JP2006264028A - 溶液製膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 所望のRe,Rthを有するTACフィルムを得る。
【解決手段】 TACを混合溶媒に溶解してドープを得る。ドープに所望の添加剤を溶解して中間層用ドープ,支持体側面用ドープ,エアー面用ドープを得る。流延ダイ71に上流側にフィードブロック70が、ビード背面側には減圧チャンバ91が取り付けられている。流延ダイ71は流延室85に設置されている。流延室85には、流延ビードへの風圧振動を抑制する振動吸収チャンバ110が取り付けられている。各ドープをライン43〜45からフィードブロック70に送液した後に流延ダイ71から流延バンド72上に流延して流延膜90を形成する。流延膜90を流延バンド72上で自己支持性を有するまで乾燥させた後に湿潤フィルム121として剥ぎ取る。湿潤フィルム121を乾燥して得られるTACフィルムは光学特性に優れる。
【選択図】 図3

Description

本発明は溶液製膜方法に関し、さらに詳しくは製造されるフィルムが光学補償フィルム、偏光板などの光学材料に好ましく用いられるものである溶液製膜方法に関するものである。
従来、セルロースアシレートフィルムはその強靭性と難燃性から写真用支持体や各種光学材料に用いられてきた。特に、近年は液晶表示装置用の光学透明フィルムとして多く用いられている。セルロースアシレートフィルムは、光学的に透明性が高いことと、光学的に等方性が高いことから、液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置用の光学材料として優れており、これまで偏光子の保護フィルムや、斜め方向からの見た表示を良化(視野角補償)できる光学補償フィルムの支持体として用いられてきた。
液晶表示装置用の部材のひとつである偏光板には偏光子の少なくとも片側に偏光子の保護フィルムが貼合によって形成されている。一般的な偏光子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素または二色性色素で染色することにより得られる。多くの場合、偏光子の保護フィルムとしてはPVAに対して直接貼り合わせることができる、セルロースアシレートフィルム、なかでもトリアセチルセルロースフィルムが用いられている。この偏光子の保護フィルムは、光学的等方性に優れることが重要であり、偏光子の保護フィルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
最近の液晶表示装置においては、視野角特性の改善がより強く要求されるようになっており、偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学透明フィルムは、より光学的に等方性であることが求められている。光学的に等方性であるとは、光学フィルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さいことが重要である。とりわけ、斜め方向からの表示良化のためには、正面方向のレターデーション(Re)だけでなく、膜厚方向のレターデーション(Rth)を小さくする必要がある。具体的には光学透明フィルムの光学特性を評価した際に、フィルム正面から測定したReが小さく、角度を変えて測定してもそのReが変化しないことが要求される。
これまでに、正面のReを小さくしたセルロースアシレートフィルムはあったが、角度によるRe変化が小さい、すなわちRthが小さいセルロースアシレートフィルムは作製が難しかった。そこでセルロースアシレートフィルムの代わりにポリカーボネート系フィルムや熱可塑性シクロオレフィンフィルムを用いて、Reの角度変化の小さい光学透明フィルムの提案がされている(例えば、特許文献1,2参照。なお、製品としてはZEONOR(日本ゼオン社製)や、ARTON(JSR社製)など)。しかし、これらの光学透明フィルムは、偏光子の保護フィルムとして使用する場合、フィルムが疎水的なためにPVAとの貼合性に問題がある。またフィルム面内全体の光学特性が不均一である問題も残っている。
この解決法として、PVAへの貼合適正に優れるセルロースアシレートフィルムを、より光学的異方性を低下させて改良することが強く望まれている。具体的には、セルロースアシレートフィルムの正面のReをほぼゼロとし、またレターデーションの角度変化も小さい、すなわちRthもほぼゼロとした、光学的に等方性である光学透明フィルムである。
セルロースアシレートフィルムの製造において、一般的に製膜性能を良化するため可塑剤と呼ばれる化合物が添加される。可塑剤の種類としては、リン酸トリフェニル、リン酸ビフェニルジフェニルのようなリン酸トリエステル、フタル酸エステル類などが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。これら可塑剤の中には、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果を有するものが知られており、例えば、特定の脂肪酸エステル類が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、従来知られているこれらの化合物を用いたセルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果は十分とはいえない。
また、最近の液晶表示装置においては、表示色味の改善も要求されるようになっている。そのため偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学透明フィルムは、波長400nm〜800nmの可視領域でReやRthを小さくするだけでなく、波長によるReやRthの変化、すなわち波長分散を小さくする必要がある。
特開2001−318233号公報 特開2002−328233号公報 特開2001−247717号公報 プラスチック材料講座、第17巻、日刊工業新聞社、「繊維素系樹脂」、121頁(昭和45年)
本発明の第1の課題は、光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性であり、さらには光学的異方性(Re、Rth)の波長分散が小さいセルロースアシレートフィルムを提供することである。
本発明の第2の課題は、光学的異方性が小さく、波長分散が小さいセルロースアシレートフィルムにより作製した光学補償フィルム、偏光板などの光学材料が視野角特性に優れるものであることを示すこと、およびこれらを用いた液晶表示装置を提供することにある。光学的異方性が小さく、波長分散が小さいセルロースアシレートフィルムを偏光板の保護フィルムに用いることによって、偏光板の光学特性を良化できる。また光学補償フィルムの支持体として用いると、光学補償フィルムそのものの光学性能を引き出すことができる。これらの偏光板や光学補償フィルムを液晶表示装置に用いることによってコントラストの良化、色味を改良することができる。
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ビードとして流延ダイから支持体上に流延し、前記支持体上に前記流延ビードから流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有するものとなった後に前記流延膜を前記支持体から湿潤フィルムとして剥ぎ取り、前記湿潤フィルムを乾燥してフィルムとする溶液製膜方法において、前記流延ダイと前記支持体とが配置されているケーシング内に備えられている風圧振動抑制手段により前記流延ビードの風圧振動を抑制し、前記流延ダイの上流側に設けられている減圧チャンバで前記流延ビードの背面を減圧し、前記流延ビードの前面又は背面の少なくともいずれか一方をシール部材でシールし、下記式(I)及び(II)で定義される正面レターデーションRe(nm)と膜厚方向レターデーションRth(nm)とを制御する。
(I) Re(λ)(nm)=(nx−ny)×d
(II)Rth(λ)(nm)=((nx+ny)/2−nz)×d
式中Re(λ)(nm)は、波長λ(nm)における正面レターデーション値であり、Rth(λ)(nm)は、波長λ(nm)における膜厚方向レターデーション値である。また、nxは前記フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記フィルムの膜厚方向の屈折率である。また、d(nm)は前記フィルムの膜厚である。
前記フィルムの正面レターデーションRe(nm)と膜厚方向レターデーションRth(nm)とを下記式(III)及び(IV)に制御することが好ましい。
(III) 0≦Re(630)≦10且つ|Rth(630)|≦25
(IV)|Re(400)−Re(700)|≦10且つ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
前記風圧振動抑制手段が備える弾性薄膜が、前記ケーシング内の風圧振動に応じて弾性変形し、前記流延ビードの風圧振動を抑制することが好ましい。前記流延ダイのダイリップと前記支持体との間隔を0.3mm以上3.5mm以下とすることが好ましい。前記流延を行う際に、1/60秒以上1/10秒以下の間での前記流延ビードの変動を所望の範囲内とすることが好ましい。前記フィルムの長手方向における1mm以上100mm以下の所定の長さにおいて、前記フィルムの厚み変動を所望の範囲内とすることが好ましい。
前記減圧チャンバはバッファタンクを介して配管により減圧装置と接続され、前記バッファタンクの断面積A1と前記配管の断面積A2との比(A1/A2)が、5以上200以下であることが好ましい。前記バッファタンクの長さL(m)が1m以上であることが好ましい。前記バッファタンク内にエアーを滞留させ、前記ケーシング内の風圧変動を抑制することが好ましい。
前記流延ビードの両縁に前記ポリマーの良溶媒を供給し、前記流延ビードの固化を抑制することが好ましい。前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取る際に生じる剥取抵抗力を軽減する剥離促進剤を前記ドープに含有させることが好ましい。前記フィルムが2層以上の多層構造を有するものであって、前記支持体と接触する流延膜を形成するドープ中に前記剥離促進剤を含有させることが好ましい。前記剥離促進剤が、水溶液中の酸解離定数pKaが1.93以上4.50未満であり、且つ多塩基酸,部分エステル体,アルカリ金属塩,マグネシウム塩又はアルカリ土類金属塩の少なくとも1つであることが好ましい。
前記フィルム中の前記ポリマーに対して3重量%以上20重量%以下となるように、前記ドープに可塑剤を含有させることが好ましい。前記フィルム中の前記ポリマーに対して0.001重量%以上5重量%以下となるように、前記ドープに紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。前記フィルム中の前記ポリマーに対して0.001重量%以上5重量%以下となるように、前記ドープに微粒子を含有させることが好ましい。
前記膜厚方向レターデーションRth(nm)を低下させる第1レターデーション制御剤を下記式(V)及び式(VI)の範囲で少なくとも1種類、前記ドープに含有させることが好ましい。
(V) (Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(VI)0.01≦A≦30
式中Rth(A)は前記第1レターデーション制御剤をA重量%含有させた前記フィルムの膜厚方向レターデーションRth(nm)であり、Rth(0)は前記第1レターデーション制御剤を含有しない前記フィルムの膜厚方向レターデーションRth(nm)であり、Aは前記フィルムを構成する前記ポリマーの重量を100重量%としたときの前記第1レターデーション制御剤の重量(重量%)である。
前記ポリマーがセルロースアシレートであって、アシル置換度が2.85以上3.00以下であることが好ましい。前記ポリマーがセルロースにアシル基が置換されたセルロースアシレートであって、前記アシル基が、アセチル基,プロピオニル基またはブタノイル基のうち少なくとも2つの基であることが好ましい。前記ポリマーがセルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.85以上2.95以下であることが好ましい。前記セルロースアセテートの平均重合度が、180以上550以下であることが好ましい。
前記ポリマーの重量を100重量%としたときに、前記フィルムの正面レターデーションRe(nm)及び膜厚方向レターデーションRth(nm)を低下させる第2レターデーション制御剤を0.01重量%以上30重量%以下の範囲で前記フィルムに含有するように前記ドープに前記第2レターデーション制御剤を含有させることが好ましい。前記第2レターデーション制御剤のオクタノール−水分配係数(LogP値)が、0以上7以下であることが好ましい。
前記湿潤フィルムを乾燥する際に、流延方向に前記湿潤フィルムを101%以上130%以下の範囲で延伸することが好ましい。前記湿潤フィルムを乾燥する際に、流延幅方向に前記湿潤フィルムを101%以上150%以下の範囲で延伸することが好ましい。前記フィルムの膜厚が、40μm以上100μm以下であることが好ましい。
Re(λ)およびRth(λ)を低下させ、オクタノール−水分配係数(LogP値)が、0〜7であり、一般式(1)〜(19)のいずれかで表される化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01重量%〜30重量%含むことが好ましい。
Figure 2006264028
式中、R11−R13はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−R13は互いに連結して環を形成してもよい。
Figure 2006264028
一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子または−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良い。Y21−Y22はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表し、Y21−Y22は互いに連結して環を形成してもよい。mは1〜5の整数を表し、nは1〜6の整数を表す。
Figure 2006264028
一般式(4)〜(12)において、Y31−Y70はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20のエステル基、炭素数が1ないし20のアルコキシカルボニル基、炭素数が1ないし20のアミド基、炭素数が1ないし20のカルバモイル基またはヒドロキシ基を表し、V31−V43はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし20の脂肪族基を表す。L31−L80はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31−L80の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。V31−V43およびL31−L80は、さらに置換基を有していてもよい。
Figure 2006264028
[式中、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R、RおよびRの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。]
Figure 2006264028
[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。RおよびRの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。]
Figure 2006264028
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Xは下記の連結基群1から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Yは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
(連結基群1)単結合、−O−、−CO−、−NR−、アルキレン基またはアリーレン基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。]
Figure 2006264028
(式中、Q、QおよびQはそれぞれ独立に5ないし6員環を表す。XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表す。)
Figure 2006264028
(式中、XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、Nを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35は水素原子または置換基を表す。)
Figure 2006264028
[式中、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。]
Figure 2006264028
上記一般式(19)において、R、RおよびRはそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1乃至20のものが好ましく、1乃至15のものがさらに好ましく、1乃至12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6乃至36のものが好ましく、6乃至24のものがより好ましい。
上記のアルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
Re(λ)およびRth(λ)を低下させ、オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30重量%含むことが好ましい。
本発明の溶液製膜方法によれば、光学異方性が小さく、Re、Rthの波長分散が小さいセルロースアシレートフィルムが製造できる。このセルロースアシレートフィルムを用いることにより視野角特性に優れる光学補償フィルム、偏光板などの光学材料、およびこれらを用いた液晶表示装置を提供することが可能になった。
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
上述のように本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。さらには置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル(ブチリルとも称する)、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
本発明の発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらにのぞましくは2.65〜3.00である。
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。また、特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明のセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5質量%〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
本発明のセルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
[セルロースアシレートへの添加剤]
本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良い。例えば、ポリマーを溶媒に溶解した溶液を得るポリマー溶解工程の後に、添加剤を添加してドープを調製する添加剤添加工程を行うドープ作製工程が挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの光学的異方性、とくに下記式(i)で表されるフィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(ii)、(iii)をみたす範囲で少なくとも一種含有することがのぞましい。
(i)Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(ii)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(iii)0.01≦A≦30
上記式(ii)、(iii)は
(ii)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
(iii)0.05≦A≦25
であることがよりのぞましく、
(ii)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
(iii)0.1≦A≦20
であることがさらにのぞましい。
[セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物の構造的特徴]
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。本発明の発明者は鋭意検討した結果、下記のことを見出した。フィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いることで、光学的異方性を十分に低下させ、ReがゼロかつRthがゼロに近くなる。このためには光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
(LogP値)
本発明のセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(LogP値)が0ないし7である化合物が好ましい。LogP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、LogP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。LogP値としてさらに好ましい範囲は1ないし6であり、特に好ましい範囲は1.5ないし5である。
オクタノール−水分配係数(LogP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(LogP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen'sfragmentation法
(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))、Viswanadhan'sfragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989))、Broto'sfragmentation法(Eur.J.Med.Chem.-Chim.Theor.,19,71(1984))などが好ましく用いられるが、Crippen'sfragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のLogP値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、前記化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen'sfragmentation法により判断することが好ましい。
[光学的異方性を低下する化合物の物性]
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有しても良いし、含有しなくても良い。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01質量%ないし30質量%であることが好ましく、1ないし25質量%であることがより好ましく、5ないし20質量%であることが特に好ましい。光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。光学異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
光学異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、前記セルロースアシレートフィルムの中央部における前記化合物の平均含有率の80%〜99%である。本発明の化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
以下に本発明で好ましく用いられる、セルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下させる化合物の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。
前記一般式(1)の化合物について説明する。一般式(1)において、R11−R13はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−R13は互いに連結して環を形成してもよい。
11−R13について詳しく説明する。R11−R13は好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基である。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。例として、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどが挙げられる。
11−R13で表される脂肪族基は置換されていても良い。置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
これらの基はさらに組み合わされて複合置換基を形成してもよく、このような置換基の例としては、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、エトキシカルボニルエチル基などを挙げることができる。また、R11−R13は置換基としてリン酸エステル基を含有することもでき、一般式(1)の化合物は同一分子中に複数のリン酸エステル基を有することも可能である。
一般式(2)および(3)の化合物について説明する。一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良く、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。Zを含んで構成される5または6員環の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピロリジン、ピペリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、テトラヒドロ−2−フラノン、テトラヒドロ−2−ピロン、4−ブタンラクタム、6−ヘキサノラクタムなどを挙げることができる。
また、Zを含んで構成される5または6員環は、ラクトン構造またはラクタム構造、すなわち、Zの隣接炭素にオキソ基を有する環状エステルまたは環状アミド構造を含む。このような環状エステルまたは環状アミド構造の例としては、2−ピロリドン、2−ピペリドン、5−ペンタノリド、6−ヘキサノリドを挙げることができる。
R25は水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であるアルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)を表す。R25で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどを挙げることができる。R25で表されるアルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては前記のR11−R13に置換していても良い基を挙げることができる。
21−Y22はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが例示できる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが例示できる。
アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である。例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが例示できる。
カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが例示できる。Y21−Y22は互いに連結して環を形成してもよい。Y21−Y22はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−R13に置換していても良い基を挙げることができる。
一般式(4)〜(12)の化合物について説明する。一般式(4)〜(12)において、Y31−Y70はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルバモイル基またはヒドロキシ基を表す。
エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である。例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニルなど、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが挙げられる。
アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である。例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である。例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが挙げられる。Y31−Y70はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−R13に置換していても良い基を挙げることができる。
31−V43はそれぞれ独立に水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基を表す。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。
アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどを挙げることができる。V31−V43はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−R13に置換していても良い基を挙げることができる。
31−L80はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31−L80の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。L31−L77の好ましい例としては、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、メチルエチレン、エチルエチレンなど)、環式の2価の基(例えば、cis−1,4−シクロヘキシレン、trans−1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロペンチリデンなど)、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、スルホン、スルホキシド、スルフィド、スルホンアミド、ウレイレン、チオウレイレンなどを挙げることができる。
これらの2価の基は互いに結合して二価の複合基を形成してもよく、複合置換基の例としては、−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(CH−O−(CH)−、−(CH−S−(CH−、−(CHC(CH−などを挙げることができる。L31−L80は、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前記のR11−R13に置換していても良い基を挙げることができる。
一般式(4)〜(12)においてY31−Y70、V31−V43およびL31−L80の組み合わせにより形成される化合物の好ましい例としては、クエン酸エステル(例えば、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、O−アセチルクエン酸トリ(エチルオキシカルボニルメチレン)エステルなど)、オレイン酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸フェニル、オレイン酸シクロヘキシル、オレイン酸オクチルなど)、リシノール酸エステル(例えばリシノール酸メチルアセチルなど)、セバシン酸エステル(例えばセバシン酸ジブチルなど)、グリセリンのカルボン酸エステル(例えば、トリアセチン、トリブチリンなど)、グリコール酸エステル(例えば、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなど)、ペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラブチレートなど)、ジペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサブチレート、ジペンタエリスリトールテトラアセテートなど)、トリメチロールプロパンのカルボン酸エステル類(トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパンジアセテートモノプロピオネート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、トリメチロールプロパントリブチレート、トリメチロールプロパントリピバロエート、トリメチロールプロパントリ(t−ブチルアセテート)、トリメチロールプロパンジ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンテトラ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンジアセテートモノオクタネート、トリメチロールプロパントリオクタネート、トリメチロールプロパントリ(シクロヘキサンカルボキシレート)など)が挙げられる。
また、特開平11−246704号公報に記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報に記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報に記載のクエン酸エステル類、ピロリドンカルボン酸エステル類(2−ピロリドン−5−カルボン酸メチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸エチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸ブチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸2−エチルヘキシル)、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルなど)、キシリトールカルボン酸エステル(キシリトールペンタアセテート、キシリトールテトラアセテート、キシリトールペンタプロピオネートなど)などが挙げられる。
以下に本発明の一般式(1)ないし(12)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(1)については化合物C−1〜C−76を例示し、一般式(2)〜(12)については化合物C−201〜C−231、C−401〜C−448を例示した。表記載あるいは括弧内に記載のLogP値は、Crippen'sfragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))により求めたものである。
Figure 2006264028
(式中、R−Rは前記一般式(1)のR11−R13と同義であり、下記のC−1〜C−76で具体例を例示する。)
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
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Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
一般式(13)および(14)の化合物について説明する。上記一般式(13)において、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R、RおよびRの炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。また、一般式(14)中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、RおよびRの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。
置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、6乃至25のものがより好ましく、6乃至20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6乃至30のものが好ましく、6乃至24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。一般式(13)または一般式(14)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるも
のではない。
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
一般式(15)の化合物について説明する。
Figure 2006264028
上記一般式(15)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、アミル、イソアミル)であることが好ましく、R、RおよびRの少なくとも1つ以上が炭素原子数1乃至3のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)であることが特に好ましい。
Xは、単結合、−O−、−CO−、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは1〜3のもの、例えばメチレン、エチレン、プロピレン)またはアリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜12のもの。例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが好ましく、−O−、アルキレン基またはアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが特に好ましい。
Yは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数2〜25、より好ましくは2〜20のもの。例えば、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、ジシクロヘキシル、アダマンチル)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜18のもの。例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル)またはアラルキル基(好ましくは炭素原子数7〜30、より好ましくは7〜20のもの。例えば、ベンジル、クレジル、t−ブチルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル)であることが好ましく、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であることが特に好ましい。−X−Yの組み合わせとしては、−X−Yの総炭素数が0乃至40であることが好ましく、1乃至30であることがさらに好ましく、1乃至25であることが最も好ましい。これら一般式(14)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2006264028
Figure 2006264028
一般式(16)の化合物について説明する。
Figure 2006264028
、QおよびQはそれぞれ独立に5ないし6員環を表し、炭化水素環でもヘテロ環でもよく、また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。炭化水素環として好ましくは、置換または無置換のシクロヘキサン環、置換または無置換のシクロペンタン環、芳香族炭化水素環であり、より好ましくは芳香族炭化水素環である。へテロ環として好ましくは5ないし6員環の酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む環である。へテロ環としてより好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。
、QおよびQとして好ましくは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環である。芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。Q、QおよびQとしてより好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
またQ、QおよびQは置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが挙げられる。XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表し、Xとして好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、Nであり、Xとしてより好ましくはC−R、Nであり、特に好ましくはC−Rである。
一般式(16)として好ましくは下記一般式(17)で表される化合物である。
Figure 2006264028
(式中、XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、Nを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35は水素原子または置換基を表す。)
XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表しXとして好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、N、P=Oであり、更に好ましくはC−R、Nであり、特に好ましくはC−Rである。
11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35は水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基である。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に前述の置換基Tについて説明する。置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)などが挙げられる。
また、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基などが挙げられる。
また、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に一般式(16)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
Figure 2006264028
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Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
以下に、一般式(18)または一般式(19)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2006264028
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Figure 2006264028
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本発明の発明者は、鋭意検討した結果、オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体をセルロースアシレートに添加することによっても、光学的異方性を低下させることを見出した。
オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体の具体例を以下に示す。
(多価アルコールエステル化合物)
本発明の多価アルコールエステルは、2価以上の多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。多価アルコールエステル化合物としては以下のものが例としてあげられるが、本発明はこれらに限定されない。
(多価アルコール)
好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
(モノカルボン酸)
本発明の多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いるとセルロースアシレートフィルムの透湿度、含水率、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有しても良い。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
本発明の多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
多価アルコールエステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2006264028
Figure 2006264028
(カルボン酸エステル化合物)
カルボン酸エステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。具体的には、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることが出来る。
またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレート等を2種以上混合して使用してもよい。
カルボン酸エステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2006264028
Figure 2006264028
(多環カルボン酸化合物)
本発明において用いる多環カルボン酸化合物は分子量が3000以下の化合物であることが好ましく、特に250〜2000以下の化合物であることが好ましい。環状構造に関して、環の大きさについて特に制限はないが、3〜8個の原子から構成されていることが好ましく、特に6員環及び/又は5員環であることが好ましい。これらが炭素、酸素、窒素、珪素あるいは他の原子を含んでいてもよく、環の結合の一部が不飽和結合であってもよく、例えば6員環がベンゼン環、シクロヘキサン環でもよい。本発明の化合物は、このような環状構造が複数含まれているものであり、例えば、ベンゼン環とシクロヘキサン環をどちらも分子内に有していたり、2個のシクロヘキサン環を有していたり、ナフタレンの誘導体あるいはアントラセン等の誘導体であってもよい。より好ましくはこのような環状構造を分子内に3個以上含んでいる化合物であることが好ましい。また、少なくとも環状構造の1つの結合が不飽和結合を含まないものであることが好ましい。具体的には、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸などのアビエチン酸誘導体が代表的であり、以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
Figure 2006264028
(ビスフェノール誘導体)
本発明において用いるビスフェノール誘導体は分子量が10000以下であることが好ましく、この範囲であれば単量体でも良いし、オリゴマー、ポリマーでも良い。また他のポリマーとの共重合体でも良いし、末端に反応性置換基が修飾されていても良い。以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
Figure 2006264028
なお、ビスフェノール誘導体の上記具体例中で、R1〜R4は水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表す。l、m、nは繰り返し単位を表し、特に限定はしないが、1〜100の整数が好ましく、1〜20の整数がさらに好ましい。
[波長分散調整剤]
セルロースアシレートフィルムの波長分散を低下させる化合物(以下波長分散調整剤ともいう)について説明する。本発明のセルロースアシレートフィルムのRthの波長分散を良化させるためには、下記式(iv)で表されるRthの波長分散ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を、下記式(v)、(vi)をみたす範囲で少なくとも一種含有することがのぞましい。
(iv)ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|
(v)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−2.0
(vi)0.01≦B≦30
上記式(v)、(vi)は
(v)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−3.0
(vi)0.05≦B≦25
であることがよりのぞましく、
(v)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−4.0
(vi)0.1≦B≦20
であることがさらにのぞましい。
上記の波長分散調整剤は、200nm〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01重量%〜30重量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整する。添加量としては0.1重量%〜30重量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整できる。
セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって波長分散を平滑にすることが要求される。一方200nm〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は短波長側よりも長波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身がセルロースアシレートフィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
したがって上述したような、200nm〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はセルロースアシレートに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200nm〜400nmが好ましいが、220nm〜395nmがより好ましく、240nm〜390nmがさらに好ましい。
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200nm〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れている要求される。本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
波長分散調整剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
(化合物添加量)
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートの0.01重量%ないし30重量%であることが好ましく、0.1重量%ないし20重量%であることがより好ましく、0.2重量%ないし10重量%であることが特に好ましい。
(化合物添加の方法)
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
ベンゾトリアゾール系化合物としては一般式(101)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
一般式(101) Q1−Q2−OH
(式中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環を表わし、Q2は芳香族環を表す。)
Q1は含窒素方向芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5乃至7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等が挙げられる。更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
Q1で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
Q2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
Q2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q2は更に置換
基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)挙げられる。
また、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
一般式(101−A)
Figure 2006264028
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
、R、R、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素数が1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素数が1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
一般式(101−B)
Figure 2006264028
(式中、R、R、RおよびRは一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 2006264028
Figure 2006264028
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずに本発明のセルロースアシレートフィルムを作製した場合、保留性の点で有利であることが確認された。
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(102)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(102)
Figure 2006264028
(式中、QおよびQはそれぞれ独立に芳香族環を表す。XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。)、酸素原子または硫黄原子を表す。)
およびQで表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
およびQで表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
およびQで表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
およびQであらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
およびQは更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表し、Xとして好ましくは、NR(Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。)、またはO(酸素原子)であり、特に好ましくはOである。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)などが挙げられる。
また、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)
が挙げられる。
また、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
一般式(102−A)
Figure 2006264028
(式中、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
、R、R、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
、R、R、R、R、RおよびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素数が1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が0〜20のアミノ基、炭素数が1〜12のアルコキシ基、炭素数が6〜12のアリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数が1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数が1〜12のアルコキシ基である。
R7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
一般式(102−B)
Figure 2006264028
(式中、R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。)
10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
10として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
一般式(102)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
一般式(102)
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるシアノ基を含む化合物としては一般式(103)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(103)
Figure 2006264028
(式中、QおよびQはそれぞれ独立に芳香族環を表す。XおよびXは水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。)QおよびQで表わされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
およびQで表わされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。QおよびQは更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数が1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)が挙げられる。
また、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
およびXは水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。XおよびXで表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。また、XおよびXで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、XおよびXはそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
およびXとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O))OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
一般式(103−A)
Figure 2006264028
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X1およびX2は一般式(103)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
、R、R、R、R、R、RおよびR10として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
一般式(103−B)
Figure 2006264028
(式中、RおよびRは一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。Xは水素原子、または置換基を表す。)
は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。Xとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。
一般式(103−C)
Figure 2006264028
(式中、RおよびRは一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R21は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
21として好ましいものは以下のものである。RおよびRが両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
また、RおよびRが水素以外の場合には、一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
一般式(103)で表される化合物はJounal of AmericanChemical Society63巻 3452頁(1941)記載の方法によって合成できる。
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子(マット剤微粒子。以下微粒子と称する)を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5nm〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90g/リットル〜200g/リットルが好ましく、100g/リットル〜200g/リットルがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1μm〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1μm〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレート溶液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーで前記セルロースアシレート溶液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%が更に好ましく、15質量%〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1mあたり0.01g〜1.0gが好ましく、0.03g〜0.3gが更に好ましく、0.08g〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルフィルムの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
前記微粒子の前記ドープへの含有量は、前記ポリマー(セルロースエステル)に対して0.001重量%以上5重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01重量%以上3重量%以下であり、最も好ましくは0.1重量%以上2重量%以下である。
(剥離剤)
さらに本発明では、剥離時の荷重を小さくするために剥離剤(剥離促進剤とも称される)を添加することが好ましい。それらは、界面活性剤が有効でありリン酸系、スルフォン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系など特に限定されない。これらは、例えば特開昭61−243837号、特開2000−99847などに記載されている。
なお、剥離剤に関しては、特開2003−055501号公報に、セルロースアシレート溶液の白濁を防止し、フィルム製造剥離性とフィルム面状を改良するため、非塩素系溶剤に溶解したセルロースアシレート溶液で、酸解離定数pKaが1.93〜4.5の多塩基酸部分エステル体、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩から選ばれる添加剤を含有するセルロースアシレート溶液について記載がある。
さらに、特開2003−103545号公報には、製造時における剥離性を改良し、フィルム面状を改良するとともに、耐久性面で問題のないフィルムを提供するため、共流延法二層以上のセルロースアシレートフィルムの製法で、非塩素系溶剤溶解され、いずれかの溶液中に酸解離定数pKaが1.93〜4.50の多塩基酸の部分エステル体、そのアルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩から選ばれる添加剤Aを含有し、添加剤Aを含有しない少なくとも一層以上の溶液中に酸解離定数pKaが4.50以上のアミン化合物、または実質的に揮散性を持たず、塩基性基1個当たりの分子量が200以下のアミン化合物である添加剤Bを含有するセルロースアシレートフィルムの製法についての記載がある。
以上記載したこれらの発明は本発明においても適用できるものである。
これらの剥離剤は以下に具体的に記す。すなわち、セルロースアシレート溶液を流延する前に一般式(HK1)又は一般式(HK2)で表わされる剥離剤の少なくとも一種を溶液の0.005質量%〜2質量%添加することを特徴とする。
一般式(HK1);(R1−B1−O)n1−P(=O)−(OM1)n2
一般式(HK2); R2−B2−X
ここで、R1とR2は炭素数4〜40の置換、無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリル基を表わし、M1はアルカリ金属、アンモニア、低級アルキルアミンである。また、B1、B2は2価の連結基を表わし、Xはカルボン酸(又はその塩)、スルフォン酸(又はその塩)、硫酸エステル(又はその塩)を表わす。n1は1、2の整数であり、n2は(3−n1)の整数を表わす。
本発明では一般式(HK1)または(HK2)で表わされる少なくとも一種の剥離剤を、セルロースアシレートフィルムが含有することを特徴とするが、以下にこれらの剥離剤について記述する。
R1とR2の好ましい例としては、炭素数4〜40の置換、無置換のアルキル基(例えば、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコサニル、ドコサニル、ミリシル、など)、炭素数4〜40の置換、無置換のアルケニル基(例えば、2−ヘキセニル、9−デセニル、オレイルなど)、炭素数4〜40の置換、無置換のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、t−ブチルフェニル、ジ−t−ブチルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イソペンチルフェニル、オクチルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフェニル、イソペンタデシルフェニル、など)などを表わす。
これらの中でも更に好ましいのは、アルキルとしては、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコサニル、アルケニルとしてはオレイル、アリール基としてはフェニル、ナフチル、トリメチルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ジ−t−ブチルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフイソペンタデシルフェニルである。
次に、B1、B2の2価の連結基について記述する。炭素数1〜10のアルキレン、ポリ(重合度1〜50)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜50)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜50)オキシグリセリン、でありこれらの混合したものでも良い。これらで
好ましい連結基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ポリ(重合度1〜25)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜25)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜15)オキシグリセリンである。次にXは、カルボン酸(又は塩)、スルフォン酸(又は塩)、硫酸エステル(又は塩)であるが、特に好ましくはスルフォン酸(又は塩)、硫酸エステル(又は塩)である。塩としては好ましくはNa、K、アンモニウム、トリメチルアミン及びトリエタノールアミンである。
以下に、本発明の好ましい剥離剤の具体例を記載するがこれらに限定されるものではない。
RZ−1 C17O−P(=O)−(OH)
RZ−2 C1225O−P(=O)−(OK)
RZ−3 C1225OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−4 C1531(OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−5 {C1225O(CHCHO)−P(=O)−OH
RZ−6 {C1835(OCHCHO}−P(=O)−ONH
RZ−7 (t−C−C−OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−8 (iso−C19−C−O−(CHCHO)−P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9 C1225SONa
RZ−10 C1225OSONa
RZ−11 C1733COOH
RZ−12 C1733COOH・N(CHCHOH)
RZ−13 iso−C17−C−O−(CHCHO)−(CHSONa
RZ−14 (iso−C9H19−C−O−(CHCHO)−(CHSONa
RZ−15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16 トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17 C1733CON(CH)CHCHSONa
RZ−18 C1225−CSO・NH
本発明の一般式(HK1)又は(HK2)の少なくとも一種の使用量は、溶液の0.002質量%〜2質量%であるが、より好ましくは0.005質量%〜1質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜0.5質量%である。その添加方法は、特に限定されないがそのまま液体或いは固体のまま、溶解する前に他の素材と共に添加され溶液としても良いし、予め作製されたセルロースアシレート溶液に後から添加しても良い。
さらに、特開平10−316701号公報に記載の、酸解離定数pKaは1.93〜4.50が好ましく、より好ましくは2.0〜4.4、さらに好ましくは2.2〜4.3(例えば、2.5〜4.0)、特に好ましくは2.6〜4.3(例えば、2.6〜4.0)程度]の酸またはその塩が剥離剤として好ましい。これらは、無機酸または有機酸のいずれでもよい。酸のpKaについては「改訂3版 化学便覧,基礎編II」((財)日本化学会編,丸善(株)発行)を参照できる。以下に、酸の具体例とともに、括弧内に酸解離指数pKaを示す。前記無機酸としては、例えば、HC1O(2.31),HOCN(3.48),モリブデン酸(HMoO,3.62),HNO(3.15),リン酸(HPO,2.15),トリポリリン酸(H10,2.0),バナジン酸(HVO,3.78)などが例示できる。
有機酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸としてギ酸(3.55),オキサロ酢酸(2.27),シアノ酢酸(2.47),フェニル酢酸(4.10),フェノキシ酢酸(2.99),フルオロ酢酸(2.59),クロロ酢酸(2.68),ブロモ酢酸(2.72),ヨード酢酸(2.98),メルカプト酢酸(3.43),ビニル酢酸(4.12)などの置換基を有する酢酸,クロロプロピオン酸(2.71−3.92)などのハロプロピオン酸,4−アミノ酪酸(4.03),アクリル酸(4.26)などを挙げることが出来る。また、脂肪族多価カルボン酸としてはマロン酸(2.65),コハク酸(4.00),グルタル酸(4.13),アジピン酸(4.26),ピメリン酸(4.31),アゼライン酸(4.39),フマル酸(2.85)などであり、オキシカルボン酸としてのグリコール酸(3.63),乳酸(3.66),リンゴ酸(3.24),酒石酸(2.82〜2.99),クエン酸(2.87)なども挙げられる。さらにアルデヒド酸又はケトン酸としてのグリオキシル酸(3.18),ピルビン酸(2.26),レブリン酸(4.44)など、芳香族モノカルボン酸であるアニリンスルホン酸(3.74〜3.23),安息香酸(4.20),アミノ安息香酸(2.02−3.12),クロロ安息香酸(2.92〜3.99),シアノ安息香酸(3.60〜3.55),ニトロ安息香酸(2.17〜3.45),ヒドロキシ安息香酸(4.08〜4.58),アニス酸(4.09〜4.48),フルオロ安息香酸(3.27〜4.14),クロロ安息香酸,ブロモ安息香酸(2.85〜4.00),ヨード安息香酸(2.86−4.00)などの置換基を有する安息香酸,サリチル酸(2.81),ナフトエ酸(3.70〜4.16),ケイ皮酸(3.88),マンデル酸(3.19)なども挙げられる。また、芳香族多価カルボン酸であるフタル酸(2.75),イソフタル酸(3.50),テレフタル酸(3.54)など、複素環式モノカルボン酸のニコチン酸(2.05),2−フランカルボン酸(2.97)など,複素環式多価カルボン酸2,6−ピリジンジカルボン酸(2.09)なども挙げられる。
さらに有機酸としては、アミノ酸類もよく例えば、アミノ酸としてのアスパラギン(2.14),アスパラギン酸(1.93),アデニン(4.07),アラニン(2.30),β−アラニン(3.53),アルギニン(2.05),イソロイシン(2.32),グ
リシン(2.36),グルタミン(2.17),グルタミン酸(2.18),セリン(2.13),チロシン(2.17),トリプトファン(2.35),トレオニン(2.21),ノルロイシン(2.30),バリン(2.26),フェニルアラニン(2.26),メチオニン(2.15),リシン(2.04),ロイシン(2.35)など、アミノ酸誘導体であるアデノシン(3.50),アデノシン三リン酸(4.06),アデノシンリン酸(3.65〜3.80),L−アラニル−L−アラニン(3.20),L−アラニルグリシン(3.10),β−アラニルグリシン(3.18),L−アラニルグリシルグリシン(3.24),β−アラニルグリシルグリシン(3.19),L−アラニルグリシルグリシルグリシン(3.18),グリシル−L−アラニン(3.07),グリシル−β−アラニン(3.91),グリシルグリシル−L−アラニン(3.18),グリシルグリシルグリシン(3.20),グリシルグリシルグリシルグリシン(3.18),グリシルグリシル−L−ヒスチジン(2.72),グリシルグリシルグリシル−L−ヒスチジン(2.90),グリシル−DL−ヒスチジルグリシン(3.26),グリシル−L−ヒスチジン(2.54),グリシル−L−ロイシン(3.09),γ−L−グルタミル−L−システイニルグリシン(2.03),N−メチルグリシン(サルコシン,2.20),N,N−ジメチルグリシン(2.08),シトルリン(2.43),3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(2.31),L−ヒスチジルグリシン(2.84),L−フェニルアラニルグリシン(3.02),L−プロリルグリシン(3.07),L−ロイシル−L−チロシン(3.15)などが用いられる。
本発明では以上の酸の中でも、脂肪族モノカルボン酸であるギ酸,クロロ酢酸などのハロ酢酸、ハロプロピオン酸,アクリル酸などの飽和又は不飽和C1〜C3のモノカルボン酸など、脂肪族多価カルボン酸であるマロン酸,コハク酸,グルタル酸,フマル酸などの飽和又は不飽和C2〜C4のジカルボン酸など、更にオキシカルボン酸であるグリコール酸,乳酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸などのC1〜C6のオキシカルボン酸が好ましい。これらの酸は非水溶性や水溶性のいずれであってもよい。
前述の酸は遊離酸として用いてもよく、部分エステル化物、アルカリ金属塩、マグネシウム塩、アルカリ土類金属塩、重金属として用いてもよい。アルカリ金属としては、リチウム,カリウム,ナトリウムなどが例示できる。またはアルカリ土類金属である、カルシウム,バリウム,ストロンチウムなどが例示できる。重金属としては、亜鉛、スズ、ニッケル、鉄などである
好ましいアルカリ金属には、ナトリウムがある。またマグネシウムも好ましく用いられる。好ましいアルカリ土類金属には、カルシウムがある。これらのアルカリ金属,マグネシウム,アルカリ土類金属はそれぞれ単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、アルカリ金属とマグネシウム又はアルカリ土類金属とを併用してもよい。
前記酸およびその金属塩の総含有量は、剥離性,透明性,製膜性などを損なわない範囲
、例えば、セルロースアシレート1g当たり、1×10−9〜3×10−5モル、好ましくは1×10−8〜2×10−5モル(例えば、5×10−7〜1.5×10−5モル)、さらに好ましくは1×10−7〜1×10−5モル(例えば、5×10−6〜8×10−6モル)程度の範囲から選択でき、通常、5×10−7〜5×10−6モル(例えば、6×10−7〜3×10−6モル)程度である。
なお、セルロースアシレート中の前記酸およびその金属塩の含有量は、次のような方法
により定量できる。
(イオンクロマトグラフィー分析)
微粉末状の乾燥したセルロースアセテート2.0gを正確に秤量し、熱水を80ml加えて撹拌して密閉して1晩放置した後、さらに撹拌して試料を沈降させる。約10mlの上澄みを試料液とし、イオンクロマトグラフィー法により、前記酸の含有量を測定する。
なお、これらのアルカリ金属,マグネシウム,アルカリ土類金属は、含有量が少ない場合、セルロースアセテートの酸性基(カルボキシル基やスルホン酸基など)と結合していてもよい。セルロースアセテート1g中のアルカリ金属,マグネシウム及びアルカリ土類金属の総含有量は、セルロースアセテートの耐熱安定性を損なわない有効量以上であって、イオン当量換算で5.5×10−6当量以下(例えば、0.01×10−6〜5×10−6当量)、好ましくは3.5×10−6当量以下(例えば、0.01×10−6〜3×10−6当量)、さらに好ましくは2.5×10−6当量以下(例えば、0.01×10−6〜2×10−6当量)程度である。特に、アルカリ金属,マグネシウム,アルカリ土類金属の総含有量が1×10−6当量以下(例えば、0.1×10−6〜0.5×10−6当量)、特に0.3×10−6当量以下(例えば、0.1×10−6〜0.3×10−6当量)程度のセルロースアセテートを用いると、流延法によりドープを金属支持体に流延し、半乾燥状態のフィルムを金属支持体から剥離するとき、剥離抵抗を大きく低減できる。なお、セルロースアセテート中のアルカリ金属,マグネシウム,アルカリ土類金属の含有量は、原子吸光分析により定量できる。
本発明のセルロースアセテートは、例えばセルロースアセテートと前記酸解離指数の酸若しくは部分エステル化物又はその金属塩とを混合し、セルロースアセテートを前記酸若しくは部分エステル化物又はその金属塩で処理することにより調製できる。上記酸若しくは部分エステル化物又はその金属塩の混合や処理は、任意の工程、例えば、セルロースアセテートの製造工程(例えば、加水分解・熟成工程終了後の耐熱安定剤の添加工程など)やセルロースアセテートの製造後に行うことができる。また、酸若しくは部分エステル化物又はその金属塩による処理は、粉粒状、フレーク状セルロースアセテートの洗浄や浸漬処理,含浸処理などで行ってもよい。さらに、前記混合や処理は、セルロースアセテートを含むドープに、酸若しくは部分エステル化物又はその金属塩を添加することによって行ってもよい。なお、前記酸解離指数pKaの酸、又は部分エステル化物、又はその金属塩の混合や処理は、作業性などを損なわない適当な温度、例えば、10℃〜70℃(好ましくは15℃〜50℃)程度の温度で行うことができ、混合又は処理時間は、適当な範囲、例えは、1分〜12時間程度の範囲から選択できる。このような特定pKaの酸若しくは部分エステル化物又はその金属塩を用いると、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合するカルボキシル基のうち少なくとも一部を酸型のカルボキシル基として存在させることができる。
セルロースアシレート溶液は、流延された後に残留溶媒が20〜1000質量%溶液質
量を固形質量で割った%で金属支持体から剥ぎ取られることが好ましく、一般には剥離剤がない場合は20〜150質量%でないと剥離が困難であり、乾燥時間がかかるという欠
点があった。これに対して、本発明の剥離剤を含有したセルロースアシレート溶液では、残留溶媒が20〜500質量%でも剥離が可能であり、乾燥時間を短縮でき生産性の大幅な向上を可能とするものである。さらに本発明の剥離剤を含有することで、剥離時の剥離荷重を著しく小さくすることが出来、これにより面状が著しく改良された。
このようなセルロースアシレートフィルムは、流延法によるフィルムの製造において、金属支持体からの剥離性が高く、製膜速度、ひいてはセルロースアシレートフィルムの生産性を向上できる。また、セルロースアシレートフィルムは、透明性などの光学的特性に優れ、その透明度は例えば60〜100%(好ましくは70〜100%,さらに好ましくは75〜100%)程度であり、通常70〜98%程度であり、ヘイズは0.01〜8%、好ましくは0.02〜5%である。さらに、セルロースアセテートの黄色度の指標となるイエローネスインデックス(Yellowness Index,YI)は、例えば、0.05〜10、好ましくは0.08〜7である。
なお、添加剤に関しては特開2003−128838号公報には、剥ぎ取り性、面状、膜強度を良化させるために、少なくとも一種類の活性水素と反応する基を2個以上有する架橋剤をセルロースアシレートに対して0.1質量%〜10質量%含有するセルロースアシレートドープ溶液についての記載がある。
また、特開2003−165868号公報には、添加剤を添加し、良好な透湿度を有し、寸法安定性に優れたフィルムを提案している。
(可塑剤)
本発明で好ましい可塑剤は、沸点が200℃以上で25℃で液体であるか、または融点が25〜250℃である固体であることが好ましい。更に好ましくは沸点が250℃以上で25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である可塑剤が挙げられる。可塑剤が液体の場合は、その精製は通常減圧蒸留によって実施されるが高真空ほど好ましく、例えば100Pa以下が好ましい。また分子蒸留装置などを用いて精製することも特に好ましい。また可塑剤が固体の場合は、溶媒を用いて再結晶させてろ過,洗浄し乾燥することで実施されることが一般的である。
これらの好ましく添加される可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP;なお、トリフェニルホスフェートとも称される)及びトリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートが含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。
クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチルが含まれる。これらの好ましい可塑剤は25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなどがある。中でもトリフェニルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレートが好ましい。特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレートが好ましい。これらの可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量はセルロースアシレートに対して3重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以上15重量%以下である。
これらは、特開平5−194788号、特開昭60−250053号、特開平4−227941号、特開平6−16869号、特開平5−271471号、特開平7−286068号、特開平5−5047号、特開平11−80381号、特開平7−20317号、特開平8−57879号、特開平10−152568号、特開平10−120824号の各公報などに記載されている可塑剤もまた好ましい。これらの記載によると可塑剤だけでなくその利用方法あるいはその特性についての好ましい記載が多数あり、本発明においてもこのましく用いられるものである。
その他、本発明においてはその光学的異方性を小さくする可塑剤として、特開平11−124445号記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号記載の置換フェニルリン酸エステル類などが好ましく用いられる。
また、特開2003−012822号公報には、クエンサン酸エステル化合物を可塑剤として、2重量%〜20重量%及び、紫外線吸収剤を含有させることで、ピンホールを低減し、さらに流延膜(塗布膜の場合も含まれる)の皺、筋による反射光ムラをなくし、平均反射率の低い光学フィルムを得られることが記載されている。
さらに、可塑剤として、透湿性と寸法安定性を向上させ、さらに接着剤偏光板貼合の乾燥むらや皺を改良するために、少なくとも基層と表層とを有する多層構造のセルロースエステルフィルムにおいて、少なくとも一方の表層に微粒子を含有し、基層に非リン酸エステル系可塑剤及び紫外線吸収剤を含有するセルロースエステルフィルムが記載されている。
また、透湿性、保留性に優れたセルロースエステルフィルムを得るために、特開2003−096236号公報にはセルロース系樹脂に、可塑剤として、特定のエステル化合物を配合したセルロース系樹脂組成物について記載されている。
また、セルローストリアセテートフィルムの透明性を良好にするために、特開2001−122978号公報に、ATR赤外吸光法で測定した表面の1490cm−1と1370cm−1の吸収の比が両面の平均で0.20以下である発明が記載されている。
以上記載したこれらのセルロースアシレートに関する発明は、本発明においても適用できるものである。
(劣化防止剤及び紫外線防止剤)
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。
なお、劣化防止剤に関しては、特開2002−286931号公報に耐久性に優れるPDP前面フィルタを実現するために、支持体上に少なくとも2層の積層された層を有する光学フィルムについて記載がある。
さらに、特開2002−363420号公報に、分光吸収に優れ、ブリードアウトが少なく、また着色無く、透明性に優れたフィルムを作るために、UVモノマーから形成される単位を含むUVポリマーとを含有する樹脂組成物について記載している。
また、特開2003−053882号公報には、高機能性の薄膜を、生産性高く形成する薄膜形成ために、20℃で液体の添加剤を1重量%〜30重量%含有するセルロースエステルフィルムに直接、又は他の層を介して金属化合物層を設けた光学フィルムに関して記載されている。
さらに、特開2003−107201号公報にはセルロースエステルフィルムの平面性悪化防止するため、酸素原子と窒素原子のうち少なくともいずれか一方と、金属原子とで構成される金属化合物層が、セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に、直接又は他の層を介して設けられている光学フィルムについて開示している。
また、特開2003−113317号公報には、紫外吸収特性、透明性、耐久性(ブリードアウト故障)及び耐光性に優れた光学フィルムを得るため紫外線吸収剤を含有する光学フィルムが記載されている。
さらに、紫外線吸収剤に関しては、特開2003−026668号公報に、融点が低く、低揮発性、樹脂相溶性に優れブリードアウトが起き難いベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤について記載されている。
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、特開平5−190707号、特開平5−194789号、特開平5−271471号、特開平6−107854号、特開平6−118233号、特開平6−148430号、特開平7−11056号、特開平7−11055号、特開平7−11056号、特開平8−29619号、特開平8−239509号、特開2000−204173号、特開平5−197073号、特開平5−194789号、特開平6−107854号、特開昭60−235852号、特開平12−193821号、特開平8−29619号、特開平6−118233号、特開平6−148430号の各公報に記載がある。
本発明で好ましい劣化防止剤は、沸点が200℃以上で25℃で液体であるか、または融点が25℃〜250℃である固体であることが好ましい。更に好ましくは沸点が250℃以上で25℃で液体であるか、融点が25℃〜200℃の固体である劣化防止剤が挙げられる。
劣化防止剤が常温で液体の場合は、その精製は通常減圧蒸留によって実施されるが高真空ほど好ましく、例えば100Pa以下が好ましい。また分子蒸留装置などを用いて精製することも特に好ましい。また可塑剤が固体の場合は、溶媒を用いて再結晶させてろ過,洗浄し乾燥することで実施されることが一般的である。
劣化防止剤は例えば特開平5−194789号公報に記載のpKaが4以上の塩基性化合物などが好ましく挙げられる。例えば、1級、2級、3級のアミンや芳香族系の塩基化合物が好ましい。具体的には、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ドデシル−ジブチルアミン、オクタデシル−ジメチルアミン、トリベンジルアミン、ジエチルアミノベンゼンなどを挙げることができるが、詳細は前記公報の一般式(1)及び(2)に記載される化合物A−1〜A−73、B−1〜B−67を利用できる。また、特開平5−197073号公報に記載の化合物などが好ましく挙げられる。具体的には、前記公報の一般式(A−I)、(A−II)、(A−III)、(B−I)、(C−I)、(C−II)、(C−III)、(D−I)〜(D−VII)に分類される化合物(A−1)〜(A−46)、(B−I−1)〜(D−I−32)、(C−1)〜(C−10)、(D−I−1)〜(D−I−96)、(D−1)〜(D−12)、(D−VII−1)〜(D−VII−6)、(D−VIII−1)〜(D−VIII−67)が利用できる。
さらにまた、特開平6−107854号公報に記載の化合物などが好ましく挙げられる。具体的には、前記公報の一般式(I)で表される化合物(D−1)〜(D−69)の塩基性化合物、(A−I)〜(A−III)、(B−I)、(C−I)〜(C−III)で表される化合物(D−1)〜(D−69)、化合物(A−1)〜(A−46)、(B−I−1)〜(B−I−32)、(C−1)〜(C−10)も好ましく利用できる。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
本発明の溶液製膜方法により製造されるセルロースアシレートフィルムに好ましく使用される紫外線吸収剤について説明する。前記セルロースアシレートフィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板または液晶表示用部材等に使用されるが、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく含まれている。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としての具体例を下記に列記するが、本発明はこれらに限定されない。2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、ドープ中のポリマー(例えば、セルロースアシレート)に対して0.001重量%以上5重量%以下となるようにドープ中に前記紫外線吸収剤を添加させることが好ましく、0.01重量%以上3重量%以下であることが好ましく、最も好ましくは0.1重量%以上2重量%以下である。
また、その他にも旭電化 プラスチック用添加剤概要 「アデカスタブ」のカタログにある光安定剤も使用できる。チバ・スペシャル・ケミカルズのチヌビン製品案内にある光安定剤、紫外線吸収剤も使用できる。SHIPROKASEIKAISYAのカタログにあるSEESORB、SEENOX、SEETECなども使用できる。城北化学工業の紫外線吸収剤、酸化防止剤も使用できる。共同薬品のVIOSORB、吉富製薬の紫外線吸収剤も使用できる。
また、特開平6−148430号公報に記載の紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れており、特に不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常はセルロースアシレートフィルム1m当り、0.2g〜5.0gが好ましく、0.4g〜1.5gがさらに好ましく、0.6g〜1.0gが特に好ましい。
なお、紫外領域の分光透過率に関しては、特開2003−043259号公報に、色再現性に優れ紫外線照射の耐久性にも優れた光学フィルム及び偏光板及び表示装置を得るために必要な、390nmにおける分光透過率が50%〜95%であり、かつ350nmにおける分光透過率が5%以下である光学フィルムについて記載されている。
以上記載したこれらの発明は本発明においても適用できるものである。
なお、紫外線吸収剤の添加は予めセルロースアシレートの混合溶液を作製するときに添加してもよいが、セルロースアシレートのドープを予め作製し、流延までのいずれかの時点で添加されてもよい。後者の場合、セルロースアシレートを溶剤に溶解させたドープと、紫外線吸収剤と少量のセルロースアシレートとを溶解させた溶液をインライン添加、混合を行う。そのために、例えばスタティックミキサ(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。後添加する紫外線吸収剤には、同時にマット剤を混合しても良いし、その他の添加剤例えば、レターデーション制御剤、可塑剤、劣化防止剤、剥離促進剤等の添加物を混合しても良い。インラインミキサーを用いる場合、高圧下で濃縮溶解することが好ましく加圧容器の種類は特に限定されるものではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、撹拌ができればよい。加圧容器はそのほか圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ前記溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば30℃〜150℃の範囲に設定するのが好適である。又、圧力は設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。このときの冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5℃〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行うほうが、ドープ粘度を低減できるためより好ましい。
セルロースアシレートフィルムには、融点が30℃以上である紫外線吸収剤が好ましく、更には50℃〜200℃の融点である紫外線吸収剤が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、高い寸法安定性、良好な紫外線カット性能から液晶表示用部材に用いられるのが好ましい。液晶表示用部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等があげられる。上記記載の中でも、寸法安定性に対しても厳しい要求のある偏光板、偏光板用保護フィルムにおいて、本発明のセルロースアシレートフィルムは更に好ましく用いられる。
特に、最近のノートパソコン等の偏光板用保護フィルムとしては、従来よりも薄膜化したセルロースアシレートフィルムが要望されている。薄膜化を行っても、紫外線に対する保護を十分に行う為には、従来よりも紫外線吸収剤の単位重量当りの使用量を多くする必要がある。そのため、上記記載のようなアルカリケン化処理時において、紫外線吸収剤が増量され、且つ、薄膜化された従来の偏光板保護フィルムは、紫外線吸収剤の溶出、析出などがおこりやすくなる。特に、融点が100℃以上の紫外線吸収剤を含有する本発明のセルロースアシレートフィルムは、紫外線吸収剤が増量され、且つ、薄膜化されても、アルカリケン化処理時の紫外線吸収剤の溶出が極めて少なく、生産工程上のメリットが極めて高い。これらについては、特開2000−351859号公報に詳細が開示されているが、従来も一般に用いられてきた技術である。
なお、特開2002−031715号公報には、光学フィルムにおいて、380nmに於けるモル吸光係数が4000以上である紫外線吸収性モノマーとエチレン性不飽和モノマーとの共重合体であって、該共重合体の重量平均分子量が2000〜20000である紫外線吸収性共重合ポリマーを含有することでブリードアウトがなく透明で、良好な長期耐候性のフィルムを得る発明が記載されており、この発明は本発明にも適応できる。
[その他]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
[化合物添加の比率]
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート重量に対して5%〜45%であることがのぞましい。より好ましくは10%〜40%であり、さらにのぞましくは15%〜30%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下がのぞましく、2000以下がよりのぞましく、1000以下がさらにのぞましい。これら化合物の総量が5%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45%以上であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(いわゆる、フィルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
[セルロースアシレート溶液の有機溶媒]
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることがで
き、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
以上本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としても良いし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
その他、本発明のセルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876号、特開平12−95877号、特開平10−324774号、特開平8−152514号、特開平10−330538号、特開平9−95538号、特開平9−95557号、特開平10−235664号、特開平12−63534号、特開平11−21379号、特開平10−182853号、特開平10−278056号、特開平10−279702号、特開平10−323853号、特開平10−237186号、特開平11−60807号、特開平11−152342号、特開平11−292988号、特開平11−60752号、特開平11−60752号などの各公報に記載されている。これらの公報によると本発明のセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
[ドープ製造方法]
図1にドープ製造ライン10を示す。始めに溶媒タンク11からバルブ12を開き、溶媒を溶解タンク13に送る。次にホッパ14に入れられているTACを溶解タンク13に計量しながら送り込む。なお、本発明に用いられる原料はTACに限定されず、前記セルロースエステルを用いることができる。本発明では、TACを用いる例を説明する。添加剤タンク15から添加剤溶液をバルブ16の開閉操作を行って必要量を溶解タンク13に送り込む。なお、添加剤は溶液として送り込む方法以外にも、例えば添加剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンク13に送り込むことも可能である。また、添加剤が固体の場合には、ホッパを用いて溶解タンク13に送り込むことも可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンク15中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、多数の添加剤タンクを用いてそれぞれに添加剤が溶解している溶液を入れて、それぞれ独立した配管により溶解タンク13に送り込むこともできる。
前述した説明においては、溶解タンク13に入れる順番が、溶媒(混合溶媒の場合も含めた意味で用いる)、TAC、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。TACを計量しながら溶解タンク13に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも溶解タンク13に予め入れる必要はなく、後の工程でTACと溶媒との混合物(以下、これらの混合物もドープと称する場合がある)に混合させることもできる。
溶解タンク13を包み込むようにジャケット17が備えられている。モータ18により回転する第1攪拌翼19が取り付けられている。さらに、モータ20により回転する第2攪拌翼が取り付けられていることが好ましい。なお、第1攪拌翼は、アンカー翼であることが好ましく、第2攪拌翼21は、ディゾルバータイプのものを用いることが好ましい。ジャケット17に伝熱媒体を流して溶解タンク13内を−10℃〜55℃の範囲に温度調整することが好ましい。第1攪拌翼19,第2攪拌翼21を適宜選択して回転させることでTACが溶媒中で膨潤した膨潤液22を得ることができる。
膨潤液22をポンプ25により加熱装置26に送液する。加熱装置26は、ジャケット付き配管を用いることが好ましく、更に膨潤液22を加圧できる構成であることが好ましい。膨潤液22を加熱または加圧加熱条件下でTACなどを溶媒に溶解させてドープを得る。なお、この場合に膨潤液22の温度は、0℃〜97℃であることが好ましい。また、膨潤液22を−10℃〜−100℃の温度に冷却する冷却溶解法を行うこともできる。加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択して行うことでTACを溶媒に十分溶解させることが可能となる。温調機27によりドープの温度を略室温とした後に、濾過装置28により濾過を行いドープ中の不純物を取り除く。濾過装置28の濾過フィルタの平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、濾過流量は、50L/hr以上であることが好ましい。濾過後のドープは、バルブ29を介してストックタンク30に入れられる。
前記ドープは、後述する溶液製膜用ドープとして用いることが可能である。しかしながら、膨潤液22を調製した後にTACを溶解させる方法は、TACの濃度を上昇させるほど時間がかかりコストの点で問題が生じる場合がある。その場合には、目的とするTAC濃度より低濃度のドープを調製した後に目的とする濃度のドープを調製する濃縮工程を行うことが好ましい。濾過装置28で濾過されたドープを3方バルブ29によりフラッシュ装置31に送液する。フラッシュ装置31内でドープ中の溶媒の一部を蒸発させる。蒸発した溶媒は、凝縮器(図示しない)により液体とした後に回収装置32で回収する。その溶媒は再生装置33によりドープ調製用の溶媒として再生を行い再利用することがコストの点から有利である。
濃縮されたドープをフラッシュ装置31からポンプ34を用いて抜き出す。さらに、ドープ中の泡抜きを行うことが好ましい。泡抜きは、公知のいずれの方法により行っても良く、例えば超音波照射法が挙げられる。その後に濾過装置35に送液して異物の除去を行う。なお、この際にドープの温度が0℃〜200℃であることが好ましい。そして、ストックタンク30にドープを入れる。
これらの方法により、TAC濃度が5質量%〜40質量%のドープを製造することができる。なお、製造されたドープ(以下、原料ドープと称する)36は、ストックタンク30に貯蔵される。
セルロースエステルフィルムを得る溶液製膜法での、素材、原料、添加剤の溶解方法、濾過方法、脱泡、添加方法については、特願2004−264464号の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用できる。
[溶液製膜方法]
図2にフィルム製造ライン40を示す。ストックタンク30には、モータ41で回転する攪拌翼42が取り付けられている。攪拌翼42を回転させることで原料ドープ36を攪拌して常に均一にしている。ストックタンク30には、中間層用ドープ流路43,支持体面用ドープ流路44,エアー面用ドープ流路45が接続されている。原料ドープ36は、それぞれの流路43,44,45に設けられているポンプ46,47,48により送液される。フィードブロック70に送液されて合流した後に流延ダイ71から流延バンド72上に流延される。なお、流延ダイにはマルチマニホールド型共流延ダイを用いることもできる。
中間層用ドープ流路43中の原料ドープ36にスタックタンク50に入れられている中間層用添加液51がポンプ52により送液されて混合される。その後に静止型混合器(スタティックミキサ)53により攪拌混合されて均一となる。以下、このドープを中間層用ドープと称する。中間層用添加液51には、例えば紫外線吸収剤,レターデーション制御剤などの添加剤が予め含まれた溶液(または分散液)が入れられている。
支持体面用ドープ流路44中の原料ドープ36にストックタンク55に入れられている支持体面用添加液56がポンプ57により送液されて混合される。その後に静止型混合器58により攪拌混合されて均一となる。以下、このドープを支持体面用ドープと称する。支持体面用添加液56には、支持体である流延バンドからの剥離を容易とする剥離促進剤(例えば、クエン酸エステルなど)、フィルムをロール状に巻き取った際にフィルム面間での密着を抑制するマット剤(例えば、二酸化ケイ素など)などの添加剤が予め含有されている。なお、支持体面用添加液56には、可塑剤,紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていても良い。
エアー面用ドープ流路45中の原料ドープ36にストックタンク60に入れられているエアー面用添加液61がポンプ62により送液されて混合される。その後に静止型混合器63により攪拌混合されて均一となる。以下、このドープをエアー面用ドープと称する。エアー面用添加液61には、フィルムをロール状に巻き取った際にフィルム面間での密着を抑制するマット剤(例えば、二酸化ケイ素など)などの添加剤が予め含有されている。なお、エアー面用添加液61には、剥離促進剤,可塑剤,紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていても良い。
中間層用ドープ,支持体面用ドープ,エアー面用ドープは、フィードブロック70にそれぞれ所望の流量で送液される。フィードブロック70内で各ドープが合流した後に流延ダイ71から流延バンド72上に流延される。
流延ダイ71の材質は析出硬化型のステンレス鋼を用いることが好ましい。その熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の素材を用いることが好ましい。また、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するものを用いることもできる。さらに、その素材はジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いる。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ71を作製することが好ましい。これにより流延ダイ71内を流れるドープの面状が一定に保たれる。流延ダイ71及びフィードブロック70の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。スリットのクリアランスは自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いる。流延ダイ71のリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリット全巾に亘り50μm以下のものを用いる。また、流延ダイ71内でのドープの剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)となるように調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ71の幅は特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルムの幅の1.1倍〜2.0倍程度のものを用いることが好ましい。また、製膜中は、所定の温度に保持されるように温調機(例えば、ヒータ,ジャケットなど)を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ71にはコートハンガー型のものを用いることが好ましい。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を所定の間隔で設けてヒートボルトによる自動厚み調整機構を取り付けることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)46〜48の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フィルム製造ライン40中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm以下となるように調整することが好ましい。また、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
リップ先端に硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ71と密着性が良く、ドープと密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al,TiN,Crなどが挙げられるが特に好ましくはWCを用いることである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
流延ダイ71のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために溶媒供給装置をスリット端に取り付けることが好ましい。溶媒供給装置は、溶媒75が入れられているタンク76とポンプ77とノズル78とから構成されている(図4参照)。ドープを可溶化する溶媒75としては、例えば、ジクロロメタン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒が挙げられる。この溶媒75をポンプ77により送液してノズル78からを流延ビード端部とスリットとの気液界面に供給することが好ましい。端部の片側それぞれに0.02mL/min〜1.0mL/minの範囲で供給することが流延膜中に異物が混合することを防止できるために好ましい。なお、この液を供給するポンプ77の脈動率は5%以下のものを用いることが好ましい。
流延ダイ71の下方には、回転ローラ80,81に掛け渡された流延バンド72が設けられている。流延バンド72は、図示しない駆動装置により回転ローラ80,81が回転することに伴い無端で走行する。流延バンド72の移動速度、すなわち流延速度は、10m/分〜200m/分であることが好ましい。また、流延バンド72の表面温度を所定の値にするために回転ローラ80,81に伝熱媒体循環装置82が取り付けられていることが好ましい。流延バンド72の表面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。回転ローラ80,81内には伝熱媒体流路が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより回転ローラ80,81の温度を所定の値に保持できる。
流延バンド72の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、長さは20m〜200m、厚みは、0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。材質は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。また、流延バンド72の全体の厚みムラは0.5%以下のものを用いることが好ましい。
回転ローラ80,81が駆動する際に流延バンド72に生じるテンションが1.5×10kg/mとなるように調整することが好ましい。また、流延バンド72と回転ローラ80,81との相対速度差は、0.01m/min以下となるように調整する。流延バンド72の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド72が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために流延バンド72の両端を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づきフィードバック制御を行うことがより好ましい。さらに、流延ダイ71直下における流延バンド72表面の回転ローラ80の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以下となるように調整することが好ましい。
なお、回転ローラ80,81を直接支持体として用いることも可能である。この場合には、回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転させることが好ましい。また、回転ローラ80,81の表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そこで、クロムメッキ処理などを行い十分な硬度と耐久性を持たせる。なお、支持体(流延バンド72や回転ローラ80,81)の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm以上30μm未満のピンホールは
1個/m以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m以下とすることが好ましい。
流延ダイ71、流延バンド72などは流延室85に収められている。流延室85内の温度を所定の値に保つため温調設備86が取り付けられている。流延室85の温度が−10℃〜57℃であることが好ましい。また、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)87が設けられている。凝縮液化した有機溶媒は、回収装置88により回収され再生させた後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。
流延ダイ71からドープ(エアー面用ドープ,中間層用ドープ,支持体面用ドープ)を流延ビードを形成させながら流延バンド72上に共流延して流延膜90を形成する。なお、このときのそれぞれドープの温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。また、流延ビードの形成を安定化させるため減圧チャンバ91が流延ビード背面に取り付けられ、所望の圧力に調整されていることが好ましい。減圧チャンバ91は配管92とバッファタンク93と配管94と減圧装置95とから構成されている(図3参照)。ビード背面は、前面との圧力よりも5Pa〜1000Paの範囲で減圧することが好ましい。さらに、減圧チャンバ81の温度を所定の温度に保つため、ジャケット(図示しない)を取り付けることが好ましい。減圧チャンバ81の温度は特に限定されるものではないが、25℃〜55℃の範囲であることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものにたもつため流延ダイ71のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。エッジ吸引風量は、1L/min〜100L/minの範囲であることが好ましい。
流延膜90は、流延バンド72の走行とともに移動する。このときに流延膜90を乾燥させるために乾燥風を送風する送風口100,101,102を設けることが好ましい。送風口の取り付け位置は、流延バンド72の上部上流側100,下流側101,流延バンド72の下部102に設けられている形態を図示しているがこれに限定されるものではない。また、形成直後の流延膜90への圧力変動を防止するためのラビリンスを設けることが好ましい(図3参照)。ラビリンスについては後に詳細に説明する。
また、流延室85内の風圧変動を抑制する振動吸収チャンバ110が流延室85に取り付けられていることが好ましい。振動吸収チャンバ110については、後に詳細に説明する。
流延膜90が自己支持性を有するものとなった後に、剥取ローラ120で支持しながら流延バンド72から流延膜90を剥ぎ取る。以下、この剥ぎ取られた膜を湿潤フィルム121と称する。その後に多数のローラ130が設けられている渡り部131を搬送させた後にテンタ式乾燥機140に送り込む。渡り部131では、送風機132から所望の温度の乾燥風を送風することで湿潤フィルム121の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度が、20℃〜250℃であることが好ましい。なお、渡り部131では下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フィルム121に流延方向に延伸を付与させることも可能である。
テンタ式乾燥機140に送られる湿潤フィルム121は、その両縁がクリップで把持され搬送されつつ乾燥される。また、テンタ式乾燥機140内を異なった温度ゾーンに区画して乾燥条件を調整することが好ましい。テンタ式乾燥機140を用いて湿潤フィルム121を幅方向に延伸及び緩和させることもできる。延伸及び緩和を行うことで、得られるフィルムの光学特性を所望のものとすることができる。また、渡り部121及び/またはテンタ式乾燥機140で湿潤フィルム121の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を0.5%〜300%延伸することが好ましい。
テンタ式乾燥機140で所定の残留溶媒量まで乾燥された湿潤フィルム121は、フィルム145として送り出される。フィルム145の両端を耳切装置150によりその両縁が切断される。切断されたフィルムは、図示しないカッターブロワによりクラッシャ151に送られる。クラッシャ151によりフィルムの縁部は、粉砕されてチップとなる。このチップをドープ調製用に再利用することがコストの点から有利である。なお、このフィルムの両縁を切断する工程は、省略することもできるが、前記流延工程から前記フィルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
次にフィルム145は、多数のローラ160が備えられている乾燥室161に送られる。乾燥室161内の温度は、特に限定されるものではないが、60℃〜145℃の範囲であることが好ましい。乾燥室161でフィルム145は、ローラ160に巻き掛けられながら搬送され溶媒は揮発して乾燥される。また、乾燥室161には、吸着回収装置162が取り付けられている。揮発溶媒は、吸着回収装置162により吸着回収される。溶媒成分が除去された大気は乾燥室161内に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室161は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置150と乾燥室161との間に予備乾燥室(図示しない)を設け、フィルム145の予備乾燥を行うことがフィルム温度が急激に上昇することによるフィルムの形状変化を抑制できるためにより好ましい。
フィルム101は、冷却室165に搬送され、略室温まで冷却される。なお、乾燥室161と冷却室165との間に調湿室(図示しない)を設けても良い。調湿室でフィルム145の所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付ける。これにより、フィルム145のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制できる。
フィルム145が搬送されている間の帯電圧が、所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように強制除電装置(除電バー)170を設けている。図では、冷却室165の下流側に設けられている例を図示しているがその位置に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ171を設けて、フィルム145の両縁にエンボス加工でナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸が、1μm〜200μmであることが好ましい。
最後に、フィルム101を巻取室180内の巻取ローラ181で巻き取る。この際に、プレスローラ182で所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフィルム145は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、幅方向が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。また、1800mmより大きい場合にも効果がある。フィルム145の厚みは、15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも適用できる。
図3に本発明の溶液製膜方法に用いられる流延室(ケーシング)85及びその周囲の装置の概略を示す。回転ローラ80の周囲には遮風板190,191,192が設けられている。遮風板190〜192には、回転ローラ80と対向する部分にラビリンス193,194,195がそれぞれ取り付けられている。これら遮風板190〜192により、流延室85内は3つの領域A,B,Cに区画されて、それぞれシールされている。
領域Aは、遮風板190,191により図において回転ローラ80の右上半分を覆う区画である。領域Aには、流延ダイ71が配置されている。また、この流延ダイ71の流延ビード背面側には減圧チャンバ91が取り付けられている。減圧チャンバ91には配管92が接続されている。配管92にはバッファタンク93が接続され、さらにそのバッファタンク93は配管94と接続して、配管94は減圧装置95と接続している。本発明において、バッファタンク93の断面積A1(m)と配管94の断面積A2(m)との比(A1/A2;以下、断面積比と称する。)は5以上200以下であることが好ましい。断面積比が5未満であると、減圧チャンバ91内の圧力変動をバッファタンク93で緩和する効果が十分に発現しないおそれがある。また、断面積比が200を超えると、バッファタンクが93が大き過ぎるため減圧装置95での減圧チャンバ91内の圧力調整が困難となるおそれがある。
本発明に用いられるバッファタンク93の長さL(m)は、1m以上7m以下であることが好ましく、1.5m以上5m以下であることがより好ましく、最も好ましくは2m以上4m以下である。バッファタンク93が1m未満と減圧チャンバ91内の圧力変動の抑制が十分に行えないおそれが生じる。また、7mより長いと減圧度を所望の範囲に調整することが困難となったり、フィルム製造ライン40の配置の自由度が減少したりするおそれがある。
流延ダイ71から流延バンド72上に流延されるドープは、流延バンド72上で流延膜90となる。また、送風口100,101,102からは流延膜90を乾燥させる乾燥風が送風している。流延膜90の形成直後には遮風板190,191により乾燥風が当たらないようになっている。また、領域Aには後述する風圧振動抑制手段の一種である振動吸収チャンバ110が取り付けられている。
領域Bは遮風板190,192により流延バンド72の大部分を覆う空間となっている。この領域Bに前記送風口100〜102が設けられており、各送風口100〜102からは流延膜90を乾燥する乾燥風が送風されている。なお、送風口の数,位置,形状などは図示したものに限定されるものではない。乾燥風の温度,風量又は風速などは特に限定されるものではない。具体的には、40℃〜150℃の乾燥空気を用いる例が挙げられる。流延膜90は領域B内を流延バンド72と共に移動することで乾燥が進行して自己支持性を有するものとなる。
領域Cは、遮風板191,192により回転ローラ80の下半分を覆う空間である。この領域Cには剥取ローラ120が設けられている。自己支持性を有する流延膜90は、剥取ローラ120に支持されながら剥ぎ取られてフィルム(以下、湿潤フィルムと称する)121となる。
図4に風圧振動抑制手段である振動吸収チャンバ110の概略図を示す。振動吸収チャンバ110は、弾性を有して軽量な部材(例えば、金属,木製板,紙など)から形成されているフレーム200と、弾性を有し薄膜で形成されている薄膜袋201とから形成されている。なお、薄膜袋201の素材は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの弾性体であることが好ましい。なお、薄膜袋201を構成する薄膜の厚みは特に限定されるものではないが、20μm〜70μmであることが好ましい。
振動吸収チャンバ110の周囲には、金網などにより形成されている保護枠202が設けられていることが薄膜袋201の損傷を防止するために好ましい。また、振動吸収チャンバ110には図示しない開口が設けられ、流延室85の開口85aを覆うように配置されて、接着剤あるいは粘着テープなどで接合されている。また、薄膜袋201はフレーム200に接着剤あるいは粘着テープなどで取り付けられ保持されている。また各フレーム200と保護枠との間には第1コイルバネ203及び第2コイルバネ204がそれぞれ配置され、フレーム200及び薄膜袋201は保護枠202に対して所定の位置に保持される。第1コイルバネ203は流延室85内の圧力が高まったときに薄膜袋201が張り切り過ぎて弾性を失わないように設けられている。また、第2コイルバネ204は、流延室内85内の圧力が低くなったときにつぶれ過ぎてしないように設けられている。
このように構成されている振動吸収チャンバ110は、流延バンド72の走行に伴う風圧変動により流延室85内の圧力が高くなると、振動吸収チャンバ110の容積が大きくなるように薄膜袋201が弾性変形して圧力変動を吸収する。また、流延室85内の圧力が低くなると、振動吸収チャンバ110の容積が小さくなるように薄膜袋201が弾性変形して圧力変動を吸収する。こうして、振動吸収チャンバ110の容積が変化することで、流延室85内、特に領域A内の圧力変動を吸収して風圧振動を抑制する。これにより、流延ビードが振動して生じるフィルム145の厚みムラが抑制できる。
図4では、振動吸収チャンバ110の薄膜袋201を略直方体の箱型の形状としているが、本発明はその形状に限定されるものではない。例えば、円柱状や半球状などの形状であっても良い。また、箱型にすることなく、開口85aを1枚の薄膜で覆うように設けても良い。また、図4では、薄膜に平面状のものを用いているが、蛇腹状などの形状のものを用いても良い。
本発明において、振動吸収チャンバ110の流延室85への取り付け位置は領域Aに限定されるものではない。例えば、領域B,Cに設けても良いし、取り付ける台数も特に限定されるものではない。
図5に流延ダイ71と流延バンド72との近傍の拡大概略図を示す。ドープは、流延ダイ71のスリット71aを通り、ダイリップ71bから流延される。ドープは、流延ビード90aを形成して、流延バンド72上で流延膜90となる。また、流延ビード90aの背面は減圧チャンバ91が設けられており、所望の圧力に減圧されている。圧力は特に限定されるものではないが、大気圧−1500Pa以上大気圧−10Pa以下の範囲であることが好ましい。
また、ダイリップ71bの側面からドープを構成する溶質(主にポリマーである)を溶解する混合溶媒を供給する。混合溶媒75は、タンク76に入れられポンプ77でノズル78に送液されて、ノズル78の先端からダイリップ71bの側面に混合溶媒75を供給する。これにより、いわゆるカワバリと称される異物が成長することが抑制されて、製造されるフィルム145の品質を良好なものとする。
ダイリップ71bと流延バンド72とのクリアランスCL(mm)は、0.3mm以上3.5mm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上3mm以下であり、最も好ましくは0.5mm以上2mm以下である。流延バンド72の走行位置は、回転ローラ80,81の回転に伴い、上下に変動する。そのため、クリアランスCL(mm)が0.3mm未満であると、ダイリップ71bと流延バンド72とが接触するおそれが生じる。また、クリアランスCL(mm)が3.5mmを超えると、流延ビード90aの背面を減圧にしても、流延ビードの形状が安定しないおそれがある。
領域Aにおいて、振動吸収チャンバ110を取り付けたり、減圧チャンバ91の上流側にバッファタンク93を取り付けたりすることにより、流延ビード90aの形状の安定化を図ることが可能となる。これにより、製造されるフィルム145の面状の良質化、厚みムラの抑制を図ることができる。例えば、80μmのフィルム145を製造する際の一具体例を挙げる。振動吸収チャンバ110を取り付けた場合、1/60秒以上1/10秒以下の間隔における流延ビード90aの振れ幅を500μm以下とすることが可能となる。また、バッファタンク93を取り付けた場合も500μm以下とすることが可能となる。振動吸収チャンバ110とバッファタンク93とを取り付けた場合には、100μm以下とすることが可能となる。この場合には、フィルム145の厚みムラを3μm以内とすることが可能である。
また、前記条件でフィルム145の製造を行うことで、フィルム145の長手方向における厚みムラの抑制を可能とする。例えば、80μmのフィルム145を製造する際の一具体例を挙げる。振動吸収チャンバ110を取り付けた場合、1mm以上100mm以下の所定の長さにおける流延ビード90aの振れ幅を800μm以下とすることが可能となる。振動吸収チャンバ110とバッファタンク93とを取り付けた場合には、400μm以下とすることが可能となる。この場合には、フィルム145の厚みムラを3μm以内とすることが可能である。
前記製造条件でフィルム145を製造すると光学特性に優れるものが得られる。例えば、下記式(I)で定義される正面レターデーションRe(nm)と下記式(II)で定義される膜厚方向レターデーションRth(nm)とを制御することが可能となる。
(I)Re(λ)(nm)=(nx−ny)×d
(II)Rth(λ)(nm)=((nx+ny)/2−nz)×d
式中Re(λ)(nm)は、波長λ(nm)における正面レターデーション値であり、Rth(λ)(nm)は、波長λ(nm)における膜厚方向レターデーション値である。また、nxは前記フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記フィルムの膜厚方向の屈折率である。また、d(nm)は前記フィルムの膜厚である。
本発明の溶液製膜方法で製造されるフィルム145の膜厚は40μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは40μm以上90μm以下であり、最も好ましくは40μm以上60μm以下である。このようないわゆる薄手のフィルムに好ましく適用できる。
また、正面レターデーション値Reと膜厚方向レターデーション値Rthとが下記式(III)及び(IV)を満たすことが可能となり、
(III)0≦Re(630)≦且つ|Rth(630)|≦25
(IV)|Re(400)−Re(700)|≦10且つ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
前記条件を選択することにより、下記式(V)及び(VI)を満たすことが可能となる。
(V)0≦Re(630)≦5且つ|Rth(630)|≦20
(VI)|Re(400)−Re(700)|≦5且つ|Rth(400)−Rth(700)|≦25
本発明の溶液製膜方法において、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させる。さらに両共流延を組み合わせても良い。同時積層共流延を行う際には、図2に示されているようにフィードブロック70を取り付けた流延ダイ71を用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さ及び/又は支持体側の層の厚さがそれぞれ全体のフィルム厚さ中で0.5%〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合に、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープを低粘度ドープで包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合に、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に内部のドープは、そのドープよりもアルコールの組成比が大きなドープで包み込まれることが好ましい。
本発明において、フィルム(湿潤フィルム87を含めた意味で用いる)101を延伸乾燥する工程は、テンタ100を用いる箇所に限定されるものではない。例えば、渡り部90において下流側のローラを上流側のローラより回転速度を速めることで湿潤フィルム87の流延方向(長手方向)に張力を付与し延伸を行うことができる。このときに、その湿潤フィルム87の膜面温度をその湿潤フィルム87のガラス転移温度Tg(℃)より高くすることで延伸乾燥を行う。これにより、乾燥してフィルム101となった後に厚み方向レターデーションRth(nm)が30nm以上500nm以下となり、面内レターデーションRe(nm)が0nm以上200nm以下となる。また、レターデーション比(Rth/Re)は4.0以下となる。このフィルム101は、セルギャップが狭い液晶表示装置の光学フィルム(例えば、偏光板保護フィルム,光学補償フィルムなど)に好ましく用いられる。
さらに、乾燥室105で延伸乾燥を行っても良い。この場合にも下流側のローラ104を上流側のローラ104より回転速度を速めることでフィルム101の流延方向(長手方向)に張力を付与し延伸を行うことができる。このときに、そのフィルム101の膜面温度をそのフィルム101のガラス転移温度Tg(℃)より高くすることで延伸乾燥を行う。これにより、フィルム101の厚み方向レターデーションRth(nm)が30nm以上500nm以下となり、面内レターデーションRe(nm)が0nm以上200nm以下となる。また、レターデーション比(Rth/Re)は4.0以下となる。このフィルム101は、セルギャップが狭い液晶表示装置の光学フィルム(例えば、偏光板保護フィルム,光学補償フィルムなど)に好ましく用いられる。
図2に示したように3種類のドープを共流延することによりフィルム101の目的とする特性を容易に得ることができる。すなわち、フィルム101をロールとして巻き取る際に、フィルム面間での密着を防止する必要がある。そのため、ドープ中にマット剤を添加することが好ましいが、通常マット剤は光学特性の悪化(例えば、透明性の悪化など)を招く。そこで、本実施形態のようにフィルムの表裏面となる支持体面用ドープとエアー面用ドープとにマット剤を含有させ、中間層用ドープには含有させないことにより、表面密着性を低下させると共に所望の光学特性を得ることが可能となる。
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取り方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特願2004−264464号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースエステルフィルムの性能及びそれらの測定法は、特願2004−264464号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらも本発明にも適用できる。
[表面処理]
前記セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
さらに前記セルロースエステルフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m〜1000mg/m含有することが好ましい。セルロースエステルフィルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特願2004−264464号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
(用途)
前記セルロースエステルフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。セルロースエステルフィルムを貼り合わせた偏光板を、通常は2枚を液晶層に貼り合わせ液晶表示装置を作製する。但し、この配置はどの位置でも良い。特願2004−264464号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースエステルフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースエステルフィルムについての記載もある。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースエステルフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもできる。これらの記載は、本発明にも適用できる。特願2004−264464号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
[高湿度処理後のフィルムの光学性能変化]
[セルロースアシレートフィルム物性評価]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの環境変化による光学性能の変化については、60℃90%RHに240時間処理したフィルムのReおよびRthの変化量が15nm以下であることがのぞましい。よりのぞましくは12nm以下であり、10nm以下であることがさらにのぞましい。
[高温度処理後のフィルムの光学性能変化]
また、80℃240時間処理したフィルムのReおよびRthの変化量が15nm以下であることがのぞましい。よりのぞましくは12nm以下であり、10nm以下であることがさらにのぞましい。
[フィルム加熱処理後の化合物揮散量]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムにのぞましく用いることができる、Rthを低下させる化合物と、ΔRthを低下させる化合物は、80℃240時間処理したフィルムからの化合物の揮散量が30%以下であることがのぞましい。よりのぞましくは25%以下以下であり、20%以下であることがさらにのぞましい。
なお、フィルムからの揮散量は、80℃240時間処理したフィルムおよび未処理のフィルムをそれぞれ溶媒に溶かし出し、液体高速クロマトグラフィーにて化合物を検出し、化合物のピーク面積をフィルム中に残存した化合物量として、下記式により算出した。
揮散量(%)={(未処理品中の残存化合物量)−(処理品中の残存化合物量)}/(未処理品中の残存化合物量)×100
[フィルムのガラス転移温度Tg]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgは、80℃〜165℃である。耐熱性の観点から、Tgが100℃〜160℃であることがより好ましく、110℃〜150℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度Tgの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料10mgを、常温から200度まで昇降温速度5℃/分で示差走査熱量計(DSC2910、T.A.インスツルメント)で熱量測定を行い、ガラス転移温度Tgを算出する。
[フィルムのヘイズ]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムのヘイズは0.01%〜2.0%であることがのぞましい。よりのぞましくは0.05%〜1.5%であり、0.1%〜1.0%であることがさらにのぞましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定する。
[フィルムのRe、Rthの湿度依存性]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの面内のレターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthはともに湿度による変化が小さいことが好ましい。具体的には、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値の差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜50nmであることが好ましい。より好ましくは0〜40nmであり、さらに好ましくは0〜35nmである。
[フィルムの平衡含水率]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃80%RHにおける平衡含水率が、0%〜4%であることが好ましい。0.1%〜3.5%であることがより好ましく、1%〜3%であることが特に好ましい。4%以上の平衡含水率であると、光学補償フィルムの支持体として用いる際にレターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎてしまい好ましくない。
含水率の測定法は、セルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料重量(g)で除して算出する。
[フィルムの透湿度]
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JIS Z 0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算して400m・24h〜2000g/m・24hであることがのぞましい。500m・24h〜1800g/m・24hであることがより好ましく、600m・24h〜1600g/m・24hであることが特に好ましい。2000g/m・24hを越えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、本発明のセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が400g/m・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m)し、透湿度=調湿後重量−調湿前重量で求める。
[フィルムの寸度変化]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの寸度安定性は、60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合(高湿)の寸度変化率および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合(高温)の寸度変化率がいずれも0.5%以下であることがのぞましい。よりのぞましくは0.3%以下であり、さらにのぞましくは0.15%以下である。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料30mm×120mmを2枚用意し、25℃、60%RHで24時間調湿し、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mmの間隔で開け、パンチ間隔の原寸(L0)とする。1枚の試料を60℃、90%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L1)を測定、もう1枚の試料を90℃、5%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定する。すべての間隔の測定において最小目盛り1/1000mmまで測定する。60℃、90%RH(高湿)の寸度変化率={|L0−L1|/L0}×100、90℃、5%RH(高温)の寸度変化率={|L0−L2|/L0}×100、として寸度変化率を求める。
[フィルムの弾性率]
(弾性率)
本発明のセルロースアシレートフィルムの弾性率は、200kgf/mm〜500kgf/mmであることが好ましい、より好ましくは240kgf/mm〜470kgf/mmであり、さらに好ましくは270kgf/mm〜440kgf/mmである。具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用い、23℃・70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求める。
[フィルムの光弾性係数]
(光弾性係数)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの光弾性係数は、50×10−13cm/dyne以下であることが好ましい。30×10−13cm/dyne以下であることがより好ましく、20×10−13cm/dyne以下であることがさらに好ましい。具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料12mm×120mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出する。
[本発明のセルロースアシレートフィルムの評価方法]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの評価に当たって、以下の方法で測定して実施する。
(面内のレターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRth)
セルロースアシレートフィルム試料(以下、フィルム試料と称する)30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Re(λ)は自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定する。また、Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し算出する。
(Re、Rthの波長分散測定)
フィルム試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、エリプソメーターM−150(日本分光(株)製)において波長780nmから380nmの光をフィルム法線方向に入射させることにより各波長でのReを求め、Reの波長分散を測定する。また、Rthの波長分散については、前記Re、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から780〜380nmの波長の光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長780nm〜380nmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力して算出する。
(分子配向軸)
フィルム試料70mm×100mmを、25℃、65%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))にて、垂直入射における入射角を変化させた時の位相差より分子配向軸を算出する。
(軸ズレ)
また、自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))でフィルム試料の軸ズレ角度を測定する。幅方向に全幅にわたって等間隔で20点測定し、絶対値の平均値を求める。また、遅相軸角度(軸ズレ)のレンジとは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとったものである。
(透過率)
フィルム試料20mm×70mmを、25℃,60%RHで透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)で可視光(615nm)の透過率を測定する。
(分光特性)
フィルム試料13mm×40mmを、25℃,60%RHで分光光度計(U−3210、(株)日立製作所)にて、波長300nm〜450nmにおける透過率を測定する。傾斜幅は72%の波長−5%の波長で求めた。限界波長は、(傾斜幅/2)+5%の波長で表す。吸収端は、透過率0.4%の波長で表す。これより380nmおよび350nmの透過率を評価する。
[フィルム表面の性状]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの表面は、JISB0601−1994に基づく前記フィルムの表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.5μm以下であることが好ましい。好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.2μm以下である。前記フィルム表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することが出来る。
[セルロースアシレートフィルムのレターデーションの面内ばらつき]
本発明のセルロースアシレートフィルムは次の式を満たすことがのぞましい。
|Re(MAX)−Re(MIN)|≦3かつ|Rth(MAX)−Rth(MIN)|≦5[式中、Re(MAX)、Rth(MAX)は任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値、Re(MIN)、Rth(MIN)は最小値である。]
[フィルムの保留性]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムにおいては、フィルムに添加した各種化合物の保留性が要求される。具体的には、前記セルロースアシレートフィルムを80℃/90%RHの条件下に48時間静置した場合のフィルムの質量変化が、0%〜5%であることが好ましい。より好ましくは0%〜3%であり、さらに好ましくは0%〜2%である。
〈保留性の評価方法〉
フィルム試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下で24時間放置後の質量を測定して、80±5℃、90±10%RHの条件下で48時間放置した。処理後の試料の表面を軽く拭き、23℃、55%RHで1日放置後の質量を測定して、以下の方法で保留性を計算する。
保留性(質量%)={(放置前の質量−放置後の質量)/放置前の質量}×100
[フィルムの力学特性]
(カール)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値は、−10/m〜+10/mであることが好ましい。前記セルロースアシレートフィルムには後述する表面処理、光学異方性層を塗設する際のラビング処理の実施や配向膜、光学異方性層の塗設や貼合などを長尺で行う際に、前記セルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値が前述の範囲外では、フィルムのハンドリングに支障をきたし、フィルムの切断が起きることがある。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触するために発塵しやすくなり、フィルム上への異物付着が多くなり、光学補償フィルムの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えることがある。又、カールを上述の範囲とすることで光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減できるほか、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができ、好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
(引裂き強度)
JISK7128−2:1998の引裂き試験方法に基づく引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)が、本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの膜厚が20〜80μmの範囲において、2g以上が好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更には6〜25gである。又、60μm換算で8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
[フィルムの残留溶剤量]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01質量%〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01質量%〜1.0質量%である。前記フィルムの残留溶剤量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。1.0%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による製膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
[フィルムの吸湿膨張係数]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10−5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10−5/%RH以下とすることが好ましく、10×10−5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10−5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時のフィルム試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、前記セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
[表面処理]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、前記セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3Torr〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
[アルカリ鹸化処理によるフィルム表面の接触角]
前記セルロースアシレートフィルムを偏光板の透明保護フィルムとして用いる場合の表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が上げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることがのぞましい。よりのぞましくは50°以下であり、45°以下であることがさらにのぞましい。接触角の評価法はアルカリ鹸化処理後のフィルム表面に直径3mmの水滴を落とし、フィルム表面と水滴のなす角をもとめる通常の手法によって親疎水性の評価として用いることができる。
(耐光性)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの光耐久性の指標として、スーパーキセノン光を240時間照射したフィルムの色差ΔE*abが20以下であることがのぞましい。よりのぞましくは18以下であり、15以下であることがさらにのぞましい。色差の測定は、UV3100(島津製作所製)を用いる例を挙げることができるがそれに限定されるものではない。測定の仕方は、フィルム試料を25℃60%RHに2時間以上調湿した後にキセノン光照射前のフィルムのカラー測定を行ない初期値(L0*、a0*、b0*)を求める。その後、フィルム試料単体で、スーパーキセノンウェザーメーターSX−75(スガ試験機(株)製)にて、150W/m、60℃50%RH条件にてキセノン光を240時間照射する。所定時間の経過後、フィルム試料を恒温槽から取り出し、25℃60%RHに2時間調湿した後に、再びカラー測定を行い、照射経時後の値(L1*、a1*、b1*)を求める。これらから、色差ΔE*ab=((L0*−L1*)+(a0*−a1*)+(b0*−b1*)0.5を求める。
[機能層]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および前記液晶セルと前記偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に前記セルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
[用途(偏光板)]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムの用途について説明する。前記セルロースアシレートフィルムは、特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に前記偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いている偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、前記偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
[用途(光学補償フィルム)]
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムはReおよびRthが0≦Re≦10nmかつ|Rth|≦25nmと光学的異方性が小さく、|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35と波長分散が小さいため、余計な異方性を生じず、複屈折を持つ光学異方性層を併用すると光学異方性層の光学性能のみを発現することができる。
したがって前記セルロースアシレートフィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合、併用する光学異方性層のReおよびRthは、Reが0nm〜200nmかつ|Rth|が0nm〜400nmであることが好ましく、この範囲であればどのような光学異方性層でも良い。前記セルロースアシレートフィルムが使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フィルムとして要求される、どのような光学異方性層も併用することができる。併用される光学異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成しても良いし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成しても良い。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子について、特開2001−4387号公報に開示されている。
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開95/22586号パンフレット、同95/24455号パンフレット、同97/00600号パンフレット、同98/23580号パンフレット、同98/52905号パンフレット、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20μm〜500μmであることが好ましく、40μm〜100μmであることが最も好ましい。
また、光学異方性層を形成するポリマーフィルムとして、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミドおよびポリアリールエーテルケトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を用い、これを溶媒に溶解した溶液を基材に塗布し、溶媒を乾燥させてフィルム化する方法も好ましく用いることができる。この際、上記ポリマーフィルムと基材とを延伸して光学異方性を発現させて光学異方性層として用いる手法も好ましく用いることができ、本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは上記基材として好ましく用いることができる。また、上記ポリマーフィルムを別の基材の上で作製しておき、ポリマーフィルムを基材から剥離させたのちに前記セルロースアシレートフィルムと貼合し、あわせて光学異方性層として用いることも好ましい。この手法ではポリマーフィルムの厚さを薄くすることができ、50μm以下であることが好ましく、1μm〜20μmであることがより好ましい。
(一般的な液晶表示装置の構成)
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および前記液晶セルと前記偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
(液晶表示装置の種類)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
(TN型液晶表示装置)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
(STN型液晶表示装置)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90度〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
(VA型液晶表示装置)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0nm乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70nm乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20nm乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70nm乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150nm乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において前記セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に前記セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
(反射型液晶表示装置)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、WO98/48320号パンフレット、特許第3022477号に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00/65384号パンフレットに記載がある。
(その他の液晶表示装置)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、前記セルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムを好ましく用いることができる。
(写真フィルム支持体)
さらに本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。前記各公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が本発明でも適用できる。
(透明基板)
本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリア性に優れる必要があることから、必要に応じて前記セルロースアシレートフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも片面にSiO等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設けたりする方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2%〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報などに公開されている。
以下に本発明の実施例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
[実験1]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
<セルロースアシレート溶液A組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−1〜B−6を調製した。
Figure 2006264028
<セルロースアセテートフィルム試料001の作製>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液B−1の40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。乾量基準で溶媒含有率70質量%のときにドラムから剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率(乾量基準)が3質量%乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み80μmのセルロースアセテートフィルム試料001を作製した。
<セルロースアセテートフィルム試料002〜003、101〜105の作製>
セルロースアセテートフィルム001の作製において添加剤溶液、及び厚みを表2のものに変更した以外はセルロースアセテートフィルム試料001と同様にしてセルロースアセテートフィルム試料002〜003、101〜105を作製した。これら試料の波長380nmおよび波長350nmにおける分光透過率を測定したところ、いずれの試料でも波長380nmの透過率が45%以上95%以下となるが、波長分散調整剤を添加した試料でのみ波長350nmにおいて透過率が10%以下であることがわかった。
Figure 2006264028
[実験2]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Cを調製した。
<セルロースアシレート溶液C組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記表3の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−7〜B−19を調製した。セルロースアシレート溶液Cの465質量部に、添加剤溶液B−7〜B−19の40質量部を添加して厚み80μmのセルロースアセテートフィルム試料試料004〜007、106〜114を作製した。これら試料のドープ溶液の透明度はいずれも85%以上と良好であり、光学的異方性を低下させる化合物、波長分散調整剤ともにセルロースアシレート溶液に十分に相溶していることを確認した。またこれら試料のヘイズはいずれも0.01%〜2%の範囲にあり各種のフィルム製品にした際にも透明度が十分であることを確認した。さらに、これら試料のガラス転移温度Tgを測定したところ、本発明の光学的異方性低下剤や波長分散調整剤を添加していない比較試料004を除いてはいずれも80℃〜165℃であることを確認した。
Figure 2006264028
[実験3]
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Dを調製した。
(セルロースアセテート溶液D組成)
酢化度2.86のセルロースアセテート 100.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
(マット剤溶液の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSILR972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
(マット剤溶液組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアセテート溶液D 10.3質量部
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤については下記表4に示すものを用いた。
(添加剤溶液組成)
光学的異方性を低下する化合物 49.3質量部
波長分散調整剤 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアセテート溶液D 12.8質量部
(セルロースアセテートフィルム試料115の作製)
上記セルロースアセテート溶液Dを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成で光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤のセルロースアセテートに対する質量比はそれぞれ12%、1.8%であった。残留溶剤量(乾量基準)50%でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアセテートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μmであった。
(セルロースアセテートフィルム試料008〜011、116〜128の作製)
添加剤溶液中の光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤の種類及び量を表4の内容に変更した以外は同様にしてセルロースアセテートフィルム試料008〜011、116〜128を作製した。表4には試料115作製の溶液組成も記入した。これら試料の相対湿度10%と相対湿度80%での膜厚方向のレターデーションの差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)を測定したところ、本発明の光学的異方性低下剤を添加していない比較試料008、009および光学的異方性低下剤の代わりに可塑剤ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)を添加した比較試料010、011においてはΔRthが30nm以下にならず光学的異方性の湿度依存性が大きかった。一方、本発明の光学的異方性低下剤を含む試料115〜128においてはΔRthが0nm〜30nmの範囲にあり、湿度依存性が低下していることを確認した。
またこれら試料の25℃80%RHにおける平衡含水率を測定したところ、比較試料008以外においてはいずれも4%以下であり本発明の光学的異方性低下剤や波長分散調整剤の添加によりセルロースアシレートフィルムが疎水化されていることが確認できた。
さらにこれら試料の60℃、95%RH、24hrの透湿度(80μm換算)を測定したところ、比較試料008以外においてはいずれも400g/m・24hr以上2000g/m・24hr以下であり、また比較試料009、010と比較して本発明の光学的異方性低下剤や波長分散調整剤を添加した試料115〜128はいずれも透湿度が良化していることが確認できた。また、比較試料011以外の試料ではいずれもフィルムの白濁はなく、十分に透明なフィルムが作成できたが、比較試料011は添加化合物の総量がセルロースアシレートに対して49%と高く、5〜45%の範囲を超えており、この場合はフィルムが白濁して化合物が析出し(いわゆる泣き出し)、透明性を持ったセルロースアシレートフィルムとしては評価できなかった。
また、試料126と127においては、80℃、90%RHの条件に48時間放置した際の質量変化を測定したところ、試料126は−0.12%、試料127は−0.02%であった。波長分散調整剤としてベンゾトリアゾール系化合物であるUV−21、UV−22、UV−23を用いたが、分子量が320以下であるUV−23(分子量315.5)を含まない試料127の方が試料126よりも保留性の点で有利であることが確認できた。
Figure 2006264028
[実験4]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Eを調製した。この際、置換度2.49、2.86、2.92の三種のセルロースアシレートを用いた(表5参照)。
<セルロースアシレート溶液E組成>
セルロースアセテート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
別のミキシングタンクに、下記表5の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−20〜B−25を調製した。セルロースアシレート溶液Eの465質量部に、添加剤溶液B−20〜B−25の40質量部を添加して厚み40μmのセルロースアセテートフィルム試料試料128〜132および比較試料012〜013を作製した。これら試料について、実験3と同様に相対湿度10%と相対湿度80%での膜厚方向のレターデーションの差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)、25℃80%RHにおける平衡含水率、60℃、95%RH、24hrの透湿度(80μm換算)、80℃90%RH、48時間後の質量変化、60℃95%RH、24時間後の寸度変化および弾性率を測定したところ、本発明の全置換度2.92のセルロースアシレートフィルムを用い、さらに光学的異方性低下剤、波長分散調整剤を含む試料129〜132は置換度2.49の比較試料012と比較していずれも良化していることが確認できた。
Figure 2006264028
[実験5]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Fを調製した。この際、全置換度2.85(アセチル置換度2.06+プロピニル置換度0.79)および全置換度2.70(アセチル置換度1.93
+プロピニル置換度0.77)の二種類のセルロースアシレートフィルムを用いた。
<セルロースアシレート溶液F組成>
セルロースアシレート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
別のミキシングタンクに、下記表6の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−26〜B−31を調製した。セルロースアシレート溶液Fの465質量部に、添加剤溶液B−26〜B−31の40質量部を添加して厚み40μmのセルロースアシレートフィルム試料試料133〜139を作製した。これら試料について、実施例3と同様に相対湿度10%と相対湿度80%での膜厚方向のレターデーションの差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)、25℃80%RHにおける平衡含水率、および60℃、95%RH、24hrの透湿度(80μm換算)を測定したところ、本発明の全置換度2.85または全置換度2.70のセルロースアシレートを用い、さらに光学的異方性低下剤、波長分散調整剤を含む試料133〜139は実験3の比較試料008〜010と比較していずれも良化していることが確認できた。
Figure 2006264028
[実験6]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
アセチル置換度2.92のセルロースアシレートを用い、下記表7の組成物を用いる以外は実験3と同様にして厚み80または40μmのセルロースアセテートフィルム試料140〜145を作製した(表7参照)。
Figure 2006264028
[実験7]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
全置換度2.70(アセチル置換度1.0+ブチリル置換度1.7)のセルロースアシレートを用い、下記表8の組成物を用いる以外は実験3と同様にして厚み80または40μmのセルロースアセテートフィルム試料146〜150を作製した(表8参照)。
Figure 2006264028
実験1〜5で得られた本発明のセルロースアシレートフィルム試料101〜139および比較試料001〜011の、光学特性の評価結果を表9〜12に記載する。本発明の光学的異方性を低下する化合物を用いた試料101〜139は、これらの化合物を用いていない比較試料001〜006、008〜009および一般的な可塑剤でLogP値が本発明の好ましい範囲外である7.3とビフェニル−ジフェニルフォスフェート(BDP)を用いた比較試料007、010に比較して、いずれもRe(630)、Rth(630)ともに十分な低下が見られ、光学的にほぼ等方性に近づいている。また本発明の波長分散を調整する化合物を併用した試料は、比較試料に対していずれの試料も|Re(400nm)−Re(700nm)|、|Rth(400nm)−Rth(700nm)|ともに十分な低下が見られ、波長分散がゼロに近づいていることが分かった。
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
Figure 2006264028
[実験8]
(偏光板の作製)
実験1で得た本発明のセルロースアセテートフィルム試料101を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムの表面をケン化した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム試料101を2枚用意して偏光膜を間にして貼り合わせ、両面がセルロースアシレートフィルム101によって保護された偏光板を得た。この際両側のセルロースアシレートフィルム試料101の遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。同様にして本発明の実験1〜7の試料102〜150および実験2の比較試料004についても偏光板を作製した。本発明のセルロースアシレートフィルム試料101〜150、比較試料004はいずれも延伸したポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。この偏光板を以下、偏光板101〜150、偏光板004という。
(比較例)
実験8において、偏光膜の保護を本発明の溶液製膜方法により得られたセルロースアシレートフィルムを2枚で行う代わりに、市販のポリカーボネートフィルム「パンライトC1400」(帝人化成製)2枚を用いて同様の操作で偏光板を作製した。しかし延伸したポリビニルアルコールとの貼合性が不十分であり、ポリカーボネートフィルムは偏光膜の保護フィルムとして機能できず、偏光板加工適性に問題があった。
(比較例)
実験8において、偏光膜の保護を前記セルロースアシレートフィルムを2枚で行う代わりに、厚さ80μmのアートン(登録商標)フィルム(JSR製)2枚を用いて同様の操作で偏光板を作製した。しかし延伸したポリビニルアルコールとの貼合性が不十分であり、アートン(登録商標)フィルムは偏光膜の保護フィルムとして機能できず、偏光板加工適性に問題があった。
(偏光板耐久性)
実験8で作製した本発明の溶液製膜方法により得られたセルロースアシレートフィルム試料101〜150および比較試料004を用いた偏光板を60℃95%RHの条件で500時間放置した後の偏光度を評価したところ、試料101〜150を用いた偏光板の偏光特性は比較試料004を用いた偏光板に対していずれも優れており、本発明の光学的異方性を低下する化合物または波長分散調整剤の添加(比較試料004はどちらも無添加)により、セルロースアシレートフィルムを偏光板加工した際の耐久性が向上していることが確認できた。
[実験9]
(IPS型液晶表示装置への実装評価)
実験1〜7で得たセルロースアシレートフィルムおよび実験8で得た偏光板を用いて、液晶表示装置へ実装評価してその光学性能が十分であるか確認した。なお本実験ではIPS型液晶セル、以下の実施例ではVA型、OCB型液晶セルを用いるが、本発明の溶液製膜方法により得られたセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板または光学補償フィルムの用途は液晶表示装置の動作モードに限定されることはない。
実験8で作製した偏光板のうち、偏光板115〜150および偏光板008〜010(実験3〜7で作製したセルロースアシレートフィルム試料115〜150および比較試料008〜010で作製した偏光板)に対して、アートン(登録商標)フィルム(JSR社製)を一軸延伸した光学補償フィルムを貼合して光学補償機能を持たせた。この際、光学補償フィルムの面内レターデーションの遅相軸を偏光板の透過軸と直交させることで、正面特性を何ら変えることなく視覚特性を向上させることができる。光学補償フィルムの面内レターデーションReは270nm、厚さ方向のレターデーションRthは0nmでNzファクターは0.5のものを用いた。
上記の偏光板115と光学補償フィルムの積層体を2組作製し、光学補償フィルムが各々液晶セル側となるように、「偏光板115と光学補償フィルムの積層体+IPS型の液晶セル+偏光板115と光学補償フィルムの積層体」の順番に重ね合わせて組み込んだ表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できた。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5度、ラビング方向:基板上下とも75度とした。
同様にして偏光板116〜127、138〜139、140〜150および偏光板008〜010についても光学補償フィルムを貼合した積層体を2組用意して、IPS液晶セルと組み込んだ表示装置を作製した。
以上のようにして作製した液晶表示装置において、装置正面からの方位角方向45度、極角方向70度における黒表示時の光漏れ率を測定した結果を表13、14に記載した。
この値が小さいほど斜め45度方向での光漏れが少なく、表示装置のコントラストが良いことを示し、液晶表示装置の視野角特性を評価できる。本発明の溶液製膜方法により得られるセルロースアシレートフィルムからなる偏光板115〜127、138〜139、140〜150を用いた場合は比較試料からなる偏光板008〜010を用いた場合と比較して、光漏れ率が1/50から1/4といずれも小さくなった。また偏光板115〜127、138〜139、140〜150を用いた場合は偏光板008〜010を用いた場合と比較して、表示装置の色味変化が小さくなった。これは前記セルロースアシレートフィルム試料115〜127、138〜139、140〜150のRe、Rthの波長分散性が優れている(波長依存性が小さい)ために、どの波長においても同様の光学補償性能を持つことを示している。以上のように本発明の溶液製膜方法により得られたセルロースアシレートフィルムにより作製した光学補償フィルムおよび偏光板が、視野角特性に優れ、表示色味を変化しにくいことがわかった。
Figure 2006264028
Figure 2006264028
[実験10]
(VA型、OCB型液晶表示装置への実装評価)
実験1〜7で用いた本発明の溶液製膜方法により得られたセルロースアシレートフィルム試料を用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、いずれの場合においてもコントラスト視野角が良好な性能が得られた。
[実験11]
(光学補償フィルム性能)
実験1〜7で用いた本発明の溶液製膜方法により得られたセルロースアシレートフィルム試料を用いて、特開平7−333433号公報の実施例1に記載の方法により光学補償フィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが分かった。
[実験12]
(光学補償フィルム性能)
本発明の溶液製膜方法で得られたセルロースアシレートフィルム試料を用いて、特開2003−315541号公報の実施例1に記載の方法に準じて光学補償フィルム試料を作製した。2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB)から合成された、重量平均分子量(Mw)7万、△nが約0.04のポリイミドを、溶媒にシクロヘキサノンを用い25wt%に調製した溶液を、前記セルロースアシレートフィルム試料140(厚さ80μm)に塗布した。その後100℃で10分熱処理後、160℃で15%縦一軸延伸することにより厚さ6μmのポリイミドフィルムが前記セルロースアシレートフィルムに塗布された光学補償フィルムを得た。この光学補償フィルムの光学特性は、Re=70nm、Rth=220nm、配向軸のズレ角度は±0.3度以内で、nx>ny>nzの複屈折層を持つ光学補償フィルムであった。
(比較例)
上記の実験12の試料140を、実験1にて作製した比較試料001(厚さ80μm)に塗布した以外は同様の操作により、厚さ6μmのポリイミドフィルムが比較試料001のセルロースアシレートフィルムに塗布された光学補償フィルムを得た。この光学補償フィルムの光学特性は、Re=75nm、Rth=280nmであった。
(VA型液晶表示装置への実装評価)
上記実験12および比較例で得られた光学補償フィルムの、ポリイミドフィルムを塗布していない側をアルカリ鹸化処理しポリビニルアルコール系接着剤で偏光子と接着することにより、直接偏光子と貼り合せた。この際光学補償フィルムのnx方向と偏光板の吸収軸が直交するように貼り合せた。これら光学補償フィルムが液晶セル側となるように粘着剤でVA液晶パネルに張り合わせた。なお、液晶セルの反対側には偏光板の吸収軸同士が直交するように偏光板のみを粘着剤を介してVA液晶パネルに貼り合せた。以上のようにして得られた液晶表示装置の視野角特性を測定したところ、実験12で得られた本発明の溶液製膜方法によりセルロースアシレートフィルム試料140より得られた光学補償フィルムは比較試料001から得た光学補償フィルムよりも左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、前記セルローストリアシレートフィルムが、VA用の位相差フィルムとして用いる際にも優れたものであることが判った。
[実験13]
(湿熱処理後の光学性能評価、化合物の揮散性)
実験1〜6で作製した本発明のセルロースアシレートフィルム試料について、60℃90%RHに240時間処理したフィルムのReとRthの変化量、80℃240時間処理したフィルムのReとRthの変化量、および80℃,240時間処理したフィルムにおけるRthを低下させる化合物とΔRthを低下させる化合物との総揮散量を測定した。結果を表15に示す。なお比較例としてあらたに、実験3の操作により、TPP(トリフェニルホスフェート)を添加した比較試料012を作製した。
Figure 2006264028
表15の結果より、本発明の溶液製膜方法で得られたセルロースアシレートフィルムは、高湿度処理、高温度処理した際にもRe、Rthの変化量が小さく、高温度処理しても化合物の揮散量が小さいことが分かった。
[実験14]
(セルロースアシレートフィルムの耐光性)
実験1、2、6で作製した本発明の溶液製膜方法で得られたセルロースアシレートフィルム試料103、144および比較試料007に対して、スーパーキセノン光を240時間照射した。照射前のフィルムのカラー測定と照射後のカラー測定から色差ΔE*abを計算した。本発明のフィルムは自然光に対する耐光性の加速試験であり、スーパーキセノン光照射に対する色差が小さいことがわかった。なお、同様の加速試験である、カーボンアーク照射においても同様の結果になることを確認した。
Figure 2006264028
[実験15]
(IPS型液晶表示装置への実装評価)
<IPSモード液晶セル1の作製>
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行った。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行って配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
<偏光板の作製>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、本発明の溶液製膜方法により得られたセルロースアシレートフィルム試料103を偏光膜の片側に貼り付けた。続いて、市販のセルロースアセテートフィルムにケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、この偏光膜の反対側に貼り付け第1偏光板を形成した。
更に第1の偏光板の作成方法において、両面を前記市販のセルロースアセテートフィルムにした以外は同様にして第2偏光板を作製した。
前記方法で作製したIPSモード液晶セルの一方に、第1偏光板の吸収軸が液晶セルのラビング方向と平行になるよう、且つ前記セルロースアシレートフィルム103が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、IPSモード液晶セルのもう一方の側に第2偏光板をクロスニコルの配置で貼り付け、第1偏光板の側にバックライトが配置されるように液晶表示装置を作製した。
[比較例]
実験15において、IPSセルの両面の偏光板をどちらも第2偏光板にした以外は同様にしてIPS液晶表示装置を作製した。
<作製した液晶表示装置の漏れ光の測定>
このように作製した液晶表示装置の黒の色味を極角60度における全方位角方向の変化(Δuv)を測定した。結果を表17にまとめた。Δuvが0.05以下である実験15は色味変化が殆ど感じられないが、0.05以上である比較例は色味変化が明らかにあり、Re、Rthが小さくかつRe、Rthの波長分散が小さい本発明の溶液製膜方法により製造されたセルロースアシレートフィルムを用いることにより色味変化が改善されることが分かった。
Figure 2006264028
波長400nm〜800nmの可視領域でReやRthを小さく、かつ波長によるReやRthの変化が小さいセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体等に用いることによって、波長依存性の小さい、すなわち表示色味の改善された画像表示装置の分野に応用することができる。
本発明に係る溶液製膜方法に用いるドープを製造するドープ製造ラインの概略図である。 本発明に係る溶液製膜方法を実施するためのフィルム製造ラインの概略図である。 図2の流延室の拡大図である。 図3の振動吸収チャンバの概略図である。 図3の要部拡大図である。
符号の説明
36 原料ドープ
40 フィルム製造ライン
85 流延室
90 流延膜
90a 流延ビード
91 減圧チャンバ
92,94 配管
93 バッファタンク
95 減圧装置
110 振動吸収チャンバ
121 湿潤フィルム
131 渡り部
140 テンタ式乾燥機
145 フィルム
200 フレーム
201 薄膜袋
A1 バッファタンク断面積
A2 配管断面積
L バッファタンク長さ
CL ダイリップと支持体とのクリアランス

Claims (26)

  1. ポリマーと溶媒とを含むドープを流延ビードとして流延ダイから支持体上に流延し、
    前記支持体上に前記流延ビードから流延膜を形成し、
    前記流延膜が自己支持性を有するものとなった後に前記流延膜を前記支持体から湿潤フィルムとして剥ぎ取り、
    前記湿潤フィルムを乾燥してフィルムとする溶液製膜方法において、
    前記流延ダイと前記支持体とが配置されているケーシング内に備えられている風圧振動抑制手段により前記流延ビードの風圧振動を抑制し、
    前記流延ダイの上流側に設けられている減圧チャンバで前記流延ビードの背面を減圧し、
    前記流延ビードの前面又は背面の少なくともいずれか一方をシール部材でシールし、
    下記式(I)及び(II)で定義される正面レターデーションRe(nm)と膜厚方向レターデーションRth(nm)とを制御することを特徴とする溶液製膜方法。
    (I) Re(λ)(nm)=(nx−ny)×d
    (II)Rth(λ)(nm)=((nx+ny)/2−nz)×d
    式中Re(λ)(nm)は、波長λ(nm)における正面レターデーション値であり、Rth(λ)(nm)は、波長λ(nm)における膜厚方向レターデーション値である。また、nxは前記フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記フィルムの膜厚方向の屈折率である。また、d(nm)は前記フィルムの膜厚である。
  2. 前記フィルムの正面レターデーションRe(nm)と膜厚方向レターデーションRth(nm)とを下記式(III)及び(IV)に制御することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
    (III) 0≦Re(630)≦10且つ|Rth(630)|≦25
    (IV)|Re(400)−Re(700)|≦10且つ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
  3. 前記風圧振動抑制手段が備える弾性薄膜が、前記ケーシング内の風圧振動に応じて弾性変形し、
    前記流延ビードの風圧振動を抑制することを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記流延ダイのダイリップと前記支持体との間隔を0.3mm以上3.5mm以下とすることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  5. 前記流延を行う際に、1/60秒以上1/10秒以下の間での前記流延ビードの変動を所望の範囲内とすることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  6. 前記フィルムの長手方向における1mm以上100mm以下の所定の長さにおいて、
    前記フィルムの厚み変動を所望の範囲内とすることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  7. 前記減圧チャンバはバッファタンクを介して配管により減圧装置と接続され、
    前記バッファタンクの断面積A1と前記配管の断面積A2との比(A1/A2)が、
    5以上200以下であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  8. 前記バッファタンクの長さL(m)が1m以上であることを特徴とする請求項7記載の溶液製膜方法。
  9. 前記バッファタンク内にエアーを滞留させ、
    前記ケーシング内の風圧変動を抑制することを特徴とする請求項7または8記載の溶液製膜方法。
  10. 前記流延ビードの両縁に前記ポリマーの良溶媒を供給し、
    前記流延ビードの固化を抑制することを特徴とする請求項1ないし9いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  11. 前記流延膜を前記支持体から剥ぎ取る際に生じる剥取抵抗力を軽減する剥離促進剤を前記ドープに含有させることを特徴とする請求項1ないし10いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  12. 前記フィルムが2層以上の多層構造を有するものであって、
    前記支持体と接触する流延膜を形成するドープ中に前記剥離促進剤を含有させることを特徴とする請求項11記載の溶液製膜方法。
  13. 前記剥離促進剤が、水溶液中の酸解離定数pKaが1.93以上4.50未満であり、
    且つ多塩基酸,部分エステル体,アルカリ金属塩,マグネシウム塩又はアルカリ土類金属塩の少なくとも1つであることを特徴とする請求項11または12記載の溶液製膜方法。
  14. 前記フィルム中の前記ポリマーに対して3重量%以上20重量%以下となるように、
    前記ドープに可塑剤を含有させることを特徴とする請求項1ないし13いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  15. 前記フィルム中の前記ポリマーに対して0.001重量%以上5重量%以下となるように、
    前記ドープに紫外線吸収剤を含有させることを特徴とする請求項1ないし14いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  16. 前記フィルム中の前記ポリマーに対して0.001重量%以上5重量%以下となるように、
    前記ドープに微粒子を含有させることを特徴とする請求項1ないし15いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  17. 前記膜厚方向レターデーションRth(nm)を低下させる第1レターデーション制御剤を下記式(V)及び式(VI)の範囲で少なくとも1種類、前記ドープに含有させることを特徴とする請求項1ないし16いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
    (V) (Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
    (VI)0.01≦A≦30
    式中Rth(A)は前記第1レターデーション制御剤をA重量%含有させた前記フィルムの膜厚方向レターデーションRth(nm)であり、Rth(0)は前記第1レターデーション制御剤を含有しない前記フィルムの膜厚方向レターデーションRth(nm)であり、Aは前記フィルムを構成する前記ポリマーの重量を100重量%としたときの前記第1レターデーション制御剤の重量(重量%)である。
  18. 前記ポリマーがセルロースアシレートであって、アシル置換度が2.85以上3.00以下であることを特徴とする請求項1ないし17いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  19. 前記ポリマーがセルロースにアシル基が置換されたセルロースアシレートであって、
    前記アシル基が、アセチル基,プロピオニル基またはブタノイル基のうち少なくとも2つの基であることを特徴とする請求項1ないし17いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  20. 前記ポリマーがセルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.85以上2.95以下であることを特徴とする請求項1ないし17いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  21. 前記セルロースアセテートの平均重合度が、180以上550以下であることを特徴とする請求項20記載の溶液製膜方法。
  22. 前記ポリマーの重量を100重量%としたときに、
    前記フィルムの正面レターデーションRe(nm)及び膜厚方向レターデーションRth(nm)を低下させる第2レターデーション制御剤を
    0.01重量%以上30重量%以下の範囲で前記フィルムに含有するように前記ドープに前記第2レターデーション制御剤を含有させることを特徴とする請求項1ないし21いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  23. 前記第2レターデーション制御剤のオクタノール−水分配係数(LogP値)が、
    0以上7以下であることを特徴とする請求項22記載の溶液製膜方法。
  24. 前記湿潤フィルムを乾燥する際に、流延方向に前記湿潤フィルムを101%以上130%以下の範囲で延伸することを特徴とする請求項1ないし23いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  25. 前記湿潤フィルムを乾燥する際に、流延幅方向に前記湿潤フィルムを101%以上150%以下の範囲で延伸することを特徴とする請求項1ないし24いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
  26. 前記フィルムの膜厚が、40μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1ないし25いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
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