延膜の剥離安定性が向上する。特に、流延速度を50m/分以上200m/分以下の高速製膜の際にも前記流延膜を安定して前記支持体から剥ぎ取ることが可能となる。
前記溶液製膜を行う際に、前記支持体の表面温度が5℃以下、より好ましくは−10℃以下、最も好ましくは−25℃以下となるように冷却するから、前記流延膜のゲル化が進行して、前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取る際の剥取安定性が極めて向上する。
前記溶液製膜方法を行う際に、前記支持体から前記流延膜を剥離するときの前記流延膜の温度が、10℃以下、より好ましくは−10℃以下、最も好ましくは−15℃以下であるから、前記流延膜のゲル化による自己支持性が向上して剥取安定性が向上する。
前記溶液製膜方法を行う際に、前記流延膜に30℃以上140℃以下、より好ましくは30℃以上100℃以下、最も好ましくは30℃以上50℃以下の風を送風し、前記流延膜を乾燥させるから、前記流延膜は乾燥に伴って自己支持性が向上して剥取安定性が向上する。
前記溶液製膜方法を行う際に、前記支持体に回転ドラムを用い、前記回転ドラムは、その内部に冷却媒体が通過する流路が形成されているものであって、前記流路に冷却媒体を通過させることで前記回転ドラムを冷却するから、前記回転ドラムの表面温度が略均一となり、前記流延膜の冷却も幅方向及び流延方向に渡り略均一に行えるため、前記流延膜の剥取安定性が向上する。
前記溶液製膜方法を行う際に、前記ポリマーがセルロースアシレート、より好ましくはセルロースアセテート、最も好ましくはセルローストリアセテートであるから、得られるフィルムは光学等方性に優れるフィルムであり、前記フィルムは偏光板や光学補償フィルムに好ましく用いることができる。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施形態に限定されるものではない。
[原料]
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートを用いることが好ましい。以下、下記式を満たすセルロースアシレートをTACと称する。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
但し、式中A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わしている。Aはセルロースの水酸基の水素原子に対するアセチル基の置換度、またBはセルロースの水酸基の水素原子に対する炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1mm〜4mmの粒子を用いることが好ましい。また、本発明に用いられるポリマーはTACに限定されるものではない。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液や分散液を意味している。
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2質量%〜25質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを用いない溶媒組成も提案されている。この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。通常、これらを適宜混合して用いる。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有していても良い。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶媒及び可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、レターデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
[ドープ製造方法]
前記原料を用いてドープを製造する。図1はドープ製造設備10の概略図である。ドープ製造設備10には、溶媒を貯留するための溶媒タンク11と、所定の添加剤を貯留するための添加剤タンク12と、TACを供給するためのホッパ13と、溶媒とTACと所定の添加剤とを混合するための溶解タンク14とが備えられている。さらに、各種原料を混合して得られる膨潤液15に含まれる固形物等を溶解させる溶解装置21と、膨潤液15の温度を調整してドープ22が得られる温調装置23と、第1濾過装置24と、第2濾過装置25と、ドープ22の濃度を調整するためのフラッシュ装置26とが備えられている。その他にも、ドープ製造設備10には、溶媒を回収するための回収装置30と、回収された溶媒を再生するための再生装置31とが備えられている。また、ドープ製造設備10には、ドープ22を貯留するためのストックタンク32も備えられ、このストックタンク32は、濾過装置33を介してフィルム製造設備60と接続している。
図1に示すように、溶解タンク14には、その外面を包み込み、伝熱媒体を流すためのジャケット40とモータ41により回転する第1攪拌機42とが備えられている。さらに溶解タンク14には、モータ43により回転する第2攪拌機44が備えられていることがより好ましい。なお、第2攪拌機44は、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。また、このドープ製造設備10には、送液用の第1ポンプ50及び第2ポンプ51とバルブ52〜54とが備えられている。ただし、第1ポンプ50、第2ポンプ51及びバルブ52〜54を設ける位置や設置数などは、適宜変更することが可能である。
ドープ製造設備10を用いてドープを製造する方法について説明する。始めに、バルブ52を開いて溶媒タンク11から適量の溶媒が溶解タンク14に送られる。ホッパ13からは、計量されながらTACが溶解タンク14に送り込まれる。添加剤は、溶媒に溶解した溶液状態または分散された分散状態で、バルブ53の開閉操作により必要量が添加剤タンク12から溶解タンク14に送り込まれる。なお、添加剤を溶解または分散させている溶媒は、通常は溶媒タンク11内の溶媒と同一のものとされるが、添加剤の種類などに応じて適宜代えることができる。
なお、添加剤が固体の場合には、添加剤タンク12に代えてホッパなどを用い、溶解タンク14に送り込むことも可能である。複数種類の添加剤を添加する場合には、それら複数の添加剤を溶解させた溶液を予め作っておき、それを添加剤タンク12から溶解タンク14へ送液したり、あるいは、各添加剤の溶液を複数のタンクにそれぞれ入れて、それぞれ独立した送液管により溶解タンク14に送り込んだりするなどの方法もある。また、添加剤が常温で液体の場合には、溶媒を使用せずに液体の状態で溶解タンク14に送り込むことも可能である。
本実施形態においては、溶解タンク14に入れる各原料の順番を、溶媒、TAC、添加剤の順としたが、この順番に限定されるものではない。例えば、TAC、溶媒、添加剤の順などでも良い。なお、所定の添加剤は、ここでのタイミングでTAC及び溶媒と混合されずとも良く、添加剤の種類及び性質とを考慮して、後の工程で混合しても良い。
溶解タンク14の内部温度は、ジャケット40内を流れる伝熱媒体により制御されており、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃である。第1攪拌機42、第2攪拌機44のタイプを適宜選択して使用することにより、TACが溶媒中で膨潤した膨潤液15として得られる。なお、溶媒組成などによりTACの溶媒に対する溶解性や親和性などが変わるので、必ずしも膨潤液となる訳でなく混合液のままである場合もある。本発明においては、膨潤液及び混合液に厳密な区分がある訳でなく、以下の説明において混合液の場合を併せて膨潤液と称する。
次に、膨潤液15は、第1ポンプ50により溶解装置21に送られる。溶解装置21は、ジャケット付き配管を備える加熱装置を用いることができ、膨潤液15を加熱することにより、膨潤液15における固形分(主にTACである)の溶媒への溶解を進行させることができる。なお、溶解装置21での溶解温度は、0℃〜97℃であることが好ましい。したがって、ここでの加熱とは、室温以上の温度に加熱するという意味でなく、溶解タンク14から送られてくる膨潤液15の温度を上昇させるという意味である。例えば、膨潤液15の温度が−7℃であるときに、これを0℃にする場合なども含められる。さらに、溶解装置21には、膨潤液15を加圧する加圧装置(図示しない)が備えられていることがより好ましい。膨潤液15を加熱する際に、加圧装置により加圧することで溶解を効率的に進行させることができる。
なお、加熱溶解法に代えて、膨潤液15を冷却する冷却溶解法を適用することも可能である。この場合には溶解装置21に冷却溶解装置を用いる。冷却温度は特に限定されるものではないが、−100℃〜−10℃の範囲とすることが好ましい。これら加熱溶解法、冷却溶解法を各原料の物性などに応じて適宜選択して実施することにより、溶解性の向上を図ることができる。また、溶解装置21の下流側にスタティックミキサ27を設けて、膨潤液15を混合することで、均一なドープを得ることがより容易となる。
前記処理がなされている膨潤液15を温調装置23により略室温とすることによりドープ22が得られる。なお、ここでは、温調装置23を通過した後の液をドープと称しているが、TACは膨潤液15が加熱装置21を通過したときに溶解が進行してドープとなっている場合がある。その後、ドープ22は、第1濾過装置24により濾過されて不純物が取り除かれる。第1濾過装置24に使用されるフィルタは、その平均孔径が100μm以下のものであることが好ましい。第1濾過装置24での濾過流量は50L/時以上であることが好ましい。濾過後のドープ22はバルブ54を介して、ストックタンク32に送られて貯留される。
ところで、前記製造方法のように一旦膨潤液15を製造してからドープ22を得る方法は、ポリマー濃度が高濃度のドープ22を製造する場合ほど要する時間が長くなる。そのため、製造コストの点で問題となる場合がある。そこで、目的とする濃度よりも低濃度のドープを製造した後に、目的の濃度とする濃縮工程を行うことが好ましい。濃縮工程は、図1に示すように、所望の濃度よりも低濃度に調製されているドープを第1濾過装置24で濾過した後に、バルブ54を介してフラッシュ装置26に送る。フラッシュ装置26でドープを構成する溶媒の一部を蒸発させてドープのポリマー濃度を高濃度とする。蒸発に
より発生する溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮して液体とする。その後に回収装置30に送られ回収される。回収溶媒は、再生装置31により再生されてドープ調製用の溶媒として再利用される。この方法により、高濃度ドープの製造効率の向上と溶媒の再利用によるコストダウン及び環境保護とが図られる。
上記の濃縮工程を経たドープは、第2ポンプ51によりフラッシュ装置26から抜き出される。このとき、ドープに発生している気泡を抜くための泡抜き処理が行われることが好ましい。泡抜き処理方法としては、公知の種々の方法が適用され、例えば超音波照射法などが挙げられる。ドープは続いて第2濾過装置25に送られ、不純物がさらに除去される。なお、第2濾過装置25におけるドープの温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。そして、ドープはストックタンク32に送られて貯蔵される。
以上の方法により、TAC濃度が5質量%〜40質量%であるドープを製造することができる。なお、TACフィルムを得るためのドープ製造における素材、原料、添加剤の溶解方法、濾過方法、脱泡、添加方法については、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落が詳しく、これらの記載も本発明に適用できる。
[溶液製膜方法]
次に、ドープ22を用いてフィルムを製造する方法を説明する。図2はフィルム製造設備60を示す概略図である。ただし、本発明は、図2に示すようなフィルム製造設備に限定されるものではない。フィルム製造設備60は、ドープを流延する流延部と、流延部から送られてくる湿潤フィルムを乾燥してフィルムとする乾燥部と、フィルムを巻き取る巻取部とからなるが、厳密に区分されているものではない。
ドープ製造設備10とフィルム製造設備60とを接続するストックタンク32には、モータ61とモータ61に接続されている攪拌機62とが備えられている。このモータ61の回転に伴い攪拌機62が回転することで、ドープ22を攪拌し、均一な状態を保持している。また、ストックタンク32にジャケット63を取り付けることでストックタンク32内の温度調整が容易となる。そして、ストックタンク32には、濾過装置33を介して中間層用ドープ流路70、支持体面用ドープ流路71、エアー面用ドープ流路72が接続されている。なお、中間層、支持体面、エアー面とは、3層からなるフィルムを製膜する場合において、支持体上に直接流延される層を支持体面と称し、その上の層を中間層と称し、さらにその上の層であってその表面が露出している層をエアー面と称するものである。
各流路70、71、72には、それぞれドープ送液用のポンプ75、76、77が接続されている。さらに、各流路70〜72には、ドープ組成調整用の添加液が入れられている中間層用ストックタンク80、支持体面用ストックタンク81、エアー面用ストックタンク82が、ポンプ85、86、87を介して接続されている。また、各流路には、添加液を原料ドープ22中に混合するための静止型混合器であるスタティックミキサ90〜92も接続されている。なお、スタティックミキサ90〜92よりも下流の各流路は、フィードブロック100に接続されている。そして、このフィードブロック100は、流延ダイ101に取り付けられており、共流延が可能となっている。
中間層用ストックタンク80には、中間層用添加液95が入れられている。中間層用添加液95は、ポンプ85により中間層用ドープ流路70中の原料ドープ22に送液された後、スタティックミキサ90により攪拌混合されて均一となる。以下、このドープを中間層用ドープと称する。なお、中間層用添加液95は、例えば、紫外線吸収剤やレターデーション制御剤などの添加剤が、予め溶液(または分散液)と混合されたものである。
支持体面用ストックタンク81には、支持体面用添加液96が入れられている。支持体面用添加液96は、ポンプ86により支持体面用ドープ流路71中の原料ドープ22に送液された後、スタティックミキサ91により攪拌混合されて均一となる。以下、このドープを支持体面用ドープと称する。また、支持体面用添加液96には、回転ドラムから流延膜の剥離を容易とする剥離促進剤(例えば、クエン酸エステルなど)やフィルムをロール状に巻き取った際にフィルム面間での密着を抑制するマット剤(例えば、二酸化ケイ素など)などの添加剤が予め含有している。なお、支持体面用添加液96には、可塑剤や紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていても良い。
エアー面用ストックタンク82には、エアー面用添加液97が入れられている。このエアー面用添加液97は、ポンプ87によりエアー面用ドープ流路72中の原料ドープ22に送液された後、スタティックミキサ92により攪拌混合されて均一となる。以下、このドープをエアー面用ドープと称する。また、エアー面用添加液97には、マット剤(例えば、二酸化ケイ素など)などの添加剤が予め含有されている。なお、エアー面用添加液97には、剥離促進剤、可塑剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていても良い。
中間層用ドープ、支持体面用ドープ、エアー面用ドープは、フィードブロック100にそれぞれ所望の流量で送液される。フィードブロック100内で各ドープが合流した後に流延ダイ101から支持体上に流延される。
流延部である流延室110には、フィードブロック100が取り付けられている流延ダイ101が備えられている。流延ダイ101には、流延ビードの形成を安定にするために減圧チャンバ102が取り付けられている。なお、減圧チャンバ102には、減圧チャンバ102の温度を所定の温度に保つためのジャケット(図示しない)を取り付けることが好ましい。
流延ダイ101の下方には回転ドラム(流延ドラムとも称される)111が設けられている。回転ドラム111の内部には、伝熱媒体循環装置112と接続される液流路が形成されている。そして、この液流路の中に、伝熱媒体循環装置112から伝熱媒体を供給し、通液または循環させることにより、回転ドラム111の表面温度が調整される。また、流延室110には、温調設備113が取り付けられており、さらには、流延室110の内部で揮発した有機溶媒を凝縮液化する凝縮板114が設けられている。なお、凝縮板115は凝縮した有機溶媒を回収する回収装置115と接続している。その他にも、流延室110の内部であり、回転ドラム111の近傍には、回転ドラム111上に形成された流延膜を剥ぎ取る際に支持する剥取ローラ116が設けられている。
流延ダイ101の材質は、析出硬化型のステンレス鋼を用いることが好ましい。また、その熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の素材を用いることが好ましく、電解質水溶液での強制腐食試験において、SUS316と略同等の耐腐食性を有するものを用いることが好ましい。そして、その素材は、ジクロロメタンとメタノールと水との混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものであることがより好ましい。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ101を作製することが好ましい。これにより、流延ダイ101内を流れるドープの面状が一定に保たれる。フィードブロック100及び流延ダイ101の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。
流延ダイ101のスリットのクリアランスは自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いる。流延ダイ101のリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリット全幅に亘り50μm以下のものを用いる。また、流延ダイ101の内部でのドープの剪断速度が1(1/秒)〜5000(1/秒)となるように調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ101の幅は特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルムの幅の1.0倍〜1.5倍程度のものを用いることが好ましい。また、製膜中は、所定の温度に保持されるように温調機を取り付けることが好ましい。なお、流延ダイ101には、コートハンガー型のものを用いることが好ましい。
厚み調整ボルト(ヒートボルト)を所定の間隔で設けてヒートボルトによる自動厚み調整機構を取り付けることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)75〜77の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フィルム製造設備60中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm以下となるように調整することが好ましい。なお、厚み精度は、±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
リップ先端には、ドープを円滑に流延するために、硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ101と密着性が良く且つドープと密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)、Al2 3 、TiN、Cr2 3 などが挙げられるが特に好ましくはWCを用いることである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
上記のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために溶媒供給装置(図示しない)をスリット端に取り付けることが好ましい。ドープを可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部、アセトン13質量部、n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビード端部とスリットとの気液界面に供給することが好ましい。端部の片側それぞれに5mL/分〜10mL/分の範囲で供給することが流延膜中に異物が混合することを防止できるために好ましい。なお、この液を供給するポンプの脈動率は5%以下のものを用いることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものに保つため流延ダイ101のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。
回転ドラム111は、図示しない駆動装置により回転する。回転ドラム111の移動速度、すなわち流延速度は、10m/分〜200m/分であることが好ましい。また、回転ドラム111の表面温度を所定の値にするために、伝熱媒体循環装置112により伝熱媒体が回転ドラム111内に供給される。回転ドラム111の表面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。
回転ドラム111の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜1.5倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、その外径は、3m〜5mであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。材質は、低温耐性を有するステンレス鋼を用いる。前記ステンレス鋼は、耐低温性に優れるため回転ドラム111を冷却した際にも後述する流延膜の剥取安定性に優れる。本発明の低温耐性を有するステンレス鋼とは、JIS G 3205(1988)に記載されている低温圧力容器用鍛鋼品のことである。中でも、回転ドラム111として、Cr、Ni、Mo、Cu等を比較的多く含むSFL2を材質として用いると、優れた耐低温耐性により流延膜の剥取安定性を向上させることができる。なお、回転ドラム111の速度変動を1%以下とし、回転ドラム111が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は1mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために回転ドラム111の両端を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づきフィードバック制御を行うことがより好ましい。
回転ドラム111には、温度調整装置が取り付けられている。温度調整装置は、特に限定されるものではないが、本実施形態のように回転ドラム111の内部に冷媒流路を設けて、この冷媒流路に伝熱媒体循環装置112を接続したものを用いると、回転ドラム111の表面温度を均一にできるために好ましい。ただし、冷却媒体は特に限定されるものではない。そして、上記の方法により支持体である回転ドラムの温度を5℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−25℃以下に調整する。回転ドラム111の表面温度が低いほど流延膜117のゲル化が進行するためにより好ましい。なお、冷却下限温度は特に限定されるものではないが、回転ドラム111の回転や冷媒の供給などを容易に行うために−40℃以上であることが好ましい。
流延ダイ101の直下における回転ドラム111の回転に伴う上下方向の位置変動が500μm以下となるように調整することが好ましい。また、回転ドラム111の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2 以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2 下とすることが好ましい。
流延ダイ101からエアー面用ドープ、中間層用ドープ、支持体面用ドープから流延ビードを形成させながら回転ドラム111上に共流延して流延膜117を形成する。なお、このときのそれぞれドープの温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。減圧チャンバ102によりビード背面は、前面との圧力よりも−100Pa〜−2000Paの範囲で減圧することが好ましい。減圧チャンバ102の温度は特に限定されるものではないが、35℃〜50℃の範囲であることが好ましい。エッジ部吸引装置によりエッジ吸引風量を1L/分〜100L/分の範囲とすることが好ましい。
流延室110内の温度は特に限定されるものではないが、−10℃〜57℃となるように、温調設備113で調整することが好ましい。凝縮器(コンデンサ)114により流延室110内の揮発有機溶媒は、凝縮液化する、凝縮器114の表面温度は特に限定されるものではないが、−40℃〜−10℃であることが好ましい。凝縮液化した有機溶媒は、回収装置115により回収され再生させた後に、所望の処理がなされてドープ調製用溶媒として再利用される。流延膜117が自己支持性を有するものとなった後に、剥取ローラ116で支持しながらフィルム(以下、湿潤フィルムと称する)118として回転ドラム111から剥ぎ取る。
回転ドラム111上の流延膜117に送風機120から乾燥風を供給することで流延膜117の乾燥を進行できる。乾燥風の温度は特に限定されるものではないが、30℃以上140℃以下であることが好ましく、30℃以上100℃以下であることがより好ましく、最も好ましくは30℃以上50℃以下である。30℃未満であると流延膜117中の溶媒の蒸発進行が促進されないおそれがある。140℃を超えると、流延膜117中から急激に溶媒が揮発してしまい、流延膜117の面状悪化を招くおそれがある。
乾燥風の風速も特に限定されるものではないが、2m/分以上25m/分以下が好ましく、10m/分以上25m/分以下であることがより好ましい。風速が2m/分未満であると、流延膜117の乾燥を進行させる効果が減じるおそれがある。25m/分を超えると流延膜117の表面への風圧が高くなり、流延膜117の面状悪化の原因となるおそれがある。
流延膜117が回転ドラム111上を搬送される時間は特に限定されるものではないが、3秒以上180秒以下であることが好ましい。ただし、上記の搬送時間が3秒未満であると、流延膜117を冷却してゲル化させる効果が減ずるおそれがあり、さらには、乾燥風の送風による流延膜117の乾燥の効果も減ずるおそれがある。一方で、上記の搬送時間が180秒を超えると、フィルムの生産性が低下する。
本発明では、回転ドラム111を冷却することで流延膜117の温度を低下させてゲル化を容易にしている。ゲル化が進行している状態の流延膜117を回転ドラム111から剥ぎ取ると、剥ぎ残りなどの不良が無く安定して流延膜117を剥ぎ取り、湿潤フィルム118を形成することができる。なお、剥取時の流延膜117の温度は特に限定されるものではないが、10℃以下であることが好ましく、−5℃以下であることが好ましく、−15℃以下であることが最も好ましい。
次に、乾燥部について説明する。乾燥部の上流側に多数にローラ130が配されている渡り部131と称される領域がある。渡り部131には送風機132が設けられている。また、渡り部131の下流側には、湿潤フィルム118を所定の方向に延伸しながら乾燥させるテンタ式乾燥機140と、テンタ式乾燥機140の下流側に備えられフィルムの両側端部を切断する耳切装置141とを備える。耳切装置141には、切断されたフィルム側端部の屑を細かく切断するためのクラッシャ142が接続されている。また、耳切装置141の下流側にはフィルムを多数のローラ145で搬送しながら乾燥する乾燥室146とフィルムを冷却する冷却室147とが備えられている。乾燥室146には、揮発した有機溶媒を含む溶媒ガスから前記有機溶媒を吸着回収する吸着回収装置148が取り付けられている。
巻取部には、フィルムの帯電圧値を所定の値となるように調整するための強制除電装置(除電バー)150と、フィルムの両側端部にエンボス加工をするためのナーリング付与ローラ151とが備えられている。また、巻取室155内には、フィルムを巻き取るための巻取ローラ156と、巻取時のフィルム張力を制御するためのプレスローラ157とが備えられている。
湿潤フィルム118の乾燥及び巻取方法について説明する。湿潤フィルム118は、多数のローラ130により支持しながら渡り部131を搬送させた後、テンタ式乾燥機140へと送り込む。渡り部131では、送風機132から所望の温度の乾燥風を送風することで、湿潤フィルム118の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度は、20℃〜250℃であることが好ましい。なお、渡り部131では、下流側のローラ130の回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより、湿潤フィルム118に流延方向(搬送方向)の延伸を付与させることも可能である。
次に、湿潤フィルム118をテンタ式乾燥機140へと送り込む。テンタ式乾燥機140では、湿潤フィルム118の両縁がクリップで把持された後、搬送されつつ乾燥される。また、テンタ式乾燥機140内は、異なった温度ゾーンに区画して乾燥条件を調整することが好ましい。なお、テンタ式乾燥機140を用いて湿潤フィルム118を流延幅方向に延伸及び緩和させることも可能である。渡り部131及び/またはテンタ式乾燥機140では、湿潤フィルム140の流延方向と流延幅方向との少なくとも1方向を、0.5%〜300%延伸することが好ましい。
テンタ式乾燥機140で所定の残留溶媒量まで乾燥された湿潤フィルム118は、フィルム143として送り出された後、耳切装置141によりフィルム143の両端が切断される。このとき、切断されたフィルム143の両端は、図示しないカッターブロワによりクラッシャ142に送られた後、クラッシャ142により粉砕されてチップとなる。このチップをドープ調製用に再利用することがコストの点から有利である。なお、フィルム143の両端を切断する工程は、省略することもできるが、前記ドープを流延してからフィルムを巻き取るまでのいずれかで行うことが好ましい。
フィルム143は、乾燥室146に送られてさらに乾燥される。乾燥室146においては、フィルム143は、ローラ145に巻き掛けられながら搬送されている。乾燥室146の内部温度は特に限定されるものではないが、40℃〜160℃の範囲であることが好ましい。乾燥室146によりフィルム143から蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置148により吸着回収される。そして、吸着回収装置148で溶媒成分が除去された空気は乾燥風として乾燥室146で再利用される。なお、乾燥室146は乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置141と乾燥室146との間に予備乾燥室(図示しない)を設け、フィルム143を予備乾燥すると、フィルム143の温度が乾燥室146で急激に上昇してしまうことを防止できるので、フィルム143の形状変化をより抑制できる。
フィルム143は、冷却室147に搬送されて略室温まで冷却される。なお、乾燥室146と冷却室147との間に調湿室(図示しない)などを設けても良い。調湿室でフィルム143に所望の湿度及び温度の風を吹き付けることにより、フィルム143のカールの発生やフィルム143を巻き取る際の巻取不良の発生を抑制できる。
続いて、フィルム143は、強制除電装置(除電バー)150により所定の帯電圧値(例えば、−3kV〜+3kV)とされる。ただし、この除電の工程位置は、図示されている本実施形態に限定されるものではなく、例えば乾燥部の所定の位置やエンボスローラ151の下流位置などにあっても良い。そして、フィルム143は、その両側端部がエンボスローラ151によりエンボス加工されてナーリングが付与されることが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸差が、1μm〜200μmであることが好ましい。
最後に、フィルム143を巻取ローラ156で巻き取る。巻取時のフィルム143は、プレスローラ157により所望のテンションを付与されながら巻き取られる。このテンションは、巻取開始時から終了時にかけて徐々に変化されることがより好ましい。本実施形態におけるフィルム143は、長手方向(流延方向)の長さが100m以上、幅が600mm以上であることが好ましい。また、フィルム143の幅は、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。また、1800mmより大きい場合にも効果がある。フィルム143の厚みは、15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも適用できる。
複数層のフィルムを製造するために複数のドープを流延する方法としては、前述の同時積層共流延でも良いし、逐次流延でも良いし、双方を組み合わせても良い。同時積層共流延を行う際には、本実施形態のように流延ダイ101にフィードブロック100を取り付けても良いし、マルチマニホールド型流延ダイ(図示しない)を用いても良い。複層構造のフィルムは、共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層(エアー面層)の厚さ及び/又は支持体側の層の厚さがそれぞれ全体のフィルム厚さ中で0.5%〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合に、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープを低粘度ドープで包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合に、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に内部のドープは、そのドープよりもアルコールの組成比が大きなドープで包み込まれることが好ましい。
図2を示して説明したように、本実施形態では、3種類のドープを共流延してフィルム143を製造するので、目的とする特性を有するフィルム143を容易に得ることができる。すなわち、フィルム143をロールとして巻き取る際に、フィルム143面間での密着を防止する必要があるため、ドープ中にマット剤を添加することが好ましい。しかしながら、通常、マット剤は光学特性の悪化(例えば、ヘイズの上昇など)の原因となっている。ただし、本実施形態のように、フィルム143の表裏面となる支持体面用ドープとエアー面用ドープとにマット剤を含有させ、中間層用ドープには含有させないことにより、表面密着性を低下させると共に所望の光学特性を得ることが可能となる。
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られているTACフィルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[1073]段落から[1087]段落に記載されている。これらも本発明にも適用できる。
[表面処理]
TACフィルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。その表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化・反射防止・易接着・防眩)
TACフィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。さらに、TACフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2 含有することが好ましい。また、機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2 含有することが好ましい。さらに、機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2 含有することが好ましい。さらには、機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m2 〜1000mg/m2 含有することが好ましい。TACフィルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、前記以外にも、特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1072]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
(用途)
TACフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。通常は、TACフィルムを貼り合わせた偏光板を2枚用いて液晶表示装置を作製する。但し、この配置はどの位置でも良い。特開2005−104148号公報には、液晶表示装置として、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、TACフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したTACフィルムについても記載されている。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムとしての機能も有する。これらの記載は、本発明にも適用できる。特開2005−104148号公報(例えば、[1088]段落から[1265]段落)に詳細が記載されている。
また、本発明の製造方法により光学特性に優れるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を得ることができる。TACフィルムは、偏光板保護フィルムや写真感光材料のベースフィルムとして用いることができる。
以下に、実施例1を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、説明において、実験1で詳細に説明し、実験2ないし実験7並びに比較例である実験8及び実験9については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略する。また、実験条件及び実験結果については後に表1にまとめて示す。
[実験1]
実験1で使用した原料の質量部を下記に示す。
セルローストリアセテート(置換度2.86、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 400質量部
メタノール(第2溶媒) 77質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 5質量部
可塑剤A:(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B:(ジフェニルフォスフェート) 3.5質量部
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有量が80ppm、Mg含有量が42ppm、Fe含有量が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンが15ppm含むものであった。また、アセトン抽出分は8質量%、重量平均分子量/数平均分子量比は2.7であった。イエローインデックスは6.0であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このセルローストリアセテートは、パルプから採取したセルロースを原料としてセルローストリアセテートを合成した。
図1に示したドープ製造設備10を用いた。第1攪拌機42及び第2攪拌機44を有する4000Lのステンレス製溶解タンク14に、前記複数の溶媒を混合して混合溶媒としてよく攪拌・分散しつつ、セルローストリアセテート粉体(フレーク)をホッパ13から徐々に添加し、全体が2000kgになるように調製した。なお、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。溶解タンク14内を攪拌剪断速度が最初は5m/秒(剪断応力5×104 kgf/m/秒2 )の周速で攪拌するディゾルバータイプの攪拌翼を備えた第2攪拌機44及び中心軸にアンカー翼を備えた第1攪拌機42により、周速1m/秒(剪断応力1×104 kgf/m/秒2 )で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼を有する第1攪拌機42の周速を0.5m/秒としてさらに100分間攪拌し、セルローストリアセテートフレークを膨潤させて膨潤液15を得た。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンク14内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また、膨潤液15中の水分量は0.3質量%であった。
膨潤液15を溶解タンク14から第1ポンプ50を使ってスクリュー押出機を備えた溶解装置21へ送液した。このときのスクリュー1次圧は0.55MPaであった。これにより、膨潤液15を加熱して、膨潤液15における固形分(主にTACである)の溶媒への溶解を進行させた。次に、膨潤液15をスタティックミキサ27に送り込み、攪拌した。続けて、温調装置23として、ジャケット付き配管を使用して50℃まで加熱した後、さらに、2MPaの加圧下で90℃まで加熱して、膨潤液15の内部の固形分を完全に溶解させた。そして、公称孔径8μmのフィルタを有する第1濾過装置24を通過させることにより、固形分濃度が19質量%のドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、第1濾過装置24による濾過1次圧は1.5MPa、2次圧は1.2MPaとした。なお、高温に晒されるフィルタやハウジングおよび配管はハステロイ合金製で耐食性に優れるものを使用した。また、配管等には、保温加熱用の熱媒体を流通させるジャケットを有する形態を使用した。
濃縮前ドープを120℃で常圧に調整されているフラッシュ装置26内でフラッシュさせて、蒸発した溶媒を凝縮器で液化して回収装置30で回収分離した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、22.8質量%となった。なお、回収された溶媒は、再生装置31で再利用のために調整された。フラッシュ装置26内のフラッシュタンクには中心軸にアンカー翼を有しており、周速0.5m/秒で攪拌して脱泡を行った。フラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。このドープを採取して25℃で測定した剪断粘度は剪断速度10(秒-1)で450(Pa・s)であった。
次に、このドープに弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。その後、第2ポンプ51を用いて1.5MPaに加圧した状態で、第2濾過装置25に送液した。第2濾過装置25では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついて同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次圧は1.5MPa、1.2MPaであり、2次圧は1.0MPa、0.8MPaであった。濾過後のドープの温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク32内に貯蔵した。以下、このドープを原料ドープ22と称する。ストックタンク32は、中心軸にアンカー翼を有する攪拌機62を用いて周速0.3m/秒で常時攪拌した。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。また、ジクロロメタンが83質量部、メタノールが16質量部、n−ブタノールが1質量部からなる混合溶媒Aを作製した。
図2に示したフィルム製造設備60を用いてフィルムの製造を行った。ストックタンク32内の原料ドープ22を1次増圧用のギアポンプ75、76、77で高精度ギアポンプの1次側圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりフィードバック制御を行い送液した。高精度ギアポンプ75〜77は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であった。また、吐出圧力は1.5MPaであった。
流延ダイ101は、幅が1.8mであり共流延用に調整したフィードブロック100を装備して、主流のほかに両面にそれぞれ積層して3層構造のフィルムを成形できるようにした装置を用いた。以下の説明において、主流から形成される層を中間層と称し、支持体面側の層を支持体面と称し、反対側の面をエアー面と称する。なお、ドープの送液流路は、中間層用ドープ流路70、支持体面用ドープ流路71、エアー面用ドープ流路72の3流路を用いた。
UV剤a(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、UV剤b(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)5−クロルベンゾトリアゾール)と、混合溶媒Aと、原料ドープ22とを混合させた中間層用添加液95を、ストックタンク80に入れた。次に、中間層用添加液95をポンプ85により中間層ドープ流路70中の原料ドープ22に送液した。そして、スタティックミキサ(エレメント数40個)90を介して混合させて、中間層用ドープとした。なお、中間層用ドープ中では、全固形分濃度が22.8質量%、紫外線吸収剤がフィルム形態で1.0質量%となるように混合量の調整を行った。
ストックタンク81に貯留される支持体面用添加液96を、ポンプ86により所望の流量に調整しながら、支持体面用ドープ流路71中に流れている原料ドープ22に送液した。そして、これらをスタティックミキサ(エレメント数12個)91で混合させて、支持体面用ドープを調製した。なお、支持体面用添加液96は、予めストックタンク81の中にマット剤である二酸化ケイ素(粒径15nm モース硬度 約7)と、剥離促進剤であるクエン酸エステル混合物(クエン酸、クエン酸モノエチルエステル、クエン酸ジエチルエステル、クエン酸トリエチルエステル)と原料ドープ22と混合溶媒Aとを混合し、これらを溶解または分散させることにより調製した。なお、支持体面用ドープ流路71中に流れる原料ドープ22に対する支持体面用添加液96の添加量は、添加後に調製される支持体面用ドープ中の全固形分濃度が20.5質量%、フィルム形態でマット剤濃度および剥離促進剤濃度が、順に0.05質量%、0.03質量%となるようにした。
二酸化ケイ素(粒径15nm モース硬度 約7)を原料ドープ22と混合溶媒Aとの混合液に分散させてエアー面用添加液97を調製した後、これをストックタンク82に入れた。そして、エアー面用添加液97をポンプ87によりエアー面用ドープ流路72中の原料ドープ22に送液した後、スタティックミキサ(エレメント数60個)92を介して混合させることにより、エアー面用ドープを作製した。なお、上記の混合液に対する二酸化ケイ素の添加量は、全固形分濃度が20.5質量%、フィルム形態でマット剤濃度が0.1質量%となるように行った。
そして、製品厚みが80μmとなるように、流延幅を1700mmとして各ドープ(中間層用ドープ、支持体面用ドープ、エアー面用ドープ)の流量を調整しながら流延ダイ101より回転ドラム111の上に流延を行った。なお、各ドープの温度を36℃に調整するため、流延ダイ101にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
製膜時において、流延ダイ101やフィードブロック100及び配管は、すべて36℃に保温した。流延ダイ101は、コートハンガータイプであり、厚み調整ボルト(ヒートボルト)が20mmピッチに設けられ、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。なお、ヒートボルトは予め設定したプログラムにより高精度ギアポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フィルム製造設備60内に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによって制御も可能な性能を有するものを用いた。流延エッジ部20mmを除いたフィルムにおいて、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm/m以下となるように調整した。また、各層の平均厚み精度は両外層(エアー面側層、支持体面側層)が±2%以下、中間層が±1%以下に制御され、全体厚みは±1.5%以下になるように調整した。
流延ダイ101の1次側(流延ビードの背面側)を減圧するために減圧チャンバ102を設置した。減圧チャンバ102の減圧度は流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるようになっていて、流延スピードに応じて調整が可能なものである。その際に、流延ビードの長さが10mm±5mmとなるように圧力差を設定した。また、減圧チャンバ102は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりもその温度を高く設定できる機構を具備したものを用いた。流延ビード前部及び後部にラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、両端には開口部を設けた。さらに、そこから流延ビードの両縁の乱れを調整するためにエッジ吸引装置(図示しない)が取り付けられているものを用いた。
流延ダイ101の材質は析出硬化型のステンレス鋼であり、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の素材であり、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有する素材を使用した。また、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有する素材を使用した。流延ダイ101及びフィードブロック100の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。ダイリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリットの全幅に亘り500μm以下になるように加工した。ダイ内部での剪断速度は1(1/秒)〜5000(1/秒)の範囲であった。なお、流延ダイ101のリップ先端には、溶射法によりWCコーティングを行い、硬化膜を設けた。
さらに流延ダイ101のスリット端には流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために、ドープを可溶化する前記混合溶媒を流延ビード端部とスリット気液界面に片側で0.5ml/分で供給した。この液を供給するポンプの脈動率は5%以下のものを用いた。また、減圧チャンバ102により流延ビード背面の圧力を150Pa低くした。減圧チャンバ102の温度を一定にするために、ジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内に35℃に調整された伝熱媒体を供給した。エッジ吸引風量は30L/分〜40L/分の範囲で適宜調整した。
支持体として幅2.1mのステンレス製の回転ドラム111を用いた。回転ドラム111の表面粗さは0.05μm以下になるように研磨した。十分な耐低温性と耐腐食性と強度とを有するものとした。回転ドラム111の速度変動は0.5%以下とした。また、1回転の幅方向の蛇行は1.5mm以下に制限するように回転ドラム111の両端位置を検出して制御した。回転ドラム111に伝熱媒体循環装置112を用いて−30℃の冷却媒体を循環送液して、表面温度を−20℃とした。なお、流延ダイ101直下におけるダイリップ先端と回転ドラム111との上下方向の位置変動は200μm以下とした。回転ドラム111は、風圧変動抑制装置(図示しない)を有した流延室110内に設置した。回転ドラム111上に流延ダイ101から3層のドープ(エアー面用ドープ、中間層用ドープ、支持体面用ドープ)を、流延速度を70m/分として共流延した。
回転ドラム111は、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2 以下、10μm未満のピンホールは2個/m2 以下であるものを用いた。流延室110の温度は、温調設備113を用いて35℃に保った。回転ドラム111上に流延膜117を形成した。また、流延室110内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)114を設け、その出口温度は、−10℃に設定した。送風機120から40℃、10%RHの乾燥風を風速10m/分で流延膜117に送風した。
流延膜117中の溶媒比率が乾量基準で150質量%になった時点で回転ドラム111から剥取ローラ116で支持しながら湿潤フィルム118として剥ぎ取った。このときの流延膜117の温度は−10℃であった。また、流延膜117が回転ドラム111上を搬送されていた時間は3秒であった。剥取テンションは10kgf/mであり、剥取不良を抑制するために回転ドラム111の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は、100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。回転ドラム111上での流延膜117の乾燥速度は、乾量基準で平均60質量%/分であった。乾燥して発生した溶媒ガスは、−10℃の凝縮器114で凝縮液化して回収装置115で回収した。回収された溶媒は調整がなされた後に、ドープ調製用溶媒として再利用した。その際に、溶媒に含まれる水分量を0.5%以下に調整した。溶媒が除去された乾燥風は再度加熱して乾燥風として再利用した。湿潤フィルム118を渡り部131のローラ130を介して搬送し、テンタ式乾燥機140に送った。このときに送風機132から40℃の乾燥風を湿潤フィルム118に送風した。なお、渡り部131のローラ130で搬送している際に、湿潤フィルム118に約100N/幅のテンションを付与した。
テンタ式乾燥機140に送られた湿潤フィルム118は、クリップでその両端を固定されながらテンタ式乾燥機140の乾燥ゾーン内を搬送され、乾燥風により乾燥した。クリップには、20℃の伝熱媒体を供給して冷却した。クリップの駆動はチェーンで行い、スプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、乾燥ゾーンを3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃、100℃、110℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃の飽和ガス濃度とした。テンタ式乾燥機140内での平均乾燥速度は、乾量基準で120質量%/分であった。テンタ式乾燥機140の出口ではフィルム143中の残留溶媒量が7質量%となるように乾燥ゾーンの条件を調整した。
また、テンタ式乾燥機140内では、湿潤フィルム118を搬送する間に、その幅方向に対して延伸も行った。なお、この延伸は、テンタ式乾燥機140に搬送された際の湿潤フィルム118の幅を100%としたとき、その幅に対し拡幅量を103%とした。剥取ローラ116からテンタ式乾燥機140入口に至る延伸率(テンタ駆動ドロー)は、102%とした。テンタ式乾燥機140内の延伸率は、テンタ噛込部から10mm以上離れた部分における実質延伸率の差異が10%以下であり、且つ20mm離れた任意の2点の延伸率の差異は5%以下であった。ベース端のうちテンタクリップで固定している長さの比率は90%とした。テンタ式乾燥機140内で蒸発した溶媒は、−10℃の温度で凝縮液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(図示しない)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。溶媒に含まれる水分量を0.5質量%以下に調整して再利用した。そして、テンタ式乾燥機140からフィルム143として送り出した。
次に、テンタ式乾燥機140の出口から30秒以内にフィルム143の両端の耳切りを耳切装置141で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ142に風送して平均80mm2 程度のチップに粉砕し、耳サイロ(図示しない)に収納した。耳サイロ内には、溶媒濃度計が設けられており、常に耳サイロ内の溶媒濃度をモニタリングしていた。耳サイロ内の溶媒濃度が爆発下限値(LEL)である25体積%を超えると爆発する場合がある。しかしながら、本実験においては、常に25体積%未満であり爆発の可能性は全く無かった。このチップは再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際に原料として利用した。テンタ式乾燥機140の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室146で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフィルム143を予備加熱した。
フィルム143を乾燥室146で高温乾燥した。なお、乾燥室146を4区画に分割して、上流側から120℃、130℃、130℃、130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。このとき、ローラ145によるフィルム143の搬送テンションは100N/幅として、最終的に残留溶媒量が0.3質量%になるまで約10分間乾燥した。前記ローラ145のラップ角度は、90度および180度とした。前記ローラ145の材質はアルミニウム製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロムメッキを施した。ローラ145の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ145の回転による振れは全て50μm以下であった。また、テンション100N/幅でのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置148を用いて回収除去した。吸着回収は、吸着材は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶媒は、水分量0.3質量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には溶媒ガスの他、可塑剤、UV吸収剤、その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却機及びプレアドソーバ(予備吸着材)でこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるように吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち凝縮法で回収する溶媒量は90質量%であり、残りの大部分は吸着回収により回収した。
乾燥されたフィルム143を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室146と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フィルム143のカールの発生を抑制するため第2調湿室(図示しない)にフィルム143を搬送した。第2調湿室では、フィルム143に直接90℃、湿度70%の風をあてた。
調湿後のフィルム143は、冷却室147で30℃以下に冷却した後、切断装置(図示しない)により両端の切断(耳切り)を行った。搬送中のフィルム143の帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)150を設置した。さらにフィルム143の両端にナーリング付与ローラ151でナーリングを行った。ナーリングは片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングする幅は10mmであり、最大高さは平均厚みよりも平均12μm高くなるように押し圧を設定した。
そして、フィルム143を巻取室155に搬送した。巻取室155は、室内温度28℃、湿度70%に保持した。さらに、フィルム帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVになるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフィルム(厚さ80μm)143の製品幅は、1475mmとなった。巻取ローラ156の径は169mmのものを用いた。巻き始めテンションは360N/幅であり、巻き終わりが250N/幅になるようなテンションパターンとした。巻取全長は3940mであった。巻き取りの際の周期を400mとし、オシレート幅を±5mmとし、巻取ローラ156にプレスローラ157を押し圧50N/幅に設定した。巻き取り時のフィルムの温度は25℃、含水量は1.4質量%、残留溶媒量は0.3質量%であった。全工程を通しても平均乾燥速度は20質量%(乾量基準溶媒)/分であった。なお、巻き緩み、シワもなく、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。加えて、ロール外観も良好であった。フィルム143の面状は良好(○)であった。
フィルム143のフィルムロールを25℃、55%RHの貯蔵ラックに1ヶ月間保管した後、上記と同様に検査した結果、いずれも有意な変化は認められなかった。さらに、ロール内においても接着も認められなかった。また、フィルム143を製膜した後に、回転ドラム111上にはドープから形成された流延膜117の剥げ残りは全く見られなかった(○)。
実験で得られたフィルムの評価方法及びそれらの結果について表1に示す。なお、各実験において、支持体である回転ドラム111の材質を、実験1〜5では、低温圧力容器用鍛鋼品のうちSFL2とし、実験6,7では、SFL1とした。一方で、実験8,9では、低温圧力容器用に分類されないステンレス鋼(SUS316L製)を用いた。
Figure 2006306025
本発明の溶液製膜方法に用いられるドープを製造するドープ製造設備の概略図である。 本発明に係る溶液製膜方法を実施するためのフィルム製膜設備の概略図である。
符号の説明
22 ドープ
60 フィルム製造設備
101 流延ダイ
111 回転ドラム
112 伝熱媒体循環装置
117 流延膜
118 湿潤フィルム
143 フィルム

Claims (10)

  1. ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ダイから支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有する膜となった後に、前記支持体から前記流延膜を剥離してフィルムとし、前記フィルムを乾燥させる溶液製膜方法において、
    低温耐性を有するステンレス鋼から形成されている前記支持体上で前記流延膜を冷却することを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記支持体の表面温度が5℃以下となるように冷却することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記支持体から前記流延膜を剥離するときの前記流延膜の温度が、10℃以下であることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記流延膜に30℃以上140℃以下の風を送風し、前記流延膜を乾燥させることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  5. 前記流延膜に風速が2m/分以上25m/分以下の風を送風し、前記流延膜を乾燥させることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  6. 前記流延膜が前記支持体上に搬送されている時間が、3秒以上180秒以下であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  7. 前記支持体が回転ドラムであることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  8. 前記回転ドラムは、その内部に冷却媒体が通過する流路が形成されているものであって、
    前記流路に冷却媒体を通過させることで前記回転ドラムを冷却することを特徴とする請求項7記載の溶液製膜方法。
  9. 前記溶媒がジクロロメタンまたは酢酸メチルを主溶媒とすることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  10. 前記ポリマーがセルロースアシレートであることを特徴とする請求項1ないし9いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
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