JP2006221155A - 光学フィルム、それを用いた光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム、それを用いた光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性で、光学的異方性(Re、Rth)の波長分散が小さく、かつ偏光膜等への貼合性に優れた面状の良い光学フィルムを提供すること。また、それを用いた光学補償フィルム、偏光板などの光学材料および視野角依存性の少ない液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】レターデーション条件(I)0≦Re(630)≦10かつ|Rth(630)|≦25及び(II)|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35をみたす透明フィルムの少なくとも片側の表面処理後の凹凸形状が、算術平均粗さ(Ra)0.0005〜0.1μm、十点平均粗さ(Rz)0.0006〜0.3μm、表面凹凸の平均間隔(Sm)0.001〜1μm、且つ最大高さ(Ry)0.0005〜0.8μmの範囲であることを特徴とする光学フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は液晶表示装置に有用な光学フィルムおよびその製造方法に関し、さらにそれを用いた光学補償フィルム、偏光板などの光学材料および液晶表示装置に関するものである。
従来、セルロースアシレートフィルムはその強靭性と難燃性から写真用支持体や各種光学材料に用いられてきた。特に、近年は液晶表示装置用の光学透明フィルムとして多く用いられている。セルロースアシレートフィルムは、光学的に透明性が高いことと、光学的に等方性が高いことから、液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置用の光学材料として優れており、これまで偏光子の保護フィルムや、斜め方向からの見た表示を良化(視野角補償)できる光学補償フィルムの支持体として用いられてきた。
液晶表示装置用の部材のひとつである偏光板には偏光子の少なくとも片側に偏光子の保護フィルムが貼合によって形成されている。一般的な偏光子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素または二色性色素で染色することにより得られる。
多くの場合、偏光子の保護フィルムとしてはPVAに対して直接貼り合わせることができるセルロースアシレートフィルム、なかでもトリアセチルセルロースフィルムが用いられている。この偏光子の保護フィルムは、光学的等方性に優れることが重要であり、偏光子の保護フィルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
最近の液晶表示装置においては、視野角特性の改善がより強く要求されるようになっており、偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学透明フィルムは、より光学的に等方性であることが求められている。光学的に等方性であるとは、光学フィルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さいことが重要である。とりわけ、斜め方向からの表示良化のためには、正面方向のレターデーション(Re)だけでなく、膜厚方向のレターデーション(Rth)を小さくする必要がある。具体的には光学透明フィルムの光学特性を評価した際に、フィルム正面から測定したReが小さく、角度を変えて測定してもそのReが変化しないことが要求される。
これまでに、正面のReを小さくしたセルロースアシレートフィルムはあったが、角度によるRe変化が小さい、すなわちRthが小さいセルロースアシレートフィルムは作製が難しかった。そこでセルロースアシレートフィルムの代わりにポリカーボネート系フィルムや熱可塑性シクロオレフィンフィルムを用いて、Reの角度変化の小さい光学透明フィルムの提案がされている(例えば、特許文献1,2,製品としてはZEONOR(日本ゼオン社製)や、ARTON(JSR社製)など)。しかし、これらの光学透明フィルムは、偏光子の保護フィルムとして使用する場合、フィルムが疎水的なためにPVAとの貼合性に問題がある。またフィルム面内全体の光学特性が不均一である問題も残っている。
この解決法として、PVAへの貼合適正に優れるセルロースアシレートフィルムを、より光学的異方性を低下させて改良することが強く望まれている。具体的には、セルロースアシレートフィルムの正面のReをほぼゼロとし、またレターデーションの角度変化も小さい、すなわちRthもほぼゼロとした、光学的に等方性である光学透明フィルムである。
セルロースアシレートフィルムの製造において、一般的に製膜性能を良化するため可塑剤と呼ばれる化合物が添加される。可塑剤の種類としては、リン酸トリフェニル、リン酸ビフェニルジフェニルのようなリン酸トリエステル、フタル酸エステル類などが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。これら可塑剤の中には、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果を有するものが知られており、例えば、特定の脂肪酸エステル類が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、従来知られているこれらの化合物を用いたセルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果は十分とはいえない。
また、最近の液晶表示装置においては、表示色味の改善も要求されるようになっている。そのため偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学透明フィルムは、波長400〜800nmの可視領域でReやRthを小さくするだけでなく、波長によるReやRthの変化、すなわち波長分散を小さくする必要がある。
特開2001−318233号公報 特開2002−328233号公報 特開2001−247717号公報 プラスチック材料講座、第17巻、日刊工業新聞社、「繊維素系樹脂」、121頁(昭和45年)
本発明の第1の課題は、光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性であり、さらには光学的異方性(Re、Rth)の波長分散が小さく、かつ偏光膜等への貼合性に優れた面状の良い光学フィルムを提供することである。
本発明の第2の課題は、光学的異方性が小さく、波長分散が小さい光学フィルムにより作製した光学補償フィルム、偏光板などの光学材料が視野角特性に優れるものであることを示すこと、およびこれらを用いた視野角依存性の少ない液晶表示装置を提供することにある。
本発明者は、光学的異方性が小さく、波長分散が小さい光学フィルムを偏光板の保護フィルムに用いることによって、偏光板の光学特性を良化できること、また光学補償フィルムの支持体として用いると、光学補償フィルムそのものの光学性能を引き出すことができること、さらにこれらの偏光板や光学補償フィルムを液晶表示装置に用いることによってコントラストの良化、色味を改良することができることを見出して、このような光学フィルムとその適用法の本発明の目的への応用の検討を行った。その結果、本発明者らは、フィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、ReがゼロかつRthがゼロに近くなることに成功した。
本発明において、光学的異方性が小さい光学フィルムとしては、波長630nmにおける正面レターデーションRe(630)が10nm以下(0≦Re(630)≦10)でかつ、膜厚方向のレターデーションRth(630)の絶対値が25nm以下(|Rth|≦25nm)であるように製膜条件及び配向制御性化合物が添加される。さらに、0≦Re(630)≦5かつ|Rth|≦20nmであり、0≦Re(630)≦2かつ|Rth|≦15nmであるように調整すると一層効果が増大する。
また本発明者らは、鋭意検討した結果、吸収波長200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、しかもフィルムのRe(λ)およびRth(λ)の波長分散を制御できる化合物を配向制御性化合物として用いることによってフィルムの着色を防止して、かつ波長400nmと700nmでのRe、Rthの差、|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を小さくすることができた。
本発明において、波長分散が小さい光学フィルムとしては、|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35であること、|Re(400)−Re(700)|≦5かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦25であり、|Re(400)−Re(700)|≦3かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦15であることを可能とすることができた。
また、実際に光学フィルムの作製にあたってこれらの化合物がセルロースアシレートとよく相溶し、フィルムが白濁したりすることなく、フィルムの物理的強度も十分であることも確認した。
また本発明者らは、鋭意検討した結果、セルロースアシレートのアシル置換度が2.85〜3.00と高いものを用いることによっても、上記課題が解決できることを見出した。
さらに本発明者らは、鹸化条件を調節し、表面処理後の表面形状を制御することで優れた面状を有する光学フィルムを提供できることを見出した。
さらに本発明者らは、本発明の光学的異方性が小さく波長分散が小さい光学フィルムに光学的異方性層を付設させることにより、視野角特性に優れた光学補償フィルムを提供できることを見出した。以上に示した発見及び検討結果に基づいて得られた本発明は、以下に記載する光学フィルム、それを用いた光学補償フィルム、偏光版及び液晶表示装置である。
1.Re(λ)およびRth(λ)が、下記式(I)及び(II)をみたす透明フィルムであり、その少なくとも片側の表面処理後の凹凸形状が、JIS B0601−1994に基く表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)0.0005〜0.1μm、十点平均粗さ(Rz)0.0006〜0.3μm、表面凹凸の平均間隔(Sm)0.001〜1μm、且つ最大高さ(Ry)0.0005〜0.8μmの範囲であることを特徴とする光学フィルム。
(I)0≦Re(630)≦10かつ|Rth(630)|≦25
(II)|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
2.透明フィルムの少なくとも片側の表面処理後の表面を(X線光電子分光法(ESCA)で測定したときの炭素(C1s)スペクトルにおいて、288eV近傍の極大ピークに対する290eVのピークの比が0.20から0.45であることを特徴とする上記1に記載の光学フィルム。
3.フィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(III)及び(IV)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする上記1または2に記載の光学フィルム。
(III)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(IV) 0.01≦A≦30
ここで、Rth(A)は、Rthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)、Rth(0)は、Rthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)であり、また、Aは、フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
4.透明フィルムがセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする上記1から3のいずれかに記載の光学フィルム。
5.前記セルロースアシレートフィルムがアシル置換度が2.85〜3.00のセルロースアシレートからなることを特徴とする上記4に記載の光学フィルム。
6.該セルロースアシレートフィルムにおいて、Re(λ)およびRth(λ)を低下させ(括弧内のλは測定波長値)、オクタノール−水分配係数(LogP値)が、0〜7である化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする上記4又は5に記載の光学フィルム。
7.|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
8.透明フィルムの波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。
9.透明フィルムの60℃90%RHに240時間処理したフィルムのReおよびRthの変化量が15nm以下であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。
10.80℃240時間処理した透明フィルムのReおよびRthの変化量が15nm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。
11.透明フィルムの膜厚が10〜120μmであることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の光学フィルム。
12.透明フィルムを延伸する前後において、透明フィルムの正面レターデーションが下記式を満たすことを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の光学フィルム。
|Re(n)-Re(0)|/n≦1.0
ここで、Re(n)は、n(%)延伸したフィルムの正面レターデーション(nm)であり、Re(0)は、延伸していないフィルムの正面レターデーション(nm)である。
13.透明フィルム面内において、透明フィルムの機械搬送方向(MD方向)に対して垂直方向(TD方向)に遅相軸を有することを特徴とする上記1〜12いずれかに記載の光学フィルム。
14.透明フィルム面内において、遅相軸を有する方向に延伸すると正面レターデーションReが小さくなり、遅相軸を有する方向と垂直な方向に延伸すると正面レターデーションReが大きくなることを特徴とする上記1〜13いずれかに記載の光学フィルム。
15.表面処理後の透明フィルムが、表面から0.005μm以上1.0μm以下の深さまで親水化処理されていることを特徴とする、上記1〜14のいずれかにに記載の光学フィルム。
16.親水化処理が、アルカリ鹸化処理である上記1〜15のいずれかに記載の光学フィルム。
17.アルカリ鹸化処理が、沸点が60〜120℃以下の水溶性有機溶媒、並びに界面活性剤及び相溶化剤を含有するアルカリ溶液で処理を行うことを特徴とする上記16に記載の光学フィルム。
18.上記1〜17のいずれかに記載の光学フィルムに、Re(630)が0 〜200nmであり、かつ|Rth(630)|が0〜400nmである光学的異方性層を設けたことを特徴とする光学補償フィルム。
19.光学的異方性層がディスコティック液晶層を含有することを特徴とする上記18に記載の光学補償フィルム。
20.光学的異方性層が棒状液晶層を含有することを特徴とする上記18または19に記載の光学補償フィルム。
21.上記1〜17に記載の光学フィルムと上記18〜20に記載の光学補償フィルムの少なくともいずれか一つを偏光子の保護フィルムとして有することを特徴とする偏光板。22.表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたことを特徴とする上記21に記載の偏光板。
23.上記1〜17に記載の光学フィルム、上記18〜20に記載の光学補償フィルム、上記21または22に記載の偏光板の少なくともいずれか一つを有することを特徴とする液晶表示装置。
24.上記1〜17に記載の光学フィルム、請求項18〜20に記載の光学補償フィルム及び上記21〜22に記載の偏光板の少なくともいずれか一つを有することを特徴とするVAまたはIPS液晶表示装置。
25.液晶セルの上下両側に偏光板を有する請求項24のIPS液晶表示装置において、少なくとも片側の偏光板のセル側に上記1〜17のいずれかに記載の光学フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
本発明によって、波長400〜800nmの可視領域で、光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性であり、さらには光学的異方性(Re、Rth)の波長分散が小さく、かつ偏光膜等への貼合性に優れた面状を有する光学フィルムを提供できる。この光学フィルムにより作製した光学補償フィルム、偏光板などの光学材料が視野角特性に優れている。よって、これらを用いた視野角依存性の少ない液晶表示装置を提供することができる。
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明に用いるセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造される本発明に用いるセルロースアシレートについて記載する。本発明に用いるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明に用いるセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
上述のように本発明に用いるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。さらには置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばアルキルカルボニルエステル基、アルケニルカルボニルエステル基あるいは芳香族カルボニルエステル基、芳香族アルキルカルボニルエステル基などであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。
これらの好ましいアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、へプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましい。
本発明者が検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学的異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらにのぞましくは2.65〜3.00である。
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。そして特開平9−95538にも詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより行うことができる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。そのようなセルロースアシレートを得るには、含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており、その量は2.5〜5質量%程度であることが知られている。本発明においてセルロースアシレートの含水率を上記の低いレベルにするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率が得られるならば特に限定されない。本発明に用いるこれらのセルロースアシレートについては、その原料綿や合成方法が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7頁〜12頁に詳細に記載されている。
本発明に用いるセルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
本発明において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける正面レターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ))は、複屈折率計、例えばKOBRA21ADH(王子計測機器(株)製)、において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ))は、前記Re(λ))、面内の遅相軸(複屈折率計、例えばKOBRA21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーションレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に複屈折率計、例えばKOBRA21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は「ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)」などに記載の各種光学フィルムのカタログ値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA21ADHなどの複屈折率計はnx,ny,nzを算出する。この計算されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
[セルロースアシレートへの添加剤]
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの光学的異方性、とくにフィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(III)、(IV)をみたす範囲で少なくとも一種含有することがのぞましい。
(III)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(IV)0.01≦A≦30
上記式(III)、(IV)は
(III)’(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
(IV)’0.05≦A≦25
であることがよりのぞましく、
(III)”(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
(IV)”0.1≦A≦20
であることがさらにのぞましい。
ここで、Rth(A)は、Rthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)、Rth(0)は、Rthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)であり、またAは、フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
[セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物の構造的特徴]
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。本発明者らは、鋭意検討した結果、フィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、Re,Rthともにゼロに近くなるようにした。このためには光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
(LogP値)
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学的異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物が好ましい。logP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値としてさらに好ましい範囲は1乃至6であり、特に好ましい範囲は1.5乃至5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ振とう法により行うことができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen's fragmentat 法(J.Chem.Inf.Comput.Sci., 27巻,21頁(1987))、Viswanadhan's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29巻,163頁(1989))、Broto's fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.- Chim.Theor., 19巻,71頁(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27巻,21頁(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen's fragmentation法により判断することが好ましい。
[光学的異方性を低下する化合物の物性]
光学的異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有しても良いし、含有しなくても良い。また光学的異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
光学的異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学的異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、1ないし25質量%であることがより好ましく、5ないし20質量%であることが特に好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学的異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
光学的異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部(厚み方向の中心部)における該化合物の平均含有率の80−99%である。本発明の化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
以下に本発明で好ましく用いられる、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。
光学的異方性を低下させる化合物としては下記一般式(1)、一般式(2)、一般式(15)、一般式(21)、一般式(17)で表される化合物を好ましく用いることが出来る。
一般式(1)の化合物について説明する。
Figure 2006221155
式中、R1はアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R1、RおよびRの炭素原子数の総和は10以上である。
上記一般式(1)において、R1はアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R1、RおよびRの炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。
アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、6乃至25のものがより好ましく、6乃至20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t-オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシルなどの各基)が特に好ましい。
アリール基としては炭素原子数が6乃至30のものが好ましく、6乃至24のもの(例えば、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、ビナフチル基、トリフェニルフェニル基)が特に好ましい。一般式(13)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
一般式(2)の化合物について説明する。
一般式(2):
Figure 2006221155
式中、R31はアルキル基又はアリール基を表し、R32及びR33はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
上記のアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素など)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基及びアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基である。
以下に、一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
一般式(15)で表される化合物について説明する。
一般式(15)
Figure 2006221155
上記一般式(15)において、R1は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、R2は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。置換基としては後述の置換基Tが挙げられる(以下、特に述べない限り同じ。)。L1は2〜6価の連結基を表す。L1の価数として好ましくは2〜4、より好ましくは2または3である。nはL1の価数に応じた2〜6の整数を表し、2〜4がより好ましく、2または3が特に好ましい。
1つの化合物の中に含まれる2つ以上のR1およびR2は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは同一である。
上記一般式(15)としては、好ましくは下記一般式(15a)で表される化合物である。
Figure 2006221155
上記一般式(15a)において、R4は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。R4として好ましくは置換若しくは無置換の芳香族基であり、さらに好ましくは無置換の芳香族基である。R5は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。R5として好ましくは水素原子または置換若しくは無置換の脂肪族基であり、さらに好ましくは水素原子である。L2は−O−、−S−、−CO−、−NR3−(R3は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。)、アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。連結基の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR3−およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが特に好ましい。また、連結基は、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれる2以上をからなる連結基が好ましい。
置換若しくは無置換の脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ビシクロオクチル基、アダマンチル基、n−デシル基、tert−オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ジデシル基などが挙げられる。
芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例な環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が特に好ましい。
また、上記一般式(15)で表される化合物としては、下記一般式(15c)で表される化合物をより好ましく挙げることができる。
一般式(15c)
Figure 2006221155
上記一般式(15c)において、R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24およびR25はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24およびR25としては、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12のものであり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、具体的には例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、アリールオキシカルボニルアミノ基である。これらの置換基はさらに置換されてもよく、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。R11とR21、R12とR22、R13とR23、R14とR24およびR15とR25はそれぞれ同一であることが好ましい。さらに、R11〜R25はいずれも水素原子である場合がより好ましい。
3は−O−、−S−、−CO−、−NR3−(R3は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。連結基の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR3−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが特に好ましい。
また、連結基は、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれる2以上からなる連結基がさらに好ましい。
一般式(15)、とくに一般式(15a)、一般式(15c)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
本発明に用いられる化合物はいずれも既知の化合物より製造することができる。一般式(15)特に一般式(15a)、(15c)で表される化合物は、一般的には、スルホニルクロリドと多官能アミンとの縮合反応により得られる。
次に、下記一般式(21)で表される化合物について、説明する。
一般式(21)
Figure 2006221155
一般式(21)中、R、R、RおよびRは、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。X、X、XおよびXは、それぞれ、単結合、−CO−および−NR−(Rは置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。a、b、cおよびdは0以上の整数であり、a+b+c+dは2以上である。Qは(a+b+c+d)価の有機基を表す。
前記(21)で表される化合物は、更に下記一般式(21a)〜(21d)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(21a)
Figure 2006221155
一般式(21a)中、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。X11、X12、X13およびX14は、それぞれ、単結合、−CO−および−NR−(Rは置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。k、l、mおよびnは0または1であり、k+l+m+nは2、3または4である。Qは2〜4価の有機基を表す。
一般式(21b)
Figure 2006221155
一般式(21b)中、R21およびR22は、それぞれ、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。YおよびYは、それぞれ、−CONR23−または−NR24CO−を表す(R23およびR24は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す)。Lは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR25−(R25は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。)、アルキレン基およびアリーレン基からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基を表す。
一般式(21c)
Figure 2006221155
一般式(21c)中、R31、R32、R33およびR34はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。Lは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR35−(R35は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。)、アルキレン基およびアリーレン基からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基を表す。
一般式(21d)
Figure 2006221155
一般式(21d)中、R51、R52、R53およびR54はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。Lは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR55−(R55は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。)、アルキレン基およびアリーレン基からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基を表す。
以下、一般式(21)で表される化合物についてさらに説明する。
上記一般式(21)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X1、X2、X3およびX4は、それぞれ、単結合、−CO−、−NR5−(R5は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X1、X2、X3およびX4の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR5−から選ばれるのがより好ましい。a、b、cおよびdは0以上の整数であり、a+b+c+dは2以上である。a+b+c+dは、2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。Q1は(a+b+c+d)価の有機基(環状のものを除く)を表す。Q1の価数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が最も好ましい。
有機基とは、有機化合物からなる基をいう。
上記一般式(21a)において、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X11、X12、X13およびX14はそれぞれ独立に単結合、−CO−、−NR15−(R15は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。それぞれX11、X12、X13およびX14の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR15−から選ばれるのがより好ましい。k、l、mおよびnは0または1であり、k+l+m+n=2、3または4である。Q1は2〜4価の有機基(環状のものを除く)を表す。Q1の価数は2または3が好ましい。
上記一般式(21b)において、R21およびR22は、それぞれ、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Y1およびY2はそれぞれ独立に−CONR23−または−NR24CO−を表し、R23およびR24は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。L1は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR25−、アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基(環状のものを除く)を表す。L1の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR25−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
上記一般式(21c)において、R31、R32、R33およびR34はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。L2は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR35−(R35は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。L2の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR35−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
上記一般式(21d)において、R51、R52、R53およびR54はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。L4は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR55−(R55は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。L4の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR55−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
以下に一般式(21)及び一般式(21a)〜(21d)の置換基として述べた置換若しくは無置換の脂肪族基について説明する。脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基ビシクロオクチル基、アダマンチル基、n−デシル基、tert−オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ジデシル基などが挙げられる。
以下に一般式(21)及び一般式(21a)〜(21d)の置換基として述べた芳香族基について説明する。芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例な環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどの各環基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルの各基が特に好ましい。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が特に好ましい。
また、以下に上記各一般式に係る前述の置換基Tに関して詳細に説明する。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、
アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(21)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
一般式(17)の化合物について説明する。
Figure 2006221155
上記一般式(17)において、Q、QおよびQはそれぞれ独立に5または6員環を表し、炭化水素環でもへテロ環でもよく、また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。炭化水素環として好ましくは、置換または無置換のシクロヘキサン環、置換または無置換のシクロペンタン環、芳香族炭化水素環であり、より好ましくは芳香族炭化水素環である。へテロ環として好ましくは5または6員環の酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む環である。へテロ環としてより好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。
、QおよびQとして好ましくは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環である。芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。Q、QおよびQとしてより好ましくは好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。またQ、QおよびQは置換基を有してもよく、置換基としては前述の置換基Tが挙げられる。
XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表し、Xとして好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、Nであり、Xとしてより好ましくはC−R、Nであり、特に好ましくはC−Rである。
一般式(17)で表される化合物としては、好ましくは下記一般式(18)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2006221155
前記一般式(18)中、X2はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
2として好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、N、P=Oであり、更に好ましくはC−R、Nであり、特に好ましくはC−Rである。
11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34およびR35として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基である。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に一般式(17)または(18)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されるものではない。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
[波長分散調整剤]
セルロースアシレートフィルムの波長分散を低下させる化合物(以下波長分散調整剤ともいう)について説明する。本発明に用いるセルロースアシレートフィルムのRthの波長分散を良化させるためには、下記式(V)で表されるRthの波長分散ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を、下記式(VI)、(VII)をみたす範囲で少なくとも一種含有することがのぞましい。
(V)ΔRth=|Rth(400)−Rth(700)
(VI)(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−2.0
(VII)0.01≦B≦30
上記式(VI)、(VII)は
(VI)’(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−3.0
(VII)’0.05≦B≦25
であることがよりのぞましく、
(V)”(ΔRth(B)−ΔRth(0))/B≦−4.0
(VII)”0.1≦B≦20
であることがさらにのぞましい。
ここで、Rth(400)は、400nmにおけるRth(nm)、Rth(700)は、700nmにおけるRth(nm)であり、ΔRth(B)は、ΔRthを低下させる化合物をB質量%含有したフィルムのΔRth(nm)、ΔRth(0)は、ΔRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのΔRth(nm)である。また、Bは、フィルム原料ポリマーの重量を100としたときの化合物の質量(%)である。
上記の波長分散調整剤は、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物であり、この化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整できる。添加量としては0.1〜30質量%であることが好ましい。
セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって波長分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は長波長側よりも短波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身がセルロースアシレートフィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はセルロースアシレートに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れている要求される。本発明に用いるセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は揮散性を抑える観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
波長分散調整剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
(化合物添加量)
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
(化合物添加の方法)
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
ベンゾトリアゾール系化合物としては一般式(101)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
一般式(101) Q1−Q2−OH
式中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環基、Q2は芳香族環基を表す。
1が表す含窒素方向芳香族へテロ環は、好ましくは5乃至7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等の各環基があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールの各環が好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾール環である。
1で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。
2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q2は更に置換基を有してもよく、置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの各基が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどの各基が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどの各基が挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどの各基が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどの各基が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどの各基が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどの各基が挙げられる。)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどの各基が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどの各基が挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
一般式(101−A)
Figure 2006221155
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
1およびR3として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
2、およびR4として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
5およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
6およびR7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
一般式(101−B)
Figure 2006221155
(式中、R1、R3、R6およびR7は一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずに本発明に用いるセルロースアシレートフィルムを作製した場合、保留性の点で有利であることが確認された。
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(102)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(102)
Figure 2006221155
式中、Q11およびQ12はそれぞれ独立に芳香族環を表す。XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。)、酸素原子または硫黄原子を表す。
11およびQ12で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
11およびQ12で表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
11およびQ12で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。
11およびQ12であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
11およびQ12は更に置換基を有してもよく、前記置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては前記置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表し、Xとして好ましくは、NR(Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。)、またはOであり、特に好ましくはOである。
置換基Tとしては、一般式(101)のQ1およびQ2に置換しうる置換基として挙げたものと同義である。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
一般式(102−A)
Figure 2006221155
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
1、R3、R4、R5、R6、R8およびR9として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
2として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
一般式(102−B)
Figure 2006221155
式中、R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。
10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
10として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n-ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
一般式(102)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるシアノ基を含む化合物としては一般式(103)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(103)
Figure 2006221155
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。
1およびQ2であらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
1およびQ2は更に置換基を有してもよく、置換基Tが好ましい。置換基Tとしては、一般式(101)のQ1およびQ2に置換しうる置換基として挙げたものと同義である。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X1およびX2で表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。また、X1およびX2はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X1およびX2はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
1およびX2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(-C(=O)OR(Rは,炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103-A)で表される化合物である。
一般式(103-A)
Figure 2006221155
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X1およびX2は一般式(103)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
1、R2、R4、R5、R6、R7、R9、およびR10として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
3、およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103-B)で表される化合物である。
一般式(103-B)
Figure 2006221155
式中、R3およびR8は一般式(103-A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X3は水素原子、または置換基を表す。
3は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X3として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(-C(=O)OR(Rは,炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103-C)で表される化合物である。
一般式(103-C)
Figure 2006221155
式中、R3およびR8は一般式(103-A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R21は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
21として好ましくはR3およびR8が両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert-オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
21として好ましくはR3およびR8が水素以外の場合には、一般式(103-C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
本発明一般式(103)で表される化合物はJounal of American Chemical Society 63巻、3452頁(1941)記載の方法によって合成できる。
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
[マット剤微粒子]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットルであるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットルが好ましく、100〜200g/リットルがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
[可塑剤、劣化防止剤、剥離剤]
上記の光学的に異方性を低下する化合物、波長分散調整剤の他に、本発明に用いるセルロースアシレートフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
[化合物添加の比率]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート重量に対して5〜45%であることがのぞましい。より好ましくは10〜40%であり、さらにのぞましくは15〜30%である。これらの化合物としては上述したように、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下がのぞましく、2000以下がよりのぞましく、1000以下がさらにのぞましい。これら化合物の総量が5%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45%以上であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する( フィルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
[セルロースアシレート溶液の有機溶媒]
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
以上本発明に用いるセルロースアシレートフィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としても良いし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明に用いるセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
その他、本発明に用いるセルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の公報に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752などの各公報である。これらの公開公報によると本発明に用いるセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
[セルロースアシレートフィルムの製造工程]
[溶解工程]
本発明に用いるセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
(ドープ溶液の透明度)
本発明に用いるセルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出した。
[流延、乾燥、巻き取り工程]
次に、本発明に用いるセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明におけるセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmがさらに好ましい。
[高湿度環境下のフィルムの光学性能変化]
[セルロースアシレートフィルム物性評価]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの環境変化による光学性能の変化については、60℃90%RHに240時間経時したフィルムのReおよびRthの変化量が15nm以下であることがのぞましい。よりのぞましくは12nm以下であり、10nm以下であることがさらにのぞましい。
[高温度環境下のフィルムの光学性能変化]
また、80℃240時間経時したフィルムのReおよびRthの変化量が15nm以下であることがのぞましい。よりのぞましくは12nm以下であり、10nm以下であることがさらにのぞましい。
[フィルム加熱環境下の化合物揮散量]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムにのぞましく用いることができる経時処理したフィルムからの化合物の揮散量が30%以下であることがのぞましい。よりのぞましくは25%以下以下であり、20%以下であることがさらにのぞましい。
なお、フィルムからの揮散量は、80℃240時間経時理したフィルムおよび未処理のフィルムをそれぞれ溶媒に溶かし出し、液体高速クロマトグラフィーにて化合物を検出し、化合物のピーク面積をフィルム中に残存した化合物量として、下記式により算出した。
揮散量(%)= {(未処理品中の残存化合物量)−(処理品中の残存化合物量)}/(未処理品中の残存化合物量)×100
[フィルムのガラス転移温度Tg]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgは、80〜165℃である。耐熱性の観点から、Tgが100〜160℃であることがより好ましく、110〜150℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度Tgの測定は、本発明に用いるセルロースアシレートフィルム試料10mgを、常温から200度まで昇降温速度5℃/分で示差走査熱量計(DSC2910、T.A.インスツルメント)で熱量測定を行い、ガラス転移温度Tgを算出した。
[フィルムのヘイズ]
本発明においてセルロースアシレートフィルムのヘイズは0.01〜2.0%であることがのぞましい。よりのぞましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらにのぞましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、セルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。
[フィルムのRe、Rthの湿度依存性]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの正面レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthはともに湿度による変化が小さいことが好ましい。具体的には、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値の差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜50nmであることが好ましい。より好ましくは0〜40nmであり、さらに好ましくは0〜35nmである。
[フィルムの平衡含水率]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚の如何に関わらず、25℃80%RHにおける平衡含水率が、0〜4%であることが好ましい。0.1〜3.5%であることがより好ましく、1〜3%であることが特に好ましい。4%以上の平衡含水率であると、光学補償フィルムの支持体として用いる際にレターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎてしまい好ましくない。
含水率の測定法は、本発明に用いるセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
[フィルムの透湿度]
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることがのぞましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24hを越えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、セルロースアシレートフィルムに光学的異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚の試料でも基準(本発明では80μm)に設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求めた。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、セルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後重量−調湿前重量で求めた。
[フィルムの寸度変化]
本発明においてセルロースアシレートフィルムの寸度安定性は、60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合(高湿)の寸度変化率および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合(高温)の寸度変化率がいずれも0.5%以下であることがのぞましい。よりのぞましくは0.3%以下であり、さらにのぞましくは0.15%以下である。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料30mm×120mmを2枚用意し、25℃、60%RHで24時間調湿し、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mmの間隔で開け、パンチ間隔の原寸(L0)とした。1枚の試料を60℃、90%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L1)を測定、もう1枚の試料を90℃、5%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。すべての間隔の測定において最小目盛り1/1000mmまで測定した。それに基いて、60℃、90%RH(高湿)の寸度変化率を{|L0−L1|/L0}×100]、90℃、5%RH(高温)の寸度変化率を{|L0−L2|/L0}×100]、として寸度変化率を求めた。
[フィルムの弾性率]
(弾性率)
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの弾性率は、1.96〜54.9kN/mm2(200〜500kgf/mm2)であることが好ましい、より好ましくは2.34〜50.9kN/mm2(240〜470kgf/mm2)であり、さらに好ましくは2.34〜50.9kN/mm2(270〜440kgf/mm2)である。具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用い、23℃・70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
[フィルムの光弾性係数]
(光弾性係数)
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの光弾性係数は、50×10-122/N(50×10-13cm2/dyn)以下であることが好ましい。30×10-122/N(30×10-13cm2/dyn)以下であることがより好ましく、20×10-122/N(20×10-13cm2/dyn)以下であることがさらに好ましい。具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料12mm×120mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
[延伸前後における正面レターデーション変化、遅相軸の検出]
試料100×100mmを用意し、固定一軸延伸機を用いて温度140℃の条件下で機械搬送方向(MD方向)または垂直方向(TD方向)に延伸を行った。延伸前後における各試料の正面レターデーションは自動複屈折計(KOBRA21ADH、王子計測機器(株)製)を用いて測定した。遅相軸の検出は上記のレターデーション測定の際に得られる配向角から決定した。延伸によってReの変化が小さいことが好ましく、具体的にはRe(n)をn(%)延伸したフィルムの正面レターデーション(nm)、Re(0)を延伸していないフィルムの正面レターデーション(nm)としたときに、|Re(n)−Re(0)|/n≦1.0を有することが好ましく、|Re(n)−Re(0)|/n≦0.3以下がさらに好ましい。
[遅相軸を有する方向]
本発明においてセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護フィルムに用いる場合、偏光子が機械搬送方向(MD方向)に吸収軸を持つため、セルロースアシレートフィルムは遅相軸がMD方向近傍またはTD近傍にあることがのぞましい。遅相軸が偏光子と平行または直交させることにより光漏れや色味変化を低減できる。近傍とは、遅相軸とMDまたはTD方向が0〜10°、好ましくは0〜5°の範囲にあることを表す。
[固有複屈折が正であるセルロースアシレートフィルム]
セルロースアシレートフィルムは、フィルム面内において、遅相軸を有する方向に延伸すると正面レターデーションReが大きくなり、遅相軸を有する方向と垂直な方向に延伸すると正面レターデーションReが小さくなる。このことは固有複屈折が正であることを示しており、フィルム中で発現したReを打ち消すには遅相軸と垂直方向に延伸することが有効である。この方法としては例えば、フィルムが機械搬送方向(MD方向)に遅相軸を有している場合にMDとは垂直な方向(TD方向)にテンター延伸を用いて正面Reを小さくすることが考えられる。逆の例として、TD方向に遅相軸を有している場合にはMD方向の機械搬送ロールの張力を強めて延伸することによって正面Reを小さくすることが考えられる。
[固有複屈折が負であるセルロースアシレートフィルム]
本発明においてセルロースアシレートフィルムは、遅相軸を有する方向に延伸すると正面レターデーションReが小さくなり、遅相軸を有する方向と垂直な方向に延伸すると正面レターデーションReが大きくなる場合もある。このことは固有複屈折が負であることを示しており、フィルム中で発現したReを打ち消すには遅相軸と同一の方向に延伸することが有効である。この方法としては例えば、フィルムが機械搬送方向(MD方向)に遅相軸を有している場合にMD方向の機械搬送ロールの張力を強めて延伸することによって正面Reを小さくすることが考えられる。逆の例として、TD方向に遅相軸を有している場合にはMDとは垂直な方向(TD方向)にテンター延伸を用いて正面Reを小さくすることが考えられる。
[セルロースアシレートフィルムの評価方法]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの評価に当たって、以下の方法で測定して実施した。
(正面レターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRth)
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Re(λ)は自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、Rth(λ)は前記Re(λ)と、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向を0°としてサンプルを10°ごとに50°まで傾斜させて波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し算出した。
(Re、Rthの波長分散測定)
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、エリプソメーターM−150(日本分光(株)製)において波長780nmから380nmの光をフィルム法線方向に入射させることにより各波長でのReをもとめ、Reの波長分散を測定した。また、Rthの波長分散については、前記Re、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から780〜380nmの波長の光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長780〜380nmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力して算出した。
(分子配向軸)
試料70mm×100mmを、25℃、65%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))にて、垂直入射における入射角を変化させた時の位相差より分子配向軸を算出した。
(軸ズレ)
また、自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))で軸ズレ角度を測定した。幅方向に全幅にわたって等間隔で20点測定し、絶対値の平均値を求めた。また、遅相軸角度(軸ズレ)のレンジとは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとったものである。
(透過率)
試料20mm×70mmを、25℃,60%RHで透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)で可視光(615nm)の透過率を測定した。
(分光特性)
試料13mm×40mmを、25℃,60%RHで分光光度計(U−3210、(株)日立製作所)にて、波長300〜450nmにおける透過率を測定した。傾斜幅は72%の波長−5%の波長で求めた。限界波長は、(傾斜幅/2)+5%の波長で表した。吸収端は、透過率0.4%の波長で表す。これより380nmおよび350nmの透過率を評価した。
[フィルム表面の性状]
本発明セルロースアシレートフィルムの表面は、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.5μm以下であることが好ましい。好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.2μm以下である。膜表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することが出来る。
[セルロースアシレートフィルムのレターデーションの面内ばらつき]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムは次の式を満たすことがのぞましい。
|Re(MAX)−Re(MIN)|≦3、かつ|Rth(MAX)−Rth(MIN)|≦5
式中、Re(MAX)、Rth(MAX)−は任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値、Re(MIN)、Rth(MIN)は最小値である。
[フィルムの保留性]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムにおいては、フィルムに添加した各種化合物の保留性が要求される。具体的には、セルロースアシレートフィルムを80℃/90%RHの条件下に48時間静置した場合のフィルムの質量変化が、0〜5%であることが好ましい。より好ましくは0〜3%であり、さらに好ましくは0〜2%である。
〈保留性の評価方法〉
試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下で24時間放置後の質量を測定して、80±5℃、90±10%RHの条件下で48時間放置した。処理後の試料の表面を軽く拭き、23℃、55%RHで1日放置後の質量を測定して、以下の方法で保留性を計算した。
保留性(質量%)={(放置前の質量−放置後の質量)/放置前の質量}×100
[フィルムの力学特性]
(カール)
本発明においてセルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値は、−10/m〜+10/mであることが好ましい。セルロースアシレートフィルムには後述する表面処理、光学的異方性層を塗設する際のラビング処理の実施や配向膜、光学的異方性層の塗設や貼合などを長尺で行う際に、セルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値が前述の範囲外では、フィルムのハンドリングに支障をきたし、フィルムの切断が起きることがある。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触するために発塵しやすくなり、フィルム上への異物付着が多くなり、光学補償フィルムの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えることがある。又、カールを上述の範囲とすることで光学的異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減できるほか、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができて好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従って測定することができる。
(引裂き強度)
JISK7128−2:1998の引裂き試験方法に基ずく引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)が、セルロースアシレートフィルムの膜厚が20〜80μmの範囲において、2g以上が好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更には6〜25gである。又、60μm換算で8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
[フィルムの残留溶剤量]
本発明では、セルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明に用いる光学フィルムの残留溶剤量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。1.0%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由堆積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
[フィルムの吸湿膨張係数]
本発明では、セルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
[光学フィルムの表面処理]
本発明における光学フィルムの表面処理は、偏光板の保護フィルムに用いる場合は偏光子を挟み込む際に、親水的な配向膜を有する位相差板に用いる場合は配向膜を作製する際に、用いられる。この作業は主に表面を親水化する目的で行われる。親水化処理としてはコロナ処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、フレームプラズマ処理が挙げられる。具体的には、発明協会公開技法公技番号2001−1745号(発行2001年3月15日)p.30〜31に記載の内容、特開2001−9973号公報等の物理処理が挙げられるが、処理後の表面形状、親水化の処理速度等を勘案すると鹸化処理がもっとも好ましい。
[光学フィルムの鹸化処理]
本発明の光学フィルムは、配向膜形成用組成物が均一に塗工され且つ塗工によって塗設された配向膜との密着性が充分に発現するように親水化処理を行う。本発明では、光学フィルムへの親水化処理の一つの態様として、アルカリ溶液によるアルカリ鹸化処理を行うことが好ましく挙げられる。
アルカリ鹸化処理としては、アルカリ溶液中に光学フィルムを浸漬する方法、又は光学フィルム表面にアルカリ溶液を吹き付けもしくは塗布する方法等のいずれの方法も用いることができる。光学フィルムの片面のみをムラなく均一に鹸化処理できる、塗布方式によるアルカリ鹸化処理がより好ましい。一方浸漬方法による鹸化処理は、特に有機溶媒を含むアルカリ鹸化では、有機溶媒を含まないものと比較し、格段に処理速度を早くすることが可能となる。アルカリ鹸化処理は、次に説明する。
(アルカリ鹸化処理)
アルカリ鹸化処理は、アルカリ溶液に光学フィルムを浸漬するか、該水溶液を光学フィルム面に噴射又は塗布することにより実施され、中でも塗布によって鹸化処理することが好ましい。
鹸化処理は、処理するフィルムの変形、処理液の変質等が生じない温度120℃を超えない範囲の処理温度で行うことが好ましく、さらには温度10℃以上100℃以下、特には温度20〜60℃の温度範囲で行うことが好ましい。
また、鹸化処理の時間は、アルカリ溶液の組成や成分化合物の種類、処理温度などにより適宜調整して決定するが、1秒から60秒の範囲で行われるのが好ましい。
(アルカリ溶液)
本発明においてアルカリ鹸化処理に用いられるアルカリ溶液は、pH11以上のアルカリ溶液が好ましい。より好ましくはpH12〜14である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤の例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機アルカリ剤、また、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形で添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの使用が、これらの量の調整により広い領域でのpH調整が可能となるため好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、使用するアルカリ剤の種類、反応温度及び反応時間に応じて決定されるが、アルカリ剤の含有量は、アルカリ溶液中の0.1〜3モル/kgが好ましく、0.5〜2モル/kgがより好ましい。
アルカリ溶液の溶媒は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶液が好ましい。有機溶媒としては、水と混和可能な有機溶媒であればいずれも用いることができるが、沸点が120℃以下、更には60〜120℃、特には100℃以下のものが好ましい。
溶媒は、無機性/有機性値(I/O値)が0.5以上で、且つ溶解度パラメーターが16〜40[mJ/m31/2の範囲のものが好ましい。より好ましくは、I/O値が0.6〜10で、且つ溶解度パラメーターが18〜31[mJ/m31/2の範囲のものである。I/O値がその上限値以下で(無機性が強すぎず)、且つ溶解度パラメーターがその下限値以上であれば、アルカリ鹸化速度が低下したり、また鹸化度の全面均一性が不満足となったりするなどの不都合が生じないので好ましい。一方、I/O値がその下限値以上で(有機性側に偏りすぎず)、且つ溶解度パラメーターがその上限値以下であれば、鹸化速度が速く、ヘイズを生じ易くなるなどの不都合を生じることがないので、全面均一性の点で優れたものとなるので好ましい。
また、有機溶媒、とりわけ上記有機性と溶解性の各範囲の有機溶媒を、後述する界面活性剤、相溶化剤等と組み合わせて用いると、高い鹸化速度が維持されて、且つ全面に亘る鹸化度の均一性が向上する。すなわち、上記のアルカリ鹸化処理のアルカリ溶液が、沸点が60〜120℃以下の水溶性有機溶媒、並びに界面活性剤及び相溶化剤の少なくともいずれかを含有するアルカリ溶液であるのが好ましい。
好ましい特性値を有する有機溶媒は、例えば、有機合成化学協会編、「新版溶剤ポケットブック」{(株)オーム社、1994年刊}等に記載のものが挙げられる。また、有機溶媒の無機性/有機性値(I/O値)については、例えば、田中善生著「有機概念図」(三共出版社1983年刊)1〜31頁に解説されている。
具体的には、一価脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)、脂環式アルカノール類(例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール類(例えば、べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(例えば、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)、グリコール化合物のモノエーテル類(例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、メトキシメトキシエタノール、ブチルセルソルブ、ヘキシルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、エトキシトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)及びエーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメチルセルソルブ、ジエチルセルソルブ、ジプロピルセルソルブ、メチルエチルセルソルブ、ジメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、メチルエチルカルビトール等)等が挙げられる。有機溶媒は、単独もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶媒を単独又は2種以上を混合する場合の、少なくとも1種の有機溶媒は、水への溶解性が大きなものが好ましい。有機溶媒の水への溶解度は、50質量%以上が好ましく、水と自由に混合するものがより好ましい。これによりアルカリ剤、鹸化処理で副生する脂肪酸の塩、空気中の二酸化炭素を吸収して生じた炭酸の塩等への溶解性が充分なアルカリ溶液を調製できる。
有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度及び反応時間に応じて決定する。
水と有機溶媒の混合比は、3/97〜85/15質量比が好ましい。より好ましくは5/95〜60/40質量比であり、更に好ましくは15/85〜40/60質量比である。この範囲において、アシレートフィルムの光学特性を損なうことなく容易にフィルム全面が均一に鹸化処理される。
本発明に用いるアルカリ溶液が含有する有機溶媒として、上記した好ましいI/O値を有する有機溶媒とは異なる有機溶媒(例えばフッ化アルコール等)を、後述の界面活性剤、相溶化剤の溶解助剤として併用してもよい。その含有量はアルカリ鹸化処理に使用する液の総質量に対して0.1〜5%が好ましい。
本発明に用いるアルカリ溶液は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を添加することによって、表面張力を下げて塗布を容易にしたり、塗膜の均一性を上げてハジキ故障を防止したり、且つ有機溶媒が存在すると起こり易いヘイズを抑止したり、さらには鹸化反応が均一に進行するなどの利点がある。その効果は、後述する相溶化剤の共存によって特に顕著となる。用いられる界面活性剤には特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等のいずれであってもよい。
具体的には、例えば、吉田時行著「界面活性剤ハンドブック(新版)」(工学図書、1987年刊行)、「界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」第1編(技術教育出版、2000年刊行)等に記載の公知の化合物が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、カチオン性界面活性剤としての4級アンモニウム塩類、ノニオン性界面活性剤としての各種のポリアルキレンレングリコール誘導体類、各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類が好ましい。
アルカリ溶液には、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。これらの界面活性剤のアルカリ溶液に対する添加量は、溶液全体中好ましくは、0.001〜10質量%であり、より好ましくは、0.01〜5質量%の範囲が挙げられる。
本発明に用いられるアルカリ溶液には、相溶化剤を含有させることも好ましい。本発明において、「相溶化剤」とは、温度25℃において、相溶化剤100gに対して水の溶解度が50g以上となるような親水性化合物をいう。相溶化剤への水の溶解度は、相溶化剤100gに対して、水80g以上であるのが好ましく、100g以上であるのがより好ましい。また、相溶化剤が液状化合物である場合は、沸点が100℃以上であるのが好ましく、120℃以上であるのがより好ましい。
相溶化剤は、アルカリ溶液を貯留する浴等で壁面に付着したアルカリ溶液の乾燥を防止し、固着を抑制し、アルカリ溶液を安定に保持させる作用を有する。また、光学フィルムの表面にアルカリ溶液を塗布して一定時間保持した後、鹸化処理を停止するまでの間に、塗布されたアルカリ溶液の薄膜が乾燥し、固形物の析出を生じ、水洗工程での固形物の洗い出しを困難にするなどの問題の発生を防止する作用を有する。さらには、溶媒となる水と有機溶媒との相分離を防止する。特に、界面活性剤と有機溶媒と上述した相溶化剤との共存によって、処理された光学フィルムは、ヘイズが少なく、且つ、長尺の連続鹸化処理の場合であっても安定して全面均一な鹸化度となる。
相溶化剤は、上記の条件を満たす材料であれば、特に限定されないが、例えば、ポリオール化合物、糖類等のヒドロキシル基及び/又はアミド基を有する繰り返し単位を含む水溶性重合体が好適に挙げられる。
ポリオール化合物は、低分子化合物、オリゴマー化合物及び高分子化合物のいずれも用いることができる。
脂肪族ポリオール類としては、例えば、炭素数2〜8のアルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)、ヒドロキシル基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、イノシトール等)が挙げられる。
ポリアルキレンオキシポリオール類としては、上記のような同じアルキレンジオール同士が結合していてもよく、異なるアルキレンジオールが互いに結合していてもよいが、同じアルキレンジオール同士が結合したポリアルキレンポリオールがより好ましい。いずれの場合もの結合数は3〜100であるのが好ましく、3〜50であるのがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)が挙げられる。
糖類としては、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員会編「天然高分子」第二章{共立出版(株)、1984年刊}、小田良平等編「近代工業化学22、天然物工業化学II」{(株)朝倉書店、1967年刊}等に記載されている水溶性化合物が挙げられる。中でも、遊離のアルデヒド基及びケトン基を持たない、還元性を示さない糖類が好ましい。
糖類は、一般に、グルコース、スクロース、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類されるが、いずれも本発明に好適に用いられる。
例えば、サッカロース、トレハロース、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット、還元水あめが挙げられる。これらの糖類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシル基及び/又はアミド基を有する繰り返し単位を有する水溶性重合体としては、例えば、天然ガム類(例えば、アラビアガム、グアーガム、トラガンドガム等)、ポリビニルピロリドン、ジヒドロキシプロピルアクリレート重合体、セルロース類又はキトサン類とエポキシ化合物(エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド)との付加反応体が挙げられる。
中でも、アルキレンポリオール、ポリアルキレンオキシポリオール、糖アルコール等のポリオール化合物が好ましい。
相溶化剤の含有量は、アルカリ溶液全体中0.5〜25質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
本発明に用いられるアルカリ溶液は、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、消泡剤、アルカリ溶液安定化剤、pH緩衝剤、防腐剤、防菌剤等の公知のものが挙げられる。
その他の添加剤の含有量は、アルカリ溶液全体中0.001〜30質量%であるのが好ましく、0.005〜25質量%であるのがより好ましい。
(アルカリ溶液の塗布鹸化方法)
上記のアルカリ溶液を用いたセルロースアシレートフィルムの表面処理方法として、フィルムの片面のみを処理できる塗布方式が好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、バーコーティング法、ロッドコーティング法(細い金属線を巻いたロッド)、ロールコーティング法(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、カーテンコーティング法、ダイコーティング法(エクストルージョンコーター(スロットコーター)、スライドコーター、スリットダイコーター)等の塗布法を挙げることができる。塗布方式に関しては、各種文献{例えば、“Modern Coating and Drying Technology”,E.Cohen and E.B.Gutoff編、VCH Publishers,Inc.刊(1992年)}に記載されている。アルカリ溶液の塗布量は、その後、水洗除去するため廃液処理を考慮して、極力抑制することが望ましく、1〜100cc/m2が好ましく、1〜50cc/m2がより好ましい。少ない塗布量域でも安定に操作できるロッドコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ダイコーターなどの塗工手段を用いることが好ましい。特に、少ない塗布量域で塗布スジのムラを発生することなく高速で塗布でき、塗布装置部と塗布液が塗布される表面が非接触の方法であるダイコーターが好ましい。
更に、セルロースアシレートフィルムを、その表面が少なくとも10℃以上の温度でアルカリ溶液により鹸化処理する工程、セルロースアシレートフィルムの温度を少なくとも10℃以上に維持する工程、そして、アルカリ溶液をセルロースアシレートフィルムから洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
セルロースアシレートフィルムを、その表面を所定の温度でアルカリ溶液により鹸化処理するには、塗布する前に、その表面温度を予め所定の温度に調整する工程、アルカリ液を予め所定の温度に調整しておく工程、或いはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。塗布する前に予め所定の温度に調整する工程と組み合わせることが好ましい。
鹸化反応後は、水洗、中和後水洗等によりフィルム表面からアルカリ溶液及び鹸化処理反応物とを洗浄して除去することが好ましい。具体的には、例えば国際公開第02/46809号パンフレット等に記載の内容が挙げられる。
[親水化処理後の光学フィルムの特性]
(親水化処理後の表面の性状)
親水化処理後の本発明の光学フィルムは、その表面特性が以下の通りであることを特徴とする。
光学フィルム表面の凹凸形状は、JIS B0601−1994に基づいて、その表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0005〜0.1μmであることが必要であり、好ましくは0.0005〜0.08μmの範囲である。また表面凹凸の十点平均粗さ(Rz)は0.0006〜0.3μmであることが必要であり、好ましくは0.0006〜0.2μmの範囲である。表面凹凸の平均間隔(Sm)は0.001〜1μmであることが必要であり、好ましくは0.001〜0.8μmの範囲である。最大高さ(Ry)は0.0005〜0.8μmであることが必要であり、好ましくは0.0005〜0.5μmの範囲である。さらに算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)は、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上の範囲であるのがよい。
上記の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rz)、表面凹凸の平均間隔(Sm)及び最大高さ(Ry)の数値が、上記の範囲外となると、配向膜を塗設する場合に塗布面状が均一とならず、且つ配向膜との密着性が不充分となり、しかも光学補償シートを液晶表示装置に用いた際の輝点故障や雲状故障等の光学的な欠陥が発生してしまう。またその他の各表面形状因子、すなわち算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)の数値が、上記の範囲内であれば、配向膜の塗設に際して均一な塗布面状が得られ、配向膜との密着性にも優れており、しかも光学補償シートを液晶表示装置に用いた際の輝点故障や雲状故障等の光学的な欠陥の発生が抑制できるので好ましい。
また、親水化処理後の上記光学フィルムは、その表面特性が以下の通りであることを特徴とする。
光学フィルムの親水化処理後の表面をX線光電分光法(ESCA)で測定したときの炭素(C1s)スペクトルにおいて、288eV近傍の極大ピークと290eVのピーク比が、0.20から0.45であることが好ましい。さらに好ましくは0.20から0.40である。親水化表面の炭素(C1s)スペクトルは、例えば、光電子分光スペクトロメーター{(株)島津製作所製、“ESCA3400”型}を用いることで知ることができる。
上記のピーク比が、0.45より大きくなる場合は表面の親水化が不十分なものであり、本発明の光学フィルムを用いる偏光板や光学補償フィルムにおいて密着性等に不都合が生じる場合がある。また、0.20より小さくなる場合は鹸化反応が進みすぎている可能性があり、本発明に基づいて作製したセルロースアシレートフィルムの本来の光学/物理性能を発揮できない可能性がある。上記ピーク比に付いては、X線光電分光法(ESCA)の炭素スペクトルのケミカルシフトとしての知見に基づいており、288eV近傍の極大ピークはC=Oのシグナル(セルロースエステルのアシル基に由来する)、及び290eVのピークはC−Oのシグナル(セルロースの水酸基に由来する)として計算する。
(アルカリ鹸化の深度)
上記親水化処理された光学フィルムは、フィルム表面から深さ方向に対して0.005〜1.0μmの深さで親水化処理されていることが、より表面形状を均一なものとする点で好ましい。より好ましくは0.01〜0.8μmであり、更に好ましくは0.02〜0.6μmである。
例えば、鹸化深さが深すぎなければ、表面付近のセルロースエステルの主鎖などの切断が生じるなどの不都合は生じないので好ましい。このような主鎖の切断が生じると、フルム表面のセルロースエステルの分子量が低下して脆くなり、フィルムと配向膜の密着性が低下すると考えられる。またフィルム表面が過度に(表面から深くまで)鹸化処理されるようなことがなければ、低分子量化合物(可塑剤など)などの発生が抑えられ、その表面付近への付着を抑制できるものと考えられる。低分子量化合物が多く存在すると、長期経時後に配向膜の表面へと析出して雲状故障を生じると推測される。一方、鹸化深さが浅すぎなければ、鹸化処理が十分に行われて、フィルムと配向膜との密着性が向上するので好ましい。鹸化深さが極端に浅すぎると、セルロースエステルフィルム表面の極近傍に微量に存在する低分子量化合物(可塑剤など)が長期経時後に配向膜の表面にまで析出しやすいと考えられる。
[表面特性の評価方法]
セルロースエステルフィルムの表面特性の評価方法について記載する。
{フィルム表面の鹸化深さ(評価項目1)}
セルロースエステルフィルムの表面をイオンエッチングしながら、光電子分光法(XPS)により、鹸化に用いられるアルカリに特有の元素の存在量を測定することで鹸化深さを求める。エッチング時間から測定深さへの換算は、下記の標準サンプルの測定結果から行なえる。
(標準サンプルの作製)
トリアセチルセルロース10質量部にコロイダルシリカを5質量部添加し、これを90質量部のジクロロメタンと10質量部のメタノールに溶解する。これをセルロースエステルフィルム(例えば市販のフジタック)の上に、乾膜後の厚みが約0.2μmとなるように塗布、そして乾燥する。この厚みを再度膜圧計を用いて測定し、Ds(μm)とする。
(エッチング時間から測定深さの換算)
光電子分光スペクトロメーター{(株)島津製作所製、“ESCA750”型}を用い、加速電圧2kV、加速電流20mAで、圧力5×10-4Paのアルゴンガス中で標準サンプルをエッチングする。エッチングを2分間行い、Si−2pのシグナルを測定する。これを繰り返し、測定されるシグナルの強度が、第1回エッチング後のSi−2pのシグナルの1/10の強度となったときのエッチング時間の合計をTs分とする。Ds(μm)/Ts(分)からエッチング速度を求め、実サンプルのエッチング時間から測定深さに換算する。
(実サンプルにおける表面の鹸化深さの評価)
セルロースエステルフィルムにアルカリ溶液を塗布(鹸化処理)する。アルカリ溶液の乾燥前に、表面に残った鹸化塗布液(アルカリ溶液)を濾紙で拭き取り、直ちに液体窒素で凍結した後、凍結乾燥する。これによりフィルムに浸透したアルカリを固定する。得られたセルロースエステルフィルムを、標準サンプルと同様の条件でエッチングしながらXPS測定することで鹸化深さを評価する。XPS測定の際に検出する元素は、アルカリの特異元素(例えばNaOHを用いた場合はNa、KOHを用いた場合はK)のシグナルに着目する。エッチングを2分間隔で行いXPS測定する。測定される特異元素のシグナル強度が、第1回目エッチング後の特異元素のシグナル強度の1/10以下となったときの深さ(エッチング時間の合計から深さに換算する)を鹸化深さとする。
以上のようにして本発明において用いられる特定の表面形状を有する、親水化処理された光学フィルムが作製されるが、該表面形状及び光学特性を上述の範囲とするには、(1)前記の(微粒子)及び(微粒子の添加混合方法)の項で記載したように、微粒子の粒径及び粒径分布が所定範囲内であり、また粒子が粗くならないように分散が行われること、
(2)流延工程に用いる金属支持体表面の凹凸を一定の大きさとすること、
(3)ドープの乾燥工程での乾燥条件を制御すること、特に乾燥工程における熱風の風向きや乾燥温度を上述の範囲内とすること、
等により適宜調整可能であり、さらに、
(4)光学フィルムの表面を親水化処理することにより、光学フィルムの全面が速やかに均一に親水化され、この上に設けられる配向膜との密着性が良好となり、さらには、光学的欠陥の無い光学補償シートを安定して生産性よく得ることができる。
(耐光性)
本発明に用いるセルロースアシレートの光耐久性の指標として、標準昼光、例えばスーパーキセノン光、を240時間照射したフィルムのCIEL***色空間座標系の色度値と照射前の同じ座標系の色度値との色差ΔE***が20以下であることがのぞましい。よりのぞましくは18以下であり、15以下であることがさらにのぞましい。色差の測定は、UV3100(島津製作所製)を用いた。測定の仕方は、フィルムを25℃60%RHに2時間以上調湿した後にキセノン光照射前のフィルムのカラー測定を行ない初期色度空間値(L0*、a0*、b0*)を求めた。その後、フィルム単体で、スーパーキセノンウェザーメーターSX-75(スガ試験機(株)製)にて、放射照度150W/m2、60℃50%RH条件にてCIE標準C光源に設定したキセノン光を240時間照射した。所定時間の経過後、フィルムを恒温槽から取り出し、25℃60%RHに2時間調湿した後に、再びカラー測定を行い、照射経時後の色度空間値(L1*、a1*、b1*)を求めた。これらから、色差ΔE***〔={((L0*-L1*)2+(a0*-a1*)2+(b0*-b1*)2)}0.5〕を求めた。
[機能層]
本発明の光学フィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明の光学フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明の光学フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
[用途(偏光板)]
本発明の光学フィルムの用途について説明する。
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた光学フィルムと、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
[用途(光学補償フィルム)]
本発明の光学フィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明に用いるセルロースアシレートフィルムはReおよびRthが0≦Re≦10nm、かつ|Rth|≦25nmと光学的異方性が小さく、|Re(400)−Re(700)|≦10、かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35と波長分散が小さいため、余計な異方性を生じず、複屈折を持つ光学的異方性層を併用すると光学的異方性層の光学性能のみを発現することができる。
したがって本発明の光学フィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合、併用する光学的異方性層のReおよびRthはReが0〜200nmで|Rth|が0〜400nmであることが好ましく、この範囲であればどのような光学的異方性層でも良い。本発明の光学フィルムが使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フィルムとして要求される、どのような光学的異方性層も併用することができる。併用される光学的異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成しても良いし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成しても良い。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destradeほか,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,71巻,111頁(1981);日本化学会編、季刊化学総説、22号、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne ほか,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,1794頁(1985);J.Zhangほか,J.Am.Chem.Soc.,116巻,2655頁(1994))に記載の化合物が含まれる。
光学的異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子について、特開2001−4387号公報に開示されている。
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
光学的異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特開2001−328973号などの各公報に記載の化合物が含まれる。
(ポリマーフィルムからなる光学的異方性層)
上記した様に、光学的異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学的異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
ポリマーフィルムの光学的異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
また、光学的異方性層を形成するポリマーフィルムとして、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を用い、これを溶媒に溶解した溶液を基材に塗布し、溶媒を乾燥させてフィルム化する方法も好ましく用いることができる。この際、上記ポリマーフィルムと基材とを延伸して光学的異方性を発現させて光学的異方性層として用いる手法も好ましく用いることができ、本発明の光学フィルムは上記基材として好ましく用いることができる。また、上記ポリマーフィルムを別の基材の上で作製しておき、ポリマーフィルムを基材から剥離させたのちに本発明の光学フィルムと貼合し、あわせて光学的異方性層として用いることも好ましい。この手法ではポリマーフィルムの厚さを薄くすることができ、50μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
(一般的な液晶表示装置の構成)
光学フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、光学フィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
(液晶表示装置の種類)
本発明の光学フィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の光学フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
(TN型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.、36巻(1997)143頁や、Jpn.J.Appl.Phys.、36巻(1997)1068)頁に記載がある。
(STN型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
(VA型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明の光学フィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明の光学フィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学的異方性層を配置し、配置された光学的異方性層のレターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.、38巻(1999)2837頁)に記載がある。
(反射型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号公報に記載がある。
(その他の液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kumeほか,SID98 Digest 1089頁(1998))に記載がある。
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の光学フィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の光学フィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明の光学フィルムを好ましく用いることができる。
(写真フィルム支持体)
さらに本発明の光学フィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用でき該特許に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明の光学フィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
(透明基板)
本発明の光学フィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリア性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明の光学フィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明の光学フィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明の光学フィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報などに公開されている。
以下に本発明の実施例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
<セルロースアシレート溶液A組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−1〜B−6を調製した。
Figure 2006221155
<セルロースアセテートフィルム試料001の作製>
セルロースアシレート溶液Aの477質量部に、添加剤溶液B−1の40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み80μmのセルロースアセテートフィルム試料001を作製した。
<セルロースアセテートフィルム試料002〜003、101〜105の作製>
セルロースアセテートフィルム001の作製において添加剤溶液、及び厚みを表2のものに変更した以外はセルロースアセテートフィルム試料001と同様にしてセルロースアセテートフィルム試料002〜003、101〜105を作製した。これら試料の波長380nmおよび波長350nmにおける分光透過率を測定したところ、いずれの試料でも波長380nmの透過率が45%以上95%以下となるが、波長分散調整剤を添加した試料でのみ波長350nmにおいて透過率が10%以下であることがわかった。
Figure 2006221155
[実施例2]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Cを調製した。
<セルロースアシレート溶液C組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記表3の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−7〜B−19を調製した。セルロースアシレート溶液Cの465質量部に、添加剤溶液B−7〜19の40質量部を添加して厚み80μmのセルロースアセテートフィルム試料試料004〜007、106〜114を作製した。これら試料のドープ溶液の透明度はいずれも85%以上と良好であり、光学的異方性を低下させる化合物、波長分散調整剤ともにセルロースアシレートのドープ溶液に十分に相溶していることを確認した。またこれら試料のヘイズはいずれも0.01〜2%の範囲にありフィルムにした際にも透明度が十分であることを確認した。さらに、これら試料のガラス転移温度Tgを測定したところ、本発明の光学的異方性低下剤や波長分散調整剤を添加していない比較試料004を除いてはいずれも80〜165℃であることを確認した。
Figure 2006221155
[実施例3]
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Dを調製した。
(セルロースアセテート溶液D組成)
酢化度2.86のセルロースアセテート 100.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
(マット剤溶液の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
(マット剤溶液組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアセテート溶液D 10.3質量部
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤については下記表4に示すものを用いた。
(添加剤溶液組成)
光学的異方性を低下する化合物 49.3質量部
波長分散調整剤 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアセテート溶液D 12.8質量部
(セルロースアセテートフィルム試料115の作製)
上記セルロースアセテート溶液Dを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成で光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤のセルロースアセテートに対する質量比はそれぞれ12%、1.8%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンド から剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアセテートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μmであった。
(セルロースアセテートフィルム試料008〜011、116〜128の作製)
添加剤溶液中の光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤の種類及び量を表4(表4−1、表4−2に分割して示す)の内容に変更した以外は同様にしてセルロースアセテートフィルム試料008〜011、116〜128を作製した。表4には試料115作製の溶液組成も記入した。これら試料の相対湿度10%と相対湿度80%での膜厚方向のレターデーションの差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)を測定したところ、本発明の光学的異方性低下剤を添加していない比較試料008、009および光学的異方性低下剤の代わりに可塑剤ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)を添加した比較試料010、011においてはΔRthが30nm以下にならず光学的異方性の湿度依存性が大きかった。一方、本発明の光学的異方性低下剤を含む試料115〜128においてはΔRthが0〜30nmの範囲にあり、湿度依存性が低下していることを確認した。またこれら試料の25℃、80%RHにおける平衡含水率を測定したところ、比較試料008以外においてはいずれも4%以下であり本発明の光学的異方性低下剤や波長分散調整剤の添加によりセルロースアシレートフィルムが疎水化されていることが確認できた。さらにこれら試料の60℃、95%RH、24hrの透湿度(80μm換算)を測定したところ、比較試料008以外においてはいずれも400g/m2・24hr以上2000g/m2・24hr以下であり、また比較試料009、010と比較して本発明の光学的異方性低下剤や波長分散調整剤を添加した試料115〜128はいずれも透湿度が良化していることが確認できた。また、比較試料011以外の試料ではいずれもフィルムの白濁はなく、十分に透明なフィルムが作成できたが、比較試料011は添加化合物の総量がセルロースアシレートに対して49%と高く、5〜45%の範囲を超えており、この場合はフィルムが白濁して化合物が析出し(泣き出し)、透明性を持ったセルロースアシレートフィルムとしては評価できなかった。
また、試料126と127においては、80℃、90%RHの条件に48時間放置した際の質量変化を測定したところ、試料126は−0.12%、試料127は−0.02%で
あった。波長分散調整剤としてベンゾトリアゾール系化合物であるUV−21、UV−22、UV−23を用いたが、分子量が320以下であるUV−23(分子量315.5)を含まない試料127の方が試料126よりも保留性の点で有利であることが確認できた。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
[実施例4]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Eを調製した。この際、置換度2.49、2.86、2.92の三種のセルロースアシレートを用いた(表5)。
<セルロースアシレート溶液E組成>
セルロースアセテート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記表5の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−20〜B−25を調製した。セルロースアシレート溶液Eの465質量部に、添加剤溶液B−20〜25の40質量部を添加して厚み40μmのセルロースアセテートフィルム試料試料128〜132および比較試料012〜013を作製した。これら試料について、実施例3と同様に相対湿度10%と相対湿度80%での膜厚方向のレターデーションの差ΔRth(=Rth(10%RH)−Rth(80%RH))、25℃、80%RHにおける平衡含水率、60℃、95%RHのもとで24hrの透湿度(80μm換算)、80℃、90%RHのもとで48時間後の質量変化、60℃で95%RHのもとで24時間後の寸度変化および弾性率を測定したところ、本発明の全置換度2.92のセルロースアシレートフィルムを用い、さらに光学的異方性低下剤、波長分散調整剤を含む試料129〜132は置換度2.49の比較試料012と比較していずれも良化していることが確認できた。
Figure 2006221155
[実施例5]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Fを調製した。この際、全置換度2.85(アセチル置換度2.06+プロピニル置換度0.79)および全置換度2.70(アセチル置換度1.93+プロピニル置換度0.77)の二種類のセルロースアシレートフィルムを用いた。
<セルロースアシレート溶液F組成>
セルロースアシレート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記表6の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−26〜B−31を調製した。セルロースアシレート溶液Fの465質量部に、添加剤溶液B−26〜B−31の40質量部を添加して厚み40μmのセルロースアシレートフィルム試料試料133〜139を作製した。これら試料について、実施例3と同様に相対湿度10%と相対湿度80%での膜厚方向のレターデーションの差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)、25℃80%RHにおける平衡含水率、および60℃、95%RH、24hrの透湿度(80μm換算)を測定したところ、本発明の全置換度2.85または全置換度2.70のセルロースアシレートを用い、さらに光学的異方性低下剤、波長分散調整剤を含む試料133〜139は実施例3の比較試料008〜010と比較していずれも良化していることが確認できた。
Figure 2006221155
[実施例6]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
アセチル置換度2.92のセルロースアシレートを用い、下記表7の組成物を用いる以外は実施例3と同様にして厚み80または40μmのセルロースアセテートフィルム試料140〜145を作製した(表7)。
Figure 2006221155
[実施例7]
(セルロースアシレートフィルムの作製)
全置換度2.70(アセチル置換度1.0+ブチリル置換度1.7)のセルロースアシレートを用い、下記表8の組成物を用いる以外は実施例3と同様にして厚み80または40μmのセルロースアセテートフィルム試料146〜156を作製した(表8、表8−2)。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
実施例1〜7で得られた本発明に用いるセルロースアシレートフィルム試料101〜156および比較試料001〜011の、光学特性の評価結果を表9〜12−2に記載する。本発明の光学的異方性を低下する化合物を用いた試料101〜156は、これらの化合物を用いていない比較試料001〜006、008〜009および一般的な可塑剤でLogPが7.3と本発明想定外である、ビフェニル−ジフェニルフォスフェート(BDP)を用いた比較試料007、010に比較して、いずれもRe(630)、Rth(630)ともに十分な低下が見られ、光学的にほぼ等方性に近づいている。また本発明に係る波長分散を調整する化合物を併用した試料は、比較試料に対していずれの試料も|Re400−Re700|、|Rth400−Rth700|ともに十分な低下が見られ、波長分散がゼロに近づいていることが示された。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
[実施例8]
(偏光板の作製)
実施例1で得た本発明のセルロースアセテートフィルム試料101を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムの表面をケン化した。
(偏光板の作製)
[アルカリ鹸化処理]
実施例1で得た本発明のセルロースアセテートフィルム試料115の片面について以下のアルカリ鹸化処理を行った。
すなわち、フィルム製造時の支持体側に、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度40℃に昇温した後に、下記に示す組成のアルカリ溶液(S−1)を、ロッドコーターを用いて塗布量17cc/m2、塗布速度60/分で塗布し、110℃に加熱(鹸化温度)した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、8秒間(鹸化時間)滞留させた。続いて、同じくロッドコーターを用いて、純水を3cc/m2塗布した。この時のフィルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを4回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥し、本発明の光学フィルム1115を作製した。
・アルカリ溶液(S−1)組成
水酸化カリウム 5.0質量部
水 16.0質量部
イソプロパノール 65.0質量部
界面活性剤(K−1:C1633O(CH2CH2O)10H) 0.8質量部
プロピレングリコール 15.0質量部
次に、実施例1のセルロースアシレートフィルム試料115に代えて、富士写真フイルム(株)製 フジタックを用い、アルカリ鹸化条件を同一として、光学フィルム1020−1を作製した。またアルカリ溶液(S−1)に代えて、界面活性剤(K−1)を抜いたアルカリ溶液(S−2)及び、イソプロパノール(沸点約82℃)に代えてアセトン(沸点約56℃)を同重量部加えたアルカリ溶液(S−3)を用意した。フジタックを、アルカリ溶液にS−2、S−3を用いた以外は上記と同一条件でアルカリ鹸化処理して作製した光学フィルムをそれぞれ1020−2、1020−3とした。得られた光学フィルム1020−1,1020−2、1020−3の表面形状、光学特性を、上記本発明の鹸化処理フィルム(1115)と共に表2に示す。
[親水化処理後のフィルムの特性]
作製した各フィルムについて下記の特性をそれぞれ測定した。その結果を表13に示す。
(C=O/C−O比)
X線光電分光装置((株)島津製作所製、“ESCA3400”型)を用い、1m2
フィルム試料面内10点について表面の炭素(C1s)スペクトルを測定した。各スペクトルよりC=O及びC=Oのピーク値を求め、C=O/C−O比を計算した。その最小値
及び最大値を表13に記載した。
(表面凹凸形状測定)
原子間力顕微鏡(セイコーインスツル(株式会社)製、“SPA300”型)を用い、1m2のフィルム試料面内10点について、JIS B0601−1994に基づく表面凹凸粗さを測定した。その平均値を表13に記載した。
(表面の面状:異物、濁り)
親水化処理後の光学フィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切りだし、この試料にシャウカステン上で光を透過させながら目視及びルーペで異物及び濁りの有無を観察し、以下の基準を用いて評価した。
〇:異物、濁りの発生が全く認められない(10人で評価し、一人も認識できないレベル)。
△:異物、濁りが弱く発生する(10人で評価し、2〜5人が認識するレベル)。
×:異物、濁りが強く発生する(10人で評価し、6人以上が認識するレベル)。
親水化処理した各光学フィルムの評価結果を表13に示す。
Figure 2006221155
表13に示す結果から明らかなように、本発明に用いられる鹸化処理フィルム(試料1115)は、1メートル平方の面内おいて、C=O/C−O比で面内のバラツキが見られない均一な処理フィルムであった。
面状もフィルム全面において異物や濁りの発生は認められなかった。
表面凹凸が大きな形状の比較例(2)〜(3)の光学フィルム{試料1020−2,020−3}の各試料は、1メートル平方の面内おけるC=O/C−O比のバラツキが大きくなり、最大で0.46となった。そして。面状も悪化し、特に異物が多く見られた。
また、比較例(1)の光学フィルム1020−1は、表面形状は満足できるものであったが、光学特性は満足できるものではなかった。
以上のように、本発明に用いられる光学フィルムは、親水化処理されている面内が均一に親水化できていることが判る。
実施例1〜7で作成した透明フィルム101〜104、116〜156、比較例001〜007、009、010について実施例8と同様のアルカリ鹸化処理を行い、光学フィルム1101〜1104、1116〜1156、比較試料1001〜1007、1009、1010を作製した。本発明の光学フィルム(1011〜1114、1116〜1156)においては、表面処理後の表面凹凸形状、C=O/C−O比を満足し、更に表面処理後の面状も満足するものであった。
次に、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、光学フィルム試料1115を2枚用意して親水化処理した面を偏光膜側に偏光膜を間にして貼り合わせ、両面が光学フィルム1115によって保護された偏光板を得た。この際両側の光学フィルム試料1115の遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。同様にして比較試料1101〜1114,1116〜1150、及び比較試料1001〜1011についても偏光板を作製した。本発明の光学フィルム試料1101〜1156、比較試料1001〜1011はいずれも延伸したポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。この偏光板を以下、偏光板1101〜1156,1001〜1011という。
(比較例)
実施例8において、偏光膜の保護を本発明の光学フィルム2枚で行う代わりに、市販のポリカーボネートフィルム「パンライトC1400」(帝人化成製)2枚を用いて同様の操作で偏光板を作製した。しかし延伸したポリビニルアルコールとの貼合性が不十分であり、ポリカーボネートフィルムは偏光膜の保護フィルムとして機能できず、偏光板加工適性に問題があった。
(比較例)
実施例8において、偏光膜の保護を本発明の光学フィルム2枚で行う代わりに、厚さ80μmのアートンフィルム(JSR製)2枚を用いて同様の操作で偏光板を作製した。しかし延伸したポリビニルアルコールとの貼合性が不十分であり、アートンフィルムは偏光膜の保護フィルムとして機能できず、偏光板加工適性に問題があった。
(偏光板耐久性)
実施例8で作製した本発明の光学フィルム試料1101〜1156および比較試料1004を用いた偏光板を60℃95%RHの条件で500時間放置した後の偏光度を評価したところ、試料1101〜1156を用いた偏光板の偏光特性は比較試料1004を用いた偏光板に対していずれも優れており、本発明の光学的異方性を低下する化合物または波長分散調整剤の添加(比較試料1004はどちらも無添加)により、光学フィルムを偏光板加工した際の耐久性が向上していることが確認できた。
[実施例9]
(IPS型液晶表示装置への実装評価)
実施例1〜7で得た光学フィルムおよび実施例8で得た偏光板を用いて、液晶表示装置へ実装評価してその光学性能が十分であるか確認した。なお本実施例ではIPS型液晶セル、以下の実施例ではVA型、OCB型液晶セルを用いるが、本発明に用いるセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板または光学補償フィルムの用途は液晶表示装置の動作モードに限定されることはない。
実施例8で作製した偏光板のうち、偏光板1115〜1156および偏光板1008〜1010(実施例3〜7で作製した光学フィルム試料1115〜1156および比較試料1008〜1010で作製した偏光板)に対して、アートンフィルム(JSR社製)を一軸延伸した光学補償フィルムを貼合して光学補償機能を持たせた。この際、光学補償フィルムの面内レターデーションの遅相軸を偏光板の透過軸と直交させることで、正面特性を何ら変えることなく視覚特性を向上させることができる。光学補償フィルムの面内レターデーションReは270nm、厚さ方向のレターデーションRthは0nmでNzファクターは0.5のものを用いた。
上記の偏光板1115と光学補償フィルムの積層体を2組作製し、光学補償フィルムが各々液晶セル側となるように、「偏光板1115と光学補償フィルムの積層体+IPS型の液晶セル+偏光板1115と光学補償フィルムの積層体」の順番に重ね合わせて組み込んだ表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。液晶セルの物性は、液晶のΔnが0.099、液晶層のセルギャップを3.0μm、プレチルト角を5度、ラビング方向は基板上下とも75度とした。
同様にして偏光板1116〜1127、1138〜1139、1140〜1156および偏光板1008〜1010についても光学補償フィルムを貼合した積層体を2組用意して、IPS液晶セルと組み込んだ表示装置を作製した。
以上のようにして作製した液晶表示装置において、装置正面からの方位角方向45度、極角方向70度における黒表示時の光漏れ率を測定した結果を表14、15に記載した。
この値が小さいほど斜め45度方向での光漏れが少なく、表示装置のコントラストが良いことを示し、液晶表示装置の視野角特性を評価できる。本発明の光学フィルムからなる偏光板1115〜1127、1138〜1139、1140〜1156を用いた場合は比較試料からなる偏光板1008〜1010を用いた場合と比較して、光漏れ率が1/50から1/4といずれも小さくなった。また偏光板1115〜1127、1138〜1139、1140〜1156を用いた場合は偏光板1008〜1010を用いた場合と比較して、表示装置の色味変化が小さくなった。これは本発明の光学フィルム試料1115〜1127、138〜139、140〜156のRe、Rthの波長分散性が優れている(波長依存性が小さい)ために、どの波長においても同様の光学補償性能を持つことを示している。以上のように本発明の光学フィルムにより作製した光学補償フィルムおよび偏光板が、視野角特性に優れ、表示色味を変化しにくいことがわかった。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
Figure 2006221155
[実施例10]
(VA型、OCB型液晶表示装置への実装評価)
実施例1〜7で得た本発明の光学フィルム試料を用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、いずれの場合においてもコントラスト視野角が良好な性能が得られた。
[実施例11]
(光学補償フィルム性能)
実施例1〜7で得た本発明の光学フィルム試料を用いて、特開平7−333433号公報の実施例1に記載の方法により光学補償フィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判った。
[実施例12]
(光学補償フィルム性能)
本発明の光学フィルム試料を用いて、特開2003−315541号公報の実施例1に記載の方法に準じて光学補償フィルム試料を作製した。2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TFMB)から合成された、重量平均分子量(Mw)7万、△nが約0.04のポリイミドを、溶媒にシクロヘキサノンを用い25wt%に調製した溶液を、本発明に用いるセルロースアシレートフィルム試料140(厚さ80μm)に塗布した。その後100℃で10分熱処理後、160℃で15%縦一軸延伸することにより厚さ6μmのポリイミドフィルムが本発明の光学フィルムに塗布された光学補償フィルムを得た。この光学補償フィルムの光学特性は、Reが70nm、Rthが220nm、配向軸のズレ角度は±0.3度以内で、nx>ny>nzの複屈折層を持つ光学補償フィルムであった。
(比較例)
上記の実施例12の試料140を、実施例1にて作製した比較試料001(厚さ80μm)に塗布した以外は同様の操作により、厚さ6μmのポリイミドフィルムが比較試料001の光学フィルムに塗布された光学補償フィルムを得た。この光学補償フィルムの光学特性は、Reが75nm、Rthが280nmであった。
(VA型液晶表示装置への実装評価)
上記実施例12および比較例で得られた光学補償フィルムの、ポリイミドフィルムを塗布していない側を実施例8のアルカリ鹸化処理しポリビニルアルコール系接着剤で偏光子と接着することにより、直接偏光子と貼り合せた。この際光学補償フィルムのnx方向と偏光板の吸収軸が直交するように貼り合せた。これら光学補償フィルムが液晶セル側となるように粘着剤でVA液晶パネルに張り合わせた。なお、液晶セルの反対側には偏光板の吸収軸同士が直交するように偏光板のみを粘着剤を介してVA液晶パネルに貼り合せた。以上のようにして得られた液晶表示装置の視野角特性を測定したところ、実施例12で得られた本発明の光学フィルム試料140より得られた光学補償フィルムは比較試料1001から得た光学補償フィルムよりも左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアシレートフィルムが、VA用の位相差フィルムとして用いる際にも優れたものであることが判った。
[実施例13]
(湿熱処理後の光学性能評価、化合物の揮散性)
実施例1〜7で作製した本発明の光学フィルム試料について、60℃90%RHに240時間処理したフィルムのReとRthの変化量、80℃240時間処理したフィルムのReとRthの変化量、および80℃240時間処理したフィルムにおけるRthを低下させる化合物とΔRthを低下させる化合物との総揮散量を測定した。結果を表16及び表16−2に示す。なお比較例としてあらたに、実施例3の操作により、TPP(トリフェニルホスフェート)を添加した比較試料1012を作製した。表16及び表16−2の結果より、本発明の光学フィルムは、高湿度処理、高温度処理した際にもRe、Rthの変化量が小さく、高温度処理しても化合物の揮散量が小さいことが分かった。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
[実施例14]
(光学フィルムの耐光性)
実施例1、2、6、7で作製した本発明の光学フィルム試料1103、1144、1153、1155および比較試料1007に対して、CIE標準昼光のC光源に調製したスーパーキセノン光を240時間照射した。照射前のフィルムのCIE色空間の色度座標値のカラー測定と照射後の同座標値カラー測定からCIE色空間の色差ΔE***を計算した。本発明のフィルムは自然光に対する耐光性の加速試験である、スーパーキセノン光照射に対する色差が小さいことがわかった。なお、同様の加速試験である、カーボンアーク照射においても同様の結果になることを確認した(表17及び表17−2参照)。
Figure 2006221155
Figure 2006221155
[実施例15]
(IPS型液晶表示装置への実装評価)
<IPSモード液晶セル1の作製>
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
<偏光板の作製>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、本発明の光学フィルム試料1103の実施例8で表面処理した面側に偏光膜の片側に貼り付けた。続いて、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTF80UL、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、この偏光膜の反対側に貼り付け第1偏光板を形成した。
更に第一の偏光板の作成方法において、両面を該市販のセルロースアセテートフィルムにした以外は同様にして第2偏光板を作製した。
前記で作製したIPSモード液晶セルの一方に、第一偏光板の吸収軸が液晶セルのラビング方向と平行になるよう、且つ本発明の光学フィルム1103が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、IPSモード液晶セルのもう一方の側に第2偏光板をクロスニコルの配置で貼り付け、第一偏光板の側にバックライトが配置されるように液晶表示装置を作製した。
(比較例)
実施例15において、IPSセルの両面の偏光板をどちらも第2偏光板にした以外は同様にしてIPS液晶表示装置を作製した。
<作製した液晶表示装置の漏れ光の測定>
このように作製した液晶表示装置の黒の色味を極角60度における全方位角方向の変化(Δuv)を測定した。結果を表18にまとめた。Δuvが0.05以下である実施例15は色味変化が殆ど感じられないが、0.05以上である比較例は色味変化が明らかにあり、Re、Rthが小さくかつRe、Rthの波長分散が小さい本発明の光学フィルムを用いることにより色味変化が改善されることが分かった。
Figure 2006221155
[実施例16]
アセチル置換度2.94のセルロースアシレートを用い、光学的異方性低下剤A−19を12%(対セルロースアシレート)、波長分散調整剤UV−102を1.2%(対セルロースアシレート) となるようにして、実施例3及び実施例8と同様の製膜法により厚み80μmの本発明試料1151を作製した。得られたフィルムの面内のレターデーションReは−1.1nm(TD方向に遅相軸のため負とする)、厚み方向のレターデーションRthは−4.5nmといずれも十分に小さい値で、実施例8の偏光板加工適性、実施例9〜11の性能評価とも良好であった。
本発明の試料1102と1151、比較試料1007、さらに市販の比較試料としてTF80UL(富士写真フイルム製)、ゼオノアZF−14(日本ゼオン製)の未延伸時の遅相軸方向を調べた。これら試料を延伸し、その際の正面レターデーションの値と、遅相軸を調べた。本発明試料1102の延伸試料を1102'、1151の延伸試料を1151'とした。本実施例では100mm×100mmに切り出したフィルムをTD方向に固定一軸延伸した結果を表19に示す。遅相軸の方向を明確にするため、本実施例ではMD方向に遅相軸を有したレターデーションを正の値、TD方向に遅相軸を有したレターデーションを負として表記した。
延伸方法としては自由一軸延伸、固定一軸延伸、二軸延伸などがあるが、本発明におけるフィルムの延伸とは延伸の方向についてのみ規定するだけで、方法については限定するものではない。したがって広い意味での延伸とは、フィルムを機械搬送方向(MD方向)に搬送して連続して製造する際に、機械搬送方向に引っ張りテンションをかけてフィルムを延伸する場合や、機械搬送方向に垂直な方向(TD方向)にテンタークリップによって保持したフィルムを拡幅延伸することも含まれる。
結果として、本発明の試料1102は未延伸でMD方向に遅相軸を有しており、TD方向への延伸によって正面レターデーションが小さくなり、試料1102'としてTD方向に遅相軸を有するようになった。すなわち延伸倍率の調整で打ち消すことができることがわかった。同様に本発明の試料151は未延伸でTD方向に遅相軸を有しており、TD方向への延伸によって正面レターデーションを小さくなり、試料151'としてMD方向に遅相軸を有するようになった。また、20%まで延伸した際のReの変化率(|Re(20)-Re(0)|/20)が試料1102'、1151'いずれも小さくなった。すなわち延伸してもR
eを発現しにくいことがわかった。
一方比較試料1007、TF80ULにおいてはこのRe変化率が本発明の試料よりも大きいことがわかった。さらに比較試料ゼオノアにおいては延伸によってReが増加しておりまたRe変化率も大きい。
以上のことから、本発明の光学フィルム試料が延伸によってReを発現しにくく、また工程上の延伸倍率の調整操作によりReを小さく打ち消すことが可能であることがわかった。
Figure 2006221155

Claims (25)

  1. Re(λ)およびRth(λ)が、下記式(I)及び(II)をみたす透明フィルムであり、少なくとも片側の表面処理後の凹凸形状が、JIS B0601−1994に基づく表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)0.0005〜0.1μm、十点平均粗さ(Rz)0.0006〜0.3μm、表面凹凸の平均間隔(Sm)0.001〜1μm、且つ最大高さ(Ry)0.0005〜0.8μmの範囲であることを特徴とする光学フィルム。
    (I)0≦Re(630)≦10かつ|Rth(630)|≦25
    (II)|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
    [式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
  2. 透明フィルムの少なくとも片側の表面処理後の表面をX線光電子分光法(ESCA)で測定したときの炭素(C1s)スペクトルにおいて、288eV近傍の極大ピークに対する290eVのピークの比が0.20から0.45であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. フィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(III)及び(IV)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
    (III)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
    (IV) 0.01≦A≦30
    ここで、
    Rth(A):Rthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)、
    Rth(0):Rthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)、
    A:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)、
    である。
  4. 透明フィルムがセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学フィルム。
  5. 前記セルロースアシレートフィルムがアシル置換度が2.85〜3.00のセルロースアシレートからなることを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム。
  6. 該セルロースアシレートフィルムにおいて、Re(λ)およびRth(λ)を低下させ(括弧内のλは測定波長値)、オクタノール−水分配係数(LogP値)が、0〜7である化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の光学フィルム。
  7. |Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
  8. 透明フィルムの波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。
  9. 透明フィルムを60℃90%RHに240時間処理したフィルムのReおよびRthの変化量が15nm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。
  10. 80℃240時間処理した透明フィルムのReおよびRthの変化量が15nm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。
  11. 透明フィルムの膜厚が10〜120μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の光学フィルム。
  12. 透明フィルムを延伸する前後において、透明フィルムの正面レターデーションが下記式を満たすことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の光学フィルム。
    |Re(n)-Re(0)|/n≦1.0
    ここで、
    Re(n):n(%)延伸したフィルムの正面レターデーション(nm)であり、
    Re(0):延伸していないフィルムの正面レターデーション(nm)である。
  13. 透明フィルム面内において、透明フィルムの機械搬送方向(MD方向)に対して垂直方向(TD方向)に遅相軸を有することを特徴とする請求項1〜12いずれかに記載の光学フィルム。
  14. 透明フィルム面内において、遅相軸を有する方向に延伸すると正面レターデーションReが小さくなり、遅相軸を有する方向と垂直な方向に延伸すると正面レターデーションReが大きくなることを特徴とする請求項1〜13いずれかに記載の光学フィルム。
  15. 表面処理後の透明フィルムが、表面から0.005μm以上1.0μm以下の深さまで親水化処理されていることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかにに記載の光学フィルム。
  16. 親水化処理が、アルカリ鹸化処理である請求項1〜15のいずれかに記載の光学フィルム。
  17. アルカリ鹸化処理が、沸点が60〜120℃以下の水溶性有機溶媒、並びに界面活性剤及び相溶化剤を含有するアルカリ溶液で処理を行うことを特徴とする請求項16に記載の光学フィルム。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の光学フィルムに、Re(630)が0 〜200nmであり、かつ|Rth(630)|が0〜400nmである光学的異方性層を設けたことを特徴とする光学補償フィルム。
  19. 光学的異方性層がディスコティック液晶層を含有することを特徴とする請求項18に記載の光学補償フィルム。
  20. 光学的異方性層が棒状液晶層を含有することを特徴とする請求項18または19に記載の光学補償フィルム。
  21. 請求項1〜17に記載の光学フィルムと請求項18〜20に記載の光学補償フィルムの少なくともいずれか一つを偏光子の保護フィルムとして有することを特徴とする偏光板。
  22. 表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたことを特徴とする請求項21に記載の偏光板。
  23. 請求項1〜17に記載の光学フィルム、請求項18〜20に記載の光学補償フィルム、請求項21または22に記載の偏光板の少なくともいずれか一つを有することを特徴とする液晶表示装置。
  24. 請求項1〜17に記載の光学フィルム、請求項18〜20に記載の光学補償フィルム及び請求項21〜22に記載の偏光板の少なくともいずれか一つを有することを特徴とするVAまたはIPS液晶表示装置。
  25. 液晶セルの上下両側に偏光板を有する請求項24のIPS液晶表示装置において、少なくとも片側の偏光板のセル側に請求項1〜17のいずれかに記載の光学フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
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