JP2004315613A - セルロースアシレートフィルム、その製造方法、偏光板保護膜、液晶表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】常温溶解法、冷却溶解法あるいは高温高圧溶解法に従い有機溶媒(好ましくは非塩素系有機溶媒)を用いてセルロースアシレート溶液から作成したフィルムの光学的異方性を小さくするための添加剤を提供すること。
【解決手段】リン酸トリ脂肪族アルコールエステルほか、11種類の化合物であって、該化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が1ないし10である化合物を少なくとも1種とセルロースアシレートとを含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】リン酸トリ脂肪族アルコールエステルほか、11種類の化合物であって、該化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が1ないし10である化合物を少なくとも1種とセルロースアシレートとを含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料または液晶画像表示装置に有用なセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置に使用されるセルロースアシレートを製造する際に使用されるセルロースアシレート溶液の有機溶媒は、ジクロロメタンのような塩素含有炭化水素が使用されている。ジクロロメタン(沸点40℃)は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として用いられ、製造工程の製膜及び乾燥工程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。逆にジクロロメタンは沸点が低く揮発し易いため、密閉設備でも取り扱い工程で若干漏れ易く回収にも限界があり、完全に大気中への散逸を防ぎきれないという問題があり、その環境安全性の点で改善が望まれている。そこで、この解決のためにジクロロメタンを用いて、さらに高濃度のセルロースアシレート溶液を作製し溶媒の使用量を減らすことを検討したが、その流延時の金属支持体から剥離が不十分でありその改良が望まれていた。さらに、ジクロロメタン以外のセルロースアシレートの溶媒の探索がなされて来た。セルロースアシレート特にセルローストリエステルに対する溶解性を示す有機溶媒として知られているものにはアセトン(沸点56℃)、酢酸メチル(沸点56℃)、テトラヒドロフラン(沸点65℃)、1,3−ジオキソラン(沸点75℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)などがある。しかしながら、これらの有機溶媒は従来の溶解方法では実際に実用できるに十分な溶解性は得られていない。
【0003】
この解決として、セルローストリアセテート(酢化度60.1%から61.3%)をアセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することによって、0.5から5重量%の希薄溶液が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。このような低温でセルロースアシレートを溶解する方法を冷却溶解法という。また、冷却溶解法を用いての紡糸技術についても知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
また、上記技術を背景に、非塩素系有機溶媒を用いて冷却溶解法によってセルロースアシレートを溶解することが開示されている(例えば、特許文献1,2および3参照)。
その際に用いられる非塩素系有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類あるいはエステルから選ばれる有機溶媒であり、冷却溶解法によりセルロースアシレートを溶解してフィルムを作製している。これらの具体的な有機溶媒としてはアセトン、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキサノン、エチルホルメート、及びメチルアセテートなどが好ましいとしている。
【0005】
セルロースアシレートフィルムは、一般にソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製造される。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成するものである。メルトキャスト法では、セルロースアシレートを加熱により溶融したものを支持体上に流延し、冷却してフィルムを形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法よりも平面性の高い良好なフィルムを製造することができる。このため、実用的にはソルベントキャスト法の方が普通に採用されている。
【0006】
セルロースアシレートフィルムには、可塑剤と呼ばれる化合物がしばしば添加される。セルロースアシレートフィルムに使用される可塑剤の種類としては、リン酸トリフェニル、リン酸ビフェニルジフェニルのようなリン酸トリエステル、フタル酸エステル類などが開示されている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、実際には可塑剤がセルロースアシレートフィルムと相溶せずに、フィルムが白濁したり、フィルムの光学的異方性を大きくするなどの問題があり、その選択は容易ではない。
【0007】
前述したセルロースアシレート溶液からソルベントキャスト法で作成したフィルムは光学的異方性(例えば厚み方向のレターデーション値)の制御が困難であるという問題がある。セルロースアシレートフィルムを光学材料に用いる場合、使用用途によってはフィルムの光学的異方性を小さくすることが好ましい。上述の可塑剤と呼ばれる化合物の中には、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果を有するものが知られており、例えば、特定の脂肪酸エステル類が開示されている(例えば、特許文献4,5,6および7参照)。しかし、化合物の光学的異方性への効果を分子構造からあらかじめ予測する指針が従来は知られていなかったため、比較的多量のセルロースアシレートを用いてフィルムを作成する煩雑な試験を化合物ごとに実施することが必要であり、化合物を選択していく上で障害となっていた。
【0008】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に際しては、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する際に、膜表面の近傍に存在している可塑剤などの添加剤の昇華あるいは蒸発を抑制することが好ましいことが開示されている(特許文献8)。同公報にはリン酸トリアリール化合物ならびにフタル酸ジエステルが可塑剤として記載されている。しかしながら、同公報の化合物例ならびに実施例に記載された化合物は、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果は十分とはいえない。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−95538号公報
【特許文献2】
特開平9−95544号公報
【特許文献3】
特開平9−95557号公報
【特許文献4】
特開2001−247717号公報
【特許文献5】
特開2000−336179号公報
【特許文献6】
特開2000−63560号公報
【特許文献7】
特開平11−246704号公報
【特許文献8】
特開2000−336179号公報
【非特許文献1】
J.M.G.Cowieら、( Makromol.chem.143巻、105頁(1971))
【非特許文献2】
「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」、上出健二等、繊維機械学会誌、34巻、57−61頁(1981)
【非特許文献3】
プラスチック材料講座、第17巻、日刊工業新聞社、「繊維素系樹脂」、121頁(昭和45年)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、常温溶解法、冷却溶解法あるいは高温高圧溶解法に従い有機溶媒(好ましくは非塩素系有機溶媒)を用いてセルロースアシレート溶液から作成したフィルムの光学的異方性を小さくするための添加剤を提供することである。また、本発明の課題は、光学的異方性の小さいセルロースアシレートフィルムの製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構造を有し、かつ、該化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が特定の範囲である化合物を少なくとも一種含有する、以下のセルロースアシレートフィルムにより、本発明の課題が達成されることを見出した。
【0012】
(1) 一般式(1)〜(12)で表され、かつ、該化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が1ないし10である化合物を少なくとも1種と、セルロースアシレートとを含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【化4】
(式中、R11−13(本出願において、「R11−13」はR11、R12およびR13を意味する。以下同じ。)はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−13は互いに連結して環を形成してもよい。)
【0013】
【化5】
一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良い。Y21−22はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20のエステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表し、Y21−22は互いに連結して環を形成してもよい。mは1〜5の整数を表し、nは1〜6の整数を表す。
【0014】
【化6】
【0015】
一般式(4)〜(12)において、Y31−70はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20のエステル基、炭素数が1ないし20のアルコキシカルボニル基、炭素数が1ないし20のアミド基、炭素数が1ないし20のカルバモイル基またはヒドロキシ基を表し、V31−43はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし20の脂肪族基を表す。L31−77はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31−77の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。V31−43およびL31−77は、さらに置換基を有していてもよい。
(2)(1)に記載のセルロースアシレートフィルムにおいて少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(3)(1)の一般式(1)〜(12)で表される化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が2ないし8である化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4)(1)の一般式(1)〜(12)で表される化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が2ないし7である化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(5)(1)の一般式(1)ないし(12)で表される化合物が、芳香族環を含有しないことを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(6)(1)の一般式(1)ないし(12)で表される化合物の含有量が、セルロースアシレートの0.01ないし30重量%であることを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0016】
(7)セルロースアシレートのアシル置換度が2.60ないし3.00である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(8)セルロースアシレートのアシル置換度が2.80ないし2.95である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(9)セルロースアシレートが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足し、かつ、セルロースの6位の水酸基へのアシル置換度が0.8〜1.0であることを特徴とする(1)〜(4)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(I) 2.6≦SA+SB≦3.0
(II) 2.0≦SA≦3.0
(III) 0.0≦SB≦0.8
式中、SAおよびSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基を表し、SAはアセチル基の置換度、またSBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
(10)セルロースアシレートのアセチル基で置換されている置換度が2.00ないし3.00である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(11)セルロースアシレートの炭素原子数が3ないし22のアシル基で置換されている置換度が0.00ないし0.80である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(12)セルロースアシレートが、アセチル基と炭素原子数が3ないし22のアシル基とで置換されており、炭素原子数が3ないし22のアシル基の30%以上が6位水酸基の置換基として存在している(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0017】
(13)セルロースアシレートの6位のアシル置換度が0.80ないし1.00である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(14)セルロースアシレートの6位のアシル置換度が0.85ないし1.00である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(15)実質的に非塩素系有機溶媒である炭素原子数3〜12のエーテル類、炭素原子数3〜12のケトン類および炭素原子数2〜12のエステル類から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒と、および/または炭素原子数1〜12のアルコール類の少なくとも1種の有機溶媒を用い、−100〜200℃で溶解された溶液を用いて流延製膜されたことを特徴とする(1)〜(4)ならびに(13)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(16)セルロースアシレートを有機溶媒に溶解したセルロースアシレート溶液を塗布してセルロースアシレートフィルムを製造する方法であって、一般式(1)〜(12)で表され、かつ、該化合物のオクタノール−水分配係数が1ないし10である化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(17)有機溶媒が、実質的に非塩素系の有機溶媒からなる(16)に記載の製造方法。
(18)有機溶媒が、炭素原子数が1ないし12のアルコール、炭素原子数が2ないし12のエーテル、炭素原子数が3ないし12のケトンおよび炭素原子数が2ないし12のエステルからなる群より選ばれる(16)又は(17)に記載の製造方法。
【0018】
(19)エーテルが、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールからからなる群より選ばれる(16)〜(18)いずれか1つに記載の製造方法。
(20)ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンからなる群より選ばれる(16)〜(19)いずれか1つに記載の製造方法。
(21)エステルが、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテートおよびペンチルアセテートからなる群より選ばれる(16)〜(20)いずれか1つに記載の製造方法。
(22)有機溶媒が、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合物であって、第1の溶媒が、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソランおよびジオキサンからなる群より選ばれ、第2の溶媒が、炭素原子数が4ないし7のケトンおよびアセト酢酸エステルからなる群より選ばれ、そして、第3の溶媒が、炭素原子数が1ないし10のアルコールおよび炭化水素からなる群より選ばれる(16)〜(21)いずれか1つに記載の製造方法。
(23)有機溶媒が、第1の溶媒を20ないし90重量%、第2の溶媒を5ないし60重量%、そして、第3の溶媒を5ないし30重量%の割合で含む(16)〜(22)いずれか1つに記載の製造方法。
(24)有機溶媒が、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合物であって、第1の溶媒と第2の溶媒が、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソランおよびジオキサンからなる群より選ばれ、そして、第3の溶媒が、炭素原子数が1ないし10のアルコールおよび炭化水素からなる群より選ばれる(16)〜(23)いずれか1つに記載の製造方法。
【0019】
(25)有機溶媒が、第1の溶媒を20ないし90重量%、第2の溶媒を5ないし60重量%、そして、第3の溶媒を5ないし30重量%の割合で含まれる(16)〜(24)いずれか1つに記載の製造方法。
(26)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を10ないし40℃で膨潤する工程、そして、膨潤した混合物を0ないし57℃に加温する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアセテート溶液を用いる(16)〜(25)いずれか1つに記載の製造方法。
(27)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を−10ないし55℃で膨潤する工程、膨潤した混合物を−100〜−10℃に冷却する工程、そして、冷却した混合物を0〜57℃に加温する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアセテート溶液を用いる(16)に記載の製造方法。
(28)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を−10ないし55℃で膨潤する工程、膨潤した混合物を0.2ないし30MPaで60ないし240℃に加熱する工程、そして、加熱した混合物を0ないし57℃に冷却する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアセテート溶液を用いる(16)に記載の製造方法。
(29)セルロースアシレートとして、90重量%以上の粒子が0.1ないし5mmの粒径を有するセルロースアシレート粒子を用い、塗布する前にセルロースアシレート溶液を濾過する処理を実施する(16)に記載の製造方法。
(30)有機溶媒が、ジクロロメタンである(16)に記載の製造方法。
(31)(1)〜(15)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを使用することを特徴とする偏光板保護膜。
(32)(1)〜(15)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを使用することを特徴とする液晶表示装置。
(33)(1)〜(15)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを支持体として使用することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0020】
【発明の実施の形態】
【0021】
一般式(1)の化合物について説明する。
一般式(1)において、R11−13はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−13は互いに連結して環を形成してもよい。
R11−13について詳しく説明する。R11−13は好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基である。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。例として、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどが挙げられる。
R11−13で表される脂肪族基は置換されていてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
これらの基はさらに組み合わされて複合置換基を形成してもよく、このような置換基の例としては、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、エトキシカルボニルエチル基などを挙げることができる。また、R11−13は置換基としてリン酸エステル基を含有することもでき、一般式(1)の化合物は同一分子中に複数のリン酸エステル基を有することも可能である。
【0022】
一般式(2)および(3)の化合物について説明する。
一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良く、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。Zを含んで構成される5または6員環の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピロリジン、ピペリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、テトラヒドロ−2−フラノン、テトラヒドロ−2−ピロン、4−ブタンラクタム、6−ヘキサノラクタムなどを挙げることができる。
また、Zを含んで構成される5または6員環は、ラクトン構造またはラクタム構造、すなわち、Zの隣接炭素にオキソ基を有する環状エステルまたは環状アミド構造を含む。このような環状エステルまたは環状アミド構造の例としては、2−ピロリドン、2−ピペリドン、5−ペンタノリド、6−ヘキサノリドを挙げることができる。
【0023】
R25は水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であるアルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)を表す。R25で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどを挙げることができる。R25で表されるアルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0024】
Y21−22はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが例示できる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが例示できる。アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが例示できる。カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが例示できる。Y21−22は互いに連結して環を形成してもよい。Y21−22はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0025】
一般式(4)〜(12)の化合物について説明する。
一般式(4)〜(12)において、Y31−70はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルバモイル基またはヒドロキシ基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニルなど、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが挙げられる。アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが挙げられる。カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが挙げられる。Y31−70はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0026】
V31−43はそれぞれ独立に水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基を表す。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどを挙げることができる。V31−43はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0027】
L31−77はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31−77の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。L31−77の好ましい例としては、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、メチルエチレン、エチルエチレンなど)、環式の2価の基(例えば、cis−1,4−シクロヘキシレン、trans−1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロペンチリデンなど)、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、スルホン、スルホキシド、スルフィド、スルホンアミド、ウレイレン、チオウレイレンなどを挙げることができる。これらの2価の基は互いに結合して二価の複合基を形成してもよく、複合置換基の例としては、−(CH2)2O(CH2)2−、−(CH2)2O(CH2)2O(CH2)−、−(CH2)2S(CH2)2−、−(CH2)2O2C(CH2)2−などを挙げることができる。L31−77は、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0028】
一般式(4)〜(12)においてY31−70、V31−43およびL31−77の組み合わせにより形成される化合物の好ましい例としては、クエン酸エステル(例えば、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、O−アセチルクエン酸トリ(エチルオキシカルボニルメチレン)エステルなど)、オレイン酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸フェニル、オレイン酸シクロヘキシル、オレイン酸オクチルなど)、リシノール酸エステル(例えばリシノール酸メチルアセチルなど)、セバシン酸エステル(例えばセバシン酸ジブチルなど)、グリセリンのカルボン酸エステル(例えば、トリアセチン、トリブチリンなど)、グリコール酸エステル(例えば、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなど)、ペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラブチレートなど)、ジペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサブチレート、ジペンタエリスリトールテトラアセテートなど)、トリメチロールプロパンのカルボン酸エステル類(トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパンジアセテートモノプロピオネート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、トリメチロールプロパントリブチレート、トリメチロールプロパントリピバロエート、トリメチロールプロパントリ(t−ブチルアセテート)、トリメチロールプロパンジ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンテトラ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンジアセテートモノオクタネート、トリメチロールプロパントリオクタネート、トリメチロールプロパントリ(シクロヘキサンカルボキシレート)など)、特開平11−246704公報に記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報に記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報に記載のクエン酸エステル類、ピロリドンカルボン酸エステル類(2−ピロリドン−5−カルボン酸メチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸エチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸ブチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸2−エチルヘキシル)、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルなど)、キシリトールカルボン酸エステル(キシリトールペンタアセテート、キシリトールテトラアセテート、キシリトールペンタプロピオネートなど)などが挙げられる。
【0029】
本発明の範囲内であるものは、一般式(1)〜(12)で表される化合物のうち、オクタノール・水分配係数(logP値)が1ないし10である化合物である。logP値が10を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が1よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値としてさらに好ましい範囲は2ないし8であり、特に好ましい範囲は2ないし7である。
オクタノール・水分配係数(logP値)の測定は、JIS 日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール・水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.− Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
【0030】
本発明の化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80−99%である。本発明の化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
【0031】
一般式(1)〜(12)で表される化合物は、芳香族基を含有しないことが好ましい。一般式(1)〜(12)で表される化合物は、分子量が50以上3000以下であることが好ましく、70以上2000以下であることが好ましく、100以上1000以下であることが特に好ましい
一般式(1)〜(12)で表される化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また、一般式(1)〜(12)で表される化合物は、好ましくは、1気圧での沸点が200℃以上であり、更に好ましくは沸点が250℃以上である。
一般式(1)〜(12)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
【0032】
一般式(1)ないし(12)で表される化合物は、一般のリン酸トリエステルまたはカルボン酸エステルの合成法により、当業者であれば容易に合成できる。
【0033】
一般式(1)ないし(12)で表される化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30重量%であることが好ましく、1ないし20重量%であることが好ましく、5ないし18重量%であることが特に好ましい。
一般式(1)ないし(12)で表される化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0034】
以下に本発明の一般式(1)ないし(12)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(1)については化7〜10に化合物を例示し、一般式(2)〜(12)については化11〜15に化合物を例示した。表記載あるいは括弧内に記載のlogPの値は、Crippen’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めたものである。
【0035】
【化7】
(式中、R1−3は前記一般式(1)のR11−13と同義である。)
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
本発明のセルロースアシレートについて説明する。
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基の水素原子がアシル基で置換されているセルロース誘導体(セルロースエステル)である。アシル基としては、アセチル基(SA)が一般的であるが、炭素原子数が3以上(好ましくは3ないし22)のアシル基(SB)の場合もある。SA+SBの置換度の総和は、一般に2.60〜3.00であり、SBの置換度は0.00ないし0.80である。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。水酸基のSAとSBの置換度の総和は、2.70〜2.96であることが好ましく、2.80〜2.95であることがさらに好ましい。また、SBの置換度は0.00〜0.80であることが好ましく、0.00ないし0.60であることがさらに好ましい。
【0046】
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が、下記式(I)〜(III)の全てを満足することが特に好ましい。
(I)2.6≦SA+SB≦3.0
(II)2.0≦SA≦3.0
(III)0≦SB≦0.8
[式中、SAおよびSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基であり、SAはアセチル基の置換度、SBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である]。
【0047】
炭素原子数3〜22のアシル基の置換度(SB)は、その28%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、30%以上が6位水酸基の置換基であることがより好ましく、31%以上が6位水酸基の置換基であることがさらに好ましくがさらに好ましく、32%以上が6位水酸基の置換基であることが最も好ましい。セルロースアシレートの6位のSAとSBとの置換度の総和は、0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがさらに好ましく、0.90以上であることが最も好ましい。
【0048】
炭素原子数が3〜22のアシル基(SB)は、−CO−Rで定義され、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。Rは、脂肪族基または芳香族基であることが好ましい。脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基である。芳香族基は、アリール基または置換アリール基である。炭素原子数が3〜22のアシル基の例には、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブチリル、t‐ブチリル、シクロヘキサノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフトイルおよびシンナモイルが含まれる。プロピオニル、ブチリル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブチリル、オレオイル、ベンゾイル、ナフトイルおよびシンナモイルが好ましい。
【0049】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
【0050】
セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、ポリマー成分の90重量%以上(好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上)を意味する。フィルムの製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90重量%以上は、0.5ないし5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50重量%以上が1ないし4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
【0051】
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で200〜700であることが好ましく、250〜550であることがより好ましく、250〜400であることがさらに好ましく、250〜350であることが最も好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。粘度平均重合度については、特開平9−95538号公報にも記載されている。粘度平均重合度は、オストワルド粘度計にて測定したセルロースアセテートの固有粘度[η]から、下記の式により求める。
(1) DP=[η]/Km
式中、[η]は、セルロースアセテートの固有粘度であり、Kmは、定数6×10−4である。
粘度平均重合度(DP)が290以上である場合、粘度平均重合度と落球式粘度法による濃厚溶液粘度(η)とが下記式(2)の関係を満足することが好ましい。
(2)2.814×ln(DP)−11.753≦ln(η)≦6.29×ln(DP)−31.469
式中、DPは290以上の粘度平均重合度の値であり、ηは落球式粘度法における標線間の通過時間(秒)である。上記式(2)は、粘度平均重合度と濃厚溶液粘度をプロットし、その結果から算出したものである。
【0052】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。有機溶媒の例としては、ケトン類(例、アセトン)、酢酸エステル類(例、メチルアセテート)およびセロソルブ類(例、メチルセロソルブ)が含まれる。本発明においては、ケトン類、特にアセトンを用いることが好ましい。低分子成分の除去の効率を高めるために、洗浄前にセルロースアシレートの粒子を粉砕あるいは篩にかけることで、粒子サイズを調節することが好ましい。なお、低分子成分の少ないセルロースシレテートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して5ないし25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
セルロースアシレートをフィルムの製造に使用する際には、セルロースアシレートの含水率は2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましく、0.7重量%以下であることが最も好ましい。一般の(例えば、市販の)セルロースアシレートは、2.5ないし5重量%の含水率を有する。従って、一般的なセルロースアシレートをする場合は、乾燥により含水率を2重量%以下に低下させることが好ましい。乾燥は、様々な公知手段で実施できる。
【0053】
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤、オイルゲル化剤)を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0054】
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号および特開2000−193821号の各公報に記載がある。これらの添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1重量%であることが好ましく、0.01〜0.08重量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01重量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1重量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。劣化防止剤は、沸点が200以上で25℃で液体であるか、または融点が25〜250℃である固体であることが好ましい。更に好ましくは沸点が250℃以上の25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である劣化防止剤が挙げられる。劣化防止剤が液体の場合は、その精製は通常減圧蒸留によって実施されるが高真空ほど好ましく、例えば100Pa以下が好ましい。また分子蒸留装置などを用いて精製することも特に好ましい。また可塑剤が固体の場合は、溶媒を用いて再結晶させてろ過、洗浄し乾燥することで実施されることが一般的である。劣化防止剤としては、例えば特開平5−194789号公報に記載のpKaが4以上の塩基性化合物などを好ましい例として挙げることができる。例えば、1級、2級、3級のアミンや芳香族系の塩基化合物が好ましい。具体的には、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ドデシル−ジブチルアミン、オクタデシル−ジメチルアミン、トリベンジルアミン、ジエチルアミノベンゼンなどを挙げることができるが、詳細には前記の公開公報の一般式(1)及び(2)に記載されている化合物A−1〜A−73、B−1〜B−67を利用できる。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
【0055】
セルロースアシレートフィルムに好ましく使用される紫外線吸収剤について説明する。紫外線吸収剤の具体例としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。以下にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。
【0056】
特に(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で0.01〜5重量%であることが好ましく、0.05〜3重量%であることが更に好ましい。
【0057】
また光学異方性をコントロールするためのレターデーション上昇剤が、場合により添加される。これらは、セルロースアシレートフィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。また、感材用支持体としては、ライトパイピング防止用の着色剤化合物を添加してもよい。着色剤の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmであることが好ましく、50〜500ppmであることが更に好ましい。この様に着色剤を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0058】
また、セルロースアシレート溶液には、必要に応じて更に種々の添加剤を溶液の調製前から調製後のいずれの段階で添加してもよい。添加剤の例としては、無機微粒子、アルカリ土類金属塩などの熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤などが挙げられる。この時、使用される無機微粒子はキシミ防止剤としての役割や帯電防止などである。その場合、金属や金属化合物の硬さは特に限定されないが、モース硬度が好ましくは1〜10であり、より好ましくは2〜10である。又、有機微粒子も好ましく用いられ、例えば架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋トリアジン樹脂などを挙げることができる。特に本発明においては、セルロースアシレートフィルムがハンドリングされる際に、傷が付いたり搬送性が悪化することを防止するために、微粒子を添加することが一般に行われる。これらのマット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0059】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは、0.001〜20μmであり、より好ましくは0.001〜10μmであり更に好ましくは、0.002〜1μmであり、特に好ましくは、0.005〜0.5μmである。微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡で粒子を平均粒径で求められる。微粒子の、見掛け比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
【0060】
次に本発明においては溶液中にオイルゲル化剤を添加してもよく、流延特性やフィルムの面状改良に有用である。オイルゲル化剤としては、セルロースアシレート溶液に添加することで溶液をゲル化させるものであれば、素材は限定されない。ここで本発明において、ゲル化とは、セルロースアシレートの有機溶媒からなる溶液が、オイルゲル化剤を添加することで、オイルゲル化剤同士あるいはセルロースアシレートとの相互作用さらには有機溶媒などとの相互作用のために、溶液が流動しないあるいは固化した状態を言う。すなわち、本発明のオイルゲル化剤はセルロースアシレートの有機溶媒中で、水素結合や静電相互作用、配位結合、ファンデルワールス力、π−π電子相互作用などの共有結合ではない二次的な相互作用を駆動力として自己会合しゲル構造を形成するものを使用することができる。これらのオイルゲル化剤としては、公知文献(例えば、J.Chem.Soc.Japan,Ind.Chem.Soc.,46,779(1943)、J.Am.Chem.Soc.,111,5542(1989)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1993,390、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,35,1949(1996)、Chem.Lett.,1996,885、J.Chem.Soc.,Chem.Commun. ,1997,545)に記載されている。また、高分子論文集(VOL.55,No.10,585−589(Oct.,1998))、表面(VOL.36,No.6,291−303(1998))、繊維と工業(VOL.56,No.11,329−332(2000))、特開平7−247473号、特開平7−247474号、特開平7−247475号、特開平7−300578号、特開平10−265761号、特開平7−208446号、特開2000−3003号、特開平5−230435号、および特開平5−320617号の各公報等に記載されている素材を適用できる。
【0061】
好ましいオイルゲル化剤は、1,2,3,4−ジベンジリデン−D−ソルビトール、12−ヒドロキシステアリン酸、アミノ酸誘導体(N−ラウロイル−L−グルタミン酸−αなど)、環状ジペプチド(2,5−ジケトピペラジン誘導体)、γ−ビス−n−ブチルアミンド、スピンラベル化ステロイド、コレステロール誘導体、フェノール環状オリゴマー、2,3−ビス−n−ヘキサデシロキシアントラセン、ブチロラクトン誘導体、尿素誘導体、ビタミンH誘導体、グルコンアミド誘導体、コール酸誘導体、バルビツール酸誘導体とトリアミノピリミジン誘導体混合物、シクロヘキサンジアミン誘導体、シクロヘキサントリカルボン酸誘導体から選ばれるものであり、単独でも複数の混合物でもよい。さらに、オイルゲル化剤が、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、アスパラギン酸エステル、グルタミン酸、グルタミン酸エステルおよびフェニルアラニンからなる群より選ばれ作製された環状ジペプチドであることも好ましい。またオイルゲル化剤が、α−アミノラクタム誘導体であることも好ましい。オイルゲル化剤の含有量はセルロースアシレート溶液中で0.01〜5重量%であり、好ましくは0.02〜4重量%であり、さらには0.02〜3重量%が好ましい。
【0062】
次に、セルロースアシレートの溶液を作製するに際して用いられる有機溶媒について記述する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、有機溶媒は特に限定されない。これらは、塩素系有機溶媒でもよく非塩素系有機溶媒でも問題ない。例えば、塩素系有機溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルムなどを挙げることができ、特にジクロロメタンが好ましい。しかしながら、これらの塩素系有機溶媒はその環境安全性で近年懸念されており、非塩素系有機溶媒の適用が好ましく、以下に本発明で好ましく用いられるそれらの溶媒を詳細に記載する。すなわち、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。
【0063】
主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0064】
ここで本発明で用いるセルロースアシレートについてのこれらの主溶媒は、溶解度パラメーターで好ましい範囲を示すことができる。すなわち本発明で用いるセルロースアシレートは、その溶解度パラメーターは17〜22で示される。溶解度パラメータについて記載された書籍は多数あるが、例えばJ.Brandrup,E.Hらの文献(Polymer Handbook(fourth edition), VII/671〜VII/714)に詳細に記載されている。それらの仲でも、本発明のセルロースアシレートに有効的に使用できる有機溶媒は、19〜21MPa1/2 の溶解度パラメーターを有することが好ましい。溶解度パラメーターが19〜21MPa1/2 である有機溶媒の例としては、メチルエチルケトン(19)、シクロヘキサノン(20.3)、シクロペンタノン(20.9)、酢酸メチル(19.6)、2−ブトキシエタノール(19.4)、塩化メチレン(20.3)、ジオキサン(19.6)、1,3−ジオキソラン(19.8)、アセトン(20.3)、ギ酸エチル(19.2)、アセト酢酸メチル(約20)およびテトラヒドロフラン(19.4)などを挙げることができる。この中でも酢酸メチル、アセトン、アセト酢酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、塩化メチレンなどが最も好ましい。これらについては、特開平9−95538号公報に記載されている。更に又特開昭61−124470号公報に記載のN−メチルピロリドン、特開平11−60807号公報に記載のフルオロアルコール、特開平112−63534号公報に記載の1,3−ジメチル2−イミダゾリジノンなども利用される。
【0065】
以上のセルロースアシレートに用いられる溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、セルロースアシレートの好ましい溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれ、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールである。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、ギ酸メチル、ギ酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合液であってもよい。
【0066】
第3の溶媒であるアルコールの好ましくは、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
【0067】
以上の3種類の混合溶媒は、第1の溶媒が20〜90重量%、第2の溶媒が5〜60重量%さらに第3の溶媒が5〜30重量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜86重量%であり、第2の溶媒が10〜50重量%、さらに第3のアルコールが7〜25重量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜80重量%であり、第2の溶媒が10〜50重量%、第3の溶媒がアルコールであり10〜20重量%含まれることが好ましい。なお、第1の溶媒が混合液で第2の溶媒を用いない場合は、第1の溶媒が20〜90重量%、第3の溶媒が5〜30重量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜86重量%であり、さらに第3の溶媒が7〜25重量%含まれることが好ましい。本発明で好ましいこれらの溶媒の組み合わせについての具体例は、以下のものを挙げることができる。
【0068】
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール(75/10/10/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/エタノール(60/15/15/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、アセトン/1,3ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、1、3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(55/20/10/5/5/5、質量部)、アセトン/塩化メチレン/メタノール(85/5/5、質量部)、酢酸メチル/塩化メチレン/メタノール/エタノール(70/10/15/5、質量部)、1、3−ジオキソラン/塩化メチレン/メタノール/ブタノール(70/15/10/5、質量部)、1、4−ジオキサン/塩化メチレン/アセトン/メタノール/ブタノール(70/5/15/5/5、質量部)、シクロヘキサノン/塩化メチレン/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(60/10/15/5/5/5、質量部)、などをあげることができ、これらの中でも特に酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール(75/15/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)、アセトン/アセト酢酸メチル/エタノール/イソプロパノール(65/15/10/5/5、質量部)が好ましい組み合わせである。
【0069】
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、および特開平11−302388号の各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。以下に、本発明で実施されるセルロースアシレートの非塩素系有機溶媒への溶解について、具体的にさらに詳細に記載する。
【0070】
室温溶解の場合は、温度0〜55℃でセルロースアシレートを溶媒や添加剤と混合し、溶解釜などの中で攪拌・混合して溶解される。溶解に関しては、セルロースアシレート粉体を溶媒で十分均一に浸すことが重要であり、所謂ママコ(溶媒が全く行き渡らないセルロースアシレートフ粉末部)を発生させないことが必須である。そのため、攪拌容器の中に溶媒を予め添加しておき、その後に、溶解容器を減圧にしてセルロースアシレートを添加することが好ましい場合もある。また、逆に攪拌容器の中にセルロースアシレートを予め添加しておき、その後に、溶解容器を減圧にして溶媒を添加することが好ましい場合もある。また、セルロースアシレートを予めアルコールなどの貧溶媒に湿らせておき、しかる後に本発明の炭素数3〜12のエーテル、ケトンあるいはエステル溶媒を添加することも、好ましい溶液の作製方法である。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。なお、攪拌に当たってはセルロースアシレートと溶媒を混合した後、そのまま静置して十分にセルロースアシレートを溶媒で膨潤させて、続いて攪拌して均一な溶媒としてもよい。
【0071】
又本発明で好ましく用いられるセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、冷却溶解法に従い実施され以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜55℃)で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレートの量は、この混合物中に5〜40重量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30重量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−100〜−30℃、さらに好ましくは−100〜−50℃、最も好ましくは−90〜−60℃)に冷却される。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や機械的に冷却したフッ素系溶媒(フロン)で実施できる。このように冷却すると、セルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。冷却速度は、特に限定されないがバッチ式での冷却の場合は、冷却に伴いセルロースアシレート溶液の粘度が上がり、冷却効率が劣るために所定の冷却温度に達するために効率よい溶解釜とすることが必要である。
【0072】
また、セルロースアシレート溶液は膨潤させたあと、所定の冷却温度にした冷却装置を短時間移送することで達成できる。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/secが理論的な上限であり、1000℃/secが技術的な上限であり、そして100℃/secが実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差について、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよく、温浴中で加温してもよい。この時、圧力を0.3〜30MPaになることが挙げられるが、特に問題ない。その場合は、極力短時間で実施することが好ましく、0.5〜60分以内が好ましく、特に0.5〜2分の短時間の加熱が推奨される。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。以上の冷却溶解方法については、特開平9−95544号、特開平10−95854号、および特開平10−95854号の各公報に詳細に記載されている。
【0073】
次にセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製で好ましく実施される高温溶解法について以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜55℃)で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加される。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレート溶液は、各種溶媒を含有する混合有機溶媒中にセルロースアシレートを添加し予め膨潤させることが好ましい。その場合、−10〜55℃でいずれかの溶媒中に、セルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加してもよいし、場合により特定の溶媒で予め膨潤させその後に他の併用溶媒を加えて混合し均一の膨潤液としてもよく、更には2種以上の溶媒で膨潤させしかる後に残りの溶媒を加えても良く、特に限定されるものではない。次に有機溶媒混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で60〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましくは100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。加熱は、例えば高圧蒸気でもよく電気熱源でもよい。高圧のためには耐圧容器あるいは耐圧ラインを必要とするが、鉄やステンレス製あるいは他の金属耐圧容器やラインのいずれでもよく、特に限定されない。更に、これらの高温高圧溶液中に二酸化炭素を封入して所謂超臨界溶液としてもよい。その場合、二酸化炭素と溶媒との比率は5/95〜70/30が好ましく、更には10/90〜60/40が好ましい。
【0074】
次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶媒の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜55℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却はセルロースアシレート溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。なお、溶解を早めるために加熱と冷却の操作を繰り返してもよい。溶解が十分であるかどうかは、目視により溶液の概観を観察するだけで判断することができる。高圧高温溶解方法においては、溶媒の蒸発を避けるために密閉容器を用いる。また、膨潤工程おいて、加圧や減圧にしたりすることで更に溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器あるいはラインが必須である。これらについては、特開平11−322946号および特開平11−322947号の各公報に詳細が記載されている。
【0075】
セルロースアシレートの量は、溶液中において5〜40重量%含まれるように調整することが好ましく、さらに10〜30重量%であることがさらに好ましい。本発明においては、セルロースアシレート溶液の濃度は前述のごとく、高濃度であることが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性に優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(特開平4−259511号公報記載)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(米国特許2541012号、同2858229号、同4414341号、同4504355号各明細書に記載)で実施できる。
【0076】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくことが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましくい。フィルタの厚さは、0.1〜10mmであることが好ましく、更には0.2〜2mmであることが好ましい。その場合、ろ過圧力は16kgf/cm2 以下、より好ましくは12kgf/cm2 以下、更には10kgf/cm2 以下、特に好ましくは2kgf/cm2 以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜55℃である。
【0077】
次に、セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造には、従来よりセルローストリアセテートフィルムの製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を用いることができる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製される際に、ドープはドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40重量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、および特開平02−208650号の各公報に記載の技術を本発明では応用できる。
【0079】
本発明では得られたセルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらの本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0080】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。
【0081】
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
【0082】
さらに詳細に本発明に有用な流延方法について記すと、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0083】
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0084】
更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするためには、製造したフィルムが延伸される。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、一軸延伸でもよく二軸延伸でもよい。延伸は1〜200%の延伸が好ましく、特には1〜100%の延伸が好ましい。本発明の出来上がり(乾燥後)のセルロースアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲にあり、更に20〜300μmの範囲にあることが好ましく、特に30〜150μmの範囲にあることが最も好ましい。フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0085】
以上のようにして得られたセルロースアシレートフィルムの幅は、0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mm、より好ましくは5m〜30mm、高さは0.5〜500μmであり、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
【0086】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことである。更にまた、大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムの表面処理に用いられるプラズマ処理について説明する。具体的には、真空グロー放電、大気圧グロー放電等によるものがあり、その他の方法としてフレームプラズマ処理等の方法があげられる。これらは、例えば特開平6−123062号、特開平11−293011号、および同11−5857号の各公報等に記載された方法を用いることができる。中でも大気圧グロー放電によるものが好ましく用いられる。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらのガスとしては、アルゴン、ネオン等の不活性ガスに、カルボキシル基や水酸基、カルボニル基等の極性官能基をプラスチックフィルムの表面に付与できる反応性ガスを加えたものが励起性気体として用いられる。反応性ガスとしては水素、酸素、窒素の他、水蒸気やアンモニア等のガスの他、低級炭化水素、ケトン等の低沸点の有機化合物等も必要に応じ用いることができるが、取り扱い上は、水素、酸素、二酸化炭素、窒素、水蒸気等のガスが好ましい。水蒸気を用いる場合は、他のガスを水に通しバブリングしたガスを用いることができる。或いは水蒸気を混合してもよい。
【0087】
次に紫外線照射法も本発明では好ましく用いられ、特公昭43−2603号、特公昭43−2604号、および特公昭45−3828号の各公報に記載の処理方法によって行われるのが好ましい。水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源はセルロースアシレートフィルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体性能上問題なければ、主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、及び低圧水銀ランプを使用することも可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほどセルロースアシレートフィルムと被接着層との接着力は向上するが、光量の増加に伴い該フィルムが着色し、また脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは300〜1500(mJ/cm2)である。
【0088】
次にセルロースアシレートフィルムの表面処理としてコロナ放電処理も好ましく用いられ、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、および特開昭52−42114号の各公報に記載の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。火炎処理について記述すると、用いるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。なぜなら、火炎処理による表面処理の効果は活性な酸素を含むプラズマによってもたらされると考えられるからであり、火炎の重要な性質であるプラズマの活性(温度)と酸素がどれだけ多くあるかがポイントである。このふたつを決めているのはガス/酸素比であり、過不足なく反応する場合にエネルギー密度が最も高くなりプラズマの活性が高くなる。具体的には、天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7である。また、火炎処理量は1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜20Kcal/m2の範囲で行うとよい。
【0089】
また、セルロースアシレートフィルムの表面処理として好ましく用いられるアルカリ鹸化処理を具体的に説明する。アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液の例としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1N〜3.0Nであることが好ましく、0.5N〜2.0Nであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温ないし90℃の範囲が好ましく、40℃ないし70℃がさらに好ましい。次に一般には水洗され、しかる後に酸性水溶液を通過させた後に、水洗して表面処理したセルロースアシレートフィルムを得る。この時、酸性水溶液に用いる酸の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、ギ酸、クロロ酢酸、シュウ酸などが挙げられる。酸性水溶液の濃度は、0.01N〜3.0Nであることが好ましく、0.05N〜2.0Nであることがさらに好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。これらの溶液は水のみでもよいが、水可溶性有機溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンなど)を混合して用いてもよい。
【0090】
フィルムと機能層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。下塗層の構成としても種々の工夫が行われており、第1層として支持体によく隣接する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。 単層法においては、セルロースアシレートフィルムを膨張させ、下塗層素材と界面混合させることによって良好な接着性を達成している場合が多い。本発明に使用する下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロースアシレート、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースアシレートとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。
【0091】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、VAおよびHANが好ましく、詳細は後述する。その際に前述の光学用途に本発明の非塩素系有機溶媒を用いて作製されたセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられる。
【0092】
まず界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜使用することで、それらの目的は達成できる。界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)いずれも使用できる。さらにフッ素系界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤や、帯電防止剤として好ましく用いられる。使用される層としてはセルロースアシレート溶液中でもよいし、その他の機能層のいずれでもよい。光学用途で利用される場合は、機能層の例としては下塗り層、中間層、配向制御層、屈折率制御層、保護層、防汚層、粘着層、バック下塗り層、バック層などが挙げられる。その使用量は、目的を達成するために必要な量であれば特に限定されないが、一般には添加する層の質量に対して、0.0001〜5重量%であることが好ましく、更には0.0005〜2重量%であることが好ましい。その場合の塗設量は、1m2当り0.02〜1000mgであることが好ましく、0.05〜200mgであることさらにが好ましい。好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤が挙げられ、具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
【0093】
アニオン系界面活性剤の例としては、カルボン酸塩、硫酸塩、スルフォン酸塩、リン酸エステル塩が挙げられ、代表的な例としては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩、α−スルフォン化脂肪酸塩、N−メチルーNオレイルタウリン、石油スルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。カチオン系界面活性剤の例としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジュム塩などを挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。両性系界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン、スルフォベタインなどが挙げられ、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタインなどである。これらの界面活性剤は、界面活性剤の応用(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記載されている。本発明においては、好ましい界面活性剤はその使用量において特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。以下に界面活性剤の具体例を記すが、これらに限定されるものではない(ここで、‐C6H4‐はフェニレン基を表わす)。
【0094】
また、セルロースアシレートフィルムの上のいずれかの層に滑り剤を含有させてもよく、その場合は特に最外層が好ましい。用いられる滑り剤としては、例えば、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4、275、146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第927、446号明細書或いは特開昭55−126238号及び特開昭58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールのエステル)、そして、米国特許第3、933、516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩、また、特開昭58−50534号公報に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールのエステル、国際公開90108115.8に開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪酸−高級アルコールエステル等が知られている。このうちポリオルガノシロキサンとしては、一般的に知られている、ポリジメチルシロキサンポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサンのほかに、特公昭53−292号、特公昭55−49294号、および特開昭60−140341号の各公報等に示されるような、C5 以上のアルキル基を持つオルガノポリシロキサン、側鎖にポリオキシアルキレン基を有するアルキルポリシロキサン、側鎖にアルコキシ、ヒドロキシ、水素、カルボキシル、アミノ、メルカプト基を有するようなオルガノポリシロキサン等の変性ポリシロキサンを用いることもできるし、シロキサンユニットを有するブロックコポリマーなどを挙げることができる。このような化合物の具体例を次に示すが、これらによって制限されるものではない。また、高級脂肪酸及びその誘導体、高級アルコール及びその誘導体としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸の多価アルコールエステル等、また、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのモノアルキルフォスファイト、ジアルキルフォスファイト、トリアルキルフォスファイト、モノアルキルフォスフェート、ジアルキルフォスフェート、トリアルキルフォスフェート、高級脂肪族のアルキルスルフォン酸、そのアミド化合物またはその塩等を用いることができる。このような化合物の具体例を次に示すが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0095】
このような滑り剤を用いることにより、引っかき強度にすぐれ、下塗面でのはじき等の発生のない優れたフィルムが得られる。用いる滑り剤の使用量は特に限定されないが、その含有量は0.0005〜2g/m2であること好ましく、より好ましくは0.001〜1g/m2、特に好ましくは0.002〜0.5g/m2である。滑り剤の添加層としては、特にこれに限定されるものではないが、バック面の最外層に含有させることが好ましい。上記の滑り剤を含む表面層は、これを適当な有機溶剤に溶解した塗布液を、支持体、またはバック層にその他の層を付与した支持体上に塗布し、乾燥することにより形成できる。また、滑り剤は、塗布液中に分散物の形で添加することもできる。滑り性能は静摩擦係数0.30以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.13以下が好ましい。また、接触する相手材質との静摩擦係数を小さいことが好ましく、傷などの防止にも役立つ。その際の相手材質との静摩擦係数も0.3以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.13以下が好ましい。また、フィルムや光学フィルムの表裏の静摩擦係数も小さくするほうが好ましい場合が多々有り、その間の静摩擦係数0.30以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.13以下が好ましい。また、動摩擦係数も0.30以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.15以下が好ましい。また、接触する相手材質との動摩擦係数も0.3以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.15以下が好ましい。また、フィルムや光学フィルムの表裏の動摩擦係数も小さくするほうが好ましい場合が多々有り、その間の動摩擦係数0.30以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.13以下が好ましい。
【0096】
本発明のセルロースアシレートフィルムの機能層において、フィルムの易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のためにマット剤を使用することが好ましい。その場合、表面の突起物の平均高さが0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。又、その突起物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。好ましい突起物は突起物の平均高さを有する範囲であれば、例えば球形、不定形マット剤で突起物を形成する場合はその含有量が0.5〜600mg/m2であり、より好ましいのは1〜400mg/m2である。この時、使用されるマット剤としては、既述のセルロースアシレートフィルム中に添加される微粒子も利用でき、その組成において特に限定されず、無機物でも有機物でもよく2種類以上の混合物でもよい。マット剤の無機化合物、有機化合物は、例えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによっても得られる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。
【0097】
本発明の光学フィルム、或いは偏光板保護フィルムとして使用して偏光板には帯電防止加工、透明ハードコート加工、防眩加工、反射防止加工、易接着加工等を施すことができる。或いは配向膜を形成して液晶層を設け、光学補償機能を付与することもできる。これらの詳細は特開2000−352620号公報に記載の技術を応用でき、以下に記載する。帯電防止加工とは、樹脂フィルムの取扱の際に、この樹脂フィルムが帯電するのを防ぐ機能を付与するものであり、具体的には、イオン導電性物質や導電性微粒子を含有する層を設けることによって行う。ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例としてはイオン性高分子化合物を挙げることができる。これらのうち、好ましいのは導電性物質が微粒子状をしており、上記樹脂中にこれらを微分散して添加したものであって、これらに用いられる好ましい導電性物質として、金属酸化物やこれらの複合酸化物からなる導電性微粒子及び特開平9−203810号公報に記載されているようなアイオネン導電性ポリマー或いは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマー粒子などを含有することが望ましい。好ましい粒径としては5nm〜10μmの範囲であり、更に好ましい範囲は用いられる微粒子の種類に依存する。
【0098】
導電性微粒子である金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2 、V2O5等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。更にまた、有機電子導電性有機化合物も利用できる。例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフォスファゼンなどである。これらは、酸供与材としてポリスチレンスルフォン酸、過塩素酸などとのコンプレックスで好ましく用いられる。
【0099】
本発明の光学フィルムには、透明ハードコート層を設けることができる。透明ハードコート層としては活性線硬化性樹脂或いは熱硬化樹脂が好ましく用いられる。活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主成分とする層をいう。活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができ、例えば特開昭59−151110号公報に記載されている。
【0100】
本発明の光学フィルムには、反射防止層を設けることもできる。反射防止層の構成としては、単層、多層等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層、低屈折率層を交互に積層した構造のものが一般的である。構成の例としては、透明基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層の順から構成されたものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材或いはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい構成である。基材面に(中屈折層を設ける場合もある)高屈折率層、空気に向かって低屈折率層を順に積層し、高屈折率層及び低屈折率層の光学膜厚を光の波長に対してある値に設定することにより光学干渉層を作り、反射防止積層体としたものが反射防止層としては特に好ましく、屈折率と膜厚は分光反射率の測定より算出できる。本発明の光学フィルムには、カール防止加工を施すこともできる。カール防止加工とは、これを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与するものであるが、この加工を施すことによって、透明樹脂フィルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止する働きをするものである。カール防止層は基材の防眩層又は反射防止層を有する側と反対側に設ける態様或いは、例えば透明樹脂フィルムの片面に易接着層を塗設する場合もあり、又逆面にカール防止加工を塗設するような態様が挙げられる。
【0101】
以上の方法により作製されたセルロースアシレートフィルムの物理特性について、さらに詳細に記載する。本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとした場合、保護フィルムの厚さは5〜500μmの範囲にあることが好ましい。保護フィルムの厚さは、20〜300μmの範囲にあることがさらに好ましく、30〜150μmの範囲にあることが最も好ましい。本発明において、上記のようにして製膜されたセルロースアシレートフィルムの面内方向におけるレターデーションReは、特に500nm未満であることが好ましく、300nm未満であることがより好ましく、200nm未満であることが更に好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。場合より10nm以下であることが特に好ましく5nmであることが更に好ましい。また、本発明のセルロースアシレートフィルムのRthは100μm当たり、0nm〜600nmであり、さらには0nm〜400nmで用いられる。特に0nm〜250nmで用いることが好ましい。本発明の光学フィルムの製膜方向(長手方向に相当する)と、フィルムの遅相軸とのなす角度θ(ここではθ1)が0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。ただし、θ1は製膜方向と遅相軸とがなす狭い角度であり、+90°〜−90°の範囲である。特に偏光板保護フィルムとして用いる場合に、得られる偏光板の偏光度向上に寄与する。ここで遅相軸とはフィルム面内の屈折率が最も高くなる方向である。
【0102】
本発明において、上記のようにして製膜されたセルロースアシレートフィルムを105℃、5時間という条件下での縦及び横の寸法収縮率が±0.1%以下であることが好ましい。又セルロースアシレートフィルムの80μm換算でのヘイズが0.6%以下であることが好ましく、特にそのヘイズ値が0.5%以下のものが好ましく、更に好ましくは0.1%以下である。尚、ヘイズ値の下限は特に限定されるものでは無い。又、本発明の光学フィルムの引き裂き強度は10g以上であることが好ましく12g以上であることがより好ましく、15g以上であることが更に好ましく、18g以上であることが更に好ましく、20g以上であることが更に好ましく、22g以上であることが更に好ましい。又セルロースアシレートフィルムの引っ張り強度が50N/mm2以上であることが好ましく、又弾性率が3kN/mm2以上であることが好ましい。又セルロースアシレートフィルムの動摩擦係数が0.40以下であることが好ましく、更に好ましくは0.35以下である。本発明の光学フィルムは寸度安定性に優れ、80℃、90%RHで12時間放置した場合における寸法収縮率が±0.5%未満であり、更に好ましくは0.3%未満であり、更に好ましくは0.1%未満であり、更に好ましくは0.08%未満であり、更に好ましくは0.06%未満であり、更に好ましくは0.04%未満である。
【0103】
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途についてまず簡単に概説し、詳細は後述する。本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号および特開平6−118232号の各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0104】
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
【0105】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。セルロースアシレートフィルムを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償シートの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。光学補償シートは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムそのものを、光学補償シートとして用いることができる。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層や2軸延伸セルロースアシレートフィルムとして機能を付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角を改良するため、本発明のセルロースアシレートフィルムと、それとは(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフィルムを重ねて光学補償シートとして用いてもよい。光学補償シートの厚さの範囲は、前述した本発明のフィルムの好ましい厚さと同じである。
【0106】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid AlignedNematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0107】
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、および特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997) p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0108】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0ないし150nmとし、Rthレターデーション値を70ないし400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20ないし70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70ないし250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150ないし400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0109】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号明細書に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
以下に本発明のセルロースアシレートフィルムについての具体的な実施態様を記述するが、これらに限定されるものではない。
【0110】
【実施例】
各実施例において、セルロースアシレート、溶液およびフィルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および算出した。
【0111】
(1)フィルムの面内レターデーション値(Re)
特開2001−247717公報の12カラム4行目から20行目に記載の方法により、測定した。
(2)フィルムの厚み方向レターデーション値(Rth)
特開2001−247717公報の12カラム21行目から37行目に記載の方法により、測定した。
(3)溶液の安定性
セルロースアシレートの溶液を23℃で静置して状態の変化を観察し、以下のように評価した。
A:10日間経過しても、透明性と均質性を保持している。
B:溶液調整直後には、透明性と均質性を呈するが、1日経過すると相分離を生じる。
C:溶液調整直後から不均一なスラリーとなり、透明性と均質性を有する溶液にならない。
(4)溶液のゲル化特性の有無の測定
特開2001−247717公報の13カラム21行目から32行目に記載の方法により測定し、ゲル化の有無を判定した。
【0112】
(5)フィルムの透明性
試料フィルムを目視で観察し、白化の有無を観察した。
(6)フィルムの剥ぎ取り性
特開2001−247717公報の13カラム33行目から14カラム7行目に記載の方法により測定し、以下のように評価した。
A:20秒以内で剥ぎ取りができる。
B:20秒以内では剥ぎ取りができず、剥ぎ残りが生じる。
【0113】
(7)フィルムのアルカリ加水分解特性
試料100mm×100mmを、自動アルカリケン化処理装置(新東科学(株)製)にて、60℃、2N水酸化ナトリウム水溶液にて3分間ケン化し、4分間水洗した。次いで試料を、30℃、0.01N希硝酸にて4分間中和し、4分間水洗した。そして試料を、100℃で3分間、自然乾燥1時間し、目視で下記の評価を実施した。
A:白化は全く認められない。
B:白化がわずかに認められる。
C:白化がかなり認められる。
D:白化が著しく認められる。
【0114】
(8)化合物の表面と中心部の存在量比
Perkin−Elmer社製Spectrum Spotlight300/Spectrum One FT−IRを使用し、イメージングIR法により断面観察を行ない、表面と中心部について本発明の化合物の吸収強度とセルロースアシレートの吸収強度の比から存在量比を求めた。
【0115】
[実施例1]
(1−1)セルロースアシレート溶液の作製
攪拌羽根を有する5リットルのガラス容器に、下記の溶媒混合溶液によく攪拌・分散しつつ、全体が2kgになるように仕込んだ。なお、溶媒である酢酸メチルとブタノール、アセトン、メタノール、エタノールは、すべてその含水率が0.2重量%以下のものを利用した。まず、セルローストリアセテートの粉末は、分散タンクに紛体を投入し窒素ガスを封入して、ディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有する攪拌機で30分間分散した。分散の開始温度は30℃であった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルローストリアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は0.2重量%以下であることを確認した。
【0116】
セルロースアシレート溶液は、セルローストリアセテート(置換度2.82、粘度平均重合度320、含水率0.4重量%、ジクロロメタン溶液中6重量%の粘度 305mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体)20質量部、酢酸メチル58質量部、アセトン5質量部、メタノール5質量部、エタノール5質量部、ブタノール5質量部、本発明の化合物または比較用化合物(表1に記載のとおり)1.2質量部、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(紫外線吸収剤a)0.2質量部、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤b)0.2質量部、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤c)0.2質量部、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、モース硬度約7)0.05質量部からなる組成を有する。なお、主溶媒である酢酸メチルは、溶解性パラメーターは19.6であり、併用されるアセトンは溶解性パラメーターは20.3である。
セルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Caが0.05重量%、Mgは0.007重量%であり、さらにFeは5ppmであった。また6位アセチル基は0.95であり全アセチル中の32.2%であった。また、アセトン抽出分は11重量%、重量平均分子量と数平均分子量の比は0.5であり、分布の均一なものであった。またヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tgは160℃、結晶化発熱量は6.2J/gであった。
【0117】
(1−2)セルローストリアセテートフィルム溶液
得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポンプで送液して、−70℃で3分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液はステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌した後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0118】
(1−3)セルローストリアセテートフィルムの作製
ろ過済みの50℃のセルローストリアセテート溶液を、流延ギーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体温度は5℃であり、流延スピードは3m/分でその塗布幅は30cmとした。室温で1分放置し、その後に乾燥のために55℃の乾燥風を送風した。5分後に鏡面ステンレス支持体から剥ぎ取り、しかる後に110℃、10分、更に150℃で30分乾燥(フィルム温度は約140℃)して、セルローストリアセテートフィルム(膜厚80μm)を得た。
【0119】
(1−4)結果
表1に、本発明の化合物および比較用化合物を用いた場合に得られる評価結果を記載する。比較用化合物を用いた比較用試料101はRthは小さいが親水的な化合物であり、また、昇華により表面の疎水性が低下するために加水分解による劣化が大きい。一方、疎水性の化合物を添加した試料102および104では、相分離が起きて透明な膜が得られなかった。また、芳香族基を有する試料103および105は、Rthが比較的大きいことがわかる。これに対し、本発明の化合物を用いた試料106−120は、Rthが低く、膜の白化も観察されないほか、加水分解耐性、溶液安定性、透明性、剥取り性の点においても好ましい特性を有している。
【0120】
【化17】
【0121】
【表1】
【0122】
[実施例2]
実施例1の試料105−120について、セルローストリアセテートフィルム溶液を下記に変更する以外は実施例1と全く同様にして試料205−220を得た。得られた試料205−220は、実施例1と同様にRthが低く、膜の白化も観察されなかった。このことから、本発明においては高温高圧溶解においても優れたセルロースアセテート溶液とセルロースアセテートフィルムが作製できることが確証された。
【0123】
セルローストリアセテートフィルム溶液得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポンプで送液して、130℃、15Mpaに加温加圧した加熱部分を3分間通過させた後、110℃、1Mpaに加温加圧して、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0124】
[実施例3]
実施例1の試料105−120について、特開平11−316378号公報の実施例1に記載の方法により、試料305−320を作製して評価した。本発明のセルロースアシレートフィルムにより得られた楕円偏光板の光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学偏光板に適応されても問題ない好ましい態様であることが明らかである。
【0125】
[実施例4]
実施例1の試料105−120について、特開平7−333433号公報の実施例1に記載の方法により光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0126】
[実施例5]
実施例1の試料105−120について、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261の号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置の評価したところ、いずれの場合において良好な性能が得られた。
【0127】
[実施例6]
実施例1の試料105−120について、そのフィルム厚さを120μmとする以外は、実施例1と全く同様にして試料605−620を作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号公報の実施例1に記載の第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号公報の実施例1に記載の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフィルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【0128】
【発明の効果】
本発明に従うと、常温溶解法、冷却溶解法あるいは高温高圧溶解法に従い有機溶媒(好ましくは非塩素系有機溶媒)を用いてセルロースアシレート溶液から作成したフィルムの光学的異方性を小さくするための添加剤を提供し、また、光学的異方性の小さいセルロースアシレートフィルムの製造方法を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料または液晶画像表示装置に有用なセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置に使用されるセルロースアシレートを製造する際に使用されるセルロースアシレート溶液の有機溶媒は、ジクロロメタンのような塩素含有炭化水素が使用されている。ジクロロメタン(沸点40℃)は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として用いられ、製造工程の製膜及び乾燥工程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。逆にジクロロメタンは沸点が低く揮発し易いため、密閉設備でも取り扱い工程で若干漏れ易く回収にも限界があり、完全に大気中への散逸を防ぎきれないという問題があり、その環境安全性の点で改善が望まれている。そこで、この解決のためにジクロロメタンを用いて、さらに高濃度のセルロースアシレート溶液を作製し溶媒の使用量を減らすことを検討したが、その流延時の金属支持体から剥離が不十分でありその改良が望まれていた。さらに、ジクロロメタン以外のセルロースアシレートの溶媒の探索がなされて来た。セルロースアシレート特にセルローストリエステルに対する溶解性を示す有機溶媒として知られているものにはアセトン(沸点56℃)、酢酸メチル(沸点56℃)、テトラヒドロフラン(沸点65℃)、1,3−ジオキソラン(沸点75℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)などがある。しかしながら、これらの有機溶媒は従来の溶解方法では実際に実用できるに十分な溶解性は得られていない。
【0003】
この解決として、セルローストリアセテート(酢化度60.1%から61.3%)をアセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することによって、0.5から5重量%の希薄溶液が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。このような低温でセルロースアシレートを溶解する方法を冷却溶解法という。また、冷却溶解法を用いての紡糸技術についても知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
また、上記技術を背景に、非塩素系有機溶媒を用いて冷却溶解法によってセルロースアシレートを溶解することが開示されている(例えば、特許文献1,2および3参照)。
その際に用いられる非塩素系有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類あるいはエステルから選ばれる有機溶媒であり、冷却溶解法によりセルロースアシレートを溶解してフィルムを作製している。これらの具体的な有機溶媒としてはアセトン、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキサノン、エチルホルメート、及びメチルアセテートなどが好ましいとしている。
【0005】
セルロースアシレートフィルムは、一般にソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製造される。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成するものである。メルトキャスト法では、セルロースアシレートを加熱により溶融したものを支持体上に流延し、冷却してフィルムを形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法よりも平面性の高い良好なフィルムを製造することができる。このため、実用的にはソルベントキャスト法の方が普通に採用されている。
【0006】
セルロースアシレートフィルムには、可塑剤と呼ばれる化合物がしばしば添加される。セルロースアシレートフィルムに使用される可塑剤の種類としては、リン酸トリフェニル、リン酸ビフェニルジフェニルのようなリン酸トリエステル、フタル酸エステル類などが開示されている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、実際には可塑剤がセルロースアシレートフィルムと相溶せずに、フィルムが白濁したり、フィルムの光学的異方性を大きくするなどの問題があり、その選択は容易ではない。
【0007】
前述したセルロースアシレート溶液からソルベントキャスト法で作成したフィルムは光学的異方性(例えば厚み方向のレターデーション値)の制御が困難であるという問題がある。セルロースアシレートフィルムを光学材料に用いる場合、使用用途によってはフィルムの光学的異方性を小さくすることが好ましい。上述の可塑剤と呼ばれる化合物の中には、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果を有するものが知られており、例えば、特定の脂肪酸エステル類が開示されている(例えば、特許文献4,5,6および7参照)。しかし、化合物の光学的異方性への効果を分子構造からあらかじめ予測する指針が従来は知られていなかったため、比較的多量のセルロースアシレートを用いてフィルムを作成する煩雑な試験を化合物ごとに実施することが必要であり、化合物を選択していく上で障害となっていた。
【0008】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に際しては、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する際に、膜表面の近傍に存在している可塑剤などの添加剤の昇華あるいは蒸発を抑制することが好ましいことが開示されている(特許文献8)。同公報にはリン酸トリアリール化合物ならびにフタル酸ジエステルが可塑剤として記載されている。しかしながら、同公報の化合物例ならびに実施例に記載された化合物は、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果は十分とはいえない。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−95538号公報
【特許文献2】
特開平9−95544号公報
【特許文献3】
特開平9−95557号公報
【特許文献4】
特開2001−247717号公報
【特許文献5】
特開2000−336179号公報
【特許文献6】
特開2000−63560号公報
【特許文献7】
特開平11−246704号公報
【特許文献8】
特開2000−336179号公報
【非特許文献1】
J.M.G.Cowieら、( Makromol.chem.143巻、105頁(1971))
【非特許文献2】
「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」、上出健二等、繊維機械学会誌、34巻、57−61頁(1981)
【非特許文献3】
プラスチック材料講座、第17巻、日刊工業新聞社、「繊維素系樹脂」、121頁(昭和45年)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、常温溶解法、冷却溶解法あるいは高温高圧溶解法に従い有機溶媒(好ましくは非塩素系有機溶媒)を用いてセルロースアシレート溶液から作成したフィルムの光学的異方性を小さくするための添加剤を提供することである。また、本発明の課題は、光学的異方性の小さいセルロースアシレートフィルムの製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構造を有し、かつ、該化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が特定の範囲である化合物を少なくとも一種含有する、以下のセルロースアシレートフィルムにより、本発明の課題が達成されることを見出した。
【0012】
(1) 一般式(1)〜(12)で表され、かつ、該化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が1ないし10である化合物を少なくとも1種と、セルロースアシレートとを含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【化4】
(式中、R11−13(本出願において、「R11−13」はR11、R12およびR13を意味する。以下同じ。)はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−13は互いに連結して環を形成してもよい。)
【0013】
【化5】
一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良い。Y21−22はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20のエステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表し、Y21−22は互いに連結して環を形成してもよい。mは1〜5の整数を表し、nは1〜6の整数を表す。
【0014】
【化6】
【0015】
一般式(4)〜(12)において、Y31−70はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20のエステル基、炭素数が1ないし20のアルコキシカルボニル基、炭素数が1ないし20のアミド基、炭素数が1ないし20のカルバモイル基またはヒドロキシ基を表し、V31−43はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし20の脂肪族基を表す。L31−77はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31−77の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。V31−43およびL31−77は、さらに置換基を有していてもよい。
(2)(1)に記載のセルロースアシレートフィルムにおいて少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(3)(1)の一般式(1)〜(12)で表される化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が2ないし8である化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4)(1)の一般式(1)〜(12)で表される化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が2ないし7である化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(5)(1)の一般式(1)ないし(12)で表される化合物が、芳香族環を含有しないことを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(6)(1)の一般式(1)ないし(12)で表される化合物の含有量が、セルロースアシレートの0.01ないし30重量%であることを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0016】
(7)セルロースアシレートのアシル置換度が2.60ないし3.00である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(8)セルロースアシレートのアシル置換度が2.80ないし2.95である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(9)セルロースアシレートが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足し、かつ、セルロースの6位の水酸基へのアシル置換度が0.8〜1.0であることを特徴とする(1)〜(4)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(I) 2.6≦SA+SB≦3.0
(II) 2.0≦SA≦3.0
(III) 0.0≦SB≦0.8
式中、SAおよびSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基を表し、SAはアセチル基の置換度、またSBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
(10)セルロースアシレートのアセチル基で置換されている置換度が2.00ないし3.00である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(11)セルロースアシレートの炭素原子数が3ないし22のアシル基で置換されている置換度が0.00ないし0.80である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(12)セルロースアシレートが、アセチル基と炭素原子数が3ないし22のアシル基とで置換されており、炭素原子数が3ないし22のアシル基の30%以上が6位水酸基の置換基として存在している(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0017】
(13)セルロースアシレートの6位のアシル置換度が0.80ないし1.00である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(14)セルロースアシレートの6位のアシル置換度が0.85ないし1.00である(1)〜(4)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(15)実質的に非塩素系有機溶媒である炭素原子数3〜12のエーテル類、炭素原子数3〜12のケトン類および炭素原子数2〜12のエステル類から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒と、および/または炭素原子数1〜12のアルコール類の少なくとも1種の有機溶媒を用い、−100〜200℃で溶解された溶液を用いて流延製膜されたことを特徴とする(1)〜(4)ならびに(13)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルム。
(16)セルロースアシレートを有機溶媒に溶解したセルロースアシレート溶液を塗布してセルロースアシレートフィルムを製造する方法であって、一般式(1)〜(12)で表され、かつ、該化合物のオクタノール−水分配係数が1ないし10である化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(17)有機溶媒が、実質的に非塩素系の有機溶媒からなる(16)に記載の製造方法。
(18)有機溶媒が、炭素原子数が1ないし12のアルコール、炭素原子数が2ないし12のエーテル、炭素原子数が3ないし12のケトンおよび炭素原子数が2ないし12のエステルからなる群より選ばれる(16)又は(17)に記載の製造方法。
【0018】
(19)エーテルが、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールからからなる群より選ばれる(16)〜(18)いずれか1つに記載の製造方法。
(20)ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンからなる群より選ばれる(16)〜(19)いずれか1つに記載の製造方法。
(21)エステルが、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテートおよびペンチルアセテートからなる群より選ばれる(16)〜(20)いずれか1つに記載の製造方法。
(22)有機溶媒が、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合物であって、第1の溶媒が、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソランおよびジオキサンからなる群より選ばれ、第2の溶媒が、炭素原子数が4ないし7のケトンおよびアセト酢酸エステルからなる群より選ばれ、そして、第3の溶媒が、炭素原子数が1ないし10のアルコールおよび炭化水素からなる群より選ばれる(16)〜(21)いずれか1つに記載の製造方法。
(23)有機溶媒が、第1の溶媒を20ないし90重量%、第2の溶媒を5ないし60重量%、そして、第3の溶媒を5ないし30重量%の割合で含む(16)〜(22)いずれか1つに記載の製造方法。
(24)有機溶媒が、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合物であって、第1の溶媒と第2の溶媒が、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソランおよびジオキサンからなる群より選ばれ、そして、第3の溶媒が、炭素原子数が1ないし10のアルコールおよび炭化水素からなる群より選ばれる(16)〜(23)いずれか1つに記載の製造方法。
【0019】
(25)有機溶媒が、第1の溶媒を20ないし90重量%、第2の溶媒を5ないし60重量%、そして、第3の溶媒を5ないし30重量%の割合で含まれる(16)〜(24)いずれか1つに記載の製造方法。
(26)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を10ないし40℃で膨潤する工程、そして、膨潤した混合物を0ないし57℃に加温する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアセテート溶液を用いる(16)〜(25)いずれか1つに記載の製造方法。
(27)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を−10ないし55℃で膨潤する工程、膨潤した混合物を−100〜−10℃に冷却する工程、そして、冷却した混合物を0〜57℃に加温する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアセテート溶液を用いる(16)に記載の製造方法。
(28)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を−10ないし55℃で膨潤する工程、膨潤した混合物を0.2ないし30MPaで60ないし240℃に加熱する工程、そして、加熱した混合物を0ないし57℃に冷却する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアセテート溶液を用いる(16)に記載の製造方法。
(29)セルロースアシレートとして、90重量%以上の粒子が0.1ないし5mmの粒径を有するセルロースアシレート粒子を用い、塗布する前にセルロースアシレート溶液を濾過する処理を実施する(16)に記載の製造方法。
(30)有機溶媒が、ジクロロメタンである(16)に記載の製造方法。
(31)(1)〜(15)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを使用することを特徴とする偏光板保護膜。
(32)(1)〜(15)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを使用することを特徴とする液晶表示装置。
(33)(1)〜(15)いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを支持体として使用することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0020】
【発明の実施の形態】
【0021】
一般式(1)の化合物について説明する。
一般式(1)において、R11−13はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−13は互いに連結して環を形成してもよい。
R11−13について詳しく説明する。R11−13は好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基である。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。例として、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどが挙げられる。
R11−13で表される脂肪族基は置換されていてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
これらの基はさらに組み合わされて複合置換基を形成してもよく、このような置換基の例としては、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、エトキシカルボニルエチル基などを挙げることができる。また、R11−13は置換基としてリン酸エステル基を含有することもでき、一般式(1)の化合物は同一分子中に複数のリン酸エステル基を有することも可能である。
【0022】
一般式(2)および(3)の化合物について説明する。
一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良く、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。Zを含んで構成される5または6員環の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピロリジン、ピペリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、テトラヒドロ−2−フラノン、テトラヒドロ−2−ピロン、4−ブタンラクタム、6−ヘキサノラクタムなどを挙げることができる。
また、Zを含んで構成される5または6員環は、ラクトン構造またはラクタム構造、すなわち、Zの隣接炭素にオキソ基を有する環状エステルまたは環状アミド構造を含む。このような環状エステルまたは環状アミド構造の例としては、2−ピロリドン、2−ピペリドン、5−ペンタノリド、6−ヘキサノリドを挙げることができる。
【0023】
R25は水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であるアルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)を表す。R25で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどを挙げることができる。R25で表されるアルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0024】
Y21−22はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが例示できる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが例示できる。アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが例示できる。カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが例示できる。Y21−22は互いに連結して環を形成してもよい。Y21−22はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0025】
一般式(4)〜(12)の化合物について説明する。
一般式(4)〜(12)において、Y31−70はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルバモイル基またはヒドロキシ基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニルなど、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが挙げられる。アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが挙げられる。カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが挙げられる。Y31−70はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0026】
V31−43はそれぞれ独立に水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基を表す。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどを挙げることができる。V31−43はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0027】
L31−77はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31−77の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。L31−77の好ましい例としては、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、メチルエチレン、エチルエチレンなど)、環式の2価の基(例えば、cis−1,4−シクロヘキシレン、trans−1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロペンチリデンなど)、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、スルホン、スルホキシド、スルフィド、スルホンアミド、ウレイレン、チオウレイレンなどを挙げることができる。これらの2価の基は互いに結合して二価の複合基を形成してもよく、複合置換基の例としては、−(CH2)2O(CH2)2−、−(CH2)2O(CH2)2O(CH2)−、−(CH2)2S(CH2)2−、−(CH2)2O2C(CH2)2−などを挙げることができる。L31−77は、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0028】
一般式(4)〜(12)においてY31−70、V31−43およびL31−77の組み合わせにより形成される化合物の好ましい例としては、クエン酸エステル(例えば、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、O−アセチルクエン酸トリ(エチルオキシカルボニルメチレン)エステルなど)、オレイン酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸フェニル、オレイン酸シクロヘキシル、オレイン酸オクチルなど)、リシノール酸エステル(例えばリシノール酸メチルアセチルなど)、セバシン酸エステル(例えばセバシン酸ジブチルなど)、グリセリンのカルボン酸エステル(例えば、トリアセチン、トリブチリンなど)、グリコール酸エステル(例えば、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなど)、ペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラブチレートなど)、ジペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサブチレート、ジペンタエリスリトールテトラアセテートなど)、トリメチロールプロパンのカルボン酸エステル類(トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパンジアセテートモノプロピオネート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、トリメチロールプロパントリブチレート、トリメチロールプロパントリピバロエート、トリメチロールプロパントリ(t−ブチルアセテート)、トリメチロールプロパンジ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンテトラ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンジアセテートモノオクタネート、トリメチロールプロパントリオクタネート、トリメチロールプロパントリ(シクロヘキサンカルボキシレート)など)、特開平11−246704公報に記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報に記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報に記載のクエン酸エステル類、ピロリドンカルボン酸エステル類(2−ピロリドン−5−カルボン酸メチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸エチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸ブチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸2−エチルヘキシル)、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルなど)、キシリトールカルボン酸エステル(キシリトールペンタアセテート、キシリトールテトラアセテート、キシリトールペンタプロピオネートなど)などが挙げられる。
【0029】
本発明の範囲内であるものは、一般式(1)〜(12)で表される化合物のうち、オクタノール・水分配係数(logP値)が1ないし10である化合物である。logP値が10を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が1よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値としてさらに好ましい範囲は2ないし8であり、特に好ましい範囲は2ないし7である。
オクタノール・水分配係数(logP値)の測定は、JIS 日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール・水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.− Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
【0030】
本発明の化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80−99%である。本発明の化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
【0031】
一般式(1)〜(12)で表される化合物は、芳香族基を含有しないことが好ましい。一般式(1)〜(12)で表される化合物は、分子量が50以上3000以下であることが好ましく、70以上2000以下であることが好ましく、100以上1000以下であることが特に好ましい
一般式(1)〜(12)で表される化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また、一般式(1)〜(12)で表される化合物は、好ましくは、1気圧での沸点が200℃以上であり、更に好ましくは沸点が250℃以上である。
一般式(1)〜(12)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
【0032】
一般式(1)ないし(12)で表される化合物は、一般のリン酸トリエステルまたはカルボン酸エステルの合成法により、当業者であれば容易に合成できる。
【0033】
一般式(1)ないし(12)で表される化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30重量%であることが好ましく、1ないし20重量%であることが好ましく、5ないし18重量%であることが特に好ましい。
一般式(1)ないし(12)で表される化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0034】
以下に本発明の一般式(1)ないし(12)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(1)については化7〜10に化合物を例示し、一般式(2)〜(12)については化11〜15に化合物を例示した。表記載あるいは括弧内に記載のlogPの値は、Crippen’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めたものである。
【0035】
【化7】
(式中、R1−3は前記一般式(1)のR11−13と同義である。)
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
本発明のセルロースアシレートについて説明する。
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基の水素原子がアシル基で置換されているセルロース誘導体(セルロースエステル)である。アシル基としては、アセチル基(SA)が一般的であるが、炭素原子数が3以上(好ましくは3ないし22)のアシル基(SB)の場合もある。SA+SBの置換度の総和は、一般に2.60〜3.00であり、SBの置換度は0.00ないし0.80である。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。水酸基のSAとSBの置換度の総和は、2.70〜2.96であることが好ましく、2.80〜2.95であることがさらに好ましい。また、SBの置換度は0.00〜0.80であることが好ましく、0.00ないし0.60であることがさらに好ましい。
【0046】
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が、下記式(I)〜(III)の全てを満足することが特に好ましい。
(I)2.6≦SA+SB≦3.0
(II)2.0≦SA≦3.0
(III)0≦SB≦0.8
[式中、SAおよびSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基であり、SAはアセチル基の置換度、SBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である]。
【0047】
炭素原子数3〜22のアシル基の置換度(SB)は、その28%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、30%以上が6位水酸基の置換基であることがより好ましく、31%以上が6位水酸基の置換基であることがさらに好ましくがさらに好ましく、32%以上が6位水酸基の置換基であることが最も好ましい。セルロースアシレートの6位のSAとSBとの置換度の総和は、0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがさらに好ましく、0.90以上であることが最も好ましい。
【0048】
炭素原子数が3〜22のアシル基(SB)は、−CO−Rで定義され、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。Rは、脂肪族基または芳香族基であることが好ましい。脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基である。芳香族基は、アリール基または置換アリール基である。炭素原子数が3〜22のアシル基の例には、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブチリル、t‐ブチリル、シクロヘキサノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフトイルおよびシンナモイルが含まれる。プロピオニル、ブチリル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブチリル、オレオイル、ベンゾイル、ナフトイルおよびシンナモイルが好ましい。
【0049】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
【0050】
セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、ポリマー成分の90重量%以上(好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上)を意味する。フィルムの製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90重量%以上は、0.5ないし5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50重量%以上が1ないし4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
【0051】
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で200〜700であることが好ましく、250〜550であることがより好ましく、250〜400であることがさらに好ましく、250〜350であることが最も好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。粘度平均重合度については、特開平9−95538号公報にも記載されている。粘度平均重合度は、オストワルド粘度計にて測定したセルロースアセテートの固有粘度[η]から、下記の式により求める。
(1) DP=[η]/Km
式中、[η]は、セルロースアセテートの固有粘度であり、Kmは、定数6×10−4である。
粘度平均重合度(DP)が290以上である場合、粘度平均重合度と落球式粘度法による濃厚溶液粘度(η)とが下記式(2)の関係を満足することが好ましい。
(2)2.814×ln(DP)−11.753≦ln(η)≦6.29×ln(DP)−31.469
式中、DPは290以上の粘度平均重合度の値であり、ηは落球式粘度法における標線間の通過時間(秒)である。上記式(2)は、粘度平均重合度と濃厚溶液粘度をプロットし、その結果から算出したものである。
【0052】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。有機溶媒の例としては、ケトン類(例、アセトン)、酢酸エステル類(例、メチルアセテート)およびセロソルブ類(例、メチルセロソルブ)が含まれる。本発明においては、ケトン類、特にアセトンを用いることが好ましい。低分子成分の除去の効率を高めるために、洗浄前にセルロースアシレートの粒子を粉砕あるいは篩にかけることで、粒子サイズを調節することが好ましい。なお、低分子成分の少ないセルロースシレテートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して5ないし25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
セルロースアシレートをフィルムの製造に使用する際には、セルロースアシレートの含水率は2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましく、0.7重量%以下であることが最も好ましい。一般の(例えば、市販の)セルロースアシレートは、2.5ないし5重量%の含水率を有する。従って、一般的なセルロースアシレートをする場合は、乾燥により含水率を2重量%以下に低下させることが好ましい。乾燥は、様々な公知手段で実施できる。
【0053】
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤、オイルゲル化剤)を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0054】
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号および特開2000−193821号の各公報に記載がある。これらの添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1重量%であることが好ましく、0.01〜0.08重量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01重量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1重量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。劣化防止剤は、沸点が200以上で25℃で液体であるか、または融点が25〜250℃である固体であることが好ましい。更に好ましくは沸点が250℃以上の25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である劣化防止剤が挙げられる。劣化防止剤が液体の場合は、その精製は通常減圧蒸留によって実施されるが高真空ほど好ましく、例えば100Pa以下が好ましい。また分子蒸留装置などを用いて精製することも特に好ましい。また可塑剤が固体の場合は、溶媒を用いて再結晶させてろ過、洗浄し乾燥することで実施されることが一般的である。劣化防止剤としては、例えば特開平5−194789号公報に記載のpKaが4以上の塩基性化合物などを好ましい例として挙げることができる。例えば、1級、2級、3級のアミンや芳香族系の塩基化合物が好ましい。具体的には、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ドデシル−ジブチルアミン、オクタデシル−ジメチルアミン、トリベンジルアミン、ジエチルアミノベンゼンなどを挙げることができるが、詳細には前記の公開公報の一般式(1)及び(2)に記載されている化合物A−1〜A−73、B−1〜B−67を利用できる。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
【0055】
セルロースアシレートフィルムに好ましく使用される紫外線吸収剤について説明する。紫外線吸収剤の具体例としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。以下にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。
【0056】
特に(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で0.01〜5重量%であることが好ましく、0.05〜3重量%であることが更に好ましい。
【0057】
また光学異方性をコントロールするためのレターデーション上昇剤が、場合により添加される。これらは、セルロースアシレートフィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。また、感材用支持体としては、ライトパイピング防止用の着色剤化合物を添加してもよい。着色剤の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmであることが好ましく、50〜500ppmであることが更に好ましい。この様に着色剤を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0058】
また、セルロースアシレート溶液には、必要に応じて更に種々の添加剤を溶液の調製前から調製後のいずれの段階で添加してもよい。添加剤の例としては、無機微粒子、アルカリ土類金属塩などの熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤などが挙げられる。この時、使用される無機微粒子はキシミ防止剤としての役割や帯電防止などである。その場合、金属や金属化合物の硬さは特に限定されないが、モース硬度が好ましくは1〜10であり、より好ましくは2〜10である。又、有機微粒子も好ましく用いられ、例えば架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋トリアジン樹脂などを挙げることができる。特に本発明においては、セルロースアシレートフィルムがハンドリングされる際に、傷が付いたり搬送性が悪化することを防止するために、微粒子を添加することが一般に行われる。これらのマット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0059】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは、0.001〜20μmであり、より好ましくは0.001〜10μmであり更に好ましくは、0.002〜1μmであり、特に好ましくは、0.005〜0.5μmである。微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡で粒子を平均粒径で求められる。微粒子の、見掛け比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
【0060】
次に本発明においては溶液中にオイルゲル化剤を添加してもよく、流延特性やフィルムの面状改良に有用である。オイルゲル化剤としては、セルロースアシレート溶液に添加することで溶液をゲル化させるものであれば、素材は限定されない。ここで本発明において、ゲル化とは、セルロースアシレートの有機溶媒からなる溶液が、オイルゲル化剤を添加することで、オイルゲル化剤同士あるいはセルロースアシレートとの相互作用さらには有機溶媒などとの相互作用のために、溶液が流動しないあるいは固化した状態を言う。すなわち、本発明のオイルゲル化剤はセルロースアシレートの有機溶媒中で、水素結合や静電相互作用、配位結合、ファンデルワールス力、π−π電子相互作用などの共有結合ではない二次的な相互作用を駆動力として自己会合しゲル構造を形成するものを使用することができる。これらのオイルゲル化剤としては、公知文献(例えば、J.Chem.Soc.Japan,Ind.Chem.Soc.,46,779(1943)、J.Am.Chem.Soc.,111,5542(1989)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1993,390、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,35,1949(1996)、Chem.Lett.,1996,885、J.Chem.Soc.,Chem.Commun. ,1997,545)に記載されている。また、高分子論文集(VOL.55,No.10,585−589(Oct.,1998))、表面(VOL.36,No.6,291−303(1998))、繊維と工業(VOL.56,No.11,329−332(2000))、特開平7−247473号、特開平7−247474号、特開平7−247475号、特開平7−300578号、特開平10−265761号、特開平7−208446号、特開2000−3003号、特開平5−230435号、および特開平5−320617号の各公報等に記載されている素材を適用できる。
【0061】
好ましいオイルゲル化剤は、1,2,3,4−ジベンジリデン−D−ソルビトール、12−ヒドロキシステアリン酸、アミノ酸誘導体(N−ラウロイル−L−グルタミン酸−αなど)、環状ジペプチド(2,5−ジケトピペラジン誘導体)、γ−ビス−n−ブチルアミンド、スピンラベル化ステロイド、コレステロール誘導体、フェノール環状オリゴマー、2,3−ビス−n−ヘキサデシロキシアントラセン、ブチロラクトン誘導体、尿素誘導体、ビタミンH誘導体、グルコンアミド誘導体、コール酸誘導体、バルビツール酸誘導体とトリアミノピリミジン誘導体混合物、シクロヘキサンジアミン誘導体、シクロヘキサントリカルボン酸誘導体から選ばれるものであり、単独でも複数の混合物でもよい。さらに、オイルゲル化剤が、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、アスパラギン酸エステル、グルタミン酸、グルタミン酸エステルおよびフェニルアラニンからなる群より選ばれ作製された環状ジペプチドであることも好ましい。またオイルゲル化剤が、α−アミノラクタム誘導体であることも好ましい。オイルゲル化剤の含有量はセルロースアシレート溶液中で0.01〜5重量%であり、好ましくは0.02〜4重量%であり、さらには0.02〜3重量%が好ましい。
【0062】
次に、セルロースアシレートの溶液を作製するに際して用いられる有機溶媒について記述する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延、製膜できる範囲において、有機溶媒は特に限定されない。これらは、塩素系有機溶媒でもよく非塩素系有機溶媒でも問題ない。例えば、塩素系有機溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルムなどを挙げることができ、特にジクロロメタンが好ましい。しかしながら、これらの塩素系有機溶媒はその環境安全性で近年懸念されており、非塩素系有機溶媒の適用が好ましく、以下に本発明で好ましく用いられるそれらの溶媒を詳細に記載する。すなわち、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。
【0063】
主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0064】
ここで本発明で用いるセルロースアシレートについてのこれらの主溶媒は、溶解度パラメーターで好ましい範囲を示すことができる。すなわち本発明で用いるセルロースアシレートは、その溶解度パラメーターは17〜22で示される。溶解度パラメータについて記載された書籍は多数あるが、例えばJ.Brandrup,E.Hらの文献(Polymer Handbook(fourth edition), VII/671〜VII/714)に詳細に記載されている。それらの仲でも、本発明のセルロースアシレートに有効的に使用できる有機溶媒は、19〜21MPa1/2 の溶解度パラメーターを有することが好ましい。溶解度パラメーターが19〜21MPa1/2 である有機溶媒の例としては、メチルエチルケトン(19)、シクロヘキサノン(20.3)、シクロペンタノン(20.9)、酢酸メチル(19.6)、2−ブトキシエタノール(19.4)、塩化メチレン(20.3)、ジオキサン(19.6)、1,3−ジオキソラン(19.8)、アセトン(20.3)、ギ酸エチル(19.2)、アセト酢酸メチル(約20)およびテトラヒドロフラン(19.4)などを挙げることができる。この中でも酢酸メチル、アセトン、アセト酢酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、塩化メチレンなどが最も好ましい。これらについては、特開平9−95538号公報に記載されている。更に又特開昭61−124470号公報に記載のN−メチルピロリドン、特開平11−60807号公報に記載のフルオロアルコール、特開平112−63534号公報に記載の1,3−ジメチル2−イミダゾリジノンなども利用される。
【0065】
以上のセルロースアシレートに用いられる溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、セルロースアシレートの好ましい溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれ、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールである。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、ギ酸メチル、ギ酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合液であってもよい。
【0066】
第3の溶媒であるアルコールの好ましくは、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
【0067】
以上の3種類の混合溶媒は、第1の溶媒が20〜90重量%、第2の溶媒が5〜60重量%さらに第3の溶媒が5〜30重量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜86重量%であり、第2の溶媒が10〜50重量%、さらに第3のアルコールが7〜25重量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜80重量%であり、第2の溶媒が10〜50重量%、第3の溶媒がアルコールであり10〜20重量%含まれることが好ましい。なお、第1の溶媒が混合液で第2の溶媒を用いない場合は、第1の溶媒が20〜90重量%、第3の溶媒が5〜30重量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜86重量%であり、さらに第3の溶媒が7〜25重量%含まれることが好ましい。本発明で好ましいこれらの溶媒の組み合わせについての具体例は、以下のものを挙げることができる。
【0068】
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール(75/10/10/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/エタノール(60/15/15/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、アセトン/1,3ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、1、3ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(55/20/10/5/5/5、質量部)、アセトン/塩化メチレン/メタノール(85/5/5、質量部)、酢酸メチル/塩化メチレン/メタノール/エタノール(70/10/15/5、質量部)、1、3−ジオキソラン/塩化メチレン/メタノール/ブタノール(70/15/10/5、質量部)、1、4−ジオキサン/塩化メチレン/アセトン/メタノール/ブタノール(70/5/15/5/5、質量部)、シクロヘキサノン/塩化メチレン/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(60/10/15/5/5/5、質量部)、などをあげることができ、これらの中でも特に酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール(75/15/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)、アセトン/アセト酢酸メチル/エタノール/イソプロパノール(65/15/10/5/5、質量部)が好ましい組み合わせである。
【0069】
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、および特開平11−302388号の各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。以下に、本発明で実施されるセルロースアシレートの非塩素系有機溶媒への溶解について、具体的にさらに詳細に記載する。
【0070】
室温溶解の場合は、温度0〜55℃でセルロースアシレートを溶媒や添加剤と混合し、溶解釜などの中で攪拌・混合して溶解される。溶解に関しては、セルロースアシレート粉体を溶媒で十分均一に浸すことが重要であり、所謂ママコ(溶媒が全く行き渡らないセルロースアシレートフ粉末部)を発生させないことが必須である。そのため、攪拌容器の中に溶媒を予め添加しておき、その後に、溶解容器を減圧にしてセルロースアシレートを添加することが好ましい場合もある。また、逆に攪拌容器の中にセルロースアシレートを予め添加しておき、その後に、溶解容器を減圧にして溶媒を添加することが好ましい場合もある。また、セルロースアシレートを予めアルコールなどの貧溶媒に湿らせておき、しかる後に本発明の炭素数3〜12のエーテル、ケトンあるいはエステル溶媒を添加することも、好ましい溶液の作製方法である。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。なお、攪拌に当たってはセルロースアシレートと溶媒を混合した後、そのまま静置して十分にセルロースアシレートを溶媒で膨潤させて、続いて攪拌して均一な溶媒としてもよい。
【0071】
又本発明で好ましく用いられるセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、冷却溶解法に従い実施され以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜55℃)で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレートの量は、この混合物中に5〜40重量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30重量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−100〜−30℃、さらに好ましくは−100〜−50℃、最も好ましくは−90〜−60℃)に冷却される。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や機械的に冷却したフッ素系溶媒(フロン)で実施できる。このように冷却すると、セルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。冷却速度は、特に限定されないがバッチ式での冷却の場合は、冷却に伴いセルロースアシレート溶液の粘度が上がり、冷却効率が劣るために所定の冷却温度に達するために効率よい溶解釜とすることが必要である。
【0072】
また、セルロースアシレート溶液は膨潤させたあと、所定の冷却温度にした冷却装置を短時間移送することで達成できる。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/secが理論的な上限であり、1000℃/secが技術的な上限であり、そして100℃/secが実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差について、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよく、温浴中で加温してもよい。この時、圧力を0.3〜30MPaになることが挙げられるが、特に問題ない。その場合は、極力短時間で実施することが好ましく、0.5〜60分以内が好ましく、特に0.5〜2分の短時間の加熱が推奨される。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。以上の冷却溶解方法については、特開平9−95544号、特開平10−95854号、および特開平10−95854号の各公報に詳細に記載されている。
【0073】
次にセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製で好ましく実施される高温溶解法について以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜55℃)で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加される。複数の溶媒を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、主溶媒中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶媒(例えばアルコールなどのゲル化溶媒など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶媒を予めセルロースアシレートに湿らせた後の主溶媒を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレート溶液は、各種溶媒を含有する混合有機溶媒中にセルロースアシレートを添加し予め膨潤させることが好ましい。その場合、−10〜55℃でいずれかの溶媒中に、セルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加してもよいし、場合により特定の溶媒で予め膨潤させその後に他の併用溶媒を加えて混合し均一の膨潤液としてもよく、更には2種以上の溶媒で膨潤させしかる後に残りの溶媒を加えても良く、特に限定されるものではない。次に有機溶媒混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で60〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましくは100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。加熱は、例えば高圧蒸気でもよく電気熱源でもよい。高圧のためには耐圧容器あるいは耐圧ラインを必要とするが、鉄やステンレス製あるいは他の金属耐圧容器やラインのいずれでもよく、特に限定されない。更に、これらの高温高圧溶液中に二酸化炭素を封入して所謂超臨界溶液としてもよい。その場合、二酸化炭素と溶媒との比率は5/95〜70/30が好ましく、更には10/90〜60/40が好ましい。
【0074】
次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶媒の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜55℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却はセルロースアシレート溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。なお、溶解を早めるために加熱と冷却の操作を繰り返してもよい。溶解が十分であるかどうかは、目視により溶液の概観を観察するだけで判断することができる。高圧高温溶解方法においては、溶媒の蒸発を避けるために密閉容器を用いる。また、膨潤工程おいて、加圧や減圧にしたりすることで更に溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器あるいはラインが必須である。これらについては、特開平11−322946号および特開平11−322947号の各公報に詳細が記載されている。
【0075】
セルロースアシレートの量は、溶液中において5〜40重量%含まれるように調整することが好ましく、さらに10〜30重量%であることがさらに好ましい。本発明においては、セルロースアシレート溶液の濃度は前述のごとく、高濃度であることが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性に優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(特開平4−259511号公報記載)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(米国特許2541012号、同2858229号、同4414341号、同4504355号各明細書に記載)で実施できる。
【0076】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくことが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましくい。フィルタの厚さは、0.1〜10mmであることが好ましく、更には0.2〜2mmであることが好ましい。その場合、ろ過圧力は16kgf/cm2 以下、より好ましくは12kgf/cm2 以下、更には10kgf/cm2 以下、特に好ましくは2kgf/cm2 以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜55℃である。
【0077】
次に、セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造には、従来よりセルローストリアセテートフィルムの製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を用いることができる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製される際に、ドープはドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40重量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、および特開平02−208650号の各公報に記載の技術を本発明では応用できる。
【0079】
本発明では得られたセルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらの本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0080】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。
【0081】
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
【0082】
さらに詳細に本発明に有用な流延方法について記すと、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0083】
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0084】
更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするためには、製造したフィルムが延伸される。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、一軸延伸でもよく二軸延伸でもよい。延伸は1〜200%の延伸が好ましく、特には1〜100%の延伸が好ましい。本発明の出来上がり(乾燥後)のセルロースアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲にあり、更に20〜300μmの範囲にあることが好ましく、特に30〜150μmの範囲にあることが最も好ましい。フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0085】
以上のようにして得られたセルロースアシレートフィルムの幅は、0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mm、より好ましくは5m〜30mm、高さは0.5〜500μmであり、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
【0086】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことである。更にまた、大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムの表面処理に用いられるプラズマ処理について説明する。具体的には、真空グロー放電、大気圧グロー放電等によるものがあり、その他の方法としてフレームプラズマ処理等の方法があげられる。これらは、例えば特開平6−123062号、特開平11−293011号、および同11−5857号の各公報等に記載された方法を用いることができる。中でも大気圧グロー放電によるものが好ましく用いられる。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらのガスとしては、アルゴン、ネオン等の不活性ガスに、カルボキシル基や水酸基、カルボニル基等の極性官能基をプラスチックフィルムの表面に付与できる反応性ガスを加えたものが励起性気体として用いられる。反応性ガスとしては水素、酸素、窒素の他、水蒸気やアンモニア等のガスの他、低級炭化水素、ケトン等の低沸点の有機化合物等も必要に応じ用いることができるが、取り扱い上は、水素、酸素、二酸化炭素、窒素、水蒸気等のガスが好ましい。水蒸気を用いる場合は、他のガスを水に通しバブリングしたガスを用いることができる。或いは水蒸気を混合してもよい。
【0087】
次に紫外線照射法も本発明では好ましく用いられ、特公昭43−2603号、特公昭43−2604号、および特公昭45−3828号の各公報に記載の処理方法によって行われるのが好ましい。水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源はセルロースアシレートフィルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体性能上問題なければ、主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、及び低圧水銀ランプを使用することも可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほどセルロースアシレートフィルムと被接着層との接着力は向上するが、光量の増加に伴い該フィルムが着色し、また脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは300〜1500(mJ/cm2)である。
【0088】
次にセルロースアシレートフィルムの表面処理としてコロナ放電処理も好ましく用いられ、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、および特開昭52−42114号の各公報に記載の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。火炎処理について記述すると、用いるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。なぜなら、火炎処理による表面処理の効果は活性な酸素を含むプラズマによってもたらされると考えられるからであり、火炎の重要な性質であるプラズマの活性(温度)と酸素がどれだけ多くあるかがポイントである。このふたつを決めているのはガス/酸素比であり、過不足なく反応する場合にエネルギー密度が最も高くなりプラズマの活性が高くなる。具体的には、天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7である。また、火炎処理量は1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜20Kcal/m2の範囲で行うとよい。
【0089】
また、セルロースアシレートフィルムの表面処理として好ましく用いられるアルカリ鹸化処理を具体的に説明する。アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液の例としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1N〜3.0Nであることが好ましく、0.5N〜2.0Nであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温ないし90℃の範囲が好ましく、40℃ないし70℃がさらに好ましい。次に一般には水洗され、しかる後に酸性水溶液を通過させた後に、水洗して表面処理したセルロースアシレートフィルムを得る。この時、酸性水溶液に用いる酸の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、ギ酸、クロロ酢酸、シュウ酸などが挙げられる。酸性水溶液の濃度は、0.01N〜3.0Nであることが好ましく、0.05N〜2.0Nであることがさらに好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。これらの溶液は水のみでもよいが、水可溶性有機溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンなど)を混合して用いてもよい。
【0090】
フィルムと機能層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。下塗層の構成としても種々の工夫が行われており、第1層として支持体によく隣接する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。 単層法においては、セルロースアシレートフィルムを膨張させ、下塗層素材と界面混合させることによって良好な接着性を達成している場合が多い。本発明に使用する下塗ポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロースアシレート、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースアシレートとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。
【0091】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、VAおよびHANが好ましく、詳細は後述する。その際に前述の光学用途に本発明の非塩素系有機溶媒を用いて作製されたセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられる。
【0092】
まず界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜使用することで、それらの目的は達成できる。界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)いずれも使用できる。さらにフッ素系界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤や、帯電防止剤として好ましく用いられる。使用される層としてはセルロースアシレート溶液中でもよいし、その他の機能層のいずれでもよい。光学用途で利用される場合は、機能層の例としては下塗り層、中間層、配向制御層、屈折率制御層、保護層、防汚層、粘着層、バック下塗り層、バック層などが挙げられる。その使用量は、目的を達成するために必要な量であれば特に限定されないが、一般には添加する層の質量に対して、0.0001〜5重量%であることが好ましく、更には0.0005〜2重量%であることが好ましい。その場合の塗設量は、1m2当り0.02〜1000mgであることが好ましく、0.05〜200mgであることさらにが好ましい。好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤が挙げられ、具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
【0093】
アニオン系界面活性剤の例としては、カルボン酸塩、硫酸塩、スルフォン酸塩、リン酸エステル塩が挙げられ、代表的な例としては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩、α−スルフォン化脂肪酸塩、N−メチルーNオレイルタウリン、石油スルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。カチオン系界面活性剤の例としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジュム塩などを挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。両性系界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン、スルフォベタインなどが挙げられ、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタインなどである。これらの界面活性剤は、界面活性剤の応用(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記載されている。本発明においては、好ましい界面活性剤はその使用量において特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。以下に界面活性剤の具体例を記すが、これらに限定されるものではない(ここで、‐C6H4‐はフェニレン基を表わす)。
【0094】
また、セルロースアシレートフィルムの上のいずれかの層に滑り剤を含有させてもよく、その場合は特に最外層が好ましい。用いられる滑り剤としては、例えば、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4、275、146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第927、446号明細書或いは特開昭55−126238号及び特開昭58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールのエステル)、そして、米国特許第3、933、516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩、また、特開昭58−50534号公報に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールのエステル、国際公開90108115.8に開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪酸−高級アルコールエステル等が知られている。このうちポリオルガノシロキサンとしては、一般的に知られている、ポリジメチルシロキサンポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサンのほかに、特公昭53−292号、特公昭55−49294号、および特開昭60−140341号の各公報等に示されるような、C5 以上のアルキル基を持つオルガノポリシロキサン、側鎖にポリオキシアルキレン基を有するアルキルポリシロキサン、側鎖にアルコキシ、ヒドロキシ、水素、カルボキシル、アミノ、メルカプト基を有するようなオルガノポリシロキサン等の変性ポリシロキサンを用いることもできるし、シロキサンユニットを有するブロックコポリマーなどを挙げることができる。このような化合物の具体例を次に示すが、これらによって制限されるものではない。また、高級脂肪酸及びその誘導体、高級アルコール及びその誘導体としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸の多価アルコールエステル等、また、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのモノアルキルフォスファイト、ジアルキルフォスファイト、トリアルキルフォスファイト、モノアルキルフォスフェート、ジアルキルフォスフェート、トリアルキルフォスフェート、高級脂肪族のアルキルスルフォン酸、そのアミド化合物またはその塩等を用いることができる。このような化合物の具体例を次に示すが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0095】
このような滑り剤を用いることにより、引っかき強度にすぐれ、下塗面でのはじき等の発生のない優れたフィルムが得られる。用いる滑り剤の使用量は特に限定されないが、その含有量は0.0005〜2g/m2であること好ましく、より好ましくは0.001〜1g/m2、特に好ましくは0.002〜0.5g/m2である。滑り剤の添加層としては、特にこれに限定されるものではないが、バック面の最外層に含有させることが好ましい。上記の滑り剤を含む表面層は、これを適当な有機溶剤に溶解した塗布液を、支持体、またはバック層にその他の層を付与した支持体上に塗布し、乾燥することにより形成できる。また、滑り剤は、塗布液中に分散物の形で添加することもできる。滑り性能は静摩擦係数0.30以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.13以下が好ましい。また、接触する相手材質との静摩擦係数を小さいことが好ましく、傷などの防止にも役立つ。その際の相手材質との静摩擦係数も0.3以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.13以下が好ましい。また、フィルムや光学フィルムの表裏の静摩擦係数も小さくするほうが好ましい場合が多々有り、その間の静摩擦係数0.30以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.13以下が好ましい。また、動摩擦係数も0.30以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.15以下が好ましい。また、接触する相手材質との動摩擦係数も0.3以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.15以下が好ましい。また、フィルムや光学フィルムの表裏の動摩擦係数も小さくするほうが好ましい場合が多々有り、その間の動摩擦係数0.30以下が好ましく、更には0.25以下、特には0.13以下が好ましい。
【0096】
本発明のセルロースアシレートフィルムの機能層において、フィルムの易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のためにマット剤を使用することが好ましい。その場合、表面の突起物の平均高さが0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。又、その突起物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。好ましい突起物は突起物の平均高さを有する範囲であれば、例えば球形、不定形マット剤で突起物を形成する場合はその含有量が0.5〜600mg/m2であり、より好ましいのは1〜400mg/m2である。この時、使用されるマット剤としては、既述のセルロースアシレートフィルム中に添加される微粒子も利用でき、その組成において特に限定されず、無機物でも有機物でもよく2種類以上の混合物でもよい。マット剤の無機化合物、有機化合物は、例えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによっても得られる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。
【0097】
本発明の光学フィルム、或いは偏光板保護フィルムとして使用して偏光板には帯電防止加工、透明ハードコート加工、防眩加工、反射防止加工、易接着加工等を施すことができる。或いは配向膜を形成して液晶層を設け、光学補償機能を付与することもできる。これらの詳細は特開2000−352620号公報に記載の技術を応用でき、以下に記載する。帯電防止加工とは、樹脂フィルムの取扱の際に、この樹脂フィルムが帯電するのを防ぐ機能を付与するものであり、具体的には、イオン導電性物質や導電性微粒子を含有する層を設けることによって行う。ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例としてはイオン性高分子化合物を挙げることができる。これらのうち、好ましいのは導電性物質が微粒子状をしており、上記樹脂中にこれらを微分散して添加したものであって、これらに用いられる好ましい導電性物質として、金属酸化物やこれらの複合酸化物からなる導電性微粒子及び特開平9−203810号公報に記載されているようなアイオネン導電性ポリマー或いは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマー粒子などを含有することが望ましい。好ましい粒径としては5nm〜10μmの範囲であり、更に好ましい範囲は用いられる微粒子の種類に依存する。
【0098】
導電性微粒子である金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2 、V2O5等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。更にまた、有機電子導電性有機化合物も利用できる。例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフォスファゼンなどである。これらは、酸供与材としてポリスチレンスルフォン酸、過塩素酸などとのコンプレックスで好ましく用いられる。
【0099】
本発明の光学フィルムには、透明ハードコート層を設けることができる。透明ハードコート層としては活性線硬化性樹脂或いは熱硬化樹脂が好ましく用いられる。活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主成分とする層をいう。活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができ、例えば特開昭59−151110号公報に記載されている。
【0100】
本発明の光学フィルムには、反射防止層を設けることもできる。反射防止層の構成としては、単層、多層等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層、低屈折率層を交互に積層した構造のものが一般的である。構成の例としては、透明基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層の順から構成されたものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材或いはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい構成である。基材面に(中屈折層を設ける場合もある)高屈折率層、空気に向かって低屈折率層を順に積層し、高屈折率層及び低屈折率層の光学膜厚を光の波長に対してある値に設定することにより光学干渉層を作り、反射防止積層体としたものが反射防止層としては特に好ましく、屈折率と膜厚は分光反射率の測定より算出できる。本発明の光学フィルムには、カール防止加工を施すこともできる。カール防止加工とは、これを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与するものであるが、この加工を施すことによって、透明樹脂フィルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止する働きをするものである。カール防止層は基材の防眩層又は反射防止層を有する側と反対側に設ける態様或いは、例えば透明樹脂フィルムの片面に易接着層を塗設する場合もあり、又逆面にカール防止加工を塗設するような態様が挙げられる。
【0101】
以上の方法により作製されたセルロースアシレートフィルムの物理特性について、さらに詳細に記載する。本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとした場合、保護フィルムの厚さは5〜500μmの範囲にあることが好ましい。保護フィルムの厚さは、20〜300μmの範囲にあることがさらに好ましく、30〜150μmの範囲にあることが最も好ましい。本発明において、上記のようにして製膜されたセルロースアシレートフィルムの面内方向におけるレターデーションReは、特に500nm未満であることが好ましく、300nm未満であることがより好ましく、200nm未満であることが更に好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。場合より10nm以下であることが特に好ましく5nmであることが更に好ましい。また、本発明のセルロースアシレートフィルムのRthは100μm当たり、0nm〜600nmであり、さらには0nm〜400nmで用いられる。特に0nm〜250nmで用いることが好ましい。本発明の光学フィルムの製膜方向(長手方向に相当する)と、フィルムの遅相軸とのなす角度θ(ここではθ1)が0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。ただし、θ1は製膜方向と遅相軸とがなす狭い角度であり、+90°〜−90°の範囲である。特に偏光板保護フィルムとして用いる場合に、得られる偏光板の偏光度向上に寄与する。ここで遅相軸とはフィルム面内の屈折率が最も高くなる方向である。
【0102】
本発明において、上記のようにして製膜されたセルロースアシレートフィルムを105℃、5時間という条件下での縦及び横の寸法収縮率が±0.1%以下であることが好ましい。又セルロースアシレートフィルムの80μm換算でのヘイズが0.6%以下であることが好ましく、特にそのヘイズ値が0.5%以下のものが好ましく、更に好ましくは0.1%以下である。尚、ヘイズ値の下限は特に限定されるものでは無い。又、本発明の光学フィルムの引き裂き強度は10g以上であることが好ましく12g以上であることがより好ましく、15g以上であることが更に好ましく、18g以上であることが更に好ましく、20g以上であることが更に好ましく、22g以上であることが更に好ましい。又セルロースアシレートフィルムの引っ張り強度が50N/mm2以上であることが好ましく、又弾性率が3kN/mm2以上であることが好ましい。又セルロースアシレートフィルムの動摩擦係数が0.40以下であることが好ましく、更に好ましくは0.35以下である。本発明の光学フィルムは寸度安定性に優れ、80℃、90%RHで12時間放置した場合における寸法収縮率が±0.5%未満であり、更に好ましくは0.3%未満であり、更に好ましくは0.1%未満であり、更に好ましくは0.08%未満であり、更に好ましくは0.06%未満であり、更に好ましくは0.04%未満である。
【0103】
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途についてまず簡単に概説し、詳細は後述する。本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号および特開平6−118232号の各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0104】
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
【0105】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。セルロースアシレートフィルムを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償シートの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。光学補償シートは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムそのものを、光学補償シートとして用いることができる。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層や2軸延伸セルロースアシレートフィルムとして機能を付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角を改良するため、本発明のセルロースアシレートフィルムと、それとは(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフィルムを重ねて光学補償シートとして用いてもよい。光学補償シートの厚さの範囲は、前述した本発明のフィルムの好ましい厚さと同じである。
【0106】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid AlignedNematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0107】
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、および特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997) p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0108】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0ないし150nmとし、Rthレターデーション値を70ないし400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20ないし70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70ないし250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150ないし400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0109】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号明細書に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
以下に本発明のセルロースアシレートフィルムについての具体的な実施態様を記述するが、これらに限定されるものではない。
【0110】
【実施例】
各実施例において、セルロースアシレート、溶液およびフィルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および算出した。
【0111】
(1)フィルムの面内レターデーション値(Re)
特開2001−247717公報の12カラム4行目から20行目に記載の方法により、測定した。
(2)フィルムの厚み方向レターデーション値(Rth)
特開2001−247717公報の12カラム21行目から37行目に記載の方法により、測定した。
(3)溶液の安定性
セルロースアシレートの溶液を23℃で静置して状態の変化を観察し、以下のように評価した。
A:10日間経過しても、透明性と均質性を保持している。
B:溶液調整直後には、透明性と均質性を呈するが、1日経過すると相分離を生じる。
C:溶液調整直後から不均一なスラリーとなり、透明性と均質性を有する溶液にならない。
(4)溶液のゲル化特性の有無の測定
特開2001−247717公報の13カラム21行目から32行目に記載の方法により測定し、ゲル化の有無を判定した。
【0112】
(5)フィルムの透明性
試料フィルムを目視で観察し、白化の有無を観察した。
(6)フィルムの剥ぎ取り性
特開2001−247717公報の13カラム33行目から14カラム7行目に記載の方法により測定し、以下のように評価した。
A:20秒以内で剥ぎ取りができる。
B:20秒以内では剥ぎ取りができず、剥ぎ残りが生じる。
【0113】
(7)フィルムのアルカリ加水分解特性
試料100mm×100mmを、自動アルカリケン化処理装置(新東科学(株)製)にて、60℃、2N水酸化ナトリウム水溶液にて3分間ケン化し、4分間水洗した。次いで試料を、30℃、0.01N希硝酸にて4分間中和し、4分間水洗した。そして試料を、100℃で3分間、自然乾燥1時間し、目視で下記の評価を実施した。
A:白化は全く認められない。
B:白化がわずかに認められる。
C:白化がかなり認められる。
D:白化が著しく認められる。
【0114】
(8)化合物の表面と中心部の存在量比
Perkin−Elmer社製Spectrum Spotlight300/Spectrum One FT−IRを使用し、イメージングIR法により断面観察を行ない、表面と中心部について本発明の化合物の吸収強度とセルロースアシレートの吸収強度の比から存在量比を求めた。
【0115】
[実施例1]
(1−1)セルロースアシレート溶液の作製
攪拌羽根を有する5リットルのガラス容器に、下記の溶媒混合溶液によく攪拌・分散しつつ、全体が2kgになるように仕込んだ。なお、溶媒である酢酸メチルとブタノール、アセトン、メタノール、エタノールは、すべてその含水率が0.2重量%以下のものを利用した。まず、セルローストリアセテートの粉末は、分散タンクに紛体を投入し窒素ガスを封入して、ディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有する攪拌機で30分間分散した。分散の開始温度は30℃であった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルローストリアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は0.2重量%以下であることを確認した。
【0116】
セルロースアシレート溶液は、セルローストリアセテート(置換度2.82、粘度平均重合度320、含水率0.4重量%、ジクロロメタン溶液中6重量%の粘度 305mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体)20質量部、酢酸メチル58質量部、アセトン5質量部、メタノール5質量部、エタノール5質量部、ブタノール5質量部、本発明の化合物または比較用化合物(表1に記載のとおり)1.2質量部、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(紫外線吸収剤a)0.2質量部、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤b)0.2質量部、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤c)0.2質量部、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、モース硬度約7)0.05質量部からなる組成を有する。なお、主溶媒である酢酸メチルは、溶解性パラメーターは19.6であり、併用されるアセトンは溶解性パラメーターは20.3である。
セルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Caが0.05重量%、Mgは0.007重量%であり、さらにFeは5ppmであった。また6位アセチル基は0.95であり全アセチル中の32.2%であった。また、アセトン抽出分は11重量%、重量平均分子量と数平均分子量の比は0.5であり、分布の均一なものであった。またヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tgは160℃、結晶化発熱量は6.2J/gであった。
【0117】
(1−2)セルローストリアセテートフィルム溶液
得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポンプで送液して、−70℃で3分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液はステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌した後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0118】
(1−3)セルローストリアセテートフィルムの作製
ろ過済みの50℃のセルローストリアセテート溶液を、流延ギーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体温度は5℃であり、流延スピードは3m/分でその塗布幅は30cmとした。室温で1分放置し、その後に乾燥のために55℃の乾燥風を送風した。5分後に鏡面ステンレス支持体から剥ぎ取り、しかる後に110℃、10分、更に150℃で30分乾燥(フィルム温度は約140℃)して、セルローストリアセテートフィルム(膜厚80μm)を得た。
【0119】
(1−4)結果
表1に、本発明の化合物および比較用化合物を用いた場合に得られる評価結果を記載する。比較用化合物を用いた比較用試料101はRthは小さいが親水的な化合物であり、また、昇華により表面の疎水性が低下するために加水分解による劣化が大きい。一方、疎水性の化合物を添加した試料102および104では、相分離が起きて透明な膜が得られなかった。また、芳香族基を有する試料103および105は、Rthが比較的大きいことがわかる。これに対し、本発明の化合物を用いた試料106−120は、Rthが低く、膜の白化も観察されないほか、加水分解耐性、溶液安定性、透明性、剥取り性の点においても好ましい特性を有している。
【0120】
【化17】
【0121】
【表1】
【0122】
[実施例2]
実施例1の試料105−120について、セルローストリアセテートフィルム溶液を下記に変更する以外は実施例1と全く同様にして試料205−220を得た。得られた試料205−220は、実施例1と同様にRthが低く、膜の白化も観察されなかった。このことから、本発明においては高温高圧溶解においても優れたセルロースアセテート溶液とセルロースアセテートフィルムが作製できることが確証された。
【0123】
セルローストリアセテートフィルム溶液得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポンプで送液して、130℃、15Mpaに加温加圧した加熱部分を3分間通過させた後、110℃、1Mpaに加温加圧して、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0124】
[実施例3]
実施例1の試料105−120について、特開平11−316378号公報の実施例1に記載の方法により、試料305−320を作製して評価した。本発明のセルロースアシレートフィルムにより得られた楕円偏光板の光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学偏光板に適応されても問題ない好ましい態様であることが明らかである。
【0125】
[実施例4]
実施例1の試料105−120について、特開平7−333433号公報の実施例1に記載の方法により光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0126】
[実施例5]
実施例1の試料105−120について、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261の号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置の評価したところ、いずれの場合において良好な性能が得られた。
【0127】
[実施例6]
実施例1の試料105−120について、そのフィルム厚さを120μmとする以外は、実施例1と全く同様にして試料605−620を作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号公報の実施例1に記載の第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号公報の実施例1に記載の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフィルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【0128】
【発明の効果】
本発明に従うと、常温溶解法、冷却溶解法あるいは高温高圧溶解法に従い有機溶媒(好ましくは非塩素系有機溶媒)を用いてセルロースアシレート溶液から作成したフィルムの光学的異方性を小さくするための添加剤を提供し、また、光学的異方性の小さいセルロースアシレートフィルムの製造方法を提供することができる。
Claims (11)
- 一般式(1)〜(12)で表され、かつ、該化合物のオクタノール−水分配係数(logP値)が1ないし10である化合物を少なくとも1種及び、セルロースアシレートとを含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式中、R11−13はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−13は互いに連結して環を形成してもよい。
- 請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムにおいて少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
- 請求項1の一般式(1)ないし(12)で表される化合物の含有量が、セルロースアシレートの0.01ないし30重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- セルロースアシレートのアシル置換度が2.60ないし3.00である請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- セルロースアシレートが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足し、かつ、セルロースの6位の水酸基へのアシル置換度が0.8〜1.0であることを特徴とする請求項1〜3に記載のセルロースアシレートフィルム。
(I) 2.6≦SA+SB≦3.0
(II) 2.0≦SA≦3.0
(III) 0.0≦SB≦0.8
式中、SAおよびSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基を表し、SAはアセチル基の置換度、またSBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。 - セルロースアシレートが、セルロースの6位の水酸基へのアシル置換度が0.8〜1.0であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 実質的に非塩素系有機溶媒である炭素原子数3〜12のエーテル類、炭素原子数3〜12のケトン類および炭素原子数2〜12のエステル類から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒と、および/または炭素原子数1〜12のアルコール類の少なくとも1種の有機溶媒を用い、−100〜200℃で溶解された溶液を用いて流延製膜されたことを特徴とする請求項1、2または6に記載のセルロースアシレートフィルム。
- セルロースアシレートを有機溶媒に溶解したセルロースアシレート溶液を塗布してセルロースアシレートフィルムを製造する方法であって、一般式(1)〜(12)で表され、かつ、該化合物のオクタノール−水分配係数が1ないし10である化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 請求項1〜7いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを使用することを特徴とする偏光板保護膜。
- 請求項1〜7いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを使用することを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項1〜7いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムを支持体として使用することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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